JP2010018927A - ポリエステルナノファイバー - Google Patents

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Abstract

【課題】制電性およびその耐久性に優れ、かつ良好な形態安定性と耐熱性を有するポリエステルナノファイバーを提供することにある。同時にカチオン染料で染色可能なカチオン可染性ポリエステルナノファイバーを提供する。
【解決手段】繊維軸方向に直交する断面における繊維径が10〜1000nmであり、エステル形成性スルホン酸金属塩化合物をポリエステルを構成する全酸成分に対して0.1〜10モル%となる量の共重合したポリエステルからなるポリエステルナノファイバーとする。
【選択図】なし

Description

本発明は制電性およびその耐久性に優れ、かつ良好なカチオン可染性を有するポリエステルナノファイバーに関するものである。
近年、ナノオーダーの繊維直径(1nm〜1000nm)をもつナノファイバーが注目を集め、実用化へ向けて製造法や応用に関する技術開発が進められている。ナノファイバーは比表面積効果、ナノサイズ効果、分子配列効果等の特有の効果を有しており、このことを利用して、衣料用素材、産業資材製品、生活資材製品、環境資材製品、医療・衛生製品、燃料電池や二次電池の電極や隔膜、再生医療用材料、超高性能フィルター、電子ペーパー、ウエアラブルセル、防護服等への応用が検討されている。このようなナノファイバーを製造する方法として、エレクトロスピニング法(特許文献1)、ポリマーブレンド紡糸法(特許文献2)、海島型複合紡糸法(特許文献3、4)などが提案されている。これらの方法を、多くの優れた特性を有するために合成繊維として広く用いられているポリエステルに適用することによってポリエステルナノファイバーが得られことが知られている。ポリエステルナノファイバーは、通常のポリエステル繊維に比較して、その比表面積が数百倍に増えることによって吸水性や吸着性が高くなる等の通常ポリエステル繊維では得られない特長が発現するようになり、これらの特長を活かして新規用途開発が進められている。
しかしながら、ポリエステル繊維は本来的に電気抵抗が著しく高く、静電気を帯びやすいという欠点を有し、衣類においては着脱時の不快感、裾のまとわりつき、汚れの付着等の問題があり、特に作業衣として用いる場合は可燃ガスへの引火の危険性や、精密機器類の破壊の問題がある。このような静電気の発生に伴う問題は、繊維の直径が通常のポリエステル繊維(繊維直径12〜22μm)から極細繊維(繊維直径6〜10μm)、超極細繊維(繊維直径2〜6μm)、ナノファイバー(繊維直径10〜1000nm)へと繊維直径が小さくなって繊維の比表面積が大きくなるのに従って摩擦耐電圧が高くなるため深刻になる。これは繊維の比表面積が大きくなるほど摩擦による静電気の発生量が大きくなる一方で電気の漏洩は繊維直径にあまり影響されないためであると考えられる。
従来、ポリエステル繊維が帯電しやすいという欠点を改良するために、ポリエステル繊維に制電性を付与する方法として、例えばポリエステルに実質的に非相溶性のポリオキシアルキレングリコール、ポリオキシアルキレングリコール・ポリアミドブロック共重合体、ポリオキシアルキレングリコール・ポリエステルブロック共重合体あるいはポリオキシアルキレングリコール・ポリエステル・ポリアミドブロック共重合体等のポリオキシアルキレン化合物を混合させる方法、更にこれらに有機や無機のイオン性化合物を配合する方法が知られている(特許文献5〜9参照)。
しかしながら、かかる方法はいずれもポリエステルと非相溶性の制電剤を練り込むものであり、ナノオーダーの繊維直径をもつナノファイバーへの適用は強度が低下するという問題があり、これまで素材そのものが制電性に優れたポリエステルナノファイバーは得られていなかった。
一方、ポリエステル繊維の染色性を改良する方法として、ポリエステル主鎖中に、5−Naスルホイソフタル酸や5−テトラ−n−ブチルホスホニウムスルホイソフタル酸の如きスルホン酸塩基を有するイソフタル酸成分を共重合することによってはカチオン染料で染色可能とする方法が知られている(特許文献10、11)。このようなカチオン可染性ポリエステル繊維は、分子吸光係数が大きいカチオン染料による鮮明発色効果や分散染料染めの通常ポリエステル繊維との混用による異染効果を有し、更にカチオン染料がイオン結合によってカチオン可染性ポリエステル繊維に染着しているので、ポリウレタン繊維など他繊維への染料汚染が防止され、染色堅牢度に優れるため工業的に広く使用されている。
しかしながら、かかるカチオン可染性ポリエステル繊維は、通常のポリエステル繊維に比較して、著しく静電気が発生しやすくなるという重欠点があり種々の方法が提案されている(特許文献12)が未だ解決されていないのが現状である。
こうした現状に鑑み、ナノファイバーの特徴を有し制電性に優れ且つカチオン可染性のポリエステルナノファイバー繊維の開発が大いに望まれていた。
特開2007−303015号公報 特公昭60−28922号公報 特開2005−325494号公報 特開2007−9339号公報 特公昭39−5214号公報 特公昭44−31828号公報 特公昭60−11944号公報 特開昭53−80497号公報 特開昭60−39413号公報 特公昭34−10497号公報 特公平3−61766号公報 特開2007−56420号公報
本発明は、上記背景に鑑みなされたもので、その目的は、制電性およびその耐久性に優れ、同時にカチオン染料で染色可能なカチオン可染性ポリエステルナノファイバーを提供することを課題とする。
上記目的は、驚くべきことに、特定量のエステル形成性スルホン酸基含有化合物を共重合した芳香族ポリエステルからなり、繊維直径が10〜1000nmであるポリエステルナノファイバーによって達成されることを見出した。上述したように、本来的に電気抵抗が著しく高いポリエステル繊維においては、繊維直径が通常のポリエステル繊維(繊維直径12〜22μm)から極細繊維(繊維直径6〜10μm)、超極細繊維(繊維直径2〜6μm)、ナノファイバー(繊維直径10〜1000nm)へと繊維直径が小さくなり、繊維の比表面積が大きくなるに従って摩擦帯電圧が高くなる。これは繊維の比表面積が大きくなるほど摩擦による静電気の発生量が大きくなる一方で電気の漏洩は繊維直径にあまり影響されないためであると考えられる。
一方、エステル形成性スルホン酸基含有化合物を共重合したカチオン可染性のポリエステルが通常ポリエステルに比較して更に著しく静電気が発生しやすいことは、上述したように当業者が熟知する周知の事実である。
従って、上記のエステル形成性スルホン酸基含有化合物を共重合した、カチオン可染性ポリエステルのナノファイバーが優れた制電性を呈するということは当業者をもってしても到底想到し得ないことである。
本発明のポリエステルナノファイバーが優れた制電性を発現するメカニズムについては未だ明らかではないが、本来的に疎水性のポリエステル自体の吸湿率がナノファイバー化することによって大きくなることが知られおり、ナノファイバー表面への気相水分の吸着によって表面水分層が形成され、該表面水分層を媒体として、スルホン酸基にイオン結合した対イオンがイオン伝導し放電するメカニズムが想定される。
本発明はこれらの知見に基づきさらに検討を繰り返した結果完成したものである。
すなわち、本発明によれば、
繊維軸方向に直交する断面における繊維径が10〜1000nmであり、エステル形成性スルホン酸基含有化合物をポリエステルを構成する全酸成分に対して0.1〜10モル%となる量の共重合したポリエステルからなるポリエステルナノファイバー
が提供される。
更に以下に定義する繊維直径変動係数(CV)が0〜20%であるポリエステルナノファイバーであることが好ましい。
繊維直径変動係数(CV)=σ/X×100(%)
[但し、Xは平均繊維直径(繊維直径は繊維横断面における長径と短径の平均値)、σは繊維直径分布の標準偏差を示す。]
又ナノファイバーが長繊維であり、破断強度が0.4〜4.5cN/dtex、破断伸度が7〜60%%であるポリエステルナノファイバーであり、さらに好ましくはエステル形成性スルホン酸化合物が下記一般式(1)で表わされるエステル形成性スルホン酸金属塩化合物および/または下記一般式(2)で表わされるエステル形成性スルホン酸ホスホニウム塩化合物であるポリエステルナノファイバー。
Figure 2010018927
式(1)
(式中、A1は芳香族基又は脂肪族基、X1はエステル形成性官能基、X2はX1と同一若しくは異なるエステル形成性官能基又は水素原子、Mは金属、mは正の整数を示す。)
Figure 2010018927
式(2)
(式中、A2は芳香族基又は脂肪族基、X3はエステル形成性官能基、X4はX3と同一若しくは異なるエステル形成性官能基又は水素原子、R1、R2、R3及びR4はアルキル基及びアリール基よりなる群から選ばれた同一又は異なる基、nは正の整数を示す。)
が提供される。
特定のエステル形成性スルホン酸基含有化合物を用いることにより本発明のポリエステルナノファイバーはカチオン染料で染色可能であるとともに制電性およびその耐久性に優れるものとなる。
本発明のポリエステルナノファイバーは基体ポリエステルに特定のエステル反応性スルホン酸基含有化合物を共重合した共重合ポリエステルからなる。ここでポリエステルとは、テレフタル酸を主たる二官能性カルボン酸成分とし、エチレングリコール、トリメチレンテレングリコール、テトラメチレングリコールなどを主たるグリコール成分とするポリアルキレンテレフタレート系ポリエステルを主たる対象とする。
また、テレフタル酸成分の一部を他の二官能性カルボン酸成分で置換えたポリエステルであってもよく、及び/又はグリコール成分の一部を他のジオール化合物で置換えたポリエステルであってもよい。
ここで使用されるテレフタル酸以外の二官能性カルボン酸としては、例えばイソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、β−ヒドロキシエトキシ安息香酸、p−オキシ安息香酸、アジピン酸、セバシン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸の如き芳香族、脂肪族、脂環族の二官能性カルボン酸をあげることができる。
また、上記グリコール以外のジオール化合物としては例えばシクロヘキサン−1,4−ジメタノール、ネオペンチルグリコール、ビスフェノールA、ビスフェノールSの如き脂肪族、脂環族、芳香族のジオール化合物及びポリオキシアルキレングリコール等をあげることができる。
更に、ポリエステルが実質的に線状である範囲でトリメリット酸、ピロメリット酸の如きポリカルボン酸、グリセリン、トリメチp−ルプロパン、ペンタエリスリトールの如きポリオールなどを使用することができる。
かかるポリエステルは任意の方法によって合成される。代表的なポリエステルであるポリエチレンテレフタレート(PET)の場合、通常、テレフタル酸とエチレングリコールとを直接エステル化反応させるか、テレフタル酸ジメチルの如きテレフタル酸の低級アルキルエステルとエチレングリコールとをエステル交換反応させるか又はテレフタル酸とエチレンオキサイドとを反応させるかしてテレフタル酸のグリコールエステルおよび/又はその低重合体を生成させる第一段階の反応と、第一段階の反応生成物を減圧下加熱して所望の重合度になるまで重縮合反応させる第二段階の反応によって製造される。
本発明においては、上記の基体ポリエステルに、エステル形成性スルホン酸基含有化合物が共重合されていることが必要である。かかるエステル形成性スルホン酸基含有化合物としてはエステル形成性官能基を有するスルホン酸基含有化合物であれば特に限定する必要はなく、下記一般式(1)で表わされるエステル形成性スルホン酸金属塩化合物および/または下記一般式(2)で表わされるエステル形成性スルホン酸ホスホニウム塩化合物を好ましいものとしてあげることができる。
Figure 2010018927
式(1)
Figure 2010018927
式(2)
上記一般式(1)において、A1は芳香族基又は脂肪族基を示し、好ましくは炭素数6〜15の芳香族炭化水素基または炭素数10以下の脂肪族炭化水素基である。特に好ましいA1は、炭素数6〜12の芳香族炭化水素基、とりわけベンゼン環である。X1はエステル形成性官能基を示し、具体例として
Figure 2010018927
式(3)
(但し、R′は低級アルキル基またはフェニル基、aおよびdは1以上の整数、bは2以上の整数である。)等をあげることができる。X2はX1と同一若しくは異なってエステル形成性官能基又は水素原子を示し、なかでもエステル形成性官能基であることが好ましい。Mはアルカリ金属またはアルカリ土類金属であり、mは正の整数である。なかでもMがアルカリ金属(例えばリチウム、ナトリウムまたはカリウム)であり、かつmが1であるものが好ましい。
上記一般式(1)で表わされるエステル形成性スルホン酸金属塩化合物の好ましい具体例としては、3,5−ジカルボメトキシベンゼンスルホン酸ナトリウム、3,5−ジカルボメトキシベンゼンスルホン酸カリウム、3,5−ジカルボメトキシベンゼンスルホン酸リチウム、3,5−ジカルボキシベンゼンスルホン酸ナトリウム、3,5−ジカルボキシベンゼンスルホン酸カリウム、3,5−ジカルボキシベンゼンスルホン酸リチウム、3,5−ジ(β−ヒドロキシエトキシカルボニル)ベンゼンスルホン酸ナトリウム、3,5−ジ(β−ヒドロキシエトキシカルボニル)ベンゼンスルホン酸カリウム、3,5−ジ(β−ヒドロキシエトキシカルボニル)ベンゼンスルホン酸リチウム、2,6−ジカルボメトキシナフタレン−4−スルホン酸ナトウリム、2,6−ジカルボメトキシナフタレン−4−スルホン酸カリウム、2,6−ジカルボメトキシナフタレン−4−スルホン酸リチウム、2,6−ジカルボキシナフタレン−4−スルホン酸ナトリウム、2,6−ジカルボメトキシスフタレン−1−スルホン酸ナトリウム、2,6−ジカルボメトキシナフタレン−3−スルホン酸ナトリウム、2,6−ジカルボメトキシナフタレン−4,8−ジスルホン酸ナトリウム、2,6−ジカルボキシナフタレン−4,8−ジスルホン酸ナトリウム、2,5−ビス(ヒドロエトキシ)ベンゼンスルホン酸ナトリウム、α−ナトリウムスルホコハク酸などをあげることができる。上記エステル形成性スルホン酸金属塩化合物は1種のみを単独で用いても、2種以上併用してもよい。
上記一般式(2)において、A2は芳香族基又は脂肪族基を示し、上記一般式(1)におけるA1の定義と同じである。X3はエステル形成性官能基を示し、上記一般式(1)におけるX1の定義と同じであり、X4はと同一若しくは異なってエステル形成性官能基又は水素原子を示し、上記一般式(1)におけるX2の定義と同じである。R1、R2、R3およびR4はアルキル基およびアリール基よりなる群から選ばれた同一又は異なる基を示す。nは正の整数であり、なかでも1であるものが好ましい。
上記エステル形成性スルホン酸ホスホニウム塩化合物の好ましい具体例としては、3,5―ジカルボキシベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩、3,5―ジカルボキシベンゼンスルホン酸エチルトリブチルホスホニウム塩、3,5―ジカルボキシベンゼンスルホン酸ベンジルトリブチルホスホニウム塩、3,5―ジカルボキシベンゼンスルホン酸フェニルトリブチルホスホニウム塩、3,5―ジカルボキシベンゼンスルホン酸テトラフェニルホスホニウム塩、3,5―ジカルボキシベンゼンスルホン酸ブチルトリフェニルホスホニウム塩、3,5―ジカルボキシベンゼンスルホン酸ベンジルトリフェニルホスホニウム塩、3,5―ジカルボキシベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩、3,5―ジカルボキシベンゼンスルホン酸エチルトリブチルホスホニウム塩、3,5―ジカルボキシベンゼンスルホン酸ベンジルトリブチルホスホニウム塩、3,5―ジカルボキシベンゼンスルホン酸フェニルトリブチルホスホニウム塩、3,5―ジカルボキシベンゼンスルホン酸テトラフェニルホスホニウム塩、3,5―ジカルボキシベンゼンスルホン酸エチルトリフェニルホスホニウム塩、3,5―ジカルボキシベンゼンスルホン酸ブチルトリフェニルホスホニウム塩、3,5―ジカルボキシベンゼンスルホン酸ベンジルトリフェニルホスホニウム塩、3―カルボキシベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩、3―カルボキシベンゼンスルホン酸テトラフェニルホスホニウム塩、3―カルボメトキシベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩、3―カルボメトキシベンゼンスルホン酸テトラフェニルホスホニウム塩、3,5―ジ(β―ヒドロキシエトキシカルボニル)ベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩、3,5―ジ(β―ヒドロキシエトキシカルボニル)ベンゼンスルホン酸テトラフェニルホスホニウム塩、3―(β―ヒドロキシエトキシカルボニル)ベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩、3―(β―ヒドロキシエトキシカルボニル)ベンゼンスルホン酸テトラフェニルホスホニウム塩、4―ヒドロキシエトキシベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩、2,6―ジカルボキシナフタレン―4―スルホン酸テトラブチルホスホニウム塩、α―テトラブチルホスホニウムスルホコハク酸等をあげることができる。上記エステル形成性スルホン酸ホスホニウム塩は1種のみを単独で用いても、2種以上併用してもよい。
上記エステル形成性スルホン酸基含有化合物をポリエステルに共重合するには、前述したポリエステルの合成が完了する以前の任意の段階で、好ましくは第2段階の反応の初期以前の任意の段階で添加すればよい。2種以上併用する場合、それぞれの添加時期は任意でよく、両者を別々に添加しても、予め混合して同時に添加してもよい。
上記エステル形成性スルホン酸基含有化合物としては、制電性のレベルがより優れる傾向があるので、上記一般式(1)で表わされるエステル形成性スルホン酸金属塩化合物であることが好ましい。
一方、ナノファイバーに対して強度などの物性が特に要求される用途においては、溶融粘度が低く、高重合度化に有利なため高強度繊維が得られ易い、上記一般式(2)で表わされるエステル形成性スルホン酸ホスホニウム塩化合物が好ましい。
かかるエステル形成性スルホン酸基含有化合物の共重合割合は芳香族ポリエステルを構成する全酸成分(但し、エステル形成性スルホン酸基含有化合物を除く)に対して0.1〜10モル%となる量の範囲である必要がある。0.1モル%未満ではポリエステルナノファイバーの制電性発現の効果が不充分であり、逆にこの共重合割合が10モル%を超えると制電性発現効果は最早著しい向上を示さず、かえってポリエステルナノファイバーがバラけ難くなりナノファイバー群が形成されない。又耐熱性が低下し実用性に耐えられなくなる。この共重合割合は好ましくは0.5〜7モル%の範囲であり、なかでも1.0〜5モル%の範囲が、制電性とカチオン可染性とが共に優れ、かつ良好な形態安定性と耐熱性が得られるので特に好ましい。
上記式(1)、式(2)で表されるエステル形成性スルホン酸基含有化合物は下記数式1及び数式2を同時に満足する条件で混合使用することが好ましい。
3.0≦c+d≦5.0 (数式1)
0.2≦d/(c+d)≦0.7 (数式2)
[ここで、cは式(1)の化合物の共重合量(モル%)、dは式(2)の化合物の共重合量(モル%)を表す。]
(数式1の説明)
本発明において、ポリエステルBに共重合させる成分cと成分dの合計は酸成分を基準として、c+dが3.0〜5.0モル%の範囲である必要がある。3.0モル%より少ないと、常圧下でのカチオン染色では十分な染着を得ることができない。一方、5.0モル%より多くなると、得られるポリエステル糸の強度が低下するため実用に適さない。さらに染料を過剰に消費するため、コスト面でも不利である。
(数式2の説明)
また、成分cと成分dの成分比は、d/(c+d)が0.2〜0.7の範囲にある必要がある。0.2以下、つまり成分cの割合が多い状態では、スルホイソフタル酸金属塩による増粘効果により、得られるポリエステルの重合度を上げることが困難になる。一方、0.7以上、つまり成分dの割合が多い状態では、反応が遅くなり、さらに成分dの比率が多くなると分解が進むため重合度を上げることができない。さらに、成分dの比率多くなると熱安定性が悪化し、溶融紡糸段階で再溶融した際の熱分解による分子量の低下が大きくなるため、得られるポリエステル糸の強度が低下するため、好ましくない。
本発明のポリエステルナノファイバーを構成する、上記エステル形成性スルホン酸基含有化合物を共重合したポリエステルとしては、固有粘度(35℃、オルソクロロフェノール溶液で測定)が0.30〜1.0のものがよく、なかでも0.40〜0.70の範囲が、ナノファイバーの製造工程や加工工程における工程通過性や最終的に得られるナノファイバーおよびその繊維製品の物性等の観点から好適である。
本発明のポリエステルナノファイバーは、繊維軸に直交する断面における繊維径(繊維直径)が10〜1000nmの範囲である必要がある。繊維直径が1000nmを超えると制電性発現効果が低下する。制電性発現効果は繊維直径が小さくなるのに伴って向上するが、10nm未満になると制電性は最早著しい向上を示さなくなり、かえってナノファイバー同士の凝集力が過大になって個々のナノファイバーがばらけ難くなり、ナノファイバーの形成が困難となる。繊維直径の好ましい範囲は50〜900nmの範囲であり、更に好ましくは100〜800nmの範囲である。
本発明のポリエステルナノファイバーにおいては、以下に定義する繊維直径変動係数(CV)が0〜20%であることが好ましい。
繊維直径変動係数(CV)=σ/X×100(%)
但し、ここで言う繊維直径は繊維横断面における長径と短径の平均値とし、σは繊維直径分布の標準偏差、Xは平均繊維直径を示す。
この繊維直径変動係数(CV)は0〜20%の範囲が好ましく、さらに好ましくは0〜15%の範囲、なかでも0〜10%の範囲が特に好ましい。このCV値が小さいことは繊維直径のばらつきが少ないこと、すなわちナノレベルで繊維直径を精密にコントロールできることを意味する。ばらつきの少ないポリエステルナノファイバーを用いることにより、用途に合わせて繊維直径を設計することができ、効率的に商品設計を行うことができる。
本発明のポリエステルナノファイバーにおいては、その繊維形態が長繊維であっても、あるいは短繊維であってもよく、いずれであっても本発明の効果を奏することができるので、繊維形態は特に限定されない。しかし、ナノファイバー短繊維が主として不織布に限られるのに対し、ナノファイバー長繊維からは織物、編物、不織布のいずれの繊維構造物も容易に製造することができるので、用途的な広がりの面から、本発明のポリエステルナノファイバーは長繊維であるのが好ましい。
本発明のポリエステルナノファイバーにおいては、破断強度が0.4〜4.5cN/dtex、破断伸度が7〜60%であるのが、実用面から好ましい。さらに好ましくは、破断強度が1.5〜3.5cN/dtex、破断伸度が15〜40%の範囲である。
本発明のポリエステルナノファイバーを、上記のエステル形成性スルホン酸基含有化合物を共重合したポリエステルを用いて製造するには、格別の方法を採用する必要はなく、エレクトロスピニング法、ポリマーブレンド紡糸法(海成分溶出)海島型複合紡糸法(海成分溶出)等の、従来公知のナノファイバーの製造方法が任意に採用される。
エレクトロスピニング法において本発明のポリエステルナノファイバーを製造するには、上記のエステル形成性スルホン酸基含有化合物を共重合したポリエステルを溶剤で溶解して溶液になし、吐出ノズルの先端と基板上の間に高電圧を印加し、荷電した該溶液を噴射させて繊維化し、基板上に集積させればよい。この際、溶媒としてフェノール、ニトロベンゼン、o−クレゾール、ヘキサフルオロイソプロパノール等を用いることができる。なかでも、ヘキサフルオロイソプロパノールもしくはヘキサフルオロイソプロパノールとクロロホルムとの混合溶媒(混合重量比略1:1)が好適に用いられる。この方法により得られる繊維および繊維製品の形状は不織布に限定されるとともに、作製した不織布の繊維径はかなりばらつきがある。また、繊維の破断強度は通常の繊維に比べて非常に弱く、実用面には制約がある。
また、ポリマーブレンド法で本発明のポリエステルナノファイバーを製造する方法として、島成分として上記のエステル形成性スルホン酸基含有化合物を共重合したポリエステル、海成分として該島成分よりも同一溶剤に対して易溶解性のポリマーを用い、該島成分と該海成分とを溶融状態で押出混練機もしくは静止混練器等によって高混練して得た溶融混合物を紡糸した後、冷却固化して繊維化し、次いで得られた繊維を織物や編物あるいは不織布、綿等の繊維製品に加工した後、溶剤で海成分を除去することでナノファイバーからなる繊維製品とする方法をあげることができる。
具体的に混練を行う際の目安としては、組み合わせるポリマーにもよるが、押出混練機を用いる場合は、2軸押出混練機を用いることが好ましく、静止混練器を用いる場合は、その分割数は100万以上とすることが好ましい。この製造方法では、溶融ブレンドによって島相が形成されるため、本来的に島相の大きさがばらつくという問題を内包していると共にナノファイバー短繊維からなる集合体繊維であり、均質性や強度などの物性に劣るため用途的に制約される。
本発明のポリエステルナノファイバーを製造するのに最も好適な方法は海島型複合紡糸法で得た海島型複合繊維の海成分を溶剤で溶解して除去することにより島成分をナノファイバーとする方法(以後海島型複合紡糸法と略称す場合がある)である。この方法によれば本発明のポリエステルナノファイバーを均一な繊維直径と高い強度を具備せしめた状態で生産性良く製造することができる。
上記海島型複合紡糸法においては、海島型複合繊維の繊維軸に直交する断面における島成分の平均直径を10〜1000nmとし、その際島成分が芳香族ポリエステルを構成する全酸成分に対して0.1〜10モル%となる量のエステル形成性スルホン酸基含有化合物を共重合したポリエステルであることが好ましく、その後前記海成分の溶剤で処理して海成分を溶解除去することによって島成分のポリエステルナノファイバーを得ることができる。
海成分は、好ましくは同一溶剤に対する溶解速度が島成分の50倍以上であればいかなるポリマーであってもよいが、特に繊維形成性の良好なポリエステル、ポリアミド、ポリスチレン、ポリエチレンなどが好ましい。ポリエステルとして、アルカリ水溶液易溶解性ポリマーを用いることが好ましく、具体的にはポリ乳酸、超高分子量ポリアルキレンオキサイド縮合系ポリマー、ポリエチレングルコール系化合物共重合ポリエステル、ポリエチレングリコール系化合物と5−ナトリウムスルホン酸イソフタル酸との共重合ポリエステルが好適であり、中でもアルカリ易溶解性と海島断面形成性とを両立させるため、5−ナトリウムスルホイソフタル酸6〜12モル%と分子量4000〜12000のポリエチレングルコールを3〜10重量%共重合させた固有粘度が0.4〜0.6のポリエチレンテレフタレート系共重合ポリエステルが好ましい。ここで、5−ナトリウムイソフタル酸は親水性と溶融粘度向上に寄与し、ポリエチレングリコール(PEG)は親水性を向上させる。なお、PEGは分子量が大きいほど、その高次構造に起因すると考えられる親水性増加効果が大きくなるが、反応性が悪くなってブレンド系になるため、耐熱性・紡糸安定性などの点から好ましくなくなる。また、共重合量が10重量%以上になると、本来溶融粘度低下作用があるので、本発明の目的を達成することが困難になる。したがって、上記の範囲で、両成分を共重合することが好ましい。
また、海成分としてナイロン6は、ギ酸溶解性があり、ポリスチレン・ポリエチレンはトルエンなど有機溶剤に非常によく溶けるので島成分との関係で適宜選択することが好ましい。
上記の海成分と島成分からなる本発明の海島型複合繊維は、溶融紡糸時における海成分の溶融粘度が島成分の溶融粘度よりも大きいことが好ましい。かかる関係にある場合には、海成分の複合重量比率が40%未満と少なくなっても、島同士が接合したり、島成分の大部分が接合して海島型複合繊維とは異なるものになり難い。
好ましい溶融粘度比(海/島)は、1.1〜2.0、特に1.3〜1.5の範囲である。この比が1.1倍未満の場合には溶融紡糸時に島成分が接合しやすくなり、一方2.0倍を越える場合には、粘度差が大きすぎるために紡糸調子が低下しやすい。
海成分と島成分との好ましい溶融粘度比を上記範囲内にするには適切な海成分と島成分の選択により行うことが好ましい。好ましくは海成分の溶融粘度は80〜900Pa・s、島成分の溶融粘度は30〜500Pa・s好ましくは50〜300Pa・sである。
次に島数は、多いほど海成分を溶解除去してナノファイバーを製造する場合の生産性が高くなり、しかも得られるナノファイバーの細さも顕著となってナノファイバー特有の吸水性や吸着性が高くなる等の通常ポリエステル繊維では得られない機能性や柔らかさ、滑らかさ等の感性を表現することができる。この島数は100以上が好ましく、より好ましくは300〜1000である。島数が100未満の場合には、生産効率が低下し、島数が1000を超える場合は紡糸口金の製造コストが高くなるだけでなく、紡糸口金の加工精度自体も低下しやすくなるので10000以下とするのが好ましい。
次に、島成分の径は、10〜1000nmの範囲とする必要がある。島成分の平均直径が1000nmを超えると制電性発現効果が低下する。制電性発現効果は繊維直径が小さくなるのに伴って向上するが、10nm未満とするには海島複合繊維の島径を細くする必要があり、そのため海成分を除去してもナノファイバー同士の凝集力が過大になって個々のナノファイバーがばらけ難くなり、ナノファイバー群を形成するのが困難になる。
また、海島複合繊維断面内の各島は、その直径が均一であるほど海成分を除去して得られるナノファイバーの繊維直径をナノレベルで精密にコントロールできるので好ましい。ばらつきの少ないポリエステルナノファイバーを用いることにより、用途に合わせて繊維直径を設計することができ、効率的に商品設計を行うことができる。
前記の海島型複合繊維において、その海成分:島成分の比率は重量基準で10:90〜80:20であるのが好適である。特に20:80〜60:40の範囲が好ましい。かかる範囲であれば、島間の海成分の厚みを薄くすることができ、海成分の溶解除去が容易となり、島成分のナノファイバーへの転換が容易になるので好ましい。ここで海成分の割合が80%を越える場合には海成分の厚みが厚くなりすぎ、一方10%未満の場合には海成分の量が少なくなりすぎて、島間に接合が発生しやすくなる。
前記の海島型複合繊維は、例えば以下の方法により容易に製造することができる。すなわち、まず溶融粘度が高い海成分ポリマーと溶融粘度が低い島成分ポリマーとを、前者が海成分が溶融粘度が高く、島成分が同一溶融温度で低い条件で溶融紡糸し海島型複合繊維とする。ここで、海成分と島成分の溶融粘度の関係は重要であり、海成分の比率が小さくなって島間の厚みが小さくなると、海成分の溶融粘度が小さい場合には島間の一部の流路を海成分が高速流動するようになり、島間に接合が起こりやすくなるので好ましくない。
本発明に使用する海島型複合繊維の溶融紡糸に用いられる紡糸口金としては、島成分を形成するための中空ピン群や微細孔群を有するものなど任意のものを用いることができる。例えば中空ピンや微細孔より押し出された島成分とその間を埋める形で流路を設計されている海成分流とを合流し、これを圧縮することにより海島断面形成がなされるいかなる紡糸口金でもよい。好ましく用いられる紡糸口金例を図1に示すが、必ずしもこれらに限定されるものではない。なお図1は、中空ピンを海成分樹脂貯め部分に吐出してそれを合流圧縮する方式である。
吐出された海島型複合繊維は、冷却風によって固化され、溶融紡糸された後に、好ましくは400〜6,000m/分の紡糸速度で巻き取られる。生産性、工程性、品質(物性、均質性)など観点から、紡糸速度は1,500〜3,500m/分の範囲であるのがより好ましい。
紡出した海島型断面複合繊維を延伸する方法としては、紡出糸を一旦未延伸糸として巻き取り、次いで別途、延伸工程を通して延伸し、所望の強度・伸度・熱収縮特性を有する海島型複合繊維とする2工程法を採っても、あるいは、紡出糸を一旦巻き取ることなく一定速度でローラーに引き取り、引き続いて延伸工程をとおした後に巻き取る紡糸直結延伸法を採っても構わない。
上記の延伸工程においては、具体的には、通常、温度60〜220℃、好ましくは60〜190℃、さらに好ましくは75℃〜180℃の予熱ローラー上で予熱し、延伸倍率1.2〜6.0倍、好ましくは2.0〜5.0倍で延伸し、温度120〜220℃、好ましくは130〜200℃のセットローラーで熱セットが施される。予熱温度が不足する場合には、高倍率延伸を達成することが困難になる。また、熱セット温度が低すぎると収縮率が高すぎるようになり、逆に熱セット温度が高すぎると該海島型繊維の物性が著しく低下するようになるため好ましくない。
ここで、特に微細な島径を有する海島型複合繊維を高効率で製造するために、上述したような、通常のいわゆる配向結晶化を伴うネック延伸(配向結晶化延伸)に先立って、繊維の微細構造は変化させないで繊維直径のみを極細化する流動延伸工程を採用することができる。この際、流動延伸を容易とするため、水の如き熱容量の大きい媒体中で繊維を均一に予熱し、低速で延伸することが好ましい。このようにすることにより延伸時に流動状態を形成しやすくなり、繊維の微細構造の発達を伴わずに容易に延伸することができる。
このプロセスでは、特に海成分および島成分が共にガラス転移温度100℃以下のポリマーであることが好ましい。具体的には60〜100℃、好ましくは60〜80℃の範囲の温水バスに浸漬して均一加熱を施し、延伸倍率は10〜30倍、供給速度は1〜10m/分、巻取速度は300m/分以下、特に10〜300m/分の範囲で実施することができる。予熱温度不足や延伸速度が速すぎる場合には高倍率延伸が達成され難くなる傾向がある。
かかる流動状態で延伸された延伸糸は、その強伸度などの機械的特性を向上させるため、前述した通常の延伸工程により60〜220℃の温度で配向結晶化延伸される。延伸条件がこの範囲外となる温度では、得られる繊維の物性が不十分なものとなる傾向がある。なお、この延伸倍率は、溶融紡糸条件、流動延伸条件、配向結晶化延伸条件などによって変わってくるが、該配向結晶化延伸条件で延伸可能な最大延伸倍率の0.6〜0.95倍の延伸倍率で延伸するのが好ましい。
このようにして得られる海島型複合繊維の破断強度は0.4〜5.0cN/dtexが好ましく、さらに好ましくは2.0〜4.5cN/dtexの範囲であり、破断伸度は5〜40%が好ましく、さらに好ましくは7〜30%の範囲である。沸水収縮率は6〜30%の範囲が好ましい。これらの範囲から外れる場合は最終的に得られるナノファイバーの破断強度、破断伸度、沸水収縮率などの機械的特性が不充分なものになる傾向がある。
上記海島型複合繊維の破断強度、破断伸度、沸水収縮率などの機械的特性は、紡糸温度、延伸温度、延伸倍率、熱セット温度などの諸条件をコントロールすることにより調整することができる。
本発明の方法においては、このようにして得られる海島型複合繊維を海成分の溶剤で処理して海成分を溶出することによって、島成分を構成するエステル形成性スルホン酸基含有化合物を共重合したポリエステルがナノファイバーとして得られる。
海島型複合繊維から海成分を溶出することは、上記海島型複合繊維自体、あるいはこれを製織もしくは製編することにより得られる織編物などの布帛を、海成分の溶剤で処理して海成分を溶解除去することによって行うことが好ましい。
かかる溶剤としては該海成分を溶解することができる溶剤であれば特に限定されないが、海成分がアルカリ易溶解性(易加水分解性)ポリエステルの場合にはアルカリ加水分解剤の水溶液を好ましく挙げることができる。アルカリ加水分解剤で処理する方法としては、アルカリ加水分解剤の水溶液中で加熱処理する方法が好ましく採用される。この方法によれば海成分がアルカリ加水分解剤によって選択的に加水分解されると共に該加水分解による生成物(オリゴマーないしモノマー)が加水分解剤の水溶液中に容易に溶解、拡散することができるので、海成分の溶出を円滑に行うことができる。かかる加水分解剤としては、海成分がポリエステル系の易溶解性ポリマーである場合には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムのようなアルカリ金属化合物が好適であり、なかでも水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウムが特に好ましく用いられる。アルカリ水溶液の濃度、処理温度、処理時間は、使用するアルカリ化合物の種類により異なるが、濃度は10〜300g/L、温度は40℃〜180℃、処理時間は2分〜20時間の範囲で行うことが好ましい。また、海成分がポリアミドの場合には、ギ酸を用いて室温にて5分〜48時間処理することによって海成分の溶出を行うことができる。
以下、実施例および比較例をあげて本発明を具体的に説明する。ただし、本発明はこれらによって何ら限定されるものではない。各測定値は以下の方法で測定される値である。
(1)溶解速度測定
海・島成分の各々を0.3φ−0.6L×24Hの口金にて1000〜2000m/分の紡糸速度で糸を巻き取り、さらに残留伸度が30〜60%の範囲になるように延伸して、84dtex/24filのマルチフィラメントを作成する。これを各溶剤にて溶解しようとする温度で浴比100にて溶解時間と溶解量から、減量速度を算出した。
(2)ナノファイバーの繊維直径および繊維直径の均一性
海成分溶解除去後の微細繊維の30000倍TEM観察により、繊維径を求めた。ここで繊維径は膠着していない単糸の繊維径を測定した。ランダムに選択した50本の微細繊維の繊維繊維径データにおいて、平均繊維径(X)と標準偏差(σ)を算出し、以下で定義する繊維直径変動係数(CV)を算出した。
繊維直径変動係数(CV)=σ/X×100(%)
(3)ナノファイバーの破断強度、破断伸度
海島型複合繊維を用いて重量1g以上の筒編みを作成し、海成分を溶解除去し、その後筒編をほどき、室温で初期試料長100mm、引っ張り速度200mm/分として荷重−伸長曲線を求めた。繊度は、JIS−1015に記載の方法に準拠して測定した。破断強度は破断時の荷重値を繊度で割った値、破断伸度は破断時の伸長値から求めた。
(4)制電性
ナノファイバー試料は予め温度20℃、相対湿度65%の雰囲気中に一昼夜以上放置して調湿した後、スタチックオネストメーターを使用して電極に10KVを印加し、温度20℃、相対湿度65%において試料の初期帯電圧(V)と帯電圧の半減期(秒)を測定した。
(5)カチオン染料染色性:
布帛を精錬、プリセット後、Cathilon Black CDFH(保土谷化学(株)製カチオン染料)8%owfで芒硝3g/L、酢酸0.3g/Lを含む染浴中にて130℃で45分間染色後、ソーピング、乾燥、ファイナルセットを施した後、布帛の黒色度を視感判定する。評点2以下はカチオン染料可染繊維として不合格。
評価項目 評点 評価基準
カチオン染料染色性 1 汚染程度
2 淡色
3 中色
4 濃色
[実施例1]
島成分に、ポリエステルを構成する全酸成分に対してエステル反応性スルホン酸基含有化合物として5−ナトリウムスルホイソフタル酸を4.5モル%共重合したポリエチレンテレフタレート、海成分に、ポリエステルを構成する全酸成分に対して9モル%となる量の5−ナトリウムスルホイソフタル酸および共重合ポリエステル基準で3重量%となる量のポリエチレングリコール(平均分子量4000)とを共重合したポリエチレンテレフタレートを使用して、海成分:島成分を30:70の重量比率で、図1に示す海島型複合繊維紡糸口金を用い、紡糸温度280℃で溶融吐出し、島数836の海島型複合繊維の未延伸糸を巻取り速度1,000m/分で巻き取った。得られた未延伸糸を、延伸温度90℃、延伸倍率3.9倍でローラー延伸し、次いで170℃で熱セットして巻取り、61dtex/10filの延伸糸を得た。延伸糸の伸度は強度2.8cN/dtex、伸度18.0%であった。この延伸糸を常法に従って丸編地に製編した後、1.0%NaOH水溶液で60℃にて45%減量した。ここで、海島成分のアルカリ減量速度差は71倍であった。繊維断面を観察したところ、均一なナノファイバー群が形成されていた。得られたナノファイバーの繊維直径、繊維直径変動係数、破断強度、破断伸度、制電性、カチオン染料可染性は表1に示す通りであった。
[実施例2および3]
紡糸時の吐出量を変更する以外は実施例1と同様に行って繊維直径がそれぞれ485nmおよび240nmであるナノファイバーを作製した。測定結果を表1に示す。
[実施例4〜7]
島成分ポリマーにおける5−ナトリウムスルホイソフタル酸の共重合量を表1記載のように変更する以外は実施例1と同様に行った。結果を表1に示した。
[実施例8および9]
島成分ポリマーにおける共重合成分として5−ナトリウムスルホイソフタル酸に代えて5−テトラ−n−ブチルホスホニウムスルホイソフタル酸を使用すると共に、その共重合量を表1記載のように変更する以外は実施例1と同様に行った。結果は表1の通りであった。
[実施例10]
全酸成分に対して4.5モル%となる量の5−ナトリウムスルホイソフタル酸を共重合したポリエチレンテレフタレートを使用して、特開2007−303015号公報に記載されたエレクトロスピニング法を用い、下記の条件で静電紡糸を行い、平均繊維直径100nmのナノファイバーからなる繊維ウエブを得た。
ポリマー:全酸成分に対して2.6モル%となる量の5−ナトリウムスルホイソフタル酸を共重合したポリエチレンテレフタレート
溶剤:ヘキサフルオロイソプロパノール
溶液濃度:10重量%
ノズル孔径:800μm
ノズル数:1
吐出量:0.12g/mim
印加電圧:10〜30KV
ノズルと捕集面との距離:10cm
得られたナノファイバーウエブの測定結果は表1に示した通りである。
[実施例11]
島成分ポリマーにおける共重合成分として5−ナトリウムスルホイソフタル酸と5−テトラ−n−ブチルホスホニウムスルホイソフタル酸を2.25モル%ずつ使用する以外は実施例1と同様に行った。結果は表1の通りであった。
[比較例1]
実施例1において、エステル反応性スルホン酸基含有化合物として5−ナトリウムスルホイソフタル酸を0.05モル%とした以外は同様に行った。得られた結果を表1に示す。
[比較例2]
実施例1において、エステル反応性スルホン酸基含有化合物として5−ナトリウムスルホイソフタル酸を11モル%とした以外は同様に行った。得られた結果を表1に示す。
[比較例3]
全酸成分に対して2.6モル%となる量の5−ナトリウムスルホイソフタル酸を共重合したポリエチレンテレフタレートを用いて、海成分:島成分を30:70の重量比率で、島数13の図1に示す紡糸口金を用いて紡糸温度280℃で溶融紡糸し巻取り速度1,000m/分で巻き取った。得られた未延伸糸を延伸温度90℃、延伸倍率4.6倍でローラー延伸し、次いで170℃で熱セットして巻取り、44dtex/36filの延伸糸を得た。延伸糸の伸度は強度5.0cN/dtex、伸度10.9%であった。延伸糸を丸編みし、編物を作成した後、3.5%NaOH水溶液で95℃にて30%減量した。得られたナノファイバーの繊維直径は2.5μmであった。得られた結果は表1に示す通りである。
[比較例4]
実施例1において繊維直径が5nmと成るように口金の孔径を調整した以外は同様に行った。得られた結果を表1に示す。
[比較例5]
実施例1において繊維直径が1100nmと成るように口金の孔径を調整した以外は同様に行った。得られた結果を表1に示す。
[比較例6]
実施例1においてエステル反応性スルホン酸化合物を使用しないで行った。得られた結果を表1に示す。
Figure 2010018927
本発明の制電性ポリエステルナノファイバーは極細ポリエステル繊維であっても静電気発生に伴う不快感やまとわりつき、ほこり付着、可燃性のガス・液体・粉体による爆発火災の危険性などを防止でき、又カチオン染料で染色可能であるため、鮮明発色効果、分散染料染めの通常ポリエステル繊維との混用による異染効果、他繊維への染料汚染防止効果などを同時に奏することもできる。そのためジャケット、スカート、パンツ、下着などの衣料、スポーツ衣料、衣料資材、カーペット、ソファー、カーテンなどのインテリア、カーシートなどの車両内装品、化粧品、化粧品マスク、ワイピングクロス、健康用品などの生活用品や、研磨布、フィルター、有害物質除去製品、電池用セパレーターなどの環境・産業資材、縫合糸、スキャフォールド、人工血管、血液フィルターなどの医療用途などに幅広く用途展開が可能であり、インナー、中衣、スポーツ衣料などの衣料用素材、産業資材製品、生活資材製品、環境資材製品、医療・衛生製品に好適に使用することができる。
本発明に用いられる海島型複合繊維を溶融紡糸するための実施例の紡糸口金の断面構成図である。
符号の説明
1.分配前島成分ポリマー溜め部分
2.島成分分配用パイプ
3.海成分導入孔
4.分配前海成分ポリマー溜め部分
5.個別海/島構造形成部
6.海島全体合流絞り部

Claims (5)

  1. 繊維軸方向に直交する断面における繊維径が10〜1000nmであって、エステル形成性スルホン酸基含有化合物を、ポリエステルを構成する全酸成分に対して0.1〜10モル%共重合したポリエステルからなることを特徴とする制電性ポリエステルナノファイバー。
  2. 以下に定義する繊維直径変動係数(CV)が0〜20%である請求項1記載の制電性ポリエステルナノファイバー。
    繊維直径変動係数(CV)=σ/X×100(%)
    [但し、Xは平均繊維直径(繊維直径は繊維軸に直交する断面における長径と短径の平均値)、σは繊維直径分布の標準偏差を示す。]
  3. ナノファイバーが長繊維である請求項1〜2いずれかに記載の制電性ポリエステルナノファイバー。
  4. 破断強度が0.4〜4.5cN/dtex、破断伸度が7〜60%である請求項1〜3いずれかに記載の制電性ポリエステルナノファイバー。
  5. エステル形成性スルホン酸金属塩化合物が下記一般式(1)で表わされるエステル形成性スルホン酸金属塩化合物及び/または下記一般式(2)で表わされるエステル形成性スルホン酸ホスホニウム塩化合物である請求項1〜4いずれかに記載の制電性ポリエステルナノファイバー。
    Figure 2010018927
    式(1)
    (式中、A1は芳香族基又は脂肪族基、X1はエステル形成性官能基、X2はX1と同一若しくは異なるエステル形成性官能基又は水素原子、Mは金属、mは正の整数を示す。)
    Figure 2010018927
    式(2)
    (式中、A2は芳香族基又は脂肪族基、X3はエステル形成性官能基、X4はX3と同一若しくは異なるエステル形成性官能基又は水素原子、R1、R2、R3及びR4はアルキル基及びアリール基よりなる群から選ばれた同一又は異なる基、nは正の整数を示す。)
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