JP6885588B2 - ポリエステル系バインダー短繊維 - Google Patents

ポリエステル系バインダー短繊維 Download PDF

Info

Publication number
JP6885588B2
JP6885588B2 JP2017112684A JP2017112684A JP6885588B2 JP 6885588 B2 JP6885588 B2 JP 6885588B2 JP 2017112684 A JP2017112684 A JP 2017112684A JP 2017112684 A JP2017112684 A JP 2017112684A JP 6885588 B2 JP6885588 B2 JP 6885588B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
fiber
binder
polyester
fibers
short fiber
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2017112684A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2018204153A (ja
Inventor
慶 石原
慶 石原
司 宮田
司 宮田
達比古 杉崎
達比古 杉崎
悠太 天満
悠太 天満
田中 知樹
知樹 田中
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Nippon Ester Co Ltd
Original Assignee
Nippon Ester Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Nippon Ester Co Ltd filed Critical Nippon Ester Co Ltd
Priority to JP2017112684A priority Critical patent/JP6885588B2/ja
Publication of JP2018204153A publication Critical patent/JP2018204153A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6885588B2 publication Critical patent/JP6885588B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Landscapes

  • Artificial Filaments (AREA)
  • Paper (AREA)

Description

本発明は、クッション材や湿式不織布等の材料として用いた際に、良好な柔軟性と回復性を付与することができるポリエステル系バインダー短繊維に関する。
従来、ソファーや椅子、ベッド等の家具用や自動車シート用のクッション材としては、主としてポリウレタンフォームが使用されてきた。
しかしながら、ポリウレタンフォームはクッションとして耐久性は良好だが、以下の問題が挙げられている。
(1)床つき感が大きく、透湿性に劣り、蓄熱性があるため蒸れやすい。
(2)リサイクルが困難であり、焼却処分における燃焼時の発生熱量が大きく、焼却炉の損傷が大きい。
(3)加工性は優れているが、製造中に使用される薬品の公害問題がある。
上記のような問題を解決するものとして、芯部にポリトリメチレンテレフタレートを配し、鞘部にポリブチレンテレフタレートと直鎖状ポリアルキレングリコールを共重合したポリエーテルエステルを配した芯鞘型複合短繊維を構成素材とすることにより、優れた弾性回復率を有する不織布が得られることが提案されている(特許文献1)。
しかしながら、この芯鞘型複合短繊維を得ようとしたとき、鞘成分に用いるポリエーテルエステルのエラスティックな性質上、重合払い出し時にストランドカットがし難いといった問題や、紡糸・延伸工程では繊維同士の膠着現象が発生しやすいといった問題があった。
また、特許文献1の共重合ポリエーテルエステルは融点が160〜195℃の範囲のものであり、不織布を得るにあたって熱処理するときは、熱処理温度が160℃を超えて高くする必要があり、コスト的にも不利なものであった。
特開2001−73229号公報号公報
本発明は上記の問題点を解決するものであって、繊維製造工程で問題が発生せず、また、低コストにて、良好な柔軟性と回復性とを併せ持つ繊維製品を得ることが可能な繊維を提供することを課題とする。
本発明者らは、上記の課題を解決するために複合短繊維の構成ポリマーに着目し、鋭意検討を行った結果、本発明に到達した。
すなわち、本発明は、バインダー成分のみによって構成される単相型の全融タイプのポリエステル系バインダー繊維であり、
バインダー成分が、結晶核剤を0.01〜5wt%含有し、ハードセグメントであるポリヘキサメチレンテレフタレートと、ソフトセグメントであるポリテトラメチレングリコールとのブロック共重合体により構成される共重合ポリエステルエーテルであり、
共重合ポリエステルエーテルを構成するソフトセグメントの含有量が10〜40wt%、共重合ポリエステルエーテルの融点が100〜150℃であることを特徴とするポリエステル系バインダー短繊維を要旨とする。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のポリエステル系バインダー短繊維は、バインダー成分のみによって構成される単相型の全融タイプのバインダー繊維である。したがって、加熱することにより、繊維全体が溶融または軟化して接着成分として機能する。繊維全体を溶融または軟化する全融タイプであることにより、得られる繊維製品において、柔軟性と弾性回復性が良好なものとなる。例えば、全融タイプとは対照的な芯鞘型バインダー繊維(芯成分が高融点繊維、鞘成分が低融点のバインダー成分により構成される。)と比較すると、芯鞘型バインダー繊維は、加熱によって鞘成分が溶融または軟化して熱接着成分として機能するが、芯成分は繊維形態を維持するため、いわゆる骨格部分となって、熱接着箇所が十分な柔軟性を発揮しにくくなる。それに対して、全融タイプのバインダー繊維は、バインダー成分が溶融または軟化して熱接着成分として機能する熱接着箇所では、骨格部分が存在せずにバインダー成分のみが存在することとなり、柔軟性と弾性回復性を十分に発揮できることとなる。
本発明において、バインダー成分は、ハードセグメントであるポリヘキサメチレンテレフタレートと、ソフトセグメントであるポリテトラメチレングリコールとのブロック共重合体により構成される共重合ポリエステルエーテルであって、融点が100〜150℃である。
バインダー成分である共重合ポリエステルエーテルの融点を100℃以上とすることにより、バインダー短繊維を用いて得られる不織布等の繊維製品は、高温雰囲気下で使用しうる熱安定性を具備することができる。一方、150℃以下とすることにより、不織布等の繊維製品を得る際の熱接着加工温度を高くする必要がなく、加工性、経済性に優れる。また、熱処理により得られる繊維製品の品質や風合いを良好に維持することができる。このような理由から、融点は110〜140℃の範囲が好ましく、より好ましくは115〜135℃である。
共重合ポリエステルエーテルは、ハードセグメントがポリヘキサメチレンテレフタレートである。ハードセグメントにポリヘキサメチレンテレフタレートを用いることで、共重合ポリエステルエーテルの融点を150℃以下に設定することが容易に可能となる。さらには、本発明のバインダー短繊維に良好な柔軟性と弾性性能を付与することも可能となる。
共重合ポリエステルエーテルのソフトセグメントは、弾性性能を考慮して、ポリテトラメチレングリコール(以下、「PTMG」と略記することもある。)を用いる。ソフトセグメントとしてPTMGを選択することにより、ポリエチレングリコール(PEG)やポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコールをソフトセグメントとして用いた共重合ポリエステルエーテルと比較しても、より弾性性能が優れるものが得られる。
共重合ポリエステルエーテルに含まれるポリテトラメチレングリコールの含有量は10〜40wt%である。中でも20〜35wt%含有することが好ましい。ポリテトラメチレングリコールの含有量が10wt%未満であると、十分な弾性性能が得られず、本発明の目的を達することができず、一方、40wt%を超えると、弾性性能が向上し過ぎて、反発性の高いものとなる。また、さらには結晶性も低下するため、溶融紡糸において繊維同士の膠着現象が発生し操業性が劣る。
用いるポリテトラメチレングリコールの平均分子量は400〜2500が好ましく、中でも600〜2000のものが好ましい。ポリテトラメチレングリコールの平均分子量を400以上とすることにより、得られる共重合ポリエステルエーテルに十分な弾性性能を付与することができ、2500以下とすることにより、ポリテトラメチレングリコールの共重合性が低下することなく、得られるバインダー短繊維やこの繊維を用いてなる繊維製品が良好な弾性回復性能を発揮することができる。
なお、本発明における共重合ポリエステルエーテルには、融点範囲や柔軟性、弾性性能等の特性を損なわない範囲であれば、他の成分を少量共重合させることができる。
具体的には、カルボン酸成分としては、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸、1,3−シクロブタンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、ダイマー酸等に例示される飽和脂肪族ジカルボン酸またはこれらのエステル形成性誘導体、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸等に例示される不飽和脂肪族ジカルボン酸またはこれらのエステル形成性誘導体、フタル酸、イソフタル酸、5−(アルカリ金属)スルホイソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸等に例示される芳香族ジカルボン酸またはこれらのエステル形成性誘導体、トリメリット酸等の芳香族トリカルボン酸またはこれらのエステル形成性誘導体を用いることができる。
また、ジオール成分としては、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等に例示される脂肪族グリコール、ヒドロキノン、4,4’−ジヒドロキシビスフェノール、1,4−ビス(β−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、ビスフェノールA、2,5−ナフタレンジオール、これらのグリコールにエチレンオキシドが付加したグリコール等に例示される芳香族グリコールを用いることができる。
本発明において、バインダー成分は、結晶核剤を0.01〜5wt%含有するものであり、中でも0.1〜2wt%含有することが好ましい。
本発明における共重合ポリエステルエーテルは、上記のような共重合組成であることにより、結晶性を有しているものであるが、結晶核剤を含有することによって降温時の結晶化速度を向上させることができる。そして、繊維製造工程において、繊維同士が膠着する現象が発生すること無く、溶融紡糸を実施することが可能となり、操業性良く、バインダー短繊維を得ることができる。
結晶核剤の含有量が0.01wt%未満であると、降温時の結晶化速度を向上させることができず、溶融紡糸工程で繊維同士の膠着現象を抑制することができない。一方、5wt%を超えると、結晶核剤の含有量が多くなりすぎ、紡糸、延伸時に糸切れ等の発生しやすく操業性が悪化する。
結晶核剤としては、無機系微粒子やポリオレフィン、硫酸塩等を使用することが好ましい。
無機系微粒子としては、中でもタルクなどの珪素酸化物を主成分としたものが好ましく、平均粒径3.0μm以下もしくは比表面積15m/g以上の無機系微粒子を用いることが好ましい。上記平均粒径もしくは比表面積を満足していない場合、結晶核としての機能に乏しく、共重合ポリエステルエーテルの結晶化速度を効率良く向上させることができない。
また、結晶核剤として含有させるポリオレフィンは、反応系内で溶融するため、形状については特に限定するものではなく、例えば粒径2mm程度のチップ状のものや、粒径数μmのワックス状のものであってもよい。ポリオレフィンとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ−1−ブテン、ポリメチルペンテン、ポリメチルブテンなどのオレフィン単独重合体、プロピレン・エチレンランダム共重合体などを挙げることができ、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ−1−ブテン、プロピレン・エチレンランダム共重合体が特に好ましい。なお、ポリオレフィンが炭素原子数3以上のオレフィンから得られるポリオレフィンである場合には、アイソタクチック重合体であってもよく、シンジオタチック重合体であってもよい。
結晶核剤として含有させる硫酸塩は、硫酸リチウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸マグネシウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、硫酸アルミニウムなどを挙げることができ、中でも結晶核剤としての効果の点から、硫酸ナトリウムや硫酸マグネシウムが好ましい。
これらの結晶核剤を添加する方法としては、粉体や粒状のまま、あるいはジオールスラリーの形態で共重合ポリエステルエーテルを製造する際の任意の段階で添加すればよい。例えば、エステル化またはエステル交換反応時に添加してもよいし、重縮合反応の段階で添加してもよい。
本発明においては、バインダー成分中に滑剤粒子を含有していることが好ましい。バインダー成分を構成するポリエステルエーテル共重合体により構成される繊維は柔軟性を有するという特性上、繊維が柔らかく摩擦抵抗が大きくなるため、繊維製造工程においてガイド類と接触した際に単糸切れが発生しやすくなる。操業性を向上させるためには滑剤粒子を添加し、繊維自体に平滑性を付与することが効果的である。
滑材粒子としては、バインダー成分である共重合ポリエステルエーテルに対して不活性であることが好ましく、例えば、二酸化チタン、シリカ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化アルミニウム、ゼオライト、カリオンなどが挙げられる。平滑性を良好に付与できること、粒子の粒度分布の観点から、シリカを用いることが好ましい。
滑材粒子は、バインダー成分中に0.1〜5wt%含有させることが好ましく、なかでも0.1〜2wt%含有することが好ましい。滑材粒子の含有量が0.1wt%以上とすることにより、滑材粒子を含有させる効果を発揮でき、繊維製造工程における操業性が向上する。一方、5wt%以下とすることにより、繊維製造工程における紡糸・延伸工程にて粒子を多く含むことに起因する糸切れ等を発生させることはない。
共重合ポリエステルエーテル中には、本発明の効果を損なわない範囲で、リン酸エステル化合物やヒンダードフェノール化合物のような安定剤、コバルト化合物、蛍光増白剤、染料のような色調改良剤、二酸化チタンのような艶消し剤、可塑剤、顔料、制電剤、難燃剤、易染化剤などの各種添加剤を1種類または2種類以上添加してもよい。
ポリエステル系バインダー短繊維の断面形状は特に限定するものではなく、円形のみならず扁平形、トリローバル形、ヘキサローバル形等の異形断面や四角形や三角形等の多角形状、また、中央部に中空を有する中空形状であってもよい。また、ポリエステル系バインダー短繊維の単繊維繊度は特に限定されるものではないが、一般的に1〜20dtexの範囲がよい。
本発明のポリエステル系バインダー短繊維の製造方法について、一例を挙げる。
まず、共重合ポリエステルエーテルチップを常用の複合紡糸装置に供給して溶融紡糸を行う。紡出された糸条を冷却固化し、紡糸油剤を付与した後、一旦容器へ収納する。そして、この糸条を集束して1〜100ktex程度の糸条束とし、加熱ローラー間で延伸倍率2〜5倍程度で延伸を施す。続いて押し込み式クリンパー等で機械捲縮を付与した後、仕上げ油剤を付与し、目的とする繊維長にカットしてバインダー短繊維を得る。また、バインダー短繊維を湿式不織布用に用いる場合は、機械捲縮を付与せずにノークリンプの形態とし、所望の繊維長にカットする。湿式不織布用であることから、繊維長は1〜20mmのいわゆるショートカット繊維とする。より好ましい繊維長は3〜15mm、なかでも5〜10mmがさらに好ましい。繊維長の上限を20mmとすることにより、水中での分散性が良好となり、得られる湿式不織布において密度斑が生じにくくなる。また、繊維長の下限を1mmとすることにより、所望の繊維長にカットする工程における発熱により繊維同士が融着接合して塊状となることを防ぐことができる。
本発明のポリエステル系バインダー短繊維を用いて繊維製品を得るにあたっては、主体となる他の繊維と混用するとよい。本発明のバインダー短繊維は、バインダー成分のみからなる単相型であり、加熱によりバインダー繊維全体が溶融する全融タイプであるためである。バインダー成分を構成する共重合ポリエステルエーテルの融点が、上限が150℃であることから比較的低いものであるため、熱接着の際の処理温度を低く設定することができ、コスト的にも有利で、かつ、熱接着時の熱によって混用する他の繊維が劣化することを防ぐこともできる。したがって、混用する他の繊維の選択の幅が多岐にわたって広がり、機械的特性や品位に優れる繊維製品を得ることができ、他の繊維の素材(合成繊維や天然繊維等)、形態等は、繊維製品の用途等に応じて適宜選択すればよい。他の繊維との混合比率は、バインダー繊維の性能(弾性回復率や柔軟性)を十分に発揮するには、バインダー繊維は少なくとも10質量%以上とし、上限は、用途や性能等に応じて適宜選択すればよいが、50質量%程度がよい。
本発明のバインダー短繊維を適用する繊維製品としては、不織布、紡績糸、該紡績糸を用いた織編物、ベッド、マットや敷き布団等に用いる固綿、クッションやシート等の中綿等が挙げられる。織編物や不織布等の布帛として用いた場合には、肌触りが柔軟で、弾性を有するものが得られる。また固綿やクッションの中綿に用いた場合は、良好なクッション性を具備するものが得られる。
繊維製品が不織布の場合は、乾式であっても、湿式であっていずれでもよく、目付けも特に限定するものではない。不織布化手段としては、本発明のバインダー短繊維がバインダー成分となって繊維同士が熱接着により一体化してなるものであるが、熱接着前に、構成繊維同士を三次元的に交絡させてもよい。
乾式不織布の製造方法について、一例を用いて説明すると、他の繊維として、例えば、ポリエチレンテレフタレート短繊維を準備し、このポリエチレンテレフタレート短繊維と本発明のバインダー短繊維とを任意の割合で計量し、カード機を用いて混綿、解繊して乾式ウェブを作製する。得られたウェブを、連続熱処理機にて共重合ポリエステルエーテルが溶融または軟化する温度で熱接着処理を施し、構成繊維同士が熱接着により一体化した乾式短繊維不織布を得る。
また、湿式不織布の製造方法について、一例を用いて説明すると、例えば、他の繊維としてポリエチレンテレフタレート短繊維を準備し、このポリエチレンテレフタレート短繊維と本発明のバインダー短繊維とを任意の割合で計量し、パルプ離解機に投入し、攪拌(混綿、解繊)する。得られた試料を抄紙機にて湿式不織ウェブを作製する。この湿式不織ウェブをプレス機にて余分な水分を脱水した後、共重合ポリエステルエーテルが溶融または軟化する温度で熱接着処理を施し、構成繊維同士が熱接着により一体化した湿式短繊維不織布を得る。
本発明によれば、ポリヘキサメチレンテレフタレートとポリテトラメチレングリコールとがブロック共重合してなるポリエステルエーテルを用いることにより、該ポリマーが低融点でありながら結晶性が良好であるため、繊維製造工程において、一般の製造装置で溶融紡糸、延伸、熱処理を行う際に、膠着現象の発生が無く、操業性良く繊維を得ることができる。
また、本発明のバインダー短繊維は、熱接着処理温度を低く設定することが可能であり、優れた柔軟性と弾性回復率を有する繊維製品を低コストで得ることができる。
次に、実施例を用いて本発明を具体的に説明する。実施例中の各種の特性値等の測定、評価方法は次の通りである。
(a)相対粘度
濃度0.5%のフェノール/四塩化エタンの等質量混合溶液を溶媒とし、ウベローデ粘度計を使用して、温度20℃で測定した。
(b)共重合ポリエステルエーテルの融点(Tm)
示差走査型熱量計(パーキンエルマー社製Diamond DSC)を使用し、昇温速度20℃/分で測定した。
(c)共重合ポリエステルエーテルのポリテトラメチレングリコール含有量
得られたポリエステル複合短繊維を重水素化ヘキサフルオロイソプロパノールと重水素化クロロホルムとの容量比1/20の混合溶媒に溶解させ、日本電子社製LA−400型NMR装置にて1H−NMRを測定し、得られたチャートの各共重合成分のプロトンのピークの積分強度から求めた。
(d)短繊維不織布の柔軟性(曲げ剛さB:gf・cm/cm)
得られた不織布より200mm角の試料を作成し、純曲げ試験機(カトーテック社製 KES−FB2)を用い、単位幅あたりの曲げ剛さBを求めた。なお、曲げ剛性は、その値が大きいほど硬いものであることを示し、値が小さいほど柔らかであることを示す。
(e)短繊維不織布の曲げ回復性(曲げヒステリシス2HB:gf・cm/cm)
得られた不織布より200mm角の試料を作成し、純曲げ試験機(カトーテック社製 KES−FB2)を用い、単位幅あたりの曲げヒステリシス2HBを求めた。なお、曲げヒステリシスは、その値が大きいほど回復性は低いことを示し、値が小さいほど回復性が高く良好であることを示す。
実施例1
構成するポリマーとして、ハードセグメントがポリヘキサメチレンテレフタレート、ソフトセグメントがポリテトラメチレングリコールであって、ハードセグメントとソフトセグメントとがブロック共重合してなる融点135℃の共重合ポリエステルエーテルであって、ポリテトラメチレングリコールの含有量が18wt%、平均分子量が1000であり、結晶核剤のポリエチレンを1.0wt%含有するものを用いて、溶融紡糸を行った。このとき、紡糸温度245℃、単糸吐出量0.627g/min、紡糸速度850m/minの条件で紡糸した。次いで、紡出糸条を25℃の冷風で冷却し、引き取って未延伸糸を得た。
この未延伸糸を集束して、延伸倍率3.28倍、延伸温度50℃で延伸を行い、仕上げ油剤を付与した後、繊維長5mmに切断して単糸繊度2.6dtexのバインダー短繊維を得た。
得られたバインダー短繊維と、他の繊維(主体繊維)としてポリエチレンテレフタレート短繊維(融点256℃、繊度0.6dtex、繊維長5mm、強度4.7cN/dtex、伸度30%)を用い、混合比率を質量比30/70(バインダー繊維/主体繊維)として、抄紙機に通して湿式ウェブを作製した。得られた湿式ウェブを温度135℃、処理時間1分間の条件で、ヤンキードライヤーで両面より熱処理を行い、目付25g/mの湿式不織布を得た。
実施例2
滑剤粒子としてシリカを0.28wt%添加した共重合ポリエステルエーテルを用いた以外は実施例1と同様にして、湿式不織布を得た。
比較例1
実施例1において、バインダー繊維として、融点110℃の共重合ポリエステルからなる単相型のバインダー繊維(ユニチカ社製<4000>)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして湿式不織布を得た。
比較例2
実施例1において、バインダー繊維として、鞘成分が共重合ポリエステルエーテルにより構成されてなる下記の芯鞘型バインダー繊維を用いた以外は、実施例1と同様にして湿式不織布を得た。
すなわち、芯成分を構成するポリマーとしてポリエチレンテレフタレートが配され、鞘成分の共重合ポリエステルエーテルとして、ハードセグメントがポリヘキサメチレンテレフタレート、ソフトセグメントがポリテトラメチレングリコールであって、ハードセグメントとソフトセグメントとがブロック共重合してなる融点135℃の共重合ポリエステルエーテルであり、ポリテトラメチレングリコールの含有量が18wt%、平均分子量が1000、結晶核剤のポリエチレンを1.0wt%含有するものが配されてなり、単糸繊度2.6dtex、繊維長5mmの芯鞘型バインダー繊維を用いた。

実施例1、2、比較例1、2で得られた湿式不織布の評価結果を表1に示す。
Figure 0006885588
表1から明らかなように、実施例の湿式不織布は、曲げ剛性の値が小さく、柔軟で柔らかであり、曲げ回復性に優れたものであった。

Claims (5)

  1. バインダー成分のみによって構成される単相型の全融タイプのポリエステル系バインダー繊維であり、
    バインダー成分が、結晶核剤を0.01〜5wt%含有し、ハードセグメントであるポリヘキサメチレンテレフタレートと、ソフトセグメントであるポリテトラメチレングリコールとのブロック共重合体により構成される共重合ポリエステルエーテルであり、
    共重合ポリエステルエーテルを構成するソフトセグメントの含有量が10〜40wt%、共重合ポリエステルエーテルの融点が100〜150℃であることを特徴とするポリエステル系バインダー短繊維。
  2. バインダー成分中に滑材粒子を0.1〜5wt%含有していることを特徴とする請求項1記載のポリエステル系バインダー短繊維。
  3. 滑材粒子がシリカであることを特徴とする請求項1または2記載のポリエステル系バインダー短繊維。
  4. ポリエステル系バインダー短繊維が、繊維長が1〜20mmのショートカット繊維であり、湿式不織布用のバインダー短繊維であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載のポリエステル系バインダー短繊維。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項記載のポリエステル系バインダー短繊維と主体繊維とから構成され、ポリエステル系バインダー短繊維が溶融または軟化することにより主体繊維同士を熱接着していることを特徴とする短繊維不織布
JP2017112684A 2017-06-07 2017-06-07 ポリエステル系バインダー短繊維 Active JP6885588B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2017112684A JP6885588B2 (ja) 2017-06-07 2017-06-07 ポリエステル系バインダー短繊維

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2017112684A JP6885588B2 (ja) 2017-06-07 2017-06-07 ポリエステル系バインダー短繊維

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2018204153A JP2018204153A (ja) 2018-12-27
JP6885588B2 true JP6885588B2 (ja) 2021-06-16

Family

ID=64955317

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2017112684A Active JP6885588B2 (ja) 2017-06-07 2017-06-07 ポリエステル系バインダー短繊維

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP6885588B2 (ja)

Families Citing this family (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPWO2022154072A1 (ja) * 2021-01-18 2022-07-21

Family Cites Families (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH06192915A (ja) * 1992-12-24 1994-07-12 Nippon Ester Co Ltd ポリエーテルエステル系バインダー繊維
MXPA02001271A (es) * 1999-08-06 2002-07-22 Eastman Chem Co Poliesteres que tienen un punto de fusion controlado y fibras formadas de ellos.
JP2003089958A (ja) * 2001-09-19 2003-03-28 Teijin Ltd 熱接着性ポリエステル短繊維
JP2009062666A (ja) * 2007-08-09 2009-03-26 Nippon Ester Co Ltd 短繊維不織布
JP6112931B2 (ja) * 2013-03-26 2017-04-12 日本エステル株式会社 ポリエステル系複合短繊維

Also Published As

Publication number Publication date
JP2018204153A (ja) 2018-12-27

Similar Documents

Publication Publication Date Title
TW201947074A (zh) 製造紋理化多成份纖維的方法
KR20090033471A (ko) 제전성 폴리에스테르 가연 가공사 및 그 제조 방법 그리고 그 제전성 폴리에스테르 가연 가공사를 포함하는 제전성 특수 복합 가연 가공사
JP2013209777A (ja) 湿式不織布および繊維製品
JP6885588B2 (ja) ポリエステル系バインダー短繊維
JP2008179939A (ja) 捲縮性複合繊維とその製造方法およびこれを用いた不織布
JP6112931B2 (ja) ポリエステル系複合短繊維
JP5607494B2 (ja) 湿式不織布および繊維製品
JP3892748B2 (ja) 短繊維不織布
JP2008280636A (ja) 成形用織編物及びこれを用いてなるフィルター
JPH04126856A (ja) ポリエステル固綿
JP4076369B2 (ja) ポリエステル系熱接着性中空複合短繊維及び不織布
JP2010168671A (ja) 湿式短繊維不織布
JP4326083B2 (ja) ポリエステル系熱接着性複合短繊維及び不織布
JP2009263838A (ja) ポリエステル複合短繊維
JP2003210307A (ja) ウールタフトカーペット
JP2795487B2 (ja) 繊維積層物
JP5344963B2 (ja) 短繊維不織布
JPH05195400A (ja) 積層不織布及びその製造方法
JP2009062666A (ja) 短繊維不織布
JP2011231429A (ja) 短繊維不織布
JP2009263839A (ja) ポリエステル複合短繊維
JP4988484B2 (ja) 短繊維不織布
JP2009197382A (ja) 短繊維不織布
JP2014136838A (ja) 湿式不織布用ショートカット複合繊維
JP2009263816A (ja) 短繊維不織布

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20200526

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20210302

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20210420

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20210506

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 6885588

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250