JP4758522B1 - パーティクル発生の少ない強磁性材スパッタリングターゲット - Google Patents
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Abstract
【選択図】図1
Description
また、近年実用化された垂直磁気記録方式を採用するハードディスクの記録層には、Coを主成分とするCo−Cr−Pt系の強磁性合金と非磁性の無機物からなる複合材料が多く用いられている。
本発明は上記問題を鑑みて、マグネトロンスパッタ装置で安定した放電が得られるとともに、スパッタ時のパーティクル発生が少ない、漏洩磁束を向上させた強磁性材スパッタリングターゲットを提供することを課題とする。
1)Crが20mol%以下、残余がCoである組成の金属からなるスパッタリングターゲットであって、このターゲット組織が、金属素地(A)と、前記(A)の中に、Coが90wt%以上含有する扁平状の相(B)を有し、前記相(B)の平均粒径が10μm以上150μm以下、かつ、平均アスペクト比が1:2〜1:10であることを特徴とする強磁性材スパッタリングターゲット。
2)Crが20mol%以下、Ptが5mol%以上30mol%以下、残余がCoである組成の金属からなるスパッタリングターゲットであって、このターゲット組織が、金属素地(A)と、前記(A)の中に、Coが90wt%以上含有する扁平状の相(B)を有し、前記相(B)の平均粒径が10μm以上150μm以下、かつ、平均アスペクト比が1:2〜1:10であることを特徴とする強磁性材スパッタリングターゲットを提供する。
3)添加元素としてB、Ti、V、Mn、Zr、Nb、Ru、Mo、Ta、Wから選択した1元素以上を、0.5mol%以上10mol%以下含有することを特徴とする上記1)〜2)のいずれか一項に記載の強磁性材スパッタリングターゲットを提供する。
4)スパッタリングターゲットの断面において、前記相(B)の占める面積率が、15〜50%であることを特徴とする上記1)〜3)のいずれか一項に記載の強磁性材スパッタリングターゲットを提供する。
5)金属素地(A)が、炭素、酸化物、窒化物、炭化物、炭窒化物から選択した1成分以上の無機物材料を該金属素地中に含有することを特徴とする上記1)〜4)のいずれか一項に記載の強磁性材スパッタリングターゲットを提供する。
ターゲットの厚みを厚くすることができるため、ターゲットの交換頻度が少なくなり、低コストで磁性体薄膜を製造できるというメリットがある。また、パーティクル発生が少ないため、スパッタ成膜した磁気記録膜の不良品が少なくなり、コスト削減が可能となるというメリットがある。
これらは、磁気記録媒体として必要とされる成分であり、配合割合は上記範囲内で様々であるが、いずれも有効な磁気記録媒体としての特性を維持することができる。
なお、扁平状とは、上から見たときの形状であり、凹凸がなく完全に平べったい状態を意味するものではない。すなわち、多少の起伏又は凹凸があるものも含まれる。
一方、150μmを超える場合には、スパッタリングが進むにつれてターゲット表面の平滑性が失われ、パーティクルの問題が発生しやすくなることがある。従って相(B)の大きさは10〜150μmとするのが望ましい。
原料としては純Coを使用するが、焼結時に扁平状の相(B)が周囲の金属素地(A)と相互に拡散するので、好ましい相(B)のCo含有量は90wt%以上であり、より好ましくは95wt%以上、さらに好ましくは97wt%以上である。
上記のようにCoが主成分であるが、中心は純度が高く、周囲は純度がやや低くなる傾向にある。扁平状の相(B)の径(長径及び短径のそれぞれ)を1/3に縮小したと仮定した場合の相似形(扁平状)の相の範囲内(以下「中心付近」という。)では、Coの濃度97wt%以上を達成することが可能であり、本願発明は、これらを含むものである。
そして、さらにはエロージョン速度の偏りを軽減でき、相の脱落を防止することができるため、歩留まり低下の原因となるパーティクルの発生量を低減させることができるというメリットがある。
そして、これらの金属粉末を所望の組成になるように秤量し、ボールミル等の公知の手法を用いて粉砕を兼ねて混合する。無機物粉末を添加する場合は、この段階で金属粉末と混合すればよい。
無機物粉末としては炭素粉末、酸化物粉末、窒化物粉末、炭化物粉末または炭窒化物粉末を用意するが、無機物粉末は最大粒径が5μm以下のものを用いることが望ましい。一方、小さ過ぎると凝集しやすくなるため、0.1μm以上のものを用いることがさらに望ましい。
実施例1では、原料粉末として、平均粒径3μmのCo粉末、平均粒径5μmのCr粉末、平均粒径1μmのSiO2粉末、直径が50〜150μmの範囲にあるCoアトマイズ粉末を用意した。これらの粉末をターゲットの組成が78.73Co−13.07Cr−8.2SiO2(mol%)となるように、Co粉末、Cr粉末、SiO2粉末、Coアトマイズ粉末を秤量した。
パーティクル数の評価は、通常、製品で用いる膜厚(記録層の厚さは5〜10nm)ではパーティクル数の差が見えにくいため、膜厚を通常の200倍程度に厚膜にして(厚さは1000nm)、パーティクルの絶対数を増やすことで評価した。この結果を、表1に記載した。
また、漏洩磁束の測定は、ASTM F2086−01(Standard Test Method for Pass Through Flux of Circular Magnetic Sputtering Targets, Method 2)に則して実施した。ターゲットの中心を固定し、0度、30度、60度、90度、120度と回転させて測定した漏洩磁束密度を、ASTMで定義されているreference fieldの値で割り返し、100を掛けてパーセントで表した。そしてこれら5点について平均した結果を、平均漏洩磁束密度(%)として表1に記載した。
本実施例1の扁平状の相(B)のCo含有量は、相(B)の中心付近で98wt%以上であった。また、扁平状の相(B)の大きさの測定は、焼結体(スパッタリングターゲットを含む)の切断面を用いて、220倍に拡大した写真上において、30cmの線分によって切断される扁平状の相(B)の数をかぞえ、その切断長さの平均値(μm)により求めた。これの結果を、平均粒径として表1に記載した。
また、相(B)のアスペクト比は、焼結体(スパッタリングターゲットを含む)の切断面を顕微鏡で観察し、220倍の視野において存在する扁平状の相(B)の短径と長径を測定し、これらを平均した。そしてこれを任意の5視野において実施し平均とした。なお、視野の一部分のみに含まれる扁平状の相(B)は除いた。また、扁平状の相(B)は、短径4μm以上のものについて測定した。これの結果を、表1に記載した。
これに対して、図2に示す比較例1によって得られたターゲット研磨面の組織画像には、金属素地中に分散している相(B)の形状は真球状であって、扁平状のものは一切観察されなかった。
実施例2では、原料粉末として、平均粒径3μmのCo粉末、平均粒径5μmのCr粉末、平均粒径1μmのSiO2粉末、直径が30〜150μmの範囲にあるCo−Cr粉砕粉を用意した。これらの粉末をターゲットの組成が78.73Co−13.07Cr−8.2SiO2(mol%)となるように、Co粉末、Cr粉末、SiO2粉末、Co−Cr粉砕粉を秤量した。
この混合粉をカーボン製の型に充填し、真空雰囲気中、温度1050°C、保持時間2時間、加圧力30MPaの条件のもとホットプレスして焼結体を得た。さらにこれを旋盤で直径が180mm、厚さが5mmの円盤状のターゲットへ加工し、パーティクル数をカウントし、平均漏洩磁束密度を測定した。この結果を、表2に示す。本実施例2の相(B)のCo含有量は、相(B)の中心付近で99wt%であった。
また、実施例2の平均漏洩磁束密度は46.6%であり、比較例1の52.6%より減少したが、依然として、従来(45.0%程度)に比べて、漏洩磁束密度が高いターゲットが得られた。また、光学顕微鏡で観察した結果、平均粒径は50μmであり、比較例1の40μmよりも大きく、また、相(B)のアスペクト比は1:3と扁平状になっていることが確認された。
この図3の組織画像に示すように、上記実施例3において極めて特徴的なのは、SiO2粒子が微細分散した金属素地中に分散している相(B)の形状が扁平状(楔状)であることである。
これに対して、図4に示す比較例1によって得られたターゲット研磨面の組織画像には、金属素地中に分散している相(B)の形状は真球状であって、扁平状のものは一切観察されなかった。
そして、相(B)は、このような扁平状の形状を有することにより、いわゆる楔(くさび)の効果により、スパッタリングターゲットからの相(B)の脱落が抑制された。また、相(B)が複雑な形状を有することによって、相と酸化物粒子が均一に分散している金属素地(A)に比べて、エロージョン速度が異なっている時間を短縮できるため、結果的にエロージョンが均一となった。
こうした組織構造が、パーティクル発生を抑制し、かつ、エロージョンを均一にするとともに、漏洩磁束を向上させるために非常に重要な役割を有することが分かる。
したがって、本発明のターゲットを使用すれば、マグネトロンスパッタ装置でスパッタリングする際に安定した放電が得られる。またターゲット厚みを厚くすることができるため、ターゲットライフが長くなり、低コストで磁性体薄膜を製造することが可能になる。さらに、スパッタリングにより形成した膜の品質を著しく向上できる。磁気記録媒体の磁性体薄膜、特にハードディスクドライブ記録層の成膜に使用される強磁性材スパッタリングターゲットとして有用である。
Claims (5)
- Crが20mol%以下、残余がCoである組成の金属を主要成分とするスパッタリングターゲットであって、このターゲット組織が、金属素地(A)と、前記(A)の中に、Coを90wt%以上含有する扁平状の相(B)を有し、前記相(B)の平均粒径が10μm以上150μm以下、かつ、平均アスペクト比が1:2〜1:10であることを特徴とする強磁性材スパッタリングターゲット。
- Crが20mol%以下、Ptが5mol%以上30mol%以下、残余がCoである組成の金属を主要成分とするスパッタリングターゲットであって、このターゲット組織が、金属素地(A)と、前記(A)の中に、Coを90wt%以上含有する扁平状の相(B)を有し、前記相(B)の平均粒径が10μm以上150μm以下、かつ、平均アスペクト比が1:2〜1:10であることを特徴とする強磁性材スパッタリングターゲット。
- 添加元素としてB、Ti、V、Mn、Zr、Nb、Ru、Mo、Ta、Wから選択した1元素以上を、0.5mol%以上10mol%以下含有することを特徴とする請求項1〜2のいずれか一項に記載の強磁性材スパッタリングターゲット。
- スパッタリングターゲットの断面において、前記相(B)の占める面積率が、15〜50%であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の強磁性材スパッタリングターゲット。
- 金属素地(A)が、炭素、酸化物、窒化物、炭化物、炭窒化物から選択した1成分以上の無機物材料を該金属素地中に含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の強磁性材スパッタリングターゲット。
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