JP4332690B2 - ゴム組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、共役ジエン系重合体にシリカを配合したゴム組成物に関し、さらに詳細には、新規な希土類元素化合物触媒を用いて、共役ジエン系化合物を重合し、次いで、重合された直後の重合体に、特定の官能基を有する化合物(変性剤)を反応させることにより、シリカと相互作用し、シリカの分散性が良好で、かつ耐摩耗性、機械的特性、低発熱性などの物性に優れたシリカとのゴム組成物が得られる共役ジエン系重合体にシリカを配合したゴム組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
共役ジエン類の重合触媒については、従来より数多くの提案がなされており、工業的に極めて重要な役割を担っている。特に、熱的および機械的特性において、高性能化された共役ジエン系重合体を得る目的で、高いシス−1,4−結合含量を与える数多くの重合触媒が研究・開発されている。例えば、ニッケル、コバルト、チタンなどの遷移金属化合物を主成分とする複合触媒系は公知である。そして、その中のいくつかは、既にブタジエン、イソプレンなどの重合触媒として工業的に広く用いられている〔Ind.Eng.Chem.,48,784(1956)、特公昭37−8198号公報参照〕。
【0003】
一方、さらに高いシス−1,4−結合含量および優れた重合活性を達成すべく、希土類金属化合物と第I〜III族の有機金属化合物からなる複合触媒系が研究開発され、高立体特異性重合の研究が盛んに行なわれるようになった。特公昭47−14729号公報には、セリウムオクタノエートなどの希土類金属化合物とジイソブチルアルミニウムハイドライドなどのアルキルアルミニウムハイドライドやトリアルキルアルミニウムとエチルアルミニウムジクロライドなどのアルミニウムハイドライドからなる触媒系が示されている。特に、同公報には、触媒をブタジエンの存在下で熟成することにより、触媒活性が増加することが示されている。
【0004】
また、特公昭62−1404号公報、特公昭63−64444号公報、特公平1−16244号公報には、希土類元素の重合溶媒への化合物の溶解性を高めることにより、触媒活性を高める方法が提案されている。さらに、特公平4−2601号公報には、希土類金属化合物、トリアルキルアルミニウムまたはアルミニウムハイドライドおよび有機ハロゲン誘導体からなる触媒系が、1,3−ブタジエンの重合に従来より高い活性を示すことが示されている。
しかしながら、従来の希土類金属化合物を含む触媒系によって得られる重合体は、分子量分布が広くなり、耐摩耗性や反撥弾性率が充分に改良されるものではなかった。
【0005】
さらに、特開平6−211916号公報、特開平6−306113号公報、特開平8−73515号公報では、ネオジム化合物にメチルアルモキサンを使用した触媒系を用いると、高い重合活性を示し、かつ狭い分子量分布を有する共役ジエン系重合体が得られることが報告されている。
しかしながら、上記の重合法で充分な触媒活性を保持し、かつ分子量分布の狭い重合体を得るためには、従来の有機アルミニウム化合物を用いた触媒系に比べて多量のアルモキサンを使用する必要がある。しかしながら、アルモキサンの価格は、通常の有機アルミニウム化合物に比べて高価であること、またコールドフローが大きく、保存安定性などに問題があり、実用的には問題がある。
【0006】
これらの問題に対して、特開平10−306113号公報、特開平10−35633号公報では、メチルアルモキサンを使用した触媒系で重合した共役ジエン系重合体をヘテロ三員環化合物やハロゲン化金属化合物、金属カルボン酸塩などで変性し、コールドフローを抑えることが報告されている。
【0007】
ところで、近年、省資源や環境対策などが重視されるにつれて、自動車の低燃費化に対する要求はますます厳しくなり、自動車タイヤについても、転がり抵抗を小さくすることにより、低燃費化に寄与することが求められている。タイヤの転がり抵抗を小さくするには、タイヤ用ゴム材料として、一般に発熱性の低い加硫ゴムを与えることができるゴム材料を使用する。
従来より、タイヤ用ゴム材料として、ジエン系ゴムに補強剤として、カーボンブラックに代えてシリカを配合したゴム組成物を用いることにより、発熱性を低めることが提案されている。
しかしながら、前述した共役ジエン系重合体を用いて、シリカとのゴム組成物を調製した場合、これらの重合体(ゴム)とシリカとの相互作用が充分ではなく、得られるゴム組成物中へのシリカの分散性が劣り、得られるゴム架橋物の耐摩耗性、機械的特性、低発熱性などの物性が満足できるレベルに至っていない。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、高シス−1,4−結合含量、低1,2−ビニル結合含量で、分子量分布が狭く、かつ分子中に特定の官能基を有する共役ジエン系重合体が、シリカとの相互作用に優れ、得られるゴム組成物の架橋物の耐摩耗性、機械的特性、低発熱性などの物性に優れることを見出し、本発明に到達したものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、シス−1,4−結合含量が85%以上、1,2−ビニル結合含量が2.0%以下、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が3.5以下であり、かつ分子末端にエポキシ基および水酸基の群から選ばれた少なくとも1種の官能基を有する共役ジエン系重合体10〜100重量%および他のジエン系重合体もしくは天然ゴム90〜0重量%からなるゴム成分100重量部に対し、シリカ30〜100重量部を配合したゴム組成物に関する。
ここで、上記共役ジエン系重合体は、共役ジエン系化合物を、下記(a)〜(c)成分を主成分とする触媒を用いて重合したのち、引き続き、下記(d)〜(e)成分の群から選ばれた少なくとも1種の化合物を反応させたものであることが好ましい。
(a)成分;周期律表の原子番号57〜71にあたる希土類元素含有化合物、または、これらの化合物とルイス塩基との反応物
(b)成分;アルモキサンおよび/またはAlR1R2R3(式中、R1およびR2は同一または異なり、炭素数1〜10の炭化水素基または水素原子、R3は炭素数1〜10の炭化水素基であり、ただし、R3は上記R1またはR2と同一または異なっていてもよい)に対応する有機アルミニウム化合物
(c)成分;ハロゲン含有化合物(ただし、(a)成分を除く)
(d)成分;水酸基含有ビニル系化合物
(e)成分;エポキシ化合物
上記(c)ハロゲン含有化合物は、金属ハロゲン化物とルイス塩基との反応物であることが好ましい。
また、上記(c)成分を構成する、金属ハロゲン化物は、12族の金属ハロゲン化物であり、ルイス塩基がリン酸エステル、ジケトン化合物、カルボン酸およびアルコールの群から選ばれた少なくとも1種であることが好ましい。
さらに、上記ゴム組成物は、ゴム成分100重量部に対し、さらにシランカップリング剤1〜20重量部を配合したものが好ましい。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明の共役ジエン系重合体は、シス−1,4−結合含量が85%以上、好ましくは90%以上、1,2−ビニル結合含量が2.0%以下、好ましくは1.5%以下、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が5以下、好ましくは4以下であり、かつ分子中にエポキシ基および水酸基の群から選ばれた少なくとも1種の官能基を有する。
シス−1,4−結合含量が90%未満では、耐摩耗性が劣る。また、1,2−ビニル結合含量が2.0%を超えると、耐久性に劣る。さらに、Mw/Mnが5を超えると、耐摩耗性に劣る。
さらに、本発明の共役ジエン系重合体は、分子中にエポキシ基および水酸基の群から選ばれた少なくとも1種の官能基を有する必要がある。これらの官能基を有さないと、シリカとの相互作用が不充分となり、シリカの分散性が低下する。
【0011】
なお、本発明の共役ジエン系重合体の100℃におけるムーニー粘度(ML1+4 ,100℃)は、10〜150の範囲にあることが好ましい。10未満では、加硫後の耐摩耗性などが劣り、一方、150を超えると、混練り時の加工性が劣る。
また、本発明の共役ジエン系重合体のポリスチレン換算の重量平均分子量は、通常、10万〜150万、好ましくは15万〜100万である。これらの範囲外では、加工性および加硫ゴムの物性が劣り好ましくない。
【0012】
以上の本発明の共役ジエン系重合体は、共役ジエン系化合物を、上記(a)〜(c)成分を主成分とする触媒を用いて重合したのち、引き続き、上記(d)〜(e)成分の群から選ばれた少なくとも1種の化合物を反応させることによって得られる。
【0013】
本発明の触媒に使用される(a)成分としては、周期律表の原子番号57〜71にあたる希土類元素を含む化合物(希土類元素含有化合物)またはこれらの化合物とルイス塩基との反応物である。好ましい希土類元素は、ネオジム、プラセオジウム、セリウム、ランタン、ガドリニウムなど、または、これらの混合物であり、さらに好ましくは、ネオジムである。
本発明の希土類元素含有化合物は、カルボン酸塩、アルコキサイド、β−ジケトン錯体、リン酸塩または亜リン酸塩であり、この中でも、カルボン酸塩またはリン酸塩が好ましく、特にカルボン酸塩が好ましい。
【0014】
希土類元素のカルボン酸塩としては、一般式(R4 −CO2 )3 M(式中、Mは周期律表の原子番号57〜71にあたる希土類元素である)で表され、R4 は炭素数1〜20の炭化水素基を示し、好ましくは飽和または不飽和のアルキル基であり、かつ直鎖状、分岐状または環状であり、カルボキシル基は1級、2級または3級の炭素原子に結合している。
具体的には、オクタン酸、2−エチルヘキサン酸、オレイン酸、ステアリン酸、安息香酸、ナフテン酸、バーサティック酸〔シェル化学(株)製の商品名であって、カルボキシル基が3級炭素原子に結合しているカルボン酸である〕などの塩が挙げられ、2−エチルヘキサン酸、ナフテン酸、バーサティック酸の塩が好ましい。
【0015】
希土類元素のアルコキサイドは、一般式(R5O)3M(R5は炭素数1〜20の炭化水素基を示し、Mは周期律表の原子番号57〜71にあたる希土類元素である)であり、R5Oで表される基の例としては、2−エチル−ヘキシルアルコキシ基、オレイルアルコキシ基、ステアリルアルコキシ基、フェノキシ基、ベンジルアルコキシ基などが挙げられる。この中でも、好ましいものは、2−エチルヘキシルアルコキシ基、ベンジルアルコキシ基である。
【0016】
希土類元素のβ−ジケトン錯体としては、希土類元素の、アセチルアセトン、ベンゾイルアセトン、プロピオニトリルアセトン、バレリルアセトン、エチルアセチルアセトン錯体などが挙げられる。この中でも好ましいものは、アセチルアセトン錯体、エチルアセチルアセトン錯体である。
【0017】
希土類元素の、リン酸塩または亜リン酸塩としては、希土類元素の、リン酸ビス(2−エチルヘキシル)、リン酸ビス(1−メチルヘプチル)、リン酸ビス(p−ノニルフェニル)、リン酸ビス(ポリエチレングリコール−p−ノニルフェニル)、リン酸(1−メチルヘプチル)(2−エチルヘキシル)、リン酸(2−エチルヘキシル)(p−ノニルフェニル)、2−エチルヘキシルホスホン酸モノ−2−エチルヘキシル、2−エチルヘキシルホスホン酸モノ−p−ノニルフェニル、ビス(2−エチルヘキシル)ホスフィン酸、ビス(1−メチルヘプチル)ホスフィン酸、ビス(p−ノニルフェニル)ホスフィン酸、(1−メチルヘプチル)(2−エチルヘキシル)ホスフィン酸、(2−エチルヘキシル)(p−ノニルフェニル)ホスフィン酸などの塩が挙げられ、好ましい例としては、リン酸ビス(2−エチルヘキシル)、リン酸ビス(1−メチルヘプチル)、2−エチルヘキシルホスホン酸モノ−2−エチルヘキシル、ビス(2−エチルヘキシル)ホスフィン酸の塩が挙げられる。
以上、例示した中でも特に好ましいものは、ネオジムのリン酸塩またはネオジムのカルボン酸塩であり、特にネオジムの2−エチルヘキサン酸塩、ネオジムのバーサチック酸塩などのカルボン酸塩が最も好ましい。
【0018】
上記の希土類元素含有化合物を溶剤に容易に可溶化させるため、また、長期間安定に貯蔵するために用いられるルイス塩基は、希土類元素1モルあたり、0〜30モル、好ましくは1〜10モルの割合で、両者の混合物として、またはあらかじめ両者を反応させた生成物として用いられる。
ここで、ルイス塩基としては、例えば、アセチルアセトン、テトラヒドロフラン、ピリジン、N,N−ジメチルホルムアミド、チオフェン、ジフェニルエーテル、トリエチルアミン、有機リン化合物、1価または2価のアルコールが挙げられる。
以上の(a)希土類元素含有化合物またはこれらの化合物とルイス塩基との反応物は、1種単独で使用することも、あるいは2種以上を混合して用いることもできる。
【0019】
本発明の触媒に使用される(b)アルモキサンは、式(I)または式(II) で示される構造を有する化合物である。また、ファインケミカル,23,(9),5(1994)、J.Am.Chem.Soc.,115,4971(1993)、J.Am.Chem.Soc.,117,6465(1995)で示されるアルモキサンの会合体でもよい。
【0020】
【化1】
【0021】
(式中、R6 はそれぞれ、同一または異なり、炭素数1〜20の炭化水素基、nは2以上の整数である。)
式(I)または式(II) で表されるアルモキサンにおいて、R6 で表される炭化水素基としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、イソブチル、t−ブチル、ヘキシル、イソヘキシル、オクチル、イソオクチル基などが挙げられ、好ましくは、メチル、エチル、イソブチル、t−ブチル基であり、特に好ましくは、メチル基である。また、nは2以上、好ましくは4〜100の整数である。
(b)アルモキサンの具体例としては、メチルアルモキサン、エチルアルモキサン、n−プロピルアルモキサン、n−ブチルアルモキサン、イソブチルアルモキサン、t−ブチルアルモキサン、ヘキシルアルモキサン、イソヘキシルアルモキサンなどが挙げられる。
(b)アルモキサンの製造は、公知の如何なる技術を用いてもよく、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの有機溶媒中に、トリアルキルアルミニウムまたはジアルキルアルミニウムモノクロライドを加え、さらに水、水蒸気、水蒸気含有窒素ガス、あるいは硫酸銅5水塩や硫酸アルミニウム16水塩などの結晶水を有する塩を加えて反応させることにより製造することができる。
(b)アルモキサンは、1種単独で使用することも、あるいは2種以上を混合して用いることもできる。
【0022】
本発明の触媒に使用されるもう一方の(b)成分である成分であるAlR1 R2 R3 (式中、R1 およびR2 は同一または異なり、炭素数1〜10の炭化水素基または水素原子、R3 は炭素数1〜10の炭化水素基であり、ただし、R3 は上記R1 またはR2 と同一または異なっていてもよい)に対応する有機アルミニウム化合物としては、例えば、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリ−n−プロピルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリ−n−ブチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリ−t−ブチルアルミニウム、トリペンチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリシクロヘキシルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム、水素化ジエチルアルミニウム、水素化ジ−n−プロピルアルミニウム、水素化ジ−n−ブチルアルミニウム、水素化ジイソブチルアルミニウム、水素化ジヘキシルアルミニウム、水素化ジイソヘキシルアルミニウム、水素化ジオクチルアルミニウム、水素化ジイソオクチルアルミニウム、エチルアルミニウムジハイドライド、n−プロピルアルミニウムジハイドライド、イソブチルアルミニウムジハイドライドなどが挙げられ、好ましくは、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、水素化ジエチルアルミニウム、水素化ジイソブチルアルミニウムである。
本発明の(b)成分である有機アルミニウム化合物は、1種単独で使用することも、あるいは2種以上を混合して用いることもできる。
【0023】
本発明の触媒に使用される(c)成分は、ハロゲン含有化合物であり、好ましくは金属ハロゲン化物とルイス塩基との反応物や、ジエチルアルミニウムクロリド、四塩化ケイ素、トリメチルクロロシラン、メチルジクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、メチルトリクロロシラン、エチルアルミニウムジクロリド、エチルアルミニウムセスキクロリド、四塩化スズ、三塩化スズ、三塩化リン、ベンゾイルクロリド、t−ブチルクロリドなどが挙げられ、特に好ましくは金属ハロゲン化物とルイス塩基との反応物である。
ここで、上記金属ハロゲン化物としては、塩化ベリリウム、臭化ベリリウム、ヨウ化ベリリウム、塩化マグネシウム、臭化マグネシウム、ヨウ化マグネシウム、塩化カルシウム、臭化カルシウム、ヨウ化カルシウム、塩化バリウム、臭化バリウム、ヨウ化バリウム、塩化亜鉛、臭化亜鉛、ヨウ化亜鉛、塩化カドミウム、臭化カドミウム、ヨウ化カドミウム、塩化水銀、臭化水銀、ヨウ化水銀、塩化マンガン、臭化マンガン、ヨウ化マンガン、塩化レニウム、臭化レニウム、ヨウ化レニウム、塩化銅、ヨウ化銅、塩化銀、臭化銀、ヨウ化銀、塩化金、ヨウ化金、臭化金などが挙げられ、好ましくは、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、塩化バリウム、塩化マンガン、塩化亜鉛、塩化銅であり、特に好ましくは、塩化マグネシウム、塩化マンガン、塩化亜鉛、塩化銅である。
【0024】
また、上記の金属ハロゲン化物との反応物を生成させるために反応させるルイス塩基としては、リン化合物、カルボニル化合物、窒素化合物、エーテル化合物、アルコールなどが好ましい。具体的には、リン酸トリブチル、リン酸トリ−2−エチルヘキシル、リン酸トリフェニル、リン酸トリクレジル、トリエチルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、ジエチルホスフィノエタン、ジフェニルホスフィノエタン、アセチルアセトン、ベンゾイルアセトン、プロピオニトリルアセトン、バレリルアセトン、エチルアセチルアセトン、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸フェニル、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、マロン酸ジフェニル、酢酸、オクタン酸、2−エチル−ヘキサン酸、オレイン酸、ステアリン酸、安息香酸、ナフテン酸、バーサティック酸〔シェル化学(株)製の商品名であって、カルボキシル基が3級炭素原子に結合しているカルボン酸である〕、トリエチルアミン、N,N−ジメチルアセトアミド、テトラヒドロフラン、ジフェニルエーテル、2−エチル−ヘキシルアルコール、オレイルアルコール、ステアリルアルコール、フェノール、ベンジルアルコール、1−デカノール、ラウリルアルコールなどが挙げられ、好ましくは、リン酸トリ−2−エチルヘキシル、リン酸トリクレジル、アセチルアセトン、2−エチルヘキサン酸、バーサティック酸、2−エチルヘキシルアルコール、1−デカノール、ラウリルアルコールである。
【0025】
上記のルイス塩基は、上記金属ハロゲン化物1モルあたり、0.01〜30モル、好ましくは0.5〜10モルの割合で反応させる。このルイス塩基との反応物を使用すると、ポリマー中に残存する金属を低減することができる。
【0026】
本発明で使用する触媒の各成分の量または組成比は、その目的あるいは必要性に応じて種々の異なったものに設定される。
このうち、(a)成分は、100gの共役ジエン系化合物に対し、0.00001〜1.0ミリモルの量を用いるのがよい。0.00001ミリモル未満では、重合活性が低くなり好ましくなく、一方、1.0ミリモルを超えると、触媒濃度が高くなり、脱灰工程が必要となり好ましくない。特に、0.0001〜0.5ミリモルの量を用いるのが好ましい。
また、一般に(b)成分の使用量は、(a)成分に対するAlのモル比で表すことができ、(a)成分対(b)成分が1:1〜1:500、好ましくは1:3〜1:250、さらに好ましくは1:5〜1:200である。
さらに、(a)成分と(c)成分の割合は、モル比で、1:0.1〜1:30、好ましくは1:0.2〜1:15である。
これらの触媒量または構成成分比の範囲外では、高活性な触媒として作用せず、または、触媒残渣除去する工程が必要になるため好ましくない。また、上記の(a)〜(c)成分以外に、重合体の分子量を調節する目的で、水素ガスを共存させて重合反応を行ってもよい。
【0027】
触媒成分として、上記の(a)成分、(b)成分および(c)成分以外に、必要に応じて、共役ジエン系化合物および/または非共役ジエン系化合物を、(a)成分の化合物1モルあたり、0〜1,000モルの割合で用いてもよい。触媒製造用に用いられる共役ジエン系化合物は、重合用のモノマーと同じく、1,3−ブタジエン、イソプレンなどを用いることができる。また、非共役ジエン系化合物としては、例えば、ジビニルベンゼン、ジイソプロペニルベンゼン、トリイソプロペニルベンゼン、1,4−ビニルヘキサジエン、エチリデンノルボルネンなどが挙げられる。触媒成分としての共役ジエン系化合物は必須ではないが、これを併用すると、触媒活性が一段と向上する利点がある。
【0028】
触媒製造は、例えば、溶媒に溶解した(a)成分〜(c)成分、さらに必要に応じて、共役ジエン系化合物および/または非共役ジエン系化合物を反応させることによる。その際、各成分の添加順序は任意でよい。これらの各成分は、あらかじめ混合、反応させ、熟成させることが、重合活性の向上、重合開始誘導期間の短縮の意味から好ましい。ここで、熟成温度は、0〜100℃、好ましくは20〜80℃である。0℃未満では、充分に熟成が行われず、一方、100℃を超えると、触媒活性の低下や、分子量分布の広がりが起こり好ましくない。熟成時間は、特に制限はなく、重合反応槽に添加する前にライン中で接触させることもでき、通常は、0.5分以上であれば充分であり、数日間は安定である。
【0029】
本発明では、共役ジエン系化合物を、上記(a)〜(c)成分を主成分とする触媒を用いて重合する。
本発明の触媒で重合できる共役ジエン系化合物としては、1,3−ブタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン、ミルセン、シクロ−1,3−ペンタジエンなどが挙げられ、特に好ましくは、1,3−ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエンである。これらの共役ジエン系化合物は、1種単独で使用することも、あるいは2種以上を混合して用いることもでき、2種以上混合して用いる場合は、共重合体が得られる。
【0030】
本発明の共役ジエン系重合体の重合は、溶媒を用いて、または無溶媒下で行うことができる。
重合溶媒としては、不活性の有機溶媒であり、例えば、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタンなどの炭素数4〜10の飽和脂肪族炭化水素、シクロペンタン、シクロヘキサンなどの炭素数5〜20の飽和脂環式炭化水素、1−ブテン、2−ブテンなどのモノオレフィン類、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、トリクロルエチレン、パークロルエチレン、1,2−ジクロルエタン、クロルベンゼン、ブロムベンゼン、クロルトルエンなどのハロゲン化炭化水素が挙げられる。
これらの重合溶媒は、1種単独で使用することも、あるいは2種以上を混合して用いることもできる。
【0031】
重合温度は、通常、−30℃〜200℃、好ましくは0〜150℃である。重合反応は、回分式でも、連続式のいずれでもよい。
また、重合体を製造するために、本発明の希土類元素化合物系触媒および重合体を失活させないために、重合系内に酸素、水あるいは炭酸ガスなどの失活作用のある化合物の混入を極力なくすような配慮が必要である。
【0032】
本発明によれば、特定の触媒を用いているため、シス−1,4−結合含量が高く、かつ分子量分布がシャープな共役ジエン系重合体を得ることができる。
このように、(a)〜(c)成分を主成分とする触媒を用いて得られる変性前の共役ジエン系重合体は、シス−1,4−結合含量が85%以上、好ましくは90%以上、1,2−ビニル結合含量は2.0%以下、好ましくは1.8以下、かつMw/Mnが3.5以下である。
本発明で得られる変性前の共役ジエン系重合体のシス−1,4−結合含量が85%未満では、機械的特性、耐摩耗性が劣ることになる。また、1,2−ビニル結合含量が2.0%を超えると、機械的特性、耐摩耗性が劣る。このミクロ構造(シス−1,4−結合含量、1,2−ビニル結合含量)の調整は、重合温度をコントロールすることによって容易に行うことができる。
また、本発明において、変性前の共役ジエン系重合体のMw/Mnが3.5を超えると、機械的特性、耐摩耗性が劣る。このMw/Mnの調整は、上記(a)〜(c)成分のモル比をコントロールすることによって容易に行うことができる。
【0033】
なお、変性前の共役ジエン系重合体のムーニー粘度(ML1+4 ,100℃)は、10〜100の範囲にあることが好ましい。10未満では、加硫後の機械的特性、耐摩耗性などが劣り、一方、100を超えると、混練り時の加工性が劣り、機械的特性が悪化する。
【0034】
次に、本発明では、このようにして希土類元素化合物系触媒を用いて共役ジエン系化合物を重合したのち、引き続き、得られるリビングポリマーの活性末端に、特定の官能基を持つ化合物を添加し、ポリマーの活性末端をこの特定の官能基を持つ化合物と反応(変性)させることにより、場合により、重合体分子量を増大もしくは重合体鎖を分岐化させ、かつシリカとの相互作用の良い新規な重合体を形成するものである。
この変性により、シリカとの相互作用が改善され、耐摩耗性、機械的特性、低発熱性などの物性がさらに改良される。
【0035】
本発明において、ポリマーの活性末端と反応させる(d)成分は、分子中に水酸基を含有する水酸基含有ビニル系化合物である。
この(d)成分の具体例は、ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−フェノキシ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリルアミド、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリルアミド、ジ−(エチレングリコール)イタコネート、ジ−(プロピレングリコール)イタコネート、ビス(2−ヒドロキシプロピル)イタコネート、ビス(2−ヒドロキシエチル)イタコネート、ビス(2−ヒドロキシエチル)フマレート、ビス(2−ヒドロキシエチル)マレートなどが挙げられる。
(d)成分は、1種単独であるいは2種以上を併用することができる。
【0036】
ポリマーの活性末端と反応させる(e)成分は、エポキシ化合物であり、例えばスチレンオキシド、エポキシ化大豆油、グリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル、ビニルグリシジルエーテル、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、1,2−エポキシブタン、1,2−エポキシ−i−ブタン、2,3−エポキシブタン、1,2−エポキシヘキサン、1,2−エポキシオクタン、1,2−エポキシデカン、1,2−エポキシテトラデカン、1,2−エポキシヘキサデカン、1,2−エポキシオクタデカン、1,2−エポキシエイコサン、1,2−エポキシ−2−ペンチルプロパン、3,4−エポキシ−1−ブテン、1,2−エポキシ−5−ヘキセン、1,2−エポキシ−9−デセン、1,2−エポキシシクロペンタン、1,2−エポキシシクロヘキサン、1,2−エポキシシクロドデカン、1,2−エポキシエチルベンゼン、1,2−エポキシ−1−メトキシ−2−メチルプロパン、グリシジルメチルエーテル、グリシルエチルエーテル、グリシジルイソプロピルエーテル、グリシジルフェニルエーテル、グリシジルブチルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、N,N−ジグリシジルアニリン、N,N−ジグリシジルトルイジン、N,N−ジグリシジル-3- グリシジルオキシアニリン、N,N−ジグリシジル-2- グリシジルオキシアニリン、N,N,N′,N′−テトラグリシジルアミノジフェニルメタン、トリスエポキシプロピルイソシアヌレート、N,N−ジグリシジルブチルアミン、N−グリシジルピロリジン、N−グリシジルピペリジン、N−グリシジルヘキサメチレンイミン、N−グリシジルモルフォリン、N,N′−ジグリシジルピペラジン、N,N′−ジグリシジルホモピペラジン、N−グリシジル−N′−メチルピペラジン、N−グリシジル−N′−ベンジルピペラジン、2−ジグリシジルアミノエチル−N−メチルピロリジンなどが挙げられる。
(e)成分は、1種単独であるいは2種以上を併用することができる。
【0037】
以上の(d)〜(e)成分の化合物(以下「変性剤」ともいう)は、1種単独で使用することも、あるいは2種以上を混合して用いることもできる。
【0038】
上記(a)成分に対する変性剤の使用量は、モル比で、0.01〜200、好ましくは0.1〜150であり、0.01未満では、反応の進行が充分ではなく、また、シリカとの相互作用が充分に発現されないないうえ、耐摩耗性、低発熱性の改良効果が発現されず、一方、200を超えて使用しても、シリカの分散性や物性の改良効果は飽和しており、経済上、また場合により、トルエン不溶分(ゲル)が生成し好ましくない。
この変性反応は、160℃以下、好ましくは−30℃〜+130℃の温度で、0.1〜10時間、好ましくは0.2〜5時間実施することが望ましい。
【0039】
目的の重合体は、変性反応が終了したのち、必要に応じて、重合停止剤、重合体安定剤を反応系に加え、共役ジエン系重合体の製造における公知の脱溶媒、乾燥操作により回収できる。
なお、得られる上記重合体は、必要に応じて、脱溶剤前に、アロマチックオイル、ナフテニックオイルなどのプロセス油を添加したのち、脱溶剤、乾燥操作により回収することができる。
【0040】
本発明により得られる共役ジエン系重合体は、該重合体を、単独で、または他の合成ゴムもしくは天然ゴムとブレンドして配合し、必要に応じて、プロセス油を配合し、次いで、シリカなどの充填剤、加硫剤、加硫促進剤、その他の通常の配合剤を加えて加硫し、乗用車、トラック、バス用タイヤ、スタッドレスタイヤなどの冬用タイヤのトレッド、サイドウォール、各種部材、ホース、ベルト、防振ゴム、その他の各種工業用品などの機械的特性、および耐摩耗性が要求されるゴム用途に使用される。また、天然ゴム以外の乳化重合SBR、溶液重合SBR、ポリイソプレン、EP(D)M、ブチルゴム、水添BR、水添SBRにブレンドして使用することもできる。
【0041】
本発明により得られる共役ジエン系重合体は、上記の特定の官能基を有する変性剤で変性されているため、この官能基がシリカの表面に存在する種々の官能基と結合して、シリカとゴムとが相互作用をなし、ゴム組成物中におけるシリカの分散性が向上する。
【0042】
ここで、本発明のゴム組成物は、本発明の上記共役ジエン系重合体を単独で、または上記のような他の合成ゴムもしくは天然ゴムとブレンドして、原料ゴムとして配合し、必要に応じて、プロセス油を配合し、次いで充填剤であるシリカ、加硫剤および加硫促進剤などの通常の加硫ゴム配合剤を加えてなるものである。
ここで、本発明の共役ジエン系重合体の優れた特徴を発現するためには、この共役ジエン系重合体は、原料ゴム中に10重量%以上、好ましくは20重量%以上、さらに好ましくは好ましくは30重量%以上含有させる。
また、油展または配合に使用されるプロセス油としては、例えばパラフィン系、ナフテン系、アロマチック系などが挙げられ、その使用量は、原料ゴム100重量部に対し、80重量部以下、好ましくは20〜60重量部である。
【0043】
使用されるシリカとしては、乾式法ホワイトカーボン、湿式法ホワイトカーボン、コロイダルシリカ、沈降シリカなどが挙げられ、好ましくは含水ケイ酸を主成分とする湿式法ホワイトカーボンである。シリカは、分散性をさらに向上させるために、酸性領域にあるものが好ましい。また、カップリング剤などで処理されたシリカを用いることもできる。
シリカの比表面積は、特に限定されないが、通常、50〜400m2 /g、好ましくは100〜250m2 /gである。比表面積が小さすぎると、補強性に劣り、一方、大きすぎると、加工性が劣り、耐摩耗性や反撥弾性の改善も充分ではない。
【0044】
シリカの配合量は、原料ゴム100重量部に対し、10〜200重量部、好ましくは20〜150重量部である。10重量部未満では、補強性に劣り、耐摩耗性および低発熱性の改良効果が得られず、一方、200重量部を超えると、未加硫ゴム組成物の粘度が上昇し、加工性に劣り、また、耐摩耗性および低発熱性が劣る。
【0045】
なお、本発明のゴム組成物には、さらにシランカップリングを配合することができる。
このシランカップリング剤としては、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、ビス〔3−(トリエトキシシリル)プロピル〕テトラスルフィド、ビス〔3−(トリエトキシシリル)プロピル〕ジスルフィド、ビス〔3−(トリエトキシシリル)プロピル〕トリスルフィド、ビス〔3−(トリエトキシシリル)プロピル〕テトラスルフィド、γ−トリメトキシシリルプロピルジメチルチオカルバミルテトラスルフィド、γ−トリメトキシシリルプロピルベンゾチアジルテトラスルフィドなどのテトラスルフィド類などが挙げられる。
シランカップリング剤の配合量は、原料ゴム100重量部に対し、1〜20重量部、好ましくは1〜15重量部である。1重量部未満では、シリカとの補強性が得られず、破壊強度、耐摩耗性、低発熱性が劣る。一方、20重量部を超えると、経済的ではなく、物性の改良効果も飽和してくる。
【0046】
上記加硫剤としては、通常、硫黄が使用され、その使用量は、原料ゴム100重量部に対して、0.1〜3重量部、好ましくは0.5〜2重量部である。
加硫助剤および加工助剤としては、一般にステアリン酸が用いられ、その使用量は、原料ゴム100重量部に対し、0.5〜5重量部である。
加硫促進剤は、特に限定されないが、好ましくはM(2−メルカプトベンゾチアゾール)、DM(ジベンゾチアジルジサルファイド)、CZ(N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド)などのチアゾール系加硫促進剤を挙げることができ、その使用量は、原料ゴム100重量部に対して、通常、0.1〜5重量部、好ましくは0.2〜3重量部である。
【0047】
本発明のゴム組成物には、必要に応じて、シリカ以外のカーボンブラック、炭酸カルシウム、酸化チタンなどの充填剤、酸化亜鉛、酸化防止剤、オゾン劣化防止剤などの添加剤を配合することもできる。
【0048】
本発明のゴム組成物は、ロール、インターナルミキサーなどの混練り機を用いて混練りすることによって得られ、成形加工後、加硫を行ない、タイヤトレッド、アンダートレッド、カーカス、サイドウオール、ビート部分などのタイヤ用途のほか、ホース、ベルト、靴底、窓枠、シール材、防振ゴム、その他の工業用品などの用途に用いることができるが、特にタイヤトレッド用ゴムとして好適に使用される。
【0049】
【実施例】
以下、本発明を実施例を挙げて、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の実施例に何ら制約されるものではない。
なお、実施例中、部および%は特に断らないかぎり重量基準である。
また、実施例中の各種の測定は、下記の方法によった。
【0050】
ムーニー粘度(ML 1+4 ,100℃)
予熱1分、測定時間4分、温度100℃で測定した。
数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)
東ソー(株)製、HLC−8120GPCを用い、検知器として、示差屈折計を用いて、次の条件で測定した。
カラム;東ソー(株)製、カラムGMHHXL
移動相;テトラヒドロフラン
ミクロ構造(シス−1,4−結合含量、ビニル−1,2−結合含量)
赤外法(モレロ法)によって求めた。
引張強さ
JIS K6301に従って測定した。
tanδ
メカニカルスペクトロメーター(レオメトリックス社製)を用い、50℃での値を測定した。
耐摩耗性
ランボーン式摩耗試験機〔島田技研(株)製〕を用い、スリップ比60%、室温下で測定した。
【0051】
実施例1
窒素置換された5Lオートクレーブに、窒素下、シクロヘキサン2.4kg、1,3−ブタジエン300gを仕込んだ。これらに、予め触媒成分としてバーサティック酸ネオジム(以下「Nd(ver)3」ともいう)(0.09mmol)のシクロヘキサン溶液、メチルアルモキサン(以下「MAO」ともいう)(7.2mmol)のトルエン溶液、水素化ジイソブチルアルミニウム(以下「AliBu2H」ともいう)(3.6mmol)およびジエチルアルミニウムクロリド(以下「DEAC」ともいう)(0.18mmol)のトルエン溶液を、ネオジムの5倍量の1,3−ブタジエンと50℃で30分間反応熟成させた触媒を仕込み、80℃で60分間重合を行った。1,3−ブタジエンの反応転化率は、ほぼ100%であった。
次に、この重合溶液の温度を50℃に保ち、エポキシ化大豆油(4.5mmol)を添加し、30分間反応させた。その後、2,4−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール1.5gを含むメタノール溶液を添加し、重合停止後、スチームストリッピングにより脱溶媒し、110℃のロールで乾燥して、重合体を得た。重合条件および分析結果を表1に示す。
【0052】
実施例2
実施例1で、ジエチルアルミニウムクロリドを四塩化ケイ素に代えた以外は、実施例1と同様の方法にて重合体を得た。重合条件および分析結果を表1に示す。
実施例3
実施例1で、ジエチルアルミニウムクロリドを塩化亜鉛と1−デカノールとの錯体に代えた以外は、実施例1と同様の方法にて重合体を得た。重合条件および分析結果を表1に示す。
【0053】
実施例4
実施例3で、エポキシ化大豆油をスチレンオキシドに代えた以外は、実施例3と同様の方法にて重合体を得た。重合条件および分析結果を表1に示す。
実施例5
実施例3で、エポキシ化大豆油を2−ヒドロキルエチルメタクリレート(以下「HEMA」ともいう)に代えた以外は、実施例3と同様の方法にて重合体を得た。重合条件および分析結果を表1に示す。
【0054】
実施例6
窒素置換された5Lオートクレーブに、窒素下、シクロヘキサン2.4kg、1,3−ブタジエン300gを仕込んだ。これらに、予め触媒成分としてバーサティック酸ネオジム(0.37mmol)のシクロヘキサン溶液、トリイソブチルアルミニウム(以下「AliBu3」ともいう)(11.1mmol)のトルエン溶液、水素化イソブチルアルミニウムクロリド(3.7mmol)およびジエチルアルミニウムクロリド(0.74mmol)のトルエン溶液を、ネオジムの5倍量の1,3−ブタジエンと50℃で30分間反応熟成させた触媒を仕込み、80℃で60分間重合を行った。1,3−ブタジエンの反応転化率は、ほぼ100%であった。
次に、この重合溶液の温度を50℃に保ち、エポキシ化大豆油(4.5mmol)を添加し、30分間反応させた。その後、2,4−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール1.5gを含むメタノール溶液を添加し、重合停止後、スチームストリッピングにより脱溶媒し、110℃のロールで乾燥して、重合体を得た。重合条件および分析結果を表1に示す。
【0055】
実施例7
実施例6で、エポキシ化大豆油をスチレンオキシドに代えた以外は、実施例6と同様の方法にて重合体を得た。重合条件および分析結果を表1に示す。
実施例8
実施例6で、エポキシ化大豆油をHEMAに代えた以外は、実施例6と同様の方法にて重合体を得た。重合条件および分析結果を表1に示す。
【0056】
比較例1
窒素置換された5Lオートクレーブに、窒素下、シクロヘキサン2.4kg、1,3−ブタジエン300gを仕込んだ。これらに、予め触媒成分としてバーサティック酸ネオジム(0.09mmol)のシクロヘキサン溶液、メチルアルモキサン(7.2mmol)のトルエン溶液、水素化ジイソブチルアルミニウム(3.6mmol)およびジエチルアルミニウムクロリド(0.18mol)のトルエン溶液を、ネオジムの5倍量の1,3−ブタジエンと50℃で30分間反応熟成させた触媒を仕込み、80℃で60分間重合を行った。1,3−ブタジエンの反応転化率は、ほぼ100%であった。
次に、2,4−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール1.5gを含むメタノール溶液を添加し、重合停止後、スチームストリッピングにより脱溶媒し、110℃のロールで乾燥して、重合体を得た。重合条件および分析結果を表2に示す。
【0057】
比較例2
比較例1で、ジエチルアルミニウムクロリドを四塩化ケイ素に代えた以外は、比較例1と同様の方法にて重合体を得た。重合条件および分析結果を表2に示す。
比較例3
比較例1で、ジエチルアルミニウムクロリドを塩化亜鉛と1−デカノールとの錯体に代えた以外は、比較例1と同様の方法にて重合体を得た。重合条件および分析結果を表2に示す。
【0058】
比較例4
窒素置換された5Lオートクレーブに、窒素下、シクロヘキサン2.4kg、1,3−ブタジエン300gを仕込んだ。これらに、予め触媒成分としてバーサティック酸ネオジム(0.37mmol)のシクロヘキサン溶液、トリイソブチルアルミニウム(11.1mmol)のトルエン溶液、水素化ジイソブチルアルミニウム(3.6mmol)およびジエチルアルミニウムクロリド(0.74mol)のトルエン溶液を、ネオジムの5倍量の1,3−ブタジエンと50℃で30分間反応熟成させた触媒を仕込み、80℃で60分間重合を行った。1,3−ブタジエンの反応転化率は、ほぼ100%であった。
次に、2,4−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール1.5gを含むメタノール溶液を添加し、重合停止後、スチームストリッピングにより脱溶媒し、110℃のロールで乾燥して、重合体を得た。重合条件および分析結果を表2に示す。
【0059】
比較例5
実施例1で、ジエチルアルミニウムクロリドを使用しない以外は、実施例1と同様の方法にて重合体を得た。重合条件および分析結果を表2に示す。
比較例6
実施例6で、ジエチルアルミニウムクロリドを使用しないで触媒を調製した以外は、実施例6と同様の方法にて重合体を得た。しかし、重合体は12gしか得られなかったため、ムーニー粘度測定および加硫物性評価は実施できなかった。重合条件および分析結果を表2に示す。
比較例7
市販のポリブタジエンゴム〔ジェイエスアール(株)製、ポリブタジエンゴムBR01〕の加硫物性を表2に示す。
【0060】
次に、実施例1〜8、比較例1〜7の重合体を用いて物性評価を行った。シリカとの配合物は以下の方法にて得た。最初に、下記に示す配合処方Aに従って、プラストミルを使用し、練り始め温度を110℃として3分30秒間混練りを行った。得られた配合物は再度、プラストミルで配合を行い昆練りを行った。再練りは、練り始め温度を110℃、練り時間を2分間で行った。
配合処方A (部)
ポリマー 100
シリカ(*1) 50
アロマティックオイル 10
ステアリン酸 2
老化防止剤(*2) 1
*1)日本シリカ(株)製、VN3
*2)N−イソプロピル−N′−フェニル−p−フェニレンジアミン
【0061】
次に、得られた配合物に下記の配合処方Bの薬品を加え、プラストミルにて練り始め温度を80℃から1分間昆練りを行った。得られたゴム配合物を160℃で最適時間、プレス加硫を行い、加硫物の試験片を得た。得られた加硫ゴムの物性を、表1〜2に示す。
配合処方B (部)
亜鉛華 2.5
加硫促進剤(*1) 0.8
加硫促進剤(*2) 1
加硫促進剤(*3) 1
硫黄 1.3
*1)ジフェニルグアニジン
*2)ジベンゾチアゾールジスルフィド
*3)N−t−ブチル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド
【0062】
実施例1〜5は、比較例1〜3に対して、加硫後の破壊強度、低発熱性および耐摩耗性が向上し、重合体に水酸基およびエポキシ基を導入すると、シリカとの補強性が向上、加硫物性が大幅に改良されることが分かる。また、実施例1〜3より、エポキシ基を導入した方が物性の改良効果が大きいことが分かる。
同様に、実施例6〜8は、比較例4に対し、破壊強度、低発熱性および耐摩耗性が向上し、触媒組成に関係なく、重合体に上記官能基を導入すると、加硫物性が改良されることが分かる。
比較例5より、1,4−シス−結合含量が低く、1,2−ビニル結合含量が高いと、破壊強度、低発熱性および耐摩耗性が、実施例1〜3に対比して、大きく劣ることが分かる。
【0063】
実施例9〜17、比較例8〜16
次に、実施例5〜7、比較例3,7の重合体を、天然ゴムまたは溶液重合SBRとブレンドしたゴムを使用し、以下に示す配合方法にて加硫物を得た。最初に、下記に示す配合処方Aに従って、プラストミルを使用し、練り始め温度を110℃として3分30秒間混練りを行った。得られた配合物は再度、プラストミルで配合を行い昆練りを行った。再練りは、練り始め温度を110℃、練り時間を2分間で行った。
配合処方A (部)
ポリマー(*1) 100
シリカ(*2) 50
アロマティックオイル 10
ステアリン酸 2
老化防止剤(*3) 1
*1)ブレンド比率は表3に記載
*2)日本シリカ(株)製、VN3
*3)N−イソプロピル−N′−フェニル−p−フェニレンジアミン
【0064】
次に、得られた配合物に下記の配合処方Bの薬品を加え、プラストミルにて練り始め温度を80℃から1分間昆練りを行った。得られたゴム配合物を160℃で最適時間、プレス加硫を行い、加硫物の試験片を得た。得られた加硫ゴムの物性を、表3に示す。
配合処方B (部)
亜鉛華 2.5
加硫促進剤(*1) 0.8
加硫促進剤(*2) 1
加硫促進剤(*3) 1
硫黄 1.3
*1)ジフェニルグアニジン
*2)ジベンゾチアゾールジスルフィド
*3)N−t−ブチル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド
【0065】
実施例9〜14は、比較例11,12,14に対し、加硫後の破壊強度、低発熱性および耐摩耗性が向上し、天然ゴムとブレンドしても、本発明の重合体を使用し物性が改良されることが分かる。しかしながら、比較例8〜10,13より、全ゴム成分100部中、本発明の重合体の置換部数が少なすぎると、充分な物性の改良効果が得られないことが分かる。同様に、実施例15〜17は、比較例15〜16に対し、破壊強度、低発熱性および耐摩耗性が改良され、天然ゴムの代わりに合成ゴムを本発明の重合体にブレンドしても物性が改良されることが分かる。
【0066】
実施例18〜25、比較例17〜20
実施例5〜7または比較例3の重合体と天然ゴムをブレンドしたゴムを使用し、下記に示す配合処方にしたがって加硫物を得た。最初に、下記に示す配合処方Aに従って、プラストミルを使用し、練り始め温度を110℃として3分30秒間混練りを行った。得られた配合物は再度、プラストミルで配合を行い混練りを行った。再練りは、練り始め温度を110℃、練り時間を2分間で行った。
配合処方A (部)
ポリマー 50
天然ゴム 50
シリカ(*1) 10〜130
アロマティックオイル 10
ステアリン酸 2
老化防止剤(*2) 1
シランカップリング剤(*3) 0または5
*1)日本シリカ(株)製、VN3
*2)N−イソプロピル−N′−フェニル−p−フェニレンジアミン
*3)ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルファン
【0067】
次に、得られた配合物に下記の配合処方Bの薬品を加え、プラストミルにて練り始め温度を80℃から1分間昆練りを行った。得られたゴム配合物を160℃で最適時間、プレス加硫を行い、加硫物の試験片を得た。得られた加硫ゴムの物性を、表4に示す。
配合処方B (部)
亜鉛華 2.5
加硫促進剤(*1) 0.8
加硫促進剤(*2) 1
加硫促進剤(*3) 1
硫黄 1.3
*1)ジフェニルグアニジン
*2)ジベンゾチアゾールジスルフィド
*3)N−t−ブチル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド
【0068】
実施例18〜25は、比較例17〜20に比べ、破壊強度、低発熱性および耐摩耗性が優れていることが分かる。また、比較例17〜18より、配合時に添加するシリカの量が多すぎても、少なすぎても、物性の改良効果が充分に得られないことが分かる。さらに、実施例19,21〜22と比較例19〜20より、本発明の重合体を含むゴム組成物は、未変性の重合体にシランカップリング剤を加え補強したゴム組成物と同等以上の加硫物性であり、シランカップリング剤を使用しなくても、充分な物性が得られることが分かる。さらに、実施例23〜25より、本発明の重合体を含むゴム組成物にシランカップリング剤を配合時に添加すると、加硫後の物性がさらに改良されることが分かる。
【0069】
【表1】
【0070】
【表2】
【0071】
【表3】
【0072】
【表4】
【0073】
表1〜2において、*1〜*4は、次のとおりである。
*1)重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比
*2)比較例7を100とし、数値の大なるほど良好
*3)比較例7を100とし、数値の大なるほど良好
*4)ジェイエスアール(株)製の市販のBR(JSR BR01)
【0074】
表3において、*1〜*4は、次のとおりである。
*1)ジェイエスアール(株)製の市販のBR(JSR BR01)
*2)結合スチレン含量35%、ビニル結合含量21%、四塩化スズで変性したスチレン−ブタジエンゴム
*3)比較例7を100とし、数値の大なるほど良好
*4)比較例7を100とし、数値の大なるほど良好
【0075】
表4において、*1〜*3は、次のとおりである。
*1)ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルファン
*2)比較例7を100とし、数値の大なるほど良好
*3)比較例7を100とし、数値の大なるほど良好
【0076】
【発明の効果】
本発明に用いられる共役ジエン系重合体は、高1,4−シス結合含量、低1,2−ビニル結合含量であって、分子量分布が狭く、かつ分子中にシリカと相互作用をなす特定の官能基を有し、シリカの分散性に優れる。従って、この共役ジエン系重合体にシリカを配合した本発明のゴム組成物は、優れた耐摩耗性、機械的強度、低発熱性を有する。
Claims (7)
- シス−1,4−結合含量が85%以上、1,2−ビニル結合含量が2.0%以下、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が3.5以下であり、かつ分子末端にエポキシ基および水酸基の群から選ばれた少なくとも1種の官能基を有する共役ジエン系重合体10〜100重量%および他のジエン系重合体もしくは天然ゴム90〜0重量%からなるゴム成分100重量部に対し、シリカ30〜100重量部を配合したゴム組成物。
- 共役ジエン系重合体が、官能基として少なくとも1種のエポキシ基を有する請求項1記載のゴム組成物。
- 共役ジエン系重合体が、共役ジエン系化合物を、下記(a)〜(c)成分を主成分とする触媒を用いて重合したのち、引き続き、下記(d)〜(e)成分の群から選ばれた少なくとも1種の化合物を反応させたものである請求項1または2記載のゴム組成物。
(a)成分;周期律表の原子番号57〜71にあたる希土類元素含有化合物、または、これらの化合物とルイス塩基との反応物
(b)成分;アルモキサンおよび/またはAlR1 R2 R3 (式中、R1およびR2は同一または異なり、炭素数1〜10の炭化水素基または水素原子、R3は炭素数1〜10の炭化水素基であり、ただし、R3は上記R1またはR2と同一または異なっていてもよい)に対応する有機アルミニウム化合物
(c)成分;ハロゲン含有化合物(ただし、(a)成分を除く)
(d)成分;水酸基含有ビニル系化合物
(e)成分;エポキシ化合物 - (c)ハロゲン含有化合物が金属ハロゲン化物とルイス塩基との反応物である請求項3記載のゴム組成物。
- (c)成分を構成する、金属ハロゲン化物が12族の金属ハロゲン化物であり、ルイス塩基がリン酸エステル、ジケトン化合物、カルボン酸およびアルコールの群から選ばれた少なくとも1種である請求項4記載のゴム組成物。
- 共役ジエン系重合体が、(e)成分の少なくとも1種の化合物を反応させたものである請求項3記載のゴム組成物。
- ゴム成分100重量部に対し、さらにシランカップリング剤1〜20重量部を配合した請求項1〜6いずれかに記載のゴム組成物。
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