JP2011137267A - 湿式短繊維不織布 - Google Patents
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Abstract
【課題】コスト的に有利に製造することができる湿式短繊維不織布であり、性能の優れたフィルターやセパレーター用途に好適な、厚みが薄く、通気度の低い湿式短繊維不織布を提供する。
【解決手段】繊維長が2〜20mm、単糸繊度が0.8〜4.0dtex、機械捲縮が付与されていない熱可塑性樹脂からなる短繊維と接着成分とからなる短繊維不織布であって、短繊維不織布を構成する短繊維の70質量%以上が、繊維の長手方向に対して垂直に切断した単糸の断面が扁平断面形状を呈しており、長辺と短辺の長さの比であるアスペクト比(長辺/短辺)が1.8〜6.0である短繊維であり、接着成分は融点150〜215℃の共重合ポリエステル樹脂であり、かつ120℃雰囲気下での強度保持率が70%以上である湿式短繊維不織布。
【選択図】図1
【解決手段】繊維長が2〜20mm、単糸繊度が0.8〜4.0dtex、機械捲縮が付与されていない熱可塑性樹脂からなる短繊維と接着成分とからなる短繊維不織布であって、短繊維不織布を構成する短繊維の70質量%以上が、繊維の長手方向に対して垂直に切断した単糸の断面が扁平断面形状を呈しており、長辺と短辺の長さの比であるアスペクト比(長辺/短辺)が1.8〜6.0である短繊維であり、接着成分は融点150〜215℃の共重合ポリエステル樹脂であり、かつ120℃雰囲気下での強度保持率が70%以上である湿式短繊維不織布。
【選択図】図1
Description
本発明は、扁平断面形状の短繊維を含有し、厚みが薄く、通気度が低く、耐熱性にも優れ、高性能なフィルター用途に好適に使用することができる湿式短繊維不織布に関するものである。
近年、湿式短繊維不織布はフィルター用基材、電池セパレーターなどの用途に広く用いられている。このような用途において、性能の高いフィルターやセパレーターとするには、厚みが薄く、通気度の低い湿式短繊維不織布が求められている。
通気度の低い短繊維不織布を得るには、繊維間の隙間を少なくし、気密性を高くすることが必要である。特許文献1や特許文献2には単糸繊度が0.5dtex以下の細繊度の繊維を用いることにより、単繊維間の空隙を小さくし、気密性を高くした短繊維不織布を得る方法が提案されている。
0.5dtex以下の繊維を得るには、単一のポリマーで紡糸、延伸して直接繊維を得る方法と、複数のポリマーを用いた複合繊維で紡糸、延伸を行い、ある程度太い繊維を得た後に割繊することで0.5dtex以下の繊維を得る方法がある。割繊の方法としては、衝撃などで繊維を構成するポリマーを剥離分割して細繊度の繊維を得る機械的割繊と、有機溶媒などで繊維を構成するポリマーの1種を溶媒で溶解し、残った不溶の細繊度の繊維を得る化学的割繊がある。
細繊度の繊維を直接得る方法は、紡糸、延伸時に糸切れが発生しやすく、生産性が低下するのでコスト的に不利である。細繊度の繊維を機械的割繊で得る方法は、コスト的には不利ではないが、割繊後に得られた繊維は、相溶性に乏しい複数の繊維が混ざったものとなり、これらの繊維から得られる湿式短繊維不織布は性能の劣るものになりやすい。
細繊度の繊維を化学的割繊で得る方法は、紡糸、延伸で得られた繊維の一部を溶媒で溶解除去をするため、得られる細繊度の繊維の量が減り、コスト的に不利である。さらに、溶媒の再生、回収設備が必要となる点でもコスト的に不利であり、また、環境に悪影響を及ぼす危惧もある。
本発明は上記の問題点を解決するものであって、コスト的に有利に製造することができる湿式短繊維不織布であり、性能の優れたフィルターやセパレーター用途に好適な、厚みが薄く、通気度の低い湿式短繊維不織布を提供することを技術的な課題とするものである。
本発明者らは、上記の課題を解決するために検討した結果、本発明に到達した。
すなわち、本発明は、繊維長が2〜20mm、単糸繊度が0.8〜4.0dtex、機械捲縮が付与されていない熱可塑性樹脂からなる短繊維と接着成分とからなる短繊維不織布であって、短繊維不織布を構成する短繊維の70質量%以上が、繊維の長手方向に対して垂直に切断した単糸の断面が扁平断面形状を呈しており、長辺と短辺の長さの比であるアスペクト比(長辺/短辺)が1.8〜6.0である短繊維であり、接着成分は融点150〜215℃の共重合ポリエステル樹脂であり、かつ120℃雰囲気下での強度保持率が70%以上であることを特徴とする湿式短繊維不織布を要旨とするものである。
すなわち、本発明は、繊維長が2〜20mm、単糸繊度が0.8〜4.0dtex、機械捲縮が付与されていない熱可塑性樹脂からなる短繊維と接着成分とからなる短繊維不織布であって、短繊維不織布を構成する短繊維の70質量%以上が、繊維の長手方向に対して垂直に切断した単糸の断面が扁平断面形状を呈しており、長辺と短辺の長さの比であるアスペクト比(長辺/短辺)が1.8〜6.0である短繊維であり、接着成分は融点150〜215℃の共重合ポリエステル樹脂であり、かつ120℃雰囲気下での強度保持率が70%以上であることを特徴とする湿式短繊維不織布を要旨とするものである。
本発明の湿式短繊維不織布は、主体繊維として、繊維の長手方向に対して垂直に切断した単糸の断面が扁平断面形状を呈しており、長辺と短辺の長さの比であるアスペクト比(長辺/短辺)が1.8〜6.0、繊維長が2〜20mm、単糸繊度が0.8〜4.0dtexの短繊維を用いているため、繊維同士が積層される際には長辺方向が水平となるように載置され、厚みが薄く、通気度が低く、気密性の高い湿式短繊維不織布となるものである。さらに、接着成分として融点150〜215℃の共重合ポリエステル樹脂を用いているため、耐熱性にも優れている。このような優れた特性を有する本発明の湿式短繊維不織布は、性能の高いフィルターやセパレーター用途に使用することが可能となる。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の湿式短繊維不織布は、繊維長が2〜20mm、単糸繊度が0.8〜4.0dtex、機械捲縮が付与されていない熱可塑性樹脂からなる短繊維を主体繊維とする短繊維不織布である。
本発明の湿式短繊維不織布は、繊維長が2〜20mm、単糸繊度が0.8〜4.0dtex、機械捲縮が付与されていない熱可塑性樹脂からなる短繊維を主体繊維とする短繊維不織布である。
本発明の湿式短繊維不織布を構成する短繊維は、熱可塑性樹脂からなる繊維束を切断することにより得られたものであり、熱可塑性樹脂としては、ポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィン等を用いることができる。熱可塑性樹脂の融点は、接着成分を溶融させる際の熱処理温度を考慮して、接着成分の融点よりも40℃以上高いことが好ましく、中でも50℃以上高いことが好ましい。この温度未満であると、不織布を得る際の熱接着処理時に主体繊維の短繊維が劣化したり溶融し、機械的特性や品位に劣る短繊維不織布となりやすい。
ポリエステルとしては、芳香族ポリエステル、脂肪族ポリエステルのいずれであってもよい。芳香族ポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレートなどのポリアルキレンテレフタレートを主体としたポリエステルであって、イソフタル酸、5−スルホイソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸、アジピン酸、コハク酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカン二酸などの脂肪族ジカルボン酸、およびエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノールなどの脂肪族ジオールや、グリコール酸、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシ吉草酸、ヒドロキシカプロン酸、ヒドロキシペンタン酸、ヒドロキシヘプタン酸、ヒドロキシオクタン酸などのヒドロキシカルボン酸、ε−カプロラクトンなどの脂肪族ラクトン等を共重合していてもよい。
脂肪族ポリエステルとしては、ポリ乳酸、ポリ−3−ヒドロキシプロピオネート、ポリ−3−ヒドロキシブチレート、ポリ−3−ヒドロキシブチレートバリレート、及びこれらの混合物、変性物等を用いることができる。
中でも、ポリ乳酸を用いることが好ましく、ポリD−乳酸、ポリL−乳酸、ポリD−乳酸とポリL−乳酸との共重合体であるポリDL−乳酸、ポリD−乳酸とポリL−乳酸との混合物(ステレオコンプレックス)、ポリD−乳酸とヒドロキシカルボン酸との共重合体、ポリL−乳酸とヒドロキシカルボン酸との共重合体、ポリD−乳酸又はポリL−乳酸と脂肪族ジカルボン酸及び脂肪族ジオールとの共重合体、あるいはこれらの混合物を用いることができる。
ポリアミドとしては、ポリイミノ−1−オキソテトラメチレン(ナイロン4),ポリテトラメチレンアジパミド(ナイロン46)、ポリカプラミド(ナイロン6)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン66)、ポリウンデカナミド(ナイロン11)、ポリラウロラクタミド(ナイロン12)、ポリメタキシレンアジパミド、ポリパラキシリレンデカナミド、ポリビスシクロヘキシルメタンデカナミドを用いることができる。また、これらのポリアミド系重合体を構成しているモノマーを、2種以上共重合させたポリアミド系共重合体や混合物も用いることができる。
ポリオレフィンとしては、エチレン,プロピレン,ブテン−1,ペンテン−1,3−メチルブテン−1,ヘキセン−1,オクテン−1,ドデセン−1,オクタデセン−1等の炭素原子数2〜18の脂肪族α−モノオレフィンを単独で重合させたホモポリオレフィン重合体、又は2種以上を共重合させたポリオレフィン共重合体や混合物も用いることができる。
そして、本発明における主体繊維の短繊維は、繊維長が2〜20mm、単糸繊度が0.8〜4.0dtexであり、湿式短繊維不織布用のものであるため、機械捲縮が付与されていない(ノークリンプ)短繊維である。
繊維長は中でも3〜15mmであることが好ましい。繊維長が20mmを超えると、不織布を得る工程での繊維の分散が悪くなり、均斉度に劣った湿式短繊維不織布となる。一方、繊維長を2mm未満にしようとすると、繊維を切断する際の発熱で繊維同士の融着が生じたものとなる。
単糸繊度は0.8〜4.0dtexとするものであるが、中でも1.0〜3.5dtexであることが好ましい。単糸繊度が4.0dtexを超えると、得られる湿式短繊維不織布の厚みが大きくなり、また繊維間の隙間が大きくなることから通気性の高い短繊維不織布となる。一方、0.8dtex未満になると、紡糸時に切れ糸が発生しやすくなり、操業性が悪くなるとともに、繊維同士の融着が生じたり、強伸度特性に劣ったものとなる。
なお、通常、熱可塑性樹脂からなる繊維を切断することにより短繊維を得る際には、スタフィングボックス法や押込加熱ギア法等により機械捲縮を付与する場合があるが、本発明における主体繊維となる短繊維は、湿式短繊維不織布用のものであるため、機械捲縮を付与しないものとする。
そして、上記のような湿式短繊維不織布を構成する主体繊維となる短繊維うち、70質量%以上が扁平断面形状の短繊維であるものである。本発明における扁平断面形状の短繊維について説明する。
本発明における扁平断面形状の短繊維を構成する単繊維は、繊維の長手方向に対して垂直に切断した断面が扁平断面形状を呈しており、長辺と短辺の長さの比であるアスペクト比(長辺/短辺)が1.8〜6.0のものであり、中でも2.0〜5.5であることがより好ましい。本発明における扁平断面形状の短繊維の単繊維の断面形状の一実施態様を図1に示す。
本発明における扁平断面形状の短繊維を構成する単繊維は、繊維の長手方向に対して垂直に切断した断面が扁平断面形状を呈しており、長辺と短辺の長さの比であるアスペクト比(長辺/短辺)が1.8〜6.0のものであり、中でも2.0〜5.5であることがより好ましい。本発明における扁平断面形状の短繊維の単繊維の断面形状の一実施態様を図1に示す。
本発明における扁平断面形状の短繊維は、適度なアスペクト比を有する扁平断面形状のものであるため、湿式短繊維不織布を得る際の抄紙工程において、短繊維が積層される際に形状が安定する長辺方向が水平となるように載置される。このため、丸断面形状の繊維や四角や三角等の異形断面の繊維を用いた場合に比べて、単繊維間の空隙が小さくなるとともに、厚みが薄くなり、通気度が低く、気密性の高い短繊維不織布を得ることが可能となる。
アスペクト比が6.0を超えると、長辺の長い扁平度合いの強い糸になるため、紡糸時に切れ糸が発生しやすくなり、操業性が悪くなるとともに、強伸度等の特性や品位が低下する。一方、アスペクト比が1.8未満になると、円形断面に近い形状となり、得られる湿式短繊維不織布の厚みが大きいものとなる。また繊維間の空隙も大きくなることから、通気度の高い、気密性の低い短繊維不織布となる。
本発明におけるアスペクト比は以下のようにして測定し、算出するものである。短繊維より単糸を取り出し、単糸の長手方向に対して垂直に切断した断面をキーエンス社製のデジタルマイクロスコープ VHX−600で撮影し、撮影した断面写真より長辺と短辺の長さを測定し、長辺と短辺の比(長辺/短辺)であるアスペクト比を算出するものである。このとき、1種類の短繊維につき、ランダムに5本の単糸を採取し、それぞれの単糸毎に2枚の断面写真を撮る。計10枚の写真から、長辺と短辺の長さを測定し、それぞれアスペクト比を算出する。そして、n10の平均値とする。
そして、扁平断面形状の短繊維は、強度が3.0〜8.0cN/dtexであり、中でも4.0〜7.0cN/dtexであることが好ましい。強度が3.0cN/dtex未満であると、得られる不織布の機械的特性(強度)が劣るものになる。一方、強度が8.0cN/dtexを超えるものを得ようとすれば、高粘度のポリマーを用いる必要があるため、紡糸及び延伸工程の操業性が悪くなり、得られる短繊維の品位が劣るものとなり好ましくない。
また、伸度は25〜100%であり、中でも30〜60%であることが好ましい。伸度が25%未満であると、延伸工程での操業性が悪くなり、得られる短繊維の品位が劣るものとなり好ましくない。一方、伸度が100%を超えると、延伸での配向結晶が充分に進んでおらず、熱や圧力の関与で擬似密着が発生しやすくなり、単糸間の密着が生じ、得られる短繊維の品位が劣るものとなりやすい。
本発明の湿式短繊維不織布は、湿式短繊維不織布を構成する主体繊維の70質量%以上が上記した扁平断面形状の短繊維であるが、中でも80質量%以上、さらには85質量%以上であることが好ましい。扁平断面形状の短繊維の割合が70質量%未満であると、厚みが薄く、通気度が低く、気密性の高い湿式短繊維不織布とすることが困難となる。
本発明の湿式短繊維不織布を構成する主体繊維として、上記した扁平断面形状の短繊維以外の短繊維を30質量%未満であれば含有していてもよいが、扁平断面形状の短繊維と同様の繊維長、単糸繊度を有するものであることが好ましい。
そして、本発明の湿式短繊維不織布は、上記したような扁平断面形状の短繊維やそれ以外の短繊維を主体繊維とするものであるが、これらの主体繊維同士を接着させる接着成分は融点150〜215℃の共重合ポリエステル樹脂である。中でも本発明の湿式短繊維不織布は、主体繊維同士を接着させる手段として、接着成分となる共重合ポリエステル樹脂で構成されたバインダー繊維を作成し、主体繊維とともにウエブとした後、熱処理を施すことにより、バインダー繊維を溶融させて、主体繊維同士を接着させる方法を採用することが好ましい。
接着成分をこのようなバインダー繊維とする場合には、融点150〜215℃の共重合ポリエステル樹脂を少なくとも繊維表面に配したポリエステル短繊維とすることが好ましい。中でも融点160〜200℃の共重合ポリエステル樹脂を鞘成分とした芯鞘型の複合繊維や融点150〜215℃の共重合ポリエステル樹脂のみからなる単一型の繊維とすることが好ましい。
接着成分の共重合ポリエステル樹脂の融点は、中でも150〜200℃が好ましく、融点が160℃未満であると、湿式短繊維不織布の120℃雰囲気下での強度保持率が70%未満となり、耐熱性に乏しいものとなる。接着成分の共重合ポリエステル樹脂の融点が215℃を超えると、接着成分を溶融させる際の熱処理温度が高温となるため、主体繊維にダメージを与え、機械的特性に劣る湿式短繊維不織布となる。
なお、本発明において接着成分とする共重合ポリエステル樹脂は融点を有するものであり、結晶性を有するものである。
なお、本発明において接着成分とする共重合ポリエステル樹脂は融点を有するものであり、結晶性を有するものである。
また、バインダー繊維を芯鞘型の複合繊維とする場合は、鞘部のみを接着成分の共重合ポリエステル樹脂からなるものとし、芯部は熱接着処理時に溶融せずに主体繊維となるものとすることが好ましい。この場合、芯部の成分を扁平断面形状の短繊維を形成する熱可塑性樹脂と同等の融点を有するものとすることが好ましい。
さらに、バインダー繊維の単糸繊度は1.0〜3.0dtexであることが好ましい。さらには、1.0〜2.5dtexであることがより好ましい。単糸繊度が3.0dtexを超えると、扁平断面形状の短繊維とバインダー繊維とからなるウエブにおいて繊維間の空隙が大きくなり、厚みが大きいものとなりやすい。そして、バインダー繊維を溶融させた後に得られる短繊維不織布も繊維間の空隙が大きく、通気度が高く、厚みの大きいものとなりやすい。一方、1.0dtex未満のバインダー繊維であると、バインダー繊維を得る際に操業性が悪くなり、品質の劣った繊維となる場合が多く好ましくない。
また、繊維長も主体繊維の短繊維と同様に2〜20mmであるショートカット繊維であることが好ましく、さらには、3〜15mmであることがより好ましい。繊維長が20mmを超えると、短繊維不織布を得る際の繊維の分散が悪くなり、均斉度の低い短繊維不織布となりやすい。一方、繊維長が2mm未満になると、切断時の発熱で繊維同士の融着が生じている場合が多く、やはり短繊維不織布を得る際の繊維の分散が悪くなり、均斉度の低い短繊維不織布となりやすい。このようなバインダー繊維としては、ユニチカ社製耐熱性メルティ<7080>、<8080>などの芯鞘型複合バインダー繊維を用いることができる。
本発明の湿式短繊維不織布において、主体繊維(扁平断面形状の短繊維やそれ以外の短繊維)とバインダー繊維を用いる際の両繊維の混合比率は、質量比(主体繊維/バインダー繊維)で50/50〜90/10であることが好ましく、中でも、60/40〜80/20であることが好ましい。
本発明における主体繊維やバインダー繊維を構成する熱可塑性樹脂中には、本発明の効果を損なわない範囲で、リン酸エステル化合物やヒンダードフェノール化合物のような安定剤、コバルト化合物、蛍光増白剤、染料のような色調改良剤、二酸化チタンのような艶消し剤、可塑剤、顔料、制電剤、難燃剤、易染化剤などの各種添加剤を1種類または2種類以上添加してもよい。
そして、湿式短繊維不織布は上記のような主体繊維と接着成分とからなるものであるため、120℃雰囲気下での強度保持率が70%以上のものである。強度保持率は、中でも75%以上であることが好ましい。120℃雰囲気下での強度保持率が70%未満であると、耐熱性に乏しいものとなり、耐熱性が要求される用途に用いることが困難となる。
本発明における120℃雰囲気下での強度保持率は以下のようにして求めるものである。まず、常温強度として、湿式短繊維不織布を25℃雰囲気下において、JIS L 1096 引張強さ及び伸び率のA法によりMD方向(乾燥機のMD方向)の強力(N/5cm巾)を測定する。次に、高温強度として、湿式短繊維不織布を120℃雰囲気下において、常温強度と同様の方法で強力(N/5cm巾)を測定する。測定した常温強度と高温強度より下記式で強度保持率を算出する。
強度保持率(%)=〔(高温強度/常温強度)〕×100
本発明における120℃雰囲気下での強度保持率は以下のようにして求めるものである。まず、常温強度として、湿式短繊維不織布を25℃雰囲気下において、JIS L 1096 引張強さ及び伸び率のA法によりMD方向(乾燥機のMD方向)の強力(N/5cm巾)を測定する。次に、高温強度として、湿式短繊維不織布を120℃雰囲気下において、常温強度と同様の方法で強力(N/5cm巾)を測定する。測定した常温強度と高温強度より下記式で強度保持率を算出する。
強度保持率(%)=〔(高温強度/常温強度)〕×100
そして、本発明の湿式短繊維不織布を得る際には、従来から知られている各種加工法、例えばサーマルスルー法、エアレイド法、抄紙法、スパンレース法などを採用することができるが、分散性がよく、地合が良好な不織布が得られる点から、抄紙法が好ましい。
次に、本発明における扁平断面形状の短繊維の製造方法について一例を用いて説明する。上記したような特定のアスペクト比の扁平断面形状の短繊維とするには、紡糸時の紡糸孔の形状を工夫し、紡糸速度や延伸倍率、延伸速度等を調整することにより可能となる。熱可塑性樹脂としてポリエチレンテレフタレート(PET)を用いる場合について説明する。まず、通常の溶融紡糸装置を用い、PETを溶融して扁平断面形状の紡糸孔を有する紡糸口金より紡糸する。紡出した糸条を冷却固化させて未延伸糸を得る。そして、得られた未延伸糸を繊維束に集束した後、延伸倍率2〜4倍で延伸し、分散性油剤を付与した後に任意の繊維長に切断して短繊維を得る。
本発明の湿式短繊維不織布の製造方法について一例を用いて説明する。
上記のようにして得たPETからなる扁平断面形状の短繊維と、バインダー繊維として芯部にPET、鞘部に融点160℃の共重合ポリエステルを配した芯鞘複合短繊維を用いる。次に、扁平断面形状の短繊維とバインダー繊維を質量比(主体繊維/バインダー繊維)65/35とし、パルプ離解機に投入、撹拌(解繊・混綿)する。その後、得られた試料を抄紙機にてウエブを作成し、ウエブを乾燥機にて170℃の温度で熱処理し、湿式短繊維不織布を得る。
上記のようにして得たPETからなる扁平断面形状の短繊維と、バインダー繊維として芯部にPET、鞘部に融点160℃の共重合ポリエステルを配した芯鞘複合短繊維を用いる。次に、扁平断面形状の短繊維とバインダー繊維を質量比(主体繊維/バインダー繊維)65/35とし、パルプ離解機に投入、撹拌(解繊・混綿)する。その後、得られた試料を抄紙機にてウエブを作成し、ウエブを乾燥機にて170℃の温度で熱処理し、湿式短繊維不織布を得る。
次に、実施例を用いて本発明を具体的に説明する。扁平断面形状の短繊維の特性値及び湿式短繊維不織布の評価方法は次の通りである。
〔アスペクト比〕
前記の方法で測定し、算出した。
〔単糸繊度〕
切断前の繊維束を用いて、JIS L 1015 正量繊度のA法により測定した。
〔繊維長〕
短繊維のサイドビュー写真を撮影し、任意の30本の長さを測定し後、その平均値を撮影倍率で割り返して算出した。
〔強度、伸度〕
切断前の繊維束を用いて、JIS L 1015 引張強さ及び伸び率により測定した。
〔不織布を構成する主体繊維中の扁平断面形状の短繊維の割合〕
主体繊維を扁平断面形状の短繊維と、バインダー繊維の芯部を構成するポリエステルAからなる繊維とし、ポリエステルAからなる繊維の質量はバインダー繊維に用いたポリエステルAの質量とした。湿式短繊維不織布に用いる両繊維の合計質量中の扁平断面形状の短繊維の質量とした。
〔不織布の厚み〕
得られた湿式短繊維不織布を、JIS L 1096 織物の厚さにより加圧時間10秒、加重23.5kPaの条件で測定した。200μm未満を合格とした。
〔不織布の通気度〕
得られた湿式短繊維不織布を、JIS L 1096 通気性のA法により測定した。100cc/cm2/sec未満を合格とした。
〔不織布の機械的特性(強力、耐熱性)〕
得られた湿式短繊維不織布を前記の方法により、常温強度と高温強度を測定し、強度保持率を算出した
常温強度は50N/5cm巾以上を合格とし、高温強度は35N/5cm巾以上を合格とした。なお、常温強度が50N/5cm巾未満のものについては、高温強度を測定せず、強度保持率を算出しなかった。
〔アスペクト比〕
前記の方法で測定し、算出した。
〔単糸繊度〕
切断前の繊維束を用いて、JIS L 1015 正量繊度のA法により測定した。
〔繊維長〕
短繊維のサイドビュー写真を撮影し、任意の30本の長さを測定し後、その平均値を撮影倍率で割り返して算出した。
〔強度、伸度〕
切断前の繊維束を用いて、JIS L 1015 引張強さ及び伸び率により測定した。
〔不織布を構成する主体繊維中の扁平断面形状の短繊維の割合〕
主体繊維を扁平断面形状の短繊維と、バインダー繊維の芯部を構成するポリエステルAからなる繊維とし、ポリエステルAからなる繊維の質量はバインダー繊維に用いたポリエステルAの質量とした。湿式短繊維不織布に用いる両繊維の合計質量中の扁平断面形状の短繊維の質量とした。
〔不織布の厚み〕
得られた湿式短繊維不織布を、JIS L 1096 織物の厚さにより加圧時間10秒、加重23.5kPaの条件で測定した。200μm未満を合格とした。
〔不織布の通気度〕
得られた湿式短繊維不織布を、JIS L 1096 通気性のA法により測定した。100cc/cm2/sec未満を合格とした。
〔不織布の機械的特性(強力、耐熱性)〕
得られた湿式短繊維不織布を前記の方法により、常温強度と高温強度を測定し、強度保持率を算出した
常温強度は50N/5cm巾以上を合格とし、高温強度は35N/5cm巾以上を合格とした。なお、常温強度が50N/5cm巾未満のものについては、高温強度を測定せず、強度保持率を算出しなかった。
実施例1
〔扁平断面形状の繊維〕
融点が256℃、極限粘度0.61のPETを、通常の紡糸装置を用い、紡糸温度285℃、吐出量265g/min、紡糸速度750m/minの条件で紡糸し、未延伸糸を得た。このとき、紡糸口金として、扁平断面(アスペクト比12)の吐出孔が602個穿孔されたものを用いた。得られた未延伸糸を13.3ktexの繊維束に集束した後、延伸倍率3.45倍、延伸温度65℃で延伸を行った。その後、ポリエーテルとポリエーテルエステルアミドを主成分とする分散油剤を付着量が0.2質量%となるように付与した後、カットして単糸繊度1.7dtex、繊維長5mm、アスペクト比3.5の扁平断面形状の短繊維を得た。
〔バインダー繊維〕
ポリエステルAとして、融点が256℃、極限粘度0.61のPETを用い、ポリエステルBとして、表2に記載された組成の共重合ポリエステルaを用いた。複合紡糸装置を用いてポリエステルAを芯成分、ポリエステルBを鞘成分とし、芯鞘質量比が1/1となるようにして、紡糸温度280℃、吐出量350g/min、紡糸速度1200m/minの条件で、紡糸し、未延伸糸を得た。このとき、紡糸口金として、丸断面の吐出孔が560個穿孔されたものを用いた。得られた未延伸糸を12.8ktexの繊維束に集束した後、延伸温度60℃、延伸倍率3.06倍で延伸を行った。その後、ポリエーテルとポリエーテルエステルアミドを主成分とする分散油剤を付着量が0.2質量%となるように付与した後、カットして単糸繊度1.7dtex、繊維長5mm、丸断面形状の芯鞘型複合短繊維を得た。
〔湿式短繊維不織布〕
得られた扁平断面形状の短繊維とバインダー繊維とを用い、混率を質量比(主体繊維/バインダー繊維)65/35として、パルプ離解機(熊谷理機工業製)に投入し、3000rpmにて1分間撹拌した。その後、得られた試料を抄紙機(熊谷理機工業製角型シ−トマシン)にて、ポリエーテルとポリエーテルエステルアミドを主成分とする分散油剤を添加した後、付帯の攪拌羽にて攪拌を行い抄紙し、湿式ウエブとした。そして、湿式ウエブを回転式乾燥機(熊谷理機工業製)にて170℃の温度で熱処理し、バインダー繊維の鞘成分を溶融させて、目付け50g/m2の湿式短繊維不織布を得た。なお、得られた湿式短繊維不織布を構成する主体繊維は、上記した扁平断面形状の短繊維とバインダー繊維の芯部を構成するポリエステルAからなる短繊維であった。
〔扁平断面形状の繊維〕
融点が256℃、極限粘度0.61のPETを、通常の紡糸装置を用い、紡糸温度285℃、吐出量265g/min、紡糸速度750m/minの条件で紡糸し、未延伸糸を得た。このとき、紡糸口金として、扁平断面(アスペクト比12)の吐出孔が602個穿孔されたものを用いた。得られた未延伸糸を13.3ktexの繊維束に集束した後、延伸倍率3.45倍、延伸温度65℃で延伸を行った。その後、ポリエーテルとポリエーテルエステルアミドを主成分とする分散油剤を付着量が0.2質量%となるように付与した後、カットして単糸繊度1.7dtex、繊維長5mm、アスペクト比3.5の扁平断面形状の短繊維を得た。
〔バインダー繊維〕
ポリエステルAとして、融点が256℃、極限粘度0.61のPETを用い、ポリエステルBとして、表2に記載された組成の共重合ポリエステルaを用いた。複合紡糸装置を用いてポリエステルAを芯成分、ポリエステルBを鞘成分とし、芯鞘質量比が1/1となるようにして、紡糸温度280℃、吐出量350g/min、紡糸速度1200m/minの条件で、紡糸し、未延伸糸を得た。このとき、紡糸口金として、丸断面の吐出孔が560個穿孔されたものを用いた。得られた未延伸糸を12.8ktexの繊維束に集束した後、延伸温度60℃、延伸倍率3.06倍で延伸を行った。その後、ポリエーテルとポリエーテルエステルアミドを主成分とする分散油剤を付着量が0.2質量%となるように付与した後、カットして単糸繊度1.7dtex、繊維長5mm、丸断面形状の芯鞘型複合短繊維を得た。
〔湿式短繊維不織布〕
得られた扁平断面形状の短繊維とバインダー繊維とを用い、混率を質量比(主体繊維/バインダー繊維)65/35として、パルプ離解機(熊谷理機工業製)に投入し、3000rpmにて1分間撹拌した。その後、得られた試料を抄紙機(熊谷理機工業製角型シ−トマシン)にて、ポリエーテルとポリエーテルエステルアミドを主成分とする分散油剤を添加した後、付帯の攪拌羽にて攪拌を行い抄紙し、湿式ウエブとした。そして、湿式ウエブを回転式乾燥機(熊谷理機工業製)にて170℃の温度で熱処理し、バインダー繊維の鞘成分を溶融させて、目付け50g/m2の湿式短繊維不織布を得た。なお、得られた湿式短繊維不織布を構成する主体繊維は、上記した扁平断面形状の短繊維とバインダー繊維の芯部を構成するポリエステルAからなる短繊維であった。
実施例2〜4、比較例1〜2
扁平断面形状の短繊維の紡糸条件を変更し、表1に示すアスペクト比の短繊維とした以外は、実施例1と同様にして扁平断面形状の短繊維を得た。さらに、実施例1と同様のバインダー繊維を用い、実施例1と同様にして湿式短繊維不織布を得た。
扁平断面形状の短繊維の紡糸条件を変更し、表1に示すアスペクト比の短繊維とした以外は、実施例1と同様にして扁平断面形状の短繊維を得た。さらに、実施例1と同様のバインダー繊維を用い、実施例1と同様にして湿式短繊維不織布を得た。
実施例5〜6、比較例3
主体繊維とバインダー繊維の混率(質量比)を表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして湿式短繊維不織布を得た。
主体繊維とバインダー繊維の混率(質量比)を表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして湿式短繊維不織布を得た。
実施例7
〔扁平断面形状の繊維〕
融点が256℃、極限粘度0.61のPETを、通常の紡糸装置を用い、紡糸温度290℃、吐出量200g/min、紡糸速度1000m/minの条件で紡糸し、未延伸糸を得た。このとき、紡糸口金として、扁平断面(アスペクト比12)の吐出孔が602個穿孔されたものを用いた。得られた未延伸糸を13.6ktexの繊維束に集束した後、延伸倍率3.02倍、延伸温度65℃で延伸を行った。その後、ポリエーテルとポリエーテルエステルアミドを主成分とする分散油剤を付着量が0.2質量%となるように付与した後、カットして単糸繊度1.1dtex、繊維長5mm、アスペクト比2.0の扁平断面形状の短繊維を得た。
さらに、実施例1と同様のバインダー繊維を用い、実施例1と同様にして湿式短繊維不織布を得た。
〔扁平断面形状の繊維〕
融点が256℃、極限粘度0.61のPETを、通常の紡糸装置を用い、紡糸温度290℃、吐出量200g/min、紡糸速度1000m/minの条件で紡糸し、未延伸糸を得た。このとき、紡糸口金として、扁平断面(アスペクト比12)の吐出孔が602個穿孔されたものを用いた。得られた未延伸糸を13.6ktexの繊維束に集束した後、延伸倍率3.02倍、延伸温度65℃で延伸を行った。その後、ポリエーテルとポリエーテルエステルアミドを主成分とする分散油剤を付着量が0.2質量%となるように付与した後、カットして単糸繊度1.1dtex、繊維長5mm、アスペクト比2.0の扁平断面形状の短繊維を得た。
さらに、実施例1と同様のバインダー繊維を用い、実施例1と同様にして湿式短繊維不織布を得た。
実施例8
〔扁平断面形状の繊維〕
融点が256℃、極限粘度0.61のPETを、通常の紡糸装置を用い、紡糸温度280℃、吐出量340g/min、紡糸速度750m/minの条件で紡糸し、未延伸糸を得た。このとき、紡糸口金として、扁平断面(アスペクト比12)の吐出孔が602個穿孔されたものを用いた。得られた未延伸糸を13.2ktexの繊維束に集束した後、延伸倍率3.42倍、延伸温度65℃で延伸を行った。その後、ポリエーテルとポリエーテルエステルアミドを主成分とする分散油剤を0.2質量%の付着量となるように付与した後、カットして単糸繊度2.2dtex、繊維長5mm、アスペクト比3.5の扁平断面形状の短繊維を得た。
さらに、実施例1と同様のバインダー繊維を用い、実施例1と同様にして湿式短繊維不織布を得た。
〔扁平断面形状の繊維〕
融点が256℃、極限粘度0.61のPETを、通常の紡糸装置を用い、紡糸温度280℃、吐出量340g/min、紡糸速度750m/minの条件で紡糸し、未延伸糸を得た。このとき、紡糸口金として、扁平断面(アスペクト比12)の吐出孔が602個穿孔されたものを用いた。得られた未延伸糸を13.2ktexの繊維束に集束した後、延伸倍率3.42倍、延伸温度65℃で延伸を行った。その後、ポリエーテルとポリエーテルエステルアミドを主成分とする分散油剤を0.2質量%の付着量となるように付与した後、カットして単糸繊度2.2dtex、繊維長5mm、アスペクト比3.5の扁平断面形状の短繊維を得た。
さらに、実施例1と同様のバインダー繊維を用い、実施例1と同様にして湿式短繊維不織布を得た。
実施例9
〔扁平断面形状の繊維〕
融点が256℃、極限粘度0.61のPETを、通常の紡糸装置を用い、紡糸温度280℃、吐出量440g/min、紡糸速度650m/minの条件で紡糸し、未延伸糸を得た。このとき、紡糸口金として、扁平断面(アスペクト比12)の吐出孔が602個穿孔されたものを用いた。得られた未延伸糸を13.9ktexの繊維束に集束した後、延伸倍率3.69倍、延伸温度65℃で延伸を行った。その後、ポリエーテルとポリエーテルエステルアミドを主成分とする分散油剤を0.2質量%の付着量となるように付与した後、カットして単糸繊度3.3dtex、繊維長5mm、アスペクト比5.5の扁平断面形状の短繊維を得た。
さらに、実施例1と同様のバインダー繊維を用い、実施例1と同様にして湿式短繊維不織布を得た。
〔扁平断面形状の繊維〕
融点が256℃、極限粘度0.61のPETを、通常の紡糸装置を用い、紡糸温度280℃、吐出量440g/min、紡糸速度650m/minの条件で紡糸し、未延伸糸を得た。このとき、紡糸口金として、扁平断面(アスペクト比12)の吐出孔が602個穿孔されたものを用いた。得られた未延伸糸を13.9ktexの繊維束に集束した後、延伸倍率3.69倍、延伸温度65℃で延伸を行った。その後、ポリエーテルとポリエーテルエステルアミドを主成分とする分散油剤を0.2質量%の付着量となるように付与した後、カットして単糸繊度3.3dtex、繊維長5mm、アスペクト比5.5の扁平断面形状の短繊維を得た。
さらに、実施例1と同様のバインダー繊維を用い、実施例1と同様にして湿式短繊維不織布を得た。
実施例10
〔バインダー繊維〕
紡糸時の吐出量を455g/minに変更し、得られた未延伸糸を13.0ktexの繊維束に集束した後、未延伸糸の延伸時の延伸倍率を3.08倍に変更した以外は、実施例1と同様に行い、単糸繊度2.2dtex、繊維長5mm、丸断面形状の芯鞘型複合短繊維を得た。
実施例1と同様の扁平断面形状の短繊維を用い、実施例1と同様にして湿式短繊維不織布を得た。
〔バインダー繊維〕
紡糸時の吐出量を455g/minに変更し、得られた未延伸糸を13.0ktexの繊維束に集束した後、未延伸糸の延伸時の延伸倍率を3.08倍に変更した以外は、実施例1と同様に行い、単糸繊度2.2dtex、繊維長5mm、丸断面形状の芯鞘型複合短繊維を得た。
実施例1と同様の扁平断面形状の短繊維を用い、実施例1と同様にして湿式短繊維不織布を得た。
実施例11
〔バインダー繊維〕
紡糸時の吐出量を215g/minに変更し、得られた未延伸糸を12.4ktexの繊維束に集束した後、未延伸糸の延伸時の延伸倍率を2.98倍に変更した以外は、実施例1と同様に行い、単糸繊度1.1dtex、繊維長5mm、丸断面形状の芯鞘型複合短繊維を得た。
実施例1と同様の扁平断面形状の短繊維を用い、実施例1と同様にして湿式短繊維不織布を得た。
〔バインダー繊維〕
紡糸時の吐出量を215g/minに変更し、得られた未延伸糸を12.4ktexの繊維束に集束した後、未延伸糸の延伸時の延伸倍率を2.98倍に変更した以外は、実施例1と同様に行い、単糸繊度1.1dtex、繊維長5mm、丸断面形状の芯鞘型複合短繊維を得た。
実施例1と同様の扁平断面形状の短繊維を用い、実施例1と同様にして湿式短繊維不織布を得た。
実施例12
〔バインダー繊維〕
ポリエステルBとして表2に記載された組成の共重合ポリエステルbを用いた以外は実施例1と同様に行い、単糸繊度1.7dtex、繊維長5mm、丸断面形状の芯鞘型複合短繊維を得た。
実施例1と同様の扁平断面形状の短繊維を用い、湿式ウエブを回転式乾燥機(熊谷理機工業製)にて190℃の温度で熱処理した以外は、実施例1と同様にして湿式短繊維不織布を得た。
〔バインダー繊維〕
ポリエステルBとして表2に記載された組成の共重合ポリエステルbを用いた以外は実施例1と同様に行い、単糸繊度1.7dtex、繊維長5mm、丸断面形状の芯鞘型複合短繊維を得た。
実施例1と同様の扁平断面形状の短繊維を用い、湿式ウエブを回転式乾燥機(熊谷理機工業製)にて190℃の温度で熱処理した以外は、実施例1と同様にして湿式短繊維不織布を得た。
実施例13
〔バインダー繊維〕
ポリエステルBとして表2に記載された組成の共重合ポリエステルcを用いた以外は実施例1と同様に行い、単糸繊度1.7dtex、繊維長5mm、丸断面形状の芯鞘型複合短繊維を得た。
実施例1と同様の扁平断面形状の短繊維を用い、湿式ウエブを回転式乾燥機(熊谷理機工業製)にて205℃の温度で熱処理した以外は、実施例1と同様にして湿式短繊維不織布を得た。
〔バインダー繊維〕
ポリエステルBとして表2に記載された組成の共重合ポリエステルcを用いた以外は実施例1と同様に行い、単糸繊度1.7dtex、繊維長5mm、丸断面形状の芯鞘型複合短繊維を得た。
実施例1と同様の扁平断面形状の短繊維を用い、湿式ウエブを回転式乾燥機(熊谷理機工業製)にて205℃の温度で熱処理した以外は、実施例1と同様にして湿式短繊維不織布を得た。
比較例4
〔バインダー繊維〕
ポリエステルBとして表2に記載された組成の共重合ポリエステルdを用いた以外は実施例1と同様に行い、単糸繊度1.7dtex、繊維長5mm、丸断面形状の芯鞘型複合短繊維を得た。
実施例1と同様の扁平断面形状の短繊維を用い、湿式ウエブを回転式乾燥機(熊谷理機工業製)にて150℃の温度で熱処理した以外は、実施例1と同様にして湿式短繊維不織布を得た。
〔バインダー繊維〕
ポリエステルBとして表2に記載された組成の共重合ポリエステルdを用いた以外は実施例1と同様に行い、単糸繊度1.7dtex、繊維長5mm、丸断面形状の芯鞘型複合短繊維を得た。
実施例1と同様の扁平断面形状の短繊維を用い、湿式ウエブを回転式乾燥機(熊谷理機工業製)にて150℃の温度で熱処理した以外は、実施例1と同様にして湿式短繊維不織布を得た。
実施例14〜15、比較例5〜6
扁平断面形状の短繊維として、実施例1の扁平断面形状の短繊維を得る際のカット長を変更して表1に示す繊維長の短繊維としたものを用いた以外は、実施例1と同様にして湿式短繊維不織布を得た。
扁平断面形状の短繊維として、実施例1の扁平断面形状の短繊維を得る際のカット長を変更して表1に示す繊維長の短繊維としたものを用いた以外は、実施例1と同様にして湿式短繊維不織布を得た。
実施例16〜17
バインダー繊維として、実施例1のバインダー繊維を得る際のカット長を変更して表1に示す繊維長の短繊維を用いた以外は、実施例1と同様にして湿式短繊維不織布を得た。
バインダー繊維として、実施例1のバインダー繊維を得る際のカット長を変更して表1に示す繊維長の短繊維を用いた以外は、実施例1と同様にして湿式短繊維不織布を得た。
比較例7
〔扁平断面形状の繊維〕
融点が256℃、極限粘度0.61のPETを、通常の紡糸装置を用い、紡糸温度280℃、吐出量611g/min、紡糸速度600m/minの条件で紡糸し、未延伸糸を得た。このとき、紡糸口金として、扁平断面(アスペクト比10)の吐出孔が602個穿孔されたものを用いた。得られた未延伸糸を14.0ktexの繊維束に集束した後、延伸倍率3.85倍、延伸温度65℃で延伸を行った。その後、ポリエーテルとポリエーテルエステルアミドを主成分とする分散油剤を0.2質量%の付着量となるように付与した後、カットして単糸繊度4.4dtex、繊維長5mm、アスペクト比3.5の扁平断面形状の短繊維を得た。
さらに、実施例1と同様のバインダー繊維を用い、実施例1と同様にして湿式短繊維不織布を得た。
〔扁平断面形状の繊維〕
融点が256℃、極限粘度0.61のPETを、通常の紡糸装置を用い、紡糸温度280℃、吐出量611g/min、紡糸速度600m/minの条件で紡糸し、未延伸糸を得た。このとき、紡糸口金として、扁平断面(アスペクト比10)の吐出孔が602個穿孔されたものを用いた。得られた未延伸糸を14.0ktexの繊維束に集束した後、延伸倍率3.85倍、延伸温度65℃で延伸を行った。その後、ポリエーテルとポリエーテルエステルアミドを主成分とする分散油剤を0.2質量%の付着量となるように付与した後、カットして単糸繊度4.4dtex、繊維長5mm、アスペクト比3.5の扁平断面形状の短繊維を得た。
さらに、実施例1と同様のバインダー繊維を用い、実施例1と同様にして湿式短繊維不織布を得た。
比較例8
〔バインダー繊維〕
ポリエステルBとして表2に記載された組成の共重合ポリエステルeを用いた以外は実施例1と同様に行い、単糸繊度1.7dtex、繊維長5mm、丸断面形状の芯鞘型複合短繊維を得た。
実施例1と同様の扁平断面形状の短繊維を用い、湿式ウエブを回転式乾燥機(熊谷理機工業製)にて230℃の温度で熱処理した以外は、実施例1と同様にして湿式短繊維不織布を得た。
〔バインダー繊維〕
ポリエステルBとして表2に記載された組成の共重合ポリエステルeを用いた以外は実施例1と同様に行い、単糸繊度1.7dtex、繊維長5mm、丸断面形状の芯鞘型複合短繊維を得た。
実施例1と同様の扁平断面形状の短繊維を用い、湿式ウエブを回転式乾燥機(熊谷理機工業製)にて230℃の温度で熱処理した以外は、実施例1と同様にして湿式短繊維不織布を得た。
実施例1〜17、比較例1〜8で得られた扁平断面形状の短繊維及び湿式短繊維不織布の特性値及び評価結果を表1に示す。
表1から明らかなように、実施例1〜17で用いた扁平断面形状の短繊維は、アスペクト比が1.8〜6.0の範囲内であり、単糸繊度、繊維長ともに本発明の範囲内のものであり、この短繊維を主体繊維として70質量%以上用いたものであったため、得られた湿式短繊維不織布は、厚みが薄く、通気度が低く、気密性に優れていた。また、接着成分として、融点が150〜215℃の結晶性の共重合ポリエステル樹脂を用いたため、耐熱性、機械的特性にも優れたものであった。
一方、比較例1で用いた扁平断面形状の短繊維は、アスペクト比が小さかったため、丸断面形状に近いものとなり、得られた湿式短繊維不織布は、厚みが大きく、通気度が大きく、機械的特性にも劣るものであった。比較例2で用いた扁平断面形状の短繊維は、アスペクト比が大きかったため、紡糸時に切れ糸が発生し操業性が悪化し、低強度、低伸度のものとなり、得られた湿式短繊維不織布は機械的特性に劣るものであった。比較例3の湿式短繊維不織布は、バインダー繊維の混率が高く、主体繊維として残る芯部の繊維が多く、扁平断面形状の短繊維の割合が少なくなったため、厚さの高いものとなり、通気度が大きくなった。比較例4では、バインダー繊維の鞘部を構成する共重合ポリエステルBの融点が150℃未満であったため(接着成分の融点が150℃未満であったため)、得られた湿式短繊維不織布は耐熱性に劣るものであった。比較例5で用いた扁平断面形状の短繊維は繊維長が長かったため、得られた湿式短繊維不織布は地合が悪くなり、厚さの高いものとなり、通気度が大きく、機械的特性にも劣るものであった。比較例6で用いた扁平断面形状の短繊維は繊維長が短かったため、繊維を得る際のカット時に繊維同士の融着が発生し、得られた湿式短繊維不織布は地合が悪くなり、厚さの高いものとなり、通気度が大きく、機械的特性にも劣るものであった。比較例7で用いた扁平断面形状の短繊維は繊度が大きすぎたため、得られた湿式短繊維不織布は厚さの高いものとなり、通気度が大きくなった。比較例8では、バインダー繊維の鞘部を構成する共重合ポリエステルBの融点が215℃を超えるものであったため(接着成分の融点が215℃を超えるものであったため)、不織布作成時の熱処理温度を高くする必要があり、これにより主体繊維の劣化がおこり、得られた湿式短繊維不織布は機械的特性に劣るものであった。
一方、比較例1で用いた扁平断面形状の短繊維は、アスペクト比が小さかったため、丸断面形状に近いものとなり、得られた湿式短繊維不織布は、厚みが大きく、通気度が大きく、機械的特性にも劣るものであった。比較例2で用いた扁平断面形状の短繊維は、アスペクト比が大きかったため、紡糸時に切れ糸が発生し操業性が悪化し、低強度、低伸度のものとなり、得られた湿式短繊維不織布は機械的特性に劣るものであった。比較例3の湿式短繊維不織布は、バインダー繊維の混率が高く、主体繊維として残る芯部の繊維が多く、扁平断面形状の短繊維の割合が少なくなったため、厚さの高いものとなり、通気度が大きくなった。比較例4では、バインダー繊維の鞘部を構成する共重合ポリエステルBの融点が150℃未満であったため(接着成分の融点が150℃未満であったため)、得られた湿式短繊維不織布は耐熱性に劣るものであった。比較例5で用いた扁平断面形状の短繊維は繊維長が長かったため、得られた湿式短繊維不織布は地合が悪くなり、厚さの高いものとなり、通気度が大きく、機械的特性にも劣るものであった。比較例6で用いた扁平断面形状の短繊維は繊維長が短かったため、繊維を得る際のカット時に繊維同士の融着が発生し、得られた湿式短繊維不織布は地合が悪くなり、厚さの高いものとなり、通気度が大きく、機械的特性にも劣るものであった。比較例7で用いた扁平断面形状の短繊維は繊度が大きすぎたため、得られた湿式短繊維不織布は厚さの高いものとなり、通気度が大きくなった。比較例8では、バインダー繊維の鞘部を構成する共重合ポリエステルBの融点が215℃を超えるものであったため(接着成分の融点が215℃を超えるものであったため)、不織布作成時の熱処理温度を高くする必要があり、これにより主体繊維の劣化がおこり、得られた湿式短繊維不織布は機械的特性に劣るものであった。
Claims (2)
- 繊維長が2〜20mm、単糸繊度が0.8〜4.0dtex、機械捲縮が付与されていない熱可塑性樹脂からなる短繊維と接着成分とからなる短繊維不織布であって、短繊維不織布を構成する短繊維の70質量%以上が、繊維の長手方向に対して垂直に切断した単糸の断面が扁平断面形状を呈しており、長辺と短辺の長さの比であるアスペクト比(長辺/短辺)が1.8〜6.0である短繊維であり、接着成分は融点150〜215℃の共重合ポリエステル樹脂であり、かつ120℃雰囲気下での強度保持率が70%以上であることを特徴とする湿式短繊維不織布。
- 繊維長が2〜20mm、単糸繊度が0.8〜4.0dtex、機械捲縮が付与されていない熱可塑性樹脂からなる短繊維であって、繊維の長手方向に対して垂直に切断した単糸の断面が扁平断面形状を呈しており、長辺と短辺の長さの比であるアスペクト比(長辺/短辺)が1.8〜6.0である短繊維を主体繊維とし、融点150〜215℃の共重合ポリエステル樹脂を少なくとも繊維表面に配したポリエステル短繊維をバインダー繊維として得られたものである請求項1記載の湿式短繊維不織布。
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