JP4175829B2 - 記録媒体用スパッタリングターゲットと磁気記録媒体 - Google Patents

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【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、磁気記録媒体の記録層の形成に用いられるスパッタリングターゲット、および高密度記録用の磁気記録媒体に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、コンピュータの処理速度の向上などに伴って、情報の記録・再生を行うハードディスク装置(HDD)などの磁気記録装置には、より一層の高速・高密度化が要求されている。しかし、記録密度の高密度化には物理的な限界があると言われており、この要求を満たし続けていけるかどうか問題視されている。
【0003】
情報が実質的に記録される磁気記録媒体は、記録層として微細な磁性粒子の集合体からなる磁性体層を有している。高密度記録を行うには磁性体層に記録される磁区を小さくする必要がある。さらに、小さな記録磁区の分別には磁区の境界が滑らかであることが求められることから、磁性体層を構成する磁性粒子を微小化する必要がある。また、隣接する磁性粒子まで磁化反転が連鎖すると磁区の境界の乱れとなるため、磁性粒子間は交換結合相互作用が働かないように磁気的に分断されている必要がある。磁気的なヘッド−媒体相互作用の観点からは、高密度の記録を行うためには磁性体層の膜厚を薄くする必要がある。
【0004】
このような点から、記録層を構成する磁性体の磁化反転ユニットはその体積を小さくする方向(上記した要求を満たしていくと磁性粒子とほぼ等しくなる)に進んでいる。ところが、磁化反転ユニットを微小化していくと、そのユニットが持つ磁気異方性エネルギー(磁気異方性エネルギー密度Ku×磁化反転ユニットの体積V)が室温の熱揺らぎエネルギーよりも小さくなって、磁区を保持することができなくなってしまう。
【0005】
上記した熱揺らぎ現象を抑えて高密度記録を可能にするためには、磁性体層の磁気異方性エネルギー密度Kuを飛躍的に大きくする必要がある。そこで、磁気異方性エネルギー密度Kuの大きな磁性材料として、最近、FeおよびCoから選ばれる少なくとも1種の遷移金属元素(磁性元素)Tと、PtおよびPdから選ばれる少なくとも1種の貴金属元素Aとの規則相合金(T100-xx合金(xは例えば40〜60原子%の範囲))が注目されている。
【0006】
すなわち、Fe50Pt50合金、Fe50Pd50合金、Co50Pt50合金などはL10構造の規則相を形成し、高い磁気異方性を示すことが知られている。このような規則相合金を記録層としての磁性体層に適用することで、磁性体層の磁気異方性エネルギー密度Kuを大幅に高めることが可能となる。このようなことから、T100-xx合金などのL10構造を有する規則相合金の研究が盛んに行われている(日本金属学会秋期大会講演概要集(2001),p369、特開2001-101645号公報など参照)。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
上述したL10構造の規則相合金からなる磁性体層を記録層に適用する際には、まず規則相合金系材料からなるターゲットを作製し、これをスパッタリングすることにより合金薄膜を得ている。ところで、FePt合金、FePd合金、CoPt合金などのT100-xx合金膜は、スパッタ法で成膜した直後にはランダムな状態(不規則相)となっており、これを規則化させて大きなKuを得るためには合金膜に熱処理(アニール)を施す必要がある。
【0008】
しかしながら、これまでの研究ではT100-xx合金膜の典型的なアニール温度は500〜800℃であり、現状のガラス基板を用いた量産装置には適用できないという問題がある。また、高圧スパッタにより成膜中の基板加熱のみで規則化に成功した例も報告されているが、この場合の加熱温度も400℃程度と高く、しかも規則化が完全に進行したわけではないため、それほど大きなKuは得られていないのが現状である。
【0009】
上述したように、T100-xx合金膜のような規則相合金膜は、熱揺らぎ現象を抑えて高密度記録を可能にする磁気記録層として有望視されているが、その実用化にあたっては合金膜の規則化温度を低下させることが重要となる。このようなことから、現状の量産装置に適用可能なアニール温度、例えば300℃以下程度のアニール温度で規則化させることが可能な合金膜、ひいてはそのような合金膜を用いた磁気記録媒体の開発が強く求められている。
【0010】
一方、上記したような規則相合金系材料からなるターゲットに関しては、溶解鋳造法や焼結法で作製することが検討されている。これらの製法のうち、溶解鋳造法では規則相合金の原材料を真空雰囲気中などで溶解、鋳造することによりターゲットが作製される。一方、焼結法によれば、規則相合金の原料粉末をホットプレス、HIPなどで焼結したり、また冷間でプレス成形した後に焼結することによってターゲットが作製される。
【0011】
溶解鋳造法によるターゲットは、実質的に空孔がなく緻密であり、また成膜速度の点でも問題がない。しかし、溶解鋳造法は原料歩留りの点や、鋳造時の偏析、鋳造後の冷却時における割れなど、まだ改良の余地が認められる。特に、FePt系材料などの場合、溶解鋳造後の塑性加工時に割れが発生しやすく、塑性加工が非常に困難である。このため、得られたターゲットは鋳造組織となり、欠陥、偏析、結晶粗大粒の生成が避けられないという問題がある。
【0012】
一方、原料粉末を焼成して製造する焼結ターゲットは原料歩留りがよく、また製造時に偏析、割れなどが生じにくいことから、工業的な安定性に優れるなどの特徴を有している。しかしながら、焼結ターゲットは溶解鋳造材に比べて表面や内部に空孔が存在することが多く、緻密な構造にすることが難しい。低密度の焼結ターゲットはスパッタレートなどを十分に高めることができず、ターゲットとしての実用性に劣るという問題を有している。
【0013】
本発明はこのような課題に対処するためになされたもので、基本的には磁気記録媒体の記録層にL10構造の規則相合金膜を適用するにあたって、スパッタ成膜した合金膜の比較的低いアニール温度での規則化を可能にすることを目的としている。より具体的には、そのような規則化温度を低下させた合金膜を再現性よく得ることを可能にした記録媒体用スパッタリングターゲット、またそのようなターゲットを生産性や組織の均一性などに優れる焼結法で実現した記録媒体用スパッタリングターゲットを提供することを目的としている。さらに、合金膜の比較的低いアニール温度での規則化を可能にすることで、Kuが大きいL10構造の規則相合金膜の実用性や量産性などを高めた磁気記録媒体を提供することを目的としている。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、上記したL10構造の規則相合金膜を磁気記録媒体の記録層として適用するにあたって、規則化温度に影響を与える要因について種々の検討と実験を繰り返した結果、残留酸素量に代表される残留ガス成分量を低減することで、FePt合金、FePd合金、CoPt合金、CoPd合金などの合金膜の規則化に必要なアニール温度を低下させることが可能であることを見出した。
【0015】
さらに、そのような残留ガス成分量が低い合金膜を成膜するにあたっては、スパッタ成膜の際に使用するターゲット中のガス成分量を低減することが有効であり、このようなガス成分量を低減したターゲットを用いることによって、高磁気特性(高磁気異方性エネルギー密度(高Ku)や高保磁力(高Hc))を有する規則相合金膜が再現性よく得られることを見出した。
【0016】
特に、焼結ターゲット中のガス成分量を低減することで緻密化が促進されるため、実用性に優れる高密度の焼結ターゲットが得られることを見出した。このような高密度の焼結ターゲットによれば、ターゲット組織中の偏析、欠陥、粗大粒の生成などを抑制し得ることから、ターゲットの使い初めから使い終わりに至るまで、磁気特性のばらつきが少ない規則相合金膜を形成することが可能となる。
【0017】
本発明は上述したような知見に基づいて成されたものであって、本発明のスパッタリングターゲットは、
一般式:(Fe1-aCoax(Pt1-bPdb100-x
(式中、a、bおよびxは0≦a≦1、0≦b≦1、30≦x≦65原子%を満足する数である)
で表される組成を有する磁性合金の焼結体を具備する、L10構造の規則相を有する磁性合金膜の形成に用いられる記録媒体用スパッタリングターゲットであって、前記ターゲットの酸素含有量が500ppm以下であると共に、前記ターゲットの酸素、窒素、炭素、硫黄および水素の合計含有量が1000ppm以下であり、かつ79.9%以上の相対密度を有することを特徴としている。
【0018】
本発明の記録媒体用スパッタリングターゲットを構成する磁性合金にはさらCu、Au、Ag、Zn、Sn、Mn、Ni、Al、Ti、Hf、Ta、Mo、Nb、W、Cr、V、In、Re、Ru、Ir、Rh、Sm、Tb、Si、B、Si−O、Mg−O、Al−O、Zr−O、Ti−O、Si−N、Al−N、Zr−N、Ti−N、B−N、Si−O−N、Al−O−N、Al−Ti−O−C、およびIn−Sn−Oから選ばれる少なくとも1種の元素または化合物を0.1〜50原子%の範囲で含有させた合金などが用いられる。
【0019】
本発明の磁気記録媒体は、支持基板と、前記支持基板上に形成された記録層と、前記記録層を覆うように設けられた保護層とを具備する磁気記録媒体において、前記記録層は、
一般式:(Fe1-aCoax(Pt1-bPdb100-x
(式中、a、bおよびxは0≦a≦1、0≦b≦1、30≦x≦65原子%を満足する数である)
で表される組成を有すると共に、L10構造の規則相を有する磁性合金からなり、かつ前記記録層中の残留酸素量が1原子%以下であることを特徴としている。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を実施するための形態について説明する。
本発明のスパッタリングターゲットは、FeおよびCoから選ばれる少なくとも1種の遷移金属元素(磁性元素)Tと、PtおよびPdから選ばれる少なくとも1種の貴金属元素Aとから実質的になる磁性合金、さらにこのような磁性合金に添加成分(添加元素や添加化合物)を含有させた合金の焼結体を具備するものである。このような焼結ターゲットを構成する磁性合金において、T元素とA元素との組成比はL10構造の規則相が得られる範囲から適宜に選択される。
【0021】
ここで、L10構造の規則相は結晶構造的には面心正方晶(fct)構造を有し、{001}面をT元素(磁性元素)が占め、かつ{002}面をA元素(貴金属元素)が占める結晶構造、あるいは{002}面をT元素が占め、{001}面をA元素が占める結晶構造である。なお、L10構造は2元系合金の結晶構造の1つであり、添加成分を含有する3元系以上の合金は厳密にはL10構造とは言えないが、本発明においては主成分であるT元素とA元素とからなる副格子がL10構造をとっている場合には、その結晶構造はL10構造を有しているものとする。
【0022】
10構造の規則相(L10規則相)を形成するT元素とA元素との組成比は、相図上においても幅があり、また添加元素などが優先的にT元素やA元素と結合する場合には、結合した残りの元素でL10規則相が得られるように組成比を設定することが好ましい。このように、T元素とA元素との組成比は磁性合金の材料系や要求特性などに応じて適宜設定することが好ましい。
【0023】
T元素とA元素とから実質的になる磁性合金は、
一般式:(Fe1-aCoax(Pt1-bPdb100-x …(1)
(式中、a、bおよびxは0≦a≦1、0≦b≦1、30≦x≦65原子%を満足する数である)
で表される組成を有する。すなわち、焼結ターゲットを構成する磁性合金は、T元素を30〜65原子%の範囲で含むと共に、A元素を35〜70原子%の範囲で含む。
【0024】
T元素の含有量が30原子%未満であっても、また80原子%を超えても、いずれの場合にも焼結ターゲットを用いて成膜した磁性合金膜において、L10規則相を十分に得ることができない。T元素とA元素との組合せによっても異なるが、T元素の含有量は30〜65原子%の範囲であることがより好ましい。同様に、A元素の含有量については35〜70原子%の範囲であることがより好ましい。このような組成比において、磁性合金膜中にL10規則相をより十分な量で形成することが可能となる。
【0025】
また、T元素としてFeを選択すると共に、A元素としてPtを選択した場合には、Feの含有量は35〜65原子%の範囲が好ましく、さらに好ましくは40〜60原子%の範囲である。T元素としてFeを選択すると共に、A元素としてPdを選択した場合には、Fe含有量は35〜65原子%の範囲が好ましく、さらに好ましくは45〜65原子%の範囲である。T元素としてCoを選択すると共に、A元素としてPtを選択した場合には、Coの含有量は30〜60原子%の範囲が好ましく、さらに好ましくは40〜60原子%の範囲である。なお、A元素の含有量はいずれもT元素量を除く残量である。
【0026】
焼結ターゲットを構成する磁性合金は、T元素としてFeおよびCoから選ばれる少なくとも1種を含むと共に、A元素としてPtおよびPdから選ばれる少なくとも1種を含むものであればよく、具体的な合金系としてはFe−Pt、Fe−Pd、Co−Pt、Co−Pd、もしくはこれらの複合系(Fe−(Pt,Pd)、Co−(Pt,Pd),(Fe,Co)−Ptなど)のいずれであってもよい。これらのうち、Fe−Pt合金が最も大きな磁気異方性エネルギー密度Kuを有することが知られているが、添加成分(添加元素や添加化合物)などによってはKuが変化することが予想されるため、選択した材料系や要求特性などに応じて合金系を選択することが好ましい。
【0027】
さらに、焼結ターゲットを構成する磁性合金は、上記した(1)式で表されるT元素とA元素の2元系合金に限られるものではない。すなわち、そのような2元系合金に対して、他の元素や化合物などの添加成分を含有させた磁性合金を用いることができる。具体的には、Cu、Au、Ag、Zn、Sn、Mn、Ni、Al、Ti、Hf、Ta、Mo、Nb、W、Cr、V、In、Re、Ru、Ir、Rh、Sm、Tb、Si、およびBから選ばれる少なくとも1種の元素や、Si−O、Mg−O、Al−O、Zr−O、Ti−O、Si−N、Al−N、Zr−N、Ti−N、B−N、Si−O−N、Al−O−N、Al−Ti−O−C、およびIn−Sn−Oから選ばれる少なくとも1種の化合物を添加した磁性合金を、焼結ターゲットの構成材料として用いることができる。
【0028】
上述した添加成分のうち、Cu、Au、Zn、Sn、Mnなどの元素は、焼結ターゲットを用いて成膜した磁性合金膜の規則化を促進する元素である。Co−Pt合金を適用した場合には、Niなども磁性合金膜の規則化の促進に寄与する。さらに、上記した元素や化合物のうち、非磁性元素や非磁性化合物は磁性合金膜において、L10構造の規則相とされた磁性結晶粒子の周囲に存在し、これら磁性結晶粒子間を磁気的に分離する材料としても機能する。このような磁性結晶粒子間の非磁性体による分離は、磁気記録密度の向上に寄与する。
【0029】
このような添加成分の含有量(複数種を添加する場合には合計量)は、ターゲットの全体量に対して0.1〜50原子%の範囲とすることが好ましい。添加成分の含有量が50原子%を超えると、得られる磁性合金膜の磁気特性などを低下させる。一方、0.1原子%未満では添加効果を十分に得ることができない。上記した添加元素や添加化合物のより好ましい含有量は添加理由などにより異なるが、得られる磁性合金膜の特性やスパッタリング時の面内分布などの実用特性を考慮すると、さらに1〜30原子%の範囲とすることが好ましい。
【0030】
本発明のスパッタリングターゲットは、上記したような磁性合金(添加成分を含有するものを含む)粉末、もくしは磁性合金を構成する各原料粉末の混合物を、粉末冶金法で焼結させた焼結体を具備するものである。そして、このような焼結体からなるスパッタリングターゲット(焼結ターゲット)において、本発明では酸素(O)含有量を500ppm以下としている。さらに、酸素を含むガス成分全体の含有量、すなわち酸素(O)、窒素(N)、炭素(C)、硫黄(S)および水素(H)の合計含有量は1000ppm以下とすることが好ましい。なお、ターゲット中のガス成分量(ppm)はいずれも質量比に基づく値である。
【0031】
このような構成(ガス成分量の規定)は、後に詳述するように、本発明のスパッタリングターゲットを用いて成膜した磁性合金膜にアニール処理を施して、磁性合金膜を規則化させる際の温度がガス成分量、特に酸素量に影響を受けるという新たな知見に基づくものである。すなわち、酸素含有量が500ppm以下の焼結ターゲットを用いて磁性合金膜をスパッタ成膜することによって、得られる磁性合金膜の規則化温度を低下させることができる。従って、実用的なアニール温度で磁性合金膜の規則化を十分に進行させることが可能となり、高磁気異方性エネルギー密度(高Ku)や高保磁力(高Hc)などの高磁気特性を有する磁性合金膜(規則相合金膜)を再現性よく得ることができる。
【0032】
焼結ターゲット中に存在する不純物ガス成分のうち、特に酸素は磁性合金膜の規則化温度に影響を及ぼすことから、焼結ターゲット中の酸素量は500ppm以下とする。酸素含有量が多いと、磁性合金膜のスパッタ成膜時、特に成膜の初期段階において不純物ガスの発生量が多くなり、得られる磁性合金膜中の残留酸素量が増大する傾向を示す。その結果として規則化温度の上昇を招き、実用的な温度でアニール処理した場合には、磁性合金膜の磁気特性(KuやHc)を十分に高めることができない。焼結ターゲット中の酸素量300ppm以下とすることがさらに好ましい
【0033】
また、酸素を含むガス成分全体(O、N、C、S、H)の合計含有量があまり多い場合にも、得られる磁性合金膜の規則化温度が上昇し、その結果として磁性合金膜の磁気特性の低下を招くおそれがあることから、焼結ターゲットのO、N、C、S、Hの合計含有量は1000ppm以下とすることが好ましい。同様な理由から、焼結ターゲットのN、C、S、Hの合計含有量は1000ppm以下とすることが好ましい。O、N、C、S、Hの合計含有量600ppm以下とすることがより好ましい。同様に、N、C、S、Hの合計含有量は500ppm以下とすることがより好ましく、さらに好ましくは300ppm以下である。
【0034】
ここで、本発明のスパッタリングターゲット中における主成分(T元素およびA元素)、任意成分(添加元素や添加化合物)、並びに不純物成分(ガス成分)の存在量は、いずれも以下に示す方法により測定された値を示すものとする。すなわち、例えば円板状ターゲットの中心部(位置1)と、中心部を通り円周を均等に分割した4本の直線上において、中心から90%の距離(中心を0%、半径の長さを100%とする)にある点(位置2〜9)、および中心から50%の距離にある点(位置10〜17)の合計17点から、それぞれ長さ15mm、幅15mmの試験片を採取する。これら17個の試験片の各成分量をそれぞれ測定し、これらの測定値をそれぞれ平均した値を、本発明のスパッタリングターゲットにおける各成分の含有量とする。
【0035】
O、N、C、SおよびHの含有量については、Oは不活性ガス融解−赤外線吸収法、N、Hは不活性ガス融解−熱伝導度法、C、Sは高周波燃焼−赤外線吸収法で求めるものとする。添加物としてSiO2やAl23などの酸化物を用いた場合には、ターゲット中の酸素が母相(T−A合金)中に存在する酸素か、添加物に由来するものかを分離して、ガス成分としての酸素含有量を求める。その際には、XPS(X線光電子分光)やXRF(蛍光X線分光)を用いることができる。分析して得られた酸素の価数を調べ、例えばSiO2に由来するものであれば-2価となっている分の濃度を求め、それを全体の酸素量から引けばよい。あるいは、酸素と化合している添加元素、例えばSiの量を分析し、その2倍分の量の酸素が添加物由来であるので、それを全体の酸素量から引けばよい。
【0036】
本発明のスパッタリングターゲットは、公知の粉末冶金法を適用して製造することができるが、最終的に得られるターゲット中の酸素量、さらには酸素を含むガス成分量が上記した値以下にする必要がある。このため、スパッタリングターゲットの原料としては、上記した各ガス成分(O、N、C、S、H)の含有量が低いものを用いることが好ましく、さらにターゲットの製造工程(例えば成形工程、焼結工程、形状加工工程など)は真空中ないしは不純物ガス成分の存在量が低い雰囲気中で実施することが好ましい。
【0037】
具体的には、まずターゲットを構成する各金属原料を所定の比率で溶解鋳造し、得られたインゴットを粉砕して合金粉末を作製するか、アトマイズ法や回転電極法などによって合金粉末を得る。あるいは、単体金属の粉末を所定の比率で混合して混合粉末を作製する。各単体金属粉末はガス成分量(特に酸素量)が少ない粉末を使用するか、残留ガス成分量を低減することが可能なガスアトマイズ法、回転電極法などを適用して作製することが好ましい。
【0038】
次に、上記した合金粉末や各金属粉末の混合粉末を用いて、例えば常圧焼結法、ホットプレス(HP)法、熱間静水圧プレス(HIP)法などにより焼結体を作製した後、この焼結体に機械加工を行って、所望の形状および表面特性のスパッタリングターゲットを作製する。このようなターゲットの製造工程において、金属粉末の製造および混合工程、焼結工程、機械加工工程の各工程を真空または不純物ガス成分が実質的に存在しない雰囲気下で行うことが好ましい。
【0039】
また、上記した原料粉末の製造工程において、粒径が50μm未満の小さい粒子が多く存在すると金属粒子の比表面積が増大して、O、N、C、S、Hの各元素量、特に酸素量が増加する傾向がある。一方、粒径が500μmを超える粗大粒子は、スパッタリングターゲット中のO、N、C、S、Hの各元素含有量のばらつきを増大させる傾向があり、さらに焼結性も低下させる。このようなことから、得られた原料粉末は篩分けなどにより粒度毎に選別し、過度に粒径が小さい粒子や大きい粒子は積極的には使用しないことが好ましい。すなわち、原料粉末の粒径(最大粒径)は50〜500μmの範囲であることが好ましく、さらに好ましくは50〜150μmの範囲である。焼結性を向上させるために、粒径が大きい粉末と小さい粉末を所定の比率で再混合して使用してもよい。なお、粒子の形状は必ずしも円形である必要はない。
【0040】
さらに、上述したような原料粉末をホットプレス法などで焼結する場合には、真空中(例えば真空度=0.067Pa以下)で所定時間加熱して脱ガス処理を行うことが好ましい。脱ガス処理が終了するまでは予備加圧を付加せず、その状態を所定時間維持することによって、粉末表面に吸着したガス成分を除去することができる。このような脱ガス処理を行うことで焼結性が向上し、その結果として最終的に得られるターゲットの密度を高めることができ、さらに欠陥を低減することが可能となる。
【0041】
脱ガス処理は200〜600℃の温度で0.5時間以上行うことが好ましい。脱ガス処理温度は300〜500℃の範囲とすることがより好ましい。また、脱ガス処理および焼結処理において、加熱時の昇温速度は10℃/分以下とすることが好ましく、さらに好ましくは5℃/分以下である。このような昇温速度を採用することによって、効率的に脱ガス処理および焼結処理を行うことができる。
【0042】
上述したような加圧焼結工程により得られたターゲット材料(焼結体)を所望形状に機械加工し、これを必要に応じてAlやCuなどからなるバッキングプレートと接合することによって、本発明のスパッタリングターゲットが得られる。焼結体の機械加工は常法により行うことができる。また、バッキングプレートとの接合には、拡散接合やろう付け接合などが適用される。
【0043】
本発明のスパッタリングターゲットは、磁気記録媒体の記録層を形成する際に用いられるものである。特に、本発明のスパッタリングターゲットは、高記録密度用の磁気記録媒体の製造に好ましく用いられるものである。記録層としての磁性合金膜の成膜方法は、従来からこの種のスパッタリングターゲットを用いた成膜工程(スパッタ工程)と本質的に同様であり、従来から採用されてきた成膜方法をそのままあるいは必要に応じて所定の改変を加えて適用することができる。
【0044】
次に、本発明の磁気記録媒体の実施形態について説明する。
図1は本発明の一実施形態による磁気記録媒体の構成を示す断面図である。同図において、1は例えば金属、ガラス、セラミックスなどの非磁性材料からなる支持基板であり、この支持基板1上には記録層2が形成されている。なお、支持基板1と記録層2との間には、後に詳述するように、単層もくしは複数層の下地層、さらにはシード層などを設けてもよい。記録層2の表面は、例えば硬質のCやSiO2などからなる保護層3により覆われている。これらの各層によって、磁気記録媒体4が構成されている。
【0045】
記録層2は、前述した(1)式表される2元系の磁性合金、もしくはそのような磁性合金に磁気特性、結晶性、微細構造などの制御を目的として添加成分(前述した添加元素や添加化合物など)を配合した3元系以上の磁性合金により構成されたものであって、そのような磁性合金膜を有している。前述したように、T元素(Fe,Co)とA元素(Pt,Pd)を所定の比率で含む磁性合金は、L10構造の規則相を形成する。
【0046】
このような磁性合金膜を例えばスパッタ法で成膜した場合、成膜直後はT元素とA元素とがランダムに合金化しており、不規則相(結晶構造的にはfcc)となっている。これをアニール処理することによって、T元素が存在するサイト(面)とA元素が存在するサイト(面)とが分かれたL10規則相(結晶構造的にはfct)となる。この磁性合金膜を規則化するための温度(アニール温度)は、前述したように磁性合金膜中の残留ガス成分量、特に残留酸素量に影響されることから、本発明ではより低いアニール温度での規則化を促進するために、記録層2を構成する磁性合金膜中の残留酸素量を1原子%以下に制御している。
【0047】
すなわち、記録層2中に残留する酸素は、主にスパッタリングプロセスによりもたらされる。具体的には、スパッタリングターゲット中に含まれる酸素、スパッタリング用Arガス中に含まれるO2やH2O、スパッタリング装置のチャンバ内壁に吸着しているH2Oなどである。本発明者らは種々のプロセス条件下で成膜したT−A合金膜について、残留酸素濃度と規則化温度との関係を調べた結果、残留酸素濃度が低いほど規則化温度が下がることを初めて見出し、本発明に至ったものである。
【0048】
上記した磁性合金膜の規則化はその保磁力により判断することができる。すなわち、磁性合金膜の規則化が進むにしたがって保磁力が増大する。ここで、記録層2を構成する磁性合金膜の規則化の程度、言い換えると一定の温度(例えば300℃)でアニールした際の保磁力は、残留酸素量が低いほど高めることができる。種々の条件下で成膜した磁性合金膜の保磁力を再現性よく高める上で、磁性合金膜中の残留酸素量は1原子%以下とすることがより好ましい。すなわち、残留酸素量が30原子%以下の磁性合金膜でも300℃程度の基板加熱で規則化させることができるが、より広範囲な条件下で成膜した磁性合金膜を300℃程度の基板加熱で規則化させ、かつ保磁力を再現性よく高める上で、記録層2を構成する磁性合金膜中の残留酸素量は1原子%以下とすることが好ましい。
【0049】
上述したように、残留酸素量1原子%以下の磁性合金膜で構成した記録層2は、現状の量産装置に適用可能なアニール温度、具体的には100〜300℃程度のアニール温度で良好に規則化を進行させることができる。従って、このような記録層2によれば高保磁力(高Hc)に加えて、L10規則相合金膜の特徴である高磁気異方性エネルギー密度(高Ku)を再現性よく得ることができる。このような高Kuを有する記録層2は、磁気記録の熱揺らぎ現象の抑制に対して有効に作用するため、磁気記録媒体4のより一層の高密度記録化を促進することが可能となる。
【0050】
10規則相合金からなる記録層2中の残留酸素量1原子%以下とするためには、上述したスパッタリングプロセスによりもたらされる酸素量を減少させることが有効である。特に、前述した本発明のスパッタリングターゲット、すなわち酸素含有量を500ppm以下、さらには酸素を含むガス成分全体(O、N、C、S、H)の合計含有量を1000ppm以下とした焼結ターゲットを用いることによって、記録層2中の残留酸素量を低減することができる。この他に、スパッタリング用Arガス中に含まれるO2量やH2O量を低減したり、さらにスパッタリング装置のチャンバやガス供給管などに滞留するO2やH2Oの影響を排除することも有効である。
【0051】
ここで、記録層(磁性合金膜)2中の残留酸素濃度は、以下に示す方法により測定された値を示すものとする。すなわち、例えば円板状の磁気記録媒体の中心部を通り、円周を均等に分割した2本の直線上において、中心から50%の距離(中心を0%、半径の長さを100%とする)にある各点(合計4点)から、それぞれ長さ10mm、幅10mmの試験片を採取する。これら4個の試験片の各残留酸素濃度をそれぞれ測定し、これらの測定値を平均した値を、本発明の磁気記録媒体における残留酸素濃度とする。
【0052】
なお、記録層(磁性合金膜)2中の残留酸素濃度は、SIMS(二次イオン質量分光分析)とXPS(X線光電子分光)とを併用することで分析することができる。例えば、数%の酸素濃度まではRBS(ラザフォード後方散乱)で較正したXPSで定量することができ、数%以下の領域ではXPSやRBSで較正したSIMSを使って分析することができる。XPSで定量する場合、10〜20%の誤差が見込まれるが、酸素量の僅かな変化が磁気特性に及ぼす影響は小さく、本発明による磁気記録媒体の残留酸素濃度の規定値は10〜20%の誤差を許容するものである。
【0053】
また、添加成分として酸化物を用いる場合には、磁性合金膜中の残留酸素と添加物として存在する化合物の酸素との区別が必要である。これにはXPSのケミカルシフトを利用することができる。酸素のXPSピークが2つ以上明確に見られる場合は、残留酸素と添加物の酸素とが区別できる。どのピークの酸素が残留酸素かは、添加した元素との化合の可能性から判断する。そして、残留酸素に相当するピークから残留酸素濃度を算出する。また、区別がつきにくい場合には、酸素と化合する添加元素を分析し、それが化学量論組成になっているものとして、検出された全酸素量から減じればよい。残留酸素はどの元素とも強くは化合していないことが、本発明者らによる実験で明らかになっているので、酸素との化合力が強い元素を添加元素として存在させた場合、その元素が化合しきれない酸素のみが残留酸素として存在すると考えられる。
【0054】
上述した磁性合金膜からなる記録層2において、L10規則相は磁性結晶粒子を形成している。この結晶粒子の大きさは、円形近似で平均直径が20nm以下であることが好ましく、より好ましくは10nm以下、さらに好ましくは8nm以下である。磁性結晶粒子の大きさは、記録層2部分の平面/断面TEM(透過電子顕微鏡)観察により確認することができる。隣接する磁性結晶粒子間は、添加元素や残留元素あるいは空隙が存在するが、部分的には磁性結晶粒子同士が接していてもよい。磁性結晶粒子間が非磁性体で物理的に分断されていると、磁性結晶粒子間の交換結合相互作用が小さくなって記録分解能が向上する。これは磁気記録媒体4として好ましい構成である。ただし、記録層2はKuが大きいので相対的に交換結合相互作用は小さくなる。従って、磁性結晶粒子間の交換結合相互作用はある程度存在していても構わない。
【0055】
記録層2の磁気異方性は特に限定されるものではなく、垂直磁気異方性であってもよいし、面内磁気異方性であってもよい。さらに、これらが混合した状態でであっても構わない。また、記録層2の厚さに特に制限はないが、高密度記録を考えると100nm以下とすることが好ましい。記録層2の厚さは50nm以下とすることがより好ましく、さらに好ましくは20nm以下である。ただし、記録層2の厚さをあまり薄くしすぎると薄膜を構成するのが困難になるため、記録層2の厚さは0.1nm以上とすることが好ましい。
【0056】
本発明の磁気記録媒体において、支持基板1と記録層2との間には図2に示すように下地層5を介在させることができる。下地層5は磁性体であってもよいし、また非磁性体であってもよい。さらに、下地層5は1層に限られるものではなく、2層以上の下地層5を存在させることも可能である。下地層5の厚さは特に限定されるものではないが、あまり厚いと製造コストが増加するため、下地層5の厚さは500nm以下(2層以上の下地層を適用する場合にはそれらの合計厚)とすることが好ましい。
【0057】
磁性体からなる下地層5は、磁性合金膜(記録層2)に効率的な記録/再生を行うために用いられ、そのような効果を得る上で、磁性合金膜中の磁区や記録/再生ヘッドと交換相互作用・静磁気相互作用を介して磁気的に結合された状態で使用される。例えば、記録層2を垂直磁化膜とする場合、軟磁性膜を下地層5とし、単磁極ヘッドで記録を行うことで高密度の記録が可能となる。また、記録層2が面内磁化膜の場合には、軟磁性層を記録層2の上側あるいは下側に設け、再生時に軟磁性層を飽和させる強度の磁界を印加することで高密度の記録が可能となり、また熱揺らぎ耐性を向上させることもできる。
【0058】
一方、非磁性体からなる下地層5は、例えば記録層2の磁性部や非磁性部の結晶構造を制御する目的で、あるいは基板1からの不純物の混入を防ぐ目的で設置される。例えば、記録層2の磁性部を結晶配向させる場合、その格子間隔に近い格子間隔を持つ下地層5を用いることによって、磁性部の結晶状態を制御することができる。また、ある表面エネルギーを持ったアモルファス下地層を用いることによって、記録層2の磁性部や非磁性部の結晶性もしくはアモルファス性を制御する場合もある。基板1からの不純物の混入を防ぐ目的には、格子間隔の小さい、あるいは緻密な薄膜を下地層5として用いればよい。
【0059】
上述した磁性体や非磁性体からなる下地層5は、それらの機能を共通に持っていても構わない。すなわち、記録層2の結晶性を磁性体からなる下地層(磁性下地層)5で構成して制御することも可能である。このような場合には、記録/再生特性上の効果と結晶性上の効果とが相乗されるので、各目的の下地層を個別に形成する場合よりも好ましい結果が得られることもある。なお、下地層5はイオンプレーティング、雰囲気ガス中でのドープ、中性子線照射などによる基板1の表面改質層であってもよい。この場合には、薄膜の堆積プロセスを削減できるため、磁気記録媒体4のコスト削減に寄与する。
【0060】
さらに、上述した下地層5の下側にさらに下地層を設けてもよい。そのような場合には、機能を分担させることが可能となるため、それらの効果を高めることができる。例えば、図3に示すように、下地層5や記録層2の結晶粒を小さくする目的で、粒径の小さいシード層6を基板1上に設け、その上に記録層2の結晶性を制御する下地層5を設ける手法などが有効に適用される。
【0061】
下地層5(シード層6を含む)の機能や構成材料は、上述したように使用目的などに応じて適宜に選択可能であるが、特にL10規則相合金膜からなる記録層2を有する磁気記録媒体4においては、少なくとも記録層2と接して非磁性体層からなる下地層5を設けることが好ましい。このような非磁性体層からなる下地層5としては、Pt、Pd、Al、Cr、Cu、Ir、Ag、Au、およびMgOから選ばれる少なくとも1種を主成分として含有すると共に、(200)配向していることが好ましい。このような非磁性体層からなる下地層5を適用することによって、L10規則相(fct相)のc軸を膜面に対して垂直方向に配向させた垂直磁化膜としやすくなる。これは本発明の磁気記録媒体4を垂直磁気記録媒体として用いる場合に有効である。
【0062】
上記したような非磁性体層からなる下地層5に対して、さらにその下側にシード層6を形成することも有効である。例えば、基板1の種類や他の目的のために、下地層5で(200)配向が得にくい場合には、基板1上で(200)配向が得やすい膜をまずシード層6として設置し、その上に非磁性体層からなる下地層5を設置すればよい。もちろん、このシード層6自体が多層膜であっても構わない。このようなシード層6の具体例としては、Pt、Pd、Al、Cr、Cu、Ir、Ag、Au、NiAlおよびMgOから選ばれる少なくとも1種を主成分として含有すると共に、(200)配向している層が挙げられる。
【0063】
さらに、シード層6を用いることによって、結晶粒径を制御することも可能となる。例えば、ガラス基板上でMgO膜の結晶粒径を小さくしやすいというような特性を利用し、結晶粒径が小さい(200)配向のMgOシード層6上に(200)配向のPt下地層5などを成膜することによって、結晶粒が小さくかつ結晶性の良い下地層5を得ることができる。
【0064】
ここで、下地層5などの(200)配向は、例えばX線回折装置(XRD)などで評価した結果において、(200)ピークを主とすることを意味し、他のピークが混在していても特に構わない。ただし、良好な結晶ほど記録再生特性が向上するため、他のピークは小さいほど好ましい。なお、XRD装置はmmオーダーの比較的広い領域での平均値を測定するので、他のピークが完全にゼロであるかどうかは必ずしも明確にならないこともある。
【0065】
本発明の磁気記録媒体4において、下地層5はL10規則相合金膜からなる記録層2と連続していることから、下地層5における残留酸素濃度も磁気特性に対して影響を及ぼす。具体的には、記録層2と接する下地層5の残留酸素濃度を30原子%以下、さらには1原子%以下とすることによって、記録層2の保磁力をより一層増加させることができる。すなわち、下地層5中の残留酸素が記録層2中に侵入すると、記録層2の下地層5との界面部分において残留酸素濃度が過多の状態となり、そのために規則化が遅れて磁気特性が劣化した初期層を形成されるためと考えられる。このようなことから、記録層2と接する下地層5の残留酸素濃度は30原子%以下、さらには1原子%以下とすることが好ましい。なお、下地層5にMgOやSiO2などの酸化物を適用する場合には、前述した方法にしたがって酸化に寄与していない酸素の残留濃度測定するものとする。
【0066】
【実施例】
次に、本発明の具体的な実施例およびその評価結果について述べる。
【0067】
実施例1
まず、電解Feをカルシア坩堝中で真空溶解して、低不純物および低ガス成分のFeインゴットを作製した。得られた高純度Feインゴットを用いて、プラズマ回転電極法により粒径100〜200μmの粉末を作製した。この高純度Fe粉末と純度4N以上のPt粉末(粒径80μm以下)とを、真空中にてボールミルで24時間混合した。この際の混合比は原子比でFe:Pt=50:50とした。
【0068】
次に、上記した混合粉末をカーボンモールド型に充填し、真空中にて1350℃×5時間の条件でホットプレスした。この際の条件は以下に示す通りである。まず、温度500℃まで押し圧をかけずに昇温し、この温度にて1時間程度真空中で保持する。その後、24.5MPaのプレス圧力をかけつつ、5℃/分の昇温速度で1350℃まで昇温し、この温度および圧力で5時間保持する。ここで、500℃まで圧力をかけずに昇温して1時間保持したり、また昇温速度を5℃/分に制御する理由は、原料粉末表面に吸着したガス成分などを除去するためである。
【0069】
このようにして得たターゲット素材(焼結体)に機械加工を施すことによって、直径122.5mm(5インチ)×厚さ3mmのスパッタリングターゲットを作製した。このターゲットの組成(主成分組成およびガス成分量)を前述した方法にしたがって測定した。また、ターゲットの相対密度を測定した。ターゲットの密度はアルキメデス法で測定した。これらの測定結果を表1に示す。さらに、このFe−Pt系スパッタリングターゲットを後述する特性評価に供した。
【0070】
実施例2
電解FeおよびPt地金を真空溶解した後、プラズマ回転電極法により低ガス成分のFePt合金粉末を作製した。なお、FeとPtの混合比は原子比でFe:Pt=50:50とした。このFePt合金粉末をカーボンモールド型に充填し、真空中にて1350℃×5時間の条件でホットプレスした。ホットプレス条件は実施例1と同一とした。
【0071】
このようにして得たターゲット素材(焼結体)に機械加工を施すことによって、実施例1と同一形状のスパッタリングターゲットを作製した。このターゲットの組成(主成分組成およびガス成分量)および相対密度を実施例1と同様にして測定した。これらの測定結果を表1に示す。さらに、このスパッタリングターゲットを後述する特性評価に供した。
【0072】
実施例3
電解FeおよびPt地金を真空溶解した後、ガスアトマイズ法により低ガス成分のFePt合金粉末を作製した。このFePt合金粉末を1350℃×2時間の条件下でキャニングHIPした。得られたターゲット素材(焼結体)に機械加工を施すことによって、実施例1と同一形状のスパッタリングターゲットを作製した。このターゲットの組成(主成分組成およびガス成分量)および相対密度を実施例1と同様にして測定した。これらの測定結果を表1に示す。さらに、このスパッタリングターゲットを後述する特性評価に供した。
【0073】
実施例4
電解FeおよびPt地金を真空溶解した後、プラズマ回転電極法により低ガス成分のFePt合金粉末を作製した。このFePt合金粉末を1350℃×4時間の条件下でキャニングHIP焼結を行った。得られたターゲット素材(焼結体)に機械加工を施すことによって、実施例1と同一形状のスパッタリングターゲットを作製した。このターゲットの組成(主成分組成およびガス成分量)および相対密度を実施例1と同様にして測定した。これらの測定結果を表1に示す。さらに、このスパッタリングターゲットを後述する特性評価に供した。
【0074】
実施例5
まず、電解Feをカルシア坩堝中で真空溶解して、低不純物および低ガス成分のFeインゴットを作製した。得られたFeインゴットを用いて、ガスアトマイズ法により粒径100μm以下の高純度Fe粉末を作製した。この高純度Fe粉末と高純度Pt粉末とを真空中にてボールミルで24時間混合した。混合比は原子比でFe:Pt=50:50とした。次に、上記した混合粉末をカーボンモールド型に充填し、真空中にて1350℃×5時間の条件でホットプレスした。ホットプレス条件は実施例1と同一とした。
【0075】
このようにして得たターゲット素材(焼結体)に機械加工を施すことによって、実施例1と同一形状のスパッタリングターゲットを作製した。このターゲットの組成(主成分組成およびガス成分量)および相対密度を実施例1と同様にして測定した。これらの測定結果を表1に示す。さらに、このスパッタリングターゲットを後述する特性評価に供した。
【0076】
実施例6
まず、電解Feをカルシア坩堝中で真空溶解して、低不純物および低ガス成分のFeインゴットを作製した。得られたFeインゴットを用いて、プラズマ回転電極法により粒径150〜200μmの高純度Fe粉末を作製した。同様に、電解Cuを原料として用いて、Feと同様な方法で粒径150〜200μmの高純度Cu粉末を作製した。これら高純度Fe粉末および高純度Cu粉末と純度4N〜5NのPt粉末(粒径100μm以下)とを、真空中にてボールミルで24時間混合した。
【0077】
次に、上記した混合粉末をカーボンモールド型に充填し、真空中にて1350℃×5時間の条件でホットプレスした。ホットプレス条件は実施例1と同一とした。このようにして得たターゲット素材(焼結体)に機械加工を施すことによって、実施例1と同一形状のスパッタリングターゲットを作製した。このターゲットの組成(主成分組成およびガス成分量)および相対密度を実施例1と同様にして測定した。これらの測定結果を表1に示す。さらに、このスパッタリングターゲットを後述する特性評価に供した。
【0078】
実施例7
まず、電解Feをカルシア坩堝中で真空溶解して、低不純物および低ガス成分のFeインゴットを作製した。得られたFeインゴットを用いて、プラズマ回転電極法により粒径150〜200μmの高純度Fe粉末を作製した。この高純度Fe粉末と純度4N〜5NのAu粉末(粒径100μm以下)と純度4N〜5NのPt粉末(粒径100μm以下)とを、真空中にてボールミルで24時間混合した。
【0079】
次に、上記した混合粉末をカーボンモールド型に充填し、真空中にて1350℃×5時間の条件でホットプレスした。ホットプレス条件は実施例1と同一とした。このようにして得たターゲット素材(焼結体)に機械加工を施すことによって、実施例1と同一形状のスパッタリングターゲットを作製した。このターゲットの組成(主成分組成およびガス成分量)および相対密度を実施例1と同様にして測定した。これらの測定結果を表1に示す。さらに、このスパッタリングターゲットを後述する特性評価に供した。
【0080】
実施例8〜12、参考例1
高純度Zn粉末(実施例8)、高純度Sn粉末(実施例9)、高純度Mn粉末(参考)、高純度Pd粉末(実施例10)、高純度Mo粉末(実施例11)、高純度Ta粉末(実施例12)をそれぞれ用いる以外は、実施例6もしくは実施例7と同様にして、実施例1と同一形状のスパッタリングターゲットを作製した。これらのターゲットの組成(主成分組成およびガス成分量)および相対密度を実施例1と同様にして測定した。これらの測定結果を表1に示す。さらに、これらのスパッタリングターゲットを後述する特性評価に供した。
【0081】
実施例13、参考例2
電解FeおよびPt地金を真空溶解した後、プラズマ回転電極法により低ガス成分のFe−Pt合金粉末を作製した。この合金粉末を篩い分けして所定の粒径とした。篩い分けにより粒径選別した合金粉末とSiO2粉末(参考)またはMgO粉末(実施例13)とを、真空中にてボールミルで24時間混合した。次に、この混合粉末をカーボンモールド型に充填し、真空中にて1350℃×5時間の条件でホットプレスした。ホットプレス条件は実施例1と同一とした。
【0082】
このようにして得たターゲット素材(焼結体)に機械加工を施すことによって、実施例1と同一形状のスパッタリングターゲットを作製した。このターゲットの組成(主成分組成およびガス成分量)および相対密度を実施例1と同様にして測定した。これらの測定結果を表1に示す。さらに、このスパッタリングターゲットを後述する特性評価に供した。
【0083】
参考
電解FeおよびPt地金を真空溶解した後、プラズマ回転電極法により低ガス成分のFe−Pt合金粉末を作製した。この合金粉末を篩い分けして所定の粒径とした。篩い分けにより粒径選別した合金粉末とTiN粉末とを、真空中にてボールミルで24時間混合した。次に、この混合粉末をカーボンモールド型に充填し、真空中にて1350℃×5時間の条件でホットプレスした。ホットプレス条件は実施例1と同一とした。
【0084】
このようにして得たターゲット素材(焼結体)に機械加工を施すことによって、実施例1と同一形状のスパッタリングターゲットを作製した。このターゲットの組成(主成分組成およびガス成分量)および相対密度を実施例1と同様にして測定した。これらの測定結果を表1に示す。さらに、このスパッタリングターゲットを後述する特性評価に供した。
【0085】
比較例1
市販の純度3NのFe粉末(粒径100μm以下)と純度3NのPt粉末(粒径100μm以下)とを、大気中にてボールミルで24時間混合した。次に、この混合粉末をカーボンモールド型に充填し、真空中にて1350℃×5時間の条件でホットプレスした。ホットプレスは、24.5MPaのプレス圧力をかけつつ、5℃/分の昇温速度で1350℃まで昇温し、この温度および圧力で5時間保持することにより実施した。
【0086】
このようにして得たターゲット素材(焼結体)に機械加工を施すことによって、実施例1と同一形状のスパッタリングターゲットを作製した。このターゲットの組成(主成分組成およびガス成分量)および相対密度を実施例1と同様にして測定した。これらの測定結果を表1に示す。さらに、このスパッタリングターゲットを後述する特性評価に供した。
【0087】
比較例2
市販の純度3NのFe粉末(粒径100μm以下)、純度3NのCu粉末(粒径250μm以下)、および純度3NのPt粉末(粒径100μm以下)を、大気中にてボールミルで24時間混合した。次に、この混合粉末をカーボンモールド型に充填し、真空中にて1350℃×5時間の条件でホットプレスした。ホットプレス条件は比較例1と同一とした。
【0088】
このようにして得たターゲット素材(焼結体)に機械加工を施すことによって、実施例1と同一形状のスパッタリングターゲットを作製した。このターゲットの組成(主成分組成およびガス成分量)および相対密度を実施例1と同様にして測定した。これらの測定結果を表1に示す。さらに、このスパッタリングターゲットを後述する特性評価に供した。
【0089】
比較例3
市販の純度3NのFe粉末(粒径100μm以下)、純度3NのAu粉末(粒径100μm以下)、および純度3NのPt粉末(粒径100μm以下)を、大気中にてボールミルで24時間混合した。次に、この混合粉末をカーボンモールド型に充填し、真空中にて1350℃×5時間の条件でホットプレスした。ホットプレス条件は比較例1と同一とした。
【0090】
このようにして得たターゲット素材(焼結体)に機械加工を施すことによって、実施例1と同一形状のスパッタリングターゲットを作製した。このターゲットの組成(主成分組成およびガス成分量)および相対密度を実施例1と同様にして測定した。これらの測定結果を表1に示す。さらに、このスパッタリングターゲットを後述する特性評価に供した。
【0091】
比較例4
電解Fe、電解CuおよびPt地金を真空溶解して合金インゴットを作製した。得られた合金インゴットに機械加工を施すことによって、実施例1と同一形状のスパッタリングターゲットを作製した。このターゲットの組成(主成分組成およびガス成分量)および相対密度を実施例1と同様にして測定した。これらの測定結果を表1に示す。さらに、このスパッタリングターゲットを後述する特性評価に供した。
【0092】
実施例14
まず、電解Feをカルシア坩堝中で真空溶解して、低不純物および低ガス成分のFeインゴットを作製した。得られた高純度Feインゴットを用いて、プラズマ回転電極法により粒径100〜200μmの粉末を作製した。この高純度Fe粉末と純度4N以上のPd粉末(粒径80μm以下)とを、真空中にてボールミルで24時間混合した。次に、この混合粉末をカーボンモールド型に充填し、真空中にて1350℃×5時間の条件でホットプレスした。ホットプレス条件は実施例1と同一とした。
【0093】
このようにして得たターゲット素材(焼結体)に機械加工を施すことによって、実施例1と同一形状のスパッタリングターゲットを作製した。このターゲットの組成(主成分組成およびガス成分量)および相対密度を実施例1と同様にして測定した。これらの測定結果を表2に示す。さらに、このFe−Pd系スパッタリングターゲットを後述する特性評価に供した。
【0094】
実施例15
電解FeおよびPd地金を真空溶解した後、プラズマ回転電極法により低ガス成分のFePd合金粉末を作製した。このFePd合金粉末をカーボンモールド型に充填し、真空中にて1350℃×5時間の条件でホットプレスした。ホットプレス条件は実施例1と同一とした。
【0095】
このようにして得たターゲット素材(焼結体)に機械加工を施すことによって、実施例1と同一形状のスパッタリングターゲットを作製した。このターゲットの組成(主成分組成およびガス成分量)および相対密度を実施例1と同様にして測定した。これらの測定結果を表2に示す。さらに、このスパッタリングターゲットを後述する特性評価に供した。
【0096】
参考
電解FeおよびPd地金を真空溶解した後、ガスアトマイズ法により低ガス成分のFePd合金粉末を作製した。このFePd合金粉末を1350℃×2時間の条件下でキャニングHIPした。得られたターゲット素材(焼結体)に機械加工を施すことによって、実施例1と同一形状のスパッタリングターゲットを作製した。このターゲットの組成(主成分組成およびガス成分量)および相対密度を実施例1と同様にして測定した。これらの測定結果を表2に示す。さらに、このスパッタリングターゲットを後述する特性評価に供した。
【0097】
実施例1619、参考例5〜7
高純度Pt粉末に代えて高純度Pd粉末を用いる以外は、実施例6もしくは実施例7と同様にして、添加成分として金属元素を含むFe−Pd系スパッタリングターゲットをそれぞれ作製した。これらのターゲットの組成(主成分組成およびガス成分量)および相対密度を実施例1と同様にして測定した。これらの測定結果を表2に示す。さらに、これらのスパッタリングターゲットを後述する特性評価に供した。
【0098】
参考
高純度Pt粉末に代えて高純度Pd粉末を用いる以外は、参考および実施例13と同様にして、添加成分としてSiO2またはMgOを含むFe−Pd系スパッタリングターゲットを作製した。このターゲットの組成(主成分組成およびガス成分量)および相対密度を実施例1と同様にして測定した。これらの測定結果を表2に示す。さらに、このスパッタリングターゲットを後述する特性評価に供した。
【0099】
比較例5〜6
Pt粉末に代えてPd粉末を用いる以外は、比較例1、2と同様にして、Fe−Pd系スパッタリングターゲットを作製した。これらのターゲットの組成(主成分組成およびガス成分量)および相対密度を実施例1と同様にして測定した。これらの測定結果を表2に示す。さらに、これらのスパッタリングターゲットを後述する特性評価に供した。
【0100】
実施例20
まず、電解Coをカルシア坩堝中で真空溶解して、低不純物および低ガス成分のCoインゴットを作製した。得られた高純度Coインゴットを用いて、プラズマ回転電極法により粒径100〜200μmの粉末を作製した。この高純度Co粉末と純度4N以上のPt粉末(粒径80μm以下)とを、真空中にてボールミルで24時間混合した。次に、この混合粉末をカーボンモールド型に充填し、真空中にて1350℃×5時間の条件でホットプレスした。ホットプレス条件は実施例1と同一とした。
【0101】
このようにして得たターゲット素材(焼結体)に機械加工を施すことによって、実施例1と同一形状のスパッタリングターゲットを作製した。このターゲットの組成(主成分組成およびガス成分量)および相対密度を実施例1と同様にして測定した。これらの測定結果を表3に示す。さらに、このCo−Pt系スパッタリングターゲットを後述する特性評価に供した。
【0102】
参考10
電解CoおよびPt地金を真空溶解した後、プラズマ回転電極法により低ガス成分のCoPt合金粉末を作製した。このCoPt合金粉末をカーボンモールド型に充填し、真空中にて1350℃×5時間の条件でホットプレスした。ホットプレス条件は実施例1と同一とした。
【0103】
このようにして得たターゲット素材(焼結体)に機械加工を施すことによって、実施例1と同一形状のスパッタリングターゲットを作製した。このターゲットの組成(主成分組成およびガス成分量)および相対密度を実施例1と同様にして測定した。これらの測定結果を表3に示す。さらに、このスパッタリングターゲットを後述する特性評価に供した。
【0104】
実施例2124、参考例11
高純度Fe粉末に代えて高純度Co粉末(高純度Coインゴットからプラズマ回転電極法により作製)を用いる以外は、実施例6もしくは実施例7と同様にして、添加成分として金属元素を含むCo−Pt系スパッタリングターゲットをそれぞれ作製した。これらのターゲットの組成(主成分組成およびガス成分量)および相対密度を実施例1と同様にして測定した。これらの測定結果を表3に示す。さらに、これらのスパッタリングターゲットを後述する特性評価に供した。
【0105】
実施例25、参考例12
高純度Fe粉末に代えて高純度Co粉末(高純度Coインゴットからプラズマ回転電極法により作製)を用いる以外は、参考および実施例13と同様にして、添加成分としてSiO2またはMgOを含むCo−Pt系スパッタリングターゲットを作製した。このターゲットの組成(主成分組成およびガス成分量)および相対密度を実施例1と同様にして測定した。これらの測定結果を表3に示す。さらに、このスパッタリングターゲットを後述する特性評価に供した。
【0106】
比較例7〜8
Fe粉末に代えてCo粉末を用いる以外は、比較例1、2と同様にして、Co−Pt系スパッタリングターゲットを作製した。これらのターゲットの組成(主成分組成およびガス成分量)および相対密度を実施例1と同様にして測定した。これらの測定結果を表2に示す。さらに、これらのスパッタリングターゲットを後述する特性評価に供した。
【0107】
上述した実施例1〜25、参考例1〜12および比較例1〜8のスパッタリングターゲットをそれぞれ用いて作製した各合金膜(磁気記録層)の特性を、以下のようにして測定、評価した。まず、ガラス基板上に厚さ10nmのMgO下地層を形成し、この下地層上に各スパッタリングターゲットを用いて厚さ20nmの合金膜を成膜した。この後、カーボンからなる厚さ5nmの保護層を成膜した。MgO下地層はRFスパッタにより成膜し、また磁気記録層および保護層はDCスパッタにより成膜した。スパッタ成膜にはアルゴンガスを用い、成膜中のアルゴンガス圧力は0.665Paとした。成膜中の基板加熱は実施していない。各層を成膜した後に、水素雰囲気中で300℃×1時間の条件でアニール処理を行った。
【0108】
このようにして得た各磁気記録媒体の保磁力を、最大印加磁界50kOeのSQUIDを用いて測定(室温下)した。保磁力は膜面に対して垂直方向の特性として評価した。これら各磁気記録媒体の磁気特性の測定結果を表1、表2、表3に併せて示す。また、実施例1、実施例2、実施例20、および比較例4の各スパッタリングターゲットを用いた際の各ターゲットの使い始めから使い終わりまでの磁性合金膜の保磁力変化を図4に示す。
【0109】
【表1】
Figure 0004175829
【0110】
【表2】
Figure 0004175829
【0111】
【表3】
Figure 0004175829
【0112】
表1、表2および表3から明らかなように、実施例1〜25による各スパッタリングターゲットは酸素含有量、さらにはガス成分(O、N、C、S、H)の合計含有量が少ないことが分かる。そして、このようなスパッタリングターゲットを用いて成膜した磁性合金膜(磁気記録層)は、いずれも300℃のアニールで優れた保磁力(高Hc)が得られていることが分かる。これは磁性合金膜の規則化(L10規則相の生成)が十分に進行していることを意味する。さらに、図4からは、各実施例ではターゲットの使い始めから使い終わりに至るまで、磁性合金膜の特性(保磁力)が安定していることが分かる。これは高密度の焼結ターゲットなどに基づく効果である。
【0113】
一方、酸素含有量やガス成分(O、N、C、S、H)の合計含有量が多い比較例1〜3のスパッタリングターゲットを用いて成膜した磁性合金膜は、300℃のアニールでは小さい保磁力しか得られておらず、規則化が十分に進行していないことが分かる。また、溶解材に機械加工を施して形成した比較例4のスパッタリングターゲットは、酸素含有量やガス成分量は少ないものの、図4から明らかなように磁性合金膜の磁気特性のばらつきが大きいことが分かる。これは溶解ターゲットの鋳造組織に基づいて欠陥や偏析などが多いことによるものである。
【0114】
実施例26
図1に構成を示した磁気記録媒体4を、以下のようにして作製した。具体的には、3.5インチのガラスディスク基板1上に、膜厚20nmのFe53Pt47合金膜からなる記録層2と、膜厚5nmのC膜からなる保護層3を続けて堆積した。Fe53Pt47合金膜は、Fe50Pt50合金からなるターゲットを用い、静止対向でDCスパッタして成膜した。スパッタガスはArとし、スパッタ圧力は1Paであった。
【0115】
スパッタリング装置のガス導入系/排気系については、図5に示す構成を適用した。図5において、10は真空チャンバ、11はゲートバルブ、12はクライオポンプ、13はAr純化装置、14はArガスボンベ、15はArガスのバルブ、16はプロセス/循環切替えバルブ、17はArガス配管であり、A、BはArガスの流入方向を示す。真空チャンバ10およびArガス配管17の内壁は電界研磨しており、不純物ガス(水)の吸着を抑制している。
【0116】
また、Arガスバルブ15は、Arガスボンベ14の交換時以外は常にオープンとなっている。スパッタ時には切替えバルブ16をチャンバ側(B)に倒し、それ以外の場合には循環側(A)に倒すようにした。このような構成を採用することによって、常にArガスは配管中を流れており、滞留による不純物ガスのArガス中への取り込み量は低いレベルに保たれている。さらに、Arガスは純化装置13により僅かな不純物ガスをも取り除くようになっている。使用したArガスはArガスボンベ14の時点で99.9999%の純度を有している。
【0117】
このようなスパッタリング装置を用いて、スパッタ前の到達真空度(ゲートバルブの開放時間)、Arガス純度(純化装置13のON/OFFや故意に滞留させることにより調整)、ターゲットの純度(一般焼結品、溶融品、本発明のスパッタリングターゲット)を変えることによって、残留酸素濃度を変化させた複数のFePt合金膜を作製し、これらFePt合金膜の磁気特性を調べた。作製したFePt合金膜は10-4Paの真空雰囲気中にて300℃および200℃で1時間アニールした後、急冷して取り出した。磁気特性は最大印加磁界20kOeのVSMを用いて測定した。なお、アニール後に通常の磁気記録媒体で用いられているものと同等の潤滑材を塗布した。
【0118】
FePt合金膜中の残留酸素濃度の分析は下記の要領で行った。まず、磁気記録媒体を装置から取り外し、表面についている潤滑材を概ね除去する目的で、アセトン中で超音波洗浄した。その後、ディスク内径25mmを中心に、周方向に90度ずつ異なる位置から、それぞれ10mm角の試料をガラスカッタで切り出した。このようにして切り出した4個の試料について、まずXPS(シエンタ社製ESCA-300)で分析した。この際、試料をArイオンでスパッタしながら行う、いわゆる深さ方向分析を行った。
【0119】
分析される元素から、保護層とその下のFePt記録層の位置(深さ)を特定し、さらにFe、Pt、およびその他の添加元素の組成を見積った。この際、参照試料として、同様な元素構成で数原子%の酸素を含む条件で作製した、膜厚50nmの記録層部分のみの試料を別途用意し、RBS(ナショナル・エレクトロスタティクス・コーポレーション製3S-R10)で分析を行った。同じ参照試料をXPSで分析し、Fe、Pt、酸素、および他の元素の定量(感度補正)を行った。添加元素については、添加量が数原子%以下の場合にはその元素を含まない試料を参照試料としても残留酸素測定に影響がないことを確認しており、参照試料は完全には元素を一致させる必要はない。数原子%の酸素は前述のプロセス条件やターゲットを適宜選ぶことで含有させた。この参照試料と切り出した試料を同じようにSIMS(ATOMIKA社製4000)で分析した。RBSの結果をもとに、SIMSの検出数を原子%に換算した。
【0120】
酸素量が5原子%を超えると、SIMSはマトリックス効果の影響を受けて定量性が低下する。従って、5原子%以上の試料はXPSの測定結果をもって残留酸素濃度とし、それ以外の試料はSIMSの結果をもって残留酸素濃度とした。なお、記録層中の酸素濃度が膜厚方向に分布している場合には、記録層と思われる部分のほぼ中央の値を残留酸素濃度とした。
【0121】
記録層中の残留酸素濃度と保磁力との関係を図6に示す。横軸は残留酸素濃度で、縦軸は保磁力Hcである。磁気特性評価の結果、磁気異方性は3次元ランダムであった。図中の温度はアニール温度を示す。保磁力が1kOeを超えるものは、規則相の異方性エネルギーの値から規則化によるものと考えられる。実際、Hcが10kOe程度の試料をX線回折で調べたところ、L10規則相に特有のピークが観察され、規則化が進行していることが確認された。
【0122】
図6から明らかなように、量産性の確保が可能なアニール温度の上限である300℃でアニールした場合、残留酸素濃度が30原子%を超えると急激にHcが減少し、規則化が進行しなくなっていることが分かる。磁気記録媒体として有用な保磁力である3kOeは30原子%以下の残留酸素濃度のみで得られている。なお、10-4原子%(1at.ppm)未満ではHcの変化はほとんどなく、規則化に対する残留酸素濃度の影響はないものと思われる。残留酸素濃度は少なければ少ない程好ましいことが図6から示唆されるが、プロセスや装置に対する精密な制御が必用になり、磁気記録媒体のコスト増をもたらすので、作製する媒体の程度に応じて適宜に残留酸素濃度を選択することが好ましい。
【0123】
さらに、残留酸素量が1原子%以下の場合には、アニール温度が200℃でも3kOe以上のHcを達成できることが分かる。このことから、残留酸素量が1原子%以下とすると必用なアニール温度がより低下し、媒体製造装置の加熱部分のコストなどを下げることができることが分かる。すなわち、記録層の残留酸素濃度は1原子%以下とすることがより好ましい。なお、残留酸素量が1原子%以下の試料は、本発明のスパッタリングターゲットを用いた場合にのみ得られた結果である。
【0124】
同様の実験を(Fe,Co)x(Pt−Pd)100-xの各系について実施した。FePd合金膜、CoPt合金膜、CoPd合金膜の各結果を、それぞれ図7、図8、図9に示す。残留酸素濃度に対する依存性は全て同様であり、磁気異方性の違いに基づくHcの大きさのみが異なるという結果が得られた。このことは、残留酸素は材料、組成にかかわらず、規則相の形成に影響を及ぼすことを示している。
【0125】
また、合金膜中の残留酸素濃度を1原子%としたときのHcを、(FeaCo1-a)Pt合金膜、(FeaCo1-a)Pd合金膜、Fe(PtaPd1-a)合金膜、Co(PtaPd1-a)合金膜の各組成a(原子%)に対してプロットした図を図10に示す。同様に、合金膜中の残留酸素濃度を10-3原子%としたときのHcの変化を図11に示す。これらの図から明らかなように、残留酸素濃度を制御すればあるアニール温度に対するHcの値を制御でき、またFe−PtにおけるFeのサイトにCoを置換する、あるいはPtのサイトにPdを置換することによってもHcを制御することができる。どの方法でシステムが要求するHcを実現するかは、Hc以外の特性(残留磁化)や製造コストなどにより適宜選択することができる。
【0126】
実施例27
上記した実施例26と同様な磁気記録媒体を作製した。ただし、基板には2.5インチの結晶化ガラスディスク基板を用いた。記録層は膜厚10nmの(Fe55Pt45)B5合金膜とし、基板と記録層と間には膜厚10nmのPt下地層を形成した。この実施例においては、記録層の成膜前に基板(下地まで成膜したもの)を加熱チャンバ内で加熱した。加熱温度はビューポート越しに赤外線温度計で測定した。また、スパッタ圧力は10Paとした。X線回折装置(XRD)測定により、下地層は(200)配向していることを確認した。
【0127】
実施例26と同様に、スパッタ前の到達真空度、Arガス純度、ターゲットの純度などを変えることによって、残留酸素濃度を変化させたFePt合金膜を作製し、これらFePt合金膜のHcを調べた。磁気特性は全て垂直方向のHcが面内方向のHcより大きい、いわゆる垂直磁化膜となっていた。これは、高圧でスパッタしたために、スパッタされたFePt粒子の運動エネルギーが小さくなって、外乱の少ない状態で膜堆積が起こる、いわゆるナチュラル・スタッキングが実現したために、Pt下地上でエネルギー的に一番安定なL10規則相のc軸が基板に対して鉛直方向に成長したことによると思われる。
【0128】
Hcの残留酸素濃度依存性を図12に示す。図中の温度は成膜直前に行った基板加熱温度である。実施例26と同様に、基板加熱の上限である300℃加熱の場合には、残留酸素濃度が30原子%以下の条件で、磁気記録媒体として有用な3kOeの保磁力が得られることが分かる。また、1原子%以下の場合には150℃の加熱でも3kOeの保磁力が得られており、磁気記録媒体としてより好ましいことが分かる。
【0129】
また、上記した磁気記録媒体のPt下地層と基板との間に、さらにNiAlシード層(100nm)/Crシード層(30nm)を配置して、配向性や磁気特性を調べた。この多層シード層は、ガラス基板上での(200)配向をより良くする、具体的には(200)以外のピークの強度を最大でも(200)ピーク強度の10%以下とする効果を有することが確認された。この磁気記録媒体の保磁力自体は上記した媒体とそれほど変わらなかったが、Hcの面内成分は上記媒体の10%程度になっており、媒体ノイズが少ないより優れた垂直磁気記録媒体となった。
【0130】
さらに、微粒子化のためのシード層として、膜厚1nmのMgO膜を基板上に堆積し、その上に膜厚10nmのPt下地層を堆積したものを作製した。MgO膜の配向はXRDの分解能以下なので不明であるが、PtやFePtのXRDスペクトルから判断して、(200)配向していると推定された。この記録媒体の平面TEM像を見たところ、結晶粒径が5nmと微細なものができていた。これにより、高密度記録が可能なより優れた垂直磁気記録媒体となった。
【0131】
Pt下地層をPd、Al、Cr、Cu、Ir、Ag、Auに置き換えて、同様の実験を行った結果、保磁力の値がPtの場合よりも10〜20%程度小さくはなったが、300℃加熱、150℃加熱における保磁力の急峻な増加が見られる残留酸素濃度はそれぞれ30原子%、1原子%と同じであった。すなわち、規則化温度は下地の材料にかかわりなく、残留酸素濃度で制御できることが判明した。NiAlシード層(100nm)/Crシード層(30nm)の効果も同様に得られた。
【0132】
また、下地層構成をCoZrNbTa膜(100nm)/MgO膜(3nm)とした媒体を作製した。下地層のうち、CoZrNbTa膜はいわゆる軟磁性裏打ち層で、垂直磁気記録の記録磁界の効率を上げるためのものである。従って、本発明による磁気記録媒体がこの下地構成に制限されないことは言うまでもない。さらに、記録層に添加元素として、さらにモル比で3%のSiO2と10%のMgOを添加した。これらの添加成分によって、FePt合金などのfct相の磁性結晶粒子の磁気的分断が促進される。
【0133】
MgO下地はCoZrNbTa軟磁性下地層上でも(200)配向しやすい。このような媒体の場合には、XRDの分解能を超えているのでMgOの配向を確認できないが、FePt−SiO2−MgO膜のXRDスペクトルから判断して、(200)配向しているものと推定される。この場合においても、保磁力と残留酸素濃度との関係は図12とほとんど同様となった。すなわち、基板加熱の上限である300℃加熱の場合、残留酸素濃度が30原子%以下の条件で磁気記録媒体として有用な3kOeの保磁力が得られる。1原子%以下の場合には150℃の加熱でも3kOeの保磁力が得られ、より好ましいことが分かった。
【0134】
参考13
上記した実施例27と同様な磁気記録媒体を作製した。ただし、記録層にはBに代えてCuを10原子%添加した。EXAFSによる動径分布評価、およびUPS(紫外線光電子分光)とバンド計算との比較の2つの検討から、Cu原子はFeサイトに優先的に入ることが分かったため、Ptに対する(Fe−Cu)の組成を53原子%とした。また、Pt下地層形成時のプロセス条件を記録層のときと同様に変えることによって、Pt下地層中の残留酸素濃度を変化させた。このとき、記録層のプロセス条件は残留酸素濃度が10原子%となる条件を選んだ。アニール温度は300℃である。
【0135】
Pt下地層中の残留酸素濃度と保磁力の関係を図13に示す。下地層中の残留酸素濃度が30原子%を超えるとHcが急激に劣化して、磁気記録媒体として実用に供し得ないことが分かった。これは、前述したように下地からの残留酸素の流入によって、記録層界面に磁気特性の劣化した初期層ができたためと考えられる。同様の傾向は、添加元素をTa、Mo、Vとした場合でも確認された。
【0136】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の記録媒体用スパッタリングターゲットによれば、スパッタ成膜した磁性合金膜を規則化(L10規則相)する際のアニール温度を低下させることができ、その結果として高磁気異方性エネルギー密度(高Ku)や高保磁力(高Hc)などを有する規則相合金膜を再現性よく得ることが可能となる。また、本発明の磁気記録媒体は磁性合金膜を比較的低いアニール温度で規則化(L10規則相)することを可能にしているため、磁気異方性エネルギー密度Kuが大きいL10構造の規則相合金膜を記録層として用いた磁気記録媒体の実用性や量産性などを高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施形態による磁気記録媒体の構成を模式的に示す断面図である。
【図2】 図1に示す磁気記録媒体の変形例の構成を示す断面図である。
【図3】 図1に示す磁気記録媒体の他の変形例の構成を示す断面図である。
【図4】 本発明の実施例および比較例によるスパッタリングターゲッの使い始めから使い終わりまでの磁性合金膜の保磁力変化を示す図である。
【図5】 本発明の実施例で使用したスパッタリング装置の概略構成を示す図である。
【図6】 300℃および200℃でアニールした各FePt合金膜中の残留酸素濃度と保磁力との関係をそれぞれ示す図である。
【図7】 300℃でアニールしたFePd合金膜中の残留酸素濃度と保磁力との関係を示す図である。
【図8】 300℃でアニールしたCoPt合金膜中の残留酸素濃度と保磁力との関係を示す図である。
【図9】 300℃でアニールしたCoPd合金膜中の残留酸素濃度と保磁力との関係を示す図である。
【図10】 残留酸素濃度が1原子%の磁性合金膜の組成と残留酸素濃度との関係を示す図である。
【図11】 残留酸素濃度が10-3原子%の磁性合金膜の組成と残留酸素濃度との関係を示す図である。
【図12】 Pt下地層を適用したFePt合金膜の残留酸素濃度と保磁力との関係を示す図である。
【図13】 Pt下地層中の残留酸素濃度と記録層の保磁力との関係を示す図である。
【符号の説明】
1……支持基板,2……記録層(L10規則相合金膜),3……保護層,4……磁気記録媒体,5……下地層,6……シード層

Claims (7)

  1. 一般式:(Fe1-aCoax(Pt1-bPdb100-x
    (式中、a、bおよびxは0≦a≦1、0≦b≦1、30≦x≦65原子%を満足する数である)
    で表される組成を有する磁性合金の焼結体を具備する、L10構造の規則相を有する磁性合金膜の形成に用いられる記録媒体用スパッタリングターゲットであって、
    前記ターゲットの酸素含有量が500ppm以下であると共に、前記ターゲットの酸素、窒素、炭素、硫黄および水素の合計含有量が1000ppm以下であり、かつ79.9%以上の相対密度を有することを特徴とする記録媒体用スパッタリングターゲット。
  2. 請求項1記載の記録媒体用スパッタリングターゲットにおいて、
    前記磁性合金は、さらにCu、Au、Ag、Zn、Sn、Mn、Ni、Al、Ti、Hf、Ta、Mo、Nb、W、Cr、V、In、Re、Ru、Ir、Rh、Sm、Tb、Si、B、Si−O、Mg−O、Al−O、Zr−O、Ti−O、Si−N、Al−N、Zr−N、Ti−N、B−N、Si−O−N、Al−O−N、Al−Ti−O−C、およびIn−Sn−Oから選ばれる少なくとも1種の元素または化合物を0.1〜50原子%の範囲で含むことを特徴とする記録媒体用スパッタリングターゲット。
  3. 支持基板と、前記支持基板上に形成された記録層と、前記記録層を覆うように設けられた保護層とを具備する磁気記録媒体において、
    前記記録層は、
    一般式:(Fe1-aCoax(Pt1-bPdb100-x
    (式中、a、bおよびxは0≦a≦1、0≦b≦1、30≦x≦65原子%を満足する数である)
    で表される組成を有すると共に、L10構造の規則相を有する磁性合金からなり、かつ前記記録層中の残留酸素量が1原子%以下であることを特徴とする磁気記録媒体。
  4. 請求項3記載の磁気記録媒体において、
    さらに、前記支持基板と前記記録層との間に設けられた1層以上の下地層を具備し、かつ前記下地層は前記記録層と接する非磁性体層を有することを特徴とする磁気記録媒体。
  5. 請求項4記載の磁気記録媒体において、
    前記非磁性体層は、Pt、Pd、Al、Cr、Cu、Ir、Ag、Au、およびMgOから選ばれる少なくとも1種を主成分として含有すると共に、(200)配向していることを特徴とする磁気記録媒体。
  6. 請求項4または請求項5記載の磁気記録媒体において、
    さらに、前記支持基板と前記下地層との間に設けられたシード層を具備することを特徴とする磁気記録媒体。
  7. 請求項4ないし請求項6のいずれか1項記載の磁気記録媒体において、
    前記下地層中の残留酸素量が30原子%以下であることを特徴とする磁気記録媒体。
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