JP2007291489A - 面内方向比透磁率の低い垂直磁気記録媒体膜形成用スパッタリングターゲットの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】面内方向比透磁率の低い垂直磁気記録媒体膜形成用スパッタリングターゲットの製造方法を提供する。
【解決手段】非磁性酸化物:4〜15モル%、Cr:3〜20モル%、Pt:5〜30モル%を含有し、残部:Coおよび不可避不純物からなる成分組成を有する板状焼結体を、温度:450℃以下に保持しながら圧下率:2〜10%で板状焼結体の厚さ方向に圧縮加工する面内方向比透磁率の低い垂直磁気記録媒体膜形成用スパッタリングターゲットの製造方法。
【選択図】 なし
【解決手段】非磁性酸化物:4〜15モル%、Cr:3〜20モル%、Pt:5〜30モル%を含有し、残部:Coおよび不可避不純物からなる成分組成を有する板状焼結体を、温度:450℃以下に保持しながら圧下率:2〜10%で板状焼結体の厚さ方向に圧縮加工する面内方向比透磁率の低い垂直磁気記録媒体膜形成用スパッタリングターゲットの製造方法。
【選択図】 なし
Description
この発明は、ハードディスクの高密度磁気記録媒体に適用される磁気記録膜、特に垂直磁気記録媒体に適用される磁気記録膜を形成するための面内比透磁率の低い垂直磁気記録媒体膜形成用スパッタリングターゲットの製造方法に関するものである。
ハードディスク装置は一般にコンピューターやデジタル家電等の外部記録装置として用いられており、記録密度の一層の向上が求められている。そのため、近年、超高密度の記録を実現できる垂直磁気記録方式が注目されてきた。この垂直磁気記録方式は、従来の面内記録方式と異なり、原理的に高密度化するほど記録磁化が安定すると言われており、実用化に向けて開発が進められている。この垂直磁気記録方式のハードディスク媒体の記録層に適用する材料の有力な候補としてCoCrPt−SiO2グラニュラ磁気記録膜が提案されており、このCoCrPt−SiO2グラニュラ磁気記録膜はCrおよびPtを含むCo基焼結合金相と二酸化珪素相の混合相を有するスパッタリングターゲットを用いてマグネトロンスパッタ法により作製することが知られている(非特許文献1参照)。
このスパッタリングターゲットは、通常、二酸化珪素粉末、Cr粉末、Pt粉末およびCo粉末を、二酸化珪素:2〜15モル%、Cr:3〜20モル%、Pt:5〜30モル%を含有し、残部:Coからなる組成となるように配合し混合したのち、真空ホットプレスまたは熱間静水圧プレスすることにより作製されることが知られており、その他に市販のCrおよびPtを含むCo基合金粉末または急冷凝固して作製したCrおよびPtを含むCo基合金粉末と二酸化珪素粉末を二酸化珪素:2〜15モル%、Cr:3〜20モル%、Pt:5〜30モル%を含有し、残部:Coからなる組成となるように配合し混合したのち、真空ホットプレスまたは熱間静水圧プレスすることにより作製されることが知られている。(特許文献1、特許文献2などを参照)。
さらに、前記SiO2のほかにTiO、Cr2O3、TiO2、Ta2O5、Al2O3、BeO2、MgO、ThO2、ZrO2、CeO2、Y2O3などの非磁性酸化物が使用できることが知られている(特許文献3、4参照)。
「富士時報」Vol.75No.3 2002(169〜172ページ) 特開2001‐236643号公報
特開2004‐339586号公報
特開2003‐36525号公報
特開2006‐24346号公報
このスパッタリングターゲットは、通常、二酸化珪素粉末、Cr粉末、Pt粉末およびCo粉末を、二酸化珪素:2〜15モル%、Cr:3〜20モル%、Pt:5〜30モル%を含有し、残部:Coからなる組成となるように配合し混合したのち、真空ホットプレスまたは熱間静水圧プレスすることにより作製されることが知られており、その他に市販のCrおよびPtを含むCo基合金粉末または急冷凝固して作製したCrおよびPtを含むCo基合金粉末と二酸化珪素粉末を二酸化珪素:2〜15モル%、Cr:3〜20モル%、Pt:5〜30モル%を含有し、残部:Coからなる組成となるように配合し混合したのち、真空ホットプレスまたは熱間静水圧プレスすることにより作製されることが知られている。(特許文献1、特許文献2などを参照)。
さらに、前記SiO2のほかにTiO、Cr2O3、TiO2、Ta2O5、Al2O3、BeO2、MgO、ThO2、ZrO2、CeO2、Y2O3などの非磁性酸化物が使用できることが知られている(特許文献3、4参照)。
「富士時報」Vol.75No.3 2002(169〜172ページ)
しかし、この磁気記録媒体膜形成用スパッタリングターゲットは、強磁性合金であるCrおよびPtを含むCo基合金を主体として構成されているために、非磁性体ターゲットと比較して磁束がターゲット内部を通過する割合が大きく、ターゲット上空に漏れ出る磁束が極めて少ない。このことはターゲット下部に磁気回路を配置し、ターゲット上空に漏れ出る磁束を利用して希ガスの電離効率を高めることで放電を安定化させ、成膜速度を向上させているマグネトロンスパッタリング法にとっては大きな問題となる。すなわち、ターゲット上空に漏れ出る磁束が少ない漏洩磁束密度の低いターゲットを用いてマグネトロンスパッタリングを行なうと、放電が安定しないあるいは放電できても成膜速度が極端に遅くなるなどの問題を引き起こすからである。
この問題点を解消するための手段の一つとして、ターゲットの厚さを薄くして磁束をターゲット上空へ抜けやすくする方法が取られている。しかし、ターゲットを薄くすると、ターゲットの交換頻度が頻繁になるので成膜効率が悪くなり、コスト的に好ましくない。
また、漏洩磁束密度の低いターゲットは、一旦マグネトロンスパッタリングを行ってエロージョンが形成されると、エロージョン部分から磁束が集中的に漏洩し、その部分だけがますます集中的にスパッタされていくためにターゲットの利用効率が低下したり、成膜速度が経時変化したり、基板面内に膜厚のばらつきが生じたり、さらにターゲット上への再デポ膜の大量付着が生じるなどといった問題を引き起こしやすい。
この問題点を解消するための手段の一つとして、ターゲットの厚さを薄くして磁束をターゲット上空へ抜けやすくする方法が取られている。しかし、ターゲットを薄くすると、ターゲットの交換頻度が頻繁になるので成膜効率が悪くなり、コスト的に好ましくない。
また、漏洩磁束密度の低いターゲットは、一旦マグネトロンスパッタリングを行ってエロージョンが形成されると、エロージョン部分から磁束が集中的に漏洩し、その部分だけがますます集中的にスパッタされていくためにターゲットの利用効率が低下したり、成膜速度が経時変化したり、基板面内に膜厚のばらつきが生じたり、さらにターゲット上への再デポ膜の大量付着が生じるなどといった問題を引き起こしやすい。
そこで、本発明者らは、ターゲットの厚さを薄くすることなくマグネトロンスパッタリングを行うことができるスパッタリングターゲットを得るべく研究を行なった結果、
(a)磁束は比透磁率の大きな方向に通りやすく小さな方向に通りにくいため、ターゲットの面内方向の比透磁率を小さくすることにより磁束はターゲットの上空に抜けやすくなる、
(b)この面内方向の比透磁率を小さいターゲットは、二酸化珪素、酸化タンタル、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化トリウム、酸化ジルコニウム、酸化セリウムおよび酸化イットリウムなどの非磁性酸化物:2〜15モル%、Cr:3〜20モル%、Pt:5〜30モル%を含有し、残部:Coからなる組成を有する板状焼結体を温度:450℃以下に保持しながら圧下率:2〜20%で厚さ方向に圧縮加工することにより作製できる、などの知見を得たのである。
(a)磁束は比透磁率の大きな方向に通りやすく小さな方向に通りにくいため、ターゲットの面内方向の比透磁率を小さくすることにより磁束はターゲットの上空に抜けやすくなる、
(b)この面内方向の比透磁率を小さいターゲットは、二酸化珪素、酸化タンタル、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化トリウム、酸化ジルコニウム、酸化セリウムおよび酸化イットリウムなどの非磁性酸化物:2〜15モル%、Cr:3〜20モル%、Pt:5〜30モル%を含有し、残部:Coからなる組成を有する板状焼結体を温度:450℃以下に保持しながら圧下率:2〜20%で厚さ方向に圧縮加工することにより作製できる、などの知見を得たのである。
この発明は、かかる知見に基づいてなされたものであって、
(1)非磁性酸化物2〜15モル%、Cr:3〜20モル%、Pt:5〜30モル%を含有し、残部:Coおよび不可避不純物からなる成分組成を有する板状焼結体を、温度:450℃以下に保持しながら板状焼結体の厚さ方向に圧縮加工する面内方向比透磁率の低い垂直磁気記録媒体膜形成用スパッタリングターゲットの製造方法、
(2)前記非磁性酸化物は、二酸化珪素、酸化タンタル、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化トリウム、酸化ジルコニウム、酸化セリウムおよび酸化イットリウムのうちのいずれかである前記(1)記載の面内方向比透磁率の低い垂直磁気記録媒体膜形成用スパッタリングターゲットの製造方法、
(3)前記圧縮加工は、圧下率:2〜20%の範囲内の圧縮加工である前記(1)または(2)記載の面内方向比透磁率の低い垂直磁気記録媒体膜形成用スパッタリングターゲットの製造方法、に特徴を有するものである。
(1)非磁性酸化物2〜15モル%、Cr:3〜20モル%、Pt:5〜30モル%を含有し、残部:Coおよび不可避不純物からなる成分組成を有する板状焼結体を、温度:450℃以下に保持しながら板状焼結体の厚さ方向に圧縮加工する面内方向比透磁率の低い垂直磁気記録媒体膜形成用スパッタリングターゲットの製造方法、
(2)前記非磁性酸化物は、二酸化珪素、酸化タンタル、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化トリウム、酸化ジルコニウム、酸化セリウムおよび酸化イットリウムのうちのいずれかである前記(1)記載の面内方向比透磁率の低い垂直磁気記録媒体膜形成用スパッタリングターゲットの製造方法、
(3)前記圧縮加工は、圧下率:2〜20%の範囲内の圧縮加工である前記(1)または(2)記載の面内方向比透磁率の低い垂直磁気記録媒体膜形成用スパッタリングターゲットの製造方法、に特徴を有するものである。
なお、この発明の面内方向比透磁率の低い垂直磁気記録媒体膜形成用スパッタリングターゲットの製造方法における「圧下率」は、元の板状焼結体の厚みをh1、すべての圧縮加工工程を終了した時点での厚みをh2とした時、(h1−h2)/h1×100(%)で定義される。
前記圧縮加工により面内方向の比透磁率が低下する理由は現時点では明確ではないが、以下のような二つの原因が推測される。第一に磁性体合金を圧縮加工すると内部の転位密度が上昇し、転位により磁壁の移動および磁化の回転が妨げられるため、磁化されにくくなり、比透磁率が低下する。第二に通常の粉末焼結によるCoCrPt合金は高温相であるfcc構造が室温まで冷却しても完全には変態せず、低温相であるhcp構造との混合状態となりやすいが、低温で圧縮加工を行なうことにより、残留しているfcc相の一部が歪み誘起マルテンサイト変態を生じてhcp相に変化し、ターゲット中のhcp相の占める割合が増加する。hcp相はfcc相よりも磁気異方性が大きく、低温で板厚方向に圧縮加工すると、磁化容易方向であるc軸方向がターゲット面に垂直に配向する傾向がある。これにより面内方向には磁化されにくい非c軸方向で占められることとなる。すなわち磁気異方性の小さいfcc相が減少して磁気異方性の大きいhcp相が増加し、なおかつhcp相は面内方向に磁化されにくい方向を示すのであるから、面内方向比透磁率は小さくなる。
前記圧縮加工により面内方向の比透磁率が低下する理由は現時点では明確ではないが、以下のような二つの原因が推測される。第一に磁性体合金を圧縮加工すると内部の転位密度が上昇し、転位により磁壁の移動および磁化の回転が妨げられるため、磁化されにくくなり、比透磁率が低下する。第二に通常の粉末焼結によるCoCrPt合金は高温相であるfcc構造が室温まで冷却しても完全には変態せず、低温相であるhcp構造との混合状態となりやすいが、低温で圧縮加工を行なうことにより、残留しているfcc相の一部が歪み誘起マルテンサイト変態を生じてhcp相に変化し、ターゲット中のhcp相の占める割合が増加する。hcp相はfcc相よりも磁気異方性が大きく、低温で板厚方向に圧縮加工すると、磁化容易方向であるc軸方向がターゲット面に垂直に配向する傾向がある。これにより面内方向には磁化されにくい非c軸方向で占められることとなる。すなわち磁気異方性の小さいfcc相が減少して磁気異方性の大きいhcp相が増加し、なおかつhcp相は面内方向に磁化されにくい方向を示すのであるから、面内方向比透磁率は小さくなる。
この発明の面内方向比透磁率の低い垂直磁気記録媒体膜形成用スパッタリングターゲットの製造方法において板状焼結体の圧下率を2〜20%に限定した理由は、圧下率が2%未満では面内方向の比透磁率が十分に小さなターゲットが得られないので好ましくなく、一方、圧下率が20%を越えると圧縮加工中に割れが生じるので好ましくないことによるものである。圧下率の一層好ましい範囲は4〜10%である。なお、この発明で行なう圧縮加工は圧延加工、鍛造加工、プレス加工など板状焼結体の厚さ方向に一方向圧縮できる加工方法であればいかなる塑性加工方法であっても良い。
また、前記非磁性酸化物:2〜15モル%、Cr:3〜20モル%、Pt:5〜30モル%を含有し、残部:Coおよび不可避不純物からなる成分組成を有する板状焼結体を450℃以下で圧縮加工を行なう理由は、450℃を越える温度ではhcp結晶構造がfcc結晶構造へと相転移してしまったり、圧延しても歪が緩和されて比透磁率が低下しなかったりするので好ましくないからである。より好ましくは400℃以下である。
また、前記非磁性酸化物:2〜15モル%、Cr:3〜20モル%、Pt:5〜30モル%を含有し、残部:Coおよび不可避不純物からなる成分組成を有する板状焼結体を450℃以下で圧縮加工を行なう理由は、450℃を越える温度ではhcp結晶構造がfcc結晶構造へと相転移してしまったり、圧延しても歪が緩和されて比透磁率が低下しなかったりするので好ましくないからである。より好ましくは400℃以下である。
この発明の面内方向比透磁率の低い垂直磁気記録媒体膜形成用スパッタリングターゲットの製造方法で使用する前記板状焼結体は、
非磁性酸化物粉末:2〜15モル%、Cr粉末:3〜20モル%、Pt粉末:5〜30モル%を含有し、残部:Co粉末からなる組成となるように配合し混合したのち加圧焼結する方法、
Co,Cr,Ptのいずれか2種以上を任意の組成で含む合金粉末と非磁性酸化物粉末を、非磁性酸化物:2〜15モル%、Cr:3〜20モル%、Pt:5〜30モル%を含有し、残部:Coからなる組成となるように配合し混合したのち加圧焼結する方法、または
Co,Cr,Ptのいずれか2種以上を任意の組成で含む合金粉末、非磁性酸化物粉末およびCr粉末、Pt粉末、Co粉末の内の1種または2種以上を非磁性酸化物:2〜15モル%、Cr:3〜20モル%、Pt:5〜30モル%を含有し、残部:Coからなる組成となるように配合し混合したのち加圧焼結する方法、
などの方法で作製することができる。前記加圧焼結は、具体的には真空ホットプレス、熱間静水圧プレスなどである。
なお、この発明の方法において使用する板状焼結体の成分組成は垂直磁気記録媒体膜形成用スパッタリングターゲットの成分組成としてすでに知られている成分組成であるのでその限定理由の説明は省略する。この発明の方法により作製した垂直磁気記録媒体膜形成用スパッタリングターゲットは、面内方向最大透比磁率:50以下となる。
非磁性酸化物粉末:2〜15モル%、Cr粉末:3〜20モル%、Pt粉末:5〜30モル%を含有し、残部:Co粉末からなる組成となるように配合し混合したのち加圧焼結する方法、
Co,Cr,Ptのいずれか2種以上を任意の組成で含む合金粉末と非磁性酸化物粉末を、非磁性酸化物:2〜15モル%、Cr:3〜20モル%、Pt:5〜30モル%を含有し、残部:Coからなる組成となるように配合し混合したのち加圧焼結する方法、または
Co,Cr,Ptのいずれか2種以上を任意の組成で含む合金粉末、非磁性酸化物粉末およびCr粉末、Pt粉末、Co粉末の内の1種または2種以上を非磁性酸化物:2〜15モル%、Cr:3〜20モル%、Pt:5〜30モル%を含有し、残部:Coからなる組成となるように配合し混合したのち加圧焼結する方法、
などの方法で作製することができる。前記加圧焼結は、具体的には真空ホットプレス、熱間静水圧プレスなどである。
なお、この発明の方法において使用する板状焼結体の成分組成は垂直磁気記録媒体膜形成用スパッタリングターゲットの成分組成としてすでに知られている成分組成であるのでその限定理由の説明は省略する。この発明の方法により作製した垂直磁気記録媒体膜形成用スパッタリングターゲットは、面内方向最大透比磁率:50以下となる。
この発明の方法によると、マグネトロンスパッタリングを効率よく行なうことができる面内方向比透磁率の低い優れた磁気記録膜を形成することができるスパッタリングターゲットを提供することができ、コンピューター並びにデジタル家電等の産業の発展に大いに貢献し得るものである。
原料粉末として、市販の50%粒径:10μmのCo粉末、50%粒径:15μmのPt粉末、50%粒径:10μmのCr粉末、いずれも50%粒径:3μmのSiO2粉末、TiO2、Ta2O5粉末およびAl2O3を用意した。
実施例1
これら原料粉末をモル%でCr:10.8%、Pt:15.3%、SiO2:10.0%を含有し、残部がCoおよび不可避不純物からなる成分組成となるように配合し、得られた配合粉末を粉砕媒体となるジルコニアボールと共に10リットルの容器に投入し、この容器内の雰囲気をArガス雰囲気中で置換し、その後、容器を密閉した。この容器をボールミルで16時間回転させ、混合粉末を作製した。得られた混合粉末を真空ホットプレス装置に充填し、真空雰囲気中、温度:1200℃、圧力:15MPa、3時間保持の条件で真空ホットプレスすることにより板状ホットプレス体を作製した。
これら原料粉末をモル%でCr:10.8%、Pt:15.3%、SiO2:10.0%を含有し、残部がCoおよび不可避不純物からなる成分組成となるように配合し、得られた配合粉末を粉砕媒体となるジルコニアボールと共に10リットルの容器に投入し、この容器内の雰囲気をArガス雰囲気中で置換し、その後、容器を密閉した。この容器をボールミルで16時間回転させ、混合粉末を作製した。得られた混合粉末を真空ホットプレス装置に充填し、真空雰囲気中、温度:1200℃、圧力:15MPa、3時間保持の条件で真空ホットプレスすることにより板状ホットプレス体を作製した。
この板状ホットプレス体を切削加工により厚さ:6.5mmの板にしたのち、表1に示される温度で表1に示される圧下率となるように圧延加工を実施した。圧延の際には均一な圧延を加えるために一定のロール間隔での圧延を一方向で行なった後、同じロール間隔において元の方向から90度、180度、270度回転させて計4回の圧延を行ない、かかる4方向のクロス圧延を実施し、その後、ロール間隔を狭めながらこれを繰り返すことで目的の圧下率を得るようにした。このようにして得られた圧延板を切削加工することによりいずれも直径:152.4mm、厚さ:5mmの寸法を有するターゲットを作製し本発明法1〜8および比較法1〜3を実施した。さらに圧延加工することなく切削加工することにより直径:152.4mm、厚さ:5mmの寸法を有するターゲットを作製し従来法1を実施した。
本発明法1〜8、比較法1〜3および従来法1により得られたターゲットについて下記の方法により面内方向最大比透磁率およびターゲット上空に漏れ出る漏洩磁束密度を測定し、その結果を表1に示した。
(イ)面内方向最大比透磁率の測定:
本発明法1〜8、比較法1〜3および従来法1により得られたターゲットから一辺5mmの立方体試料を切り出した。この立方体試料について市販の直流磁化測定装置にて面内方向に最大4×105A/mの直流磁場を印加し、磁化・磁場曲線(M−H曲線)を描画し、その初期磁化曲線に対して原点から接線を引き、その傾きを求め、傾き+1により面内方向の最大比透磁率を求め、その結果を表1に示した。
本発明法1〜8、比較法1〜3および従来法1により得られたターゲットから一辺5mmの立方体試料を切り出した。この立方体試料について市販の直流磁化測定装置にて面内方向に最大4×105A/mの直流磁場を印加し、磁化・磁場曲線(M−H曲線)を描画し、その初期磁化曲線に対して原点から接線を引き、その傾きを求め、傾き+1により面内方向の最大比透磁率を求め、その結果を表1に示した。
(ロ)漏洩磁束密度の測定:
漏洩磁束密度の測定はASTM F2086−01に基づき実施した。測定治具は、非磁性体の材質(例えば、アルミニウム)からなり、図1に示されるようにターゲットを載せるテーブルと、その下に配置する磁石を固定するための固定治具、ホールプローブをターゲット上空に保持しかつ上下方向あるいは支柱を中心とした円弧方向に移動させることのできる支柱から構成されている。磁束を発生させるための磁石には馬蹄形磁石(Dexter社製アルニコ磁石5K215)を用いた。測定手順としては、まず測定治具に磁石とホールプローブを取り付けて固定し、ホールプローブにガウスメーターを接続した。ターゲットを載せずにテーブルにホールプローブを若干円弧方向に左右に振りながらターゲットに水平な磁束密度を測定し、磁束密度が最大となるところでホールプローブを固定した。この位置で測定されたテーブル面に水平な方向の磁束密度をASTMで定義されているSource Fieldとし、これが90±5mTの範囲にあることを確認した。
つぎに、ホールプローブの先端を測定するターゲットの厚み+0.5mmの高さまで上昇させ、ホールプローブを若干円弧方向に左右に振りながらテーブル面に水平な方向の磁束密度を測定し、磁束密度が最大となるところでホールプローブを固定した。この位置で測定された磁場をASTMで定義されるReferennce fieldとして記録した。
一方、十分に脱磁された(ターゲット表面にてターゲットに垂直な方向の残留磁束密度が0.3mT以下になるように脱磁された)ターゲットをテーブルの上に載せた。この際ホールプロ−ブの位置は上記のまま固定し、ターゲットをその下から滑り込ませた。ターゲット表面の中心と、ターゲット表面のホールプローブ直下の点の間の距離は43.7±2mmになるようにターゲットを配置した。次に均一に磁化されるようにターゲットを反時計回りに5回転させた。回転後に測定されるテーブル面に水平な方向の磁束密度を記録し、これを0度の位置での磁束密度とした。さらにターゲットを中心位置に移動せずに反時計回りに30度、60度、90度、120度回転した位置での磁束密度を記録した。
これらの値をReferennce fieldの値で割って100を掛けた値について5点の平均をとり、その5点平均値をそのターゲットの漏洩磁束密度(%)として表1に示した。
漏洩磁束密度の測定はASTM F2086−01に基づき実施した。測定治具は、非磁性体の材質(例えば、アルミニウム)からなり、図1に示されるようにターゲットを載せるテーブルと、その下に配置する磁石を固定するための固定治具、ホールプローブをターゲット上空に保持しかつ上下方向あるいは支柱を中心とした円弧方向に移動させることのできる支柱から構成されている。磁束を発生させるための磁石には馬蹄形磁石(Dexter社製アルニコ磁石5K215)を用いた。測定手順としては、まず測定治具に磁石とホールプローブを取り付けて固定し、ホールプローブにガウスメーターを接続した。ターゲットを載せずにテーブルにホールプローブを若干円弧方向に左右に振りながらターゲットに水平な磁束密度を測定し、磁束密度が最大となるところでホールプローブを固定した。この位置で測定されたテーブル面に水平な方向の磁束密度をASTMで定義されているSource Fieldとし、これが90±5mTの範囲にあることを確認した。
つぎに、ホールプローブの先端を測定するターゲットの厚み+0.5mmの高さまで上昇させ、ホールプローブを若干円弧方向に左右に振りながらテーブル面に水平な方向の磁束密度を測定し、磁束密度が最大となるところでホールプローブを固定した。この位置で測定された磁場をASTMで定義されるReferennce fieldとして記録した。
一方、十分に脱磁された(ターゲット表面にてターゲットに垂直な方向の残留磁束密度が0.3mT以下になるように脱磁された)ターゲットをテーブルの上に載せた。この際ホールプロ−ブの位置は上記のまま固定し、ターゲットをその下から滑り込ませた。ターゲット表面の中心と、ターゲット表面のホールプローブ直下の点の間の距離は43.7±2mmになるようにターゲットを配置した。次に均一に磁化されるようにターゲットを反時計回りに5回転させた。回転後に測定されるテーブル面に水平な方向の磁束密度を記録し、これを0度の位置での磁束密度とした。さらにターゲットを中心位置に移動せずに反時計回りに30度、60度、90度、120度回転した位置での磁束密度を記録した。
これらの値をReferennce fieldの値で割って100を掛けた値について5点の平均をとり、その5点平均値をそのターゲットの漏洩磁束密度(%)として表1に示した。
表1に示される結果から、本発明法1〜8により得られたターゲットは従来法1により得られたターゲットに比べて、面内方向の最大比透磁率にくらべて格段に低く、したがって漏洩磁束密度が大きいことが分かる。しかし、この発明の範囲から外れた条件の比較法1〜3で作製したターゲットは特性が低下したりまたは圧縮加工中に割れが発生するなどして好ましくないことが分かる。
実施例2
先に用意した原料粉末をモル%でCr:9.9%、Pt:13.5%、TiO2:10.0%を含有し、残部がCoおよび不可避不純物からなる成分組成となるように配合し、得られた配合粉末を粉砕媒体となるジルコニアボールと共に10リットルの容器に投入し、この容器内の雰囲気をArガス雰囲気中で置換し、その後、容器を密閉した。この容器をボールミルで16時間回転させ、混合粉末を作製した。得られた混合粉末を真空ホットプレス装置に充填し、真空雰囲気中、温度:1200℃、圧力:15MPa、3時間保持の条件で真空ホットプレスすることにより板状ホットプレス体を作製した。
先に用意した原料粉末をモル%でCr:9.9%、Pt:13.5%、TiO2:10.0%を含有し、残部がCoおよび不可避不純物からなる成分組成となるように配合し、得られた配合粉末を粉砕媒体となるジルコニアボールと共に10リットルの容器に投入し、この容器内の雰囲気をArガス雰囲気中で置換し、その後、容器を密閉した。この容器をボールミルで16時間回転させ、混合粉末を作製した。得られた混合粉末を真空ホットプレス装置に充填し、真空雰囲気中、温度:1200℃、圧力:15MPa、3時間保持の条件で真空ホットプレスすることにより板状ホットプレス体を作製した。
この板状ホットプレス体を切削加工により厚さ:6.5mmの板にしたのち、表2に示される温度で表2に示される圧下率となるように圧延加工を実施した。圧延の際には均一な圧延を加えるために一定のロール間隔での圧延を一方向で行なった後、同じロール間隔において元の方向から90度、180度、270度回転させて計4回の圧延を行ない、かかる4方向のクロス圧延を実施し、その後、ロール間隔を狭めながらこれを繰り返すことで目的の圧下率を得るようにした。このようにして得られた圧延板を切削加工することによりいずれも直径:152.4mm、厚さ:5mmの寸法を有するターゲットを作製し本発明法9〜16および比較法4〜6を実施した。さらに圧延加工することなく切削加工することにより直径:152.4mm、厚さ:5mmの寸法を有するターゲットを作製し従来法2を実施した。
本発明法9〜16、比較法4〜6および従来法2により得られたターゲットについて実施例1と同様にして面内方向最大比透磁率およびターゲット上空に漏れ出る漏洩磁束密度を測定し、その結果を表2に示した。
表2に示される結果から、本発明法9〜16により得られたターゲットは従来法2により得られたターゲットに比べて、面内方向の最大比透磁率にくらべて格段に低く、したがって漏洩磁束密度が大きいことが分かる。しかし、この発明の範囲から外れた条件の比較法4〜6で作製したターゲットは特性が低下したりまたは圧縮加工中に割れが発生するなどして好ましくないことが分かる。
実施例3
先に用意した原料粉末をモル%でCr:13.4%、Pt:15.4%、Ta2O5:4.0%を含有し、残部がCoおよび不可避不純物からなる成分組成となるように配合し、得られた配合粉末を粉砕媒体となるジルコニアボールと共に10リットルの容器に投入し、この容器内の雰囲気をArガス雰囲気中で置換し、その後、容器を密閉した。この容器をボールミルで16時間回転させ、混合粉末を作製した。得られた混合粉末を真空ホットプレス装置に充填し、真空雰囲気中、温度:1200℃、圧力:15MPa、3時間保持の条件で真空ホットプレスすることにより板状ホットプレス体を作製した。
先に用意した原料粉末をモル%でCr:13.4%、Pt:15.4%、Ta2O5:4.0%を含有し、残部がCoおよび不可避不純物からなる成分組成となるように配合し、得られた配合粉末を粉砕媒体となるジルコニアボールと共に10リットルの容器に投入し、この容器内の雰囲気をArガス雰囲気中で置換し、その後、容器を密閉した。この容器をボールミルで16時間回転させ、混合粉末を作製した。得られた混合粉末を真空ホットプレス装置に充填し、真空雰囲気中、温度:1200℃、圧力:15MPa、3時間保持の条件で真空ホットプレスすることにより板状ホットプレス体を作製した。
この板状ホットプレス体を切削加工により厚さ:6.5mmの板にしたのち、表3に示される温度で表3に示される圧下率となるように圧延加工を実施した。圧延の際には均一な圧延を加えるために一定のロール間隔での圧延を一方向で行なった後、同じロール間隔において元の方向から90度、180度、270度回転させて計4回の圧延を行ない、かかる4方向のクロス圧延を実施し、その後、ロール間隔を狭めながらこれを繰り返すことで目的の圧下率を得るようにした。このようにして得られた圧延板を切削加工することによりいずれも直径:152.4mm、厚さ:5mmの寸法を有するターゲットを作製し本発明法17〜24および比較法7〜9を実施した。さらに圧延加工することなく切削加工することにより直径:152.4mm、厚さ:5mmの寸法を有するターゲットを作製し従来法3を実施した。
本発明法17〜24、比較法7〜9および従来法3により得られたターゲットについて実施例1と同様にして面内方向最大比透磁率およびターゲット上空に漏れ出る漏洩磁束密度を測定し、その結果を表3に示した。
表3に示される結果から、本発明法17〜24により得られたターゲットは従来法3により得られたターゲットに比べて、面内方向の最大比透磁率にくらべて格段に低く、したがって漏洩磁束密度が大きいことが分かる。しかし、この発明の範囲から外れた条件の比較法7〜9で作製したターゲットは特性が低下したりまたは圧縮加工中に割れが発生するなどして好ましくないことが分かる。
実施例4
先に用意した原料粉末をモル%でCr:14.7%、Pt:14.7%、Al2O3:8.0%を含有し、残部がCoおよび不可避不純物からなる成分組成となるように配合し、得られた配合粉末を粉砕媒体となるジルコニアボールと共に10リットルの容器に投入し、この容器内の雰囲気をArガス雰囲気中で置換し、その後、容器を密閉した。この容器をボールミルで16時間回転させ、混合粉末を作製した。得られた混合粉末を真空ホットプレス装置に充填し、真空雰囲気中、温度:1200℃、圧力:15MPa、3時間保持の条件で真空ホットプレスすることにより板状ホットプレス体を作製した。
先に用意した原料粉末をモル%でCr:14.7%、Pt:14.7%、Al2O3:8.0%を含有し、残部がCoおよび不可避不純物からなる成分組成となるように配合し、得られた配合粉末を粉砕媒体となるジルコニアボールと共に10リットルの容器に投入し、この容器内の雰囲気をArガス雰囲気中で置換し、その後、容器を密閉した。この容器をボールミルで16時間回転させ、混合粉末を作製した。得られた混合粉末を真空ホットプレス装置に充填し、真空雰囲気中、温度:1200℃、圧力:15MPa、3時間保持の条件で真空ホットプレスすることにより板状ホットプレス体を作製した。
この板状ホットプレス体を切削加工により厚さ:6.5mmの板にしたのち、表4に示される温度で表4に示される圧下率となるように圧延加工を実施した。圧延の際には均一な圧延を加えるために一定のロール間隔での圧延を一方向で行なった後、同じロール間隔において元の方向から90度、180度、270度回転させて計4回の圧延を行ない、かかる4方向のクロス圧延を実施し、その後、ロール間隔を狭めながらこれを繰り返すことで目的の圧下率を得るようにした。このようにして得られた圧延板を切削加工することによりいずれも直径:152.4mm、厚さ:5mmの寸法を有するターゲットを作製し本発明法25〜32および比較法10〜12を実施した。さらに圧延加工することなく切削加工することにより直径:152.4mm、厚さ:5mmの寸法を有するターゲットを作製し従来法4を実施した。
本発明法25〜32、比較法10〜12および従来法4により得られたターゲットについて実施例1と同様にして面内方向最大比透磁率およびターゲット上空に漏れ出る漏洩磁束密度を測定し、その結果を表4に示した。
表4に示される結果から、本発明法25〜32により得られたターゲットは従来法4により得られたターゲットに比べて、面内方向の最大比透磁率にくらべて格段に低く、したがって漏洩磁束密度が大きいことが分かる。しかし、この発明の範囲から外れた条件の比較法10〜12で作製したターゲットは特性が低下したりまたは圧縮加工中に割れが発生するなどして好ましくないことが分かる。
Claims (4)
- 非磁性酸化物:2〜15モル%、Cr:3〜20モル%、Pt:5〜30モル%を含有し、残部:Coおよび不可避不純物からなる成分組成を有する板状焼結体を、温度:450℃以下に保持しながら板状焼結体の厚さ方向に圧縮加工することを特徴とする面内方向比透磁率の低い垂直磁気記録媒体膜形成用スパッタリングターゲットの製造方法。
- 前記非磁性酸化物は、二酸化珪素、酸化タンタル、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化トリウム、酸化ジルコニウム、酸化セリウムおよび酸化イットリウムのうちのいずれかであることを特徴とする請求項1記載の面内方向比透磁率の低い垂直磁気記録媒体膜形成用スパッタリングターゲットの製造方法。
- 前記圧縮加工は、圧下率:2〜20%の範囲内の圧縮加工であることを特徴とする請求項1または2記載の面内方向比透磁率の低い垂直磁気記録媒体膜形成用スパッタリングターゲットの製造方法。
- 面内方向最大比透磁率:50以下であることを特徴とする請求項1または2記載の方法で製造した請求項1、2または3記載の方法で製造した面内方向比透磁率の低い垂直磁気記録媒体膜形成用スパッタリングターゲット。
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