JP2020133021A - 人工毛髪用芯鞘複合繊維及びそれを含む頭飾製品 - Google Patents

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玄太 坂元
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徳和 安友
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Abstract

【課題】芯鞘構造を有する人工毛髪用繊維において、人毛に近い触感と外観を有し、耐剥離性が優れ、触感及び櫛通り性が良好な人工毛髪用芯鞘複合繊維及び頭飾製品を提供する。【解決手段】人工毛髪用芯鞘複合繊維1は、鞘部10と芯部20で構成され、いずれも二つの楕円形が凹部を介して結合した扁平二葉形の繊維断面を有する。【選択図】図1

Description

本発明は、人毛の代替品として使用できる人工毛髪用芯鞘複合繊維及びそれを含む頭飾製品に関する。
かつら、ヘアーウィッグ、付け毛、ヘアーバンド、ドールヘアー等の頭飾製品においては、従来、人毛が使われていたが、近年、人毛の入手が困難となり、人毛に代わる人工毛髪の需要が高まっている。人工毛髪は、人毛に近い触感や外観を有することが求められ、人毛に近い特性を有する人工毛髪用繊維として、芯鞘複合繊維が開発されている(先行文献1)。当該繊維は、芯にポリエステル樹脂、鞘にポリアミド樹脂から主に成り、熱セット性に優れ、鞘表面に凹凸を有することから合成繊維特有の光沢が抑制された人工毛髪用繊維が得られている。
特開平3−185103
しかしながら、先行文献1に記載の芯鞘複合繊維は、より人毛に近い色彩を得るために顔料を添加すると、顔料の種類や添加量により繊維表面の凹凸の発現や制御が困難になり、結果的に人工毛髪としての低光沢で触感の良い繊維が得られにくくなってしまうという課題があった。また、熱セット性の観点から、高い難燃性の繊維が求められているものの、ナイロンは、燃焼抑制効果が一般的に最も高いとされる臭素系難燃剤との相溶性が低いため、高難燃の特性を得ることが難しく、燃焼時に溶融した樹脂が落下(ドリップ)する危険性があるため、安全性の観点から人工毛髪として使用するには改善の余地があった。
本発明は、芯部と鞘部で構成された人工毛髪用芯鞘複合繊維であって、芯部にのみ難燃剤及び顔料を含み、溶融紡糸法により紡糸直後に当該複合繊維を液浴に通過させることによって、人毛に近い風合いを有する人工毛髪用芯鞘複合繊維に関する。
本発明によれば、人工毛髪用芯鞘複合繊維の芯部にのみ難燃剤及び顔料を添加し、溶融紡糸法により芯鞘複合繊維を製造する際に、紡糸直後に液浴に通過させることで、鞘表面に良好な凹凸を発現することができ、人毛に近い外観や触感、さらには高難燃を有する人工毛髪用芯鞘複合繊維を得ることができる。
図1は、本発明の一実施形態の人工毛髪用芯鞘複合繊維の繊維断面を示す模式図である。 図2は、実施例1の繊維の繊維表面のレーザー顕微鏡写真である。 図3は、比較例5の繊維の繊維表面のレーザー顕微鏡写真である。
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、芯部にポリエステル、鞘部にナイロンからなる芯鞘複合繊維にて芯部に顔料及び難燃剤を付与し、溶融紡糸法により紡糸直後に、ナイロンのガラス転移点以下の温度で液に通すことにより、半溶融状のナイロン分子が再結晶化又は再凝集化する際にナイロンの球晶の生成が促進され、繊維表面に微細な凹凸が形成されることによって光沢を抑制する艶消しの効果が得られ、人毛に近い自然な発色性や光沢及び高い難燃性を有する人工毛髪用繊維が得られることを見出し、本発明に至った。
<芯鞘複合繊維の形状>
本発明の人工毛髪用芯鞘複合繊維は、芯部と鞘部から構成され、形状は特に限定されないが、例えば扁平多葉形の断面形状を有する。前記扁平多葉形は、特に限定されないが、例えば、円形及び楕円形からなる群から選ばれる二つ以上の葉形が凹部を介して結合したものが挙げられ、葉形の数が2〜10であってもよく、2〜8であってもよい。生産性の観点から、二つの円形及び/又は楕円形が凹部を介して結合した扁平二葉形であることが好ましい。また、円形又は楕円形の形状は、必ずしも連続した弧を描く必要はなく、鋭角な角でなければ一部が変形した略円形又は略楕円形も含む。
前記人工毛髪用芯鞘複合繊維は、繊維断面と芯部が繊維断面長軸方向と芯部長軸方向が略一致した同一の扁平多葉形の断面形状を有することが好ましい。繊維断面と芯部の長軸方向が略一致した同一の扁平多葉形である場合、繊維断面において、繊維断面の外周形状と芯部の外周形状が相似形であるため、鞘の厚みが均一となり、人工毛髪として良好な触感と外観を維持した上で、芯部の表面への露出を防止することができる。また繊維断面と芯部が扁平多葉形の繊維断面を有することにより、芯鞘界面に凹部と凸部が存在することにより、曲げなどの変形により芯鞘界面に生じる応力を分散することができるため、二成分の剥離による繊維の分離を防止することができる。さらに、繊維断面と芯部の長軸方向が略一致しているため、断面2次モーメントに由来する曲げ弾性率の異方性も繊維全体と芯部で一致し、触感や櫛通りといった人工毛髪に必要とされる品質を容易に調整することもできる。
図1は、本発明の一実施形態の人工毛髪用芯鞘複合繊維の繊維断面を示す模式図である。該実施形態の人工毛髪用芯鞘複合繊維1は、鞘部10と芯部20で構成され、いずれも二つの楕円形が凹部を介して結合した扁平二葉形の繊維断面を有する。
前記人工毛髪用芯鞘複合繊維の芯鞘比率は、特に限定されないが面積比で芯:鞘=2:8〜9:1の範囲が好ましい。芯鞘比率がこの範囲であることにより、触感や質感などに関連する物性としての曲げ剛性値が人毛に近くなるため、人毛と同質の人工毛髪が得られる。この範囲よりも芯部が少ないと、曲げ剛性値が人毛より低くなるため、人毛と同質の人工毛髪が得られず、逆に、この範囲より芯部が多いと、曲げ剛性値が大きくなり過ぎて人毛に近似しなくなる上、鞘が極めて薄くなるため芯が露出しやすくなり、好ましくない。人毛と同質の触感や風合いなどを得る観点から、前記人工毛髪用芯鞘複合繊維の芯鞘比率は面積比で芯:鞘=3:7〜8:2の範囲が好ましい。
前記人工毛髪用芯鞘複合繊維は、人工毛髪に適するという観点から、単繊維繊度が10dtex以上150dtex以下であることが好ましく、より好ましくは30dtex以上120dtex以下であり、さらに好ましくは40dtex以上100dtex以下であり、特に好ましくは50dtex以上90dtex以下である。
<芯部>
本発明の人工毛髪用芯鞘複合繊維の芯部には、難燃剤及び顔料を少なくとも含有する。難燃剤及び顔料は、繊維表面の凹凸を形成するための球晶が発現する結晶核となり、合成繊維特有の光沢を抑える効果が得られる。また、鞘部に難燃剤を添加しても、鞘部の樹脂と難燃剤との相溶性が悪いため難燃性の高い繊維を製造することが難しく、顔料を鞘部に添加した場合は、表面凹凸を形成する球晶が多く生成し過ぎてしまい、成長を阻害するため、光沢が抑制されなくなってしまう。
顔料及び難燃剤の添加方法は特に限定はなく、溶融時に直接投入しても、あるいは芯部の樹脂に予め練り込んだマスターバッチによる投入の何れでもよい。耐熱性と難燃性の観点から、難燃剤には、臭素系高分子難燃剤が好ましく、芯部の樹脂100重量部に対し、臭素系高分子難燃剤5重量部以上40重量部以下を含むことが好ましい。
前記臭素系高分子難燃剤としては、特に限定されないが、例えば、耐熱性及び難燃性の観点から、臭素化エポキシ系難燃剤を用いることが好ましい。前記臭素化エポキシ系難燃剤は、原料としては分子末端がエポキシ基又はトリブロモフェノールからなる臭素化エポキシ系難燃剤を用いることができるが、臭素化エポキシ系難燃剤の溶融混練後の構造は、特に限定されず、下記化学式(1)に示す構成ユニットと下記化学式(1)の少なくとも一部が改変した構成ユニットの総数を100モル%とした場合、80モル%以上が化学式(1)で示す構成ユニットであることが好ましい。前記臭素化エポキシ系難燃剤は、溶融混練後に、構造が分子末端で変化してもよい。例えば、前記臭素化エポキシ系難燃剤の分子末端がエポキシ基又はトリブロモフェノール以外の水酸基、リン酸基、ホスホン酸基などに置換されていてもよく、分子末端がポリエステル成分とエステル基で結合していてもよい。
また、臭素化エポキシ系難燃剤の分子末端以外の構造の一部が変化してもよい。例えば、臭素化エポキシ系難燃剤の二級水酸基とエポキシ基が結合して分岐構造となっていてもよく、臭素化エポキシ系難燃剤分子中の臭素含有量が大きく変化しなければ、前記化学式(1)の臭素の一部が脱離又は付加してもよい。
前記臭素化エポキシ系難燃剤としては、例えば、下記化学式(2)に示しているような高分子型の臭素化エポキシ系難燃剤が好ましく用いられる。下記化学式(2)において、mは1〜1000である。下記化学式(2)に示しているような高分子型の臭素化エポキシ系難燃剤としては、例えば、阪本薬品工業株式会社製の臭素化エポキシ系難燃剤(商品名「SR−T2MP」)などの市販品を用いてもよい。
前記人工毛髪用芯鞘複合繊維は、臭素化エポキシ系難燃剤以外の難燃剤及び/または難燃助剤を含有してもよい。前記臭素化エポキシ系難燃剤以外の難燃剤としては、例えば、リン含有難燃剤や臭素含有難燃剤などが挙げられる。前記リン含有難燃剤として、例えば、リン酸エステルアミド化合物、有機環状リン系化合物などが挙げられる。上記臭素含有難燃剤としては、例えば、ペンタブロモトルエン、ヘキサブロモベンゼン、デカブロモジフェニル、デカブロモジフェニルエーテル、ビス(トリブロモフェノキシ)エタン、テトラブロモ無水フタル酸、エチレンビス(テトラブロモフタルイミド)、エチレンビス(ペンタブロモフェニル)、オクタブロモトリメチルフェニルインダン、トリス(トリブロモネオペンチル)ホスフェートなどの臭素含有リン酸エステル類;臭素化ポリスチレン類;臭素化ポリベンジルアクリレート類;臭素化フェノキシ樹脂;臭素化ポリカーボネートオリゴマー類;テトラブロモビスフェノールA、テトラブロモビスフェノールA−ビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)、テトラブロモビスフェノールA−ビス(アリルエーテル)、テトラブロモビスフェノールA−ビス(ヒドロキシエチルエーテル)などのテトラブロモビスフェノールA誘導体;トリス(トリブロモフェノキシ)トリアジンなどの臭素含有トリアジン系化合物;トリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレートなどの臭素含有イソシアヌル酸系化合物などが挙げられる。中でも、リン酸エステルアミド化合物、有機環状リン系化合物、及び臭素化フェノキシ樹脂系難燃剤からなる群から選ばれる一種以上が難燃性に優れている点で好ましい。
前記難燃助剤としては、例えば、アンチモン系化合物やアンチモンを含む複合金属などが挙げられる。前記アンチモン系化合物としては、例えば、三酸化アンチモン、四酸化アンチモン、五酸化アンチモン、アンチモン酸ナトリウム、アンチモン酸カリウム、アンチモン酸カルシウムなどが挙げられる。難燃性改良効果や触感への影響から、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、及びアンチモン酸ナトリウムからなる群から選ばれる一種以上がより好ましい。
前記顔料は、芯部の樹脂組成物に添加することにより、任意の色彩に着色された繊維を得ることができる。顔料としては、特に限定されないが、例えば、カーボンブラック、アンスラキノン系顔料、ペリノン系顔料を用いることができる。顔料の添加量は、作製したい色によって調整でき、例えば芯部を構成する樹脂100重量部に対し2〜3重量%含むことが挙げられる。
芯部には、必要に応じて、本発明の効果を阻害しない範囲内で、耐熱剤、安定剤、蛍光剤、酸化防止剤、静電防止剤などの各種添加剤を含有してもよい。
<表面粗さ>
人工毛髪用芯鞘複合繊維の表面粗さは、JIS B 0601:2001に準じた表面粗さRaとして算出し、レーザー顕微鏡で観察した画像を解析ソフトを用いて測定することができる。例えば、レーザー顕微鏡は株式会社キーエンス社製の「VK−9500」、解析ソフトは株式会社キーエンス社製の「VK Analyzer(VK−SH1XA)」が挙げられる。具体的には、任意に2本の当該繊維を選び、レーザー顕微鏡にて撮影し、繊維側面写真を得、各々の繊維側面写真について、解析ソフトで長手方向に長さ200μmあたりの粗さ曲線を任意に21本取得し、計42本の粗さ曲線から得られた表面粗さRaの平均値を求める。
前記表面粗さは、繊維の長手方向に取った際の値が0.05以上0.3マイクロメートル以下であることが好ましく、0.1以上0.2マイクロメートル以下であることがより好ましい。表面粗さが0.05マイクロメートル以上であると、得られる繊維の光沢が抑えられ、自然な発色となる。また、表面粗さが0.3マイクロメートル以下であると、触感や櫛通り性が良好な繊維を得ることができる。
<繊維の樹脂組成>
前記人工毛髪用芯鞘複合繊維の樹脂組成は、特に限定されない。例えば、ポリエステル系樹脂組成物、ポリアミド系樹脂組成物、塩化ビニル系樹脂組成物、モダアクリル系樹脂組成物、ポリカーボネート系樹脂組成物、ポリオレフィン系樹脂組成物、ポリフェニレンサルファイド系樹脂組成物などの樹脂組成物で構成することができる。また、これらの樹脂組成物を2種類以上組み合わせてもよい。
前記ポリアルキレンテレフタレートとしては、特に限定されないが、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレートなどが挙げられる。上記ポリアルキレンテレフタレートを主体とする共重合ポリエステルとしては、特に限定されないが、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレートなどのポリアルキレンテレフタレートを主体とし、他の共重合成分を含有する共重合ポリエステルなどが挙げられる。本発明の一実施形態において、「ポリアルキレンテレフタレートを主体とする共重合ポリエステル」は、ポリアルキレンテレフタレートを80モル%以上含有する共重合ポリエステルをいう。
前記他の共重合成分としては、例えば、イソフタル酸、オルトフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、パラフェニレンジカルボン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸などの多価カルボン酸及びそれらの誘導体;5−ナトリウムスルホイソフタル酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸ジヒドロキシエチルなどのスルホン酸塩を含むジカルボン酸及びそれらの誘導体;1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、4−ヒドロキシ安息香酸、ε−カプロラクトン、ビスフェノールAのエチレングリコールエーテルなどが挙げられる。
前記共重合ポリエステルは、安定性及び操作の簡便性の点から、主体となるポリアルキレンテレフタレートに少量の他の共重合成分を含有させて反応させることにより製造するのが好ましい。ポリアルキレンテレフタレートとしては、テレフタル酸及び/又はその誘導体(例えば、テレフタル酸メチル)と、アルキレングリコールとの重合体を用いることができる。前記共重合ポリエステルは、主体となるポリアルキレンテレフタレートの重合に用いるテレフタル酸及び/又はその誘導体(例えば、テレフタル酸メチル)と、アルキレングリコールとの混合物に、少量の他の共重合成分であるモノマーあるいはオリゴマー成分を含有させたものを重合させることにより製造してもよい。
前記共重合ポリエステルは、主体となるポリアルキレンテレフタレートの主鎖及び/又は側鎖に上記他の共重合成分が重縮合していればよく、共重合の方法などには特別な限定はない。
前記ポリアルキレンテレフタレートを主体とする共重合ポリエステルの具体例としては、例えば、ポリエチレンテレフタレートを主体とし、ビスフェノールAのエチレングリコールエーテル、1,4−シクロヘキサジメタノール、イソフタル酸及び5−ナトリウムスルホイソフタル酸ジヒドロキシエチルからなる群から選ばれる一種の化合物を共重合したポリエステルなどが挙げられる。
前記ポリアルキレンテレフタレート及び前記ポリアルキレンテレフタレートを主体とする共重合ポリエステルは、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。中でも、ポリエチレンテレフタレート;ポリプロピレンテレフタレート;ポリブチレンテレフタレート;ポリエチレンテレフタレートを主体とし、ビスフェノールAのエチレングリコールエーテルを共重合したポリエステル;ポリエチレンテレフタレートを主体とし、1,4−シクロヘキサンジメタノールを共重合したポリエステル;ポリエチレンテレフタレートを主体とし、イソフタル酸を共重合したポリエステル;及びポリエチレンテレフタレートを主体とし、5−ナトリウムスルホイソフタル酸ジヒドロキシエチルを共重合したポリエステルなどを単独又は2種以上組み合わせて用いることが好ましい。
前記ポリエステル樹脂の固有粘度(IV値と称す場合がある)は、特に限定されないが、0.3以上1.2以下であることが好ましく、0.4以上1.0以下であることがより好ましい。固有粘度が0.3以上であると、得られる繊維の機械的強度が低下せず、燃焼試験時にドリップする恐れもない。また、固有粘度が1.2以下であると、分子量が増大し過ぎず、溶融粘度が高くなり過ぎることがなく、溶融紡糸が容易となるうえ、繊度も均一になりやすい。
本発明に用いられるポリアミド系樹脂は、ラクタム、アミノカルボン酸、ジカルボン酸及びジアミンの混合物、ジカルボン酸誘導体及びジアミンの混合物、並びにジカルボン酸及びジアミンの塩からなる群から選ばれる1種以上を、重合して得られるナイロン樹脂を意味する。
前記ラクタムの具体例としては、特に限定されないが、例えば、2−アゼチジノン、2−ピロリジノン、δ−バレロラクタム、ε−カプロラクタム、エナントラクタム、カプリルラクタム、ウンデカラクタム、及びラウロラクタムなどを挙げることができる。これらのうち、ε−カプロラクタム、ウンデカラクタム、及びラウロラクタムが好ましく、特にε−カプロラクタムが好ましい。これらのラクタムは、1種で用いてもよく、2種以上の混合物で使用することもできる。
前記アミノカルボン酸の具体例としては、特に限定されないが、例えば、6−アミノカプロン酸、7−アミノヘプタン酸、8−アミノオクタン酸、9−アミノノナン酸、10−アミノデカン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸などを挙げることができる。これらのうち、6−アミノカプロン酸、11−アミノウンデカン酸、及び12−アミノドデカン酸が好ましく、特に6−アミノカプロン酸が好ましい。これらのアミノカルボン酸は、1種で用いてもよく、2種以上の混合物で使用することもできる。
前記ジカルボン酸及びジアミンの混合物、ジカルボン酸誘導体及びジアミンの混合物、又はジカルボン酸及びジアミンの塩で用いられるジカルボン酸の具体例としては、特に限定されないが、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、ブラシリン酸、テトラデカン二酸、ペンタデカン二酸、オクタデカン二酸などの脂肪族ジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式ジカルボン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸などが挙げられる。これらのうち、アジピン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、テレフタル酸、及びイソフタル酸が好ましく、特にアジピン酸、テレフタル酸、及びイソフタル酸が好ましい。これらのジカルボン酸は、1種で用いてもよく、2種以上の混合物で使用することもできる。
前記ジカルボン酸及びジアミンの混合物、ジカルボン酸誘導体及びジアミンの混合物、又はジカルボン酸及びジアミンの塩で用いられるジアミンの具体例としては、特に限定されないが、例えば、1,4−ジアミノブタン、1,5−ジアミノペンタン、1,6−ジアミノヘキサン、2−メチル−1,5−ジアミノペンタン(MDP)、1,7−ジアミノヘプタン、1,8−ジアミノオクタン、1,9−ジアミノノナン、1,10−ジアミノデカン、1,11−ジアミノウンデカン、1,12−ジアミノドデカン、1,13−ジアミノトリデカン、1,14−ジアミノテトラデカン、1,15−ジアミノペンタデカン、1,16−ジアミノヘキサデカン、1,17−ジアミノヘプタデカン、1,18−ジアミノオクタデカン、1,19−ジアミノノナデカン、1,20−ジアミノエイコサンなどの脂肪族ジアミン、シクロヘキサンジアミン、ビス−(4−アミノヘキシル)メタンなどの脂環式ジアミン、m−キシリレンジアミン、p−キシリレンジアミンなどの芳香族ジアミンなどが挙げられる。これらのうち、特に脂肪族ジアミンが好ましく、とりわけヘキサメチレンジアミンが好ましく用いられる。これらのジアミンは、1種で用いてもよく、2種以上の混合物で使用することもできる。
前記ポリアミド系樹脂(ナイロン樹脂)としては、特に限定されないが、例えば、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン6・10、ナイロン6・12、ナイロン6T及び/又は6I単位を含有する半芳香族ナイロン、並びにこれらナイロン樹脂の共重合体などを用いることが好ましい。とりわけ、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン6及びナイロン66の共重合体がより好ましい。
前記ポリアミド系樹脂は、例えば、ポリアミド系樹脂原料を触媒の存在下または不在下で加熱して行うポリアミド系樹脂重合方法により製造することができる。その重合時に攪拌はあっても無くてもよいが、均質な生成物を得るには攪拌した方が好ましい。重合温度は目的とする当該重合物の重合度、反応収率、反応時間に応じて任意に設定可能であるが、最終的に得られるポリアミド系樹脂の品質を考慮すれば低温の方が好ましい。反応率についても任意に設定できる。圧力について制限はないが揮発性成分を効率よく系外に抜出すためには系内を減圧とすることが好ましい。
本発明に用いられるポリアミド系樹脂は、必要に応じてカルボン酸化合物またはアミン化合物で末端を封鎖してあってもよい。モノカルボン酸及び/又はモノアミンを添加して末端封鎖する場合には、得られたナイロン樹脂の末端アミノ基又は末端カルボキシル基濃度が末端封鎖剤を使用しない場合に比べて低下する。一方、ジカルボン酸又はジアミンで末端封鎖した場合には末端アミノ基と末端カルボキシル基濃度の和は変化しないが、アミノ末端基とカルボキシル末端基との濃度の比率が変化する。
前記カルボン酸化合物の具体例としては、特に限定されないが、例えば、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、ウンデカン酸、ラウリル酸、トリデカン酸、ミリスチン酸、ミリストレイン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、アラキン酸などの脂肪族モノカルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸、メチルシクロヘキサンカルボン酸などの脂環式モノカルボン酸、安息香酸、トルイル酸、エチル安息香酸、フェニル酢酸などの芳香族モノカルボン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、ブラシリン酸、テトラデカン二酸、ペンタデカン二酸、オクタデカン二酸などの脂肪族ジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式ジカルボン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸などが挙げられる。
前記アミン化合物の具体例としては、特に限定されないが、例えば、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、2−エチルヘキシルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、ウンデシルアミン、ドデシルアミン、トリデシルアミン、テトラデシルアミン、ペンタデシルアミン、ヘキサデシルアミン、オクタデシルアミン、ノナデシルアミン、イコシルアミンなどの脂肪族モノアミン、シクロヘキシルアミン、メチルシクロヘキシルアミンなどの脂環式モノアミン、ベンジルアミン、β−フェニルエチルアミンなどの芳香族モノアミン、1,4−ジアミノブタン、1,5−ジアミノペンタン、1,6−ジアミノヘキサン、1,7−ジアミノヘプタン、1,8−ジアミノオクタン、1,9−ジアミノノナン、1,10−ジアミノデカン、1,11−ジアミノウンデカン、1,12−ジアミノドデカン、1,13−ジアミノトリデカン、1,14−ジアミノテトラデカン、1,15−ジアミノペンタデカン、1,16−ジアミノヘキサデカン、1,17−ジアミノヘプタデカン、1,18−ジアミノオクタデカン、1,19−ジアミノノナデカン、1,20−ジアミノエイコサンなどの脂肪族ジアミン、シクロヘキサンジアミン、ビス−(4−アミノヘキシル)メタンなどの脂環式ジアミン、キシリレンジアミンなどの芳香族ジアミンなどが挙げられる。
前記ポリアミド系樹脂の末端基濃度は特に制限はないが、繊維用途で染色性を高める必要がある場合や樹脂用途でアロイ化に適した材料を設計する場合などには末端アミノ基濃度が高い方が好ましい。また、長期エージング条件下での着色やゲル化を抑制したい場合などは逆に末端アミノ基濃度が低い方が好ましい。更に再溶融時のラクタム再生、オリゴマー生成による溶融紡糸時の糸切れ、連続射出成形時のモールドデポジット、フィルムの連続押出におけるダイマーク発生を抑制したい場合には末端カルボキシル基濃度及び末端アミノ基濃度が共に低い方が好ましい。適用する用途によって末端基濃度を調製すればよいが、末端アミノ基濃度、末端カルボキシル基濃度共に、好ましくは、1.0×10−5〜15.0×10−5eq/g、より好ましくは2.0×10−5〜12.0×10−5eq/g、特に好ましくは3.0×10−5〜11.0×10−5eq/gである。
また、末端封鎖剤の添加方法としては重合初期にカプロラクタムなどの原料と同時に仕込む方法、重合途中で添加する方法、ナイロン樹脂を溶融状態で縦型攪拌式薄膜蒸発機を通過させる際に添加する方法などが採用される。末端封鎖剤はそのまま添加してもよいし、少量の溶剤に溶解して添加してもよい。
人工毛髪用芯鞘複合繊維は、触感と外観を人毛により近似させ、カール性及びカール保持性をより向上させる観点から、芯部をポリアルキレンテレフタレート及びポリアルキレンテレフタレートを主体とした共重合ポリエステルからなる群から選ばれる1種以上のポリエステル樹脂を含むポリエステル系樹脂組成物で構成することが好ましく、鞘部をナイロン6及びナイロン66からなる群から選ばれる少なくとも1種を主体としたポリアミド系樹脂を含むポリアミド系樹脂組成物で構成することがより好ましい。本発明の一実施形態において、「ナイロン6及びナイロン66からなる群から選ばれる少なくとも1種を主体としたポリアミド系樹脂」とは、ナイロン6及び/又はナイロン66を80モル%以上含むポリアミド系樹脂を意味する。
<製造方法>
前記人工毛髪用芯鞘複合繊維がポリエステル系樹脂組成物などの熱可塑性樹脂組成物で構成される場合は、熱可塑性樹脂組成物を種々の一般的な混練機を用いて溶融混練してペレット化した後、芯鞘型複合口金を用いて、溶融紡糸することにより人工毛髪用芯鞘複合繊維を作製することができる。例えば、上記人工毛髪用芯鞘複合繊維がポリエステル系樹脂組成物で構成される場合は、以下のような製造方法で作製することができる。上述したポリエステル樹脂、臭素化エポキシ系難燃剤などの各成分をドライブレンドしたポリエステル系樹脂組成物を、種々の一般的な混練機を用いて溶融混練してペレット化した後、溶融紡糸することにより作製することができる。前記ポリエステル系樹脂組成物は、必要に応じて、ポリカーボネート系樹脂などの他の熱可塑性樹脂を含んでもよい。また、上記人工毛髪用芯鞘複合繊維がポリアミド系樹脂組成物で構成される場合は、ポリアミド系樹脂組成物を、種々の一般的な混練機を用いて溶融混練してペレット化した後、溶融紡糸することにより作製することができる。前記混練機としては、例えば、一軸押出機、二軸押出機、ロール、バンバリーミキサー、ニーダーなどが挙げられる。中でも、二軸押出機が、混練度の調整、操作の簡便性の点から好ましい。
本発明は溶融紡糸法が好ましく、例えば、ポリエステル系樹脂組成物の場合は、押出機、ギアポンプ、ノズルなどの温度を250℃以上300℃以下として溶融紡糸し、紡出糸条を加熱筒に通過させた後、ポリエステル樹脂のガラス転移点以下に冷却し、50m/分以上5000m/分以下の速度で引き取ることにより紡出糸条(未延伸糸)が得られる。また、ポリアミド系樹脂組成物の場合は、押出機、ギアポンプ、ノズルなどの温度を260℃以上320℃以下とし、溶融紡糸し、紡出糸条を加熱筒に通過させた後、ポリアミド樹脂のガラス転移点以下に冷却し、50m/分以上5000m/分以下の速度で引き取ることにより紡出糸条(未延伸糸)が得られる。なお、溶融紡糸の際、芯部を構成する熱可塑性樹脂組成物は芯部用押出機で供給し、鞘部を構成する熱可塑性樹脂組成物は鞘部用押出機で供給すればよい。芯部には顔料及び難燃剤を添加するが、その添加方法は特に限定はなく、溶融時に直接投入しても、あるいはポリエステル樹脂に予め練り込んだマスターバッチによる投入の何れでもよい。
加熱筒の温度と長さ、冷却風の温度と吹付量、冷却水槽の温度、冷却時間及び引取速度は、ポリマーの吐出量及びノズルの孔数によって適宜調整することができる。
紡出糸条(未延伸糸)は熱延伸されることが好ましい。延伸は、紡出糸条を一旦巻き取ってから延伸する2工程法と、紡出糸条を巻き取ることなく連続して延伸する直接紡糸延伸法のいずれの方法によって行ってもよい。熱延伸は、1段延伸法又は2段以上の多段延伸法で行なわれる。
熱延伸における加熱手段としては、加熱ローラ、ヒートプレート、スチームジェット装置、温水槽などを使用することができ、これらを適宜併用することもできる。
前記人工毛髪用芯鞘複合繊維は、繊維処理剤、柔軟剤などの油剤を付与し、触感、風合いをより人毛に近づけてもよい。前記繊維処理剤としては、例えば、触感や櫛通り性を向上させるためのシリコーン系繊維処理剤や非シリコーン系繊維処理剤などが挙げられる。
前記人工毛髪用芯鞘複合繊維は、ギアクリンプによる加工を施してもよい。これにより繊維に緩やかな屈曲を付与し、自然な外観が得られ、繊維間の密着性が低下することから櫛通り性も向上する。このギアクリンプによる加工では、一般的に、繊維を軟化温度以上に加熱した状態で2つの噛み合った歯車の間を通過させ、この歯車の形状を転写させることで繊維屈曲を発現させる。また、必要に応じて、繊維加工段階において、異なる温度で前記人工毛髪用芯鞘複合繊維を熱処理することで、異なる形状のカールを発現することができる。
<液浴への通過>
前記人工毛髪用芯鞘複合繊維の製造方法の工程において、不自然な光沢を消すために吐出口から引き出した紡出糸条を液中に通過させる工程を含むことを特徴とする。当該工程を含むことで、鞘部の表面に凹凸となる球晶が発生成長し、艶消しの効果を得ることができるため、人工毛髪と同じような外観が得られる。なお、鞘部表面の凹凸は、液浴を通過させる際に水中で部分的に表面にある半溶融状のナイロン分子が再結晶化又は再凝集化する際、小さな球状のものが形成されるためと推定される。
糸を液浴に通過させる際の液浴の位置や通過時間は特に限定されないが、例えば、吐出口から出た紡出糸条を完全に固まるまでに吐出口直下50cmの位置に設置した液浴中に0.1秒以上通過させることが好ましい。液浴の液温は、ナイロンのガラス転移点以下が好ましい。ガラス転移点以下の場合、繊維表面に球晶による微細な凹凸が形成され、人毛に近い自然な発色性や光沢を有し、櫛通り性の良好な繊維が得られる。液温がガラス転移点以上の場合、液中を通過する際に生じる流れの抵抗により、球晶のような微細な凹凸とは異なり、繊維に筋上の凹凸が生成してしまう。
液の種類としては、特に限定されないが、取り扱いのしやすさから水が最も好ましく用いられる。有機溶媒としては、n−ヘキサン等脂肪族炭化水素、トルエン等芳香族炭化水素、デカリン等脂環族炭化水素、トリクロルエチレン、トリクロロトリフルオロエタン、テトラクロロジフロロエタン等ハロゲン化炭化水素等、ポリアミドに不活性な液体やこれらの混合液が用いられる。
<頭飾製品>
人工毛髪用芯鞘複合繊維は、頭飾製品であれば特に限定することなく用いることができる。例えば、ヘアーウィッグ、かつら、ウィービング、ヘアーエクステンション、ブレードヘアー、ヘアーアクセサリー及びドールヘアーなどに用いることができる。
前記頭飾製品は、本発明の人工毛髪用芯鞘複合繊維のみで構成されていてもよい。また、前記頭飾製品は、本発明の人工毛髪用芯鞘複合繊維に、他の人工毛髪用繊維、人毛や獣毛などの天然繊維を組み合わせてもよい。
以下、本発明を実施例に基づいてさらに具体的に説明する。なお、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。 実施例及び比較例で用いた測定方法及び評価方法は、以下のとおりである。
(繊維表面の形状)繊維をレーザー顕微鏡(株式会社キーエンス社製、「VK−9500」)にて3000倍の倍率で撮影し、繊維表面写真を得た。
(触感)
官能評価を行い、以下の4段階の基準で評価した。
A:人毛と同等の非常に良好な触感
B:人毛に比べやや劣るが良好な触感
C:人毛に比べ劣る悪い触感
D:人毛に比べ大きく劣る悪い触感(櫛通り性)
繊維長70cm、重さ25gの繊維を束ね、櫛を10回通して以下の基準にて櫛通り性を評価した。
A:最後まで抵抗なく櫛が通る
B:途中で抵抗がやや強くなるが櫛は通るレベル
C:途中で抵抗が強くなり、櫛の通らないことが1回以上5回未満の確率で発生するレベル
D:途中で抵抗が強くなり、櫛の通らないことが5回以上の確率で発生するレベル (光沢)
目視での官能評価を行い、以下4段階の基準で評価した。
A:大変よく消えている
B:よく消えている
C:消えている
D:あまり消えていない
(実施例1)
水分量100ppm以下に乾燥したポリエチレンテレフタレートペレット(PETと称す場合がある)(イーストマンケミカル社製、商品名「A−12」)とナイロン6ペレット(ユニチカ社製、商品名「A1030BRL)を溶融紡糸機に供給し、芯鞘型複合紡糸ノズル(設定温度270℃)より溶融ポリマーを吐出し、30℃の水浴に通過させ、60〜150m/分の速度で巻き取ってポリエチレンテレフタレートを芯部とし、ナイロン6(PA6と称す場合がある)を鞘部とし、ポリエチレンテレフタレートとナイロン6の芯鞘比率が面積比で芯:鞘=7:3である芯鞘複合繊維の未延伸糸を得た。芯部のペレットには予め難燃剤(阪本薬品工業社製、商品名「SR−T2MP」)、難燃助剤(日本精鉱社製、商品名「SA−A」)及び顔料(大日精化工業社製、商品名「PESM22367BLACK(20)D」、「PESM1001YELLOW(20)D」、「PESM3005RED(20)D」)を混合した。得られた未延伸糸を95℃で延伸を行い、3倍延伸糸とし、205℃に加熱したヒートロールを用いて、熱処理を行い、仕上げ油剤A(丸菱油化工業社製、商品名「KWC−Q」)を0.20%omf(乾燥繊維重量に対する油剤純分重量百分率)、及び仕上げ油剤B(丸菱油化工業社製、商品名「KWC−B」)を0.10%omfとなるように付着させ、乾燥させた後、表1に示す複合繊維を得た。
(実施例2)
60℃の水浴に通過させた以外は実施例1と同様にして複合繊維を得た。
(実施例3)
鞘部に用いる樹脂を水分量100ppm以下に乾燥したナイロン66(PA66と称す場合がある)ペレット(東レ社製、商品名「アミランCM3001」)とし、20℃の水浴に通過させた以外は実施例1と同様にして複合繊維を得た。
(比較例1)
鞘部を顔料を添加したナイロン6とし、水浴に通過させなかった以外は実施例1と同様にして複合繊維を得た。
(比較例2)
水分量100ppm以下に乾燥したナイロン6ペレット(ユニチカ社製、商品名「A1030BRL)を溶融紡糸機に供給し、単繊維型紡糸ノズル(設定温度270℃)より溶融ポリマーを吐出し、25℃の水浴に通過させ、60〜150m/分の速度で巻き取って単繊維の未延伸糸を得た。得られた未延伸糸を95℃で延伸を行い、3倍延伸糸とし、205℃に加熱したヒートロールを用いて、熱処理を行い、仕上げ油剤A(丸菱油化工業社製、商品名「KWC−Q」)を0.20%omf(乾燥繊維重量に対する油剤純分重量百分率)、及び仕上げ油剤B(丸菱油化工業社製、商品名「KWC−B」)を0.10%omfとなるように付着させ、乾燥させた後、表1に示す単繊維を得た。
(比較例3)
水分量100ppm以下に乾燥したポリエチレンテレフタレートペレット(イーストマンケミカル社製、商品名「A−12」)を使用した以外は比較例2と同様にして繊維を得た。
(比較例4)
鞘部を難燃剤を添加したナイロン6とした以外は実施例1と同様にして繊維を得た。
(比較例5)
鞘部に顔料を添加したナイロン6とした以外は実施例1と同様にして繊維を得た。
(比較例6)
水浴に通過させなかった以外は実施例1と同様にして複合繊維を得た。
表1から分かるように、実施例1〜3の繊維は、人毛に似た触感及び外観(光沢)を有し、櫛通り性も良好であった。鞘部を顔料を添加したナイロン6とし、水浴に通過させなかった比較例1は、鞘部の顔料が触感と櫛通り性を悪化させた。ナイロン6の単繊維とした比較例2は、コシが弱く触感が悪化した。PETの単繊維とした比較例3は、触感が悪く、水浴での冷却の効果が現れなかったために、光沢が低下しなかった。鞘部を難燃剤を添加したナイロン6とした比較例4は、鞘部の難燃剤が触感と櫛通り性を悪化させた。鞘部を顔料を添加したナイロン6とした比較例5は、顔料が球晶による微細な凹凸の形成を妨げたため、光沢が低下しなかった。水浴に通過させなかった比較例6は、触感が悪く、繊維表面に球晶による微細な凹凸が形成されなかったため、光沢が低下しなかった。
1 人工毛髪用芯鞘複合繊維(断面)
10 鞘部
20 芯部

Claims (9)

  1. 芯部と鞘部で構成された人工毛髪用芯鞘複合繊維であって、芯部は難燃剤及び顔料を含むことを特徴とする人工毛髪用芯鞘複合繊維。
  2. 前記人工毛髪用芯鞘複合繊維は、ポリエチレンテレフタラートを主成分とするポリエステル系樹脂を芯部の成分とし、ナイロン6もしくはナイロン66を主成分とするポリアミド系樹脂を鞘部の成分とすることを特徴とする、請求項1に記載の人工毛髪用芯鞘複合繊維。
  3. 前記人工毛髪用芯鞘複合繊維の鞘部において、繊維長手方向の表面の平均粗さが0.05以上0.3マイクロメートル以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の人工毛髪用芯鞘複合繊維。
  4. 前記難燃剤は、臭素系高分子難燃剤であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の人工毛髪用芯鞘複合繊維。
  5. 請求項1〜4のいずれか一項に記載の人工毛髪用芯鞘複合繊維を含むことを特徴とする頭飾製品。
  6. 前記頭飾製品が、ヘアーウィッグ、かつら、ウィービング、ヘアーエクステンション、ブレードヘアー、ヘアーアクセサリー及びドールヘアーからなる群から選ばれる一種である請求項5に記載の頭飾製品。
  7. 芯部と鞘部で構成された人工毛髪用芯鞘複合繊維は、溶融紡糸法を用いて製造すること特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の人工毛髪用芯鞘複合繊維の製造方法。
  8. 前記溶融紡糸法は、繊維を液浴に通過させる工程を含むことを特徴とする、請求項7に記載の人工毛髪用芯鞘複合繊維の製造方法。
  9. 前記液浴中の液温はポリアミド系樹脂のガラス転移点以下とすることを特徴とする、請求項7または8に記載の人工毛髪用芯鞘複合繊維の製造方法。
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