JP2010024556A - ポリエステル複合繊維 - Google Patents
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Abstract
【課題】芳香族ポリエステルとポリ乳酸からなる芯鞘型の複合繊維において、芯鞘部の界面接着性に優れるものであり、工程通過性よく得ることができ、耐摩耗性や強度に優れ、長期間の使用や様々な用途への使用が可能となるポリエステル複合繊維を提供する。
【解決手段】芳香族ポリエステルを鞘成分、ポリ乳酸を芯成分とする芯鞘型複合繊維であって、鞘成分と芯成分の少なくとも一方に特定の構造式で示される繰り返し単位を有する化合物が相溶化剤として含有されているポリエステル複合繊維。
【選択図】なし
【解決手段】芳香族ポリエステルを鞘成分、ポリ乳酸を芯成分とする芯鞘型複合繊維であって、鞘成分と芯成分の少なくとも一方に特定の構造式で示される繰り返し単位を有する化合物が相溶化剤として含有されているポリエステル複合繊維。
【選択図】なし
Description
本発明は、植物由来のポリ乳酸を一成分とする芯鞘型の複合繊維であって、芯鞘部の界面接着性や耐摩耗性に優れ、衣料用途、産業資材用途等様々な用途に使用することができるポリエステル複合繊維に関するものである。
合成繊維の中でも特にポリエステル繊維は、その優れた寸法安定性、耐候性、機械的特性、耐久性、さらにはリサイクル性等から、衣料、産業資材として不可欠のものとなっており、様々な分野、用途において広く使用されている。
従来の合成繊維は、その大部分が石油などの限りある貴重な化石資源を原料としている。またこれらは自然環境下ではほとんど分解されず、廃棄処理が問題となっている。これに対し、ポリ乳酸はトウモロコシなどの植物資源を原料としており、ポリ乳酸を繊維化したポリ乳酸系繊維は、種々の製品に加工された後、コンポストまたは土壌中などの自然環境下では最終的に炭酸ガスと水に分解される完全生分解性を持つ。
しかしながら、ポリ乳酸繊維は、強度や耐摩耗性が従来の合成繊維よりも劣っている。このため、従来のポリ乳酸繊維は、ディスポーザブルの日用資材、農林園芸資材等の用途が主流であり、衣料用、土木建築用、水産資材用、自動車資材用等の強度や耐摩耗性が要求される分野での使用は限定されているのが現状である。
このようなポリ乳酸繊維の問題点を解決する手段の一つとしては、強度が要求される用途に使用する場合、質量や厚みを増大させて強度をカバーしているが、耐摩耗性が欠点である。
また、ポリ乳酸に芳香族ポリエステル等の耐摩耗性に優れたプラスチックをブレンドすることが考えられる。しかしながら、ポリ乳酸と芳香族ポリエステルは相溶性が悪いため、ブレンドする際には均一にブレンドすることが困難であり、溶融紡糸では安定して繊維化することができなかった。
そこで、ポリ乳酸を芯部とし、芳香族ポリエステルを鞘部とした複合繊維が考えられる。しかしながら、両者の相溶性が悪いために、芯鞘部の界面接着性が悪く、芯部と鞘部の剥離が生じるという問題があった。芯部と鞘部の接合界面で剥離が生じると、紡糸、延伸工程や製編織工程等の工程通過性が悪化したり、得られる布帛に白化が生じたり、繊維の強度が低下するという問題が生じる。
そこで、特許文献1では、鞘部が芳香族ポリエステル、芯部がポリ乳酸の芯鞘型のポリエステル複合繊維であって、鞘部を形成する芳香族ポリエステルの皮膜厚さが0.4μm以上であるものが提案されている。そして、芳香族ポリエステルとポリ乳酸を用いた複合繊維では複合界面の接着性が悪くなることから、芯部と鞘部との複合界面の接着性を高め、界面剥離を抑制するために、芯部および/又は鞘部に相溶化剤を含有させることが記載されている。
しかしながら、特許文献1に記載の方法では界面剥離を防ぐ効果は十分ではなく、未だにポリ乳酸を用いた芯鞘型の複合繊維において、界面接着性に優れた繊維は得られていないのが現状である。
特開2005−187950
本発明は、上記の問題点を解決するものであって、芳香族ポリエステルとポリ乳酸からなる芯鞘型の複合繊維において、芯鞘部の界面接着性に優れるものであり、工程通過性よく得ることができ、耐摩耗性や強度に優れ、長期間の使用や様々な用途への使用が可能となるポリエステル複合繊維を提供しようとするものである。
本発明者らは、上記の課題を解決するために検討した結果、本発明に到達した。
すなわち、本発明は、芳香族ポリエステルを鞘成分、ポリ乳酸を芯成分とする芯鞘型複合繊維であって、鞘成分と芯成分の少なくとも一方に下記構造式(1)で示される繰り返し単位を有する化合物が含有されていることを特徴とするポリエステル複合繊維を要旨とするものである。
本発明のポリエステル複合繊維は、芯成分のポリ乳酸と鞘成分の芳香族ポリエステルの少なくとも一方に、特定の構造を有する化合物を相溶化剤として含有するため、芯部と鞘部の界面接着性に優れるものである。さらに、本発明のポリエステル複合繊維は、鞘成分が芯成分の一部を含有する、もしくは芯成分が鞘成分の一部を含有することによりさらに界面接着性に優れるものとなる。
このため、紡糸、延伸工程や仮撚、製編織等の加工工程の通過性よく得ることができ、ポリ乳酸を構成成分としながらも、耐摩耗性や強度の高いポリエステル複合繊維となる。そして、長期間使用しても界面剥離が生じにくいため、得られる布帛に白化が生じたり、繊維強度の低下が少なく、衣料、産業資材用途等様々な用途に使用することが可能となる。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のポリエステル複合繊維の芯成分となるポリ乳酸としては以下のものが挙げられる。
本発明のポリエステル複合繊維の芯成分となるポリ乳酸としては以下のものが挙げられる。
ポリD−乳酸、ポリL−乳酸、ポリD−乳酸とポリL−乳酸との共重合体であるポリDL−乳酸、ポリD−乳酸とポリL−乳酸との混合物(ステレオコンプレックス)、ポリD−乳酸とヒドロキシカルボン酸との共重合体、ポリL−乳酸とヒドロキシカルボン酸との共重合体、ポリD−乳酸又はポリL−乳酸と脂肪族ジカルボン酸及び脂肪族ジオールとの共重合体、あるいはこれらのブレンド体とすることが好ましい。
そして、ポリ乳酸は、上記のようにL−乳酸とD−乳酸が単独で用いられているもの、もしくは併用されているものであるが、中でも融点が120℃以上、融解熱が10J/g以上であることが好ましい。
つまり、ポリ乳酸のホモポリマーであるL−乳酸やD−乳酸の融点は約180℃であるが、D−乳酸とL−乳酸との共重合体の場合、いずれかの成分の割合を10モル%程度とすると、融点はおよそ130℃程度となる。さらに、いずれかの成分の割合を18モル%以上とすると、融点は120℃未満、融解熱は10J/g未満となって、ほぼ完全に非晶性の性質となる。このような非晶性のポリマーとなると、製造工程において特に熱延伸し難くなり、高強度の繊維が得られ難くなるという問題が生じたり、繊維が得られたとしても、耐熱性、耐摩耗性に劣ったものとなるため好ましくない。
そこで、ポリ乳酸としては、ラクチドを原料として重合する時のL−乳酸やD−乳酸の含有割合で示されるL−乳酸とD−乳酸の含有比(モル比)が、多い方が82%以上のものが好ましく、中でも90%以上、さらには95%以上とすることが好ましい。
また、ポリ乳酸の中でも、上記したようなポリD−乳酸とポリL−乳酸との混合物(ステレオコンプレックス)は、融点が200〜230℃と高く、布帛にした後の高温染色やアイロン加工も可能となり、特に好ましい。
ポリ乳酸とヒドロキシカルボン酸の共重合体である場合は、ヒドロキシカルボン酸の具体例としてはグリコール酸、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシ吉草酸、ヒドロキシカプロン酸、ヒドロキシペンタン酸、ヒドロキシヘプタン酸、ヒドロキシオクタン酸等が挙げられる。中でもヒドロキシカプロン酸またはグリコール酸を用いることがコスト面からも好ましい。
ポリ乳酸と脂肪族ジカルボン酸及び脂肪族ジオールとの共重合体の場合は、脂肪族ジカルボン酸及び脂肪族ジオールとしては、セバシン酸、アジピン酸、ドデカン二酸、トリメチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール等が挙げられる。
上記のようにポリ乳酸に他の成分を共重合させる場合は、ポリ乳酸を80モル%以上とすることが好ましい。80モル%未満であると、共重合ポリ乳酸の結晶性が低くなり、融点120℃未満、融解熱10J/g未満となりやすい。
また、ポリ乳酸の分子量としては、分子量の指標として用いられるASTM D−1238法により、温度210℃、荷重2160gで測定したメルトフローレートが、1〜100(g/10分)であることが好ましく、より好ましくは5〜50(g/10分)である。メルトフローレートをこの範囲とすることにより、強度、湿熱分解性、耐摩耗性が向上する。
さらには、ポリ乳酸の耐久性を高める目的で、ポリ乳酸に脂肪族アルコール、カルボジイミド化合物、オキサゾリン化合物、オキサジン化合物、エポキシ化合物などの末端封鎖剤を添加してもよい。
本発明の目的を損なわない範囲であれば、必要に応じて、ポリ乳酸中に熱安定剤、結晶核剤、艶消剤、顔料、耐光剤、耐候剤、滑剤、酸化防止剤、抗菌剤、香料、可塑剤、染料、界面活性剤、難燃剤、表面改質剤、各種無機及び有機電解質、その他類似の添加剤を添加してもよい。
本発明のポリエステル複合繊維の鞘成分となる芳香族ポリエステルとしては以下のものが挙げられる。
ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレートなどのポリアルキレンテレフタレートを主体としたポリエステルであって、イソフタル酸、5−スルホイソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸、アジピン酸、コハク酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカン二酸などの脂肪族ジカルボン酸、およびエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノールなどの脂肪族ジオールや、グリコール酸、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシ吉草酸、ヒドロキシカプロン酸、ヒドロキシペンタン酸、ヒドロキシヘプタン酸、ヒドロキシオクタン酸などのヒドロキシカルボン酸、ε−カプロラクトンなどの脂肪族ラクトン等を共重合していてもよい。
本発明の芳香族ポリエステルとしては、中でも芳香族ジカルボン酸成分が全酸成分の70モル%以上である芳香族ポリエステルが好ましい。芳香族ジカルボン酸成分が全酸成分に対して70モル%未満であると、芳香族ポリエステルの耐湿熱分解性、耐候性などが低下しやすくなる。
また、芳香族ポリエステルの融点は、本発明の芯鞘複合繊維を構成するポリ乳酸との融点差が大きすぎると、複合紡糸に際して紡糸操業性を阻害したり、ポリ乳酸の熱分解を引き起こすことがあるので、融点が200〜265℃程度のものを用いることが好ましい。
このような融点を有し、芳香族ジカルボン酸成分が全酸成分の70モル%以上である芳香族ポリエステルとしては、イソフタル酸を共重合したPET、ポリトリメチレンテレフタレート(ホモポリエステル)、ポリブチレンレテフタレート(ホモポリエステル)を用いることが好ましい。
また、芳香族ポリエステル中にも、本発明の目的を損なわない範囲であれば、必要に応じて、熱安定剤、結晶核剤、艶消剤、顔料、耐光剤、耐候剤、滑剤、酸化防止剤、抗菌剤、香料、可塑剤、染料、界面活性剤、難燃剤、表面改質剤、各種無機及び有機電解質、その他類似の添加剤を添加することができる。
そして、本発明のポリエステル複合繊維においては、鞘成分と芯成分の少なくとも一方に下記構造式(1)で示される繰り返し単位を有する化合物が含有されているものであり、中でも鞘成分、芯成分の両方に含有されていることが好ましいものである。
上記のような構造式で示される繰り返し単位を有する化合物は、芯部と鞘部が接合された界面での接着性を向上させる相溶化剤として働くものである。そして、この相溶化剤はエポキシ基を含むものであり、中でもメタクリル酸グリシジルやアクリル酸グリシジルが好ましい。エポキシ基はポリエステルの末端基と反応し、芯部と鞘部の剥離をより一層低減させることができる。
また上記のような構造式で示される繰り返し単位を有する化合物は、重量平均分子量が10000以下のものが好ましく、中でも6000以下であることが好ましい。重量平均分子量が10000を超えると、相溶性が低下し、紡糸、延伸性等が悪化しやすくなる。
そして上記のような構造式で示される繰り返し単位を有する化合物の添加量は、繊維質量中の0.1〜20質量%とすることが好ましく、中でも1.0〜15質量%とすることが好ましい。含有量が0.1質量%未満であると、上記したような芯部と鞘部の界面における接着性を向上させることが困難となりやすい。一方、20質量%を超えると、紡糸、延伸性等が悪化しやすくなったり、得られるフィラメントの平滑性が失われたりするため、耐摩耗性が悪化する。
上記のような構造式で示される繰り返し単位を有する化合物としては、BASF社製、JONCRYL ADR4368やJONCRYL ADR4300を挙げることができる。
そして、本発明のポリエステル複合繊維においては、芯部と鞘部の界面における接着性をさらに向上させるために、下記条件(A)、(B)の少なくとも一方を満足することが好ましい。
(A)鞘成分の芳香族ポリエステル中に芯成分のポリ乳酸が0.1〜15質量%含有されている。
(B)芯成分のポリ乳酸中に鞘成分の芳香族ポリエステルが0.1〜15質量%含有されている。
(A)鞘成分の芳香族ポリエステル中に芯成分のポリ乳酸が0.1〜15質量%含有されている。
(B)芯成分のポリ乳酸中に鞘成分の芳香族ポリエステルが0.1〜15質量%含有されている。
なお、鞘成分、芯成分において、他方の成分が含有されているとは、混合(ブレンド)されていることが好ましいものである。
本発明のポリエステル複合繊維は、芯成分と鞘成分のいずれか一方又は両方において、他方の成分を混合することで、芯鞘部の界面付近に同種ポリマーが存在し、同種ポリマーが結合することにより、界面接着性に優れ、強度が高くなるものである。中でも、芯成分と鞘成分の両方において、他方の成分を混合した混合物とする〔上記条件(A)、(B)の両方を満足する〕ことが好ましい。
鞘成分の芳香族ポリエステル中には、芯成分のポリ乳酸が0.1〜15質量%、中でも1〜10質量%含有されていることが好ましい。ポリ乳酸の含有量が15質量%を超えると、芳香族ポリエステルとポリ乳酸との相溶性が悪くなり、強度低下や操業不調が起こりやすくなる。
芯成分のポリ乳酸中には、鞘成分の芳香族ポリエステルが0.1〜15質量%、中でも1〜10質量%含有されていることが好ましい。芳香族ポリエステルの含有量が15質量%を超えると、ポリ乳酸と芳香族ポリエステルとの相溶性が悪くなり、強度低下や操業不調が起こりやすくなる。
次に、本発明のポリエステル複合繊維の形状について説明する。本発明のポリエステル複合繊維は、繊維の長さ方向に対して垂直に切断した断面の形状(横断面形状)が芯鞘形状を呈する芯鞘型複合繊維であって、上記のような芳香族ポリエステルが鞘部に配され、ポリ乳酸が芯部に配されている。
芳香族ポリエステルが鞘部に配されるということは、繊維の表面全体を芳香族ポリエステルが覆うように配置されていることである。そして、芯部は1つであっても複数であってもよい。つまり、芯鞘形状としては、芯部が1つである同心芯鞘型や偏心芯鞘型のものであっても、芯部が複数個である海島型等の複合形態のものであってもよい。
上記のような芯鞘型の複合形状を呈していれば、断面形状は丸断面に限定されるものではなく、扁平断面、多角形、多葉形、ひょうたん形、アルファベット形(T型、Y型等)、井型等の各種の異形のものであってもよい。また、これらの形状において中空部を有するものでもよい。
芯鞘成分の質量比率は、鞘成分が芯成分を十分に覆うために、80/20〜20/80とすることが好ましく、さらに好ましくは70/30〜30/70である。芯成分の比率を大きくすればポリ乳酸の比率が大きくなり、生分解性が向上し、鞘成分の比率を大きくすれば芳香族ポリエステルの比率が大きくなり、強度や耐熱性が向上する。このため、目的や用途に応じてこれらの範囲内で芯鞘比率を適宜選択することが好ましい。
本発明のポリエステル複合繊維は、単糸の形状が上記のような芯鞘形状を呈するものであって、モノフィラメントでも、このような単糸が複数本集合したマルチフィラメントであってもよい。また長繊維、短繊維のいずれであってもよい。
単糸繊度は、生産性、操業安定性や生分解性を考慮して、1.0〜40dtexが好ましく、中でも2.0〜20dtexが好ましい。
次に、本発明のポリエステル複合繊維の製造方法について、一例(マルチフィラメントとする場合)を用いて説明する。
溶融紡糸は、常法によって行うことができるが、ポリエステル組成物の相分離を抑制するため、紡糸ライン中あるいはノズルパック中に静止混合素子を装填して紡糸することが好ましい。紡糸温度は350℃以下、好ましくは310℃以下とし、溶融紡糸に際しては、得られるフィラメントの相対粘度が1.40未満とならないように、紡糸温度や滞留時間を調整する。
そして、紡出されたフィラメントは、液体又は空気中で冷却、固化させる。次に、冷却固化したフィラメントを、一旦巻き取った後又は巻き取ることなく延伸する。
延伸は一段又は二段以上の多段で行うことができるが、多段で行うことが好ましい。まず、65〜95℃の液体中又は70〜200 ℃の気体中で3.0〜6.5倍の第一段延伸を行い、続いて第一段延伸よりも高温の150〜300℃の液体又は気体中で全延伸倍率が5.0〜8.0倍となるように第二段目以降の延伸を行う。
この際、全延伸倍率が第一段延伸倍率よりも高くなるように設定する。延伸温度が上記の範囲より低いと加熱不足となり、延伸斑及び糸切れが発生し、一方、延伸温度が高すぎるとフィラメントの融解及び熱劣化が起こり、好ましくない。また、全延伸倍率が5.0倍未満であると得られるフィラメントの糸質特性、特に直線強度が低くなりやすい。一方、全延伸倍率を 8.0倍より大きくすると繊維内での塑性変形に分子配向が対応できなくなるため、繊維中にミクロボイドが発生し、満足な性能を示すフィラメントが得られ難くなる。
また、延伸後、150〜500℃の気体中で1.0〜15.0%の弛緩率で弛緩熱処理を行うことが好ましい。
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。なお、実施例中の各物性値の測定及び評価は次のとおりに行った。
(1)ポリ乳酸のメルトフローレート値(g/10分):前記の方法で測定した。
(2)芳香族ポリエステルの相対粘度:フェノールと四塩化エタンの等質量混合物を溶媒とし、ウベローデ粘度計を使用して、試料濃度0.5g/100cc、温度20℃の条件で測定した。
(3)ポリ乳酸の融点(℃)、融解熱(J/g):パーキンエルマー社製の示差走査熱量計DSC−2型を使用し、昇温速度20℃/分の条件で測定した。
(4)ポリ乳酸のL−乳酸とD−乳酸の含有比(モル比):超純水と1Nの水酸化ナトリウムのメタノール溶液の等質量混合溶液を溶媒とし、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)法により測定した。カラムにはsumichiral OA6100を使用し、UV吸収測定装置により検出した。
(5)強度(cN/dtex):島津製作所(株)製オートグラフ AG−1型を用い、試料長25cm、引張速度30cm/分、初荷重が繊度の1/20で測定した。
(6)複合繊維の界面接着性:得られた複合繊維(マルチフィラメント)に1000T/mの撚りをかけ、撚りをかけたままの状態で繊維の長手方向に対して垂直に繊維を切断し、切断面を電子顕微鏡で500倍に拡大して観察した。断面写真10枚を観察し、単糸1本でも剥離が生じているものがあれば剥離有りとし、下記の基準により4段階評価した。
◎:剥離有りが1枚もない
○:剥離有りが1〜2枚
△:剥離有りが3〜5枚
×:剥離有りが6枚以上
(7)複合繊維の耐摩耗性:得られたフィラメントを長さ90cmに切断してサンプルとし、サンプルの先端に0.2g/Dの荷重をかけ、直径0.8mmの円柱状の金属棒に90度の角度で接触させながら、ストローク長70mm、40回/分の速度の条件で往復摩擦させ、1000回往復摩擦後のフィラメント(金属棒に接した部分)の状態を目視で観察し、次の2段階で評価した。
○:フィラメントに状態の変化も見られない。
△:フィラメントに若干のフィブリル化又は毛羽立ちが見られる。
×:フィラメントにフィブリル化又は毛羽立ちが多く見られる。
(1)ポリ乳酸のメルトフローレート値(g/10分):前記の方法で測定した。
(2)芳香族ポリエステルの相対粘度:フェノールと四塩化エタンの等質量混合物を溶媒とし、ウベローデ粘度計を使用して、試料濃度0.5g/100cc、温度20℃の条件で測定した。
(3)ポリ乳酸の融点(℃)、融解熱(J/g):パーキンエルマー社製の示差走査熱量計DSC−2型を使用し、昇温速度20℃/分の条件で測定した。
(4)ポリ乳酸のL−乳酸とD−乳酸の含有比(モル比):超純水と1Nの水酸化ナトリウムのメタノール溶液の等質量混合溶液を溶媒とし、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)法により測定した。カラムにはsumichiral OA6100を使用し、UV吸収測定装置により検出した。
(5)強度(cN/dtex):島津製作所(株)製オートグラフ AG−1型を用い、試料長25cm、引張速度30cm/分、初荷重が繊度の1/20で測定した。
(6)複合繊維の界面接着性:得られた複合繊維(マルチフィラメント)に1000T/mの撚りをかけ、撚りをかけたままの状態で繊維の長手方向に対して垂直に繊維を切断し、切断面を電子顕微鏡で500倍に拡大して観察した。断面写真10枚を観察し、単糸1本でも剥離が生じているものがあれば剥離有りとし、下記の基準により4段階評価した。
◎:剥離有りが1枚もない
○:剥離有りが1〜2枚
△:剥離有りが3〜5枚
×:剥離有りが6枚以上
(7)複合繊維の耐摩耗性:得られたフィラメントを長さ90cmに切断してサンプルとし、サンプルの先端に0.2g/Dの荷重をかけ、直径0.8mmの円柱状の金属棒に90度の角度で接触させながら、ストローク長70mm、40回/分の速度の条件で往復摩擦させ、1000回往復摩擦後のフィラメント(金属棒に接した部分)の状態を目視で観察し、次の2段階で評価した。
○:フィラメントに状態の変化も見られない。
△:フィラメントに若干のフィブリル化又は毛羽立ちが見られる。
×:フィラメントにフィブリル化又は毛羽立ちが多く見られる。
実施例1
ポリ乳酸として、L−乳酸98.5モル%、D−乳酸1.5モル%、融点170℃、メルトフローレート値が23g/10分、相対粘度1.85のポリ乳酸を用い、芳香族ポリエステルとして、イソフタル酸を15モル%共重合したPET(相対粘度1.37、融点217℃)を用いた。
上記構造式(1)で示される繰り返し単位を有する化合物として、BASF社製、JONCRYL ADR4368(以下、相溶化剤1とする)を用い、ポリ乳酸と芳香族ポリエステルの両成分に1質量%含有させてチップを得た。
それぞれのチップを減圧乾燥した後、芯成分がポリ乳酸、鞘成分が共重合PETとなるようにして同心芯鞘型複合溶融紡糸装置に供給して溶融紡糸を行った。このとき、複合比(芯鞘質量比:芯/鞘)を50/50とし、紡糸温度240℃で溶融紡糸を行った。紡出糸条を冷却した後、引取速度500m/分で引き取って未延伸糸条を得た。得られた未延伸糸に、150℃で3.0倍に第一段延伸を行い、続いて200 ℃で第二段延伸を行い、全延伸倍率が 5.0 倍となるようにしてポリエステル複合繊維(繊度が160dtexのもの)を得た。
ポリ乳酸として、L−乳酸98.5モル%、D−乳酸1.5モル%、融点170℃、メルトフローレート値が23g/10分、相対粘度1.85のポリ乳酸を用い、芳香族ポリエステルとして、イソフタル酸を15モル%共重合したPET(相対粘度1.37、融点217℃)を用いた。
上記構造式(1)で示される繰り返し単位を有する化合物として、BASF社製、JONCRYL ADR4368(以下、相溶化剤1とする)を用い、ポリ乳酸と芳香族ポリエステルの両成分に1質量%含有させてチップを得た。
それぞれのチップを減圧乾燥した後、芯成分がポリ乳酸、鞘成分が共重合PETとなるようにして同心芯鞘型複合溶融紡糸装置に供給して溶融紡糸を行った。このとき、複合比(芯鞘質量比:芯/鞘)を50/50とし、紡糸温度240℃で溶融紡糸を行った。紡出糸条を冷却した後、引取速度500m/分で引き取って未延伸糸条を得た。得られた未延伸糸に、150℃で3.0倍に第一段延伸を行い、続いて200 ℃で第二段延伸を行い、全延伸倍率が 5.0 倍となるようにしてポリエステル複合繊維(繊度が160dtexのもの)を得た。
実施例2〜8
ポリ乳酸と芳香族ポリエステルに含有させる相溶化剤1の含有量を表1に示す値となるように変更した以外は、実施例1と同様にして、ポリエステル複合繊維を得た。
ポリ乳酸と芳香族ポリエステルに含有させる相溶化剤1の含有量を表1に示す値となるように変更した以外は、実施例1と同様にして、ポリエステル複合繊維を得た。
実施例9〜11
相溶化剤1に代えて、BASF社製、JONCRYL ADR4300(以下、相溶化剤2とする)を用い、相溶化剤2の含有量を表1に示す値となるように変更した以外は、実施例1と同様にしてポリエステル複合繊維を得た。
相溶化剤1に代えて、BASF社製、JONCRYL ADR4300(以下、相溶化剤2とする)を用い、相溶化剤2の含有量を表1に示す値となるように変更した以外は、実施例1と同様にしてポリエステル複合繊維を得た。
比較例1
相溶化剤1を含有しない芳香族ポリエステルとポリ乳酸を用いた以外は、実施例1と同様にしてポリエステル複合繊維を得た。
相溶化剤1を含有しない芳香族ポリエステルとポリ乳酸を用いた以外は、実施例1と同様にしてポリエステル複合繊維を得た。
比較例2
相溶化剤としてカルボジイミド化合物(日清紡社製、カルボジライト LA−1)を用いた以外は、実施例2と同様にしてポリエステル複合繊維を得た。
相溶化剤としてカルボジイミド化合物(日清紡社製、カルボジライト LA−1)を用いた以外は、実施例2と同様にしてポリエステル複合繊維を得た。
参考例1
実施例1で芯成分として用いたポリ乳酸のみを用い、通常の紡糸装置を用いて紡糸温度200℃で溶融紡糸した以外は、実施例1と同様に行った。
実施例1で芯成分として用いたポリ乳酸のみを用い、通常の紡糸装置を用いて紡糸温度200℃で溶融紡糸した以外は、実施例1と同様に行った。
参考例2
実施例1で鞘成分として用いた芳香族ポリエステルのみを用い、通常の紡糸装置を用いて紡糸温度250℃で溶融紡糸した以外は、実施例1と同様に行った。
実施例1で鞘成分として用いた芳香族ポリエステルのみを用い、通常の紡糸装置を用いて紡糸温度250℃で溶融紡糸した以外は、実施例1と同様に行った。
実施例1〜11、比較例1〜2で得られた複合繊維、参考例1〜2で得られた繊維の特性値及び評価結果を表1に示す。
実施例12
芯成分として実施例1と同様のポリ乳酸、鞘成分として実施例1と同様の共重合PET99.5質量%と実施例1と同様のポリ乳酸0.5質量%を混合したものを用い、芯成分及び鞘成分ともに相溶化剤1を5質量%含有させてチップを得た。
それぞれのチップを減圧乾燥した後、同心芯鞘型複合溶融紡糸装置に供給して溶融紡糸を行った。このとき、複合比(芯鞘質量比:芯/鞘)を50/50とし、紡糸温度240℃で溶融紡糸を行った。紡出糸条を冷却した後、引取速度500m/分で引き取って未延伸糸条を得た。得られた未延伸糸について、第一段延伸を3.0倍、続いて200 ℃で第二段延伸を行い、全延伸倍率が5.0倍となるようにしてポリエステル複合繊維(繊度が160dtexのもの)を得た。
芯成分として実施例1と同様のポリ乳酸、鞘成分として実施例1と同様の共重合PET99.5質量%と実施例1と同様のポリ乳酸0.5質量%を混合したものを用い、芯成分及び鞘成分ともに相溶化剤1を5質量%含有させてチップを得た。
それぞれのチップを減圧乾燥した後、同心芯鞘型複合溶融紡糸装置に供給して溶融紡糸を行った。このとき、複合比(芯鞘質量比:芯/鞘)を50/50とし、紡糸温度240℃で溶融紡糸を行った。紡出糸条を冷却した後、引取速度500m/分で引き取って未延伸糸条を得た。得られた未延伸糸について、第一段延伸を3.0倍、続いて200 ℃で第二段延伸を行い、全延伸倍率が5.0倍となるようにしてポリエステル複合繊維(繊度が160dtexのもの)を得た。
実施例13〜17
鞘成分の共重合PETとポリ乳酸の混合割合と、芯成分と鞘成分中の相溶化剤1の含有量を表1に示す値となるように変更した以外は実施例12と同様に行い、ポリエステル複合繊維を得た。
鞘成分の共重合PETとポリ乳酸の混合割合と、芯成分と鞘成分中の相溶化剤1の含有量を表1に示す値となるように変更した以外は実施例12と同様に行い、ポリエステル複合繊維を得た。
実施例18
芯成分として実施例1と同様のポリ乳酸99.5質量%と共重合PET0.5質量%を混合したもの用い、鞘成分として実施例1と同様のポリ乳酸を用い、芯成分及び鞘成分ともに相溶化剤1を5質量%含有させてチップを得た。両チップを用いた以外は実施例12と同様に行い、ポリエステル複合繊維を得た。
芯成分として実施例1と同様のポリ乳酸99.5質量%と共重合PET0.5質量%を混合したもの用い、鞘成分として実施例1と同様のポリ乳酸を用い、芯成分及び鞘成分ともに相溶化剤1を5質量%含有させてチップを得た。両チップを用いた以外は実施例12と同様に行い、ポリエステル複合繊維を得た。
実施例19〜20
芯成分のポリ乳酸と共重合PETの混合割合を表2に示すように変更した以外は実施例18と同様に行い、ポリエステル複合繊維を得た。
芯成分のポリ乳酸と共重合PETの混合割合を表2に示すように変更した以外は実施例18と同様に行い、ポリエステル複合繊維を得た。
実施例21
芯成分として実施例1と同様のポリ乳酸99.5質量%と共重合PET0.5質量%を混合したもの用い、鞘成分として実施例1と同様の共重合PET99.5質量%とポリ乳酸0.5質量%混合したものを用い、芯成分及び鞘成分ともに相溶化剤1を5質量%含有させてチップを得た。両チップを用いた以外は実施例12と同様に行い、ポリエステル複合繊維を得た。
芯成分として実施例1と同様のポリ乳酸99.5質量%と共重合PET0.5質量%を混合したもの用い、鞘成分として実施例1と同様の共重合PET99.5質量%とポリ乳酸0.5質量%混合したものを用い、芯成分及び鞘成分ともに相溶化剤1を5質量%含有させてチップを得た。両チップを用いた以外は実施例12と同様に行い、ポリエステル複合繊維を得た。
実施例22〜23
芯成分のポリ乳酸と共重合PETの混合割合、鞘成分のポリ乳酸と共重合PETの混合割合を表2に示すように変更した以外は実施例21と同様に行い、ポリエステル複合繊維を得た。
芯成分のポリ乳酸と共重合PETの混合割合、鞘成分のポリ乳酸と共重合PETの混合割合を表2に示すように変更した以外は実施例21と同様に行い、ポリエステル複合繊維を得た。
実施例12〜23で得られたポリエステル複合繊維の特性値及び評価結果を表2に示す。
表1、2から明らかなように、実施例1〜23のポリエステル複合繊維は強度が高く、界面接着性と耐摩耗性ともに優れているものであった。中でも、実施例1〜5、9〜11の複合繊維は、相溶化剤の含有量が適量であったため、さらに界面接着性と耐摩耗性に優れており、強度も高かった。また、実施例12〜23のポリエステル複合繊維は、芯成分と鞘成分のいずれか一方又は両方において、他方の成分を混合したものであったため、界面接着性に優れ、強度も高いものであった。
一方、比較例1のポリエステル複合繊維では、相溶化剤を含有していなかったため、比較例2のポリエステル複合繊維は、構造式(1)で示される繰り返し単位を有していない相溶化剤を用いたものであったため、界面接着性と耐摩耗性ともに劣るものであり、強度も低いものであった。
Claims (2)
- 芳香族ポリエステルを鞘成分、ポリ乳酸を芯成分とする芯鞘型複合繊維であって、鞘成分と芯成分の少なくとも一方に下記構造式(1)で示される繰り返し単位を有する化合物が含有されていることを特徴とするポリエステル複合繊維。
- 下記条件(A)、(B)の少なくとも一方を満足する請求項1記載のポリエステル複合繊維。
(A)鞘成分中に芯成分のポリ乳酸が0.1〜15質量%含有されている。
(B)芯成分中に鞘成分の芳香族ポリエステルが0.1〜15質量%含有されている。
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JP2008183772A JP2010024556A (ja) | 2008-07-15 | 2008-07-15 | ポリエステル複合繊維 |
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JP2014070323A (ja) * | 2012-09-29 | 2014-04-21 | Kb Seiren Ltd | 複合繊維 |
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- 2008-07-15 JP JP2008183772A patent/JP2010024556A/ja active Pending
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