JP4171604B2 - 無電解めっき浴及び該めっき浴を用いて得られた金属被覆物 - Google Patents

無電解めっき浴及び該めっき浴を用いて得られた金属被覆物 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、めっき技術に属し、特に無電解めっきに関する。
【0002】
【従来の技術】
無電解めっきは、通電の必要がないことから、独立パターンのある電気回路や粒子状の被めっき体などにも広く利用されている一方で、還元されるべき金属イオンと還元剤がめっき液中で共存しているため、温度、pH等が適正範囲からずれたり、浴負荷が大きくなった場合等に浴分解を生じる可能性に常につきまとわれている。もちろん無電解めっき浴の開発以来、錯化剤の種類や濃度、各種の安定化剤等が常に検討され改善されてはいるが、浴分解のトラブルが完全になくなっているわけではない。
【0003】
近年、電気・電子の回路や部品の微細化、マイクロマシニング、ナノテクノロジー等の進展に伴ない、きわめて微細なパターンや粒子に表面形状に忠実なめっき皮膜を形成させる要求が広がっている。これらが微細になればなるほど、めっき浴に投入されるめっき対象物の表面積は大きくなり、大きい浴負荷でめっき作業をせざるを得なくなる。これにつれて、浴負荷の増大による浴分解の可能性が高くなり、さらに安定な無電解めっき浴の出現が望まれている。また、これら微細なパターンや粒子の表面形状に忠実にめっきが施される必要があるため、めっき皮膜の結晶粒子がさらに微細で緻密な浴が求められている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本願の発明者らは、無電解めっき浴の一層の安定化を図り、浴分解が生じにくく、かつ、微細で緻密な結晶粒子からなる皮膜が得られる無電解めっき浴を開発すことを本願発明の研究課題とした。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本願発明の発明者らは、無電解めっき液にアルコールを含有させることによって、めっき液が極めて安定化され、浴分解が生じにくく、かつ微細で緻密な結晶粒子が得られることを見出し、本願発明の研究課題を解決した。
【0006】
本発明は、還元剤として、リン含有化合物、ホウ素含有化合物、窒素含有化合物、カルボキシル基含有化合物、水酸基含有化合物、チオール化合物、ホルマリン、チオ尿素系化合物又はそれらの化合物の塩類、又は異なる酸化状態の金属イオンが溶液中で共存する系(レドックス系)における酸化状態の低い金属イオンから選ばれた還元剤を用いる無電解めっき浴に、炭素数が10以下で水酸基のみを置換基として有する飽和脂肪族アルコールを含有させることによって、無電解めっき浴の安定化を図り、かつ微細で緻密な結晶粒子を得ることを特徴とするものである。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明に従い、炭素数が10以下で水酸基を置換基として有する飽和脂肪族アルコールの中で、好適に用いられる化合物は、メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、シクロヘキサノール、2−メトキシエタノール及び2−(2−エトキシエトキシ)エタノールから選ばれる飽和脂肪族アルコールの1種又は2種以上である。
【0008】
でもメタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノールは特に好適に用いられる。
【0009】
該アルコールは、0.1〜200ml/Lの濃度で好適に用いられ、さらに好適には、1〜100ml/Lの濃度範囲で用いられる。
【0010】
これらのアルコール類の添加は、単純な化合物であるにもかかわらず、浴の安定化効果は顕著であり、脂肪族のアルコールが特別に顕著である。また、広範囲の還元剤系に対して効果を示すが、特にレドックス系の金属イオン還元剤の系においてその効果が顕著である。特に、3価のチタンイオンを還元剤とする無電解ニッケルめっき浴に於いて特に顕著である。
【0011】
さらに、アルコール類の添加による浴の安定化の作用機構は現時点では明らかではないが、無電解めっき皮膜の結晶の微細化にも効果があり、めっき皮膜結晶の成長に何らかの作用を及ぼしている結果と推察される。
めっき皮膜結晶の微細化は、浴の安定性の向上という面だけでなく、実用的な観点からも好ましく、無電解めっきに新たな応用を広げるものである。即ち、前述したきわめて微細なパターンや粒子に無電解めっきを施す場合、アルコールを添加した無電解浴から皮膜を析出させるならば、極めてそれらの表面形状に忠実なめっき皮膜を形成させることができるという利点がある。この観点からも広範囲の還元剤系に対して効果を示すけれども、3価のチタンイオンを還元剤とする無電解めっき浴に脂肪族アルコールを添加した場合に効果が特に顕著であった。特に無電解ニッケルめっき浴に対して最も効果が高かった。
【0012】
前記還元剤を具体的に例示すれば、前記リン含有化合物としては次亜リン酸又はその塩が、前記ホウ素含有化合物としてはジメチルアミンボラン等のジアルキルアミンボラン、水素化ホウ素、ヒドラジンボラン及びそれらの塩から選ばれる化合物が、前記窒素含有化合物としてはヒドラジン、ヒドロキシルアミン、ジエチルグリシン及びそれらの塩から選ばれる化合物が、前記カルボキシル基含有化合物としては、蟻酸、グリオキシル酸、アスコルビン酸、グルコン酸、前記酒石酸及びそれらの塩から選ばれる化合物が、前記水酸基含有化合物としては、グルコース、ソルビトール、グリセリンから選ばれる化合物が、前記チオール化合物としては、メルカプトコハク酸又は2−アミノエタンチオールから選ばれる化合物がそれぞれ好適に用いられる例として挙げられる。
また、金属イオンのレドックス系還元剤としては、3価チタンイオン、2価コバルトイオン、2価鉄イオンのレドックス系が好適に用いられる例として挙げられる。
さらに、チオ尿素系化合物としては、チオ尿素又はモノ−、ジ−又はトリ−アルキルチオ尿素から選ばれる化合物が好適に用いられる例として挙げられる。
【0013】
本発明のアルコール類の添加による無電解めっき浴の安定化は、広範囲の還元剤系に対して効果を有するが、前述のようにレドックス系の還元剤を用いる無電解めっき浴に対して特に顕著な効果が認められ、レドックス系の還元剤として、3価のチタンイオン、2価のコバルトイオン、2価の鉄イオンなどが用いられる。中でも3価のチタンイオン又は2価のコバルトイオンを還元剤とする無電解めっき浴に対して一層顕著な効果が認められ、3価のチタンイオンを還元剤とする場合において最も顕著な効果が認められる。
【0014】
本出願においてレドックス系という表現は、溶液中において酸化状態の異なる(即ち価数の異なる)同一金属のイオンが共存する系を示し、その系において酸化状態の低いイオンが同じ溶液中に存在する別の種類の金属を還元して酸化状態の高いイオンになる反応を無電解めっきに利用する場合に、該酸化状態の低いイオンをレドックス系の還元剤と表現するものとする。
【0015】
用いられるそれらの濃度は、0.001〜1mol/Lが一般的であり、好ましくは0.01〜1mol/Lである。さらに好適には、0.01〜0.5mol/Lが用いられる。
【0016】
該無電解めっき浴から析出される金属として、元素周期律表の水銀を除く第4周期〜第6周期のIB族〜VB族又はVIII族の金属又はそれらの金属を主成分とする合金が利用される。従って、ニッケル−タングステン合金等も含まれる。ここで、本願発明においては、主成分とは皮膜中に50%以上を占める金属成分をさすものとする。
【0017】
具体的には、IB族の元素としては、Cu、Ag、Auが、IIB族の元素としてはZn、CdがIIIB族の元素としてはInが、IVB族の元素としてはSn、Pbが、VB族の元素としてはSb、Biが、VIII族の元素としてFe、Co、Ni、Pd、Pt及びそれらを主成分とする合金が好適に利用される。
【0018】
それらの内、Cu、Ag、Au、Ni、Sn及びそれらを主成分とする合金が一層好適に用いられ、Ni及びNiを主成分とする合金が最も好適に用いられる。
【0019】
これらの金属は、該めっき浴にイオンとして溶解されるが、その濃度は、0.001〜1mol/Lが一般的であり、好ましくは0.01〜1mol/Lが用いられる。さらに好適には、0.01〜0.5mol/Lが用いられる。
【0020】
また、該無電解めっき浴には、さらに、含硫黄化合物、含ヨウ素化合物、ポリアルキレングリコール又はアゾール類等から選ばれた1種又は2種以上を含有させることができる。
【0021】
具体的に例示すれば、含硫黄化合物としては、例えばチオグリコール酸、チオジグリコール酸、チオジプロピオン酸等のメルカプトカルボン酸又はチオジカルボン酸或いはそれらの塩が、ヨウ素含有化合物としては、例えばヨウ化カリウム、o−ヨード安息香酸、ヨウ素酸カリウム、ヨードチロシン等が、ポリアルキレングリコールとしては、分子量が35000以下のポリエチレングリコール等が、アゾール類としては、例えばベンゾトリアゾール、メルカプトベンゾトリアゾール、ベンゾテトラゾール、ベンゾチアゾール、メルカプトベンゾチアゾール、2−アミノチアゾール、ベンゾチオジアゾール、ベンズイミダゾール、メルカプトベンズイミダゾール、3−アミノ−1H−1,2,3−トリアゾールなどの化合物が挙げられる。
【0022】
また、炭素数が10以下で水酸基を置換基として有する飽和脂肪族アルコールとの組み合わせでは、上記安定化剤に加えて、例えば、尿素、チオ尿素、メチルチオ尿素、テトラメチルチオ尿素、1−アリル−2−チオ尿素、1−フェニル−2−チオ尿素、1−アセチル−2−チオ尿素、1,3−ジメチルチオ尿素、エチレンチオ尿素等の尿素、チオ尿素又はそれらの誘導体等が安定化効果を示し、これらから選ばれた化合物が何れも適宜に、単独又は併用添加して用いられる。
【0023】
該化合物の添加量は、10000〜0.01ppmが一般的であり、好ましくは10000〜0.1ppmが用いられる。さらに好適には、1000〜0.1ppmが用いられる。
【0024】
該無電解めっき浴に上記の金属を溶解させ、安定な水溶液を調製するために、錯化剤として、カルボン酸、ヒドロキシカルボン酸、アミンカルボン酸、アミノ酸、エチレンジアミン、ホスフィン類、チオエーテル化合物、ジスルフィド化合物、亜硫酸、チオ硫酸又はそれらの塩類の1種又は2種以上を含有させることができる。
【0025】
それら錯化剤を更に具体的に例示すると、カルボン酸としては、例えば酢酸又はプロピオン酸が好適に用いられ、ヒドロキシカルボン酸としては、例えばクエン酸、酒石酸、シュウ酸、グリコール酸、乳酸、タルトロン酸、リンゴ酸又はグルコン酸が好適に用いられ、アミンカルボン酸としては、例えばエチレンジアミン四酢酸、イミノジ酢酸又はニトリロトリ酢酸が好適に用いられ、ホスフィンとしてはトリス−(3−ヒドロキシプロピル)ホスフィン等が、チオエーテル化合物が1,2−ビス(2−ヒドロキシエチルチオ)エタン等が好適に用いられる。
中でもクエン酸、シュウ酸、トリス−(3−ヒドロキシプロピル)ホスフィン又は1,2−ビス(2−ヒドロキシエチルチオ)エタンを用いた浴が好適に用いられ、さらにニトリロトリ酢酸、エチレンジアミン四酢酸等を併用添加した浴が特に好適に用いられる。
【0026】
好適に用いられるアミノ酸としては、グリシン、グリシルグリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、リジン、セリン、トレオニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、メチオニン、アルギニン、オルニチン、ノルロイシン、ヒドロキシグルタミン酸、シスチン又はシステインが挙げられる。
一層好適に用いられるアミノ酸としては、上記のうち、グリシン、グリシルグリシン、アラニン、セリンなどが挙げられる。
【0027】
該錯化剤の濃度は、0.001〜1mol/Lが一般的であり、好ましくは0.01〜1mol/Lが用いられる。さらに好適には、0.01〜0.5mol/Lが用いられる。
錯化剤を併用添加して用いる場合、第2錯化剤以降の錯化剤は場合に応じては上記のように金属濃度に匹敵する濃度ではなく、10000〜0.01ppmというような微量を添加してもよい。
【0028】
該無電解めっき浴には、析出される金属がIB族又はVIII族金属の場合、安定化のために、析出される金属のイオン以外にさらに、微量のインジウム、鉛、亜鉛、タリウム又は錫から選ばれた金属のイオンの1種又は2種以上を含有させることができる。
【0029】
それら微量添加金属の用いられる濃度範囲は、1000〜0.001ppmが一般的であり、好ましくは100〜0.01ppmが用いられる。さらに好適には、100〜0.1ppmが用いられる。
【0030】
本願発明の無電解めっき浴へのアルコール類含有による安定化効果は、酸性からアルカリ性の広い範囲で効果を示すが、一般にpH4〜11の範囲で好適に使用でき、一層好適には、pH5〜10の範囲で用いられる。
【0031】
pHの調整には、公知の酸、アルカリを用いることができる。一般には酸として塩酸、硫酸又は有機スルホン酸等が、アルカリとしては、アルカリ金属の水酸化物、炭酸塩(塩基性塩を含む)、アンモニア(水)などが好適に用いられる。また、公知のpH緩衝剤を併用してもよく、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウムのほか、酢酸、酒石酸、クエン酸などの各種カルボン酸、リン酸、硼酸、四硼酸及びそれらの塩の1種又は2種以上が用いられる。
【0032】
該めっき浴は、一般には20〜90℃の範囲でめっきに用いられる。さらに好適には20〜70℃の温度が用いられる。
【0033】
以上述べた本願発明のアルコール類を含有する無電解めっき浴は、前述の金属や合金のめっき皮膜を得るために好適に用いられるが、特にレドックス系の還元剤を利用した場合には、還元剤に由来するリンやホウ素などの不純物元素を含まない金属皮膜を得るために好適に用いられる。このようにして得られた皮膜は、リンやホウ素などの不純物元素を含まないため、電気・電子的特性、磁気的特性、機械的特性、光学的特性等において、従来の無電解めっき皮膜とは異なった良好な特性を有するため、電気・電子材料(部品)、電池材料(部品)、光通信材料(部品)などとして好適に用いられる。特にニッケル又はニッケルを主成分としリン又はホウ素を含まない合金めっきは、これまで工業的に操業し得るに足る安定性を有した浴がなかったためにリンやホウ素の悪影響(例えば、リン濃縮層の生成による接合強度の低下、二次電池電極サイクル特性の低下など)を嫌う用途に好適に用いられる。
【0034】
又、本願発明のめっき液の各成分濃度、pH、浴温などを適切に調整し、0.5μm/hr以下の析出速度で無電解めっきを施すことにより、めっき液の安定性がさらに改善され、結晶粒子のより微細なめっき皮膜がえられる。このことは微細パターンを有する電気・電子回路や平均粒径が1mm以下の微少粒子はもとより、形状の再現性が重要視される金型母型特にマイクロマシンの金型母型のめっきに好適である。特にレドックス系の還元剤を利用した場合には、幅広い成分濃度、pH、温度範囲において0.5μm/hr以下の析出速度での無電解めっきが容易に可能であり、一層好適に用いられる。
【0035】
前述のように本願発明のめっき液では微細な結晶粒子が得られ、素地成分の拡散を効果的に防ぐ性質があり、0.3μm未満の厚さにおいてもその効果が大きく、好適に用いられる。
【0036】
さらに、本願発明のめっき皮膜の上に、適切に選定された電気めっき液又は無電解めっき液を用いて上層めっきを施す事により、それらめっき液から得られるめっき皮膜の有する各種の電気的、物理的あるいはその他の特性を付与することができる。
【0037】
【実施例】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明は下記数例の実施例に限定されるものではなく、用途・目的によって請求の範囲内で適宜その条件を変更して用いることができる。
【0038】
実施例1
下記(A−1)のめっき浴を調整し、アンモニア水を用いてpHを5に調整した。浴温70℃で、Pd触媒処理を施したアルミナ板を用いてめっきを施した。(A−1)の浴からi−プロピルアルコールを除いた浴〔(A−2)と呼ぶ〕から同一条件でめっきを施し比較した。
・浴(A−1) 無電解金めっき浴
メルカプトコハク酸化金 0.02mol/L
三塩化チタン 0.02mol/L
クエン酸三ナトリウム 0.16mol/L
エチレンジアミン四酢酸 0.02mol/L
ヨードチロシン 10mg/L
i−プロピルアルコール 5ml/L
(A−1)の浴及び(A−2)の浴から、30分後に約0.5μmの金めっき皮膜が形成されたが、(A−1)の浴はめっき中及びめっき後も浴は安定で懸濁状の析出が認められなかったのに対し、(A−2)の浴においては、浴の自己分解が起こり、懸濁状の析出が認められた。
【0039】
実施例
下記(C−1)のめっき浴を調整し、水酸化カリウムを用いてpHを8に調整した。浴温80℃で、電気ニッケルめっきを施した銅板を用いてめっきを施した。(C−1)の浴からシクロヘキサノールを除いた浴〔(C−2)と呼ぶ〕から同一条件でめっきを施し比較した。
・浴(C−1) 無電解銀めっき浴
硝酸銀 0.02mol/L
アミノエタンチオール 0.07mol/L
N−アセチル−L−システイン 0.03mol/L
ヨードチロシン 10mg/L
シクロヘキサノール 5ml/L
(C−1)の浴及び(C−2)の浴から、30分後に約0.5μmの銀めっき皮膜が形成されたが、(C−1)の浴はめっき中及びめっき後も浴は安定で銀の異常析出が認められなかったのに対し、(C−2)の浴においては、浴の自己分解が起こり、銀の異常析出が認められた。
【0040】
実施例
下記(F−1)のめっき浴を調整し、アンモニア水を用いてpHを7に調整した。浴温60℃で、Pd触媒処理を施したアルミナ板を用いてめっきを施した。(F−1)の浴からi−プロピルアルコールを除いた浴〔(F−2)と呼ぶ〕から同一条件でめっきを施し比較した。
・浴(F−1) 無電解錫めっき浴
塩化第一錫 0.08mol/L
三塩化チタン 0.04mol/L
クエン酸三ナトリウム 0.32mol/L
ニトリロ三酢酸 0.16mol/L
エチレンジアミン三酢酸 0.08mol/L
ヨードチロシン 10mg/L
i−プロピルアルコール 5ml/L
(F−1)の浴及び(F−2)の浴から、30分後に約1μmの錫めっき皮膜が形成されたが、(F−1)の浴はめっき中及びめっき後も浴は安定で懸濁状の析出が認められなかったのに対し、(F−2)の浴においては、浴の自己分解が起こり、懸濁状の析出が認められた。
【0041】
実施例
下記(G−1)のめっき浴を調整し、アンモニア水を用いてpHを7に調整した。浴温60℃で、Pd触媒処理を施したアルミナ板を用いてめっきを施した。(G−1)の浴からシクロヘキサノールを除いた浴〔(G−2)と呼ぶ〕から同一条件でめっきを施し比較した。
・浴(G−1) 無電解錫−亜鉛合金めっき浴
塩化第一錫 0.08mol/L
硫酸亜鉛 0.01mol/L
三塩化チタン 0.04mol/L
クエン酸三ナトリウム 0.32mol/L
ニトリロ三酢酸 0.16mol/L
エチレンジアミン三酢酸 0.08mol/L
グリシン 0.005mol/L
ヨードチロシン 10mg/L
シクロヘキサノール 5ml/L
(G−1)の浴及び(G−2)の浴から、30分後に約0.7μmの錫−亜鉛合金めっき皮膜が形成されたが、(G−1)の浴はめっき中及びめっき後も浴は安定で懸濁状の析出が認められなかったのに対し、(G−2)の浴においては、浴の自己分解が起こり、懸濁状の析出が認められた。
【0042】
実施例
下記(H−1)のめっき浴を調整し、アンモニア水を用いてpHを7に調整した。浴温60℃で、Pd触媒処理を施したアルミナ板を用いてめっきを施した。(H−1)の浴からシクロヘキサノールを除いた浴〔(H−2)と呼ぶ〕から同一条件でめっきを施し比較した。
・浴(H−1) 無電解錫−インジウム合金めっき浴
塩化第一錫 0.08mol/L
硫酸インジウム 0.01mol/L
三塩化チタン 0.04mol/L
クエン酸三ナトリウム 0.32mol/L
ニトリロ三酢酸 0.16mol/L
エチレンジアミン三酢酸 0.08mol/L
グリシン 0.005mol/L
ヨードチロシン 10mg/L
シクロヘキサノール 5ml/L
(H−1)の浴及び(H−2)の浴から、30分後に約0.7μmの錫−インジウム合金めっき皮膜が形成されたが、(H−1)の浴はめっき中及びめっき後も浴は安定で懸濁状の析出が認められなかったのに対し、(H−2)の浴においては、浴の自己分解が起こり、懸濁状の析出が認められた。
【0043】
実施例
下記(I−1)のめっき浴を調整し、アンモニア水を用いてpHを7に調整した。浴温60℃で、Pd触媒処理を施したアルミナ板を用いてめっきを施した。(I−1)の浴からシクロヘキサノールを除いた浴〔(I−2)と呼ぶ〕から同一条件でめっきを施し比較した。
・浴(I−1) 無電解錫−ビスマス合金めっき浴
塩化第一錫 0.08mol/L
硫酸ビスマス 0.01mol/L
三塩化チタン 0.04mol/L
クエン酸三ナトリウム 0.32mol/L
ニトリロ三酢酸 0.16mol/L
エチレンジアミン三酢酸 0.08mol/L
グリシン 0.005mol/L
ヨードチロシン 10mg/L
シクロヘキサノール 5ml/L
(I−1)の浴及び(I−2)の浴から、30分後に約0.7μmの錫−ビスマス合金めっき皮膜が形成されたが、(I−1)の浴はめっき中及びめっき後も浴は安定で懸濁状の析出が認められなかったのに対し、(I−2)の浴においては、浴の自己分解が起こり、懸濁状の析出が認められた。
【0044】
実施例
下記(K−1)のめっき浴を調整し、アンモニア水を用いてpHを5に調整した。浴温70℃で、Pd触媒処理を施したアルミナ板を用いてめっきを施した。(K−1)の浴からi−プロピルアルコールを除いた浴〔(K−2)と呼ぶ〕から同一条件でめっきを施し比較した。
・浴(K−1) 無電解金めっき浴
トリス−(3−ヒドロキシプロピル)ホスフィン金
0.01mol/L
三塩化チタン 0.02mol/L
クエン酸三ナトリウム 0.16mol/L
ニトリロ三酢酸ナトリウム 0.02mol/L
ヨードチロシン 10mg/L
i−プロピルアルコール 5ml/L
(K−1)の浴及び(K−2)の浴から、30分後に約0.5μmの金めっき皮膜が形成されたが、(K−1)の浴はめっき中及びめっき後も浴は安定で懸濁状の析出が認められなかったのに対し、(K−2)の浴においては、浴の自己分解が起こり、懸濁状の析出が認められた。
【0045】
実施例
下記(L−1)のめっき浴を調整し、アンモニア水を用いてpHを5に調整した。浴温70℃で、Pd触媒処理を施したアルミナ板を用いてめっきを施した。(L−1)の浴からi−プロピルアルコールを除いた浴〔(L−2)と呼ぶ〕から同一条件でめっきを施し比較した。
・浴(L−1) 無電解銀めっき浴
メタンスルホン酸銀 0.02mol/L
1、2−ビス(2−ヒドロキシエチルチオ)エタン銀
0.15mol/L
抱水ヒドラジン 0.015mol/L
クエン酸三ナトリウム 0.02mol/L
ヨードチロシン 10mg/L
i−プロピルアルコール 5ml/L
(L−1)の浴及び(L−2)の浴から、30分後に約0.5μmの銀めっき皮膜が形成されたが、(L−1)の浴はめっき中及びめっき後も浴は安定で懸濁状の析出が認められなかったのに対し、(L−2)の浴においては、1ケ月の経時で浴の自己分解が起こり、懸濁状の析出が認められた。
【0046】
【発明の効果】
本発明によって、無電解めっき浴の浴分解の可能性が著しく低くなり、特に、浴負荷が大きく浴分解が生じ易かった微細な粒子や微細なパターンを有している金型、電気・電子回路等への無電解めっきが容易に行えるようになった。さらに、本発明のめっき浴から析出されためっき皮膜は、皮膜の結晶粒子が微細なため、表面形状に一層忠実な皮膜が得られるようになった。さらに、リンやホウ素などの不純物元素を含まない無電解ニッケルめっき皮膜を安定な浴から得ることも可能となり、従来の無電解めっき皮膜とは異なった良好な特性を有するため、改善された電気・電子的特性、磁気的特性、機械的特性、光学的特性等を有する電気・電子材料(部品)、電池材料(部品)、光通信材料(部品)などの製造が可能となった。

Claims (20)

  1. メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、シクロヘキサノール、2−メトキシエタノール及び2−(2−エトキシエトキシ)エタノールから選ばれる飽和脂肪族アルコールの1種又は2種以上を0.1〜200mL/Lと、還元剤としてのレドックス系金属イオンとを含有することを特徴とする無電解めっき浴。
  2. レドックス系金属イオンが3価チタンイオン、2価コバルトイオン及び2価鉄イオンから選ばれる請求項1記載の無電解めっき浴。
  3. 含硫黄化合物、含ヨウ素化合物、ポリアルキレングリコール又はアゾール類から選ばれた1種又は2種以上を安定化剤として更に含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の無電解めっき浴。
  4. 含硫黄化合物が、メルカプトカルボン酸及びチオジカルボン酸又はそれらの塩から選ばれた1種又は2種以上である請求項に記載の無電解めっき浴。
  5. メルカプトカルボン酸又はチオジカルボン酸が、チオグリコール酸、チオジグリコール酸又はチオジプロピオン酸のいずれかから選ばれた1種又は2種以上である請求項に記載の無電解めっき浴。
  6. 尿素、チオ尿素及びそれらの誘導体の1種又は2種以上を安定化剤として更に含有することを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の無電解めっき浴。
  7. カルボン酸、ヒドロキシカルボン酸、アミンカルボン酸、アミノ酸、エチレンジアミン、ホスフィン類、チオエーテル化合物、ジスルフィド化合物、亜硫酸、チオ硫酸又はそれらの塩類の1種又は2種以上を錯化剤として更に含有することを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の無電解めっき浴。
  8. カルボン酸が酢酸又はプロピオン酸であり、ヒドロキシカルボン酸がクエン酸、酒石酸又はシュウ酸であり、アミンカルボン酸がエチレンジアミン四酢酸、イミノジ酢酸又はニトリロトリ酢酸であり、アミノ酸がグリシン、グリシルグリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、リジン、セリン、トレオニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、メチオニン、アルギニン、オルニチン、ノルロイシン、ヒドロキシグルタミン酸、シスチン又はシステインであり、ホスフィンがトリス−(3−ヒドロキシプロピル)ホスフィンであり、チオエーテル化合物が1,2−ビス(2−ヒドロキシエチルチオ)エタンである請求項に記載の無電解めっき浴。
  9. pH緩衝剤の1種又は2種以上を更に含有することを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の無電解めっき浴。
  10. 元素周期律表の水銀を除く第4周期〜第6周期のIB族〜VB族又はVIII族の金属又はそれらの金属を主成分とする合金を析出させるためのめっき浴であることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の無電解めっき浴。
  11. 金属又はそれらの金属を主成分とする合金が、銅、銀、金、錫若しくはニッケル又はそれらを主成分とする合金である請求項10に記載の無電解めっき浴。
  12. 析出される金属がIB族又はVIII族の金属であって、更に100〜0.01ppmの濃度範囲でインジウム、鉛、亜鉛、タリウム又は錫から選ばれた金属のイオンの1種又は2種以上を含有することを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載の無電解めっき浴。
  13. 請求項1〜12のいずれかに記載の無電解めっき浴を用いて、0.5μm/hr未満の析出速度で無電解めっきを施すことを特徴とするめっき被覆体の製造方法。
  14. 請求項1〜12のいずれかに記載の無電解めっき浴を用いて、実質的にリン又はホウ素を含まない無電解めっきを析出させることを特徴とするめっき被覆体の製造方法。
  15. 平均粒径が1mm以下で電気抵抗が1×10-6Ω・m以上の非導電体又は半導体の粒子上に、請求項1〜12のいずれかに記載の無電解めっき浴を用いて無電解めっきを析出させることを特徴とするめっき被覆体の製造方法。
  16. 金型母型上に、請求項1〜12のいずれかに記載の無電解めっき浴を用いて無電解めっきを析出させることを特徴とするめっき被覆体の製造方法。
  17. 電気・電子回路上に、請求項1〜12のいずれかに記載の無電解めっき浴を用いて無電解めっきを析出させることを特徴とするめっき被覆体の製造方法。
  18. 無電解めっきの厚さが、0.3μm未満である請求項1317のいずれかに記載のめっき被覆体の製造方法。
  19. さらに電気めっき法又は無電解めっき法によって上層めっきを施すことを特徴とする請求項1318のいずれかに記載のめっき被覆体の製造方法。
  20. 請求項1〜12のいずれかに記載の無電解めっき浴を用いて、無電解めっきを施す工程を含む電気・電子材料、電池材料、光通信材料又は金型の製造方法。
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