JP7228411B2 - 無電解金めっき浴 - Google Patents

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Description

本発明は無電解金めっき浴に関する。
金めっきは、プリント基板や電子部品などの実装工程で、高い信頼性が要求される用途の表面処理法として汎用されている。金めっき皮膜を形成する代表的な無電解めっき法として、置換型金めっき、および置換還元型金めっきが挙げられる。このうち前者の置換型金めっきは、ニッケルなどの下地金属とめっき浴中との酸化還元電位の差を利用して金を析出させる方法である。しかし、置換反応によって金が下地金属を酸化(溶解)して腐食するため、金めっき皮膜の厚膜化は困難であり、下地金属の種類も限定されるなどの問題がある。また置換型金めっきでは、下地金属が金めっき皮膜上に拡散するため、ワイヤボンディング(W/B)接合性が低下するという問題もある。
これに対し、後者の置換還元型金めっきは、同一のめっき浴中で、置換反応と還元反応の両方が進行する方法であり、この金めっき浴は還元剤を含む。上記置換還元型金めっきの例として、例えば下地無電解ニッケルめっき皮膜上に置換金めっき皮膜を形成する無電解ニッケル/置換金(ENIG:Electroless Nickel Immersion Gold)、下地無電解ニッケルめっき皮膜と置換金めっき皮膜との間に無電解パラジウムめっき皮膜を設ける無電解ニッケル/無電解パラジウム/置換金(ENEPIG:Electroless Nickel Electroless Palladium Immersion Gold)、無電解パラジウム皮膜に置換金めっき皮膜を形成する無電解パラジウム/置換金、銅上に直接置換金めっき皮膜を形成する直接置換金(DIG:Direct Immersion Gold)などが挙げられる。置換還元型金めっきによれば、上述した置換型金めっきによる下地金属の腐食を解消することができ、被覆性に優れた金めっき皮膜が得られる。また、金めっき皮膜の厚膜化が可能であり、はんだ接合、ワイヤボンディング接合にも使用可能である。
置換還元型金めっきにより下地金属の腐食を改善した技術として、例えば特許文献1および2が挙げられる。これらは還元剤として、ホルムアルデヒド及び/又はホルムアルデヒド重亜硫酸塩付加物と、所定のアミン化合物(特許文献1);アルデヒド化合物と、所定のアミン化合物(特許文献2)を含む。
また特許文献3は、「上記特許文献2は浴の安定性が悪く、加熱保持数時間でも金が析出し、分解してしまう」という問題に鑑みてなされたものであり、無電解金めっき液の加熱中にシアン化ナトリウムなどのシアン化合物を補給して、金めっき液中の金の溶解性を安定に保つ方法が開示されている。特許文献4も、上記特許文献3と同様、シアン化カリウムなどのシアン化物イオン源を安定化剤として添加している。
特開2008-266668号公報 特開2008-144188号公報 国際公開第2016/174780号パンフレット 国際公開第2017/050662号パンフレット
しかしながら、特許文献3および4では毒性の高いシアン化合物を用いているため、めっき処理作業を安全に行うには作業環境を厳重に管理する必要がある。よって、シアン化合物を用いなくても、めっき浴の分解を防止可能な金めっき浴の提供が望まれている。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、めっき加熱時間が長時間に及んだ場合でも、シアン化合物を用いずに、金の析出によるめっき浴の分解を防止し得、めっき浴安定性に優れた無電解金めっき浴を提供することにある。
上記課題を解決し得た本発明に係る無電解金めっき浴の構成は以下のとおりである。
1.水溶性金塩、還元剤、および下式で表されるホスフィン化合物を含有することを特徴とする無電解金めっき浴。
Figure 0007228411000001
(式中、R1、R2、R3は、それぞれ同一または異なって、フェニル基、または炭素数1~5のアルキル基であり、前記フェニル基およびアルキル基の少なくとも一つはスルホン酸基若しくはその塩、シアノ基、またはカルボキシル基若しくはその塩で置換されている。)
2.シアン化合物を添加剤として含まないものである上記1に記載の無電解金めっき浴。
本発明によれば、めっき加熱時間が長時間に及んだ場合でも、シアン化合物を用いずに、金の析出によるめっき浴の分解を防止し得、めっき浴安定性に優れた無電解金めっき浴を提供することができる。
図1は、ニッケルめっき表面の腐食の有無を示すSEM(Scanning Electron Microscope)観察写真であり、表1のNo.16(腐食あり)、表1のNo.1(腐食なし)の各写真である。
本発明者らは上記課題を解決するため、金めっき浴の組成を種々検討した。その結果、安定化剤として所定のホスフィン化合物を用いれば所期の目的が達成されることを見出し、本発明を完成した。
(1)ホスフィン化合物
まず本発明を最も特徴付ける上式のホスフィン化合物について説明する。
上記ホスフィン化合物は、水溶性のホスフィン化合物のうち長時間加熱しても金の分解を防止可能な安定化剤として、本発明者らによる基礎実験によって選択されたものである。上記ホスフィン化合物の添加により、例えば後記する実施例2のように80℃で5日間めっき液を長時間加熱した場合であっても、シアン化合物をめっき中に補給することなく、浴分解の発生を抑制し、良好なめっき析出速度を維持することができる(後記する表5を参照)。
上式において、R1、R2、R3を構成するフェニル基および炭素数1~5のアルキル基の少なくとも一つは、スルホン酸基若しくはその塩、シアノ基、またはカルボキシル基若しくはその塩の置換基で置換されている。ここで「その塩」とは、例えばナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩;トリエチルアミン塩などのアミン塩;塩酸塩などが例示される。本発明に用いられるホスフィン化合物は、上記R1、R2、R3の少なくとも一つが置換されていれば良く、二つ、または三つ全てが置換されていても良い。上記ホスフィン化合物は水和物の形態を有していても良い。
なおR1、R2、R3がいずれも置換基を有しておらず、フェニル基、または炭素数1~5のアルキル基のみで構成されている化合物は水溶性でないため、本発明に用いられるホスフィン化合物に該当しない。
また上記以外の置換基を有するものも、本発明に用いられるホスフィン化合物に該当しない。例えばR1、R2、R3は低級アルキル基であるが、これらのうち少なくとも一つが、本発明で規定する置換基(スルホン酸基若しくはその塩、シアノ基、カルボキシル基若しくはその塩)以外の、ヒドロキシ又はアミノで置換されたホスフィン化合物は本発明の範囲に含まれない。例えば、後記する比較例18のようにトリス(3-ヒドロキシプロピル)ホスフィンを用いた場合は、所望の効果が得られなかった(表5を参照)。
上式において、炭素数1~5のアルキル基は、直鎖状、分岐鎖状、環式状でも良く、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基などが挙げられる。これらのうち好ましくは炭素数1~3のアルキル基であり、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基が好ましい。
上式において、フェニル基および上記炭素数1~5のアルキル基は、同じ置換基で置換されていることが好ましい。また上記フェニル基はスルホン酸基で置換されることが好ましく、上記アルキル基はカルボキシ基若しくはその塩で置換されていることが好ましい。
本発明に用いられるホスフィン化合物としては、例えばトリフェニルホスフィン-3-スルホン酸ナトリウム、ビス(p-スルホナトフェニル)フェニルホスフィン二水和物二カリウム、トリフェニルホスフィン-3,3’,3”-トリスルホン酸三ナトリウム、ジ(t-ブチル)(3-スルホナトプロピル)ホスフィン、(2-シアノフェニル)ジフェニルホスフィン、トリス(2-シアノエチル)ホスフィン、トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン塩酸塩などが挙げられる。好ましくは、トリフェニルホスフィン-3-スルホン酸ナトリウム、トリフェニルホスフィン-3,3’,3”-トリスルホン酸三ナトリウム、トリス(2-シアノエチル)ホスフィン、トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン塩酸塩である。本発明に用いられるホスフィン化合物は市販品を用いても良い。
本発明の無電解金めっき浴中に占める上記ホスフィン化合物の濃度は、好ましくは0.0001~1mmol/Lである。より好ましくは0.001~0.1mmol/Lである。
(2)水溶性金塩
本発明の無電解金めっき浴は、金源として、水溶性金塩を含有する。具体的にはシアン化金、シアン化金カリウム、シアン化金ナトリウム、シアン化金アンモニウムなどのシアン化金塩の他、金の亜硫酸塩、チオ硫酸塩、チオシアン酸塩、硫酸塩、硝酸塩、メタンスルホン酸塩、テトラアンミン錯体、塩化物、臭化物、ヨウ化物、水酸化物、酸化物などが挙げられる。これらは単独でまたは二種以上併用することができる。これらのうち、特にシアン化金塩が好ましい。
本発明の無電解金めっき浴中に占める、上記水溶性金塩の濃度(単独で含むときは単独の濃度であり、二種以上併用するときは合計濃度である。)は、金(Au)濃度として、0.00001~0.1mol/Lであることが好ましく、0.001~0.05mol/Lであることがより好ましい。上記範囲を下回ると、めっき析出速度が低下する虞がある。一方、上記範囲を超えると、めっき浴の安定性が低下する場合があり、増量しても効果は殆ど変わらず経済的に無駄である。
(3)還元剤
本発明に用いられる還元剤は、金イオンの還元析出作用を有するものであれば特に限定されない。例えば前述した特許文献1に記載の還元剤(ホルムアルデヒド及び/又はホルムアルデヒド重亜硫酸塩付加物と、所定のアミン化合物);特許文献2に記載の還元剤(アルデヒド化合物と、上記特許文献1と同じ所定のアミン化合物);アスコルビン酸;ヒドラジン類;ギ酸またはその塩などが挙げられる。また上記特許文献1および2に記載の所定のアミン化合物と、ホルムアルデヒド前駆体を還元剤として用いても良い。アミン化合物の種類は上記に限定されず、例えば前述した特許文献3に記載の式(1)のアミン化合物、および特許文献4に記載の式(1)のエチレンジアミン誘導体を用いても良い。上記特許文献3に記載のアミン化合物の詳細は、当該文献3の段落0048~0067を参照すれば良い。上記特許文献4に記載の式(1)のエチレンジアミン誘導体の詳細は、当該文献3の段落0014~0021を参照すれば良い。上記還元剤は単独でまたは二種以上併用することができる。
本発明の無電解金めっき浴中に占める、上記還元剤の濃度(単独で含むときは単独の濃度であり、二種以上併用するときは合計濃度である。)は、おおむね0.00001~1mol/Lであることが好ましく、0.0001~0.1mol/Lであることがより好ましい。上記範囲を下回ると、めっき析出速度が低下する虞がある。一方、上記範囲を超えると、めっき浴の安定性が低下する場合があり、増量しても効果は殆ど変わらず経済的に無駄である。
上記ヒドラジン類としては、ヒドラジン;ヒドラジン・1水和物等の抱水ヒドラジン;炭酸ヒドラジン、硫酸ヒドラジン、中性硫酸ヒドラジン、塩酸ヒドラジン等のヒドラジン塩;ピラゾール類、トリアゾール類、ヒドラジド類等のヒドラジンの有機誘導体;等を用いることができる。前記ピラゾール類としては、ピラゾールの他に、3,5-ジメチルピラゾール、3-メチル-5-ピラゾロン等のピラゾール誘導体を用いることができる。前記トリアゾール類としては、4-アミノ-1,2,4-トリアゾール、1,2,3-トリアゾール等を用いることができる。ヒドラジド類としては、アジピン酸ジヒドラジド、マレイン酸ヒドラジド、カルボヒドラジド等を用いることができる。これらは、単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。好ましくは、ヒドラジン・1水和物等の抱水ヒドラジン、硫酸ヒドラジンである。これらは単独で、または二種以上併用することができる。
上記ギ酸の塩としては、例えばギ酸カリウム、ギ酸ナトリウム等のギ酸のアルカリ金属塩;ギ酸マグネシウム、ギ酸カルシウム等のギ酸のアルカリ土類金属塩;ギ酸のアンモニウム塩、第4級アンモニウム塩、第1級~第3級アミンを含むアミン塩;などが挙げられる。これらは単独で、または二種以上併用することができる。
本発明では、上記特許文献1および2に記載の還元剤、上記特許文献1および2に記載の所定のアミン化合物とホルムアルデヒド前駆体の組み合わせからなる還元剤が好ましく用いられる。
(3-1)特許文献1に記載の還元剤
上記特許文献1に記載の還元剤は、ホルムアルデヒド及び/又はホルムアルデヒド重亜硫酸塩付加物と、下記一般式(1)又は(2)で表されるアミン化合物である。ホルムアルデヒド及び/又はホルムアルデヒド重亜硫酸塩付加物単独では還元剤として作用せず、下記アミン化合物と併用することにより還元作用が発揮される。
1-NH-C24-NH-R2 (1)
3-(CH2-NH-C24-NH-CH2n-R4 (2)
(式(1)及び(2)中、R1、R2、R3及びR4は-OH、-CH3、-CH2OH、-C24OH、-CH2N(CH32、-CH2NH(CH2OH)、-CH2NH(C24OH)、-C24NH(CH2OH)、-C24NH(C24OH)、-CH2N(CH2OH)2、-CH2N(C24OH)2、-C24N(CH2OH)2又は-C24N(C24OH)2を表し、同じであっても異なっていてもよい。nは1~4の整数である。)
上記ホルムアルデヒド重亜硫酸塩付加物としては、具体的にはホルムアルデヒド重亜硫酸ナトリウム、ホルムアルデヒド重亜硫酸カリウム、ホルムアルデヒド重亜硫酸アンモニウムなどが挙げられる。
本発明の無電解金めっき浴中に占める、上記ホルムアルデヒド及び/又はホルムアルデヒド重亜硫酸塩付加物の濃度は0.0001~0.5mol/Lであることが好ましく、0.001~0.3mol/Lであることがより好ましい。上記範囲を下回ると下地金属が腐食する虞がある。一方、上記範囲を超えるとめっき浴が不安定になる虞がある。
本発明の無電解金めっき浴中に占める、上記式(1)または(2)のアミン化合物濃度は0.001~1mol/Lであることが好ましく、0.01~0.5mol/Lであることがより好ましい。上記範囲を下回るとめっき析出速度が低下する虞がある。一方、上記範囲を超えるとめっき浴が不安定になる虞がある。
なお、上記ホルムアルデヒド及び/又はホルムアルデヒド重亜硫酸塩付加物と、上記式(1)または(2)のアミン化合物の各含有量のmol比は、ホルムアルデヒド及び/又はホルムアルデヒド重亜硫酸塩付加物:上記式(1)または(2)のアミン化合物=1:30~3:1、特に1:10~1:1であることが好ましい。ホルムアルデヒド及び/又はホルムアルデヒド重亜硫酸塩付加物が上記範囲を超えるとめっき浴が不安定になる虞がある。一方、上記式(1)または(2)のアミン化合物が上記範囲を超えて添加しても効果が飽和するだけで経済的に無駄である。
(3-2)特許文献2に記載の還元剤
上記特許文献2に記載の還元剤は、アルデヒド化合物と、上記一般式(1)又は(2)で表されるアミン化合物である。アルデヒド化合物単独では還元剤として作用せず、上記アミン化合物と併用することにより還元作用が発揮される。
上記アルデヒド化合物としては、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、n-ブチルアルデヒド、α-メチルバレルアルデヒド、β-メチルバレルアルデヒド、γ-メチルバレルアルデヒドなどの脂肪族飽和アルデヒド;グリオキサール、スクシンジアルデヒドなどの脂肪族ジアルデヒド;クロトンアルデヒドなどの脂肪族不飽和アルデヒド;ベンズアルデヒド、o-ニトロベンズアルデヒド、m-ニトロベンズアルデヒド、p-ニトロベンズアルデヒド、o-トルアルデヒド、m-トルアルデヒド、p-トルアルデヒド、o-ヒドロキシベンズアルデヒド、m-ヒドロキシベンズアルデヒド、p-ヒドロキシベンズアルデヒド、フェニルアセトアルデヒドなどの芳香族アルデヒド;グルコース、ガラクトース、マンノース、リボース、マルトース、ラクトース等のアルデヒド基(-CHO)を有する糖類などが挙げられる。特に、ホルムアルデヒドが好ましい。
本発明の無電解金めっき浴中に占める、上記アルデヒド化合物の濃度は0.0001~0.5mol/Lであることが好ましく、0.001~0.3mol/Lであることがより好ましい。上記範囲を下回るとめっき析出速度が低下する虞がある。一方、上記範囲を超えるとめっき浴が不安定になる虞がある。
なお、上記アルデヒド化合物と、上記式(1)または(2)のアミン化合物の含有量のmol比は、アルデヒド化合物:アミン化合物=1:30~3:1、特に1:10~1:1であることが好ましい。アルデヒド化合物が上記範囲を下回るとめっき浴が不安定になる虞がある。一方、上記式(1)または(2)のアミン化合物が上記範囲を超えて添加しても効果が飽和するだけで経済的に無駄である。
(3-3)特許文献1および2に記載のアミン化合物とホルムアルデヒド前駆体の組み合わせからなる還元剤
上記還元剤は、ホルムアルデヒド前駆体と、上記一般式(1)又は(2)で表されるアミン化合物で構成される。ホルムアルデヒド前駆体単独では還元剤として作用せず、上記アミン化合物と併用することにより還元作用が発揮される。
ここで「ホルムアルデヒド前駆体」とは、水性めっき浴中で分解し、且つそれによってホルムアルデヒドを形成する化合物を意味する。上記ホルムアルデヒド前駆体として、例えばアセタール、ヘミアセタール、アミナールおよびN,O-アセタールなどが挙げられる。
具体的には、例えばアセタール、ヘミアセタール、アミナールおよびN,O-アセタールは、例えば、ジメチロールグリコール、ヒドロキシメチルグリシン酸ナトリウム、1,3-ビス(ヒドロキシメチル)5,5-ジメチルイミダゾリジン-2,4-ジオン、1,3,5,7-テトラアザトリシクロ-[3.3.1.13,7]デカン、ベンジルヘミホルマール、2-ブロモ-2-ニトロプロパン-1,3-ジオール、5-ブロモ-5-ニトロ-1,3-ジオキサン、1,3-ビス(ヒドロキシメチル)-1-(1,3,4-トリス(ヒドロキシメチル)-2,5-ジオキソイミダゾリジン-4-イル)ウレア、1,1’-メチレンビス{3-[1-(ヒドロキシメチル)-2,5-ジオキソイミダゾリジン-4-イル]ウレア}、3,5,7-トリアザ-1-アゾニアトリシクロ-[3.3.1.13,7]-デカン-1-(3-クロロ-2-プロペニル)-クロリド、テトラメチロールグリコールウリル、1,3-ビス(ヒドロキシメチル)2-イミダゾリジノン、1,3-ビス(ヒドロキシメチル)ウレア、2,2,2-トリクロロエタン-1,1-ジオールおよび5,5-ジメチル-1,3-ジオキサンなどが挙げられる。上記ホルムアルデヒド前駆体の詳細は、例えば特許第6066131号公報を参照することができる。
本発明の無電解金めっき浴中に占める、上記ホルムアルデヒド前駆体の濃度は0.0001~0.5mol/Lであることが好ましく、0.001~0.3mol/Lであることがより好ましい。上記範囲を下回ると下地金属が腐食する虞がある。一方、上記範囲を超えるとめっき浴が不安定になる虞がある。
本発明の無電解金めっき浴中に占める、上記式(1)または(2)のアミン化合物の好ましい濃度は上記特許文献1および2と同じである。
なお、上記ホルムアルデヒド前駆体と、上記式(1)または(2)のアミン化合物の含有量のmol比は、ホルムアルデヒド前駆体:アミン化合物=1:30~3:1、特に1:10~1:1であることが好ましい。ホルムアルデヒド前駆体が上記範囲を下回るとめっき浴が不安定になる虞がある。一方、上記式(1)または(2)のアミン化合物が上記範囲を超えて添加しても効果が飽和するだけで経済的に無駄である。
本発明の無電解金めっき浴は、安定化剤として上記ホスフィン化合物を含むため、シアン化合物を添加剤として含まない。ここで「シアン化合物を添加剤として含まない」とは、めっき浴中に、シアン化金カリウムなどの水溶性金化合物に由来するシアン化合物以外に、別途、シアン源としてのシアン化合物を添加しないことを意味する。通常のめっきの場合、めっき中に、金の錯化剤として添加されるシアン化カリウムなどのシアン化合物が徐々に消失してめっき浴が分解するため、分解防止のためシアン化合物が補給される。これに対し、本発明では金の分解を防止し得る上記ホスフィン化合物をめっき浴中に添加しているため、例えば上記特許文献3および4のようにめっき中にシアン化合物を定期的に補給することは不要である。
(4)その他
本発明の無電解金めっき浴は、上述したホスフィン化合物、水溶性金塩、および還元剤を含み、シアン化合物を添加剤として含まないものである。その他、本発明の無電解金めっき浴は、無電解金めっき浴に通常用いられる添加剤を選択成分として含むことができる。以下、好ましく用いられる添加剤について説明する。
(4-1)錯化剤
本発明の無電解金めっき浴中に含まれる錯化剤としては、無電解めっき浴で用いられている公知の錯化剤を用いることができるが、例えば、リン酸、ホウ酸、クエン酸、グルコン酸、酒石酸、乳酸、リンゴ酸、エチレンジアミン、トリエタノールアミン、エチレンジアミン四酢酸、ニトリロ三酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸、トリエチレンテトラミン六酢酸、1,3-プロパンジアミン四酢酸、1,3-ジアミノ-2-ヒドロキシプロパン四酢酸、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸、ジヒドロキシルグリシン、グリコールエーテルジアミン四酢酸、ジカルボキシメチルグルタミン酸、ヒドロキシエチリデンニリン酸、エチレンジアミンテトラ(メチレンリン酸)、又はそのアルカリ金属(例えば、ナトリウム、カリウム)塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩などが挙げられる。これらは単独で、または二種以上併用することができる。
本発明の無電解金めっき浴に占める、上記錯化剤の濃度(単独で含むときは単独の濃度であり、二種以上併用するときは合計濃度である。)は0.001~1mol/Lであることが好ましく、0.01~0.5mol/Lであることがより好ましい。上記範囲を下回ると、溶出した金属によってめっき析出速度が低下する虞がある。一方、上記範囲を超えて添加しても効果が飽和するだけで経済的に無駄である。
(4-2)安定化剤
本発明の無電解金めっき浴には、公知の無電解めっきで用いられている安定剤を添加することができる。上記安定剤としては、2-メルカプトベンゾチアゾール、2-メルカプトベンゾイミダゾール、メルカプト酢酸、メルカプトコハク酸、チオ硫酸、チオグリコール、チオ尿素、チオリンゴ酸等の硫黄化合物、ベンゾトリアゾール、1,2,4-アミノトリアゾール等の窒素化合物が挙げられる。これらは単独で、または二種以上併用することができる。
本発明の無電解金めっき浴に占める、上記安定剤の濃度(単独で含むときは単独の濃度であり、二種以上併用するときは合計濃度である。)は0.0000001~0.01mol/Lであることが好ましく、0.000001~0.005mol/Lであることがより好ましい。上記範囲を下回ると、めっき浴が不安定になる虞がある。一方、上記範囲を超えるとめっき析出速度が低下する虞がある。
(4-3)その他
本発明の無電解金めっき浴には、更に、タリウム化合物、ヒ素化合物、および鉛化合物のうちの1種以上を添加することができる。これらの化合物は、金めっき速度の向上や結晶調整剤として作用する。該化合物として具体的には、化合物を構成する金属(ヒ素、タリウム、鉛)の、炭酸塩、酢酸塩、硝酸塩、硫酸塩、塩酸塩等が挙げられる。金めっき浴中の上記結晶調整剤の濃度は、金属濃度として例えば合計で0.0001~1mmol/Lとすることが好ましく、より好ましくは合計で0.005~0.1mmol/L、更に好ましくは合計で0.01~0.05mmol/Lである。
本発明の無電解金めっき浴のpHは、5~10であることが好ましい。上記範囲を下回るとめっき析出速度が低下する虞がある。一方、上記範囲を超えると、めっき浴が不安定になる虞がある。上記pHはpH調整剤によって調整することができる。本発明に用いられるpH調整剤は、公知のめっき浴で使用されているものであれば特に限定されず、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア、硫酸、リン酸、ホウ酸などが挙げられる。
また、本発明の無電解金めっき浴の使用温度(加熱温度)は、40~90℃であることが好ましい。上記範囲を下回るとめっき析出速度が低下する虞がある。一方、上記範囲を超えると、めっき浴が不安定になる虞がある。
本発明の無電解金めっき浴を用い、金属表面を無電解金めっき浴に接触させることにより、基体の金属表面を無電解金めっき処理することができる。この場合、例えば5~60分の接触時間で、厚さ0.01~2μmの金めっき皮膜を形成することが可能であり、例えば、0.002~0.03μm/分の析出速度で金めっき皮膜を成膜することができる。
上記基体の金属表面(被めっき面)の材質としては、銅、銅合金、ニッケル、ニッケル合金、パラジウム、パラジウム合金などを対象とすることができる。上記ニッケル合金としては、ニッケルーリン合金、ニッケル-ホウ素合金など、パラジウム合金としては、パラジウム-リン合金などを挙げることができる。このような金属表面は、基体自体が金属(合金)であるものの表面の他、基体表面に金属皮膜が形成された該皮膜の表面であってもよい。金属皮膜は、電気めっきにより形成されたもの、無電解めっきにより形成されたもののいずれであってもよいが、ニッケル、ニッケル合金、パラジウム、パラジウム合金の場合、無電解めっきによって形成されたものが一般的である。更に、基体にニッケル又はニッケル合金皮膜を介して形成された、パラジウム又はパラジウム合金皮膜表面を無電解金めっき処理する場合にも好適である。
本発明の無電解金めっき浴は、例えば、ENIG(Electroless Nickel Immersion Gold)、即ち、(銅上に形成された)下地無電解ニッケルめっき皮膜上に金めっき皮膜を形成する方法;DIG(Direct Immersion Gold)、即ち、銅上に直接金めっき皮膜を形成する方法;ENEPIG(Electroless Nickel Electroless Palladium Immersion Gold)、即ち、(銅上に形成された)下地無電解ニッケルめっき皮膜上に無電解パラジウムめっき皮膜を介して金めっき皮膜を形成する方法のいずれの金めっき皮膜の形成にも用いることが可能であり、いずれの場合においても本発明の無電解金めっき浴を用いることにより、ニッケル表面上、銅表面上、パラジウム表面上で上記範囲において所定の厚さの金めっき皮膜を形成することができる。
なお、本発明の無電解金めっき浴は金属表面(被めっき面)が銅の場合でも良好な皮膜が得られ、下地が銅の場合、銅の酸化、拡散が抑制され良好なはんだ接合特性が得られる。また、厚膜化することで、ワイヤボンディングにも使用可能である。また、本発明のめっき浴は、パラジウム上にも良好な金皮膜を析出させることができるため、鉛フリーはんだ接合やワイヤボンディングへの利用に最適である。
本発明の無電解金めっき浴およびこれを用いた無電解金めっき方法は、プリント配線基板、セラミックス基板、半導体基板、ICパッケージ等の電子部品の配線回路実装部分や端子部分を金めっき処理する場合に好適である。特に、ウェハー上のAl電極またはCu電極に対して、はんだ接合およびワイヤボンディング(W/B)接合を目的としたUBM(Under Barrier Metal)形成技術に好適に用いられる。本発明の金めっき浴を用いることによって、UBM形成技術の一部である無電解金めっきの形成を安定して行うことができ、その結果、安定した皮膜特性を実現することが可能となる。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記実施例によって制限されず、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。なお、以下においては、特に断りのない限り、「部」は「質量部」を、「%」は「質量%」を意味する。
実施例1
本実施例では、めっき浴を短時間加熱したときの、還元剤の有無による浴分解の有無を目視により観察した。前述したとおり還元剤を含む置換還元型めっきではめっき浴の分解が発生するが、還元剤を含まない置換型めっきではめっき浴の分解は発生しない。また還元剤の種類によってもめっき浴の分解の程度は変化し得る。本実施例はこの点を確認するための、いわば確認実験である。
詳細には、表1に記載の種々のめっき液を80℃の湯浴中で8時間加熱した後、目視により、めっき浴の分解の有無を観察した。
表1中、No.1~10は表2に記載のホスフィン化合物1を用いた本発明例、No.11は表2に記載のホスフィン化合物2を用いた本発明例、No.12は表3に記載のホスフィン化合物3を用いた本発明例、No.13は表2に記載のホスフィン化合物4を用いた本発明例、No.20は表2に記載のホスフィン化合物5を用いた比較例である。表2中、括弧書き部分は置換基を示す。上記ホスフィン化合物5は、本発明で定義するホスフィン化合物でなく、トリス(3-ヒドロキシプロピル)ホスフィンを用いた例である。No.12~17は、ホスフィン化合物を添加していない。
また表1中、アミン化合物1および2は特許文献1および2に記載の式(1)で表されるアミン化合物であり、アミン化合物3は特許文献1および2に記載の式(2)で表されるアミン化合物である。アミン化合物4は特許文献3に記載の式(1)で表されるアミン化合物に含まれるN-メチル-1,3-ジアミノプロパンである。アミン化合物5は特許文献4に記載の式(1)で表されるエチレンジアミン誘導体アミン化合物に含まれるN1,N2-ジイソプロピルエタン-1,2-ジアミンである。
なお表1のNo.17は、加熱後、めっき液1Lに対する1時間あたりの補給量が15mg/LとなるようにKCNを補給したが、それ以外の例は加熱中KCNを補給しなかった。
これらの結果を表3に示す。
Figure 0007228411000002
Figure 0007228411000003
Figure 0007228411000004
表3より、以下のように考察することができる。
まず表1のNo.1~13は、還元剤および本発明に用いられるホスフィン化合物を用いた本発明例である。これらは種々の還元剤を含むが、いずれの還元剤を用いても上記ホスフィン化合物によるめっき浴分解防止作用により、浴分解は発生しなかった。
これに対し、表1のNo.14および15は、還元剤を含み、本発明に用いられるホスフィン化合物を添加しなかったため、浴分解が発生した。
No.16および17は、還元作用の小さいヒドラジン(No.16)およびアスコルビン酸(No.17)を用いた例であり、本実施例のような短時間加熱条件下では浴分解は発生しなかった。
No.18は還元剤を含まない例であり、浴分解は発生しなかった。
表1中、同じ種類の還元剤を用い、pH=7と同じであるNo.2、14、19、および20の結果を対比すると、本実施例のような短時間加熱条件下では、ホスフィン化合物の種類にかかわらずホスフィン化合物を添加したNo.2および20では浴分解は発生しなかった。これに対し、ホスフィン化合物を添加しなかったNo.14では浴分解が発生した。なおNo.19では加熱時にKCNを補給したため、浴分解が発生しなかった。
実施例2
本実施例では、表1に記載の一部のめっき浴を用いて下記の条件で連続めっきを行い、種々の特性を評価した。
(1)安定性の評価(浴分解の有無)
まず銅張積層板(日立化成株式会社製のMCL-E-67)を5cm角に裁断した基板を用意した。この基板に、表4に示すめっき工程を順次施して無電解Niめっき、無電解Pdめっきを行い、Ni/Pdめっき皮膜を形成した後、表1に記載した組成の無電解Auめっき液に浸漬し、連続的に金を析出させた。表4の各工程間では水洗を行った。加熱後、1~5日における浴分解の有無を目視で観察した。
なお表1に示す各金めっき浴は、加熱中、金換算で0.1g/L消費ごとに水溶性金塩および還元剤の補給を行った。基板は20分毎に取り替えた。めっき処理の間、毎日pH値を測定し、表1の記載のpHを維持できるよう、必要に応じてpHを調整した。
(2)皮膜特性の評価
上記(1)と同様にして5μm厚のNi皮膜/0.1μm厚のPd皮膜/0.1μm厚のAu皮膜を有する各試料を作製し、建浴初期における各試料における種々の皮膜特性[Ni腐食の有無、はんだ接合性、およびワイヤーボンディング(W/B)性]を評価した。皮膜の膜厚は、蛍光X線膜厚計(株式会社フィッシャー・インストルメンツ社製のXDV-u)を用いて測定した。
(2-1)断面SEM観察によるNiめっきの腐食の有無
表1のNo.1および16の各試料について、作製したNi/Pd/Auめっき皮膜を集束イオンビーム装置(日立ハイテクノロジーズ社製)により断面加工した後、SEMにて30μm windowで観察し、腐食の有無を確認した。図1(a)は腐食が観察されたNo.16(比較例)のSEM写真であり、図1(b)は腐食が観察されなかったNo.1(本発明例)のSEM写真である。
(2-2)はんだ接合性の評価
各試料のはんだ接合性を、以下の条件で評価した。はんだ接合強度として、破壊モードのはんだ破断率を求め、はんだ破断率が85%以上の場合をはんだ接合性が「良好」、85%未満をはんだ接合性が「不良」と評価した。
(測定条件)
測定方式:ボールプルテスト
半田ボール:千住金属工業製のSAC305(φ0.6mm)
リフロー装置:ANTOM製UNI-6116α
リフロー条件:Top 260℃
リフロー環境:Air
リフロー回数:5回
フラックス:千住金属製529D-1(RMAタイプ)
テストスピード:5000μm/秒
半田マウント後エージング:1時間
評価基板:BGA基板(Ball Grid Array:上村工業製、5cm×5cm、φ0.5mm)
(2-3)ワイヤボンディング(W/B)性の評価
建浴初期における各試料について、TPT社製セミオートマチックワイヤボンダHB16によりワイヤボンディングを行って、Dage社製ボンドテスタSERIES4000により1条件につき20点評価した。詳細には、表1の一部の金めっき浴を用い、20点のワイヤボンディング強度(W/B強度)を測定し、その平均値であるW/B平均強度と、標準偏差とを算出した。更に、それらを基にして変動係数(=標準偏差÷平均値×100)を求めた。ワイヤボンディング形成条件とワイヤボンディング性評価の条件は下記の通りである。そして、W/B平均強度が8gf以上、かつ変動係数が15%以下の場合を、ワイヤボンディング性が「良」と評価し、上記W/B平均強度と変動係数の少なくともいずれかが上記範囲を外れる場合を、ワイヤボンディング性が「不良」と評価した。
〔ワイヤボンディング形成とワイヤボンディング性評価の条件〕
キャピラリー:B1014-51-18-12(PECO)
ワイヤ:1Mil-Gold
ステージ温度:150℃
熱処理条件: 175℃,16h
超音波(mW):250(1st),250(2nd)
ボンディング時間:(ミリ秒):200(1st),50(2nd)
引っ張り力(gf):25(1st),50(2nd)
ステップ(第1から第2への長さ):0.700mm
測定方式:ワイヤープルテスト
テストスピード:170μm/秒
(3)析出速度の測定
上記(1)と同様にしてNi/Pd/Auめっき皮膜を有する各試料を作製した後、80℃で20分間めっきしたときに形成される金めっき皮膜のめっき析出速度(μm/20min)を、蛍光X線膜厚計(株式会社フィッシャー・インストルメンツ社製のXDV-u)を用いて測定した。
これらの結果を表5に記載する。表5の各No.は、表1の各No.に対応している。
Figure 0007228411000005
Figure 0007228411000006
表5より以下のように考察することができる。
まずNo.2、4、9、11、12、13は、還元剤および本発明に用いられるホスフィン化合物を用いた本発明例である。これらは、上記ホスフィン化合物の浴分解作用により、長期加熱使用時においても浴分解が発生せず、良好な析出速度を維持することができた。またNi腐食も観察されないため、はんだ接合性およびW/B性も良好であった。
これに対し、No.14および15は、還元剤を含み、本発明に用いられるホスフィン化合物を添加しなかったため、浴分解が発生した。なお還元剤を含む上記No.14および15(更にはNo.16、17、19、20)では、Ni腐食は観察されないため、はんだ接合性およびW/B性も良好であった。
No.16および17は、還元作用の小さいヒドラジン(No.16)およびアスコルビン酸(No.17)を用いた例であり、本実施例のような長時間加熱条件下では3日目以降に浴分解が発生した。
No.18は還元剤を含まない例であり、浴分解は発生しなかったが、Ni腐食が確認され、それに伴ってはんだ接合性、およびW/B性も低下した。
No.20は、本発明の範囲外のホスフィン化合物を用いた例であり、加熱後2日目に浴分解が顕著に発生した。更にめっき析出速度も著しく低下した。
No.19では加熱時にKCNを補給したため、浴分解は発生しなかった。
これらの結果より、本発明に用いられるホスフィン化合物は、特に長時間加熱を連続的に行ったときの浴分解発生防止に有用であり、高いめっき析出速度も維持できるため、めっき安定性の向上に大きく寄与できることが分る。また本発明によれば、毒性のシアン化合物を添加剤として添加しなくても上記効果が得られるため、作業効率および環境上も極めて有用である。

Claims (1)

  1. 水溶性金塩、還元剤、および下式で表されるホスフィン化合物を含有し、シアン化合物を添加剤として含まないことを特徴とする無電解金めっき浴。
    Figure 0007228411000007
    (式中、R1、R2、R3は、それぞれ同一または異なって、フェニル基、または炭素数1~5のアルキル基であり、前記フェニル基およびアルキル基の少なくとも一つはスルホン酸基若しくはその塩、シアノ基、またはカルボキシル基若しくはその塩で置換されている。)
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