JP2015086490A - 人工毛髪用ポリエステル系繊維、その製造方法、それを含む毛髪用繊維束及び頭飾製品 - Google Patents
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Abstract
【課題】高い難燃性を有しつつ、人毛に近い滑らかな触感を有する人工毛髪用ポリエステル系繊維、その製造方法、それを含む毛髪用繊維束及び頭飾製品を提供する。
【解決手段】人工毛髪用ポリエステル系繊維は、ポリエステル樹脂、臭素化エポキシ系難燃剤及びアンチモン化合物10を含み、ポリエステル樹脂はポリアルキレンテレフタレート及び/又はポリアルキレンテレフタレートを主体とする共重合ポリエステルであり、アンチモン化合物はpHが3〜10の五価のアンチモンを含む化合物であり、繊維断面100において、アンチモン化合物の平均対角幅が0.5μm以下である。製造方法は、ポリエステル樹脂、臭素化エポキシ系難燃剤及びアンチモン化合物を含むポリエステル樹脂組成物を押出機で溶融混練する工程を含み、溶融混練工程において、押出機の吐出量Q(kg/時間)とスクリュー回転数R(rpm)の比Q/Rが1.8以下である。
【選択図】図1
【解決手段】人工毛髪用ポリエステル系繊維は、ポリエステル樹脂、臭素化エポキシ系難燃剤及びアンチモン化合物10を含み、ポリエステル樹脂はポリアルキレンテレフタレート及び/又はポリアルキレンテレフタレートを主体とする共重合ポリエステルであり、アンチモン化合物はpHが3〜10の五価のアンチモンを含む化合物であり、繊維断面100において、アンチモン化合物の平均対角幅が0.5μm以下である。製造方法は、ポリエステル樹脂、臭素化エポキシ系難燃剤及びアンチモン化合物を含むポリエステル樹脂組成物を押出機で溶融混練する工程を含み、溶融混練工程において、押出機の吐出量Q(kg/時間)とスクリュー回転数R(rpm)の比Q/Rが1.8以下である。
【選択図】図1
Description
本発明は、人毛の代替品として使用できる人工毛髪用ポリエステル系繊維、その製造方法、それを含む毛髪用繊維束及び頭飾製品に関し、詳細には、臭素化エポキシ系難燃剤とアンチモン化合物を含む人工毛髪用ポリエステル系繊維、その製造方法、それを含む毛髪用繊維束及び頭飾製品に関する。
かつら、ヘアーウィッグ、付け毛、ヘアーバンド、ドールヘアーなどの頭飾製品においては、従来、人毛が使用されていた。しかしながら、近年、人毛の入手が次第に困難になり、人毛に代わって人工毛髪用繊維の重要性が高まっている。例えば、人工毛髪用繊維素材として、耐熱性に優れるポリエチレンテレフタレートを主成分とするポリエステル系繊維を用いることが提案されていた。そして、人工毛髪用繊維として使用するに当たって、安全性観点から難燃性が要求されることから、ポリエステル系繊維に難燃性を付与することが検討されていた。例えば、特許文献1〜3には、難燃性を付与するため、ポリエステル系繊維に臭素化エポキシ系難燃剤とアンチモン化合物を含ませることが提案されている。
しかしながら、特許文献1〜3に記載のポリエステル系繊維は、臭素化エポキシ系難燃剤とアンチモン化合物を含むことにより難燃性は向上しているものの、臭素化エポキシ系難燃剤やアンチモン化合物によりガサツキが生じて触感が低下する場合があった。
本発明は、上記従来の問題を解決するため、高い難燃性を有しつつ、人毛に近い滑らかな触感を有する人工毛髪用ポリエステル系繊維、その製造方法、それを含む毛髪用繊維束及び頭飾製品を提供する。
本発明は、ポリエステル樹脂、臭素化エポキシ系難燃剤及びアンチモン化合物を含む人工毛髪用ポリエステル系繊維であって、上記ポリエステル樹脂は、ポリアルキレンテレフタレート及び/又はポリアルキレンテレフタレートを主体とする共重合ポリエステルであり、上記アンチモン化合物は、pHが3〜10の五価のアンチモンを含む化合物であり、繊維断面において、上記アンチモン化合物の平均対角幅が0.5μm以下であることを特徴とする人工毛髪用ポリエステル系繊維に関する。
本発明の人工毛髪用ポリエステル系繊維の繊維断面において、上記アンチモン化合物の平均対角幅が0.1〜0.5μmであり、対角幅の標準偏差が0.1〜0.3であることが好ましい。あるいは、本発明の人工毛髪用ポリエステル系繊維の繊維断面において、上記アンチモン化合物の平均対角幅が0.1μm未満であることが好ましい。上記アンチモン化合物は、pHが3〜10の五酸化アンチモンであることが好ましい。
本発明は、また、上記の人工毛髪用ポリエステル系繊維の製造方法であって、ポリエステル樹脂、臭素化エポキシ系難燃剤及びアンチモン化合物を含むポリエステル樹脂組成物を押出機で溶融混練する工程を含み、上記溶融混練工程において、押出機の吐出量Q(kg/時間)とスクリュー回転数R(rpm)の比Q/Rを1.8以下にすることを特徴とする人工毛髪用ポリエステル系繊維の製造方法に関する。
本発明は、また、上記の人工毛髪用ポリエステル系繊維と、人毛、獣毛、ポリ塩化ビニル系繊維、モダアクリル繊維、ポリアミド系繊維、ポリオレフィン系繊維、再生蛋白繊維及び他のポリエステル系繊維からなる群から選ばれる少なくとも1つの繊維を含むことを特徴とする毛髪用繊維束に関する。
本発明は、また、上記の人工毛髪用ポリエステル系繊維を含むことを特徴とする頭飾製品に関する。
上記頭飾製品は、さらに、人毛、獣毛、ポリ塩化ビニル系繊維、モダアクリル繊維、ポリアミド系繊維、ポリオレフィン系繊維、再生蛋白繊維及び他のポリエステル系繊維からなる群から選ばれる少なくとも1つの繊維を含んでもよい。
本発明は、ポリエステル樹脂、臭素化エポキシ系難燃剤及びアンチモン化合物を含む人工毛髪用ポリエステル系繊維において、アンチモン化合物としてpHが3〜10の五価のアンチモンを含む化合物を用い、繊維断面におけるアンチモン化合物の平均対角幅を0.5μm以下にすることで、高い難燃性を有しつつ、人毛に近い滑らかな触感を有する人工毛髪用ポリエステル系繊維、毛髪用繊維束及び頭飾製品を提供する。
本発明の製造方法によれば、ポリエステル樹脂、臭素化エポキシ系難燃剤及びアンチモン化合物を含むポリエステル樹脂組成物を押出機で溶融混練する際、押出機の吐出量Q(kg/時間)とスクリュー回転数R(rpm)の比Q/Rを1.8以下にすることで、繊維断面におけるアンチモン化合物の平均対角幅を0.5μm以下にすることができ、高い難燃性を有しつつ、人毛に近い滑らかな触感を有するポリエステル系繊維を製造することができる。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、ポリエステル樹脂に臭素化エポキシ系難燃剤及びアンチモン化合物を配合させて、難燃性を付与した人工毛髪用ポリエステル系繊維において、アンチモン化合物としてpHが3〜10の五価のアンチモンを含む化合物を用いるとともに、繊維断面におけるアンチモン化合物の平均対角幅を0.5μm以下にすることにより、臭素化エポキシ系難燃剤及びアンチモン化合物によるガサツキがほとんど生じず、人毛に近い滑らかな触感になることを見出し、本発明に至った。また、ポリエステル樹脂、臭素化エポキシ系難燃剤及びアンチモン化合物を含むポリエステル樹脂組成物を押出機で溶融混練する際、押出機の吐出量Q(kg/時間)とスクリュー回転数R(rpm)の比Q/Rを1.8以下にすることで、溶融混練後のポリエステル樹脂組成物を溶融紡糸して得られたポリエステル系繊維において、繊維断面におけるアンチモン化合物の平均対角幅が0.5μm以下になることを見出した。
本発明の人工毛髪用ポリエステル系繊維は、ポリエステル樹脂、臭素化エポキシ系難燃剤及びアンチモン化合物を含むポリエステル樹脂組成物で構成される。
上記ポリエステル樹脂は、ポリアルキレンテレフタレート及び/又はポリアルキレンテレフタレートを主体とする共重合ポリエステルである。上記ポリアルキレンテレフタレートとしては、特に限定されないが、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレートなどが挙げられる。上記ポリアルキレンテレフタレートを主体とする共重合ポリエステルとしては、特に限定されないが、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレートなどのポリアルキレンテレフタレートを主体とし、他の共重合成分を含有する共重合ポリエステルが挙げられる。本発明において、「主体」とは、50モル%以上含有される成分のことを意味し、「ポリアルキレンテレフタレートを主体とする共重合ポリエステル」は、ポリアルキレンテレフタレートを50モル%以上含有する共重合ポリエステルをいう。好ましくは、「ポリアルキレンテレフタレートを主体とする共重合ポリエステル」は、ポリアルキレンテレフタレートを60モル%以上、より好ましくは70モル%以上、さらに好ましくは80モル%以上含有する。
上記他の共重合成分としては、例えば、イソフタル酸、オルトフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、パラフェニレンジカルボン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スべリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸などの多価カルボン酸及びそれらの誘導体、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸ジヒドロキシエチルなどのスルホン酸塩を含むジカルボン酸及びそれらの誘導体、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、4−ヒドロキシ安息香酸、ε−カプロラクトンなどが挙げられる。
上記ポリアルキレンテレフタレートを主体とする共重合ポリエステルの具体例としては、例えば、ポリエチレンテレフタレートを主体とし、ビスフェノールAのエチレングリコールエーテル、1,4−シクロヘキサンジメタノール、イソフタル酸及び5−ナトリウムスルホイソフタル酸ジヒドロキシエチルからなる群から選ばれる一種の化合物を共重合したポリエステルなどが挙げられる。
上記ポリアルキレンテレフタレート及び上記ポリアルキレンテレフタレートを主体とする共重合ポリエステルは、単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。中でも、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート又はポリエチレンテレフタレートを主体とし、ビスフェノールAのエチレングリコールエーテルを共重合したポリエステル、ポリエチレンテレフタレートを主体とし、1,4−シクロヘキサンジメタノールを共重合したポリエステル、ポリエチレンテレフタレートを主体とし、イソフタル酸を共重合したポリエステル、及びポリエチレンテレフタレートを主体とし、5−ナトリウムスルホイソフタル酸ジヒドロキシエチルを共重合したポリエステルなどを単独又は二種以上組み合わせて用いることが好ましい。
上記臭素化エポキシ系難燃剤は、特に限定されないが、例えば、原料としては分子末端がエポキシ基、アルキルトリブロモフェノキシ基などからなる臭素化エポキシ系難燃剤を用いることができる。アンチモン化合物が臭素化エポキシ系難燃剤中に分散しやすい観点から、上記臭素化エポキシ系難燃剤は、分子末端がエポキシ基であることが好ましい。
アンチモン化合物の屈折率はポリエステル樹脂の屈折率より高く、臭素化エポキシ系難燃剤の屈折率はポリエステル樹脂の屈折率に近似していることから、アンチモン化合物がポリエステル樹脂中に直接分散するより、ポリエステル樹脂中に分散した臭素化エポキシ系難燃剤中に分散した場合、人工毛髪用ポリエステル系繊維の発色性(透明性)が向上する。すなわち、臭素化エポキシ系難燃剤中に分散したアンチモン化合物の割合が多いほど、人工毛髪用ポリエステル系繊維の発色性が良好になる。
上記臭素化エポキシ系難燃剤としては、具体的には、下記一般式(1)で表される構造式を分子中に含む化合物を用いることができる。
但し、上記一般式(1)において、mは1〜1000である。
上記一般式(1)で表される化合物として、具体的には、下記一般式(2)〜(4)で表される化合物を用いることができる。
但し、上記一般式(2)〜(4)において、mは1〜1000、R1は炭素数1〜10のアルキル基、yは0〜5を示す。
本発明では、分子末端が上述した構造を有する臭素化エポキシ系難燃剤を原料として用いるが、溶融混練及び/又は溶融紡糸後(繊維中)の臭素化エポキシ系難燃剤の構造は、特に限定されず、例えば、分子末端がエポキシ基、水酸基、リン酸基又はホスホン酸基に置換されてもよく、或いは、分子末端がポリエステル樹脂とエステル基で結合してもよい。
上記臭素化エポキシ系難燃剤は、単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記人工毛髪用ポリエステル系繊維は、ポリエステル樹脂100重量部に対し、臭素化エポキシ系難燃剤を5〜40重量部含むことが好ましい。より好ましくは、ポリエステル樹脂100重量部に対する臭素化エポキシ系難燃剤の含有量の下限値は、6重量部以上である。ポリエステル樹脂100重量部に対する臭素化エポキシ系難燃剤の含有量の上限値は、30重量部以下であることがより好ましく、25重量部以下であることがさらに好ましい。臭素化エポキシ系難燃剤の含有量が上記範囲内であれば、人工毛髪用ポリエステル系繊維は、難燃性、発色性及び紡糸性に優れる。
上記人工毛髪用ポリエステル系繊維は、アンチモン化合物を含む。アンチモン化合物は難燃助剤として機能し、人工毛髪用ポリエステル系繊維の難燃性を向上させる。上記人工毛髪用ポリエステル系繊維は、上記ポリエステル樹脂100重量部に対し、アンチモン化合物を0.5〜10重量部含むことが好ましい。ポリエステル樹脂100重量部に対するアンチモン化合物の含有量の下限値は、より好ましくは1重量部以上であり、さらに好ましくは1.5重量部以上である。ポリエステル樹脂100重量部に対するアンチモン化合物の含有量の上限値は、より好ましくは7重量部以下であり、さらに好ましくは5重量部以下である。
上記アンチモン化合物は、五価のアンチモンを含む化合物であり、pHが3〜10の範囲である。上記人工毛髪用ポリエステル系繊維は、pH3〜10の五価のアンチモンを含む化合物を用いることにより、ガサツキがほとんど生じず滑らかな触感になる。また、五価のアンチモンを含む化合物は、臭素化エポキシ系難燃剤中に分散しやすく、人工毛髪用ポリエステル系繊維の発色性が向上する。三価のアンチモンを含む化合物を用いると、臭素化エポキシ系難燃剤が凝集してしまい、繊維にガサツキが生じて触感が悪くなる上、発色性も低下する。同様にpHが3未満の五価のアンチモンを含む化合物を用いると、臭素化エポキシ系難燃剤が凝集してしまい、繊維にガサツキが生じて触感が悪くなる上、発色性も低下する。アンチモン化合物のpHが10以下であると、加水分解が起きず、作業性が良好になる。上記アンチモン化合物(五価のアンチモンを含む化合物)のpHの下限は、好ましくは4以上であり、より好ましくは5以上である。また、上記アンチモン化合物(五価のアンチモンを含む化合物)のpHの上限は、好ましくは9.5以下であり、より好ましくは9以下である。なお、上記において、アンチモン化合物のpHは、室温(20℃)で、対象化合物1gを10gの純水に分散させた後測定した値である。
上記アンチモン化合物としては、例えば、pHが3〜10の五酸化アンチモン、アンチモン酸ナトリウム(アンチモン酸ソーダ)、アンチモン酸カリウムなどを用いることができる。強度などの繊維物性の確保や臭素化エポキシ系難燃剤のゲル化抑制の観点から、上記アンチモン化合物は、pHが3〜10の五酸化アンチモンであることが好ましい。これらのアンチモン化合物は、単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記人工毛髪用ポリエステル系繊維の繊維断面において、アンチモン化合物の平均対角幅は、0.5μm以下であり、好ましくは0.4μm以下であり、より好ましくは、0.3μm以下である。上記人工毛髪用ポリエステル系繊維の繊維断面において、アンチモン化合物の平均対角幅が上記範囲内であると、ガサツキがほとんど生じず人毛に似た滑らかな触感を有する。
上記人工毛髪用ポリエステル系繊維の繊維断面において、アンチモン化合物は、平均対角幅が0.1〜0.5μmであり、対角幅の標準偏差が0.1〜0.3であることが好ましい。より好ましくは、平均対角幅が0.1〜0.4μmであり、対角幅の標準偏差が0.1〜0.3であり、さらに好ましくは、平均対角幅が0.1〜0.3μmであり、対角幅の標準偏差が0.1〜0.25である。上記人工毛髪用ポリエステル系繊維は、このように、アンチモン化合物がある程度の大きさを有し、かつアンチモン化合物の大きさに一定範囲のばらつきがあることで、ベタツキ感がほとんどなくさらっとした触感になり、発色性も良好である。
上記人工毛髪用ポリエステル系繊維の繊維断面において、アンチモン化合物の平均対角幅は、0.1μm未満であることが好ましい。アンチモン化合物の平均対角幅が上記の範囲であると、分散性が高く、発色性が極めて良好になる。アンチモン化合物の平均対角幅が小さいほど、臭素化エポキシ系難燃剤中に分散しやすくなり、発色性が向上する。ベタツキ感の観点から、上記アンチモン化合物の平均対角幅の下限値は、0.005μm以上であることが好ましく、より好ましくは0.01μm以上である。
上記人工毛髪用ポリエステル系繊維の繊維断面におけるアンチモン化合物の平均対角幅を0.5μm以下にするという観点から、原料として用いるアンチモン化合物の粒子径は、3.5μm以下であることが好ましく、3.0μm以下であることがより好ましく、2.5μm以下であることがさらに好ましい。原料として用いるアンチモン化合物の粒子径の下限は特に限定されないが、作業性の観点から、0.02μm以上であることが好ましく、0.1μm以上であることがより好ましく、0.2μm以上であることがさらに好ましい。原料として用いるアンチモン化合物の粒子径は、粒度分布測定によるメジアン径をいう。粒度分布測定は、レーザー回折式粒度分布測定装置(島津製作所製、型番「SALD―7000」)を使用し、分散媒として蒸留水を用いて測定することができる。
本発明において、繊維断面とは、繊維軸方向に対して平行の断面をいい、繊維断面におけるアンチモン化合物の対角幅は、繊維軸方向に対して平行の断面において、アンチモン化合物の繊維軸方向に対して垂直方向における最大長さをいう。また、繊維断面におけるアンチモン化合物の平均対角幅は、繊維軸方向に対して平行の断面の面積360μm2当たりに存在するアンチモン化合物の対角幅を平均したものである。また、繊維断面におけるアンチモン化合物の対角幅の標準偏差は、繊維軸方向に対して平行の断面の面積360μm2当たりに存在するアンチモン化合物の対角幅の標準偏差を意味する。以下、本発明の人工毛髪用ポリエステル系繊維の繊維断面(繊維軸方向に対して平行方向の断面)におけるアンチモン化合物の対角幅を模式的に示した図1に基づいて具体的に説明する。図1に示しているように、繊維軸方向Dに対して平行方向の断面100において、アンチモン化合物10の繊維軸方向Dに対して垂直方向における最大長さWが対角幅である。
上記人工毛髪用ポリエステル系繊維において、繊維断面(繊維軸方向に対して平行の断面)におけるアンチモン化合物は走査電子顕微鏡(SEM)などで観察することができる。また、本発明では、上記人工毛髪用ポリエステル系繊維の繊維断面のSEM写真を用いて、繊維断面におけるアンチモン化合物の対角幅を測定し、平均対角幅及び対角幅の標準偏差を算出することができる。上記人工毛髪用ポリエステル系繊維の繊維断面の作製は、例えば、クロスセクションポリッシャー(CP)装置を使用した断面作製(イオンミリング加工)により行うことができる。形態観察は、電界放出型走査電子顕微鏡(FE−SEM)装置(カールツァイス製「ULTRA plus」を用い、加速電圧2kV下で観察することができる。試料の組成像は平均原子番号に依存するため、重元素がある部分では明るく、軽元素がある部分では暗い像が得られる。
上記人工毛髪用ポリエステル系繊維は、本発明の効果を阻害しない範囲内において、必要に応じて、臭素化エポキシ系難燃剤以外の難燃剤、アンチモン化合物以外の難燃助剤、耐熱剤、安定剤、蛍光剤、酸化防止剤、静電防止剤などの各種添加剤を含有してもよい。
本発明の人工毛髪用ポリエステル系繊維は、例えば、ポリエステル樹脂と臭素化エポキシ系難燃剤及びアンチモン化合物などを含むポリエステル樹脂組成物を溶融混練し、溶融混練したポリエステル樹脂組成物を通常の溶融紡糸法で溶融紡糸することにより得られる。
上記ポリエステル樹脂組成物は、ポリエステル樹脂100重量部に対し、臭素化エポキシ系難燃剤を5〜40重量部含むことが好ましい。より好ましい下限値として、ポリエステル樹脂100重量部に対し、臭素化エポキシ系難燃剤を6重量部以上含む。より好ましい上限値として、ポリエステル樹脂100重量部に対し、臭素化エポキシ系難燃剤を30重量部以下含み、25重量部以下含むことがさらに好ましい。また、上記ポリエステル樹脂組成物は、ポリエステル樹脂100重量部に対し、アンチモン化合物(pHが3〜10の五価のアンチモンを含む化合物)を0.5〜10重量部含むことが好ましい。より好ましい下限値として、ポリエステル樹脂100重量部に対し、アンチモン化合物(pHが3〜10の五価のアンチモンを含む化合物)を1重量部以上含み、1.5重量部以上含むことがさらに好ましい。より好ましい上限値として、ポリエステル樹脂100重量部に対し、アンチモン化合物(pHが3〜10の五価のアンチモンを含む化合物)を7重量部以下含み、5重量部以下含むことがさらに好ましい。
上記ポリエステル樹脂組成物は、上述したポリエステル樹脂、臭素化エポキシ系難燃剤、アンチモン化合物などの各成分をドライブレンドした後、種々の一般的な混練機を用いて溶融混練して得ることができる。上記混練機としては、例えば、一軸押出機、二軸押出機、ロール、バンバリーミキサー、ニーダーなどが挙げられる。中でも、一軸押出機及び二軸押出機などの押出機が、混練度の調整、操作の簡便性の点から好ましい。
上記ポリエステル樹脂組成物の溶融混練は、押出機を用い、押出機の吐出量Q(kg/時間)とスクリュー回転数R(rpm)の比Q/R(以下において、単にQ/Rとも記す。)が1.8以下の条件下で行うことが好ましい。上記ポリエステル樹脂組成物の溶融混練は、ポリエステル樹脂の融点以上の温度、例えば、250〜280℃の温度で行うことが好ましい。押出機としては、二軸押出機が好ましい。上記Q/Rが1.8以下であると、溶融混練後のポリエステル樹脂組成物における臭素化エポキシ系難燃剤とアンチモン化合物の分散状態が良好になり、該溶融混練後のポリエステル樹脂組成物を溶融紡糸することで、繊維断面におけるアンチモン化合物の平均対角幅を0.5μm以下にすることができる。上記Q/Rの上限は、より好ましくは1.5以下であり、さらに好ましくは0.8以下である。また、上記Q/Rの下限は0.05以上であることが好ましく、0.2以上であることがより好ましい。上記Q/Rが0.05以上であると、過混練によりポリエステル樹脂が分解するおそれがなく、紡糸安定性も良好になる。
本発明の人工毛髪用ポリエステル系繊維を通常の溶融紡糸法で溶融紡糸して製造する場合には、例えば、ギアポンプ、口金などの温度を250〜310℃とし、溶融混錬したポリエステル樹脂組成物を溶融紡糸し、紡出糸条を加熱筒に通過させた後、ポリエステル樹脂のガラス転移点以下に冷却し、50〜5000m/分の速度で引き取ることにより紡出糸条(未延伸糸)が得られる。また、紡出糸条を冷却用の水を入れた水槽で冷却し、繊度のコントロールを行なうことも可能である。加熱筒の温度と長さ、冷却風の温度と吹付量、冷却水槽の温度、冷却時間及び引取速度は、ポリマーの吐出量及び口金の孔数によって適宜調整することができる。
本発明において、得られた紡出糸条(未延伸糸)は熱延伸されることが好ましい。延伸は、紡出糸条を一旦巻き取ってから延伸する2工程法と、紡出糸条を巻き取ることなく連続して延伸する直接紡糸延伸法のいずれの方法によって行ってもよい。熱延伸は、1段延伸法又は2段以上の多段延伸法で行なわれる。熱延伸における加熱手段としては、加熱ローラ、ヒートプレート、スチームジェット装置、温水槽などを使用することができ、これらを適宜併用することもできる。
本発明の人工毛髪用ポリエステル系繊維は、非捲縮生糸状の繊維であることが好ましい。また、人工毛髪に適するという観点から、繊度が10〜100dtexであることが好ましい。上記人工毛髪用ポリエステル系繊維の繊度の下限値は、より好ましくは20dtex以上であり、さらに好ましくは35dtex以上である。上記人工毛髪用ポリエステル系繊維の繊度の上限値は、より好ましくは90dtex以下であり、さらに好ましくは80dtex以下である。
本発明の人工毛髪用ポリエステル系繊維は難燃性に優れる上、滑らかな触感を有し、ベタツキ感もほとんどない。好ましくは、発色性にも優れる。
上記人工毛髪用ポリエステル系繊維の難燃性は、LOI値と燃焼試験によるドリップの有無で判断することができる。LOI値の測定及び燃焼試験は、後述する通りに行うことができる。上記人工毛髪用ポリエステル系繊維は、難燃性に優れるという観点から、LOI値が23以上であり、かつ燃焼試験でドリップが発生しないことが好ましく、LOI値が25以上であり、かつ燃焼試験でドリップが発生しないことがより好ましい。
本発明の人工毛髪用ポリエステル系繊維は、そのまま単独で人工毛髪として用いることができる。或いは、上記人工毛髪用ポリエステル系繊維に、人毛、獣毛、ポリ塩化ビニル系繊維、モダアクリル繊維、ポリアミド系繊維、ポリオレフィン系繊維、再生蛋白繊維及び他のポリエステル系繊維からなる群から選ばれる少なくとも1つの繊維を混ぜ合わせて毛髪用繊維束として用いることができる。
本発明の頭飾製品は、本発明の人工毛髪用ポリエステル系繊維のみで形成されていてもよい。また、上記頭飾製品は、本発明の人工毛髪用ポリエステル系繊維に、人毛、獣毛、ポリ塩化ビニル系繊維、モダアクリル繊維、ポリアミド系繊維、ポリオレフィン系繊維、再生蛋白繊維及び他のポリエステル系繊維からなる群から選ばれる少なくとも1つの繊維を組み合わせて形成してもよい。
上記頭飾製品としては、特に限定されないが、例えば、ヘアーウィッグ、かつら、ウィービング、ヘアーエクステンション、ブレードヘアー、ヘアーアクセサリー、ドールヘアーなどが挙げられる。
以下、本発明を実施例に基づいてさらに具体的に説明する。なお、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
実施例及び比較例で用いた化合物(原料)を下記に示した。
ポリエチレンテレフタレート(以下において、「PET」とも記す。):三菱化学社製、製品名「BK2180」
臭素化エポキシ系難燃剤(以下において、単に「難燃剤」とも記す。):阪本薬品工業社製、製品名「SRT−20000」、数平均分子量40000、末端エポキシ型臭素化エポキシ系難燃剤
難燃助剤I:アンチモン酸ナトリウム(V)(日本精鉱社製、製品名「SA−A」、粒子径2.5μm、pH9)
難燃助剤II:五酸化アンチモン(NYACOLナノテクノロジーズ社製、製品名「ZTA」、粒子径2μm、pH9.5)
難燃助剤III:五酸化アンチモン(NYACOLナノテクノロジーズ社製、製品名「6220」、粒子径2μm、pH7)
難燃助剤IV:五酸化アンチモン(NYACOLナノテクノロジーズ社製、製品名「ADP494」、粒子径2μm、pH5)
難燃助剤V:五酸化アンチモン(NYACOLナノテクノロジーズ社製、製品名「A1588LP」、粒子径2μm、pH2.5)
難燃助剤VI:三酸化アンチモン(日本精鉱社製、製品名「PATOX−M」、粒子径1μm、pH5)
難燃助剤VII:五酸化アンチモン(日産化学社製、製品名「サンエポックNA−1030」、粒子径4μm、pH9)
なお、上記において、アンチモン化合物のpHは、室温(20℃)で、対象化合物1gを10gの純水に分散させた後測定した値である。また、アンチモン化合物の粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定装置(島津製作所製、型番「SALD―7000」)を使用し、分散媒として蒸留水を用いて測定したメジアン径である。
ポリエチレンテレフタレート(以下において、「PET」とも記す。):三菱化学社製、製品名「BK2180」
臭素化エポキシ系難燃剤(以下において、単に「難燃剤」とも記す。):阪本薬品工業社製、製品名「SRT−20000」、数平均分子量40000、末端エポキシ型臭素化エポキシ系難燃剤
難燃助剤I:アンチモン酸ナトリウム(V)(日本精鉱社製、製品名「SA−A」、粒子径2.5μm、pH9)
難燃助剤II:五酸化アンチモン(NYACOLナノテクノロジーズ社製、製品名「ZTA」、粒子径2μm、pH9.5)
難燃助剤III:五酸化アンチモン(NYACOLナノテクノロジーズ社製、製品名「6220」、粒子径2μm、pH7)
難燃助剤IV:五酸化アンチモン(NYACOLナノテクノロジーズ社製、製品名「ADP494」、粒子径2μm、pH5)
難燃助剤V:五酸化アンチモン(NYACOLナノテクノロジーズ社製、製品名「A1588LP」、粒子径2μm、pH2.5)
難燃助剤VI:三酸化アンチモン(日本精鉱社製、製品名「PATOX−M」、粒子径1μm、pH5)
難燃助剤VII:五酸化アンチモン(日産化学社製、製品名「サンエポックNA−1030」、粒子径4μm、pH9)
なお、上記において、アンチモン化合物のpHは、室温(20℃)で、対象化合物1gを10gの純水に分散させた後測定した値である。また、アンチモン化合物の粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定装置(島津製作所製、型番「SALD―7000」)を使用し、分散媒として蒸留水を用いて測定したメジアン径である。
(実施例1〜7、比較例1〜4)
上述した各化合物(原料)を水分量100ppm以下に乾燥し、下記表1に示す配合割合でドライブレンドした。得られたポリエステル樹脂組成物を二軸押出機(日本製鋼所社製「TEX44」)に供給し、下記表1に示す吐出量及びスクリュー回転数の条件下、バレル設定温度270℃で溶融混練し、ペレット化した。得られたペレットを水分率100ppm以下に乾燥させた。次いで、乾燥したペレットを、溶融紡糸機(シンコーマシナリー社製「SV30」)に供給し、バレル設定温度270℃で、扁平比が1.4:1の繭形断面ノズル孔を有する紡糸口金より溶融ポリマーを吐出し、20℃の冷却風により空冷し、100m/分の速度で巻き取って未延伸糸を得た。得られた未延伸糸を、75℃に加熱したヒートロールを用いて3.5倍に延伸し、180℃に加熱したヒートロールで熱処理し、30m/分の速度で巻き取り、単繊維繊度が約60dtex程度のポリエステル系繊維(マルチフィラメント)を得た。
上述した各化合物(原料)を水分量100ppm以下に乾燥し、下記表1に示す配合割合でドライブレンドした。得られたポリエステル樹脂組成物を二軸押出機(日本製鋼所社製「TEX44」)に供給し、下記表1に示す吐出量及びスクリュー回転数の条件下、バレル設定温度270℃で溶融混練し、ペレット化した。得られたペレットを水分率100ppm以下に乾燥させた。次いで、乾燥したペレットを、溶融紡糸機(シンコーマシナリー社製「SV30」)に供給し、バレル設定温度270℃で、扁平比が1.4:1の繭形断面ノズル孔を有する紡糸口金より溶融ポリマーを吐出し、20℃の冷却風により空冷し、100m/分の速度で巻き取って未延伸糸を得た。得られた未延伸糸を、75℃に加熱したヒートロールを用いて3.5倍に延伸し、180℃に加熱したヒートロールで熱処理し、30m/分の速度で巻き取り、単繊維繊度が約60dtex程度のポリエステル系繊維(マルチフィラメント)を得た。
実施例1〜7及び比較例1〜4で得られたポリエステル系繊維において、繊維断面におけるアンチモン化合物(Sb化合物)の平均対角幅及び対角幅の標準偏差を下記のように測定し、その結果を下記表1に示した。また、実施例1〜7及び比較例1〜4で得られたポリエステル系繊維の難燃性、触感(滑らかさ)、ベタツキ感及び発色性を下記のように測定・評価し、その結果を下記表1に示した。また、実施例1〜7及び比較例1〜4における紡糸安定性を下記のように測定・評価し、その結果を下記表1に示した。
(アンチモン化合物の平均対角幅及び対角幅の標準偏差)
繊維断面におけるアンチモン化合物の対角幅は、下記分析方法で観察・測定した。繊維断面(繊維軸方向に対して平行の断面)の断面作製(イオンミリング加工)は、クロスセクションポリッシャー(CP)装置(日本電子株式会社製「SM−09020CP」)を用い、加速電圧6kVの加工条件で行った。形態観察は、電界放出型走査電子顕微鏡(FE−SEM)装置(カールツァイス製「ULTRA plus」を用い、加速電圧2kV下で観察した。試料の組成像は平均原子番号に依存するため、重元素がある部分では明るく、軽元素がある部分では暗い像が得られる。今回、試料(ポリエステル系繊維)はポリエチレンテレフタレート、臭素化エポキシ系難燃剤、アンチモン化合物を含むため、組成像は、(1)アンチモン化合物、(2)臭素化エポキシ系難燃剤、(3)ポリエチレンテレフタレートの順で明るい像が得られる。すなわち、アンチモン化合物の像が一番明るい。得られた画像から、画像解析ソフト(三谷商事株式会社製「winROOF」)を用い、360μm2当たりに存在するアンチモン化合物の個数及び各々のアンチモン化合物の対角幅を測定し、360μm2当たりに存在するアンチモン化合物の対角幅の平均値及び標準偏差を算出し、それぞれ、アンチモン化合物の平均対角幅と対角幅の標準偏差とした。
繊維断面におけるアンチモン化合物の対角幅は、下記分析方法で観察・測定した。繊維断面(繊維軸方向に対して平行の断面)の断面作製(イオンミリング加工)は、クロスセクションポリッシャー(CP)装置(日本電子株式会社製「SM−09020CP」)を用い、加速電圧6kVの加工条件で行った。形態観察は、電界放出型走査電子顕微鏡(FE−SEM)装置(カールツァイス製「ULTRA plus」を用い、加速電圧2kV下で観察した。試料の組成像は平均原子番号に依存するため、重元素がある部分では明るく、軽元素がある部分では暗い像が得られる。今回、試料(ポリエステル系繊維)はポリエチレンテレフタレート、臭素化エポキシ系難燃剤、アンチモン化合物を含むため、組成像は、(1)アンチモン化合物、(2)臭素化エポキシ系難燃剤、(3)ポリエチレンテレフタレートの順で明るい像が得られる。すなわち、アンチモン化合物の像が一番明るい。得られた画像から、画像解析ソフト(三谷商事株式会社製「winROOF」)を用い、360μm2当たりに存在するアンチモン化合物の個数及び各々のアンチモン化合物の対角幅を測定し、360μm2当たりに存在するアンチモン化合物の対角幅の平均値及び標準偏差を算出し、それぞれ、アンチモン化合物の平均対角幅と対角幅の標準偏差とした。
(難燃性)
LOIの値と、燃焼試験によるドリップの有無に基づいて以下の4段階の基準で判定した。
A:ドリップが無く、LOI値25以上
B:ドリップが無く、LOI値23以上25未満
C:ドリップが有り、LOI値23以上
D:ドリップの有無に関わらず、LOI値23未満
〈LOI値の測定〉
LOI値は、JIS L 1091 E法(酸素指数法試験)に準じて測定した。具体的には、フィラメント(長さ16cm、重さ0.25g)の両端を軽く両面テープでまとめ、懸撚器で挟み撚りをかけた。十分に撚りがかかったら、真中で二つに折り撚り合わせた。撚り合わせたフィラメントの両端をセロファン(登録商標)テープで止め、全長7cmになるようにした。得られた試料は、105℃にて60分間前乾燥を行ない、さらにデシケーターで30分以上乾燥させた。乾燥した試料を所定の酸素濃度に調整し、40秒後8〜12mmに絞った点火器で、上部より着火し、着火後点火器を離した。5cm以上燃えるか、3分以上燃え続けた酸素濃度を調べ、同じ条件で試験を3回繰り返し、限界酸素指数(LOI)とした。
〈燃焼試験〉
150mmの長さに切断したフィラメント0.7g分を束ね、一方の端をクランプで挟んでスタンドに有効長120mmになるように固定して垂直に垂らした。固定したフィラメントに20mmの炎を3秒間接炎して燃焼させ、ドリップの有無を観察した。
LOIの値と、燃焼試験によるドリップの有無に基づいて以下の4段階の基準で判定した。
A:ドリップが無く、LOI値25以上
B:ドリップが無く、LOI値23以上25未満
C:ドリップが有り、LOI値23以上
D:ドリップの有無に関わらず、LOI値23未満
〈LOI値の測定〉
LOI値は、JIS L 1091 E法(酸素指数法試験)に準じて測定した。具体的には、フィラメント(長さ16cm、重さ0.25g)の両端を軽く両面テープでまとめ、懸撚器で挟み撚りをかけた。十分に撚りがかかったら、真中で二つに折り撚り合わせた。撚り合わせたフィラメントの両端をセロファン(登録商標)テープで止め、全長7cmになるようにした。得られた試料は、105℃にて60分間前乾燥を行ない、さらにデシケーターで30分以上乾燥させた。乾燥した試料を所定の酸素濃度に調整し、40秒後8〜12mmに絞った点火器で、上部より着火し、着火後点火器を離した。5cm以上燃えるか、3分以上燃え続けた酸素濃度を調べ、同じ条件で試験を3回繰り返し、限界酸素指数(LOI)とした。
〈燃焼試験〉
150mmの長さに切断したフィラメント0.7g分を束ね、一方の端をクランプで挟んでスタンドに有効長120mmになるように固定して垂直に垂らした。固定したフィラメントに20mmの炎を3秒間接炎して燃焼させ、ドリップの有無を観察した。
(触感-滑らかさ)
人毛との比較により、以下の4段階の基準で官能評価した。
A:人毛と同等の非常に滑らかな風合いであり、ガサツキ感がない。
B:人毛に似た滑らかな風合いであり、ガサツキ感がほとんどない。
C:ガサツキ感がある。
D:ガサツキ感が強い。
人毛との比較により、以下の4段階の基準で官能評価した。
A:人毛と同等の非常に滑らかな風合いであり、ガサツキ感がない。
B:人毛に似た滑らかな風合いであり、ガサツキ感がほとんどない。
C:ガサツキ感がある。
D:ガサツキ感が強い。
(ベタツキ感)
人毛との比較により、以下の4段階の基準で官能評価した。
A:人毛と同等のレベルであり、ベタツキ感がない。
B:人毛とほぼ同等のレベルであり、ベタツキ感がほとんどない。
C:ベタツキ感がある。
C:ベタツキ感が強い。
人毛との比較により、以下の4段階の基準で官能評価した。
A:人毛と同等のレベルであり、ベタツキ感がない。
B:人毛とほぼ同等のレベルであり、ベタツキ感がほとんどない。
C:ベタツキ感がある。
C:ベタツキ感が強い。
(発色性)
長さ30cm、総繊度10万dtexのトウフィラメントを用い、太陽光のもと、目視により、人毛の外観との比較により、以下の4段階の基準で評価した。
A:人毛に近い鮮明な色相となっている
B:繊維がやや白濁気味で、人毛の外観に対して若干色の鮮明性が劣る
C:繊維が白濁気味で、人毛の外観に対して色の鮮明性が劣る
D:繊維の白濁が強く、人毛の外観に対して明らかに色の鮮明性が劣る
長さ30cm、総繊度10万dtexのトウフィラメントを用い、太陽光のもと、目視により、人毛の外観との比較により、以下の4段階の基準で評価した。
A:人毛に近い鮮明な色相となっている
B:繊維がやや白濁気味で、人毛の外観に対して若干色の鮮明性が劣る
C:繊維が白濁気味で、人毛の外観に対して色の鮮明性が劣る
D:繊維の白濁が強く、人毛の外観に対して明らかに色の鮮明性が劣る
(紡糸安定性)
ポリエステル系繊維(フィラメント数が120本のマルチフィラメント)の紡糸を連続的に6時間行った後、1時間の平均糸切れ本数に基づいて、以下の4段階の基準で紡糸安定性を判定した。
A:糸切れ0本
B:糸切れ1本
C:糸切れ2〜4本
D:糸切れ5本以上
ポリエステル系繊維(フィラメント数が120本のマルチフィラメント)の紡糸を連続的に6時間行った後、1時間の平均糸切れ本数に基づいて、以下の4段階の基準で紡糸安定性を判定した。
A:糸切れ0本
B:糸切れ1本
C:糸切れ2〜4本
D:糸切れ5本以上
上記表1の結果から、アンチモン化合物としてpHが3〜10の五価のアンチモンを含む化合物を用い、繊維断面におけるアンチモン化合物の平均対角幅が0.5μm以下である実施例1〜7のポリエステル系繊維は、ガサツキがほとんどなく人毛に近似した滑らかな触感を有することが分かった。また、繊維断面におけるアンチモン化合物の対角幅の標準偏差が0.3以下である実施例1〜3、5〜7のポリエステル系繊維は、発色性にも優れていた。特に、繊維断面におけるアンチモン化合物の平均対角幅が0.1μm未満である実施例6及び7のポリエステル系繊維は、発色性が極めて良好であった。また、繊維断面におけるアンチモン化合物の平均対角幅が0.1〜0.5μmの範囲であり、対角幅の標準偏差が0.1〜0.3の範囲である実施例1、2及び5のポリエステル系繊維は、ガサツキ感もベタツキ感もなく、滑らか且つさらっとした優れた触感を有していた。
一方、pHが3未満の五価のアンチモンを含む化合物を用いた比較例1及び三酸化アンチモンを用いた比較例2のポリエステル系繊維では、酸性度が高いアンチモン化合物によって臭素化エポキシ系難燃剤が凝集してしまい、ガサツキが生じて触感が悪い上、発色性も悪かった。また、繊維断面におけるアンチモン化合物の平均対角幅が0.5μmを超える比較例3及び4のポリエステル系繊維でも、ガサツキが生じて触感が悪い上、発色性も悪かった。
実施例1〜4及び比較例4の対比から、溶融混練時の押出機の吐出量Q(kg/時間)とスクリュー回転数R(rpm)の比Q/Rが大きすぎると、繊維断面におけるアンチモン化合物の平均対角幅が0.5μmを超えることが確認された。
100 繊維断面(繊維軸方向に対して平行方向の断面)
10 アンチモン化合物
10 アンチモン化合物
Claims (8)
- ポリエステル樹脂、臭素化エポキシ系難燃剤及びアンチモン化合物を含む人工毛髪用ポリエステル系繊維であって、
前記ポリエステル樹脂は、ポリアルキレンテレフタレート及び/又はポリアルキレンテレフタレートを主体とする共重合ポリエステルであり、
前記アンチモン化合物は、pHが3〜10の五価のアンチモンを含む化合物であり、
繊維断面において、前記アンチモン化合物の平均対角幅が0.5μm以下であることを特徴とする人工毛髪用ポリエステル系繊維。 - 繊維断面において、前記アンチモン化合物の平均対角幅が0.1〜0.5μmであり、対角幅の標準偏差が0.1〜0.3である請求項1に記載の人工毛髪用ポリエステル系繊維。
- 繊維断面において、前記アンチモン化合物の平均対角幅が0.1μm未満である請求項1に記載の人工毛髪用ポリエステル系繊維。
- 前記アンチモン化合物は、pHが3〜10の五酸化アンチモンである請求項1〜3のいずれか1項に記載の人工毛髪用ポリエステル系繊維。
- 請求項1〜4のいずれか1項に記載の人工毛髪用ポリエステル系繊維の製造方法であって、
ポリエステル樹脂、臭素化エポキシ系難燃剤及びアンチモン化合物を含むポリエステル樹脂組成物を押出機で溶融混練する工程を含み、前記溶融混練工程において、押出機の吐出量Q(kg/時間)とスクリュー回転数R(rpm)の比Q/Rが1.8以下であることを特徴とする人工毛髪用ポリエステル系繊維の製造方法。 - 請求項1〜4のいずれか1項に記載の人工毛髪用ポリエステル系繊維と、人毛、獣毛、ポリ塩化ビニル系繊維、モダアクリル繊維、ポリアミド系繊維、ポリオレフィン系繊維、再生蛋白繊維及び他のポリエステル系繊維からなる群から選ばれる少なくとも1つの繊維を含むことを特徴とする毛髪用繊維束。
- 請求項1〜4のいずれか1項に記載の人工毛髪用ポリエステル系繊維を含むことを特徴とする頭飾製品。
- 前記頭飾製品は、さらに、人毛、獣毛、ポリ塩化ビニル系繊維、モダアクリル繊維、ポリアミド系繊維、ポリオレフィン系繊維、再生蛋白繊維及び他のポリエステル系繊維からなる群から選ばれる少なくとも1つの繊維を含む請求項7に記載の頭飾製品。
Priority Applications (3)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2013226834A JP2015086490A (ja) | 2013-10-31 | 2013-10-31 | 人工毛髪用ポリエステル系繊維、その製造方法、それを含む毛髪用繊維束及び頭飾製品 |
ZA2014/05986A ZA201405986B (en) | 2013-10-31 | 2014-08-15 | Polyester-based fiber for artificial hair, method for producing the same, and, fiber bundle for hair and hair ornament product including the same |
AP2014007948A AP2014007948A0 (en) | 2013-10-31 | 2014-09-19 | Polyester-based fiber for artificial hair, method for producing the same, and, fiber bundle for hairand hair ornament product including the same |
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JP2013226834A JP2015086490A (ja) | 2013-10-31 | 2013-10-31 | 人工毛髪用ポリエステル系繊維、その製造方法、それを含む毛髪用繊維束及び頭飾製品 |
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2013
- 2013-10-31 JP JP2013226834A patent/JP2015086490A/ja active Pending
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2014
- 2014-08-15 ZA ZA2014/05986A patent/ZA201405986B/en unknown
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