JP5590322B2 - 磁気記録媒体膜形成用スパッタリングターゲットおよびその製造方法 - Google Patents
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Description
すなわち、従来、FePt−C膜を得るために、FePtのスパッタリングターゲットとCのスパッタリングターゲットとによるコスパッタを行っているため、二種類のスパッタリングターゲットを用意する必要があると共に、CのスパッタリングターゲットからC粉のパーティクルが発生して異常放電の原因になってしまう不都合があった。
この磁気記録媒体膜形成用スパッタリングターゲットでは、FePt合金相中にC相が分散している組織を有した焼結体からなるので、CとFePtとが一体となっており、C単体のターゲットを用いる場合に比べて、Cのパーティクルが発生し難くなることで、スパッタリング時の異常放電の発生を抑制することができる。また、微細なC相がFePt合金相中に分散していることで、高密度の焼結体が得られる。
すなわち、この磁気記録媒体膜形成用スパッタリングターゲットでは、FePtの規則相と純C相との二相から成る組織を有し、Fe3C相等の軟磁性相を含まないので、高いPTF(Pass Through Flux:透過磁束密度)が得られる。
すなわち、この磁気記録媒体膜形成用スパッタリングターゲットでは、純C相が、主としてグラファイトで構成されており、図1に示すように、XRDにおいてFePt規則相のピークおよびグラファイト相のピークのみが観察されるので、熱伝導性に優れており、熱応力歪によるパーティクルの発生が抑えられる。
すなわち、この磁気記録媒体膜形成用スパッタリングターゲットの製造方法では、FePt合金粉と、Pt粉と、アセチレンガスの熱分解により生成されたカーボンブラック粉(いわゆるアセチレンブラック)と、の混合粉末を、真空または不活性ガス雰囲気中でホットプレスするので、微細なアセチレンブラックによって形成された微細な純C相がFePt規則相中に高い分散状態で分布すると共に高密度な組織が得られる。
すなわち、本発明に係る磁気記録媒体膜形成用スパッタリングターゲットによれば、FePt合金相中にC相が分散している組織を有した焼結体からなるので、C単体のターゲットを用いる場合に比べて、Cのパーティクルが発生し難く異常放電の発生を抑制することができると共に、高密度の焼結体が得られる。
したがって、本発明の磁気記録媒体膜形成用スパッタリングターゲットを用いてスパッタリングにより磁気記録媒体膜を成膜することで、高い生産性をもってHDD用の高密度磁気記録媒体に適用される磁気記録膜、特に垂直磁気記録用または熱アシスト磁気記録用に適用される良好な磁気記録膜を得ることができる。
このスパッタリングターゲットは、一般式:(FexPt(100−x))100−y(C)y、ここで 30≦x≦70、5≦y≦70(単位:at%)で表される組成を有する焼結体からなるターゲットである。すなわち、Cの含有量が、5〜70at%に設定される。Feが上記の組成範囲から外れると、高い異方性磁界を持つFePt規則相が磁気記録膜に十分に形成されない可能性がある。また、Cが5at%未満では、磁気記録膜の微細組織化が不十分となるおそれがあり、70at%を超えると、ターゲットの密度が不足してパーティクルが発生しやすくなる可能性がある。
上記FePt合金粉は、Fe:80〜95at%を含有するFePt合金粉であり、平均粒径が10〜30μmのものを用いることが好ましい。また上記Pt粉は、平均粒径が1〜5μmのものを用い、さらに前記カーボンブラック粉は、平均粒径が0.02〜0.10μmのものを用いるとよい。
Pt粉については市販のものを用いればよく、例えばPt粉については純度が3N〜4Nで平均粒径1〜5μmの粉末を用意すればよい。
カーボンブラック粉は、アセチレンガスを原料として燃焼と熱分解とを周期的に繰り返すことによりアセチレンガスの熱分解により生成された、いわゆるアセチレンブラックを使用する。このカーボンブラック粉としては、例えば平均粒径35nm、比表面積(BET値)70m2/gの粉末を用いる。
こうして得られた焼結体を、バッキングプレートに接合してターゲットとする。
また、FePtの規則相と純C相との二相から成る組織を有し、Fe3C相等の軟磁性相を含まないので、高いPTFが得られる。
分析用のターゲットの密度をアルキメデス法にて測定した結果、密度比が98.9%であり、高い密度が得られている。また、このターゲットについてPTFを測定した結果、71.4%(7mm厚換算)であり、充分なPTFが得られている。
同様に作成した組成が(Fe50Pt50)39.6C60.4であり、Cが50vol.%(体積%)含まれているターゲットは、密度比が93.2%であり、高い密度が得られている。また、このターゲットについてPTFを測定した結果、82.0%(7mm厚換算)であり、充分なPTFが得られている。
上記PTFの測定は、ASTMF2086−01に基づいて実施した。図2に、PTFの測定装置の概略図を示す。この測定装置は、非磁性体の材質(例えば、アルミニウム)で形成されターゲットTを載置するテーブル1と、その下に配置する磁石を固定するための固定治具2と、ホールプローブ3をターゲットTの上方に保持し、かつ上下方向あるいは支柱を中心とした円弧方向に移動させることのできる支柱4と、から構成されている。なお、磁束を発生させるための磁石5には、馬蹄形磁石(Dexter社製アルニコ磁石5K215)を用いた。
なお、EPMAによる元素分布像は、本来カラー像であるが、白黒像に変換して記載しているため、濃淡の淡い部分(比較的白い部分)が所定元素の濃度が高い部分となっている。
これらの画像から、FePt合金相中に微細なC相が均一に分散していることがわかる。
したがって、これら分析結果から本実施例のターゲットが、FePtの規則相と純C相との二相から成る組織を有し、純C相が主としてグラファイトから成ることがわかる。
なお、XRDの測定条件は次のとおりである。
装置:理学電気社製(RINT−ULTIMA III)
管球:Cu
管電圧:40kV
管電流:40mA
走査範囲(2θ):5°〜90°
測定ステップ幅(2θ):0.01°
スキャンスピード(2θ):毎分1°
Claims (3)
- FePt合金相中にC相が分散していると共に、FePtの規則相と純C相との二相から成る組織を有し、
一般式:(Fe x Pt (100−x) ) 100−y (C) y 、ここで 30≦x≦70、5≦y≦70(単位:at%)で表される組成を有する焼結体からなることを特徴とする磁気記録媒体膜形成用スパッタリングターゲット。 - 請求項1に記載の磁気記録媒体膜形成用スパッタリングターゲットにおいて、
前記純C相が、主としてグラファイトで構成されており、X線回折においてFePt規則相のピークおよびグラファイト相のピークのみが観察されることを特徴とする磁気記録媒体膜形成用スパッタリングターゲット。 - 請求項1又は2に記載の磁気記録媒体膜形成用スパッタリングターゲットを製造する方法であって、
FePt合金粉と、Pt粉と、アセチレンガスの熱分解により生成されたカーボンブラック粉と、の混合粉末を、真空または不活性ガス雰囲気中でホットプレスする工程を有し、
前記ホットプレスを1200〜1600℃の範囲で行うことを特徴とする磁気記録媒体膜形成用スパッタリングターゲットの製造方法。
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