JP4191930B2 - 人工毛髪およびその製造法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、かつら、ヘアピース、ウィービングなどの頭髪装飾品や人形用ヘアなどに用いられる人工毛髪およびその製造法に関する。さらに詳しくは、アクリロニトリル、塩化ビニリデンおよびこれらと共重合可能なスルホン酸含有ビニル単量体からなるアクリル系重合体を用いて製造した繊維製の人工毛髪であって、表面光沢が良好であり、結節強度に優れ、ウィッグやツーぺの加工性に適し、さらにセット性が良く、かつヘアスタイラビリティ(かつらなどにした場合に種々のヘアスタイルを作ることができるヘア特性)が良好な人工毛髪およびその製造法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、頭髪素材に要求される品質として、カール形状、光沢や発色に関する外観、櫛通りやスタイラビリティに関するヘアケア性、染色性、ハックリング性、カールセット性、ミシン加工やスキン植毛に関する加工特性、ボリューム感、触感や難燃性がある。
【0003】
現在、市販されている毛髪素材のうち、ポリプロピレンやポリエステルからなる毛髪素材(繊維)の場合、難燃性が劣り、塩化ビニルや塩化ビニリデンを用いた毛髪素材の場合、染色性や単位重量あたりのボリューム感が劣る。
【0004】
前記要求特性を満足する代表的な素材として、人毛、アクリロニトリルと塩化ビニルを共重合したアクリル系繊維からなる人工毛髪が知られている。しかしながら、人毛を素材として利用する場合は、原料入手やヘア長に難点がある。塩化ビニルは、高圧ガスであるため、工業的な取り扱いが容易でなく、アクリル系共重合体の製造には装置上の制約が多いため、普及が阻まれている。また、アクリロニトリルと塩化ビニルを共重合して得られるアクリル系繊維は、商品によっては、光沢、発色性および風合い面でバランスが取れ、かつ難燃性を有するという特性を有している。しかし、セットしたカール形状が経時的に変化することからセット性に難があり、また、現行のアクリル系繊維のヘアスタイラビリティでは満足できないヘアスタイルの要求があるため、その改善が望まれている。
【0005】
一方、塩化ビニルの代わりに塩化ビニリデンを用いると、製造装置上の制約が少ないばかりでなく、重合性が塩化ビニルより良好であり、かつ難燃性の面でより優れているなどの利点が多い。しかし、塩化ビニリデン25重量%以上を共重合したアクリル系共重合体からなる繊維の湿式紡糸による製造の場合には、その溶剤として有機溶媒が多く用いられるが、とくに良溶媒を使用したとき、ノズルスリットから吐出された紡糸原液は凝固液と相互拡散を起こしながら凝固するため、繊維の繊度が大きくなるにつれ繊維内構造が不均一になる結果、繊維内部にボイドが残りやすい。そのため、通常30デシテックス未満のような細い繊度の場合にしか良好な光沢を得ることができない。
【0006】
たとえば、塩化ビニリデンを共重合させたアクリル系共重合体からなる繊維については、特開昭48−77122号公報がある。該公報では、紡糸原液に水を添加することにより、繊維構造を緻密にして光沢改良を図る製造法が提案されているが、アクリロニトリルを80重量%以上含む重合体であるため、難燃性に優れるものではない。
【0007】
また、特開昭51−4324号公報では、アクリルアミドやメタクリルアミドなどのビニル基含有アミド化合物へスルホン酸基を導入した単量体を0.1〜10重量%共重合したアクリル系繊維の製造法を提案し、細い繊度における光沢の改良を図っている。しかし、毛髪素材として適するような太い繊度では光沢の良好な繊維は得られていない。しかも、塩化ビニリデン25重量%以上を共重してなるアクリル系共重合体を湿式紡糸して得られる繊維は、結節強度が低く繊維特性上ウィッグやツーぺ作製時のスキン植毛時の毛切れが多く加工しにくいという欠点を有しており、とくに太い繊度ではその傾向が顕著になる。
【0008】
結節強度を改良する方法としては、特開昭48−61727号公報に開示されている方法がある。該公報に開示されている方法は、以下の工程からなる。すなわち、慣用法の湿式紡糸で得られるトウを熱水雰囲気下で延伸して加熱ロールを通過させたのち、飽和水蒸気で満たされた水蒸気ゾーンでさらに延伸を加える。そののち再び飽和水蒸気で満たされた水蒸気ゾーンで先のゾーンの巻き取り速度より遅い速度の加熱ローラーを用いて巻き取り、ついで冷却ロールを経る。しかしながら、該方法では結節強度を満足するような条件下では光沢の良好な太い繊度の繊維は得られていない。
【0009】
その理由について、本発明者らは、以下のように考えている。すなわち、良溶剤を用いる繊維の湿式紡糸では、通常熱水浴中で延伸した繊維は、繊維断面内部のボイドにより失透しているため、そののちの加熱ロール工程で光沢を発現させることができるものの、さらにそののちの飽和水蒸気雰囲気下でトウを湿らせた状態で緩和すると消滅していたボイドが再び発現するため、光沢低下が引き起こされる。さらに詳しく述べると、前述したように、繊維内のボイドは、もともと太い繊度になるにつれ、凝固の不均一性が顕著になって、数および大きさが増大傾向にあるため、残りやすい。発生したボイドは、主に熱水浴中での延伸により引き伸ばされて、繊維軸と垂直方向に存在するボイド部の径が小さくなり、さらに乾燥のための加熱によって生じる収縮力と焼き潰し効果により、数や大きさが見かけ上減少する。しかし、該技術では、緩和時にはトウが湿り状態にあるため、繊維表面の過剰な熱水の作用により可塑化されてポリマー分子の動きが促進され、焼き潰しされた繊維内のボイドが再び顕在化し、それらのボイドによる光の乱反射が繊維内部で生じるために光沢低下が起きたと考えられる。
【0010】
したがって、難燃性に有利であり、かつ共重合体の製造上の制約が少ないアクリロニトリルと塩化ビニリデンを主成分としてなる人工毛髪において、かかる技術課題があるため、30デシテックスをこえるような太い繊維では品質が満足できなかったのが実状である。その結果、良好な光沢が要求され、さらには一定以上の結節強度を必要とする太い繊度の用途であるツーペやウィッグへの展開には限界がみられていた。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
すなわち、本発明の目的は、アクリロニトリルと塩化ビニリデンを主成分として共重合して得られるアクリル系重合体からなる繊維であって、頭髪素材の要求特性である光沢が良好であり、さらには一定以上の結節強度に改良されウィッグやツーペへの加工性が良い人工毛髪の提供にある。
【0012】
さらには、頭髪装飾品などに用いられる人工毛髪として、セット性がよく、高いヘアスタイラビリティを有し、頭髪装飾品などの毛髪素材として用いることで、バラエティに富んだ商品企画を可能とする人工毛髪を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
そこでかかる人工毛髪を得るためには、アクリロニトリルと塩化ビニリデンを主成分として得られる重合体と良溶剤からなる重合体溶液を紡糸するが、乾式紡糸に比べて繊維内残存溶剤量の少ない湿式紡糸法が採用できる。その際、細い繊度に比べ湿式紡糸時の凝固繊維の構造をできるだけ均一にするため、▲1▼重合体の凝固特性の改良、および▲2▼紡糸原液の調整という2方法の組合わせにより、紡糸原液から凝固浴への溶剤拡散および凝固浴から紡糸原液への凝固剤すなわち水の拡散バランスをうまく調節することで、太い繊度における光沢の改良を図った。
【0014】
また、ウィッグやツーペへの加工性改良には、所定の緩和率を乾燥後に付与することで結節強度の向上を図ることにより、目的の人工毛髪が得られることを見出し、本発明に至った。
【0015】
すなわち、本発明の人工毛髪は、アクリロニトリル40〜74重量%、塩化ビニリデン25〜59重量%、および、これらと共重合可能なスルホン酸基含有ビニル単量体1〜5重量%からなるアクリル系重合体と、良溶媒を含む重合体溶液に、前記重合体100重量部に対し3〜25重量部の水を含有してなる紡糸原液を湿式紡糸により繊維化し、得られた未延伸繊維を全延伸比が3〜8倍となるように延伸処理し、得られた延伸繊維を全緩和率が25%以上となるように緩和処理することにより得られた人工毛髪であって、アクリロニトリル40〜74重量%、塩化ビニリデン25〜59重量%、および、これらと共重合可能なスルホン酸基含有ビニル単量体1〜5重量%からなるアクリル系重合体から得られる繊維からなり、繊維の光沢コントラストが0.88以上であり単繊維の平均繊度が30〜100デシテックスであり、かつ前記単繊維の結節強度が0.9cN/デシテックス以上であることを特徴とする
【0017】
前記人工毛髪において、繊維が良溶媒を用いた湿式紡糸法により得られるものであることが好ましい。
【0018】
前記人工毛髪において、良溶媒が、ジメチルホルムアミド(以下DMFと記す)、ジメチルアセトアミド(以下DMAcと記す)およびジメチルスルホキシド(以下DMSOと記す)よりなる群から選択された少なくとも1種であることが好ましい。
【0019】
また、本発明の人工毛髪の製造法は、アクリロニトリル40〜74重量%、塩化ビニリデン25〜59重量%、および、これらと共重合可能なスルホン酸基含有ビニル単量体1〜5重量%からなるアクリル系重合体と、良溶媒を含む重合体溶液に、前記重合体100重量部に対し3〜25重量部の水を含有してなる紡糸原液を調製する工程、
前記紡糸原液を湿式紡糸により繊維化する工程、
得られた未延伸繊維を全延伸比が3〜8倍となるように延伸処理する工程、および、
得られた延伸繊維を全緩和率が25%以上となるように緩和処理する工程により、
繊維の光沢コントラストが0.88以上であり、
単繊維の平均繊度が30〜100デシテックスであり、
かつ前記単繊維の結節強度が0.9cN/デシテックス以上の人工毛髪を得ることを特徴とする。
【0020】
前記人工毛髪の製造法において、2回以上に分割して緩和処理することが好ましい。
【0021】
前記人工毛髪の製造法において、繊維を乾燥させたのち、加圧および/または過熱状態にある水蒸気雰囲気下で緩和処理することが好ましい。
【0022】
前記人工毛髪の製造法において、水蒸気雰囲気下の温度が120〜200℃であることが好ましい。
【0023】
【発明の実施の形態】
本発明の人工毛髪は、アクリロニトリル40〜74重量%および塩化ビニリデン25〜59重量%、好ましくはアクリロニトリル44〜69重量%および塩化ビニリデン30〜55重量%、さらに好ましくはアクリロニトリル46〜63重量%および塩化ビニリデン36〜53重量%からなるアクリル系重合体を用いた繊維である。塩化ビニリデンの組成が25重量%未満であると難燃性が不足がちになり、アクリロニトリルが40重量%未満であると耐熱性に関わるカールの熱セット温度上限が低下する結果、加工温度域が狭くなって取扱い難くなったり、カール形態保持性が低下する。また、前記塩化ビニリデンを使用するのは、塩化ビニルに比べ、少ない量の共重合体で難燃性が得られ、重合性に富むため重合体への転化率が高く、製造装置上の制約が少ないためである。塩化ビニリデンのかわりに、たとえば塩化ビニルを使用すると、高圧ガス対応の特殊装置が必要となって製造装置に制約をうけるため、好ましくない。また、臭化ビニルや臭化ビニリデンを使用すると、共重合体の耐光性がわるく、また、原料コストが高く、塩化ビニリデンに比べて汎用性に劣るため、好ましくない。
【0024】
繊維光沢を良好にする1つの手立てとして、重合体の紡糸時の凝固特性を改良する方法、すなわち、重合体の凝固速度を遅くする方法が考えられる。凝固速度を遅くするには、凝固剤となる水との親和性を増す方法が考えられる。本発明では、重合体への親水基の導入量を増やすために、一定量の共重合可能なスルホン酸基含有ビニル単量体を共重合させる。本発明の人工毛髪の製造に使用される前記アクリル系重合体は、アクリロニトリル、塩化ビニリデンおよびこれらと共重合可能なスルホン酸基含有ビニル系単量体の3元以上の共重合体であるため、親水性が増して凝固速度が遅くなる結果、凝固構造が均一化しやすい。
【0025】
前記スルホン酸基含有ビニル単量体としては、たとえば、メタリルスルホン酸、アリルスルホン酸、イソプレンスルホン酸、スチレンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸やスルホフェニルメタリルエーテルなどに代表されるスルホン酸基含有ビニル単量体、またはそれらのナトリウム、カリウムやアンモニウム塩などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0026】
前記共重合可能なスルホン酸基含有ビニル単量体の共重合割合は、1〜5重量%、好ましくは1.3〜4重量%、さらに好ましくは1.5〜3.5重量%である。前記単量体の共重合割合が1重量%未満であると、紡糸時に紡糸原液を吐出成形した繊維内にマクロボイドが発生して光沢低下を招き、5重量%をこえると、溶剤への溶解性低下または増粘傾向により繊維化が困難となる。
【0027】
本発明に用いられるアクリル系重合体は、前記組成の単量体から乳化重合、懸濁重合、溶液重合などにより製造されるが、前記単量体の組成を満足する範囲で、他に1種以上のビニル単量体を共重合した組成とすることができる。このとき、前記他に1種以上の共重合できるビニル単量体の共重合割合は、10重量%以下であることが好ましい。
【0028】
前記他に1種以上の共重合できるビニル単量体としては、たとえば、アクリル酸やメタクリル酸の低級アルキルエステル;N−またはN,N−アルキル置換したアミノアルキルエステルやグリシジルエステル;アクリルアミドやメタクリルアミド、およびそれらのN−またはN,N−アルキル置換体;アクリル酸、メタクリル酸やイタコン酸などに代表されるカルボキシル基含有ビニル単量体、およびこれらのナトリウム、カリウムまたはアンモニウム塩などのアニオン性ビニル単量体;アクリル酸やメタクリル酸の4級化アミノアルキルエステルをはじめとするカチオン性ビニル単量体;ビニル基含有低級アルキルエーテル;酢酸ビニルに代表されるビニル基含有低級カルボン酸エステル;臭化ビニル、青化ビニリデン、臭化ビニリデンや塩化ビニルがあげられるが、これら単量体に限定されるものではない。
【0029】
また、本発明に使用されるアクリル系重合体は、前記単量体組成からなる共重合体と該共重合体の溶剤に可溶な他の重合体との混合組成であってもよい。たとえば、溶剤に可溶な該共重合体と単量体組成は同じでも異なる組成割合や異なる重合度を有する別の重合体、あるいは、該共重合体とは単量体組成が異なる2成分系以上の共重合体やホモポリマーを混合しても良い。重合体混合物中の成分は、塩化ビニリデン単位の割合が25重量%以上あれば、本発明の効果を阻害しない。また、全重合体に含まれる各単量体単位の割合は、前記単量体の組成を満足する範囲であることが好ましい。
【0030】
前記重合体は3元以上の共重合体となるが、繊維化に当たっては、公知のアクリル系重合体の良溶剤であるDMAc、DMFあるいはDMSOを用いて前記アクリル系共重合体を溶解した溶液を、紡糸原液として用いることができる。また、アクリロニトリルの共重合割合が55重量%以下の場合は、アセトンも溶剤として該共重合体の溶液とすることができ、紡糸原液として用いることができる。好ましくは良溶剤であるDMAc、DMFあるいはDMSOが用いられる。
【0031】
良溶剤を用いると、耐熱性の高いアクリロニトリルの共重合割合の多い重合体を容易に溶解することができるだけではなく、アクリロニトリルの割合が少ない共重合も溶解することができ、組成範囲の広い重合体が溶解できるという利点がある。また、そればかりではなく、湿式紡糸時の凝固において繊維状に吐出された紡糸原液は、溶剤と凝固浴の組成である凝固剤と相互拡散する結果、ノズルスリット形状に比較的忠実な繊維断面が得られるため、カールセット性に効果のある円形断面あるいは嵩性やソフト感を与える異形断面などの任意の繊維断面が再現良く容易に得られるという利点がある。
【0032】
一方、アセトンを溶剤とした場合は、前述したようにアクリロニトリルの重合割合の範囲が限定されるという問題がある。また、湿式紡糸時の凝固において、繊維内にある溶剤が外部の凝固浴へ拡散する一方拡散の割合が多くなる結果、凝固で繊維表面(繊維断面の外周部)が固定されるため、体積収縮を起こして円形断面が得られ難く、また他の異形断面でもノズルスリット形状からやや形を異にした断面しか得られないなどの課題があり、極めて限定された特定の条件を見出す工夫が必要となる。
【0033】
紡糸原液濃度は、共重合体の重合度や組成割合にもよるが、一般に20〜35重量%、40℃における回転粘度計(B型粘度計)による測定値で30〜800デシパスカル・秒、さらには50〜500デシパスカル・秒に調整されることが、繊維の光沢および製造工程上の取扱いという面から好ましい。前記粘度が30デシパスカル・秒に満たない場合、繊維物性が低下したり、繊維の製造上、失透回復に支障をきたすおそれがある。すなわち、粘度が低いと溶媒の凝固浴への拡散が速くなる結果、不均一凝固となって大きいボイドが発生しやすくなり、のちの乾燥工程での焼潰しでも光沢は向上しにくくなるおそれがある。一方、繊度が800デシパスカルをこえる場合、粘性増加により脱泡が困難になったり、原液濾過時の濾過圧上昇が著しくなり、ハンドリング上の問題が生じやすくなる。また、繊維断面の円形充実度の面からは50デシパスカル以上、より好ましくは150デシパスカル以上であることが好ましい。
【0034】
衣料などに使用される一般の細い繊度の繊維に比べて毛髪素材となる太い繊度の繊維は、湿式紡糸時に繊維断面内にボイドが発生して光沢低下を来たす。しかし、前述のような凝固特性を改良したアクリル系重合体を使用し、さらに水を前記重合体100重量部に対して3〜25重量部含有した紡糸原液を湿式紡糸すると、繊維光沢が向上し好ましい結果が得られる。また、より均質な円形充実度の高い断面形状を有する繊維が得られ、水洗後の繊維中の残溶剤含率が低下する。紡糸原液中の水の含量は、前記アクリル系重合体100重量部に対して5〜20重量部であることがさらに好ましい。
【0035】
理由としては、水の添加により凝固構造の変化が緩慢になる結果、繊維断面の構造において多数の小さいボイドとなってより均質さが増し、乾燥工程でのミクロボイドの焼潰しが行き届くためと考えられる。水の含有量が3重量部に満たない場合は、繊維光沢の低下を招き、25重量部をこえると紡糸原液のゲル化が起こり易く、原液安定性がわるくなって紡糸性の面から好ましくない。紡糸原液中に水を含有させる方法としては、(1)前記アクリル系重合体の溶剤溶液に添加、(2) 前記アクリル系重合体を溶解する溶剤として水分を含有する溶剤を使用、(3)前記アクリル系重合体の含有水分を利用、あるいは(4)他の添加剤と共に混合した水を利用などが挙げられる。これらを2種以上組合せてもよい。
【0036】
なお、紡糸原液には、繊維特性を改良するための添加剤などが含まれていても、本発明の実施に当たり支障のない範囲であれば、とくに制限されるものではない。前記添加剤としては、たとえば、光沢調整のための二酸化チタン、二酸化ケイ素や酢酸セルロースをはじめとするセルロース誘導体のエステルやエーテル、有機や無機の顔料あるいは染料による着色剤、耐光性や耐熱性向上のための安定剤などがあげられる。
【0037】
脱泡処理などを行なって調整された紡糸原液は、該原液で使用した溶剤の水溶液からなる凝固液に、紡糸ノズルを通してエアギャップ紡糸あるいは直接凝固浴への吐出により繊維化される。繊維断面を緻密にし、円形充実度を上げるためには、オリフィスの形状が円形の紡糸ノズルを通して紡糸ノズルドラフト0.3〜1.2程度で紡出することが好ましい。
【0038】
紡糸原液条件にもよるが、凝固浴条件としては、良溶剤では一般に、濃度40〜70重量%、温度5〜40℃が適用でき、アセトンの場合は、濃度15〜50重量%、温度5〜40℃が適用できる。また、溶媒としてアセトンを使用して高い円形充実度を得るには、温度15℃以下、アセトン濃度50〜75重量%の条件下で紡糸することが好ましい。凝固浴の溶媒濃度が低すぎると、凝固が速くなって凝固構造が租になりマクロボイドを形成する結果、光沢が低下する傾向があり、高すぎると、紡糸ノズルを通して吐出形成してできた繊維の強力が低く、巻き取りローラーへの巻き取りが困難になる傾向がある。また、凝固浴の温度が低すぎると凝固が遅れる傾向にあり、高すぎると凝固時の溶剤と水の相互拡散が促進され、凝固構造が粗になったり、ゲル状繊維の強力が低くなって巻き取りロールへの巻き取りが困難になる傾向がある。
【0039】
ついで、繊維を前記凝固浴の溶剤濃度よりもさらに薄い水溶液あるいは30℃以上とくには40〜60℃の温水、または、60℃以上の熱水浴あるいは沸騰水浴へと導き、脱溶剤、水洗や延伸、必要により延伸後の緩和を行なう。このときの合計延伸比は、紡糸凝固浴における巻取り速度3〜8倍であり、延伸は分割して配分してもよい。
【0040】
ついで、繊維に工程油剤を付着させて乾燥させる。工程油剤は、静電防止、繊維の膠着防止や風合い改良を目的として用いられるが、成分は公知の油剤で充分である。乾燥温度としては110〜190℃、とくには110〜160℃が好ましいが、とくに限定されるものではない。乾燥した繊維は、そののち必要によりさらに延伸され、その延伸比は1〜4倍が好ましい。乾燥前の延伸を含めた全延伸比は、紡糸凝固浴における巻取り速度の2.5〜12倍になる。全延伸比が2.5倍に満たない場合、繊維物性が低くなって加工や取り扱いが難しく、カール特性を始めとする美容特性がわるくなる傾向があり、12倍をこえると、繊維製造工程で単糸切れが発生し易く工程トラブルが多発する傾向がある。
【0041】
乾燥あるいは延伸して得られた繊維は、さらに、15%以上の緩和処理が施される。緩和処理は、高温、たとえば150〜200℃、とくには150〜190℃の乾熱もしくは過熱水蒸気雰囲気下、および/または、120〜180℃の0.05〜0.4MPa、とくには0.1〜4MPaの加圧水蒸気もしくは加熱・加圧水蒸気雰囲気下で行なわれる。これによって、結節強度の向上した目的の繊維を得ることができるが、緩和処理による結節強度改良を確実にするためには、少なくとも加圧および/または過熱および/または加熱・加圧状態にある水蒸気雰囲気下で25%以上の緩和を行なうことが好ましい。このとき、水蒸気雰囲気下の温度が低すぎると、目的の緩和率が得難くなる結果、結節強度が不足する傾向があり、高すぎると、繊維の熱着色が進む結果、繊維が変色する傾向がある。
【0042】
緩和処理は一度に実施してもよいが、2回以上に分けて行なうことがより好ましい。とくに乾燥前の緩和は、物性向上に影響の大きい乾燥後の延伸比を上げるのに有効である。ただし、2回以上行なう緩和処理では、乾燥前の緩和は全緩和の半分以下とすることが好ましい。乾燥前に全緩和の半分以上を終わらせてしまうと、乾燥時の焼き潰し効果が低下する結果、光沢の向上が期待できない傾向がある。
【0043】
ここで緩和率の合計を意味する全緩和率は、各延伸比を乗じた積、すなわち全延伸比の値を100としたとき、その値に対する割合で表したもので、25%以上である。全緩和率が25%未満であると結節強度が0.9cN/デシテックス未満となる結果、ウィッグやツーペなどへの加工時に毛切れを来たす。一方、上限はとくに限定されないが、染色時の失透が起こらない範囲であれば良く、目安では40%以下、好ましくは35%以下、とくに好ましくは30%以下である。
【0044】
繊度は、人毛との対比や外観、触感および櫛通りの点から、30〜100デシテックスである。好ましくは40〜80デシテックス、より好ましくは45〜70デシテックス、とくに好ましくは45〜60デシテックスである。30デシテックス未満であると、ヘアの触感として柔らかすぎハックリングロスやコーミングによる絡みが多くなり、また、100デシテックスをこえると重量当りのヘア構成本数が減ってボリューム感が減少したり粗硬となる結果、不自然なヘアスタイルになり、いずれも頭髪素材としては好ましくない。ここで、繊度とは単繊維の平均値を意味し、繊維束内に30デシテックス未満や100デシテックスをこえるような繊維が混在していてもよく、あるいは繊度分布のピークが2つ以上あってもよく、とくに限定されるものではない。
【0045】
繊維の表面光沢については、入射角75度で照射した光に対する0〜90度にわたる反射光の割合から求められる光沢コントラストが、0.88〜0.99であることが好ましい。より好ましくは0.90以上であり、さらに好ましくは0.92以上である。光沢コントラストが0.88未満であると、表面光沢が不足するため、毛髪素材への適用が不都合となり、0.80未満に至っては死に毛調になって違和感すら感じられ、本発明の目的から大きく外れる。また、光沢コントラストが1.0に達すると、鏡面光沢である人工的な光沢になり、自然な光沢が要求される毛髪素材としては品位が下がり、人工毛髪として着用するには違和感がある。
【0046】
ここで、光沢コントラストは、下記式(1)によって計算される。
G=(S−d)/S (1)
式(1)において、Gは光沢コントラスト、Sは最大光沢度(ピーク値)、dは法線方向の光沢度である。
【0047】
従来の塩化ビニリデンを用いたアクリル系繊維の場合、光沢コントラストを0.80以上にするためには、良溶媒を使用した湿式紡糸では繊度を25デシテックス以下にすることが必要であり、それ以上の繊度では、凝固時にボイドが含有されるために、光沢コントラストをあげることは困難であった。本発明の人工毛髪は、単繊維の繊度が30〜100デシテックスと太いにもかかわらず、光沢コントラストが0.80以上であり、従来存在しなかったものである。
【0048】
繊維の結節強度としては、前述したように、頭髪素材の加工性、取扱い性の点から、0.9cN/デシテックス以上である。結節強度が0.9cN/デシテックス未満であると、ハックリングロスの増加、コーミング時に絡まった繊維の毛切れの発生などの問題が多くなる傾向がある。さらに、みの毛作製工程中において、繊維の折返し後のミシン掛けで繊維が折れる結果、みの毛からの脱毛が多くなる、あるいは、植毛針によるスキン植毛時に毛切れが発生するなどの問題が多くなる傾向がある。一方、上限についてはとくに限定されるものでない。
【0049】
また、繊維断面形状としては、円、8、△、Y、T、+、*やその他の異型あるいは中空やスキン・コア構造が一般に採用でき、各種断面がミックスされていても良い。また、繊維側面形状も凹部や凸部による皺形状とそのピッチや深さあるいは皺方向なども、とくに限定されるものではない。
【0050】
ただし、単繊維のカール発現性向上を顕著にするには、繊維断面の円形充実度が平均0.8以上であることが、カール保持性すなわちセット性およびヘアスタイラビリティのバランスの点から好ましく、より好ましくは0.85以上である。円形充実度が0.8未満(たとえば、楕円〜扁平状態の断面形状)であると、熱セットしたカールは自重による伸びが大きくなって目的のカール発現が得にくくなる。また、カール発現性のみの向上であれば、円形充実度が0.8未満であるY字や十字の繊維断面形状でも目的は達成できるものもあるが、触感上ガサツキや粗硬感があり、ヘアスタイラビリィもわるくなる結果、品質バランスが崩れ、ヘア特性としては好ましくない。したがって、セット性とヘアスタイラビリティでバランスがとれた人工毛髪としては、円形充実度が重要な要素となる。
【0051】
ここでいう繊維断面の円形充実度とは、繊維軸に垂直な繊維断面において、互いに平行な2本の接線間の距離を繊維幅長とした場合に、当該繊維断面における繊維幅長のうちの最大幅長(たとえば、図1中の接線M1およびM2間の距離A)を直径とする円の面積(R)に対する当該繊維断面の面積(F)の割合を意味し、下記式(2)によって求められる値である。
(円形充実度)=(繊維断面面積)/(最大幅長を直径とする円の面積)(2)
【0052】
ただし、繊維断面の中央部が中空構造のO字断面や扁平断面が変形した中央部に空洞を有するC字断面のような構造は、充実した繊維断面の対象外となる。繊維断面外周に凹部がある場合は、図1に示すように、該凹部(H)に最も近く、かつ繊維断面を横断しない接線(N1)と該接線(N1)に平行なもう1つの接線(N2)で挟まれる繊維幅長(B)に対する比率(%)を凹み度hとしたとき、凹み度(h%)が20%以下であればよい。なお、前記凹み度(h%)は下記式(3)により求められる。
凹み度(h%)=100×(b/B) (3)
【0053】
その理由としては、たとえばO字断面やC字断面のように繊維断面内部に大きな空洞や凹みが存在すると、洗髪やコーミングなどの外力により、繊維に折れ、潰れ、フィブリル化などを生じやすく、毛髪素材としての品格が低下するためである。
【0054】
なお、人工毛髪として利用するための着色は、紡糸原液への染料や顔料の添加以外に、紡糸工程中でのゲル染色、さらには緩和処理前や緩和処理後の染色によっても容易に行なうことができ、とくに限定されない。また、風合い、ヘアのサラサラ感、櫛通りやヘアの平滑性付与のための油剤付着も、公知各種油剤を任意に利用することも可能である。
【0055】
【実施例】
以下、本発明を実施例、比較例に基づき、さらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。また、用いた化学組成の%表示は、全て重量%を示し、部は、全て重量部を示す。さらに、繊維の製造工程における全延伸倍率は、小数点2桁目は4捨5入した値を、全緩和率は、小数点1桁目を4捨5入した値とした。なお、実施例の説明に先立ち、サンプル調整や評価法については、以下の方法で実施した。
【0056】
(原液粘度)
単一円筒型回転粘度計ビスメトロン型式VSA(芝浦システム(株))を使用して、原液温度40℃で測定した。
【0057】
(繊度)
オートバイブロ式繊度測定器 DENIER COMPUTER タイプDC−11(サーチ(株)製)を使用して測定し、30個のサンプルの測定値の平均値とした。
【0058】
(結節強度)
JIS L1069−1995 6.2.1に準じて測定し、30個のサンプルの測定値の平均値とした。
【0059】
(光沢コントラスト)
自動変角光度計 GONIOPHOTOMETER GP−200型((株)村上色彩技術研究所製)を使用して測定した。光源としてはハロゲンランプの光を使用した。C光源用変換フィルターを通して、コーミングして整毛した繊維束の繊維長さ方向に、光束径21mm、入射角75度で光を照射した。この照射光に対し、反射角0〜90度にわたって受光径13.6mmで反射光を受光して反射率を測定した。受光器は、光電子増倍管(受光素子・サイドオン型光電子増倍管 R6355)からなる。ただし、受光の標準は、屈折率1.518標準板(入射角75度のフレネル係数25.6×10-2)を使用し、このときの反射率を96.9%とした。光沢コントラストは、試料の法線方向(0度)の値をd(%)、最大ピーク値をS(%)としたとき、光沢コントラストGを式(1)から求めた。
G=(S−d)/S (1)
【0060】
(円形充実度)
直径2mm程度の繊維束をエポキシ系接着剤で固定し、繊維束に対して垂直方向に切断して繊維断面観察用サンプルとして数個準備した。サンプルは、繊維束の切断面をイオンコーターIB−3型((株)エイコーエンジニアリング製)でAu蒸着したのち、走査型電子顕微鏡 S−3500N型((株)日立製作所製)を使用して繊維断面写真撮影を行なった。繊維断面1つ1つについて、たとえば図1のごとく、最大幅長(A)と面積(F)を測定して、下記式により円形充実度を求め、20個の繊維断面について平均値を求めた。なお、繊維断面の最大幅長(A)や面積(F)は、画像処理ソフト Image−Hyper II((株)インタークエスト)を使用して求めた。
(円形充実度)=(繊維断面積/最大幅長を直径とする円の面積)=4F/(A2π)
【0061】
(みの毛作製)
繊維束をハックリングして繊維長31cmに切り揃えた。3連のミシンからなるみの毛作製ミシンを用いて供給量28g/100cmで繊維端より3cmの距離を1番目のミシンである2本針で縫い込んだ。縫い込んだ2本の糸の幅のほぼ中央部を折り込んで、2番目のミシンで先の縫い糸部付近の上から1本針で続けて縫い込んだ。さらに折り返し部より3mm程度再度折り返して、3番目のミシンの1本針で縫い込むことにより、折り返し部を固定し、みの毛を作製した。このときの毛長は約27〜28cmとなる。
【0062】
(カールセット性評価)
作製したみの毛は12.5cm幅に切断した。切断したみの毛よりも広いペーパーにみの毛を置いた状態で、櫛で梳いて繊維を平行に揃え、みの毛の縫い糸方向に直径32mmのアルミニウム製パイプを当ててペーパーと共にみの毛をパイプに巻き付け、弛まないようにペーパーを粘着テープで固定した。所定の温度に調節した均熱オーブンに、みの毛を巻き付けたパイプを入れて60分間熱セットし、そののち、室温で冷却してカールセットしたみの毛を取出した。カールセットしたみの毛は、縫い糸を水平に保ち、垂れ下げた繊維は縫い糸方向に6分割して、それぞれの束毎にカール形状を整え、縫い糸から各毛束のカールの先端までの距離を経時で測定してカール特性を測定した。6個のサンプルについて、各カール毛束の縫い糸からカールした毛束先端の距離を求め、その平均値によってカールセット性を評価した。値が小さいほどカール形状が保持されていることを示す。
【0063】
実施例1(参考例)
ゲージ圧0.1MPa程度の圧力に耐え得る簡易圧力容器中で、アクリロニトリル51.5重量%、塩化ビニリデン47重量%、スチレンスルホン酸ナトリウム1.5重量%からなるモノマー混合物を、レドックス系触媒を使用して乳化重合させて共重合体を得た。この共重合体を、塩析、沈殿、分離、水洗などの操作を行なって充分に乾燥させたのち粉砕した。
【0064】
なお、原料として塩化ビニルを含む場合には、原料の取扱が開放系容器ではできないため、高圧ガス対応装置の使用となり、0.4〜1MPaの圧力に耐える圧力容器が常用され、塩化ビニルモノマーの原料供給元から重合が終わるまですべての操作が密閉系での取扱となる。それに対して、塩化ビニルの代りに塩化ビニリデンを原料として使用すると、簡易圧力容器の使用が可能であり、開放系での計量や移液が可能であるなどの取扱いが容易になるという利点がある。
【0065】
得られた共重合体をDMFに溶解し、さらに水を該共重合体100部に対して10部添加し、混合・撹拌後、減圧脱泡を行なって濃度23重量%に調整し、紡糸原液を得た。得られた原液の粘度は290デシパスカル・秒であった。
【0066】
得られた原液を紡糸ノズル(孔径0.35mm、孔数50個)を通して、10℃、58重量%DMF水溶液からなる凝固浴へ紡出した。ついで紡糸した繊維を、45℃の30重量%DMF水溶液からなる浴へ導いて2.7倍に延伸し、さらに70℃の15重量%DMF水溶液からなる浴で1.5倍に延伸した。そののち、90℃で水洗して145℃で乾燥させ、引き続き1.5倍に延伸し、全延伸比を6.1倍とした。ついで、190℃の過熱水蒸気雰囲気下で緊張を保ったまま、24%の緩和処理を施した。
【0067】
得られた繊維は、繊度55デシテックス、光沢コントラスト0.90、結節強度0.77cN/デシテックス、円形充実度0.72であった。
【0068】
この繊維でみの毛を作製した結果、比較として用いたアクリロニトリルと塩化ビニルを共重合して得られるアクリル系繊維である市販の人工毛髪カネカロン TiaraTM(鐘淵化学工業(株)製)と同様に、みの毛作製のミシン工程やコーミングによる毛切れはほとんど見られず、良好であった。また、カールセット後、カール形状を整えて光沢を観察したところ、自然な光沢がみられ、人毛に酷似していた。
【0069】
比較例1
実施例1で得られた共重合体を、水を含有しないDMFに溶解し、濃度23%に調整して紡糸原液を得た。この紡糸原液の粘度は280デシパスカル・秒であった。以下、実施例1と同様の方法で繊維を作製した。得られた繊維は、繊度55デシテックス、光沢コントラスト0.84、結節強度0.75cN/デシテックス、円形充実度0.78であった。
【0070】
この繊維を用いてみの毛を作製し、櫛で梳いて毛切れを観察した結果、実施例1と同様に、みの毛作製のミシン工程やコーミングによる毛切れはほとんど見られなかった。しかし、カールセット後、カール形状を整えて光沢を観察したところ、光沢はダル感が強く白っぽいため、太さ感が実施例1で作製した繊維と同程度の繊度を有するにもかかわらず、それ以上の太さに強調されて目立ち、人工毛髪としては不適当であった。
【0071】
実施例2
アクリロニトリル57%、塩化ビニリデン40.8%、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸ナトリウム2.2%からなる共重合体を、DMFに溶解し、さらに該共重合体100重量部に対して12重量部の水を添加して混合溶解し、濃度29%に調整して紡糸原液を得た。紡糸原液の粘度は98デシパスカル・秒を示した。
【0072】
この原液を、紡糸ノズル(孔径0.30mm、孔数112個)を通して、20℃の濃度58%DMF水溶液からなる凝固浴へ紡出した。ついで45℃の30%DMF水からなる浴へ導いて4倍に延伸し、さらに70℃の15%DMF水溶液からなる浴で1.1倍に延伸し、全延伸比を4.4倍とした。さらに、90℃の熱水で水洗と9%の緩和を行ない、工程油剤を付着させて145℃で乾燥させ、そののち、0.26MPaの加圧水蒸気雰囲気下で緊張を保ったまま22%の緩和を行ない、全緩和率を29%とした。
【0073】
得られた繊維は、繊度52デシテックス、光沢コントラスト0.94、結節強度1.06cN/デシテックス、円形充実度0.73を有していた。
【0074】
この繊維でみの毛を作製した結果、実施例1と同様に、比較用の人工毛髪繊維と遜色なく、ミシン工程での毛切れはなく、得られたみの毛をコーミングしたが、毛切れや抜け毛もほとんど見らず良好であった。
【0075】
比較例2
アクリロニトリル51.5%、塩化ビニリデン48%、スチレンスルホン酸ナトリウム0.5%からなる共重合体をDMFに溶解し、水を該共重合体100部に対し12部添加して濃度29.5%に調整し、紡糸原液を得た。この原液の粘度は200デシパスカル・秒であった。この原液を紡糸ノズル(孔径0.22mm、孔数50個)を通して、実施例2と同様の方法で紡糸を行ない、繊維を得た。
【0076】
得られた繊維は、繊度50デシテックス、光沢コントラストが0.79、結節強度0.97cN/デシテックスを有していた。この繊維を用いて、実施例1同様の方法で、みの毛を作製したところ、ミシン工程での毛切れはなく、また得られたみの毛をコーミングしても毛切れや抜け毛はほとんどなかったが、外観は死に毛調の光沢となり、人工頭髪素材としては不適な品質であった。
【0077】
実施例3
実施例2で得られた加圧水蒸気雰囲気下で緩和処理したフィラメントを、さらに190℃の熱風雰囲気下で緊張を保った状態で1.6%緩和し、合計3回の緩和を含めた全緩和率を30%とした。得られた繊維は、繊度53デシテックス、光沢コントラスト0.92、結節強度1.18cN/デシテックスを有していた。
【0078】
実施例4
アクリロニトリル56%、塩化ビニリデン42.2%、メタリルスルホン酸ナトリウム1.8%からなる共重合体を、DMFに溶解し、さらに該共重合体100部に対して17部の水を添加して混合溶解し、濃度26%に調整して紡糸原液を得た。紡糸原液の粘度は130デシパスカル・秒を示した。
【0079】
この原液を、紡糸ノズル(孔径0.30mm、孔数112個)を通して、20℃の濃度58%DMF水溶液からなる凝固浴へ紡出した。ついで75℃の30%DMF水溶液からなる浴へ導いて4倍に延伸し、さらに80℃の15%DMF水溶液からなる浴で1.1倍に延伸し、全延伸比は4.4倍とした。さらに、90℃の熱水で水洗と9%の緩和を行ない、工程油剤を付着させて145℃で乾燥させ、そののち、0.26MPaの加圧水蒸気雰囲気下で緊張を保ったまま25%の緩和を行ない、全緩和率を32%とした。
【0080】
得られた繊維は、繊度48デシテックス、光沢コントラスト0.93、結節強度1.16cN/デシテックス、円形充実度0.94を有していた。
【0081】
この繊維でみの毛を作製した結果、ミシン工程での毛切れは、実施例1同様に、比較用の市販の人工毛髪カネカロン TiaraTM(鐘淵化学工業(株)製)と遜色なく、得られたみの毛をコーミングしたが、毛切れや抜け毛もほとんど見られず、良好であった。
【0082】
実施例5
実施例4で使用した共重合体をDMAcに溶解し、さらに該共重合体100部に対して11部の水を添加して混合溶解し、濃度26%に調整して紡糸原液を得た。紡糸原液の粘度は210デシパスカル・秒を示した。
【0083】
この原液を、紡糸ノズル(孔径0.30mm、孔数112個)を通して、30℃の濃度50%DMAc水溶液からなる凝固浴へ紡出した。ついで80℃の熱水からなる浴へ導いて4倍に延伸し、さらに85℃の熱水からなる浴で1.1倍に延伸し、全延伸比を4.4倍とした。さらに、90℃の熱水で水洗と9%の緩和を行ない、工程油剤を付着させて145℃で乾燥させ、そののち、0.27MPaの加圧水蒸気雰囲気下で緊張を保ったまま、30%の緩和を行ない、全緩和率を36%とした。
【0084】
得られた繊維は、繊度55デシテックス、光沢コントラスト0.94、結節強度1.10cN/デシテックスを有していた。また、図2に示すように、繊維断面1は、ほぼ円形を有しており、円形充実度は0.93であった。
【0085】
この繊維でみの毛を作製した結果、ミシン工程での毛切れは、実施例1同様に、比較用の市販の人工毛髪カネカロン TiaraTM(鐘淵化学工業(株)製)と遜色なく、得られたみの毛をコーミングしたが、毛切れや抜け毛もほとんど見られず、良好であった。また、カールセットは、表3に示したように、110℃の熱セット条件下では、セット直後は13.1cm、1週間後は17.1cmを示した。また、150℃の熱セット条件下では、セット直後は12.6cm、1週間後は16.6cmを示した。どちらの条件でもカール形状にタイト感が見られ、以下に記す比較例6より良好であった。
【0086】
実施例6
実施例5で得られた加圧水蒸気雰囲気下で緩和処理したフィラメントを、さらに、190℃の熱風雰囲気下で緊張を保った状態で1.3%緩和し、全緩和率を37%とした。得られた繊維は、繊度56デシテックス、光沢コントラスト0.94、結節強度1.36cN/デシテックスを有していた。
【0087】
実施例7(参考例)
アクリロニトリル57%、塩化ビニリデン40.5%、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸ナトリウム2.5%からなる共重合体を、該共重合体100部に対し12部の水を添加したDMFに溶解して攪拌・減圧脱泡を行ない、濃度29%に調整して紡糸原液を得た。紡糸原液の粘度は120デシパスカル・秒を示した。
【0088】
この原液を、紡糸ノズル(孔径0.35mm、孔数50個)を通して、20℃の濃度60%DMF溶液からなる凝固浴へ紡出した。ついで45℃の30%DMF水溶液からなる浴へ導いて3倍に延伸し、さらに70℃の15%DMF水溶液からなる浴で1.7倍に延伸し、全延伸比を5.1倍とした。さらに、90℃の熱水で水洗と4%の緩和を行ない、工程油剤を付着させて145℃で乾燥させ、そののち、0.23MPaの加圧水蒸気雰囲気下で緊張を保ったまま、18%の緩和を行ない、全緩和率21%の緩和処理を施した。
【0089】
得られた繊維は、繊度67dデシテックス、光沢コントラスト0.96、結節強度0.76cN/デシテックス、円形充実度0.74を有していた。
【0090】
この繊維でみの毛を作製した結果、比較として用いた人工毛髪繊維である市販のカネカロン TiaraTM(鐘淵化学工業(株)製)と同様に、ミシン工程での毛切れはなく、得られたみの毛をコーミングしたが、毛切れや抜け毛はほとんど見られなかった。
【0091】
実施例8(参考例)
アクリロニトリル58%、塩化ビニリデン40%、メタリルスルホン酸ナトリウム2%からなる共重合体を、DMAcに溶解し、水を該共重合体100部に対して11部さらに添加して濃度28%に調整し、紡糸原液を得た。この原液の粘度は360デシパスカル・秒であった。
【0092】
この原液を、紡糸ノズル(孔径0.30mm、孔数50個)を通して、20℃の濃度58%DMAc水溶液からなる凝固浴へ紡出した。ついで75℃の濃度30%DMF水溶液からなる浴へ導いて4倍に延伸し、さらに80℃の濃度15%DMF水溶液からなる浴で1.1倍に延伸し、全延伸比を4.4倍とした。さらに90℃の熱水浴で水洗と4%の緩和をかけ、油剤槽で紡糸油剤を付与して、130℃続いて160℃の熱風乾燥機へ導いて乾燥させた。得られた繊維は、そののち、0.1MPaの加圧水蒸気雰囲気下で緊張を保ったまま、10%の緩和処理を施し、全緩和率14%の緩和とした。
【0093】
得られた繊維は、繊度55デシテックス、光沢コントラスト0.93、結節強度0.43cN/デシテックスを有していた。
【0094】
この繊維のみの毛を作製したところ、ミシン工程での毛切れが多く、得られたみの毛を幅30cmに切って束ね、コーミングしても、やはり毛切れや抜け毛が目立ったが、カールセットしたみの毛の外観は自然な光沢が見られ、人毛に酷似していた。
【0095】
実施例9
アクリロニトリル57%、塩化ビニリデン41%、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸ナトリウム2%からなる共重合体をDMFに溶解し、さらに該共重合体100部に対して12部の水を添加して混合溶解し、濃度29%に調整して紡糸原液を得た。紡糸原液の粘度は100デシパスカル・秒を示した。
【0096】
この原液を、スリット形状がY型の紡糸ノズル(スリット部1個の面積0.096mm2、孔数50個)を通して、20℃、濃度58%DMF水からなる凝固浴へ紡出した。ついで45℃の30%DMF水溶液からなる浴へ導いて2倍に延伸し、さらに70℃の15%DMF水溶液からなる浴で1.5倍に延伸した。さらに、90℃の熱水で水洗と4%の緩和を行ない、工程油剤を付着させて145℃で乾燥および2倍の延伸行ない、各延伸操作を乗じた全延伸比を6倍とした。そののち、0.26MPaの加圧水蒸気雰囲気下で緊張を保ったまま、25%の緩和を行ない、2回の緩和による全緩和を28%とした。
【0097】
得られた繊維の断面形状はノズルスリット形状の相似形であるY型を有していた。また、物理特性は、繊度48デシテックス、光沢コントラスト0.95、結節強度1.0cN/デシテックスであった。
【0098】
この繊維でみの毛を作製した結果、実施例1と同様に、比較用の市販の人工毛髪カネカロン TiaraTM(鐘淵化学工業(株)製)と遜色なくミシン工程での毛切れはなく、得られたみの毛を幅30cmに切って束ね、コーミングしたが、毛切れや抜け毛もほとんど見られず、良好であった。
【0099】
比較例3
アクリロニトリル51.5%、塩化ビニリデン48%、スチレンスルホン酸ナトリウム0.5%からなる共重合体を、DMFに溶解し、さらに水を該共重合体100部に対して10部添加して混合攪拌し、減圧脱泡を行なって濃度29.5%に調整し、紡糸原液を得た。この原液の粘度は180デシパスカル・秒であった。
【0100】
この原液を、紡糸ノズル(孔径0.30mm、孔数50個)を通して、20℃の濃度60%DMF水溶液からなる凝固浴へ紡出した。ついで45℃の30%DMF水溶液からなる浴へ導いて3倍に延伸し、さらに70℃の15%DMF水溶液からなる浴で1.7倍に延伸し、全延伸比を5.1倍とした。そののち、工程油剤を付着させて、130℃続いて160℃の熱風乾燥機で乾燥させ、そののち、0.1MPaの加圧水蒸気雰囲気下で緊張を保ったまま、10%の緩和処理を施した。
【0101】
得られた繊維は、繊度56デシテックス、光沢コントラスト0.81、結節強度0.32cN/デシテックスを有していた。この繊維を用いて、実施例1と同様の方法で、みの毛を作製したところ、ミシン工程での毛切れが多く、得られたみの毛をコーミングしても、やはり毛切れや抜け毛が目立ち、しかも外観は死に毛調の光沢となり、人工頭髪素材としては不適な品質であった。
【0102】
比較例4
アクリロニトリル57.5%、塩化ビニリデン40.5%、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸ナトリウム2%からなる共重合体を、DMFに溶解し、減圧脱泡を行なって濃度29%に調整し、紡糸原液を得た。この原液の粘度は92デシパスカル・秒であった。
【0103】
この原液を、紡糸ノズル(孔径0.25mm、孔数50個)を通して、20℃の濃度58%DMF水溶液からなる凝固浴へ紡出した。ついで45℃の30%DMF水溶液からなる浴へ導いて4倍に延伸し、さらに70℃の15%DMF水からなる浴で1.1倍に延伸し、全延伸比を4.4倍とした。さらに90℃の熱水で水洗し、そののち、工程油剤を付着させて、130℃続いて160℃の熱風乾燥機で乾燥させた。そののち、0.1MPaの加圧水蒸気雰囲気下で緊張を保ったまま、10%の緩和処理を施した。
【0104】
得られた繊維は、繊度54デシテックス、光沢コントラスト0.83、結節強度0.36cN/デシテックスを有していた。図4に示すように、繊維端面1は、円形ではあるものの、光沢や結節強度などの繊維物性に不利となるマイクロボイドが多く見られた。円形充実度は0.91であった。
【0105】
この繊維を用いて、実施例1と同様の方法で、みの毛を作製したところ、ミシン工程での毛切れが多く、得られたみの毛を幅30cmに切って束ね、コーミングしても、やはり毛切れや抜け毛が目立ち、しかも外観は死に毛調の光沢となり、人工頭髪素材としては不適な品質であった。
【0106】
比較例5
アクリロニトリル56%、塩化ビニリデン42.2%、メタリルスルホン酸ナトリウム1.8%からなる共重合体を、DMAcに溶解し、濃度26%に調整して紡糸原液を得た。紡糸原液の粘度は190デシパスカル・秒を示した。
【0107】
この原液を、紡糸ノズル(孔径0.30mm、孔数112個)を通して、20℃の濃度50%DMAc水溶液からなる凝固浴へ紡出した。ついで80℃の熱水からなる浴へ導いて3.2倍に延伸し、さらに90℃の熱水からなる浴で1.5倍に延伸し、工程油剤を付着させて145℃で乾燥させ、ついで95℃の飽和水蒸気雰囲気中で1.5倍の延伸を行なって、各延伸操作を乗じた全延伸比を7.2倍とした。そののち、乾熱温度110℃に設定した雰囲気下へ加圧水蒸気を吹き込み、緊張を保ったまま25%の緩和を行なって乾燥させた。
【0108】
得られた繊維は、繊度52デシテックス、光沢コントラスト0.86、結節強度0.82cN/デシテックス、円形充実度0.84を有していた。
【0109】
この繊維でみの毛を作製した結果、実施例1と同様に、みの毛作製のミシン工程での毛切れはなく、得られたみの毛をコーミングしたが、毛切れや抜け毛もほとんど見られなかったが、光沢が不足し、人工毛髪としては不適な素材であった。
【0110】
比較例6
アクリロニトリル51.5%、塩化ビニリデン48%、スチレンスルホン酸ナトリウム0.5%からなる共重合体を、アセトンに溶解して濃度29.5%に調整し、紡糸原液を得た。この原液の粘度は62デシパスカル・秒であった。
【0111】
この原液を、紡糸ノズル(孔径0.30mm、孔数50個)を通して、20℃の濃度18%アセトン水溶液からなる凝固浴へ紡出した。ついで55℃の5%アセトン水溶液からなる浴へ導いて1.5倍に延伸し、さらに65℃の温水からなる水洗浴を通し、工程油剤を付着させて120℃で乾燥させた。続いて同温度で2.5倍に延伸して全延伸比を3.8倍とした。そののち、150℃で5%、さらには190℃の過熱水蒸気で5%緩和を行ない、全緩和率10%の緩和処理を行なった。
【0112】
得られた繊維は、繊度56デシテックス、光沢コントラスト0.97、結節強度0.45cN/デシテックスを有していた。図3に示すように、繊維断面1は、大部分がC型に近い不定形断面を有しており、円形充実度は0.71であった。
【0113】
この繊維を用いて、実施例1と同様の方法で、みの毛を作製したところ、ミシン工程での毛切れが多く、得られたみの毛をコーミングしても、やはり毛切れや抜け毛が目立った。また、カールセットは、表3に示したように、110℃の熱セット条件下では、セット直後は17.7cm、1週間後は20.3cmを示した。150℃でのカールセットは縮れが多く発生したため、130℃でのカールセットを行なった結果、セット直後は17.3cm、1週間後は19.8cmを示した。
【0114】
【表1】
Figure 0004191930
【0115】
【表2】
Figure 0004191930
【0116】
【表3】
Figure 0004191930
【0117】
【発明の効果】
本発明で得られる人工毛髪は、アクリロニトリルと塩化ビニリデンから得られる特定のアクリル系重合体を組成とした繊維からなり、加工性が改良されているため、従来のアクリロニトリルと塩化ビニルからなるアクリル系重合体からなる繊維と同様の商品特性を有し、ウィッグやツーペをはじめ、ヘアピース、ウィービング、エクステンションやブレードなどの頭髪用途に適する素材となり得る。
【図面の簡単な説明】
【図1】繊維断面における円形充実度および凹部の凹み度の測定方法を説明するための図である。
【図2】実施例5で製造された繊維束の切断面を走査型電子顕微鏡で撮影した写真である。
【図3】比較例6で製造された繊維束の切断面を走査型電子顕微鏡で撮影した写真である。
【図4】比較例4で製造された繊維束の切断面を走査型電子顕微鏡で撮影した写真である。
【符号の説明】
A 繊維断面の最大幅長
B 繊維幅長
b 凹部の最奥部からの最近接の接線までの最短距離
F 繊維断面の面積
H 凹部
M1、M2 平行な接線
N1、N2 平行な接線
R 繊維断面の最大幅長を直径する円の面積
1 繊維断面

Claims (6)

  1. アクリロニトリル40〜74重量%、塩化ビニリデン25〜59重量%、および、これらと共重合可能なスルホン酸基含有ビニル単量体1〜5重量%からなるアクリル系重合体と、良溶媒を含む重合体溶液に、前記重合体100重量部に対し3〜25重量部の水を含有してなる紡糸原液を湿式紡糸により繊維化し、
    得られた未延伸繊維を全延伸比が3〜8倍となるように延伸処理し、
    得られた延伸繊維を全緩和率が25%以上となるように緩和処理することにより得られた人工毛髪であって、
    アクリロニトリル40〜74重量%、塩化ビニリデン25〜59重量%、および、これらと共重合可能なスルホン酸基含有ビニル単量体1〜5重量%からなるアクリル系重合体から得られる繊維からなり、
    繊維の光沢コントラストが0.88以上であり、
    単繊維の平均繊度が30〜100デシテックスであり、
    かつ前記単繊維の結節強度が0.9cN/デシテックス以上であることを特徴とする人工毛髪。
  2. 前記良溶媒が、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドおよびジメチルスルホキシドよりなる群から選択された少なくとも1種である請求項1に記載の人工毛髪。
  3. アクリロニトリル40〜74重量%、塩化ビニリデン25〜59重量%、および、これらと共重合可能なスルホン酸基含有ビニル単量体1〜5重量%からなるアクリル系重合体と、良溶媒を含む重合体溶液に、前記重合体100重量部に対し3〜25重量部の水を含有してなる紡糸原液を調製する工程、
    前記紡糸原液を湿式紡糸により繊維化する工程、
    得られた未延伸繊維を全延伸比が3〜8倍となるように延伸処理する工程、および、
    得られた延伸繊維を全緩和率が25%以上となるように緩和処理する工程により、
    繊維の光沢コントラストが0.88以上であり、
    単繊維の平均繊度が30〜100デシテックスであり、
    かつ前記単繊維の結節強度が0.9cN/デシテックス以上の人工毛髪を得ることを特徴とする人工毛髪の製造法。
  4. 前記緩和処理は、2回以上に分割して処理する請求項3に記載の人工毛髪の製造法。
  5. 前記緩和処理は、延伸繊維を乾燥させたのち、加圧および/または過熱状態にある水蒸気雰囲気下で処理する請求項3に記載の人工毛髪の製造法。
  6. 前記水蒸気雰囲気下の温度が120〜200℃である請求項5に記載の人工毛髪の製造法。
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