本発明の可染性ポリオレフィン繊維は、鞘成分がポリオレフィン(A)、芯成分がポリオレフィン(A’)と高発色ポリエステル(B)からなるポリマーアロイ(a)である芯鞘構造であることを特徴とする。
ここで、本願における芯鞘構造とは、繊維表面を鞘成分が覆っている構造であり、芯の構成が多数、つまり多島で繊維表面が鞘成分で被覆されている海島構造についても包含する。
ポリマーアロイ(a)は、高発色ポリエステル(B)を島成分としてポリオレフィン(A’)中に微分散させた構造である。高発色ポリエステルとは、屈折率が低く、ポリオレフィン繊維中においても、繊維表面からの反射光が少なくなり、繊維内部まで十分に光が浸透し、鮮やかで深みのある発色性を付与することができるポリエステルのことを指す。
本発明におけるポリマーアロイとは、島成分が不連続に分散して存在する構造のことである。ここで、島成分が不連続とは、島成分が適度な長さを有しており、同一単糸内の任意の間隔において、繊維軸に対して垂直な断面、すなわち繊維横断面における海島構造の形状が異なる状態である。本発明における島成分の不連続性は、実施例記載の方法で確認することができる。島成分が不連続に分散して存在する場合、島成分は紡錘形であるため、島成分に透過した光による発色効率が向上し、鮮明性が向上し、深みのある発色が得られる。以上のように本発明におけるポリマーアロイ繊維は、1つの島が繊維軸方向に連続かつ同一形状に形成される芯鞘複合繊維や、複数の島が繊維軸方向に連続かつ同一形状に形成される海島複合繊維とは本質的に異なるものである。かかるポリマーアロイ繊維は、例えば、溶融紡糸が完結する以前の任意の段階において、ポリオレフィン(A‘)と、高発色ポリエステル(B)を混練して形成したポリマーアロイ組成物から成形することで得ることができる。
本発明の可染性ポリオレフィン繊維は、繊維横断面における鞘の最小厚みが0.1〜5.0μmであることが好ましくい。ここで、繊維横断面における鞘の最小厚みとは、繊維表面から、高発色ポリエステル(B)成分までの最短距離を指す。繊維横断面における鞘の最小厚みが0.1μm以上であれば、高発色ポリエステル(B)が繊維表面に露出しないため、高次加工での操業性が安定するため好ましい。また、5.0μm以下であれば、繊維表面からの入射光が十分に高発色ポリエステル(B)まで届き、鮮やかで深みのある発色性を示すことができるため好ましく、3.0μm以下であることがより好ましく、2.0μm以下であることがさらに好ましい。
本発明の可染性ポリオレフィン繊維は、繊維の断面形状に関して特に制限がなく、用途や要求特性に応じて適宜選択することができ、真円状の円形断面であってもよく、非円形断面であってもよい。非円形断面の具体例として、多葉形、多角形、扁平形、楕円形などが挙げられるが、これらに限定されない。また、その複合形態については、芯鞘断面であり、芯の構成数が多数、つまり繊維表面が鞘成分で被覆された海島断面であってもよい。芯鞘断面または海島断面の場合、繊維横断面における芯成分の形状に関して特に制限がなく、真円状の円形断面であってもよく、非円形断面であってもよい。非円形断面の具体例として、多葉形、多角形、扁平形、楕円形などが挙げられるが、これらに限定されない。
ポリオレフィン(A’)中に、2種以上のジカルボン酸を構成成分とした高発色ポリエステル(B)を染色可能なポリマーとして配置することで、ポリオレフィン(A’)へ発色性を付与することができる。また、高発色ポリエステル(B)の屈折率をポリオレフィン(A)および(A’)に近づけることで、透過した光による発色効率が向上し、鮮やかで深みのある発色を実現することができる。さらに、ポリオレフィン(A)でポリマーアロイ(a)を被覆することにより、高次加工での操業安定性に優れ、また高発色ポリエステル(B)が表面に露出していないことにより、均一な発色を期待できる。
本発明の可染性ポリオレフィン繊維の鞘を構成する成分はポリオレフィン(A)であり、芯成分のポリマーアロイ(a)中の海成分はポリオレフィン(A’)である。ポリオレフィンは低比重のため、軽量性に優れた繊維を得ることができる。ポリオレフィン(A)および(A’)としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン−1、ポリメチルペンテンなどが挙げられるが、これらに限定されない。なかでも、ポリプロピレンは成形加工性が良好であり、機械的特性に優れるため好ましく、ポリメチルペンテンは融点が高く、耐熱性に優れるとともに、ポリオレフィンの中で最も低比重であり、軽量性に優れるため好ましい。また、衣料用途においては、ポリプロピレンが特に好適に採用でき、この場合繊維表面がポリプロピレンであるため、繊維自体に撥水性、保温性も付与できる。
本発明のポリオレフィン(A)および(A’)は、単独重合体であっても、他のα−オレフィンとの共重合体であってもよい。他のα−オレフィン(以下、単にα−オレフィンと称する場合もある)は、1種または2種以上を共重合してもよい。
α−オレフィンの炭素数は2〜20であることが好ましく、α−オレフィンの分子鎖は直鎖状でも分岐鎖状でもよい。α−オレフィンの具体例として、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセン、3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、3−エチル−1−ペンテン、3−エチル−1−ヘキセンなどが挙げられるが、これらに限定されない。
α−オレフィンの共重合率は20mol%以下であることが好ましい。α−オレフィンの共重合率が20mol%以下であれば、機械的特性や耐熱性が良好な可染性ポリオレフィン繊維が得られるため好ましい。α−オレフィンの共重合率は15mol%以下であることがより好ましく、10mol%以下であることが更に好ましい。
本発明の可染性ポリオレフィン繊維の芯成分を構成するポリマーアロイ(a)中の島成分は、2種以上のジカルボン酸を構成成分とする高発色ポリエステル(B)である。
本発明の高発色ポリエステル(B)は、2種以上のジカルボン酸を共重合していることが好ましく、ジカルボン酸の具体例として、テレフタル酸、フタル酸、イソフタル酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,2’−ビフェニルジカルボン酸、3,3’−ビフェニルジカルボン酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸、アントラセンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸、マロン酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、イタコン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,11−ウンデカンジカルボン酸、1,12−ドデカンジカルボン酸、1,14−テトラデカンジカルボン酸、1,18−オクタデカンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、ダイマー酸などの脂肪族ジカルボン酸、カテコール、ナフタレンジオール、ビスフェノールなどの芳香族ジオール、エチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノールなどの脂肪族ジオールなどが挙げられるが、これらに限定されない。
繊維の発色性を向上させる方法として、繊維を構成するポリマーの屈折率を低くすること、ポリマーの結晶性を低くすることが挙げられるが、ポリマーの屈折率を低くすることの方がより高い効果を得ることができる。
繊維を構成するポリマーの屈折率を低くした場合には、繊維表面からの反射光が少なくなり、繊維内部まで十分に光が浸透し、鮮やかで深みのある発色性を付与することができる。また、染料は結晶部分には吸尽されにくく、非晶部分に吸尽されやすいため、発色性を向上させるには、ポリマーの結晶性は低ければ低いほど好ましく、非晶性であることがより好ましい。例えば、特許文献3、4記載の方法では、シクロヘキサンジメタノールを共重合した非晶性の共重合ポリエステルをポリオレフィンと複合することで、ポリオレフィン繊維への発色性の付与を試みている。
本発明の高発色ポリエステル(B)は、屈折率が1.40〜1.58であることが好ましい。高発色ポリエステル(B)の屈折率は、1.58以下であれば、高発色ポリエステル(B)の屈折率がポリオレフィンの屈折率に近く、ポリオレフィン繊維中においても、繊維表面からの反射光が少なくなり、繊維内部まで十分に光が浸透し、鮮やかで深みのある発色性を付与することができるため、好ましい。高発色ポリエステル(B)の屈折率は、1.56以下であることがより好ましい。
本発明の可染性ポリオレフィン繊維は、芯成分のポリマーアロイ(a)について、ポリオレフィン(A’)、高発色ポリエステル(B)の合計100重量部に対し、高発色ポリエステル(B)を3.0〜40.0重量部含有することが好ましい。高発色ポリエステル(B)の含有量が3.0重量部以上であれば、屈折率が低く発色性の高い共重合ポリエステル(B)が、屈折率の低いポリオレフィン(A’)に散在しているため、鮮やかで深みのある発色を実現できるため好ましい。高発色エステル(B)の含有量は、3.5重量部以上であることがより好ましく、4.0重量部以上であることが更に好ましい。一方、高発色ポリエステル(B)の含有量が40.0重量部以下であれば、ポリオレフィン(A’)中に多数存在する高発色ポリエステル(B)を染色することによって、島成分へ透過した光による発色効率が向上し、鮮やかで深みのある発色が得られるため好ましい。また、ポリオレフィン(A)および(A’)の軽量性を損なわないため好ましい。高発色ポリエステル(B)の含有量は、35.0重量部以下であることがより好ましく、30.0重量部以下であることが更に好ましい。
本発明では、芯成分を構成するポリマーアロイ(a)中のポリオレフィン(A’)への高発色ポリエステル(B)の分散性の向上や分散状態の制御、海成分と島成分の界面接着性の向上を目的として、必要に応じて相溶化剤(C)を添加してもよい。また、溶融紡糸によって海島構造を形成させる際には、口金直下においてバラスと呼ばれる膨らみが発生し、繊維の細化変形が不安定になる傾向があるため、このバラスに伴う糸切れの抑制などの製糸操業性の改善や、繊度斑が小さく、繊維長手方向の均一性に優れる繊維を得ることを目的として、相溶化剤(C)を用いてもよい。
本発明における相溶化剤(C)は、ポリオレフィン(A’)と高発色ポリエステル(B)との複合比率などに応じて適宜選択することができる。なお、相溶化剤(C)は1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明における相溶化剤(C)として、芯成分を構成するポリマーアロイ(a)中のポリオレフィン(A’)と親和性の高い疎水性成分と、高発色ポリエステル(B)と親和性の高い官能基が、両方とも単一分子内に含まれている化合物が好ましい。または、疎水性が高い芯成分を構成するポリマーアロイ(a)中のポリオレフィン(A’)に親和性の高い疎水性成分と、高発色ポリエステル(B)と反応しうる官能基が、両方とも単一分子内に含まれている化合物を好適に採用できる。
相溶化剤(C)を構成する疎水性成分の具体例として、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテンなどのポリオレフィン系樹脂、ポリメチルメタクリレートなどのアクリル系樹脂、ポリスチレンなどのスチレン系樹脂、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブチレン共重合体、プロピレン−ブチレン共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体、スチレン−イソプレン−スチレン共重合体、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレン共重合体、スチレン−ブタジエン−ブチレン−スチレン共重合体などの共役ジエン系樹脂などが挙げられるが、これらに限定されない。
相溶化剤(C)を構成する、高発色ポリエステル(B)と親和性の高い官能基、または高発色ポリエステル(B)と反応しうる官能基の具体例として、酸無水物基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、エポキシ基、アミノ基およびイミノ基などが挙げられるが、これらに限定されない。なかでも、アミノ基、イミノ基は、高発色ポリエステル(B)との反応性が高いため好ましい。
相溶化剤(C)の具体例として、マレイン酸変性ポリエチレン、無水マレイン酸変性ポリプロピレン、無水マレイン酸変性ポリメチルペンテン、エポキシ変性ポリプロピレン、エポキシ変性ポリスチレン、無水マレイン酸変性スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体、無水マレイン酸変性スチレン−ブタジエン−ブチレン−スチレン共重合体、アミン変性スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体、アミン変性スチレン−ブタジエン−ブチレン−スチレン共重合体、イミン変性スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体、イミン変性スチレン−ブタジエン−ブチレン−スチレン共重合体などが挙げられるが、これらに限定されない。
本発明における相溶化剤(C)は、酸無水物基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、エポキシ基、アミノ基およびイミノ基から選択される少なくとも1種の官能基を含有する、ポリオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂および共役ジエン系樹脂から選択される1種以上の化合物であることが好ましい。なかでも、アミノ基およびイミノ基から選択される少なくとも1種の官能基を含有する、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体またはスチレン−ブタジエン−ブチレン−スチレン共重合体は、高発色ポリエステル(B)との反応性が高く、また、ポリオレフィン(A’)への高発色ポリエステル(B)の分散性を向上させる効果が高いため、島成分の高発色ポリエステル(B)を染色することによって、島成分へ透過した光による発色効率が向上し、鮮やかで深みのある発色を得ることができるため好ましい。
相溶化剤(C)を添加する場合、本発明の可染性ポリオレフィン繊維は、芯成分を構成するポリマーアロイ(a)中のポリオレフィン(A’)、高発色ポリエステル(B)、相溶化剤(C)の合計100重量部に対し、相溶化剤(C)を0.1〜10.0重量部含有することが好ましい。相溶化剤(C)の含有量が0.1重量部以上であれば、ポリオレフィン(A’)と高発色ポリエステル(B)との相溶化効果が得られるため、島成分の分散径が小さくなり、染料化合物の凝集を抑制して単分散に近づけることができ、発色効率が向上し、鮮やかで深みのある発色が得られるため好ましい。また、糸切れの抑制など製糸操業性が改善されるとともに、繊度斑が小さく、繊維長手方向の均一性に優れる繊維を得ることができるため好ましい。相溶化剤(C)の含有量は、0.3重量部以上であることがより好ましく、0.5重量部以上であることが更に好ましい。一方、相溶化剤(C)の含有量が10.0重量部以下であれば、可染性ポリオレフィン繊維を構成するポリオレフィン(A)や共重合ポリエステル(B)に由来する繊維特性や外観、風合いを維持することができるため好ましい。また、過度の相溶化剤による製糸操業性の不安定化を抑制できるため好ましい。相溶化剤(C)の含有量は、7.0重量部以下であることがより好ましく、5.0重量部以下であることが更に好ましい。
本発明の可染性ポリオレフィン繊維は、酸化防止剤を含有していることが好ましい。酸化防止剤を含有することにより、長期保管やタンブラー乾燥によるポリオレフィンの酸化分解を抑制するだけではなく、機械的特性などの繊維特性の耐久性が向上するため好ましい。
本発明における酸化防止剤は、フェノール系化合物、リン系化合物、イオウ系化合物、ヒンダードアミン系化合物のいずれかであることが好ましい。これらの酸化防止剤は1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明におけるフェノール系化合物は、フェノール構造を有したラジカル連鎖反応禁止剤であり、1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、ペンタエリスリトール−テトラキス(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェノール)プロピオネート)(例えば、BASF製Irganox1010)、2,4,6−トリス(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシベンジル)メシチレン(例えば、ADEKA製アデカスタブAO−330)、3,9−ビス[1,1−ジメチル−2−[β−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]エチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]−ウンデカン(例えば、住友化学製スミライザーGA−80)、1,3,5−トリス[[4−(1,1−ジメチルエチル)−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルフェニル]メチル]−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン(例えば、東京化成工業製THANOX1790)は、酸化分解抑制効果が高いため、好適に採用できる。
本発明におけるリン系化合物は、ラジカルを発生させずに過酸化物を還元し、自身が酸化されるリン系酸化防止剤であり、1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、亜リン酸トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)(例えば、BASF製Irgafos168)、3,9−ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5,5]ウンデカン(例えば、ADEKA製アデカスタブPEP−36)は、酸化分解抑制効果が高いため、好適に採用できる。
本発明におけるイオウ系化合物は、ラジカルを発生させずに過酸化物を還元し、自身が酸化されるイオウ系酸化防止剤であり、1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明におけるヒンダードアミン系化合物は、紫外線や熱により生成したラジカルの捕捉や、酸化防止剤として機能して失活したフェノール系酸化防止剤を再生する効果があるヒンダードアミン系酸化防止剤であり、1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、アミノエーテル型ヒンダードアミン系化合物、もしくは分子量1000以上の高分子量型ヒンダードアミン系化合物を好適に採用できる。アミノエーテル型ヒンダードアミン系化合物は、塩基性が低く、長期保管時における窒素酸化物ガスに起因する繊維の黄変を抑制できるため好ましい。アミノエーテル型ヒンダードアミン系化合物の具体例として、ビス(1−ウンデカノキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)カーボネート(例えば、ADEKA製アデカスタブLA−81)、デカン二酸ビス[2,2,6,6−テトラメチル−1−(オクチルオキシ)ピペリジン−4−イル](例えば、BASF製TinuvinPA123)などが挙げられるが、これらに限定されない。また、分子量1000以上の高分子量型ヒンダードアミン系化合物は、洗濯や有機溶剤を使用したクリーニングによる繊維内部からの溶出を抑制できるため好ましい。分子量1000以上の高分子量型ヒンダードアミン系化合物の具体例として、ポリ((6?((1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ)−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル)(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)イミノ)−1,6−ヘキサンジイル(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)イミノ))(例えば、BASF製CHIMASSORB944)、ジブチルアミン−1,3,5−トリアジン−N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,6−ヘキサメチレンジアミンとN−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ブチルアミンの重縮合物(例えば、BASF製CHIMASSORB2020)などが挙げられるが、これらに限定されない。
本発明の可染性ポリオレフィン繊維における酸化防止剤の含有量は、ポリオレフィン(A)および(A’)、高発色ポリエステル(B)、相溶化剤(C)の合計100重量部に対し、0.1〜5.0重量部であることが好ましい。酸化防止剤の含有量が0.1重量部以上であれば、酸化分解抑制効果を繊維へ付与できるため好ましい。酸化防止剤の含有量は0.3重量部以上であることがより好ましく、0.5重量部以上であることが更に好ましい。一方、酸化防止剤の含有量が5.0重量部以下であれば、繊維の色調が悪化せず、機械的特性も損なうことがないため好ましい。酸化防止剤の含有量は4.0重量部以下であることがより好ましく、3.0重量部以下であることが更に好ましく、2.0重量部以下であることが特に好ましい。
本発明の可染性ポリオレフィン繊維は、副次的添加物を加えて種々の改質が行われたものであってもよい。副次的添加剤の具体例として、可塑剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、蛍光増白剤、離型剤、抗菌剤、核形成剤、熱安定剤、帯電防止剤、着色防止剤、調整剤、艶消し剤、消泡剤、防腐剤、ゲル化剤、ラテックス、フィラー、インク、着色料、染料、顔料、香料などが挙げられるが、これらに限定されない。これらの副次的添加物は1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明の可染性ポリオレフィン繊維のマルチフィラメントとしての繊度は、特に制限がなく、用途や要求特性に応じて適宜選択することができるが、10〜3000dtexであることが好ましい。本発明における繊度とは、実施例記載の方法で測定される値を指す。可染性ポリオレフィン繊維の繊度が10dtex以上であれば、糸切れが少なく、工程通過性が良好であることに加え、使用時に毛羽の発生が少なく、耐久性に優れるため好ましい。可染性ポリオレフィン繊維の繊度は、30dtex以上であることがより好ましく、50dtex以上であることが更に好ましい。一方、可染性ポリオレフィン繊維の繊度が3000dtex以下であれば、繊維ならびに繊維構造体の柔軟性を損なうことがないため好ましい。可染性ポリオレフィン繊維の繊度は、2500dtex以下であることがより好ましく、2000dtex以下であることが更に好ましい。
本発明の可染性ポリオレフィン繊維の単糸繊度は、特に制限がなく、用途や要求特性に応じて適宜選択することができるが、0.5〜20dtexであることが好ましい。本発明における単糸繊度とは、実施例記載の方法で測定される繊度を単糸数で除した値を指す。可染性ポリオレフィン繊維の単糸繊度が0.5dtex以上であれば、糸切れが少なく、工程通過性が良好であることに加え、使用時に毛羽の発生が少なく、耐久性に優れるため好ましい。可染性ポリオレフィン繊維の単糸繊度は、0.6dtex以上であることがより好ましく、0.8dtex以上であることが更に好ましい。一方、可染性ポリオレフィン繊維の単糸繊度が20dtex以下であれば、繊維ならびに繊維構造体の柔軟性を損なうことがないため好ましい。可染性ポリオレフィン繊維の単糸繊度は、15dtex以下であることがより好ましく、12dtex以下であることが更に好ましい。
本発明の可染性ポリオレフィン繊維の強度は、特に制限がなく、用途や要求特性に応じて適宜選択することができるが、機械的特性の観点から1.0〜6.0cN/dtexであることが好ましい。本発明における強度とは、実施例記載の方法で測定される値を指す。可染性ポリオレフィン繊維の強度が1.0cN/dtex以上であれば、使用時に毛羽の発生が少なく、耐久性に優れるため好ましい。可染性ポリオレフィン繊維の強度は1.5cN/dtex以上であることがより好ましく、2.0cN/dtex以上であることが更に好ましい。一方、可染性ポリオレフィン繊維の強度が6.0cN/dtex以下であれば、繊維ならびに繊維構造体の柔軟性を損なうことがないため好ましい。
本発明の可染性ポリオレフィン繊維の伸度は、特に制限がなく、用途や要求特性に応じて適宜選択することができるが、耐久性の観点から10〜60%であることが好ましい。本発明における伸度とは、実施例記載の方法で測定される値を指す。可染性ポリオレフィン繊維の伸度が10%以上であれば、繊維ならびに繊維構造体の耐摩耗性が良好となり、使用時に毛羽の発生が少なく、耐久性が良好となるため好ましい。可染性ポリオレフィン繊維の伸度は15%以上であることがより好ましく、20%以上であることが更に好ましい。一方、可染性ポリオレフィン繊維の伸度が60%以下であれば、繊維ならびに繊維構造体の寸法安定性が良好となるため好ましい。可染性ポリオレフィン繊維の伸度は55%以下であることがより好ましく、50%以下であることが更に好ましい。
本発明の可染性ポリオレフィン繊維の繊度変動値U%(hi)は、0.1〜1.5%であることが好ましい。本発明における繊度変動値U%(hi)とは、実施例記載の方法で測定される値を指す。繊度変動値U%は繊維長手方向における太さ斑の指標であり、繊度変動値U%が小さいほど、繊維の長手方向における太さ斑が小さいことを示す。繊度変動値U%(hi)は、工程通過性や均一染色性、発色性の観点から小さければ小さいほど好ましいが、製造可能な範囲として0.1%が下限である。一方、可染性ポリオレフィン繊維の繊度変動値U%(hi)が1.5%以下であれば、繊維長手方向の均一性が優れており、毛羽や糸切れが発生しにくく、また、染色した際に染め斑や染め筋などの欠点が発生しにくく、均一染色性、発色性に優れた繊維構造体を得ることができるため好ましい。可染性ポリオレフィン繊維の繊度変動値U%(hi)は1.2%以下であることがより好ましく、1.0%以下であることが更に好ましく、0.9%以下であることが特に好ましい。
本発明の可染性ポリオレフィン繊維の繊維横断面における高発色ポリエステル(B)の分散径は、30〜1000nmである。本発明において、繊維横断面における島成分の分散径とは、実施例記載の方法で測定される値を指す。繊維横断面における高発色ポリエステル(B)の分散径が30nm以上であれば、芯成分を構成するポリマーアロイ(a)中の共重合ポリエステル(B)に染料がしっかりと取り込まれ、島成分へ透過した光による発色効率が向上し、鮮やかで深みのある発色を実現することができる。一方、繊維横断面における島成分の分散径が1000nm以下であれば、海島界面の比界面積を十分大きくすることができるため、界面剥離やこれに起因した摩耗を抑制することができ、均一染色性や発色性に優れる。また、島成分の分散径が小さければ小さいほど、染料化合物の凝集を抑制して単分散に近づけることができ、発色効率が向上する。そのため、繊維横断面における島成分の分散径は700nm以下であることが好ましく、500nm以下であることがより好ましく、300nm以下であることが特に好ましい。
本発明の可染性ポリオレフィン繊維の比重は、0.83〜1.0であることが好ましい。本発明における比重とは、実施例記載の方法で測定される値を指し、真比重である。なお、繊維が中空部を有する場合、真比重は同等であっても、見掛け比重は小さくなり、見掛け比重の値は中空率に応じて変化する。ポリオレフィンは低比重であり、一例として、ポリメチルペンテンの比重は0.83、ポリプロピレンの比重は0.91である。ポリオレフィンを単独で繊維化した場合、軽量性に優れた繊維を得ることができるものの染色することができないという欠点がある。本発明では、低比重のポリオレフィンと、染色可能な共重合ポリエステルからなるポリマーアロイ繊維とすることによって、軽量性に優れるポリオレフィン繊維へ発色性を付与することができる。可染性ポリオレフィン繊維の比重は、複合する高発色ポリエステル(B)の比重や、高発色ポリエステル(B)の複合比率などに応じて変化する。可染性ポリオレフィン繊維の比重は、軽量性の観点から小さければ小さいほど好ましく、1.0以下であることが好ましい。可染性ポリオレフィン繊維の比重が1.0以下であれば、ポリオレフィン(A)および(A’)による軽量性と高発色ポリエステル(B)による発色性を両立することができるため好ましい。可染性ポリオレフィン繊維の比重は0.98以下であることがより好ましい。
本発明の可染性ポリオレフィン繊維は、繊維の形態に関して特に制限がなく、モノフィラメント、マルチフィラメント、ステープルなどのいずれの形態であってもよい。
本発明の可染性ポリオレフィン繊維は、一般の繊維と同様に仮撚や撚糸などの加工が可能であり、製織や製編についても一般の繊維と同様に扱うことができる。
本発明の可染性ポリオレフィン繊維からなる繊維構造体の形態は、特に制限がなく、公知の方法に従い、織物、編物、パイル布帛、不織布や紡績糸、詰め綿などにすることができる。また、本発明の可染性ポリオレフィン繊維からなる繊維構造体は、いかなる織組織または編組織であってもよく、平織、綾織、朱子織あるいはこれらの変化織や、経編、緯編、丸編、レース編あるいはこれらの変化編などが好適に採用できる。
本発明の可染性ポリオレフィン繊維は、繊維構造体にする際に交織や交編などによって他の繊維と組み合わせてもよいし、他の繊維との混繊糸とした後に繊維構造体としてもよい。
次に、本発明の可染性ポリオレフィン繊維の製造方法を以下に示す。
本発明の可染性ポリオレフィン繊維の製造方法として、公知の溶融紡糸方法、延伸方法、仮撚加工方法を用いることができる。
本発明では、溶融紡糸を行う前にポリオレフィン(A)および(A’)、高発色ポリエステル(B)、相溶化剤(C)を乾燥させ、含水率を0.3重量%以下としておくことが好ましい。含水率が0.3重量%以下であれば、溶融紡糸の際に水分によって発泡することがなく、安定して紡糸を行うことが可能となるため好ましい。また、加水分解による機械的特性の低下や色調の悪化が抑制されるため好ましい。含水率は0.2重量%以下であることがより好ましく、0.1重量%以下であることが更に好ましい。
芯鞘型複合紡糸を行う場合には、紡糸口金から吐出して繊維糸条とする方法として、以下に示す例が挙げられるが、これらに限定されない。第一の例として、ポリオレフィン(A’)と高発色ポリエステル(B)をエクストルーダーなどで事前に溶融混練して芯成分を構成するポリマーアロイ(a)化したチップを必要に応じて乾燥した後、ポリオレフィン(A)とそれぞれ別の溶融紡糸機へチップを供給して別々に溶融し、計量ポンプで計量する。その後、紡糸ブロックにおいて加温した紡糸パックへ導入して、紡糸パック内で溶融ポリマーを濾過した後、目的とした断面となるようそれぞれを合流させ、紡糸口金から吐出して繊維糸条とする方法が挙げられる。第二の例として、必要に応じてチップを乾燥し、チップの状態でポリオレフィン(A’)と高発色ポリエステル(B)を混合した後、ポリオレフィン(A)とそれぞれ別の溶融紡糸機へチップを供給して別々に溶融し、計量ポンプで計量する。その後、紡糸ブロックにおいて加温した紡糸パックへ導入して、紡糸パック内で溶融ポリマーを濾過した後、目的とした断面となるようそれぞれを合流させ、紡糸口金から吐出して繊維糸条とする方法が挙げられる。
紡糸口金から吐出された繊維糸条は、冷却装置によって冷却固化し、第1ゴデットローラーで引き取り、第2ゴデットローラーを介してワインダーで巻き取り、巻取糸とする。なお、製糸操業性、生産性、繊維の機械的特性を向上させるために、必要に応じて紡糸口金下部に2〜20cmの長さの加熱筒や保温筒を設置してもよい。また、給油装置を用いて繊維糸条へ給油してもよく、交絡装置を用いて繊維糸条へ交絡を付与してもよい。
溶融紡糸における紡糸温度は、ポリオレフィン(A)および(A’)、高発色ポリエステル(B)、相溶化剤(C)の融点や耐熱性などに応じて適宜選択することができるが、220〜320℃であることが好ましい。紡糸温度が220℃以上であれば、紡糸口金より吐出された繊維糸条の伸長粘度が十分に低下するため吐出が安定し、さらには、紡糸張力が過度に高くならず、糸切れを抑制することができるため好ましい。紡糸温度は230℃以上であることがより好ましく、240℃以上であることが更に好ましい。一方、紡糸温度が320℃以下であれば、紡糸時の熱分解を抑制することができ、得られる可染性ポリオレフィン繊維の機械的特性の低下や着色を抑制できるため好ましい。紡糸温度は300℃以下であることがより好ましく、280℃以下であることが更に好ましい。
溶融紡糸における紡糸速度は、高発色ポリエステル(B)の含有量、紡糸温度などに応じて適宜選択することができるが、500〜6000m/分であることが好ましい。紡糸速度が500m/分以上であれば、走行糸条が安定し、糸切れを抑制することができるため好ましい。二工程法の場合の紡糸速度は1000m/分以上であることがより好ましく、1500m/分以上であることが更に好ましい。一方、紡糸速度が6000m/分以下であれば、紡糸張力の抑制により糸切れなく、安定した紡糸を行うことができるため好ましい。二工程法の場合の紡糸速度は4500m/分以下であることがより好ましく、4000m/分以下であることが更に好ましい。また、一旦巻き取ることなく紡糸と延伸を同時に行う一工程法の場合の紡糸速度は、低速ローラーを500〜5000m/分、高速ローラーを2500〜6000m/分とすることが好ましい。低速ローラーおよび高速ローラーが上記の範囲内であれば、走行糸条が安定するとともに、糸切れを抑制することができ、安定した紡糸を行うことができるため好ましい。一工程法の場合の紡糸速度は低速ローラーを1000〜4500m/分、高速ローラーを3500〜5500m/分とすることがより好ましい。
一工程法または二工程法により延伸を行う場合には、一段延伸法または二段以上の多段延伸法のいずれの方法によってもよい。延伸における加熱方法としては、走行糸条を直接的あるいは間接的に加熱できる装置であれば、特に限定されない。加熱方法の具体例として、加熱ローラー、熱ピン、熱板、温水、熱水などの液体浴、熱空、スチームなどの気体浴、レーザーなどが挙げられるが、これらに限定されない。これらの加熱方法は単独で使用してもよく、複数を併用してもよい。加熱方法としては、加熱温度の制御、走行糸条への均一な加熱、装置が複雑にならない観点から、加熱ローラーとの接触、熱ピンとの接触、熱板との接触、液体浴への浸漬を好適に採用できる。
延伸を行う場合の延伸温度は、ポリオレフィン(A)および(A’)、高発色ポリエステル(B)、相溶化剤(C)の融点や、延伸後の繊維の強度、伸度などに応じて適宜選択することができるが、20〜150℃であることが好ましい。延伸温度が20℃以上であれば、延伸に供給される糸条の延伸時の熱変形が均一となり、繊度斑の発生を抑制することができ、繊維長手方向の均一性に優れる繊維を得ることができるため好ましい。一方、延伸温度が150℃以下であれば、加熱ローラーとの接触に伴う繊維同士の融着や熱分解を抑制することができ、工程通過性や均一染色性、発色性が良好であるため好ましい。また、延伸ローラーに対する繊維の滑り性が良好となるため、糸切れが抑制され、安定した延伸を行うことができるため好ましい。延伸温度は145℃以下であることがより好ましく、140℃以下であることが更に好ましい。また、必要に応じて60〜150℃の熱セットを行ってもよい。
延伸を行う場合の延伸倍率は、延伸前の繊維の伸度や、延伸後の繊維の強度や伸度などに応じて適宜選択することができるが、1.02〜7.0倍であることが好ましい。延伸倍率が1.02倍以上であれば、延伸によって繊維の強度や伸度などの機械的特性を向上させることができるため好ましい。延伸倍率は、1.2倍以上であることがより好ましく、1.5倍以上であることが更に好ましい。一方、延伸倍率が7.0倍以下であれば、延伸時の糸切れが抑制され、安定した延伸を行うことができるため好ましい。延伸倍率は6.0倍以下であることがより好ましく、5.0倍以下であることが更に好ましい。
延伸を行う場合の延伸速度は、延伸方法が一工程法または二工程法のいずれであるかなどに応じて適宜選択することができる。一工程法の場合には、上記紡糸速度の高速ローラーの速度が延伸速度に相当する。二工程法により延伸を行う場合の延伸速度は、30〜1000m/分であることが好ましい。延伸速度が30m/分以上であれば、走行糸条が安定し、糸切れが抑制できるため好ましい。二工程法により延伸を行う場合の延伸速度は50m/分以上であることがより好ましく、100m/分以上であることが更に好ましい。一方、延伸速度が1000m/分以下であれば、延伸時の糸切れが抑制され、安定した延伸を行うことができるため好ましい。二工程法により延伸を行う場合の延伸速度は900m/分以下であることがより好ましく、800m/分以下であることが更に好ましい。
仮撚加工を行う場合には、1段ヒーターのみ使用する、いわゆるウーリー加工以外に、1段ヒーターと2段ヒーターの両方を使用する、いわゆるブレリア加工を適宜選択することができる。
仮撚加工に用いる装置として、ここではFR(フィードローラー)、1DR(1ドローローラー)ヒーター、冷却板、仮撚装置、2DR(2ドローローラー)、3DR(3ドローローラー)、交絡ノズル、4DR(4ドローローラー)、ワインダーを備えた仮撚加工装置を例示する。
FR−1DR間の加工倍率は、仮撚加工に用いる繊維の伸度や、仮撚加工後の繊維の伸度に応じて適宜選択できるが、1.0〜2.0倍であることが好ましい。
ヒーターの加熱方法は、接触式、非接触式のいずれであってもよい。ヒーター温度は、ポリオレフィン(A)、ポリエステル(B)、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体および/またはスチレン−ブタジエン−ブチレン−スチレン共重合体(C)の融点や、仮撚加工後の繊維の強度、伸度などに応じて適宜選択することができるが、接触式の場合のヒーター温度は90℃以上、非接触式の場合のヒーター温度は150℃以上であることが好ましい。接触式の場合のヒーター温度が90℃以上、または非接触式の場合のヒーター温度が150℃以上であれば、仮撚加工に供給される糸条の予熱が充分に行われ、延伸に伴う熱変形が均一となり、毛羽や繊度斑の発生を抑制することができ、繊維長手方向の均一性に優れ、均染性に優れる高品位の繊維ならびに繊維構造体を得ることができるため好ましい。接触式の場合のヒーター温度は100℃以上であることがより好ましく、110℃以上であることが更に好ましい。非接触式の場合のヒーター温度は200℃以上であることがより好ましく、250℃以上であることが更に好ましい。ヒーター温度の上限は、仮撚加工に用いる未延伸糸または延伸糸がヒーター内で融着しない温度であればよい。
仮撚装置は、摩擦仮撚型が好ましく、フリクションディスク型、ベルトニップ型などが挙げられるが、これらに限定されない。なかでも、フリクションディスク型が好ましく、ディスクの材質を全てセラミックスで構成することで、長時間操業した場合においても、安定して仮撚加工することができるため好ましい。2DR−3DR間および3DR−4DR間の倍率は、仮撚加工後の繊維の強度や伸度などに応じて適宜選択できるが、0.9〜1.0倍であることが好ましい。3DR−4DR間では、仮撚加工後の繊維の工程通過性を向上させるため、交絡ノズルによる交絡付与、もしくは給油ガイドによる追油を行ってもよい。
仮撚加工を行う場合の加工速度は、適宜選択することができるが、200〜1000m/分であることが好ましい。加工速度が200m/分以上であれば、走行糸条が安定し、糸切れが抑制できるため好ましい。加工速度は300m/分以上であることがより好ましく、400m/分以上であることが更に好ましい。一方、加工速度が1000m/分以下であれば、仮撚加工時の糸切れが抑制され、安定した仮撚加工を行うことができるため好ましい。加工速度は900m/分以下であることがより好ましく、800m/分以下であることが更に好ましい。
本発明では、必要に応じて、繊維または繊維構造体のいずれの状態において染色してもよい。本発明では、染料として分散染料を好適に採用することができる。可染性ポリオレフィン繊維を構成するポリオレフィン(A)および(A’)はほとんど染色されることはないが、高発色ポリエステル(B)が染色されることによって、鮮やかで深みのある発色性を有する繊維ならびに繊維構造体を得ることが可能となる。
本発明における染色方法は、特に制限がなく、公知の方法に従い、チーズ染色機、液流染色機、ドラム染色機、ビーム染色機、ジッガー、高圧ジッガーなどを好適に採用することができる。
本発明では、染料濃度や染色温度に関して特に制限がなく、公知の方法を好適に採用できる。また、必要に応じて、染色加工前に精練を行ってもよく、染色加工後に還元洗浄を行ってもよい。
本発明の可染性ポリオレフィン繊維、およびそれからなる繊維構造体は、軽量性に優れるポリオレフィン繊維へ鮮やかで深みのある発色性が付与されたものである。そのため、従来のポリオレフィン系繊維が使用されている用途に加えて、衣料用途ならびに軽量性や発色性が要求される用途への展開が可能である。従来のポリオレフィン系繊維が使用されている用途として、タイルカーペット、家庭用敷物、自動車用マットなどのインテリア用途、ふとん用詰め綿、枕の充填材などの寝具、ロープ、養生ネット、ろ過布、細幅テープ、組紐、椅子張りなどの資材用途などが挙げられるが、これらに限定されない。さらに、本発明によって拡張される用途として、婦人服、紳士服、裏地、下着、ダウン、ベスト、インナー、アウターなどの一般衣料、ウインドブレーカー、アウトドアウェア、スキーウェア、ゴルフウェア、水着などのスポーツ衣料、ふとん用側地、ふとんカバー、毛布、毛布用側地、毛布カバー、枕カバー、シーツなどの寝具、テーブルクロス、カーテンなどのインテリア、ベルト、かばん、縫糸、寝袋、テントなどの資材などの用途が挙げられるが、これらに限定されない。
以下、実施例により本発明をより詳細に説明する。なお、実施例中の各特性値は、以下の方法で求めたものである。
A.屈折率
事前に真空乾燥したポリオレフィン(A)または(A‘)、高発色ポリオレフィン(B)のポリマー1gを試料とし、ゴンノ油圧機製作所製15TON 4本柱単動上昇式プレス機を用いて、プレスフィルムを作製した。試料および厚さ50μmのスペーサーを不融性のポリイミドフィルム(東レ・デュポン製カプトン200H)に挟んだ状態でプレス機へ挿入し、230℃で2分間溶融させた後、2MPaの圧力で1分間プレスし、プレス機から速やかに取り出して20℃の水中で急冷して、厚さ50μmのプレスフィルムを得た。続いて、JIS K0062:1992(化学製品の屈折率測定方法)6.に記載のフィルム試料の測定方法に準じて、プレスフィルムの屈折率を測定した。温度20℃、湿度65%RHの環境下において、エルマ製アッベ屈折計ER−1型、中間液としてモノブロモナフタレン(nD=1.66)、ガラス片としてテストピース(nD=1.74)を用いて、1試料につき3回の測定を行い、その平均値を屈折率とした。
B.ポリマーアロイ複合比率
可染性ポリオレフィン繊維の芯成分のポリマーアロイ(a)について、原料として用いたポリオレフィン(A‘)、高発色ポリエステル(B)の合計を100重量部とし、複合比率として(A’)/(B)[重量部]を、原料として用いたポリオレフィン(A‘)、高発色ポリエステル(B)、相溶化剤(C)の合計を100重量部とし、複合比率として(A’)/(B)/(C)[重量部]を算出した。
C.芯鞘複合比率
芯鞘型複合繊維の原料として用いた鞘成分の重量と芯成分の重量から、芯/鞘複合比率(重量比)を算出した。
D.繊度
温度20℃、湿度65%RHの環境下において、INTEC製電動検尺機を用いて、実施例によって得られた繊維100mをかせ取りした。得られたかせの重量を測定し、下記式を用いて繊度(dtex)を算出した。なお、測定は1試料につき5回行い、その平均値を繊度とした。
繊度(dtex)=繊維100mの重量(g)×100 。
E.強度、伸度
強度および伸度は、実施例によって得られた繊維を試料とし、JIS L1013:2010(化学繊維フィラメント糸試験方法)8.5.1に準じて算出した。温度20℃、湿度65%RHの環境下において、オリエンテック社製テンシロンUTM−III−100型を用いて、初期試料長20cm、引張速度20cm/分の条件で引張試験を行った。最大荷重を示す点の応力(cN)を繊度(dtex)で除して強度(cN/dtex)を算出し、最大荷重を示す点の伸び(L1)と初期試料長(L0)を用いて下記式によって伸度(%)を算出した。なお、測定は1試料につき10回行い、その平均値を強度および伸度とした。
伸度(%)={(L1−L0)/L0}×100 。
F.繊度変動値U%(hi)
繊度変動値U%(hi)は、実施例によって得られた繊維を試料とし、ツェルベガーウースター製ウースターテスター4−CXを用いて、測定速度200m/分、測定時間2.5分、測定繊維長500m、撚り数12000/m(S撚り)の条件で、U%(half inert)を測定した。なお、測定は1試料につき5回行い、その平均値を繊度変動値U%(hi)とした。
G.鞘の厚み
実施例によって得られた繊維をエポキシ樹脂で包埋し、Reichert製FC・4E型クライオセクショニングシステムで凍結し、ダイヤモンドナイフを具備したReichert−Nissei ultracut N(ウルトラミクロトーム)で切削した。その後、切削面すなわち繊維横断面を、日立製作所製透過型電子顕微鏡(TEM)H−7100FA型を用いて1000倍で観察し、繊維横断面の顕微鏡写真を撮影した。得られた写真から無作為に単糸10本を抽出し、画像処理ソフト(三谷商事製WINROOF)を用いて、それぞれの単糸において繊維横断面の輪郭から最も近い高発色ポリエステル(B)までの距離を求め、その平均値を鞘の厚みT(nm)とした。
H.高発色ポリエステル(B)の分散径、高発色ポリエステル(B)の不連続性
上記Gに記載の顕微鏡写真撮影と同様の方法で、繊維横断面の顕微鏡写真を撮影した。観察は300倍、500倍、1000倍、3000倍、5000倍、10000倍、30000倍、50000倍の各倍率で行い、顕微鏡写真を撮影する際には100個以上のポリマーアロイ(a)中の高発色ポリエステル(B)からなる島成分が観察できる最も低い倍率を選択した。撮影された写真について、同一の写真から無作為に抽出した100個のポリマーアロイ(a)中の高発色ポリエステル(B)からなる島成分の直径を画像処理ソフト(三谷商事製WINROOF)で測定し、その平均値を高発色ポリエステル(B)の分散径(nm)とした。繊維横断面に存在する島成分は必ずしも真円とは限らないため、真円ではない場合には外接円の直径を島成分の分散径として採用した。
単糸の繊維横断面に存在するポリマーアロイ(a)中の高発色ポリエステル(B)からなる島成分が100個未満の場合には、同条件で製造した複数の単糸を試料として繊維横断面を観察した。顕微鏡写真を撮影する際には単糸の全体像が観察できる最も高い倍率を選択した。撮影された写真について、各単糸の繊維横断面に存在するポリマーアロイ(a)中の高発色ポリエステル(B)からなる島成分の分散径を測定し、合計100個のポリマーアロイ(a)中の高発色ポリエステル(B)からなる島成分の分散径の平均値をポリマーアロイ(a)中の高発色ポリエステル(B)からなる島成分の分散径とした。
島成分の不連続性については、同一単糸内において単糸直径の少なくとも10000倍以上の任意の間隔で、繊維横断面の顕微鏡写真を5枚撮影し、それぞれの繊維横断面における島成分の数および海島構造の形状が異なる場合、島成分が不連続であるとし、島成分が不連続である場合を「○」、島成分が不連続でない場合を「×」とした。
I.比重
比重は、実施例によって得られた繊維を試料とし、JIS L1013:1999(化学繊維フィラメント糸試験方法)8.17の浮沈法に準じて算出した。重液には水を用い、軽液にはエチルアルコールを用いて比重測定液を調製した。温度20±0.1℃の恒温槽中において、試料約0.1gを比重測定液に30分間放置した後、試料の浮沈状態を観察した。浮沈状態に応じて重液または軽液を添加して、さらに30分間放置した後に試料が浮沈平衡状態となったのを確認して、比重測定液の比重を測定し、試料の比重を算出した。なお、測定は1試料につき5回行い、その平均値を比重とした。
J.高次加工での操業性
実施例によって得られた繊維を試料とし、FR(フィードローラー)、1DR(1ドローローラー)、ヒーター、冷却板、仮撚装置、2DR(2ドローローラー)、3DR(3ドローローラー)、交絡ノズル、4DR(4ドローローラー)、ワインダーを備えた延伸仮撚加工装置で10時間仮撚加工し、仮撚加工糸を得た。延伸仮撚加工の条件は下記の通りである。
FR速度:350m/分、FR−1DR間の加工倍率1.05倍、熱板型の接触式ヒーター(長さ110mm):145℃、冷却板長さ:65mm、フリクションディスク型摩擦仮撚装置、2DR−3DR間倍率:1.0倍、3DR−4DR間倍率:0.98倍、4DR−ワインダー倍率:0.94倍、3DR−4DR間で交絡ノズルによる交絡を付与した。
仮撚加工後、各種ローラー、フリクションディスク型摩擦仮撚装置、ガイドを観察し、「堆積物がほとんどない」を◎、「堆積物がわずかにある」を○、「堆積物が多い」を△、「堆積物が極めて多い」を×とし、○、◎を合格とした。
K.均一染色性
実施例によって得られた繊維を試料とし、英光産業製丸編機NCR−BL(釜径3インチ半(8.9cm)、27ゲージ)を用いて筒編み約2gを作製した後、炭酸ナトリウム1.5g/L、明成化学工業製界面活性剤グランアップUS−20 0.5g/Lを含む水溶液中、80℃で20分間精練後、流水で30分水洗し、60℃の熱風乾燥機内で60分間乾燥した。精練後の筒編みを125℃で1分間乾熱セットし、乾熱セット後の筒編みに対して、分散染料として日本化薬製Kayalon Polyester Blue UT−YAを1.3重量%加え、pHを5.0に調整した染色液中、浴比1:100、130℃で45分間染色後、流水で30分水洗し、60℃の熱風乾燥機内で60分間乾燥した。染色後の筒編みを、水酸化ナトリウム2g/L、亜ジチオン酸ナトリウム2g/L、明成化学工業製界面活性剤グランアップUS−20 0.5g/Lを含む水溶液中、浴比1:100、80℃で20分間還元洗浄後、流水で30分水洗し、60℃の熱風乾燥機内で60分間乾燥した。還元洗浄後の筒編みを125℃で1分間乾熱セットし、仕上げセットを行った。仕上げセット後の筒編みについて、5年以上の均一染色性判定の経験を有する検査員5名の合議によって◎、○、△、×の4段階で評価した。評価は、◎が最も良く、○、△の順に悪くなり、×が最も劣ることを示す。「非常に均一に染色されており、全く染め斑が認められない」を◎、「ほぼ均一に染色されており、ほとんど染め斑が認められない」を○、「ほとんど均一に染色されておらず、うっすらと染め斑が認められる」を△、「均一に染色されておらず、はっきりと染め斑が認められる」を×とし、「ほぼ均一に染色されており、ほとんど染め斑が認められない」の○以上を合格とした。
L.発色性
上記Kで作製した仕上げセット後の筒編みについて、5年以上の発色性判定の経験を有する検査員5名の合議によって、◎、○、△、×の4段階で評価した。評価は、◎が最も良く、○、△の順に悪くなり、×が最も劣ることを示す。「鮮やかで深みのある発色が十分であり、発色性に極めて優れる」を◎、「鮮やかで深みのある発色が概ね十分であり、発色性に優れる」を○、「鮮やかで深みのある発色がほとんどなく、発色性に劣る」を△、「鮮やかで深みのある発色がなく、発色性に極めて劣る」を×とし、「鮮やかで深みのある発色が概ね十分であり、発色性に優れる」の○以上を合格とした。
実施例1
ポリプロピレン(PP)(台湾プラスチックス製1352F、融解ピーク温度165℃、MFR35g/10分)を80重量%、シクロヘキサンジカルボン酸を20mol%共重合したポリエチレンテレフタレートを20重量%の配合比で、二軸エクストルーダーを用いて混練温度230℃で混練を行った。二軸エクストルーダーより吐出されたストランドを水冷した後、ペレタイザーにて5mm長程度にカットして、ペレットを得た。得られたペレットを芯成分とし、95℃で12時間真空乾燥した後、80重量%の配合比でエクストルーダー型溶融紡糸機へ供給して溶融させ、ポリプロピレン(PP)を鞘成分とし、20重量%の配合比で芯成分とは別のエクストルーダー型溶融紡糸機へ供給して溶融させ、紡糸温度240℃、吐出量31.5g/分で芯鞘型複合用紡糸口金(1島、吐出孔径0.18mm、吐出孔長0.23mm、孔数36、丸孔)から吐出させて紡出糸条を得た。この紡出糸条を風温20℃、風速25m/分の冷却風で冷却し、給油装置で油剤を付与して収束させ、3000m/分で回転する第1ゴデットローラーで引き取り、第1ゴデットローラーと同じ速度で回転する第2ゴデットローラーを介して、ワインダーで巻き取って105dtex−36fの未延伸糸を得た。得られた未延伸糸を第1ホットローラー温度20℃、第2ホットローラー温度130℃、延伸倍率2.1倍の条件で延伸し、50dtex−36fの延伸糸を得た。
得られた繊維の繊維特性および布帛特性の評価結果を表1に示す。繊維表面を屈折率の低いポリプロピレンが覆い、芯成分は、屈折率が低く、発色性の高い共重合ポリエチレンテレフタレートを、屈折率の低いポリプロピレン中に微分散したポリマーアロイであるため、鮮やかで深みのある発色を得ることができ、発色性、高次加工における操業性ともに合格レベルであった。さらには布帛全体が均一に染まっており、均一染色性も良好であった。
実施例2〜8
実施例2〜6では、シクロヘキサンジカルボン酸の共重合率を表1に示すとおり変更した以外は、実施例1と同様に延伸糸を作製した。実施例7、8では、ポリエチレンテレフタレートの共重合成分をイソフタル酸とアジピン酸に変更し、その共重合率を表1に示すとおり変更した以外は、実施例1と同様に延伸糸を作製した。
得られた繊維の繊維特性および布帛特性の評価結果を表1に示す。シクロヘキサンジカルボン酸の共重合率が高くなるにつれ、屈折率が低下し、発色性は向上した。実施例7、8では、シクロヘキサンジカルボン酸の換わりにイソフタル酸とアジピン酸を用い共重合を行い屈折率の低下を計ることで、鮮やかで深みのある発色を得ることができ、発色性、高次加工における操業性ともに合格レベルであった。さらには布帛全体が均一に染まっており、均一染色性も良好であった。
比較例1
ポリエステルとして、ポリエチレンテレフタレート(PET)(東レ製T701T、融点257℃)に変更した以外は、実施例1と同様に延伸糸を作製した。
得られた繊維の繊維特性および布帛特性の評価結果を表2に示す。芯成分中のポリエチレンテレフタレートが染料によって染色されているものの、ポリエチレンテレフタレートは結晶性が高いため、染料の吸尽が不十分であり、鮮やかで深みのある発色は得られず、発色性は不十分であった。また、繊度変動値U%(hi)が高く、繊維長手方向の均一性が不十分であるため、均一染色性も劣るものであった。
比較例2
ポリプロピレンをエクストルーダー型溶融紡糸機へ供給して溶融させ、紡糸温度240℃、吐出量31.5g/分で紡糸口金(吐出孔径0.18mm、吐出孔長0.23mm、孔数36、丸孔)から吐出させて紡出糸条を得た以外は、実施例1と同様に延伸糸を作製した。
得られた繊維の繊維特性および布帛特性の評価結果を表2に示す。PP単独糸であり、高次加工での操業性には優れるが、発色性は不十分であった。
比較例3
ポリプロピレンを80重量%、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸を40mol%共重合したポリエチレンテレフタレートを20重量%の配合比とし、二軸エクストルーダーを用いて混練温度230℃で混練を行った。二軸エクストルーダーより吐出されたストランドを水冷した後、ペレタイザーにて5mm長程度にカットして、ペレットを得た。得られたペレットを95℃で12時間真空乾燥した後、エクストルーダー型溶融紡糸機へ供給して溶融させ、紡糸温度240℃、吐出量31.5g/分で紡糸口金(吐出孔径0.18mm、吐出孔長0.23mm、孔数36、丸孔)から吐出させて紡出糸条を得た以外は、実施例1と同様に延伸糸を作製した。
得られた繊維の繊維特性および布帛特性の評価結果を表2に示す。繊維表面に非晶性の共重合ポリエチレンテレフタレートが露出しているため、高次加工での操業中に白粉が発生し、高次加工での操業性は極めて悪かった。また、鮮やかで深みのある発色を得ることができ、発色性は合格レベルであったが、繊維表面にまばらに共重合ポリエチレンテレフタレートが露出しているため、均一に染色されなかった。
実施例9〜23
実施例9〜13では相溶化剤として、アミン変性スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体(JSR製ダイナロン8660P)を用い、ポリプロピレン、シクロヘキサンジカルボン酸共重合ポリエチレンテレフタレート、相溶化剤の複合比率を表2に示すとおりとした以外は、実施例2と同様に延伸糸を作製した。実施例14〜19では相溶化剤として、アミン変性スチレン−ブタジエン−ブチレン−スチレン共重合体、またはアミン変性スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体とアミン変性スチレン−ブタジエン−ブチレン−スチレン共重合体を重量比1対1で混合した混合物とを用い、ポリプロピレン、シクロヘキサンジカルボン酸共重合ポリエチレンテレフタレート、相溶化剤の複合比率を表2に示すとおりとした以外は、実施例2と同様に延伸糸を作製した。実施例20では、イミン変性スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体を用い、ポリプロピレン、シクロヘキサンジカルボン酸共重合ポリエチレンテレフタレート、相溶化剤の複合比率を表2に示すとおりとした以外は、実施例2と同様に延伸糸を作製した。実施例21〜23では相溶化剤として、アミン変性スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体(JSR製ダイナロン8660P)を用い、ポリプロピレン、イソフタル酸・アジピン酸共重合ポリエチレンテレフタレート、相溶化剤の複合比率を表2〜4に示すとおりとした以外は、実施例8と同様に延伸糸を作製した。
得られた繊維の繊維特性および布帛特性の評価結果を表2〜4に示す。相溶化剤を用いることにより、相溶化効果により島成分の分散径が小さくなり、鮮やかで深みのある発色を得ることができ、発色性、高次加工における操業性ともに極めて優れるものであった。また、相溶化効果により、繊度変動値U%(hi)が低く、繊維長手方向の均一性が良好であるため、均一染色性にも極めて優れていた。
実施例24、25
実施例24では、ポリプロピレンをポリメチルペンテン(PMP)(三井化学製DX820、融点232℃、MFR180g/10分)に変更し、混練温度を260℃、紡糸温度を260℃に変更した以外は、実施例9と同様に延伸糸を作製した。実施例25では、ポリプロピレンをポリメチルペンテンに変更し、混練温度を260℃、紡糸温度を260℃に変更した以外は、実施例21と同様に延伸糸を作製した。
得られた繊維の繊維特性および布帛特性の評価結果を表4に示す。ポリオレフィンとして、ポリメチルペンテンを用いた場合も、鮮やかで深みのある発色を得ることができ、発色性、高次加工における操業性ともに良好であった。また、軽量性、均一染色性についても合格レベルであった。
実施例26〜33
実施例26〜30では、芯鞘複合比率を表5に示すとおりとした以外は、実施例9と同様に延伸糸を作製した。実施例31〜33では、芯鞘複合比率を表3に示すとおりとした以外は、実施例21と同様に延伸糸を作製した。
得られた繊維の繊維特性および布帛特性の評価結果を表5に示す。芯鞘複合比率を変動させた場合にも、鮮やかで深みのある発色を得ることができ、発色性、高次加工における操業性ともに合格レベルであった。さらには布帛全体が均一に染まっており、均一染色性も良好であった。
実施例34、35
実施例34では、口金を海島型複合用紡糸口金(島数6島、吐出孔径0.18mm、吐出孔長0.23mm、孔数36、丸孔)に変更した以外は、実施例9と同様に延伸糸を作製した。実施例35では、口金を海島型複合用紡糸口金(島数6島、吐出孔径0.18mm、吐出孔長0.23mm、孔数36、丸孔)に変更した以外は、実施例21と同様に延伸糸を作製した。
得られた繊維の繊維特性および布帛特性の評価結果を表4に示す。繊維断面によらず、鮮やかで深みのある発色を得ることができ、発色性、高次加工における操業性ともに合格レベルであった。さらには布帛全体が均一に染まっており、均一染色性も極めて良好であった。