JP5459494B2 - 磁気記録媒体膜形成用スパッタリングターゲットおよびその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、ハードディスクの高密度磁気記録媒体に適用される磁気記録膜、特に垂直磁気記録媒体に適用される磁気記録膜を形成するためのスパッタリングターゲットおよびその製造方法に関するものである。
ハードディスク装置は、一般にコンピューターやデジタル家電等の外部記録装置として用いられており、記録密度の一層の向上が求められている。そのため、近年、高密度の記録を実現できる垂直磁気記録方式が採用されている。この垂直磁気記録方式は、以前の面内記録方式と異なり、原理的に高密度化するほど記録磁化が安定すると言われている。
この垂直磁気記録方式のハードディスク媒体の記録層に適用する材料の候補として、FePt磁気記録膜が提案されている。
従来、このFePt磁気記録膜は、例えば原料となる単体金属の純Fe粉末と純Pt粉末との混合粉末をホットプレス法等により合金の焼結体としたスパッタリングターゲットを用いてDCスパッタ法により作製することが知られている(特許文献1参照)。
特許第4175829号公報
上記従来の技術には、以下の課題が残されている。
すなわち、純Fe粉末と純Pt粉末との混合粉末をホットプレス法等により合金の焼結体としたターゲットを用いてマグネトロンスパッタリングを行う場合、ターゲットがFePt合金相の均一な組織となっており、ターゲット内で磁気回路が形成される結果、漏れ磁束密度(PTF)が低く、スパッタレートが低いという不都合があった。
また、純Fe粉末と純Pt粉末との混合粉末をホットプレス法等により合金の焼結体とする場合、酸化により発熱し易く爆発の危険もある純Fe粉末の取り扱いが難しいという問題もあった。
本発明は、前述の課題に鑑みてなされたもので、高いPTFが得られてスパッタレートの向上を図ることができ、原料粉末の取り扱い時の危険性も排除できる磁気記録媒体膜形成用スパッタリングターゲットおよびその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、FePt薄膜を成膜する磁気記録媒体膜形成用スパッタリングターゲットについて研究を進めたところ、純Fe粉末を用いずに所定組成範囲及び粒径範囲内のFePt合金粉と純Pt粉とからなる混合粉末を用いることにより、PTFが高いターゲットを形成することができることを突き止めた。
したがって、本発明は、上記知見から得られたものであり、前記課題を解決するために以下の構成を採用した。すなわち、本発明の磁気記録媒体膜形成用スパッタリングターゲットは、Fe:30〜70原子%を含有し、残部:Ptおよび不可避不純物からなる成分組成を有し、その組織が、純Pt相とFePt合金相とで構成され、かつ前記FePt合金相が前記純Pt相中に局所的に点在し、Fe濃度が70原子%以上であるFeリッチ領域が、5〜40面積%の面積率で分散形成されていることを特徴とする。
この磁気記録媒体膜形成用スパッタリングターゲットでは、組織が、純Pt相とFePt合金相とで構成され、かつFePt合金相が純Pt相中に局所的に点在し、Fe濃度が70原子%以上であるFeリッチ領域が、5〜40面積%の面積率で分散形成されているので、点在している高濃度部であるFeリッチ領域によって磁性が不均一になり、PTFが高くなってスパッタレートが向上する。
なお、Feの含有量を上記範囲に設定した理由は、Fe含有量がFe:30原子%未満である場合又は70原子%を超えている場合、充分なPTFが得られないためである。なお、PTFは50%以上であることが好ましい。
また、Feリッチ領域を上記面積率範囲に設定した理由は、Feリッチ領域が5面積%未満である場合又は40面積%を超えている場合、充分なPTFが得られないためである。
また、本発明の磁気記録媒体膜形成用スパッタリングターゲットは、ASTM F2086−01の規格に基づいて測定した漏れ磁束密度が、50%以上であることを特徴とする。
すなわち、この磁気記録媒体膜形成用スパッタリングターゲットでは、漏れ磁束密度が50%以上であるので、高いスパッタレートで良好なFePt膜を成膜することができる。
本発明の磁気記録媒体膜形成用スパッタリングターゲットの製造方法は、上記本発明の磁気記録媒体膜形成用スパッタリングターゲットの製造方法であって、Fe:90〜95原子%を含有すると共に粒径(D50)が25〜100μmのFePt合金アトマイズ粉と、Pt粉と、の混合粉末を、真空または不活性ガス雰囲気中でホットプレスする工程を有していることを特徴とする。
すなわち、この磁気記録媒体膜形成用スパッタリングターゲットの製造方法では、Fe:90〜95原子%を含有すると共にD50が25〜100μmのFePt合金アトマイズ粉と、Pt粉と、の混合粉末を、真空または不活性ガス雰囲気中でホットプレスするので、純Fe粉に比べて酸化されにくいFePt合金アトマイズ粉により、原料粉末の取り扱い時の危険性が排除され、安全に上記本発明のターゲットを作製することができる。
なお、FePt合金アトマイズ粉のFe含有量を上記組成範囲に設定した理由は、Feが90原子%未満であると、充分なPTFが得られず、95原子%を超えると、ターゲット表面に錆が生じる可能性があるためである。
また、FePt合金アトマイズ粉を上記粒径範囲に設定した理由は、D50が25μm未満であると、充分なPTFが得られず、100μmを超えると、密度が上がり難いためである。
本発明によれば、以下の効果を奏する。
すなわち、本発明に係る磁気記録媒体膜形成用スパッタリングターゲットによれば、FePt合金相が、純Pt相中に局所的に点在し、Fe濃度が70原子%以上であるFeリッチ領域が、5〜40面積%分散形成されているので、PTFが高くなってスパッタレートが向上する。
また、本発明の磁気記録媒体膜形成用スパッタリングターゲットの製造方法によれば、Fe:90〜95原子%を含有すると共にD50が25〜100μmのFePt合金アトマイズ粉とPt粉との混合粉末をホットプレスするので、安全に上記本発明のターゲットを作製することができる。
したがって、本発明の磁気記録媒体膜形成用スパッタリングターゲットを用いてマグネトロンスパッタリングにより磁気記録媒体膜を成膜することで、高い生産性をもってHDD用の高密度磁気記録媒体に適用される磁気記録膜、特に垂直磁気記録媒体に適用される良好な磁気記録膜を得ることができる。
本発明に係る磁気記録媒体膜形成用スパッタリングターゲットおよびその製造方法の一実施形態において、ターゲットの断面組織を示すEPMA画像(COMPO像)である。 本発明に係る一実施形態において、Feリッチ領域の面積率を求めるために図1のEPMA画像を二値化処理した画像である。
以下、本発明に係る磁気記録媒体膜形成用スパッタリングターゲットおよびその製造方法の一実施形態を、図1および図2を参照して説明する。
本実施形態の磁気記録媒体膜形成用スパッタリングターゲットは、Fe:30〜70原子%を含有し、残部:Ptおよび不可避不純物からなる成分組成を有し、その組織が、純Pt相とFePt合金相とで構成され、かつFePt合金相が純Pt相中に局所的に点在している。また、このターゲットの組織中、Fe濃度が70原子%(40wt%)以上であるFeリッチ領域が、5〜40面積%の面積率で分散形成されている。
さらに、この磁気記録媒体膜形成用スパッタリングターゲットは、ASTM F2086−01の規格に基づいて測定した漏れ磁束密度(PTF)が、50%以上である。
上記Feリッチ領域の面積率は、以下の手順で算出される。
(イ)まず、図1に示すように、フィールドエミッションEPMA(電子線マイクロプローブアナライザ)により200倍のCOMPO像(組成像)をモノクロ撮影する。この際、Fe濃度の高い(原子量の小さい)領域ほど黒く表示される。
(ロ)次に、この画像の各画素の輝度(明るさ)に対してFe濃度70原子%に相当するしきい値を設け、図2に示すように、画像を二値化処理してFe濃度が70原子%以上のFeリッチ領域(黒い領域)と70原子%未満の領域(白い領域)との2つの領域に分割する。
(ハ)さらに、ターゲット上の異なる箇所で上記(イ)(ロ)の操作を5回繰り返し、Fe濃度70原子%以上の画像領域(黒色部分:Feリッチ領域)の全領域に対する割合を平均し、これを面積率とする。なお、上記図2におけるFeリッチ領域の面積率は、16.6面積%である。
この磁気記録媒体膜形成用スパッタリングターゲットの製造方法では、Fe:90〜95原子%を含有すると共にD50が25〜100μmのFePt合金アトマイズ粉と、Pt粉と、の混合粉末を、真空または不活性ガス雰囲気中でホットプレスする工程を有している。
詳述すれば、例えば、まず上記所定組成割合となるFePt合金アトマイズ粉をガスアトマイズにより作製し、上記粒径範囲となるように所定メッシュの篩いでふるって、篩い下の粉末を回収する。
次に、このFePt合金アトマイズ粉と所定粒径範囲のPt粉とを所定の組成となるように秤量し、これらを容器に粉砕媒体となる酸化ジルコニウム等のボールとともに投入し、この容器をボールミルにより所定時間回転させ、原料を混合して混合粉末とする。
次に、得られた混合粉末を真空ホットプレス等により成型焼結し、さらに機械加工により所定サイズの焼結体を得る。なお、ホットプレス温度は、1150℃などの比較的低温で行うことが好ましい。すなわち、低温でホットプレスするので、モールドへの付着や融着、反りや変形等を防ぐことができる。なお、1150℃でホットプレスしても、充分な高密度を得ることができる。
こうして得られた焼結体を、バッキングプレートに接合してターゲットとする。
このように本実施形態の磁気記録媒体膜形成用スパッタリングターゲットでは、組織が、純Pt相とFePt合金相とで構成され、かつFePt合金相が純Pt相中に局所的に点在し、Fe濃度が70原子%以上であるFeリッチ領域が、5〜40面積%の面積率で分散形成されているので、点在している高濃度部であるFeリッチ領域によって磁性が不均一になり、漏れ磁束密度が高くなってスパッタレートが向上する。
また、この磁気記録媒体膜形成用スパッタリングターゲットの製造方法では、Fe:90〜95原子%を含有すると共にD50が25〜100μmのFePt合金アトマイズ粉とPt粉との混合粉末を、真空または不活性ガス雰囲気中でホットプレスするので、純Fe粉に比べて酸化されにくいFePt合金アトマイズ粉により、原料粉末の取り扱い時の危険性が排除され、安全に上記本発明のターゲットを作製することができる。
次に、本発明に係る磁気記録媒体膜形成用スパッタリングターゲットを、上記実施形態に基づき作製した実施例により、実際に評価した結果を説明する。
まず、上記本実施形態の所定範囲内で種々の粒径および混合比に設定したFePt合金アトマイズ粉と、Pt粉と、の混合粉末を、Arガス雰囲気中で5mmφジルコニアボールを用いたボールミルを用いて16時間混合し、真空ホットプレスにより1150℃で3時間、350kg/cmの圧力で成型焼結した。このように作製した実施例1〜13について、ICP発光分光分析法により測定したターゲット組成、設定したFePt合金アトマイズ粉組成、マイクロトラックで測定した粒径、混合粉末の混合比を、以下の表1に示す。
なお、比較のためターゲット組成、FePt合金アトマイズ粉の組成又は粒径のいずれかが上記本実施形態の所定範囲外に設定された比較例も同様に複数作製した。これら比較例の設定内容も表1に併せて示す。なお、表1において、上記本実施形態の所定範囲外の設定には、下線を引いてある。
これら本実施例および比較例について、Feリッチ領域(濃度70原子%以上領域)の面積率、PTFおよび密度比を測定した結果を、表1に示す。なお、面積率は上述した手順で測定し、PTFは、ASTM F2086−01の規格に基づいて測定した。また、密度比は、アルキメデス法によって求めた。
これらの結果からわかるように、Feリッチ領域の面積率が上記本実施形態の所定範囲外の比較例1〜4では、いずれもPTFが50%未満と低い。これらに対して、本実施例1〜12は、いずれもFeリッチ領域の面積率が5〜40面積%の範囲内であると共にPTFが全て50%以上、かつ密度比も95%以上であった。このように、本実施例1〜12では、高PTFおよび高密度比が得られている。なお、FePt合金アトマイズ粉の粒径が上記本実施形態の所定範囲外の本実施例13では、高PTFであるが、密度比が95%未満と低くなっていた。
なお、本発明の技術範囲は上記実施形態及び上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。

Claims (3)

  1. Fe:30〜70原子%を含有し、
    残部:Ptおよび不可避不純物からなる成分組成を有し、
    その組織が、純Pt相とFePt合金相とで構成され、かつ前記FePt合金相が前記純Pt相中に局所的に点在し、
    Fe濃度が70原子%以上であるFeリッチ領域が、5〜40面積%の面積率で分散形成されていることを特徴とする磁気記録媒体膜形成用スパッタリングターゲット。
  2. 請求項1に記載の磁気記録媒体膜形成用スパッタリングターゲットにおいて、
    ASTM F2086−01の規格に基づいて測定した漏れ磁束密度が、50%以上であることを特徴とする磁気記録媒体膜形成用スパッタリングターゲット。
  3. 請求項1または2に記載の磁気記録媒体膜形成用スパッタリングターゲットの製造方法であって、
    Fe:90〜95原子%を含有すると共に粒径(D50)が25〜100μmのFePt合金アトマイズ粉と、Pt粉と、の混合粉末を、真空または不活性ガス雰囲気中でホットプレスする工程を有していることを特徴とする磁気記録媒体膜形成用スパッタリングターゲットの製造方法。
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