JP4234857B2 - 空気入りタイヤの設計方法、タイヤ用加硫金型設計方法、タイヤ用加硫金型製造方法、空気入りタイヤの製造方法、最適化解析装置及びタイヤの最適化解析プログラムを記憶した記憶媒体 - Google Patents

空気入りタイヤの設計方法、タイヤ用加硫金型設計方法、タイヤ用加硫金型製造方法、空気入りタイヤの製造方法、最適化解析装置及びタイヤの最適化解析プログラムを記憶した記憶媒体 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、空気入りタイヤの設計方法、タイヤ用加硫金型設計方法、タイヤ用加硫金型製造方法、空気入りタイヤの製造方法、最適化解析装置及びタイヤの最適化解析プログラムを記憶した記憶媒体に関するもので、特に、タイヤの単一目的性能、二律背反性能等を達成するタイヤの構造、形状等の設計開発を効率的にかつ容易にし、しかもタイヤのベストな構造、形状を求めかつコスト・パーフォーマンスの高いタイヤを設計することができる空気入りタイヤの設計方法、タイヤ用加硫金型設計方法、タイヤ用加硫金型製造方法、空気入りタイヤの製造方法、最適化解析装置及びタイヤの最適化解析プログラムを記憶した記憶媒体に関する。
【0002】
【従来の技術】
タイヤの設計は、実験及び計算機を用いた数値実験の繰り返しによる経験則から成り立っていた。このため、開発に必要な試作・試験の件数が膨大なものとなり、開発コストがアップし、開発期間もなかなか短縮できなかった。
【0003】
このタイヤの設計にはタイヤの構造、形状、パターン設計等があり、タイヤの構造、形状、パターン設計は、目的とするタイヤの性能を得るための構造、形状、パターンや製造条件等を求めることである。このタイヤの性能とは計算や実験によって求められる物理量または実車フィーリング評価結果である。従来のタイヤの構造、形状、及びパターン設計等のタイヤ設計方法は、実験及び計算機を用いた数値実験の繰り返しによる試行錯誤的な経験則から成り立っていた。このため、開発に必要な試作・試験の件数が膨大なものとなり、開発コストがアップし、開発期間もなかなか短縮できなかった。
【0004】
これを解決する手段として数理計画法や、遺伝的アルゴリズムを用いた最適化法等のように、最適解を求める技術が提案されてきた。この数理計画法に関連するものとして、本出願人も既に出願済の国際公開番号:WO94/16877に記載された設計方法を提案している。
【0005】
最適解を求めることは山登りにたとえられる。この時、山の高度は性能に関係しているので、最適解は山の頂上に相当する。目的関数が単純な場合にはその設計空間(山の形)はピークが一つの山型であるので、数理計画法をベースにした最適化手法で最適解を求めることができる。
【0006】
ところで、空気入りタイヤ開発において、考慮すべきタイヤ性能は実際にタイヤを設計・製造し、自動車に装着して性能試験を行うことにより得られるものであり、性能試験の結果に満足できなければ設計・製造からやり直す、という手順を踏んできた。最近では、有限要素法等の数値解析手法や計算機環境の発達により、タイヤ内圧充填状態やタイヤ非転動時の荷重負荷状態等が計算機で予測できるようになり、この予測から幾つかの性能予測が行えるようになってきたが、排水性や雪上性能、及び騒音性能等のように、流体の挙動からタイヤ性能が定まるものについては、これまで計算を行うことができなかった。このため、タイヤ性能予測が行えず、タイヤ開発を効率的に行うことができないのが現状である。
【0007】
計算機を用いて、タイヤの排水性、特にハイドロプレーニングに関して、スムースタイヤ(溝無しタイヤ)と周方向溝のみを配置したタイヤについて解析を試みた技術文献がある("Tire Science and Technology, TSTCA, Vol.25, No.4, October-December, 1997, pp.265-287")。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような従来のタイヤの排水性の考慮では、スムースタイヤと周方向溝のみを配置したタイヤについてのみ解析を試みたものであり、実際のタイヤにおいて排水性に大きく関与しているタイヤ周方向と交差する傾斜溝を有するパターン付きタイヤについて、また、タイヤ接地時及び回転時の流体をどのように流動状態に近づけ、過渡的解析を可能にするかについては言及されていない。すなわち、実際のタイヤに対して実際の環境を想定した解析への考慮がなされていない。
【0009】
また、タイヤの設計開発ではある性能について目標値を定め、この目標値をクリアすれば一応終了とされ、与えられた資源で最良の性能を得るものではなかった。また、タイヤの設計とタイヤの性能試験とは独立して行われており、タイヤの開発が試作・試験の試行錯誤の繰返しで行われるため、非常に非効率であった。
【0010】
本発明は、上記事実を考慮して、排水性、雪上性能、騒音性能等の流体を介する実際に使用するタイヤ性能の予測をしながら高効率化のタイヤの設計・開発が可能な空気入りタイヤの設計方法、タイヤ用加硫金型設計方法、タイヤ用加硫金型製造方法、空気入りタイヤの製造方法、最適化解析装置及びタイヤの最適化解析プログラムを記憶した記憶媒体を得ることが目的である。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明者等は種々検討を加えた結果、異分野に利用されている「最適化設計手法」をタイヤと言う特殊分野に応用することに着目し、あらゆる検討を試み、最適化の過程でタイヤの性能予測、すなわち排水性、雪上性能、騒音性能など流体を介する実際に使用するタイヤ性能を予測し、特にタイヤ接地時及び回転時の流体をどのように流動状態に近づけ、過渡的解析を可能して、タイヤ開発を効率化し、良好な性能のタイヤの提供を容易にするため、具体的にそれをタイヤ設計方法として確立したものである。
【0012】
詳細には、請求項1に記載の発明の空気入りタイヤの設計方法は、空気入りタイヤの設計方法であって、(a)内部構造を含むタイヤ断面形状を少なくとも含みかつ接地及び転動の少なくとも一方により変形を与えることが可能でかつ周方向と交差する傾斜溝を含むパターン形状を有するタイヤモデルと、流体で一部または全部が満たされかつ前記タイヤモデルの少なくとも一部と接触する流体モデルと、タイヤ性能評価用物理量を表す目的関数と、タイヤ断面形状またはタイヤ構造またはパターン形状を決定する設計変数と、タイヤ断面形状、タイヤ構造、パターン形状、性能評価用物理量及びタイヤ寸度の少なくとも1つを制約する制約条件と、を定めるステップ、(b)前記タイヤモデルの変形計算を実行すると共に前記流体モデルの流動計算を実行し、前記変形計算後のタイヤモデルと前記流動計算後の流体モデルとの境界面を認識し、認識した境界面に関する境界条件をタイヤモデル及び流体モデルに付与しかつ、境界条件を付与した後のタイヤモデル及び流体モデルについて前記タイヤモデルの変形計算及び前記流体モデルの流動計算を予め定めた時間繰り返して計算させ、前記流体モデルを擬似流動状態とし、前記流体モデルの擬似流動状態となる場合のタイヤモデル及び流体モデルの少なくとも一方のモデルに生じる物理量を求め、求めた物理量によりタイヤ性能を予測するステップ、(c)予測したタイヤ性能及び制約条件を考慮しながら目的関数の最適値を与える設計変数の値を求めるステップ、(d)目的関数の最適値を与える設計変数に基づいてタイヤを設計するステップ、の各ステップを含んでいる。
【0013】
請求項2の発明は、請求項1に記載の空気入りタイヤの設計方法であって、前記ステップ(b)は、(e)前記タイヤモデルの変形計算を実行するステップ、(f)前記流体モデルの流動計算を実行するステップ、(g)前記ステップ(e)での変形計算後のタイヤモデルと、前記ステップ(f)での流動計算後の流体モデルとの境界面を認識し、認識した境界面に関する境界条件をタイヤモデル及び流体モデルに付与しかつ、境界条件を付与した後のタイヤモデル及び流体モデルについて前記タイヤモデルの変形計算及び前記流体モデルの流動計算を予め定めた時間繰り返して計算させ、前記流体モデル擬似流動状態とるステップ、(h)前記流体モデルを擬似流動状態とした前記ステップ(e)またはステップ(f)におけるタイヤモデル及び流体モデルの少なくとも一方のモデルに生じる物理量を求めるステップ、(i)前記物理量によりタイヤ性能を予測するステップ、を含むことを特徴とする。
【0014】
請求項3の発明は、請求項1または2に記載の空気入りタイヤの設計方法であって、前記ステップ(a)は、流体モデルと接する路面モデルをさらに定めたことを特徴とする。
【0015】
請求項4の発明は、請求項2または請求項3の何れか1項に記載の空気入りタイヤの設計方法であって、前記ステップ(e)は、所定時間だけ繰返し計算することを特徴とする。
【0016】
請求項5の発明は、請求項乃至請求項4の何れか1項に記載の空気入りタイヤの設計方法であって、前記ステップ(f)は、一定時間だけ繰返し計算することを特徴とする。
【0017】
請求項6の発明は、請求項5に記載の空気入りタイヤの設計方法であって、前記予め定めた時間は、前記一定時間と同時間だけ繰返し計算することを特徴とする。
【0018】
請求項7の発明は、請求項1乃至請求項6の何れか1項に記載の空気入りタイヤの設計方法であって、前記タイヤモデルを転動させる場合には、前記ステップ(a)において、内圧充填時及び荷重計算時の計算を施すと共に、回転変位または速度或いは直進変位または速度を付与したタイヤモデルを定めることを特徴とする。
【0019】
請求項8の発明は、請求項1乃至請求項7の何れか1項に記載の空気入りタイヤの設計方法であって、前記タイヤモデルを転動させる場合には、前記ステップ(a)において、前記流体モデルの上面では流体が自由に流出しかつ、前記流体モデルの上面以外の他面では流体が流入及び流出しないことを表す流入流出条件を前記流体モデルに付与することを特徴とする。
【0020】
請求項9の発明は、請求項1乃至請求項7の何れか1項に記載の空気入りタイヤの設計方法であって、前記タイヤモデルを転動させない場合には、前記ステップ(a)において、内圧充填時の計算を施すと共に、該計算後に荷重計算を施したタイヤモデルを定めることを特徴とする。
【0021】
請求項10の発明は、請求項1乃至請求項7の何れか1項または請求項9に記載の空気入りタイヤの設計方法であって、前記タイヤモデルを転動させない場合には、前記ステップ(a)において、前記流体モデルの前面では流体が進行速度で流入し、前記流体モデルの後面及び上面では流体が自由に流出し、前記流体モデルの側面及び下面では流体が流入及び流出しないことを表す流入流出条件を前記流体モデルに付与することを特徴とする。
【0022】
請求項11の発明は、請求項1乃至請求項10の何れか1項に記載の空気入りタイヤの設計方法であって、前記タイヤモデルは、部分的にパターンを有することを特徴とする。
【0023】
請求項12の発明は、請求項1乃至請求項11の何れか1項に記載の空気入りタイヤの設計方法であって、前記路面モデルは、DRY、WET、氷上、雪上、及び非舗装の少なくとも1つの路面状態を表す摩擦係数μを選択することによって路面状態を定めることを特徴とする。
【0024】
請求項13の発明は、請求項乃至請求項12の何れか1項に記載の空気入りタイヤの設計方法であって、前記ステップ(g)において、前記タイヤモデルと流体モデルの干渉部分を生じさせ、当該干渉部分を認識し、タイヤモデル表面を境界面として、前記流体モデルを流体要素で分割することを特徴とする。
【0025】
請求項14の発明は、請求項1乃至請求項13の何れか1項に記載の空気入りタイヤの設計方法であって、前記流体モデルは、少なくとも水を含み、前記物理量としてタイヤモデルの接地面積及び接地圧の少なくとも一方を用い、前記タイヤ性能としてタイヤWET性能を予測することを特徴とする。
【0026】
請求項15の発明は、請求項1乃至請求項13の何れか1項に記載の空気入りタイヤの設計方法であって、前記流体モデルは、少なくとも水を含み、前記物理量として流体モデルの圧力、流量、及び流速の少なくとも1つを用い、前記タイヤ性能としてタイヤWET性能を予測することを特徴とする。
【0027】
請求項16の発明は、請求項1乃至請求項13の何れか1項に記載の空気入りタイヤの設計方法であって、前記流体モデルは、水及び雪の少なくとも1つを含み、前記物理量としてタイヤモデルの氷路面及び雪路面の少なくとも一方の路面での接地面積、接地圧、及び剪断力の少なくとも1つを用い、前記タイヤ性能としてタイヤ氷雪上性能を予測することを特徴とする。
【0028】
請求項17の発明は、請求項1乃至請求項13の何れか1項に記載の空気入りタイヤの設計方法であって、前記流体モデルは、水及び雪の少なくとも1つを含み、前記物理量として流体モデルの氷路面及び雪路面の少なくとも一方での流体モデルの圧力、流量、及び流速の少なくとも1つを用い、前記タイヤ性能としてタイヤ氷雪上性能を予測することを特徴とする。
【0029】
請求項18の発明は、請求項1乃至請求項13の何れか1項に記載の空気入りタイヤの設計方法であって、前記流体モデルは、少なくとも空気を含み、前記物理量として流体モデルの圧力、流量、流れ速度、エネルギー、及びエネルギー密度の少なくとも1つを用い、前記タイヤ性能としてタイヤ騒音性能を予測することを特徴とする。
【0030】
請求項19の発明は、請求項1の空気入りタイヤの設計方法であって、前記ステップ(c)では、設計変数の単位変化量に対する目的関数の変化量の割合である目的関数の感度及び設計変数の単位変化量に対する制約条件の変化量の割合である制約条件の感度に基づいて制約条件を考慮しながら目的関数の最適値を与える設計変数の変化量を予測すると共に、設計変数を予測量に相当する量変化させたときの目的関数の値及び設計変数を予測量に相当する量変化させたときの制約条件の値を演算し、予測値と演算値とに基づいて、制約条件を考慮しながら目的関数の最適値を与える設計変数の値を求めることを特徴とする。
【0031】
請求項20の発明は、請求項1に記載の空気入りタイヤの設計方法であって、前記設計変数は、カーカスライン、折り返しプライライン、タイヤ外面形状を表すライン、タイヤクラウン形状を表すライン、及び補強材ラインの少なくとも1つのラインの形状を表す関数と、ビードフィラーのゲージ分布、ゴムチェーファーのゲージ分布、サイドゴムのゲージ分布、トレッドゴムのゲージ分布、トレッドベースゴムのゲージ分布、内面補強ゴムのゲージ分布、ベルト間ゴムのゲージ分布、及びベルトエンドゴムのゲージ分布の少なくとも1つのタイヤゴム部材のゲージ分布を表す変数と、各ベルト層の角度、幅、コード種類、及び打ち込み密度の少なくとも1つのベルト部の構造を表す変数と、ブロックの形状及びサイプの位置、本数、及び長さの少なくとも1つのパターンの形状を表す変数と、の少なくとも1つを含むことを特徴とする。
【0032】
本発明では、まず、これから評価するタイヤの設計案(タイヤ形状・構造・材料・パターンの変更など)の性能を予測するため、タイヤ設計案を数値解析上のモデルに落とし込む。すなわち、数値解析が可能なタイヤモデル(数値解析モデル)を作成する。更に、目標性能に関わる流体及び路面のモデル化を行い、流体モデル及び路面モデル(数値解析モデル)を作成し、タイヤ、流体、路面の3 者を同時に考慮した数値解析を行い、目標性能について数値予測する。この予測結果からタイヤ設計案の可否を判定することができ、結果良好なら設計案を採用、もしくは更にこの設計案のさらなる性能評価向上が可能となる。これらの手順であれば、タイヤを製造して性能評価をする回数が極めて少なくなるため、タイヤ開発を効率化できる。
【0033】
従って、性能予測に基づくタイヤ開発を行うためには、効率良く、精度の良いタイヤ性能予測のための数値解析モデルが不可欠である。そこで、本発明では、タイヤ性能を予測するため、ステップ(a)において、内部構造を含むタイヤ断面形状を少なくとも含みかつ接地及び転動の少なくとも一方により変形を与えることが可能なパターン形状を有するタイヤモデルと、流体で少なくとも一部が満たされかつタイヤモデルの少なくとも一部と接触する流体モデルを定める。なお、路面モデルをさらに定めることもできる。
【0034】
また、ステップ(a)では、タイヤ性能評価用物理量を表す目的関数、タイヤ断面形状またはタイヤ構造を決定する設計変数、及びタイヤ断面形状またはタイヤ構造を制約する制約条件を定める。このタイヤモデルには、タイヤ外面形状を表すラインの他、タイヤクラウン形状を表すライン、タイヤ内部のベルトを表すベルトライン、タイヤのカーカスを表すカーカスライン、タイヤ内部のカーカスプライの折り返しラインを表す折り返しプライライン、各種補強材のラインを表す補強材ライン、タイヤゴム部材のゲージ分布及びベルト部の構造を表す各ベルト層の角度、幅、コード種類、打ち込み密度、並びにパターンの形状を表す、ブロック形状、ブロック溝壁角度、サイプの位置、本数、長さを含ませることができる。
【0035】
また、タイヤモデルは、複数の要素に分割する有限要素法と呼ばれる手法を用いても良く解析的手法を用いても良い。タイヤ性能評価用物理量を表す目的関数としては、操縦安定性を向上させるための空気充填時のタイヤ周方向ベルト張力や横ばね定数等のタイヤ性能の優劣を支配する物理量を使用することができる。タイヤ断面形状を決定する設計変数としては、カーカスライン、折り返しプライライン、タイヤ外面形状を表すライン、タイヤクラウン形状を表すライン、各種補強材のラインを表す補強材ラインの少なくとも1つのラインを表す関数等を用いることができ、タイヤ構造を決定する設計変数としては、ビードフィラーのゲージ分布、ゴムチェーファーのゲージ分布、サイドゴムのゲージ分布、トレッドゴムのゲージ分布、トレッドベースゴムのゲージ分布、内面補強ゴムのゲージ分布、ベルト間ゴムのゲージ分布、及びベルトエンドゴムのゲージ分布の少なくとも1つのタイヤゴム部材のゲージ分布を表す変数、ベルト層の角度、ベルト層の幅、プライの高さ、プライの折返し量、ビード部補強材の角度、幅、位置、材質等のベルト部及びビード、サイド部の構造を表す変数を用いることができる。
【0036】
また、パターンを決定する設計変数としては、ブロックの形状、ブロック溝壁角度、サイプの位置、本数、長さ等のパターンの形状を表す変数を用いることができる。タイヤ断面形状やタイヤ構造を制約する制約条件としては、カーカスラインのペリフェリ値の制約、上下一次固有振動数の制約、ベルト層の角度の制約、ベルト層の幅、タイヤ寸度、バネ定数、タイヤ変形量、タイヤ重量、応力、歪、歪エネルギー、転がり抵抗の制約等がある。なお、目的関数、設計変数及び制約条件は、上記の例に限られるものではなく、タイヤ設計目的に応じて種々のものを定めることができる。
【0037】
次に、ステップ(b)では、タイヤモデルの変形状態及び前記流体モデルの擬似流動状態の少なくとも一方の状態となる場合のタイヤモデル及び流体モデルの少なくとも一方のモデルに生じる物理量によりタイヤ性能を予測する。このステップ(b)は、ステップ(e)でタイヤモデルの変形計算を実行し、ステップ(f)で流体モデルの流動計算を実行し、ステップ(g)でステップ(e)での変形計算後のタイヤモデルと、ステップ(f)での流動計算後の流体モデルとの境界面を認識し、認識した境界面に関する境界条件をタイヤモデル及び流体モデルに付与しかつ、前記流体モデルが擬似流動状態となるまで計算させ、ステップ(h)でステップ(e)またはステップ(f)におけるタイヤモデル及び流体モデルの少なくとも一方のモデルに生じる物理量を求め、ステップ(i)で前記物理量によりタイヤ性能を予測することができる。
【0038】
前記ステップ(e)のタイヤモデルの変形計算は、接地及び転動の少なくとも一方により変形が与えられたときの変形計算を実行することができる。この場合、入力として、接地及び転動の少なくとも一方を定めれば良い。
【0039】
また、認識した境界面に関する境界条件をタイヤモデル及び流体モデルに付与するとき、境界面より路面モデル側に流体が存在するように流体モデルを定めることができる。
【0040】
なお、前記タイヤモデルの変形計算及び流動計算の少なくとも一方では繰返し計算を行うことができる。タイヤモデルの変形計算では、繰返し計算を行う所定時間の経過時間を、10msec以下を採用することができ、好ましくは1msec以下、更に好ましくは1μ・sec以下を採用することができる。また、流動計算では、繰返し計算を行う一定時間の経過時間を、10msec以下を採用することができ、好ましくは1msec以下、更に好ましくは1μ・sec以下を採用することができる。この経過時間が長すぎると、流体モデル中の流体がタイヤの挙動に合った擬似流動状態とならず、数値モデルとしての精度が悪化する。このため、経過時間は適正な値を採用する必要がある。
【0041】
また、流体モデルが擬似流動状態になるまでの計算でも、繰返し計算を行うことができる。この計算では、繰返し計算を行う所定時間の経過時間を、10msec以下を採用することができ、好ましくは1msec以下、更に好ましくは1μ・sec以下を採用することができる。
【0042】
前記タイヤモデルは、部分的にパターンを有するものであっても良い。また、前記路面モデルは、路面状態によりDRY、WET、氷上、雪上、非舗装などにより摩擦係数μを適正な値に選択することで、実際の路面状態を再現させることができる。
【0043】
前記境界条件を付与するとき、流体モデルにタイヤモデル表面を流体の境界面として認識させることが重要であるが、流体モデルを構成する微小要素をタイヤ(特にパターン)モデルに対して常に十分小さく取ることで流体モデルの構成要素を増加させることは計算時間の増大を招き、困難である。そこで、流体モデルを構成する微小要素で、ある程度大きく取って計算時間の増大を防ぎ、かつタイヤモデルと流体モデルとに干渉部分を有(オーバーラップ)させ、その干渉部分を認識し、タイヤモデル表面を境界面として、前記流体モデルを分割することでタイヤモデルと流体モデルの境界面を精度よく認識させることが好ましい。
【0044】
なお、前記流体モデルが少なくとも水を含み、タイヤモデル接地面積、接地圧を物理量とすればタイヤWET性能を予測することができる。また、前記流体モデルが少なくとも水を含み、流体モデルの圧力、流量、流れ速度、を物理量としてもタイヤWET性能を予測することができる。
【0045】
また、前記流体モデルが水及び雪の少なくとも一方を含み、タイヤモデルの氷路面及び雪路面の少なくとも一方の路面での接地面積、接地圧、及び剪断力の少なくとも1つを物理量として用いれば、タイヤ氷雪上性能を予測することができる。また、前記流体モデルが水及び雪の少なくとも一方を含み、流体モデルの氷路面及び雪路面の少なくとも一方の路面での流体モデルの圧力、流量、及び流速の少なくとも1つを物理量として用いても、タイヤ氷雪上性能を予測することができる。
【0046】
さらに、前記流体モデルが少なくとも空気を含み、流体モデルの圧力、流量、流れ速度、エネルギー、及びエネルギー密度の少なくとも1つを物理量として用いれば、タイヤ騒音性能を予測することができる。
【0047】
次に、ステップ(c)では、予測したタイヤ性能及び制約条件を考慮しながら目的関数の最適値を与える設計変数の値を求める。この場合には、設計変数の単位変化量に対する目的関数の変化量の割合である目的関数の感度及び設計変数の単位変化量に対する制約条件の変化量の割合である制約条件の感度に基づいて制約条件を考慮しながら目的関数の最適値を与える設計変数の変化量を予測すると共に、設計変数を予測量に相当する量変化させたときの目的関数の値及び設計変数を予測量に相当する量変化させたときの制約条件の値を演算し、予測値と演算値とに基づいて制約条件を考慮しながら目的関数の最適値を与える設計変数の値を求めると効果的である。これによって、予測したタイヤ性能及び制約条件を考慮し目的関数の値が最適になるときの設計変数の値が求められる。
【0048】
また、本発明者等は種々検討を加えた結果、異分野に利用されている「遺伝的アルゴリズム手法」をタイヤと言う特殊分野に応用することに着目し、あらゆる検討を試み、遺伝的アルゴリズムの過程でタイヤの性能予測、すなわち排水性、雪上性能、騒音性能など流体を介する実際に使用するタイヤ性能を予測し、特にタイヤ接地時及び回転時の流体をどのように流動状態に近づけ、過渡的解析を可能して、タイヤ開発を効率化し、良好な性能のタイヤの提供を容易にするため、具体的にそれをタイヤ設計方法として確立した。
【0049】
詳細には、請求項21の発明は、請求項1の空気入りタイヤの設計方法であって、前記ステップ(a)では、内部構造を含むタイヤ断面形状を少なくとも含みかつ接地及び転動の少なくとも一方により変形を与えることが可能なパターン形状を有する複数個のタイヤモデルからなる選択対象集団を定め、該選択対象集団の各タイヤモデルについて、タイヤ性能評価用物理量を表す目的関数、タイヤ断面形状またはタイヤ構造またはパターン形状を決定する設計変数、タイヤ断面形状、タイヤ構造、パターン形状、性能評価用物理量及びタイヤ寸度の少なくとも1つを制約する制約条件、及び目的関数及び制約条件から評価できる適応関数を定め、前記ステップ(c)では、適応関数に基づいて前記選択対象集団から2つのタイヤモデルを選択し、所定の確率で各タイヤモデルの設計変数を交叉させて新規のタイヤモデルを生成すること及び少なくとも一方のタイヤモデルの設計変数の一部を変更させて新規のタイヤモデルを生成することの少なくとも一方を行い、設計変数を変化させたタイヤモデルの目的関数、制約条件及び適応関数を求めて該タイヤモデル及び設計変数を変化させなかったタイヤモデルを保存しかつ保存したタイヤモデルが所定数になるまで繰り返し、保存した所定数のタイヤモデルからなる新規集団が所定の収束条件を満たすか否かを判断し、収束条件を満たさないときには該新規集団を前記選択対象集団として該選択対象集団が所定の収束条件を満たすまで繰り返すと共に、該所定の収束条件を満たしたときに保存した所定数のタイヤモデルのなかで制約条件を考慮しながら目的関数の最適値を与える設計変数の値を求める、ことを特徴とする。
【0050】
請求項22の発明は、請求項21に記載の空気入りタイヤの設計方法であって、前記ステップ(c)において、設計変数を変化させたタイヤモデルについて、設計変数の単位変化量に対する目的関数の変化量の割合である目的関数の感度及び設計変数の単位変化量に対する制約条件の変化量の割合である制約条件の感度に基づいて制約条件を考慮しながら目的関数の最適値を与える設計変数の変化量を予測すると共に、設計変数を予測量に相当する量変化させたときの目的関数の値及び設計変数を予測量に相当する量変化させたときの制約条件の値を演算し、目的関数の値及び制約条件の値から適応関数を求めて該タイヤモデル及び設計変数を変化させなかったタイヤモデルを保存しかつ保存したタイヤ基本モデルが所定数になるまで繰り返すことを特徴とする。
【0051】
請求項21では、前記ステップ(a)では、内部構造を含むタイヤ断面形状を少なくとも含みかつ接地及び転動の少なくとも一方により変形を与えることが可能なパターン形状を有する複数個のタイヤモデルからなる選択対象集団を定め、該選択対象集団の各タイヤモデルについて、タイヤ性能評価用物理量を表す目的関数、タイヤ断面形状またはタイヤ構造を決定する設計変数、タイヤ断面形状、タイヤ構造、性能評価用物理量及びタイヤ寸度の少なくとも1つを制約する制約条件、及び目的関数及び制約条件から評価できる適応関数を定め、前記ステップ(c)では、適応関数に基づいて前記選択対象集団から2つのタイヤモデルを選択し、所定の確率で各タイヤモデルの設計変数を交叉させて新規のタイヤモデルを生成すること及び少なくとも一方のタイヤモデルの設計変数の一部を変更させて新規のタイヤモデルを生成することの少なくとも一方を行い、設計変数を変化させたタイヤモデルの目的関数、制約条件及び適応関数を求めて該タイヤモデル及び設計変数を変化させなかったタイヤモデルを保存しかつ保存したタイヤモデルが所定数になるまで繰り返し、保存した所定数のタイヤモデルからなる新規集団が所定の収束条件を満たすか否かを判断し、収束条件を満たさないときには該新規集団を前記選択対象集団として該選択対象集団が所定の収束条件を満たすまで繰り返すと共に、該所定の収束条件を満たしたときに保存した所定数のタイヤモデルのなかで制約条件を考慮しながら目的関数の最適値を与える設計変数の値を求めることも効果的である。
【0052】
この場合、ステップ(c)において、設計変数を変化させたタイヤモデルについて、設計変数の単位変化量に対する目的関数の変化量の割合である目的関数の感度及び設計変数の単位変化量に対する制約条件の変化量の割合である制約条件の感度に基づいて制約条件を考慮しながら目的関数の最適値を与える設計変数の変化量を予測すると共に、設計変数を予測量に相当する量変化させたときの目的関数の値及び設計変数を予測量に相当する量変化させたときの制約条件の値を演算し、目的関数の値及び制約条件の値から適応関数を求めて該タイヤモデル及び設計変数を変化させなかったタイヤ基本モデルを保存しかつ保存したタイヤ基本モデルが所定数になるまで繰り返すことが更に効果的である。これによっても、制約条件を考慮し目的関数の値が最適になるときの設計変数の値が求められる。なお、目的関数及び制約条件から評価できる適応関数は、目的関数及び制約条件からタイヤモデルに対する適応度を求める関数を使用することができる。また、目的関数、設計変数、制約条件及び適応関数は、上記の例に限られるものではなく、タイヤ設計目的に応じて種々のものを定めることができる。さらに、前記のタイヤ基本モデルの設計変数の交叉には、選択した2つのタイヤモデルの設計変数についてその一部または所定部位以降の設計変数を交換する方法がある。さらにまた、タイヤモデルの設計変数の一部の変更には、予め定めた確率等で定まる位置の設計変数を変更(突然変異)する方法がある。
【0053】
さらに、本発明者は種々検討を加えた結果、異分野に利用されている「高等動物の神経回路網を工学的にモデル化された非線形予測技術、例えばニューラル・ネットワーク」及び「最適化設計手法」をタイヤ設計と言う特殊分野に応用することに着目し、検討を試み、具体的にタイヤの設計方法として確立した。
【0054】
詳細には、請求項23の発明にも記載したように、請求項1に記載の空気入りタイヤの設計方法であって、前記ステップ(a)では、内部構造を含むタイヤ断面形状を少なくとも含みかつ接地及び転動の少なくとも一方により変形を与えることが可能なパターン形状を有するタイヤの設計パラメータと該タイヤの性能との非線形な対応を関係付ける変換系を定め、前記制約条件として前記タイヤ性能及び前記タイヤの製造条件の少なくとも一方の許容範囲を制約する制約条件を定め、前記ステップ(c)では前記ステップ(a)で定めた変換系を用いて、前記目的関数及び前記制約条件に基づいて目的関数の最適値を与えるタイヤの設計パラメータを求め、前記ステップ(d)ではタイヤの設計パラメータに基づいてタイヤを設計することを特徴とする。
【0055】
請求項24の発明は、請求項23に記載の空気入りタイヤの設計方法であって、前記ステップ(c)では、前記タイヤの設計パラメータを設計変数と定め、制約条件を考慮しながら前記ステップ(a)で定めた変換系を用いて目的関数の最適値を与える設計変数の値を求め、前記ステップ(d)では目的関数の最適値を与える設計変数に基づいてタイヤを設計することを特徴とする。
【0056】
請求項25の発明は、請求項23または24に記載の空気入りタイヤの設計方法であって、前記ステップ(a)において、前記タイヤの設計パラメータを前記タイヤ性能に変換するように学習された多層フィードフォワード型ニューラルネットワークのデータで前記変換系を構成したことを特徴とする。
【0057】
タイヤ性能、例えば操縦安定性やベルト耐久力等の値はタイヤの設計パラメータ、例えば内部構造を含むタイヤ断面形状やタイヤの構造で定まる。しかし、タイヤ断面形状やタイヤ構造の値を線形的に変化させてもタイヤ性能が線形に変化しない場合が多い。そこで、本発明のステップ(a)では内部構造を含むタイヤ断面形状を少なくとも含みかつ接地及び転動の少なくとも一方により変形を与えることが可能なパターン形状を有するタイヤの設計パラメータと該タイヤの性能との非線形な対応を関係付ける変換系を定めている。また、制約条件として前記タイヤ性能及び前記タイヤの製造条件の少なくとも一方の許容範囲を制約する制約条件を定めている。この変換系は、ニューラルネットワーク等の神経回路網を工学的にモデル化した非線形予測技術を用いて定めることができる。また、タイヤ性能を表す目的関数としては、例えば操縦安定性を向上させるための空気充填時のタイヤ周方向ベルト張力や横ばね定数、直進もしくは横力時の接地面内の接地特性等のタイヤ性能の優劣を支配する物理量を使用することができる。タイヤ性能及びタイヤの設計パラメータの少なくとも一方の許容範囲を制約する制約条件としては、例えばタイヤ断面形状やタイヤ構造を制約する制約条件としては、カーカスラインのペリフェリ値の制約、上下一次固有振動数の制約、ベルト層の角度の制約、ベルト層の幅、タイヤ寸度、バネ定数、タイヤ変形量、タイヤ重量、応力、歪、歪エネルギー、転がり抵抗の制約等がある。なお、目的関数、及び制約条件は、上記の例に限られるものではなく、タイヤ設計目的に応じて種々のものを定めることができる。
【0058】
ステップ(c)では前記ステップ(a)で定めた変換系を用いて、前記目的関数及び前記制約条件に基づいて目的関数の最適値を与えるタイヤの設計パラメータを求め、ステップ(d)でタイヤの設計パラメータに基づいてタイヤを設計する。これにより、タイヤの設計パラメータとタイヤの性能との非線形な対応を関係付ける変換系が定められ、変換系により複数のタイヤの設計パラメータとその性能との対応が関連付けられる相互の関係を見出すことができる。従って、目的関数の最適値を与えるタイヤの設計パラメータを求めて該設計パラメータに基づいてタイヤを設計することで、高性能なタイヤの設計が可能となる。
【0059】
タイヤを設計する場合、タイヤの設計パラメータを設計変数と定め、制約条件を考慮しながらステップ(a)で定めた変換系を用いて目的関数の最適値を与える設計変数の値を求め、目的関数の最適値を与える設計変数に基づいてタイヤを設計することができる。このように、制約条件を考慮することにより、タイヤ性能及びタイヤの設計パラメータの少なくとも一方の許容範囲を考慮することができ、設計範囲を予め特定したり、所望の範囲を設定できる。
【0060】
また、設計変数の値を求める場合には、設計変数の単位変化量に対する目的関数の変化量の割合である目的関数の感度及び設計変数の単位変化量に対する制約条件の変化量の割合である制約条件の感度に基づいて制約条件を考慮しながら目的関数の最適値を与える設計変数の変化量を予測すると共に、設計変数を予測量に相当する量変化させたときの目的関数の値及び設計変数を予測量に相当する量変化させたときの制約条件の値を演算し、予測値と演算値とに基づいて、制約条件を考慮しながらステップ(a) で定めた変換系を用いて目的関数の最適値を与える設計変数の値を求めると効果的である。これによって、制約条件を考慮し目的関数の値が最適になるときの設計変数の値が求められる。そして、目的関数の最適値を与える設計変数に基づいてタイヤの設計パラメータ等を変更することによりタイヤを設計できる。
【0061】
さらにまた、本発明では、トレッドパターンに存在する各ブロック内のブロック高さを、タイヤが受ける入力に対する接地圧に対応して一意的に適正化するタイヤを設計することによりタイヤパターン内またはブロック内の接地圧の不均一を解消している。すなわち、ブロック高さを一定に設定した踏面形状の場合には、接地圧力分布特性は、ブロック内で不均一になる。本発明では、踏面形状を変更することによって、ブロック内で略均一になる接地圧力分布特性を得るこのができる。
【0062】
このため、本発明では、まず、形状基本モデルを作成し、これに入力条件を与える。このときに求められる接地圧から目的関数値を算出する。そして、設計変数をブロックの踏面形状として、形状変更を行い、この新形状を用いたモデルに再び入力を与え、接地圧の分布を得る。この作業を目的関数の最適値が与えられるまで繰り返す。なお、本発明では、制約条件を有した場合にも適用が可能であり、この場合は入力を与えた後に目的関数値及び制約関数値を求める。この場合の設計終了は、制約条件内で目的関数の最適値が得られた場合となる。この最適な設計変数に基づいてタイヤを設計する。
【0063】
具体的には、請求項26に記載の発明の空気入りタイヤの設計方法は、請求項1に記載の空気入りタイヤの設計方法であって、前記ステップ(a)では、内部構造を含むブロックの単体の形状、内部構造を含むタイヤクラウン部のうち1部のパターン形状、及び内部構造を含むタイヤ周方向に運続する陸部の形状のうち選択された1つの形状を表す形状基本モデルをさらに定めると共に、前記形状基本モデルに少なくとも1つの入力条件を与え、かつ前記ブロックの単体の形状またはパターン形状もしくは陸部の形状の少なくとも一部を表す踏面形状を設計変数とし、前記入力条件におけるタイヤ接地圧を演算して目的関数として定めることを特徴とする。
【0064】
請求項27に記載の発明は、請求項26に記載の空気入りタイヤの設計方法であって、前記制約条件として、タイヤ接地面積、及び設計変数の変化範囲の少なくとも一方を更に定め、前記ステップ(c)は、前記制約条件を考慮しながら前記目的関数の最適値が与えられるまで設計変数の値を変化させることを特徴とする。
【0065】
請求項28の発明は、請求項27に記載の空気入りタイヤの設計方法であって、前記設計変数は、タイヤ平均接地圧より高い箇所及び低い箇所の少なくとも一方の箇所の設計変数を変化させることを特徴とする。
【0066】
形状基本モデルは、内部構造を含むブロックの単体の形状、内部構造を含むタイヤクラウン部のうち1部のパターン形状、及び内部構造を含むタイヤ周方向に運続する陸部の形状のうち選択された1つの形状を表す。
【0067】
ブロック単体の形状を表す形状基本モデルとしては、ブロック単体の外面形状を特定するためのラインを表す関数や変曲点の座標値を表す変数から構成することができる。また、内部構造を含むタイヤクラウン部のうちの1部のパターン形状を表す形状基本モデルとしては、タイヤクラウン部のうちの1つの陸部の路面接地側のパターン形状を幾何学的に解析可能な関数、例えば長方形や菱形等の多角形を定めるための関数で構成できる。また、内部構造を含むタイヤ周方向に連続する陸部の形状を表す形状基本モデルとしては、タイヤ断面形状を表すラインを表す関数や変曲点の座標値を表す変数から構成することができる。これら形状基本モデルは、複数の要素に分割する有限要素法と呼ばれる手法によるモデルを用いても良く解析的手法によるモデルを用いても良い。
【0068】
また、前記形状基本モデルに少なくとも1つの入力条件を与える。入力条件には、付加する荷重を表す荷重条件、剪断方向を表す方向条件がある。次に、前記ブロックの単体の形状またはパターン形状もしくは陸部の形状の少なくとも一部を表す踏面形状を設計変数とし、入力条件におけるタイヤ接地圧を演算して目的関数として定める。
【0069】
また、ステップ(c)では、目的関数の最適値が与えられる設計変数の値を求めることができ、また、目的関数の最適値が与えられるまで設計変数の値を変化させながら演算することにより設計変数の値を求めることができる。
【0070】
前記踏面形状を設計変数とし、入力条件におけるタイヤ接地圧を演算して目的関数として定めるとき、計算負荷軽減等のために制約条件を考慮することが好ましい。そこで、制約条件としてタイヤ接地面積及び設計変数の変化範囲の少なくとも一方を更に定め、ステップ(c)では、制約条件を考慮しながら目的関数の最適値が与えられるまで設計変数の値を変化させる。この設計変数の変化範囲は、踏面の範囲及びブロック高さの何れかで表すことができる。
【0071】
前記目的関数の最適値が与えられる設計変数の値を求めるときは、タイヤ平均接地圧より高い箇所及び低い箇所の少なくとも一方の箇所の設計変数を変化させることができる。このように、タイヤ平均接地圧より高い箇所の設計変数を変化させる場合には、ブロック高さを減少させるように変化させることができる。また、タイヤ平均接地圧より低い箇所の設計変数を変化させる場合には、ブロック高さを増加させるように変化させることができる。さらに、前記タイヤ平均接地圧からの各偏差に応じてブロック高さを変化させることにより、設計変数を変化させることもできる。
【0072】
なお、前記入力条件が複数ある場合には、ブロック高さの変化量が大きい入力条件を優先して変化させることができる。
【0073】
また、前記設計変数により表される踏面形状の少なくとも1部は、多項式、区分多項式、スプライン関数及び有理関数の何れかの数式で表すことができる。これらの数式で表した踏面形状の少なくとも1部を変化させる場合には、計算時問や計算機の能力を考慮して、毎演算ごと或いは数演算に1回でも良い。
【0074】
なお、上記のタイヤの設計方法により設計されたタイヤの設計パラメータによる構造等によってタイヤを形成することにより、形成されたタイヤは、性能が最良の設計パラメータで構成されることになり、製造条件やコスト等の適用条件により最適な設計パラメータの内容を直接的に決定することができる。
【0075】
なお、上記の空気入りタイヤの設計方法により設計したタイヤを製造すれば、タイヤ性能が良好なタイヤを得ることができる。そこで、本発明では、次のようにしてタイヤ用加硫金型の設計、及びタイヤの製造を行うことができる。
【0076】
請求項29の発明のタイヤ用加硫金型設計方法は、前記請求項1乃至請求項28の何れか1項に記載の空気入りタイヤの設計方法によって設計したタイヤまたはタイヤモデルに基づいて、タイヤ用加硫金型を設計する。
【0077】
請求項30の発明のタイヤ用加硫金型製造方法は、前記請求項29に記載のタイヤ用加硫金型設計方法によって設計したタイヤ用加硫金型を製造する。
【0078】
請求項31の発明の空気入りタイヤの製造方法は、前記請求項29に記載のタイヤ用加硫金型設計方法によって設計したタイヤ用加硫金型を製作し、該加硫金型を用いて空気入りタイヤを製造する。
【0079】
請求項32の発明の空気入りタイヤの製造方法は、前記請求項1乃至請求項28の何れか1項に記載の空気入りタイヤの設計方法によって設計したタイヤまたはタイヤモデルに基づいて、空気入りタイヤを製造する。
【0080】
すなわち、タイヤを製造するためのタイヤ用加硫金型を設計する場合、請求項1乃至請求項28の何れか1項に記載の空気入りタイヤの設計方法によって設計したタイヤまたはタイヤモデルに基づいて、タイヤ用加硫金型を設計する。このようにしてタイヤ性能を予測し、そのタイヤ性能のタイヤモデルに基づいてタイヤ用加硫金型を設計するようにすることで、製造されるべきタイヤまわりの流体の流れを評価し、流れのスムーズさ、乱れの発生を予測し、タイヤ性能を予測しつつタイヤ製造のための金型設計に役立てることができる。
【0081】
このようにして設計されたタイヤ用加硫金型を製造すれば、予測したタイヤ性能となるべきタイヤの製造が容易となる。また、このタイヤ用加硫金型を製造し、それを用いてタイヤを製造すれば、そのタイヤ性能が予測したものと略一致し、流体の流れに対する評価や、流れのスムーズさ、乱れの発生等を考慮したタイヤを得ることができる。
【0082】
また、タイヤを製造する場合、請求項29に記載のタイヤ用加硫金型設計方法によって設計したタイヤ用加硫金型を製作し、該加硫金型を用いて空気入りタイヤを製造する、または請求項32にも記載したように、請求項1乃至請求項28の何れか1項に記載の空気入りタイヤの設計方法によって設計したタイヤまたはタイヤモデルに基づいて、空気入りタイヤを製造するようにすれば、タイヤ性能は予測したものと略一致し、流体の流れに対する評価や、流れのスムーズさ、乱れの発生等を考慮したタイヤを得ることができる。
【0083】
上記タイヤの設計方法は、請求項33にも記載したように、内部構造を含むタイヤ断面形状を少なくとも含みかつ接地及び転動の少なくとも一方により変形を与えることが可能でかつ周方向と交差する傾斜溝を含むパターン形状を有するタイヤモデルと、流体で一部または全部が満たされかつ前記タイヤモデルの少なくとも一部と接触する流体モデルと、タイヤ性能評価用物理量を表す目的関数と、タイヤ断面形状またはタイヤ構造またはパターン形状を決定するタイヤの設計パラメータと、タイヤ断面形状、タイヤ構造、パターン形状、性能評価用物理量及びタイヤ寸度の少なくとも1つを制約する制約条件と、を最適化項目として入力する入力手段と、前記タイヤモデルの変形計算を実行すると共に前記流体モデルの流動計算を実行し、前記変形計算後のタイヤモデルと前記流動計算後の流体モデルとの境界面を認識し、認識した境界面に関する境界条件をタイヤモデル及び流体モデルに付与しかつ、境界条件を付与した後のタイヤモデル及び流体モデルについて前記タイヤモデルの変形計算及び前記流体モデルの流動計算を予め定めた時間繰り返して計算させ、前記流体モデルを擬似流動状態とし、前記流体モデルの擬似流動状態となる場合のタイヤモデル及び流体モデルの少なくとも一方のモデルに生じる物理量を求め、求めた物理量によりタイヤ性能を予測する予測手段と、予測したタイヤ性能及び制約条件を考慮しながら目的関数の最適値を与えるタイヤの設計パラメータの値を求める最適化計算手段と、を備えた最適化解析装置により実現できる。
【0084】
前記予測手段はタイヤの設計パラメータと該タイヤの性能との非線形な対応関係を求める変換系計算手段を含み、この変換系計算手段は、請求項34にも記載したように、前記タイヤの設計パラメータ及びタイヤに対する適用条件と、前記タイヤ性能との非線形な対応関係を求めることができる。この適用条件にはタイヤを形成するときの製造条件やタイヤ重量または総合的なコストがある。また、変換系計算手段は、前記タイヤの設計パラメータを、前記タイヤの性能に変換するように学習された多層フィードフォワード型ニューラルネットワークで構成することができる。
【0085】
上記タイヤの設計方法は、以下の手順によるプログラムを含んだ記憶媒体により容易に持ち運びが可能な最適化解析プログラムを記憶した記憶媒体を提供できる。すなわち、請求項35にも記載したように、コンピュータによってタイヤを設計するためのタイヤの最適化解析プログラムを記憶した記憶媒体であって、最適化解析プログラム内部構造を含むタイヤ断面形状を少なくとも含みかつ接地及び転動の少なくとも一方により変形を与えることが可能でかつ周方向と交差する傾斜溝を含むパターン形状を有するタイヤモデルと、流体で一部または全部が満たされかつ前記タイヤモデルの少なくとも一部と接触する流体モデルと、タイヤ性能評価用物理量を表す目的関数と、タイヤ断面形状またはタイヤ構造またはパターン形状を決定するタイヤの設計パラメータと、タイヤ断面形状、タイヤ構造、パターン形状、性能評価用物理量及びタイヤ寸度の少なくとも1つを制約する制約条件と、を最適化項目として入力させ、前記タイヤモデルの変形計算を実行すると共に前記流体モデルの流動計算を実行し、前記変形計算後のタイヤモデルと前記流動計算後の流体モデルとの境界面を認識し、認識した境界面に関する境界条件をタイヤモデル及び流体モデルに付与しかつ、境界条件を付与した後のタイヤモデル及び流体モデルについて前記タイヤモデルの変形計算及び前記流体モデルの流動計算を予め定めた時間繰り返して計算させ、前記流体モデルを擬似流動状態とし、前記流体モデルの擬似流動状態となる場合のタイヤモデル及び流体モデルの少なくとも一方のモデルに生じる物理量を求め、求めた物理量によりタイヤ性能を予測させ、予測したタイヤ性能及び制約条件を考慮しながら目的関数の最適値を与えるタイヤの設計パラメータの値を求めさせ、目的関数の最適値を与えるタイヤの設計パラメータに基づいてタイヤを設計させるようにコンピュータに機能させる
【0086】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。本実施の形態は空気入りタイヤの設計に本発明を適用したものである。
【0087】
図1には本発明の空気入りタイヤの設計方法を実施するためのパーソナルコンピュータの概略が示されている。このパーソナルコンピュータは、データ等を入力するためのキーボード10、予め記憶された処理プログラムに従ってタイヤの性能を予測しながら制約条件を満たしかつ目的関数を最適、例えば最大または最小にする設計変数を演算するコンピュータ本体12、及びコンピュータ本体12の演算結果等を表示するCRT14から構成されている。
【0088】
なお、コンピュータ本体12には、記録媒体としてのフロッピーディスク(FD)が挿抜可能なフロッピーディスクユニット(FDU)を備えている。なお、後述する処理ルーチン等は、FDUを用いてフロッピーディスクFDに対して読み書き可能である。従って、後述する処理ルーチンは、予めFDに記録しておき、FDUを介してFDに記録された処理プログラムを実行してもよい。また、コンピュータ本体12にハードディスク装置等の大容量記憶装置(図示省略)を接続し、FDに記録された処理プログラムを大容量記憶装置(図示省略)へ格納(インストール)して実行するようにしてもよい。また、記録媒体としては、CD−ROM等の光ディスクや、MD,MO等の光磁気ディスクがあり、これらを用いるときには、上記FDUに代えてまたはさらにCD−ROM装置、MD装置、MO装置等を用いればよい。
【0089】
〔第1実施の形態〕
次に、操縦安定性を向上させるために、タイヤの性能を予測しながらタイヤ周方向ベルト張力を最適値である最大値にするカーカスラインの形状を設計する第1実施の形態について説明する。
【0090】
図2は、第1実施の形態のプログラムの処理ルーチンを示すものである。ステップ100では、設計するタイヤの設計案(タイヤ形状、構造、材料、パターンの変更など)を数値解析上のモデルに落とし込むためのタイヤモデル、タイヤ性能評価のための流体モデル及び路面モデルの作成等の初期モデル作成処理が実行される。
【0091】
ステップ100では図3に示す処理ルーチンが実行される。図3のステップ130では、評価するタイヤの設計案(タイヤ形状、構造、材料、パターンの変更など)を定め、次のステップ132でタイヤ設計案を数値解析上のモデルに落とし込むためにタイヤモデルを作成し、次のステップ134で流体モデルを作成し、次のステップ136で路面モデルの作成と共に路面状態の入力がなされ、次のステップ138で境界条件が設定される。
【0092】
詳細には、図3のステップ130では、初期のタイヤの設計案(タイヤ形状、構造、材料、パターンの変更など)を定め、次のステップ132では、タイヤ設計案を数値解析上のモデルに落とし込むため、タイヤモデルを作成する。
【0093】
このタイヤモデルの作成は、用いる数値解析手法により若干異なる。本実施の形態では数値解析手法として有限要素法(FEM)を用いるものとする。従って、上記ステップ132で作成するタイヤモデルは、有限要素法(FEM)に対応した要素分割、例えば、メッシュ分割によって複数の要素に分割され、タイヤを数値的・解析的手法に基づいて作成されたコンピュータプログラムヘのインプットデータ形式に数値化したものをいう。この要素分割とはタイヤ、流体、及び路面等の対象物を小さな幾つかの(有限の)小部分に分割することをいう。この小部分ごとに計算を行い全ての小部分について計算した後、全部の小部分を足し合わせることにより全体の応答を得ることができる。なお、数値解析手法には差分法や有限体積法を用いても良い。
【0094】
上記ステップ132のタイヤモデルの作成では、タイヤ断面のモデルを作成した後に、パターンをモデル化する。具体的には、図4に示すタイヤモデル作成ルーチンが実行される。まず、ステップ140において、タイヤ径方向断面のモデルを作成する。すなわちタイヤ断面データを作成する。このタイヤ断面データは、タイヤ外形をレーザー形状測定器等で計測し値を採取することができる。また、タイヤ内部の構造は設計図面および実際のタイヤ断面データ等から正確なものを採取する。タイヤ断面内のゴム、補教材(ベルト、プライ等、鉄・有機繊維等でできた補強コードをシート状に束ねたもの)をそれぞれ有限要素法のモデル化手法に応じてモデル化する。このようにモデル化したタイヤ径方向断面のモデルを図5に示した。次のステップ142では、2次元データであるタイヤ断面データ(タイヤ径方向断面のモデル)を周方向に一周分展開し、タイヤの3次元(3D)モデルを作成する。この場合、ゴム部は8節点ソリッド要素、補教材は角度を表現できる異方性シェル要素でモデル化することが望ましい。例えば、ゴム部分は、図8(A)に示すように、8節点ソリッド要素で扱うことができ、補強材(ベルト、プライ)の扱いは、図8(B)に示すように、シェル要素として2次元的に補強材の角度θを考慮することができる。このようにして3次元的にモデル化した3Dモデルを図6に示した。次のステップ144では、パターンをモデル化する。このパターンのモデル化は次の手順▲1▼、▲2▼の何れかで行う。この手順によって、パターンをモデル化したものを図7に示した。
【0095】
手順▲1▼:パターンの一部または全部を別個にモデル化し、上記タイヤモデルにトレッド部分として貼りつける。
【0096】
手順▲2▼:タイヤ断面データを周方向に展開する際にリブ・ラグ成分を考慮してパターンを作成する。
【0097】
上記ステップ132におけるタイヤモデルの作成の一例としては、自然平衡状態のタイヤ断面形状を基準形状とし、この基準形状を有限要素法等のように空気充填時のタイヤ周方向ベルト張力を数値的・解析的に求めることができる手法によりモデル化し、内部構造を含むタイヤ断面形状を表すと共にメッシュ分割によって複数の要素に分割されたタイヤ基本モデルを求める。なお、基準形状は、自然平衡状態のタイヤ断面形状に限らず任意の形状でよい。ここで、モデル作成とは、タイヤ形状、構造、材料、パターンを、数値的・解析的手法に基づいて作成されたコンピュータプログラムへのインプットデータ形式に数値化することをいう。図10はこのタイヤ基本モデルを示すもので、CLはカーカスライン、OLはタイヤ外面形状を表すライン、PLは折り返しプライライン、B1,B2はベルトを表すラインを各々示している。また、このタイヤ基本モデルは、カーカスラインCLの複数の法線NL1,NL2,NL3,・・・によって複数の要素に分割されている。なお、上記では、タイヤ基本モデルをカーカスラインの複数の法線によって複数の要素に分割した例について説明したが、タイヤ外面形状を表すラインの複数の法線や折り返しプライラインの複数の法線によって複数の要素に分割してもよく、また設計目的によって3角形等の任意の形状に分割してもよい。
【0098】
上記のようにしてタイヤモデルを作成した後には、図3のステップ134において、流体モデルを作成する。このステップ134では、タイヤの一部(または全部)および接地面、タイヤが移動・変形する領域を含む流体領域を分割し、モデル化する。流体領域は直方体で分割することが好ましく、この分割する直方体である流体要素は8節点のオイラーメッシュで分割することが望ましい。また、タイヤモデルと流体モデルは一部重なって定義されている。タイヤモデルはパターン部分が複雑な表面形状をしており、この表面形状にあわせて流体メッシュを定義しないで済むことは、流体モデルのモデル化の手間を大幅に削減でき、性能予測を効率的に行う上で重要である。
【0099】
なお、流体モデルとなる流体領域はタイヤが移動する領域を含むため、タイヤモデルを転動させない(以下、タイヤ非転動という)状態のモデル化では進行方向に接地長の5倍以上、幅方向は接地幅の3倍以上、深さ方向は例えば30mm以上の領域をモデル化する。タイヤモデルを転動させる(以下、タイヤ転動という)状態のモデル化では進行方向に例えば2m以上(タイヤ一回転分以上)の流体領域をモデル化する。このようにしてモデル化した流体モデルを図13に示す。図13(A)は流体モデルの斜視図であり、図13(B)は流体モデルの平面図である。
【0100】
上記のようにして、流体モデルの作成が終了すると、図3のステップ136へ進み、路面モデルの作成と共に路面状態の入力がなされる。このステップ106は、路面をモデル化し、そのモデル化した路面を実際の路面状態に設定するために入力するものである。路面のモデル化は、路面形状を要素分割してモデル化し、路面の摩擦係数μを選択設定することで路面状態を入力する。すなわち、路面状態により乾燥(DRY)、濡れ(WET)、氷上、雪上、非舗装等に対応する路面の摩擦係数μが存在するので、摩擦係数μについて適正な値を選択することで、実際の路面状態を再現させることができる。また、路面モデルは,前記流体モデルの少なくとも一部と接していれば良く,流体モデル内部に配置することも可能である。
【0101】
このようにして、路面状態の入力がなされると、図3のステップ138において、境界条件の設定がなされる。タイヤモデルの一部は流体モデルの一部に介在することになるので、流体モデルおよびタイヤモデルに解析上の境界条件を与えてタイヤおよび流体の挙動をシミュレートする必要がある。この手順は、タイヤ転動時とタイヤ非転動時の場合で異なることになる。このタイヤ転動時とタイヤ非転動時の選択は、予め入力するようにしてもよく、また本処理の実行当初に選択しても良く、さらに双方を実行し、各々について求めた後に選択するようにしても良い。
【0102】
図3のステップ138における、タイヤ転動時における境界条件の設定では、図14の処理ルーチンが実行される。まず、ステップ150へ進み、流体モデル(流体領域)20に流入・流出に関する境界条件を与える。この流入・流出に関する境界条件は図18に示すように、流体モデル(流体領域)20の上面20Aは自由に流体が流出し、その他の前面20B、後面20C、側面20D、下面20Eは壁(流入・流出なし)として扱う。次のステップ152ではタイヤモデルには内圧を与え、次のステップ154ではタイヤモデルに回転変位及び直進変位(変位は力、速度でも良い)の少なくとも一方と、予め定めた負荷荷重とを与える。なお、路面との摩擦を考慮する場合は、回転変位(または力、速度でもよい)もしくは直進変位(または力、速度でもよい)のどちらか一方のみでよい。
【0103】
また、図3のステップ138における、タイヤ非転動時における境界条件の設定では、図15の処理ルーチンが実行される。まず、ステップ160において、流体モデルに流入・流出に関する境界条件を与える。ここでは、解析を定常状態で行うため、タイヤモデルは進行方向に静止し、流体が進行速度でタイヤモデルに向かって流れる流体モデルを考える。すなわち、ステップ162において流体モデル(流体領域)内の流体に流速を与える。流入・流出に関する境界条件は図19に示すように、流体モデル(流体領域)20の前面は進行速度で流入、後面は流出とし、上面、側面、下面は転動時と同様である。そして、ステップ164においてタイヤモデルには内圧を与え、次のステップ166においてタイヤモデルに負荷荷重を与える。
【0104】
以上のようにして、初期モデル作成処理(ステップ100)の処理が終了すると、図2のステップ102へ進み、タイヤ性能評価用物理量を表す目的関数、タイヤ断面形状を制約する制約条件及びタイヤ断面形状を決定する設計変数を決定する。
【0105】
本実施の形態では、操縦安定性を向上させるために、空気充填時のタイヤ周方向ベルト張力を最大にするカーカスラインの形状を設計するため、目的関数OBJ及び制約条件Gを次のように定めている。
【0106】
目的関数OBJ:ベルト張力のタイヤ周方向成分のタイヤ幅方向の総和
制約条件G :カーカスラインのペリフェリ値がタイヤ基本モデルのカーカスラインのペリフェリ値の±5%以内
なお、上記カーカスラインのペリフェリ値は、タイヤ形状を変化させる範囲内のカーカスラインの節点(カーカスラインと法線との交点)間の距離の総和として計算することができる。
【0107】
また、設計変数であるカーカスラインの形状は、曲線を近似する図9のラグランジェ補間ルーチンによって決定される。このラグランジェ補間ルーチンのステップ170では、図10に示すようにタイヤ内部に基準点Pを設定する。次のステップ172では、ベルト端付近の節点q1 からリムに拘束される付近の節点q2 までの範囲をタイヤ形状を変化させる範囲として指定する。ステップ174では、節点q1 と基準点Pとを結ぶ直線を基準線として、この基準線と、節点q2 と基準点Pとを結ぶ直線との成す角である見込み角θを演算し、ステップ176において以下の式に従って角度増分dθを演算する。
【0108】
dθ=θ/ラグランジェ補間の次数 ・・・(1)
なお、ラグランジェ補間の次数は使用者が予めインプットしておく。
【0109】
ステップ178では、図11に示すように、基準線を基準として角度増分dθ毎に仮想線L1,2,3,・・・を想定し、仮想線に最も近い法線nl1,nl2,nl3,・・・を選択する。次のステップ180では、図12に示すように、選択された法線nl1,nl2,nl3,・・・上の最内側の節点Q1,2,3,・・・と基準点Pとの距離r1,2,3,・・・(以下一般式でri と表す。ただし、i=1,2,・・・ラグランジェ補間の次数−1)、節点Q1,2,3,・・・の見込み角θ1,θ2,θ3,・・・(以下一般式でθi と表す。ただし、i=1,2,・・・ラグランジェ補間の次数−1)とを演算する。そして、ステップ182において距離ri を設計変数として設定する。
【0110】
このようにして目的関数OBJ、制約条件G及び設計変数ri を決定した後、図2のステップ104において、初期のタイヤ性能予測処理が実行される。このタイヤ性能予測処理は、図16の処理ルーチンが実行されるものであり、これまでに作成されたり設定されたりした数値モデルをもとに、以下に詳述する解析Aのタイヤモデルの変形計算及び解析Bの流体計算(流動計算)を行う。本実施の形態では、過渡的な状態を得るために、タイヤモデルの変形計算及び流体モデルの流体計算をそれぞれ1msec以内で単独計算を行い、1msec毎に両者の境界条件を更新する。
【0111】
図16のステップ200では、タイヤモデルの変形計算(解析A)を行い、次のステップ202で経過時間が1msec以内か否かを判断する。ステップ202で肯定されるとステップ200へ戻り、再度タイヤモデルの変形計算を行い、ステップ202で否定されると、ステップ204へ進み流体計算(解析B)を行う。次のステップ206では経過時間が1msec以内か否かを判断し、肯定されるとステップ204へ戻り、再度流体計算を行い、ステップ206で否定されると、ステップ208へ進む。
【0112】
(解析A)タイヤモデルの変形計算
タイヤモデルおよび与えた境界条件より、有限要素法に基づいてタイヤモデルの変形計算を行う。過渡的な状態を得るために、経過時間(単独経過時間)が1msec以下の間はタイヤモデルの変形計算を繰り返し、1msec経過したら次の計算(流体)に移る。
【0113】
(解析B)流体計算
流体モデル及び与えた境界条件より、有限要素法に基づいて流体計算を行う。過渡的な状態を得るために、経過時間(単独経過時間)が1msec以下の間は流体計算を繰り返し、1msec経過したら次の計算(タイヤモデルの変形)に移る。
【0114】
なお、(解析A)と(解析B)はどちらを先に計算しても良いし、また並行して計算しても良い。すなわち、ステップ200、202と、ステップ204、206とは交換した順序であってもよい。
【0115】
また、上記の計算(解析Aと解析B)では、経過時間(単独経過時間)が1msec以下の間の好ましい経過時間の間で繰返し計算を行う場合を説明したが、本発明で経過時間を1msecに限定するものではなく、10msec以下の経過時間を採用することができ、好ましくは1msec以下であり、更に好ましくは1μ・sec以下の経過時間を採用することができる。また、この経過時間は、解析Aと解析Bとで異なる時間を定めても良い。
【0116】
次のステップ208では、タイヤモデルの変形計算および流体計算それぞれ単独の計算を1msecづつ行った後、これらを連成させるため、タイヤモデルの変形に応じて流体モデルの境界面を認識し、境界条件を更新させる(詳細は後述)。このステップ208では、境界条件更新の後に、タイヤモデルに流体計算で計算した圧力をタイヤモデルの境界条件(表面力)として付加し、流体力によるタイヤモデルの変形を次のタイヤモデルの変形計算(解析A)で計算させるようにする。すなわち、流体側は変形後のタイヤモデルの表面形状を新たな壁として境界条件に取り入れ、タイヤモデル側は流体の圧力をタイヤモデルにかかる表面力として境界条件に取り入れる。これを1msecごとに繰り返すことにより、タイヤ性能予測に関わる過渡的な流れを擬似的に作り出すことができる。ここで1msecとは接地面内のパターンがタイヤ転動により変形していく過程を十分に表現できる時間である。
【0117】
なお、上記では境界条件に取り入れる繰り返しの時間(単独経過時間)を1msecに定めたが、本発明は1msecに限定するものではなく、10msec以下の時間を採用することができ、好ましくは1msec以下であり、更に好ましくは1μ・sec以下の時間を採用することができる。
【0118】
次のステップ210では、計算終了か否かを判断し、ステップ210で肯定されるとステップ212へ進み、ステップ210で否定されると、ステップ200へ戻り、再度タイヤモデルの変形計算および流体計算それぞれ単独の計算を1msecづつ行う。なお、具体的な判断方法としては、次の例がある。
【0119】
タイヤモデルが、非転動モデル、全周パターン付転動モデルの場合には、対象とする物理量(流体反力、圧力、流速等)が定常状態とみなせる(以前に計算した物理量と同じとみなせる状態)まで繰り返し計算し、計算が終了した場合には肯定判断とする。さらに、所定時間になったら終了させることも可能である。この場合の所定時間は好ましくは100msec以上、さらに好ましくは300msec以上である。
【0120】
タイヤモデルが、転動モデル、パターンを一部のみモデル化した場合には、解析対象となるパターン部分の変形が終了するまで繰り返し計算し、計算終了とした場合には肯定判断とする。パターン部分の変形とは、転動によりパターン部分が路面モデルに接触後に路面モデルから離れるまでの間、もしくは転動によりパターン部分が流体モデルに接触後に路面モデルに接触するまでの間の変形を指す。このパターン部分の変形は、タイヤが1回転以上転動した後に前記各モデルに接触するときからを対象としてもよい。さらに、所定時間になったら終了させることも可能である。この場合の所定時間は好ましくは100msec以上、さらに好ましくは300msec以上である。
【0121】
次に、図16のステップ208の詳細を説明する。ステップ208における、タイヤモデル変形に応じて流体の境界面を認識し、境界条件を付加する処理は、図17の処理ルーチンが実行される。まず、ステップ220において、流体モデル(流体領域)20のどの部分がタイヤモデル30に隠れているのか判定するため、流体モデル20とタイヤモデル30の干渉部分40を計算する(図20参照)。これは流体モデル20すなわち流体領域を小部分に分割した要素(流体要素)全てについて行う。
【0122】
次のステップ222では、流体要素がタイヤモデルに完全に隠れているか否かを判断し、流体要素がタイヤモデルに完全に隠れている場合はステップ222で肯定され、ステップ224へ進み、この要素はタイヤモデル内部にあり、流体の流入・流出は行われないため壁としての境界条件を付加する。
【0123】
一方、ステップ222で否定されると、ステップ226へ進み、タイヤモデルに流体要素の一部が隠れているか否かを判断する。タイヤモデルに流体要素の一部が隠れている場合は、ステップ226で肯定され、次のステップ228において、タイヤモデル30の表面32で流体要素を2分する面である切断面を計算し(図21参照)、次のステップ230でこの切断面で流体要素22を更に分割する。次のステップ232では、上記分割した流体要素のうちタイヤモデルに隠れていない領域22Aを、新たに流体モデル(流体領域)として定義し、この部分を流体計算に用いるものとする。また、新たな流体要素の切断面に対応する面は、タイヤモデルと接しているため壁としての境界条件を付加する。
【0124】
なお、分割した流体要素を更に細かく分割していくのは計算時間の増大につながり好ましくないため、流体要素の分割には制限(この場合は、一度分割した要素は分割しないという制限)を設けることが好ましい。
【0125】
次のステップ234では、上記の処理が全ての流体要素についてなされたか否かを判断し、未処理の流体要素が残存する場合、ステップ234で否定され、ステップ220へ戻る。一方、全ての流体要素について上記処理が終了した場合には,本ルーチンを終了する。これによって、タイヤモデルの表面形状を境界条件として流体計算に取り込むことができる。
【0126】
このように、タイヤモデルと流体モデルを一部重ねて定義できる手法は計算モデル作成の手間を大幅に減らすことができる。更にタイヤモデルに一部隠れる流体要素を2分することによって初期の流体メッシュを大きく取ることができ、流体要素が増えて計算時間が増大することを防ぐことができ、性能予測を効率的に行える。
【0127】
このようにして、解析A、解析B、および両者の連成のための境界条件変更を行った後、解析Aに戻り、変更した境界条件で計算を行う。これを計算終了まで繰り返し、計算が終了した場合には、図16のステップ210で肯定され、ステップ212へ進み、計算結果を予測結果として出力(評価)する。
【0128】
なお、上記では、解析A、解析B、及び境界条件変更を繰り返し、計算が終了すると、計算結果を出力(評価)する場合を説明したが,繰り返し計算中に、その時点における計算結果を出力し、その出力について評価したり、逐次評価したりしてもよい。すなわち、計算中に出力・評価してもよい。
【0129】
予測結果の出力は流体力、流れ速度、流量、圧力、エネルギー等の値もしくは分布を採用することができる。予測結果の出力の具体的な一例として、流体反力の出力、流体の流れの出力と可視化、及び水圧分布の出力と可視化がある。流体反力は、流体(例えば,水)がタイヤを上方へ押し上げる力である(図22参照)。流体の流れは、流体の速度ベクトルから計算することができ、その流れとタイヤモデル周辺やパターン周辺とを共に線図等で表せば、可視化することができる。流体の水圧分布の可視化は、タイヤモデル周辺やパターン周辺を線図として作成し、その図形上に水圧値を色や模様に対応させて表示させればよい。
【0130】
また、評価は、主観評価(全体的に、スムーズに流れているか、流れの方向による乱れの判断等)、圧力・エネルギーが局所的に上昇していないか、必要な流量が得られているか、流体力が上昇していないか、流れが停滞していないか等を採用することができる。また、パターンの場合、溝内を流れているかを採用することもできる。また、タイヤモデルの場合、タイヤが回転することにより、接地面及び接地面近傍でタイヤが水等の流体を挟み込み、前方に押し出す前方スプレーの量が多いか、路面内では横に流れているか、を採用することができる。
【0131】
なお、予測結果の評価は、予測結果の出力値や出力値の分布を用いて、予め定めた許容値や許容特性を各出力値や出力値の分布にどの程度適合するかを数値的に表現することによって、評価値を定めることができる。
【0132】
従って,予測結果の評価から、予測性能が良好であるか否かを判断することができる。この判断は、キーボードによる入力によってなされてもよくまた、上記評価値に、許容範囲を予め定めておき、予測結果の評価値が許容範囲内に存在するときに、予測性能が良好であると判断するようにしてもよい。
【0133】
予測性能の評価の結果、目標性能に対して不十分であるときは、この時点で処理を中止し、設計案を変更(修正)した後に再度タイヤの設計を開始(これまでの処理をやり直す)してもよいし、予測性能の評価の結果を記憶しておき、最適化のときに参照しても良い。
【0134】
以上のようにして、初期のタイヤ性能予測処理が終了すると、図2のステップ106へ進み、設計変数ri の初期値roにおける目的関数OBJの初期値OBJo及び制約条件Gの初期値Goを演算する。
【0135】
次のステップ108では、タイヤ基本モデルを変化させるために設計変数ri を各々Δri ずつ変化させる。次のステップ110では、設計変数に対応する最内側の節点Qi 以外の最内側の節点と基準点Pとの距離rm を次式によって演算する。ただし、θm は当該節点と基準点Pとを結ぶ直線の、基準線からの見込み角である。
【0136】
【数1】
Figure 0004234857
【0137】
また、このステップ110では、法線上の最内側の節点(カーカスライン上の節点)以外の節点、すなわち、タイヤ外面形状を表すラインOL、折り返しプライラインPL及びベルトを表すラインB1,B2上の節点と最内側の節点Qi との距離を求め、最内側の節点Qi の座標に求めた距離を加算することで法線上の最内側の節点以外の節点座標を求め、設計変数をΔri 変化させた後のタイヤ断面形状、すなわちタイヤ修正モデルを決定する。
【0138】
このようにしてタイヤ修正モデルが決定されると、次のステップ112において、上記ステップ104と同様にして、修正されたタイヤモデルのタイヤ性能予測処理が実行される。なお、ステップ112において、タイヤ性能予測処理が実行された場合、上記と同様に、予測結果の評価から、予測性能が良好であるか否かを判断することができる。この判断は、キーボードによる入力によってなされてもよくまた、上記評価値に、許容範囲を予め定めておき、予測結果の評価値が許容範囲内に存在するときに、予測性能が良好であると判断するようにしてもよい。また、予測性能の評価の結果、目標性能に対して不十分であるときは、この時点で処理を中止し、設計案を変更(修正)した後に再度タイヤの設計を開始(これまでの処理をやり直す)してもよいし、予測性能の評価の結果を記憶しておき、適宜参照しても良い。
【0139】
ステップ114では、ステップ110で求めたタイヤ修正モデルについて設計変数をΔri 変化させた後の目的関数の値OBJi 、制約条件の値Gi を演算し、ステップ116で以下の式に従って、設計変数の単位変化量に対する目的関数の変化量の割合である目的関数の感度dOBJ/dri 及び設計変数の単位変化量に対する制約条件の変化量の割合である制約条件の感度dG/dri を各設計変数毎に演算する。
【0140】
【数2】
Figure 0004234857
【0141】
この感度によって、設計変数をΔri 変化させたときに目的関数の値及び制約条件の値がどの程度変化するか予測することができる。なお、この感度は、タイヤのモデル化に用いた手法や設計変数の性質によっては、解析的に求められる場合があるので、その際にはステップ114の演算は不要になる。
【0142】
次のステップ118では、目的関数の初期値OBJo、制約条件の初期値Go、設計変数の初期値ro及び感度を用いて、数理計画法により制約条件を満たしながら目的関数を最大にする設計変数の変化量を予測する。この設計変数の予測値を用いて、ステップ120でステップ110と同様の方法によりタイヤ修正モデルを決定すると共に、目的関数値を演算する。
【0143】
このステップ120でタイヤ修正モデルが決定されると、次のステップ122において、上記ステップ104及び112と同様にして、修正されたタイヤモデルのタイヤ性能予測処理が実行される。なお、ステップ122において、タイヤ性能予測処理が実行された場合、上記と同様に、予測結果の評価から、予測性能が良好であるか否かを判断することができる。この判断は、キーボードによる入力によってなされてもよくまた、上記評価値に、許容範囲を予め定めておき、予測結果の評価値が許容範囲内に存在するときに、予測性能が良好であると判断するようにしてもよい。また、予測性能の評価の結果、目標性能に対して不十分であるときは、この時点で処理を中止し、設計案を変更(修正)した後に再度タイヤの設計を開始(これまでの処理をやり直す)してもよいし、予測性能の評価の結果を記憶しておき、適宜参照しても良い。
【0144】
次のステップ124では、ステップ120で演算した目的関数値OBJとステップ104で演算した目的関数の初期値OBJoとの差と、予めインプットされたしきい値とを比較することで目的関数の値が収束したか否かを判断し、目的関数の値が収束していない場合にはステップ118で求められた設計変数値を初期値として、ステップ106からステップ124を繰り返し実行する。目的関数の値が収束したと判断されたときには、このときの設計変数の値をもってタイヤ性能を考慮しつつ制約条件を満たしながら目的関数を最大にする設計変数の値とし、ステップ126でこの設計変数の値を用いてタイヤの形状を決定する。
【0145】
このように本実施の形態では、タイヤモデル、流体モデル及び路面の状態を模擬しながら、制約条件を満たす目的関数の最適値を与える設計変数を求め、この設計変数からタイヤを設計しているので、設計・開発した場合従来の試行錯誤を基本とした設計・開発と異なり、コンピューター計算を主体にしてベストモードの設計から設計されたタイヤの性能評価までが可能となり、著しい効率化を達成でき、開発にかかる費用が削減可能となるものである。
【0146】
なお、上記の実施の形態ではラインの形状を表わす方法としてラグランジェ補間法等を用いたが、この他に円弧補間法やMATHEMATICAL ELEMENTS FOR COMPUTER GRAPHICS(David F.RogersおよびJ.Alan Adams著)に示されている様なスプライン曲線、Bスプライン曲線、ベジェ曲線あるいはNURBS(重み付Bスプライン)等を用いて補間するようにしてもよい。
【0147】
また、上記実施の形態では、カーカスラインの形状を設計変数にしてタイヤ設計する場合を説明したが,本発明はこれに限定されるものではなく、カーカスライン上の節点を用いてカーカスラインの形状を変化させるようにしてもよい。また、設計変数としてカーカスラインの形状以外に、折り返しプライラインの形状、タイヤ外面形状を表すライン、補強材のライン等を設計変数としてもよい。
【0148】
また、本実施の形態は、複数のラインの形状決定に適用することができる。すなわち、車両の乗り心地を損ねることなく操縦安定性を向上させるカーカスラインの形状、折り返しプライラインの形状及びタイヤ外面形状を決定することができる。この場合、目的関数として操縦安定性を向上させるための物理量として横ばね定数を用い、制約条件として乗り心地を支配する物理量である上下一次固有値が一定という条件を採用することが好ましい。上下一次固有値が一定という条件の下で横ばね定数が最大になるカーカスラインの形状、折り返しプライラインの形状及びタイヤ外面形状を決定すればよい。設計変数は、折り返しプライライン及びタイヤ外面形状を表すラインを採用すればよい。なお、設計変数として採用するライン数は、複数すなわち2つ以上のラインを設計変数として採用してもよい。
【0149】
複数のラインの形状決定は、タイヤのビードフィラーおよびその周辺の部材の形状決定に適用できる。すなわち、ビード部分の耐久性を損ねることなく転がり抵抗を軽減するビードフィラー形状およびゴムチェーファー形状を決定することができる。この場合、目的関数を転がり抵抗値、制約条件を折り返しプライ端部の荷重時主歪が初期構造の+3%以内に定めることが好ましい。また、設計変数は、ビードフィラーの外形(ゲージ分布)を定義するラインやゴムチェーファーとサイドゴムとの境界ラインを用いることが好ましい。
【0150】
また、複数のラインの形状決定は、ベルト部における各ベルト層間の厚みの決定に適用することができ、ベルト部分の耐久性を損ねることなく転がり抵抗を軽減する各ベルト層間のゲージ分布を決定することができる。この場合、目的関数を転がり抵抗値、制約条件をベルト端プライ端部の荷重時主歪が初期構造の+3%以内に定めることが好ましい。また、設計変数は各ベルト層を表わすラインを用い、1または複数のラインが変化することにより、目的関数を最適にする各ベルト層間のゲージ分布が決定することができる。
【0151】
さらに、本発明は、ベルト構造に適用することができる。この場合、ベルト部の重量を増すことなく、ベルト部に生じる歪集中を最小化することにより耐久性を向上させることができる。この場合、目的関数を各ベルト層間に発生する荷重時主歪の最大値、制約条件をベルト総重量が初期構造での総重量の+1%以内に定めることが好ましい。また、設計変数は各ベルト層の角度、打込み(例えば、打込み本数や打込み強度)及び幅を定めることができる。
【0152】
また、本発明は、タイヤクラウン部の形状決定に適用することができる。この場合、タイヤと地面との接触領域の形状を変えることなく、接触領域の圧力分布を均一化し、磨耗性能を向上させることができる。この場合、目的関数を接触領域における圧力分布の標準偏差、制約条件をクラウン部中心およびベルト端部におけるタイヤ周方向接触長が初期形状における接触長の±5%以内に定めることが好ましい。また、設計変数はクラウン部形状として、ラグランジェ補間ルーチン等により定めることが好ましい。
【0153】
なお、タイヤクラウン部の形状決定の他の適用では、目的関数を接触領域における圧力分布の標準偏差、制約条件をクラウン部中心およびベルト端部におけるタイヤ周方向接触長が初期形状における接触長の±5%以内に定め、設計変数であるクラウン部形状については、予め指定したクラウン部の範囲を複数個の円弧で近似することが好ましい。
【0154】
また、本発明は、タイヤのパターン表面の形状決定に適用することができる。この場合、パターンと地面とが接触した際の圧力分布を均一化し、磨耗性能を向上させることができる。目的関数を接触領域における圧力分布の標準偏差、制約条件をパターンンの総体積が初期の体積の±5%以内に定めることが好ましい。また、設計変数であるパターン表面の形状は、パターン表面を、予めインプットされたラグランジェ補間次数に従って格子状に分割し、得られた各点のパターン厚み方向の座標値を設計変数とすることが好ましい。
【0155】
以上の各々は単独で実施される必要はなく、例えばプライラインの決定とベルト構造の決定とを同時に実施する、あるいはプライラインを用いてクラウン部形状の決定を実施する等、各々を組み合わせてもよい。
【0156】
〔第2実施の形態〕
次に、第2実施の形態を説明する。上記の実施の形態では、1つの設計案についてタイヤ性能予測及び評価を設計案を修正しながら繰り返し、採用する設計案を求めた場合を説明したが、本実施の形態は、複数の設計案から採用する設計案を求めるものである。詳細には、操縦安定性を向上させるために、空気充填時のタイヤ周方向ベルト張力を最適値である最大値にするカーカスラインの形状を遺伝的にアルゴリズムによって設計するものである。なお、本実施の形態は、上記実施の形態と同様の構成のため、同一部分は同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0157】
図23は、第2実施の形態のプログラムの処理ルーチンを示すものである。ステップ300では、N個のタイヤ断面形状を有限要素法等のように空気充填時のタイヤ周方向ベルト張力を数値的・解析的に求めることができる手法によりモデル化し、内部構造を含むタイヤ基本モデルを求める。なお、Nは予め使用者がインプットする。本実施の形態で用いるタイヤ基本モデルは、図10に示したものと同様である。また、タイヤ基本モデルの分割は、実施の形態と同様に、タイヤ外面形状を表すラインの複数の法線や折り返しプライラインの複数の法線によって複数の要素に分割してもよく、また設計目的によって3角形等の任意の形状に分割してもよい。
【0158】
次のステップ302では、タイヤ性能評価用物理量を表す目的関数、タイヤ断面形状を制約する制約条件及びN個のタイヤモデルのタイヤ断面形状を決定する設計変数を決定する。本実施の形態では、操縦安定性を向上させるために、空気充填時のタイヤ周方向ベルト張力を最大にするカーカスラインの形状を設計するため、目的関数OBJ及び制約条件Gを次のように定めている。
【0159】
目的関数OBJ:ベルト張力のタイヤ周方向成分のタイヤ幅方向の総和
制約条件G:カーカスラインのペリフェリ値が設定した値の±5%以内
なお、上記カーカスラインのペリフェリ値は、タイヤ形状を変化させる範囲内のカーカスラインの節点(カーカスラインと法線との交点)間の距離の総和として計算することができる。
【0160】
また、設計変数であるカーカスラインの形状は、上記で述べた、曲線を近似する図9のラグランジェ補間ルーチンによって、N個のタイヤモデル各々について決定される。このラグランジェ補間ルーチンは、第1実施の形態と同様のため、説明を省略する。
【0161】
ラグランジェ補間ルーチンをN回繰り返すことにより、目的関数OBJ、制約条件G及びN個のタイヤモデルの各々の設計変数riJ(J=1,2,・・・,N)を決定した後に、ステップ303において、初期世代N個のタイヤモデルの各々について、上記説明した図2のステップ104と同様にして、タイヤ性能予測処理が実行される。なお、ステップ303では、タイヤ性能予測処理が実行された場合、予測結果の評価から、予測性能が良好であるか否かを判断することができるが、ここでは、予測結果の出力及び予測性能の評価の結果を記憶でき、適宜参照可能な構成とする。
【0162】
タイヤ性能予測処理が終了した後の、図23のステップ304ではN個のタイヤモデルの各々の設計変数riJの各々の目的関数OBJJ 及び制約条件GJ を演算する。次のステップ306では、ステップ304で求めたN個のタイヤモデルの各々の目的関数OBJJ 及び制約条件GJ を用いて、N個のタイヤモデルの各々の適応関数FJ を以下の式(4)に従って演算する。本実施の形態では、例えばベルト張力を最大にするため、適応関数による値(適応度)は、ベルト張力が大きくなると大きくなる。
【0163】
ΦJ =−OBJJ +γ・max(GJ 、O)
J =−ΦJ ・・・(4)
または、
J =1/ΦJ
または、
J =−a・ΦJ +b
【0164】
【数3】
Figure 0004234857
【0165】
次のステップ308では、N個のモデルの中から交叉させるモデルを2個選択する。選択方法としては、一般に知られている適応度比例戦略を用い、N個のタイヤモデルのある個体lが各々選択で選ばれる確率Pl は以下の式で表わされる。
【0166】
【数4】
Figure 0004234857
【0167】
上記実施の形態では、選択方法として適応度比例戦略を用いたが、この他、遺伝的アルゴリズム(北野宏明 編)に示されている様な、期待値戦略、ランク戦略、エリート保存戦略、トーナメント選択戦略、あるいはGENITORアルゴリズム等を用いてもよい。
【0168】
次のステップ310では、選択された2個のタイヤモデルを、使用者が予め入力した確率Tによって交叉させるか否かを決定する。ここでいう、交叉とは、後述するように、2個のタイヤモデルの要素の一部を交換することをいう。否定判定で交叉させない場合は、ステップ312において現在の2個のタイヤモデルをそのままの状態でステップ316へ進む。一方、肯定判定で交叉させる場合には、ステップ314において後述するように2個のタイヤモデルを交叉させる。
【0169】
2個のタイヤモデルの交叉は、図24に示す交叉ルーチンによって行われる。先ず、図23のステップ308において選択された2個のタイヤモデルをタイヤモデルa及びタイヤモデルbとすると共に、各々のタイヤモデルa,bの設計変数について並びを含む設計変数ベクトルで表し、タイヤモデルaの設計変数ベクトルをVra =(r1 a 、r2 a 、・・・、ri a 、・・・、rn-1 a )、タイヤモデルbの設計変数ベクトルをVrb =(r1 b ,r2 b 、・・・ri b 、・・・rn-1 b )とする。
【0170】
図24のステップ350では、予め定めた乱数を生成し、この乱数に応じてタイヤモデルa,bの設計変数ベクトルに関する交叉場所iを決定する。次のステップ352では、交叉すると決定されたタイヤモデルa,bの設計変数ri a ,ri b に対して、以下の式に従って距離dを求める。
【0171】
d=|ri a −ri b
次のステップ354では、ri a 、ri b の取り得る範囲の最小値BL 及び最大値Bu を用いて、以下の式に従って正規化距離d’を求める。
【0172】
【数5】
Figure 0004234857
【0173】
ステップ356では、正規化距離d’の値を適度に分散させるために、図25(a),(b)に示すような山型の写像関数Z(x)(0≦x≦1,0≦Z(x)≦0.5)を用いて、以下の式に従って関数値Zabを求める。
Zab=Z(d’)
このようにして、関数値Zabを求めた後、ステップ358において新しい設計変数ri a 、ri b を次の式に従って求める。
【0174】
【数6】
Figure 0004234857
【0175】
このようにして、ri a 、ri b を求めた後、ステップ360で新しい設計変数の並びである設計変数ベクトルVr’a 、Vr’b は以下のように求められる。
Vr’a =(r1 a 、r2 a 、・・・ri ' a 、ri+1 b 、・・・、rn-1 b
Vr’b =(r1 b 、r2 b 、・・・ri b 、ri+1 a 、・・・、rn-1 a
なお、ri の取り得る範囲の最小値BL 及び最大値Buは、使用者が予め入力しておく。また、写像関数Z(x)は図26(a),(b)に示すような、谷型の関数でもよい。また、上記例では交叉場所iは1ヶ所であるが、この他に遺伝的アルゴリズム(北野 宏明 編)に示されているような、複数点交叉または一様交叉等を用いてもよい。
【0176】
このような交叉によって新規な2個のタイヤモデルを生成した後、図23のステップ316では、使用者が予め入力した確率Sで、突然変異させるか否かを決定する。この突然変異は、後述するように、設計変数の一部を微小に変更することをいい、最適な設計変数となりうる母集団を含む確度を高くするためである。ステップ316で、否定判定で突然変異させない場合には、ステップ318で現在の2個のタイヤモデルを維持したまま、次のステップ321進む。肯定判定で突然変異させる場合には、次のステップ320で以下のようにして突然変異処理を行う。
【0177】
この突然変異は、図27に示す突然変異ルーチンによって行われる。先ず、ステップ362では乱数を生成し、乱数によって突然変異の場所iを決定する。次のステップ364では、距離d’を
0≦d’≦1
の範囲で乱数により決定する。
【0178】
次のステップ366では、図25(a),(b)に示すような山型の写像関数Z(x)(0≦x≦1で、0≦Z(x)≦0.5)あるいは図26(a),(b)に示すような谷型の写像関数Z(x)を用いて、以下の式に従って、関数値Zdを求める。
【0179】
Zd=Z(d’)
このようにして、関数値Zdを求めた後、ステップ368において新しい設計変数ri ’を以下の式に従って求める。
【0180】
【数7】
Figure 0004234857
【0181】
このようにして、設計変数ri ’を求めた後、ステップ370で求められる、新しい設計変数の並びである設計変数ベクトルVr’は以下のようになる。
【0182】
Vr’=(r1 、r2 、・・・ri ’、ri+1 、・・・、rn-1
このようにして、新たに生成された2個のダイヤモデルについて、次のステップ321では、上記ステップ303と同様にして(図2のステップ104)、各タイヤモデルについて、タイヤ性能予測処理が実行される。なお、ステップ321では、タイヤ性能予測処理が実行された場合、予測結果の評価から、予測性能が良好であるか否かを判断することができるが、ここでは、予測結果の出力及び予測性能の評価の結果を記憶でき、適宜参照可能な構成とする。
【0183】
次のステップ322では、新たに生成された2個のダイヤモデルについて、目的関数の値と制約条件の値を演算する。次のステップ324では、得られた目的関数の値と制約条件の値から前記実施の形態例と同様に(4)式を用いて適応関数を演算する。
【0184】
次のステップ326では、上記2個のタイヤモデルを保存する。次のステップ328では、ステップ326で保存したタイヤモデルの数が、N個に達したか否かを判断し、N個に達していない場合は、N個になるまでステップ308からステップ328を繰り返し実行する。一方、タイヤモデルの数がN個に達した場合には、ステップ330で収束判定をし、収束していない場合には、N個のタイヤモデルをステップ326で保存されたタイヤモデルに更新し、ステップ308からステップ330を繰り返し実行する。一方、ステップ330で収束したと判断された場合には、N個のタイヤモデルの中で制約条件を略満たしながら目的関数の値が最大となるタイヤモデルの設計変数の値をもって制約条件を略満たしながら目的関数を最大にする設計変数の値とし、ステップ332においてこの設計変数の値を用いてタイヤの形状を決定する。
【0185】
なお、ステップ330の収束判定は以下の条件のいずれかを満足したら収束とみなす。
【0186】
1)世代数がM個に達した
2)一番目的関数の値が大きい線列の数が全体のq%以上になった
3)最大の目的関数の値が、続くp回の世代で更新されない。
【0187】
なお、M、q、pは使用者が予め入力しておく。また、この収束判定には、タイヤ性能の出力を用いることができる。
【0188】
このように、本実施の形態では、第1実施の形態対比計算量が増加するため、設計開発に要した時間は若干増加するが、より良い性能のタイヤ設計を行うことができる、という効果がある。
【0189】
なお、ベルト構造に本実施の形態を適用することにより、車両の乗り心地を損ねることなく操縦安定性を向上させる二律背反する性能を最適なベルト構造を決定することができる。この場合、目的関数、制約条件及び設計変数の選定、交叉方法、突然変異の方法を異ならせることで実現できる。例えば、目的関数として操縦安定性を向上させるための物理量である横ばね定数を用い、制約条件として乗り心地を支配する物理量である縦ばね定数が一定という条件を採用し、縦ばね定数が一定という条件の下で横ばね定数が最大になるベルト構造を決定することができる。
【0190】
また、設計変数としてベルト構造を採用したが、その他の補強材等を設計変数として決定してもよい。また、ビード部へ補強材等を入れるか否かに適用可能である。
【0191】
さらに、ブロック化したタイヤのブロック形状決定に適用することもできる。この場合、タイヤ周方向に並んだ大きさの異なるブロック間のブロック剛性差を少なくすると共に一つのブロックにおいて各方向のブロック剛性を均一にするパターンにより偏磨耗性能を向上させることができる。
【0192】
この場合、ブロックの性能評価用物理量を表す目的関数として各方向のブロック剛性を均一を用いることが好ましく、制約条件にはブロックの面積、サイプの長さ、サイプの長さ×サイプの深さ、サイプの個数等を制約するものがあり、サイプの長さの変化量が初期モデルでのサイプ長さの±5%以内、サイプの節点座標がブロックの節点座標で囲まれた図形内に在る、サイプ節点座標とブロックの外部を表わす直線間の距離が2mm以上を定めることが好ましい。また、設計変数には、ブロックの節点座標、サイプの節点座標、ブロックの各辺の溝角度、ブロックの各辺の溝深さ、サイプの幅、サイプの埋込み角度、サイプの深さに関したものがあり、サイプの節点座標(ブロックの節点座標は固定)を用いることが好ましい。
【0193】
なお、第1実施の形態と、第2実施の形態とを組み合わせてもよい。すなわち、交叉、突然変異によって得られた設計案をもとに目的関数、制約条件を演算する場合には、Goldberg,D.E.,"Genetic Algorithms in Search,Optimization and Machineイ Learning",Addison-Wesley(1989)に記載されているように局所的な最適解に落ち込まないものの、真の最適解を求めることが難しいという問題点がある。このため、第2実施の形態のステップ222の演算処理として、第1実施の形態のステップ104〜116の処理を用いて、各方法を組み合わせれば、上記問題点を解決できる。このような、局所的な最適解に落ち込まず、真の最適解を得る方法は、ここで述べた手法以外に、前記参考文献に記載されてある焼きなまし法(Simulated Annealing)と呼ばれる方法を組み合わせることもできる。
【0194】
〔第3実施の形態〕
本実施の形態は、最適なタイヤの設計パラメータを求める最適化装置に本発明を適用したものである。本実施の形態の最適化装置では、高等動物の神経回路網が工学的にモデル化された非線形予測技術である学習後のニューラル・ネットワークを変換系として最適化計算によって設計パラメータを求めている。なお、本実施の形態は、上記実施の形態と略同様の構成のため、同一部分には同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0195】
本実施の形態に係る最適化の実施をするための最適化装置60は、図1の空気入りタイヤの設計方法を実施するためのパーソナルコンピュータと同様の構成で実施でき、コンピュータ本体12は予め記憶されたプログラムに従って非線形化予測手法によるニューラルネットワークを用いてタイヤの形状、構造、パターンの設計パラメータ等からその性能を予測すると共に制約条件を満たしかつ目的関数を最適(例えば、最大または最小)にする設計変数を演算する。CRT14は。コンピュータ本体12の演算結果等を表示する。
【0196】
詳細には図28に示すように、最適化装置60は、マイクロコンピュータを含んで構成されたコンピュータ本体12、データ入出力装置28、データやコマンドを入力するためのキーボード10、及びモニター14から構成されている。コンピュータ本体12は、CPU16、ROM18、RAM50、変換系等(詳細は後述)を記憶するためのメモリ52、本体と他の装置との間でデータ等をやりとりするための入出力装置(以下、I/Oという)56及びこれらをデータやコマンドが入出力可能なように接続されたバス54から構成されている。なお、ROM18には、後述する処理プログラムが記憶されている。なお、データ入出力装置28は、数値表現されたタイヤの形状、構造、パターンの設計パラメータ、製造条件、タイヤ性能(本実施の形態ではタイヤの形状、構造、パターン等)が外部記憶手段に記憶されている場合に、外部記憶手段から読み込むための装置であり、キーボード10を入力装置として用いる場合には不要である。
【0197】
図29は本実施の形態の最適化装置60の機能別概略構成を示すブロック図である。本実施の形態の最適化装置60では、最大化もしくは最小化すべきタイヤ性能(これを目的関数という)を最適化してその最適化したタイヤ性能に対する設計パラメータを出力する。
【0198】
この最適化装置60は、機能別に、非線形演算部62、最適化演算部64、性能予測データ入力部70、最適化項目入力部72及び最適化結果出力部74に分類される。非線形演算部62は、ニューラルネットワークで構成された(詳細後述)変換系の計算部として機能し、性能予測データ入力部70から入力されたデータに基づいて、タイヤの形状、構造、パターン、製造条件とその性能とが関連付けられた変換系を求めるためのものである。なお、ここでいう変換系とは、タイヤの形状、構造、パターンの設計パラメータ及び製造条件等とその性能とが1対1に対応するように変換及び逆変換が可能な変換系そのものをいい、学習後のニューラルネットワークを数式で表現するときは数式及びその係数を含めたものをいう。性能予測データ入力部70は、タイヤの形状、構造、パターンの設計パラメータ及び製造条件等と、それらに対応する性能との各データを入力するためのものである。この場合の性能はタイヤ性能予測処理によって求められるものである。
【0199】
最適化項目入力部72は、▲1▼最大化もしくは最小化すべきタイヤの予測もしくは計測される物理量等タイヤ性能(後述の目的関数)、▲2▼最大化、もしくは最小化する時に制約を設けるタイヤの予測もしくは計測される物理量、及びタイヤの形状・構造・パターンの設計パラメータ並びに加硫温度や等の製造条件、▲3▼タイヤの形状・構造・パターンの設計パラメータ及び製造条件のとりうる範囲、、▲4▼最適化に関する方法の選択及びその時のパラメータ等を入力するためのものである。
【0200】
なお、上記の最適化に関する方法は、数理計画法及び遺伝的アルゴリズム等の最適化手法があるが、本実施の形態では数理計画法による最適化手法を選択するものとする。
【0201】
最適化演算部64は、目的関数を収束するまで最適化するためのものであり、目的関数・制約条件演算部66及び目的関数最適化演算部68から構成される。目的関数・制約条件演算部66は非線形演算部62による変換系を用いてタイヤの形状、構造、パターンの設計パラメータ及び製造条件からそのタイヤ性能を予測するためのものであり、目的関数最適化演算部68は最適化項目入力部72で入力した目的関数を制約条件を満たしつつ収束するまで最適化するためのものである。
【0202】
最適化結果出力部74は、最適化演算部64による最適化の結果として、入力された最適化項目を満足するように最適化された、タイヤの形状、構造、パターンの設計パラメータと製造条件を出力するためのものである。
【0203】
なお、本実施の形態では、非線形演算部62は、図28に示すハードウェア資源及び後述するソフトウェア資源を用いて構成され、後述するように概念的なニューラルネットワークで構成された変換機能を有すると共に、それを学習する学習機能を有している。また、非線形演算部62は、学習機能を有さない変換機能のみを有する構成とすることも可能である。すなわち、後述するように、非線形演算部62は、タイヤの形状、構造、パターンの設計パラメータ及び製造条件とそのタイヤ性能とが関連付けられた変換系を求めるものであるが、タイヤの形状、構造、パターンの設計パラメータ及び製造条件とその性能との間で変換できればよい。従って、タイヤの形状、構造、パターンの設計パラメータ及び製造条件とその性能との対応を予め他のニューラルネットワークで学習し、学習された他のニューラルネットワークの変換係数を入力するようにして、この変換係数を用いてタイヤの形状、構造、パターンの設計パラメータ及び製造条件とその性能とが関連付けられた変換系を求めてもよい。つまり、変換係数が入力される構成であれば、変換係数を用いてタイヤの形状、構造、パターンの設計パラメータ及び製造条件とそのタイヤ性能との間で変換する変換のみの機能でよい。また、これらの対応をルックアップテーブルとして記憶して、記憶されたルックアップテーブルを参照することによって、変換してもよい。
【0204】
上記の非線形演算部62は、タイヤの形状・構造・パターンの設計パラメータ及び製造条件の各値毎の入力を可能とするために入力層としてタイヤの形状・構造・パターンの設計パラメータ及び製造条件の数に応じたニューロンを有し、中間層を介して出力層として目的関数や制約条件に関係した予測するタイヤ性能項目の数に応じたニューロンを有して各々のニューロンがシナプスによって結合されたニューラルネットワークを構成している。この非線形演算部62は、後述する学習後に、タイヤの形状・構造・パターンの設計パラメータ及び製造条件の各値が入力されると、それに対応する性能が出力される。学習時には、タイヤの形状・構造・パターンの設計パラメータ及び製造条件に対応する既知の性能が教師として入力され、出力の性能と既知の性能との誤差差分等の大小により、タイヤの形状・構造・パターンの設計パラメータ及び製造条件の各値と、その性能とが対応されるように設定される。
【0205】
この非線形演算部62に用いられているニューラルネットワークの一例としては、図30に示すように、ニューロンに対応する所定数のユニットI1、I2、・・・、Ip(p>1)から成る入力層、多数のユニットM1、M2、・・・、Mq(q>1)から成る中間層、及び所定数の出力ユニットU1、U2、・・・、Ur(r>1)から成る出力層から構成されている。なお、入力層のユニット数、及び出力層のユニット数はタイヤの形状・構造・パターンの設計パラメータ及び製造条件個数、性能の個数に応じて設定すればよい。また、中間層の各ユニット及び出力層の各ユニットには出力値を所定値だけオフセットさせるためのオフセットユニット46、48に接続されている。上記入力層のユニットには例えば、タイヤのベルトの幅、ベルトの角度、ベルトの材質、タイヤ形状をあらわすパラメータ、そしてコストを入力値として用いることができる。出力層のユニットには例えば、転がり抵抗、応力・歪み、タイヤのバネ特性、タイヤの接地特性等を出力値として用いることができる。
【0206】
なお、本実施の形態では、中間層のユニット及び出力層のユニットは入出力関係がシグモイド関数によって表されるシグモイド特性を有する神経回路素子により構成され、入力層のユニットは入出力関係が線形の神経回路素子で構成されている。このシグモイド特性を有するように構成することによって、出力値は実値(正の数)となる。
【0207】
非線形演算部62における、中間層のユニット及び出力層のユニットの各々の出力は、次の(5)、(6)式で表すことができる。すなわち、或るユニットについて、入力側のシナプスの個数をpとし、各シナプス結合の強さに相当する重み(ユニットの結合係数)をwji(1≦j≦N,1≦i≦p)とし、各入力信号をxj とするとき、ニューロンの膜電位の平均値に相当する仮想的な内部状態変数uは次の(5)で表すことができ、出力yはニューロンの特性を表す非線形関数fにより次の(6)式で表すことができる。
【0208】
【数8】
Figure 0004234857
【0209】
但し、bj はオフセットユニットから供給されるオフセット値、
jiは異なる層のi番目とj番目のユニット間の重みを表す。
【0210】
従って、入力層のユニットへタイヤの形状、構造、パターンの設計パラメータ及び製造条件の各値を入力することによって、出力層のユニットから、タイヤ性能の個数に応じた各値が出力される。
【0211】
なお、上記の入力層の各ユニットの特性は入力をそのまま出力する特性でよい。また、非線形演算部62(ニューラルネットワーク)の各ユニットの重み(結合係数)は、後述する学習処理により、既知である予測データについて誤差が最小となるように学習・修正される。
【0212】
次に、非線形演算部62におけるニューラルネットワークの学習の処理の詳細を図32を参照して説明する。本実施の形態では、タイヤの形状、構造、パターンの設計パラメータ及び製造条件の各値によってタイヤを試作・評価、またはタイヤをモデル化しコンピュータで予測することによってタイヤの性能に関するデータを得る。また、タイヤの形状、構造、パターンの設計パラメータ及び製造条件の各値と、その性能を表す各値との対応をデータとして学習に用いる。
【0213】
なお、複数のデータのうち所定数(例えば、全体の90%)のデータを学習データとすると共に、それ以外(例えば、残り10%)のデータをテストデータとしている。これは予測データを、ニューラルネットワークの学習時に用いるデータと、学習が終了したニューラルネットワークが最適に学習がなされたかを確認するデータとに用いるためである。また、これらタイヤの形状、構造、パターンの設計パラメータ及び製造条件の各値を入力データとすると共に、タイヤの性能を表す各値を出力教師データとしている。
【0214】
まず、図32のステップ460では、予め求めた、学習データ及びテストデータを読み取る。次のステップ462では、ニューラルネットワークにおける各ユニットのの結合係数(重み)及びオフセット値を予め定めた値に設定することによって初期化する。次のステップ464では、タイヤの形状、構造、パターンの設計パラメータ及び製造条件が既知の複数の学習データを用いてニューラルネットワークを学習させるため、中間層及び出力層の各々のユニットの誤差を求める。
【0215】
出力層の誤差は学習データのタイヤ性能に対する差を誤差とすることができる。各結合係数及びオフセット値の少なくとも1つを僅かづつ変化させることによって出力層の誤差、すなわちユニットの誤差が最小になるようにすることができる。また、中間層の誤差は、出力層の誤差を用いて誤差逆伝搬法等の逆計算により求めることができる。
【0216】
次のステップ466では、上記求めた各結合係数及びオフセット値を更新(書換え)して、次のステップ468においてその更新された各結合係数及びオフセット値によるニューラルネットワークによってテストデータの各々をテストしてテスト結果の値としてタイヤの性能を表すデータを得る。次のステップ470では、上記ステップ468で求めたテスト結果の値が収束判定の基準である所定範囲内の値か否かを判別することにより収束したか否かを判断するか、または上記の処理を所定回数繰り返ししたか否かを判断し、肯定判断の場合には本ルーチンを終了する。一方、否定判断の場合にはステップ464へ戻り、上記処理を繰り返す。これによって、学習データを入力した場合に、中間層及び出力層の各々のユニットの誤差が最小になるように各結合係数及びオフセット値が定まる。
【0217】
このようにして、タイヤの形状、構造、パターンの設計パタメータ及び製造条件が既知の複数の予測データを用いてニューラルネットワークを学習させる。すなわち、教師信号に対するニューラルネットワークの出力層からの出力値の誤差が最小となるように学習される。このように、学習することによって非線形演算部32では、タイヤの形状、構造、パターンの設計パラメータ及び製造条件の値が入力されると、タイヤの性能を表す値を出力することになる。
【0218】
なお、以上の処理が終了し、ニューラルネットワークの学習が十分に行われた後に、ネットワークの構造、すなわち結合係数やオフセット値をメモリ52に記憶し、変換系を構築するようにしてもよい。
【0219】
上記では非線形演算部62としてニューラルネットワークを用いた場合を説明したが、次の(7)式に示すように、多項式による応答曲面法を利用した変換系を用いることもできる。
【0220】
【数9】
Figure 0004234857
【0221】
次に、本実施の形態の最適化装置60の作動を図31のフローチャートを参照してさらに説明する。最適化装置60の電源が投入または実行開始の指示がキーボードよりなされると、図31のステップ400へ進み、タイヤの形状、構造、パターンの設計パラメータxi (i=1〜p)、目的関数、最大実験回数を設定する。すなわち、何れの性能を改良するか、またその場合、何回程度の実験回数までに最適なタイヤの形状、構造、パターンの設計パラメータを決定したいかを設定する。
【0222】
次のステップ402では、ステップ400で設定したタイヤの形状、構造、パターンの設計パラメータxi の許容範囲を設定し(xi L ≦xi ≦xi U :xi L は下限値、xi U は上限値)、次のステップ404では実験または数値計算による解析回数M及びタイヤの形状、構造、パターンの設計パラメータの位置を表す変数eを初期化する(M=0、i=1)。
【0223】
次のステップ406では、ステップ400で設定したタイヤの形状、構造、パターンの設計パラメータxi 、タイヤ性能に関して、過去の実験データを利用できるか否かを判定し、肯定判定で利用できるときはステップ408へ進み、否定判定で新規に求めなければならないときはステップ420へ進む。
【0224】
ステップ420では、直交表または最適実験計画等を用いて、何れのタイヤの形状、構造、パターンの設計パラメータxi を変化させて実験を行うかを決定することによってタイヤの形状、構造、パターンの設計パラメータパラメータを決定する。このタイヤの形状、構造、パターンの設計パラメータの決定は、「Box and Draper;"Empirical Model Builing and Response Surfaces",John Wiley & Sons,New York 」に記載の方法を利用することができる。
【0225】
次のステップ422では、ステップ420で決定した実験計画に従ったタイヤの形状、構造、パターンの設計パラメータにより各設計変数を変化させたタイヤモデルを作成する。すなわち、全実験数または数値解析の回数をni として、ni 個のタイヤ断面形状を有限要素法等のように空気充填時のタイヤ周方向ベルト張力を数値的・解析的に求めることができる手法によりモデル化し、内部構造を含むタイヤ基本モデルを求める。
【0226】
また、このステップ422では、タイヤ性能評価用物理量を表す目的関数、タイヤ断面形状を制約する制約条件及びni 個のタイヤモデルのタイヤ断面形状を決定する設計変数を決定する。この後に、ステップ424において、ni 個のタイヤモデルの各々について、上記説明した図2のステップ104と同様にして、タイヤ性能予測処理を実行する。これにより、タイヤ性能予測結果が得られることになる。
【0227】
タイヤ性能予測処理が終了した後の、図31のステップ426ではni 個のタイヤモデルの各設計変数の各々の目的関数OBJJ 及び制約条件GJ を演算し、記憶する。
【0228】
次のステップ428では、上記で説明したようにしてニューラルネットワークを学習する。すなわち、入力層へ入力する値をタイヤの形状、構造、パターンの設計パラメータの各値、出力層から出力される値をタイヤの性能の各値としてニューラルネットワークを学習する。
【0229】
次のステップ430では、目標物性・特性に対して寄与が少ないタイヤの形状、構造、パターンの設計パラメータの有無を判断する。例えば、入力層の少なくとも1つのユニットへ入力したタイヤの形状、構造、パターンの設計パラメータxi を僅か変化させたときに対する出力層のタイヤ性能の変化傾向を示す感度、及び入力層の少なくとも1つのユニットからの出力を零にしたときに対する、出力層のタイヤ性能の予測精度の低下度合を計算し、寄与が少ないタイヤの形状、構造、パターンの設計パラメータを決定する。これは感度が小さくその入力を無視しても予測精度が低下しないタイヤの形状、構造、パターンの設計パラメータは寄与が少ないと考えられるためである。
【0230】
寄与が少ないタイヤの形状、構造、パターンの設計パラメータが有るときは、ステップ430で肯定判断され、次のステップ432において寄与が少ないタイヤの形状、構造、パターンの設計パラメータxi を削除し、その削除された後のタイヤの形状、構造、パターンの設計パラメータによって再度学習する(ステップ428)。一方、寄与が少ないタイヤの形状、構造、パターンの設計パラメータが無のときはステップ430で否定判断され、次のステップ434において上記学習されたニューラルネットワークの入力層(タイヤの形状、構造、パターンの設計パラメータ)と出力層(タイヤ性能)の関係を記憶する。すなわち、各結合係数及びオフセット値を記憶する。
【0231】
次のステップ436では、記憶された入力層(タイヤの形状、構造、パターンの設計パラメータ)と出力層(タイヤ性能)の関係を用いて後述するようにして目的関数を最適化することによって最良のタイヤの形状、構造、パターンの設計パラメータxi を求める(図33)。
【0232】
最適化が終了すると、次のステップ438で実験回数または解析回数Mが増加され(M=M+ni )、次のステップ440において、M<(設定された最大の実験回数または解析回数)か否かが判断され、小さい場合には、ステップ442へ進む。
【0233】
ステップ442では変数iをインクリメントし、次のステップ444で、以下の(8)〜(10)式に示すようにタイヤの形状、構造、パターンの設計パラメータの許容範囲を再設定してステップ420へ戻る。この処理を繰り返すことで、最適なタイヤの形状、構造、パターンの設計パラメータxi OPT の精度を向上することができる。なお、ステップ444の許容範囲の再設定は、ステップ402で定めたタイヤの形状、構造、パターンの設計パラメータの許容範囲を狭め設定を行い、ステップ420ではこの狭めた領域について再実験点の計画を行う。
【0234】
【数10】
Figure 0004234857
【0235】
ここで、NNは、タイヤの形状、構造、パターンの設計パラメータの許容範囲を狭める程度を定めるための係数であり、1.5から5程度の値を設定することが望ましい。
【0236】
一方、ステップ440で否定判断、すなわち予め定めた最大の実験回数または解析回数より多く実験または数値解析した場合には、ステップ446で最後に得られたタイヤの形状、構造、パターンの設計パラメータを最適タイヤ設計として出力する。次のステップ448では、過去の実験データ内に同様な実験または数値解析があるか否かを判断し、否定判断の場合には次のステップ450で最適タイヤ設計の性能をメモリ22またはデータ入出力装置28を介して外部記憶装置等のデータベースへ登録する。なお、再度実験または数値解析してタイヤの性能を求めてもよい。
【0237】
なお、最大の実験回数または解析回数は、実験または数値解析にかかる費用及び最適タイヤ設計を求めるのに用する時間等によって定められた定数である。
次に、上記ステップ406で肯定判断された場合には、ステップ408において、予め用意されたデータベースからステップ400で設定した各項目に関連した過去のタイヤの形状、構造、パターンの設計パラメータ、タイヤ性能を読み取り、次のステップ410において、その読み取ったデータを以下の(11)〜(14)式を用いて尖度、歪度が小さくなるように変換する。
【0238】
【数11】
Figure 0004234857
【0239】
次のステップ412では、上記ステップ428と同様にニューラルネットワークを学習し、次のステップ414で上記ステップ434と同様に学習結果を記憶する。次のステップ416では実験データ(予測データ)に戻すために、ステップ410による変換の逆変換を行い、次のステップ418で全実験数niをリセットし(=0)、ステップ436へ進む。
【0240】
次に、図31のステップ436の最適化処理の詳細を説明する。図33のステップ460では、改良したいタイヤ性能を表す目的関数、或るタイヤ性能を改良するときに悪化してはならないタイヤ性能等を制約する制約条件及びタイヤの形状、構造、パターンの設計パラメータを決定する設計変数を定め、次のステップ462でタイヤの形状、構造、パターンの設計パラメータの数を表す変数jをリセット(=0)する。
【0241】
次のステップ464では、最適化するときの初期値として用いるタイヤの形状、構造、パターンの設計パラメータを設定する。タイヤの形状、構造、パターンの設計の最適化問題は、入力値(例えばベルトの幅と確度)を2次元平面にプロットして目的関数の値を高さ方向にプロットしたイメージによる3次元的に捉えるとタイヤの性能に関する設計空間が多峰性を有するために、異なった初期値から最適化を行って最適解の解空間を知る必要がある。初期値としては、例えば、以下に示す(15)式を用いることができる。
【0242】
【数12】
Figure 0004234857
【0243】
次のステップ466では、ステップ304で設定した初期のタイヤの形状、構造、パターンの設計パラメータを入力としてニューラルネットワークによる出力を実行し、入力したタイヤの形状、構造、パターンの設計パラメータに対応したタイヤの性能を予測する。その結果を用いて、目的関数、制約条件の初期値を演算する。
【0244】
次のステップ468では、タイヤの形状、構造、パターンの設計パラメータを変化させるためにステップ464で設定されたタイヤの形状、構造、パターンの設計パラメータxi を各々△xi づつ変化させて、次のステップ470で、設計変数をΔxi 変化させた後の目的関数の値OBJi 及び制約条件の値Gi を演算し、ステップ472で以下の式(16)、(17)に従って、設計変数の単位変化量に対する目的関数の変化量の割合である目的関数の感度dOBJ/dxi 及び設計変数の単位変化量に対する制約条件の変化量の割合である制約条件の感度dG/dxi を各設計変数毎に演算する。
【0245】
【数13】
Figure 0004234857
【0246】
この感度によって、設計変数をΔxi 変化させたときに目的関数の値がどの程度変化するか予測することができる。この予測、すなわち、最適化の過程は、登山にたとえることができ、目的関数の値の変化を予測することは登山の方向を指示することに相当する。
【0247】
次のステップ474では、全てのタイヤの形状、構造、パターンの設計パラメータについて演算が終了したか否かを判断し、全てのタイヤの形状、構造、パターンの設計パラメータについて演算が終了していない場合には、ステップ468からステップ474を繰り返し実行する。
【0248】
次のステップ476では、目的関数、制約条件の設計変数に関する感度を用いて、数理計画法により制約条件を満たしながら目的関数を最小又は最大にする設計変数の変化量を予測する。この設計変数の予測値を用いて、ステップ478で各タイヤの形状、構造、パターンの設計パラメータを修正すると共に、修正された各タイヤの形状、構造、パターンの設計パラメータによる目的関数値を演算する。次のステップ480では、ステップ488で演算した目的関数値OBJとステップ466で演算した目的関数の初期値OBJoとの差と、予め入力されたしきい値とを比較することで目的関数の値が収束したか否かを判断し、目的関数の値が収束していない場合にはステップ476で求められた設計変数値を初期値として、ステップ466からステップ480を繰り返し実行する。目的関数の値が収束したと判断されたときには、このときの設計変数の値をもって制約条件を満たしながら目的関数を最良にする設計変数の値とし、ステップ482においてこの設計変数の値を用いてタイヤの形状、構造、パターンの設計パラメータを決定し、次のステップ484で変数jをインクリメントしてステップ486へ進む。
【0249】
ステップ486ではjが初期のタイヤの形状、構造、パターンの設計パラメータの許容数:(1+Munit)p を越えるか否かを判断し、越えない場合には、ステップ464へ戻り初期のタイヤの形状、構造、パターンの設計パラメータの値を変更して上記ステップ464からステップ486を繰り返し実行する。
【0250】
一方、ステップ486で肯定判断の場合には次のステップ488で最適タイヤ設計を決定し、本ルーチンを終了する。本実施の形態のステップ488における最適タイヤ設計の決定は、次の2つの条件を考慮して求めるものであり、条件に対する一致度が大きいものを最適タイヤ設計とする。
【0251】
[条件]
▲1▼目的関数OBJが小さい値を有する。
(目的関数に選んだタイヤ性能が小さい方が良いように設定する。大きい方が良い場合にはマイナス符号を付与して対応する。)
▲2▼求められた最適解の周りでタイヤの形状、構造、パターンの設計パラメータを
少し変更しても目的関数、制約条件が余り変化しない。
【0252】
以上説明したように、本実施の形態では、変換系を定めるために、ニューラルネットワークによる非線形演算部において、タイヤの形状、構造、パターンの設計パラメータ、製造条件とタイヤの性能との対応関係を実験または数値解析によるデータにより学習しているので、変換系を計算する手段として関数型を仮定する必要がなく、タイヤの形状、構造、パターンの設計パラメータ及び製造条件と、タイヤの性能との対応が関連付けられた相互の関係を見出すことのできる変換系を、精度が高く任意性の少なく作成することができる。また、その変換系と最適化演算部を組み合わせることによって、有効性のあるタイヤの形状、構造、パターンの最適設計案を出力することができる。
【0253】
なお、上記実施形態における感度解析(図33)に代えて遺伝的アルゴリズムの手法によって、最適化するようにしてもよい。なお、遺伝的アルゴリズムの手法は、図23の処理からステップ303及びステップ321のタイヤ性能予測処理を除いた処理を実行すればよい。
【0254】
〔第4実施の形態〕
次に、第4実施の形態を説明する。本実施の形態は、偏磨耗抑制性能と操縦安定性能を向上させるために、接地面積を減少させずに接地圧を均一にする直方体ブロック踏面形状を設計し、タイヤを設計するものである。
【0255】
図34は、本実施の形態のプログラムの処理ルーチンを示すものである。ステップ500では、図2のステップ100と同様に、設計するタイヤの設計案(タイヤ形状、構造、材料、パターンの変更など)を数値解析上のモデルに落とし込むためのタイヤモデル、タイヤ性能評価のための流体モデル及び路面モデルの作成等の初期モデル作成処理が実行される。
【0256】
本実施の形態では、接地面積を減少させずに接地圧を均一にする直方体ブロック踏面形状を設計し、タイヤを設計するために、ステップ500において、タイヤを構成する1ブロックについて、さらにモデル化を進め、踏面が平面のブロック形状を基準形状とし、この基準形状を有限要素法等のように路面入力時の応答を数値的・解析的に求めることができる手法によりモデル化し、ブロック形状を表すと共にメッシュ分割によって複数の要素に分割されたブロック基本モデルを求める。なお、基準形状は、踏面が平面のものに限らず任意の形状で良い。ここで、モデル化とは、パターン形状、ブロック形状、構造、材料等を数値的・解析的手法に基づいて作成されたコンピュータプログラムヘのインプットデータ形式に数値化することをいう。
【0257】
図35はブロック基本モデルの一例を示すものである。また、このブロック基本モデルはメッシュ分割によって複数の要素に分割、すなわち図中、複数の線分PLによって複数の要素に分割されている。なお、上記ではブロック基本モデルを図35に示されるように複数の要素に分割した例について示したが、この分割方法は任意であり、目的に応じて分割幅を変化させたり、また、三角形等の任意の形状に分割しても良い。本実施の形態の場合ではブロック踏面形状を決定する節点Di (i:節点の番号、i≧1)の、ブロック高さ方向(図35の矢印UP方向)の座標を設計変数ri としている。
【0258】
次に、図2のステップ102及びステップ104と同様にして、ステップ502では、タイヤ性能評価用物理量を表す目的関数、タイヤ断面形状を制約する制約条件及びタイヤ断面形状を決定する設計変数を決定し、次のステップ504では初期のタイヤ性能を予測する。
【0259】
次のステップ506では、上記ステップ500でモデル化されたブロック基本モデルに少なくとも一つの入力Ij (j:入力の番号、j≧1)を与える。本実施の形態では合計9個の入力Ij を与えている。図36(A)に示すように、ブロック基本モデルに対して略垂直に荷重付与したときの平押し荷重(例えば、面圧4kgf/cm2 )を入力I1 とする。この平押し荷重下において、図36(B)に示すように、ブロック基本モデルの中心部からブロック高さ方向UPと交差する方向(踏面Cに沿う方向)でかつ等角度で8方向の入力、すなわち約45度ピッチ(8方向)の剪断方向入力をそれぞれ1mm与え、これらの入力を入力I2 〜I9 としている。この1mmとは、基準となるブロック底面に対して路面を1mm動かしたことに相当する。これらの入力I1 〜I9 は、入力条件に相当する。入力条件は、与える入力を規定するための条件であり、入力の力(荷重)、方向、及び複数入力の組み合わせをいうものである。
【0260】
なお、本実施の形態では複数の入力I1 〜I9 を与える場合を説明するが、上記入力数に限定されるものではなく、目的に応じて、荷重条件を2つ以上の複数にしてもよい。また、剪断方向入力は、5つに限定されるものではなく、1つ以上であればよく、また、剪断方向入力の各々を荷重設定してもよい。
【0261】
次のステップ508では、上記ステッブ506で与えられた入力Ij に対する接地圧pi,j を演算し、パターン性能評価用物理量やブロック性能評価用物理量(以下、パターン/ブロック性能評価用物理量と記載する)を表す目的関数OBJ、パターン/ブロック踏面形状を制約する制約条件Gを決定する。本実施の形態では、操縦安定性を向上させ同時に偏摩耗抑制の効果を狙い、目的関数(OBJ及び制約条件(G1,G2)を次のように定めている。
【0262】
目的関数OBJ:接触領域における接地圧分布の標準偏差
制約条件G1:接地面積が同じ入力のブロック基本モデル同等以上
制約条件G2;ブロック最大高さがブロック基本モデルと同じであること
なお、本実施の形態では接地性重視の観点から接地面積を制約条件Gとして設け、さらにタイヤ半径を変えない目的でブロック最大高さを不変としている。しかし、上記制約条件Gは目的に応じて他の物理量を用いることも可能であり、制約条件Gが単数または複数もしくは制約条件Gを用いなくても本設計方法は成立する。
【0263】
また、上記では、ステップ508において入力に対する接地圧を求めているが、ステップ506で入力が与えられた時点で接地圧分布を求めてもよい。
【0264】
次のステップ510では、各節点の接地圧偏差を感度情報として用い、設計変数ri の変化量を予測する(ブロック踏面の形状の変化量を予測する)。すなわち、各節点の接地圧から平均より高ければ(低ければ)ブロック高さを減少(増加)方向に設計変数の改良方向の変化量を予測する。本実施の形態のステップ510では、次に示す(18)式に則って設計変数ri の変化量を予測している。
【0265】
【数14】
Figure 0004234857
【0266】
上記(18)式は、「各節点は、複数の入力条件を考えたときに、最も平均接地圧との比率が大きい入力条件にしたがって、その比率にある比例定数αをかけた距離だけ変化する」ということを表している。なお、この(18)式は、接地圧均一化を想定した場合に、接地圧が低い部分の踏面形状(ブロック高さ)を高くする、接地圧が高い部分の踏面形状(ブロック高さ)を低くする、という設計変数ri の変更を可能にするために用いている。
【0267】
次のステップ512では、設計変数ri の変化量の予測値に対応する修正モデルを作成する。このステップ512では、修正モデルすなわちブロックからタイヤモデルを形成し、修正されたタイヤモデルを生成することができる。次のステップ514では、図2のステップ104と同様にして、修正されたタイヤモデルのタイヤ性能予測処理が実行される。なお、ステップ514において、タイヤ性能予測処理が実行された場合、上記と同様に、予測結果の評価から、予測性能が良好であるか否かを判断することができる。この判断は、キーボードによる入力によってなされてもよくまた、上記評価値に、許容範囲を予め定めておき、予測結果の評価値が許容範囲内に存在するときに、予測性能が良好であると判断するようにしてもよい。また、予測性能の評価の結果、目標性能に対して不十分であるときは、この時点で処理を中止し、設計案を変更(修正)した後に再度タイヤの設計を開始(これまでの処理をやり直す)してもよいし、予測性能の評価の結果を記憶しておき、適宜参照しても良い。
【0268】
タイヤ性能予測処理が終了した後は、ステップ516において、接地圧、目的関数及び制約条件を求め、次のステップ518において、上記ステップ516で求めた目的関数OBJの値と、前回の繰り返し処理までに求められている目的関数の値(前回の繰り返し処理におけるステップ516で求めた目的関数の値)とを比較することで、目的関数の値が収束したか否かを判断する。制約条件を満たす目的関数の収束値が得られたときは、ステップ518で肯定され、ステップ520へ進む。一方、制約条件を満たす目的関数の収束値が得られなかったときは、ステップ518で否定され、ステップ506へ戻り、上記処理を繰り返し実行する。
【0269】
本実施の形態では、目的関数である、接触領域における接地圧分布の標準偏差が小さい程、偏磨耗抑制性能と操縦安定性能とが向上することが予想されるので、目的関数OBJの値が小さくなる方向に収束される。従って、本実施の形態では、目的関数OBJの最小値が得られるまでステップ506からステップ518の処理を繰り返し実行する。
【0270】
なお、本実施の形態では制約条件Gがあるため、この制約条件Gを満たす中で目的関数OBJの最小値が得られたとき、繰り返し処理(ステップ506〜ステップ518)が終了する。形状の変化を定義する数式は、上記(18)式以外を用いてもよく、様々な方法が可能である。例えば、複数の入力の中で特定の入力が重視されるような重みwを乗算して各入力からの応答を混ぜ合わせる数式等も用いることができる。以下の(19)式に一例を示す。
【0271】
【数15】
Figure 0004234857
【0272】
なお、本実施の形態の目的関数は小さい程よいというメジャーを採用したため最小値を求めるが、目的に応じて値が大きい程よい目的関数や、ある特定の値を最良とする目的関数の選定も可能である。
【0273】
次のステップ520では、ブロック踏面形状をカーブフイット処理する。このカーブフィット処理は、ブロックの接地縁付近の形状について予め定めた曲率半径Rの形状に揃える処理である。具体的には、図37(A)及び図37(B)に示すように、ブロックの接地縁付近について、ブロック端から、ブロックへ垂直方向(方向UPに沿う方向及び逆方向)に予め定めた長さHの位置と、ブロックへ水平方向(方向UPの交差方向)に予め定めた長さLの位置とを結ぶ曲線を、曲率半径Rとなるようにブロック形状を揃える。これは、踏面全体が設計変数ri となり、上記ステップ518までの処理によって、接地縁付近または踏面全体の形状は複雑になるので、製造上の手間やコストを考慮して、より単純な形状にするためである。
【0274】
図38に、ステップ518までに計算したブロック形状の一例を示す。図39に、図38の矢印B方向から見た斜視図を示す。ステップ520のカーブフィット処理を行った結果を図40に示した。従って、図39に示すブロックの形状は、図40に示すブロックの形状に置き換えられる。この各ブロック端に配される曲率半径Rは最小二乗近似により最も最適な設計変数ri に近い形状を得ることができる。この近似はブロック端断面の数箇所で行い、他の部分はその数点の間をラグランジェ多項式で補間して形状決定することができる。
【0275】
なお、本実施の形態では近似に曲率半径Rを用いているが、この曲率半径Rは多項式、区分多項式、スプライン、NURBS、有理関数等を用いても良い。さらに、その指定断面の間の部分はラグランジェ多項式で補間したが、上記曲率半径Rと同様に他の多項式、区分多項式、スプライン関数、NURBS、有理関数等を用いてもよい。また、断面を指定するのではなく、踏面形状そのものを多項式補間曲面、区分多項式曲面、スプライン曲面、NURBS曲面などで表現することもできる。近似においても、最小二乗近似以外の近似方法を用いてもよい。このように、本実施の形態では最適な目的関数値を与える設計変数が得られた後に製造を考慮して形状の近似を行っている。
【0276】
以上の処理が終了すると、次のステップ522において踏面形状を決定する。このステップ114では、上記演算から得られた最良の目的関数値を与える設計変数に基づいてタイヤを設計、すなわち、上記決定した踏面形状を有するブロックを配置したタイヤを設計する。なお、このステップ522では、タイヤの設計に代えてタイヤ加硫用金型の設計を行うことができる。
【0277】
上記では、最適な目的関数値を与える設計変数が得られた後に製造を考慮して形状を近似した場合を説明したが、上記関数あるいは数式に従い形状を変化させる処理は、計算時間や計算機の能力を考慮して、毎演算あるいは数演算に1回でも良い。毎演算ごとに形状近似する場合の処理の流れの一例を図41に示す。図41の処理は、図34のステップ520の処理、すなわち最適な目的関数値を与える設計変数が得られた後に製造を考慮して形状近似する処理を、ステップ512とステップ514との間で処理させるものである。
【0278】
図41の処理では、ステップ512において、設計変数ri の変化量の予測値に対応する修正モデルを作成し、次のステップ520でブロック踏面形状をカーブフイット処理する。そして、ステップ514において、タイヤ性能予測を実行しする。
【0279】
従って、毎演算ごとに形状近似することによって、近似した形状で目的関数の収束を判断することができる。なお、数演算に1回の近似を行う場合には、図41において、ステップ520の処理を数演算に1回行うように判定条件を負荷すればよい。
【0280】
なお、形状の近似を毎演算ごとに行う場合、設計変数に与える制約条件としての機能を果たすことになる。
【0281】
一方、形状近似を用いずに最適形状そのものをタイヤ設計に適用することも可能である。形状近似を行わない場合のフローチャートを図42に示す。図42の処理は、図34のステップ520の処理すなわち最適な目的関数値を与える設計変数が得られた後に製造を考慮して形状近似する処理を削除したものである。
【0282】
以上説明したように、本実施の形態では、パターンやブロック踏面形状を適正化するので、操縦安定性及び耐偏摩耗性能を向上させたタイヤを提供することができる。
【0283】
また、これらのタイヤについての摩耗の様子を概念図として図43及び図44に示す。実線は摩耗前、破線は摩耗後の接地端付近断面図を表す。図43に示すように、従来形状のタイヤでは、接地端部が局所的に激しく摩耗する。一方、44に示すように、本実施例のタイヤは略均等な摩耗状態になる。これにより、適正な踏面形状により局所的な偏摩耗が抑制されることが理解される。
【0284】
以上のように、本実施の形態によりパターン/ブロック踏面形状を適正化することにより、操縦安定性及び耐偏摩耗性能を向上させたタイヤを提供することができる。
【0285】
〔第5実施の形態〕
次に、第5実施の形態を説明する。なお、本実施の形態は、上記実施の形態と同様の構成のため、同一部分には同一符号を付して詳細な説明を省略する。また、本実施の形態では、流体として水を採用している。
【0286】
タイヤモデルの全周にパターンを有させて解析を行うと、計算量が膨大となり、結果を簡単に得ることができない。そこで、本実施の形態は、タイヤの排水性を考慮しながらタイヤの設計を容易にするため、タイヤモデルの一部にのみパターンを有させてタイヤ設計をするものである。
【0287】
本発明者は、タイヤの排水性について、踏込み部のパターン排水に着目した。踏込み部とは、タイヤが転動するときに、タイヤが路面に近づくまたは接触する付近を示している。
【0288】
図45に示すように、タイヤの排水性、特にハイドロプレーニング(以下、ハイプレという)に関して、タイヤの周辺部は、接地面近傍で次のA領域からC領域の3つの領域に分類できる。
【0289】
A領域:厚い水膜上(水の慣性効果、動水圧主体、ダイナミックハイプレ)
B領域:薄い水膜上 (粘性効果が主体、ビスカスハイプレ)
C領域:完全にDRY接地
なお、水深が厚い(10mm程度の)場合や、路面に凹凸があって粘性効果が無視できる場合はA領域のダイナミックハイプレが重要である。
【0290】
上記ダイナミックハイプレ(A領域)が生じる理由としては、次の2つの理由が考えられる。
【0291】
1:タイヤと流体(本実施の形態では、水)が高速で衝突し、その速度の2乗に比例する動水圧が作用すること。
【0292】
2:踏込み部の動水圧が接地圧を超えると浮き上がる。なお、踏込み部の水をパターンで排水させると動水圧が下がり、ハイプレを抑制することができる。
【0293】
図46(A)に示すように、路面18上をタイヤ(タイヤモデル30)が転動方向(図46(A)の矢印M方向)に転動する場合には、踏込み部付近50において、タイヤモデル30と路面18との間でタイヤ転動側に流体20が主に貯留する。この場合の圧力関係を考えると、図46(B)に示すようになる。タイヤモデル30と流体(水)が衝突し、その速度の2乗に比例して踏込み部に圧力52(図46(B)に一点鎖線で示す)が発生する。タイヤモデル30と路面18とが接触している付近は略行っての圧力54(図46(B)に点線で示す)が発生している。このように、ダイナミックハイプレ(A領域)における圧力が支配的になる。
【0294】
そこで、本実施の形態では、タイヤの排水性を考慮しながらタイヤ設計を容易にするため、タイヤモデル30として、全周が平坦なスムースタイヤモデルを基本とし、踏込み部の解析が容易となるに必要な一部のパターンをスムースタイヤモデルに有させて解析を行う。なお、以下の説明では、本解析を、GL (Global−Local)解析と呼ぶ。
【0295】
次に、本実施の形態におけるGL解析を説明する。このGL解析の概略は、次の手順1〜手順4により実施できる。
【0296】
<GL解析の手順>
手順1:スムースタイヤモデル、パターンモデル(一部)とパターンに貼りつけ る部分のベルトモデルを準備(図47参照)
手順2:スムースタイヤモデルの転動及びハイプレ解析
(global analysys:G解析、図48参照)
手順3:スムースタイヤモデルの結果から、パターン部(一部)に貼り付けるベルトモデル(パターンモデルの一部と同じ)の転動軌跡を計算する。具体的には、ベルトモデル(シェル)の全節点の転動中の変位を出力し(これを速度に変換して出力してもよい。なお、FEMソフト上の制約や変位のまま求めることができればそれでも良い)、パターンモデル(一部)をベルトモデルに貼りつけ、ベルトモデルの節点に強制速度(変位でも可)を付与
手順4:手順3までによってパターン部(一部)のみを転動させることが可能であるので、パターン部に対応する流体メッシュを準備し、パターン部のみを排水性解析
(local analysys:L解析、図49参照)
なお、評価は流体反力・水圧分布・流れ解析で行なう。
【0297】
詳細には、上記実施の形態と略同様であり、まず、タイヤ設計案からタイヤモデル、流体モデルを作成し、路面モデル作成と共に摩擦係数μの選択で路面状態を入力し、タイヤ転動時またはタイヤ非転動時の境界条件を設定し、設計変数及び制約条件を定める(図2の100〜104)。この場合、タイヤモデルは、スムースタイヤモデルであり、また、パターンモデル(一部)とパターンに貼りつける部分のベルトモデルを作成する。そして、タイヤ転動時またはタイヤ非転動時の境界条件を設定し、タイヤモデルの変形計算及び流体計算等を行う。これは、スムースタイヤモデルの転動及びハイプレ解析(global analysys:G解析、図48参照)である。
【0298】
次に、設計変数を単位量Δri 変化させたモデルを求め(図2の106〜110)、タイヤモデル変形計算、流体計算及び境界条件を求めてタイヤ性能予測する(図2の112)。すなわち、スムースタイヤモデルの結果から、パターン部(一部)に貼り付けるベルトモデル(パターンモデルの一部と同じ)の転動軌跡を計算する。これによってパターン部(一部)のみが転動されるので(図49)、パターン部に対応する流体メッシュを準備し、パターン部のみを排水性解析する。これは、パターンモデルの一部であるパターン部のみの解析(local analysys:L解析)である。ここで、図49に示すように、パターン部(一部)の転動により、パターン部は、位置状態L1〜位置状態L13に推移することになる。
【0299】
そして、目的関数及び制約条件の値、設計変数毎に感度を演算し、タイヤ性能予測しつつ制約条件を考慮しながら目的関数の値を最大にする設計変数の変化量の予測値を求め、目的関数の値が収束するまで繰り返す(図2の114〜124)。目的関数の値が予測値に収束したときの設計変数に基づいてタイヤの形状を決定する。
【0300】
このように、本実施の形態では、スムースタイヤモデルを基本とし、パターンの一部を用いてタイヤ性能を予測するGL (Global−Local)解析を行っているので、次の3つの利点を得ることができる。
1:計算時間の短縮。本発明者は、細かいメッシュで全周のパターンモデルで解析した場合、約1ヶ月を必要とした計算時間を、約2日に短縮することができることを確認した。
2:各種モデル作成が簡単になる。特に、タイヤモデルにおいてパターンを全周用意する必要がない。
3:(ダイナミック)ハイプレで重要な、踏込み部パターンの入水時の排水性だけを簡単に解析できる。
【0301】
図50、図51、図52には、パターン部(一部)を転動させたときの、排水性解析結果の一例を示したものである。図50乃至図52は、パターン部の時系列的な状態を示しており、図50はパターン部が転動して路面に接触する時点の状態を示している。図51はパターン部が路面に接触を開始して僅かに踏み込んだ時点の状態を示している。図52はパターン部の中腹部が路面に接触している時点の状態を示している。図から理解されるように、パターン部の路面接触の当初は、流体(水)がタイヤモデルの転動方向に散布されたように離散しており(図50)、僅かに踏み込むとタイヤモデルの溝に導かれる流体(水)が増加して散布されたような流体(水)が減少し(図51)、パターン部の中腹部が接触すなわちパターン部の略全てが路面に接地しているときはタイヤモデルの溝に導かれる流体(水)が殆どになっている(図52)。
【0302】
〔第6実施の形態〕
次に、第6実施の形態を説明する。なお、本実施の形態は、上記実施の形態と同様の構成のため、同一部分には同一符号を付して詳細な説明を省略する。本実施の形態は、タイヤを構成するブロック先端の一部を落として流体の抵抗を減少させるブロック形状を最適化するものである。
【0303】
図53は、本実施の形態のプログラムの処理ルーチンを示すものである。ステップ600では、図35のステップ200と同様に、設計するタイヤの設計案(タイヤ形状、構造、材料、パターンの変更など)を数値解析上のモデルに落とし込むためのタイヤモデル、タイヤ性能評価のための流体モデル及び路面モデルの作成等の初期モデル作成処理が実行される。なお、本実施の形態では、第2実施の形態及び第8実施の形態と同様に、タイヤの排水性を考慮しながらタイヤの設計を容易にしかつ計算負荷抑制のため、タイヤモデルの一部にのみパターンを有させて最適化する。このため、ステップ600では、スムースタイヤモデル、パターンの一部のモデル、ベルトモデル、及びパタン接地部の流体モデルの各モデルの作成処理がなされる。
【0304】
また、本実施の形態では、タイヤを構成するブロック先端の一部を落として流体の抵抗を減少させるブロック形状を設計し、タイヤを設計するために、ステップ600において、タイヤを構成する1ブロックについて、さらにモデル化を進め、図52に示すような、踏面が平面のブロック形状を基準形状とし、この基準形状を有限要素法等のように路面入力時の応答を数値的・解析的に求めることができる手法によりモデル化し、ブロック形状を表すと共にメッシュ分割によって複数の要素に分割されたブロック基本モデルを含ませている。なお、基準形状は、踏面が平面のものに限らず任意の形状で良い。ここで、モデル化とは、パターン形状、ブロック形状、構造、材料等を数値的・解析的手法に基づいて作成されたコンピュータプログラムヘのインプットデータ形式に数値化することをいう。
【0305】
図55及び図56はブロック基本モデルの外形の一例を示すものである。図55に示すように、ブロック基本モデルは、最適化前は、踏み込み側の先端部Tpが高さWdでかつ、ブロック先端を落としこむための位置として先端部Tpから下流に向かって長さLgの位置が定められている。最適化後には、図56に示すように、先端部Tpから下流に向かって長さLgの位置を基点として、ブロック先端が落とされ、この踏面からブロック高さ方向の長さをブロック先端の落としこみ量Aとしている。本実施の形態の場合では、ブロック先端の落としこみ量A(踏面からブロック高さ方向の長さ)を設計変数ri としている。なお、図示は省略したが、ブロック基本モデルはメッシュ分割によって複数の要素に分割可能にされている。この分割方法は任意であり、目的に応じて分割幅を変化させたり、また、三角形等の任意の形状に分割しても良い。このように、ブロック先端を落としこむことで図57に示すように、流体の抵抗が減少することが予測される。
【0306】
次に、図2のステップ102と同様にして、ステップ602では、タイヤ性能評価用物理量を表す目的関数、タイヤ断面形状を制約する制約条件及びタイヤ断面形状を決定する設計変数を決定し、次のステップ604において上記作成したモデルを用いてタイヤ形状であるタイヤモデルの初期値を決定する。
【0307】
本実施の形態では、目的関数及び制約条件を次のように定めている。
【0308】
目的関数:流体反力(最小化)
制約条件:ブロック体積が初期形状の60%〜100%以内
設計変数は上述のように、ブロック踏込み側先端での落し量Aである(図56)。
【0309】
ところで、目的関数の流体反力はパターン付きタイヤの転動・排水性解析で求める必要があるが、ブロック先端形状のような小さい領域での効果を扱う場合、精度を確保するために流体領域のメッシュ分割を(少なくともブロック先端が接地する付近で)十分細かくしなければらならい。だがトレッド全面のパターンをモデル化したタイヤの転動・排水性解析は、精度を確保するためにほぼ全領域にわたって流体メッシュを細かくする必要があり、計算時間が膨大になり、繰り返し計算を必要とする最適化手法には向かない。
【0310】
そこで、本実施の形態では、次のステップ606において、GL解析による排水性計算を行う。このステップ606では、粗い流体メッシュによるタイヤの転動・排水性解析で得た結果をもとに、パターンの一部分のみを転動させる排水性解析であるGL解析(Global/Local解析、Global解析:スムースタイヤの転動・排水性解析、Local解析:パターンー部のみの転動・排水性解析)で流体反力に及ぼすブロック先端形状の効果を評価する。このGL解析は、上記実施の形態と同様の手順で行う。
【0311】
詳細には、ステップ606のGL解析による排水性計算の処理は、図54の処理ルーチンが実行される。図54のステップ630では、手順1としての、スムースタイヤモデル、パターンモデル(一部)とパターンに貼りつける部分のベルトモデルを準備する(図47及び図48参照)。またパターン部が接地する領域に対応する流体メッシュを準備する。そして、手順2としての、スムースタイヤの転動・ハイプレ解析を行なう(Global解析)。
【0312】
次のステップ632では、手順3として、スムースタイヤの結果から、パターン部に貼り付けるベルトモデルの転動軌跡を計算する。具体的には、ベルトモデルの全節点の転動中の変位を出力し、パターンモデルをベルトモデルに貼りつけ(ステップ634)、ベルトモデルの節点に強制速度(変位でも可)を与える。なお、パターンモデルをベルトモデルに貼りつける際には、両者のメッシュ分割を同一にして節点を共有させても、メッシュ分割密度を変えて(パターン側を細かくして)両者を拘束条件によって接合させても良い。
【0313】
次のステップ636では、手順4として、パターン部のみ転動させ、排水性解析する。すなわち、パターン部のみが転動するので、パターン部のみの排水性解析を行なう。これにより、流体領域がパターン部の接地領域近傍のみのため、流体メッシュ領域が小さく、流体メッシュを細かくしても要素数が増えすぎないので計算時間の増大を避けられる。
【0314】
次のステップ638では、流体反力の評価を行う。すなわち、評価はパターン部が着水して接地する一回分の流体反力の時間履歴を求め.着水時から接地時までのある時間間隔で流体反力を積分し、その積分値の比較で行なう。
【0315】
なお、以下に説明する最適化過程での繰り返し計算時には、手順1のモデル準備はパターンモデルのブロック先端形状の修正だけで良く、手順2のGlobal解析は計算する必要がない(ブロック先端形状が変わってもベルトの転動軌跡には影響を与えないと近似する)。図58にはパターンを一部モデル化した様子を示し、図59にパターンモデルにおけるブロック先端形状の変更位置Ag1,Ag2,Ag3,Ag4を示した。また、図60には本実施の形態で用いた流体メッシュを示し、図61には流体メッシュとパターンモデルとが緩衝した状態を示した。
【0316】
このようにして、ステップ606のGL解析による排水性計算が終了すると、ステップ608へ進み、図2のステップ106同様に、設計変数ri の初期値roにおける目的関数OBJの初期値OBJo及び制約条件Gの初期値Goを演算する。次のステップ610では、図2のステップ108と同様に、タイヤ基本モデルを変化させるためにブロック先端の落とし込み量である設計変数ri をΔri ずつ変化させ、次のステップ612においてタイヤモデルを修正する。すなわち、設計変数に対応する落としこみ量でブロック先端を落としこみ、その落とし込んだブロックにタイヤモデルを修正、すなわちタイヤ修正モデルを決定する。
【0317】
このようにしてタイヤ修正モデルが決定されると、次のステップ614では図2のステップ114と同様に、タイヤ修正モデルについて設計変数をΔri 変化させた後の目的関数の値OBJi 、制約条件の値Gi を演算し、次のステップ616において上記図2のステップ116と同様に、設計変数の単位変化量に対する目的関数の変化量の割合である目的関数の感度dOBJ/dri 及び設計変数の単位変化量に対する制約条件の変化量の割合である制約条件の感度dG/dri を各設計変数毎に演算する。
【0318】
この感度によって、設計変数をΔri 変化させたときに目的関数の値及び制約条件の値がどの程度変化するか予測することができる。なお、この感度は、タイヤのモデル化に用いた手法や設計変数の性質によっては、解析的に求められる場合があるので、その際にはステップ214の演算は不要になる。
【0319】
次のステップ618では、上記図2のステップ118と同様に、目的関数の初期値OBJo、制約条件の初期値Go、設計変数の初期値ro及び感度を用いて、数理計画法により制約条件を満たしながら目的関数を最大にする設計変数の変化量を予測する。この設計変数の予測値を用いて、ステップ620において図2のステップ120と同様の方法によりタイヤ修正モデルを決定すると共に、目的関数値を演算する。
【0320】
タイヤ修正モデルが決定されると、次のステップ622において、演算した目的関数値OBJとステップ206で演算した目的関数の初期値OBJoとの差と、予めインプットされたしきい値とを比較することで目的関数の値が収束したか否かを判断し、目的関数の値が収束していない場合にはステップ618で求められた設計変数値を初期値として、ステップ608からステップ622を繰り返し実行する。目的関数の値が収束したと判断されたときには、このときの設計変数の値をもってタイヤ性能を考慮しつつ制約条件を満たしながら目的関数を最大にする設計変数の値とし、ステップ624でこの設計変数の値を用いてタイヤの形状を決定する。
【0321】
このように本実施の形態では、ブロック先端形状を落としこませることによって、流体例えば水の抵抗を減少させるタイヤを設計しているので、設計・開発した場合従来の試行錯誤を基本とした設計・開発と異なり、コンピューター計算を主体にしてベストモードの設計から設計されたタイヤの性能評価までが可能となり、著しい効率化を達成でき、開発にかかる費用が削減可能となるものである。
【0322】
本実施の形態では、タイヤサイズは205/55R16、内圧は220kPa、荷重は4500N、タイヤ速度は60km/h、水深は10mmとして、最適化に用いた種々の結果を以下に示した。
【0323】
最適化により得られた結果を表1に示す。ブロック先端の落とし量Aは6.4mmとなり、流体反力(着水から接地までの間6msの時間履歴の積分値)は指数表示で100から96へ減少し、ブロック先端の水の抵抗が減少して流体反力が低減していることがわかる。
【0324】
【表1】
Figure 0004234857
【0325】
図62にブロック先端形状の変更位置Ag1を示し、図63(A)には最適化前の変更位置Ag1における水の流れを示し、図63(B)には最適化後の変更位置Ag1における水の流れを示しした。最適化前のブロック先端を落としていない状態ではブロック先端で水の流れが乱れているのに対し、最適化後にはブロック先端の末の流れがスムーズになっていることがわかる。
【0326】
また、表2に転動・排水性解析の計算時間(一回当たり)の比較を、トレッド全面にパターンをモデル化して転動・排水性解析を行なった場合と、GL解析を用いてLocal解析によるパターン部分のみの転動中排水性解析のみとした場合で示す。
【0327】
【表2】
Figure 0004234857
【0328】
この表からGL解析により転動口排水性解析一回あたりの時間が大幅に減少しており、繰り返し計算の必要な最適化手法には、GL解析による計算時間の短縮が有効であることが分かる。
【0329】
表3に計算により求めた最適化ブロック先端形状の効果を実車で確認した結果を示す。ハイドロプレーニング測定条件は計算時の条件と同一で、最適化ブロック先端形状は元形状を削ることにより表現した。その結果、最適化形状はハイドロプレーニング発生速度が1.0km/h向上しており、計算による最適化形状が実車でも効果があることがわかった。
【0330】
【表3】
Figure 0004234857
【0331】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、排水性、雪上性能、騒音性能等のように流体を介して実際に使用する環境下におけるタイヤの性能を予測しながら、制約条件を満たす目的関数の最適値を与える設計変数を求め、この設計変数からタイヤを設計することができ、タイヤ接地時及び回転時の流体を考慮した解析を可能にし、タイヤ開発の効率を向上できると共に、良好な性能のタイヤを得ることができる、という効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態に使用されるパーソナルコンピュータの概略図である。
【図2】本発明の第1実施の形態の処理の流れを示すフローチャートである。
【図3】初期モデル作成処理の流れを示すフローチャートである。
【図4】タイヤモデル作成処理の流れを示すフローチャートである。
【図5】タイヤ径方向断面モデルを示す斜視図である。
【図6】タイヤの3次元モデルを示す斜視図である。
【図7】パターンをモデル化したイメージを示す斜視図である。
【図8】モデル化するときの要素を説明するためのイメージ図であり、(A)はゴム部の扱いを説明するためのイメージ図、(B)補強材の扱いを説明するためのイメージ図である。
【図9】設計変数を決定する処理の流れを示すフローチャートである。
【図10】タイヤ基本モデルを示す線図である。
【図11】タイヤ基本モデルにdθ毎に基準点Pを通る仮想線を引いた状態を示す線図である。
【図12】選択された節点、この節点についての距離ri 及び見込み角θi 等の関係を示す線図である。
【図13】流体モデルを示す線図であり、(A)は斜視図、(B)は平面図である。
【図14】転動時の境界条件設定処理の流れを示すフローチャートである。
【図15】非転動時の境界条件設定処理の流れを示すフローチャートである。
【図16】タイヤ性能予測処理の流れを示すフローチャートである。
【図17】境界条件付加処理の流れを示すフローチャートである。
【図18】転動時の境界条件の設定を説明するための説明図である。
【図19】非転動時の境界条件の設定を説明するための説明図である。
【図20】タイヤモデルと流体モデルとの干渉領域を示す線図である。
【図21】流体要素を分割することを説明するための説明図であり、(A)は分割前、(B)は分割後の流体側を示している。
【図22】タイヤを上方向に押し上げる上向き流体力を説明するための説明図である。
【図23】本発明の第2実施の形態の処理の流れを示すフローチャートである。
【図24】交叉処理の流れを示すフローチャートである。
【図25】山型写像関数を示す線図であり、(a)は連続的な山型写像関数を示す線図、(b)は線型的な山型写像関数を示す線図である。
【図26】谷型写像関数を示す線図であり、(a)は連続的な谷型写像関数を示す線図、(b)は線型的な谷型写像関数を示す線図である。
【図27】突然変異処理の流れを示すフローチャートである。
【図28】本発明の第3実施の形態にかかる最適化装置の概略構成図である。
【図29】最適化装置の機能別概略ブロック図である。
【図30】ニューラルネットワークの概念構成図である。
【図31】第3実施の形態の最適化装置の作動の流れを示すフローチャートである。
【図32】ニューラルネットワークの学習処理の流れを示すフローチャートである。
【図33】第3実施の形態の最適化処理の流れを示すフローチャートである。
【図34】本発明の第4実施の形態にかかり、空気入りタイヤの設計プログラムの処理の流れを示すフローチャートである。
【図35】形状基本モデルを示す斜視図である。
【図36】形状基本モデルに与える入力を示す概念斜視図である。
【図37】カーブフイット処理を説明するためのブロックの接地縁付近の形状について示す線図である。
【図38】計算結果のブロック形状を示す線図である。
【図39】矢印B方向から見た斜視図である。
【図40】ブロック形状を、カーブフィット処理した結果のブロック形状を示す線図である。
【図41】毎演算ごとに形状近似する場合の処理の流れを示すフローチャートである。
【図42】形状近似を用いずに最適形状そのものをタイヤ設計に適用する処理の流れを示すフローチャートである。
【図43】従来のタイヤ形状についての摩耗の様子を説明するための概念図である。
【図44】本発明によるタイヤ形状についての摩耗の様子を説明するための概念図である。
【図45】接地面近傍のタイヤモデルの周辺部を説明するための説明図である。
【図46】接地面近傍の圧力関係を説明するための説明図であり、(A)は路面とタイヤモデルと流体との間の位置関係を示し、(B)は位置に対応する圧力関係を示している。
【図47】スムースタイヤモデル、パターンモデル(一部)、及びパターンに貼りつける部分のベルトモデルを示す斜視図である。
【図48】スムースタイヤモデルの転動を示すイメージ図である。
【図49】スムースタイヤモデルに貼り付けたパターンモデルの一部がタイヤモデルの転動により推移することを示すイメージ図である。
【図50】タイヤモデルの転動によりパターン部が路面に接触する時点の排水状態を示すイメージ図である。
【図51】パターン部が路面に接触を開始して僅かに踏み込んだ時点の排水状態を示すイメージ図である。
【図52】パターン部の中腹部が路面に接触している時点の排水状態を示すイメージ図である。
【図53】本発明の第6実施の形態にかかり、空気入りタイヤの設計プログラムの処理の流れを示すフローチャートである。
【図54】GL解析による排水性計算の処理の流れを示すフローチャートである。
【図55】最適化前のキャラメルブロックの側面図である。
【図56】最適化後のキャラメルブロックの側面図である。
【図57】最適化によりブロック先端を落として流体の抵抗が減少する様子を示すイメージ図である。
【図58】パターンを一部モデル化した様子を示す斜視図である。
【図59】パターンモデルにおけるブロック先端形状の変更位置を示した線図である。
【図60】流体メッシュを示す線図である。
【図61】流体メッシュとパターンモデルとが緩衝した状態を示す線図である。
【図62】ブロック先端形状の変更位置Ag1を示す線図である。
【図63】(A)は、最適化前の変更位置Ag1における水の流れを示す線図であり、(B)は、最適化後の変更位置Ag1における水の流れを示す線図である。
【符号の説明】
10 キーボード
12 コンピュータ本体
14 CRT
20 流体モデル
30 タイヤモデル
FD フロッピーディスク(記録媒体)
FDU フロッピーディスクユニット

Claims (35)

  1. 空気入りタイヤの設計方法であって、
    (a)内部構造を含むタイヤ断面形状を少なくとも含みかつ接地及び転動の少なくとも一方により変形を与えることが可能でかつ周方向と交差する傾斜溝を含むパターン形状を有するタイヤモデルと、流体で一部または全部が満たされかつ前記タイヤモデルの少なくとも一部と接触する流体モデルと、タイヤ性能評価用物理量を表す目的関数と、タイヤ断面形状またはタイヤ構造またはパターン形状を決定する設計変数と、タイヤ断面形状、タイヤ構造、パターン形状、性能評価用物理量及びタイヤ寸度の少なくとも1つを制約する制約条件と、を定めるステップ、
    (b)前記タイヤモデルの変形計算を実行すると共に前記流体モデルの流動計算を実行し、前記変形計算後のタイヤモデルと前記流動計算後の流体モデルとの境界面を認識し、認識した境界面に関する境界条件をタイヤモデル及び流体モデルに付与しかつ、境界条件を付与した後のタイヤモデル及び流体モデルについて前記タイヤモデルの変形計算及び前記流体モデルの流動計算を予め定めた時間繰り返して計算させ、前記流体モデルを擬似流動状態とし、前記流体モデルの擬似流動状態となる場合のタイヤモデル及び流体モデルの少なくとも一方のモデルに生じる物理量を求め、求めた物理量によりタイヤ性能を予測するステップ、
    (c)予測したタイヤ性能及び制約条件を考慮しながら目的関数の最適値を与える設計変数の値を求めるステップ、
    (d)目的関数の最適値を与える設計変数に基づいてタイヤを設計するステップ、
    の各ステップを含むことを特徴とする空気入りタイヤの設計方法。
  2. 前記ステップ(b)は、
    (e)前記タイヤモデルの変形計算を実行するステップ、
    (f)前記流体モデルの流動計算を実行するステップ、
    (g)前記ステップ(e)での変形計算後のタイヤモデルと、前記ステップ(f)での流動計算後の流体モデルとの境界面を認識し、認識した境界面に関する境界条件をタイヤモデル及び流体モデルに付与しかつ、境界条件を付与した後のタイヤモデル及び流体モデルについて前記タイヤモデルの変形計算及び前記流体モデルの流動計算を予め定めた時間繰り返して計算させ、前記流体モデル擬似流動状態とるステップ、
    (h)前記流体モデルを擬似流動状態とした前記ステップ(e)またはステップ(f)におけるタイヤモデル及び流体モデルの少なくとも一方のモデルに生じる物理量を求めるステップ、
    (i)前記物理量によりタイヤ性能を予測するステップ、
    を含むことを特徴とする請求項1に記載の空気入りタイヤの設計方法。
  3. 前記ステップ(a)は、流体モデルと接する路面モデルをさらに定めたことを特徴とする請求項1または2に記載の空気入りタイヤの設計方法。
  4. 前記ステップ(e)は、所定時間だけ繰返し計算することを特徴とする請求項2または請求項3の何れか1項に記載の空気入りタイヤの設計方法。
  5. 前記ステップ(f)は、一定時間だけ繰返し計算することを特徴とする請求項乃至請求項4の何れか1項に記載の空気入りタイヤの設計方法。
  6. 前記予め定めた時間は、前記一定時間と同時間だけ繰返し計算することを特徴とする請求項5に記載の空気入りタイヤの設計方法。
  7. 前記タイヤモデルを転動させる場合には、前記ステップ(a)において、内圧充填時及び荷重計算時の計算を施すと共に、回転変位または速度或いは直進変位または速度を付与したタイヤモデルを定めることを特徴とする請求項1乃至請求項6の何れか1項に記載の空気入りタイヤの設計方法。
  8. 前記タイヤモデルを転動させる場合には、前記ステップ(a)において、前記流体モデルの上面では流体が自由に流出しかつ、前記流体モデルの上面以外の他面では流体が流入及び流出しないことを表す流入流出条件を前記流体モデルに付与することを特徴とする請求項1乃至請求項7の何れか1項に記載の空気入りタイヤの設計方法。
  9. 前記タイヤモデルを転動させない場合には、前記ステップ(a)において、内圧充填時の計算を施すと共に、該計算後に荷重計算を施したタイヤモデルを定めることを特徴とする請求項1乃至請求項7の何れか1項に記載の空気入りタイヤの設計方法。
  10. 前記タイヤモデルを転動させない場合には、前記ステップ(a)において、前記流体モデルの前面では流体が進行速度で流入し、前記流体モデルの後面及び上面では流体が自由に流出し、前記流体モデルの側面及び下面では流体が流入及び流出しないことを表す流入流出条件を前記流体モデルに付与することを特徴とする請求項1乃至請求項7の何れか1項または請求項9に記載の空気入りタイヤの設計方法。
  11. 前記タイヤモデルは、部分的にパターンを有することを特徴とする請求項1乃至請求項10の何れか1項に記載の空気入りタイヤの設計方法。
  12. 前記路面モデルは、DRY、WET、氷上、雪上、及び非舗装の少なくとも1つの路面状態を表す摩擦係数μを選択することによって路面状態を定めることを特徴とする請求項1乃至請求項11の何れか1項に記載の空気入りタイヤの設計方法。
  13. 前記ステップ(g)において、前記タイヤモデルと流体モデルの干渉部分を生じさせ、当該干渉部分を認識し、タイヤモデル表面を境界面として、前記流体モデルを流体要素で分割することを特徴とする請求項乃至請求項12の何れか1項に記載の空気入りタイヤの設計方法。
  14. 前記流体モデルは、少なくとも水を含み、前記物理量としてタイヤモデルの接地面積及び接地圧の少なくとも一方を用い、前記タイヤ性能としてタイヤWET性能を予測することをと特徴とする請求項1乃至請求項13の何れか1項に記載の空気入りタイヤの設計方法。
  15. 前記流体モデルは、少なくとも水を含み、前記物理量として流体モデルの圧力、流量、及び流速の少なくとも1つを用い、前記タイヤ性能としてタイヤWET性能を予測することを特徴とする請求項1乃至請求項13の何れか1項に記載の空気入りタイヤの設計方法。
  16. 前記流体モデルは、水及び雪の少なくとも1つを含み、前記物理量としてタイヤモデルの氷路面及び雪路面の少なくとも一方の路面での接地面積、接地圧、及び剪断力の少なくとも1つを用い、前記タイヤ性能としてタイヤ氷雪上性能を予測することを特徴とする請求項1乃至請求項13の何れか1項に記載の空気入りタイヤの設計方法。
  17. 前記流体モデルは、水及び雪の少なくとも1つを含み、前記物理量として流体モデルの氷路面及び雪路面の少なくとも一方での流体モデルの圧力、流量、及び流速の少なくとも1つを用い、前記タイヤ性能としてタイヤ氷雪上性能を予測することを特徴とする請求項1乃至請求項13の何れか1項に記載の空気入りタイヤの設計方法。
  18. 前記流体モデルは、少なくとも空気を含み、前記物理量として流体モデルの圧力、流量、流れ速度、エネルギー、及びエネルギー密度の少なくとも1つを用い、前記タイヤ性能としてタイヤ騒音性能を予測することを特徴とする請求項1乃至請求項13の何れか1項に記載の空気入りタイヤの設計方法。
  19. 前記ステップ(c)では、設計変数の単位変化量に対する目的関数の変化量の割合である目的関数の感度及び設計変数の単位変化量に対する制約条件の変化量の割合である制約条件の感度に基づいて制約条件を考慮しながら目的関数の最適値を与える設計変数の変化量を予測すると共に、設計変数を予測量に相当する量変化させたときの目的関数の値及び設計変数を予測量に相当する量変化させたときの制約条件の値を演算し、予測値と演算値とに基づいて、制約条件を考慮しながら目的関数の最適値を与える設計変数の値を求める請求項1の空気入りタイヤの設計方法。
  20. 前記設計変数は、
    カーカスライン、折り返しプライライン、タイヤ外面形状を表すライン、タイヤクラウン形状を表すライン、及び補強材ラインの少なくとも1つのラインの形状を表す関数と、
    ビードフィラーのゲージ分布、ゴムチェーファーのゲージ分布、サイドゴムのゲージ分布、トレッドゴムのゲージ分布、トレッドベースゴムのゲージ分布、内面補強ゴムのゲージ分布、ベルト間ゴムのゲージ分布、及びベルトエンドゴムのゲージ分布の少なくとも1つのタイヤゴム部材のゲージ分布を表す変数と、
    各ベルト層の角度、幅、コード種類、及び打ち込み密度の少なくとも1つのベルト部の構造を表す変数と、
    ブロックの形状及びサイプの位置、本数、及び長さの少なくとも1つのパターンの形状を表す変数と、
    の少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項1に記載の空気入りタイヤの設計方法。
  21. 前記ステップ(a)では、内部構造を含むタイヤ断面形状を少なくとも含みかつ接地及び転動の少なくとも一方により変形を与えることが可能なパターン形状を有する複数個のタイヤモデルからなる選択対象集団を定め、該選択対象集団の各タイヤモデルについて、タイヤ性能評価用物理量を表す目的関数、タイヤ断面形状またはタイヤ構造またはパターン形状を決定する設計変数、タイヤ断面形状、タイヤ構造、パターン形状、性能評価用物理量及びタイヤ寸度の少なくとも1つを制約する制約条件、及び目的関数及び制約条件から評価できる適応関数を定め、
    前記ステップ(c)では、適応関数に基づいて前記選択対象集団から2つのタイヤモデルを選択し、所定の確率で各タイヤモデルの設計変数を交叉させて新規のタイヤモデルを生成すること及び少なくとも一方のタイヤモデルの設計変数の一部を変更させて新規のタイヤモデルを生成することの少なくとも一方を行い、設計変数を変化させたタイヤモデルの目的関数、制約条件及び適応関数を求めて該タイヤモデル及び設計変数を変化させなかったタイヤモデルを保存しかつ保存したタイヤモデルが所定数になるまで繰り返し、保存した所定数のタイヤモデルからなる新規集団が所定の収束条件を満たすか否かを判断し、収束条件を満たさないときには該新規集団を前記選択対象集団として該選択対象集団が所定の収束条件を満たすまで繰り返すと共に、該所定の収束条件を満たしたときに保存した所定数のタイヤモデルのなかで制約条件を考慮しながら目的関数の最適値を与える設計変数の値を求める、ことを特徴とする請求項1の空気入りタイヤの設計方法。
  22. 前記ステップ(c)において、設計変数を変化させたタイヤモデルについて、設計変数の単位変化量に対する目的関数の変化量の割合である目的関数の感度及び設計変数の単位変化量に対する制約条件の変化量の割合である制約条件の感度に基づいて制約条件を考慮しながら目的関数の最適値を与える設計変数の変化量を予測すると共に、設計変数を予測量に相当する量変化させたときの目的関数の値及び設計変数を予測量に相当する量変化させたときの制約条件の値を演算し、目的関数の値及び制約条件の値から適応関数を求めて該タイヤモデル及び設計変数を変化させなかったタイヤモデルを保存しかつ保存したタイヤ基本モデルが所定数になるまで繰り返すことを特徴とする請求項21に記載の空気入りタイヤの設計方法。
  23. 前記ステップ(a)では、内部構造を含むタイヤ断面形状を少なくとも含みかつ接地及び転動の少なくとも一方により変形を与えることが可能なパターン形状を有するタイヤの設計パラメータと該タイヤの性能との非線形な対応を関係付ける変換系を定め、前記制約条件として前記タイヤ性能及び前記タイヤの製造条件の少なくとも一方の許容範囲を制約する制約条件を定め、
    前記ステップ(c)では前記ステップ(a)で定めた変換系を用いて、前記目的関数及び前記制約条件に基づいて目的関数の最適値を与えるタイヤの設計パラメータを求め、
    前記ステップ(d)ではタイヤの設計パラメータに基づいてタイヤを設計することを特徴とする請求項1に記載の空気入りタイヤの設計方法。
  24. 前記ステップ(c)では、前記タイヤの設計パラメータを設計変数と定め、制約条件を考慮しながら前記ステップ(a)で定めた変換系を用いて目的関数の最適値を与える設計変数の値を求め、前記ステップ(d)では目的関数の最適値を与える設計変数に基づいてタイヤを設計することを特徴とする請求項23に記載の空気入りタイヤの設計方法。
  25. 前記ステップ(a)において、前記タイヤの設計パラメータを前記タイヤ性能に変換するように学習された多層フィードフォワード型ニューラルネットワークのデータで前記変換系を構成したことを特徴とする請求項23または24に記載の空気入りタイヤの設計方法。
  26. 前記ステップ(a)では、内部構造を含むブロックの単体の形状、内部構造を含むタイヤクラウン部のうち1部のパターン形状、及び内部構造を含むタイヤ周方向に運続する陸部の形状のうち選択された1つの形状を表す形状基本モデルをさらに定めると共に、前記形状基本モデルに少なくとも1つの入力条件を与え、かつ前記ブロックの単体の形状またはパターン形状もしくは陸部の形状の少なくとも一部を表す踏面形状を設計変数とし、前記入力条件におけるタイヤ接地圧を演算して目的関数として定めることを特徴とする請求項1に記載の空気入りタイヤの設計方法。
  27. 前記制約条件として、タイヤ接地面積、及び設計変数の変化範囲の少なくとも一方を更に定め、前記ステップ(c)は、前記制約条件を考慮しながら前記目的関数の最適値が与えられるまで設計変数の値を変化させることを特徴とする請求項26に記載の空気入りタイヤの設計方法。
  28. 前記設計変数は、タイヤ平均接地圧より高い箇所及び低い箇所の少なくとも一方の箇所の設計変数を変化させることを特徴とする請求項27に記載の空気入りタイヤの設計方法。
  29. 前記請求項1乃至請求項28の何れか1項に記載の空気入りタイヤの設計方法によって設計したタイヤまたはタイヤモデルに基づいて、タイヤ用加硫金型を設計するタイヤ用加硫金型設計方法。
  30. 前記請求項29に記載のタイヤ用加硫金型設計方法によって設計したタイヤ用加硫金型を製造するタイヤ用加硫金型製造方法。
  31. 前記請求項29に記載のタイヤ用加硫金型設計方法によって設計したタイヤ用加硫金型を製作し、該加硫金型を用いて空気入りタイヤを製造する空気入りタイヤの製造方法。
  32. 前記請求項1乃至請求項28の何れか1項に記載の空気入りタイヤの設計方法によって設計したタイヤまたはタイヤモデルに基づいて、空気入りタイヤを製造する空気入りタイヤの製造方法。
  33. 内部構造を含むタイヤ断面形状を少なくとも含みかつ接地及び転動の少なくとも一方により変形を与えることが可能でかつ周方向と交差する傾斜溝を含むパターン形状を有するタイヤモデルと、流体で一部または全部が満たされかつ前記タイヤモデルの少なくとも一部と接触する流体モデルと、タイヤ性能評価用物理量を表す目的関数と、タイヤ断面形状またはタイヤ構造またはパターン形状を決定するタイヤの設計パラメータと、タイヤ断面形状、タイヤ構造、パターン形状、性能評価用物理量及びタイヤ寸度の少なくとも1つを制約する制約条件と、を最適化項目として入力する入力手段と、
    前記タイヤモデルの変形計算を実行すると共に前記流体モデルの流動計算を実行し、前記変形計算後のタイヤモデルと前記流動計算後の流体モデルとの境界面を認識し、認識した境界面に関する境界条件をタイヤモデル及び流体モデルに付与しかつ、境界条件を付与した後のタイヤモデル及び流体モデルについて前記タイヤモデルの変形計算及び前記流体モデルの流動計算を予め定めた時間繰り返して計算させ、前記流体モデルを擬似流動状態とし、前記流体モデルの擬似流動状態となる場合のタイヤモデル及び流体モデルの少なくとも一方のモデルに生じる物理量を求め、求めた物理量によりタイヤ性能を予測する予測手段と、
    予測したタイヤ性能及び制約条件を考慮しながら目的関数の最適値を与えるタイヤの設計パラメータの値を求める最適化計算手段と、
    を備えた最適化解析装置。
  34. 前記予測手段はタイヤの設計パラメータと該タイヤの性能との非線形な対応関係を求める変換系計算手段を含み、前記変換系計算手段は、前記タイヤの設計パラメータを、前記タイヤ性能に変換するように学習された多層フィードフォワード型ニューラルネットワークであることを特徴とする請求項33に記載の最適化解析装置。
  35. コンピュータによってタイヤを設計するためのタイヤの最適化解析プログラムを記憶した記憶媒体であって、
    最適化解析プログラム
    内部構造を含むタイヤ断面形状を少なくとも含みかつ接地及び転動の少なくとも一方により変形を与えることが可能でかつ周方向と交差する傾斜溝を含むパターン形状を有するタイヤモデルと、流体で一部または全部が満たされかつ前記タイヤモデルの少なくとも一部と接触する流体モデルと、タイヤ性能評価用物理量を表す目的関数と、タイヤ断面形状またはタイヤ構造またはパターン形状を決定するタイヤの設計パラメータと、タイヤ断面形状、タイヤ構造、パターン形状、性能評価用物理量及びタイヤ寸度の少なくとも1つを制約する制約条件と、を最適化項目として入力させ、
    前記タイヤモデルの変形計算を実行すると共に前記流体モデルの流動計算を実行し、前記変形計算後のタイヤモデルと前記流動計算後の流体モデルとの境界面を認識し、認識した境界面に関する境界条件をタイヤモデル及び流体モデルに付与しかつ、境界条件を付与した後のタイヤモデル及び流体モデルについて前記タイヤモデルの変形計算及び前記流体モデルの流動計算を予め定めた時間繰り返して計算させ、前記流体モデルを擬似流動状態とし、前記流体モデルの擬似流動状態となる場合のタイヤモデル及び流体モデルの少なくとも一方のモデルに生じる物理量を求め、求めた物理量によりタイヤ性能を予測させ、
    予測したタイヤ性能及び制約条件を考慮しながら目的関数の最適値を与えるタイヤの設計パラメータの値を求めさせ、
    目的関数の最適値を与えるタイヤの設計パラメータに基づいてタイヤを設計させるようにコンピュータに機能させることを特徴とするタイヤの最適化解析プログラムを記憶した記憶媒体。
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