JP4857469B2 - 人工毛髪 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、かつら、へアピース、ウィービングなどの頭髪装飾品や人形用ヘアなどに用いられる人工毛髪に関し、さらに詳しくは、セット性が良く、かつヘアスタイラビリティ(かつらなどにした場合に種々のヘアスタイルを作ることができるヘア特性)が良好な、アクリル系繊維からなる新規な人工毛髪に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より頭髪装飾品などに利用される人工毛髪に要求される品質として、カール形状、光沢、発色などの外観性、櫛通り、ヘアスタイラビリテイなどのヘアケア性、染色、ハックリングロス、カールセット性などの加工特性、あるいはボリューム感、触感、難燃性などが有る。現在市販されている毛髪素材のうち、ポリプロピレンやポリエステルからなる繊維では難燃性が劣り、塩化ビニルや塩化ビニリデンからなる繊維では染色性あるいは単位重量当りのボリューム感で他素材に劣る。これらを同時に満足できる素材としては、人毛あるいはアクリロニトリルと塩化ビニルを共重合して得られるアクリル系繊維からなる人工毛髪が知られている。しかしながら、人毛を素材として利用する場合は、原料入手やヘア長に難点が有る。一方、アクリロニトリルと塩化ビニルを共重合して得られるアクリル系繊維も、商品によっては、光沢、発色性および風合い面でバランスが取れ、かつ難燃性を有する特性を有しているが、セットしたカール形状が経時的に変化することからセット性に難があり、また、現行のアクリル系繊維のヘアスタイラビリティでは満足できないヘアスタイルの要求が有るため、その改善が望まれている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、頭髪装飾品などに用いられる人工毛髪として、セット性がよく、高いヘアスタイラビリティを有し、頭髪装飾品などの毛髪素材として用いることで、バラエティに富んだ商品企画を可能とする人工毛髪を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の目的を達成すべく、アクリル系繊維が元来有している、人工毛髪に要求される各種品質を兼ね備えると同時に、アクリル系繊維の欠点であるセット性やヘアスタイラビリティを向上させるため、アクリル系繊維の断面構造に着目し、本発明を完成させるに至った。すなわち、本発明に係る人工毛髪は、アクリロニトリル35〜70重量%、ハロゲン含有ビニル系単量体25〜60重量%およびこれらと共重合可能なスルホン酸基含有ビニル系単量体0.7〜10重量%からなるアクリル系重合体を、アセトンに溶解して水を前記アクリル系重合体重量の5〜20%含有させて調製した紡糸原液、またはジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドおよびジメチルスルホキシドよりなる群の内から選択される少なくとも1種からなる前記アクリル系重合体の良溶媒に溶解して水を前記アクリル系重合体重量の5〜20%含有させて調製した紡糸原液を用い、前記紡糸原液が前記アクリル系重合体をアセトンに溶解した紡糸原液の場合には、温度15℃以下、濃度50〜75重量%のアセトン水溶液を凝固浴として、前記紡糸原液が前記アクリル系重合体を前記良溶媒に溶解した紡糸原液の場合には、温度10〜40℃、濃度30〜70重量%の前記良溶媒の水溶液を凝固浴として、湿式紡糸法により得られる繊維からなり、繊維断面の円形充実度が平均0.8以上で、かつ単繊維の平均繊度が30〜100dtexであることを特徴とする。また、本発明に係る人工毛髪の製造方法は、繊維断面の円形充実度が平均0.8以上で、かつ単繊維の平均繊度が30〜100dtexである人工毛髪の製造方法であって、アクリロニトリル35〜70重量%、ハロゲン含有ビニル系単量体25〜60重量%およびこれらと共重合可能なスルホン酸基含有ビニル系単量体0.7〜10重量%からなるアクリル系重合体を、アセトンに溶解して水を前記アクリル系重合体重量の5〜20%含有させて調製した紡糸原液、またはジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドおよびジメチルスルホキシドよりなる群の内から選択される少なくとも1種からなる前記アクリル系重合体の良溶媒に溶解して水を前記アクリル系重合体重量の5〜20%含有させて調製した紡糸原液を用い、前記紡糸原液が前記アクリル系重合体をアセトンに溶解した紡糸原液の場合には、温度15℃以下、濃度50〜75重量%のアセトン水溶液を凝固浴として、前記紡糸原液が前記アクリル系重合体を前記良溶媒に溶解した紡糸原液の場合には、温度10〜40℃、濃度30〜70重量%の前記良溶媒の水溶液を凝固浴として、湿式紡糸法することを特徴とする。
【0005】
本発明でいう前記繊維断面の円形充実度とは、繊維軸に垂直な繊維断面における互いに平行な2本の接線間の距離を繊維幅長とした場合の当該繊維断面における繊維幅長のうちの最大幅長(例えば、図1中の接線M1およびM2間の距離A)を直径とする円の面積(R)に対する当該繊維断面の面積(F)の割合を意味し、下式(1)で求められる値である。
円形充実度=繊維断面積/最大幅長を直径とする円の面積・・・式(1)
【0006】
ところで、例えば特公昭53−6253号公報に開示された繊維や特開昭61−258014号公報に開示された繊維でも円形化が図られている。しかし、これらは人工毛髪に適するような太い繊度ではなく、また、本発明の目的である人工毛髪として要求されるセット性やヘアスタイラビリティを満足しうるものではない。
【0007】
本発明の人工毛髪に用いられる繊維は、アクリル系重合体を該重合体の良溶媒に溶解した紡糸原液を用いた湿式紡糸法により得られる繊維であることが好ましい。前記アクリル系重合体の良溶媒としては、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドおよびジメチルスルホキシドを使用することが好ましい。また、前記アクリル系重合体中のハロゲン含有ビニル系単量体としては、塩化ビニリデンが好ましい。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明の人工毛髪に使用できる繊維は、アクリル系重合体からなる繊維であり、アクリロニトリル35〜70重量%、ハロゲン含有ビニル系単量体25〜60重量%およびこれらと共重合可能なスルホン酸基含有ビニル系単量体0.7〜10重量%、より好ましくはスルホン酸基含有ビニル系単量体0.7〜8重量%を共重合することにより得られる。重合体の成分であるアクリロニトリルが35重量%未満であると耐熱性が低くなる結果、セット性が悪くなり、逆に70重量%を超えると難燃性が劣り、頭髪装飾品などの毛髪素材としての要求特性が満たされなくなる傾向がある。
【0009】
前記ハロゲン含有ビニル系単量体としては、ハロゲン原子、好ましくは塩素原子または臭素原子を含有するビニル系単量体であれば、いずれも用いることができる。具体的には、ハロゲン化ビニリデンやハロゲン化ビニルが使用できる。ハロゲン化ビニリデンとしては塩化ビニリデンや臭化ビニリデンが挙げられ、ハロゲン化ビニルとしては塩化ビニルや臭化ビニルが挙げられるが、中でも取扱い上ハロゲン化ビニリデン、特に塩化ビニリデンが好ましい。また、アクリロニトリルと塩化ビニルの共重合時には高圧ガス対応の特殊な重合釜を使用する必要があるのに対し、塩化ビニリデンの場合にはそのような高圧ガス対応が不要な装置で製造できる。これらのハロゲン含有ビニル系単量体は、1種で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0010】
前記アクリロニトリルおよびハロゲン含有ビニル系単量体と共重合可能なスルホン酸基含有ビニル系単量体としては、たとえばメタリルスルホン酸、アリルスルホン酸、イソプレンスルホン酸、スチレンスルホン酸および2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸などに代表されるスルホン酸基含有ビニル単量体またはそれらのナトリウム、カリウムおよびアンモニウム塩などが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく2種以上を組み合わせて用いてもよい。スルホン酸基含有ビニル単量体は、湿式紡糸時の繊維の緻密化や断面円形化効果を顕著にするため、重合体中での組成割合は0.7重量%以上とすることが好ましく、より好ましくは1.5重量%以上である。しかし、重合体中のスルホン酸基含有ビニル単量体の組成割合が多すぎると、該重合体を溶剤へ溶解した時の溶解性の低下あるいは得られた溶液(紡糸原液)の増粘傾向により繊維化が困難となる場合があり、5重量%を超えると湿式紡糸による繊維形成過程に悪影響を及ぼす場合があることから好ましくない。
【0011】
前記アクリロニトリル、ハロゲン含有ビニル系単量体およびこれらと共重合可能なビニル系単量体を共重合して重合体を得る方法としては、通常のビニル重合法、たとえばスラリー重合法、乳化重合法、溶液重合法などのいずれの方法により行なってもよく、とくに制限はない。
【0012】
前記したアクリル系重合体は、アセトンあるいはアクリル系重合体の良溶媒であるジメチルアセトアミド(以下、DMAcと記す)、ジメチルホルムアミド(以下、DMFと記す)、ジメチルスルホキシド(以下、DMSOと記す)などの溶剤に溶解して紡糸原液とし、湿式紡糸して繊維化することが出来るが、溶剤としては前記DMAc、DMF、DMSOなどの良溶媒を用いて湿式紡糸することが好ましい。
【0013】
原液濃度は、重合体の重合度や共重合組成比にもよるが、一般に20〜35重量%に調整され、原液粘度としては、40℃において回転粘度計(B型粘度計)により測定した値が、30〜800dPa・秒であることが取扱い上好ましく、更に繊維断面の円形充実度の面からは50dPa・秒以上、より好ましくは150dPa・秒以上である。
【0014】
また、紡糸原液として、水を該重合体重量の5〜20%含有させて調製した原液を使用すると、重合体の凝固速度が緩慢になることで湿式紡糸時のマクロボイドの発生が減少し、より均質な円形充実度の高い断面形状を有する繊維が得られ、また水洗後の繊維中の残溶剤含率が低下するため工程上より好ましい。水の添加量が5%未満の場合には、添加量が減少するにつれ繊維断面の円形充実度は低下傾向を示すが、円形充実度が目的の値に達していれば特に支障はない。一方、水の添加量が20%を超えると紡糸原液のゲル化が起こり易く原液安定性が悪くなる傾向にあり、繊維製造上トラブル発生が多くなることから好ましくない。
【0015】
なお、紡糸原液には、繊維の実用性から原液着色防止、耐光、耐熱用の安定剤、染色性改良剤、人工毛髪用の着色剤や光沢調整剤などを適宜添加しても良い。
【0016】
紡糸は、原液調製に用いた溶剤の水溶液を凝固浴として湿式紡糸法で行うことが好ましい。繊維断面を緻密にし、円形充実度を上げるには、オリフィスの形状が円形の紡糸ノズルを通して紡糸ノズルドラフト0.3〜1.2程度で紡出するのが好ましい。凝固条件は、一般に凝固速度が緩やかな条件を採用するが、溶剤や重合体組成の種類により凝固浴温度、凝固浴濃度あるいは原液調製条件が適宜設定される。
【0017】
例えば、アクリロニトリル35〜55重量%、ハロゲン含有ビニル単量体65〜45重量%およびスルホン酸ナトリウム含有ビニル単量体0〜3重量%の範囲の共重合体をアセトンに溶解して湿式紡糸する場合、通常は温度20〜30℃、アセトン濃度20〜30重量%の水溶液へ紡出して繊維化を行うところを、温度15℃以下、アセトン濃度50〜75重量%の紡糸条件下で行うことで目的の円形充実度が得られる。
【0018】
また、アセトンに比べ良溶媒に位置付けられるDMAc、DMF、DMSOなどの溶剤を使用する場合、アセトンに対し溶解性が低下するアクリロニトリル55重量%以上を共重合したアクリル系重合体をも溶解することができる。この場合、前記のように紡糸原液に水を重合体重量の5〜20%を添加して調製した原液を使用することで、マクロボイドの発生が減少し、より均質な円形断面を有する繊維が得られ、また水洗後の繊維中の残溶剤含率が低下するため好ましい。この場合の凝固浴は、温度10〜40℃、濃度30〜70重量%が好ましい。
【0019】
上記のように紡糸して繊維化されたアクリル系重合体は、次いで該溶剤濃度のさらに薄い30℃以上の水溶液あるいは40〜60℃の温水、さらには60℃以上の熱水あるいは沸騰水からなる水洗浴へと導かれ、脱溶剤や延伸、さらには必要により緩和処理を行う。この時の合計延伸倍率は2〜10倍が好ましく、より好ましくは3〜8倍で、延伸は分割して配分してもよい。次いで工程油剤を付着させ乾燥させる。工程油剤は静電防止、繊維の膠着防止や風合い改良目的で用いるが、成分は公知の油剤で充分である。乾燥した繊維はその後、必要により更に延伸されるが、その延伸倍率は1〜4倍である。乾燥あるいは延伸して得られた繊維は、更に高温の乾熱雰囲気下あるいは加圧スチーム雰囲気下で緩和処理を施し、目的の繊維を得ることができる。緩和率としては、延伸倍率にもよるが、通常8〜35%であり、より好ましくは13〜30%である。
【0020】
また、単繊維の繊度は、毛髪素材であることから、最終的には30〜100dtexになることが好ましく、より好ましくは40〜80dtexである。30dtex未満では細すぎてヘアにボリューム感が無くなる結果、不自然なヘアスタイルになり、100dtexを超えると粗硬感が強いためヘアの動きにしなやかさが欠け、針ねずみのような粗いヘアになる結果、やはり不自然なヘアスタイルになり好ましくない。
【0021】
単繊維のカール発現性向上を顕著にするには、繊維断面の円形充実度が平均0.8以上であることが、カール保持性すなわちセット性およびヘアスタイラビリティのバランスの点から好ましく、より好ましくは0.85以上である。円形充実度が0.8未満(例えば、楕円〜偏平状態の断面形状)であると熱セットしたカールは自重による伸びが大きくなって目的のカール発現が得にくくなる。また、カール発現性のみの向上であれば、円形充実度が0.8未満であるY字や十字の繊維断面形状でも目的は達成できるものも有るが、触感上ガサツキや粗硬感があり、ヘアスタイラビリティも悪くなる結果、品質バランスが崩れ、ヘア特性としては好ましくない。従って、セット性とヘアスタイラビリティでバランスがとれた人工毛髪としては、円形充実度が重要な要素となる。但し、繊維断面の中央部が中空構造のO字断面や偏平断面が変形した中央部に空洞を有するC字断面のような構造は、本発明の目的とする充実した繊維断面の対象外となる。また、繊維断面外周に凹部がある場合は、図1に示すように、該凹部(H)に最も近く、かつ繊維断面を横断しない接線(N1)から凹部(H)の最奥部までの最短距離(b)の、前記接線(N1)と該接線(N1)に平行なもう1つの接線(N2)で挟まれる繊維幅長(B)に対する比率(%)を凹み度hとしたとき、凹み度h(%)が20%以下であればよい。なお、前記凹み度h(%)は下式(2)により求められる。
凹み度:h(%)=100×(b/B)・・・式(2)
その理由としては、例えばO字断面やC字断面のように繊維断面内部に大きな空洞や凹みが存在すると、洗髪やコーミングなどの外力により、繊維に折れ、潰れ、フィブリル化などを生じ易く、毛髪素材としての品格が低下するためである。
【0022】
上記のような本発明の人工毛髪は、例えば、かつら、ヘアピース、ウィービングなどの頭髪装飾品や人形用ヘアなどに用いることができ、特にセット性およびヘアスタイラビリティが要求される頭髪装飾品などに好適に使用することができる。
【0023】
【実施例】
以下、本発明を実施例および比較例に基づき更に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、以下の記載中で、化学組成の%表示は全て重量%を示す。また、実施例の説明に先立ち、評価用サンプルの調製法や評価法について以下に記載する。
【0024】
(繊度)
オートバイブロ式繊度測定器 DENIER COMPUTERタイプDC−11(サーチ(株)製)を使用して測定し、サンプル数n=30の平均値を求めた。
【0025】
(円形充実度)
直径2mmφ程度の繊維束をエポキシ系接着剤で固定し、繊維束に対して垂直方向に切断して繊維断面観察用サンプルとして数個準備した。サンプルは繊維束の切断面をイオンコーター IB−3型((株)エイコーエンジニアリング製)でAu蒸着した後、走査電子顕微鏡 S−3500N型((株)日立製作所製)を使用して繊維断面写真撮影を行い、繊維断面1つ1つについて、例えば図1の如く、最大幅長(A)と面積(F)を測定して下記式(1)により円形充実度を求め、繊維断面サンプル数n=20の平均値を求めた。なお、繊維断面の最大幅長(A)や面積(F)は、画像処理ソフトImage−Hyper II((株)インタークエスト)を使用して求めた。
円形充実度=(繊維断面積/最大幅長を直径とする円の面積)・・・式(1)
=4F/(A2π)
【0026】
(セット性)
繊維束を繊維長45cmに切り揃え、ミノ毛作成ミシンで繊維の端から20cmの距離部を縫い込み、縫い目部を折り返して毛長約24cmのミノ毛を作成した。次いで、幅12cmに切ったミノ毛をペーパーを敷いて櫛でまっすぐに梳き揃え、毛先から、直径32mmのアルミパイプ外周上に同心円になるようペーパーを添えて巻き、均熱風乾燥機で100℃、60分間の熱セットを行って取出した。その後、室温まで自然冷却し、ミノ毛をアルミパイプより取り外し、7日間吊り下げておいた後、縫い目部からカール先端までの毛長を測定し、セット性とした。測定された毛長が短いほどセット性は良好である。
【0027】
(ヘアスタイラビリティ)
上記と同様にして作成したストレートミノ毛を、伸縮性の無いネット布帛に1cm間隔で10段縫い付け、同様にカールの熱セット行ってカール付与したミノ毛をヘアブラシで梳き、カール形状の発現具合を含めたヘアスタイルを観察した。評価は、美容師を含むウィッグの技術者5名により、以下の基準に基づいて判定し、平均値を採用した。
ヘアスタイラビリティの評価基準
◎:スムーズにカールウェイブが揃う結果、立体感が表現できヘアスタイルを整えることができる。
○:比較的手をかけずにカールウェイブが揃う結果、立体感が表現できヘアスタイルを整えることができる。
×:念入りに時間や手間をかけないとカールウェイブが揃わず、ヘアスタイルが整え難い。
【0028】
(実施例1)
アクリロニトリル57.0%、塩化ビニリデン41.5%、メタリルスルホン酸ナトリウム1.5%からなる共重合体をDMFに溶解後、該重合体に対し12%の水を添加し、混合、溶解した。さらに脱泡して調製した濃度28%、40℃での粘度390dPa・秒の紡糸原液を、孔形状が円形の紡糸ノズル(孔数50コ、孔径0.28mm)を通して15℃、濃度60重量%DMF水溶液からなる凝固浴へ紡出した。次いで45℃、30重量%のDMF水溶液からなる浴中へ導いて2倍に延伸し、更に70℃、15重量%DMF水溶液からなる浴中で1.5倍延伸し、次いで90℃の熱水浴を通して合計3倍の延伸を加えて水洗した。次いで、工程油剤を付着させた後、145℃の熱風乾燥機で乾燥させて2倍の延伸を行い、160℃の熱処理を行った。その後、0.27MPaの加圧スチーム雰囲気中で緊張下21%の緩和処理を施した。得られた繊維は単糸繊度57dtex、繊維断面の円形充実度0.93、凹み度は3%以下であった。この繊維を用いてミノ毛を作成し評価した結果を表1に示した。
【0029】
(比較例1)
共重合体組成をアクリロニトリル57.0%、塩化ビニリデン42.6%、メタリルスルホン酸ナトリウム0.4%に変え、該重合体の水が添加されていないDMF溶液を紡糸原液にした以外は、実施例1に準じて繊維を作成した。得られた繊維は、単糸繊度57dtex、繊維断面の円形充実度は0.70、凹み度は実施例1と同様3%以下であった。この繊維を用いてミノ毛を作成し評価した結果を表1に示した。
【0030】
(実施例2)
アクリロニトリル48.8%、塩化ビニリデン50.0%、スチレンスルホン酸ナトリウム1.2%からなる共重合体をDMAcに溶解し、更に該重合体に対し10重量%の水を添加して濃度30重量%、40℃での粘度60dPa・秒の紡糸原液を得た。該紡糸原液を孔形状が円形の紡糸ノズル(孔数50コ、孔径0.30mm)を通して18℃、濃度67重量%のDMAc水溶液からなる凝固浴へ紡出した。次いで20℃、20重量%のDMAc水溶液からなる浴中で1.6倍に延伸し、その後、50℃、90℃の水洗浴を経て1.9倍の延伸を与え、工程油剤を付着させて120℃で乾燥した。続いて同温度で2.5倍の延伸を行った後、145℃で3%の緩和処理後、0.22MPaの加圧スチーム雰囲気中で緊張下20%の緩和処理を施した。得られた繊維は単糸繊度55dtex、繊維断面の円形充実度0.85、凹み度は6%であった。この繊維を用いてミノ毛を作成し評価した結果を表1に示した。
【0031】
(比較例2)
共重合体組成をアクリロニトリル49.5%、塩化ビニリデン50.0%、スチレンスルホン酸ナトリウム0.5%にした以外は実施例2に準じて繊維を作成した。得られた繊維は、単糸繊度55dtex、繊維断面の円形充実度は0.75、凹み度は17%であった。この繊維を用いてミノ毛を作成し評価した結果を表1に示した。
【0032】
(実施例3)
アクリロニトリル49.0%、塩化ビニル50.0%、スチレンスルホン酸ナトリウム1.0%からなる共重合体をアセトンに溶解して得た、濃度30重量%、40℃での粘度50dPa・秒の紡糸原液を、孔形状が円形の紡糸ノズル(孔数50コ、孔径0.35mm)を通して10℃、70%アセトン水溶液からなる凝固浴に紡出した。次いで20℃、濃度40重量%のアセトン水溶液からなる浴中で1.6倍に延伸し、その後50℃の水洗浴を経て工程油剤を付着させた後、120℃で乾燥し、2.5倍の延伸を行った後、145℃で10%の緩和熱処理を行った。得られた繊維は、単糸繊度55dtex、繊維断面の円形充実度は0.85、凹み度は3%以下であった。この繊維を用いてミノ毛を作成し評価した結果を表1に示した。
【0033】
(比較例3)
実施例3で使用した紡糸条件の中の最初の凝固浴条件を20℃、濃度20重量%のアセトン水溶液に変更した以外は実施例3に準じて繊維を作成した。得られた繊維の単糸繊度は55dtex、繊維断面の円形充実度は0.67、凹み度は53%であった。この繊維を用いてミノ毛を作成し評価した結果を表1に示した。
【0034】
【表1】
Figure 0004857469
【0035】
表1の結果から明らかなように、繊維断面の円形充実度が0.8以上のアクリル系繊維は、これを人工毛髪として使用した場合、セット性が良く、かつ高いヘアスタイラビリティを有する。
【0036】
【発明の効果】
本発明は、頭髪装飾品などに利用される人工毛髪としての要求品質を各種兼ね備え、中でもアクリル系繊維の欠点であったセット性やヘアスタイラビリティ性が良好で、各種ヘアスタイルを容易に作ることができ、バラエティに富んだ頭髪装飾品などの商品企画が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 繊維断面における円形充実度および凹部の凹み度の測定方法を示す説明図。
【符号の説明】
A:繊維断面の最大幅長、B:繊維幅長、b:凹部の最奥部から最近接の接線までの最短距離、F:繊維断面の面積、H:凹部、M1,M2:平行な接線、N1,N2:平行な接線、R:繊維断面の最大幅長を直径とする円の面積。

Claims (4)

  1. アクリロニトリル35〜70重量%、ハロゲン含有ビニル系単量体25〜60重量%およびこれらと共重合可能なスルホン酸基含有ビニル系単量体0.7〜10重量%からなるアクリル系重合体を、アセトンに溶解して水を前記アクリル系重合体重量の5〜20%含有させて調製した紡糸原液、またはジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドおよびジメチルスルホキシドよりなる群の内から選択される少なくとも1種からなる前記アクリル系重合体の良溶媒に溶解して水を前記アクリル系重合体重量の5〜20%含有させて調製した紡糸原液を用い、前記紡糸原液が前記アクリル系重合体をアセトンに溶解した紡糸原液の場合には、温度15℃以下、濃度50〜75重量%のアセトン水溶液を凝固浴として、前記紡糸原液が前記アクリル系重合体を前記良溶媒に溶解した紡糸原液の場合には、温度10〜40℃、濃度30〜70重量%の前記良溶媒の水溶液を凝固浴として、湿式紡糸法により得られる繊維からなり、繊維断面の円形充実度が平均0.8以上で、かつ単繊維の平均繊度が30〜100dtexであることを特徴とする人工毛髪。
  2. 前記ハロゲン含有ビニル系単量体が塩化ビニリデンである請求項1に記載の人工毛髪。
  3. 繊維断面の円形充実度が平均0.8以上で、かつ単繊維の平均繊度が30〜100dtexである人工毛髪の製造方法であって、アクリロニトリル35〜70重量%、ハロゲン含有ビニル系単量体25〜60重量%およびこれらと共重合可能なスルホン酸基含有ビニル系単量体0.7〜10重量%からなるアクリル系重合体を、アセトンに溶解して水を前記アクリル系重合体重量の5〜20%含有させて調製した紡糸原液、またはジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドおよびジメチルスルホキシドよりなる群の内から選択される少なくとも1種からなる前記アクリル系重合体の良溶媒に溶解して水を前記アクリル系重合体重量の5〜20%含有させて調製した紡糸原液を用い、前記紡糸原液が前記アクリル系重合体をアセトンに溶解した紡糸原液の場合には、温度15℃以下、濃度50〜75重量%のアセトン水溶液を凝固浴として、前記紡糸原液が前記アクリル系重合体を前記良溶媒に溶解した紡糸原液の場合には、温度10〜40℃、濃度30〜70重量%の前記良溶媒の水溶液を凝固浴として、湿式紡糸法することを特徴とする人工毛髪の製造方法。
  4. 前記ハロゲン含有ビニル系単量体が塩化ビニリデンである請求項3に記載の人工毛髪の製造方法。
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