JP2011202289A - ポリマーアロイ繊維並びに繊維構造体 - Google Patents

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泰崇 加藤
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Abstract

【課題】二酸化炭素排出の面で環境適合性が高く耐摩耗性に優れ、さらには染め斑のないPLA/PPアロイ繊維および該繊維から構成される繊維構造体の提供。
【解決手段】ポリ乳酸系樹脂、ポリプロピレン系樹脂および相溶化剤からなり、相溶化剤が少なくともエチレンブロックとブチレンブロックからなるエラストマーであり、エチレンブロックとブチレンブロックとの質量比率が50:50〜10:90であり、酸無水物基、アミノ基、イミノ基から選択される少なくとも1種の官能基を含有することを特徴とする、ポリ乳酸系樹脂が島成分、ポリプロピレン系樹脂が海成分を形成する海島構造をもつポリマーアロイ繊維であり、糸斑U%(hi)が2%以下であり、かつ、単糸繊度CV値が1.5%以下であるポリマーアロイ繊維、および該ポリマーアロイ繊維を少なくとも一部に含むことを特徴とする繊維構造体によって解決できる。
【選択図】 なし

Description

本発明は、耐摩耗性を向上せしめたポリ乳酸繊維、特に染め斑を抑制すべく単糸間繊度バラツキを小さくせしめた繊維、およびそれを用いた繊維構造体に関するものである。
近年における地球温暖化や石油資源の枯渇の問題に対処すべく、植物由来のプラスチックを使用する検討が盛んに行われている。これは、植物由来のプラスチックを使用することにより、石油の使用量を抑えることができると共に、プラスチックの使用後に燃焼処理を行ったときに大気中の二酸化炭素の収支が変化しないというカーボンニュートラルの概念に基づいてその使用が推奨されているためである。
その中でもポリ乳酸は、生分解性を有する樹脂の中では比較的高い機械的特性や化学的特性を有している。さらに、近年の量産スケールでの低コスト合成法の確立により、樹脂成型物やフィルム、衣料や産業資材用繊維として使用されはじめている。ポリ乳酸が汎用樹脂として拡大しない大きな理由のひとつとして、耐摩耗性が低いことが挙げられる。自動車内装用、特に強い擦過を受けるカーペット等に用いた場合には、ポリ乳酸の毛倒れが容易に生じるとともに、削れが起こり、場合によっては穴が開くこともある。そのため、耐久性が要求されない用途でしか採用できなかった。
これに対して、ポリ乳酸と他の樹脂とを併用して、ポリ乳酸の表面露出を抑制することで物性を改良する工夫がなされている。しかし、このような改良の場合には、植物由来の樹脂に石油由来の樹脂を配合することから、本来の狙いである前記カーボンニュートラルとしての効果は減少する。そこで最近の考え方として、成形体全体のどれだけが植物由来で得られるものであるかを示す指標として「植物度」が使われ始めており、その度合いが高いほど環境に与える負荷が少ないものとして認識されつつある。
また、樹脂ごとに、製造、輸送、販売、使用、廃棄、再利用まで各段階での環境負荷の大きさを示す指標として、LCA(ライフサイクルアセスメント)があり、その度合が低いほど環境に与える負荷が少ないことが知られている。カーボンニュートラルの観点から、ポリ乳酸と併用する石油由来の樹脂として、低LCAの樹脂を用いることが好ましいとされている。さらに、ポリ乳酸と同時に溶融成形することから、石油由来の樹脂の融点は、ポリ乳酸の融点である約170℃に近いことが好ましい。以上のことから、石油由来の樹脂として、ポリプロピレンを用いる技術が知られており、例えば、特許文献1〜5に記載されている。
ポリ乳酸とポリプロピレンとを併用する方法としては、例えばポリ乳酸をポリプロピレンで被覆する技術が、例えば特許文献1に記載されている。該文献には、芯にポリ乳酸を、鞘にポリプロピレンを用いた芯鞘型複合繊維に関する技術が記載されており、該技術を用いることでポリ乳酸の表面露出がなくなるため、繊維の耐摩耗性が飛躍的に向上することを示唆している。しかし、該繊維はポリ乳酸およびポリプロピレンがともに連続構造をとっているため、例えば捲縮加工を施す際、芯成分と鞘成分との最適加工温度に差があることにより複合繊維としては捲縮度を高くできないという問題がある。また、ポリ乳酸とポリプロピレンとは相溶性が低いこと、および、芯鞘型複合繊維であるため単位体積当たりの界面積が小さいことから、例えばカーペット等として用いた場合、踏込みにより芯鞘界面で剥離が発生し、カーペットが白化することがあった。
この他にも、ポリ乳酸とポリプロピレンとを併用する方法として、例えばポリ乳酸をポリプロピレンとアロイ化して海島構造とする技術が、例えば特許文献2に記載されている。該技術では、アロイ化することにより単位体積当たりの界面積が大きくなり、外力が分散されて海島界面剥離を抑制している。該文献には、海成分にポリ乳酸を、島成分にポリプロピレンを用いたポリマーアロイ繊維に関する技術が記載されており、該技術を用いることで乾熱収縮を抑えられることを示唆している。しかし、該技術では海成分にポリ乳酸を用いておりポリ乳酸が表面に露出していること、および、ポリ乳酸とポリプロピレンとの相溶性の低さにより海島界面で剥離が発生することにより、耐摩耗性はほとんど向上していなかった。
また、ポリ乳酸とポリプロピレンとの相溶性を向上させるために、相溶化剤を配合する技術が、例えば特許文献3および特許文献4に記載されている。特許文献3には、相溶化剤として酸またはエポキシ基含有ポリオレフィンを用いる技術が記載されているが、該技術で用いられる相溶化剤ポリマーは相溶性が不十分で、繊維化が非常に困難であった。
これに対して、ガラス転移温度が低く室温でゴム状態であるアミン変性エラストマーを相溶化剤として用いる技術が、例えば特許文献4に記載されている。該技術では、成形体に外力を加えても相溶化剤が変形に追随して海島界面での剥離が改善されており、さらに、相溶化剤としてアミン変性品を用いることで、ポリ乳酸との親和性を高め、ポリ乳酸とポリプロピレンとの相溶性を高くしている。しかし、該技術のアロイポリマーを繊維化しようとしても、口金を出てからの伸長変形時の応力が極めて高いため、射出成形はできても、高ドラフトが要求される溶融紡糸では繊維化が非常に困難であった。
また、同一出願人の先願である特許文献5には、ポリマーの粘度比や相溶化剤、口金背面圧力を規定することで溶融紡糸を可能にし、ポリマーアロイ繊維を得ることができる技術が記載されているが、繊維および繊維構造体への加工はできていたものの、単糸間繊度バラツキが大きく、染め斑の原因となっていた。
特開2008−280665号公報 特開2008−138299号公報 特開2006−077063号公報 特開2008−111043号公報 特願2008−332097号公報
本発明は、二酸化炭素排出の面で環境適合性が高く耐摩耗性に優れ、さらには染め斑のないPLA/PPアロイ繊維および該繊維から構成される繊維構造体を提供することを課題とする。
上記課題は、ポリ乳酸系樹脂(A)、ポリプロピレン系樹脂(B)および下記に示す相溶化剤(C)からなり、ポリ乳酸系樹脂(A)が島成分、ポリプロピレン系樹脂(B)が海成分を形成する海島構造をもつポリマーアロイ繊維であり、糸斑U%(hi)が2%以下であり、かつ、単糸間バラツキを示す繊度CV値が1.5%以下であるポリマーアロイ繊維、および該ポリマーアロイ繊維を少なくとも一部に含むことを特徴とする繊維構造体によって解決することができる。ここで、相溶化剤(C)は少なくともエチレンブロックとブチレンブロックからなるエラストマーであり、エチレンブロックとブチレンブロックとの質量比率が50:50〜10:90であり、酸無水物基、アミノ基、イミノ基から選択される少なくとも1種の官能基を含有する。
本発明では、植物由来のプラスチックを使用しているため環境に優しく、また、耐摩耗性を飛躍的に向上せしめ、さらに、染め斑のないPLA/PPアロイ繊維およびそれからなる繊維構造体を提供することができる。
原糸の耐摩耗性測定装置の概要図
本発明のポリマーアロイ繊維は、ポリ乳酸系樹脂(A)とポリプロピレン系樹脂(B)と相溶化剤(C)とがアロイ化されたポリマーを繊維化したものである。ここで、アロイ化とは、複数のポリマーを混合し、新たな特性を持たせる操作である。本発明のポリマーアロイ繊維は、ポリ乳酸系樹脂(A)を島成分、ポリプロピレン系樹脂(B)を海成分とした海島構造を持つものであり、相溶化剤(C)の少なくとも一部が海島界面に存在して、海成分と島成分との親和性を高める役割を果たしている。
ポリ乳酸系樹脂(A)としては、後述のように、ポリ乳酸系樹脂(A)とポリプロピレン系樹脂(B)との粘度比が高いほど、すなわちポリ乳酸系樹脂(A)の溶融粘度が高いほど、繊維化しやすく、また、耐摩耗性が高くなる。そのため、ポリ乳酸系樹脂(A)の重量平均分子量は8万以上であることが好ましく、10万以上がより好ましい。さらに好ましくは12万以上である。また、分子量が35万を越えると、紡糸性や延伸性が低下するため、結果として分子配向性が悪くなり繊維強度が低下することがある。そのため、重量平均分子量は35万以下が好ましく、30万以下がより好ましい。さらに好ましくは25万以下である。上記重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定し、ポリスチレン換算で求めた値である。
ポリプロピレン系樹脂(B)としては、後述のように、ポリプロピレン系樹脂(B)とポリ乳酸系樹脂(A)との粘度比が低いほど、すなわちポリプロピレン系樹脂(B)の溶融粘度が低いほど、繊維化しやすく、また、耐摩耗性が高くなる。一方、ポリプロピレン系樹脂(B)の溶融粘度が低すぎると繊維化した後の強度および耐摩耗性が低くなるため、ある程度の溶融粘度が必要である。これらのことから、ポリプロピレン系樹脂(B)としてはJIS K7210(1999)にもとづいて測定したメルトフローレート(MFR)が、30〜100g/10分であることが好ましく、50〜90g/10分であることがより好ましい。また、バイオポリプロピレン樹脂を用いてもよい。ポリプロピレン系樹脂(B)には、着色顔料としてカーボンブラック、酸化チタン、酸化亜鉛、硫酸バリウム、酸化鉄などの無機顔料の他、シアニン系、スチレン系、フタロシアイン系、アンスラキノン系、ペリノン系、イソインドリノン系、キノフタロン系、キノクリドン系、チオインディゴ系などの有機顔料等を使用することができる。
本発明では、ポリ乳酸系樹脂(A)を島、ポリプロピレン系樹脂(B)を海とした海島構造を持つポリマーアロイ繊維とすることが必要である。ポリ乳酸系樹脂(A)を島成分、ポリプロピレン系樹脂(B)を海成分とすることで、耐摩耗性の低いポリ乳酸系樹脂(A)の繊維表面への露出を抑制し、耐摩耗性を向上することができる。
摩耗の原因の一つとして、ポリ乳酸系樹脂(A)とポリプロピレン系樹脂(B)との界面で剥離が起こると、クラック等が形成され、そこから摩耗が進行することがあげられる。このことから、界面剥離の抑制は耐摩耗性を向上する上で非常に重要なことである。本発明では、海島構造を持つポリマーアロイとすることで、共連続構造を持つポリマーアロイ繊維や芯鞘型複合繊維と比べて、海島界面の比界面積を大きくすることができ、界面剥離を抑制し、耐摩耗性を向上することができる。
ポリマーアロイを溶融紡糸する際に、用いる2種のポリマーの相溶性が小さいと、吐出後の口金直下でバラス効果による紡糸線のふくらみが発生し、繊維化できないことが知られている。このため、2種のポリマー双方に対して相溶性の高い化合物を相溶化剤として用いることで繊維化しやすくなることが知られている。
ポリ乳酸系樹脂(A)とポリプロピレン系樹脂(B)も相溶性が小さい組み合わせであり、環境適合性を高めるべくポリ乳酸系樹脂(A)の組成の割合を大きくしようとすると、繊維化が困難となる。これに対して、ポリ乳酸系樹脂(A)およびポリプロピレン系樹脂(B)の双方に相溶性の高い、以下に詳述する相溶化剤(C)を用いると繊維化しやすくなる。
本発明の相溶化剤(C)は、少なくともエチレンブロックとブチレンブロックからなるエラストマーであって、エチレンブロックとブチレンブロックとの質量比率が50:50〜10:90であり、かつ酸無水物基、アミノ基、イミノ基から選択される少なくとも1種の官能基を含有することが必要である。ここで、エラストマーとは、常温でゴム状の弾力性を示すポリマーのことである。相溶化剤(C)はポリ乳酸系樹脂(A)およびポリプロピレン系樹脂(B)の双方と親和性が高いものを用いることで、両者の界面に存在して相溶性を高める役割を果たす。これにより、海島界面剥離を抑制することができ、耐摩耗性が向上する。
相溶化剤(C)は、上記の官能基を含有することでポリ乳酸系樹脂(A)との親和性を高めることができ、耐摩耗性向上につながる。また、アミノ基の有効性は実施例に記載のとおりであり、酸無水物基、イミノ基もアミノ基と同様に、極性が高くポリ乳酸のカルボニル基との親和性が高く、かつ加水分解性などポリ乳酸を分解させる性質を持たないため、本発明の範囲内である。また、エチレンとブチレンとの合計量に占めるエチレンの質量比率を50以下とすることにより、ポリプロピレン系樹脂(B)との親和性を高めることができ、耐摩耗性向上につながり、エチレンの質量比率を10重量%以上とすることにより相溶化剤のエラストマーとすることができる。さらにエラストマーであることにより、繊維に外力が加わり海島界面に歪みが生じた際にも、相溶化剤自体の変形が歪みに追随し、海島界面での剥離を抑制することができ、耐摩耗性が向上する。相溶化剤(C)としては、上記の条件を満たすものであればよく、例えば、スチレン系エラストマーやアクリル系エラストマー等が挙げられる。
本発明の繊維の糸斑U%(hi)は2%以下である必要があり、1.5%以下であることが好ましく、1%以下であることがより好ましい。2%以下であると染色後の染め斑を抑制することができる。
本発明の繊維は、単糸繊度CV%が1.5%以下である必要があり、1.2%以下であることが好ましく、1%以下であることがより好ましい。1.5%以下であると染色後の染め斑を抑えることができる。
染色工程において、繊度の大きな部分は分子配向が小さいために染料が多く吸尽されることが知られている。このことから、繊度に斑があると染め斑の原因となる。繊度の斑の評価法として糸斑U%と単糸繊度CV%が知られている。糸斑U%はマルチフィラメントについて繊維長方向の総繊度の斑を評価する手法であり、単糸繊度CV%はマルチフィラメント内の単糸間の繊度斑を評価する手法である。糸斑U%(hi)が2%以下で単糸繊度CV%が1.5%以下である場合には染め斑が発生しないが、どちらか一方の値が大きいと繊度斑が存在し、染め斑の原因となる。
本発明では、ポリ乳酸系樹脂(A)を島成分、ポリプロピレン系樹脂(B)を海成分とすることが必要である。また、相溶化剤(C)は全海島界面を覆うことが望ましい。このため、ポリ乳酸系樹脂(A)、ポリプロピレン系樹脂(B)および相溶化剤(C)の合計量を100重量部としたときの各成分の比率は、ポリ乳酸系樹脂(A)9.5〜45重量部、ポリプロピレン系樹脂(B)90〜55重量部、相溶化剤(C)0.5〜30重量部であることが好ましく、ポリ乳酸系樹脂(A)19〜40重量部、ポリプロピレン系樹脂(B)80〜60重量部および相溶化剤(C)1〜15重量部であることがより好ましい。
ポリ乳酸系樹脂(A)を9.5重量部以上(ポリプロピレン系樹脂(B)を90重量部以下)とすることで植物度が高く、環境適合性の高い繊維とすることができる。一方、ポリプロピレン系樹脂(B)がポリ乳酸系樹脂(A)よりも多いことで、ポリプロピレン系樹脂(B)が海成分になりやすくなり、これにより、耐摩耗性が高い繊維とすることができる。このことから、ポリ乳酸系樹脂(A)を45重量部以下(ポリプロピレン系樹脂(B)を55重量部以上)とすることが好ましい。
また、相溶化剤を0.5重量部以上とすることで、繊維に外力が加わり海島界面に歪みが生じた際に相溶化剤の変形が歪みに追随して耐摩耗性を向上せしめる、エラストマーとしての効果が発現する。一方、30重量部以下とすることで、アロイポリマーの伸長粘度を低くでき、糸斑が向上する。
本発明の繊維は、繊維横断面における島成分の分散径が0.15μm以下であることが好ましく、0.10μm以下であるとより好ましい。こうすることで、海島界面の比界面積を十分大きくすることができ、界面剥離やこれに起因した摩耗を抑制することができる。また、繊維表層に露出する、耐摩耗性の低い島成分(ポリ乳酸系樹脂(B))の島一つあたりの露出面積を小さくすることができ、摩耗を抑制することができる。
本発明の繊維は、破断伸度は40%〜150%が好ましく、45%〜130%より好ましい。破断伸度40%以上であることで耐摩耗性が向上し、150%以下であることで繊維強度が高くなる。
このような特徴を有する本発明のポリマーアロイ繊維は、織物、編物、不織布、パイル織物等の立毛体、詰め綿等といった繊維構造体に加工して用いることができる。繊維構造体の用途としては、産業用資材、衣料、インテリア製品等といったものがあげられる。その中でも特に、自動車用オプションマットやカーペットとして有効に活用することができる。
以下に本発明のポリマーアロイ繊維の製造方法を示す。
前記したポリ乳酸系樹脂(A)、ポリプロピレン系樹脂(B)、相溶化剤(C)の組み合わせにおいて、ポリ乳酸系樹脂(A)、ポリプロピレン系樹脂(B)および相溶化剤(C)の合計量を100重量部として、ポリ乳酸系樹脂(A)9.5〜45重量部、ポリプロピレン系樹脂(B)90〜55重量部、相溶化剤(C)0.5〜30重量部としてそれぞれ計量し、ブレンドすることが好ましい。この際、吸湿しやすいポリ乳酸系樹脂(A)は予め80〜150℃、減圧下、もしくは窒素雰囲気下で乾燥しておき、乾燥後は吸湿防止容器等にストックしておく。ポリ乳酸系樹脂(A)の溶融紡糸前の吸湿率は、好ましくは0.05重量%以下、より好ましくは0.02重量%以下、最も好ましくは0.008重量%以下である。
また、ポリ乳酸系樹脂(A)、ポリプロピレン系樹脂(B)、相溶化剤(C)それぞれの相対的な溶融粘度の関係、及び海成分を形成するポリプロピレン系樹脂(B)の溶融粘度を特定の範囲にすることが重要である。本発明の目的を達成するためには、均一性が高いアロイ相構造であって、かつ繊維表面にポリ乳酸系樹脂(B)がほとんど露出しない構造とし、さらに島成分分散径が0.15μm以下であることが好ましく、そのためには、以下の溶融粘度特性であることが好ましい。
2種のポリマーをブレンドする際、粘度の高いポリマーが島成分になり、粘度の低いポリマーが海成分になることが知られている。また、紡糸時には、粘度の低いポリマーが、大きなせん断のかかる口金内壁付近に集中するため、粘度の高いポリマーの繊維表面への露出が抑制される。このことから、ポリプロピレン系樹脂(B)とポリ乳酸系樹脂(A)との粘度比が低いことで、ポリプロピレン系樹脂(B)が海成分となり、また、島成分となるポリ乳酸系樹脂(A)の繊維表面への露出を抑えることができる。一方、ポリ乳酸系樹脂(A)とポリプロピレン系樹脂(B)との粘度比が近いと、島成分の分散径の小さな海島構造を形成しやすい。このことから、温度230℃、ずり速度6.1(1/sec)での溶融粘度測定において、ポリ乳酸系樹脂(A)の溶融粘度ηAと、ポリプロピレン系樹脂(B)の溶融粘度ηBとの粘度比(ηA/ηB)が1.3〜10である必要があり、1.8〜9であることがより好ましい。更に好ましくは3〜8である。
また、アロイポリマーの紡糸性を高くすべく伸長粘度を低くするために、海成分を形成するポリプロピレン系樹脂(B)の溶融粘度ηBは、200Pa・s以下である必要があり、50〜150Pa・sであることが好ましい。200Pa・s以下であることでアロイポリマーの伸長粘度が低くなり紡糸性が向上する。また、50Pa・s以上であることで繊維強度を高くすることができる。さらに相溶化剤(C)の溶融粘度ηCは、海成分を形成するポリオレフィン系樹脂(B)よりも高いことが好ましい。ηC>ηBの関係を満足させることで、相溶化剤(C)がポリ乳酸系樹脂(A)とポリオレフィン系樹脂(B)の界面に効果的に作用し、より少量の相溶化剤でアロイ相構造が安定したものとなり好ましい。相溶化剤(C)のより好ましい溶融粘度は、ηA>ηC>ηBを満足する溶融粘度にすることである。
次に、上記ポリマー特性およびブレンド比率の組み合わせにて、1軸混練機や2軸混練機等を用いて混練して一旦冷却した後チップ化するか、もしくは溶融状態のまま連続して紡糸装置に送り込み、計量した後、溶融紡糸を行い、ポリマーアロイの繊維化を行う。相溶化剤(C)の添加タイミングは、ポリ乳酸系樹脂(A)とポリプロピレン系樹脂(B)の混練時に合わせて添加すればよく、添加方法は、相溶化剤をそのまま混練機に供給してポリ乳酸系樹脂(A)、ポリプロピレン系樹脂(B)とともに同時混練してもよいし、相溶化剤(C)を高濃度に含有したマスターペレットを予め作製しておき、それをポリ乳酸系樹脂(A)およびポリプロピレン系樹脂(B)のペレットと混合して混練機に供給してもよい。溶融押出における混練時のジャケット温度は、ポリ乳酸系樹脂(A)の融点(以下Tmと記載)を基準に、Tm+5〜Tm+50℃で行い、混練の剪断速度を300〜9800(1/sec)とすることが好ましく、装置にもよるが、二軸押出混練機(同方向、軸径20mm、L/D45)では軸回転数を200rpm以上にすることが好ましい。この範囲のジャケット温度および剪断速度とすることで、均一性が高いアロイ相構造とし、かつ島成分のドメインサイズを十分小さくすることが可能になる。また、ジャケット温度は樹脂の着色を抑制するためにも低い方が好ましく、Tm+5〜Tm+30℃であることがより好ましい。同様に、上記のアロイ相構造を壊さず、かつ着色を防止するために、紡糸温度もできるだけ低温で行うことが好ましく、Tm+30〜Tm+70℃の範囲で行うことが好ましい。より好ましい紡糸温度はTm+30〜Tm+50℃である。
また、紡糸パック内での島ドメインの再凝集を抑制してドメイン径を制御するために、ハイメッシュの濾層(#100〜#200)やポーラスメタル、濾過径の小さい不織布フィルター(濾過径5〜30μm)、パック内ブレンドミキサー(スタティックミキサーやハイミキサー)を口金上に配置してもよい。この中でも、複数の線径の金属不織布からなる多層フィルターが最もドメイン径の制御に効果的である。また、多層フィルターでのブレンド効果を高めるために、多層フィルターのコア部分である不織布の厚みは0.3〜3mmとすることが好ましい。厚みがある方がよりブレンド効果は高まるが、フィルターが厚すぎるとフィルター背面圧によりフィルター破れが発生しやすくなることから、より好ましくは0.4〜2mm、さらに好ましくは0.5〜1mm厚である。
本発明に用いるポリ乳酸系樹脂(A)とポリプロピレン系樹脂(B)は、非相溶系ポリマーであるため、ブレンド界面には高い界面張力が働き、溶融体は極めて弾性項が強い挙動を示してバラス効果による膨らみが発生する。そのためバラス効果による糸条の膨らみを抑制するとともに、安定して伸長・細化させて紡糸性を向上させるためには、口金面温度を210〜230℃とし、該口金面温度における口金背面圧力を1〜5MPaにする必要がある。さらに、口金吐出孔内のポリマー平均流速を0.05〜0.50m/秒とすることが好ましい。吐出したフィラメントは、モノフィラメントであっても、マルチフィラメントであっても良い。
口金面温度は、ポリマーの分子運動性を高めて吐出直後の島成分の緩和を促進させる狙いがある。210℃以上とすることで、島ドメインが速やかに緩和し、ポリマーの伸長流動を阻害しにくくすることができ、230℃以下とすることで紡糸時のポリ乳酸系樹脂(A)の分解を抑制することができる。また、口金背面圧力は、口金吐出孔内にてポリマー中に貯蔵される弾性エネルギー量と相関があるパラメーターである。一般的に溶融紡糸では、ギアポンプにおけるポリマーの計量性確保のために口金背面圧を5MPa以上とするが、この条件で上記アロイポリマーを溶融紡糸すると口金孔におけるせん断応力が大きく、繊維の糸斑U%が大きくなってしまい、染め斑という問題につながっていた。口金背面圧力が5MPa以下のとき、貯蔵される弾性エネルギーが小さいことからポリマーの伸長流動は安定するが、一方で、口金背面圧力が1MPaを下回ると、吐出孔の計量性が失われ、吐出が不安定になる。このため、口金背面圧は1〜5MPaであることが必要であり、より好ましくは1〜4MPa、さらに好ましくは1〜3MPaである。また、口金吐出孔内のポリマー平均流速は、0.05m/秒以上とすることで生産性が向上し、0.50m/秒以下とすることで、島成分の変形倍率を小さく抑えることが可能になり、吐出直後の島成分の緩和促進と、巻き取りまでの伸長変形を安定させることができ、紡糸線上での大変形(高ドラフト化)が可能になる。口金吐出孔内のポリマー平均流速は、より好ましくは0.07〜0.40m/秒である。口金吐出孔の形状は、通常の丸断面、Y断面、三角断面、四角断面、扁平断面あるいはこれらの中空断面等、公知のものを用いることができ、用途に応じたものを選択することができる。例えば、カーペット用途には、丸断面以外であると圧縮弾性や嵩高性が高くなり好ましい。
また、一般的にポリマーアロイの溶融紡糸においては、紡出糸条の伸長流動領域を口金面からできるだけ近く(吐出されてから、細化変形が完了するまでの距離を短く)することで、単糸間の繊度バラツキを小さくできることが知られており、例えば、特許文献5では、口金面から冷却開始点までの距離(口金面深度)を150mm以下、好ましくは120mm以下、さらに好ましくは80mm以下としている。しかしながら、本発明のポリマーアロイにおいては、特異的に、単糸間の繊度バラツキを小さくするために、紡出糸条の伸長流動領域を口金面からできるだけ長く(吐出されてから、細化変形が完了するまでの距離を長く)することが必要であることを見出しており、具体的には口金面深度を150mmより大きく、300mmより小さくすることが必要である。口金面深度を150mmより大きくすることで単糸繊度CV%を1.5%以下に抑えることができる。また、口金面深度を300mmより小さくすることで冷却風により均一冷却することができ、外乱による冷却への影響が小さくなる。
冷却方法は、一方向から冷却するユニフロータイプのチムニーでも、糸条の内側から外側へ、もしくは糸条の外側から内側へ冷却風を当てる環状チムニーでもよいが、好ましくは糸条の内側から外側へ冷却する環状チムニーが、均一冷却できる点で好ましい。この際に、マルチフィラメントに直交する方向から、マルチフィラメントに気体を当てて冷却することが望ましい。なお、冷却風に用いられる気体について特に制限は無いが、常温で安定な(反応性が極めて低い)、アルゴン、ヘリウムなどの希ガスや、窒素、あるいは空気が好ましく用いられ、この中でも安価に供給できる窒素、あるいは空気が特に好ましく用いられる。また、このときの冷却風の速度は、0.3〜1m/秒が好ましく、0.4〜0.8m/秒がより好ましい。また、冷却風の温度は、均一冷却するために低い方が好ましいが、エアコンディショニングのコストとの兼ね合いから、15〜25℃にすることが現実的であり好ましい。
上記のように、特定のポリマーの組み合わせにより本発明の海島構造が形成され、さらに紡糸温度の制御により海島構造を壊すことなく吐出させることができる。くわえて、口金吐出孔での口金背面圧および吐出線速度の制御や、冷却方法およびその条件を制御することにより、はじめて本発明のポリマーアロイ繊維を安定して紡出・引き取ることができる。また、紡出したマルチフィラメントは公知のポリプロピレン用紡糸仕上げ剤を給油して被覆するが、このときの付着量は、糸に対し、純油分として0.3〜3重量%(油剤成分:水または低粘度鉱物油=10:90の場合は、糸に対してエマルジョンを3〜30重量%)付着させる。
また、紡糸速度は300m/分以上で引取り、一旦巻き取るか、連続して延伸を行う。300m/分以上で巻き取ることで生産性を高めることができる。好ましい紡糸速度は500〜5000m/分である。5000m/分以下で紡糸することで、紡糸時の糸切れを抑制し、生産性を高めることができる。ただし、本発明のポリマーアロイ繊維は未延伸の状態で放置すると配向緩和が生じやすく、延伸するまでの時間差があると、未延伸パッケージ間で容易に繊維の強伸度特性や熱収縮特性のバラツキが生じる。そのため、1工程で紡糸、延伸までを行う直接紡糸延伸法を採用することが好ましい。
延伸は、1段もしくは2、3段で行えばよいが、本発明の繊維は高速延伸を行うと歪み硬化による繊維径異常(繊維長手方向の直径斑)が発生しやすいことから、2段以上の多段で延伸することが好ましい。この時の1段目の延伸は、延伸温度80〜140℃で行なう必要があり、このときの延伸倍率は1.5〜3倍であることが好ましい。80℃以上とすることで均一延伸でき、140℃以下とすることで延伸ローラーへの融着を防ぐことができる。2段目以降の延伸は、延伸温度80〜140℃、延伸倍率1.1〜3倍で行うことが好ましい。例えば、2段延伸を行う場合の例として、第1加熱ロールにて紡糸速度600m/分で引き取り、引き続き第1加熱ロール−第2加熱ロール間にて1段目の延伸を行う。このときの第2加熱ロール周速度を1800m/分(3倍延伸)、第1加熱ロール温度80℃、第2加熱ロール温度110℃とする。更に第2加熱ロール−第3加熱ロール間にて2段目の延伸を行う。このときの第3加熱ロール周速度を3240m/分(2−3加熱ロール間倍率1.8倍)とし、第3加熱ロール温度140℃にて熱セットを行い、第4ロール(非加熱ロール、周速度3200m/分)を介してパッケージに巻き取る。ここで、総合倍率は得られる延伸糸の伸度が40〜150%になる様に設定すればよい。上記の延伸温度および延伸倍率に設定することで、工程安定性が高く、かつ高強度で糸斑(ウスター斑U%)の小さい延伸糸にすることができる。
また、嵩高加工には仮撚加工装置やエアジェットスタッファ装置を用いることができる。なお、エアジェットスタッファ装置とは、BCFカーペット用捲縮糸の製造に汎用的に用いられている捲縮加工装置であり、エアジェットの乱流効果を用いてフィラメントに不規則なもつれループ状の嵩高性を付与する装置である。
以下に本発明を具体的に説明する。実施例中の測定方法は以下を用いた。
A.ポリ乳酸系樹脂(A)の重量平均分子量
試料のクロロホルム溶液にテトラヒドロフランを混合し測定溶液とした。これをゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)(Waters社製Waters2690)で測定し、ポリスチレン換算で重量平均分子量Mwを求めた。
B.ポリプロピレン系樹脂(B)のMFR
メルトインデクサー(宝工業社製MX−101−B)を用いて、JIS K7210(1999)に示される、条件M(温度230℃、荷重2.16kg)で測定したときの10分間の溶融樹脂の吐出量(g)を測定してMFRとした。
C.U%(hi)(糸斑)
Zellweger社製UT−4を用いて、供糸速度200m/分、ツイスター回転数12000rpm、測定長200mの条件で、U%(half inert)を測定した。
D.繊維の強度および破断伸度
試料をオリエンテック(株)社製“テンシロン”(TENSILON)UCT−100でJIS L1013(1999) 8.5.1標準時試験に示される定速伸長条件で測定した。この時の掴み間隔は25cm、引張り速度は30cm/分、試験回数10回であった。なお、破断伸度はS−S曲線における最大強力を示した点の伸びから求めた。
E.ポリマーアロイ繊維の島成分の平均分散径
ポリマーアロイ繊維の横断面スライスをOs/Ru染色し、透過型電子顕微鏡(TEM)(4万倍)にてブレンド状態を観察・撮影した。連続したマトリックス成分(灰色部分)を海成分、略円形状を成して分散した成分(白色部分と黒色部分の2種)を島成分とする海島構造となっている。ここで、白色部分がポリ乳酸系樹脂(A)であり、黒色部分が相溶化剤(C)、黒色と白色の2層構造になっているものがポリ乳酸系樹脂(A)と相溶化剤(C)の2層構造ドメインである。島成分を構成するポリ乳酸系樹脂(A)の分散径を直径換算(島成分を円と仮定し、島成分の面積から換算される直径)して求めたものを島成分分散径とし、20個の島成分の平均値を平均分散径とした。
F.溶融粘度
東洋精機社製キャピログラフ1Bを用いて、窒素雰囲気下で、温度230℃、せん断速度6.1(1/sec)で測定した。
G.原糸の耐摩耗性
装置概要を図1に示す。この装置のローラーにサンドペーパー(#400)を巻き付け、以下の条件にてローラーを回転させて原糸切断までのローラー回転数を測定した。装置条件はローラー直径80mm、ローラーへの原糸巻付角度90°、ローラー回転速度40m/分、荷重0.2cN/dtexとして、ローラー回転数50回転以上を合格とした。また、ローラーに原糸を水平に導入し、鉛直に垂らすべく、ガイドにて糸道を規制した。
H.単糸繊度CV%
オートバイブロ式繊度測定器DC−11(Denier computer)(サーチ社製)を用い、測定試料長を25mm、荷重を測定試料の繊度(デニール換算値)×0.4gの条件下で測定試料に1880Hzの振動を加え振動数が安定したことを確認した後、20f以上の糸条では20本、20f以下の糸条では全数測定し下記の式から算出した。
単糸繊度CV%=(σ/X)×100
ただしXは単糸繊度の平均値およびσは標準偏差である。
I.染め斑
繊維を筒編にし、下記の条件で染色した。
染色温度:120℃、染色時間:60分、染料:Kayalon Polyester Rubine BL−S 200、染料濃度:2%owf、浴比=1:50、浴pH:4.5。
染め斑を次の基準で判断した。すなわち、全く染め斑が認められないものを◎、ほとんど染め斑が認められないものを○、染め斑が認められるものを×とした。
[ポリ乳酸]
(L1)光学純度99.8%eeのL乳酸から製造したラクチドを、ビス(2−エチルヘキサノエート)スズ触媒(ラクチド対触媒モル比=10000:1)存在させて窒素雰囲気下180℃で240分間重合を行い、ポリ乳酸P1を得た。得られたポリ乳酸の重量平均分子量は23.3万であった。
(L2)光学純度99.8%eeのL乳酸から製造したラクチドを、ビス(2−エチルヘキサノエート)スズ触媒(ラクチド対触媒モル比=10000:1)存在させて窒素雰囲気下180℃で150分間重合を行い、ポリ乳酸P2を得た。得られたポリ乳酸の重量平均分子量は15万であった。
[ポリプロピレン]
(P1)プライムポリマー製“S119”(MFR:60g/10分、融点166℃、結晶融解熱量110J/g、溶融粘度128Pa・s)
(P2)プライムポリマー製“ZS1337A”(MFR:26g/10分、融点165℃、結晶融解熱量107J/g、溶融粘度195Pa・s)
[相溶化剤]
(C1)アミノ基変性SEBS(スチレン−エチレン・ブチレン−スチレン共重合体)(JSR製“ダイナロン”8630P、スチレン含有量15重量%、エチレン/ブチレン=30/70、MFR15g/10分(230℃、21.2N))
(C2)アミノ基変性SEBS(スチレン−エチレン・ブチレン−スチレン共重合体)(旭化成ケミカルズ製“タフテック”MP10、スチレン含有量30重量%、エチレン/ブチレン=60/40、MFR4g/10分(230℃、21.2N))
(C3)エポキシ基含有ポリオレフィン(住友化学製“ボンドファースト7M”、エチレン/グリシジルメタクリレート(6%)/アクリル酸メチル(27%)共重合体)。
[実施例1]
ポリ乳酸系樹脂(A)としてポリ乳酸L1(融点177℃、溶融粘度770Pa・s)、ポリプロピレン系樹脂(B)としてP1、相溶化剤としてC1(溶融粘度555Pa・s)をそれぞれ30重量部、65重量部、5重量部の割合(合計100重量部)でチップブレンドし、二軸押出混練機(同方向2軸、軸径20mm、L/D45)を備えた紡糸装置のホッパーに仕込んだ。なお、ポリ乳酸系樹脂(A)は110℃、真空下で約5時間乾燥し、水分率を80ppmに調湿した。二軸押出混練機のジャケット温度を200℃、混練時の軸回転数を300rpmとして混練しながら溶融ポリマーを温度230℃に保温された紡糸ブロックに導き、さらにギアポンプにて計量・排出し、内蔵された紡糸パックに溶融ポリマーを導き、紡糸口金から紡出した。なお、紡糸パックの口金直上には絶対濾過径10μmのSUS不織布フィルター(不織布厚み:0.6mm)を組み込んだ。口金はスリット長0.9mm、スリット幅0.12mm、孔深度0.35mmのY孔を用い、口金背面圧は2.4MPaであった。また、口金面温度は223℃であった。口金面下162mmの位置に吹出孔上端がくるように環状チムニー(冷却長30cm)を設置して冷却風温度20℃、冷却風速度0.5m/秒で糸条を冷却固化し、給油装置により2段給油した。紡糸油剤にはポリエーテル系油剤15、低粘度鉱物油85の割合で混合したものを糸に対して10%付着させた(純油分として1.5%owf)。
さらに第1加熱ロール(以下、1FRと記載)の温度を80℃として紡糸速度700m/分にて引き取った後、第2加熱ロール(以下、1DRと記載)の温度を110℃として1960m/分にて1段目の延伸(延伸倍率:2.8倍)を行い、さらに第3加熱ロール(以下、2DRと記載)の温度を140℃として3500m/分にて2段目の延伸(延伸倍率:1.79倍)を行い、第4ロール(以下、3DR)にて周速度3500m/分にて糸条を冷却した後、巻取張力22g(0.1cN/dtex)、巻取速度3448m/分(弛緩率1.5%)で巻き取った。得られたポリマーアロイ繊維から構成されるマルチフィラメントは、225デシテックス、15フィラメントであった。該マルチフィラメントを延べ200万m製糸した結果、紡糸、延伸工程において糸切れ、単糸流れ等は発生せず、極めて安定していた。
得られた繊維の横断面のTEM観察を行ったところ、均一に分散した海島構造をとっており、島成分平均分散径は直径換算で0.09μmであった。また、該糸断面の切片をアルカリエッチングしてポリ乳酸を溶解除去して観察したところ、島成分が欠落しており、ポリ乳酸が島成分を形成していることが確認された。また、得られた繊維の繊維物性および耐摩耗性は良好であった。
[実施例2]
ポリ乳酸系樹脂(A)、ポリプロピレン系樹脂(B)をそれぞれ47.5重量部、47.5重量部とした以外は、実施例1と同様にしてマルチフィラメントを得た。製糸性は、実施例1にはやや劣るものの安定していた。得られた繊維の横断面のTEM観察を行ったところ、均一に分散した海島構造をとっており、島成分平均分散径は直径換算で0.14μmとやや大きくなっていた。また、該糸断面の切片をアルカリエッチングしてポリ乳酸を溶解除去し観察したところ、島成分が欠落しており、ポリ乳酸が島成分を形成していることが確認された。また、得られた繊維はU%がやや悪いものの、その他繊維物性および耐摩耗性は実用に十分耐えうるものであった。
[実施例3]
ポリ乳酸系樹脂(A)を22重量部、ポリプロピレン系樹脂(B)を52重量部、相溶化剤(C)を26重量部とした以外は、実施例1と同様にしてマルチフィラメントを得た。得られた繊維の繊維物性および耐摩耗性は良好であった。
[実施例4]
繊維の島成分分散径を大きくすべく混練時の軸回転数を50rpmとした以外は、実施例1と同様にしてマルチフィラメントを得た。得られた繊維はU%がやや劣るものの、その他繊維物性および耐摩耗性は実用に十分耐えうるものであった。
[実施例5]
繊維の伸度を高くすべく2段目の延伸を行わなかった以外は、実施例1と同様にしてマルチフィラメントを得た。得られた繊維の強度はやや低いものの実用に十分耐えうるものであり、耐摩耗性は良好であった。
[実施例6]
ポリ乳酸系樹脂(A)として、ポリ乳酸L2を用いた以外は実施例1と同様にしてマルチフィラメントを得た。得られた繊維のU%および耐摩耗性は実施例1に比べわずかに劣ったものの、実用に十分耐えうるものであった。
Figure 2011202289
[比較例1]
ポリプロピレン系樹脂(B)を70重量部とし、相溶化剤(C)を添加しなかった以外は実施例1と同様にして紡糸を行ったところ、口金直下でのバラス効果により膨らみが生じ、さらに紡糸線上での伸長変形が不安定であった。得られた繊維のU%および単糸繊度CV%は非常に悪く、染め斑が発生した。さらに、耐摩耗性も非常に低かった。
[比較例2]
相溶化剤(C)として、相溶化剤C2を用いた以外は実施例1と同様にして紡糸を行ったところ繊維は得られたものの、紡糸時の単糸切れが多く製糸性が悪かった。また、糸斑U%(hi)が大きく、染め斑が発生した。
[比較例3]
相溶化剤(C)として、相溶化剤C3を用いた以外は実施例1と同様にして紡糸を行ったところ、比較例1よりは改善したものの口金直下でのバラス効果によりふくらみが生じた。得られた繊維のU%および単糸繊度CV%は非常に悪く、染め斑が発生した。さらに、耐摩耗性も非常に低かった。
[比較例4]
ポリ乳酸系樹脂(A)としてポリ乳酸L2、ポリプロピレン系樹脂(B)としてポリプロピレンP2を用いた以外は実施例1と同様にして紡糸を行ったところ、紡糸時の単糸切れが発生した。また、得られた繊維の耐摩耗性が低下していた。得られた繊維の横断面のTEM観察を行ったところ、海島構造と共連続構造が混在しており、島成分分散径が1.3μmと極めて大きく、繊維表面へのポリ乳酸の露出が多くみられた。
Figure 2011202289
[実施例7]
口金面深度を230mmとした以外は実施例1と同様にして紡糸を行ったところ、製糸性、繊維物性ともに実施例1にはやや劣るものの、実用には十分耐えうるものであった。
[比較例5]
口金面深度を150mmとした以外は実施例1と同様にして紡糸を行ったところ、紡糸時の単糸切れが多く製糸性が悪かった。また、単糸繊度CV%が大きく、布帛に加工した際に染め斑が発生した。
[実施例8]
口金をスリット長0.75mm、スリット幅0.10mm、孔深度0.35mmのY孔とした以外は実施例1と同様にして紡糸を行ったところ、口金背面圧が3.7MPaであった。このとき、製糸性、繊維物性ともに実施例1にはやや劣るものの、実用には十分耐えうるものであった。
[比較例6]
口金を直径0.42mm、孔深度0.63mmの丸孔とした以外は実施例1と同様にして紡糸を行ったところ、口金背面圧が5.8MPaであった。このとき、紡糸時の単糸切れが多く製糸性が悪かった。また、糸斑U%(hi)が大きく、染め斑が大きかった。
Figure 2011202289

Claims (6)

  1. ポリ乳酸系樹脂(A)、ポリプロピレン系樹脂(B)および下記に示す相溶化剤(C)からなる、ポリ乳酸系樹脂(A)が島成分、ポリプロピレン系樹脂(B)が海成分を形成する海島構造をもつポリマーアロイ繊維であり、糸斑U%(hi)が2%以下であり、かつ、単糸繊度CV%が1.5%以下であるポリマーアロイ繊維。
    ここで、相溶化剤(C)は、少なくともエチレンブロックとブチレンブロックからなるエラストマーであり、エチレンブロックとブチレンブロックとの質量比率が50:50〜10:90であり、酸無水物基、アミノ基、イミノ基から選択される少なくとも1種の官能基を含有する。
  2. ポリ乳酸系樹脂(A)、ポリプロピレン系樹脂(B)および相溶化剤(C)の合計量を100重量部として、ポリ乳酸系樹脂(A)9.5〜45重量部、ポリプロピレン系樹脂(B)90〜55重量部、相溶化剤(C)0.5〜30重量部である請求項1に記載のポリマーアロイ繊維。
  3. 繊維横断面における島成分分散径が0.15μm以下である、請求項1または請求項2に記載のポリマーアロイ繊維。
  4. 破断伸度が40〜150%である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリマーアロイ繊維。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリマーアロイ繊維からなる繊維構造体。
  6. ポリ乳酸系樹脂(A)、ポリプロピレン系樹脂(B)および相溶化剤(C)の3成分ブレンド系原料を混練して紡糸装置に送り込み計量した後、口金面温度が210〜230℃、口金背面圧力が1〜5MPaとなる口金にて吐出したフィラメントを口金面から150mmより遠く300mmより近いところで冷却を開始して冷却し、給油した後、300m/分以上で引き取り、延伸温度80〜140℃で延伸をして巻き取ることを特徴とするポリマーアロイ繊維の製造方法。
    ここで、ポリ乳酸系樹脂(A)およびポリプロピレン系樹脂(B)は、温度230℃、ずり速度6.1(1/sec)における溶融粘度をそれぞれηA、ηBとしたときの粘度比(ηA/ηB)が1.3〜10であり、かつηB≦200Pa・sである。
    また、相溶化剤(C)は少なくともエチレンブロックとブチレンブロックからなるエラストマーであって、エチレンブロックとブチレンブロックとの質量比率が50:50〜10:90であり、かつ酸無水物基、アミノ基、イミノ基から選択される少なくとも1種の官能基を含有する。
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