JP2008303323A - 低融点ポリエステル樹脂、およびこれからなる熱接着性複合バインダー繊維とポリエステル系不織布 - Google Patents
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Abstract
【課題】 テレフタル酸を主たる酸成分とし、モル比80/20〜30/70のエチレングリコールと1,4−ブタンジオールを主たるジオール成分からなるポリエステルを製造する際の重縮合触媒に、チタン酸からなる被覆層が形成されたマグネシウム化合物を用い、環境面に配慮した低融点ポリエステル樹脂と、それを用いた熱接着性複合バインダー繊維、並びにそれを使用してなる不織布を提供する。
【解決手段】 テレフタル酸を主たる酸成分とし、モル比80/20〜30/70のエチレングリコールと1,4−ブタンジオールを主たるジオール成分であり、重合触媒としてチタン酸からなる被覆層が形成されたマグネシウム化合物を30〜250ppm添加し、結晶融点が100〜190℃であることを特徴とする低融点ポリエステル樹脂およびこれらからなる熱接着性複合バインダー繊維と、それを使用してなる不織布。
【選択図】なし
【解決手段】 テレフタル酸を主たる酸成分とし、モル比80/20〜30/70のエチレングリコールと1,4−ブタンジオールを主たるジオール成分であり、重合触媒としてチタン酸からなる被覆層が形成されたマグネシウム化合物を30〜250ppm添加し、結晶融点が100〜190℃であることを特徴とする低融点ポリエステル樹脂およびこれらからなる熱接着性複合バインダー繊維と、それを使用してなる不織布。
【選択図】なし
Description
本発明は、優れた熱接着性を有し、耐熱性および風合いが良好な接着繊維製品に好適で、かつアンチモンに代表される重金属を含まない環境面を配慮したポリエステル系の低融点ポリエステル樹脂(A)およびこれを用いた熱接着性複合バインダー繊維とそれを使用したポリエステル系不織布に関するものである。
近年、ルーフィング資材、自動車用内装材、カーペットの基布等に用いる不織布、枕やマットレス等の寝装用品の詰め物、キルティング用の中入れ綿等の繊維構造物において、構造繊維(以下、主体繊維という。) 相互間を接着する目的で、熱接着性バインダー繊維 (以下、単に「バインダー繊維」という。) が広く使用されている。
そして、主体繊維としては、比較的安価で、優れた物性を有するポリエステル繊維が最も多く使用されており、これを接着するバインダー繊維もポリエステル系が好ましく、種々のポリエステル系バインダー繊維およびこれらを用い接着したポリエステル繊維構造物が提案されている。
ところで、ポリエステル系のバインダー繊維としては、一般に熱接着成分としてコポリエステルを用いるので、明確な結晶融点を示さない場合が多く、通常90〜200℃で軟化するので、軟化点以上、主体繊維の融点未満の温度範囲で熱処理をして主体繊維相互間を接着するものである。
ところが、熱接着性成分のガラス転移点以上の高温雰囲気下で使用される産業資材用の繊維製品の場合、明確な結晶融点を示さないバインダー繊維で接着すると、高温雰囲気下においては、接着強度が低下し、製品の強度低下、嵩高保持性の低下等が起こるという問題があった。
結晶融点を示さないコポリエステルと高融点ポリエステルとで複合繊維型のバインダー繊維とする場合、紡糸後、熱延伸すると融着するため、冷延伸しなければならず、冷延伸したバインダー繊維では、使用時に高融点ポリエステルが熱収縮し、接着繊維製品の外観を損なうという問題があり、従来よりこれらの問題を解決すべく、数多くの方法が提案されている。
例えば、特許文献1のように、ポリブチレンテレフタレート/ポリブチレンイソフタレート系コポリエステルからなるものが提案されている。しかし、これらを用いて不織布を接着すると、接着した不織布がペーパーライクな手触りの硬いものになる場合が多い。また、特許文献2のように、テレフタル酸、アジピン酸、1,4−ブタンジオールからなるバインダー繊維が提案されているが、このコポリエステルは、ジオール成分が全て1,4−ブタンジオールであるため、熱安定性が悪く、紡糸時に糸切れが多発して操業性が悪いと共に、生産コストが高くなるといった問題があった。
一方、PETの重縮合触媒には、従来より三酸化アンチモンに代表されるアンチモン化合物が広く用いられている。三酸化アンチモンは安価で、かつ優れた触媒活性を有する重縮合触媒であるが、近年、環境面からアンチモンの安全性に対する問題が欧米をはじめ各国で指摘されている。
今のところ、三酸化アンチモンの代わりとなる重縮合触媒として、テトラアルコキシチタネートやゲルマニウム化合物などが実用化されてきているが、テトラアルコキシチタネートを用いたポリエステルでは、著しく着色し、かつ熱分解を容易に起こす問題がある。一方、ゲルマニウム化合物では、非常に高価であるばかりか、反応中に系外へ溜出しやすく、反応系の触媒濃度が変化し、反応の制御が困難になるといった問題がある。
特開昭51−125424号公報参照
特開昭63−270812号公報参照
本発明は、これらの問題を解決するものであって、アンチモンをはじめとする重金属を含んだ重合触媒を使用することなく、下記のような優れた物性を有する熱接着性複合バインダー繊維用のポリエステル樹脂を提供するものである。
また、本発明は、熱接着性と耐熱性とに良好なバランスと優れた物性を有しながら、低コストで、熱延伸法により操業性よく製造することができる熱接着性複合バインダー繊維を提供するものである。
さらに本発明は、高温雰囲気下使用しても接着強力の低下や型崩れの少ない風合いの柔らかいポリエステル系不織布を提供するものである。
また、本発明は、熱接着性と耐熱性とに良好なバランスと優れた物性を有しながら、低コストで、熱延伸法により操業性よく製造することができる熱接着性複合バインダー繊維を提供するものである。
さらに本発明は、高温雰囲気下使用しても接着強力の低下や型崩れの少ない風合いの柔らかいポリエステル系不織布を提供するものである。
本発明は、上記の課題を解決するもので、以下の構成を要旨とする。
(1)テレフタル酸を主たる酸成分、モル比80/20〜30/70のエチレングリコールと1,4−ブタンジオールを主たるジオール成分とするポリエステル樹脂であって、重合触媒としてチタン酸からなる被覆層が形成されたマグネシウム化合物を30〜250ppm添加し、結晶融点が100〜190℃であることを特徴とする低融点ポリエステル樹脂。
(2)(1)記載の低融点ポリエステル樹脂(A)と、ポリエチレンテレフタレートまたはこれを主体としチタン酸からなる被覆層が形成されたマグネシウム化合物を30〜250ppm含有している結晶融点が220℃以上のポリエステル樹脂(B)とを、質量比30/70〜70/30で含有してなり、低融点ポリエステル樹脂(A)が繊維表面の少なくとも一部を占めていることを特徴とする熱接着性複合バインダー繊維。
(3)(2)記載の熱接着性複合バインダー繊維からなる繊度1〜20dtex、繊維長30〜100mmの短繊維と、(2)記載のポリエステル樹脂(B)からなる繊度1〜20dtex、繊維長30〜100mmの短繊維とを質量比10/90〜50/50の割合で混合して形成されたことを特徴とするポリエステル系不織布。
(1)テレフタル酸を主たる酸成分、モル比80/20〜30/70のエチレングリコールと1,4−ブタンジオールを主たるジオール成分とするポリエステル樹脂であって、重合触媒としてチタン酸からなる被覆層が形成されたマグネシウム化合物を30〜250ppm添加し、結晶融点が100〜190℃であることを特徴とする低融点ポリエステル樹脂。
(2)(1)記載の低融点ポリエステル樹脂(A)と、ポリエチレンテレフタレートまたはこれを主体としチタン酸からなる被覆層が形成されたマグネシウム化合物を30〜250ppm含有している結晶融点が220℃以上のポリエステル樹脂(B)とを、質量比30/70〜70/30で含有してなり、低融点ポリエステル樹脂(A)が繊維表面の少なくとも一部を占めていることを特徴とする熱接着性複合バインダー繊維。
(3)(2)記載の熱接着性複合バインダー繊維からなる繊度1〜20dtex、繊維長30〜100mmの短繊維と、(2)記載のポリエステル樹脂(B)からなる繊度1〜20dtex、繊維長30〜100mmの短繊維とを質量比10/90〜50/50の割合で混合して形成されたことを特徴とするポリエステル系不織布。
本発明の複合バインダー繊維は、環境負荷の大きな重金属を含んでいない重合触媒から重合されたポリエステル樹脂を使用しているため、製造工程並びに廃棄工程においても環境負荷が少ないものとなる。
また、本発明の複合バインダー繊維は、特定組成の低融点ポリエステル樹脂と高融点ポリエステル樹脂とから形成されているため、低コストで、熱延伸法により操業性良く製造することができ、かつ、熱接着性と耐熱性とにおいて好適なバランスを有している。
本発明のポリエステル系不織布は、乾式並びに湿式のいずれの方式によっても製造することができ、かつ、接着強度の低下や型崩れが少なく、柔らかな風合いを有したものとなる。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の低融点ポリエステル樹脂としては、ポリエステルを形成する酸成分として、テレフタル酸を主体成分とするものである。また、当該ポリエステル樹脂のジオール成分としては、エチレングリコールと1,4−ブタンジオール(いずれもエステル形成性誘導体を含む)を主体成分とし、かつモル比において80/20〜30/70とする必要があり、好ましくは70/30〜40/60である。
本発明の低融点ポリエステル樹脂としては、ポリエステルを形成する酸成分として、テレフタル酸を主体成分とするものである。また、当該ポリエステル樹脂のジオール成分としては、エチレングリコールと1,4−ブタンジオール(いずれもエステル形成性誘導体を含む)を主体成分とし、かつモル比において80/20〜30/70とする必要があり、好ましくは70/30〜40/60である。
ここで、上記モル比において1,4−ブタンジオールの割合が20未満の場合、得られるポリエステルの結晶性が悪くなり、逆に当該割合が80を超える場合、重縮合反応中にテトラヒドロフランが多量に生成して、ポリエステルの熱安定性が悪くなり、紡糸時に糸切れが多発するなど操業性が悪くなる。
なお、本発明の低融点ポリエステル樹脂には、その特性が大きく変化しない範囲で、他の成分、例えば、イソフタル酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ペンタエリスリトール、4−ヒドロキシ安息香酸、アジピン酸、ナフタレンジカルボン酸、ビスフェノールA、ビスフェノールS等及びこれらのエステル形成性誘導体を共重合成分として併用してもよい。
本発明における低融点ポリエステル樹脂の結晶融点としては、100〜190℃であることが必要であり、好ましくは110〜180℃である。
当該結晶融点が100℃未満である場合、この樹脂を用いてバインダー繊維としたとき、熱接着させた繊維製品を高温雰囲気下で使用すると接着強度が低下したり、型崩れを起こしたりするなど不都合が発生する。逆に、結晶融点が190℃を超える場合、熱接着温度を主体繊維の融点に近い高温にしなければならなくなるため、主体繊維の物性や繊維構造物の形状を損なうこととなってしまう。
当該結晶融点が100℃未満である場合、この樹脂を用いてバインダー繊維としたとき、熱接着させた繊維製品を高温雰囲気下で使用すると接着強度が低下したり、型崩れを起こしたりするなど不都合が発生する。逆に、結晶融点が190℃を超える場合、熱接着温度を主体繊維の融点に近い高温にしなければならなくなるため、主体繊維の物性や繊維構造物の形状を損なうこととなってしまう。
本発明の低融点ポリエステル樹脂としては、重縮合触媒として、チタン酸からなる被覆層が形成されたマグネシウム化合物を、ポリエステルに対して30〜250ppm含有していることが必要であり、好ましくは40〜240ppmである。なお、本発明において、ppmはすべて質量ppmである。チタン酸からなる被覆層が形成されたマグネシウム化合物が、生成するポリエステル中に対して30ppm未満である場合、重合活性が不足し、得られるポリエステルの極限粘度は低いものとなる。逆に当該含有量が250ppmを超える場合、得られるポリエステル樹脂の色調が悪化したり、触媒が凝集して粗大粒子となり、紡糸時のノズルパックの異常昇圧や糸切れの原因になる。
本発明におけるマグネシウム化合物としては、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、酢酸マグネシウム、マグネシウムアセチルアセトネート、酢酸以外のカルボン酸塩などが挙げられ、特に水酸化マグネシウムが好ましい。
本発明のポリエステルの製造において、重縮合触媒として用いるチタン酸からなる被覆層が形成されたマグネシウム化合物の形状としては、粉末状態であってもよいし、エチレングリコールなどの溶媒からなるスラリー状態であってもよい。また、添加する時期としては、特に限定はされないが、重縮合反応時に添加することが好ましい。
上記スラリーに用いる分散媒としては、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,2−ブチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、2,3−ブチレングリコール、1,4−ブタンジオールなどが挙げられ、これらの中でも特にエチレングリコールが好ましい。
本発明の熱接着性複合バインダー繊維としては、前述の低融点ポリエステル樹脂(A)(以下、本発明の低融点ポリエステル樹脂を低融点ポリエステル樹脂(A)と記載することもある。)とポリエステル樹脂(B)とからなる複合繊維であって、低融点ポリエステル樹脂(A)が繊維表面の少なくとも一部を占めるものである。
ここで、本発明におけるポリエステル樹脂(B)としては、ポリエチレンテレフタレートまたはこれを主体としたポリエステルであって、チタン酸からなる被覆層が形成されたマグネシウム化合物を、ポリエステルに対して30〜250ppm含有している結晶融点が220℃以上ポリエステル樹脂である。
ここで、本発明におけるポリエステル樹脂(B)としては、ポリエチレンテレフタレートまたはこれを主体としたポリエステルであって、チタン酸からなる被覆層が形成されたマグネシウム化合物を、ポリエステルに対して30〜250ppm含有している結晶融点が220℃以上ポリエステル樹脂である。
本発明の熱接着性複合バインダー繊維における低融点ポリエステル樹脂(A)とポリエステル樹脂(B)との複合比としては、質量比で30/70〜70/30であり、好ましくは40/60〜60/40である。低融点ポリエステルの割合が、30質量%未満である場合、得られるバインダー繊維の接着強度が不十分であり、逆に70質量%を超えると、複合繊維化が困難になる。
また、本発明の熱接着性複合バインダー繊維における複合の形態としては、低融点ポリエステル樹脂(A)が繊維表面の少なくとも一部を占めるものであればよく、例えば、同心または偏心芯鞘型、サイドバイサイド型、海島型あるいは紡糸パック内に静止混合素子を挿入して紡糸した高融点ポリマーが層状もしくは筋状に分散した複合繊維等とすることができる。因みに、同心芯鞘型とすると製糸性がよく、偏心型やサイドバイサイド型とすると潜在捲縮性となるので、用途に応じて適当な複合形態を選択するのがよい。
本発明の複合バインダー繊維からなる短繊維は、ポリエチレンテレフタレート短繊維を主体繊維とするポリエステル系不織布の製造に好ましく用いることができる。ここで、本発明のポリエステル系不織布としては、乾式不織布であっても湿式不織布であってもよい。
本発明のポリエステル系不織布としては、本発明の熱接着性複合バインダー繊維からなる繊度1〜20dtex(好ましくは5〜15dtex)、繊維長30〜100mm(好ましくは40〜90mm)の短繊維、主体繊維としてポリエステル樹脂(B)からなる繊度1〜20dtex(好ましくは5〜15dtex)、繊維長30〜100mm(好ましくは40〜90mm)の短繊維から構成され、質量比10/90〜50/50の割合(好ましくは20/80〜45/65の割合)で混合されていることが必要である。
ここで、各繊維の繊度が1dtex未満である場合、単糸が細すぎるため、紡糸時に単糸同士が密着したり、糸切れが多発したりなどして操業性が悪い。逆に、当該繊度が20dtexを超えると、主体繊維(ここでは、ポリエステル樹脂(B))と混綿した後、熱接着させるときの繊維同士の接触点が少なくなるため、不織布の強力が不足したり、固綿の形態が崩れたりする。
また、各短繊維の繊維長が30mm未満である場合、カードをかける時、カードから短繊維が落綿する。逆に当該繊維長が100mmを超える場合、カードに短繊維が絡み付くため、均一なウェブが得られない。
さらに、複合バインダー繊維の混合割合において、低融点ポリエステル樹脂(A)の割合が10質量%未満である場合、主体繊維を十分に接着することができない。逆に混合割合が50質量%を超える場合、不織布や固綿の風合いが硬くなる。
本発明の低融点ポリエステル樹脂(A)は、例えば次のような方法により製造することができる。
まず、温度230〜250℃で窒素ガス制圧下、ビス−(β−ヒドロキシエチル)テレフタレートまたはその低重合体(以下、PETオリゴマーと略する。) の存在するエステル化反応槽に、エチレングリコール(以下、EGと略する。)とテレフタル酸(以下、TPAと略する。) とからなり、両者のモル比が1.1〜2.0のスラリーを連続的に添加し、滞留時間7〜8時間で平均重合度10以下のエステル化反応物を連続的に得る。次に、このエステル化反応物を重縮合反応缶に移し、1,4−ブタンジオールをEGとのモル比が80/20〜30/70となる量を加え、重縮合触媒としてチタン酸からなる被覆層が形成されたマグネシウム化合物を添加した後、重縮合反応缶の温度を180〜250℃に昇温し、0.01〜13.3hPaの減圧下にて、所定の極限粘度となるまで重縮合反応を行う。
まず、温度230〜250℃で窒素ガス制圧下、ビス−(β−ヒドロキシエチル)テレフタレートまたはその低重合体(以下、PETオリゴマーと略する。) の存在するエステル化反応槽に、エチレングリコール(以下、EGと略する。)とテレフタル酸(以下、TPAと略する。) とからなり、両者のモル比が1.1〜2.0のスラリーを連続的に添加し、滞留時間7〜8時間で平均重合度10以下のエステル化反応物を連続的に得る。次に、このエステル化反応物を重縮合反応缶に移し、1,4−ブタンジオールをEGとのモル比が80/20〜30/70となる量を加え、重縮合触媒としてチタン酸からなる被覆層が形成されたマグネシウム化合物を添加した後、重縮合反応缶の温度を180〜250℃に昇温し、0.01〜13.3hPaの減圧下にて、所定の極限粘度となるまで重縮合反応を行う。
さらに、本発明の効果を阻害しない範囲であれば、ヒンダードフェノール系化合物のような抗酸化剤、蛍光剤、染料のような色調改良剤、耐光剤等の添加物がポリエステルに含有されてもよい。
本発明の熱接着性複合バインダー繊維及びその短繊維の製造方法について、説明する。
先に述べたようにして得られた低融点ポリエステル樹脂とポリエステル樹脂(B)とを用いて、通常の溶融紡糸機に供給し、紡糸速度700〜1000m/分で複合紡糸して未延伸糸を得る。これをトウ状に集束し、60〜80℃の加熱ローラを使用し、3〜5倍に延伸し、130〜150℃の熱板上を通過させ、さらにクリンパーに導入して捲縮をかけた後、カッターで切断して短繊維とする。この際、カッターに入る前のスライバーの温度を80℃以下にするのが好ましく、クリンパー上でのスチームブローはカッター内部での繊維の融着状態を見て実施する必要がある。
先に述べたようにして得られた低融点ポリエステル樹脂とポリエステル樹脂(B)とを用いて、通常の溶融紡糸機に供給し、紡糸速度700〜1000m/分で複合紡糸して未延伸糸を得る。これをトウ状に集束し、60〜80℃の加熱ローラを使用し、3〜5倍に延伸し、130〜150℃の熱板上を通過させ、さらにクリンパーに導入して捲縮をかけた後、カッターで切断して短繊維とする。この際、カッターに入る前のスライバーの温度を80℃以下にするのが好ましく、クリンパー上でのスチームブローはカッター内部での繊維の融着状態を見て実施する必要がある。
次に、本発明のポリエステル系不織布の製造方法としては、以下のような方法をとることができる。例えば、湿式不織布とする場合、本発明の熱接着性複合バインダー繊維からなる所定寸法の短繊維と本発明における主体繊維であるポリエステル樹脂(B)からなる所定寸法の短繊維とを、所定の割合で混綿し、パルプ離解機で撹拌混合した後、分散油剤を添加して抄紙機で目付を目標とする製品に合わせて30〜120g/m2に調節し抄紙して湿式不織布ウェブを得る。その後、低融点ポリエステル樹脂(A)の融点以上の温度の熱風を1〜20分当てればよい。熱風温度は、低融点ポリエステル樹脂(A)の融点以上、好ましくは融点+(5〜10)℃とする。
また、乾式不織布として製造方法する場合、例えば、本発明の熱接着性複合バインダー繊維からなる所定寸法の短繊維と本発明における主体繊維であるポリエステル樹脂(B)からなる所定寸法の短繊維とを、所定の割合で混綿し、カードをかけた後、目付を目標とする製品に合わせて30〜120g/m2に調節した後、低融点ポリエステル樹脂(A)の融点以上の温度の熱風を1〜2分当てればよい。熱風温度は、低融点ポリエステル樹脂(A)の融点以上、好ましくは融点+(5〜10)℃とする。
次に、実施例をあげて本発明を具体的に説明するが、これに限定されるものではない。なお、本発明において使用される各特性値は、以下方法により測定もしくは評価した。
(1)極限粘度[η]
フェノールと四塩化エタンとの等質量混合物を溶媒として、温度20℃下で通常の手法で測定した。
(2)融点(Tm)
示差走査熱量計(パーキンエルマー社製DSC−7型)を用い、昇温速度20℃/分で測定した。
(3)熱安定性
低融点ポリエステル樹脂(A)を単独で溶融紡糸し、紡糸前の当該樹脂の[η]と紡糸後の繊維の[η]との差により、評価した。
○:[η]の差が0.07以内の場合
×:[η]の差が0.07より大きい場合
(4)不織布強力
不織布を巾25mm、長さ100mmの試料となし、オリエンティック社製定速伸長型引張試験機UTM−4−100型を用い、引張速度100mm/分で測定した。
加熱下の強力は、試料設置部を所定の雰囲気温度の炉中に90秒間放置した後、測定した。
(1)極限粘度[η]
フェノールと四塩化エタンとの等質量混合物を溶媒として、温度20℃下で通常の手法で測定した。
(2)融点(Tm)
示差走査熱量計(パーキンエルマー社製DSC−7型)を用い、昇温速度20℃/分で測定した。
(3)熱安定性
低融点ポリエステル樹脂(A)を単独で溶融紡糸し、紡糸前の当該樹脂の[η]と紡糸後の繊維の[η]との差により、評価した。
○:[η]の差が0.07以内の場合
×:[η]の差が0.07より大きい場合
(4)不織布強力
不織布を巾25mm、長さ100mmの試料となし、オリエンティック社製定速伸長型引張試験機UTM−4−100型を用い、引張速度100mm/分で測定した。
加熱下の強力は、試料設置部を所定の雰囲気温度の炉中に90秒間放置した後、測定した。
(製造例1)
ビス−(β-ヒドロキシエチル)テレフタレートおよびその低重合体の存在するエステル化反応缶に、テレフタル酸とエチレングリコールとのモル比1/1.6のスラリーを連続的に供給し、温度250℃、圧力0.2MPaの条件で反応させ、滞留時間を8時間として、エステル化反応率95%のPETオリゴマーを連続的に得た。
ビス−(β-ヒドロキシエチル)テレフタレートおよびその低重合体の存在するエステル化反応缶に、テレフタル酸とエチレングリコールとのモル比1/1.6のスラリーを連続的に供給し、温度250℃、圧力0.2MPaの条件で反応させ、滞留時間を8時間として、エステル化反応率95%のPETオリゴマーを連続的に得た。
このPETオリゴマー52.1kgに、重縮合触媒として、チタン酸からなる被膜層が形成された水酸化マグネシウム(堺化学社製のTiコートMGZ)をポリエステルに対して120ppmを加え、徐々に減圧して、最終的に圧力0.9hPa、温度280℃で、3.5時間重縮合反応を行い、常法により払い出して[η]が0.57のポリエステル樹脂(B)を得た。
(製造例2)
製造例1で得られたポリエステル樹脂(B)を孔径0.3mm、孔数720の紡糸口金を用いて、紡糸温度270℃、紡糸速度900m/分、吐出量360g/分の紡糸条件で溶融紡糸し、その後、引き揃えて12万dtexの未延伸トウを得た。
次いで、このトウを加熱ローラ温度65℃で、3.3倍に第一延伸した後、加熱ローラ温度60℃で、1.1倍に第二延伸した。その後、ヒートドラムにより温度190℃で熱セットを施し、機械捲縮を付与した後、繊度2.0dtex、長さ51mmのポリエステル樹脂(B)からなる短繊維を得た。
製造例1で得られたポリエステル樹脂(B)を孔径0.3mm、孔数720の紡糸口金を用いて、紡糸温度270℃、紡糸速度900m/分、吐出量360g/分の紡糸条件で溶融紡糸し、その後、引き揃えて12万dtexの未延伸トウを得た。
次いで、このトウを加熱ローラ温度65℃で、3.3倍に第一延伸した後、加熱ローラ温度60℃で、1.1倍に第二延伸した。その後、ヒートドラムにより温度190℃で熱セットを施し、機械捲縮を付与した後、繊度2.0dtex、長さ51mmのポリエステル樹脂(B)からなる短繊維を得た。
(実施例1)
ビス−(β-ヒドロキシエチル)テレフタレートおよびその低重合体の存在するエステル化反応缶に、テレフタル酸とエチレングリコールとのモル比1/1.6のスラリーを連続的に供給し、温度250℃、圧力0.2MPaの条件で反応させ、滞留時間を8時間として、エステル化反応率95%のポリエステルオリゴマーを連続的に得た。
このポリエステルオリゴマー60.3kgを重縮合缶に仕込み、エチレングリコールと1,4−ブタンジオールモル比が55/45となる量(16.2kg)を添加し、重縮合触媒として、チタン酸からなる被膜層が形成された水酸化マグネシウム(堺化学社製のTiコートMGZ)をポリエステルに対して120ppmを加え、徐々に減圧して、最終的に圧力0.9hPa、温度280℃で、4時間重縮合反応を行い、[η]=0.67、Tm=181℃の低融点ポリエステル樹脂(A)を得た。
ビス−(β-ヒドロキシエチル)テレフタレートおよびその低重合体の存在するエステル化反応缶に、テレフタル酸とエチレングリコールとのモル比1/1.6のスラリーを連続的に供給し、温度250℃、圧力0.2MPaの条件で反応させ、滞留時間を8時間として、エステル化反応率95%のポリエステルオリゴマーを連続的に得た。
このポリエステルオリゴマー60.3kgを重縮合缶に仕込み、エチレングリコールと1,4−ブタンジオールモル比が55/45となる量(16.2kg)を添加し、重縮合触媒として、チタン酸からなる被膜層が形成された水酸化マグネシウム(堺化学社製のTiコートMGZ)をポリエステルに対して120ppmを加え、徐々に減圧して、最終的に圧力0.9hPa、温度280℃で、4時間重縮合反応を行い、[η]=0.67、Tm=181℃の低融点ポリエステル樹脂(A)を得た。
この低融点ポリエステル樹脂(A)と製造例1で得られたポリエステル樹脂(B)とを同心芯鞘型複合溶融紡糸装置に供給し、吐出孔数225の紡糸口金を用いて、紡糸温度270℃、紡糸速度700m/分、吐出量227g/分、複合比50/50の紡糸条件で溶融紡糸し、その後、引き揃えて10万dtexの未延伸トウを得た。
次いで、このトウを延伸温度62℃、延伸倍率3.2倍で延伸し、押し込み式クリンパーで捲縮を付与した後に長さ51mmに切断して、繊度4dtexの複合バインダー繊維を得た。
この複合バインダー繊維30質量%と製造例2で得られた短繊維70質量%とを混綿し、カードに通して50g/m2の目付のウェブとし、170℃の回転乾燥機で2分間熱処理して、本発明の不織布(乾式)を得た。
この複合バインダー繊維30質量%と製造例2で得られた短繊維70質量%とを混綿し、カードに通して50g/m2の目付のウェブとし、170℃の回転乾燥機で2分間熱処理して、本発明の不織布(乾式)を得た。
(実施例2〜3および比較例1〜6)
1,4−ブタンジオールの添加量、バインダー繊維の混合比および重合触媒の添加量を表1に示す値に変更した以外は実施例1と同様にして、低融点ポリエステル樹脂、バインダー繊維及び不織布(乾式)を得た。
得られた低融点ポリエステル樹脂並びに不織布(乾式)の評価結果を表1に示す。
1,4−ブタンジオールの添加量、バインダー繊維の混合比および重合触媒の添加量を表1に示す値に変更した以外は実施例1と同様にして、低融点ポリエステル樹脂、バインダー繊維及び不織布(乾式)を得た。
得られた低融点ポリエステル樹脂並びに不織布(乾式)の評価結果を表1に示す。
実施例1〜3では、表1に示したように、本発明の低融点ポリエステル樹脂は[η]や融点が良好であり、それからなる複合バインダー繊維およびこれからなる不織布について、製造工程並びに得られたものの物性等に問題はなかった。
これに対して、比較例1では、低融点ポリエステル樹脂(A)における1,4−ブタンジオールの共重合量が少なすぎて、結晶性が悪く、不織布の耐熱性が不足していた。比較例2では、低融点ポリエステル樹脂(A)の1,4−ブタンジオールの共重合量が多すぎて、熱安定性が悪く、紡糸時に粘度低下のために糸切れが多発し、操業性が悪かった。比較例3では、複合バインダー繊維の混合比が少なすぎて、不織布の接着強力が不十分であった。
比較例4では、複合バインダー繊維の混合比が多すぎて、不織布の風合いが硬く、ペーパーライクなものであった。比較例5では、重合触媒の添加量が少なかったため、ポリエステルの重合性が極めて悪く、所定の極限粘度まで到達しなかった。比較例6では、重合触媒の添加量が多かったため、ポリエステルの色調が極めて悪く、かつ、重合触媒に起因すると見られる粗大粒子のため、紡糸時に糸切れが多発して、短繊維を得ることが出来なかった。
Claims (3)
- テレフタル酸を主たる酸成分、モル比80/20〜30/70のエチレングリコールと1,4−ブタンジオールを主たるジオール成分とするポリエステル樹脂であって、重合触媒としてチタン酸からなる被覆層が形成されたマグネシウム化合物を30〜250ppm添加し、結晶融点が100〜190℃であることを特徴とする低融点ポリエステル樹脂。
- 請求項1記載の低融点ポリエステル樹脂(A)と、ポリエチレンテレフタレートまたはこれを主体としチタン酸からなる被覆層が形成されたマグネシウム化合物を30〜250ppm含有している結晶融点が220℃以上のポリエステル樹脂(B)とを、質量比30/70〜70/30で含有してなり、低融点ポリエステル樹脂(A)が繊維表面の少なくとも一部を占めていることを特徴とする熱接着性複合バインダー繊維。
- 請求項2記載の熱接着性複合バインダー繊維からなる繊度1〜20dtex、繊維長30〜100mmの短繊維と、請求項2記載のポリエステル樹脂(B)からなる繊度1〜20dtex、繊維長30〜100mmの短繊維とを質量比10/90〜50/50の割合で混合して形成されたことを特徴とするポリエステル系不織布。
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