JP5689626B2 - 湿式短繊維不織布 - Google Patents
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Description
条件(1):ポリエステルからなる短繊維であって、短繊維を構成する単繊維は、繊維の長手方向に対して垂直に切断した断面が扁平断面形状を呈しており、長辺と短辺の長さの比であるアスペクト比(長辺/短辺)が1.5〜6.0、繊維長が2〜20mm、単糸繊度が0.8〜4.0dtexであり、機械捲縮が付与されていないノークリンプの短繊維である。
条件(2):エチレンテレフタレートを主たる繰り返し単位とするポリエチレンテレフタレートで構成される短繊維であって、平均複屈折率が0.03以下、伸度200%以上、繊維長が1〜20mm、単糸繊度が0.8〜3.5dtexであり、機械捲縮が付与されていないノークリンプの短繊維である。
そして、本発明の湿式短繊維不織布を構成する主体繊維は、繊維を構成する単繊維の断面が扁平形状であって、その扁平形状はアスペクト比が特定の範囲となるものであるため、繊維同士が積層される際には長辺方向が水平となるように載置され、かつ単糸繊度が小さいものであるため、厚みが薄く、通気度が低く、気密性の高い短繊維不織布となるものである。
このような優れた特性を有する本発明の湿式短繊維不織布は、性能の高いフィルターやセパレーター用途に使用することが可能となる。
本発明の湿式短繊維不織布を構成する主体繊維について説明する。主体繊維となる短繊維はポリエステルからなるものである。
ポリエステルとしては、芳香族ポリエステル、脂肪族ポリエステルのいずれであってもよい。芳香族ポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレートなどのポリアルキレンテレフタレートを主体としたポリエステルであって、イソフタル酸、5−スルホイソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸、アジピン酸、コハク酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカン二酸などの脂肪族ジカルボン酸、およびエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノールなどの脂肪族ジオールや、グリコール酸、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシ吉草酸、ヒドロキシカプロン酸、ヒドロキシペンタン酸、ヒドロキシヘプタン酸、ヒドロキシオクタン酸などのヒドロキシカルボン酸、ε−カプロラクトンなどの脂肪族ラクトン等を共重合していてもよい。
本発明におけるバインダー繊維は、エチレンテレフタレートを主たる繰り返し単位とするポリエチレンテレフタレートで構成されるものであり、単一成分型の繊維であることが好ましい。ポリエチレンテレフタレートとしては、中でも主たる繰り返し単位の85モル%以上、さらには95モル%以上がエチレンテレフタレートからなるものであることが好ましい。したがって、テレフタル酸成分やエチレングリコール成分以外の成分を少量共重合したものであってもよい。
例えば、得られた湿式短繊維不織布にカレンダーロールにより熱圧着加工を施したり、不織布の表面を樹脂でコーティングした後、乾燥熱処理を施すことも可能となる。
また、伸度は、JIS L1015 8.7引張強さ及び伸び率の方法により測定するものである。なお、繊維が短くて測定できない場合は、カット前の繊維において測定を行うものである。伸度の測定は繊維の数30本で行うものであり(n数=30)、これらの平均値を算出するものである。
まず、短繊維不織布を構成する主体繊維は、紡糸時の紡糸孔の形状を工夫し、紡糸速度や延伸倍率、延伸速度等を調整することにより、特定のアスペクト比の扁平断面形状を有するものとすることができる。主体繊維は、通常の溶融紡糸装置を用い、ポリマーを溶融して扁平断面形状の紡糸孔を有する紡糸口金より紡糸し、紡出した糸条を冷却固化させて未延伸糸を得、得られた未延伸糸を繊維束に集束した後、延伸倍率2〜4倍で延伸し、分散性油剤を付与した後に任意の繊維長に切断して短繊維とすることにより得ることができる。
バインダー繊維は、通常の溶融紡糸装置を用いて溶融紡糸を行い、得られる繊維の平均複屈折率や伸度が上記範囲を満足するように、紡糸速度、冷却温度を調整して溶融紡糸を行う。そして、紡糸口金より紡出された糸条を延伸することなく、又は、延伸倍率1.1倍未満の延伸倍率で延伸を施し、主体繊維と同様にして集束、延伸し、分散性油剤を付与した後に任意の繊維長に切断して短繊維とすることにより得ることができる。
次に、主体繊維とバインダー繊維を任意の割合で計量し、パルプ離解機に投入、撹拌(解繊・混綿)し、その後、得られた試料を抄紙機にて抄紙することにより、ウエブを作成し、ウエブに熱処理を施して、湿式短繊維不織布を得ることができる。
〔アスペクト比、平均複屈折率、伸度〕
前記の方法で測定し、算出した。
〔単糸繊度〕
切断前の繊維束を用いて、JIS L 1015 正量繊度のA法により測定した。
〔繊維長〕
主体繊維、バインダー繊維のサイドビュー写真を撮影し、任意の30本の長さを測定し後、その平均値を撮影倍率で割り返して算出した。
〔不織布の厚み〕
得られた湿式短繊維不織布を、JIS L 1096 織物の厚さにより加圧時間10秒、加重23.5kPaの条件で測定した。
〔不織布の通気度〕
得られた湿式短繊維不織布を、JIS L 1096 通気性のA法により測定した。
〔不織布の機械的特性〕
得られた湿式短繊維不織布を、JIS L 1096 引張強さ及び伸び率のA法によりMD方向(乾燥機のMD方向)の強力を測定した。
〔不織布の耐熱性〕
得られた湿式短繊維不織布を、表面が平らに処理された2本のプレーンロールからなるカレンダー装置を用い、温度225℃、線圧80Kg/cm、速度5m/minの条件で熱圧着加工を行った。この時の熱圧着加工性とロール表面の汚れの程度で下記の3段階で評価した。
○ 加工性に問題なし、汚れなし
△ 加工性に問題なし、汚れやや有り
× 加工性に問題あり、汚れ有り
〔主体繊維〕
融点が256℃、極限粘度(フェノールと四塩化エタンとの等質量混合物を溶媒として、試料濃度0.5質量%、温度20℃の条件下で常法に基づき測定した)0.61のPETを、通常の紡糸装置を用い、紡糸温度285℃、吐出量265g/分、紡糸速度750m/分の条件で紡糸し、未延伸糸を得た。このとき、紡糸口金として、扁平断面(アスペクト比12)の吐出孔が602個穿孔されたものを用いた。得られた未延伸糸を13.3ktexの繊維束に集束した後、延伸倍率3.45倍、延伸温度65℃で延伸を行った。その後、ポリエーテルとポリエーテルエステルアミドを主成分とする分散油剤を付着量が0.2質量%となるように付与した後、カットして単糸繊度1.7dtex、繊維長5mm、アスペクト比3.5の短繊維を得た。
〔バインダー繊維〕
融点が256℃、極限粘度0.61のPETを、通常の紡糸装置を用い、紡糸温度290℃、吐出量183g/分、紡糸速度1200m/分の条件で紡糸し、未延伸糸を得た。このとき、紡糸口金として、丸断面の吐出孔が1040個穿孔されたものを用いた。得られた未延伸糸を12.4ktexの繊維束に集束した後、延伸倍率1.05倍で延伸(延伸時の熱処理なし)を行った。その後、ポリエーテルとポリエーテルエステルアミドを主成分とする分散油剤を付着量が0.2質量%となるように付与した後、カットして単糸繊度1.4dtex、繊維長5mmの短繊維を得た。この短繊維の平均複屈折率は、0.021、伸度224%であった。
〔短繊維不織布〕
得られた主体繊維とバインダー繊維とを用い、混合比率を質量比70/30(主体繊維/バインダー繊維)として、パルプ離解機(熊谷理機工業製)に投入し、3000rpmにて1分間撹拌した。その後、得られた試料を抄紙機(熊谷理機工業製角型シ−トマシン)にて、ポリエーテルとポリエーテルエステルアミドを主成分とする分散油剤を添加した後、付帯の攪拌羽にて攪拌を行い抄紙し、湿式ウエブとした。そして、湿式ウエブを回転式乾燥機(熊谷理機工業製)にて140℃の温度で熱処理し、バインダー繊維を溶融させて、目付け50g/m2の湿式短繊維不織布を得た。
主体繊維として表1に示すようなアスペクト比の短繊維を用いた以外は、実施例1と同様にして湿式短繊維不織布を得た。
主体繊維とバインダー繊維の混合比率を表1に示す質量比とした以外は、実施例1と同様にして湿式短繊維不織布を得た。
主体繊維として表1に示すようなアスペクト比、単糸繊度のものを用いた以外は、実施例1と同様にして湿式短繊維不織布を得た。
バインダー繊維を製造する際の紡糸温度を285℃、吐出量を340g/分、得られた未延伸糸を13.6ktexの繊維束に集束した以外は、実施例1のバインダー繊維と同様にして得た、単糸繊度2.6dtex、繊維長5mmの短繊維(平均複屈折率0.013、伸度260%)を用いた。これ以外は実施例1と同様にして湿式短繊維不織布を得た。
バインダー繊維を製造する際の紡糸温度を295℃、吐出量を201g/分、丸断面の吐出孔が1450個穿孔されたものを用い、得られた未延伸糸を13.0ktexの繊維束に集束した以外は、実施例1のバインダー繊維と同様にして得た、単糸繊度1.1dtex、繊維長5mmの短繊維(平均複屈折率0.028、伸度205%)を用いた。これ以外は実施例1と同様にして湿式短繊維不織布を得た。
バインダー繊維を製造する際の紡糸温度を285℃、吐出量を523g/分、得られた未延伸糸を13.3ktexの繊維束に集束した以外は、実施例1のバインダー繊維と同様にして得た、単糸繊度4.0dtex、繊維長5mmの短繊維(平均複屈折率0.012、伸度315%)を用いた。これ以外は実施例1と同様にして湿式短繊維不織布を得た。
主体繊維として表1に示すような繊維長のものを用いた以外は、実施例1と同様にして湿式短繊維不織布を得た。
バインダー繊維として表1に示すような繊維長のものを用いた以外は、実施例1と同様にして湿式短繊維不織布を得た。
実施例1のバインダー繊維と同様の未延伸糸を用い、延伸倍率を表1に示す値に変更した以外は実施例1と同様にして繊度、平均複屈折率、伸度の異なるバインダー繊維を得た。このバインダー繊維を用いた以外は実施例1と同様にして湿式不織布を得た。
バインダー繊維として、ユニチカ社製のメルティ〈3300〉(酸成分として、テレフタール酸67mol%、イソフタル酸33mol%、グリコール成分として、エチレングリコール100mol%からなる共重合ポリエステルの丸断面単一型繊維であって、単糸繊度2.2dtex、繊維長5mmの短繊維)を用いた以外は、実施例1と同様にして湿式短繊維不織布を得た。
また、バインダー繊維として特定範囲の平均複屈折率、伸度を満足するPETからなる短繊維を用いたため、ウエブを熱処理する際の温度が140℃でも十分に溶融、流動し、得られた湿式短繊維不織布は、機械的特性に優れるとともに、熱圧着加工を施すことも可能であり、耐熱性に優れたものであった。
一方、比較例1の湿式短繊維不織布は、アスペクト比の小さい主体繊維を用いたため、厚さの高いものとなり、通気度が大きく、機械的特性に劣った。比較例2の湿式短繊維不織布は、アスペクト比の大きい主体繊維を用いたため、紡糸時に切れ糸が多発して、主体繊維の品位が悪くなり不織布の地合いが悪くなった。このため得られた不織布は、厚さが高いものとなり、通気度が大きく、機械的特性に劣っていた。比較例3の湿式短繊維不織布は、繊度の大きい主体繊維を用いたため、厚さが高いものとなり、通気度が大きく、機械的特性に劣っていた。比較例4の湿式短繊維不織布は、繊度の大きいバインダー繊維を用いたため、厚さの高いものとなり、通気度が大きく、機械的特性に劣った。比較例5の湿式短繊維不織布は、繊維長の長い主体繊維を用いたため、比較例7の湿式短繊維不織布は、繊維長の長いバインダー繊維を用いたため、ともに不織布の地合が悪くなり、厚さの高いものとなり、通気度が大きく、機械的特性にも劣った。比較例6の湿式短繊維不織布は、主体繊維の繊維長が短かったため、比較例8の湿式短繊維不織布は、バインダー繊維の繊維長が短かったため、ともに切断時に繊維同士の融着が発生しており、このため不織布の地合が悪くなり、厚さの高いものとなり、通気度が大きく、機械的特性に劣った。比較例9の湿式短繊維不織布は、バインダー繊維として、平均複屈折率が高く、伸度の低い短繊維を用いたため、ウエブを熱処理する際の温度が140℃では接着成分とならず、不織布を得ることができなかった。比較例10の湿式短繊維不織布は、バインダー繊維として、PETで構成される短繊維を用いなかったため、熱圧着加工を施すと、不織布中の接着成分(バインダー繊維が溶融したもの)がロール上に溶け出し、熱圧着加工を施すことができなかった。また、ロール表面の汚れも非常に多かった。
Claims (1)
- 主体繊維として下記条件(1)を満足する短繊維を用い、バインダー繊維として下記条件(2)を満足する短繊維を用い、主体繊維とバインダー繊維とからなるウエブを作成した後、熱処理することにより得られたものであることを特徴とする湿式短繊維不織布。
条件(1):ポリエステルからなる短繊維であって、短繊維を構成する単繊維は、繊維の長手方向に対して垂直に切断した断面が扁平断面形状を呈しており、長辺と短辺の長さの比であるアスペクト比(長辺/短辺)が1.5〜6.0、繊維長が2〜20mm、単糸繊度が0.8〜4.0dtexであり、機械捲縮が付与されていないノークリンプの短繊維である。
条件(2):エチレンテレフタレートを主たる繰り返し単位とするポリエチレンテレフタレートで構成される短繊維であって、平均複屈折率が0.03以下、伸度200%以上、繊維長が1〜20mm、単糸繊度が0.8〜3.5dtexであり、機械捲縮が付与されていないノークリンプの短繊維である。
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