JP4200765B2 - 積層型セラミック電子部品の製造方法 - Google Patents

積層型セラミック電子部品の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、積層型セラミック電子部品の製造方法に関するもので、特に、高い信頼性を有する積層型セラミック電子部品を確実に製造できるようにするための改良に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
この発明にとって興味ある積層型セラミック電子部品として、たとえば積層型正特性サーミスタがある。積層型正特性サーミスタは、次のような構造を有している。
【0003】
まず、積層型正特性サーミスタは、部品本体となる積層体を備えている。積層体は、正の抵抗温度係数を有する複数の積層されたサーミスタ層、およびサーミスタ層間の特定の界面に沿って形成された複数の内部電極を備えている。内部電極は、積層体の一方の端面にまで引き出されるものと他方の端面にまで引き出されるものとが積層方向において交互に配置されている。
【0004】
また、積層型正特性サーミスタは、上述した積層体の各端面上に形成された、端子となる外部電極を備えている。外部電極は、積層体の各端面において、内部電極のいずれかに電気的に接続されるものである。
【0005】
このような積層型正特性サーミスタは、たとえば、図3に示すような製造工程を経て製造されている(たとえば、特許文献1参照)。
【0006】
図3を参照して、まず、生の積層体作製工程1が実施される。ここで作製される生の積層体は、焼成することによって前述した焼結後の積層体となるべきものであって、サーミスタ層のためのサーミスタグリーン層、および内部電極のための導電性ペースト層を備えている。
【0007】
通常、生の積層体は、サーミスタグリーン層となるサーミスタグリーンシートを成形し、これを所定の寸法に打ち抜き、その後、サーミスタグリーンシート上に、内部電極のための導電性ペースト層を形成するため、導電性ペーストを印刷し、次いで、これらサーミスタグリーンシートを積層し、プレスすることによって、生のマザー積層体を得、この生のマザー積層体を所定の寸法にカットすることによって得られる。
【0008】
上述した内部電極のための導電性ペースト層は、たとえば、安価な卑金属であり、しかもサーミスタ層とのオーミック性が得られる、ニッケルを導電成分として含む、導電性ペーストを用いて形成される。
【0009】
次に、生の積層体を焼成するための焼成工程2が実施される。この焼成工程2では、上述のように、内部電極の導電成分としてニッケルのような卑金属が用いられる場合には、卑金属が酸化されないようにするため、還元性雰囲気中で実施される。したがって、この場合には、焼成工程2の後、酸化性雰囲気中で熱処理(再酸化)することにより、サーミスタ層において正温度特性が得られるようにしている。この焼成工程2の結果、焼結後の積層体が得られる。
【0010】
次に、湿式バレル工程3が実施される。この湿式バレル工程3は、積層型正特性サーミスタに限らず、チップ型のセラミック電子部品の製造過程の途中で一般的に実施されているものであり、チッピングと称されるセラミック部品本体の欠けを防止するため、焼成後のセラミック部品本体を、アルミナ粉末のような研磨メディアおよび水などとともに混合攪拌することによってバレル研磨する工程であり、それによって、焼結後のセラミック部品本体すなわち積層体の角隅部および稜線部が丸くされる。
【0011】
次に、外部電極ペースト付与工程4が実施される。すなわち、焼結後の積層体の各端面上に、外部電極のための導電性ペーストが付与され、それによって、導電性ペースト膜が形成される。ここで、外部電極のための導電性ペーストは、内部電極との間で良好な導通状態を得るため、内部電極の導電成分と同じ金属を導電成分として含んでいることが好ましい。そのため、前述したように、内部電極がニッケルを含む場合には、この外部電極のための導電性ペーストとして、ニッケルを含むものが好適に用いられる。
【0012】
次に、外部電極焼付け工程5が実施される。このとき、外部電極のための導電性ペースト膜がニッケルのような卑金属を含んでいる場合には、この焼付け工程5では、還元性雰囲気が適用される。
【0013】
以上のような工程を経て、積層型正特性サーミスタが得られる。
【0014】
【特許文献1】
特開平5−308003号公報
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、図3に示した製造方法では、次のような問題に遭遇することがある。
【0016】
外部電極ペースト付与工程4は、焼成工程2の後に実施される。他方、焼成工程2を経て得られた焼結後の積層体において、内部電極が積層体の端面から内方へ収縮して、端面に引き出された状態となっていないことがある。したがって、外部電極ペースト付与工程4において、外部電極のための導電性ペースト膜を形成したとき、これが内部電極に対して適正に接続されていないことがある。
【0017】
また、内部電極のための導電成分および外部電極のための導電成分として、ともに、前述したようにニッケルのような卑金属が用いられる場合には、焼成工程2において還元性雰囲気を適用する必要があるばかりでなく、外部電極焼付け工程5においても、還元性雰囲気を適用する必要がある。還元性雰囲気を得るための制御には、酸化性雰囲気を得るための制御に比べると、多大なコストが必要である。そのため、2つの工程2および5の双方において、還元性雰囲気を必要とすることは、量産上、コストの上昇を招いてしまう。
【0018】
このような問題を解決し得るものとして、図4に示すような製造方法が考えられる。
【0019】
図4を参照して、まず、生の積層体作製工程11が実施される。この生の積層体作製工程11は、図3に示した生の積層体作製工程1と実質的に同様に実施される。
【0020】
次に、外部電極ペースト付与工程12が実施される。この外部電極ペースト付与工程12は、生の積層体に対して実施されることを除いて、図3に示した外部電極ペースト付与工程4と実質的に同様である。しかしながら、生の積層体の内部にある内部電極のための導電性ペースト層には、未だ焼成による収縮が生じていないため、外部電極のための導電性ペースト膜との間で適正な接続状態を確実に達成することができる。
【0021】
次に、焼成工程13が実施される。この焼成工程では、生の積層体が、外部電極のための導電性ペースト膜とともに焼成される。内部電極のための導電性ペースト層および外部電極のための導電性ペースト膜がニッケルのような卑金属を含んでいる場合には、焼成工程13は還元性雰囲気中で実施され、次いで、焼結後の積層体を酸化性雰囲気中で熱処理することが行なわれる。このように、焼成工程13において、外部電極のための導電性ペースト膜の焼付けを、生の積層体の焼成と同時に行なうことにより、還元性雰囲気を得るための制御は、単に、この焼成工程13において必要とするのみであり、したがって、図3に示した製造方法に比べて、コストの低減を図ることができる。
【0022】
次に、湿式バレル工程14が実施される。この湿式バレル工程14は、図3に示した湿式バレル工程3と実質的に同様に実施され、湿式バレル研磨によって、焼結後の積層体の角隅部および稜線部がチッピング防止のために丸くされる。
【0023】
しかしながら、上述の図4に示した製造方法にも、解決されるべき問題がある。
【0024】
すなわち、湿式バレル工程14は、外部電極が形成された焼結後の積層体に対して実施されるので、バレル研磨によって、外部電極の一部が削られてしまい、外部電極と内部電極との導通が不安定になることがある。
【0025】
また、図3および図4に示した各製造方法のいずれについても、湿式バレル工程3および14は、焼成工程2および13の後に実施されるので、バレル研磨の対象は、焼結後の積層体ということになる。そのため、焼結後の積層体において、バレル研磨の結果、クラック等が生じやすいという問題もある。
【0026】
同様の問題は、上述のような積層型正特性サーミスタを製造する場合に限らず、積層型正特性サーミスタと同様の構造を有する他の積層型セラミック電子部品を製造する場合にも遭遇する。
【0027】
そこで、この発明の目的は、上述のような種々の問題を解決し得る、積層型セラミック電子部品の製造方法を提供しようとすることである。
【0028】
【課題を解決するための手段】
この発明は、複数の積層されたセラミック層、およびセラミック層間の特定の界面に沿って形成された複数の内部電極を含み、この内部電極は、一方の端面にまで引き出されるものと他方の端面にまで引き出されるものとが積層方向において交互に配置されている、チップ状の積層体と、内部電極のいずれかに電気的に接続されるように、積層体の各端面上に形成された、外部電極とを備える、積層型セラミック電子部品を製造する方法に向けられるものであって、上述した技術的課題を解決するため、次のような構成を備えることを特徴としている。
【0029】
すなわち、この発明に係る積層型セラミック電子部品の製造方法では、焼成しかつカットすることによって上述した積層体となるべきものであって、セラミック層のためのセラミックグリーン層、および内部電極のための導電性ペースト層を含む、生のマザー積層体を作製する工程と、生のマザー積層体を所定の寸法にカットし、それによって、チップ状の生の積層体を得る工程とがまず実施される。
【0030】
次に、上述の生の積層体は、熱処理される。この熱処理は、後のバレル研磨で生じる研磨メディアの研磨屑と生の積層体の表面との不所望な反応を防止するためのものである。
【0031】
次いで、チッピング防止のためのバレル研磨が、この熱処理後の生の積層体に対して実施される。このとき、バレル研磨としては、乾式のバレル研磨が適用される。
【0032】
次いで、熱処理後の生の積層体が焼成される。
【0033】
このような工程を経て、積層型セラミック電子部品が製造される。
【0034】
この積層型セラミック電子部品の製造方法において、外部電極は、焼結後の積層体の各端面上に、導電性ペースト膜を形成し、これを焼き付けることによって形成されてもよいが、好ましくは、上述の乾式のバレル研磨を実施した後、生の積層体の各端面上に、外部電極のための導電性ペースト膜を形成し、生の積層体を焼成する工程において、この導電性ペースト膜も同時に焼成することによって、外部電極を形成するようにされる。
【0035】
上述した生の積層体を熱処理する工程において、好ましくは、80℃以上かつ300℃未満の温度、より好ましくは、80℃以上かつ200℃以下の温度が適用される。
【0036】
また、内部電極が、導電成分として、卑金属を含む場合には、生の積層体を焼成する工程は、還元性雰囲気中で実施されることが好ましい。
【0037】
製造しようとする積層型セラミック電子部品が積層型正特性サーミスタであるとき、セラミック層は正の抵抗温度係数を有するサーミスタ層であり、このような正の抵抗温度係数を得るため、さらに、焼結後の積層体を酸化性雰囲気中で熱処理(再酸化)する工程が実施されることが好ましい。この方法は、外部電極が、導電成分として、卑金属を含む場合にも、有効である。
【0038】
上述した実施態様において、焼結後の積層体の外表面の、外部電極から露出する部分を覆うように、熱処理を経てガラスコートを形成する工程がさらに実施される場合には、焼結後の積層体を酸化性雰囲気中で熱処理する工程は、このガラスコートを形成する工程を兼ねるようにすることが好ましい。
【0039】
また、内部電極および外部電極は、導電成分として、互いに同じ金属、たとえばニッケルを含むことが好ましい。
【0040】
【発明の実施の形態】
以下の説明は、積層型セラミック電子部品の一例として、積層型正特性サーミスタについて行なう。
【0041】
図1は、この発明の一実施形態による製造方法を実施して得られた積層型正特性サーミスタ21を図解的に示す断面図である。
【0042】
積層型正特性サーミスタ21は、チップ状の部品本体としての積層体22を備えている。積層体22は、セラミック層としての正の抵抗温度係数を有する複数の積層されたサーミスタ層23、およびサーミスタ層23間の特定の界面に沿って形成された複数の内部電極24を備えている。内部電極24は、積層体22の積層方向における中間部に位置しており、したがって、積層体22の外層部に位置するサーミスタ層23は、保護用として機能する。
【0043】
内部電極24は、積層体22の一方の端面25にまで引き出されるものと他方の端面26にまで引き出されるものとが積層方向において交互に配置されている。内部電極24は、必要に応じて、中空電極によって構成されてもよい。
【0044】
積層体22の端面25および26の各々上には、端子となる外部電極27が形成される。外部電極27は、内部電極24のいずれかに電気的に接続されている。
【0045】
内部電極24に含まれる導電成分としては、たとえば、安価な卑金属であり、しかもオーミック性が得られるニッケルを用いることが好ましい。外部電極27は、導電成分として、内部電極24に含まれる金属と同じ金属を含むことが好ましく、たとえば、ニッケルを含んでいる。
【0046】
外部電極27上には、必要に応じて、たとえば銀を含む導電性ペーストの焼付けによる焼付け層28が形成され、また、その上に、ニッケルめっき膜29が形成され、さらにその上に、錫または半田めっき膜30が形成される。
【0047】
また、積層体22の外表面の、外部電極27から露出する部分を覆うように、ガラスコート31が形成されることが好ましい。
【0048】
図2は、図1に示した積層型正特性サーミスタ21の製造方法に含まれる典型的な工程を示している。
【0049】
図2を参照して、まず、生の積層体作製工程41が実施される。この生の積層体作製工程41は、図3および図4に示した生の積層体作製工程1および11と実質的に同様である。この工程41において作製される生の積層体は、焼成することによって、図1に示した積層体22となるべきものであって、サーミスタ層23のためのセラミックグリーン層としてのサーミスタグリーン層および内部電極24のための導電性ペースト層を備えている。
【0050】
生の積層体を作製するにあたっては、通常、サーミスタグリーン層となるセラミックグリーンシートとしてのサーミスタグリーンシートが成形され、このサーミスタグリーンシートを所定の寸法に打ち抜いた後、サーミスタグリーンシート上に、内部電極24のための導電性ペーストが印刷されることによって、導電性ペースト層が形成され、次いで、これら、内部電極24が印刷されたサーミスタグリーンシートを含む複数のサーミスタグリーンシートが積層され、プレスされることによって、生のマザー積層体が作製され、このマザー積層体を所定の寸法にカットすることが行なわれ、その結果、生の積層体が得られる。
【0051】
次に、生の積層体に対して、熱処理工程42が実施される。この熱処理工程42は、後の乾式バレル工程43において生じる研磨メディアの研磨屑と生の積層体の表面との反応を防止するために実施されるものである。
【0052】
熱処理工程42では、好ましくは、80℃以上かつ300℃未満の温度が適用される。80℃以上の温度とされるのは、80℃未満の温度では、熱処理による効果が十分に発揮されないことがあるためであり、他方、300℃未満の温度とされるのは、300℃以上の温度では、生の積層体において脱バインダが開始されてしまうことがあるためである。なお、この熱処理工程42において適用される温度は、より好ましくは、80℃以上かつ200℃以下とされる。
【0053】
次に、乾式バレル工程43が実施される。この乾式バレル工程43では、生の積層体に、たとえばシリカもしくはアルミナまたはその双方からなる研磨メディアが混合され、乾式において、バレル研磨が実施される。これによって、チッピング防止を図り得るように、生の積層体の角隅部および稜線部が丸くされる。なお、図1に示した積層体22において、その角隅部ないしは稜線部が丸くされているのは、この乾式バレル研磨の結果によるものである。
【0054】
次に、外部電極ペースト付与工程44が実施される。この外部電極ペースト付与工程44では、生の積層体の各端面上に、外部電極27のための導電性ペーストが付与され、それによって導電性ペースト膜が形成される。この段階では、積層体は焼成前の段階にあり、その内部にある内部電極のための導電性ペースト層には焼成による収縮が生じていないため、外部電極のための導電性ペースト膜を、生の積層体の端面にまで引き出された内部電極のための導電性ペースト層に確実に接続させることができる。
【0055】
次に、焼成工程45が実施される。この焼成工程45では、生の積層体が、外部電極27のための導電性ペースト膜とともに焼成される。内部電極24のための導電性ペースト層および外部電極27のための導電性ペースト膜が、導電成分として、ニッケルのような卑金属を含む場合、この焼成工程45は、還元性雰囲気中で実施される。
【0056】
このようにして、図2に示すような焼結後の積層体22が得られ、また、その端面25および26上に、焼き付けられた外部電極27が形成される。
【0057】
内部電極24および外部電極27が、導電成分として、たとえば共通的にニッケルを含むなど、互いに同じ金属を含んでいると、内部電極24と外部電極27との間で良好な導通状態を得ることができる。
【0058】
次に、図2では示さないが、ガラスコート31を形成する工程が実施される。ガラスコート31は、熱処理工程を経て、焼結後の積層体22の外表面の、外部電極27から露出する部分を覆うように形成される。
【0059】
前述した内部電極24のための導電性ペースト層および外部電極27のための導電性ペースト膜が、卑金属を含んでいる場合には、焼成工程45は、還元性雰囲気中で実施されるため、サーミスタ層23において正温度特性を得るようにするには、積層体22を酸化性雰囲気中で熱処理(再酸化)することが必要である。上述したガラスコート31を形成する工程は、熱処理工程を含みかつ酸化性雰囲気中で実施されるので、この再酸化工程は、ガラスコート31を形成する工程を兼ねるように実施されることがより能率的である。
【0060】
次に、外部電極27上に、たとえば銀を含む導電性ペーストの焼付けにより、焼付け層28が形成され、その後、ニッケルめっき膜29および錫または半田めっき膜30が順次形成されることによって、図1に示した積層型正特性サーミスタ21が完成される。
【0061】
以上、この発明を積層型正特性サーミスタの製造方法について説明したが、この発明は、たとえば、積層型セラミックコンデンサ、積層型セラミックインダクタ、積層型セラミックバリスタ、積層型負特性サーミスタなどの他の積層型セラミック電子部品の製造方法にも適用することができる。
【0062】
なお、積層型セラミック電子部品に備えるセラミック層が、たとえば誘電体セラミックまたは磁性体セラミックから構成される場合には、生の積層体を焼成する工程が還元性雰囲気中で実施されても、再酸化のための酸化性雰囲気中での熱処理は、通常、実施される必要はない。
【0063】
次に、この発明の範囲を限定するため、および、この発明による効果を確認するために実施した実験例について説明する。
【0064】
【実験例1】
まず、BaCO3 、TiO2 およびSm2 3 の各粉末を出発原料として、(Ba0.9998Sm0.0002)TiO3 の組成が得られるように調合した。次に、この調合粉末に、純水を加えて、ジルコニアボールとともに混合粉砕し、乾燥後、1000℃の温度で2時間仮焼した。
【0065】
次に、この仮焼粉末に、有機バインダ、分散剤および水を加えて、ジルコニアボールとともに、数時間混合することによって、スラリーを得、このスラリーをシート状に成形することによって、サーミスタグリーンシートを作製した。
【0066】
次に、サーミスタグリーンシートを所定の寸法にカットした後、サーミスタグリーンシート上に、ニッケルを含む導電性ペーストを印刷し、内部電極のための導電性ペースト層を形成した。
【0067】
次に、内部電極のための導電性ペースト層がサーミスタグリーンシートを介して対向するように、複数のサーミスタグリーンシートを積み重ね、さらに、その上下に保護用のサーミスタグリーンシートを積み重ねた後、積層方向にプレスし、次いで、これを所定の寸法にカットして、生の積層体を得た。
【0068】
次に、生の積層体を、150℃の温度で1時間熱処理した。
【0069】
次に、シリカとアルミナとからなる直径1mmの研磨メディアを、熱処理後の生の積層体に混合し、その状態で、乾式バレル研磨を実施し、角隅部および稜線部が丸くされた生の積層体を得た。
【0070】
次に、生の積層体の両端面上に、ニッケルを含む導電性ペーストを付与し、乾燥させることによって、外部電極のための導電性ペースト膜を形成した後、H2 /N2 =3%の還元性雰囲気中において、1300℃の温度で焼成工程を実施し、それによって、焼き付けられた外部電極を備える焼結後の積層体を得た。
【0071】
次に、焼結後の積層体の、外部電極から露出する部分を覆うように、ガラス材料を付与し、酸化性雰囲気中で熱処理することにより、ガラスコートを形成するとともに、積層体に備えるサーミスタ層の再酸化を行なった。
【0072】
次に、外部電極上に、銀を含む導電性ペーストを付与し、乾燥させた後、700℃の温度でこれを焼き付け、さらに、ニッケルめっき膜および錫めっき膜を形成し、実施例としての積層型正特性サーミスタを得た。
【0073】
他方、前述の図4に示した製造方法を適用したことを除いて、実施例と同様の条件で、比較例としての積層型正特性サーミスタを作製した。
【0074】
これら実施例および比較例を比較するため、導通の不安定さの指標としての抵抗値を測定した。表1には、実施例および比較例の各々20個の試料についての抵抗値の測定結果が示されている。
【0075】
【表1】
Figure 0004200765
【0076】
表1から、比較例では、抵抗値の平均値が約3Ωであるのに対し、実施例では、約0.2Ωであり、比較例において、抵抗値が上昇していることがわかる。
【0077】
また、比較例では、抵抗値の分布範囲がかなり広いが、実施例では、抵抗値の分布範囲が、比較例に比べて、極めて狭い。このことから、実施例によれば、内部電極と外部電極との間の導通が安定していることがわかる。
【0078】
【実験例2】
次に、上述の実験例1における実施例としての積層型正特性サーミスタを作製する途中の段階で実施された生の積層体に対する熱処理の温度を、表2に示すように種々に変えたり、熱処理を施さなかったりして、試料1〜12の各々に係る積層型正特性サーミスタを得た。
【0079】
【表2】
Figure 0004200765
【0080】
表2に示した試料1〜12の各々に係る5個の積層型正特性サーミスタについて、初期抵抗値を測定するとともに、6Vの電圧を印加し、78時間、121時間、273時間および496時間それぞれ経過した後の抵抗値を測定し、これら抵抗値の測定結果から、各経過時間後の抵抗値変化率を求めた。その結果が表2に示されている。
【0081】
表2からわかるように、60℃以上の温度での熱処理により、抵抗値変化率の低減効果が現れている。しかしながら、抵抗値変化率の低減効果がより確実に現れるのは、80℃以上かつ300℃未満の温度で熱処理された場合である。
【0082】
すなわち、80℃以上かつ300℃未満の温度で熱処理された試料4〜10によれば、496時間経過後であっても、抵抗値変化率を10%以内に抑えることができた。特に、熱処理温度が80℃以上かつ200℃以下の範囲にある試料4〜8によれば、いずれも、抵抗値変化率を5%以内に抑えることができた。
【0083】
これらに対して、熱処理を施さなかった試料1ならびに80℃未満の熱処理を施した試料2および3によれば、大きな抵抗値変化率を示し、特に496時間経過後にあっては、10%を超える抵抗値変化率を示した。なお、これら試料1〜3では、焼結後の積層体の表面に色点が生じていた。この色点は、研磨メディアの研磨屑が乾式バレル工程において生の積層体の表面に付着し、この研磨屑が還元性雰囲気中での焼成時に積層体と反応して生じたものである。そして、この研磨屑との反応が、上述のように、積層型正特性サーミスタへの電圧印加時間の経過に伴って、信頼性を低下させたものと考えられる。
【0084】
他方、300℃以上の温度で熱処理された試料11および12では、熱処理後の生の積層体の強度が低く、乾式バレル工程において損傷し、試料11では、抵抗値変化率についても大きな値を示し、試料12では、乾式バレル工程で生の積層体が破壊し、その後の焼成工程を実施することができなかった。これらは、熱処理工程において、生の積層体に含まれるバインダが飛散したためであると考えられる。
【0085】
【発明の効果】
以上のように、この発明によれば、外部電極のための導電性ペースト膜を形成する前に、生の積層体に対して、乾式のバレル研磨を実施するようにしているので、外部電極が削られることによる導通が不安定になるという問題を解消しながら、チッピング防止を図ることができるとともに、焼結後の積層体に対するバレル研磨を実施したときに生じ得るクラックの問題も解消することができる。
【0086】
また、乾式のバレル研磨を実施する前に、生の積層体を熱処理するようにしているので、バレル研磨で生じる研磨メディアの研磨屑と生の積層体の表面との反応を防止することができ、長期間にわたって安定した特性を得ることができる。
【0087】
このようなことから、この発明によれば、高い信頼性をもって、積層型セラミック電子部品を安定して製造することができる。この発明は、特に、積層型正特性サーミスタの製造に有利に適用することができる。
【0088】
この発明において、外部電極のための導電性ペースト膜が、生の積層体の段階で形成されると、焼成による内部電極の収縮のために生じ得る外部電極と内部電極との接続不良の問題をより効果的に解消することができる。
【0089】
また、この発明において、生の積層体を熱処理するに際して、80℃以上の温度を適用すると、上述したような研磨メディアの研磨屑と生の積層体の表面との反応をより確実に防止することができる。また、この熱処理に際して、300℃未満、より好ましくは200℃以下の温度を適用すると、生の積層体に含まれるバインダの飛散を防止でき、その後の乾式バレル研磨において、生の積層体が損傷したり破壊したりすることを確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の一実施形態に係る製造方法によって製造された積層型正特性サーミスタ21を図解的に示す断面図である。
【図2】この発明による積層型正特性サーミスタの製造方法の一実施形態を説明するための工程図である。
【図3】この発明にとって興味ある積層型正特性サーミスタの従来の製造方法を説明するための工程図である。
【図4】この発明の背景技術となる積層型正特性サーミスタの製造方法を説明するための工程図である。
【符号の説明】
21 積層型正特性サーミスタ
22 積層体
23 サーミスタ層
24 内部電極
25,26 端面
27 外部電極
31 ガラスコート
41 生の積層体作製工程
42 熱処理工程
43 乾式バレル工程
44 外部電極ペースト付与工程
45 焼成工程

Claims (8)

  1. 複数の積層されたセラミック層、および前記セラミック層間の特定の界面に沿って形成された複数の内部電極を含み、前記内部電極は、一方の端面にまで引き出されるものと他方の端面にまで引き出されるものとが積層方向において交互に配置されている、チップ状の積層体と、
    前記内部電極のいずれかに電気的に接続されるように、前記積層体の各前記端面上に形成された、外部電極と
    を備える、積層型セラミック電子部品を製造する方法であって、
    焼成しかつカットすることによって前記積層体となるべきものであって、前記セラミック層のためのセラミックグリーン層、および前記内部電極のための導電性ペースト層を含む、生のマザー積層体を作製する工程と、
    前記生のマザー積層体を所定の寸法にカットし、それによって、チップ状の生の積層体を得る工程と、
    前記生の積層体を熱処理する工程と、次いで、
    熱処理された前記生の積層体に対して、乾式のバレル研磨を実施する工程と、次いで、
    熱処理された前記生の積層体を焼成する工程と
    を備える、積層型セラミック電子部品の製造方法。
  2. 前記乾式のバレル研磨を実施する工程の後、前記生の積層体の各前記端面上に、前記外部電極のための導電性ペースト膜を形成する工程をさらに備え、前記生の積層体を焼成する工程は、前記外部電極のための前記導電性ペースト膜を焼成する工程を兼ねる、請求項1に記載の積層型セラミック電子部品の製造方法。
  3. 前記生の積層体を熱処理する工程において、80℃以上かつ300℃未満の温度が適用される、請求項1または2に記載の積層型セラミック電子部品の製造方法。
  4. 前記生の積層体を熱処理する工程において、80℃以上かつ200℃以下の温度が適用される、請求項3に記載の積層型セラミック電子部品の製造方法。
  5. 前記内部電極は、導電成分として、卑金属を含み、前記生の積層体を焼成する工程は、還元性雰囲気中で実施される、請求項1ないし4のいずれかに記載の積層型セラミック電子部品の製造方法。
  6. 当該積層型セラミック電子部品は積層型正特性サーミスタであり、前記セラミック層は正の抵抗温度係数有するサーミスタ層であり、さらに、焼結後の前記積層体を酸化性雰囲気中で熱処理する工程を備える、請求項5に記載の積層型セラミック電子部品の製造方法。
  7. さらに、焼結後の前記積層体の外表面の、前記外部電極から露出する部分を覆うように、熱処理を経てガラスコートを形成する工程を備え、前記焼結後の積層体を酸化性雰囲気中で熱処理する工程は、前記ガラスコートを形成する工程を兼ねる、請求項6に記載の積層型セラミック電子部品の製造方法。
  8. 前記内部電極および前記外部電極は、導電成分として、互いに同じ金属を含む、請求項1ないし7のいずれかに記載の積層型セラミック電子部品の製造方法。
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