JP4609705B2 - 銅系素材用銀メッキ浴 - Google Patents

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Description

本発明は銅系素材用の銀メッキ浴に関して、銅系素材上に白色光沢で緻密な銀皮膜を形成できるものを提供する。
銀、或は銀を含む合金のメッキ浴としては、下記の特許文献1〜11がある。このうち、特許文献1、4〜6は本出願人が提案したものである。
先ず、特許文献1には、3,6−ジチアオクタン−1,8―ジオールや、少なくとも1個以上のエーテル性酸素原子など含み、塩基性窒素原子を含まない脂肪族スルフィド系化合物を含有する銀又は銀合金メッキ浴が開示されている(請求項1〜3、段落19の化合物(20)参照)。上記スルフィド系化合物としては、チオビス(ドデカエチレングリコール)、ジチオビス(トリグリセロール)などが開示され(段落19の化合物(15)又は(18)参照)、これらを含有した銀合金メッキ浴として実施例4又は6が開示されている(段落71又は73参照)。
特許文献2には、分子内に2個のモノスルフィド基を有する水溶性イオウ化合物を含有する置換銀メッキ浴が開示されている(請求項1〜2参照)。上記イオウ化合物としては、3,6−ジチアオクタン−1,8―ジオール、3,6−ジチアオクタン−1,8―ジチオール、3,8−ジチアデカン−1,10―ジオール、3,7−ジチアノナン−1,9―ジカルボン酸などが開示され(段落14参照)、これらを含有した銀メッキ浴として実施例1〜3が開示されている(段落31〜34参照)。
特許文献3には、分子内に2個のモノスルフィド基を有する水溶性イオウ化合物を含有する置換錫−銀メッキ浴が開示されている(請求項1〜2参照)。上記イオウ化合物の具体例は前記特許文献1と共通であり(段落18参照)、これらを含有した錫−銀メッキ浴の実施例1〜3が開示されている(段落35〜39参照)。
特許文献4には、1個のモノ又はジスルフィド結合と、1個又は複数個の水酸基とを分子内に有する脂肪族スルフィド系化合物を含有し、或はさらに、チオ尿素類などを含有可能な無電解銀メッキ浴が開示されている(請求項1〜3参照)。1個のモノ又はジスルフィド結合と、1個又は複数個の水酸基とを分子内に有する脂肪族スルフィド系化合物には、ビス(ドデカエチレングリコール)チオエーテル、ビス(ペンタデカエチレングリコール)チオエーテル、2,2′−チオジグリコール、3,3′−チオジプロパノール、1,2−ビス(2−ヒドロキシエチルチオ)エタンなどが記載されている(段落15〜17参照)。
特許文献5には、モノ又はジスルフィド結合の両側或は片側に隣接してオキシエチレン基、オキシプロピレン基などを単数又は繰り返し分子内に有するオキシアルキレン型脂肪族スルフィド系化合物と、チオ尿素類とを含有する無電解スズ−銀合金メッキ浴が開示されている(請求項1〜3参照)。
上記オキシアルキレン型脂肪族スルフィド系化合物は、基本的に前記特許文献3に記載された脂肪族スルフィド系化合物と同じである。
特許文献6には、塩基性窒素原子を有するスルフィド系化合物と、チオ尿素類などの含窒素系化合物とを含有する無電解スズ−銀合金メッキ浴が開示されている(請求項1〜2参照)。
上記塩基性窒素原子を有するスルフィド系化合物には、2,2′−ジチオジアニリン、2,2′−ジピリジルジスルフィド、2,2′−ジチアジアゾリルジスルフィド、2,2′−ジピラジニルジスルフィドなどが記載されている(段落15〜16参照)。
特許文献7には、チオ尿素類、メルカプトコハク酸、アミノカルボン酸類(エチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)等)などの安定剤を含有する無電解錫−銀合金メッキ浴が開示されている(請求項1〜2参照)。実施例5〜6の錫−銀合金メッキ浴には、メルカプトコハク酸が含有されている(段落31〜32参照)。
特許文献8には、銀などの水溶性金属化合物、含窒素有機化合物(アミノ酸、チオ尿素など)、含イオウ有機化合物、含酸素有機化合物から選ばれた錯化剤を含有する置換メッキ液を用いる金属画像形成方法が開示されている(請求項1、5、7、10参照)。上記アミノ酸にはアラニン、システイン、メチオニンなどが記載され(段落47〜48参照)、実施例3には、チオ尿素、3,6−ジチアオクタンジオール、チオグリコールなどを含有する銀メッキ液が記載されている(段落91〜93参照)。但し、アミノ酸の含有液の実施例はない。
特許文献9には、上記特開文献7を2工程に分けて画像形成する方法であり、銀などの水溶性金属化合物、含窒素有機化合物(アミノ酸、チオ尿素など)、含イオウ有機化合物、含酸素有機化合物から選ばれた錯化剤を含有する置換メッキ液を用いる点は共通する(請求項1、5〜6参照)。上記アミノ酸にはアラニン、システイン、メチオニン等が記載され(段落36〜37参照)、実施例3には、エチレンチオ尿素、3,6−ジチアオクタンジオールなどを含有する銀メッキ液が記載されている(段落100〜101参照)。
特許文献10には、銀などの金属イオンと、EDTAなどの錯化剤と、アミノ酸などの抑制剤とを含有する置換メッキ浴が開示されている(請求項9、12〜15参照)。実施例4には、硝酸銀、硝酸銅、ジエチレントリアミンペンタ酢酸(DTPA)、メチオニンなどを含有するメッキ液が記載されている(段落38参照)。
特許文献11には、ピコリン酸、ニコチン酸などのカルボン酸置換窒素含有ヘテロ環化合物と、アミノ酸(厚さ抑制剤:グリシン、リジンなど:段落24)とを含有する置換銀メッキ浴が開示されている(請求項1〜3、6参照)。
特開2000−192279号公報 特開2000−309875号公報 特開2000−309876号公報 特開2002−356783号公報 特開2002−88481号公報 特開2000−265280号公報 特開平9−302476号公報 特開平11−186697号公報 特開平11−284314号公報 特開2002−180259号公報 特開2004−143589号公報
銅素地上に置換銀メッキを行う場合、銀の電極電位は銅より大きく貴に傾いている。
従来使用されているチオ尿素類(上記特許文献4〜9参照)は、銅及び銀の両者に錯化するが、その際に錯体を形成した銅イオンの電極電位を卑の方向に遷移させる作用が銀イオンより強いため、銀と銅の電極電位差は拡大し過ぎて置換したメッキ皮膜が粗くなり易く、また、析出した皮膜中へのイオウの吸着により皮膜が黄色っぽくなり、色調や緻密性に劣るメッキ皮膜しか得られない。
また、特許文献7などに開示されているEDTAなどのアミノカルボン酸類では、皮膜の良好な色調や緻密性は期待できず、特許文献1〜6のスルフィド類を使用した場合にも、得られる銀皮膜は外観や色調の点で不充分であり、さらなる改善が必要である。
本発明は、銅系素材上への置換銀メッキに際して、白色の緻密な銀皮膜を形成することを技術的課題とする。
本発明者らは、銅系素材に置換銀メッキを行う場合、前述の通り、チオ尿素類が銅イオンへの強い錯化作用を有することに鑑みて、チオ尿素類が属する含窒素化合物又は含イオウ化合物を置換銀メッキに適用した際に、メッキ皮膜への影響を鋭意研究した結果、特定の脂肪族チオアミノカルボン酸又はその塩、脂肪族メルカプトカルボン酸又はその塩、スルフィド類、或はピリジン環を有するチオ尿素誘導体よりなる含イオウ化合物を限定的に選択すると、錯体を形成した銅イオンと銀イオンの電極電位差をほど良く調整して、白色光沢の緻密なメッキ皮膜が形成できることを見い出して、本発明を完成した。
即ち、本発明1は、可溶性銀塩と、塩酸、硫酸、ホウフッ化水素酸などの無機酸、有機スルホン酸、カルボン酸などの有機酸から選ばれた酸又はその塩とを含有する置換銀メッキ浴において、
下記の錯化剤(a)〜(d)の少なくとも一種
(a)メチオニン、エチオニン、シスチン、N−アセチルシステイン、システインよりなる群から選ばれた脂肪族チオアミノカルボン酸又はその塩
(b)メルカプトイソ酪酸、メルカプト酢酸、ジメルカプト酢酸、2−メルカプトプロピオン酸、3−メルカプトプロピオン酸、メルカプトコハク酸、2,3−ジメルカプトコハク酸よりなる群から選ばれた脂肪族メルカプトカルボン酸又はその塩
(c)次の一般式(1)で表されるスルフィド類
Ra−S−(CH2CH2−S)n−Rb …(1)
(式中、nは0〜3の整数;n=0の場合、Ra及びRbは同一又は異なっても良く、夫々−(CH2)m−Rc又は−(A)j−(CH2)m−Rc、mは1〜5の整数、jは1〜100の整数、RcはOH(但し、m=1〜3の場合、Rcが共にOHであることはない)、置換、無置換アミノ、CO2M、SO3M、ピリジル基又はアミノフェニル基、Mはアルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム、アミン、Aはオキシエチレン、1,3−オキシプロピレン、1,2−オキシプロピレン、2−ヒドロキシ−1,3−オキシプロピレン、1,4−オキシブチレン、1,2−オキシブチレン、1,3−オキシブチレン;n=1の場合、Ra及びRbは同一又は異なっても良く、夫々−(CH2)m−Rc、mは0〜5の整数、Rcはピリジル基又はアミノフェニル基;n=2又は3の場合、Ra及びRbは同一又は異なっても良く、夫々−(CH2)m−Rc、−(A)j−Hであり、mは0〜5の整数、jは1〜100の整数、mが0の場合、Rcはピリジル基又はアミノフェニル基、mが1〜5の整数の場合、Rcは水酸基、置換、無置換アミノ、CO2M、SO3M、ピリジル基又はアミノフェニル基、Mは水素、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム、アミン、Aはオキシエチレン、1,3−オキシプロピレン、1,2−オキシプロピレン、2−ヒドロキシ−1,3−オキシプロピレン、1,4−オキシブチレン、1,2−オキシブチレン、1,3−オキシブチレンである)
(d)次の一般式(2)で表されるチオ尿素誘導体
Rd−NH−C(=S)−NH−Re …(2)
(式(2)中、Rd及びReは同一又は異なっても良く、夫々−(CH2)l−Rfである;lは1〜5の整数である;Rfはピリジル基である)
を含有することを特徴とする銅系素材用置換銀メッキ浴である。
本発明2は、上記本発明1において、さらに、アミノカルボン酸又はその塩、アミノホスホン酸又はその塩、ホスホン酸又はその塩、ホスホノカルボン酸又はその塩、ポリアミン類、アミノアルコール類、オキシカルボン酸又はその塩、ポリカルボン酸又はその塩の少なくとも一種を含有することを特徴とする請求項1に記載の銅系素材用置換銀メッキ浴である。
本発明3は、上記本発明2において、アミノカルボン酸、アミノホスホン酸、ホスホン酸、ホスホノカルボン酸、又はこれらの塩が、ヒドロキシエチルエチレンジアミントリ酢酸、N,N−ジカルボキシメチル−L−グルタミン酸、エチレンジアミンテトラ酢酸、ニトリロトリ酢酸、グルタミン酸、N,N−ジカルボキシメチル−L−アスパラギン酸、ジエチレントリアミンペンタ酢酸、トリエチレンテトラミンヘキサ酢酸、アスパラギン酸、ヒドロキシエチリデンジホスホン酸、ニトリロトリス(メチレンホスホン酸)、ホスホノブタントリカルボン酸、ヒドロキシエチルアミノジメチレンホスホン酸、ジエチレントリアミンペンタメチレンホスホン酸、N,N−ジカルボキシメチル−L−アラニン、1,3−プロパンジアミンテトラ酢酸、グリコールエーテルジアミンテトラ酢酸、エチレンジアミンジコハク酸、アラニン、ヒドロキシエチルイミノジ酢酸、グリシン、1,3−ジアミノ−2−ヒドロキシプロパンテトラ酢酸、オルニチン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)グリシンよりなる群から選ばれた化合物又はその塩の少なくとも一種であることを特徴とする銅系素材用無電解置換銀メッキ浴である。
本発明4は、上記本発明1〜3のいずれかにおいて、さらに、ノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤及び両性界面活性剤よりなる群から選ばれた少なくとも一種の界面活性剤を含有することを特徴とする銅系素材用置換銀メッキ浴である。
本発明5は、上記本発明1〜4のいずれかの置換メッキ浴を用いて、銅系素材上に銀メッキ皮膜を形成することを特徴とする置換銀メッキ方法である。
本発明6は、上記本発明1〜4のいずれかの置換メッキ浴を用いて、銀メッキ皮膜を形成したプリント回路板、半導体集積回路、抵抗、可変抵抗、コンデンサー、フィルター、インダクター、サーミスター、水晶振動子、スイッチ、リード線等の電子部品である。
前述した通り、チオ尿素類を錯化剤として使用すると、浴から得られたメッキ皮膜はイオウの吸着により黄色っぽくなってしまう。
また、特許文献1〜5のスルフィド類を使用した場合でも、得られる皮膜は外観や色調の点で不充分である。
本発明では、特定のチオアミノカルボン酸又はその塩、脂肪族メルカプトカルボン酸又はその塩、スルフィド類、チオ尿素誘導体を限定的に選択することにより、これらの特定化合物が銅と銀の両方に錯化し、その際に銅イオンばかりでなく、錯化した銀イオンの電極電位をも効果的に卑に遷移させて、銀と銅をほど良い電極電位差に調整できるため、銀の析出を円滑化して白色で緻密な銀皮膜を得ることができる。
従って、プリント基板、フィルムキャリアなどの電子部品の表面処理などに有効である。また、本発明の置換メッキ浴を用いて銀皮膜を形成し、これを下地皮膜として上層にスズメッキ皮膜を形成すると、スズ皮膜のホイスカーを良好に防止できる。
本発明は、第一に、可溶性銀塩と、ベース酸と、特定のチオアミノカルボン酸又はその塩、脂肪族メルカプトカルボン酸又はその塩、スルフィド類、ピリジン環を有するチオ尿素誘導体より選択された錯化剤とを含有する銅系素材用の置換銀メッキ浴であり、第二に、このメッキ浴を用いて銅系素材上に銀皮膜を形成する置換銀メッキ方法であり、第三に、このメッキ浴を用いて銀皮膜を形成した(銅系素材としての)各種電子部品である。
本発明では、銅系素材は銅又は銅合金を材質とする電子部品などの素材をいう。
本発明の置換銀メッキ浴は、上述の通り、基本的に有機酸浴、無機酸浴、或はその塩をベースとする浴である。
有機酸としては、排水処理が比較的容易なアルカンスルホン酸、アルカノールスルホン酸、芳香族スルホン酸等の有機スルホン酸、或は、脂肪族カルボン酸などが好ましい。
無機酸としては、ホウフッ化水素酸、ケイフッ化水素酸、スルファミン酸、塩酸、硫酸、硝酸、過塩素酸等が挙げられる。
上記の酸(又は塩)は単用又は併用でき、その含有量は0.1〜300g/Lであり、好ましくは20〜120g/Lである。
上記アルカンスルホン酸としては、化学式CnH2n+1SO3H(例えば、n=1〜5、好ましくは1〜3)で示されるものが使用でき、具体的には、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、1―プロパンスルホン酸、2―プロパンスルホン酸、1―ブタンスルホン酸、2―ブタンスルホン酸、ペンタンスルホン酸などの外、ヘキサンスルホン酸、デカンスルホン酸、ドデカンスルホン酸などが挙げられる。
上記アルカノールスルホン酸としては、化学式CmH2m+1-CH(OH)-CpH2p-SO3H(例えば、m=0〜6、p=1〜5)で示されるものが使用でき、具体的には、2―ヒドロキシエタン―1―スルホン酸、2―ヒドロキシプロパン―1―スルホン酸、2―ヒドロキシブタン―1―スルホン酸、2―ヒドロキシペンタン―1―スルホン酸などの外、1―ヒドロキシプロパン―2―スルホン酸、3―ヒドロキシプロパン―1―スルホン酸、4―ヒドロキシブタン―1―スルホン酸、2―ヒドロキシヘキサン―1―スルホン酸、2―ヒドロキシデカン―1―スルホン酸、2―ヒドロキシドデカン―1―スルホン酸などが挙げられる。
上記芳香族スルホン酸は、基本的にはベンゼンスルホン酸、アルキルベンゼンスルホン酸、フェノールスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、アルキルナフタレンスルホン酸などであって、具体的には、1−ナフタレンスルホン酸、2―ナフタレンスルホン酸、トルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸、p―フェノールスルホン酸、クレゾールスルホン酸、スルホサリチル酸、ニトロベンゼンスルホン酸、スルホ安息香酸、ジフェニルアミン―4―スルホン酸などが挙げられる。
上記脂肪族カルボン酸としては、一般に、炭素数1〜6のカルボン酸が使用できる。具体的には、酢酸、プロピオン酸、酪酸、クエン酸、酒石酸、グルコン酸、スルホコハク酸、トリフルオロ酢酸などが挙げられる。
上記可溶性銀塩は、浴中でAg+を生成する可溶性の塩類であれば任意のものが使用でき、特段の制約はなく、難溶性塩をも排除するものではない。
可溶性銀塩としては、硫酸銀、亜硫酸銀、炭酸銀、スルホコハク酸銀、硝酸銀、有機スルホン酸銀、ホウフッ化銀、クエン酸銀、酒石酸銀、グルコン酸銀、スルファミン酸銀、シュウ酸銀、酸化銀などの可溶性塩が使用でき、また、本来は難溶性であるが、スルフィド系化合物などの作用によりある程度の溶解性を確保できる塩化銀なども使用できる。銀塩の好ましい具体例としては、メタンスルホン酸銀、エタンスルホン酸銀、2−プロパノールスルホン酸銀、フェノールスルホン酸銀、クエン酸銀などが挙げられる。
当該可溶性銀塩の金属塩換算の含有量は、0.0001〜200g/Lであり、好ましくは0.1〜80g/Lである。
本発明の置換銀メッキ浴は、特定のチオアミノカルボン酸又はその塩、脂肪族メルカプトカルボン酸又はその塩、スルフィド類、チオ尿素誘導体より選択した限定的な含イオウ化合物を錯化剤に使用することに特徴がある。
これらの含イオウ化合物は夫々を単用又は併用でき、或は、異種を複用(例えば、チオアミノカルボン酸とスルフィド類とを複用)できる。含イオウ化合物の添加量は浴中の銀イオンに対して1.1〜50倍モルであり、好ましくは2.0〜20倍モルである。1.1倍モルより少ないと、銀イオンの錯化による安定性が不充分であり、また、効果的な置換メッキにより所望する膜厚のメッキ皮膜を得るのに長時間を要する。一方、50倍モルを越えても当該効果にあまり差異はなく、コストの無駄である。
上記脂肪族チオアミノカルボン酸は、メチオニン、エチオニン、シスチン、N−アセチルシステイン、システインよりなる群から選択でき、メチオニン、エチオニン、シスチン、N−アセチルシステインが好ましい。
上記脂肪族メルカプトカルボン酸は、メルカプトイソ酪酸、メルカプト酢酸、ジメルカプト酢酸、2−メルカプトプロピオン酸、3−メルカプトプロピオン酸、メルカプトコハク酸、2,3−ジメルカプトコハク酸よりなる群から選択でき、メルカプト酢酸、ジメルカプト酢酸、メルカプトコハク酸が好ましい。
上記スルフィド類は一般式(1)で表される特定の化合物である。
当該一般式(1)で表されるスルフィド類としては、2,2′−チオビス(エチルアミン)、チオジプロピオン酸、チオジエタンスルホン酸、3,3’−チオビス(プロピルアミン)、チオジ酪酸、チオジプロパンスルホン酸、2−(2−ヒドロキシエチルチオ)エタンスルホン酸、3,6,9−トリチアウンデカン−1,11−ジオール、4,7,10−トリチアトリデカン−1,2,12,13−テトラオール、4,7,10−トリチアトリデカン−1,13−ジスルホン酸ジナトリウム、3,6,9,12−テトラチアテトラデカン−1,14−ジスルホン酸ジナトリウム、3,6,9−トリチアウンデカン−1,11−ジスルホン酸、4,7,10,13−テトラチアヘキサデカン−1,16−ジスルホン酸、1,8−ビス(2−ピリジル)−3,6−ジチアオクタン、3,6,9−トリチアウンデカン−1,11−ジカルボン酸、1,8−ビス(4−ピリジル)−3,6−ジチアオクタン、1,11−ビス(2−ピリジル)−3,6,9−トリチアウンデカン、6,9,12−トリチア−3,15−ジオキサヘプタデカン−1,17−ジオール(別称:3,6,9−トリチアウンデカン−1,11−ビス(2−ヒドロキシエチル)エーテル)などが挙げられる。
好ましい例は、2−(2−ヒドロキシエチルチオ)エタンスルホン酸、3,6,9,12−テトラチアテトラデカン−1,14−ジスルホン酸ジナトリウム、4,7,10−トリチアトリデカン−1,2,12,13−テトラオール、3,6,9−トリチアウンデカン−1,11−ジスルホン酸、4,7,10−トリチアトリデカン−1,13−ジスルホン酸ジナトリウム、1,8−ビス(4−ピリジル)−3,6−ジチアオクタン、1,11−ビス(2−ピリジル)−3,6,9−トリチアウンデカン、6,9,12−トリチア−3,15−ジオキサヘプタデカン−1,17−ジオールである。
上記スルフィド類の一般式(1)において、n=0のとき、Ra又はRbは−(CH2)m−Rc又は−(A)j−(CH2)m−Rcであり、この付加数mが1〜3のときには、Rcは共にOHでないため、例えば、特許文献3〜4に記載されているチオジグリコール(OH−CH2CH2−S−CH2CH2−OH)、チオジプロピレングリコール(OH−CH2CH2CH2−S−CH2CH2CH2−OH)などは−(CH2)m−Rc(m=2又は3、両端のRc=OH)に該当することに鑑みて、本発明のスルフィド類から排除される。また、n=0で、且つRa又はRbが−(A)j−(CH2)m−Rcの場合(Aは特定のオキシアルキレン)、当該スルフィドは分子内にオキシアルキレン鎖を有するが、オキシアルキレン鎖の末端の(CH2)m−Rcにおいて、m=2〜3の場合のRcは共にOHではないため、特許文献3〜4に記載されているビス(ペンタデカエチレングリコール)チオエーテル(H−(OCH2CH2)15−S−(CH2CH2O)15−H)などのスルフィド類は本発明から排除される。
一方、n=1のとき、Ra又はRbは−(CH2)m−Rc(mは0〜5)であり、このスルフィドの末端部分Rcはピリジル基、アミノフェニル基であるため、特許文献1に記載されている3,6−ジチアオクタン−1,8−ジオール(HO−CH2CH2−S−CH2CH2−S−CH2CH2−OH)などは−(CH2)m−Rc(n=1、m=3、Rc=OH)に該当することに鑑みて、本発明のスルフィド類から排除される。
そこで、前述のスルフィドの具体例を一般式(1)に則して説明すると、例えば、付加数nが0であり、Ra、Rbが−(CH2)2−NH2(m=2、Rc=アミノ基)の場合には、H2N−CH2CH2−S−CH2CH2−NH2を表し、2,2′−チオビス(エチルアミン)を意味する。付加数nが0であり、Raが−(CH2)2−OH(m=2、Rc=OH)であり、Rbが−(CH2)2−SO3H(m=2、Rc=SO3H)の場合には、HO−CH2CH2−S−CH2CH2−SO3Hを表し、2−(2−ヒドロキシエチルチオ)エタンスルホン酸を意味する。付加数nが0であり、Raが−(CH2)2−OH(m=2、Rc=OH)であり、Rbが−(CH2)2−SO3H(m=2、Rc=SO3H)の場合には、HO−CH2CH2−S−CH2CH2−SO3Hを表し、2−(2−ヒドロキシエチルチオ)エタンスルホン酸を意味する。付加数nが0であり、RaとRbが−(CH2)3−NH2(m=3、Rc=NH2)の場合には、H2N−CH2CH2CH2−S−CH2CH2CH2−NH2を表し、3,3′−チオビス(プロピルアミン)を意味する。
付加数nが1であり、Ra及びRbが共に−(CH2)−Py(m=1、Py=ピリジン環(具体的には、2−ピリジル))の場合には、Py−CH2CH2−S−(CH2CH2S)−CH2CH2−Pyを表し、1,8−ビス(2−ピリジル)−3,6−ジチアオクタンを意味する。 付加数nが2であり、Ra及びRbが共に−(CH2)2−SO3H(m=2、Rc=SO3H)の場合には、HO3S−CH2CH2−S−(CH2CH2S)2−CH2CH2−SO3Hを表し、3,6,9−トリチアウンデカン−1,11−ジスルホン酸を意味する。付加数nが2であり、Ra及びRbが共に−(A)j−H(A=2−ヒドロキシ−1,3−オキシプロピレン(−CH2CH(OH)−CH2O−)、j=1)の場合には、H−(OCH2(OH)HCCH2)−S−(CH2CH2S)2−(CH2CH(OH)CH2O)−Hを表し、4,7,10−トリチアトリデカン−1,2,12,13−テトラオールを意味する。付加数nが2であり、Ra及びRbが共に−(CH2)3−SO3Na(m=3、Rc=SO3M(M=Naである))の場合には、NaO3S−CH2CH2CH2−S−(CH2CH2S)2−CH2CH2CH2−SO3Naを表し、4,7,10−トリチアトリデカン−1,13−ジスルホン酸ジナトリウムを意味する。
上記チオ尿素誘導体は一般式(2)で表されるピリジン環を有するチオ尿素系化合物である。当該チオ尿素誘導体としては、1,3−ビス(3−ピリジルメチル)−2−チオ尿素、1,3−ビス(4−ピリジルメチル)−2−チオ尿素、1,3−ビス(3−ピリジルエチル)−2−チオ尿素、1,3−ビス(4−ピリジルペンチル)−2−チオ尿素などが挙げられ、1,3−ビス(3−ピリジルメチル)−2−チオ尿素、1,3−ビス(3−ピリジルエチル)−2−チオ尿素が好ましい。
例えば、一般式(2)において、Rd及びReが共に−(CH2)−Py(p=1、Py=ピリジン環)の場合には、Py−CH2−NH−C(=S)−NH−CH2−Pyを表し、1,3−ビス(3−ピリジルメチル)−2−チオ尿素、又は1,3−ビス(4−ピリジルメチル)−2−チオ尿素を意味する。
本発明2に示すように、本発明の置換銀メッキ浴には、さらに、本発明の特定の錯化剤らよって卑にシフトした銀イオンと銅イオンの電位差を好適に調整すると共に、銀イオンと銅イオンを安定化し、また、銅系素材金属から溶出した不純物金属イオンのメッキ浴への悪影響を防止し、浴の安定化を補完・促進する、いわば隠蔽作用を発揮させる見地から、アミノカルボン酸又はその塩、アミノホスホン酸又はその塩、ホスホン酸又はその塩、ホスホノカルボン酸又はその塩、ポリアミン類、アミノアルコール類、オキシカルボン酸又はその塩、ポリカルボン酸又はその塩などの少なくとも一種を添加することができる。 これらの化合物の浴中での添加量は0.01〜500g/L、好ましくは1〜300g/Lである。
上記アミノカルボン酸としては、エチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)、エチレンジアミンテトラ酢酸二ナトリウム塩(EDTA・2Na)、ヒドロキシエチルエチレンジアミントリ酢酸(HEDTA)、ジエチレントリアミンペンタ酢酸(DTPA)、トリエチレンテトラミンヘキサ酢酸(TTHA)、エチレンジアミンテトラプロピオン酸、ニトリロトリ酢酸(NTA)、イミノジ酢酸(IDA)、イミノジプロピオン酸(IDP)、メタフェニレンジアミンテトラ酢酸、1,2−ジアミノシクロヘキサン−N,N,N′,N′−テトラ酢酸、アミノプロピオン酸、ジアミノプロピオン酸、アミノ吉草酸、ヒドロキシエチルエチレンジアミントリ酢酸、N,N−ジカルボキシメチル−L−グルタミン酸、グルタミン酸、N,N−ジカルボキシメチル−L−アスパラギン酸、アスパラギン酸、N,N−ジカルボキシメチル−L−アラニン、アラニン、ヒドロキシエチルイミノジ酢酸、グリシン、1,3−ジアミノ−2−ヒドロキシプロパンテトラ酢酸、オルニチン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)グリシンなどが挙げられる。
上記アミノホスホン酸としては、ヒドロキシエチルアミノジメチレンホスホン酸、ジエチレントリアミンペンタメチレンホスホン酸、アミノトリメチレンホスホン酸、エチレンジアミンテトラメチレンホスホン酸、ヘキサメチレンジアミンテトラメチレンホスホン酸などが挙げられる。
上記ホスホン酸としては、ヒドロキシエチリデンジホスホン酸、ニトリロトリス(メチレンホスホン酸)などが挙げられる。
上記ホスホノカルボン酸としては、ホスホノブタントリカルボン酸、ホスホノプロパントリカルボン酸、ホスホノペンタントリカルボン酸などが挙げられる。
上記ポリアミン類としては、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ペンタエチレンヘキサミン、ヘキサメチレンジアミン、エチレンジアミンテトラメチレンリン酸、ジエチレントリアミンペンタメチレンリン酸、アミノトリメチレンリン酸、アミノトリメチレンリン酸五ナトリウム塩などが挙げられる。
上記アミノアルコール類としては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノプロパノールアミン、ジプロパノールアミン、トリプロパノールアミンなどが挙げられる。
上記オキシカルボン酸としては、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、グルコン酸、グリコール酸、グルコヘプトン酸などが挙げられるが、浴に添加するベースの酸にこれらのオキシカルボン酸を選択するときは、このベースの酸で兼用することができる。
上記ポリカルボン酸としては、コハク酸、マロン酸、グルタル酸、アジピン酸などが挙げられる。
特に、上記隠蔽作用などを効果的に促進するためには、列挙した上記化合物の中でも、特定のアミノカルボン酸、アミノホスホン酸、ホスホン酸、ホスホノカルボン酸、又はこれらの塩が好適である。
本発明3に示すように、特定のアミノカルボン酸には、ヒドロキシエチルエチレンジアミントリ酢酸、N,N−ジカルボキシメチル−L−グルタミン酸、エチレンジアミンテトラ酢酸、ニトリロトリ酢酸、グルタミン酸、N,N−ジカルボキシメチル−L−アスパラギン酸、ジエチレントリアミンペンタ酢酸、トリエチレンテトラミンヘキサ酢酸、アスパラギン酸、N,N−ジカルボキシメチル−L−アラニン、1,3−プロパンジアミンテトラ酢酸、グリコールエーテルジアミンテトラ酢酸、エチレンジアミンジコハク酸、アラニン、ヒドロキシエチルイミノジ酢酸、グリシン、1,3−ジアミノ−2−ヒドロキシプロパンテトラ酢酸、オルニチン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)グリシンが挙げられる。
同様に、特定のアミノホスホン酸には、ヒドロキシエチルアミノジメチレンホスホン酸、ジエチレントリアミンペンタメチレンホスホン酸が挙げられる(本発明3参照)。
同様に、特定のホスホン酸には、ヒドロキシエチリデンジホスホン酸、ニトリロトリス(メチレンホスホン酸)が挙げられる(本発明3参照)。
同様に、特定のホスホノカルボン酸には、ホスホノブタントリカルボン酸が挙げられる(本発明3参照)。
尚、上述の通り、これらの特定のアミノカルボン酸の塩、アミノホスホン酸の塩、ホスホン酸の塩、又はホスホノカルボン酸の塩も同様に好適である。
本発明の置換銀メッキ浴には、上述の成分以外に、目的に応じて公知の界面活性剤、平滑剤、光沢剤、半光沢剤、pH調整剤、緩衝剤、防腐剤などの各種添加剤を含有できることはいうまでもない。
上記界面活性剤は、析出する銀皮膜の緻密性、平滑性、密着性などの補助的改善を目的として含有され、ノニオン系界面活性剤、両性界面活性剤、カチオン系界面活性剤、或はアニオン系界面活性剤を単用又は併用できる(本発明4参照)。
その添加量は0.01〜100g/L、好ましくは0.1〜50g/Lである。
当該ノニオン系界面活性剤の具体例としては、C1〜C20アルカノール、フェノール、ナフトール、ビスフェノール類、(ポリ)C1〜C25アルキルフェノール、(ポリ)アリールアルキルフェノール、C1〜C25アルキルナフトール、C1〜C25アルコキシル化リン酸(塩)、ソルビタンエステル、ポリアルキレングリコール、C1〜C22脂肪族アミン、C1〜C22脂肪族アミドなどにエチレンオキシド(EO)及び/又はプロピレンオキシド(PO)を2〜300モル付加縮合させたものや、C1〜C25アルコキシル化リン酸(塩)などが挙げられる。
上記エチレンオキシド(EO)及び/又はプロピレンオキシド(PO)を付加縮合させるC1〜C20アルカノールとしては、メタノール、エタノール、n−ブタノール、t−ブタノール、n−ヘキサノール、オクタノール、デカノール、ラウリルアルコール、テトラデカノール、ヘキサデカノール、ステアリルアルコール、エイコサノール、オレイルアルコール、ドコサノールなどが挙げられる。同じく上記ビスフェノール類としては、ビスフェノールA、ビスフェノールB、ビスフェノールFなどが挙げられる。上記(ポリ)C1〜C25アルキルフェノールとしては、モノ、ジ、若しくはトリアルキル置換フェノール、例えば、p−メチルフェノール、p−ブチルフェノール、p−イソオクチルフェノール、p−ノニルフェノール、p−ヘキシルフェノール、2,4−ジブチルフェノール、2,4,6−トリブチルフェノール、ジノニルフェノール、p−ドデシルフェノール、p−ラウリルフェノール、p−ステアリルフェノールなどが挙げられる。上記アリールアルキルフェノールとしては、2−フェニルイソプロピルフェノール、クミルフェノール、(モノ、ジ又はトリ)スチレン化フェノール、(モノ、ジ又はトリ)ベンジルフェノールなどが挙げられる。上記C1〜C25アルキルナフトールのアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ヘキシル、オクチル、デシル、ドデシル、オクタデシルなどが挙げられ、ナフタレン核の任意の位置にあって良い。上記ポリアルキレングリコールとしては、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン・コポリマーなどが挙げられる。
上記C1〜C25アルコキシル化リン酸(塩)は、下記の一般式(a)で表されるものである。
Ra・Rb・(MO)P=O …(a)
(式(a)中、Ra及びRbは同一又は異なるC1〜C25アルキル、但し、一方がHであっても良い。MはH又はアルカリ金属を示す。)
上記ソルビタンエステルとしては、モノ、ジ又はトリエステル化した1,4−、1,5−又は3,6−ソルビタン、例えばソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンジステアレート、ソルビタンジオレエート、ソルビタン混合脂肪酸エステルなどが挙げられる。上記C1〜C22脂肪族アミンとしては、プロピルアミン、ブチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、デシルアミン、ラウリルアミン、ミリスチルアミン、ステアリルアミン、オレイルアミン、牛脂アミン、エチレンジアミン、プロピレンジアミンなどの飽和及び不飽和脂肪酸アミンなどが挙げられる。上記C1〜C22脂肪族アミドとしては、プロピオン酸、酪酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、ベヘン酸、ヤシ油脂肪酸、牛脂脂肪酸などのアミドが挙げられる。
更に、上記ノニオン系界面活性剤としては、
1N(R2)2→O
(上式中、R1はC5〜C25アルキル又はRCONHR3(R3はC1〜C5アルキレンを示す)、R2は同一又は異なるC1〜C5アルキルを示す。)などで示されるアミンオキシドを用いることができる。
上記カチオン系界面活性剤としては、下記の一般式(b)で表される第4級アンモニウム塩
(R1・R2・R3・R4N)+・X- …(b)
(式(b)中、Xはハロゲン、ヒドロキシ、C1〜C5アルカンスルホン酸又は硫酸、R1、R2、R3及びR4は同一又は異なるC1〜C20アルキル、アリール又はベンジルを示す。)或は、下記の一般式(c)で表されるピリジニウム塩などが挙げられる。
6−(C54N−R5)+・X- …(c)
(式(c)中、C54Nはピリジン環、Xはハロゲン、ヒドロキシ、C1〜C5アルカンスルホン酸又は硫酸、R5はC1〜C20アルキル、R6はH又はC1〜C10アルキルを示す。)
塩の形態のカチオン系界面活性剤の例としては、ラウリルトリメチルアンモニウム塩、ステアリルトリメチルアンモニウム塩、ラウリルジメチルエチルアンモニウム塩、オクタデシルジメチルエチルアンモニウム塩、ジメチルベンジルラウリルアンモニウム塩、セチルジメチルベンジルアンモニウム塩、オクタデシルジメチルベンジルアンモニウム塩、トリメチルベンジルアンモニウム塩、トリエチルベンジルアンモニウム塩、ジメチルジフェニルアンモニウム塩、ベンジルジメチルフェニルアンモニウム塩、ヘキサデシルピリジニウム塩、ラウリルピリジニウム塩、ドデシルピリジニウム塩、ステアリルアミンアセテート、ラウリルアミンアセテート、オクタデシルアミンアセテートなどが挙げられる。
上記アニオン系界面活性剤としては、アルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、{(モノ、ジ、トリ)アルキル}ナフタレンスルホン酸塩などが挙げられる。アルキル硫酸塩としては、ラウリル硫酸ナトリウム、オレイル硫酸ナトリウムなどが挙げられる。ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩としては、ポリオキシエチレン(EO5)ノニルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレン(EO15)ドデシルエーテル硫酸ナトリウムなどが挙げられる。ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩としては、ポリオキシエチレン(EO15)ノニルフェニルエーテル硫酸塩などが挙げられる。アルキルベンゼンスルホン酸塩としては、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどが挙げられる。また、{(モノ、ジ、トリ)アルキル}ナフタレンスルホン酸塩としては、ナフタレンスルホン酸塩、ジブチルナフタレンスルホン酸ナトリウム、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物などが挙げられる。
上記両性界面活性剤としては、カルボキシベタイン、イミダゾリンベタイン、スルホベタイン、アミノカルボン酸などが挙げられる。また、エチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシドとアルキルアミン又はジアミンとの縮合生成物の硫酸化、或はスルホン酸化付加物も使用できる。
代表的なカルボキシベタイン、或はイミダゾリンベタインは、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ミリスチルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ステアリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン、2−ウンデシル−1−カルボキシメチル−1−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、2−オクチル−1−カルボキシメチル−1−カルボキシエチルイミダゾリニウムベタインなどが挙げられ、硫酸化及びスルホン酸化付加物としてはエトキシル化アルキルアミンの硫酸付加物、スルホン酸化ラウリル酸誘導体ナトリウム塩などが挙げられる。
上記スルホベタインとしては、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアンモニウム−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸、N−ココイルメチルタウリンナトリウム、N−パルミトイルメチルタウリンナトリウムなどが挙げられる。アミノカルボン酸としては、ジオクチルアミノエチルグリシン、N−ラウリルアミノプロピオン酸、オクチルジ(アミノエチル)グリシンナトリウム塩などが挙げられる。
上記平滑剤としては、β−ナフトール、β−ナフトール−6−スルホン酸、β−ナフタレンスルホン酸、ベンズアルデヒド、m−クロロベンズアルデヒド、p−ニトロベンズアルデヒド、p−ヒドロキシベンズアルデヒド、(o−、p−)メトキシベンズアルデヒド、バニリン、(2,4−、2,6−)ジクロロベンズアルデヒド、(o−、p−)クロロベンズアルデヒド、1−ナフトアルデヒド、2−ナフトアルデヒド、2(4)−ヒドロキシ−1−ナフトアルデヒド、2(4)−クロロ−1−ナフトアルデヒド、2(3)−チオフェンカルボキシアルデヒド、2(3)−フルアルデヒド、3−インドールカルボキシアルデヒド、サリチルアルデヒド、o−フタルアルデヒド、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、パラアルデヒド、ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、プロピオンアルデヒド、n−バレルアルデヒド、アクロレイン、クロトンアルデヒド、グリオキサール、アルドール、スクシンジアルデヒド、カプロンアルデヒド、イソバレルアルデヒド、アリルアルデヒド、グルタルアルデヒド、1−ベンジリデン−7−ヘプタナール、2,4−ヘキサジエナール、シンナムアルデヒド、ベンジルクロトンアルデヒド、アミン−アルデヒド縮合物、酸化メシチル、イソホロン、ジアセチル、ヘキサンジオン−3,4、アセチルアセトン、ベンジリデンアセトン、3−クロロベンジリデンアセトン、sub.ピリジリデンアセトン、sub.フルフリジンアセトン、sub.テニリデンアセトン、4−(1−ナフチル)−3−ブテン−2−オン、4−(2−フリル)−3−ブテン−2−オン、4−(2−チオフェニル)−3−ブテン−2−オン、クルクミン、ベンジリデンアセチルアセトン、ベンザルアセトン、アセトフェノン、(2,4−、3,4−)ジクロロアセトフェノン、ベンジリデンアセトフェノン、2−シンナミルチオフェン、2−(ω−ベンゾイル)ビニルフラン、ビニルフェニルケトン、アクリル酸、メタクリル酸、エタクリル酸、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸ブチル、クロトン酸、プロピレン−1,3−ジカルボン酸、ケイ皮酸、(o−、m−、p−)トルイジン、(o−、p−)アミノアニリン、アニリン、(o−、p−)クロロアニリン、(2,5−、3,4−)クロロメチルアニリン、N−モノメチルアニリン、4,4′−ジアミノジフェニルメタン、N−フェニル−(α−、β−)ナフチルアミン、メチルベンズトリアゾール、1,2,3−トリアジン、1,2,4−トリアジン、1,3,5−トリアジン、1,2,3−ベンズトリアジン、イミダゾール、2−ビニルピリジン、インドール、キノリン、アニリン、フェナントロリン、ネオクプロイン、ピコリン酸、モノエタノールアミンとo−バニリンの反応物、ポリビニルアルコール、カテコール、ハイドロキノン、レゾルシン、ポリエチレンイミン、エチレンジアミンテトラ酢酸二ナトリウム、ポリビニルピロリドンなどが挙げられる。
また、ゼラチン、ポリペプトン、N−(3−ヒドロキシブチリデン)−p−スルファニル酸、N−ブチリデンスルファニル酸、N−シンナモイリデンスルファニル酸、2,4−ジアミノ−6−(2′−メチルイミダゾリル(1′))エチル−1,3,5−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−(2′−エチル−4−メチルイミダゾリル(1′))エチル−1,3,5−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−(2′−ウンデシルイミダゾリル(1′))エチル−1,3,5−トリアジン、サリチル酸フェニル、或は、ベンゾチアゾール類も平滑剤として有効である。
上記ベンゾチアゾール類としては、ベンゾチアゾール、2-メチルベンゾチアゾール、2-メルカプトベンゾチアゾール、2-(メチルメルカプト)ベンゾチアゾール、2-アミノベンゾチアゾール、2-アミノ-6-メトキシベンゾチアゾール、2-メチル-5-クロロベンゾチアゾール、2-ヒドロキシベンゾチアゾール、2-アミノ-6-メチルベンゾチアゾール、2-クロロベンゾチアゾール、2,5-ジメチルベンゾチアゾール、6-ニトロ-2-メルカプトベンゾチアゾール、5-ヒドロキシ-2-メチルベンゾチアゾール、2-ベンゾチアゾールチオ酢酸などが挙げられる。
上記pH調整剤としては、塩酸、硫酸等の各種の酸、アンモニア水、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等の各種の塩基などが挙げられる。
上記緩衝剤としては、ホウ酸類、ホスフィン酸やホスホン酸、リン酸、トリポリリン酸などのリン酸類、シュウ酸、コハク酸などのジカルボン酸類、乳酸、酒石酸などのオキシカルボン酸類など塩化アンモニウム、硫酸アンモニウムなどが挙げられる。
上記防腐剤としては、ホウ酸、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、塩化ベンザルコニウム、フェノール、フェノールポリエトキシレート、チモール、レゾルシン、イソプロピルアミン、グアヤコールなどが挙げられる。
上記消泡剤としては、プルロニック界面活性剤、高級脂肪族アルコール、アセチレンアルコール及びそれらのポリアルコキシレートなどが挙げられる。
本発明5は、本発明1〜4の置換銀メッキ浴を用いて、銅系素材上に銀皮膜を形成する置換銀メッキ方法である。
置換銀メッキを行う場合、PHは8.0以下が好ましく、浴の撹拌は必要に応じて行う場合もある。また、浴温は10〜80℃程度であり、メッキ時間は膜厚に依存して決定される。
当該置換銀メッキは、基本的に、被メッキ物をメッキ液に通常1秒〜30分間浸漬し、所望の膜厚までメッキ皮膜を析出させることにより行う。
本発明6は、銅系素材としての電子部品に本発明の置換銀メッキを適用したものである。即ち、本発明1〜4の置換銀メッキ浴を用いて銀皮膜を形成した電子部品であり、好ましい電子部品としては、プリント回路板、半導体集積回路、抵抗、可変抵抗、コンデンサー、フィルター、インダクター、サーミスター、水晶振動子、スイッチ、リード線などが挙げられる。
以下、本発明の置換銀メッキ浴の実施例、当該メッキ浴から得られた銀皮膜の外観評価試験例を順次説明する。
尚、本発明は下記の実施例、試験例に拘束されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で任意の変形をなし得ることは勿論である。
《置換銀メッキ浴の実施例》
実施例1〜13のうち、実施例1〜2は錯化剤として脂肪族チオアミノカルボン酸を単用した例、実施例3〜8は一般式(1)に属するスルフィド類の単用例、実施例9は一般式(2)に属するチオ尿素誘導体の単用例、実施例10と12は脂肪族チオアミノカルボン酸と一般式(1)に属するスルフィド類の複用例、実施例11と13は脂肪族メルカプトカルボン酸と一般式(1)に属するスルフィド類の複用例である。実施例5、7、9は本発明3の特定のアミノカルボン酸又はホスホノカルボン酸を添加した例、その他の実施例は全て同アミノカルボン酸を添加しない例である。
また、比較例1は本発明の錯化剤を含まないブランク例である。比較例2は本発明の錯化剤に代えて、冒述の特許文献4〜9に準拠してチオ尿素を含有した例である。比較例3は本発明の錯化剤に代えて、冒述の特許文献7などに準拠してEDTAを含有した例である。比較例4〜5は本発明の錯化剤に代えて、冒述の特許文献1、4〜5又は特許文献2〜3や8〜9に準拠したスルフィド類に属するチオジグリコール又は3,6−ジチアオクタン−1,8−ジオールを含有した例である。
尚、下記の実施例1〜13及び比較例2〜5の各メッキ浴の組成において、カッコ内の数値は所定の錯化剤の銀イオンに対する含有量(単位:倍モル)を表し、例えば、(×10)は銀イオンに対して10倍モルの含有量を意味する。
(1)実施例1
下記の組成で置換銀メッキ浴を建浴した。
メタンスルホン酸銀(Ag+として) 1g/L
メタンスルホン酸 50g/L
メチオニン 13.8g/L(×10)
(2)実施例2
下記の組成で置換銀メッキ浴を建浴した。
p−フェノールスルホン酸銀(Ag+として) 3g/L
p−フェノールスルホン酸 50g/L
N−アセチルシステイン 36.3g/L(×8)
(3)実施例3
下記の組成で置換銀メッキ浴を建浴した。
メタンスルホン酸銀(Ag+として) 5g/L
エタンスルホン酸 70g/L
3,6,9,12−テトラチアテトラデカン
−1,14−ジスルホン酸ジナトリウム 24.1g/L(×1.1)
(4)実施例4
下記の組成で置換銀メッキ浴を建浴した。
エタンスルホン酸銀(Ag+として) 2g/L
メタンスルホン酸 80g/L
2−(2−ヒドロキシエチルチオ)エタンスルホン酸 34.5g/L(×10)
(5)実施例5
下記の組成で置換銀メッキ浴を建浴した。
エタンスルホン酸銀(Ag+として) 2g/L
2−ヒドロキシプロパン−1−スルホン酸 60g/L
ヒドロキシエチルイミノジ酢酸 30g/L
2−ドデシル−N−カルボキシメチル
−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン 2g/L
4,7,10−トリチアトリデカン
−1,2,12,13−テトラオール 11.2g/L(×2)
(6)実施例6
下記の組成で置換銀メッキ浴を建浴した。
硝酸銀(Ag+として) 1g/L
メタンスルホン酸 70g/L
3,6,9−トリチアウンデカン−1,11−ジスルホン酸17.2g/L(×5)
pH 3.5(KOHにて調整)
(7)実施例7
下記の組成で置換銀メッキ浴を建浴した。
メタンスルホン酸銀(Ag+として) 4g/L
メタンスルホン酸 75g/L
グルコン酸 45g/L
ホスホノブタントリカルボン酸 10g/L
4,7,10−トリチアトリデカン
−1,13−ジスルホン酸ジナトリウム 51.7g/L(×3.5)
(8)実施例8
下記の組成で置換銀メッキ浴を建浴した。
クエン酸銀(Ag+として) 1g/L
メタンスルホン酸 80g/L
1,8−ビス(2−ピリジル)−3,6−ジチアオクタン 8.5g/L(×3)
ドデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド 5g/L
(9)実施例9
下記の組成で置換銀メッキ浴を建浴した。
メタンスルホン酸銀(Ag+として) 1g/L
メタンスルホン酸 50g/L
N,N−ジカルボキシメチル−L−アラニン 25g/L
1,3−ビス(3−ピリジルメチル)−2−チオ尿素 7.2g/L(×3)
ジブチルナフタレンスルホン酸ナトリウム 2.5g/L
(11)実施例10
下記の組成で置換銀メッキ浴を建浴した。
スルファミン酸銀(Ag+として) 5g/L
メタンスルホン酸 60g/L
メチオニン 138.3g/L(×20)
1,11−ビス(2−ピリジル)
−3,6,9−トリチアウンデカン 16.9g/L(×1)
ラウリルアルコールポリエトキシレート(EO15モル) 1g/L
(11)実施例11
下記の組成で置換銀メッキ浴を建浴した。
メタンスルホン酸銀(Ag+として) 3g/L
メタンスルホン酸 90g/L
ジエタノールアミン 30g/L
メルカプトコハク酸 41.8g/L(×10)
3,6,9−トリチアウンデカン
−1,11−ジスルホン酸 102.9g/L(×10)
ジブチル−β−ナフトールポリエトキシレート(EO15モル) 1g/L
(12)実施例12
下記の組成で置換銀メッキ浴を建浴した。
メタンスルホン酸銀(Ag+として) 3g/L
メタンスルホン酸 50g/L
クエン酸 20g/L
シスチン 3.3g/L(×0.5)
6,9,12−トリチア−3,15
−ジオキサヘプタデカン−1,17−ジオール 45.9g/L(×5)
ラウリルアミンポリエトキシレート(EO10モル) 2g/L
N−ドデシル−N,N−ジメチル
−N−カルボキシメチルベタイン 2g/L
(13)実施例13
下記の組成で置換銀メッキ浴を建浴した。
メタンスルホン酸銀(Ag+として) 1g/L
メタンスルホン酸 90g/L
ジエタノールアミン 30g/L
メルカプトコハク酸 41.8g/L(×10)
3,6,9−トリチアウンデカン
−1,11−ジスルホン酸 102.9g/L(×10)
ジブチル−β−ナフトールポリエトキシレート(EO15モル) 1g/L
pH 8.0(NaOHにて調整)
(14)比較例1
下記の組成で置換銀メッキ浴を建浴した。
メタンスルホン酸銀(Ag+として) 1g/L
メタンスルホン酸 50g/L
(15)比較例2
下記の組成で置換銀メッキ浴を建浴した。
メタンスルホン酸銀(Ag+として) 1g/L
メタンスルホン酸 50g/L
チオ尿素 7g/L(×10)
(16)比較例3
下記の組成で置換銀メッキ浴を建浴した。
メタンスルホン酸銀(Ag+として) 1g/L
メタンスルホン酸 50g/L
エチレンジアミン四酢酸 27g/L(×10)
(17)比較例4
下記の組成で置換銀メッキ浴を建浴した。
メタンスルホン酸銀(Ag+として) 1g/L
メタンスルホン酸 50g/L
チオジグリコール 11.3g/L(×10)
(18)比較例5
下記の組成で置換銀メッキ浴を建浴した。
メタンスルホン酸銀(Ag+として) 1g/L
メタンスルホン酸 50g/L
3,6−ジチアオクタン−1,8−ジオール 16.9g/L(×10)
《銀メッキ皮膜の外観評価試験例》
そこで、上記実施例1〜13及び比較例1〜5の各置換銀メッキ浴について、メッキ温度を20℃、50℃、70℃に個別に保持して、25×25mmの圧延銅板の試験片を夫々の温度の浴に、5秒、30秒、1分、10分、30分間の条件ごとに浸漬させることにより、銅板表面に0.005〜10μの膜厚の置換銀メッキを施した。即ち、各実施例及び比較例について、例えば、20℃に保持したメッキ浴の場合、5秒〜30分間の5通りの条件で浸漬させ、これを他の温度の浴についても5通りのメッキ時間ごとに繰り返すのである。
尚、浴のpHは、実施例6ではpH3.5とし、実施例13ではpH8.0とし、その他の全ての実施例及び比較例ではpH1以下とした。
そして、上記実施例及び比較例の夫々について、浴温並びにメッキ時間を変化させた夫々の浸漬条件で得られた銀メッキ皮膜を目視観察して、当該皮膜外観の優劣を下記の基準で評価した。
◎:白色で緻密且つ均一な光沢を具備していた。
○:白色光沢であったが、一部に色調ムラが認められた。
△:均一な光沢を有していたが、少し黄色がかっていた。
×:茶色の色調ムラが認められた。
下表はその試験結果である。
外観評価 外観評価
実施例1 ◎ 比較例1 ×
実施例2 ◎ 比較例2 △
実施例3 ◎ 比較例3 ○
実施例4 ◎ 比較例4 △
実施例5 ◎ 比較例5 ○
実施例6 ◎
実施例7 ◎
実施例8 ◎
実施例9 ◎
実施例10 ◎
実施例11 ◎
実施例12 ◎
実施例13 ◎
上表によると、本発明の錯化剤を含まない比較例1では、茶色の色調ムラが認められ、均一光沢性のある皮膜は得られなかった。本発明の錯化剤に代えてチオ尿素、或は、冒述の特許文献4〜5に開示されたスルフィド類に属するチオジグリコールを含有した比較例2又は4では、均一光沢性を具備しながらも、白色の美麗な外観は得られなかった。また、本発明の錯化剤に代えてアミノカルボン酸に属するEDTA、或は、冒述の特許文献1〜3や8〜9に開示されたスルフィド類に属する3,6−ジチアオクタン−1,8−ジオールを含有した比較例3又は5では、白色光沢の外観は具備しながらも、一部に色調ムラが見られて均質な外観は得られなかった。
これに対して、本発明の錯化剤を含む実施例1〜13では全て美麗な白色を呈し、且つ、均一光沢性を具備した銀皮膜が得られた。
従って、比較例1(ブランク例)と実施例1〜13を対比すると、白色で均一光沢性のある銀皮膜を得るためには、置換銀浴に特定の脂肪族チオアミノカルボン酸又はその塩、脂肪族メルカプトスルホン酸又はその塩、スルフィド類、チオ尿素誘導体より選ばれた限定的な含イオウ化合物を錯化剤として含有させることが重要である点が確認できた。
また、チオ尿素と、本発明の特定含イオウ化合物(特に、ピリジン環を有するチオ尿素誘導体)とはチオ尿素系の含イオウ化合物という点で共通するが、チオ尿素を使用した比較例2では均一光沢性は得られる反面、美麗な白色外観は得られないことから、皮膜外観の色調の改善には、含イオウ化合物の中でも本発明の通り、種類の特定化が必要であることが明らかになった。この点は、比較例4と実施例1〜13との対比でも同様であり、チオジグリコールと、本発明の特定含イオウ化合物(特に、一般式(1)で表される化合物)とはスルフィド類系の含イオウ化合物という点で共通するが、チオジグリコールを使用した比較例4では美麗な白色外観は得られないことから、皮膜外観の色調の改善には、やはり本発明の通り、種類を限定する必要がある。
さらに、3,6−ジチアオクタン−1,8−ジオールと、本発明の特定含イオウ化合物(特に、一般式(1)で表される化合物)とはスルフィド類系の含イオウ化合物という点で共通するが、上記ジチアオクタン類を使用した比較例5では白色光沢性は得られる反面、一部に色調ムラが残ることから、皮膜外観の全面均質的な改善には、含イオウ化合物の中でも本発明の通り、種類の特定化が必要であることが明らかになった。この点は、EDTAを含有した比較例3と実施例1〜13との対比でも同様である。
一方、実施例1〜13に見るように、本発明の特定の含イオウ化合物にあっては、脂肪族チオアミノカルボン酸又はその塩、脂肪族メルカプトスルホン酸又はその塩、スルフィド類、チオ尿素誘導体のいずれの種類を選択しても、或はその含有量を問わず、共に銀皮膜の外観を良好に改善できることが認められた。
その際、当然ながら、本発明の特定含イオウ化合物を単用しても、種類の異なるものを複用しても(実施例10〜13参照)、同様の効果が期待できることは勿論である。
ちなみに、置換銀メッキ浴に本発明の含イオウ化合物に加えて、本発明3の特定アミノカルボン酸又はホスホノカルボン酸を併用添加すると(実施例5、7、9参照)、銀皮膜の改善機能を保持しながら、浴の寿命を有効に延長できることが観察された。

Claims (6)

  1. 可溶性銀塩と、塩酸、硫酸、ホウフッ化水素酸などの無機酸、有機スルホン酸、カルボン酸などの有機酸から選ばれた酸又はその塩とを含有する置換銀メッキ浴において、
    下記の錯化剤(a)〜(d)の少なくとも一種
    (a)メチオニン、エチオニン、シスチン、N−アセチルシステイン、システインよりなる群から選ばれた脂肪族チオアミノカルボン酸又はその塩
    (b)メルカプトイソ酪酸、メルカプト酢酸、ジメルカプト酢酸、2−メルカプトプロピオン酸、3−メルカプトプロピオン酸、メルカプトコハク酸、2,3−ジメルカプトコハク酸よりなる群から選ばれた脂肪族メルカプトカルボン酸又はその塩
    (c)次の一般式(1)で表されるスルフィド類
    Ra−S−(CH2CH2−S)n−Rb …(1)
    (式中、nは0〜3の整数;n=0の場合、Ra及びRbは同一又は異なっても良く、夫々−(CH2)m−Rc又は−(A)j−(CH2)m−Rc、mは1〜5の整数、jは1〜100の整数、RcはOH(但し、m=1〜3の場合、Rcが共にOHであることはない)、置換、無置換アミノ、CO2M、SO3M、ピリジル基又はアミノフェニル基、Mはアルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム、アミン、Aはオキシエチレン、1,3−オキシプロピレン、1,2−オキシプロピレン、2−ヒドロキシ−1,3−オキシプロピレン、1,4−オキシブチレン、1,2−オキシブチレン、1,3−オキシブチレン;n=1の場合、Ra及びRbは同一又は異なっても良く、夫々−(CH2)m−Rc、mは0〜5の整数、Rcはピリジル基又はアミノフェニル基;n=2又は3の場合、Ra及びRbは同一又は異なっても良く、夫々−(CH2)m−Rc、−(A)j−Hであり、mは0〜5の整数、jは1〜100の整数、mが0の場合、Rcはピリジル基又はアミノフェニル基、mが1〜5の整数の場合、Rcは水酸基、置換、無置換アミノ、CO2M、SO3M、ピリジル基又はアミノフェニル基、Mは水素、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム、アミン、Aはオキシエチレン、1,3−オキシプロピレン、1,2−オキシプロピレン、2−ヒドロキシ−1,3−オキシプロピレン、1,4−オキシブチレン、1,2−オキシブチレン、1,3−オキシブチレンである)
    (d)次の一般式(2)で表されるチオ尿素誘導体
    Rd−NH−C(=S)−NH−Re …(2)
    (式(2)中、Rd及びReは同一又は異なっても良く、夫々−(CH2)l−Rfである;lは1〜5の整数である;Rfはピリジル基である)
    を含有することを特徴とする銅系素材用置換銀メッキ浴。
  2. さらに、アミノカルボン酸又はその塩、アミノホスホン酸又はその塩、ホスホン酸又はその塩、ホスホノカルボン酸又はその塩、ポリアミン類、アミノアルコール類、オキシカルボン酸又はその塩、ポリカルボン酸又はその塩の少なくとも一種を含有することを特徴とする請求項1に記載の銅系素材用置換銀メッキ浴。
  3. アミノカルボン酸、アミノホスホン酸、ホスホン酸、ホスホノカルボン酸、又はこれらの塩が、ヒドロキシエチルエチレンジアミントリ酢酸、N,N−ジカルボキシメチル−L−グルタミン酸、エチレンジアミンテトラ酢酸、ニトリロトリ酢酸、グルタミン酸、N,N−ジカルボキシメチル−L−アスパラギン酸、ジエチレントリアミンペンタ酢酸、トリエチレンテトラミンヘキサ酢酸、アスパラギン酸、ヒドロキシエチリデンジホスホン酸、ニトリロトリス(メチレンホスホン酸)、ホスホノブタントリカルボン酸、ヒドロキシエチルアミノジメチレンホスホン酸、ジエチレントリアミンペンタメチレンホスホン酸、N,N−ジカルボキシメチル−L−アラニン、1,3−プロパンジアミンテトラ酢酸、グリコールエーテルジアミンテトラ酢酸、エチレンジアミンジコハク酸、アラニン、ヒドロキシエチルイミノジ酢酸、グリシン、1,3−ジアミノ−2−ヒドロキシプロパンテトラ酢酸、オルニチン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)グリシンよりなる群から選ばれた化合物又はその塩の少なくとも一種であることを特徴とする請求項2に記載の銅系素材用無電解置換銀メッキ浴。
  4. さらに、ノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤及び両性界面活性剤よりなる群から選ばれた少なくとも一種の界面活性剤を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の銅系素材用置換銀メッキ浴。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の置換メッキ浴を用いて、銅系素材上に銀メッキ皮膜を形成することを特徴とする置換銀メッキ方法。
  6. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の置換メッキ浴を用いて、銀メッキ皮膜を形成したプリント回路板、半導体集積回路、抵抗、可変抵抗、コンデンサー、フィルター、インダクター、サーミスター、水晶振動子、スイッチ、リード線などの電子部品。
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