JP2004332179A - アクリル系合成繊維及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】スルホン酸基含有モノマーの含有量が比較的少なくても良好な染色性を示し、かつ不連続なボイドを持たせることにより光沢を抑えた、コスト的にも有利なアクリル系合成繊維を得ること。
【解決手段】スルホン酸基含有モノマーが0.7重量%以上含有するアクリル系重合体からなる紡糸原液を、凝固浴の有機溶剤濃度、温度を所定条件にて湿式紡糸すると、不連続なボイドを有する繊維構造になり、ボイドが出来ることにより光の拡散反射が起こり繊維の光沢が抑えられ、また染料の繊維内部への拡散速度が速くなり染色性が向上する。
【選択図】 なし
【解決手段】スルホン酸基含有モノマーが0.7重量%以上含有するアクリル系重合体からなる紡糸原液を、凝固浴の有機溶剤濃度、温度を所定条件にて湿式紡糸すると、不連続なボイドを有する繊維構造になり、ボイドが出来ることにより光の拡散反射が起こり繊維の光沢が抑えられ、また染料の繊維内部への拡散速度が速くなり染色性が向上する。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、主にパイル用途に適した、染色性が向上し光沢が抑えられたアクリル系合成繊維及びその製造法に関する。
【0002】
【従来の技術】
アクリル系合成繊維は、そのソフト感、嵩高さ等の風合及び加工の容易さから、ボアー、シール、フリース、ハイパイル等の分野に広く使用されている。パイル用のアクリル系合成繊維の求められる品質の中に、染色性が優れていること、すなわち、染料吸尽速度が速く、発色性が高く、抜染の加工性が容易であること、及び光沢が抑えられていること、いわゆるダル感を持つことが挙げられる。
【0003】
アクリル系合成繊維の染色性の向上には一般的に、スルホン酸基含有モノマー等の易染性モノマーの含有率を向上させることにより行われてきた(特許文献1)。しかしながら、特許文献1はもともと染色性がそれほど悪くないアクリロニトリル含有量の高いアクリル合成繊維に関するものであり、この方法を他の共重合成分を多く含むモダアクリル系合成繊維に応用した場合には、染色性の向上に限界があり、また、スルホン酸基含有モノマーはコストが高いという欠点があった。
【0004】
また、繊維にダル感を持たせる方法として、繊維にセルロース誘導体や無機化合物を添加する方法がある(特許文献2〜4)。しかしながら、セルロース誘導体や無機化合物は一般的にコストが高く、また、可紡性を低下させるという欠点があった。
【0005】
一方、上記アクリル系合成繊維の製造法としては、乾湿式紡糸、無機溶剤を使用する湿式紡糸と共に、有機溶剤を使用する湿式紡糸も一般的に実施されている。このとき用いられる有機溶剤としては、アセトン、DMF,DMAc等が用いられるが、湿式紡糸においては、有機溶剤をいかに速く除去するか(脱溶剤)及び水洗出のゲル糸条をいかに速く乾燥させるかが、紡糸設備を短縮し、ユーテイリテイーコストを低減させるポイントである。
【0006】
従来から、脱溶剤を促進するために、水洗浴の温度を高くしたり、カスケード水洗方式が用いられたりしている。これらの方法によりある程度の脱溶剤促進効果は得られるものの、脱溶剤速度は繊維構造によるところが大きく、十分な効果は得られていない。乾燥前の湿潤状態にある繊維をスチーム雰囲気中に導入し溶媒を除去する方法があるが(特許文献5)、通常の水洗浴とは別にスチーム処理装置が必要であり設備の短縮化は出来ない。また、乾燥速度は水洗出のゲル糸条に含まれる有機溶剤濃度と相関が高く、有機溶剤含有率を低下させることが乾燥速度を上げる手段であるが、通常の手段では有機溶剤含有率を十分に低下させることが出来ず、あまり乾燥速度を上げることは出来ないという課題もあった。
【0007】
【特許文献1】
特開平8−325833
【0008】
【特許文献2】
特公昭56−44163
【0009】
【特許文献3】
特公昭56−44164
【0010】
【特許文献4】
特開平2−53912
【0011】
【特許文献5】
特開2001−279518
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明では、上記従来技術の問題点を解消し、スルホン酸基含有モノマーの含有量が比較的少なくても良好な染色性を示し、かつダル感が付与され、かつコスト的にも有利なアクリル系合成繊維を得ることを目的としている。さらに、従来より課題であった、水洗工程における脱溶剤速度と乾燥工程における乾燥速度の向上も目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために鋭意研究の結果、スルホン酸基含有モノマーが0.7重量%以上含有するアクリル系重合体を溶解した紡糸原液を用いて、凝固浴の有機溶剤濃度及び温度をある条件に設定して紡糸すると、不連続なボイドが発現し、その結果、繊維にダル感が付与されると同時に染色性が向上することを見出した。さらに、上記紡糸条件を設定することによって、驚くべきことに水洗工程における脱溶剤速度と乾燥工程における乾燥速度の向上も図れることを見出し、本発明を完成させた。
【0014】
すなわち本発明は、スルホン酸基含有モノマーを0.7重量%以上含有するアクリル系重合体からなり、繊維断面における径が0.2〜10μmの不連続なボイドを有するアクリル系合成繊維に関する。好ましくは、前記ボイドの繊維中に存在する割合が、20%以上である上記アクリル系合成繊維に関する。
【0015】
また、本発明は、スルホン酸基含有モノマーを0.7重量%以上含有するアクリル系重合体を含有する紡糸原液を、アセトン水溶剤中に下記の条件で湿式紡糸することを特徴とするアクリル系合成繊維の製造方法に関する。
【0016】
T≧−0.25M−40S+68
(T:凝固浴温度(℃)、M:凝固浴のアセトン濃度(%)、S:スルホン酸基含有モノマー量(重量%))
さらに本発明は、紡糸後の繊維を65℃以上の温度で水洗することを特徴とする上記アクリル系合成繊維の製造方法に関する。
【0017】
【発明の実施の形態】
本発明に使用されるアクリル系重合体は、スルホン酸基含有モノマーを0.7重量%以上含有しており、それ以外の成分としては、アクリロニトリルを40重量%以上と他のビニル系モノマーを59.3重量%以下からなるものである。スルホン酸基含有モノマーが0.7重量%より少ないと、凝固浴にてボイドのある構造を取りにくくなり、ダル感を発現することが難しい。また、スルホン酸基含有モノマーの量が多くなるほど、疎な構造になり易くなり、ダル感が発現しやすくなる。またアクリロニトリルの上限値及び他のビニル系モノマーの下限値については特に限定されるものではないが、従来、染色性の良くないことが課題であった他のビニル系モノマーを多く含むアクリルニトリル共重合体からなるモダアクリル系合成繊維(アクリロニトリル含有量が60重量%以下)においても、良好な染色性が得られるという本発明の目的が達成できる。
【0018】
前記スルホン酸基モノマーとしては、特に限定されるものではないが、アリルスルホン酸、メタリルスルホン酸、p−スチレンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸及びこれらのアルカリ金属塩等が挙げられる。また、ビニル系モノマーとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル類、塩化ビニル、臭化ビニル、塩化ビニリデン等のハロゲン化ビニル、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸等の酸類及びそれらの塩類、マレイン酸イミド、フェニルマレイミド、(メタ)アクリルアミド、スチレン、α−メチルスチレン、酢酸ビニル等が挙げられる。
【0019】
本発明のアクリル系合成繊維は、上記アクリル系共重合体からなるものであり、繊維の長さ方向に対して不連続な、いくつかのボイド(空隙)を有している繊維である。ここでボイドが繊維の長さ方向に対して不連続であるというのは、例えばある1本の繊維を任意の位置で繊維断面方向に切断したとき、ボイドが見られる部分と見られない部分が存在するということである。その点で一般の中空繊維とは異なる。本発明において、繊維断面におけるボイドの径の大きさは0.2〜10μmの範囲である。但し、この大きさの範囲のボイドが存在すれば、その他に0.2μm以下のボイドが多少併せて存在しても構わない。ここでいうボイドの径の値は、ボイドが円形である場合はその直径、楕円形や不定形である場合はその平均径の値である。ボイドの径が、0.2μm以下でも染色性はある程度向上するが、ダル感が発現せず、10μm以上になると繊維の強度が低下する。本発明のアクリル系合成繊維における上記ボイドの存在する割合(確率)、すなわち、任意の繊維断面において、径が0.2〜10μmのボイドがみられる繊維断面が存在する割合は、2%以上が好ましく、20%以上がより好ましい。一般に、ボイドの存在割合が2%以上でダル感を有し始め、その割合が大きくなるほど、ダル感が大きくなる。また、同一繊維断面上にボイドが2個以上存在しても構わない。
【0020】
本発明は、上記のような繊維の構造によってダル感を発現するものであり、ダル感を付与するために従来用いられる有機化合物及び無機化合物が無くてもダル感があるが、さらにダル感を増すために、これら化合物を添加することはなんら差し支えない。ダル感を付与するために用いられる有機化合物としては、酢酸セルロース、酢酸ビニル等、無機化合物としては酸化チタン、酸化アンチモン、酸化亜鉛、水酸化アルミニウム、炭酸カルシウム等が挙げられる。これら有機化合物又は無機化合物は、アクリル系重合体もしくはアクリル系重合体を含有する紡糸原液に添加されて使用される。
【0021】
本発明のアクリル系合成繊維は、上述したアクリル系重合体中のスルホン酸基含有モノマー含有量と特定のボイドを有するという繊維構造を満たすものであれば、染色性の向上とダル感の付与という効果を奏するものであり、その製造方法は限定されない。一方、本発明では、凝固浴の有機溶剤濃度及び温度により、上記ボイドを有するように繊維構造の制御が可能であることも見いだした。一般に、アクリル系合成繊維は原料となるアクリル系重合体を有機溶剤や無機溶剤等に溶解して紡糸原液とし、その紡糸原液を有機溶剤や無機溶剤を含む水溶液(凝固浴)中にノズルを通じて押し出し凝固させるという湿式紡糸法によって製造される。この紡糸工程において、凝固浴の有機溶剤濃度、温度共に高くなるほど、得られる繊維は疎な構造になり、ダル感が大きくなり、染料吸尽速度も大きくなる、すなわち染色性が向上することが判った。従って、凝固浴の有機溶剤濃度と温度を、目的とするダル感および求められる染色性に応じて調整してやればよい。特に、スルホン酸基含有モノマーが0.7重量%以上含有するアクリル系重合体を溶解した紡糸原液を用いると、凝固浴の有機溶剤濃度及び温度により繊維の構造が大幅に変化し、凝固浴の有機溶剤濃度と温度を特定の条件に設定すると、不連続なボイドが発現し、光が透過しにくくなると共に、水洗時には膨潤していた繊維が乾燥時に緻密になる際、繊維表面に縦皺が形成されるため繊維表面で光を散乱するようになり、繊維にダル感が付与される。また、繊維にボイドが出来、疎な構造になることにより、染料の繊維内部への拡散速度が速くなり染色吸尽速度、染料吸尽量が増し染色性が向上すると考えられる。これは、抜染剤の拡散速度についても同様であり、本発明のアクリル系合成繊維では抜染の加工性も向上する。また、従来用いられていた酢酸セルロース等の有機化合物や金属化合物等のダル化剤を削減することもできるので、結果、発色性が向上する。
【0022】
不連続なボイドが発現する凝固浴条件は、スルホン酸基含有モノマーの量や用いられる有機溶剤の種類などによって、やや異なるが、一般的に凝固浴の有機溶剤濃度を高くするほど、また温度を高くするほど、得られる繊維は、ボイドが多く、より疎な構造になる。本発明において使用される有機溶剤としては、アセトン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等が挙げられ、特に限定されないが、以下、アセトンを用いる場合の本発明の好ましい製造方法について説明する。
【0023】
スルホン酸基含有モノマーを0.7重量%以上含有するアクリル系重合体を溶解した紡糸原液を、アセトンと水からなる凝固浴中に湿式紡糸する場合、径が0.2〜10μmの不連続なボイドが発生する条件は、スルホン酸基含有モノマー量によって異なり、図1のような条件であることが判った。すなわち、下記式、
T≧−0.25M−40S+68
(T:凝固浴温度(℃)、M:凝固浴のアセトン濃度(%)、S:スルホン酸基含有モノマー量(重量%))
を満たす凝固浴条件下で紡糸すれば、本発明のアクリル系合成繊維を得ることができる。もちろんアセトン以外の有機溶剤を使用する場合は、別途好ましいボイド構造が発現するような凝固浴条件で紡糸すればよい。
【0024】
さらに本発明では、驚くべきことに、上記好ましい凝固浴条件で紡糸を行った場合、あとの工程における脱溶剤速度および乾燥速度が格段に向上するという別の効果も有することを見出した。具体的には、スルホン酸基含有モノマーを0.7重量%以上含有するアクリル系重合体を溶解した紡糸原液を、凝固浴の有機溶剤濃度が20%以上、凝固浴の温度が20℃以上の条件で紡糸した場合、得られる繊維のスキン層が薄くなることによって、上記効果を奏するようになると考えられる。
【0025】
本発明の製造方法において、凝固浴以降の工程については、通常のアクリル系合成繊維の湿式紡糸と同様な方法で行えば良く、例えば、数段の浴槽を通し、順次延伸、水洗、乾燥、熱処理を行う。これら工程における諸条件は特に限定されず、一般的な条件が設定しうるが、特に脱溶剤速度をさらに向上させたい場合には、紡糸後の繊維を65℃以上、より好ましくは70℃以上の温度で水洗してやればよく、その場合、その後の乾燥工程における乾燥速度を従来の半分以下とすることができる。
【0026】
また、本発明において、その繊維断面形状は、丸、繭型、扁平、楕円その他いかなる断面形状においても効果がある。
【0027】
以上、説明した方法によって、繊維断面において、径が0.2〜10μmの不連続なボイドを有する本発明のアクリル系合成繊維がることができる。
【0028】
【実施例】
以下に実施例を示し、本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。尚、実施例の記載に先立って、各種分析、評価法について説明する。
【0029】
(繊維断面におけるボイドの径の測定方法、および任意の繊維断面において径が0.2〜10μmのボイドが存在する割合)
100本の繊維断面を走査型電子顕微鏡にて観察し、径が0.2〜10μmのボイドを有する繊維断面の本数を数え、(ボイドを有する本数)/100にて存在する割合を算出する。
【0030】
(染料吸尽 SF60)
繊維1gに対し、浴比1:70の割合でマラカイトグリーンの5%omf溶液を用いて、100℃で60分間染色し、染色残液を618nmで吸光度測定し、マラカイトグリーンの吸尽量(%omf)を求める。(マラカイトグリーンの吸尽量)×(400/463)にてSF60を算出する。
【0031】
(ダル感)
繊維の光沢、ダル感を外観により評価する。評価基準は以下の様である。
【0032】
[ブライト] 光沢が高く、ダル感が全く無い。
【0033】
[セミブライト]光沢がやや弱くなり、ややダル感がある。
【0034】
[セミダル] 光沢がやや無くなり、ダル感がある。
【0035】
[ダル] 光沢が無く、ダル感が強い。
【0036】
[フルダル] 光沢がほとんど無く、ダル感が非常に強い。
【0037】
(実施例1)
アクリロニトリル(AN)/塩化ビニル(VCl)/スチレンスルホン酸ナトリウム(3S)=50/49.3/0.7からなるアクリル系共重合体を重合体濃度28%になるようにアセトンに溶解して得られた紡糸原液を、口径0.1mm、ホール数300のノズルを通して、アセトン/水=40/60、30℃の凝固浴に紡出し、85℃の熱水中にて3倍に延伸し、さらに乾燥後、130℃にて2倍延伸し、さらに145℃にて熱処理を行い、3dtexの繊維を得た。評価結果を表1に示した。
【0038】
(実施例2)
アクリロニトリル(AN)/塩化ビニル(VCl)/スチレンスルホン酸ナトリウム(3S)=50/49/1からなるアクリル系共重合体を重合体濃度28%になるようにアセトンに溶解して得られた紡糸原液(紡糸原液A)を、口径0.1mm、ホール数300のノズルを通して、アセトン/水=30/70、25℃の凝固浴に紡出し、実施例1と同じ条件で延伸、熱処理を行い、3dtexの繊維を得た。評価結果を表1に示した。
【0039】
(実施例3)
実施例2の紡糸原液Aを用いて、凝固浴をアセトン/水=35/65、30℃とする以外は、実施例2と同様な方法で、3dtexの繊維を得た。評価結果を表1に示した。
【0040】
(実施例4)
実施例2の紡糸原液Aを用いて、凝固浴をアセトン/水=40/60、30℃とする以外は、実施例2と同様な方法で、3dtexの繊維を得た。評価結果を表1に示した。
【0041】
(実施例5)
アクリロニトリル(AN)/塩化ビニル(VCl)/スチレンスルホン酸ナトリウム(3S)=50/48.5/1.5からなるアクリル系共重合体を重合体濃度28%になるようにアセトンに溶解して得られた紡糸原液を、口径0.1mm、ホール数300のノズルを通して、アセトン/水=25/75、25℃の凝固浴に紡出し、実施例1と同じで延伸、熱処理を行い、3dtexの繊維を得た。評価結果を表1に示した。
【0042】
(比較例1)
アクリロニトリル(AN)/塩化ビニル(VCl)/スチレンスルホン酸ナトリウム(3S)=50/49.5/0.5からなるアクリル系共重合体を重合体濃度28%になるようにアセトンに溶解して得られた紡糸原液を、口径0.1mm、ホール数300のノズルを通して、アセトン/水=40/60、30℃の凝固浴に紡出し、実施例1と同じで延伸、熱処理を行い、3dtexの繊維を得た。評価結果を表1に示した。
【0043】
(比較例2)
実施例2の紡糸原液Aを用いて、凝固浴条件をアセトン/水=20/80、20℃とする以外は、実施例2と同様な方法で、3dtexの繊維を得た。評価結果を表1に示した。
【0044】
【表1】
【0045】
以上実施例と比較例の結果が示すとおり、スルホン酸基含有モノマーを0.7重量%以上含有するアクリル系重合体を溶解した紡糸原液を、アセトン水溶剤中に特定の条件(T≧−0.25M−40S+68)で湿式紡糸して得られる実施例のアクリル系合成繊維は、繊維断面における径が0.2〜10μmの不連続なボイドを有しており、ダル感及び染色性ともに良好な結果を示した。またこれら実施例のアクリル系合成繊維は、後の脱溶剤及び乾燥工程において、その脱溶剤速度および乾燥速度が従来より格段に向上するということが確認できた。
【0046】
【発明の効果】
本発明のアクリル系合成繊維は、比較的コストを抑えながらも飛躍的に染色性を向上させることが出来、また、繊維の光沢を抑えることが出来るものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】アセトン紡糸において、繊維断面における径が0.2〜10μmの不連続なボイドを有するアクリル系合成繊維が得られる、凝固浴の有機溶剤濃度と温度条件。
【発明の属する技術分野】
本発明は、主にパイル用途に適した、染色性が向上し光沢が抑えられたアクリル系合成繊維及びその製造法に関する。
【0002】
【従来の技術】
アクリル系合成繊維は、そのソフト感、嵩高さ等の風合及び加工の容易さから、ボアー、シール、フリース、ハイパイル等の分野に広く使用されている。パイル用のアクリル系合成繊維の求められる品質の中に、染色性が優れていること、すなわち、染料吸尽速度が速く、発色性が高く、抜染の加工性が容易であること、及び光沢が抑えられていること、いわゆるダル感を持つことが挙げられる。
【0003】
アクリル系合成繊維の染色性の向上には一般的に、スルホン酸基含有モノマー等の易染性モノマーの含有率を向上させることにより行われてきた(特許文献1)。しかしながら、特許文献1はもともと染色性がそれほど悪くないアクリロニトリル含有量の高いアクリル合成繊維に関するものであり、この方法を他の共重合成分を多く含むモダアクリル系合成繊維に応用した場合には、染色性の向上に限界があり、また、スルホン酸基含有モノマーはコストが高いという欠点があった。
【0004】
また、繊維にダル感を持たせる方法として、繊維にセルロース誘導体や無機化合物を添加する方法がある(特許文献2〜4)。しかしながら、セルロース誘導体や無機化合物は一般的にコストが高く、また、可紡性を低下させるという欠点があった。
【0005】
一方、上記アクリル系合成繊維の製造法としては、乾湿式紡糸、無機溶剤を使用する湿式紡糸と共に、有機溶剤を使用する湿式紡糸も一般的に実施されている。このとき用いられる有機溶剤としては、アセトン、DMF,DMAc等が用いられるが、湿式紡糸においては、有機溶剤をいかに速く除去するか(脱溶剤)及び水洗出のゲル糸条をいかに速く乾燥させるかが、紡糸設備を短縮し、ユーテイリテイーコストを低減させるポイントである。
【0006】
従来から、脱溶剤を促進するために、水洗浴の温度を高くしたり、カスケード水洗方式が用いられたりしている。これらの方法によりある程度の脱溶剤促進効果は得られるものの、脱溶剤速度は繊維構造によるところが大きく、十分な効果は得られていない。乾燥前の湿潤状態にある繊維をスチーム雰囲気中に導入し溶媒を除去する方法があるが(特許文献5)、通常の水洗浴とは別にスチーム処理装置が必要であり設備の短縮化は出来ない。また、乾燥速度は水洗出のゲル糸条に含まれる有機溶剤濃度と相関が高く、有機溶剤含有率を低下させることが乾燥速度を上げる手段であるが、通常の手段では有機溶剤含有率を十分に低下させることが出来ず、あまり乾燥速度を上げることは出来ないという課題もあった。
【0007】
【特許文献1】
特開平8−325833
【0008】
【特許文献2】
特公昭56−44163
【0009】
【特許文献3】
特公昭56−44164
【0010】
【特許文献4】
特開平2−53912
【0011】
【特許文献5】
特開2001−279518
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明では、上記従来技術の問題点を解消し、スルホン酸基含有モノマーの含有量が比較的少なくても良好な染色性を示し、かつダル感が付与され、かつコスト的にも有利なアクリル系合成繊維を得ることを目的としている。さらに、従来より課題であった、水洗工程における脱溶剤速度と乾燥工程における乾燥速度の向上も目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために鋭意研究の結果、スルホン酸基含有モノマーが0.7重量%以上含有するアクリル系重合体を溶解した紡糸原液を用いて、凝固浴の有機溶剤濃度及び温度をある条件に設定して紡糸すると、不連続なボイドが発現し、その結果、繊維にダル感が付与されると同時に染色性が向上することを見出した。さらに、上記紡糸条件を設定することによって、驚くべきことに水洗工程における脱溶剤速度と乾燥工程における乾燥速度の向上も図れることを見出し、本発明を完成させた。
【0014】
すなわち本発明は、スルホン酸基含有モノマーを0.7重量%以上含有するアクリル系重合体からなり、繊維断面における径が0.2〜10μmの不連続なボイドを有するアクリル系合成繊維に関する。好ましくは、前記ボイドの繊維中に存在する割合が、20%以上である上記アクリル系合成繊維に関する。
【0015】
また、本発明は、スルホン酸基含有モノマーを0.7重量%以上含有するアクリル系重合体を含有する紡糸原液を、アセトン水溶剤中に下記の条件で湿式紡糸することを特徴とするアクリル系合成繊維の製造方法に関する。
【0016】
T≧−0.25M−40S+68
(T:凝固浴温度(℃)、M:凝固浴のアセトン濃度(%)、S:スルホン酸基含有モノマー量(重量%))
さらに本発明は、紡糸後の繊維を65℃以上の温度で水洗することを特徴とする上記アクリル系合成繊維の製造方法に関する。
【0017】
【発明の実施の形態】
本発明に使用されるアクリル系重合体は、スルホン酸基含有モノマーを0.7重量%以上含有しており、それ以外の成分としては、アクリロニトリルを40重量%以上と他のビニル系モノマーを59.3重量%以下からなるものである。スルホン酸基含有モノマーが0.7重量%より少ないと、凝固浴にてボイドのある構造を取りにくくなり、ダル感を発現することが難しい。また、スルホン酸基含有モノマーの量が多くなるほど、疎な構造になり易くなり、ダル感が発現しやすくなる。またアクリロニトリルの上限値及び他のビニル系モノマーの下限値については特に限定されるものではないが、従来、染色性の良くないことが課題であった他のビニル系モノマーを多く含むアクリルニトリル共重合体からなるモダアクリル系合成繊維(アクリロニトリル含有量が60重量%以下)においても、良好な染色性が得られるという本発明の目的が達成できる。
【0018】
前記スルホン酸基モノマーとしては、特に限定されるものではないが、アリルスルホン酸、メタリルスルホン酸、p−スチレンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸及びこれらのアルカリ金属塩等が挙げられる。また、ビニル系モノマーとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル類、塩化ビニル、臭化ビニル、塩化ビニリデン等のハロゲン化ビニル、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸等の酸類及びそれらの塩類、マレイン酸イミド、フェニルマレイミド、(メタ)アクリルアミド、スチレン、α−メチルスチレン、酢酸ビニル等が挙げられる。
【0019】
本発明のアクリル系合成繊維は、上記アクリル系共重合体からなるものであり、繊維の長さ方向に対して不連続な、いくつかのボイド(空隙)を有している繊維である。ここでボイドが繊維の長さ方向に対して不連続であるというのは、例えばある1本の繊維を任意の位置で繊維断面方向に切断したとき、ボイドが見られる部分と見られない部分が存在するということである。その点で一般の中空繊維とは異なる。本発明において、繊維断面におけるボイドの径の大きさは0.2〜10μmの範囲である。但し、この大きさの範囲のボイドが存在すれば、その他に0.2μm以下のボイドが多少併せて存在しても構わない。ここでいうボイドの径の値は、ボイドが円形である場合はその直径、楕円形や不定形である場合はその平均径の値である。ボイドの径が、0.2μm以下でも染色性はある程度向上するが、ダル感が発現せず、10μm以上になると繊維の強度が低下する。本発明のアクリル系合成繊維における上記ボイドの存在する割合(確率)、すなわち、任意の繊維断面において、径が0.2〜10μmのボイドがみられる繊維断面が存在する割合は、2%以上が好ましく、20%以上がより好ましい。一般に、ボイドの存在割合が2%以上でダル感を有し始め、その割合が大きくなるほど、ダル感が大きくなる。また、同一繊維断面上にボイドが2個以上存在しても構わない。
【0020】
本発明は、上記のような繊維の構造によってダル感を発現するものであり、ダル感を付与するために従来用いられる有機化合物及び無機化合物が無くてもダル感があるが、さらにダル感を増すために、これら化合物を添加することはなんら差し支えない。ダル感を付与するために用いられる有機化合物としては、酢酸セルロース、酢酸ビニル等、無機化合物としては酸化チタン、酸化アンチモン、酸化亜鉛、水酸化アルミニウム、炭酸カルシウム等が挙げられる。これら有機化合物又は無機化合物は、アクリル系重合体もしくはアクリル系重合体を含有する紡糸原液に添加されて使用される。
【0021】
本発明のアクリル系合成繊維は、上述したアクリル系重合体中のスルホン酸基含有モノマー含有量と特定のボイドを有するという繊維構造を満たすものであれば、染色性の向上とダル感の付与という効果を奏するものであり、その製造方法は限定されない。一方、本発明では、凝固浴の有機溶剤濃度及び温度により、上記ボイドを有するように繊維構造の制御が可能であることも見いだした。一般に、アクリル系合成繊維は原料となるアクリル系重合体を有機溶剤や無機溶剤等に溶解して紡糸原液とし、その紡糸原液を有機溶剤や無機溶剤を含む水溶液(凝固浴)中にノズルを通じて押し出し凝固させるという湿式紡糸法によって製造される。この紡糸工程において、凝固浴の有機溶剤濃度、温度共に高くなるほど、得られる繊維は疎な構造になり、ダル感が大きくなり、染料吸尽速度も大きくなる、すなわち染色性が向上することが判った。従って、凝固浴の有機溶剤濃度と温度を、目的とするダル感および求められる染色性に応じて調整してやればよい。特に、スルホン酸基含有モノマーが0.7重量%以上含有するアクリル系重合体を溶解した紡糸原液を用いると、凝固浴の有機溶剤濃度及び温度により繊維の構造が大幅に変化し、凝固浴の有機溶剤濃度と温度を特定の条件に設定すると、不連続なボイドが発現し、光が透過しにくくなると共に、水洗時には膨潤していた繊維が乾燥時に緻密になる際、繊維表面に縦皺が形成されるため繊維表面で光を散乱するようになり、繊維にダル感が付与される。また、繊維にボイドが出来、疎な構造になることにより、染料の繊維内部への拡散速度が速くなり染色吸尽速度、染料吸尽量が増し染色性が向上すると考えられる。これは、抜染剤の拡散速度についても同様であり、本発明のアクリル系合成繊維では抜染の加工性も向上する。また、従来用いられていた酢酸セルロース等の有機化合物や金属化合物等のダル化剤を削減することもできるので、結果、発色性が向上する。
【0022】
不連続なボイドが発現する凝固浴条件は、スルホン酸基含有モノマーの量や用いられる有機溶剤の種類などによって、やや異なるが、一般的に凝固浴の有機溶剤濃度を高くするほど、また温度を高くするほど、得られる繊維は、ボイドが多く、より疎な構造になる。本発明において使用される有機溶剤としては、アセトン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等が挙げられ、特に限定されないが、以下、アセトンを用いる場合の本発明の好ましい製造方法について説明する。
【0023】
スルホン酸基含有モノマーを0.7重量%以上含有するアクリル系重合体を溶解した紡糸原液を、アセトンと水からなる凝固浴中に湿式紡糸する場合、径が0.2〜10μmの不連続なボイドが発生する条件は、スルホン酸基含有モノマー量によって異なり、図1のような条件であることが判った。すなわち、下記式、
T≧−0.25M−40S+68
(T:凝固浴温度(℃)、M:凝固浴のアセトン濃度(%)、S:スルホン酸基含有モノマー量(重量%))
を満たす凝固浴条件下で紡糸すれば、本発明のアクリル系合成繊維を得ることができる。もちろんアセトン以外の有機溶剤を使用する場合は、別途好ましいボイド構造が発現するような凝固浴条件で紡糸すればよい。
【0024】
さらに本発明では、驚くべきことに、上記好ましい凝固浴条件で紡糸を行った場合、あとの工程における脱溶剤速度および乾燥速度が格段に向上するという別の効果も有することを見出した。具体的には、スルホン酸基含有モノマーを0.7重量%以上含有するアクリル系重合体を溶解した紡糸原液を、凝固浴の有機溶剤濃度が20%以上、凝固浴の温度が20℃以上の条件で紡糸した場合、得られる繊維のスキン層が薄くなることによって、上記効果を奏するようになると考えられる。
【0025】
本発明の製造方法において、凝固浴以降の工程については、通常のアクリル系合成繊維の湿式紡糸と同様な方法で行えば良く、例えば、数段の浴槽を通し、順次延伸、水洗、乾燥、熱処理を行う。これら工程における諸条件は特に限定されず、一般的な条件が設定しうるが、特に脱溶剤速度をさらに向上させたい場合には、紡糸後の繊維を65℃以上、より好ましくは70℃以上の温度で水洗してやればよく、その場合、その後の乾燥工程における乾燥速度を従来の半分以下とすることができる。
【0026】
また、本発明において、その繊維断面形状は、丸、繭型、扁平、楕円その他いかなる断面形状においても効果がある。
【0027】
以上、説明した方法によって、繊維断面において、径が0.2〜10μmの不連続なボイドを有する本発明のアクリル系合成繊維がることができる。
【0028】
【実施例】
以下に実施例を示し、本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。尚、実施例の記載に先立って、各種分析、評価法について説明する。
【0029】
(繊維断面におけるボイドの径の測定方法、および任意の繊維断面において径が0.2〜10μmのボイドが存在する割合)
100本の繊維断面を走査型電子顕微鏡にて観察し、径が0.2〜10μmのボイドを有する繊維断面の本数を数え、(ボイドを有する本数)/100にて存在する割合を算出する。
【0030】
(染料吸尽 SF60)
繊維1gに対し、浴比1:70の割合でマラカイトグリーンの5%omf溶液を用いて、100℃で60分間染色し、染色残液を618nmで吸光度測定し、マラカイトグリーンの吸尽量(%omf)を求める。(マラカイトグリーンの吸尽量)×(400/463)にてSF60を算出する。
【0031】
(ダル感)
繊維の光沢、ダル感を外観により評価する。評価基準は以下の様である。
【0032】
[ブライト] 光沢が高く、ダル感が全く無い。
【0033】
[セミブライト]光沢がやや弱くなり、ややダル感がある。
【0034】
[セミダル] 光沢がやや無くなり、ダル感がある。
【0035】
[ダル] 光沢が無く、ダル感が強い。
【0036】
[フルダル] 光沢がほとんど無く、ダル感が非常に強い。
【0037】
(実施例1)
アクリロニトリル(AN)/塩化ビニル(VCl)/スチレンスルホン酸ナトリウム(3S)=50/49.3/0.7からなるアクリル系共重合体を重合体濃度28%になるようにアセトンに溶解して得られた紡糸原液を、口径0.1mm、ホール数300のノズルを通して、アセトン/水=40/60、30℃の凝固浴に紡出し、85℃の熱水中にて3倍に延伸し、さらに乾燥後、130℃にて2倍延伸し、さらに145℃にて熱処理を行い、3dtexの繊維を得た。評価結果を表1に示した。
【0038】
(実施例2)
アクリロニトリル(AN)/塩化ビニル(VCl)/スチレンスルホン酸ナトリウム(3S)=50/49/1からなるアクリル系共重合体を重合体濃度28%になるようにアセトンに溶解して得られた紡糸原液(紡糸原液A)を、口径0.1mm、ホール数300のノズルを通して、アセトン/水=30/70、25℃の凝固浴に紡出し、実施例1と同じ条件で延伸、熱処理を行い、3dtexの繊維を得た。評価結果を表1に示した。
【0039】
(実施例3)
実施例2の紡糸原液Aを用いて、凝固浴をアセトン/水=35/65、30℃とする以外は、実施例2と同様な方法で、3dtexの繊維を得た。評価結果を表1に示した。
【0040】
(実施例4)
実施例2の紡糸原液Aを用いて、凝固浴をアセトン/水=40/60、30℃とする以外は、実施例2と同様な方法で、3dtexの繊維を得た。評価結果を表1に示した。
【0041】
(実施例5)
アクリロニトリル(AN)/塩化ビニル(VCl)/スチレンスルホン酸ナトリウム(3S)=50/48.5/1.5からなるアクリル系共重合体を重合体濃度28%になるようにアセトンに溶解して得られた紡糸原液を、口径0.1mm、ホール数300のノズルを通して、アセトン/水=25/75、25℃の凝固浴に紡出し、実施例1と同じで延伸、熱処理を行い、3dtexの繊維を得た。評価結果を表1に示した。
【0042】
(比較例1)
アクリロニトリル(AN)/塩化ビニル(VCl)/スチレンスルホン酸ナトリウム(3S)=50/49.5/0.5からなるアクリル系共重合体を重合体濃度28%になるようにアセトンに溶解して得られた紡糸原液を、口径0.1mm、ホール数300のノズルを通して、アセトン/水=40/60、30℃の凝固浴に紡出し、実施例1と同じで延伸、熱処理を行い、3dtexの繊維を得た。評価結果を表1に示した。
【0043】
(比較例2)
実施例2の紡糸原液Aを用いて、凝固浴条件をアセトン/水=20/80、20℃とする以外は、実施例2と同様な方法で、3dtexの繊維を得た。評価結果を表1に示した。
【0044】
【表1】
【0045】
以上実施例と比較例の結果が示すとおり、スルホン酸基含有モノマーを0.7重量%以上含有するアクリル系重合体を溶解した紡糸原液を、アセトン水溶剤中に特定の条件(T≧−0.25M−40S+68)で湿式紡糸して得られる実施例のアクリル系合成繊維は、繊維断面における径が0.2〜10μmの不連続なボイドを有しており、ダル感及び染色性ともに良好な結果を示した。またこれら実施例のアクリル系合成繊維は、後の脱溶剤及び乾燥工程において、その脱溶剤速度および乾燥速度が従来より格段に向上するということが確認できた。
【0046】
【発明の効果】
本発明のアクリル系合成繊維は、比較的コストを抑えながらも飛躍的に染色性を向上させることが出来、また、繊維の光沢を抑えることが出来るものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】アセトン紡糸において、繊維断面における径が0.2〜10μmの不連続なボイドを有するアクリル系合成繊維が得られる、凝固浴の有機溶剤濃度と温度条件。
Claims (4)
- スルホン酸基含有モノマーを0.7重量%以上含有するアクリル系重合体からなり、繊維断面における径が0.2〜10μmの不連続なボイドを有するアクリル系合成繊維。
- 前記ボイドの繊維中に存在する割合が、20%以上である請求項1記載のアクリル系合成繊維。
- スルホン酸基含有モノマーを0.7重量%以上含有するアクリル系重合体を溶解した紡糸原液を、アセトン水溶剤中に下記の条件で湿式紡糸することを特徴とするアクリル系合成繊維の製造方法。
T≧−0.25M−40S+68
(T:凝固浴温度(℃)、M:凝固浴のアセトン濃度(%)、S:スルホン酸基含有モノマー量(重量%)) - さらに、紡糸後の繊維を65℃以上の温度で水洗することを特徴とする請求項3記載のアクリル系合成繊維の製造方法。
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JP2003133137A JP2004332179A (ja) | 2003-05-12 | 2003-05-12 | アクリル系合成繊維及びその製造方法 |
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CN103806118A (zh) * | 2014-03-03 | 2014-05-21 | 上海正家牛奶丝科技有限公司 | 一种含喹啉铜的高吸湿腈纶纤维及其制备方法 |
WO2019189248A1 (ja) * | 2018-03-26 | 2019-10-03 | Spiber株式会社 | タンパク質成形体の製造方法及び目的タンパク質成形体 |
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