JP4114044B2 - タイヤ作用力検出装置 - Google Patents

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  • Mechanical Engineering (AREA)
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  • Regulating Braking Force (AREA)
  • Control Of Driving Devices And Active Controlling Of Vehicle (AREA)
  • Power Steering Mechanism (AREA)

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両におけるタイヤに作用する力を検出する技術に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
特開平9−2240号公報には、車両におけるタイヤに作用する力を検出するタイヤ作用力検出装置の一従来例が開示されている。この従来例においては、タイヤに作用する力を検出するために、そのタイヤの車軸に形成された孔に応力センサが挿入される。この応力センサは、歪ゲージを主体として構成される。
【0003】
上記公報には、そのタイヤ作用力検出装置が、ホイールの外周にタイヤが装着されて成る車輪と、ホイールが同軸に装着されることによって車輪を一体的に回転可能に保持する保持体を有する車体を備えた車両に搭載されることが開示されている。ここに「保持体」は、ハブ、ハブキャリア、キャリア、スピンドル、ホイールサポート等と称される場合がある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
以上説明したタイヤ作用力検出装置は、何らかの原因により検出に異常が起こり得る。検出値が異常である場合には、その異常な検出値が正常な検出値として使用されてしまうことを回避する対策を講ずることが望ましい。
【0005】
しかし、前記公報は、以上説明したタイヤ作用力検出装置の異常を検出するための構成を教えていない。
【0006】
一方、上記のようなタイヤ作用力検出装置が搭載されている車両に、その車両の状態量を検出する車両状態量センサも搭載される場合がある。この場合、タイヤ作用力検出装置が、その車両状態量センサによる検出を正常化するために利用できれば、そのタイヤ作用力検出装置が車両において果たし得る機能が向上する。
【0007】
このような事情を背景として、本発明は、タイヤ作用力検出装置自らにより検出されたタイヤ作用力についての異常な検出値が正常な検出値として使用されることを回避することと、車両状態量センサにより検出された車両状態量についての異常な検出値が正常な検出値として使用されることを回避することとの少なくとも一方を可能にするタイヤ作用力検出装置を提供することを課題としてなされたものである。
【0008】
【課題を解決するための手段および発明の効果】
本発明によって下記の各態様が得られる。各態様は、項に区分し、各項に番号を付し、必要に応じて他の項の番号を引用する形式で記載する。
【0009】
これは、本明細書に記載の技術的特徴およびそれらの組合せのいくつかの理解を容易にするためであり、本明細書に記載の技術的特徴やそれらの組合せが以下の態様に限定されると解釈されるべきではない。
【0010】
また、1つの項に複数の事項が記載されている場合、常にすべての事項を一緒に採用しなければならないわけではなく、一部の事項を取り出して採用することも可能である。
【0011】
(1) 複数の車輪を有するとともに、ホイールの外周にタイヤが装着されることによって各車輪が構成された車両に搭載され、前記タイヤに作用するタイヤ作用力を検出するタイヤ作用力検出装置であって、
前記複数の車輪の少なくとも1つに関して設けられて前記タイヤ作用力を検出する少なくとも1つの検出器と、
その検出器による検出値を利用することにより、その検出器によるタイヤ作用力の検出の異常に関する判定を行う判定部と、前記検出器による検出値を利用することにより、その検出器のゼロ点を補正するゼロ点補正部との少なくとも一方とを含み、
前記判定部が、前記車両の運動に依拠してその車両に荷重移動が発生している荷重移動発生状態において、その発生している荷重移動に前記検出値が整合しない場合に、前記タイヤ作用力の検出が異常であると判定する、タイヤ作用力検出装置。
【0012】
この装置によれば、タイヤ作用力を検出する検出器につき、その検出器による検出値を利用すること、すなわち、タイヤ作用力に関して検出器から得られる情報を利用することにより、その検出の異常に関する判定と、その検出器のゼロ点を補正するゼロ点補正部との少なくとも一方を行い得る。
【0013】
したがって、この装置によれば、判定部を含む態様で実施される場合には、検出器による検出値が異常になると、そのことが検出されるため、異常な検出値を正常な検出値であるとして使用することを回避することが可能となる。
【0014】
また、この装置によれば、ゼロ点補正部を含む態様で実施される場合には、検出器のゼロ点が補正されるため、ゼロ点が異常である検出器による検出値を正常な検出値であるとして使用することが回避される。
【0015】
本項において「検出の異常に関する判定」は、例えば、検出器のゼロ点が異常であるか否かの判定を含むように解釈したり、検出器の入出力特性を表すグラフの勾配(以下、単に「入出力勾配」という。)が異常であるか否かの判定を含むように解釈することが可能である。
【0016】
また、本項において「ゼロ点補正部」は、検出器のゼロ点が異常であるか否かを判定し、異常であると判定された場合にそのゼロ点を補正する態様で実施したり、検出器のゼロ点が異常であるか否かを問わず、それとは別の条件(例えば、時間に関する条件)が成立したことに応答して、検出器のゼロ点を補正する態様で実施することが可能である。前者の態様においては、本項および他の各項における「判定部」と同じ原理に従ってゼロ点の異常判定を行うことが可能である。
【0017】
本項および他の各項において「タイヤ作用力」は、タイヤに上下方向に作用する上下力(接地荷重ともいう。)を含むように解釈したり、タイヤに水平方向に作用する水平力を含むように解釈することができる。ここに、「水平力」は、タイヤに前後方向に作用する前後力(駆動力と制動力との少なくとも一方を含む。)を含むように解釈したり、タイヤに横方向に作用する横力を含むように解釈することができる。
【0018】
本項および他の各項において「横力」は、狭義の横力を意味するように解釈したり、狭義のコーナリングフォースを意味するように解釈することが可能である。
【0019】
本項に係る装置は、さらに、前記判定部により検出器による検出が異常であると判定された後、その検出器による異常な検出値が使用されることを禁止するか、その異常な検出値を補正して使用する部分を含む態様で実施することが可能である。
【0020】
(2) 前記判定部が、前記検出値とそれの時間的変化傾向との少なくとも一方に基づいて前記判定を行うものである(1)項に記載のタイヤ作用力検出装置。
【0021】
検出器によるタイヤ作用力の検出に異常が起こると、その異常が検出値に現れることや、検出値の時間的変化傾向に現れることがある。
【0022】
このような知見に基づき、本項に係る装置においては、検出値とそれの時間的変化傾向との少なくとも一方に基づき、検出器によるタイヤ作用力の検出の異常に関する判定が行われる。
【0023】
ここにおける「異常に関する判定」は、検出器によるタイヤ作用力の検出が異常であるか否かを判定することと、その検出が異常であるか否かを判定するとともに異常であると判定された場合にその異常のモードを推定することとの少なくとも一方を含んでいる。
【0024】
(3) 前記検出器が、前記複数の車輪のうちの全部または一部である複数の車輪に関してそれぞれ設けられており、
前記判定部が、それら複数の検出器による複数の検出値とそれの時間的変化傾向との少なくとも一方に基づき、前記複数の検出器の少なくとも1つによるタイヤ作用力の検出が異常であるか否かを判定することと、その検出が異常であると判定された場合にその異常のモードを特定することと、その検出が異常であると判定された場合に前記複数の検出器のうちそれによるタイヤ作用力の検出が異常であるものを特定することとの少なくとも1つを行うものである(1)項に記載のタイヤ作用力検出装置。
【0025】
検出器が車両においてそれの複数の車輪に関して設けられている場合には、それら複数の検出器のうち検出が異常であるものを特定することが必要になる場合がある。
【0026】
一方、前述のように、検出器によるタイヤ作用力の検出に異常が起こると、その異常が検出値に現れることや、検出値の時間的変化傾向に現れることがある。
【0027】
このような知見に基づき、本項に係る装置においては、複数の検出器による複数の検出値とそれの時間的変化傾向との少なくとも一方に基づき、複数の検出器の少なくとも1つによるタイヤ作用力の検出が異常であるか否かを判定することと、その検出が異常であると判定された場合にその異常のモードを特定することと、その検出が異常であると判定された場合に前記複数の検出器のうちそれによるタイヤ作用力の検出が異常であるものを特定することとの少なくとも1つが行われる。
【0028】
(4) 前記判定部が、前記検出値が、前記タイヤ作用力の検出が正常である場合に前記検出値が取り得る限界値から外れている場合に、その検出が異常であると判定する第1異常判定手段を含む(2)または(3)項に記載のタイヤ作用力検出装置。
【0029】
検出器によるタイヤ作用力の検出が正常である場合には、その検出値が取り得る範囲が限定されるのが一般的である。したがって、検出値が、タイヤ作用力の検出が正常である場合にその検出値が取り得る限界値から外れている場合には、その検出が異常である可能性がある。このような知見に基づき、本項に係る装置が提供されている。
【0030】
(5) 前記検出器が、前記複数の車輪のうちの全部または一部である複数の車輪に関してそれぞれ設けられており、
前記第1異常判定手段が、それら複数の検出器による複数の検出値の合計値が、それら複数の検出器による検出がすべて正常である場合に前記合計値が取り得る限界値から外れている場合に、それら複数の検出器の少なくとも1つによるタイヤ作用力の検出が異常であると判定する手段を含む(4)項に記載のタイヤ作用力検出装置。
【0031】
検出器が、車両においてそれの複数の車輪に関してそれぞれ設けられている場合に、それら複数の検出器による各検出値に着目することにより、各検出器ごとに個別に検出異常を判定することが可能である。さらに、検出器が、車両においてそれの複数の車輪に関してそれぞれ設けられている場合に、それら複数の検出器による複数の検出値の合計値に着目することにより、それら複数の検出器について総合的に検出異常を判定することも可能である。
【0032】
後者の場合には、前述におけると同様に、検出器によるタイヤ作用力の検出がすべての検出器に関して正常である場合には、それら複数の検出器による複数の検出値の合計値が取り得る範囲が限定されるのが一般的である。したがって、合計値が、すべての検出器に関してタイヤ作用力の検出が正常である場合にその合計値が取り得る限界値から外れている場合には、それら複数の検出器の少なくとも1つに関して検出が異常である可能性がある。このような知見に基づき、本項に係る装置が提供されている。
【0033】
(6) 前記判定部が、前記車両の運動に依拠してその車両に荷重移動が発生している荷重移動発生状態において、その発生している荷重移動に前記時間的変化傾向が整合しない場合に、前記タイヤ作用力の検出が異常であると判定する第2異常判定手段を含む(2)ないし(5)項のいずれかに記載のタイヤ作用力検出装置。
【0034】
検出器によるタイヤ作用力の検出が異常であるか否かを判定するために、その検出器による検出値に着目するのみでは、その検出器の検出異常を正しく判定できない場合がある。例えば、その検出異常のモードが、前述のように、検出器の入出力勾配が正規の勾配から外れているというモードである場合である。この場合には、検出器の入力に変化を与えるとともに、それに応答する出力の時間的変化、すなわち、検出値の時間的変化傾向を観察することが、そのような異常モードを判別するのに有効である。
【0035】
一方、検出器の入力に変化が与えられる状態の一つに、車両の運動に依拠してその車両に荷重移動が発生している荷重移動発生状態がある。具体的には、車両制動時には、車両において後輪から前輪に向かって荷重としての上下力がみかけ上移動する。また、車両旋回時には、車両において旋回内輪から旋回外輪に向かって荷重としての上下力がみかけ上移動する。
【0036】
それらの知見に基づき、本項に係る装置においては、荷重移動発生状態において、そのときに発生している荷重移動に検出値の時間的変化傾向が整合しない場合に、検出器によるタイヤ作用力の検出が異常であると判定される。
【0037】
(7) 複数の車輪を有するとともに、ホイールの外周にタイヤが装着されることによって各車輪が構成された車両に搭載され、前記タイヤに作用するタイヤ作用力を検出するタイヤ作用力検出装置であって、
前記複数の車輪のうちの全部または一部である複数の車輪に関してそれぞれ設けられるとともに、前記タイヤに上下方向に作用する上下力を前記タイヤ作用力として検出する機能を有する検出器と、
前記車両の運動に依拠してその車両に荷重移動が発生している荷重移動発生状態において、前記複数の検出器により検出された複数の上下力の合計値が時間と共に変化する場合に、それら複数の検出器の少なくとも1つによる上下力の検出が異常であると判定する手段を含む判定部と
を含むタイヤ作用力検出装置。
【0038】
よく知られているように、車両制動中には、前輪の上下力が時間と共に増加する一方、後輪の上下力が時間と共に減少するが、それら上下力の合計値は、時間と共に変化しない。また、同様に、車両旋回中には、旋回外輪の上下力が時間と共に増加する一方、旋回内輪の上下力が時間と共に減少するが、それら上下力の合計値は、時間と共に変化しない。
【0039】
このように、車両制動中にも車両旋回中にも、上下力の合計値が時間と共に変化しない理由は、それらの車両状態においては、車両の積載荷重の大きさも分布も時間と共に変化しないのが普通であるからである。
【0040】
したがって、複数の車輪に関する複数の検出器のすべてに関して検出が正常である場合には、それら複数の検出器により検出された複数の上下力の合計値が時間と共に変化せず、その合計値が時間と共に変化する場合には、それら複数の検出器の少なくとも1つに関して検出が異常である可能性がある。
【0041】
このような知見に基づき、本項に係る装置においては、荷重移動発生状態において、複数の検出器により検出された複数の上下力の、検出値に関する合計値が時間と共に変化する場合に、それら複数の検出器の少なくとも1つによる上下力の検出が異常であると判定される。
【0042】
(8) 前記判定部が、前記検出値が前記タイヤ作用力の検出が正常である場合にその検出値が取り得る限界値から外れており、かつ、前記車両の運動に依拠してその車両に荷重移動が発生している荷重移動発生状態において、その発生している荷重移動に前記時間的変化傾向が整合する場合には、前記ゼロ点が異常であると判定する一方、前記検出値が前記限界値から外れており、かつ、前記車荷重移動発生状態において、前記発生している荷重移動に前記時間的変化傾向が整合しない場合には、前記検出器の入出力特性を表すグラフの勾配が異常であると判定することにより、前記タイヤ作用力の検出が異常であるモードを特定する異常モード特定手段を含む(2)ないし(7)項のいずれかに記載のタイヤ作用力検出装置。
【0043】
検出器のゼロ点が異常であるときには、検出値が前記限界値から外れており、かつ、前記荷重移動発生状態において、その発生している荷重移動に前記時間的変化傾向が整合する傾向が強い。これに対して、検出器の入出力勾配が異常である場合には、検出値が限界値から外れており、かつ、荷重移動発生状態において、そのときに発生している荷重移動に検出値の時間的変化傾向が整合しない傾向が強い。
【0044】
それらの知見に基づき、本項に係る装置においては、検出値が限界値から外れており、かつ、荷重移動発生状態において、そのときに発生している荷重移動に検出値の時間的変化傾向が整合する場合には、検出器のゼロ点が異常であると判定される。これに対して、検出値が限界値から外れており、かつ、車荷重移動発生状態において、そのときに発生している荷重移動に検出値の時間的変化傾向が整合しない場合には、検出器の入出力特性を表すグラフの勾配が異常であると判定される。
【0045】
このように、この装置においては、検出値とそれの時間的変化傾向との双方に基づき、検出器によるタイヤ作用力の検出が異常であるモードが特定される。
【0046】
(9) 複数の車輪を有するとともに、ホイールの外周にタイヤが装着されることによって各車輪が構成された車両に搭載され、前記タイヤに作用するタイヤ作用力を検出するタイヤ作用力検出装置であって、
前記複数の車輪のうちの全部または一部である複数の車輪に関してそれぞれ設けられ、前記タイヤ作用力を検出する検出器と、
その検出器による検出値を利用することにより、その検出器によるタイヤ作用力の検出の異常に関する判定を行う判定部とを含み、
前記各検出器が、前記タイヤに上下方向に作用する上下力を前記タイヤ作用力として検出する機能を有し、かつ、それら複数の検出器が、前記車両の運動に依拠してその車両に荷重移動が発生している荷重移動発生状態において、各検出器により検出されるべき前記タイヤ作用力が、その荷重移動の影響を、それら複数の検出器間において互いに逆向きに受けるものであり、
前記判定部が、それら複数の検出器により検出された複数の上下力の合計値が前記タイヤ作用力の検出が正常である場合にその合計値が取り得る限界値から外れており、かつ、前記荷重移動発生状態において、そのときに発生している荷重移動に前記合計値の時間的変化傾向が整合しない場合に、その荷重移動の向きとその時間的変化傾向の向きとの関係に基づき、前記複数の検出器のうちそれによる上下力の検出が異常であるものを特定する異常検出器特定手段を含む、タイヤ作用力検出装置。
【0047】
車両に複数の検出器が設けられている場合には、それら検出器のうち検出異常が生じたものを異常検出器として特定することが必要となることがある。
【0048】
一方、それら複数の検出器による複数の検出値の、検出値に関する合計値がそれの限界値から外れていれば、それら複数の検出器の少なくとも1つに検出異常が生じている可能性がある。
【0049】
この場合、荷重異常発生状態において、その荷重移動の向き(例えば、車両において後輪から前輪に向かう向きであるか、旋回内輪から旋回外輪に向かう向きであるか)と、その合計値の時間的変化傾向の向き(例えば、増加傾向であるか減少傾向であるか)とが判明すれば、合計値と限界値との比較によって検出異常が生じていると判定された少なくとも1つの検出器のうち真に検出異常が生じているものを特定することが可能である場合がある。
【0050】
荷重移動の向きが判明すれば、複数の検出器のうち、それの各検出値の時間的変化傾向が荷重移動の影響を受けるものが判明する。
【0051】
それら複数の検出器が複数の車輪に、荷重移動発生状態において、各検出器により検出されるべきタイヤ作用力が、その荷重移動の影響を、それら複数の検出器間において互いに逆向きに受けるように設けられる場合がある。
【0052】
例えば、車両の前輪と後輪とに関してそれぞれ検出器が設けられる場合には、車両制動時には、前輪用の検出器により検出されるべき上下力は時間と共に増加する一方、後輪用の検出器により検出されるべき上下力は時間と共に減少する。前輪の負担が増す一方、後輪の負担が減るのである。
【0053】
このとき、それら2つの検出器が共に正常であれば、車両制動の進行にもかかわらず、それら2つの検出器によりそれぞれ検出された2つの上下力の合計値は時間と共に変化しない。
【0054】
これに対して、前輪用の検出器のみに、それの入出力勾配が正規でないという検出異常が生じると、合計値の時間的変化傾向が、前輪用の検出器の検出異常を顕著に反映する。ここに、その検出異常が、前輪用の検出器の入出力勾配が正規の勾配より大きいというものであると仮定すると、合計値が時間と共に増加することになる。
【0055】
一方、後輪用の検出器のみに、それの入出力勾配が正規でないという検出異常が生じると、合計値の時間的変化傾向が、後輪用の検出器の検出異常を顕著に反映する。ここに、その検出異常が、後輪用の検出器の入出力勾配が正規の勾配より大きいというものであると仮定すると、合計値が時間と共に減少することになる。
【0056】
以上の説明から明らかなように、荷重移動の向きと合計値の時間的変化傾向の向きとが判明すれば、合計値を用いて複数の検出器について総合的に、検出異常が生じているか否かを判定するにもかかわらず、複数の検出器のうち検出異常が生じているものを一応の精度で特定することが可能である場合があるのである。
【0057】
以上説明した知見に基づき、本項に係る装置においては、複数の検出器により検出された複数の上下力の、検出値に関する合計値が限界値から外れており、かつ、荷重移動発生状態において、そのときに発生している荷重移動に合計値の時間的変化傾向が整合しない場合に、その荷重移動の向きとその時間的変化傾向の向きとの関係に基づき、複数の検出器のうちそれによる上下力の検出が異常であるものが特定される。
【0058】
(10) 前記複数の車輪が、前輪と後輪とを含み、
前記検出器が、それら前輪と後輪とに関してそれぞれ設けられており、
前記異常検出器特定手段が、(a)前記合計値が前記限界値より大きく、かつ、前記荷重移動発生状態としての車両制動状態において、その合計値が時間と共に増加する場合には、前記前輪に関する前記検出器による上下力の検出が異常であると判定し、(b)合計値が限界値より大きく、かつ、車両制動状態において、その合計値が時間と共に減少する場合には、前記後輪に関する前記検出器による上下力の検出が異常であると判定し、(c)合計値が限界値より小さく、かつ、車両制動状態において、その合計値が時間と共に増加する場合には、前記後輪に関する前記検出器による上下力の検出が異常であると判定し、(d)合計値が限界値より小さく、かつ、車両制動状態において、その合計値が時間と共に減少する場合には、前記前輪に関する前記検出器による上下力の検出が異常であると判定する手段を含む(9)項に記載のタイヤ作用力検出装置。
【0059】
前輪と後輪とに関してそれぞれ設けられた複数の検出器により検出された複数の上下力の合計値が限界値より大きい場合には、それら検出器の少なくとも1つにおいて入出力勾配が正規の勾配より大きい可能性がある。
【0060】
逆に、その合計値が限界値より小さい場合には、それら検出器の少なくとも1つにおいて入出力勾配が正規の勾配より小さい可能性がある。
【0061】
入出力勾配が正規の勾配より大きい可能性がある場合には、車両制動状態において、合計値が時間と共に増加するときには、前述の説明から明らかなように、前輪に関する検出器による上下力の検出が異常である可能性があり、一方、その合計値が時間と共に減少するときには、後輪に関する検出器による上下力の検出が異常である可能性がある。
【0062】
これに対して、入出力勾配が正規の勾配より小さい可能性がある場合には、車両制動状態において、合計値が時間と共に増加するときには、後輪に関する検出器による上下力の検出が異常である可能性があり、一方、その合計値が時間と共に減少するときには、前輪に関する検出器による上下力の検出が異常である可能性がある。以上説明した知見に基づき、本項に係る装置が提供されている。
【0063】
(11) 前記複数の車輪が、左輪と右輪とを含み、
前記検出器が、それら左輪と右輪とに関してそれぞれ設けられており、
前記異常検出器特定手段が、(a)前記合計値が前記限界値より大きく、かつ、前記荷重移動発生状態としての車両旋回状態において、その合計値が時間と共に増加する場合には、前記左輪と右輪とのうち旋回外側に位置する旋回外輪に関する前記検出器による上下力の検出が異常であると判定し、(b)合計値が限界値より大きく、かつ、車両旋回状態において、その合計値が時間と共に減少する場合には、前記左輪と右輪とのうち旋回内側に位置する旋回内輪に関する前記検出器による上下力の検出が異常であると判定し、(c)合計値が限界値より小さく、かつ、車両旋回状態において、その合計値が時間と共に増加する場合には、前記旋回内輪に関する前記検出器による上下力の検出が異常であると判定し、(d)合計値が限界値より小さく、かつ、車両旋回状態において、その合計値が時間と共に減少する場合には、前記旋回外輪に関する前記検出器による上下力の検出が異常であると判定する手段を含む(9)または(10)項に記載のタイヤ作用力検出装置。
【0064】
前輪と後輪とについての上述の説明から容易に類推されるように、左輪と右輪とに関してそれぞれ設けられた複数の検出器により検出された複数の上下力の合計値が限界値より大きい場合には、それら検出器の少なくとも1つにおいて入出力勾配が正規の勾配より大きい可能性がある。
【0065】
逆に、その合計値が限界値より小さい場合には、それら検出器の少なくとも1つにおいて入出力勾配が正規の勾配より小さい可能性がある。
【0066】
入出力勾配が正規の勾配より大きい可能性がある場合には、車両旋回状態すなわち車輪に横力が発生している状態において、合計値が時間と共に増加するときには、左輪と右輪とのうち旋回外側に位置する旋回外輪であって旋回内輪より上下力の負担が大きいものに関する検出器による上下力の検出が異常である可能性があり、一方、その合計値が時間と共に減少するときには、旋回内輪に関する検出器による上下力の検出が異常である可能性がある。
【0067】
これに対して、入出力勾配が正規の勾配より小さい可能性がある場合には、車両旋回状態において、合計値が時間と共に増加するときには、旋回内輪に関する検出器による上下力の検出が異常である可能性があり、一方、その合計値が時間と共に減少するときには、旋回外輪に関する検出器による上下力の検出が異常である可能性がある。以上説明した知見に基づき、本項に係る装置が提供されている。
【0068】
(12) 前記検出器が、前記複数の車輪のうちの全部または一部である複数の車輪に関してそれぞれ設けられるとともに、各検出器が、前記タイヤに上下方向に作用する上下力を前記タイヤ作用力として検出する機能を有しており、
前記判定部が、それら複数の検出器による複数の検出値間の関係に基づいて前記荷重移動発生状態を判定する手段を含む(6)ないし(11)項のいずれかに記載のタイヤ作用力検出装置。
【0069】
前記(6)ないし(11)項のいずれかに記載の装置は、それの検出器を利用せずに、車両における他のセンサを利用することにより、荷重移動発生状態を判定するようにして実施することが可能である。
【0070】
これに対して、本項に係る装置によれば、それの検出器を利用することにより、荷重移動発生状態を判定することが可能となり、その判定のために他のセンサに依存せずに済む。
【0071】
(13) 前記車両が、当該タイヤ作用力検出装置の他に、その車両の状態量を検出する車両状態量センサを含み、前記判定部が、その車両状態量センサを用いることなく、作動するものである(1)ないし(12)項のいずれかに記載のタイヤ作用力検出装置。
【0072】
この装置によれば、車両における他の車両状態量センサに依存することなく、検出器による検出の異常に関する判定を行うことが可能となる。
【0073】
(14) 前記車両が、当該タイヤ作用力検出装置の他に、その車両の状態量を検出する車両状態量センサを含み、
前記判定部が、その車両状態量センサを用いることにより、作動するものである(1)ないし(12)項のいずれかに記載のタイヤ作用力検出装置。
【0074】
(15) 前記検出器が、前記タイヤに水平方向に作用する水平力を前記タイヤ作用力として検出する機能を有しており、
前記判定部が、その検出器により検出された水平力を前記タイヤに上下方向に作用する上下力で割り算した値を用いることにより、前記水平力の検出が異常であるか否かを判定する第3異常判定手段を含む(2)ないし(14)項のいずれかに記載のタイヤ作用力検出装置。
【0075】
車輪において水平力は、タイヤと路面との間の摩擦力を原因として発生する。この摩擦力は、タイヤから路面に作用する上下力の大きさと、それらタイヤと路面との間における摩擦係数との積として算出することができる。このように、水平力は上下力に依存する物理量なのである。
【0076】
一方、水平力を上下力で割り算すれば、摩擦係数に相当する路面μ相当値であって上下力に依存しない物理量を導出することができる。したがって、この路面μ相当値を用いれば、検出器による水平力の検出が異常であるか否かの判定を、上下力の大小を問わず、行うことが可能となる。
【0077】
そこで、本項に係る装置においては、検出器により検出された水平力を上下力で割り算した値を用いることにより、水平力の検出が異常であるか否かが判定される。
【0078】
なお付言すれば、上述の説明において「路面μ」は、タイヤのスリップ率sを横軸に、タイヤと路面との間における摩擦係数μを縦軸に取った座標上においてそれら摩擦係数μとスリップ率sとの関係を表すμ−sカーブにおける摩擦係数μのピーク値、すなわち、路面の種類に応じて変化する値のみを意味するわけではなく、同じ種類の路面上において時間と共に変化する摩擦係数μをも意味している。
【0079】
(16) 前記検出器が、前記複数の車輪のうちの全部または一部である複数の車輪に関してそれぞれ設けられており、
前記第3異常判定手段が、前記各車輪に関する前記各検出器により検出された水平力をその各車輪に関する個別的な前記上下力で割り算した値である、各車輪に関する個別的な前記路面μ相当値と、前記複数の検出器により検出された複数の水平力の合計値を前記車両全体に関する総合的な前記上下力で割り算した値である、前記車両全体に関する総合的な前記路面μ相当値とに基づき、少なくとも1つの車輪に関する前記検出器による水平力の検出が異常であるか否かを判定する手段を含む(15)項に記載のタイヤ作用力検出装置。
【0080】
同じ車両において複数の検出器の全部に同時に検出異常が生じるのは経験的に極めて稀であり、大抵の場合には、一部の検出器のみに検出異常が生じ、しかも、検出異常が生じる検出器の数の方が検出異常が生じない検出器の数より少ない。
【0081】
一方、複数の車輪に関して設けられた複数の検出器により検出された複数の水平力の合計値を、車両全体に関する総合的な上下力、すなわち、それら複数の車輪に関する上下力の合計値で割り算すれば、車両全体に関する総合的な路面μ相当値が算出される。
【0082】
そして、この総合的な路面μ相当値(検出値)は、上述の、検出異常が生じる検出器の数に関する経験則によれば、各車輪に関する個別的な路面μ相当値(検出値)の正規値、すなわち、タイヤと路面との間における摩擦係数μの実際値を反映する可能性が高いことになる。このような知見に基づき、本項に係る装置が提供されている。
【0083】
(17) 前記手段が、各車輪に関する個別的な路面μ相当値と、車両全体に関する総合的な路面μ相当値との対応関係を表すグラフの勾配が、少なくとも1つの車輪に関して、正規の勾配から外れる場合に、その少なくとも1つの車輪に関する前記検出器による水平力の検出が異常であると判定する手段を含む(16)に記載のタイヤ作用力検出装置。
【0084】
前記(16)項に係る装置において、各車輪に関する個別的な路面μ相当値と、車両全体に関する総合的な路面μ相当値との対応関係を表すグラフの勾配が、少なくとも1つの車輪に関して、正規の勾配から外れる場合には、その少なくとも1つの車輪に関する検出器による水平力の検出が異常である可能性がある。このような知見に基づき、本項に係る装置が提供されている。
【0085】
(18) 前記車両が、その車両に前記水平力と同じ方向に作用する加速度を検出する加速度センサを含み、
前記検出器が、前記複数の車輪のうちの全部または一部である複数の車輪に関してそれぞれ設けられており、
前記第3異常判定手段が、それら複数の検出器により検出された複数の水平力の合計値を前記車両全体に関する総合的な前記上下力で割り算した値である、前記車両全体に関する総合的な前記路面μ相当値と、前記加速度センサにより検出された加速度とが互いに整合しない場合に、前記水平力の検出が異常であると判定する手段を含む(15)ないし(17)項のいずれかに記載のタイヤ作用力検出装置。
【0086】
車両運動力学上、その総合的な路面μ相当値(理論値)と、加速度センサにより検出されるべき加速度(理論値)とが互いに整合する。したがって、総合的な路面μ相当値の検出値と加速度の検出値とが互いに整合しない場合には、総合的な路面μ相当値の検出値に異常がある可能性がある。この異常は、複数の検出器の少なくとも1つに検出異常があることが原因で生じる可能性がある。
【0087】
以上の知見に基づき、本項に係る装置においては、複数の検出器により検出された複数の水平力の合計値を車両全体に関する総合的な上下力で割り算した値である、車両全体に関する総合的な路面μ相当値と、加速度センサにより検出された加速度とが互いに整合しない場合に、検出器による水平力の検出が異常であると判定される。
【0088】
本項において「水平力」の種類と「加速度」の種類との関係について具体的に説明すれば、水平力が前後力を意味する場合には、加速度は前後加速度を意味することとなり、水平力が横力を意味する場合には、加速度は横加速度を意味することとなる。
【0089】
(19) 前記判定部が、さらに、前記総合的な路面μ相当値と、前記加速度センサにより検出された加速度とが互いに整合せず、かつ、前記各車輪に関する前記検出器により検出された水平力をその各車輪に関する個別的な前記上下力で割り算した値である、各車輪に関する個別的な前記路面μ相当値と、前記加速度センサにより検出された加速度との対応関係を表すグラフの勾配が、すべての車輪に関して、正規の勾配から同じ方向に外れる場合に、前記加速度センサによる検出が異常であると判定する加速度センサ異常判定手段を含む(18)項に記載のタイヤ作用力検出装置。
【0090】
総合的な路面μ相当値と、加速度センサにより検出された加速度とが互いに整合せず、かつ、総合的な路面μ相当値と、加速度センサにより検出された加速度との対応関係を表すグラフの勾配が正規の勾配から外れる原因としては、検出器による水平力の検出が異常であることと、加速度センサによる加速度の検出が異常であることとが考えられる。
【0091】
一方、各車輪に関する個別的な路面μ相当値と加速度との対応関係を表すグラフの勾配が、すべての車輪に関して、正規の勾配から同じ方向に外れる原因としては、複数の検出器のすべてに同じ特性の検出異常が同時に生じるという第1の原因と、加速度センサに検出異常が生じるという第2の原因とが考えられる。経験的な確率論から判断すれば、第1の原因が発生する可能性の方が、第2の原因が発生する可能性より低い。
【0092】
このような知見に基づき、本項に係る装置においては、総合的な路面μ相当値と加速度とが互い整合せず、かつ、各車輪に関する個別的な路面μ相当値と加速度との対応関係を表すグラフの勾配が、すべての車輪に関して、正規の勾配から同じ方向に外れる場合に、加速度センサによる検出が異常であると判定される。
【0093】
(20) 前記判定部が、さらに、前記総合的な路面μ相当値と、前記加速度センサにより検出された加速度とが互いに整合する場合に、前記各車輪に関する前記検出器により検出された水平力を、同じ車輪に関する個別的な前記上下力で割り算した値である、各車輪に関する個別的な前記路面μ相当値を用いるとともに、前記複数の車輪のうちの一部であって、それに関する個別的な路面μ相当値と前記総合的な路面μ相当値との対応関係を表すグラフの勾配が正規の勾配から外れるものに対応する前記タイヤが異常であると判定するタイヤ異常判定手段を含む(18)または(19)項に記載のタイヤ作用力検出装置。
【0094】
各車輪に関する個別的な路面μ相当値と総合的な路面μ相当値との対応関係を表すグラフの勾配は、各検出器の異常の有無によって変化するのみならず、各車輪のタイヤの状態によっても変化する。そして、いずれの検出器にも検出異常は生じておらず、かつ、一部の車輪のタイヤに異常がある場合には、総合的な路面μ相当値と、加速度センサにより検出された加速度とが互いに整合し、かつ、各車輪に関する個別的な路面μ相当値と総合的な路面μ相当値との対応関係を表すグラフの勾配が、すべての車輪ではなく一部の車輪のみに関して、正規の勾配から外れる傾向がある。
【0095】
このような知見に基づき、本項に係る装置においては、複数の車輪のうちの一部であって、それに関する個別的な路面μ相当値と総合的な路面μ相当値との対応関係を表すグラフの勾配が正規の勾配から外れるものに対応するタイヤが異常であると判定される。
【0096】
(21) 前記検出器が、さらに、前記上下力を前記タイヤ作用力として検出する機能をも有しており、
前記第3異常判定手段が、その検出器により検出された上下力を用いることにより、前記路面μ相当値を計算する手段を含む(15)ないし(20)項のいずれかに記載のタイヤ作用力検出装置。
【0097】
前記(15)ないし(20)項のいずれかに記載の装置は、それの検出器を利用せずに、車両における他のセンサを利用することにより、上下力を検出するようにして実施することが可能である。
【0098】
これに対して、本項に係る装置によれば、それの検出器を利用することにより、上下力を検出することが可能となり、その検出のために他のセンサに依存せずに済む。
【0099】
(22) 前記車両が、当該タイヤ作用力検出装置の他に、その車両の状態量を検出する車両状態量センサを含み、
前記判定部が、その車両状態量センサによる検出値と前記検出器による検出値とに基づいて、その検出器による検出が異常であるか否かを判定する第4異常判定手段を含む(1)ないし(21)項のいずれかに記載のタイヤ作用力検出装置。
【0100】
この装置によれば、異常判定の対象である検出器による検出値のみならず、同じ車両に搭載された車両状態量センサによる検出値も利用されることにより、その検出器による検出が異常であるか否かが判定される。
【0101】
したがって、この装置によれば、検出器による検出値のみを用いる場合に比較し、検出異常の判定規則を設計する際の自由度が向上し、その結果、例えば、検出異常の判定結果の信頼性を向上させることが容易となる。
【0102】
(23) 前記第4異常判定手段が、前記車両状態量センサによる検出値と前記検出器による検出値との関係に基づいて、その検出器による検出が異常であるか否かを判定する手段を含む(22)項に記載のタイヤ作用力検出装置。
【0103】
同じ車両においては、車両状態量センサにより検出されるべき車両状態量の実際値と検出器により検出されるべきタイヤ作用力の実際値との間に一定の関係が成立する場合がある。同様に、車両状態量センサによる検出も検出器による検出も正常である場合には、それら両検出値の間に同じ関係が成立する。そして、車両状態量センサによる検出が正常であると仮定することが妥当である状況において、両検出値の間に上記同じ関係が成立しない場合には、検出器による検出が異常であると推定される。
【0104】
このような知見に基づき、本項に係る装置においては、車両状態量センサによる検出値と検出器による検出値との関係に着目することにより、その検出器による検出が異常であるか否かが判定される。
【0105】
この装置は、例えば、車両状態量センサによる検出値と検出器による検出値との関係が適正ではない場合、すなわち、検出器による検出が正常である場合に成立すべき関係と実質的に一致しない場合に、その検出器による検出が異常であると判定する態様で実施することが可能である。
【0106】
(24) 前記第4異常判定手段が、前記車両状態量センサによる検出値と前記検出器による検出値とが互いに整合しない場合に、その検出器による検出が異常であると判定する手段を含む(22)または(23)項に記載のタイヤ作用力検出装置。
【0107】
同じ車両においては、車両状態量センサにより検出されるべき車両状態量の実際値と、検出器により検出されるべきタイヤ作用力の実際値とが力学的な観点や物理的な観点から互いに整合する場合がある。同様に、車両状態量センサによる検出も検出器による検出も正常である場合には、それら両検出値が互いに整合する。
【0108】
このような知見に基づき、本項に係る装置においては、車両状態量センサによる検出値と検出器による検出値とが互いに整合しない場合に、その検出器による検出が異常であると判定される。
【0109】
(25) 前記車両状態量センサが、前記車両の状態を変化させるために行われる運転者による操作の状態量を検出する操作状態量センサを含み、
前記第4異常判定手段が、その操作状態量センサによる検出値と前記検出器による検出値とに基づいて、その検出器による検出が異常であるか否かを判定する手段を含む(22)ないし(24)項のいずれかに記載のタイヤ作用力検出装置。
【0110】
車両において、運転者による操作が行われれば、一般に、その影響がタイヤ作用力に現れる。そして、その操作の状態量の実際値と、タイヤ作用力の実際値との間に一定の関係が成立する場合がある。この場合には、操作状態量センサによる検出も検出器による検出も正常であると仮定すれば、それら両検出値に同じ関係が成立する。
【0111】
そして、異常判定の対象である検出器による検出値と、その検出器も操作状態量センサも正常である限りにおいてその検出器による検出値と一定の関係を有するその操作状態量センサによる検出値との双方を利用すれば、検出器による検出値のみを利用する場合に比較し、その検出器が異常であるか否かを判定するために参照される情報の量が効果的に増加する。
【0112】
以上説明した知見に基づき、本項に係る装置においては、操作状態量センサによる検出値と検出器による検出値とに基づいて、その検出器による検出が異常であるか否かが判定される。
【0113】
(26) 前記車両が、前記複数の車輪の少なくとも1つの回転を抑制するために作動させられるブレーキを含み、
前記車両状態量センサが、そのブレーキの作用に関連する量を取得するブレーキ作用関連量取得装置を含み、
前記検出器が、対応するブレーキの作用によって、対応する車輪に生じる制動トルクを前記タイヤ作用力に関連する物理量として検出する制動トルク検出装置を含み、
前記第4異常判定手段が、前記ブレーキ作用関連量取得装置によって取得されたブレーキ作用関連量と前記制動トルク検出装置によって検出された制動トルクとに基づき、その制動トルク検出装置による検出が異常であるか否かを判定する制動トルク検出装置異常判定手段を含む(22)ないし(25)項のいずれかに記載のタイヤ作用力検出装置。
【0114】
車輪のブレーキ作用関連量および制動トルクについても、前記(22)ないし(25)項のいずれかにおいて説明したのと同様な事情が当てはまる。
【0115】
このような知見に基づき、本項に係る装置においては、ブレーキ作用関連量取得装置によって取得されたブレーキ作用関連量と制動トルク検出装置によって検出された制動トルクとに基づき、その制動トルク検出装置による検出が異常であるか否かが判定される。
【0116】
(27) 前記制動トルク検出装置異常判定手段が、前記ブレーキ作用関連量取得装置によって取得されたブレーキ作用関連量と前記制動トルク検出装置によって検出された制動トルクとの関係に基づき、その制動トルク検出装置による検出が異常であるか否かを判定する手段を含む(26)項に記載のタイヤ作用力検出装置。
【0117】
本項に係る装置によれば、後述の(72)項に係る装置と共通する原理に従い、共通の作用効果が実現され得る。
【0118】
(28) 前記ブレーキが、対応する車輪と共に回転するブレーキ回転体に摩擦係合部材を押し付けることによって、対応する車輪の回転を抑制する摩擦ブレーキを含み、
前記ブレーキ作用関連量取得装置が、前記摩擦係合部材の前記ブレーキ回転体への押付力に関連する押付力関連量を取得する押付力関連量取得装置を含み、
前記制動トルク検出装置異常判定手段が、前記押付力関連量取得装置によって取得された押付力関連量を前記ブレーキ作用関連量として用いることにより、前記制動トルク検出装置による検出が異常であるか否かを判定する手段を含む(26)または(27)項に記載のタイヤ作用力検出装置。
【0119】
本項に係る装置によれば、後述の(78)項に係る装置と共通する原理に従い、共通の作用効果が実現され得る。
【0120】
(29) 前記ブレーキが、運転者によるブレーキ操作部材の操作に基づいて作動させられることにより、前記摩擦係合部材を前記ブレーキ回転体に押し付ける押付装置を含み、
前記ブレーキ作用関連量取得装置が、運転者による前記ブレーキ操作部材の操作状態を表す操作状態量を検出する操作状態量検出装置を含み、
前記制動トルク検出装置異常判定手段が、前記操作状態量検出装置によって検出された操作状態量を前記ブレーキ作用関連量として用いることにより、前記制動トルク検出装置による検出が異常であるか否かを判定する手段を含む(26)ないし(28)項のいずれかに記載のタイヤ作用力検出装置。
【0121】
本項に係る装置によれば、後述の(79)項に係る装置と共通する原理に従い、共通の作用効果が実現され得る。
【0122】
(30) 前記車両が、前記摩擦係合部材の前記ブレーキ回転体への押付力を制御する押付力制御装置を含み、
前記ブレーキが、運転者による前記ブレーキ操作部材の操作とは関係なく前記押付力制御装置の制御によって作動させられることにより、前記摩擦係合部材を前記ブレーキ回転体に押し付ける押付装置を含み、
前記制動トルク検出装置異常判定手段が、前記押付力制御装置による制御に関連する制御関連量を前記ブレーキ作用関連量として用いることにより、前記制動トルク検出装置による検出が異常であるか否かを判定する手段を含む(26)ないし(29)項のいずれかに記載のタイヤ作用力検出装置。
【0123】
本項に係る装置によれば、後述の(80)項に係る装置と共通する原理に従い、共通の作用効果が実現され得る。
【0124】
(31) 前記ブレーキ作用関連量取得装置が、前記車両の加速状態を検出する加速状態検出装置を含み、
前記制動トルク検出装置異常判定手段が、その加速状態検出装置によって検出された加速状態を表す加速状態量を前記ブレーキ作用関連量として用いることにより、前記制動トルク検出装置による検出が異常であるか否かを判定する手段を含む(26)ないし(30)項のいずれかに記載のタイヤ作用力検出装置。
【0125】
本項に係る装置によれば、後述の(81)項に係る装置と共通する原理に従い、共通の作用効果が実現され得る。
【0126】
(32) 前記車両が、前記複数の車輪の少なくとも1つに加えられる駆動トルクに関連する駆動トルク関連量を取得する駆動トルク関連量取得装置を含み、
前記制動トルク検出装置異常判定手段が、その駆動トルク関連量取得装置によって取得された駆動トルク関連量を考慮することにより、前記制動トルク検出装置による検出が異常であるか否かを判定する手段を含む(26)ないし(31)項のいずれかに記載のタイヤ作用力検出装置。
【0127】
本項に係る装置によれば、後述の(82)項に係る装置と共通する原理に従い、共通の作用効果が実現され得る。
【0128】
(33) 前記車両が、前記複数の車輪のうち制動されるものがおかれた環境を表す制動環境量を検出する制動環境量検出装置を含み、
前記制動トルク検出装置異常判定手段が、前記ブレーキ作用関連量の取得値と前記制動トルクの検出値との関係と、前記制動環境量検出装置によって検出された制動環境量とに基づいて、前記制動トルク検出装置による検出が異常であるか否かを判定する手段を含む(26)ないし(32)項のいずれかに記載のタイヤ作用力検出装置。
【0129】
本項に係る装置によれば、後述の(83)項に係る装置と共通する原理に従い、共通の作用効果が実現され得る。
【0130】
(34) 前記制動トルク検出装置異常判定手段が、前記車両の直進走行中に前記ブレーキが作用させられる状態であることを条件に、前記制動トルク検出装置による検出が異常であるか否かを判定する手段を含む(26)ないし(33)項のいずれかに記載のタイヤ作用力検出装置。
【0131】
本項に係る装置によれば、後述の(84)項に係る装置と共通する原理に従い、共通の作用効果が実現され得る。
【0132】
(35) 前記検出器が、前記複数の車輪のうちの全部または一部である複数の車輪に関してそれぞれ設けられた複数の検出器として構成され、
前記判定部が、それら複数の検出器間における前記タイヤ作用力の検出値の関係に基づき、それら複数の検出器の少なくとも1つによる検出が異常であるか否かを判定する手段を含む(1)ないし(34)項のいずれかに記載のタイヤ作用力検出装置。
【0133】
複数の車輪にそれぞれ設けられた複数の検出器がすべて正常である場合には、それら検出器による複数の検出値間に一定の関係が成立するが、それら検出器のうちの少なくとも1つが異常である場合には、それら検出値間に同じ関係が成立しない場合がある。
【0134】
このような知見に基づき、本項に係る装置においては、複数の検出器間におけるタイヤ作用力の検出値の関係に基づき、それら複数の検出器の少なくとも1つによる検出が異常であるか否かが判定される。
【0135】
(36) 前記判定部が、前記車両の状態を変化させるために成立するように設定された設定条件が成立することを条件に、前記検出器による検出が異常であるか否かを判定する手段を含む(1)ないし(35)項のいずれかに記載のタイヤ作用力検出装置。
【0136】
車両において、運転者による操作状態が変化したり、ブレーキを含む車両制御機器が自動的に作動させられることにより、車両の状態が変化した場合には、それに伴ってタイヤ作用力の実際値も変化する。したがって、車両の状態が変化したにもかからわず、検出器による検出値が変化しない場合には、その検出器が異常であると推定することが可能である。
【0137】
このような知見に基づき、本項に係る装置においては、車両の状態を変化させるために成立するように設定された設定条件が成立することを条件に、検出器による検出が異常であるか否かが判定される。
【0138】
(37) 前記設定条件が、アクセル操作部材と、ブレーキ操作部材と、ステアリング操作部材と、前記車両の駆動力伝達装置の変速段を切り換えるために運転者により操作される変速操作部材と、前記車両の進行方向を前進方向と後退方向とに切り換えるために運転者により操作される方向切換操作部材とのうちの少なくとも1つの、運転者による操作状態が変化した場合に成立するように設定された条件である(36)項に記載のタイヤ作用力検出装置。
【0139】
(38) 前記検出器が、対応する車輪またはそれの近傍であって検出すべきタイヤ作用力が力学的に伝達される位置に設けられた(1)ないし(3)項のいずれかに記載のタイヤ作用力検出装置。
【0140】
(39) 前記タイヤ作用力が、前記タイヤが路面に接するタイヤ接地点においてそのタイヤに作用するタイヤ接地力を含む(1)ないし(38)項のいずれかに記載のタイヤ作用力検出装置。
【0141】
(40) 前記検出器が、対応するタイヤに作用する複数種類の力をそれぞれ前記タイヤ作用力として検出する機能を有し、
前記判定部が、その検出器により検出された複数種類の力相互の関係に基づき、前記検出器によるタイヤ作用力の検出が異常であるか否かを判定する手段を含む(1)ないし(39)項のいずれかに記載のタイヤ作用力検出装置。
【0142】
同じ検出器が、対応するタイヤに作用する複数種類の力をそれぞれタイヤ作用力として検出する状況において、それら複数種類の力の間に一定の関係が成立する場合がある。この場合には、その検出器が正常であれば、その検出器により検出された複数種類の力の間に上記一定の関係が成立するが、その検出器が異常であれば、それら複数種類の力の間に上記一定の関係が成立しない。
【0143】
このような知見に基づき、本項に係る装置においては、検出器により検出された複数種類の力相互の関係に基づき、検出器によるタイヤ作用力の検出が異常であるか否かが判定される。
【0144】
(41) 前記判定部が、車両運動中と車両停止中との少なくとも一方において作動させられる(1)ないし(40)項のいずれかに記載のタイヤ作用力検出装置。
【0145】
(42) 前記判定部が、前記検出器による検出値に基づき、車両運動中と車両停止中との双方において互いに異なる規則に従って、前記検出器によるタイヤ作用力の検出が異常であるか否かを判定する手段を含む(41)項に記載のタイヤ作用力検出装置。
【0146】
(43) 前記判定部が、少なくとも車両運動中に、前記車両の走行状態に関して予め設定された異常判定許可条件が成立することを条件に、前記検出器によるタイヤ作用力の検出が異常であるか否かを判定する手段を含む(41)または(42)項に記載のタイヤ作用力検出装置。
【0147】
この装置によれば、検出器が異常であるか否かの判定を行うことが適当ではない状況においては、その判定が行われないようにすることが可能となる。したがって、この装置によれば、例えば、その判定が行われる走行状態を制限して最適化することにより、その判定の結果の信頼性低下を容易に回避し得る。
【0148】
(44) 前記検出器が、前記タイヤに前後方向に作用する前後力と、横方向に作用する横力と、上下方向に作用する上下力とのうちの少なくとも1つと、それら前後力と横力と上下力とのうちのいずれか2つを組み合わせてなる少なくとも1つの組合せの各々に属する2つの力の合力との少なくとも一方を前記タイヤ作用力として検出する機能を有する(1)ないし(43)項のいずれかに記載のタイヤ作用力検出装置。
【0149】
(45) 前記検出器が、前記前後力と横力と上下力とをそれぞれ前記タイヤ作用力として検出する機能を有する(44)項に記載のタイヤ作用力検出装置。
【0150】
(46) 前記判定部が、前記検出器により実質的に互い同じ時期に検出された前後力と横力と上下力との間における力学的関係に基づき、前記検出器による検出が異常であるか否かを判定する手段を含む(45)項に記載のタイヤ作用力検出装置。
【0151】
(47) 前記手段が、前記検出器に対応するタイヤについて前記前後力と横力との合力である水平力と前記上下力とが同じ摩擦円を共有する場合に成立するように予め設定された設定関係と前記力学的関係とが互いに実質的に一致しない場合に、前記検出器による検出が異常であると判定する手段を含む(46)項に記載のタイヤ作用力検出装置。
【0152】
同じタイヤについては、よく知られているように、前後力と横力との合力と、上下力と、タイヤと路面との間の摩擦係数との間に、摩擦円で表される関係が成立する。
【0153】
この関係に従い、かつ、タイヤと路面との間の摩擦係数を仮定、検出または推定によって特定すれば、その特定された摩擦係数の高さと上下力の大きさとから、それら条件のもとに理論的に成立する合力の大きさを計算により推定することができる。
【0154】
したがって、摩擦円で表される関係に着目すれば、前後力と横力と上下力との各検出値がすべて正常であるか、または少なくとも1つが異常であるかを判定することが可能となる。このような知見に基づき、本項に係る装置が提案されている。
【0155】
(48) 前記車両が、当該タイヤ作用力検出装置の他に、その車両の状態量を検出する車両状態量センサを含み、
前記判定部が、その車両状態量センサを用いることにより、前記検出器により検出される物理量と同じ物理量を比較物理量として取得するとともに、その取得された比較物理量と前記検出器による検出値とが互いに整合しない場合に、その検出器による検出が異常であると判定する第5異常判定手段を含む(1)ないし(47)項のいずれかに記載のタイヤ作用力検出装置。
【0156】
この装置によれば、それの検出器の検出異常の有無を、同じ車両における車両状態量センサを用いることにより、判定することができる。
【0157】
したがって、この装置によれば、例えば、信頼性の高い車両状態量センサが同じ車両に存在する場合に、その車両状態量センサを利用して検出器の検出異常の有無を判定することが可能となり、その判定の精度を容易に向上させることが可能となる。
【0158】
(49) 前記複数の車輪が、前輪と後輪とを含み、
前記検出器が、それら前輪と後輪とに関してそれぞれ設けられるとともに、各検出器が、前記タイヤに前後方向に作用する前後力を前記タイヤ作用力として検出する機能を有しており、
前記車両状態量センサが、前記タイヤに上下方向に作用する上下力の、前記前輪と後輪との間における移動量に関連する物理量を関連物理量として検出する機能を有し、
前記第5異常判定手段が、その検出された関連物理量と、前記車両の重心高およびホイールベースの長さとに基づいて前記比較物理量を推定する手段を含む(48)項に記載のタイヤ作用力検出装置。
【0159】
タイヤに作用する上下力の、前輪と後輪との間における移動量に関連する物理量と、車両の重心高およびホイールベースの長さとに基づき、タイヤに作用する前後力を推定することが可能である。この推定値と検出器による前後力の検出値とを互いに比較すれば、その検出器の検出異常の有無を判定することが可能である。この知見に基づき、本項に係る装置が提供されている。
【0160】
(50) 前記複数の車輪が、左輪と右輪とを含み、
前記検出器が、それら左輪と右輪とに関してそれぞれ設けられるとともに、各検出器が、前記タイヤに横方向に作用する横力を前記タイヤ作用力として検出する機能を有しており、
前記車両状態量センサが、前記タイヤに上下方向に作用する上下力の、前記左輪と右輪との間における移動量に関連する物理量を関連物理量として検出する機能を有しており、
前記第5異常判定手段が、その検出された関連物理量と、前記車両の重心高およびトレッドの長さとに基づいて前記比較物理量を推定する手段を含む(48)または(49)項に記載のタイヤ作用力検出装置。
【0161】
タイヤに作用する上下力の、左輪と右輪との間における移動量に関連する物理量と、車両の重心高およびトレッドの長さとに基づき、タイヤに作用する横力を推定することが可能である。この推定値と検出器による横力の検出値とを互いに比較すれば、その検出器の検出異常の有無を判定することが可能である。この知見に基づき、本項に係る装置が提供されている。
【0162】
(51) 前記検出器が、前記タイヤに横方向に作用する横力と上下方向に作用する上下力とをそれぞれ前記タイヤ作用力として検出する機能を有しており、
前記車両状態量センサが、前記車両の操舵角に関連する物理量と、前記車輪の回転速度に関連する物理量とをそれぞれ関連物理量として検出する機能を有しており、
前記第5異常判定手段が、前記検出器により検出された上下力と、前記車両状態量センサにより検出された関連物理量に基づき、前記検出器により検出された横力と比較されるべき前記比較物理量を推定する手段を含む(48)ないし(50)項のいずれかに記載のタイヤ作用力検出装置。
【0163】
タイヤに作用する上下力と、車両の操舵角に関連する物理量と、車輪の回転速度に関連する物理量とに基づき、タイヤに作用する横力を推定することが可能である。例えば、上下力も車輪の回転速度もそれぞれの基準値と等しい基準状態においては、操舵角と横力とが1対1に対応し、一方、それら上下力と車輪の回転速度との少なくとも一方が各基準値と等しくない状態においては、それら操舵角と横力との対応関係が、上述の基準状態における対応関係を上下力と車輪の回転速度とによってそれぞれ補正することによって取得することが可能である。なぜなら、タイヤのコーナリングパワーが車輪の回転速度と上下力とにそれぞれ依存するからである。
【0164】
そして、このようにして取得された推定値と検出器による横力の検出値とを互いに比較すれば、その検出器の検出異常の有無を判定することが可能である。この知見に基づき、本項に係る装置が提供されている。
【0165】
(52) 前記複数の車輪が、前輪と後輪とを含み、
前記検出器が、それら前輪と後輪とに関してそれぞれ設けられるとともに、各検出器が、前記タイヤに上下方向に作用する上下力と前後方向に作用する前後力とをそれぞれ前記タイヤ作用力として検出する機能を有しており、
前記車両状態量センサが、前記車両に前後方向に作用する前後加速度を検出する機能を有しており、
前記第5異常判定手段が、前記前輪と後輪とに関してそれぞれ前記検出器により検出された前後力の合計値を、前記車両状態量センサにより検出された前後加速度で割り算することにより、前記検出器により検出された上下力と比較されるべき前記比較物理量を推定する手段を含む(48)ないし(51)項のいずれかに記載のタイヤ作用力検出装置。
【0166】
前後力は、タイヤと路面との間における摩擦力に相当し、また、前後加速度は、それらタイヤと路面との間における摩擦係数に相当する。したがって、前後力を前後加速度で割り算すれば、タイヤに作用する上下力が取得される。
【0167】
このような知見に基づき、本項に係る装置においては、前輪と後輪とに関してそれぞれ検出器により検出された前後力の合計値を、車両状態量センサにより検出された前後加速度で割り算することにより、検出器により検出された上下力と比較されるべき比較物理量が推定される。
【0168】
(53) 前記複数の車輪が、左輪と右輪とを含み、
前記検出器が、それら左輪と右輪とに関してそれぞれ設けられるとともに、各検出器が、前記タイヤに上下方向に作用する上下力と横方向に作用する横力とをそれぞれ前記タイヤ作用力として検出する機能を有しており、
前記車両状態量センサが、前記車両に横方向に作用する横加速度を検出する機能を有しており、
前記第5異常判定手段が、前記左輪と右輪とに関してそれぞれ前記検出器により検出された横力の合計値を、前記車両状態量センサにより検出された横加速度で割り算することにより、前記検出器により検出された上下力と比較されるべき前記比較物理量を推定する手段を含む(48)ないし(51)項のいずれかに記載のタイヤ作用力検出装置。
【0169】
前後力についての上記の説明から容易に類推されるように、横力は、タイヤと路面との間における摩擦力に相当し、また、横加速度は、それらタイヤと路面との間における摩擦係数に相当する。したがって、横力を横加速度で割り算すれば、タイヤに作用する上下力が取得される。
【0170】
このような知見に基づき、本項に係る装置においては、左輪と右輪とに関してそれぞれ検出器により検出された横力の合計値を、車両状態量センサにより検出された横加速度で割り算することにより、検出器により検出された上下力と比較されるべき比較物理量が推定される。
【0171】
(54) 前記ゼロ点補正部が、前記タイヤ作用力の実際値が0であると予想される基準車両状態において、前記検出器のゼロ点を前記タイヤ作用力が0であることを表す位置に設定するゼロ点設定を行う設定手段を含む(1)ないし(53)項のいずれかに記載のタイヤ作用力検出装置。
【0172】
この装置によれば、タイヤ作用力の実際値が0であると予想される基準車両状態において、検出器のゼロ点を前記タイヤ作用力が0であることを表す位置に設定することにより、その検出器についてゼロ点補正が行われる。
【0173】
(55) 前記検出器が、前記タイヤに水平方向に作用する水平力を前記タイヤ作用力として検出する機能を有しており、
前記設定手段が、前記車両が水平な姿勢で停止状態にある場合に、その車両が前記基準車両状態にあると判定する基準車両状態判定手段を含む(54)項に記載のタイヤ作用力検出装置。
【0174】
車両が水平な姿勢で停止状態にあれば、車両からタイヤに水平力(前後力と横力との少なくとも一方)が作用することも、重力によってタイヤに水平力が作用することもない。
【0175】
したがって、本項に係る装置においては、車両が水平な姿勢で停止状態にある場合に、検出器のゼロ点が設定される。
【0176】
(56) 前記複数の車輪が、前輪と後輪とを含み、
前記検出器が、それら前輪と後輪とに関してそれぞれ設けられるとともに、各検出器が、さらに、前記タイヤに上下方向に作用する上下力を前記タイヤ作用力として検出する機能をも有しており、
前記基準車両状態判定手段が、前記前輪と後輪とに関してそれぞれ検出された上下力相互の関係に基づき、前記車両の姿勢がそれの前後方向に関して水平である基準車両状態にあるか否かを判定する手段を含む(55)項に記載のタイヤ作用力検出装置。
【0177】
前記(55)項に記載の装置は、それの検出器を利用せずに、車両における他のセンサを利用することにより、車両の姿勢がそれの前後方向に関して水平である基準車両状態を判定するようにして実施することが可能である。
【0178】
これに対して、本項に係る装置によれば、それの検出器を利用することにより、その基準車両状態を判定することが可能となり、その判定のために他のセンサに依存せずに済む。
【0179】
(57) 前記複数の車輪が、左輪と右輪とを含み、
前記検出器が、それら左輪と右輪とに関してそれぞれ設けられるとともに、各検出器が、さらに、前記タイヤに上下方向に作用する上下力を前記タイヤ作用力として検出する機能をも有しており、
前記基準車両状態判定手段が、前記左輪と右輪とに関してそれぞれ検出された上下力相互の関係に基づき、前記車両の姿勢がそれの横方向に関して水平である基準車両状態にあるか否かを判定する手段を含む(55)または(56)項に記載のタイヤ作用力検出装置。
【0180】
前記(55)または(56)項に記載の装置は、それの検出器を利用せずに、車両における他のセンサを利用することにより、車両の姿勢がそれの横方向に関して水平である基準車両状態を判定するようにして実施することが可能である。
【0181】
これに対して、本項に係る装置によれば、それの検出器を利用することにより、その基準車両状態を判定することが可能となり、その判定のために他のセンサに依存せずに済む。
【0182】
(58) 前記車両が、前記複数の車輪にそれぞれ設けられ、各車輪の回転を抑制するために互いに独立に作動可能である複数のブレーキを備えており、
前記検出器が、前記複数の車輪にそれぞれ関して設けられるとともに、各検出器が、前記タイヤに作用する制動力を前記タイヤ作用力として検出する機能を有しており、
前記設定手段が、前記車両の停止状態において、前記複数の検出器のうちの一部について順に前記ゼロ点設定を行うとともに、各回のゼロ点設定においては、そのゼロ点設定が行われるべき検出器である対象検出器が設けられている車輪については前記ブレーキを作動させない一方、その対象検出器が設けられている車輪を除く車輪の少なくとも1つについてはブレーキを作動させることにより、その対象検出器が設けられている車輪に制動力が作用しない状態を前記基準車両状態として生起する手段を含む(54)ないし(57)項のいずれかに記載のタイヤ作用力検出装置。
【0183】
車両の姿勢が水平から傾いている状態においてその車両を停止させるためにはその車両におけるブレーキを作動させることが必要である。そのため、この傾斜状態においては、特に工夫しない限り、車両の停止状態において検出器のゼロ点を制動力に関して設定することは不可能である。
【0184】
一方、車両の停止状態において、複数の検出器のうちの一部について順にゼロ点設定を行うとともに、各回のゼロ点設定においては、そのゼロ点設定が行われるべき検出器である対象検出器が設けられている車輪についてはブレーキを作動させない一方、その対象検出器が設けられている車輪を除く車輪の少なくとも1つについてはブレーキを作動させれば、車両の姿勢が水平であるか否か、すなわち、ブレーキによって車両を停止させることが必要であるか否かを問わず、その対象検出器が設けられている車輪に制動力が作用しない状態を基準車両状態として生起することが可能である。このような知見に基づき、本項に係る装置が提供されている。
【0185】
本項において「複数の検出器のうちの一部」は、1つの検出器を意味する場合と、複数の検出器を意味する場合とがある。
【0186】
(59) 前記検出器が、前記タイヤに横方向に作用する横力を前記タイヤ作用力として検出する機能を有しており、
前記設定手段が、前記車両の直進走行状態において前記ゼロ点設定を行う手段を含む(54)ないし(58)項のいずれかに記載のタイヤ作用力検出装置。
【0187】
車両の直進走行状態においては、タイヤに横力が発生しないため、検出器のゼロ点を横力が0であることを表す位置に設定することが可能である。このような知見に基づき、本項に係る装置が提供されている。
【0188】
本項において「車両の直進走行状態」は、車両のヨーレートを検出するヨーレートセンサの検出値、車両の横加速度を検出する横加速度センサの検出値、車両の運転者により操作されるステアリングホイールの操舵角またはそれに関連する物理量(例えば、操舵トルク)を検出するセンサの検出値等を用いることにより、判定することが可能である。
【0189】
(60) 前記検出器が、前記タイヤに作用する駆動力と制動力とをそれぞれ前記タイヤ作用力として検出するために、駆動力は検出するが制動力は検出しない第1部分と、制動力は検出するが駆動力は検出しない第2部分とを互いに独立して有しており、
前記設定手段が、前記車両の走行状態において、前記検出器が設けられている車輪に制動力が発生しているときに、前記第1部分について前記ゼロ点設定を行う手段を含む(54)ないし(59)項のいずれかに記載のタイヤ作用力検出装置。
【0190】
同じタイヤに駆動力と制動力との双方が同時に作用する状況は一般的には存在しない。したがって、検出器のゼロ点を駆動力に関して設定するためには、同じタイヤに制動力が作用している状態を検出し、その状態においてゼロ点設定を行うことが望ましい。このような知見に基づき、本項に係る装置が提供されている。
【0191】
本項において「車輪に制動力が発生している状態」は、車両の前後加速度を検出する前後加速度センサの検出値、タイヤの前後力を検出するセンサの検出値、車輪の回転を抑制するブレーキの作動力またはそれに関連する物理量(例えば、ブレーキの液圧シリンダにおける液圧)を検出するセンサの検出値等を用いることにより、判定することが可能である。
【0192】
(61) 複数の車輪を有するとともに、ホイールの外周にタイヤが装着されることによって各車輪が構成された車両に搭載され、前記タイヤに作用するタイヤ作用力を検出するタイヤ作用力検出装置であって、
前記複数の車輪の少なくとも1つに関して設けられ、前記タイヤに上下方向に作用する上下力と水平方向に作用する水平力とをそれぞれ前記タイヤ作用力として検出する少なくとも1つの検出器と、
その検出器により検出された上下力には基づくが、その検出器により検出された水平力には基づかないで、その検出器による上下力の検出が異常であるか否かを判定する第1異常判定部と
を含むタイヤ作用力検出装置。
【0193】
よく知られているように、車両の運動は基本的には、タイヤと路面との間における摩擦力によって実現される。一方、タイヤに作用する力は、上下力と水平力とに分類することができるが、上下力は、摩擦力とは直接に関連しない物理量であるのに対し、水平力は、直接に関連する物理量である。また、摩擦力は、上下力と、タイヤと路面との間における摩擦係数との双方に依存する。
【0194】
したがって、上下力は、水平力にも摩擦係数にも依存しないのに対し、水平力は、摩擦係数にも上下力にも依存する。
【0195】
よって、検出器による上下力の検出が異常であるか否かの判定は、検出器による水平力の検出値を参照しないで行うことができる傾向が強いのに対し、検出器による水平力の検出が異常であるか否かの判定は、検出器による上下力の検出値を参照することが必要であるという傾向が強い。
【0196】
このような知見に基づき、本項に係る装置においては、それの検出器により検出された上下力には基づくが、その検出器により検出された水平力には基づかないで、その検出器による上下力の検出が異常であるか否かが判定される。
【0197】
したがって、この装置によれば、検出器による水平力の検出が異常であるか否かとは無関係に、検出器による上下力の検出が異常であるか否かを判定することが可能となる。
【0198】
(62) さらに、前記第1異常判定部により前記上下力の検出が異常ではないと判定された場合に、前記検出器により検出された上下力と水平力とに基づき、その検出器による水平力の検出が異常であるか否かを判定する第2異常判定部を含む(61)項に記載のタイヤ作用力検出装置。
【0199】
この装置によれば、検出器による上下力の検出が異常ではないと判定された場合に、その検出器により検出された上下力と水平力とに基づき、その検出器による水平力の検出が異常であるか否かが判定される。
【0200】
(63) 前記第2異常判定部が、前記検出器により検出された水平力を、その検出器により検出された上下力で割り算した値を用いることにより、前記検出器による水平力の検出が異常であるか否かを判定する判定手段を含む(62)項に記載のタイヤ作用力検出装置。
【0201】
この装置によれば、前記(15)項に係る装置におけると同様な原理に従い、検出器による水平力の検出が異常であるか否かを判定することが可能である。
【0202】
(64) 前記車両が、その車両に前記水平力と同じ方向に作用する加速度を検出する加速度センサを含み、
前記検出器が、前記複数の車輪のうちの全部または一部である複数の車輪に関してそれぞれ設けられており、
前記判定手段が、それら複数の検出器により検出された複数の水平力の合計値を、それら複数の検出器により検出された複数の上下力の合計値で割り算した値と、前記加速度センサにより検出された加速度とが互いに整合しない場合に、前記複数の検出器の少なくとも1つによる水平力の検出が異常であると判定する手段を含む(63)項に記載のタイヤ作用力検出装置。
【0203】
この装置によれば、前記(18)項に係る装置におけると同様な原理に従い、検出器による水平力の検出が異常であるか否かを判定することが可能である。
【0204】
(65) 複数の車輪を有するとともに、ホイールの外周にタイヤが装着されることによって各車輪が構成された車両であってその車両の状態量を検出する車両状態量センサを含むものに搭載され、前記タイヤに作用するタイヤ作用力を検出するタイヤ作用力検出装置であって、
前記複数の車輪の少なくとも1つに関して設けられて前記タイヤ作用力を検出する少なくとも1つの検出器と、
その検出器による検出値を利用することにより、前記車両状態量センサによる検出の異常に関する判定を行うセンサ判定部と、前記検出器による検出値を利用することにより、前記車両状態量センサのゼロ点を補正するセンサゼロ点補正部との少なくとも一方と
を含むタイヤ作用力検出装置。
【0205】
この装置によれば、同じ車両が当該タイヤ作用力検出装置と車両状態量センサとを有する場合に、そのタイヤ作用力検出装置を利用することにより、車両状態量センサによる検出の異常に関する判定と、車両状態量センサのゼロ点の補正との少なくとも一方を行うことが可能である。
【0206】
そして、この装置によれば、それの検出器による検出値を絶対的な基準として、同じ車両における他のセンサについて、検出異常に関する判定と、ゼロ点補正との少なくとも一方を行うことが可能である。
【0207】
したがって、この装置によれば、例えば、その車両が複数の車両状態量センサを有する場合に、それら複数の車両状態量センサに共通に当該装置を用いることにより、それら複数の車両状態量センサについて個別にではなく一括して、検出異常に関する判定とゼロ点補正との少なくとも一方を行うことが可能となる。
【0208】
本項において「検出の異常に関する判定」は、前記(1)項におけると同様に解釈することが可能である。
【0209】
この装置の一態様によれば、前記センサ判定部が、各車輪ごとに、車両状態量センサによる検出値と検出器による検出値とが互いに比較されることにより、その車両状態量センサによる検出が異常であるか否かが判定される。この態様の一例によれば、そのような判定が複数の車輪について順次行われる。
【0210】
(66) 前記車両状態量センサが、前記タイヤ作用力に関連する物理量を前記車両状態量として検出する機能を有しており、
前記センサゼロ点補正部が、前記検出器により検出されたタイヤ作用力が0である場合に、前記車両状態量センサについて前記ゼロ点を前記車両状態量が0であることを表す位置に設定するゼロ点設定を行う設定手段を含む(65)項に記載のタイヤ作用力検出装置。
【0211】
この装置によれば、検出器により検出されたタイヤ作用力が0である場合に、車両状態量センサについてゼロ点を車両状態量が0であることを表す位置に設定することにより、その車両状態量センサのゼロ点が補正される。
【0212】
(67) 前記車両状態量センサが、前記タイヤ作用力に関連する物理量を前記車両状態量として検出する機能を有しており、
前記センサゼロ点補正部が、前記検出器により検出されたタイヤ作用力が0でない基準値と等しい場合に、そのときに前記車両状態量センサにより検出された物理量の理想値からの誤差に基づき、前記車両状態量センサのゼロ点を補正する手段を含む(65)または(66)項に記載のタイヤ作用力検出装置。
【0213】
この装置によれば、検出器により検出されたタイヤ作用力が0ではない場合に、車両状態量センサのゼロ点を補正することが可能である。
【0214】
具体的には、検出器により検出されたタイヤ作用力が0でない基準値と等しい場合に、そのときに車両状態量センサにより検出された物理量の理想値からの誤差に基づき、車両状態量センサについてゼロ点補正が行われる。
【0215】
(68) さらに、(1)ないし(64)項のいずれかに記載の判定部とゼロ点補正部との少なくとも一方を含む(65)ないし(67)項のいずれかに記載のタイヤ作用力検出装置。
【0216】
この装置によれば、前記(1)ないし(64)項のいずれかに記載の判定部とゼロ点補正部との少なくとも一方によって検出性能が正常化されたタイヤ作用力検出装置を利用することにより、前記車両状態量センサについて、検出異常に関する判定と、ゼロ点補正との少なくとも一方を行うことが可能となる。
【0217】
(69) 前記少なくとも一方の判定部とゼロ点補正部とが、前記車両状態量センサを利用することなく、作動するものである(68)項に記載のタイヤ作用力検出装置。
【0218】
(70) 前記車両が、前記ホイールが同軸に装着されることによって前記車輪を一体的に回転可能に保持する保持体を各車輪ごとに有する車体を備えており、
前記検出器が、前記ホイールと保持体との間に、それら間における力の伝達を行う状態で設けられた(1)ないし(69)項のいずれかに記載のタイヤ作用力検出装置。
【0219】
この装置によれば、ホイールによる制約も保持体による制約も受けずに、タイヤ作用力を検出することが可能となる。
【0220】
したがって、この装置によれば、車輪自体または車輪と共に回転する既存の部材にタイヤ作用力検出装置の検出器を装着する直接検出式とは異なり、タイヤ作用力を検出するために必要な部品の配置や構造、形状等を高い自由度で設計することが容易となる。
【0221】
よって、この装置によれば、タイヤ作用力の検出精度を向上させることが容易となる。
【0222】
また、この装置によれば、例えば、タイヤ作用力を検出するために必要な部品の配置や構造、形状等を規格化することにより、互いに異なる複数の使用環境に対する当該装置の汎用性を向上させることが容易となる。
【0223】
さらに、この装置によれば、ホイールと保持体との間における力の伝達が行われる部位においてタイヤ作用力が検出される。
【0224】
したがって、この装置によれば、車輪自体からも車輪と共に回転する既存の部材からも独立するとともにそれらと共に回転することなくそれらから力を受ける別の既存の部材にタイヤ作用力検出装置の検出器を装着する間接検出式とは異なり、タイヤ作用力を精度よく検出するために必要な情報を精度よくかつ十分な量で取り込むことが容易となる。
【0225】
よって、この装置によれば、そのことに依存することによっても、タイヤ作用力の検出精度を向上させることが容易となる。
【0226】
本項において「力」は、狭義の力を意味する軸力と、モーメントすなわちトルクに相当する回転力との双方を含む。
【0227】
また、本項において「車輪」は、車両の動力源により駆動される駆動車輪としたり、車両の動力源により駆動されずに転動させられる転動車輪とすることが可能である。
【0228】
また、本項において「検出器」は、1種類のタイヤ作用力のみを検出する形式としたり、複数種類のタイヤ作用力を検出する形式とすることが可能である。
【0229】
本項に係る装置の一態様によれば、検出器が、ホイールと保持体とに着脱可能に装着されるものとされる。この態様によれば、検出器が装着されていない車両にその検出器を新たに装着したり、既に装着されている車両においてそれの検出器を交換することが可能となる。
【0230】
(71) 車輪の回転を抑制するブレーキの作用によって生じる制動トルクを検出する制動トルク検出装置の異常を検出する異常検出装置であって、
前記ブレーキの作用に関連する量を取得するブレーキ作用関連量取得装置と、
そのブレーキ作用関連量取得装置によって取得されたブレーキ作用関連量と前記制動トルク検出装置によって検出された制動トルクとに基づいて前記制動トルク検出装置の異常を検出する異常検出部と
を含む異常検出装置。
【0231】
本項に係る異常検出装置においては、ブレーキ作用関連量と制動トルク検出装置による検出値とに基づいて制動トルク検出装置の異常が検出される。
【0232】
(72) 前記異常検出部が、前記ブレーキ作用関連量と前記制動トルク検出装置による制動トルクの検出値との関係に基づいて前記制動トルク検出装置の異常を検出するものである(71)項に記載の異常検出装置。
【0233】
制動トルクはブレーキの作用によって生じるため、ブレーキの作用に関連するブレーキ作用関連量と制動トルクとの間には一定の関係がある。したがって、これらブレーキ作用関連量と制動トルクの検出値との関係に基づけば制動トルク検出装置の異常を検出することができる。異常検出部は、例えば、その関係が所定の(一義的に決まる)関係にない場合に、制動トルク検出装置が異常であると判定する態様で実施することができる。
【0234】
ブレーキが、摩擦係合部材がブレーキ回転体に押し付けられることによって作用するものである場合には、摩擦係合部材のブレーキ回転体への押付力をブレーキ作用関連量とすることができる。この場合に、後述のように、押付力自体に限らず、押付力に関連する量もブレーキ作用関連量に該当する。また、ブレーキが作用させられると(作動させられ、作用状態とされると)車両が減速させられるため、その車両の減速度、走行速度の低下量等をブレーキ作用関連量とすることができる。
【0235】
このように、ブレーキの作用関連量には、ブレーキの作用の原因となる量、ブレーキの作用の結果を表す量等が該当すると考えることができるが、ブレーキの作用の結果を表す量には、車両の減速度等の走行状態を表す車両走行状態量のみならず、制動トルクの推定値も該当する。制動トルクはブレーキの作用の結果生じるからである。
【0236】
(73) 前記制動トルク検出装置が、
前記ブレーキの作用によって生じる連れ回り力を検出する連れ回り力検出部と、
その連れ回り力検出部によって検出された連れ回り力に基づいて制動トルクを演算により求める演算処理部と
を含み、
前記異常検出装置が、連れ回り力検出部と演算処理部との少なくとも一方が異常であると判定するものである(71)または(72)項に記載の異常検出装置。
【0237】
連れ回り力検出部は、連れ回り力を機械的に検出する形式であっても、連れ回り力をが液圧等の別の物理量に変換し、その変換された物理量を検出する形式であってもよい。
【0238】
機械的に検出する形式としては、摩擦係合部材によってブレーキ本体に加えられる連れ回り力自体(押圧力)を検出する態様、車輪と車体との間に設けられたサスペンションアームに加わる力を歪みとして検出する態様、アンカブラケットに加わる力を歪みとして検出する態様等が存在する。
【0239】
これに対し、変換された液圧を検出する形式としては、制動トルク検出装置が連れ回り力に応じた液圧を発生する液圧発生装置を有する場合に、その液圧発生装置の液圧を検出する液圧検出部を使用する態様が存在する。液圧に基づいて制動トルクを検出する形式については、以下、(74)ないし(77)項において詳述する。
【0240】
演算処理部は、連れ回り力検出部による検出値に基づいて、その検出値の接線方向の成分(連れ回り力)を求め、その求められた成分の値に、その接線方向の成分の作用線の、ブレーキ回転体の回転中心からの距離を掛けることによって制動トルクを求める。
【0241】
連れ回り力検出部によって連れ回り力自体が検出される場合には、その検出値をそのまま利用して制動トルクを演算することができる。連れ回り力は、摩擦係合部材とブレーキ回転体との間の摩擦力であり、制動力である。
【0242】
このように、制動力に等価半径(摩擦力全部が作用するとみなし得る点とブレーキ回転体の回転中心との距離)を掛けたものが制動トルクであるため、以下、本明細書においては、制動力と制動トルクとは実質的に同じものとみなし、制動トルク検出装置の異常検出装置は制動力検出装置の異常検出装置でもあるとする。
【0243】
(74) 前記制動トルク検出装置が、
前記ブレーキ本体を前記ブレーキ回転体の近傍の車体側固定部材にブレーキ回転体の周方向にほぼ沿って移動可能に保持するブレーキ本体保持装置と、
前記ブレーキ本体の移動に基づいて液圧を発生させる液圧発生装置と、
その液圧発生装置の液圧を検出する液圧検出装置と、
その液圧検出装置による検出液圧に基づいて前記車輪に加えられる制動トルクを取得する制動トルク取得装置と
を含む(71)ないし(73)項のいずれかに記載の異常検出装置。
【0244】
制動トルク検出装置を、液圧に基づいて制動トルクを検出するものとすれば、制動トルクを機械的に検出する場合に比較して、検出精度を向上させることができる。
【0245】
摩擦係合部材が回転中のブレーキ回転体に押し付けられると、これらの間に摩擦力が生じ、この摩擦力により摩擦係合部材がブレーキ回転体の回転を抑制する。また、ブレーキ本体には、ブレーキ回転体の回転方向と同じ方向に連れ回り力が作用する。この連れ回り力は、摩擦係合部材とブレーキ回転体との間の摩擦力と大きさが同じで、向きが逆向きの力である。
【0246】
上記摩擦力は、摩擦係合部材のディスクロータへの押付力にこれらの間の摩擦係数μを掛けた大きさであって、ブレーキ回転体の接線方向(その回転方向とは逆向き)の力である。以下、本明細書においては、「接線方向」は「ほぼ周方向」に包含される方向の一つとする。
【0247】
本項における制動トルク検出装置においては、摩擦係合部材を保持するブレーキ本体が車体側固定部材にブレーキ回転体のほぼ周方向に相対移動可能に保持されている。そのため、ブレーキの作用によってブレーキ本体が、ブレーキ回転体の回転方向の連れ回り力によって、車体側固定部材に対してブレーキ回転体のほぼ周方向に相対移動させられる。このブレーキ本体の移動に基づいて液圧発生装置に液圧が発生させられる。その液圧発生装置の液圧は、連れ回り力、すなわち、摩擦力に応じた高さになる。
【0248】
車体側固定部材は、例えば、車輪と共には回転しないサスペンション装置の構成部材またはその構成部材に相対回転不能に取り付けられた部材とすることができる。サスペンション構成部材は、ブレーキが前輪に設けられたものである場合には、ステアリングナックルとすることができ、後輪に設けられたものである場合には、リヤアクスルハウジングとすることができる。車体側固定部材は、ブレーキ回転体の近傍に位置するものであることが望ましい。
【0249】
(75) 前記制動トルク検出装置が、前記液圧発生装置の本体を、車体側固定部材に少なくとも前記ブレーキ回転体のほぼ周方向に相対移動不能に保持する液圧発生装置保持装置を含む(74)項に記載の異常検出装置。
【0250】
液圧発生装置の本体は、車体側固定部材にほぼ周方向に相対移動不能に保持され、ブレーキ本体は車体側固定部材にほぼ周方向に相対移動可能に保持される。したがって、ブレーキ本体がほぼ周方向に相対移動させられれば、ブレーキ本体と液圧発生装置との相対位置関係が変わる。これらが接近したり、離間したりするのであり、それによって、液圧発生装置に引張力が加えられたり、押付力が加えられたりする。
【0251】
液圧発生装置には、これら引張力や押付力に応じた液圧が発生させられる。また、これら引張力や押付力は、摩擦係合部材とブレーキ回転体との間の摩擦力に比例する大きさである。よって、液圧発生装置の液圧に基づけば、摩擦力を検出することができ、さらに、制動力を検出することもできる。
【0252】
なお、液圧発生装置が保持される車体側固定部材と、ブレーキ本体が保持される車体側固定部材とは同一部材であっても異なる部材であってもよい。いずれにしても、ブレーキ本体の周方向の移動によって、ブレーキ本体と液圧発生装置との相対位置関係が変わる。
【0253】
(76) 前記制動トルク検出装置が、前記ブレーキ本体と前記液圧発生装置との間に設けられ、ブレーキ本体の移動による駆動力を液圧発生装置に伝達する駆動伝達装置を含む(74)または(75)項に記載の異常検出装置。
【0254】
駆動伝達装置は、ブレーキ本体と液圧発生装置との間の連携装置を含むものとすることができる。
【0255】
それらブレーキ本体と液圧発生装置とを互いに連携させる形式としては、液圧発生装置が可変容積室とその容積を変化させる容積変化部材(移動部材)とを含む場合においては、ブレーキ本体と容積変化部材とを互いに直接に連携させる形式や、ブレーキ本体と容積変化部材とを連携部材を介して互いに連携させる形式がある。
【0256】
いずれの形式を採用する場合でも、上記連携装置の構造的特徴の如何によって、摩擦係合部材とブレーキ回転体との間の摩擦力の大きさと液圧発生装置の液圧に応じた力の大きさとの関係(例えば、比例定数)が決まる。
【0257】
例えば、ブレーキ本体の移動量ΔLと容積変化部材の移動量ΔMとが同じになる状態でブレーキ本体と液圧発生装置とが互いに連携させられた場合には、可変容積室の液圧による力Fpと、摩擦係合部材とブレーキ回転体との間の摩擦力Fbとが同じになる。また、ブレーキ本体の移動量ΔLの容積変化部材の移動量ΔMに対する比率(伝達比:ΔL/ΔM)と、可変容積室の液圧による力Fpの摩擦力Fbに対する比率(Fp/Fb)とが同じになる。
【0258】
後に[発明の実施の形態]の欄に記載されているように、液圧発生装置としての液圧シリンダが、それの軸線が、摩擦係合部材がブレーキ回転体に押し付けられる位置におけるブレーキ回転体の接線方向と平行な状態で配置されれば、上記比率が1となる。
【0259】
(77) 前記液圧発生装置が、作動液が液密に収容され、前記ブレーキ本体の移動に基づいて容積が変化させられる可変容積室を含み、
前記液圧検出装置が、その可変容積室の液圧を検出するものである(74)ないし(76)項のいずれかに記載の異常検出装置。
【0260】
可変容積室の容積が前記ブレーキ本体のほぼ周方向の移動に基づいて変化させられる。可変容積室内には、摩擦力に応じた高さの液圧が発生させられる。可変容積室を備えた液圧発生装置の一例は、液圧シリンダとすることができる。
【0261】
この例においては、液圧シリンダに液密かつ摺動可能に嵌合されたピストンがブレーキ本体のほぼ周方向の移動に基づいて移動させられ、その移動に伴って液圧室の容積が変化させられ、それに応じた液圧が発生させられる。
【0262】
また、液圧発生装置の一例は、ベローズを含むものとすることができる。この例においては、ベローズがブレーキ本体の移動に基づいて伸縮させられ、それによって、ベローズの内側の容積が変化させられ、摩擦力に応じた液圧が発生させられる。可変容積室は、ベローズの内側に設けても外側に設けてもよい。
【0263】
(78) 前記ブレーキが、ブレーキ回転体に摩擦係合部材を押し付けることによって、前記車輪の回転を抑制する摩擦ブレーキであり、
前記ブレーキ作用関連量取得装置が、前記摩擦係合部材のブレーキ回転体への押付力に関連する押付力関連量を取得する押付力関連量取得装置を含み、
前記異常検出部が、前記押付力関連量取得装置によって取得された押付力関連量を前記ブレーキ作用関連量として前記制動トルク検出装置の異常を検出する押付力依拠異常検出部を含む(71)ないし(77)項のいずれかに記載の異常検出装置。
【0264】
ブレーキは押付力によって作動させられる。押付力は、後述のように、運転者によるブレーキ操作部材の操作に起因して加えられる場合や、操作しない状態において加えられる場合がある。また、運転者によるブレーキ操作部材の操作量に応じた大きさの押付力が加えられる場合や、操作量とは関係なく、車両の走行状態や走行環境に基づいて加えられる場合がある。例えば、アンチロック制御、トラクション制御、ビークルスタビリティ制御、クルーズ制御等が行われる場合が該当する。
【0265】
いずれの場合にも、押付力に関連する押付力関連量と制動トルクとの間には予め定められた関係がある。押付力関連量には、押付力のみならず、押付力を推定し得る物理量、押付力に比例する力等が該当する。
【0266】
ブレーキは、液圧によって摩擦係合部材がブレーキ回転体に押し付けられる液圧押付装置を含む液圧ブレーキとしたり、電動押付装置としての電動アクチュエータを含む電動ブレーキとすることができる。
【0267】
ブレーキが上記液圧ブレーキである場合には、押付力は押付装置としてのブレーキシリンダの液圧で表すことができ、押付力関連量には、ブレーキシリンダの液圧、ブレーキシリンダに接続された装置または液通路の液圧等が該当する。ブレーキシリンダにマスタシリンダが接続され、マスタシリンダの液圧が伝達されてブレーキが作用させられる場合には、マスタシリンダの液圧やブレーキ操作力が押付力関連量に該当する。
【0268】
ブレーキシリンダの液圧が液圧制御装置によって制御される場合には、その液圧制御装置の制御量に基づいて押付力関連量を取得することができる。例えば、ブレーキシリンダがマスタシリンダから遮断された状態で、ブレーキシリンダの液圧が、液圧制御装置によって、ブレーキ操作部材の操作状態量に応じた大きさに制御される場合には、その制御量自体を押付力関連量とすることができる。
【0269】
また、ブレーキシリンダの液圧が、液圧制御装置の制御によって、運転者によるブレーキ操作力に対応する液圧より高い値に制御される場合(液圧制御装置によって助勢力が加えられる場合)がある。この場合には、運転者によるブレーキ操作力と液圧制御装置による制御量とに基づいてブレーキシリンダの液圧を取得することができる。すなわち、ブレーキ操作状態量と制御量とに基づいて押付力関連量を取得することができるのである。
【0270】
また、ブレーキが前記電動ブレーキである場合も、ブレーキシリンダの液圧が液圧制御装置によって制御される上述の場合と同様であるが、この場合には、電動アクチュエータへの供給電流等で押付力を表すことができる。
【0271】
(79) 前記ブレーキが、運転者によるブレーキ操作部材の操作に基づいて作動させられ、それにより、前記摩擦係合部材を前記ブレーキ回転体に押し付ける押付装置を含み、
前記ブレーキ作用関連量取得装置が、前記ブレーキ操作部材の運転者による操作状態を表す操作状態量を検出する操作状態量検出装置を含み、
前記異常検出部が、前記操作状態量検出装置によって検出された操作状態量を前記ブレーキ作用関連量として前記制動トルク検出装置の異常を検出する操作状態依拠異常検出部を含む(71)ないし(78)項のいずれかに記載の異常検出装置。
【0272】
ブレーキの押付装置が、ブレーキ操作部材に連携させられた作動部材またはブレーキ操作部材の操作力が伝達されて作動させられる作動部材を含む場合や、押付力が、押付力制御装置の制御により、ブレーキ操作部材の操作力や操作ストロークに応じた大きさに制御される場合等には、ブレーキがブレーキ操作部材の運転者による操作に基づいて作動させられ、作用状態とされる。
【0273】
例えば、パーキングブレーキにおいては、パーキングレバー等のパーキングブレーキ操作部材の操作によってケーブルが引っ張られ、摩擦係合部材がブレーキ回転体に押し付けられる。
【0274】
また、ブレーキがブレーキシリンダの液圧により作動させられる形式である場合には、ブレーキシリンダにマスタシリンダが連通させられている状態において、ブレーキ操作部材の操作によってマスタシリンダに液圧が発生させられ、その液圧がブレーキシリンダに伝達されてそれのピストンが前進させられる。それにより、摩擦係合部材がブレーキ回転体に押し付けられる。
【0275】
さらに、ブレーキ操作部材の操作力や操作ストロークが検出され、その検出された操作力や操作ストロークに基づいて押付力の目標値が決定され、押付力の実際値が、その決定された目標値に近づくように押付力制御装置によって制御される場合もある。この場合においても、押付力は運転者によるブレーキ操作状態量に対応した大きさになる。
【0276】
ブレーキ操作状態量には、ブレーキ操作部材の操作ストローク、操作力等が該当するが、パーキングブレーキ操作部材については、それが操作状態にされれば、予め定められた大きさの押付力で押し付けられるようにされている場合もある。この場合には、操作状態にあるか否か(例えば、0または1)を表す量もブレーキ操作状態量に該当する。車両の走行中にパーキングブレーキ操作部材が操作されることは稀であるが、あり得ないことではない。
【0277】
なお、ブレーキ操作部材には、サービスブレーキの操作部材、パーキングブレーキの操作部材等が該当し、サービスブレーキの操作部材、パーキングブレーキ操作部材の操作量や操作力を操作状態量とすることができる。
【0278】
(80) 前記ブレーキが、前記ブレーキ操作部材の運転者による操作とは関係なく押付力制御装置の制御によって作動させられる押付装置を含み、
前記異常検出部が、前記押付力制御装置による制御に関連する制御関連量を前記ブレーキ作用関連量として、前記制動トルク検出装置の異常を検出する制御量依拠異常検出部を含む(71)ないし(79)項のいずれかに記載の異常検出装置。
【0279】
本項におけるブレーキは、押付力制御装置による制御によって作用させられ、制御量に応じた制動トルクが発生させられる。例えば、押付力制御装置によって、実際の押付力や制動トルクが目標値に近づくように制御される場合には、制御量はこれら目標値に応じた大きさに決定されることになるため、これら目標値や制御量をブレーキ作用関連量とすることができる。
【0280】
押付力制御装置は、ブレーキ操作部材が運転者によって操作されているか否かに関係なく押付力を制御し、例えば、車両の走行状態や車両がおかれた環境に基づいて制御する。押付力制御装置を自車両と前方車両との相対位置関係が予め定められた関係に保たれるように押付力を制御するクルーズ制御装置がその一例である。
【0281】
このクルーズ制御装置においては、自車両と前方車両との車間距離が設定距離より小さい場合や自車両と前方車両との接近傾向が設定傾向より強くなった場合に、これらの相対位置関係に応じて押付力が制御される。
【0282】
(81) 前記ブレーキ作用関連量取得装置が、当該異常検出装置が搭載された車両の加速状態を検出する加速状態検出装置を含み、
前記異常検出部が、前記加速状態検出装置によって検出された車両の加速状態を表す加速状態量を前記ブレーキ作用関連量として、前記制動トルク検出装置の異常を検出する加速状態対応異常検出部を含む(71)ないし(80)項のいずれかに記載の異常検出装置。
【0283】
ブレーキが作用させられれば車両が減速させられる。そのため、例えば、車両の減速度をブレーキ作用関連量とすることができる。
【0284】
そして、車両の減速度が大きいのに対して、制動トルク検出装置による制動トルクの検出値が小さい場合には、制動トルク検出装置が異常であると判定することができる。また、車両の減速度が小さいのに対して、制動トルク検出装置による制動トルクの検出値が大きい場合にも、制動トルク検出装置が異常であると判定することができる。
【0285】
一方、車両の加速状態という用語は、広義に解釈すれば、車両が前向きに加速される狭義の加速状態(車両の正の加速度が増加する状態)と、車両が後向きに加速される狭義の減速状態(車両の負の加速度が増加する状態)とを含んでいる。その狭義の減速状態は、ブレーキ作用状態すなわち制動状態を含んでいる。
【0286】
以上説明した知見に基づき、本項に係る装置が提案されている。
【0287】
(82) 当該異常検出装置が、前記車輪に加えられる駆動トルクに関連する駆動トルク関連量を取得する駆動トルク関連量取得装置を含み、
前記異常検出部が、前記駆動トルク関連量取得装置によって取得された駆動トルク関連量を考慮して前記制動トルク検出装置の異常を検出する駆動トルク勘案異常検出部を含む(71)ないし(81)項のいずれかに記載の異常検出装置。
【0288】
駆動トルクが車両(車輪を含む。)に加えられると、それに起因して、例えば、ブレーキ作動関連量と制動トルク検出装置による検出値との関係が変化する場合がある。そのため、制動トルク検出装置の異常を検出する場合には、駆動トルクを考慮することが望ましい。
【0289】
運転者によるアクセル操作なしで車両が水平な路面を走行している状態においてブレーキが作用させられた場合には、車輪が路面に対して過大にスリップしない限り押付力に応じた制動トルクが発生し、その制動トルクに応じた減速度で車両が減速させられる。制動トルク検出装置によって検出される制動トルクは押付力に応じた大きさとなる。
【0290】
それに対して、車両が傾斜した路面を走行している状態や、運転者によるアクセル操作なしで駆動源の駆動トルクが車両に加えられている状態(例えば、クルーズ制御中)にブレーキが作用させられた場合には、アクセル操作に依存する基礎的な駆動トルクではなく、アクセル操作に依存しない付加的な駆動トルクが車両に加えられる。
【0291】
具体的には、前者の状態においては、重力に基づく駆動トルク(みかけ上の駆動トルク)が、後者の状態においては、アクセル操作に依存しない駆動源からの駆動トルク(自動的な駆動トルク)がそれぞれ車両に加えられる。
【0292】
いずれの状態においても、車輪が路面に対して過大にスリップしない限り、制動トルク検出装置によって検出される制動トルクは押付力に応じた大きさとなる。しかし、車両減速度は、押付力に応じた制動トルクに対応する大きさではなくなる。以下、車両減速度に対応する制動トルクを、押付力に応じた制動トルクと区別する必要がある場合には、実効制動トルクと称することとする。
【0293】
このように、駆動トルクが車両に加えられても、押付力と制動トルク検出値との関係は変わらないが、車両減速度と制動トルク検出値との関係は変わる。この場合には、車両減速度は、制動トルク検出値と駆動トルクとの合成値と対応させられることになる。
【0294】
さらに具体的に説明する。車両が下り勾配の路面をアクセル操作なしで走行している際にブレーキが作用させられ、車両が減速させられる場合には、重力に基づく駆動トルクが押付力に応じた制動トルクとは逆向きに車両に加えられる。その結果、実効制動トルクが、押付力に応じた制動トルクより小さくなる。この場合、運転者は意図する減速度が得られるように、水平な路面を走行している場合よりブレーキ操作力を大きくするのが普通である。
【0295】
それに対して、車両が上り勾配の路面をアクセル操作なしで走行している際にブレーキが作用させられた場合には、重力に基づく駆動トルクが押付力に応じた制動トルクと同じ向きに加えられる。その結果、実効制動トルクが、押付力に応じた制動トルクより大きくなる。この場合、運転者によるブレーキ操作力は、水平な路面を走行している場合より、小さくてよい。
【0296】
また、例えば、クルーズ制御中においては、駆動源からの駆動トルクが、押付力に応じた制動トルクとは逆向きになるため、実効制動トルクは、押付力に応じた制動トルクより小さくなる。
【0297】
いずれにしても、実効制動トルクは、押付力に応じた制動トルクと付加的な駆動トルクとに基づいて決まる。具体的的には、押付力に応じた制動トルクと付加的な駆動トルクとが互いに逆向きである場合には、押付力に応じた制動トルクから付加的な駆動トルクを引いた値が実効制動トルクであると推定することができる。一方、押付力に応じた制動トルクと付加的な駆動トルクとが同じ向きである場合には、押付力に応じた制動トルクに付加的な駆動トルクを加えた値が実効制動トルクであると推定することができる。
【0298】
なお、実効制動トルクは、押付力に応じた制動トルクと付加的な駆動トルクとに限らず、例えば、押付力と付加的駆動トルク関連量とに基づいて推定することができる。ここに、押付力は、ブレーキ回転体と摩擦係合部材との間の摩擦係数が一定である場合には、押付力に応じた制動トルクに比例して一義的に決まる。これと同様な事情から、付加的駆動トルク関連量は、付加的駆動トルクを一義的に取得し得る物理量として定義される。
【0299】
駆動源からの駆動トルクは、例えば、駆動源の作動状態に基づいて取得したり、運転者によるアクセル操作状態に基づいて取得することができる。したがって、それら駆動源の作動状態量やアクセル操作部材の操作状態量は、付加的駆動トルク関連量とすることができる。
【0300】
具体的には、駆動源がエンジンを含む場合には、燃料噴射量、スロットル開度等が付加的駆動トルク関連量に該当し、一方、電動モータを含む場合には、電動モータへの供給電流やそれの制御状態量等が付加的駆動トルク関連量に該当する。これら付加的駆動トルク関連量を取得する際には、車両における駆動力伝達装置の作動状態(例えば、変速比)を考慮することが望ましい。
【0301】
重力に起因する駆動トルクは、路面の傾斜状態(例えば、傾斜方向、傾斜角度等)に基づいて推定することができるため、路面の傾斜状態量を付加的駆動トルク関連量とすることができる。
【0302】
なお、本項および他の各項における制動トルク検出装置は、例えば、車両のサスペンションアームの歪みを検出する等、車両の水平方向の力を検出することによって制動トルクを検出する形式とすることが可能である。
【0303】
この場合には、押付力関連量と駆動トルク関連量とに基づいて推定された実効制動トルクと、制動トルク検出装置による検出値とを比較して、制動トルク検出装置の異常を検出することができる。
【0304】
(83) 当該異常検出装置が、制動される車輪がおかれた環境を表す制動環境量を検出する制動環境量検出装置を含み、
前記異常検出部が、前記ブレーキ作用関連量と制動トルクの検出値との関係と、前記制動環境量検出装置によって検出された制動環境量とに基づいて、前記制動トルク検出装置の異常を検出する制動環境量考慮型異常検出部を含む(71)ないし(82)項のいずれかに記載の異常検出装置。
【0305】
ブレーキ作用関連量と制動トルク検出装置により検出される制動トルクとの関係は、常に同じとは限らず、制動環境量の影響を受ける。制動環境量は、制動トルクとブレーキ作用関連量との関係に影響を及ぼす量であり、例えば、路面状態、接地荷重等が該当する。
【0306】
図73に示すように、制動トルクTBに対応する制動力FBと、路面と車輪との間の摩擦力Fbとの間には、次式で表される関係が成立する。
【0307】
I・(dω/dt)=R・Fb−r・FB
ただし、
I:車輪の慣性二次モーメント
(dω/dt):車輪の回転角加速度(符号が正である場合には「車輪加速度」、負である場合には「車輪減速度」と称する。)
R:車輪の回転半径
r:ブレーキ回転体に制動力FBが加えられる位置を通過する同心円の半径(等価半径)
この場合において、摩擦力Fbは、車輪の接地荷重Qと利用路面μとの積(=Q・μ)で表すことができる。
【0308】
押付力が最大路面μに対して過大でない状態においては、押付力の増加に伴って制動力FBが増加し、摩擦力Fbも増加する。それに対して、押付力が最大路面μに対して過大にである状態においては、押付力が増加しても摩擦力Fbは増加しなくなり、車輪減速度(−dω/dt)が大きくなって、制動スリップが大きくなる。また、摩擦力Fbが増加しなくなるため、制動力FBも増加しなくなる。
【0309】
この場合において、最大路面μが低い場合や接地荷重Qが小さい場合には、押付力の増加に伴って摩擦力Fbが増加する線形領域が狭くなる。最大路面μが高い場合や接地荷重Qが大きい場合に比較して、押付力が小さいうちから、押付力の増加に伴って摩擦力Fbが増加しない非線形領域となり、制動スリップが大きくなる。
【0310】
このように、押付力と制動力FBとの関係(前述のように、押付力と制動トルクTBとの関係と実質的に同じ)が、最大路面μが低い場合と高い場合とで変わるとともに、接地荷重Qが小さい場合と大きい場合とで変わるのである。
【0311】
最大路面μは、例えば、アンチロック制御が開始されたときの押付力に基づいて間接に検出することができる。また、路面状態検出装置による検出値に基づいて直接に検出することもできる。
【0312】
接地荷重は、車両全体の重量、すなわち、積載荷重または乗員人数によって変化するが、車両全体の重量が同じでも、ロール、ピッチ、ヨー等の車両の姿勢変化が生ずると、車両における荷重移動により、各車輪ごとの接地荷重が変化する。
【0313】
各車輪ごとの接地荷重は、各車輪ごとに設けられたサスペンションアームの歪み等に基づいて推定することができる。その他、ヨーレートセンサ、ロールレートセンサ、ピッチレートセンサ等の検出値または各車輪ごとに設けられた車高センサによる検出値に基づいて車両の姿勢を検出し、その結果に基づいて各車輪ごとの接地荷重を推定することができる。各車輪の接地荷重の実際値は、例えば、その接地荷重の標準値に対する相対値(偏差または倍率)として定義することができる。
【0314】
(84) 前記異常検出部が、当該異常検出装置が搭載された車両の直進走行中に前記ブレーキが作用させられた場合に、前記制動トルク検出装置の異常を検出する直進走行中異常検出部を含む(71)ないし(83)項のいずれかに記載の異常検出装置。
【0315】
車両の直進走行中にブレーキが作用させられた状態においては、上述の制動環境量の影響が小さいため、例えば、制動トルク検出装置の異常の検出結果の信頼性を向上させることができる。この直進走行中であって、かつ、ブレーキが作用させられたときに成立する条件を異常検出許可条件と称することができる。
【0316】
なお、この異常検出許可条件に、アンチロック制御が行われていないとき、または、制動スリップ率が設定値以下であるときに成立する条件等を加えれば、さらに、制動環境量の影響を小さくすることができる。
【0317】
また、上記異常検出許可条件に、平坦な路面を走行中であるときに成立する条件を加えれば、駆動トルクの影響を考慮する必要性が低くなる。ブレーキ作用中にアクセル操作部材が操作されることは稀であり、しかも、平坦な路面上においては、車両にみかけ上の駆動トルクが作用しないからである。
【0318】
(85) 前記異常検出部が、ブレーキの非作用状態において、前記制動トルク検出装置の異常を検出する非ブレーキ作用時異常検出部を含む(71)ないし(84)項のいずれかに記載の制動トルク検出装置。
【0319】
ブレーキの非作用状態においては、制動トルク検出装置による検出値は0または引きずり等に起因して生じる大きさであるはずである。このことを利用すれば、非ブレーキ作用時における制動トルクの検出値に基づいて制動トルク検出装置の異常を検出することができる。
【0320】
(86) 前記異常検出部が、運転者によるアクセル操作部材とブレーキ操作部材との少なくとも一方の操作状態が変化することを条件に、前記制動トルク検出装置の異常を検出する操作変化時異常検出部を含む(1)ないし(85)項のいずれかに記載の異常検出装置。
【0321】
例えば、車両減速中に押付力が変化した場合、または、車両停止中に駆動トルクが加えられた場合には、制動トルク検出装置による検出値は、それが正常である限り、変化するはずである。
【0322】
このような知見に基づき、本項に係る異常検出装置によれば、押付力が変化した場合と駆動トルクが加えられた場合との少なくとも一方における検出値の変化状態に基づいて異常を検出することができる。操作状態の変化には、非操作状態から操作状態への変化や、操作状態量の変化等が含まれる。
【0323】
なお、車両減速中に駆動トルクが加えられた場合には、実効制動トルクが変化し、減速度が変化する。このことを考慮することによっても、制動トルク検出装置の異常を検出することができる。
【0324】
(87) 複数の車輪のブレーキに対応してそれぞれ設けられた複数の制動トルク検出装置のうちの少なくとも1つの異常を検出する異常検出装置であって、
前記複数の制動トルク検出装置各々によって検出された制動トルクの検出値の関係に基づいて前記制動トルク検出装置の少なくとも1つの異常を検出する異常検出部を含む異常検出装置。
【0325】
複数の車輪各々における制動トルク検出装置による検出値の間には、すべての制動トルク検出装置が正常である限り、ブレーキ設計に際して決定される各種要因(例えば、各車輪ごとの摩擦係合部材押付装置の設計、押付力が加えられる車輪の等価半径等)に起因して、予め決められた関係が成立する。通常は、前輪の方が後輪より発生させられる制動トルクが大きくなるようにブレーキが設計される。また、発生させ得る最大の制動トルクも前輪の方が大きくなるように設計されている。いずれにしても、それらの正規の関係に基づけば、前輪の制動トルク検出装置の異常や後輪の制動トルク検出装置の異常を検出することができる。
【0326】
なお、本項に係る異常検出装置には、前記(1)ないし(86)項のいずれかに記載の技術的特徴を採用することができる。
【0327】
(88) 前記異常検出部が、前記複数の車輪のうち、制動時におかれる制動環境が相違する少なくとも2つの車輪につき、それら少なくとも2つの車輪のブレーキに対応する制動トルク検出装置によってそれぞれ検出された制動トルク間の関係が、前記制動環境量の相違を反映しないものである場合に、それら少なくとも2つの車輪に対応する制動トルク検出装置の少なくとも1つの異常を検出する制動環境量対応異常検出部を含む(87)項に記載の異常検出装置。
【0328】
図73に示すように、押付力と制動トルクTBとの関係が非線形である領域においては、押付力と制動トルクTBとの関係、例えば、同じ押付力に対応する制動トルクTBの大きさが、それぞれ制動環境量の一例である路面μおよび接地荷重Qに顕著に依存する。
【0329】
一方、車両における複数の車輪のうち、制動環境量が互いに異なる複数の車輪が存在する場合がある。例えば、車両において前輪と後輪とは、接地荷重Qに関して相違しており、よって、制動トルクTBに関しても相違する。
【0330】
したがって、制動環境量が互いに異なる複数の車輪については、それら車輪に対応する制動トルク検出装置がすべて正常である限り、それら車輪についての制動トルクの検出値間の関係が、制動環境量の相違を反映するはずである。
【0331】
この事実に着目する場合には、制動環境量を各車輪について個別に検出することが不可欠でなくなる。各車輪ごとの制動環境量の絶対値を検出せずに済み、それら車輪間における制動環境量の関係さえ検出すれば足りる。
【0332】
例えば、複数の車輪間における、路面のうち各車輪が接している部分の摩擦係数の差や、接地荷重の差(例えば、車両において荷重がそれら車輪間において移動した量)さえ検出すれば足りる。
【0333】
一方、複数の車輪間における制動環境量の関係を検出する場合には、各車輪ごとの制動環境量の絶対値を検出する場合に比較して容易に検出を行い得る傾向がある。
【0334】
以上説明した知見に基づき、本項に係る装置においては、複数の車輪のうち、制動時におかれる制動環境が相違する少なくとも2つの車輪につき、それら少なくとも2つの車輪のブレーキに対応する制動トルク検出装置によってそれぞれ検出された制動トルク間の関係が、制動環境量の相違を反映しないものである場合に、それら少なくとも2つの車輪に対応する制動トルク検出装置の少なくとも1つの異常が検出される。
【0335】
なお付言すれば、本項に係る装置は、前記(83)項の技術的特徴を採用してなされたものである。
【0336】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のさらに具体的な実施の形態のいくつかを図面に基づいて詳細に説明する。
【0337】
図1には、本発明の第1実施形態に従うタイヤ作用力検出装置が正面図で示され、図2には、断面図で示されている。このタイヤ作用力検出装置は、検出器10と、演算部12、判定部14およびゼロ点補正部16(図12参照)とを含むように構成されており、図1および図2には、検出器10のみが示されている。
【0338】
このタイヤ作用力検出装置は、複数の車輪を備えた車両に搭載されて使用される。それら複数の車輪は、左右の前輪FL,FRと左右の後輪RL,RRとを含んでいる。図3に示すように、各車輪20は、金属製のホイール22の外周にゴム製のタイヤ24が装着されて構成されている。それら複数の車輪20は、車両の動力源によって駆動される少なくとも1つの駆動車輪と、その動力源によって駆動されずに転動させられる少なくとも1つの転動車輪とを含んでいる。ただし、本発明は、すべての車輪が駆動車輪である形式の車両に適用することが可能である。
【0339】
図示しないが、各車輪20には個々に、ブレーキとそれを電気的に作動させるアクチュエータとが設けられている。それらブレーキとアクチュエータとの組み合わせにより、各車輪20は互いに独立して制動可能となっている。ブレーキは、例えば、液圧を駆動源とする形式や、モータを駆動源とする形式がある。前者の形式を採用する場合には、液圧を電気的または電磁的に制御する装置がアクチュエータに該当し、また、後者の形式を採用する場合には、例えば、モータ自体がアクチュエータに該当することとなる。
【0340】
車両は、各車輪20ごとに、ホイール22が同軸に装着されることによって車輪20を一体的に回転可能に保持する保持体としてハブ30を有している。そして、検出器10は、図3に示すように、各車輪20ごとに、ハブ30とホイール22との間に着脱可能に装着されることにより車両に搭載される。検出器10は、さらに、各車輪20ごとに、ハブ30とホイール22との間における力の伝達を担う状態で車両に搭載される。
【0341】
なお付言すれば、本発明は、検出器10とは異なる形式の検出器について実施することが可能である。そのような形式の検出器には、例えば、ハブ30に設けられてそれの歪を検出する検出器や、ホイール22に設けられてそれの歪を検出する検出器や、タイヤ24に装着されてそれの歪や磁気的な変化を検出する検出器がある。
【0342】
図3には、この検出器10により検出されるタイヤ作用力の種類も示されている。それは、タイヤ24の前後力(路面反力のうちのX方向成分FX)に基づく回転トルクTと、タイヤ24の横力(路面反力のうちのY方向成分FY)SFと、タイヤ24の上下力(路面反力のうちのZ方向成分FZ)VFとを含んでいる。ここに、回転トルクTは、駆動トルクと制動トルクとの双方を含み、よって、これに伴い、前後力は、駆動力と制動力との双方を含んでいる。
【0343】
検出器10は、検出すべき各力を、それの実際値に応じて離散的にまたは連続的に変化する値として検出するように構成されている。
【0344】
図2に示すように、この検出器10は、相対変位が可能な2つの分割ハウジング40,42が互いに嵌合させられることによって構成されている。いずれの分割ハウジング40,42も、底部50,52の直径が筒部54,56の高さより長いカップ状を成している。それら2つの分割ハウジング40,42は、底部50,52の内面同士において互いに対向する姿勢で嵌合させられている。
【0345】
本実施形態においては、それら2つの分割ハウジング40,42のうち大径のものが、4本のタイヤ取付け用ボルト60(図1参照)によりホイール22に同軸にかつ着脱可能に装着される第1分割ハウジング40とされ、一方、小径のものが、図示しない4本のハブ取付け用ボルトによりハブ30に同軸にかつ着脱可能に装着される第2分割ハウジング42とされている。
【0346】
それら4本のタイヤ取付け用ボルト60は、図2に示すように、各頭部62が第2分割ハウジング42に埋め込まれて各軸部64が第1分割ハウジング40を貫通してホイール22側に臨まされている。ただし、各タイヤ取付け用ボルト60は、第1分割ハウジング40との相対変位は阻止されるが、第2分割ハウジング42との相対変位は許容される状態で、第1分割ハウジング40にホイール22を強固に取り付けるために使用される。
【0347】
これに対して、それら図示しない4本のハブ取付け用ボルトは、各頭部がハブ30に埋め込まれて各軸部が第2分割ハウジング42を貫通させられてそれの内部に至っている。図1には、それら4本のハブ取付け用ボルトが第2分割ハウジング42を貫通するための貫通穴70が示されている。それら4本のハブ取付け用ボルトにより、ハブ30に第2分割ハウジング42が強固に取り付けられる。
【0348】
なお付言すれば、図1は、検出器10を、第1分割ハウジング40の底部50を取り除いた状態で、ホイール22側からハブ30側に向かって見た図であり、これに対して、図2は、図1におけるAA−AA断面図である。また、図1においては、車両の前進時にタイヤ24が回転するのに伴って検出器10が回転する方向が「前進回転方向」で表されている。
【0349】
図2に示すように、第1分割ハウジング40の底部50の内面から同軸に中央軸部74が延び出させられている。これに対向するように、第2分割ハウジング42の底部52の内面から同軸に中央筒部76が延び出させられている。中央軸部74は中央筒部76に同軸にかつ摺動可能に嵌合されている。
【0350】
図2に示すように、それら2つの分割ハウジング40,42の間には弾性部材としてのコイルスプリング80が同軸に配置されている。このコイルスプリング80は、それら2つの分割ハウジング40,42を互いに接近する向きに付勢している。これにより、それら2つの分割ハウジング40,42の間に予荷重が付与されることとなる。
【0351】
以上の説明から明らかなように、本実施形態においては、2つの分割ハウジング40,42が、対応する2つの筒部54,56と、中央軸部74および中央筒部76とにおいて嵌合させられているが、それら2つの分割ハウジング40,42に共通の回転軸線(タイヤ24の回転軸線とほぼ一致するかまたはそれとほぼ平行である。)まわりの相対回転と、その回転軸線に平行な方向における相対移動と、その回転軸線に直角な方向における相対移動とが許容されている。その回転軸線に直角な方向における相対移動は、中央軸部74と中央筒部76との間における半径方向クリアランスにより許容される。
【0352】
図1に示すように、この検出器10は、4つの検出部90を備えている。それら4つの検出部90は、2つの分割ハウジング40,42に共通の回転軸線(以下、「検出器軸線」という。)まわりに放射状にかつ等間隔に配置されている。その結果、互いに隣接する2つの検出部90は、検出器軸線まわりに90度隔てられている。
【0353】
各検出部90は、2つの分割ハウジング40,42に係合させられた検出部材94を備えている。検出部材94の剛性すなわち弾性変形し難さは、それら2つの分割ハウジング40,42より低くされている。
【0354】
本実施形態においては、検出部材94が、1枚の鋼製の平板の折り曲げにより、3つの構造部100,102,104を有するように形成されている。それらのうちの第1および第2構造部100,102は、いずれも、検出器軸線の半径方向に平行に延びている。残りの第3構造部104は、それら第1および第2構造部100,102の双方と直角な方向に延びている。
【0355】
いずれの構造部100,102,104も、横断面の断面係数に方向性があるビームとして機能する形状を有しており、本実施形態においては、長い長方形断面で真直ぐに延びる板状を有している。その結果、いずれの構造部100,102,104も、それの中立軸と交差する平面上において互いに直交する2つの方向の一方においては撓むが、他の方向においてはほとんど撓まず、弾性変形なしで力の伝達を行う部材として機能する。
【0356】
図2に示すように、検出部材94は、第1分割ハウジング40に係合させられている。第1分割ハウジング40は、第2分割ハウジング42より、車輪20の回転を抑制するブレーキ(図示しない)のブレーキ摩擦材(図示しない)から離れて配置されており、そのブレーキ摩擦材の熱による影響を受け難い。検出部材94は、具体的には、第1分割ハウジング40に強固に取り付けられたタイヤ取付け用ボルト60と、第1分割ハウジング40に強固に取り付けられた第1および第2支持部材110,112とを媒介とすることにより第1分割ハウジング40に係合させられている。本実施形態においては、検出部材94が、タイヤ取付け用ボルト60に、それの回りに揺動可能に支持されている。
【0357】
このように、本実施形態においては、検出部材94がタイヤ取付け用ボルト60を利用して第1分割ハウジング40に係合させられているため、専用の係合部材を利用して第1分割ハウジング40に係合させる場合に比較して、検出器10の部品点数の削減を容易に図り得る。
【0358】
さらに、検出部材94は、第2分割ハウジング42にも係合させられている。具体的には、図1に示すように、検出器軸線に対して直角に立体交差する方向に第2分割ハウジング42から延びる第1伝達部120と、図2に示すように、検出器軸線からずれた位置においてそれと平行に第2分割ハウジング42から延びる第2伝達部122と、第2分割ハウジング42において中央筒部76の外周部に形成された第3伝達部124とを媒介とすることにより第2分割ハウジング42に係合させられている。
【0359】
各検出部90のうち、第1および第2構造部100,102と、タイヤ取付け用ボルト60と、第1支持部材110と、第1伝達部120とが互いに共同することにより、タイヤ24の回転トルクTを、検出器軸線まわりの一円周の一接線方向に作用する第1軸力F1に変換することにより、タイヤ24の前後力を検出する前後力検出部130(図4および図5参照)が構成されている。
【0360】
図1に示すように、第1伝達部120が検出部材94に押し付けられれば、第1および第2構造部100,102のうち第2構造部102のみが撓む。この撓みにより、第2構造部102の厚さ方向に互いに対向する両面にはそれぞれ歪が発生する。それら両面にはそれぞれ、歪ゲージ134,136が貼り付けられていて、各面の歪が互いに区別されて電気信号に変換される。
【0361】
本実施形態においては、それら一対の歪ゲージ134,136が、車両の進行方向の向き(前進方向と後退方向)と、検出すべき前後力の向き(駆動力と制動力)との組合せに応じて区別して使用される。前進時の制動力と後退時の駆動力とは、いずれも、第1方向の歪を各歪ゲージ134,136に発生させ、これに対して、前進時の駆動力と後退時の制動力とは、いずれも、第1方向とは逆の第2方向の歪を各歪ゲージ134,136に発生させる。
【0362】
具体的には、車両前進中に駆動力がタイヤ24に作用したときと、車両後退中に制動力がタイヤ24に作用したときとに引張り歪が発生することとなる歪ゲージ134は、車両前進時に駆動力を検出するためと、車両後退時に制動力を検出するためとに限って使用される。
【0363】
これに対して、車両後退中に駆動力がタイヤ24に作用したときと、車両前進中に制動力がタイヤ24に作用したときとに引張り歪が発生することとなる歪ゲージ136は、車両後退時に駆動力を検出するためと、車両前進時に制動力を検出するためとに限って使用される。
【0364】
図4および図5にはそれぞれ、前後力検出部130が前後力(回転モーメントTに相当する。)を検出する原理が正面図および側面断面図で概念的に示されている。
【0365】
図4および図5においては、符号140が、検出部材94のうちタイヤ24の前後力の検出のためにビームとして機能する第1ビーム機能部を示している。この第1ビーム機能部140は、それの両端において第1分割ハウジング40に支持されている。第1ビーム機能部140は、タイヤ24の前後力によっては撓まないビームとして機能する第1部分であって第1構造部100に相当するものと、タイヤ24の前後力によって撓むビームとして機能する第2部分であって第2構造部102に相当するものとが互いに直列に連結されて構成されている。前後力の伝達に関し、第1および第2構造部100,102と第3構造部104とは第1支持部材110により互いに絶縁されている。
【0366】
図4に示すように、その第1ビーム機能部140に第1伝達部120が係合させられている。その結果、回転トルクTが第1伝達部120により第1軸力F1に変換され、その変換された第1軸力F1が第1ビーム機能部140にそれのせん断方向に作用させられる。それにより、第1ビーム機能部140に、回転トルクTの大きさに応じた歪が発生させられる。
【0367】
図1に示すように、前後力検出部130においては、第1および第2構造部100,102が、タイヤ取付け用ボルト60と第1構造部100との取付け点を支点、第1伝達部120と第1構造部100との接触点を力点、第1支持部材110と第2構造部102との取付け点を作用点とするてこを構成していると考えることが可能である。そのてこの原理により、第1軸力F1の大きさの割りに低減させられた歪が歪ゲージ134,136に発生させられることとなる。
【0368】
図6には、そのてこの原理が概念的に示されている。同図においては、L1が支点と作用点との距離を表し、L2が支点と力点との距離を表し、R1が第1軸力F1に対抗して作用点に発生する第1反力を表している。このてこにおいては、支点まわりのモーメントのつりあいを考慮することにより、第1反力R1が、
R1=F1・(L2/L1)
として求められる。レバー比である(L2/L1)の値は1より小さいため、反力R1が第1軸力F1より小さい大きさを有することとなる。その結果、歪ゲージ134,136に作用する曲げモーメントが大きくならずに済み、結局、歪ゲージ134,136に発生させられる歪も大きくならずに済む。
【0369】
なお付言すれば、本実施形態においては、第1構造部100と第2構造部102とが互い一体的に形成されることによってそれらの直列連結が実現されているが、その直列連結は、例えば、図7に示すように、第1構造部100と第2構造部102とを互いに独立して形成した上でそれらを直列に係合させることによっても実現することが可能である。このような可能性は、後述の横力検出部にも存在する。
【0370】
さらに付言すれば、本実施形態においては、コイルスプリング80により予荷重が2つの分割ハウジング40,42間に付与され、これにより、検出部材94および後述の横力検出用の歪ゲージにも予荷重が付与されている。
【0371】
このように予荷重が付与される結果、2つの分割ハウジング40,42のがたが抑制されるとともに、横力検出用の歪ゲージの出力信号が0である場合には、横力検出に関係する部品(機械部品または電気部品)に何らかの異常があると判定することが可能となる。
【0372】
以上、各検出部90のうちタイヤ24の前後力を検出する前後力検出部130の原理的な構造を説明したが、次に、タイヤ24の横力SFを検出する横力検出部の原理的な構造を説明する。
【0373】
図2に示すように、前後力検出部130と同様に、各検出部90のうち、第1および第2構造部100,102と、タイヤ取付け用ボルト60と、第1支持部材110と、第2伝達部122とが互いに共同することにより、タイヤ24の横力SFを検出する横力検出部150(図8参照)が構成されている。
【0374】
図2に示すように、第2伝達部122が検出部材94に押し付けられれば、第1および第2構造部100,102のうち第1構造部100のみが撓む。この撓みにより、第1構造部100の厚さ方向に互いに対向する両面にはそれぞれ歪が発生する。それら両面にはそれぞれ、歪ゲージ154,156が貼り付けられていて、各面の歪が互いに区別されて電気信号に変換される。
【0375】
本実施形態においては、それら一対の歪ゲージ154,156が、タイヤ24に横力SFが旋回外向き(図2においては左向き)に作用する外向き作用時と旋回内向き(図2においては右向き)に作用する内向き作用時とで区別して使用される。外向き作用時に引張り歪が発生することとなる歪ゲージ154は、外向き作用時においてのみ横力SFを検出するために使用される。これに対して、内向き作用時に引張り歪が発生することとなる歪ゲージ156は、内向き作用時においてのみ横力SFを検出するために使用される。
【0376】
図8には、横力検出部150が横力SFを検出する原理が側面断面図で概念的に示されている。
【0377】
図8においては、符号160が、検出部材94のうち横力SFの検出のためにビームとして機能する第2ビーム機能部を示している。この第2ビーム機能部160は、それの両端において第1分割ハウジング40に支持されている。第2ビーム機能部160は、横力SFによって撓むビームとして機能する第1部分であって第1構造部100に相当するものと、横力SFによっては撓まないビームとして機能する第2部分であって第2構造部102に相当するものとが互いに直列に連結されて構成されている。横力SFの伝達に関し、第1および第2構造部100,102と第3構造部104とは第1支持部材110により互いに絶縁されている。
【0378】
図8に示すように、その第2ビーム機能部160に第2伝達部122が係合させられている。その結果、横力SFに基づく第2軸力F2が第2伝達部122により第2ビーム機能部160にそれのせん断方向に作用させられる。それにより、第2ビーム機能部160に、横力SFの大きさに応じた歪が発生させられる。
【0379】
図2に示すように、前後力検出部130と同様に、横力検出部150においても、第1および第2構造部100,102がてこを構成していると考えることが可能である。そのてこは、タイヤ取付け用ボルト60と第1構造部100との取付け点を支点、第2伝達部122と第1構造部100との接触点を力点、第1支持部材110と第2構造部102との取付け点を作用点とするように構成されている。そのてこの原理により、第2軸力F2の大きさの割りに低減させられた歪が歪ゲージ154,156に発生させられることとなる。
【0380】
次に、各検出部90のうちタイヤ24の上下力VFを検出する上下力検出部の原理的な構造を説明する。
【0381】
図1に示すように、各検出部90のうち、第3構造部104と、第1および第2支持部材110,112と、第3伝達部124とが互いに共同することにより、上下力VFを検出する上下力検出部170(図9および図10参照)が構成されている。上下力の伝達に関し、第1および第2構造部100,102と第3構造部104とは第1支持部材110により互いに絶縁されている。
【0382】
図1に示すように、第3伝達部124が検出部材94に押し付けられれば、第3構造部104のみが撓む。この撓みにより、第3構造部104の厚さ方向に互いに対向する両面にはそれぞれ歪が発生する。それら両面のうち第3伝達部124とは反対側の面には、歪ゲージ174が貼り付けられていて、その面の歪が電気信号に変換される。すなわち、歪ゲージ174は、第3構造部104の両面のうち、第3伝達部124の押付けによる撓みによって引張り歪が発生する面に貼り付けられているのである。
【0383】
なお付言すれば、本実施形態においては、検出部材94が、前述のように、1枚の鋼製の平板の折り曲げにより、3つの構造部100,102,104を有するように形成されており、さらに、それら3つの構造部100,102,104の各面に複数の歪ゲージ134,136,154,156,174が貼り付けられている。
【0384】
したがって、本実施形態においては、例えば、平板の折り曲げ前に、その平板の各面上において選択された位置に複数の歪ゲージを貼り付け、その終了後、その平板をプレス機等によって折り曲げることにより、検出部材94を完成させることが可能である。
【0385】
ところで、本実施形態においては、前後力検出部130および横力検出部150がいずれも、図1および図2に示すように、各伝達部120,122が、検出部材94を挟んで互いに対向する2つの部分を有するように構成されている。それら2つの部分は、互いに逆向きに力を検出部材94に伝達するが、各部分は、検出部材94に力を一方向である圧縮方向にしか伝達しない。検出部材94に押し付けられて圧縮力は生じさせられるが、検出部材94から離間させられても引張力は生じさせられないのである。
【0386】
これに対して、本実施形態においては、上下力検出部170が、それの第3伝達部124が、検出部材94に力を一方向である圧縮方向にしか伝達しない部分を1つのみ有するように構成されている。4つの検出部90は、第3伝達部124を隔てて互いに対向する対を2つ構成している。したがって、各検出部90が圧縮力しか検出しないように構成されても、各対を構成する2つの検出部90の双方に着目すれば、それら2つの検出部90に上下力VFが作用する向きが変化しても、それら2つの検出部90のいずれかが上下力VFを検出することになるからである。
【0387】
車両の走行中にあっては、ホイール22もハブ30も一緒に回転させられるため、4つの検出部90の各々の、検出器軸線まわりの回転位置が変化する。その結果、前後力と横力とについては、いずれの回転位置においても各検出部90に発生させられるのに対し、上下力については、それが発生させられる回転位置が限定されている。
【0388】
上下力については、具体的には、第3伝達部124から第3構造部104に上下力のみが伝達される状態においては、その第3伝達部124から第3構造部104に上下力が伝達される直線から時計方向と反時計方向とに90度ずつ回転させられた範囲内の複数の回転位置においてのみ、各検出部90が上下力を検出することが可能である。これに対して、後述のように、第3伝達部124から第3構造部104に上下力と前後力との合力が伝達される状態においては、その第3伝達部124から第3構造部104に合力が伝達される直線(第3伝達部124から真下に延びる直線に対して傾斜している直線)から時計方向と反時計方向とに90度ずつ回転させられた範囲内の複数の回転位置においてのみ、各検出部90が合力を検出することが可能である。
【0389】
図9および図10にはそれぞれ、その上下力検出部170が上下力VFを検出する原理が正面図および側面断面図で概念的に示されている。図9および図10においては、符号180が、検出部材94のうち上下力VFの検出のためにビームとして機能する第3ビーム機能部を示している。この第3ビーム機能部180は、それの両端において第1分割ハウジング40に支持されている。第3ビーム機能部180は、上下力VFによって撓むビームとして機能する部分であって第3構造部104に相当するものを有している。
【0390】
図9に示すように、その第3ビーム機能部180に第3伝達部124が係合させられている。その結果、上下力VFが第3伝達部124により第3ビーム機能部180にそれのせん断方向に作用させられる。それにより、第3ビーム機能部180に、上下力VFの大きさに応じた歪が発生させられる。
【0391】
図1に示すように、前後力検出部130および横力検出部150と同様に、上下力検出部170において、第3構造部104がてこを構成していると考えることが可能である。そのてこは、第1支持部材110と第3構造部104との取付け点を支点、第3伝達部124と第3構造部104との接触点を力点、第2支持部材112と第3構造部104との取付け点を作用点とするように構成されている。そのてこの原理により、上下力VFの大きさの割りに低減させられた歪が歪ゲージ174に発生させられることとなる。
【0392】
以上の説明から明らかなように、本実施形態においては、前後力検出部130、横力検出部150および上下力検出部170がいずれも、各検出素子としての各歪ゲージ134,136,154,156,174に歪が、各伝達部120,122,124から検出部材94に伝達される荷重の大きさの割りに機械的に低減させられて発生させられるように設計されている。その結果、各歪ゲージ134,136,154,156,174が耐えなければならない耐荷重が低減させられている。
【0393】
本実施形態においては、さらに、制限機能によっても各歪ゲージ134,136,154,156,174の耐荷重が低減させられる。その制限機構は、本実施形態においては、前後力検出部130と、横力検出部150とについて設けられている。
【0394】
図1に示すように、前後力検出部130のための第1制限機構190は、第2分割ハウジング42のうちタイヤ取付け用ボルト60に近接した一対のストッパ192,194を含むように構成されている。一方のストッパ192は、車両の前進時に機能し、他方のストッパ194は、車両の後退時に機能する。
【0395】
第1伝達部120から検出部材94に伝達される第1軸力F1が設定限度を超えないうちは、各ストッパ192,194と検出部材94との間に、その第2分割ハウジング42の周方向におけるクリアランスが存在する。これに対し、その第1軸力F1が設定限度を超えようとすると、そのクリアランスが減少してやがて消滅する。消滅すると、以後は、第2分割ハウジング42から、2つのストッパ192,194のうち対応するものおよびタイヤ取付け用ボルト60を経て第1分割ハウジング40に力が伝達されるようになり、その結果、第1軸力F1が設定限度から増加せずに済む。第1軸力F1は、設定限度を超えないうちは回転トルクTに応じて増加するが、超えようとしても、設定限度に維持される。
【0396】
横力検出部150のための第2制限機構200は、図2に示すように、第1分割ハウジング40のうちタイヤ取付け用ボルト60に近接した一対のストッパ204,206を含むように構成されている。一方のストッパ204は、タイヤ24に横力が旋回外向きに作用した時に機能し、他方のストッパ206は、旋回内向きに作用した時に機能する。
【0397】
第2伝達部122から検出部材94に伝達される横力SFが設定限度を超えないうちは、各ストッパ204,206と検出部材94との間に、検出器軸線に平行な方向においてクリアランスが存在する。これに対し、その横力SFが設定限度を超えようとすると、そのクリアランスが減少してやがて消滅する。消滅すると、以後は、第2分割ハウジング42から、2つのストッパ204,206のうち対応するものを経て第1分割ハウジング40に力が伝達されるようになり、その結果、第2軸力F2が設定限度から増加せずに済む。第2軸力F2は、設定限度を超えないうちは横力SFと一致するが、超えようとしても、設定限度に維持される。
【0398】
なお付言すれば、ストッパ206は、結局、2つの分割ハウジング40,42が検出器軸線に平行な方向すなわちタイヤ24の横方向に設定限度以上互いに離間することを阻止する離間阻止機能をも果たすこととなる。
【0399】
図11には、共に制限機構を有する前後力検出部130と横力検出部150とにつき、それぞれ第1および第2軸力F1,F2である検出部90への入力荷重と、それに応じて歪ゲージ134,136,154,156に発生させられる歪との関係がグラフで表されている。同図には、そのような制限機構を有しない場合も比較例として示されている。
【0400】
ところで、この検出器10を設計する場合には、他の通常の装置と同様に、一般に、実際の使用状態で発生することが予想される荷重に対して安全率を見込むために、その予想荷重より大きな設計許容値が設定される。そして、その設定された設計許容値をクリアするように検出器10が設計される。
【0401】
前記制限機構を有しない場合には、入力荷重が設計許容値に一致する状況において歪ゲージ134,136,154,156の歪がそれの最大レンジ幅を超えないように歪ゲージ134,136,154,156が使用される。
【0402】
これに対して、前記制限機構を有する場合には、入力荷重が、設計許容値より小さい設定限界を超えることがないため、入力荷重がその設定限界に一致する状況において歪ゲージ134,136,154,156の歪がそれの最大レンジ幅を超えないように歪ゲージ134,136,154,156が使用され得る。
【0403】
したがって、本実施形態においては、前後力と横力との検出については、制限機構を有しない場合より、図11におけるグラフの勾配が急になり、このことは、歪ゲージ134,136,154,156による前後力と横力との検出感度が敏感になることを意味する。
【0404】
以上、この検出器10の機械的な構成を説明したが、次に、その電気的な構成を説明する。
【0405】
図12には、この検出器10の電気的な構成がブロック図で概念的に示されている。この検出器10においては、歪ゲージ134,136,154,156,174に接続された信号処理回路210に送信器214が接続されている。
【0406】
信号処理回路210は、歪ゲージ134,136,154,156,174に発生させられた歪を表す電気信号をそれら歪ゲージ134,136,154,156,174から取り出して送信器214に供給する。
【0407】
送信器214は、その供給された電気信号を電波として送信する。それら信号処理回路210と送信器214とは、検出器10に設けられた電源216から供給される電力により作動させられる。電源216は、使用中に消費された電力がその使用中には補充されない消耗型であり、例えば、直流バッテリである。
【0408】
図12には、前記車両の車体側に搭載されている電気機器もブロック図で概念的に示されている。車体側には、送信器214に近接した位置において受信器(アンテナ等)220が取り付けられている。その受信器220には信号処理装置222を介して車両制御装置224が接続されている。
【0409】
なお付言すれば、本発明は、送信器214と受信器220とが信号伝送媒体を通じて直接に接続される態様で実施することが可能である。その信号伝送媒体の一例は、送信器214側の端子と受信器220側の端子とが互いにスリップしつつ接触する形式として構成される。
【0410】
信号処理装置222は、送信器214から受信器220が受信して信号処理装置222に供給した信号を、必要な処理を施した後、車両制御装置224に供給する。
【0411】
車両制御装置224は、車両の状態を制御するアクチュエータ(図示しない)と、そのアクチュエータを駆動するとともにその駆動状態を制御するコントローラ(図示しない)とを含むように構成されている。そのコントローラは、例えば、信号処理装置222から受信した信号であって検出器10による検出結果を表すものに基づき、アクチュエータを制御することにより、車両の状態を制御するように設計される。ここに、車両の状態は例えば、車両の走行状態を意味するように解釈したり、車両の挙動を意味するように解釈することが可能である。
【0412】
信号処理装置222は、検出器10の出力信号に基づいて前後力、横力および上下力を演算する演算部12を含んでいる。すなわち、本実施形態においては、ホイール22とハブ30との間に設けられた検出器10と、車体側に設けられた受信器220および演算部12とが互いに共同することにより、前記タイヤ24作用力検出装置の全体が構成されているのである。
【0413】
本実施形態においては、検出すべきタイヤ作用力が前後力であるか横力であるか上下力であるかを問わず、歪ゲージ134,136,154,156,174の出力信号に基づくタイヤ作用力の演算が、車体側に設けられた演算部12において行われる。
【0414】
前述のように、前後力と横力とについては、検出器軸線まわりのいずれの回転位置においても各検出部90に発生させられるのに対し、上下力については、限定された回転位置においてのみ各検出部90に発生させられる。
【0415】
図13には、90度ずつ隔たった4つの回転位置にそれぞれ位置する4つの検出部90の第3構造部104における各歪ゲージ174の出力信号が、検出器10の回転角と共に変化する様子が複数の単位曲線グラフで示されている。図1から明らかなように、上下力VFのうち各歪ゲージ174に直角に作用する成分の大きさは、実際の上下力VFの大きさが時間的に変化しないにもかかわらず、各検出部90の回転位置すなわちタイヤ24の回転角に応じて周期的に変化する。この周期的変化が、各歪ゲージ174の出力信号の周期的変化として現れる。
【0416】
図13には、実際の上下力VFに対応する仮想の出力信号が水平の直線グラフで表されている。同図のグラフから明らかなように、各歪ゲージ174の出力信号は、1周期ごとに、すなわち、タイヤ24の1回転ごとに、上に凸の正弦波で表される単位曲線グラフで表され、各単位曲線グラフにおける極大値が、実際の上下力VFに対応する仮想の出力信号と一致する。
【0417】
本実施形態においては、互いに隣接する2つの検出部90が検出器軸線まわりに90度隔てられている。その結果、図1に示すように、互いに隣接する2つの第3構造部104は、互いに共同して直角を構成している。それら2つの第3構造部104の双方に第3伝達部124がそれの円筒面において接触させられている。
【0418】
したがって、第3伝達部124から真下に上下力VFが作用する状況においては、それら2つの第3構造部104の一方が第3伝達部124の真下に位置する場合には、その第3構造部104のみに第3伝達部124から力が伝達されるが、その第3構造部104がその真下の位置から回転させられるにつれて第3伝達部124が他方の第3構造部104にも力を伝達することとなる。この状態においては、実際の上下力VFが2つの第3構造部104に分配される。そして、各第3構造部104が第3伝達部124から、各第3構造部104の面に直角な方向に伝達される力を分力f1,f2とすれば、実際の上下力VFは、分力f1と分力f2との自乗和の平方根で表されることになる。
【0419】
一方、それら2つの第3構造部104が共に、第3伝達部124から力が伝達されている状態にあるときには、4つの第3構造部104のうちの残りの2つには、第3伝達部124から力が伝達されていない状態にある。しかし、さらに回転が進むと、最初の2つの第3構造部104の一方と、残りの2つの第3構造部104の一方とであって、互いに隣接するものが、最初の2つの第3構造部104と同じように、第3伝達部124から力が伝達される状態に至る。
【0420】
このような力伝達状態のシフトが検出器10の回転に伴って繰り返されることから明らかなように、結局、上下力VFは、検出器10の回転位置に依存することなく、それら4つの検出部90の各歪ゲージ174の出力信号の自乗和の平方根を利用することにより演算することができる。
【0421】
図1に示すように、本実施形態においては、前後力と上下力との双方が第2分割ハウジング42に作用し、その結果、それら2つの力の双方が第3伝達部124にも作用している状態においては、それら2つの力の双方がその第3伝達部124を経て第3構造部104に伝達されることとなる。上下力のみならず前後力も第3構造部104に伝達されてしまうのである。なぜなら、横力については、その向きが、第3構造部104を撓ませることに寄与しないものであるのに対し、前後力および上下力についてはいずれも、その向きが、第3構造部104を撓ませることに寄与するものであるからである。
【0422】
そのため、本実施形態においては、図14に示すように、前後力LFと上下力VFとの合力RFが各第3構造部104に作用させられる。その結果、第3構造部104の歪ゲージ174の出力信号が、上下力VFではなく、合力RFを表す信号となってしまう。出力信号に、上下力を反映した成分のみならず、前後力を反映した成分が含まれてしまうのである。
【0423】
そこで、本実施形態においては、演算部12において、第3構造部104の歪ゲージ174の出力信号から、前後力を反映した成分を除去することが行われる。
【0424】
具体的には、演算部12においては、まず、4つの検出部90における各第3構造部104の歪ゲージ174の生の出力信号に基づき、前後力と上下力との合力の自乗が演算される。この演算は、前述のように、4つの歪ゲージ174の出力信号の自乗和を用いて行われる。次に、第2構造部102の歪ゲージ154,156の出力信号に基づいて前後力が演算される。その後、上記演算された合力の自乗から、その演算された前後力の自乗を差し引いた値の平方根として、上下力が演算される。
【0425】
なお付言すれば、本実施形態においては、第1ないし第3構造部100,102,104が互いに一体的に形成されるように検出部材94が構成されているが、それらのうちの1つの構造部が残りの2つの構造部から分離されるようにして検出部材94を構成することが可能である。この態様によれば、例えば、特定の種類のタイヤ作用力の伝達に関し、互いに分離された2つの部分を互いに絶縁することが容易となる。そして、例えば、上記1つの構造部には第3構造部104、上記残りの2つの構造部には第1および第2構造部100,102を選定することが可能である。
【0426】
以上、演算部12の作動を説明したが、これが属する信号処理装置222は、プロセッサとメモリとを有するコンピュータを主体として構成されている。演算部12は、そのコンピュータにより作動させられるようになっている。
【0427】
この演算部12に判定部14とゼロ点補正部16とが接続されている。それら判定部14およびゼロ点補正部16も、信号処理装置222のコンピュータによって作動させられる。
【0428】
具体的には、判定部14は、図15および図16にフローチャートで概念的に表されている上下力検出異常判定プログラムと、図17にフローチャートで概念的に表されている横力検出異常判定プログラムと、図18にフローチャートで概念的に表されている前後力検出異常判定プログラムとが前記コンピュータによって実行されることにより作動させられる。
【0429】
これに対して、ゼロ点補正部16は、図19にフローチャートで概念的に表されている上下力検出ゼロ点補正プログラムと、図20にフローチャートで概念的に表されている横力検出ゼロ点補正プログラムと、図21にフローチャートで概念的に表されている前後力検出ゼロ点補正プログラムとが前記コンピュータによって実行されることにより作動させられる。
【0430】
なお付言すれば、演算部12は、検出器10から受信した信号により表される生の検出値を、ゼロ点補正部16により補正されたゼロ点でキャリブレートした後に、出力する。
【0431】
以下、それらプログラムの内容を順に説明する。
【0432】
図15に示す上下力検出異常判定プログラムは、各車輪20に取り付けられた各検出器10における上下力検出部170による上下力VFの検出が異常であるか否かを判定するために実行される。
【0433】
さらに、この上下力検出異常判定プログラムは、その検出が異常である場合に、その異常のモードが、上下力検出部170のゼロ点が異常であるというモード(正規のゼロ点から上にずれているか、下にずれているか)と、上下力検出部170の入出力特性を表すグラフの勾配(以下、単に「勾配」という。)が正規の勾配から外れているというモード(正規の勾配から上にずれているか(急な勾配であるか)、下にずれているか(緩やかな勾配であるか))とのいずれであるかを判定するためにも実行される。
【0434】
さらに、この上下力検出異常判定プログラムは、その異常モードが生じている検出器10が、4つの車輪20にそれぞれ取り付けられている4つの検出器10のいずれであるかを特定するためにも実行される。
【0435】
具体的には、この上下力検出異常判定プログラムの各回の実行においては、まず、ステップS101(以下、単に「S101」で表す。他のステップについても同じとする。)において、各車輪20ごとに検出器10により、各車輪20の上下力VFi(i=1〜4)が検出される。ここに、上下力VF1,VF2,VF3およびVF4は、図22に示すように、右前輪、左前輪、左後輪および右後輪にそれぞれ作用する上下力を意味する。
【0436】
次に、S102において、4つの車輪20についてそれぞれ検出された4つの上下力VFiの合計値VFtが算出される。その後、その算出された合計値VFtが、上下力の上限値VFupより大きいか否かが判定される。この上限値VFupは、すべての検出器10が正常である場合に合計値VFtが取り得る範囲の上限値を意味し、前記(4)項における「限界値」の一例を構成している。
【0437】
今回は、合計値VFtが上限値VFupより大きくはないと仮定すれば、S103の判定がNOとなり、S104に移行する。このS104においては、上記算出された合計値VFtが、上下力の下限値VFloより小さいか否かが判定される。この下限値VFloは、すべての検出器10が正常である場合に合計値VFtが取り得る範囲の下限値を意味し、前記(4)項における「限界値」の一例を構成している。
【0438】
今回は、合計値VFtが下限値VFloより小さくはないと仮定すれば、S104の判定がNOとなり、S105において、すべての検出器10による上下力VFの検出が正常であると判定される。以上で、この上下力検出異常判定プログラムの一回の実行が終了する。
【0439】
これに対して、今回は、合計値VFtが上限値VFupより大きいと仮定すれば、S103の判定がYESとなり、S106において、車両制動中、合計値VFtが変化しなかったか否かが判定される。
【0440】
車両制動中であるか否かの判定は、上下力検出部170による前輪の上下力VFが増加する一方、上下力検出部170による後輪の上下力VFが減少する状態にあるか否かを判定することにより行われる。
【0441】
今回は、車両制動中、合計値VFtが変化しなかったと仮定すれば、S106の判定がYESとなり、S107において、車両旋回中、合計値VFtが変化しなかったか否かが判定される。
【0442】
車両旋回中であるか否かの判定は、上下力検出部170による旋回外輪の上下力VFが増加する一方、上下力検出部170による旋回内輪の上下力VFが減少する状態にあるか否かを判定することにより行われる。各車輪20が旋回外輪であるか旋回内輪であるかの判別は、例えば、車両操舵のための運転者により操作されるステアリングホイールの回転方向を参照することにより行うことが可能である。
【0443】
今回は、車両旋回中、合計値VFtが変化しなかったと仮定すれば、S107の判定がYESとなり、S108において、上下力VFの検出に関し、複数の検出器10の少なくとも1つのゼロ点が正規のゼロ点より上にずれていると判定される。以上で、この上下力検出異常判定プログラムの一回の実行が終了する。
【0444】
図23には、合計値VFtとそれの時間的変化傾向との組合せに応じて、検出異常が生じている検出器10の異常モードが決定される様子と、検出異常が生じている検出器10が取り付けられている車輪20の位置が特定される様子とが表形式で表されている。
【0445】
この表においては、各種記号が次のような定義で使用される。
A1:合計値VFtが上限値VFupより大きいという条件
A2:合計値VFtが下限値VFloより小さいという条件
B1:制動中、合計値VFtが変化しなかったという条件
B2:制動中、合計値VFtが増加したという条件
B3:制動中、合計値VFtが減少したという条件
C1:旋回中、合計値VFtが変化しなかったという条件
C2:旋回中、合計値VFtが増加したという条件
C3:旋回中、合計値VFtが減少したという条件
したがって、上述のように、合計値VFtが上限値VFupより大きく、かつ、車両制動中、合計値VFtが変化せず、かつ、車両旋回中、合計値VFtが変化しなかった場合には、A1という条件と、B1という条件と、C1という条件とが一緒に成立するため、上下力VFの検出に関し、複数の検出器10の少なくとも1つのゼロ点が正規のゼロ点より上にずれていると判定される。
【0446】
これに対して、今回は、車両制動中、合計値VFtが変化したと仮定すれば、S106の判定がNOとなる。今回は、A1という条件が成立し、かつ、B2またはB3という条件が成立する場合に該当するから、S109において、図23に示すように、上下力VFの検出に関し、複数の検出器10の少なくとも1つの勾配が正規の勾配より上にずれていると判定される。
【0447】
続いて、S110において、車両制動中に、合計値VFtが増加したか減少したかが判定される。増加した場合には、判定がYESとなる。今回は、A1という条件とB2という条件とが一緒に成立する場合であるから、S111において、図23に示すように、上下力VFの検出に関し、左右の前輪の少なくとも一方に取り付けられた検出器10に、勾配上ずれというモードの異常があると判定される。
【0448】
これに対して、車両制動中に、合計値VFtが減少した場合には、S110の判定がNOとなる。今回は、A1という条件とB3という条件とが一緒に成立する場合であるから、S112において、図23に示すように、上下力VFの検出に関し、左右の後輪の少なくとも一方に取り付けられた検出器10に、勾配上ずれというモードの異常があると判定される。
【0449】
いずれの場合にも、その後、S113において、車両旋回中、合計値VFtが変化しなかったか否かが判定される。変化しなかった場合には、判定がYESとなり、直ちに、この上下力検出異常判定プログラムの一回の実行が終了する。これに対して、変化した場合には、判定がNOとなり、S114に移行する。
【0450】
制動中、合計値VFtが変化せず、かつ、旋回中、合計値VFtが変化した場合には、S106の判定がYES、S107の判定がNOとなることにより、S114に移行する。これに対して、制動中、合計値VFtが変化し、かつ、旋回中、合計値VFtが変化した場合には、S106の判定がNO、S113の判定がNOとなることにより、S114に移行する。
【0451】
いずれの場合にも、今回は、A1という条件とC2またはC3という条件とが一緒に成立する場合であるから、S114において、図23に示すように、上下力VFの検出に関し、複数の検出器10の少なくとも1つの勾配が正規の勾配より上にずれていると判定される。
【0452】
続いて、S115において、車両旋回中に、合計値VFtが増加したか減少したかが判定される。増加した場合には、判定がYESとなる。今回は、A1という条件とC2という条件とが一緒に成立する場合であるから、S116において、図23に示すように、上下力VFの検出に関し、前後の旋回外輪の少なくとも一方に取り付けられた検出器10に、勾配上ずれというモードの異常があると判定される。
【0453】
これに対して、車両旋回中に、合計値VFtが減少した場合には、S115の判定がNOとなる。今回は、A1という条件とC3という条件とが一緒に成立する場合であるから、S117において、図23に示すように、上下力VFの検出に関し、前後の旋回内輪の少なくとも一方に取り付けられた検出器10に、勾配上ずれというモードの異常があると判定される。
【0454】
いずれの場合にも、以上で、この上下力検出異常判定プログラムの一回の実行が終了する。
【0455】
この上下力検出異常判定プログラムにおいては、車両制動中に合計値VFtが変化したという事実と、車両旋回中に合計値VFtが変化したという事実とのいずれかしか判明しない場合には、例えば、4つの検出器10のうちの1つのみに検出異常が生じても、その1つの検出器10を特定することはできない。これに対して、それら2つの事実がいずれも判明する場合には、S111またはS112の異常判定結果と、S116またはS117の異常判定結果との双方を考慮することにより、例えば、4つの検出器10のうちの1つのみに検出異常が生じれば、その1つの検出器10を特定することができる。
【0456】
以上、合計値VFtが上限値VFupより大きい場合を説明したが、下限値VFloより小さい場合には、S103の判定はNO、S104の判定はYESとなり、図16のS118ないしS129の実行に移行する。
【0457】
それらS118ないしS129の実行は、図15におけるS106ないしS117の実行に準じて行われる。具体的には、まず、S118において、車両制動中、合計値VFtが変化しなかったか否かが判定される。今回は、変化しなかったと仮定すれば、判定がYESとなり、S119において、車両旋回中、合計値VFtが変化しなかったか否かが判定される。今回は、変化しなかったと仮定すれば、判定がYESとなる。今回は、A2という条件と、B1という条件と、C1という条件とが一緒に成立する場合であるから、S120において、図23に示すように、上下力VFの検出に関し、複数の検出器10の少なくとも1つのゼロ点が正規のゼロ点より下にずれていると判定される。以上で、この上下力検出異常判定プログラムの一回の実行が終了する。
【0458】
これに対して、今回は、車両制動中、合計値VFtが変化したと仮定すれば、S118の判定がNOとなる。今回は、A2という条件が成立し、かつ、B2またはB3という条件が成立する場合に該当するから、S121において、図23に示すように、上下力VFの検出に関し、複数の検出器10の少なくとも1つの勾配が正規の勾配より下にずれていると判定される。
【0459】
続いて、S122において、車両制動中に、合計値VFtが増加したか減少したかが判定される。増加した場合には、判定がYESとなる。今回は、A2という条件とB2という条件とが一緒に成立する場合であるから、S123において、図23に示すように、上下力VFの検出に関し、左右の後輪の少なくとも一方に取り付けられた検出器10に、勾配下ずれというモードの異常があると判定される。
【0460】
これに対して、車両制動中に、合計値VFtが減少した場合には、S122の判定がNOとなる。今回は、A2という条件とB3という条件とが一緒に成立する場合であるから、S124において、図23に示すように、上下力VFの検出に関し、左右の前輪の少なくとも一方に取り付けられた検出器10に、勾配下ずれというモードの異常があると判定される。
【0461】
いずれの場合にも、その後、S125において、車両旋回中、合計値VFtが変化しなかったか否かが判定される。変化しなかった場合には、判定がYESとなり、直ちに、この上下力検出異常判定プログラムの一回の実行が終了する。これに対して、変化した場合には、判定がNOとなり、S126に移行する。
【0462】
制動中、合計値VFtが変化せず、かつ、旋回中、合計値VFtが変化した場合には、S118の判定がYES、S119の判定がNOとなることにより、S126に移行する。これに対して、制動中、合計値VFtが変化し、かつ、旋回中、合計値VFtが変化した場合には、S118の判定がNO、S125の判定がNOとなることにより、S126に移行する。
【0463】
いずれの場合にも、今回は、A2という条件とC2またはC3という条件とが一緒に成立する場合であるから、S126において、図23に示すように、上下力VFの検出に関し、複数の検出器10の少なくとも1つの勾配が正規の勾配より下にずれていると判定される。
【0464】
続いて、S127において、車両旋回中に、合計値VFtが増加したか減少したかが判定される。増加した場合には、判定がYESとなる。今回は、A2という条件とC2という条件とが一緒に成立する場合であるから、S128において、図23に示すように、上下力VFの検出に関し、前後の旋回内輪の少なくとも一方に取り付けられた検出器10に、勾配下ずれというモードの異常があると判定される。
【0465】
これに対して、車両旋回中に、合計値VFtが減少した場合には、S127の判定がNOとなる。今回は、A2という条件とC3という条件とが一緒に成立する場合であるから、S129において、図23に示すように、上下力VFの検出に関し、前後の旋回外輪の少なくとも一方に取り付けられた検出器10に、勾配下ずれというモードの異常があると判定される。
【0466】
いずれの場合にも、以上で、この上下力検出異常判定プログラムの一回の実行が終了する。
【0467】
以上、上下力検出異常判定プログラムを説明したが、次に、図17を参照しつつ横力検出異常判定プログラムを説明する。
【0468】
この横力検出異常判定プログラムは、上下力検出部170により検出された上下力VFを利用して横力検出部150の検出異常の有無を判定するために前記コンピュータにより実行される。その判定精度を確保するため、この横力検出異常判定プログラムは、上記上下力検出異常判定プログラムの実行によってすべての車輪20に関して上下力検出部170が正常であると判定されることを条件に実行されるようになっている。
【0469】
この横力検出異常判定プログラムの各回の実行時には、まず、S151において、前記上下力検出異常判定プログラムの実行により、すべての車輪20に関して検出器10による上下力VFの検出が正常であると判定されたか否かが判定される。すべての車輪20に関して検出器10による上下力VFの検出が正常であると判定されなかった場合には、S151の判定がNOとなり、直ちに、この横力検出異常判定プログラムの一回の実行が終了する。
【0470】
これに対して、すべての車輪20に関して検出器10による上下力VFの検出が正常であると判定された場合には、S151の判定がYESとなり、S152に移行する。
【0471】
このS152においては、各車輪20ごとに検出器10の横力検出部150により、各車輪20の横力SFi(i=1〜4)が検出される。ここに、横力SF1,SF2,SF3およびSF4は、図24に示すように、右前輪、左前輪、左後輪および右後輪にそれぞれ作用する横力を意味する。
【0472】
次に、S153において、各車輪20ごとに検出器10の上下力検出部170により、各車輪20の上下力VFi(i=1〜4)が検出される。
【0473】
続いて、S154において、各車輪20ごとに、上記検出された横力SFiを、上記検出された上下力VFiで割り算することにより、個別路面μ相当値μyiが算出される。すなわち、個別路面μ相当値μyiは、
μyi=SFi/VFi
なる式を用いて定義されるのである。
【0474】
その後、S155において、車両全体に関する総合路面μ相当値μytが算出される。具体的には、4つの車輪20についてそれぞれ検出された4つの横力SFiの合計値SFtを、4つの車輪20についてそれぞれ検出された4つの上下力VFiの合計値VFtで割り算することによって算出される。すなわち、総合路面μ相当値μytは、
μyt=SFt/VFt
なる式を用いて定義されるのである。
【0475】
続いて、S156において、各車輪20に関し、上記算出された個別路面μ相当値μyiと、上記算出された総合路面μ相当値μytとの対応関係(例えば、両者の比例関係を表すグラフの勾配)が正規の対応関係(例えば、45度の勾配を有するグラフで表される比例関係)またはそれの許容範囲から外れているか否かが判定される。
【0476】
この対応関係は、各車輪20に関し、個別路面μ相当値μyiについての複数のデータと、総合路面μ相当値μytについての複数のデータとを座標面上にプロットすることを想定した場合に得られるグラフの勾配として取得される。
【0477】
図25には、1つの車輪20のみに関し、個別路面μ相当値μyiと総合路面μ相当値μytとの実際の対応関係が正規の対応関係から外れる様子の一例がグラフで示されている。
【0478】
この例においては、正規の対応関係を表すグラフの両側に許容範囲(図25においてはハッチングされた領域で示されている。)が設定されており、その許容範囲内に個別路面μ相当値μy2、μy3およびμy4が位置する一方、その許容範囲外に個別路面μ相当値μy1が位置している。したがって、この例においては、個別路面μ相当値μy2、μy3およびμy4に対応する3つの検出器10は、横力SFの検出に関して正常であると判定される一方、個別路面μ相当値μy1に対応する検出器10は、横力SFの検出に関して異常であると判定されることとなる。
【0479】
対応関係が正規でない車輪20については、S157において、それに取り付けられている検出器10が、横力SFの検出に関し(特に、検出器10の入出力勾配に関し)、異常であると判定される。これに対して、対応関係が正規である車輪20については、S158において、それに取り付けられている検出器10が、横力SFの検出に関し、正常であると判定される。
【0480】
いずれの場合にも、以上で、この横力検出異常判定プログラムの一回の実行が終了する。
【0481】
なお付言すれば、この横力検出異常判定プログラムのS156においては、個別路面μ相当値μyiが総合路面μ相当値μytと比較されるようになっているが、合計値μytと比較したり、車両の横加速度Gyと比較するようにして本発明を実施することが可能である。
【0482】
以上、横力検出異常判定プログラムを説明したが、次に、図18を参照しつつ前後力検出異常判定プログラムを説明する。
【0483】
この前後力検出異常判定プログラムの実行は、上記横力検出異常判定プログラムの実行に準じて行われる。具体的には、この前後力検出異常判定プログラムの各回の実行時には、まず、S171において、前記上下力検出異常判定プログラムの実行により、すべての車輪20に関して検出器10による上下力VFの検出が正常であると判定されたか否かが判定される。すべての車輪20に関して検出器10による上下力VFの検出が正常であると判定されなかった場合には、S171の判定がNOとなり、直ちに、この前後力検出異常判定プログラムの一回の実行が終了する。
【0484】
これに対して、すべての車輪20に関して検出器10による上下力VFの検出が正常であると判定された場合には、S171の判定がYESとなり、S172に移行する。
【0485】
このS172においては、各車輪20ごとに検出器10の前後力検出部130により、各車輪20の前後力LFi(i=1〜4)が検出される。ここに、前後力LF1,LF2,LF3およびLF4は、図26に示すように、右前輪、左前輪、左後輪および右後輪にそれぞれ作用する前後力を意味する。
【0486】
次に、S173において、各車輪20ごとに検出器10の上下力検出部170により、各車輪20の上下力VFi(i=1〜4)が検出される。
【0487】
続いて、S174において、各車輪20ごとに、上記検出された前後力LFiを、上記検出された上下力VFiで割り算することにより、個別路面μ相当値μxiが算出される。すなわち、個別路面μ相当値μxiは、
μxi=LFi/VFi
なる式を用いて定義されるのである。
【0488】
その後、S175において、車両全体に関する総合路面μ相当値μxtが算出される。具体的には、4つの車輪20についてそれぞれ検出された4つの前後力LFiの合計値LFtを、4つの車輪20についてそれぞれ検出された4つの上下力VFiの合計値VFtで割り算することによって算出される。すなわち、総合個別路面μ相当値μxtは、
μxt=LFt/VFt
なる式を用いて定義されるのである。
【0489】
続いて、S176において、前記S156に準じて、各車輪20に関し、上記算出された個別路面μ相当値μxiと、上記算出された総合路面μ相当値μxtとの対応関係(例えば、両者の比例関係を表すグラフの勾配)が正規の対応関係から外れているか否かが判定される。
【0490】
図27には、図25に準じ、1つの車輪20のみに関し、個別路面μ相当値μxiと総合路面μ相当値μxtとの実際の対応関係が正規の対応関係から外れる様子の一例がグラフで示されている。
【0491】
対応関係が正規でない車輪20については、S177において、それに取り付けられている検出器10が、前後力LFの検出に関し(特に、検出器10の入出力勾配に関し)、異常であると判定される。これに対して、対応関係が正規である車輪20については、S178において、それに取り付けられている検出器10が、前後力LFの検出に関し、正常であると判定される。
【0492】
いずれの場合にも、以上で、この前後力検出異常判定プログラムの一回の実行が終了する。
【0493】
なお付言すれば、この前後力検出異常判定プログラムのS176においては、個別路面μ相当値μxiが総合路面μ相当値μxtと比較されるようになっているが、合計値μxtと比較したり、車両の前後加速度Gxと比較するようにして本発明を実施することが可能である。
【0494】
次に、図19を参照しつつ上下力検出ゼロ点補正プログラムを説明する。
【0495】
この上下力検出ゼロ点補正プログラムは、上下力検出部170のゼロ点を補正するために前記コンピュータにより実行される。このプログラムの各回の実行時には、まず、S201において、上下力VFの検出に関してゼロ点補正を行うべき検出器10が搭載された車両が組立て工場から出荷されるときであるか否かが判定される。この判定は、例えば、出荷時であることを作業者が前記コンピュータに入力したか否かを判定することによって行うことが可能である。
【0496】
今回は、出荷時ではないと仮定すれば、S201の判定がNOとなり、直ちに、この上下力検出ゼロ点補正プログラムの一回の実行が終了する。
【0497】
これに対して、今回は、出荷時であると仮定すれば、S201の判定がYESとなり、S202に移行する。このS202においては、各車輪20ごとに検出器10の上下力検出部170により、各車輪20の上下力VFiが検出される。
【0498】
続いて、S203において、各車輪20の出荷時重量Wi(i=1〜4)の設定値が前記コンピュータのメモリから読み込まれる。
【0499】
その後、S204において、各車輪20ごとに、出荷時における上下力VFiの検出値が、上記読み込まれた出荷時重量Wiに一致するように、上下力検出部170のゼロ点が補正される。
【0500】
以上で、この上下力検出ゼロ点補正プログラムの一回の実行が終了する。
【0501】
なお付言すれば、この上下力検出ゼロ点補正プログラムにおいては、車両の出荷時に、ハブ30に車輪20が装着された状態において、各検出器10が上下力VFの検出に関してゼロ点補正が行われるようになっているが、例えば、車両をジャッキアップした時に、ハブ30から車輪20を取り外した状態において、各ハブ30に装着されている各検出器10のゼロ点を、上下力VFが0であることを表す位置に設定するようにして本発明を実施することが可能である。
【0502】
次に、図20を参照しつつ横力検出ゼロ点補正プログラムを説明する。
【0503】
この横力検出ゼロ点補正プログラムは、横力SFの検出に関してゼロ点を補正するために前記コンピュータにより実行される。このプログラムの各回の実行時には、まず、S221において、車両停止中であるか否かが判定される。この判定は、例えば、各車輪20の回転速度を車輪速度として検出する車輪速度センサであって車両に搭載されているものの検出値を参照することにより行うことが可能である。
【0504】
今回は、車両停止中であると仮定すれば、S221の判定がYESとなり、S222において、車輪20が接している路面の横方向における勾配が0であるか否かが判定される。この判定は、上下力検出部170により左輪と右輪とに関してそれぞれ検出された2つの上下力VFが互いに一致するか否かを判定することにより行われる。
【0505】
今回は、その横方向勾配が0であると仮定すれば、S222の判定がYESとなり、S223において、すべての車輪に関する横力検出部150に関し、それのゼロ点が、横力SFが0であることを表す位置に設定される。
【0506】
以上で、この横力検出ゼロ点補正プログラムの一回の実行が終了する。
【0507】
これに対して、今回は、横方向勾配が0ではないと仮定すれば、S222の判定がNOとなり、S223がスキップされた後、この横力検出ゼロ点補正プログラムの一回の実行が終了する。
【0508】
以上、車両停止中にある場合を説明したが、車両停止中にはない場合には、S221の判定がNOとなり、S224において、車両直進中であるか否かが判定される。この判定は、例えば、車両操舵のために運転者により操作されるステアリングホイールの操舵角を検出する操舵角センサの検出値、車両のヨーレートを検出するヨーレートセンサの検出値または車両の横加速度を検出する横加速度センサの検出値を参照することにより行うことが可能である。
【0509】
今回は、車両直進中ではないと仮定すれば、判定がNOとなり、直ちに、この横力検出ゼロ点補正プログラムの一回の実行が終了する。
【0510】
これに対して、今回は、車両直進中であると仮定すれば、S224の判定がYESとなり、S222に移行した後に、この横力検出ゼロ点補正プログラムの一回の実行が終了する。
【0511】
次に、図21を参照しつつ前後力検出ゼロ点補正プログラムを説明する。
【0512】
この前後力検出ゼロ点補正プログラムは、前後力検出部130のゼロ点を補正するために前記コンピュータにより実行される。このプログラムの各回の実行時には、まず、S241において、S221に準じて、車両停止中であるか否かが判定される。
【0513】
今回は、車両停止中であると仮定すれば、S241の判定がYESとなり、S242において、車輪20が接している路面の前後方向における勾配が0であるか否かが判定される。この判定は、上下力検出部170により前輪と後輪とに関してそれぞれ検出された2つの上下力VFが互いに整合するか否かを判定することにより行われる。ここに、「前輪と後輪とに関してそれぞれ検出された2つの上下力VFが互いに整合する」とは、例えば、それら2つの上下力VFの比率が予め定められた適正範囲内にあるあることを意味する。
【0514】
今回は、その前後向勾配が0であると仮定すれば、S242の判定がYESとなり、S243において、すべての車輪に関する前後力検出部130に関し、それのゼロ点が、前後力LFが0であることを表す位置に設定される。
【0515】
以上で、この前後力検出ゼロ点補正プログラムの一回の実行が終了する。
【0516】
これに対して、今回は、前後方向勾配が0ではないと仮定すれば、S242の判定がNOとなり、S244に移行する。
【0517】
このS244においては、4つの車輪20に関する4つの検出器10のうちの一部について順に、前後力LFの検出のためのゼロ点設定が行われる。
【0518】
各回のゼロ点設定においては、そのゼロ点設定が行われるべき検出器10である対象検出器が設けられている車輪20については前記ブレーキを作動させない一方、その対象検出器が設けられている車輪20を除く車輪20の少なくとも1つについてはブレーキを作動させることにより、その対象検出器が設けられている車輪20に制動力が作用しない状態が基準車両状態として生起される。
【0519】
各回のゼロ点設定においては、さらに、その生起された基準車両状態において、対象検出器のゼロ点が、前後力LFが0であることを表す位置に設定される。
【0520】
以上で、この前後力検出ゼロ点補正プログラムの一回の実行が終了する。
【0521】
なお付言すれば、本実施形態においては、上下力VFと横力SFと前後力LFとのそれぞれの検出につき、4つの検出器10のうちの少なくとも1つに異常があると判定された場合には、そのことが運転者に視覚的にまたは聴覚的に告知されるとともに、異常があると判定された検出器10による検出値が前記車両制御において使用されることが禁止される。
【0522】
さらに付言すれば、本実施形態においては、4つの検出器10のうち、上下力検出異常判定プログラムと横力異常検出判定プログラムと前後力検出異常判定プログラムとのそれぞれの実行により異常がないと判定されたものについては、上下力検出ゼロ点補正プログラムと横力検出ゼロ点補正プログラムと前後力検出ゼロ点補正プログラムとのうち対応するものの実行が許可され、異常があると判定されたものについては、その対応する補正プログラムの実行が禁止される。
【0523】
以上の説明から明らかなように、本実施形態においては、判定部14のうち、図15におけるS103ないしS105、S108、S109およびS114と、図16におけるS120、S121およびS126とを実行するための部分が、前記(4)項における「第1異常判定手段」の一例を構成しているのである。
【0524】
さらに、本実施形態においては、判定部14のうち、図15におけるS101ないしS105、S108、S109およびS114と、図16におけるS120、S121およびS126とを実行するための部分が、前記(5)項における「手段」の一例を構成しているのである。
【0525】
さらに、本実施形態においては、判定部14のうち、図15におけるS106、S107,S110ないしS113、S115ないしS117と、図16におけるS118、S119、S122ないしS125、S127ないしS129とを実行するための部分が、前記(6)項における「第2異常判定手段」の一例を構成しているのである。
【0526】
さらに、本実施形態においては、判定部14のうち、図15におけるS101、S102、S106、S107、S110ないしS113、S115ないしS117と、図16におけるS118、S119、S122ないしS125、S127ないしS129とを実行するための部分が、前記(7)項における「手段」の一例を構成しているのである。
【0527】
さらに、本実施形態においては、判定部14のうち、図15におけるS103、S104、S106ないしS109、S113、S114と、図16におけるS118ないしS121、S125、S126とを実行するための部分が、前記(8)項における「異常モード特定手段」の一例を構成しているのである。
【0528】
さらに、本実施形態においては、判定部14のうち、図15および図16における全ステップのうちS105、S108、S109、S114、S120、S121およびS126を除くものを実行するための部分が、前記(9)項における「異常検出器特定手段」の一例を構成しているのである。
【0529】
さらに、本実施形態においては、判定部14のうち、図15におけるS106およびS107と図16におけるS118およびS119とを実行するための部分が、前記(12)項における「手段」の一例を構成しているのである。
【0530】
さらに、本実施形態においては、判定部14のうち、図17の全ステップを実行するための部分と、図18の全ステップを実行するための部分とがそれぞれ、前記(15)項における「第3異常判定手段」の一例を構成しているのである。
【0531】
さらに、本実施形態においては、判定部14のうち、図17におけるS152ないしS158を実行するための部分と、図18におけるS172ないしS178を実行するための部分とがそれぞれ、前記(16)および(17)項における「手段」の一例を構成しているのである。
【0532】
さらに、本実施形態においては、ゼロ点補正部16のうち、図20の全ステップを実行するための部分と、図21の全ステップを実行するための部分とがそれぞれ、前記(54)項における「設定手段」の一例を構成しているのである。
【0533】
さらに、本実施形態においては、ゼロ点補正部16のうち、図20におけるS221およびS222を実行するための部分と、図21におけるS241およびS242を実行するための部分とがそれぞれ、前記(55)項における「基準車両状態判定手段」の一例を構成しているのである。
【0534】
さらに、本実施形態においては、ゼロ点補正部16のうち、図21におけるS242を実行するための部分が、前記(56)項における「手段」の一例を構成しているのである。
【0535】
さらに、本実施形態においては、ゼロ点補正部16のうち、図20におけるS222を実行するための部分が、前記(57)項における「手段」の一例を構成しているのである。
【0536】
さらに、本実施形態においては、ゼロ点補正部16のうち、図21におけるS244を実行するための部分が、前記(58)項における「手段」の一例を構成しているのである。
【0537】
さらに、本実施形態においては、ゼロ点補正部16のうち、図20におけるS221、S223およびS224を実行するための部分が、前記(59)項における「手段」の一例を構成しているのである。
【0538】
さらに、本実施形態においては、判定部14のうち、図15および図16の全ステップを実行するための部分が、前記(61)項における「第1異常判定部」の一例を構成しているのである。
【0539】
さらに、本実施形態においては、判定部14のうち、図17の全ステップを実行するための部分と、図18の全ステップを実行するための部分とがそれぞれ、前記(62)項における「第2異常判定部」の一例を構成しているのである。
【0540】
次に、本発明の第2実施形態を説明する。ただし、本実施形態は、第1実施形態と共通する要素が多く、異なるのは、検出器による横力および前後力の検出についての異常判定に関する要素のみであるため、異なる要素についてのみ詳細に説明し、共通する要素については同一の符号を使用することによって詳細な説明を省略する。
【0541】
図28に示すように、本実施形態においては、第1実施形態に対し、判定部14に代えて判定部240が設けられている。この判定部240は、検出器10による上下力VFの検出についての異常判定は、図15および図16に示す上下力検出異常判定プログラムと同じプログラムの実行によって行う一方、検出器10による横力SFの検出についての異常判定は、図29にフローチャートで概念的に表されている横力検出異常判定プログラムの実行によって行い、検出器10による前後力LFの検出についての異常判定は、図30にフローチャートで概念的に表されている前後力検出異常判定プログラムの実行によって行うように設計されている。
【0542】
本実施形態においては、さらに、図28に示すように、車体に横加速度センサ242と前後加速度センサ244とが設けられている。横加速度センサ242は、車両に作用する横加速度Gyを検出し、前後加速度センサ244は、車両に作用する前後加速度Gxを検出する。それらセンサ242、244はそれぞれ、当該タイヤ作用力検出装置とは独立して、同じ車両の状態量を検出する車両状態量センサの一例を構成している。
【0543】
ここで、図29を参照しつつ横力検出異常判定プログラムを説明する。
【0544】
この横力検出異常判定プログラムの各回の実行時には、まず、S301において、前記上下力検出異常判定プログラムの実行により、すべての車輪20に関して検出器10による上下力VFの検出が正常であると判定されたか否かが判定される。すべての車輪20に関して検出器10による上下力VFの検出が正常であると判定されなかった場合には、S301の判定がNOとなり、直ちに、この横力検出異常判定プログラムの一回の実行が終了する。
【0545】
これに対して、すべての車輪20に関して検出器10による上下力VFの検出が正常であると判定された場合には、S301の判定がYESとなり、S302に移行する。
【0546】
このS302においては、各車輪20ごとに検出器10の横力検出部150により、各車輪20の横力SFi(i=1〜4)が検出される。その後、S303において、4つの車輪20に関してそれぞれ検出された4つの横力SFiの合計値SFtが算出される。
【0547】
続いて、S304において、各車輪20ごとに検出器10の上下力検出部170により、各車輪20の上下力VFi(i=1〜4)が検出される。その後、S305において、4つの車輪20に関してそれぞれ検出された4つの上下力VFiの合計値VFtが算出される。
【0548】
続いて、S306において、車両全体に関する総合路面μ相当値μytが算出される。具体的には、合計値SFtを合計値VFtで割り算することによって算出される。その後、S307において、横加速度センサ242により横加速度Gyが検出される。
【0549】
続いて、S308において、上記算出された総合路面μ相当値μytと、上記検出された横加速度Gyとが互いに整合するか否かが判定される。それら両値は、車両運動力学上、互いに一義的に対応する関係を有している。したがって、検出器10による横力SFの検出も、横加速度センサ242による横加速度Gyの検出も正常であれば、それらの検出値は互いに整合する(互いに一致するか、または一定の固定係数のもとに比例関係が成立する)はずである。このような知見に基づき、このS308においては、上記算出された総合路面μ相当値μytと、上記検出された横加速度Gyとが互いに整合するか否かが判定されるのである。
【0550】
今回は、両者が互いに整合すると仮定すれば、S308の判定がYESとなり、S309において、いずれかの車輪20に関し、それら両者の対応関係(例えば、両者の比例関係を表すグラフの勾配)が正規の対応関係から外れているか否かが判定される。
【0551】
この対応関係は、前述の個別路面μ相当値μyiと総合路面μ相当値μytとの対応関係に準じ、各車輪20に関し、個別路面μ相当値μyiについての複数のデータと、横加速度Gyについての複数のデータとを座標面上にプロットすることを想定した場合に得られるグラフの勾配として取得される。
【0552】
今回は、いずれかの車輪20に関し、個別路面μ相当値μyiと横加速度Gyとの実際の対応関係が正規の対応関係から外れていると仮定すれば、S309の判定がYESとなり、S310において、そのいずれかの車輪20のタイヤに異常があると判定される。
【0553】
以上で、この横力検出異常判定プログラムの一回の実行が終了する。
【0554】
以上、総合路面μ相当値μytと横加速度Gyとが互いに整合する場合を説明したが、互いに整合しない場合には、S308の判定がNOとなる。それら総合路面μ相当値μytと横加速度Gyとが互いに整合しない原因としては、横力検出部150が異常であるという原因と、横加速度センサ242が異常であるという原因とが考えられる。真の原因を特定するために、その後S311が実行される。
【0555】
このS311においては、すべての車輪20に関し、総合路面μ相当値μytと横加速度Gyとの実際の対応関係が正規の対応関係に対して一方向にずれているか否かが判定される。
【0556】
図31には、すべての車輪20に関し、実際の対応関係が正規の対応関係の許容範囲(図31においてはハッチングされた領域で示されている。)に対して一方向にずれている場合の一例がグラフで示されている。この例においては、すべての車輪20に関し、実際の対応関係が正規の対応関係に対して、グラフの勾配が緩やかになる向きにずれている。
【0557】
今回は、すべての車輪20に関し、総合路面μ相当値μytと横加速度Gyとの実際の対応関係が正規の対応関係に対して一方向にずれていると仮定すれば、S311の判定がYESとなり、S312において、横加速度センサ242が異常であると判定される。これに対して、すべての車輪20に関して実際の対応関係が正規の対応関係に対して一方向にずれているわけではないと仮定すれば、S311の判定がNOとなり、S313において、横力検出部150が異常であると判定される。
【0558】
いずれの場合にも、以上で、この横力検出異常判定プログラムの一回の実行が終了する。
【0559】
次に、図30を参照しつつ前後力検出異常判定プログラムを説明する。
【0560】
この前後力検出異常判定プログラムの実行は、上記横力検出異常判定プログラムの実行に準じて行われる。具体的には、この前後力検出異常判定プログラムの各回の実行時には、S351において、前記上下力検出異常判定プログラムの実行により、すべての車輪20に関して検出器10による上下力VFの検出が正常であると判定されたか否かが判定される。すべての車輪20に関して検出器10による上下力VFの検出が正常であると判定されなかった場合には、S351の判定がNOとなり、直ちに、この前後力検出異常判定プログラムの一回の実行が終了する。
【0561】
これに対して、すべての車輪20に関して検出器10による上下力VFの検出が正常であると判定された場合には、S351の判定がYESとなり、S352に移行する。
【0562】
このS352においては、各車輪20ごとに検出器10の前後力検出部130により、各車輪20の前後力LFi(i=1〜4)が検出される。その後、S353において、4つの車輪20に関してそれぞれ検出された4つの前後力LFiの合計値LFtが算出される。
【0563】
続いて、S354において、各車輪20ごとに検出器10の上下力検出部170により、各車輪20の上下力VFi(i=1〜4)が検出される。その後、S355において、4つの車輪20に関してそれぞれ検出された4つの上下力VFiの合計値VFtが算出される。
【0564】
続いて、S356において、車両全体に関する総合路面μ相当値μxtが算出される。具体的には、合計値LFtを合計値VFtで割り算することによって算出される。その後、S357において、前後加速度センサ244により前後加速度Gxが検出される。
【0565】
続いて、S358において、上記算出された総合路面μ相当値μxtと、上記検出された前後加速度Gxとが互いに整合するか否かが判定される。それら両値は、車両運動力学上、互いに一義的に対応する関係を有している。したがって、検出器10による前後力LFの検出も、前後加速度センサ244による前後加速度Gxの検出も正常であれば、それらの検出値は互いに整合するはずである。このような知見に基づき、このS358においては、上記算出された総合路面μ相当値μxtと、上記検出された前後加速度Gxとが互いに整合するか否かが判定されるのである。
【0566】
今回は、両者が互いに整合すると仮定すれば、S358の判定がYESとなり、S359において、いずれかの車輪20に関し、それら両者の対応関係(例えば、両者の比例関係を表すグラフの勾配)が正規の対応関係から外れているか否かが判定される。
【0567】
今回は、いずれかの車輪20に関し、個別路面μ相当値μxiと前後加速度Gxとの実際の対応関係が正規の対応関係から外れていると仮定すれば、S359の判定がYESとなり、S360において、そのいずれかの車輪20のタイヤに異常があると判定される。
【0568】
以上で、この前後力検出異常判定プログラムの一回の実行が終了する。
【0569】
以上、総合路面μ相当値μxtと前後加速度Gxとが互いに整合する場合を説明したが、互いに整合しない場合には、S358の判定がNOとなる。それら総合路面μ相当値μxtと前後加速度Gxとが互いに整合しない原因としては、前後力検出部130が異常であるという原因と、前後加速度センサ244が異常であるという原因とが考えられる。真の原因を特定するために、その後S361が実行される。
【0570】
このS361においては、すべての車輪20に関し、総合路面μ相当値μxtと前後加速度Gxとの実際の対応関係が正規の対応関係に対して一方向にずれているか否かが判定される。図32には、図31に準じ、すべての車輪20に関し、実際の対応関係が正規の対応関係の許容範囲(図32においてはハッチングされた領域で示されている。)に対して一方向にずれている場合の一例がグラフで示されている。この例においては、すべての車輪20に関し、実際の対応関係が正規の対応関係に対して、グラフの勾配が緩やかになる向きにずれている。
【0571】
今回は、すべての車輪20に関し、総合路面μ相当値μxtと前後加速度Gxとの実際の対応関係が正規の対応関係に対して一方向にずれていると仮定すれば、S361の判定がYESとなり、S362において、前後加速度センサ244が異常であると判定される。これに対して、すべての車輪20に関して実際の対応関係が正規の対応関係に対して一方向にずれているわけでなないと仮定すれば、S361の判定がNOとなり、S363において、前後力検出部130が異常であると判定される。
【0572】
いずれの場合にも、以上で、この前後力検出異常判定プログラムの一回の実行が終了する。
【0573】
以上の説明から明らかなように、本実施形態においては、横加速度センサ242と前後加速度センサ244とがそれぞれ、前記(18)項における「加速度センサ」の一例を構成し、判定部240のうち、図29におけるS306ないしS308およびS313を実行するための部分と、図30におけるS356ないしS358およびS363を実行するための部分とがそれぞれ、同項における「手段」の一例を構成しているのである。
【0574】
さらに、本実施形態においては、判定部240のうち、図29におけるS311およびS312を実行するための部分と、図30におけるS361およびS362を実行するための部分とがそれぞれ、前記(19)項における「加速度センサ異常判定手段」の一例を構成しているのである。
【0575】
さらに、本実施形態においては、判定部240のうち、図29におけるS308ないしS310を実行するための部分と、S30におけるS358ないしS360を実行するための部分とがそれぞれ、前記(20)項における「タイヤ異常判定手段」の一例を構成しているのである。
【0576】
次に、本発明の第3実施形態を説明する。ただし、本実施形態は、第1実施形態と共通する要素が多く、異なるのは、検出器による上下力、横力および前後力の検出についての異常判定に関する要素のみであるため、異なる要素についてのみ詳細に説明し、共通する要素については同一の符号を使用することによって詳細な説明を省略する。
【0577】
図33に示すように、本実施形態においては、第1実施形態に対し、判定部14に代えて判定部250が設けられている。この判定部250は、検出器10による上下力VFの検出についての異常判定は、図34にフローチャートで概念的に表されている上下力検出異常判定プログラムの実行によって行い、検出器10による横力SFの検出についての異常判定は、図35にフローチャートで概念的に表されている横力検出異常判定プログラムの実行によって行い、検出器10による前後力LFの検出についての異常判定は、図36にフローチャートで概念的に表されている前後力検出異常判定プログラムの実行によって行うように設計されている。
【0578】
本実施形態においては、さらに、図33に示すように、車体に前後加速度センサ252が設けられている。前後加速度センサ252は、車両に作用する前後加速度Gxを検出する。この前後加速度センサ252は、当該タイヤ作用力検出装置とは独立して、同じ車両の状態量を検出する車両状態量センサの一例を構成している。
【0579】
ここで、図34を参照しつつ上下力検出異常判定プログラムを説明する。
【0580】
この上下力検出異常判定プログラムの各回の実行時には、まず、S381において、前後加速度センサ252により前後加速度Gxが検出される。次に、S382において、各車輪20ごとに検出器10の前後力検出部130により、各車輪20の前後力LFi(i=1〜4)が検出される。その後、S383において、4つの車輪20に関してそれぞれ検出された4つの前後力LFiの合計値LFtが算出される。
【0581】
続いて、S384において、その算出された合計値LFtを、前記検出された前後加速度Gxで割り算することにより、上下力推定値VFEが算出される。前後加速度Gxは、車輪20と路面との間の摩擦係数μに相当する物理量であるため、合計値LFtを前後加速度Gxで割り算することは、合計値LFtを摩擦係数μで割り算することに相当し、よって、合計値LFtを前後加速度Gxで割り算することにより、上下力VFの推定値VFEが、上下力検出部170から独立して取得されるのである。
【0582】
その後、S385において、各車輪20ごとに検出器10の上下力検出部170により、各車輪20の上下力VFi(i=1〜4)が検出される。続いて、S386において、4つの車輪20に関してそれぞれ検出された4つの上下力VFiの合計値VFtが算出される。
【0583】
その後、S387において、その算出された合計値VFtと、上記取得された上下力推定値VFEとが互いに整合するか否かが判定される。それら両値は、車両運動力学上、互いに一義的に対応する関係を有している。したがって、検出器10による上下力VFの検出も、前後加速度センサ252による前後加速度Gxの検出も正常であれば(検出器10による前後力LFの検出は正常であると仮定する)、それらの検出値は互いに整合するはずである。このような知見に基づき、このS378においては、上記算出された合計値VFtと、上記取得された上下力推定値VFEとが互いに整合するか否かが判定されるのである。
【0584】
今回は、両者が互いに整合すると仮定すれば、S387の判定がYESとなり、S388において、すべての車輪20に関し、上下力検出部170が正常であると判定される。これに対し、今回は、両者が互いに整合しないと仮定すれば、S387の判定がNOとなり、S389において、少なくとも1つの車輪20に関し、上下力検出部170が異常であると判定される。
【0585】
いずれの場合にも、以上で、この上下力検出異常判定プログラムの一回の実行が終了する。
【0586】
なお付言すれば、この上下力検出異常判定プログラムにおいては、前後加速度Gxと前後力LFとに着目することによって上下力VFの検出異常の有無が判定されるようになっているが、横加速度Gyと横力SFとに着目することによって上下力VFの検出異常の有無が判定されるようにして本発明を実施することが可能である。
【0587】
次に、図35を参照しつつ横力検出異常判定プログラムを説明する。
【0588】
この横力検出異常判定プログラムの各回の実行時には、まず、S401において、車両旋回中であるか否かが判定される。この判定は、例えば、車両操舵のために運転者により操作されるステアリングホイールの操舵角を検出する操舵角センサの検出値を参照したり、車両の横加速度を検出する横加速度センサの検出値を参照したり、車両のヨーレートを検出するヨーレートセンサの検出値を参照したり、左右輪の車輪速度をそれぞれ検出する2つの車輪速度センサによる2つの検出値の差を参照することにより行うことが可能である。
【0589】
今回は、車両旋回中ではないと仮定すれば、S401の判定がNOとなり、直ちに、この横力検出異常判定プログラムの一回の実行が終了する。これに対し、今回は、車両旋回中であると仮定すれば、S401の判定がYESとなり、S402に移行する。
【0590】
このS402においては、操舵車輪である左右の前輪のうちの旋回外輪に関し、上下力検出部170により上下力VFが上下力VFoutとして検出される。続いて、S403においては、それら左右の前輪のうちの旋回内輪に関し、上下力検出部170により上下力VFが上下力VFinとして検出される。
【0591】
その後、S404において、上記検出された上下力VFoutから、上記検出された上下力VFinを引き算することにより、横方向荷重移動量ΔVFが算出される。
【0592】
続いて、S405において、車両について既知のトレッドの長さLyと、上記算出された横方向荷重移動量ΔVFとの積を、車両について既知の重心高Hgで割り算することにより、横力推定値SFEが取得される。この割り算により、横力SFの推定値SFEが、横力検出部150から独立して取得されるのである。
【0593】
その後、S406において、各車輪20ごとに検出器10の横力検出部150により、各車輪20の横力SFi(i=1〜4)が検出される。続いて、S407において、4つの車輪20に関してそれぞれ検出された4つの横力SFiの合計値SFtが算出される。
【0594】
その後、S408において、その算出された合計値SFtと、上記取得された横力推定値SFEとが互いに整合するか否かが判定される。それら両値は、車両運動力学上、互いに一義的に対応する関係を有している。したがって、検出器10による横力SFの検出が正常であれば(検出器10による上下力VFの検出は正常であると仮定する)、それらの検出値は互いに整合するはずである。このような知見に基づき、このS408においては、上記算出された合計値SFtと、上記取得された横力推定値SFEとが互いに整合するか否かが判定されるのである。
【0595】
今回は、両者が互いに整合すると仮定すれば、S408の判定がYESとなり、S409において、すべての車輪20に関し、横力検出部150が正常であると判定される。これに対し、今回は、両者が互いに整合しないと仮定すれば、S408の判定がNOとなり、S410において、少なくとも1つの車輪20に関し、横力検出部150が異常であると判定される。
【0596】
いずれの場合にも、以上で、この横力検出異常判定プログラムの一回の実行が終了する。
【0597】
次に、図36を参照しつつ前後力検出異常判定プログラムを説明する。
【0598】
この前後力検出異常判定プログラムの実行は、上記横力検出異常判定プログラムの実行に準じて行われる。具体的には、この前後力検出異常判定プログラムの各回の実行時には、まず、S421において、車両制動中であるか否かが判定される。この判定は、例えば、車両制動のために運転者により操作されるブレーキ操作部材の操作量(例えば、操作力、操作ストローク)を検出するブレーキ操作量センサの検出値を参照したり、前後加速度センサ252の検出値を参照したり、前記ブレーキの作動力に関連する物理量を検出するブレーキ作動力センサ(例えば、そのブレーキにおけるホイールシリンダの圧力を検出するホイールシリンダ圧センサ)の検出値を参照することにより行うことが可能である。
【0599】
今回は、車両制動中ではないと仮定すれば、S421の判定がNOとなり、直ちに、この前後力検出異常判定プログラムの一回の実行が終了する。これに対し、今回は、車両制動中であると仮定すれば、S421の判定がYESとなり、S422に移行する。
【0600】
このS422においては、各前輪に関し、上下力検出部170により上下力VFが検出されるとともに、それら2つの上下力VFの和が、前輪の上下力VFfとして算出される。
【0601】
続いて、S423において、各後輪に関し、上下力検出部170により上下力VFが検出されるとともに、それら2つの上下力VFの和が、後輪の上下力VFrとして算出される。
【0602】
その後、S424において、上記算出された上下力VFfから、上記算出された上下力VFrを引き算することにより、前後方向荷重移動量ΔVFが算出される。
【0603】
続いて、S425において、車両について既知のホイールベースの長さLxと、上記算出された前後方向荷重移動量ΔVFとの積を、車両について既知の重心高Hgで割り算することにより、前後力推定値LFEが取得される。この割り算により、前後力LFの推定値SFEが、前後力検出部130から独立して取得されるのである。
【0604】
その後、S426において、各車輪20ごとに検出器10の前後力検出部130により、各車輪20の前後力LFi(i=1〜4)が検出される。続いて、S427において、4つの車輪20に関してそれぞれ検出された4つの前後力LFiの合計値LFtが算出される。
【0605】
その後、S428において、その算出された合計値LFtと、上記取得された前後力推定値LFEとが互いに整合するか否かが判定される。それら両値は、車両運動力学上、互いに一義的に対応する関係を有している。したがって、検出器10による前後力LFの検出が正常であれば(検出器10による上下力VFの検出は正常であると仮定する)、それらの検出値は互いに整合するはずである。このような知見に基づき、このS428においては、上記算出された合計値LFtと、上記取得された前後力推定値LFEとが互いに整合するか否かが判定されるのである。
【0606】
今回は、両者が互いに整合すると仮定すれば、S428の判定がYESとなり、S429において、すべての車輪20に関し、前後力検出部130が正常であると判定される。これに対し、今回は、両者が互いに整合しないと仮定すれば、S428の判定がNOとなり、S430において、少なくとも1つの車輪20に関し、前後力検出部130が異常であると判定される。
【0607】
いずれの場合にも、以上で、この前後力検出異常判定プログラムの一回の実行が終了する。
【0608】
以上の説明から明らかなように、本実施形態においては、前後加速度センサ252が前記(48)項における「車両状態量センサ」の一例を構成し、判定部250のうち、図34における全ステップを実行するための部分と、図35における全ステップを実行するための部分と、図36における全ステップを実行するための部分とがそれぞれ、同項における「第5異常判定手段」の一例を構成しているのである。
【0609】
次に、本発明の第4実施形態を説明する。ただし、本実施形態は、第1実施形態と共通する要素が多く、異なるのは、検出器による横力の検出についての異常判定に関する要素のみであるため、異なる要素についてのみ詳細に説明し、共通する要素については同一の符号を使用することによって詳細な説明を省略する。
【0610】
図37に示すように、本実施形態においては、第1実施形態に対し、判定部14に代えて判定部254が設けられている。この判定部254は、検出器10による上下力VFの検出についての異常判定は、図15および図16に示されている上下力検出異常判定プログラムと同じプログラムの実行によって行い、検出器10による横力SFの検出についての異常判定は、図38にフローチャートで概念的に表されている横力検出異常判定プログラムの実行によって行い、検出器10による前後力LFの検出についての異常判定は、図18に示されている前後力検出異常判定プログラムと同じプログラムの実行によって行うように設計されている。
【0611】
本実施形態においては、さらに、図37に示すように、車両操舵のために運転者により操作されるステアリングホイールの操舵角θを検出する操舵角センサ256が設けられている。さらに、各車輪20ごとに、それの回転速度を車輪速度VWとして検出する車輪速度センサ258も設けられている。それらセンサ256および258はそれぞれ、当該タイヤ作用力検出装置から独立して、同じ車両の状態量を検出する車両状態量センサの一例を構成している。
【0612】
ここで、図38を参照しつつ横力検出異常判定プログラムを説明する。
【0613】
この横力検出異常判定プログラムの各回の実行時には、まず、S441において、操舵角センサ256により操舵角θが検出される。
【0614】
次に、S442において、基準車輪速度VW0および基準上下力VF0のもとに、その検出された操舵角θに応じて、全輪に発生することが予想される横力SF(合計値)が基準横力SFrefとして決定される。前記コンピュータのメモリには、操舵角θと基準横力SFrefとの関係であって例えば図39にグラフで表されているものが予め記憶されており、その関係に従い、操舵角θの検出値に対応する基準横力SFrefが決定されるのである。
【0615】
続いて、S443において、全輪に関して車輪速度センサ258により検出された車輪速度VWの平均値が平均車輪速度VWmとして検出される。
【0616】
その後、S444において、その検出された平均車輪速度VWmに対応する補正係数K1が決定される。本実施形態においては、横力検出部150に依存することなく、全輪の横力SF(合計値)の推定値が、操舵角θを変数とする基準横力SFrefと、平均車輪速度VWmを変数とする補正係数K1と、全輪の上下力VFt(合計値)を変数とする補正係数K2との積として推定されるようになっている。このS444においては、それら2つの補正係数K1,K2のうちの一方が決定されるのである。
【0617】
前記コンピュータのメモリには、平均車輪速度VWmと補正係数K1との関係であって例えば図40にグラフで表されているものが予め記憶されており、その関係に従い、平均車輪速度VWmの検出値に対応する補正係数K1が決定されるのである。その関係は、車輪速度VWに応じてタイヤのコーナリングパワーCPが例えば図41にグラフで表されているように変化することに着目して設定されている。
【0618】
続いて、S445において、全輪に関して上下力検出部170により検出された上下力VFの合計値が上下力VFtとして検出される。
【0619】
その後、S446において、その検出された上下力VFtに対応する補正係数K2が決定される。前記コンピュータのメモリには、上下力VFtと補正係数K2との関係であって例えば図42にグラフで表されているものが予め記憶されており、その関係に従い、上下力VFtの検出値に対応する補正係数K2が決定されるのである。その関係は、上下力VFtに応じてタイヤのコーナリングパワーCPが例えば図43にグラフで表されているように変化することに着目して設定されている。
【0620】
続いて、S447において、上記のようにしてそれぞれ決定された、基準横力SFrefと、補正係数K1と、補正係数K2とが互いに掛け合わせられることにより、全輪に関する横力推定値SFEが取得される。
【0621】
その後、S448において、全輪に関して横力検出部150により検出された横力SFの合計値が横力SFtとして検出される。
【0622】
続いて、S449において、その検出された横力SFtと、上記取得された横後力推定値SFEとが互いに整合するか否かが判定される。それら両値は、車両運動力学上、互いに一義的に対応する関係を有している。したがって、検出器10による横力SFの検出が正常であれば(検出器10による上下力VFの検出は正常であると仮定する)、それらの検出値は互いに整合するはずである。このような知見に基づき、このS449においては、上記検出された横力SFtと、上記取得された横力推定値SFEとが互いに整合するか否かが判定されるのである。
【0623】
今回は、両者が互いに整合すると仮定すれば、S449の判定がYESとなり、S450において、全輪に関し、横力検出部150が正常であると判定される。これに対し、今回は、両者が互いに整合しないと仮定すれば、S449の判定がNOとなり、S451において、少なくとも1つの車輪に関し、横力検出部150が異常であると判定される。
【0624】
いずれの場合にも、以上で、この横力検出異常判定プログラムの一回の実行が終了する。
【0625】
以上の説明から明らかなように、本実施形態においては、操舵角センサ256と車輪速度センサ258とがそれぞれ、前記(22)項における「車両状態量センサ」の一例を構成し、判定部254のうち、図38における全ステップを実行するための部分が、同項における「第4異常判定手段」の一例を構成しているのである。
【0626】
さらに、本実施形態においては、操舵角センサ256が、前記(25)項における「操作状態量センサ」の一例を構成し、判定部254のうち、図38における全ステップを実行するための部分が、同項における「手段」の一例を構成しているのである。
【0627】
さらに、本実施形態においては、操舵角センサ256と車輪速度センサ258とがそれぞれ、前記(48)項における「車両状態量センサ」の一例を構成し、判定部254のうち、図38における全ステップを実行するための部分が、同項における「第5異常判定手段」の一例を構成しているのである。
【0628】
次に、本発明の第5実施形態を説明する。ただし、本実施形態は、第1実施形態と共通する要素が多く、異なる要素は、前後力検出部および横力検出部の構造と、ゼロ点補正とに関するもののみであるため、異なる要素についてのみ詳細に説明し、共通する要素については第1実施形態と同一の符号を使用することにより、説明を省略する。
【0629】
第1実施形態においては、前述のように、前後力検出部130が、車両前進中にタイヤ24に駆動力が作用するか、または車両後退中にタイヤ24に制動力が作用する時と、車両前進中にタイヤ24に制動力が作用するか、または車両後退中にタイヤ24に駆動力が作用する時とで互いに異なる歪ゲージ134,136を使用するように設計されている。
【0630】
さらに、第1実施形態においては、横力検出部150が、横力がタイヤ24に旋回外向きに作用する時と旋回内向きに作用する時とで互いに異なる歪ゲージ154,156を使用するように設計されている。
【0631】
そのため、第1実施形態においては、第1および第2構造部100,102については、それぞれの両面に歪ゲージ134,136,154,156が取り付けられる。
【0632】
これに対して、本実施形態においては、図44および図45に示すように、いずれの検出部90についても、平板を折り曲げて検出部材94を形成する前におけるその平板の片面に、前後力検出用の歪ゲージ260と横力検出用の歪ゲージ262と上下力検出用の歪ゲージ174とが取り付けられている。
【0633】
また、本実施形態においても、第1実施形態と同様に、いずれの歪ゲージ260,262,174も、それに発生させられた引張り歪に基づいて必要なタイヤ作用力を検出するという前提が採用されている。
【0634】
そして、本実施形態においては、図46に表で示すように、図44においてAを付した検出部90については、駆動力は車両前進時に、制動力は車両後退時に、横力は旋回外向きにタイヤ24に作用する時にそれぞれ検出する。
【0635】
Bを付した検出部90であってAを付した検出部90より前進回転方向とは逆方向に90度ずれて配置されたものについては、駆動力は車両後退時に、制動力は車両前進時に、横力は旋回内向きにタイヤ24に作用する時にそれぞれ検出する。
【0636】
Cを付した検出部90であってBを付した検出部90より前進回転方向とは逆方向に90度ずれて配置されたものについては、駆動力は車両前進時に、制動力は車両後退時に、横力は旋回外向きにタイヤ24に作用する時にそれぞれ検出する。
【0637】
Dを付した検出部90であってCを付した検出部90より前進回転方向とは逆方向に90度ずれて配置されたものについては、駆動力は車両後退時に、制動力は車両前進時に、横力は旋回内向きにタイヤ24に作用する時にそれぞれ検出する。
【0638】
図47に示すように、本実施形態においては、第1実施形態に対し、ゼロ点補正部16に代えてゼロ点補正部300が設けられている。このゼロ点補正部300は、上下力VFに関する検出器10のゼロ点補正は、図19に示されている上下力検出ゼロ点補正プログラムと同じプログラムの実行によって行い、横力SFに関する検出器のゼロ点補正は、図20に示されている横力検出ゼロ点補正プログラムと同じプログラムの実行によって行い、前後力LFのうちの駆動力に関する検出記のゼロ点補正は、図48にフローチャートで概念的に表されている駆動力検出ゼロ点補正プログラムの実行によって行うように設計されている。
【0639】
その駆動力検出ゼロ点補正プログラムは、AおよびCをそれぞれ付された2つの検出部90による駆動力の検出に関し、ゼロ点補正を行うために実行される。この駆動力検出ゼロ点補正プログラムは、4つの車輪20について順に、かつ、繰り返し実行される。
【0640】
この駆動力検出ゼロ点補正プログラムの各回の実行時には、まず、S501において、車両前進中であるか否かが判定される。この判定は、例えば、前記車輪速度センサの検出値を参照したり、運転者によるアクセル操作部材の操作を検出することにより行うことが可能である。このように車両前進中であるか否かを判定するのは、AおよびCをそれぞれ付された2つの検出部90は、車両前進中に限り、駆動力を検出するように設計されているからである。
【0641】
今回は、車両前進中ではないと仮定すれば、S501の判定がNOとなり、直ちに、この駆動力検出ゼロ点補正プログラムの一回の実行が終了する。これに対して、今回は、車両前進中であると仮定すれば、S501の判定がYESとなり、S502に移行する。
【0642】
このS502においては、4つの車輪20のうち、このプログラムの今回の実行対象が駆動車輪であるか否かが判定される。今回は、駆動車輪であると仮定すれば、判定がYESとなり、S503において、車両制動中であるか否かが判定される。今回の実行対象車輪に設けられた検出器10に駆動力が作用していないか否かが判定されるのである。
【0643】
今回は、車両制動中であると仮定すれば、S503の判定がYESとなり、S504において、上記2つの検出部90に関し、それのゼロ点が、駆動力が0であることを表す位置に設定される。以上で、この駆動力検出ゼロ点補正プログラムの一回の実行が終了する。
【0644】
これに対して、今回は、車両制動中ではないと仮定すれば、S503の判定がNOとなり、S504がスキップされて、この駆動力検出ゼロ点補正プログラムの一回の実行が終了する。
【0645】
以上、今回の実行対象車輪が駆動車輪である場合を説明したが、駆動車輪ではなく転動車輪である場合には、S502の判定がNOとなる。この場合には、S503がスキップされてS504に移行する。したがって、今回の実行対象車輪が転動車輪である場合には、車両制動中であるか否かを問わず、S504において、ゼロ点の設定が行われることとなる。
【0646】
以上の説明から明らかなように、本実施形態においては、ゼロ点補正部300のうち、図48における全ステップを実行するための部分が、前記(54)項における「設定手段」の一例を構成しているのである。
【0647】
さらに、本実施形態においては、AおよびCをそれぞれ付された各検出部90が、前記(60)項における「第1部分」の一例を構成し、BおよびDをそれぞれ付された各検出部90が、同項における「第2部分」の一例を構成し、ゼロ点補正部300のうち、図48における全ステップを実行するための部分が、同項における「手段」の一例を構成しているのである。
【0648】
次に、本発明の第6実施形態を説明する。ただし、本実施形態は、第1実施形態と共通する要素が多く、異なる要素は、車両状態量センサとそれのゼロ点を補正するセンサゼロ点補正部とに関するもののみであるため、異なる要素についてのみ詳細に説明し、共通する要素については第1実施形態と同一の符号を使用することにより、説明を省略する。
【0649】
図49に示すように、本実施形態においては、信号処理装置222が、第1実施形態に対してさらにセンサゼロ点補正部320を含むように構成されている。車両には、同図に示すように、その車両の状態量を検出する車両状態量センサ330が搭載されている。
【0650】
この車両状態量センサ330は、次の複数のセンサを含むように構成されている。なお、本発明は、次の複数のセンサをすべて使用する態様で実施することは不可欠なことではなく、用途・目的に応じて選択されたセンサを使用する態様で実施することが可能である。
(1)車両の前後加速度Gxを検出する前後加速度センサ332
(2)車両の横加速度Gyを検出する横加速度センサ334
(3)車両の上下加速度Gzを検出する上下加速度センサ336
(4)車両のヨーレートを検出するヨーレートセンサ338
(5)各車輪のブレーキにおけるホイールシリンダの圧力を検出するホイールシリンダ圧センサ340
(6)車両のピッチングに関する物理量を検出するピッチングセンサ342
(7)車両のローリングに関する物理量を検出するローリングセンサ344
(8)各車輪の回転速度を車輪速度VWとして検出する車輪速度センサ346
(9)その車輪速度センサ346を用いないで車両の走行速度を検出する車速センサ348
それらセンサのゼロ点は、上記センサゼロ点補正部320により、検出器10を用いることにより、補正される。この補正は、検出器10による検出が前記判定部14により正常であると判定されるとともに前記ゼロ点補正部16によりその検出器10のゼロ点が補正されることを条件に行われる。
【0651】
図50には、その補正を実現するために信号処理装置222のコンピュータにより実行されるセンサゼロ点補正プログラムがフローチャートで概念的に表されている。ただし、同図には、そのセンサゼロ点補正プログラムのうち、前後加速度センサ332のゼロ点を補正する部分のみが代表的に示されている。他のセンサのゼロ点は、その前後加速度センサ332のゼロ点と同様の原理に従って補正される。以下、同図を参照しつつセンサゼロ点補正プログラムを説明する。
【0652】
このセンサゼロ点補正プログラムの各回の実行時においては、まず、S531において、各車輪20ごとに前後力検出部130により、各車輪20の前後力LFiが検出される。次に、S532において、4つの車輪20に関してそれぞれ検出された4つの前後力LFiの合計値LFtが算出される。
【0653】
続いて、S533において、その算出された合計値LFtが0であるか否かが判定される。前後加速度センサ332に前後加速度Gxが作用していない基準車両状態であるか否かが判定されるのである。
【0654】
今回は、その算出された合計値LFtが0であると仮定すれば、S533の判定がYESとなり、S534において、前後加速度センサ332により前後加速度Gxが検出される。
【0655】
その後、S535において、その検出された前後加速度Gxが、前後加速度センサ332のゼロ点の誤差eとして決定される。続いて、S536において、その決定された誤差eの絶対値が、予め定められた許容値e0以上であるか否かが判定される。
【0656】
今回は、誤差eの絶対値が許容値e0以上ではないと仮定すれば、S536の判定がNOとなり、S537において、前後加速度センサ332のゼロ点が、前後加速度Gxが0であることを表す位置に設定される。これに対して、今回は、誤差eの絶対値が許容値e0以上であると仮定すれば、S536の判定がYESとなり、S538において、前後加速度センサ332が異常であると判定される。いずれの場合にも、以上で、このセンサゼロ点補正プログラムの一回の実行が終了する。
【0657】
以上、合計値LFtが0である場合を説明したが、0ではない場合には、S533の判定がNOとなり、S539に移行する。
【0658】
このS539においては、合計値LFtが、0でないように予め定められた基準値LF0と等しいか否かが判定される。今回は、基準値LF0と等しくはないと仮定すれば、S539の判定がNOとなり、直ちに、このセンサゼロ点補正プログラムの一回の実行が終了する。
【0659】
これに対して、今回は、合計値LFtが基準値LF0と等しいと仮定すれば、S539の判定がYESとなり、S540において、前後加速度センサ332により前後加速度Gxが検出される。続いて、S541において、その検出された前後加速度Gxから基準値LF0を引き算することにより、前後加速度センサ332のゼロ点の誤差eが算出される。
【0660】
その後、S542において、その算出された誤差eの絶対値が前記許容値e0以上であるか否かが判定される。今回は、許容値e0以上ではないと仮定すれば、S542の判定がNOとなり、S543において、その誤差eに基づいて前後加速度センサ332のゼロ点が補正される。具体的には、前後加速度センサ332の入出力勾配が正規であると仮定し、その誤差eと同じ量だけ、その誤差eが消滅する向きに前後加速度センサ332のゼロ点が変更される。
【0661】
これに対して、今回は、誤差eの絶対値が許容値e0以上であると仮定すれば、S542の判定がYESとなり、S538において、前後加速度センサ332が異常であると判定される。
【0662】
いずれの場合にも、以上で、このセンサゼロ点補正プログラムの一回の実行が終了する。
【0663】
なお付言すれば、このセンサゼロ点補正プログラムは、図50のステップ中、S539ないしS543を省略して実行することが可能である。
【0664】
以上の説明から明らかなように、本実施形態においては、センサゼロ点補正部320のうち、図50におけるS531ないしS534およびS537を実行するための部分が、前記(66)項における「設定手段」の一例を構成しているのである。
【0665】
さらに、本実施形態においては、センサゼロ点補正部320のうち、図50におけるS539ないしS541およびS543を実行するための部分が、前記(67)項における「手段」の一例を構成しているのである。
【0666】
次に、本発明の第7実施形態を説明する。ただし、本実施形態は、第4実施形態と共通する要素が多く、異なるのは、検出器による横力の検出についての異常判定に関する要素のみであるため、異なる要素についてのみ詳細に説明し、共通する要素については同一の符号を使用することによって詳細な説明を省略する。
【0667】
図51に示すように、本実施形態においては、第4実施形態に対し、判定部254に代えて判定部360が設けられている。この判定部360は、検出器10による上下力VFの検出についての異常判定は、図15および図16に示されている上下力検出異常判定プログラムと同じプログラムの実行によって行うように構成されている。
【0668】
さらに、判定部360は、検出器10による横力SFの検出についての異常判定は、図52にフローチャートで概念的に表されている横力検出異常判定プログラムの実行によって行うように構成されている。
【0669】
さらに、判定部360は、検出器10による前後力LFの検出についての異常判定は、図18に示されている前後力検出異常判定プログラムと同じプログラムの実行によって行うように構成されている。
【0670】
本実施形態においては、さらに、図51に示すように、前記操舵角センサ256および車輪速度センサ258に加えて、前記横加速度センサ334とヨーレートセンサ338とが設けられている。
【0671】
本実施形態においては、それらセンサ256,258,334,338はれぞれ、当該タイヤ作用力検出装置から独立して、同じ車両の状態量を検出する車両状態量センサの一例を構成している。さらに、本実施形態においては、操舵角センサ256は、同じ車両の状態量を変化させるために運転者により行われる操作の状態量を検出する操作状態量検出装置の一例を構成している。
【0672】
ここで、図52を参照しつつ横力検出異常判定プログラムを説明する。
【0673】
まず、概略的に説明すれば、この横力検出異常判定プログラムにおいては、前記車両制御装置224による自動制御(例えば、アンチロック制御、トラクション制御、横力制御による車両挙動安定化制御(「ビークルスタビリティ制御」ともいう)等)の実行中や、車両の進行方向が通常の走行時より頻繁に変化する非通常旋回走行中(例えば、S字旋回中)には、横力SFの実際値が時間と共に頻繁に変動する可能性が高いため、横力検出部150が異常であるか否かの判定が禁止される。
【0674】
さらに、この横力検出異常判定プログラムにおいては、前記車両状態量センサからの信号に基づく横力推定値SFEと、横力検出部150からの信号に基づく横力検出値SFDとが互いに整合しない場合に、横力検出部150が異常であると判定される。
【0675】
このように、本実施形態においては、各車輪ごとに個別に、タイヤ作用力の推定値と検出値とが互いに比較されることにより、各検出部が異常であるか否かが判定される。互いに比較されるべき推定値と検出値とは、実質的に互いに同じ時期に取得される。
【0676】
なお付言すれば、本実施形態においては、完全に同じ種類の物理量に関し、検出値と推定値とが互いに比較されることにより、検出部が異常であるか否かが判定されるが、比較される物理量の種類が完全に同一であることは本発明を実施するうえにおいて不可欠なことではない。物理的に互いに等価であるか置換可能である物理量同士でもよいのであり、例えば、横力検出値SFDとの比較対象にステアリングホイールの操舵角θを選んだり、車体のヨーレートγを選んだり、それらの組合せを選んだりして異常判定を行うことが可能である。
【0677】
さらに付言すれば、車両においては、車両旋回のために運転者により回転操作されるステアリングホイールが、操舵車輪を操舵する操舵機構と機械的に連結される形式である場合もあれば、機械的には絶縁されるが電気的には連結される形式、すなわち、ステアバイワイヤ式である場合もある。いずれの場合にも、ステアリングホイールの操舵角θに着目して本発明を実施することが可能である。
【0678】
ステアリングホイールがステアバイワイヤ式である場合には、上記操舵機構の電気制御部に供給される指令値と、ステアリングホイールの回転操作角すなわち操舵角θとの間に既知の関係が成立する。したがって、このステアバイワイヤ式の場合には、横力検出値SFDとの比較対象として、操舵角θに代えて上記の指令値を選ぶことも可能である。
【0679】
ここに、横力推定値SFEは、横加速度センサ334により検出された横加速度GyDを用いて演算することが可能である。また、ヨーレートセンサ338により検出されたヨーレートγと車速Vとを用いて推定された横加速度GyE(例えば、GyE=V・γ)を用いて演算することも可能である。
【0680】
横力推定値SFEは、さらに、操舵角センサ256により検出された操舵角θと車速Vとを用いて推定された横加速度GyE(例えば、GyE=V2/R ただし、Rは、操舵角θに基づいて推定される車両の旋回半径)を用いて演算することも可能である。さらにまた、ヨーレートγと車速Vと操舵角θとを用いて推定された横加速度GyE(例えば、上述の2種類のGyEの平均値、すなわち、(V2/R+V・γ)/2)を用いて演算することも可能である。
【0681】
また、横力推定値SFEと横力検出値SFDとが互いに整合するか否かの判定については、それら横力推定値SFEと横力検出値SFDとの差が設定値α1より大きい場合に、それらは互いに整合しないと判定される。
【0682】
ただし、それら横力推定値SFEと横力検出値SFDとの比が設定範囲を超える場合に、それらは互いに整合しないと判定することが可能である。
【0683】
また、車速Vは、前記車速センサ348のような専用のセンサにより検出したり、複数の車輪に対応する複数の車輪速度センサ258により検出された車輪速度VWに基づいて推定することが可能である。
【0684】
さらに、横力推定値SFEが第1設定値以下である状況において、横力検出値SFDが第2設定値(例えば、第1設定値より大きい)以上である場合に、それら横力推定値SFEと横力検出値SFDとが互いに整合しないと判定することも可能である。
【0685】
さらに、この横力検出異常判定プログラムにおいては、車両旋回中、横力検出部150が正常であれば、横力検出値SFDの符号(正または負であり、これは発生横力の向きを表す)が左右前輪間において互いに一致するとともに左右後輪間においても互いに一致するという事実に着目することにより、横力検出部150を異常であるか否かを判定することも行われる。
【0686】
すなわち、同じ車両における複数の検出部間において検出値の符号が互いに一致するか否かを判定することにより、それら複数の検出部について総合的に、検出部が異常であるか否かが判定されるのである。
【0687】
さらに、この横力検出異常判定プログラムにおいては、すべての車輪について横力検出部150が正常である場合には、車両停止中、複数の車輪間において横力検出値SFDが互いにほぼ一致するという事実に着目し、すべての横力検出部150が正常であるか否かが判定される。
【0688】
具体的には、本実施形態においては、車両停止中、複数の車輪間において横力検出値SFDのばらつきが大きい場合に、すべての横力検出部150が正常であるわけではないと判定される。さらに具体的には、複数の車輪についての複数の横力検出値SFDのうちの最大値MAX(SFD)と最小値MIN(SFD)との差が設定値α2より大きい場合に、すべての横力検出部150が正常であるわけではないと判定される。
【0689】
なお付言すれば、本実施形態においては、車両停止中、各車輪ごとに、横力検出値SFDが設定値より大きいか否かが判定されるようにはなっていない。その理由は、傾斜した路面に車両が停止している場合には、たとえ各横力検出部150が正常であっても、横力検出値SFDが0ではない値となり、上記設定値に近づく傾向が生じ、そして、この傾向は、横力検出部150が異常であるか否かの判定の結果の信頼性を低下させる要因となるからである。
【0690】
次に、この横力検出異常判定プログラムの内容を図52を参照しつつ具体的に説明する。
【0691】
この横力検出異常判定プログラムの各回の実行時には、まず、S551において、前述のようにして、今回の異常判定が許可されるために成立すべき条件が成立したか否かが判定される。今回は、成立しないと仮定すれば、判定がNOとなり、直ちにこの横力検出異常判定プログラムの一回の実行が終了する。
【0692】
これに対し、今回は、上述の条件が成立したと仮定すれば、S551の判定がYESとなり、S552において、前述のいくつかの車両状態量センサのうち、横力推定値SFEを演算するために参照することが必要な信号を出力するものからその信号が取り込まれる。
【0693】
その後、S553において、その取り込まれた信号に基づき、前述の演算手法に従い、横力推定値SFEが演算される。この横力推定値SFEは、各車輪ごとに、車両における各車輪の位置を考慮して演算される。続いて、S554において、各車輪ごとに、演算部12から、横力検出値SFDが取り込まれる。
【0694】
その後、S555において、各車輪ごとに、前記演算された横力推定値SFEと上記取り込まれた横力検出値SFDとの差が設定値α1より小さいか否かが判定される。今回は、すべての車輪につき、その差が設定値α1より小さいと仮定すれば、判定がYESとなり、S556において、操舵角センサ256からの信号等に基づき、車両旋回中であるか否かが判定される。
【0695】
今回は、車両旋回中であると仮定すれば、S556の判定がYESとなり、S557において、右前輪の横力検出値SFDfrと左前輪の横力検出値SFDflとの積が0より大きいか否か、すなわち、それら両検出値の符号が互いに同じであるか否かが判定される。今回は、その積が0より大きいと仮定すれば、判定がYESとなり、S558に移行する。
【0696】
このS558においては、S557におけるに準じて、右後輪の横力検出値SFDrrと左後輪の横力検出値SFDrlとの積が0より大きいか否か、すなわち、それら両検出値の符号が互いに同じであるか否かが判定される。今回は、その積が0より大きいと仮定すれば、判定がYESとなり、S559に移行する。
【0697】
これに対し、今回は、車両旋回中ではないと仮定すれば、S556の判定がNOとなり、S557およびS558がスキップされてS559に移行する。
【0698】
いずれの場合にも、このS559においては、車輪速度センサ258からの信号等に基づき、車両停止中であるか否かが判定される。今回は、車両停止中ではないと仮定すれば、判定がNOとなり、S560において、今回は、すべての車輪について横力検出部150が正常であると判定される。以上で、この横力検出異常判定プログラムの一回の実行が終了する。
【0699】
これに対し、今回は、車両停止中であると仮定すれば、S559の判定がYESとなり、S561において、すべての車輪についてのすべての横力検出値SFDの最大値MAX(SFD)と最小値MIN(SFD)との差が設定値α2より大きいか否かが判定される。今回は、設定値α2より大きくはないと仮定すれば、判定がNOとなり、S560を経てこの横力検出異常判定プログラムの一回の実行が終了する。
【0700】
また、S555,S557もしくはS558の判定がNOであるかまたはS561の判定がYESである場合には、S562において、少なくとも1つの横力検出部150が異常であると判定される。以上で、この横力検出異常判定プログラムの一回の実行が終了する。
【0701】
以上の説明から明らかなように、本実施形態においては、少なくとも操舵角センサ256が、前記(22)項における「車両状態量センサ」の一例を構成し、判定部360のうち図52のS552ないしS555を実行するための部分が、同項における「第4異常判定手段」の一例、前記(23)項における「手段」の一例、および前記(24)項における「手段」の一例を構成しているのである。
【0702】
さらに、本実施形態においては、操舵角センサ256が、前記(25)項における「操作状態量センサ」の一例を構成し、判定部360のうち図52のS552ないしS555を実行するための部分が、同項における「手段」の一例を構成しているのである。
【0703】
さらに、本実施形態においては、判定部360のうち図52のS556ないしS558を実行するための部分と、S559およびS561を実行するための部分とがそれぞれ、前記(35)項における「手段」の一例を構成しているのである。
【0704】
さらに、本実施形態においては、判定部360のうち図52のS556ないしS558、S559およびS561を実行するための部分が、前記(42)項における「手段」の一例を構成しているのである。
【0705】
さらに、本実施形態においては、判定部360のうち図52のS551を実行するための部分が、前記(43)項における「手段」の一例を構成しているのである。
【0706】
次に、本発明の第8実施形態を説明する。ただし、本実施形態は、第4実施形態と共通する要素が多く、異なるのは、検出器による上下力の検出についての異常判定に関する要素のみであるため、異なる要素についてのみ詳細に説明し、共通する要素については同一の符号を使用することによって詳細な説明を省略する。
【0707】
図53に示すように、本実施形態においては、第4実施形態に対し、判定部254に代えて判定部380が設けられている。この判定部380は、検出器10による上下力VFの検出についての異常判定は、図54にフローチャートで概念的に表されている上下力検出異常判定プログラムの実行によって行うように構成されている。
【0708】
さらに、判定部380は、検出器10による横力SFの検出についての異常判定は、図17に示されている横力検出異常判定プログラムと同じプログラムの実行によって行うように構成されている。
【0709】
さらに、判定部380は、検出器10による前後力LFの検出についての異常判定は、図18に示されている前後力検出異常判定プログラムと同じプログラムの実行によって行うように構成されている。
【0710】
本実施形態においては、さらに、図53に示すように、前記操舵角センサ256が省略されるとともに、前記車輪速度センサ258に加えて、前述の前後加速度センサ332、横加速度センサ334およびホイールシリンダ圧センサ340と、サスペンションストロークセンサ384とが設けられている。
【0711】
ここに、サスペンションストロークセンサ384は、各車輪ごとに設けられ、各車輪を車体に変位可能に連結するサスペンションのストロークを検出するセンサである。そのストロークは、車体と各車輪との上下方向距離を反映し、よって、各車輪の上下力VFを反映する。
【0712】
なお付言すれば、上下力VFは、前記上下加速度センサ336により検出された上下加速度Gzを用いて推定することも可能であり、また、車両のサスペンションが、車高またはショックアブソーバの減衰力が作動流体により変化するエア式または液圧式である場合には、その作動流体の圧力を検出する作動流体圧センサによる検出値を用いて推定することも可能である。
【0713】
本実施形態においては、それらセンサ258,332,334,340および384はそれぞれ、当該タイヤ作用力検出装置から独立して、同じ車両の状態量を検出する車両状態量センサの一例を構成している。
【0714】
ここで、図54を参照しつつ上下力検出異常判定プログラムを説明する。
【0715】
まず、概略的に説明すれば、この上下力検出異常判定プログラムにおいては、第7実施形態における横力検出異常判定プログラムにおけると同様に、前記自動制御の実行中や、前記非通常旋回走行中には、上下力VFの実際値が時間と共に頻繁に変動する可能性が高いため、上下力検出部170が異常であるか否かの判定が禁止される。
【0716】
さらに、この上下力検出異常判定プログラムにおいては、前記車両状態量センサからの信号に基づく上下力推定値VFEと、上下力検出部170からの信号に基づく上下力検出値VFDとが互いに整合しない場合に、上下力検出部170が異常であると判定される。本実施形態においても、第7実施形態におけると同様に、各車輪ごとに個別に、タイヤ作用力の推定値と検出値とが互いに比較されることにより、上下力検出部170が異常であるか否かが判定される。
【0717】
ここに、上下力推定値VFEは、車両における垂直荷重の前後方向および横方向への移動量を考慮するために、前後加速度Gxと横加速度Gyとを用いて推定することが可能である。
【0718】
前後加速度Gxは、前後加速度センサ332により検出したり、車速Vまたは車輪速度センサ258により検出された車輪速度VWを用いて推定したり、ホイールシリンダ圧センサ340により検出されたホイールシリンダ圧PW(制動力を反映する物理量)を用いて推定することが可能である。
【0719】
これに対し、横加速度Gyは、第7実施形態におけると同様にして取得することが可能である。
【0720】
上下力推定値VFEは、さらに、各車輪ごとに、サスペンションストロークセンサ384により検出されたサスペンションストロークを用いて推定することも可能である。
【0721】
本実施形態においては、上下力検出部170が異常であるか否かの判定のために用いられる上下力検出値VFDとして、上下力検出部170による検出値がそのまま用いられる。上下力VFの絶対量を用いてその異常判定が行われるのである。
【0722】
しかし、上下力VFの相対量を用いてその異常判定を行うことが可能である。例えば、荷重移動が生じない車両停止中には、各車輪ごとに、上下力検出値VFDを取得し、その取得値を基準値(仮想ゼロ点)とする一方、異常判定中には、各車輪ごとに、上下力検出値VFDを取得し、その取得値の、上記基準値に対する倍率(差でも可)を演算し、その演算された倍率を用いて、上下力検出部170が異常であるか否かの判定を行うことも可能である。
【0723】
また、上下力推定値VFEと上下力検出値VFDとが互いに整合するか否かの判定については、それら上下力推定値VFEと上下力検出値VFDとの差が設定値β1より大きい場合に、それらは互いに整合しないと判定される。
【0724】
ただし、それら上下力推定値VFEと上下力検出値VFDとの比が設定範囲を超える場合に、それらは互いに整合しないと判定することが可能である。
【0725】
さらに、この上下力検出異常判定プログラムにおいては、各車輪について上下力検出部170が正常である場合には、車両停止中、各車輪について上下力検出値VFDがとり得る範囲が限定されるという事実に着目し、各上下力検出部170が正常であるか否かが判定される。
【0726】
具体的には、本実施形態においては、車両が、最も軽い積載状態(例えば、運転者のみが乗車している軽積状態)と、最も重い積載状態(例えば、車両の定員全員がその車両に乗車している定積状態において荷物も積載した状態)との間にある場合に、各車輪の上下力VFがとり得る範囲が設定される。
【0727】
さらに、本実施形態においては、各車輪の上下力検出値VFDがその設定範囲を超えた場合には、その車輪の上下力検出部170が異常であると判定される。
【0728】
次に、この上下力検出異常判定プログラムの内容を図54を参照しつつ具体的に説明する。
【0729】
この上下力検出異常判定プログラムの各回の実行時には、まず、S581において、前述のようにして、今回の異常判定が許可されるために成立すべき条件が成立したか否かが判定される。今回は、成立しないと仮定すれば、判定がNOとなり、直ちにこの上下力検出異常判定プログラムの一回の実行が終了する。
【0730】
これに対し、今回は、上述の条件が成立したと仮定すれば、S581の判定がYESとなり、S582において、前述のいくつかの車両状態量センサのうち、上下力推定値VFEを演算するために参照することが必要な信号を出力するものからその信号が取り込まれる。
【0731】
その後、S583において、その取り込まれた信号に基づき、前述の演算手法に従い、上下力推定値VFEが演算される。この上下力推定値VFEは、各車輪ごとに演算される。続いて、S584において、各車輪ごとに、演算部12から、上下力検出値VFDが取り込まれる。
【0732】
その後、S585において、各車輪ごとに、前記演算された上下力推定値VFEと上記取り込まれた上下力検出値VFDとの差が設定値β1より小さいか否かが判定される。今回は、すべての車輪につき、その差が設定値β1より小さいと仮定すれば、判定がYESとなり、S586に移行する。
【0733】
このS586においては、車輪速度センサ258からの信号等に基づき、車両停止中であるか否かが判定される。今回は、車両停止中ではないと仮定すれば、判定がNOとなり、S587において、今回は、すべての車輪について上下力検出部170が正常であると判定される。以上で、この上下力検出異常判定プログラムの一回の実行が終了する。
【0734】
これに対し、今回は、車両停止中であると仮定すれば、S586の判定がYESとなり、S589において、すべての車輪についてのすべての上下力検出値VFDが前記設定範囲内にあるか否か、すなわち、その設定範囲の下限値β2と上限値β3との間にあるか否かが判定される。今回は、設定範囲にあると仮定すれば、判定がYESとなり、S587を経てこの上下力検出異常判定プログラムの一回の実行が終了する。
【0735】
また、S585またはS589の判定がNOである場合には、S588において、少なくとも1つの上下力検出部170が異常であると判定される。以上で、この上下力検出異常判定プログラムの一回の実行が終了する。
【0736】
以上の説明から明らかなように、本実施形態においては、車輪速度センサ258、前後加速度センサ332、横加速度センサ334、ホイールシリンダ圧センサ340およびサスペンションストロークセンサ384がそれぞれ、前記(22)項における「車両状態量センサ」の一例を構成し、判定部380のうち図54のS582ないしS585、S587およびS588を実行するための部分が、同項における「第4異常判定手段」の一例、前記(23)項における「手段」の一例、および前記(24)項における「手段」の一例を構成しているのである。
【0737】
次に、本発明の第9実施形態を説明する。ただし、本実施形態は、第1実施形態と共通する要素が多く、異なるのは、検出器による前後力、横力および上下力の検出についての異常判定に関する要素のみであるため、異なる要素についてのみ詳細に説明し、共通する要素については同一の符号を使用することによって詳細な説明を省略する。
【0738】
図55に示すように、本実施形態においては、第1実施形態に対し、判定部14に代えて判定部400が設けられている。この判定部380は、検出器10による前後力LF、横力SFおよび上下力VFの検出についての異常判定を総合的に、図56にフローチャートで概念的に表されている総合的異常判定プログラムの実行によって行うように構成されている。
【0739】
ここで、図56を参照しつつ総合的異常判定プログラムを説明する。
【0740】
まず、概略的に説明すれば、この総合的異常判定プログラムにおいては、第7実施形態における横力検出異常判定プログラムにおけると同様に、前記自動制御の実行中や、前記非通常旋回走行中には、前後力LF、横力SFおよび上下力VFの各実際値が時間と共に頻繁に変動する可能性が高いため、前後力検出部130、横力検出部150および上下力検出部170が異常であるか否かの判定が禁止される。
【0741】
さらに、この総合的異常判定プログラムにおいては、各車輪の検出器10の全体が正常であれば、それにより検出される前後力LFと横力SFと上下力VFとの間に、タイヤの摩擦円に関連する一定の関係が成立するという事実に着目するごとに、複数の検出器10については個別に、前後力検出部130と横力検出部150と上下力検出部170とについては総合的に、検出器10に異常があるか否かが判定される。
【0742】
具体的には、本実施形態においては、各車輪の検出器10の全体が正常であれば、それにより検出された前後力LFと横力SFとの合力(ベクトル和)が、検出された上下力VFと、路面−タイヤ間の最大摩擦係数μMAXとの積を超えることはないという事実に着目される。ここに、合力の大きさは、タイヤの摩擦円の実際の半径RACTに相当し、一方、上下力VFと最大摩擦係数μMAXとの積はタイヤの摩擦円の理論的な最大半径RMAXに相当する。
【0743】
次に、この総合的異常判定プログラムの内容を図56を参照しつつ具体的に説明する。
【0744】
この総合的異常判定プログラムの各回の実行時には、まず、S701において、前述のようにして、今回の異常判定が許可されるために成立すべき条件が成立したか否かが判定される。今回は、成立しないと仮定すれば、判定がNOとなり、直ちにこの総合的異常判定プログラムの一回の実行が終了する。
【0745】
これに対し、今回は、上述の条件が成立したと仮定すれば、S701の判定がYESとなり、S702において、各車輪ごとに、演算部12から、対応する検出器10により検出された前後力LFと横力SFと上下力VFとが取り込まれる。
【0746】
その後、S703において、信号処理装置222のコンピュータのROMから、各車輪の最大摩擦係数μMAXが取り込まれる。さらに、その取り込まれた最大摩擦係数μMAXと、同じ車輪に関して上記取り込まれた上下力VFとの積として、各車輪のタイヤ摩擦円の理論最大半径RMAXが演算される。
【0747】
続いて、S704において、前記取り込まれた前後力LFと横力SFとの合力として、各車輪のタイヤ摩擦円の実際半径RACTが演算される。
【0748】
その後、S705において、各車輪ごとに、上記演算された理論最大半径RMAXが、上記演算された実際半径RACT以上であるか否かが判定される。今回は、ある車輪につき、理論最大半径RMAXが実際半径RACT以上であると仮定すれば、判定がYESとなり、S706において、そのある車輪につき、検出器10が正常であると判定される。その検出器10のうちの前後力検出部130も横力検出部150も上下力検出部170も正常であると判定されるのである。
【0749】
以上で、この総合的異常判定プログラムの一回の実行が終了する。
【0750】
これに対し、ある車輪につき、理論最大半径RMAXが実際半径RACT以上ではないと仮定すれば、S705の判定がNOとなり、S707において、そのある車輪につき、検出器10が異常であると判定される。その検出器10のうちの前後力検出部130と横力検出部150と上下力検出部170との少なくとも1つが異常であると判定されるのである。
【0751】
以上で、この総合的異常判定プログラムの一回の実行が終了する。
【0752】
以上の説明から明らかなように、本実施形態においては、判定部400のうち、図56におけるS702ないしS707を実行するための部分が、前記(46)項における「手段」の一例、および前記(47)項における「手段」の一例を構成しているのである。
【0753】
次に、本発明の第10実施形態を説明する。本実施形態は、車両の制動トルク検出装置の異常検出装置に関するものであり、以下、それら制動トルク検出装置と異常検出装置とを含むブレーキ制御装置を備えた液圧ブレーキ装置を図面に基づいて詳細に説明する。
【0754】
図57には、その液圧ブレーキ装置が系統図で示されている。同図においては、符号1010がマスタシリンダを示し、符号1012がブレーキ操作部材としてのブレーキペダルを示し、符号1014がブースタを示している。
【0755】
マスタシリンダ1010は2つの加圧ピストンを含むタンデム式であり、加圧ピストンのそれぞれの前方の加圧室は、液通路1016,1018によってそれぞれ前輪側および後輪側のブレーキシリンダ1020,1022と接続されている。
【0756】
ブレーキペダル1012が踏み込まれると、ブースタ1014が作動させられ、それにより、マスタシリンダ1010の各加圧ピストンが前進させられる。その結果、各加圧室に、ブレーキ操作力がブースタ1014によって倍力された高さの液圧が発生させられる。ブレーキシリンダ1020,1022の液圧によりブレーキ1023,1024が作用させられ、前輪1026および後輪1027の回転が抑制される。このように、ブレーキ1023,1024は、ブレーキシリンダ1020,1022の液圧により作用させられる液圧ブレーキなのである。
【0757】
本実施形態においては、その液圧ブレーキ装置が前輪側のブレーキ系統と後輪側のブレーキ系統との2系統を有するように構成されている。前輪側のブレーキ系統と後輪側のブレーキ系統とでは構造が共通するため、以下、その構造を前輪側のブレーキ系統について代表的に説明することにより、後輪側のブレーキ系統についての説明を省略する。
【0758】
液通路1016は主液通路1030と2つの分岐通路1032とにより構成されている。主液通路1030には液圧制御弁1034が設けられ、それら分岐通路1032にはそれぞれ保持弁1036が設けられる。
【0759】
各保持弁1036と並列に、ブレーキシリンダ側からマスタシリンダ側への作動液の流れは許容するがその逆向きの流れは阻止する逆止弁1037が設けられている。この逆止弁1037により、ブレーキ1023の作用解除時に、ブレーキシリンダ1020の作動液のマスタシリンダ1010への戻りが促進される。
【0760】
ブレーキシリンダ1020と減圧用リザーバ1038とが減圧通路1039によって互いに接続されている。その減圧通路1039には減圧弁1040が設けられる。保持弁1036および減圧弁1040によって個別液圧制御弁装置1042が構成される。
【0761】
保持弁1036および減圧弁1040は共に、コイルへの供給電流のON・OFFにより開閉させられる電磁開閉弁であるが、保持弁1036は、電流が供給されない場合に開状態にある常開弁であり、一方、減圧弁1040は、電流が供給されない場合に閉状態にある常閉弁である。
【0762】
図58に示すように、液圧制御弁1034は、弁子1050と弁座1052とを有するシーティング弁1054と、コイル1056とを含むように構成されている。この液圧制御弁1034は、コイル1056に電流が供給されない間は、弁子1050が弁座1052からスプリング1058の付勢力によって離間させられる開状態にある。
【0763】
コイル1056に電流が供給されると、弁子1050を弁座1052に着座させる方向の電磁駆動力F1が作用する。シーティング弁1054には、弁子1050を弁座1052から離間させる方向に、弁子1050の前後の差圧に応じた差圧作用力F2と、スプリング1058の付勢力F3とが作用する。それら電磁駆動力F1と差圧作用力F2と付勢力F3との関係によって弁子1050の弁座1052に対する相対位置が決まる。
【0764】
弁子1050の前後の差圧は、液圧制御弁1034のブレーキシリンダ側(図58において「B/C SIDE」で表す。)の液圧とマスタシリンダ側(同図において「M/C SIDE」で表す。)の液圧との差を意味する。したがって、その前後の差圧は、個別液圧制御弁装置1042が図57に示す原位置にある状態(液圧制御弁1034のブレーキシリンダ側のポートがブレーキシリンダ1022に連通する状態)においては、ブレーキシリンダ1020の液圧とマスタシリンダ1010の液圧との差に等しいと考えることができる。
【0765】
スプリング1058の付勢力F3の大きさは決まっているため、コイル1056への供給電流の制御により、上述の差圧を制御することが可能である。よって、マスタシリンダ1010の液圧に対するブレーキシリンダ1020の液圧の増分を制御することができる。
【0766】
コイル1056に供給される電流に応じて発生させられる電磁駆動力F1が差圧作用力F2および付勢力F3に対して大きい場合には、シーティング弁1054は閉状態にある。この状態においては、ブレーキシリンダ1020がマスタシリンダ1010から遮断される。
【0767】
図57に示すように、液圧制御弁1034と並列に、マスタシリンダ側からブレーキシリンダ側への作動液の流れは許容するがその逆向きの流れは阻止する逆止弁1059が設けられる。これにより、液圧制御弁1034が閉状態にあっても、マスタシリンダ1010の液圧がブレーキシリンダ1020の液圧より高くなると、マスタシリンダ1010からブレーキシリンダ1020への作動液の流れが許容される。
【0768】
減圧用リザーバ1038からは、ポンプ通路1080が延び出させられ、主液通路1030のうち液圧制御弁1034よりブレーキシリンダ側の部分に接続される。ポンプ通路1080の途中には、ポンプ1082,逆止弁1084,1085,1086およびダンパ1088が設けられる。ポンプ1082はポンプモータ1090によって駆動される。
【0769】
ポンプ通路1080のうち2つの逆止弁1084,1085の間の部分にマスタシリンダ1010から延び出させられた作動液供給通路1092が接続されている。本実施形態においては、その作動液供給通路1092が、主液通路1030のうち液圧制御弁1034よりマスタシリンダ側の部分から延び出させられている。
【0770】
作動液供給通路1092には流入制御弁1094が設けられる。この流入制御弁1094は、コイルへの供給電流のON・OFFにより開閉させられる電磁開閉弁であり、電流が供給されない場合に閉状態にある常閉弁である。
【0771】
ポンプ1082の作動状態において流入制御弁1094が開状態にされると、ポンプ1082によって作動液がマスタシリンダ1010から汲み上げられる。この場合には、作動液を減圧用リザーバ1038から汲み上げる場合より、同じ高さのポンプ吐出圧を実現するためにポンプモータ1090によって消費される電力を容易に低減させることができる。
【0772】
これらポンプ1082,ポンプモータ1090等によって加圧装置1096が構成される。ポンプ1082は、2つのブレーキ系統の各々に設けられるが、本実施形態においては、ポンプモータ1090が2つの加圧装置1096に共通とされる。
【0773】
図59および図60に示すように、本実施形態においては、前輪および後輪のブレーキ1023,1024(図59および図60においては、前輪のブレーキ1023のみが代表的に示されている。)は、ブレーキ回転体がディスクロータ1110であるディスクブレーキとされている。また、ブレーキ1023,1024に対応して制動トルク検出装置1112がそれぞれ設けられる。以下、その構造を前輪のブレーキ1023について代表的に説明することにより、後輪のブレーキ1024についての説明を省略する。
【0774】
ディスクブレーキ1023においては、ブレーキ本体1114が車体側固定部材1116に回動可能、すなわち、ディスクロータ1110の周方向にほぼ沿って移動可能に保持されている。本実施形態においては、ディスクブレーキ1023がオポーズド型であり、キャリパ固定型である。キャリパは、直接車体側固定部材1116に保持されるとともに、ブレーキ本体1114を構成する。
【0775】
ディスクロータ1110は、車輪と共に回転可能なアクスルハブ1120に相対回転不能に固定されている。これに対し、ブレーキ本体1114は、アクスルハブ1120に対して相対回転可能なステアリングナックルに相対回転不能に取り付けられた部材である車体側固定部材1116にリンク機構1118を介して取り付けられる。
【0776】
なお、車体側固定部材1116は、例えば、車輪が前輪である場合には、ステアリングナックルまたはこれに相対回転不能に取り付けられた部材とし、後輪である場合には、リヤアクスルハウジングまたはこれに相対回転不能に取り付けられた部材とすることができる。
【0777】
ディスクブレーキ1023は、ディスクロータ1110の両側に設けられた一対のブレーキシリンダ1020c,1020d(以下、ブレーキシリンダ1020cとブレーキシリンダ1020dとを区別する必要がない場合には、単に、「ブレーキシリンダ20」と称する。)を含んでいる。ブレーキシリンダ1020c,1020dのシリンダボア1125c,1125dにはそれぞれピストン1128c,1128dが液密かつ摺動可能に嵌合されて、液圧室1130c,1130dが形成される。
【0778】
ピストン1128c,1128dとディスクロータ1110との間には、摩擦係合部材としてのパッド1132c,1132dが配設されている。パッド1132c,1132dはそれぞれ裏板1136c,1136dにより支持されている。裏板1136c,1136dは、キャリパ1114に固定の、軸方向に延びるピン1140に挿通させられることにより、キャリパ1114に対して軸方向に移動可能かつ半径方向に移動不能に保持される。
【0779】
リンク機構1118は、リンク部材1142と、このリンク部材1142をキャリパ1114および車体側固定部材1116にそれぞれ、ディスクロータ1110の軸線Lの回りに回動可能に連結するピン1144,1145とを含むように構成されている。キャリパ1114は、前述のように、車体側固定部材1116にほぼ周方向に相対移動可能に保持される。
【0780】
図60に示すように、制動トルク検出装置1112は、液圧発生装置1148、この液圧発生装置1148に発生させられた液圧を検出するトルク用液圧センサ1150、演算処理部等を備えている。
【0781】
液圧発生装置1148は、キャリパ1114の両側に設けられた液圧シリンダ1151,1152を備えている。図60において右側の液圧シリンダ1151は、同図においてアーチ状の矢印で示す方向(正方向)にディスクロータ1110が回転することに連られてキャリパ1114が正方向に回動させられるのに伴って作動させられる。これに対し、左側の液圧シリンダ1152は、ディスクロータ1110の逆方向の回転に連られてキャリパ1114が逆方向に回動させられるのに伴って作動させられる。すなわち、いずれの液圧シリンダ1151,1152も、一方向作動式とされているのである。
【0782】
本実施形態においては、液圧シリンダ1151,1152がそれぞれ、液圧シリンダ1151,1152の軸線Mの方向と、ブレーキシリンダ1020c,1020dによりパッド1132c,1132dがディスクロータ1110に押し付けられる位置におけるそのディスクロータ1110の軸線Lに関する接線の方向とが互いに平行となるように配置される。
【0783】
液圧シリンダ1151,1152はいずれも、前記車体側固定部材1116に固定されたシリンダ本体1154と、そのシリンダ本体1154に液密かつ摺動可能に嵌合されたピストン1156とを備えている。前述の一方向作動を実現するために、キャリパ1114とピストン1156のピストンロッド1158とが連携部材1160により互いに連携させられる。連携部材1160は、キャリパ114から各液圧シリンダ1151,1152のピストン1156に力を、キャリパ1114の特定の一方向の移動時には伝達するが、その逆方向の移動時には伝達しない。
【0784】
連携部材1160は、概してC字を成しており、一端部においてはキャリパ1114に、それの横運動平面と同じ平面上で回動可能に保持され、他端部においては、ピストンロッド1158に形成された係合部1162に係合させられる。係合部1162は、本実施形態においては、軸線Mと平行な方向に延びる溝を有している。その溝は途中で閉塞されている。
【0785】
ピストン1156の前方の液圧室1164には、リターンスプリング1166が配設され、ピストン1156を図60に示す後退端位置に向かって付勢する。ピストン1156の後退端位置はストッパ1168によって規定される。
【0786】
以下、液圧シリンダ1151,1152の作動を液圧シリンダ1151を例にとり説明する。
【0787】
後退端位置にあるピストン1156に対し、連携部材1160が図60に示す基準位置から同図において左方に移動(前進)させられると、連携部材1160が、係合部1162に形成された前述の溝の閉塞部に係合する。その後、連携部材1160がさらに前進させられると、ピストン1156が液圧室1164を加圧しつつ前進させられる。その液圧室1164には、キャリパ1114から連携部材1160を経てピストン1156に伝達された力の大きさに応じた高さの液圧が発生させられる。
【0788】
これに対し、後退端位置にあるピストン1156に対し、連携部材1160が図60に示す基準位置から同図において右方に移動(後退)させられると、連携部材1160と、係合部1162に形成された溝の閉塞部との係合が解除される。その結果、ピストン1156を後退端位置に残したまま、連携部材1160が単独で後退させられる。
【0789】
よって、この状態においては、キャリパ1114から連携部材1160を経てピストン1156に力が伝達される状態が解除される。これにより、キャリパ1114から液圧シリンダ1151に不要な負荷が加えられずに済む。
【0790】
なお、ピストン1156の前進端位置は、ピストン1156がシリンダ本体1154の底部または図示しないストッパに当接することによって規定される。
【0791】
液圧シリンダ1151,1152のそれぞれの液圧室1164からは、液通路としての個別通路1170,1172が延び出させられ、それらは合流通路1174において合流させられる。
【0792】
合流通路1174には、トルク用液圧センサ1150と、ダンパ1180と、流通制限装置1182とが設けられる。
【0793】
トルク用液圧センサ1150は、液圧シリンダ1151,1152の各液圧室1164の液圧を検出するセンサであり、それら両液圧シリンダ1151,1152に共通に設けられている。本実施形態においては、液圧シリンダ1151に発生させられた液圧も、液圧シリンダ1152に発生させられた液圧も、同じトルク用液圧センサ1150によって検出される。
【0794】
流通制限装置1182においては、液圧室1164とリザーバ1176との間において、リリーフ弁1190と、流出阻止弁1192と、逆止弁1194とが互いに並列に接続されている。
【0795】
リリーフ弁1190は、液圧室1164の液圧が設定圧を超えようとすると、液圧室1164からリザーバ1176への作動液の流れを許容する。このリリーフ弁1190によれば、トルク用液圧センサ1150への過負荷を回避することができる。
【0796】
流出阻止弁1192は、オリフィス1124と共同することにより、液圧室1164から排出される作動液の流量を制限するために設けられている。
【0797】
なお、流出阻止弁1192により、合流通路1174がリザーバ1176に接続されるにもかかわらず、その合流通路1174において液圧を検出することが可能となっている。
【0798】
流出阻止弁1192は、リザーバ1176の側の低圧ポート1200と液圧室1164の側の高圧ポート1202とが形成されたハウジング1204を備えている。流出阻止弁1192は、さらに、大径部と小径部とを有する段付きピストン1206を、ハウジング1204に液密かつ摺動可能に嵌合された状態で備えている。
【0799】
段付きピストン1206とハウジング1204との間には、スプリング1208が配設され、これにより、段付きピストン1206が後退方向(図60においては下方)に付勢される。
【0800】
段付きピストン1206の小径部とハウジング1204との間に液室1210が形成されている。この液室1210と合流通路1174とには、高圧ポート1202に連通した液室1211をバイパスするバイパス通路1212が接続されている。バイパス通路1212に前記オリフィス1214が設けられる。
【0801】
流出阻止弁1192においては、液室1210とリザーバ1176との間に、常開の開閉弁部が形成される。この開閉弁部は、ピストン1206の小径部の先端部に形成された弁子1216と、ハウジング1204のうち低圧ポート1200を形成する貫通穴の縁面に形成された弁座とによって構成される。
【0802】
液圧シリンダ1151,1152から流出する作動液の流量が設定値より少ない状態においては、オリフィス1214の流通抵抗が小さく、それの前後における差圧が小さいため、流出阻止弁1192の開閉弁部は開状態にある。この状態においては、液圧室1164の作動液は合流通路1174、バイパス通路1212、液室1210および低圧ポート1200を順に経てリザーバ1176に流出させられる。
【0803】
このような流出が許容されるため、液圧室1164内の作動液が温度上昇によってその容積が増加することがあっても、それに起因して、液圧室1164の液圧が上昇したり、液圧シリンダ1151,1152に過負荷が加えられずに済む。
【0804】
これに対し、液圧シリンダ1151,1152から流出する作動液の流量が設定値を超えようとすると、オリフィス1214の前後における差圧が上昇する結果、液室1211の液圧と液室1210の液圧との間に液圧差が生じる。
【0805】
この液圧差に基づき、段付きピストン1206にそれを図示の原位置から前進させようとする軸力が発生する。その軸力がスプリング1208の付勢力に打ち勝つに至ると、ピストン1206がスプリング1208の付勢力に抗して前進させられる。やがて、弁子1216が弁座1200に着座させられ、その結果、流出阻止弁1192が閉状態にされる。
【0806】
流出阻止弁1192は、ひとたび閉状態になると、液圧シリンダ側とリザーバ側との液圧差が設定値以下になるまで閉状態に保たれる。そのように、スプリング1208の付勢力、弁子1216(ピストン1206),弁座1200の形状等が設計される。
【0807】
逆止弁1194は、リザーバ1176から液圧室1164への作動液の流れは許容するがその逆向きの流れは阻止する。この逆止弁1194によれば、液圧室1164の負圧を回避することができる。
【0808】
ダンパ1180は、ハウジングに液密かつ摺動可能に嵌合されたピストン1220とスプリング1221とを含むように構成される。ハウジング内においてピストン1220の前方に容積室1222が形成されている。
【0809】
この容積室1222の液圧がスプリング1221のセット荷重より高くなると、容積室1222の容積が増加する方向にピストン1220が移動させられ、それにより、容積室1222に作動液が収容される状態となる。容積室1222には作動液が、スプリング1221の付勢力に見合った高さの液圧のもとに収容される。
【0810】
このように構成されたダンパ1180によれば、トルク用液圧センサ1150への過負荷を回避することができる。
【0811】
本実施形態においては、スプリング1221のセット荷重に対応する液圧がリリーフ弁1190のリリーフ圧より低く設定されており、通常は、リリーフ弁1190が開かれることはない。リリーフ弁1190は液圧回路の安全のために設けられているのである。
【0812】
また、液圧室1164の液圧がパルス的に上昇させられた結果、その液圧がスプリング1221のセット荷重に対応する液圧より高くなろうとすれば、それを減殺するように作動液がダンパ1180に収容される。したがって、ダンパ1180により、トルク用液圧センサ1150によって検出されるべき液圧の脈動を軽減することができる。
【0813】
以上、液圧発生装置1148および流通制限装置1182の構成および作動を説明したが、作動に関する包括的かつ経時的な説明については後述する。
【0814】
図61に示すように、上述の液圧ブレーキ装置のうちのブレーキ制御装置1230は、CPU1232,ROM1234およびRAM1236を含むコンピュータ、I/Oポート1238等を含む制御部1240と、複数の駆動回路256とを含むように構成されている。
【0815】
I/Oポート1238には下記のセンサ、スイッチ等が接続されている。
(1)前述のトルク用液圧センサ1150
(2)ブレーキペダル112の踏込みを検出するブレーキスイッチ1241
(3)ブレーキペダル112に加えられる踏力を検出する踏力センサ1242
(4)マスタシリンダ1010の液圧を検出するマスタシリンダ圧センサ1243
(5)各ブレーキシリンダ1020,1022の液圧を検出する複数のブレーキ圧センサ1244
(6)各車輪1026,1027の回転速度を検出する複数の車輪速センサ1245
(7)車両の走行速度である車速を検出する車速センサ1246
(8)車両の減速度を検出する減速度センサ1247
(9)駆動トルク検出装置1248
(10)車両の旋回状態を検出する旋回状態検出装置1249
(11)当該車両(自車両)と前方車両との相対位置関係を検出する相対位置関係検出装置1250
(12)車両の姿勢を検出する姿勢検出装置1251
(13)クルーズスイッチ1252
駆動トルク検出装置1248は、車両の駆動源から車輪に作用する本来の駆動トルクや重力に起因するみかけ上の駆動トルクを検出する装置である。ここで、本来の駆動トルクとみかけ上の駆動トルクとの関係を具体的に説明すれば、駆動源からの駆動トルクが車輪に作用していない場合には、本来の駆動トルクは0であり、これに対し、車両がほぼ水平な路面を走行している場合には、みかけ上の駆動トルクは0である。
【0816】
本来の駆動力は、車両の駆動源がエンジンを含む場合には、アクセル開度、スロットル開度、燃料噴射量等に基づいて検出することができ、また、電動モータを含む場合には、電動モータへの供給電流等に基づいて検出することができる。なお、それら物理量を取得することが必要である場合には、車両において駆動源から各車輪に駆動力を伝達する駆動力伝達装置の変速比を考慮することが望ましい。
【0817】
これに対し、重力に起因するみかけ上の駆動トルクは、車両が走行している路面の傾斜角度に基づいて検出することができる。傾斜角度は、車両の姿勢(前後方向の傾き)と車両減速度との少なくとも一方に基づいて検出することができる。例えば、車両の下り坂走行中には、車両の前傾角度が小さいほど下り坂の傾斜角度が小さく、また、その下り坂走行中に車両制動が行われた場合には、そのときの実際の車両減速度の、水平路走行中に同じ強さの車両制動によって車両に発生すべき車両減速度からの減少量が多いほど下り坂の傾斜角度が大きい。
【0818】
それらの事実を利用することにより、みかけ上の駆動トルクを検出することが可能である。
【0819】
旋回状態検出装置1249は、ヨーレイトセンサと横加速度センサと操舵角センサとの少なくとも1つを含むように構成される。必要なセンサの出力値に基づき、車両がスピン傾向にあるかドリフトアウト傾向にあるかを検出したり、車両に発生しているスピン傾向またはドリフトアウト傾向の強さを検出することが可能である。
【0820】
相対位置関係検出装置1250は、例えば、レーダ装置(レーザレーダ装置、ミリ波レーダ装置、超音波レーダ装置等)を含むように構成され、前方車両を検出することにより、自車両と前方車両との車間距離等、前方車輪に対する自車両の相対位置関係を検出する。また、車間距離の変化等により、自車両が前方車両に接近する速度を検出することが可能である。
【0821】
姿勢検出装置1251は、車高センサ、ヨーレイトセンサ、ピッチレイトセンサ、ロールレイトセンサ等の少なくとも1つを含むように構成される。必要なセンサの出力値に基づき、車両の姿勢の変化(例えば、鉛直線回り、前後方向に延びる水平線回り、横方向に延びる水平線回りの回動の状態)を検出する。
【0822】
車両姿勢の変化に着目すれば、車両における荷重移動量を取得することができる。その荷重移動量は、例えば、各車輪の接地荷重の、標準荷重からの増減量として検出することができる。
【0823】
クルーズスイッチ1252は、運転者がクルーズ制御を希望する場合に運転者により操作されるON・OFF式のスイッチであり、ON状態にある場合に、クルーズ制御が行われる。
【0824】
I/Oポート1238には、前述の保持弁1036,減圧弁1040,液圧制御弁1034,電動モータ1090,流通制御弁1094等が各駆動回路1256を介して接続される。
【0825】
ここで、通常制動中における液圧制御弁1034の制御を説明する。
【0826】
通常制動中のブースタ1014の助勢限界前においては、液圧制御弁1034に電流が供給されない。したがって、液圧制御弁1034は開状態にあり、ブレーキシリンダ1020,1022がマスタシリンダ1010に連通させられる。よって、マスタシリンダ1010の液圧がブレーキシリンダ1020,1022に伝達される。
【0827】
マスタシリンダ圧センサ1243による検出液圧がブースタ1014の助勢限界に対応する液圧に達すると、流通制御弁1094が開状態にされて、加圧装置1096が作動させられる。ブレーキシリンダ1020,1022に加圧装置1096の液圧が供給されるのであり、その液圧は液圧制御弁1034の制御により制御される。ブレーキシリンダ1020,1022の液圧は、踏力センサ1242によって検出された踏力(以下、「ブレーキ操作力」ともいう。)に基づいて決定された目標値(ブレーキパッド1136c,1136dをディスクロータ1110に押し付ける押付力の目標値)に近づくように制御される。
【0828】
本実施形態においては、ブースタ1014の助勢限界の前後を通じて、踏力とブレーキシリンダ圧との関係(サーボ比)が一定に保たれるように目標値が決定され、液圧制御弁1034が制御される。
【0829】
その制御を実行するために、図62にフローチャートで概念的に表されるブレーキ液圧制御プログラムが前記コンピュータにより繰返し(例えば、予め定められた設定時間ごとに)実行される。
【0830】
各回の実行時には、まず、ステップS1001(以下、単に「S1001」と略称する。他のステップについても同じとする。)において、ブレーキスイッチ1241がON状態にあるか否かが判定される。ON状態にあれば、S1003において、マスタシリンダ圧センサ1243による検出液圧が設定圧(ブースタ1014の助勢限界に対応する液圧)以上であるか否かが判定される。
【0831】
ブレーキスイッチ1241がOFF状態にあるか、または、ON状態にあってもマスタシリンダ圧が設定圧より低い場合には、S1002において、ブレーキシリンダ1020,1022がマスタシリンダ1010に連通させられた状態に保たれる。各保持弁1036および各減圧弁1040は図57に示す原位置に保たれ、液圧制御弁1034には電流が供給されない。
【0832】
マスタシリンダ圧が設定圧以上である場合には、S1004ないしS1006において、上述のように、ブレーキシリンダ圧が、踏力がブースタ1014が助勢限界に達する前と同様なサーボ比で倍力された大きさに対応する高さになるように制御される。
【0833】
具体的には、S1004において、加圧装置1096が作動させられ、S1005において、流出阻止弁1094が開かれ、S1006において、踏力が検出され、S1007において、液圧制御弁1034に電流が供給されるとともにその供給電流Iが制御される。
【0834】
いずれの場合にも、以上で、このブレーキ液圧制御プログラムの一回の実行が終了する。
【0835】
各車輪の制動スリップ(制動時のスリップ)が過大になるとアンチロック制御が行われる。例えば、制動スリップ率が設定値以上になる等の予め定められたアンチロック制御開始条件が成立するとアンチロック制御が開始され、保持弁1036および減圧弁1040の開閉制御により、各車輪のブレーキシリンダ圧が、制動スリップ状態が適正な状態に保たれるように、各車輪ごとに互いに独立に制御される。
【0836】
アンチロック制御が行われるのは、路面μが低い場合が多く、マスタシリンダ圧が設定圧に達する以前に行われることが多い。その場合には、液圧制御弁1034が開状態のままで、アンチロック制御が行われることになる。
【0837】
これに対し、駆動車輪の駆動スリップ(駆動時のスリップ)が過大になるとトラクション制御が行われる。予め定められたトラクション制御開始条件が成立すると、トラクション制御が開始され、加圧装置1096の作動により、液圧制御弁1034への供給電流が予め定められた一定の値に保持された状態で、保持弁1036および減圧弁1040が開閉制御される。
【0838】
これにより、駆動車輪のブレーキシリンダ圧が駆動スリップ状態が適正な状態に保たれるように制御される。トラクション制御においては、駆動車輪に本来の駆動トルクが加えられた状態でブレーキが作用させられることになる。
【0839】
車両の旋回状態が設定旋回状態より不安定側にある場合に旋回制御が行われる。例えば、スピン傾向が設定傾向より強い場合にはスピン抑制制御が行われ、ドリフトアウト傾向が設定傾向より強い場合にはドリフトアウト抑制制御が行われる。それらスピン傾向とドリフトアウト傾向とのうち対応するものを抑制するヨーモーメントが車体に生じるように、各車輪のブレーキシリンダ圧が制御される。この制御は、ビークルスタビリティ制御と称される。
【0840】
このビークルスタビリティ制御が非ブレーキ作用時に行われる場合には、トラクション制御における場合と同様に、加圧装置1096の作動状態において、液圧制御弁1034への供給電流が予め定められた大きさとされた状態で、保持弁1036および減圧弁1040の開閉制御によって、各車輪のブレーキシリンダ圧が制御される。ビークルスタビリティ制御は駆動中に行われることもある。
【0841】
クルーズ制御においては、ブレーキシリンダ圧が、自車両と前方車両との相対位置関係が予め定められた関係に保たれるように制御される。例えば、それらの車間距離が設定距離より短くなった場合等、接近傾向が設定傾向より強くなった場合に、運転者によってブレーキ操作が行われなくても、ブレーキが自動で作動させられる。
【0842】
このクルーズ制御においては、各車輪1026,1027のブレーキシリンダ1020,1022の液圧が、保持弁1036および減圧弁1040の図57に示す原位置において、加圧装置1096が作動状態にされた状態で、液圧制御弁1034の制御により、4つの車輪について共通に制御される。それによって車両が減速させられ、相対位置関係を予め定められた関係に保つことができる。クルーズ制御は、運転者によってブレーキペダル1012が操作されていなくても、行われる。
【0843】
ブレーキ制御装置1230の電気系統が万一異常となった場合には、各電磁弁1036,1040,1094は図示する原位置に戻される。液圧制御弁1034は、それに電流が供給されなくなることにより、開状態にされ、その後、ブレーキ1023,1024は、マスタシリンダ1010の液圧により作用させられる。
【0844】
車輪の制動トルクは、トルク用液圧センサ1150による検出液圧に基づき、次式を用いて求められる。
TB=(Ac・Pc)・Rb
ただし、
TB:制動トルク
Ac:液圧シリンダ1151,1152におけるピストン1154の受圧面積
Pc:トルク用液圧センサ1150による検出液圧
Rb:ディスクロータ1110の中心からブレーキシリンダ1020,1022の中心までの距離、すなわち、等価半径(有効半径)
本実施形態においては、液圧シリンダ1151,1152の軸線Mと、ディスクロータ1110に押付力が作用する位置における接線とが互いに一致させられている。したがって、ディスクロータ1110とパッド1132c,1132dとの間の摩擦力の大きさと、液圧シリンダ1151,1152がキャリパ1114から受ける力(=Ac・Pc)と間の比例係数が1となる。よって、その力に等価半径Rbを掛けることによって制動トルクTBを求めることができる。
【0845】
以上の説明から明らかなように、本実施形態においては、ブレーキ制御装置1230のうち、トルク用液圧センサ1150による検出液圧に基づいて制動トルクTBを検出する部分によって前記演算処理部が構成されている。
【0846】
ここで、液圧発生装置1148の作動について説明する。
【0847】
非ブレーキ作用中においては、液圧シリンダ1151,1152は図60に示す原位置にある。この状態においては、液圧室1164に液圧が発生しない。
【0848】
ディスクロータ1110の正回転中にディスクブレーキ1023が作用させられると、キャリパ1114が正方向に回動させられ、それに伴って、液圧シリンダ1151が作動させられる。具体的には、連携部材1160により、ピストン1156がリターンスプリング1166の付勢力に抗して、液圧室1164の容積が減少する方向に前進させられる。その結果、液圧室1164に、ピストン1156に加えられる連携部材1160の引張力に応じた高さの液圧が発生させられる。
【0849】
液圧シリンダ1152においては、連携部材1160が係合部1162において、ピストン1156から離間する方向に、前記溝に沿って相対移動させられる。ピストン1156が移動させられないのであり、よって、液圧シリンダ1152は、非作用状態のままである。
【0850】
液圧シリンダ1151の液圧室1164に液圧が発生させられると、液圧室1164からリザーバ1176へ向かう作動液の流量が設定値より大きくなり、流出阻止弁1192が閉状態に切り換えられる。
【0851】
液圧シリンダ1152の液圧室1164の液圧が上昇させられれば、それに伴って液圧シリンダ1151の液圧も等圧状態で上昇させられるが、この際、液圧シリンダ1151のピストン1156は後退端位置にあり、これ以上後退させられることはない。2つの液圧シリンダ1151,1152と流出阻止弁1192との間における液通路の液圧は、トルク用液圧センサ1150によって検出される。
【0852】
ブレーキシリンダ1020の液圧が上昇したために、液圧シリンダ1151の液圧がダンパ1180のスプリング1221のセット荷重に対応する液圧より高くなろうとすると、容積室1222に作動液が収容される。それによって、トルク用液圧センサ1150に加わる負荷が過大になることを回避することができる。また、トルク用液圧センサ1150によって検出されるべき液圧における脈動が軽減されるため、車輪の制動トルクおよび制動力を精度に関して安定的に検出することができる。
【0853】
ディスクブレーキ1023におけるブレーキパッド1132c,1132dのディスクロータ1110への押付力が小さくなると、液圧シリンダ1151において、ピストン1156がリターンスプリング1166によって後退させられ、その結果、液圧室1164の容積が増加させられる。液圧室1164には、ダンパ1180およびリザーバ1176から作動液が補給されるため、負圧になることはない。
【0854】
液圧室1164の液圧がほぼ大気圧に復元されると、流出阻止弁1192が開状態に切り換えられる。
【0855】
以上、ディスクロータ1110の正回転中にディスクブレーキ1023が作動させられた場合を説明したが、ディスクロータ1110の逆回転中にディスクブレーキ1023が作動させられると、キャリパ1114が逆方向に回動させられる。それにより、液圧シリンダ1152が作用状態にされる。
【0856】
以上の説明から明らかなように、液圧シリンダ1151,1152を設けることによって、制動力を液圧に基づいて求めることも、制動トルクを液圧に基づいて求めることも可能となる。本実施形態においては、制動力または制動トルクが機械的に検出されるのではなく、液圧に変換されてその変換された液圧として検出されるようになっているため、制動トルクの検出値の信頼性を容易に向上させることができる。
【0857】
また、車両の前進中であっても後退中であっても(車輪が正回転中であっても逆回転中であっても)、制動トルクを検出することができる。
【0858】
上述のように、制動トルクは、押付力に応じた大きさを有しており、その制動トルクに応じて車両が減速させられる。一方、制動トルク検出装置1112による検出値(トルク用液圧センサ1150による検出液圧に対応)と押付力との間には一定の関係がある。押付力に基づいて推定された制動トルクの推定値(以下、「押付力に応じた制動トルク」と称する。)と制動トルク検出装置1112による検出値とは本来互いに一致するはずであり、制動トルク検出装置1112が正常である限り、それら両者間の差は非常に小さい。
【0859】
しかし、このような車両制動中に、車輪に駆動トルクが加えられると、車両減速度が押付力に応じた大きさにはならない。
【0860】
例えば、アクセル操作中にクルーズ制御が行われた場合には、駆動車輪には駆動源からの駆動トルクが加えられる一方、クルーズ制御による押付力が各車輪に加えられる。制動トルク検出装置1112による検出値は押付力に応じた大きさになるが、車両減速度は、クルーズ制御による押付力に応じた制動トルクからアクセル開度に応じた駆動源からの駆動トルクを引いた大きさに対応する大きさになる。
【0861】
すなわち、車両減速度と、制動トルク検出装置1112による検出値から駆動トルクを引いた値とが互いに対応させられることになるのである。制動トルク検出装置1112によって検出された制動トルクから駆動トルクを引いた値を減速度対応制動トルクまたは実効制動トルクと称する。
【0862】
また、坂道を走行中にブレーキペダル1012が操作された場合には、重力に起因するみかけ上の駆動トルクが車輪に加えられるため、アクセル操作中にクルーズ制御が行われる場合と同様に、車両減速度と、制動トルク検出装置1112による検出値とみかけ上の駆動トルクとの合成値とが互いに対応させられることになる。
【0863】
具体的には、車両が下り坂を走行している場合には、みかけ上の駆動トルクが制動トルクと逆向きに加えられるため、車両減速度と、制動トルクの検出値からみかけ上の駆動トルクを引いた値とが互いに対応させられる。これに対し、上り坂を走行している場合には、みかけ上の駆動トルクが制動トルクと同じ向きに加えられるため、車両減速度と、制動トルクの検出値と駆動トルクとの和とが互いに対応させられる。
【0864】
制動トルクは、押付力のみならず、路面μおよび接地荷重(それぞれ制動環境量の一例である)の影響も受ける。路面μが低い場合と通常の場合、すなわち、路面μが高い場合とでは、図73に示すように、路面μが低い場合の方が押付力と制動トルクとが比例関係にある押付力の領域が狭い。接地荷重についても同様であり、よって、接地荷重が小さいほど小さい押付力で、制動トルクが比例領域から逸脱して、車輪がスリップし易い状態に移行する。
【0865】
本実施形態においては、路面μが高く、かつ、接地荷重が標準である場合における制動トルクとブレーキ液圧(「ブレーキリンダ圧」ともいう。押付力に相当する。)との関係が適正関係として予め記憶されており、その適正関係が成立する車両走行状況において、制動トルク検出装置1112の異常の検出が行われるように設計されている。
【0866】
このように、本実施形態においては、異常検出が時期的に制限されることにより、路面μ、接地荷重等の制動環境量の影響をできる限り受けない状態で、制動トルク検出装置1112の異常の検出が行われるようになっており、具体的には、予め定められた異常検出許可条件が成立することを条件に行われるようになっている。
【0867】
その異常検出許可条件は、車両の直進走行状態において、ブレーキ操作が行われ、かつ、アンチロック制御等(押付力が運転者によるブレーキ操作状態とは関係ない大きさにされる制御)が行われていないときに成立する。アンチロック制御やビークルスタビリティ制御が行われていない場合には、路面が低μ路でないと考えることができる。それらの場合は、路面μや各車輪間の接地荷重の相違の影響を考慮する必要がない。
【0868】
以上説明した異常検出を実行するために、図63にフローチャートで概念的に表される異常検出プログラムが繰返し(例えば、予め定められた設定時間ごとに)実行される。
【0869】
各回の実行時には、まず、S1051において、上述の異常検出許可条件が成立したか否かが判定される。異常検出許可条件が成立しなかった場合には、直ちにこの異常検出プログラムの一回の実行が終了する。
【0870】
これに対し、異常検出許可条件が成立した場合には、S1052において、踏力センサ1242による検出値に基づいてブレーキペダル1012に加えられた運転者によるブレーキ操作力(踏力)が演算される。本実施形態においては、ブースタ1014の助勢限界の前後を通じて前記サーボ比が一定になるようにされているため、ブレーキ操作力とブレーキシリンダ圧との関係は、ブースタ1014の助勢限界の前後で変化しない。
【0871】
その後、S1053において、その演算されたブレーキ操作力に基づいて各車輪のブレーキシリンダ圧が推定される。続いて、S1054において、その推定されたブレーキシリンダ圧が押圧力の相当値として用いられることにより、各車輪の制動トルクが推定される。具体的には、前述の、制動トルクと押付力との間の適正関係に従い、押付力に応じた制動トルクの推定値が演算される。
【0872】
その後、S1055において、各車輪ごとに、制動トルク検出装置1112から制動トルク検出値が読み込まれ、続いて、S1056において、各車輪ごとに、駆動トルク検出装置1248から駆動トルク検出値が読み込まれる。駆動トルク検出値は0の場合もある。
【0873】
駆動トルクには、前述のように、駆動源からの本来の駆動トルクと重力に起因するみかけ上の駆動トルクとが存在するが、通常制動時には、運転者がアクセル操作部材を操作することは稀であり、駆動源からの本来の駆動トルクが駆動車輪に加えられることは殆どない。また、坂道(上り坂または下り坂)の走行中においては、重力に起因するみかけ上の駆動トルクが各車輪に加えられることになる。
【0874】
その後、S1057において、減速度対応制動トルクが演算される。車両駆動中における減速度対応制動トルクは、制動トルク検出値から駆動源からの本来の駆動トルクを引いた値に対応した大きさになる。また、坂道走行中に減速度対応制動トルクを演算するために、重力に起因するみかけ上の駆動トルクが、上り坂においては、制動トルク検出値に加えられる一方、下り坂においては、制動トルク検出値から引かれる。いずれの走行状態においても、制動トルク検出値と駆動トルクとに基づいて減速度対応制動トルクが演算される。
【0875】
続いて、S1058において、S1054においてブレーキシリンダ圧から推定された制動トルクである押付力対応制動トルクと制動トルク検出値との差が設定値α1より小さいか否かが判定される。設定値α1以上である場合には、S1059において、制動トルク検出装置1112が異常であると判定される。その原因には例えば、液圧発生装置1148の異常、トルク用液圧センサ1150の異常、前記演算処理部の異常等が考えられる。
【0876】
押付力対応制動トルクと制動トルク検出値との差が設定値α1より小さい場合には、S1060において、制動トルク検出装置1112による制動トルク検出値の最大値MAX値から最小値MIN値を引いた値が設定値α2より小さいか否かが判定される。設定値α2以上である場合には、S1059において、制動トルク検出装置1112が異常であると判定される。
【0877】
S1060は、制動トルク検出値の変動が大きい場合に、制動トルク検出装置1112が異常であると判定するために設けられている。このS1060においては、例えば、過去一定時間内に取得された複数の制動トルク検出値が記憶され、それら値の中から最大値MAX値と最小値MIN値とが選択される。
【0878】
制動トルク検出値の最大値MAX値から最小値MIN値を引いた値が設定値α2より小さい場合には、その後、S1061において、車両減速度に変換係数kを掛けた値と減速度対応制動トルクとの差が設定値α3より小さいか否かが判定される。設定値α3以上である場合には、S1059において、制動トルク検出装置1112が異常であると判定される。
【0879】
本実施形態においては、車両減速度と減速度対応制動トルクとの関係に基づいて制動トルク検出装置1112の異常が検出されるようになっているが、車両減速度に基づいて減速度対応制動トルクを推定し、その推定された減速度対応制動トルクと、制動トルク検出値と駆動トルク検出値との合成値(和または差)とが互いにほぼ一致するか否かに基づいて異常が検出される態様で本発明を実施することが可能である。この態様は、減速度対応制動トルクの推定値と検出値との関係に基づいて制動トルク検出装置1112の異常が検出される態様であると考えることもできる。いずれにしても、車両減速度と制動トルクとの関係に基づいて駆動トルクを考慮して制動トルク検出装置1112の異常が検出される。
【0880】
S1058,S1060およびS1061のすべての判定がYESである場合には、S1062において、制動トルク検出装置1112が正常であると判定される。
【0881】
このように、本実施形態においては、制動トルクの検出に影響を及ぼす制動環境量が非常に小さい状態で制動トルク検出装置1112の異常が検出されるため、その検出精度を容易に向上させ得る。
【0882】
さらに、本実施形態においては、車両減速度と制動トルクとの関係と、押付力と制動トルクとの関係との両方が予め定められた関係にある場合に制動トルク検出装置1112が正常であると判定されるため、その判定精度を容易に向上させ得る。
【0883】
以上の説明から明らかなように、本実施形態においては、踏力センサ1242ち、ブレーキ制御装置1230のうち図63のS1052ないしS1054を実行するための部分とが互いに共同して、前記(26)項における「ブレーキ作用関連量取得装置」の一例を構成し、ブレーキ制御装置1230のうち同図におけるS1055ないしS1059、S1060およびS1061を実行するための部分が、同項における「制動トルク検出装置異常判定手段」の一例、および前記(27)項における「手段」の一例を構成しているのである。
【0884】
さらに、本実施形態においては、踏力センサ1242と、ブレーキ制御装置1230のうち図63におけるS1052ないしS1054を実行するための部分とが互いに共同して、前記(71)項における「ブレーキ作用関連量取得装置」の一例を構成しているのである。この一例の「ブレーキ作用関連量取得装置」は、前記(78)項における「押付力関連量取得装置」の一例である。
【0885】
さらに、本実施形態においては、ブレーキ制御装置1230のうちS1051およびS1055ないしS1062を実行するための部分が、前記(71)項における「異常検出部」の一例を構成しているのである。
【0886】
さらに、本実施形態においては、前記一例の「ブレーキ作用関連量取得装置」が、前記(79)項における「操作状態量検出装置」の一例であると考えることが可能である。この場合には、ブレーキ制御装置1230のうちS1052ないしS1055およびS1058を実行するための部分が、同項における「操作状態依拠異常検出部」の一例を構成していると考えることが可能である。
【0887】
さらに、本実施形態においては、駆動トルク検出装置1248が、前記(82)項における「駆動トルク関連量取得装置」の一例を構成し、ブレーキ制御装置1230のうちS1056、S1057およびS1061を実行するための部分が、同項における「駆動トルク勘案異常検出部」の一例を構成しているのである。
【0888】
さらに、本実施形態においては、ブレーキ制御装置1230のうちS1051を実行するための部分が、前記(84)項における「直進走行時異常検出部」の一例を構成しているのである。
【0889】
さらに、本実施形態においては、前記一例の「ブレーキ作用関連量取得装置」と前記一例の「異常検出部」とが互いに共同して、前記(71)に係る「異常検出装置」の一例を構成しているのである。
【0890】
なお、本実施形態においては、ブレーキ作用関連量としての車両減速度と減速度対応制動トルクとの関係と、ブレーキ作用関連量としての押付力対応制動トルクと制動トルク検出値との関係との両方が適正である場合に、制動トルク検出装置1112が正常であると判定されるが、いずれか一方が適正である場合に正常であると判定する態様で本発明を実施することができる。
【0891】
また、本実施形態においては、前述の異常検出許可条件が成立することを条件に、制動トルク検出装置1112の異常検出が行われるようになっているが、その異常検出許可条件の内容は適宜変更することが可能である。
【0892】
例えば、制動スリップが設定値以下である場合に成立する条件を加えることが可能である。このようにすれば、異常検出の信頼性を一層向上させることができる。またに、水平路面の走行中である場合に成立する条件を加えることも可能である。このようにすれば、重力に起因する駆動トルクを考慮することが不要となる。
【0893】
また、本発明の実施に際し、ブレーキ作用関連量の一例としてブレーキ操作力を選んだり、ブレーキシリンダ圧を選ぶことが可能である。それらの場合には、例えば、S1061におけると同様に、ブレーキ操作力またはブレーキシリンダ圧の各換算値と、制動トルク検出値との差が設定値以下である場合など、ブレーキ操作力またはブレーキシリンダ圧と制動トルク検出値とが互いに十分に整合する場合に、制動トルク検出装置1112が正常であると判定することができる。
【0894】
また、本発明の実施に際し、踏力に基づいて推定されたブレーキシリンダ圧(押付力)をブレーキ作用関連量としたり、踏力をブレーキ作用関連量としたりすることができる。さらに、ブレーキシリンダ1020,1022にマスタシリンダ1010が連通させられた状態においては、マスタシリンダ1010の液圧とブレーキシリンダ1020,1022の液圧とがほぼ同じであるため、マスタシリンダ圧をブレーキ作用関連量とすることもできる。
【0895】
また、本発明の実施に際し、制動トルク検出装置1112による制動トルク検出値として、それにより演算された制動トルクを用いるのではなく、トルク用液圧センサ1150による検出液圧を用いることにより、制動トルク検出装置1112の異常を検出することができる。この場合には、トルク用液圧センサ1150の異常を直接的に検出することが可能となる。
【0896】
次に、本発明の第11実施形態を説明する。ただし、本実施形態は、第10実施形態とハードウエア構成が共通であり、また、ソフトウエア構成についても異常検出プログラムを除いて共通するため、異常検出プログラムのみについて詳細に説明し、共通する要素については同一の名称または符号を使用して引用することにより、詳細な説明を省略する。
【0897】
本実施形態においては、第10実施形態におけると同様に、ブースタ1014の助勢限界後に実際のブレーキシリンダ圧が踏力に応じた目標ブレーキ液圧に近づくように、液圧制御弁1034が制御される。したがって、本実施形態においては、液圧制御弁1034への供給電流等に基づいて制動トルクを推定することができる。
【0898】
本実施形態においては、概略的に説明すれば、ブレーキシリンダ圧のマスタシリンダ圧からの増圧量が、液圧制御弁1034の供給電流に応じた大きさに制御されるという事実に着目することにより、マスタシリンダ圧と供給電流量とに基づいてブレーキシリンダ圧が推定され、その推定値に基づいて制動トルクが推定される。さらに、その推定された制動トルク(制御量等に基づく制動トルク)と実際の制動トルクとの関係に基づいて制動トルク検出装置1112の異常が検出される。
【0899】
図64には、本実施形態における異常検出プログラムの内容が概念的にフローチャートで表されている。この異常検出プログラムも、第10実施形態における異常検出プログラムと同様に、繰返し実行される。
【0900】
各回の実行時には、まず、S1100において、第10実施形態におけると同様な異常検出許可条件が成立したか否かが判定される。成立した場合には、S1101において、マスタシリンダ圧センサ1243によるマスタシリンダ圧が設定圧以上であるかが判定される。設定圧以上である場合には、S1102において、マスタシリンダ圧と液圧制御弁1034への供給電流値Iとに基づいて各車輪のブレーキシリンダ圧が推定され、さらに、各車輪の制動トルク(制御量等対応制動トルク)が推定される。
【0901】
これに対して、マスタシリンダ圧が設定圧より低い場合には、S1108において、マスタシリンダ圧センサ1243による検出液圧に基づいて制動トルク(マスタシリンダ圧対応制動トルク)が推定される。マスタシリンダ圧がブレーキシリンダ圧と等しいため、マスタシリンダ圧に基づく制動トルクの推定値が求められるのである。
【0902】
いずれの場合にも、その後、S1103において、トルク用液圧センサ1150から検出液圧Pcが読み込まれ、続いて、S1104において、前述の式を用いることにより、その読み込まれた検出液圧Pcに基づいて制動トルクTBが制動トルク検出値として演算される。
【0903】
続いて、S1105において、制動トルク(制御量等対応制動トルクまたはマスタシリンダ圧対応制動トルク)の推定値と制動トルク検出値との差が設定値α1より小さいか否かが判定される。設定値α1より小さい場合には、S1106において、制動トルク検出装置1112が正常であると判定される。
【0904】
これに対して、制動トルク推定値と制動トルク検出値との差が設定値α1より小さくはない場合には、S1107において、制動トルク検出装置1112が異常であると判定される。
【0905】
いずれの場合にも、以上で、この異常検出プログラムの一回の実行が終了する。
【0906】
このように、本実施形態においては、マスタシリンダ圧が設定圧より低い場合には、マスタシリンダ圧に基づく制動トルクの推定値がブレーキ作用関連量とされ、設定圧以上である場合には、マスタシリンダ圧と液圧制御弁1034への供給電流(制御量)とに基づく制動トルクの推定値がブレーキ作用関連量とされて、制動トルク検出装置1112の異常が検出される。
【0907】
また、それらの場合にはいずれも、ブレーキシリンダ圧が踏力に応じた大きさになるため、ブレーキ操作力に基づいて制動トルクの推定値が求められると考えることができる。
【0908】
よって、本実施形態においては、マスタシリンダ圧センサ1243が、前記(79)項における「操作状態量検出装置」の一例を構成し、ブレーキ制御装置1230のうち図64の異常検出プログラムを実行するための部分が、同項における「操作状態依拠異常検出部」の一例を構成していると考えることができる。
【0909】
なお、図64の異常検出プログラムにおいては、駆動トルク、制動トルク検出値の変動幅および車両減速度が考慮されていないが、これらを考慮して、図63の異常検出プログラムと同様にして制動トルク検出装置1112の異常を検出する態様で本発明を実施することが可能である。
【0910】
次に、本発明の第12実施形態を説明する。ただし、本実施形態は、第10実施形態とハードウエア構成が共通であり、また、ソフトウエア構成についても異常検出プログラムを除いて共通するため、異常検出プログラムのみについて詳細に説明し、共通する要素については同一の名称または符号を使用して引用することにより、詳細な説明を省略する。
【0911】
本実施形態においては、クルーズ制御によりブレーキが作動させられる場合において、第10実施形態におけると同様にして制動トルク検出装置1112の異常が検出される。
【0912】
本実施形態においては、クルーズスイッチ1252のON状態において、踏力センサ1242による検出値がほぼ0であるかブレーキスイッチ1241がOFFであり、かつ、ブレーキが作動させられた場合には、クルーズ制御によって、ブレーキが自動で作動させられたと判定される。
【0913】
クルーズ制御の実行中には、マスタシリンダ圧が発生していないため、液圧制御弁1034への供給電流に基づいてブレーキシリンダ圧を推定し、その推定値を用いることにより、押付力に応じた制動トルクの推定値を取得することができる。
【0914】
図65には、本実施形態における異常検出プログラムの内容が概念的にフローチャートで表されている。この異常検出プログラムも、第10実施形態における異常検出プログラムと同様に、繰返し実行される。
【0915】
各回の実行時には、まず、S1150において、クルーズスイッチ1252がON状態にあるか否かが判定される。ON状態にある場合には、S1151において、ブレーキ作用中であるか否かが判定される。
【0916】
そうであれば、S1152において、ブレーキスイッチ1241がOFF状態にあるか否かが判定される。OFF状態にある場合には、S1153において、踏力センサ1242により検出された踏力がほぼ0であるか否かが判定される。
【0917】
そうであれば、S1154において、液圧制御弁1034への供給電流値Iに基づいて制動トルクが制御量対応制動トルクとして推定され、制動トルク検出値と比較される。これらの差が設定値α1より小さい場合には、S1155において、制動トルク検出装置1112が正常であると判定される。これに対し、制御量対応制動トルクと制動トルク検出値と差が設定値α1以上である場合には、S1156において、制動トルク検出装置1112が異常であると判定される。
【0918】
このように、本実施形態においては、液圧制御弁1034の制御量または指令値としての供給電流値Iに基づいてブレーキ作用関連量が決定され、制動トルク検出装置1112の異常が検出される。
【0919】
したがって、本実施形態においては、ブレーキ制御装置1230のうちS1154ないしS1156を実行するための部分が、前記(80)項における「制御量依拠異常検出部」の一例を構成している。
【0920】
次に、本発明の第13実施形態を説明する。ただし、本実施形態は、第10実施形態とハードウエア構成が共通であり、また、ソフトウエア構成についても異常検出プログラムを除いて共通するため、異常検出プログラムのみについて詳細に説明し、共通する要素については同一の名称または符号を使用して引用することにより、詳細な説明を省略する。
【0921】
第10ないし第12実施形態においては、制動環境量の影響を受けない期間に限定して制動トルク検出装置1112が異常であるか否かが判定されるようになっているが、本実施形態においては、その判定が制動環境量の影響を受ける期間において行われる。
【0922】
左右前輪1026および左右後輪1027のいずれについてもブレーキシリンダ圧が路面μとの関係において適正である場合には、いずれの車輪についてもアンチロック制御が開始されない。この状態を通常制動状態と称する。
【0923】
この通常制動状態においては、いずれの車輪についても、実際のブレーキシリンダ圧(実際の押付力に対応する)と実際の制動トルクとにより規定される点が、図66において記号R2を付して右上がりの直線として示すグラフ上にプロットされる。すなわち、実際のブレーキシリンダ圧と実際の制動トルクとの関係が、そのグラフにより表される通常の関係(線形の関係)に一致するのである。
【0924】
これに対し、いずれかの車輪についてブレーキシリンダ圧が路面μとの関係において過大となると、実際のブレーキシリンダ圧と実際の制動トルクとの関係が線形の関係R2から逸脱し、図66において、記号R1,R3およびR4をそれぞれ付した非線形のグラフで表される関係に移行する。
【0925】
ここで、2つの車輪間においてブレーキシリンダ圧が等圧である通常制動状態のある時点において、それら車輪の一方についてはブレーキシリンダ圧が路面μとの関係において過大となったが、他方の車輪についてはブレーキシリンダ圧が路面μとの関係において適正である場合を例にとり説明する。なお、ここに「路面μ」は、車輪のスリップ率に応じて変動する車輪と路面との間の摩擦係数を意味するよりよりむしろ、路面が車輪をグリップする最大能力すなわち最大路面μという観点で路面を分類した場合の種類を意味する。
【0926】
この例においては、ブレーキシリンダ圧が路面μとの関係において適正である車輪につき、実際のブレーキシリンダ圧と実際の制動トルクとの関係が線形の関係R2に一致し、アンチロック制御が開始されない。これに対し、ブレーキシリンダ圧が路面μとの関係において過大となった車輪につき、実際のブレーキシリンダ圧と実際の制動トルクとの関係が非線形の関係(例えば、R1)に移行する。この場合、後者の車輪は、図66のグラフにおいて点P1において、アンチロック制御が開始される。
【0927】
それら2つの車輪の制動トルクを同じブレーキシリンダ圧のもとに互いに比較すれば、図66に示すように、アンチロック制御が開始されない非制御車輪において、アンチロック制御が開始された制御車輪におけるより大きな制動トルクが発生する。
【0928】
一方、各車輪につき、ブレーキシリンダ圧が路面μとの関係において過大となった場合に、実際のブレーキシリンダ圧と実際の制動トルクとについて成立すべき関係は、路面μに応じて変化する。具体的には、図66に示すように、路面μが減少するにつれて、実際のブレーキシリンダ圧と実際の制動トルクとについて成立すべき関係が、例えば、関係R3、関係R4および関係R1というように変化する。
【0929】
一方、路面μの高さは、アンチロック制御が開始されたときのブレーキシリンダ圧の高さに基づき、そのブレーキシリンダ圧が高いほど高いというように推定することが可能である。
【0930】
したがって、各車輪につき、アンチロック制御が開始されたときのブレーキシリンダ圧の高さが分かれば、実際のブレーキシリンダ圧と実際の制動トルクとについて成立すべき関係、すなわち、例えば、アンチロック制御が開始されたときにおける実際のブレーキシリンダ圧と実際の制動トルクとについて成立すべき関係が特定される。
【0931】
よって、アンチロック制御が開始されない車輪については、実際のブレーキシリンダ圧と制動トルク検出値とについて成立する関係が、実際のブレーキシリンダ圧と実際の制動トルクとについて成立すべき正規の関係すなわち関係R2と一致する場合には、その制動トルク検出値を出力した制動トルク検出装置1112が正常であると判定し、一致しない場合には、異常であると判定することができる。
【0932】
これに対し、アンチロック制御が開始された車輪については、実際のブレーキシリンダ圧と制動トルク検出値とについて成立する関係が、実際のブレーキシリンダ圧と実際の制動トルクとについて成立すべき正規の関係、すなわち、例えば、関係R1とR3とR4とのうち対応するものと一致する場合には、その制動トルク検出値を出力した制動トルク検出装置1112が正常であると判定し、一致しない場合には、異常であると判定することができる。
【0933】
本実施形態においては、以上説明した知見に基づき、図67にフローチャートで概念的に表されている異常検出プログラムが繰返し実行される。
【0934】
各回の実行時には、まず、S1200において、複数の車輪の少なくとも1つについてアンチロック制御が開始されたか否かが判定される。いずれの車輪についてもアンチロック制御が開始されていない場合には、直ちにこの異常検出プログラムの一回の実行が終了する。
【0935】
これに対し、少なくとも1つの車輪についてアンチロック制御が開始された場合には、S1201において、路面の摩擦係数である路面μが推定される。この推定は、例えば、アンチロック制御が開始された制御車輪のブレーキシリンダ圧の、そのアンチロック制御が開始されたときの高さに基づいて行われる。
【0936】
さらに、このS1201においては、その推定された路面μに応じ、実際のブレーキシリンダ圧と実際の制動トルクとについて成立すべき関係が適正関係として決定される。本実施形態においては、ブレーキシリンダ圧と制動トルクとについてのいくつかの適正関係(例えば、前述の関係R1,R2,R3およびR4)が路面μに関連付けて予め記憶されており、それらいくつかの適正関係の中から、路面μの推定値に関連するものが、今回の路面に適合する適正関係として選択される。
【0937】
具体的には、例えば、複数の車輪のうちアンチロック制御が開始されない非制御車輪については、適正関係として関係R2が選択され、一方、アンチロック制御が開始された制御車輪については、適正関係として関係R1,R3およびR4のうち路面μ推定値に対応するものが選択される。
【0938】
その後、S1202において、すべての車輪につき、ブレーキ圧センサ1244によってブレーキシリンダ圧が検出される。さらに、すべての車輪につき、トルク用液圧センサ1150により、制動トルクを反映した液圧が検出されるとともに、各検出値に基づき、前述のようにして、制動トルク検出値が演算される。
【0939】
続いて、S1203において、制御車輪につき、ブレーキシリンダ圧検出値と制動トルク検出値との関係が、前記選択された適正関係に一致するか否かが判定される。すなわち、ブレーキシリンダ圧検出値と制動トルク検出値との関係が適正であるか否かが判定されるのである。
【0940】
その関係が適正である場合には、S1204において、制御車輪については制動トルク検出装置1112が正常であると判定され、これに対し、上記関係が適正ではない場合には、S1205において、制御車輪については制動トルク検出装置1112が異常であると判定される。
【0941】
その後、S1206において、非制御車輪につき、ブレーキシリンダ圧検出値と制動トルク検出値との関係が、前記選択された適正関係に一致するか否か、すなわち、適正であるか否かが判定される。
【0942】
その関係が適正である場合には、S1207において、非制御車輪については制動トルク検出装置1112が正常であると判定され、これに対し、上記関係が適正ではない場合には、S1208において、非制御車輪については制動トルク検出装置1112が異常であると判定される。
【0943】
以上で、この異常検出プログラムの一回の実行が終了する。
【0944】
本実施形態においては、ブレーキシリンダ圧がブレーキ作用関連量として用いられることによって制動トルク検出装置1112の異常が検出される。
【0945】
この検出においては、路面μが低い場合と通常の場合とで、制動トルクとブレーキシリンダ圧との関係が変化するという事実が考慮されるため、制動トルク検出装置1112の異常の検出の信頼性を向上させることができる。
【0946】
さらに、本実施形態によれば、路面μが低い場合(アンチロック制御が行われた場合)にも制動トルク検出装置1112の異常を検出することが可能となる。第10実施形態における如き異常検出許可条件が満たされなくても異常検出を行うことが可能となるのであり、これにより、異常検出の機会を増やすことができる。
【0947】
以上の説明から明らかなように、本実施形態においては、ブレーキ圧センサ1244とブレーキ制御装置1230のうちS1200およびS1201を実行するための部分とが互いに共同して、前記(83)項における「制動環境量検出装置」の一例を構成し、さらに、ブレーキ制御装置1230のうちS1202ないしS1208を実行するための部分が、同項における「制動環境量考慮型異常検出部」の一例を構成しているのである。
【0948】
なお、本発明は、複数の車輪のうちアンチロック制御が開始されたある車輪の制動トルクより、アンチロック制御が開始されない別の車輪の制動トルクの、そのある車輪についてのアンチロック制御開始時における値が大きい場合に、制動トルク検出装置1112が異常であると判定する態様で実施することが可能である。
【0949】
次に、本発明の第14実施形態を説明する。ただし、本実施形態は、第10実施形態とハードウエア構成が共通であり、また、ソフトウエア構成についても異常検出プログラムを除いて共通するため、異常検出プログラムのみについて詳細に説明し、共通する要素については同一の名称または符号を使用して引用することにより、詳細な説明を省略する。
【0950】
図66に示すように、アンチロック制御が開始される前において、ブレーキシリンダ圧(押付力に相当する。)が路面μに対して過大でない場合(車輪のスリップ率が低い場合)には、ブレーキシリンダ圧と制動トルクとはほぼ比例関係にある。この場合には、ブレーキシリンダ圧の増加に伴い、路面と車輪との間の摩擦力が増加して制動トルクが増加する。
【0951】
ブレーキシリンダ圧が路面μに対して過大になると、車輪のスリップ率が増加し、その車輪と路面との間の摩擦係数が減少する。その減少により、路面と車輪との間の摩擦力のブレーキシリンダ圧に対する増加勾配が減少し、ひいては、制動トルクのブレーキシリンダ圧に対する増加勾配も減少する。
【0952】
車輪のスリップ率が増加して設定値に達すると、その車輪についてアンチロック制御が開始される。その開始後においては、ブレーキシリンダ圧と制動トルクとは比例関係になく、ブレーキシリンダ圧に対する制動トルクの増加比率が、アンチロック制御の開始前より小さくなる。
【0953】
アンチロック制御中においては、スリップ率が路面μに対して適正な範囲内にあるように、ブレーキシリンダ圧が制御される。アンチロック制御中においては、図66において一対の矢印で示す領域内においてブレーキシリンダ圧が制御されると推定される。
【0954】
このように、アンチロック制御の実行前と実行中とでは、ブレーキシリンダ圧と制動トルクとについて成立すべき適正な関係が互いに異なる。したがって、ブレーキシリンダ圧と制動トルク検出値との関係が、アンチロック制御の開始前と実行中とにおいてそれぞれ、適正であるか否かという事実に基づけば、制動トルク検出装置1112の異常を検出することができる。
【0955】
本実施形態においては、以上説明した知見に基づき、図68にフローチャートで概念的に表されている異常検出プログラムが繰返し実行される。この異常検出プログラムは、複数の車輪が1つずつ順に実行対象車輪とされるごとに、その実行対象車輪について実行される。
【0956】
この異常検出プログラムの各回の実行時には、まず、S1251において、今回の実行対象車輪についてアンチロック制御が実行中であるか否かが判定される。アンチロック制御の実行中ではない場合には、S1252において、実行対象車輪のスリップ率の今回値が取得される。
【0957】
その後、S1253において、その取得された今回値が前回値に対して増加傾向にあるか否かが判定される。増加傾向にはない場合には、S1254において、ブレーキ圧センサ1244と制動トルク検出装置1112とにより、実行対象車輪についてブレーキシリンダ圧と制動トルクとがそれぞれ検出される。
【0958】
続いて、S1254において、その検出されたブレーキシリンダ圧と制動トルクとについて適正関係としての比例関係が成立するか否かが判定される。成立する場合には、S1256において、実行対象車輪について制動トルク検出装置1112が正常であると判定され、一方、成立しない場合には、S1257において、異常であると判定される。以上で、この異常検出プログラムの一回の実行が終了する。
【0959】
これに対し、実行対象車輪のスリップ率の今回値が前回値に対して増加傾向にある場合には、S1258において、前述のようにして、ブレーキシリンダ圧と制動トルクとが検出される。その後、S1259において、それら両検出値が記憶される。以上で、この異常検出プログラムの一回の実行が終了する。
【0960】
以上、実行対象車輪についてアンチロック制御が実行されない場合を説明したが、実行されている場合には、S1251の判定がYESとなり、S1260において、現在、実行対象車輪についてアンチロック制御が開始された時期であるか否かが判定される。
【0961】
アンチロック制御の開始時期である場合には、S1261において、前述のようにして、路面μが推定される。このS1261においては、さらに、第13実施形態におけると同様にして、その推定された路面μのもとに実際のブレーキシリンダ圧と実際の制動トルクとについて成立すべき適正関係が、予め記憶されたいくつかの適正関係(例えば、前述の関係R1,R3およびR4)の中から選択される。
【0962】
その後、S1262において、S1259の先の実行によって記憶されたブレーキシリンダ圧検出値と制動トルク検出値との関係が、その選択された適正関係と一致するか否かが判定される。一致する場合には、S1263において、実行対象車輪について制動トルク検出装置1112が正常であると判定され、一方、一致しない場合には、S1264において、異常であると判定される。以上で、この異常検出プログラムの一回の実行が終了する。
【0963】
これに対し、実行対象車輪についてアンチロック制御の実行中ではあるが開始後である場合には、S1260の判定がNOとなり、S1265において、前述のようにして、ブレーキシリンダ圧と制動トルクとが検出される。その後、S1266において、それら両検出値が記憶される。
【0964】
ところで、アンチロック制御の実行中においては、ブレーキシリンダ圧の増加、減少および保持が頻繁に行われること、ブレーキシリンダ圧がそれの急激な変動によって過渡状態(静的状態でない)にあるためにブレーキシリンダ圧と制動トルクとの関係が比例関係であるとは限らないこと等の理由から、それらブレーキシリンダ圧検出値と制動トルク検出値とについてそれぞれ一定時間内に取得された複数のデータを平均化し、その平均化されたデータに基づいてブレーキシリンダ圧検出値と制動トルク検出値との関係を特定することが望ましい。例えば、ブレーキシリンダ圧の検出値および制動トルクの検出値のためのフィルタ係数を変更して、生データの影響を小さくする等によることができる。
【0965】
そこで、S1267において、S1265およびS1266の、過去一定時間内の実行により、互いに時期的に対応するブレーキシリンダ圧検出値と制動トルク値とを1組とする複数組のデータに対して平均化が行われる。この平均化により、過去一定時間を代表する1つのブレーキシリンダ圧検出値と1つの制動トルク検出値とが演算される。
【0966】
その後、S1268において、その演算されたブレーキシリンダ圧検出値と1つの制動トルク検出値との関係が適正であるか否かが判定される。例えば、同じブレーキシリンダ圧検出値に対する制動トルク検出値が、同じ車輪についてアンチロック制御が行われていない場合より小さい場合に、上記関係が適正であると判定することができる。
【0967】
上記関係が適正である場合には、S1269において、実行対象車輪について制動トルク検出装置1112が正常であると判定され、一方、適正ではない場合には、S1270において、異常であると判定される。以上で、この異常検出プログラムの一回の実行が終了する。
【0968】
次に、本発明の第15実施形態を説明する。ただし、本実施形態は、第10実施形態とハードウエア構成が共通であり、また、ソフトウエア構成についても異常検出プログラムを除いて共通するため、異常検出プログラムのみについて詳細に説明し、共通する要素については同一の名称または符号を使用して引用することにより、詳細な説明を省略する。
【0969】
図66に示す制動トルク特性の例においては、アンチロック制御が行われない状況において、接地荷重Qが大きい車輪の、ブレーキシリンダ圧(押付力に相当する。)と制動トルクとの関係は関係R3を示す。この車輪については、点P3においてアンチロック制御が開始される。
【0970】
これに対し、接地荷重Qが小さい車輪の、ブレーキシリンダ圧と制動トルクとの関係は関係R4を示す。この車輪については、点P4においてアンチロック制御が開始される。
【0971】
これらのことから明らかなように、接地荷重Qとアンチロック制御開始時のブレーキシリンダ圧と制動トルクとの間には、接地荷重Qが大きいほど、アンチロック制御開始時のブレーキシリンダ圧が高く、しかも、制動トルクが大きいという関係が成立する。
【0972】
したがって、この関係が成立しない場合には、接地荷重が大きい車輪に対応して設けられた制動トルク検出装置1112と、接地荷重が小さい車輪に対応して設けられた制動トルク検出装置1112の少なくとも一方が異常であると判定することができる。
【0973】
ところで、車両が例えば乗用車である場合には、4つの車輪のうち、接地荷重が大きいのは左右前輪であり、小さいのは左右後輪である。したがって、制動トルク検出装置1112の異常を検出するために互いに比較される2つの車輪は、左右前輪の一方と左右後輪の一方とを含むように構成される。
【0974】
それら互いに比較される複数の車輪においては、路面μの影響を受けないようにするために、各車輪が接する路面の摩擦係数が実質的に互いに一致することが望ましい。そのためには、路面のうちある前輪がある瞬間に通過した位置と実質的に同じかまたはそれに十分に近い位置をある時間の経過後、車両における2対の片側2輪のうちそのある前輪と共に属する後輪が通過するという事実に着目し、1対の片側2輪を比較対象に選定すればよい。
【0975】
さらに、互いに比較される片側2輪について一緒にアンチロック制御が実行される状況は、路面の種類を問わず、起こり得る。しかし、その可能性の大小を考慮するに、路面の左右で摩擦係数が互いに異なるまたぎ路の走行中に、そのまたぎ路のうち表面の摩擦係数が低い側に一緒に接する片側2輪について一緒にアンチロック制御が実行される可能性が高い。
【0976】
したがって、またぎ路上でのアンチロック制御の実行中に、またぎ路のうち表面の摩擦係数が低い側に接している片側2輪につき、前述の設計上の関係が成立するか否かを判定することにより、制動トルク検出装置1112の異常を検出することが望ましい。
【0977】
本実施形態においては、以上説明した知見に基づき、図69にフローチャートで概念的に表されている異常検出プログラムが繰返し実行される。
【0978】
各回の実行時には、まず、S1300において、左右前輪の一方のみについてアンチロック制御が実行中であるか否かが判定される。実行中ではない場合には、S1300の判定がNOとなり、S1316において、セット状態では、車両が現に走行している道路がまたぎ路であることを暫定的に示し、リセット状態では、またぎ路ではないことを暫定的に示すまたぎ路仮フラグがリセットされる。以上で、この異常検出プログラムの一回の実行が終了する。
【0979】
これに対し、左右前輪の一方のみについてアンチロック制御が実行中である場合には、S1300の判定がYESとなり、S1301において、現在、その制御車輪についてアンチロック制御が開始された時点であるか否かが判定される。開始された時点である場合には、S1302において、前記またぎ路仮フラグがセットされる。
【0980】
その後、S1303において、第10実施形態におけると同様にして、今回の制御車輪についてブレーキシリンダ圧と制動トルクとが検出される。それら両検出値は記憶される。
【0981】
続いて、S1304において、前記姿勢検出装置1251による検出結果に基づき、今回の制御車輪である前輪(以下、「制御前輪」という。)の接地荷重が、例えば、予め定められた標準荷重からの偏差として、演算されて記憶される。
【0982】
その後、S1306において、左右後輪のうち、今回の制御前輪と同じ片側車輪に属するものについてアンチロック制御が実行中であるか否かが判定される。実行中ではない場合には、S1307において、S1300の判定がNOからYESに変わってから設定時間が経過したか否かが判定される。
【0983】
ここに、設定時間は、今回の制御前輪についてアンチロック制御が開始されてから、今回の路面のうち今回の制御前輪についてアンチロック制御が開始された位置と同じ位置を左右後輪が通過するために経過することが必要であると予想される長さを有するように設定される。
【0984】
この設定時間の長さは、例えば、今回の制御前輪についてアンチロック制御が開始された時点の車速(例えば、その車輪に対応する車輪速センサ1246による検出値)と、車両のホイールベースとに基づき、可変値として決定することが可能である。
【0985】
今回の制御前輪についてアンチロック制御が開始されてから設定時間が経過していない場合には、S1307の判定がNOとなり、直ちにこの異常検出プログラムの一回の実行が終了し、一方、経過した場合には、判定がYESとなり、S1308において、またぎ路仮フラグがリセットされた後、この異常検出プログラムの一回の実行が終了する。
【0986】
すなわち、S1306ないしS1308は、互いに共同することにより、左右前輪の一方のみについてアンチロック制御が開始されてから設定時間が経過しないうちに、左右後輪のうち、今回の制御前輪と同じ片側車輪に属するものについてアンチロック制御が実行された事実を検出するために設けられているのである。
【0987】
前記設定時間内に、左右後輪のうち、今回の制御前輪と共に同じ片側車輪に属するものについてアンチロック制御が実行された場合には、S1306の判定がYESとなり、S1309において、現在、今回の制御車輪である後輪(以下、「制御後輪」という。)についてアンチロック制御が開始された時点であるか否かが判定される。開始された時点ではない場合には、S1317において、またぎ路仮フラグがリセットされた後、この異常検出プログラムの一回の実行が終了する。
【0988】
これに対し、今回の制御後輪についてアンチロック制御が開始された時点である場合には、S1310において、またぎ路仮フラグがセット状態にあるか否かが判定される。セット状態にはない場合には、S1317を経てこの異常検出プログラムの一回の実行が終了する。
【0989】
これに対し、またぎ路仮フラグがセット状態にある場合には、S1311において、S1303におけると同様にして、今回の制御後輪についてのブレーキシリンダ圧と制動トルクとが検出されて記憶される。その後、S1312において、S1304におけると同様にして、今回の制御後輪について接地荷重が検出される。
【0990】
続いて、S1313において、今回の制御前輪についてアンチロック制御が開始されたときのブレーキシリンダ圧および制動トルクがそれぞれ、今回の制御後輪についてアンチロック制御が開始されたときのブレーキシリンダ圧および制動トルクより大きいか否かが判定される。すなわち、今回の制御前輪と制御後輪との間に、ブレーキシリンダ圧と制動トルクとに関して成立する関係が適正であるか否かが判定されるのである。その判定は、接地荷重が一般に、前輪において後輪におけるより大きいという事実に基づいて行われる。
【0991】
今回の制御前輪についてのブレーキシリンダ圧および制動トルクがそれぞれ、今回の制御後輪についてのブレーキシリンダ圧および制動トルクより大きい場合には、S1314において、今回の制御前輪と制御後輪との双方について制動トルク検出装置1112が正常であるとされ、そうでない場合には、S1315において、それら制御前輪と制御後輪との少なくとも一方について制動トルク検出装置1112が異常であると判定される。その後、S1317を経てこの異常検出プログラムの一回の実行が終了する。
【0992】
このように、本実施形態においては、接している路面の摩擦係数はほぼ同じであるが接地荷重は互いに異なる2つの車輪が、ブレーキシリンダ圧および制動トルクのそれぞれに関して互いに比較されることによって、制動トルク検出装置1112の異常が検出される。
【0993】
したがって、本実施形態によれば、ブレーキシリンダ圧と制動トルクとの関係自体を求めることが不可欠ではなくなり、よって、制動トルク検出装置1112の異常の検出を容易に行い得る。
【0994】
なお、本発明は、接地荷重が大きい車輪のアンチロック制御開始時のブレーキシリンダ圧と制動トルク検出値との関係が図66において点P3で示す関係にあるか否か、接地荷重の小さい車輪のそれらの関係が同図において点P4で示す関係にあるか否かをそれぞれ判定し、それにより、それぞれの車輪に関して制動トルク検出装置1112の異常を検出する態様で実施することが可能である。
【0995】
また、本実施形態においては、2つの車輪がブレーキシリンダ圧と制動トルクとの双方に関して互いに比較されるが、図66において破線のグラフで示すように、ブレーキシリンダ圧が路面μとの関係において過大である状態においてはブレーキシリンダ圧の上昇にもかかわらず制動トルクがほとんど変化しないという事実に着目すれば、制動トルクのみに関して互いに比較することにより、制動トルク検出装置1112の異常を検出する態様で本発明を実施することも可能である。
【0996】
さらに、本発明は、片側2輪について、アンチロック制御が一緒に実行される状態において制動トルク検出値の差を検出し、その検出された差と片側2輪間における接地荷重の差とが互いに整合しない場合に、それら片側2輪の少なくとも一方について制動トルク検出装置1112の異常を検出する態様で実施することが可能である。
【0997】
この態様は、接地荷重とアンチロック制御中の制動トルクとは互いに比例関係にあり、これを比例定数kで表せば、制動トルク検出装置1112が正常である限り、アンチロック制御中の制動トルク検出値の前後輪差と、接地荷重の前後輪差との間にも、同じ比例定数kで表される比例関係が成立するはずであるという事実に基づくものである。
【0998】
本発明を実施するに際し、制動トルク検出装置1112の異常を検出するためにまたぎ路の走行に着目することも、アンチロック制御の実行に着目することも、不可欠なことではない。ブレーキシリンダ圧が路面μとの関係において過大であり、その結果、制動トルクが接地荷重の大小を反映する状況である限り、本発明に従い、ブレーキシリンダ圧と制動トルクと接地荷重との関係(少なくとも制動トルクと接地荷重との関係)に基づいて制動トルク検出装置1112の異常を検出することが可能である。
【0999】
また、制動トルクの接地荷重に対する依存度は、路面μに対する依存度より大きい。したがって、路面μの影響を考慮しなくても、制動トルク検出装置1112の異常を十分に高い信頼性のもとに検出し得る。
【1000】
以上説明した第13ないし第15実施形態はいずれも、車輪の制動トルクが制動環境量としての路面μまたは車輪の接地荷重の影響を受ける状況において制動トルク検出装置1112の異常を検出するための実施形態である。
【1001】
それら第13ないし第15実施形態は、さらに、アンチロック制御の実行に着目して制動トルク検出装置1112の異常を検出するための実施形態でもある。ただし、アンチロック制御は、車輪が路面をグリップする能力が限界を超えようとする場合にその能力を最大化するために実行される自動制動トルク制御の一例である。
【1002】
この種の自動制動トルク制御には、車両駆動時に駆動車輪の過剰な駆動トルクを減殺するトラクション制御や、複数の車輪間における制動トルクの差によるヨーモーメント制御によって車両の走行安定性を制御するビークルスタビリティ制御も含まれる。
【1003】
そして、例えば、トラクション制御の実行に着目して本発明が実施される場合には、トラクション制御の実行中には、車両の駆動源からの駆動トルクが駆動車輪に加えられるため、車両減速度を参照して制動トルク検出装置1112の異常を検出する際には駆動トルクを考慮することが望ましい。
【1004】
また、ビークルスタビリティ制御の実行に着目して本発明が実施される場合には、そのビークルスタビリティ制御が車両駆動中、すなわち、車両の駆動源から駆動トルクが駆動車輪に加えられている状態に行われたときには同様に、車両減速度を参照して制動トルク検出装置1112の異常を検出する際には駆動トルクを考慮することが望ましい。
【1005】
なお、アンチロック制御、トラクション制御またはビークルスタビリティ制御の実行中に、ブレーキシリンダ圧を、増圧モードと減圧モードと保持モードを含む複数のモードのうち逐次選択されたモードに従って制御することに伴う制動トルクの時間的変化状態に基づいて制動トルク検出装置1112の異常を検出する態様で本発明を実施することも可能である。
【1006】
この態様においては、例えば、増圧モードが選択されてそれに従ってブレーキシリンダ圧が制御されている状態であっても、ブレーキシリンダ圧の実際の増加勾配すなわち制動トルク検出値の増加勾配が設定勾配以下である場合等には、例えば、制動トルク検出装置1112のうち前記演算処理部におけるゲイン異常であると判定することができる。
【1007】
さらに、第13ないし第15実施形態においては、自動制動トルク制御の一例であるアンチロック制御の実行に着目して制動トルク検出装置1112の異常が検出されるようになっているが、アンチロック制御の実行に着目せずに制動トルク検出装置1112の異常が検出される態様で本発明を実施することが可能である。
【1008】
この態様においては、ブレーキシリンダ圧が路面μとの関係において過大となると、車輪のスリップが過大になる。車輪のスリップ率が設定値以上である場合に、車輪のブレーキシリンダ圧、制動トルク、接地荷重、路面μ等のうち必要な物理量を検出し、その検出値に基づき、制動トルク検出装置1112の異常を検出することができる。この場合には、実際のブレーキシリンダ圧と実際の制動トルクとの関係が、例えば、図66における関係R1,R3およびR4の如きものとなる。
【1009】
次に、本発明の第16実施形態を説明する。ただし、本実施形態は、第10実施形態とハードウエア構成が共通であり、また、ソフトウエア構成についても異常検出プログラムを除いて共通するため、異常検出プログラムのみについて詳細に説明し、共通する要素については同一の名称または符号を使用して引用することにより、詳細な説明を省略する。
【1010】
前述の自動制動トルク制御としてアンチロック制御を実行可能な車両においては、アンチロック制御が実行されないことは、車輪のブレーキシリンダ圧が路面μとの関係において過大でないことを示している。この状態は通常制動状態と称することができる。この通常制動状態においては、実際のブレーキシリンダ圧(押付力に相当する。)と実際の制動トルクとの間には、図66において、R2で示す線形の関係が成立する。
【1011】
さらに、その通常制動状態においては、前輪の制動トルクの実際値と、後輪の制動トルクの実際値とについて成立する関係を予測可能である。前輪の制動トルクと後輪の制動トルクとの関係は、ブレーキ設計に際し、車両諸元等により予め設定されるからである。したがって、前輪と後輪との間における制動トルク検出値の比率が一定範囲から逸脱した場合には、制動トルク検出装置1112が異常であると判定することができる。
【1012】
このような知見に基づき、本実施形態においては、第10実施形態における異常検出許可条件が成立した場合、すなわち、アンチロック制御が行われていない場合に、前輪の制動トルク検出値と後輪の制動トルク検出値とが、予め定められた関係にないことを条件に、制動トルク検出装置1112が異常であると判定される。
【1013】
本実施形態においては、その判定手法を実現するために、図70にフローチャートで概念的に表されている異常検出プログラムが繰返し実行される。
【1014】
各回の実行時には、まず、S1351において、第10実施形態におけると同じ異常検出許可条件が成立したか否かが判定される。成立しない場合には、直ちにこの異常検出プログラムの一回の実行が終了する。
【1015】
これに対し、異常検出許可条件が成立した場合には、S1352において、前輪に対応する制動トルク検出装置1112により、前輪の制動トルクTBFが検出される。その後、S1353において、後輪に対応する制動トルク検出装置1112により、後輪の制動トルクTBRが検出される。
【1016】
続いて、S1354において、前輪の制動トルク検出値TBFの、後輪の制動トルク検出値TBRに対する比率が、上限値をγ1、下限値をγ2として規定される設定範囲内にあるか否かが判定される。
【1017】
上記比率が設定範囲内にあれば、S1355において、前輪用の制動トルク検出装置1112も後輪用の制動トルク検出装置1112も正常であると判定される。これに対し、上記比率が設定範囲内にない場合には、S1356において、それら制動トルク検出装置1112の少なくとも一方が異常であると判定される。いずれの場合にも、以上で、この異常検出プログラムの一回の実行が終了する。
【1018】
ところで、第10ないし第16実施形態においては、いずれも、制動トルク検出装置1112が、車両の前進中であると後退中であるとを問わず、ブレーキが作用させられた場合に、車輪の制動トルクを検出することができる。したがって、前進中にも後退中にも制動トルク検出装置1112の異常を検出し得る。
【1019】
しかし、制動トルク検出装置が車両の前進中と後退中とのうち予め選択された一方向運動中においてのみ制動トルクを検出する態様で本発明を実施することが可能であり、この場合には、その選択された一方向運動中に、制動トルク検出装置の異常が検出されることとなる。
【1020】
この種の制動トルク検出装置は、例えば、第10実施形態における液圧発生装置1148が液圧シリンダ1151は含むが液圧シリンダ1152は含まない態様で実施することができる。そして、この場合には、車両の前進中のみに、制動トルクが検出されるとともに、制動トルク検出装置の異常が検出されることになる。
【1021】
また、本発明は、ブレーキの非作用状態において制動トルク検出装置の異常を検出する態様で実施することも可能である。この態様においては、例えば、制動トルク検出装置による検出値が0点あるいはブレーキ引きずりの大きさに対応する大きさでない場合には、制動トルク検出装置が異常であると判定される。
【1022】
さらに、本発明が適用される制動トルク検出装置によって検出される制動トルクを車輪に発生させるブレーキは、液圧ブレーキであることは不可欠ではなく、例えば、電動ブレーキであっても、回生ブレーキであってもよい。そのブレーキの形式は限定されない。
【1023】
次に、本発明の第17実施形態を説明する。ただし、本実施形態は、第10実施形態とソフトウエア構成が基本的に共通であり、また、ハードウエア構成についても制動トルク検出装置を除いて共通するため、制動トルク検出装置のみについて詳細に説明し、共通する要素については同一の名称または符号を使用して引用することにより、詳細な説明を省略する。
【1024】
図71には、本実施形態に従う異常検出装置によって異常が検出される制動トルク検出装置が示されている。この制動トルク検出装置は、第10実施形態における制動トルク検出装置1112とは異なり、第10実施形態における液圧発生装置1148に対応する液圧発生装置が液圧シリンダ1300を1つのみ有するように構成されている。
【1025】
具体的には、液圧シリンダ1300は、シリンダ本体1302を備えている。そのシリンダ本体1302には、2つのピストン1304,1306が液密かつ摺動可能に、互いに対向する状態で嵌合されている。シリンダ本体1302内には、それら2つのピストン1304,1306の間において液圧室1308が形成されている。
【1026】
図71において左側に示すピストン1304は、キャリパ1114に設けられた突部1310によって前進させられる(同図において右方に移動させられる)。同図において右側に示すピストン1306は、連携部材1312によって前進させられる(同図において左方に移動させられる)。それらピストン1304,1306の間にはリターンスプリング1314が設けられ、各ピストン1304,1306をそれぞれ図示の後退端位置に向かって付勢する。各後退端位置は、シリンダ本体1302に設けられたストッパ1316,1318によって規定される。
【1027】
ピストン1304は、ピストンロッド1320の先端面が突部1310に対向する姿勢で配置されている。キャリパ1114が液圧シリンダ1300に接近することによって突部1310がピストンロッド1320に当接し、それにより、ピストン1304がリターンスプリング1314の付勢力に抗して前進させられる。このように、ピストン1304はキャリパ1114の接近による押付力によって移動させられ、それにより、液圧室1308の容積が減少させられる。
【1028】
これに対し、ピストン1306は、第10実施形態におけるピストン1156(図60参照)と同様に、連携部材1312がピストンロッド1322のうちの溝状を成す係合部1324において係合させられる。ピストン1306は、キャリパ1114の液圧シリンダ1300からの離間による引張力によって、液圧室1308の容積が減少する方向に移動させられる。
【1029】
ディスクロータ1110の正回転中にブレーキが作用させられた場合には、キャリパ1114が正方向に回動させられる。それに伴って連携部材1312が引っ張られ、ピストン1306がスプリング1314の付勢力に抗して前進させられる。この場合には、突部1310はピストン1304に当接することはなく、ピストン1304はストッパ1316によって規定される後退端位置にある。ピストン1306の前進に伴い、液圧室1308の容積が減少させられ、そこに液圧が発生させられる。
【1030】
これに対し、ディスクロータ1110の逆回転中にブレーキが作用させられると、キャリパ1114が逆方向に回動させられる。その結果、突部1310によってピストン1304が前進させられ、それに伴い、液圧室1308の容積が減少させられ、そこに液圧が発生させられる。連携部材1312は係合部1324に沿ってピストン1306に対して相対移動させられ、よって、ピストン1306はストッパ1318によって規定される後退端位置に位置することになる。
【1031】
このように、本実施形態においては、キャリパ1114によって連携部材1312を加えられる引張力と、キャリパ1114によってピストン1304に加えられる押付力とによって、液圧室1308の容積が減少させられ、それにより、1つの液圧シリンダ1300で、前進回転方向にブレーキが作用させられた場合にも後退回転方向に作用させられた場合にも制動トルクを検出することができる。
【1032】
なお、ピストン1304のピストンロッド1320と突部1310とは、ピストン1304の後退端位置において互いに当接する状態で配置してもよい。この配置においても、ディスクロータ1110の正回転中にピストン1304を前進させることなく、逆回転中にピストン1304を前進させることができる。
【1033】
第10実施形態におけるように、ダンパ1180とリリーフ弁1190との両方を用いることは本発明を実施するために不可欠ではない。いずれか一方を設ければ、トルク用液圧センサ1150に加わる負荷が過大になることを回避することができる。リリーフ弁1190のみを用いる場合には、例えば、リリーフ弁1190におけるリリーフ圧を、トルク用液圧センサ1150の使用可能圧の上限以上となるように決定することができる。
【1034】
次に、本発明の第18実施形態を説明する。ただし、本実施形態は、第10実施形態とソフトウエア構成が基本的に共通であり、また、ハードウエア構成についても制動トルク検出装置を除いて共通するため、制動トルク検出装置のみについて詳細に説明し、共通する要素については同一の名称または符号を使用して引用することにより、詳細な説明を省略する。
【1035】
図72には、本実施形態に従う異常検出装置によって異常が検出される制動トルク検出装置が示されている。この制動トルク検出装置においては、液圧発生装置1350が、2つの液圧発生部1352,1354を備えている。
【1036】
各液圧発生部1352,1354は、金属製のベローズ1356を備えている。ベローズ1356の内側空間が、可変容積室としての液圧室1358とされる。その液圧室1358には、液圧センサの検出子1360が配設される。検出子1360に接続された信号線は、車体側に設けられたブレーキ制御装置1230に接続され、そのブレーキ制御装置1230により第10実施形態におけると同様にして制動トルクが検出される。
【1037】
ベローズ1356を保持する保持部材1362が車体側固定部材1116に相対移動不能に取り付けられている。ベローズ1356の底板1366には、それの両面のうちベローズ1356とは反対側の面から、突部が延び出させられている。その突部に形成された係合部1368に連携部材1369が係合させられる。底板1366の移動限度は、保持部材1362の端面1370によって規定される。このようにしてベローズ1356の伸縮限度が規定されることにより、ベローズ1356の疲労を抑制することができる。
【1038】
ディスクロータ1110の回転中にブレーキが作用させられると、キャリパ1114が回動させられ、それによって、底板1366が移動させられる。それに伴ってベローズ1356が収縮させられ、液圧室1358の容積が減少させられ、そして、その液圧室1358に液圧が発生させられる。
【1039】
以上説明した第10ないし第18実施形態においては、いずれも、ディスクブレーキ1023がキャリパ固定型であったが、キャリパ浮動型である態様で本発明を実施することができる。
【1040】
この態様においては、キャリパをディスクロータ1110の軸方向に移動可能に保持するマウンティングブラケットがブレーキ本体とされて、車体側固定部材1116にリンク機構1118を介して周方向に移動可能に保持される。この態様においては、ブレーキシリンダが、ディスクロータ1110の両側に設けられるのではなく、一側に設けられるだけである。そのブレーキシリンダの作動によりキャリパが軸方向に移動させられ、ディスクロータ1110にそれの両側からアウタパッドとインナパッドとがそれぞれ押し付けられる。
【1041】
また、本発明は、制動トルク検出装置が、ディスクロータ1110と摩擦係合部材との間における摩擦力に基づく連れ回り力を機械的に検出する連れ回り力検出部を含む態様で実施することができる。
【1042】
さらに、本発明を実施するに際し、液圧ブレーキ装置の構造も第10ないし第18実施形態におけるそれに限定されない。例えば、通常制動時にはブレーキシリンダがマスタシリンダから遮断された状態で、ブレーキシリンダ圧が加圧装置の制御量に応じた大きさに制御される構造の液圧ブレーキ装置を採用することができる。
【1043】
次に、本発明の第19実施形態を説明する。ただし、本実施形態は、第4実施形態と共通する要素が多く、異なるのは、検出器による横力の検出についての異常判定に関する要素のみであるため、異なる要素についてのみ詳細に説明し、共通する要素については同一の符号を使用することによって詳細な説明を省略する。
【1044】
図74に示すように、本実施形態においては、第4実施形態に対し、判定部254に代えて判定部420が設けられている。この判定部420は、検出器10による上下力VFの検出についての異常判定は、図15および図16に示されている上下力検出異常判定プログラムと同じプログラムの実行によって行うように構成されている。
【1045】
さらに、判定部420は、検出器10による横力SFの検出についての異常判定は、図75にフローチャートで概念的に表されている横力検出異常判定プログラムの実行によって行うように構成されている。
【1046】
さらに、判定部420は、検出器10による前後力LFの検出についての異常判定は、図18に示されている前後力検出異常判定プログラムと同じプログラムの実行によって行うように構成されている。
【1047】
本実施形態においては、図74に示すように、第4実施形態に対し、車輪速度センサ258が省略されている。
【1048】
ここで、図75を参照しつつ横力検出異常判定プログラムを説明する。
【1049】
この横力検出異常判定プログラムの各回の実行時には、まず、S1381において、操舵角センサ256により操舵角θの今回値が検出される。次に、S1382において、その検出された操舵角θの今回値の、前回値からの変化量が操舵角変化量Δθとして演算される。さらに、このS1382において、その演算された操舵角変化量Δθの絶対値がしきい値Δθ0より大きいか否かが判定される。設定状態以上の変化が操舵角θに発生したか否かが判定されるのである。
【1050】
今回は、演算された操舵角変化量Δθの絶対値がしきい値Δθ0より大きくはないと仮定すれば、S1382の判定がNOとなり、直ちにこの横力検出異常判定プログラムの一回の実行が終了する。
【1051】
これに対し、今回は、演算された操舵角変化量Δθの絶対値がしきい値Δθ0より大きいと仮定すれば、S1382の判定がYESとなり、S1383において、複数の車輪のうちの操舵車輪につき、横力検出部150により横力SFの今回値が検出される。
【1052】
その後、S1384において、その検出された横力SFの今回値の、前回値からの変化量が横力変化量ΔSFとして演算される。さらに、このS1384において、その演算された横力変化量ΔSFの絶対値がしきい値ΔSF0より大きいか否かが判定される。設定状態以上の変化が横力SFに発生したか否かが判定されるのである。
【1053】
今回は、演算された横力変化量ΔSFの絶対値がしきい値ΔSF0より大きいと仮定すれば、S1384の判定がYESとなり、S1385において、操舵車輪について横力検出部150が正常であると判定される。
【1054】
これに対し、今回は、演算された横力変化量ΔSFの絶対値がしきい値ΔSF0より大きくはないと仮定すれば、S1384の判定がNOとなり、S1386において、操舵車輪について横力検出部150が異常であると判定される。
【1055】
いずれの場合にも、以上で、この横力検出異常判定プログラムの一回の実行が終了する。
【1056】
以上の説明から明らかなように、本実施形態においては、操舵角センサ256が、前記(22)項における「車両状態量センサ」の一例を構成し、判定部420のうち図75のS1381ないしS1386を実行するための部分が、同項における「第4異常判定手段」の一例、前記(23)項における「手段」の一例、および前記(24)項における「手段」の一例を構成しているのである。
【1057】
さらに、本実施形態においては、操舵角センサ256が、前記(25)項における「操作状態量センサ」の一例を構成し、判定部420のうち図75のS1381ないしS1386を実行するための部分が、同項における「手段」の一例を構成しているのである。
【1058】
さらに、本実施形態においては、判定部420のうち図75のS1381ないしS1386を実行するための部分が、前記(36)項における「手段」の一例を構成しているのである。
【1059】
次に、本発明の第20実施形態を説明する。ただし、本実施形態は、第1実施形態と共通する要素が多く、異なるのは、検出器による上下力の検出についての異常判定に関する要素のみであるため、異なる要素についてのみ詳細に説明し、共通する要素については同一の符号を使用することによって詳細な説明を省略する。
【1060】
図76に示すように、本実施形態においては、第4実施形態に対し、判定部14に代えて判定部440が設けられている。さらに、操舵角センサ256も設けられている。判定部440は、検出器10による上下力VFの検出についての異常判定は、図77にフローチャートで概念的に表されている上下力検出異常判定プログラムの実行によって行うように構成されている。
【1061】
さらに、判定部440は、検出器10による横力SFの検出についての異常判定は、図17に示されている横力検出異常判定プログラムと同じプログラムの実行によって行うように構成されている。
【1062】
さらに、判定部440は、検出器10による前後力LFの検出についての異常判定は、図18に示されている前後力検出異常判定プログラムと同じプログラムの実行によって行うように構成されている。
【1063】
ここで、図77を参照しつつ上下力検出異常判定プログラムを説明する。
【1064】
この上下力検出異常判定プログラムの各回の実行時には、まず、S1400において、操舵角センサ256からの信号に基づき、車両が直進中であるか否かが判定される。この判定は、車両において横方向への荷重移動が発生しない状況であって、左右車輪間において上下力VFの実際値が互いに一致する状況にあるか否かを判定するために行われる。
【1065】
車両が直進中ではない場合には、直ちにこの上下力検出異常判定プログラムの一回の実行が終了するが、直進中である場合には、S1401に移行する。
【1066】
このS1401においては、左右前輪のそれぞれについて上下力検出部170により上下力VFfr,VFflが検出される。続いて、S1402において、それら検出された上下力VFfr,VFflの差(以下、「上下力VFの左右前輪差」という。)がしきい値ΔVFf0以下であるか否かが判定される。
【1067】
その上下力VFの左右前輪差がしきい値ΔVFf0以下である場合には、S1403において、左右前輪の双方について上下力検出部170が正常であると判定される。これに対し、上下力VFの左右前輪差がしきい値ΔVFf0より大きい場合には、S1404において、左右前輪の少なくとも一方について上下力検出部170が異常であると判定される。
【1068】
続いて、S1405ないしS1408が、左右後輪につき、S1401ないしS1404に準じて実行される。
【1069】
具体的には、S1405において、左右後輪のそれぞれについて上下力検出部170により上下力VFrr,VFrlが検出される。次に、S1406において、それら検出された上下力VFrr,VFrlの差(以下、「上下力VFの左右後輪差」という。)がしきい値ΔVFr0以下であるか否かが判定される。
【1070】
その上下力VFの左右後輪差がしきい値ΔVFr0以下である場合には、S1407において、左右後輪の双方について上下力検出部170が正常であると判定される。これに対し、上下力VFの左右後輪差がしきい値ΔVFr0より大きい場合には、S1408において、左右後輪の少なくとも一方について上下力検出部170が異常であると判定される。
【1071】
以上で、この上下力検出異常判定プログラムの一回の実行が終了する。
【1072】
以上の説明から明らかなように、本実施形態においては、判定部440のうち図77のS1401ないしS404を実行するための部分と、S1405ないしS408を実行するための部分とがそれぞれ、前記(35)項における「手段」の一例を構成しているのである。
【1073】
以上、本発明の実施形態のいくつかを図面に基づいて詳細に説明したが、これらは例示であり、前記[課題を解決するための手段および発明の効果]の欄に記載の態様を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変形、改良等を施した他の形態で本発明を実施することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態に従うタイヤ作用力検出装置における検出器の内部構造を示す正面図である。
【図2】図1におけるAA−AA断面図である。
【図3】図1における検出器と車輪のホイールと車体側のハブとの相対位置関係を示す斜視図である。
【図4】図1における検出器のうちタイヤの前後力を検出する前後力検出部を概念的に示す正面図である。
【図5】図4における前後力検出部を概念的に示す側面断面図である。
【図6】図4における前後力検出部が採用しているてこの原理を概念的に説明するための正面図である。
【図7】図4における前後力検出部が採用可能である別のてこの原理を概念的に説明するための正面図である。
【図8】図1における検出器のうちタイヤの横力を検出する横力検出部を概念的に示す側面断面図である。
【図9】図1における検出器のうちタイヤの上下力を検出する上下力検出部を概念的に示す正面図である。
【図10】図9における上下力検出部を概念的に示す側面断面図である。
【図11】図1における各検出部への入力荷重F1,F2と、各検出部における歪ゲージの歪との関係を示すグラフである。
【図12】前記第1実施形態に従うタイヤ作用力検出装置の電気的な構成を示すブロック図である。
【図13】図1における各検出部においてそれの歪ゲージの出力信号が同図における検出器の回転角と共に変化する様子を示すグラフである。
【図14】図9における上下力検出部においてそれの歪ゲージに作用する力の種類を説明するための正面図である。
【図15】図12における判定部のために実行される上下力検出異常判定プログラムの一部を概念的に表すフローチャートである。
【図16】上記上下力検出異常判定プログラムの残りの部分を概念的に表すフローチャートである。
【図17】図12における判定部のために実行される横力検出異常判定プログラムを概念的に表すフローチャートである。
【図18】図12における判定部のために実行される前後力検出異常判定プログラムを概念的に表すフローチャートである。
【図19】図12におけるゼロ点補正部のために実行される上下力検出ゼロ点補正プログラムを概念的に表すフローチャートである。
【図20】図12におけるゼロ点補正部のために実行される横力検出ゼロ点補正プログラムを概念的に表すフローチャートである。
【図21】図12におけるゼロ点補正部のために実行される前後力検出ゼロ点補正プログラムを概念的に表すフローチャートである。
【図22】図15におけるS101を説明するための斜視図である。
【図23】図15および図16の上下力検出異常判定プログラムによる異常判定の内容を表形式で表す図である。
【図24】図17におけるS152を説明するための斜視図である。
【図25】図17におけるS156ないしS158を説明するためのグラフである。
【図26】図18におけるS172を説明するための斜視図である。
【図27】図18におけるS176ないしS178を説明するためのグラフである。
【図28】本発明の第2実施形態に従うタイヤ作用力検出装置の電気的な構成を示すブロック図である。
【図29】図28における判定部のために実行される横力検出異常判定プログラムを概念的に表すフローチャートである。
【図30】図28における判定部のために実行される前後力検出異常判定プログラムを概念的に表すフローチャートである。
【図31】図29におけるS311ないしS313を説明するためのグラフである。
【図32】図30におけるS361ないしS363を説明するためのグラフである。
【図33】本発明の第3実施形態に従うタイヤ作用力検出装置の電気的な構成を示すブロック図である。
【図34】図33における判定部のために実行される上下力検出異常判定プログラムを概念的に表すフローチャートである。
【図35】図33における判定部のために実行される横力検出異常判定プログラムを概念的に表すフローチャートである。
【図36】図33における判定部のために実行される前後力検出異常判定プログラムを概念的に表すフローチャートである。
【図37】本発明の第4実施形態に従うタイヤ作用力検出装置の電気的な構成を示すブロック図である。
【図38】図37における判定部のために実行される横力検出異常判定プログラムを概念的に表すフローチャートである。
【図39】図38におけるS442を説明するためのグラフである。
【図40】図38におけるS444を説明するためのグラフである。
【図41】図40のグラフを説明するためのグラフである。
【図42】図38におけるS446を説明するためのグラフである。
【図43】図42のグラフを説明するためのグラフである。
【図44】本発明の第5実施形態に従うタイヤ作用力検出装置における検出器の内部構造を示す正面図である。
【図45】図44におけるBB−BB断面図である。
【図46】図44における各検出部がタイヤの前後力と横力と上下力とをそれぞれ検出する条件を表形式で示す図である。
【図47】前記第5実施形態に従うタイヤ作用力検出装置の電気的な構成を示すブロック図である。
【図48】図47におけるゼロ点補正部のために実行される駆動力検出ゼロ点補正プログラムを概念的に表すフローチャートである。
【図49】本発明の第6実施形態に従うタイヤ作用力検出装置の電気的な構成を示すブロック図である。
【図50】図49におけるセンサゼロ点補正部のために実行されるセンサゼロ点補正プログラムを概念的に表すフローチャートである。
【図51】本発明の第7実施形態に従うタイヤ作用力検出装置の電気的な構成を示すブロック図である。
【図52】図51における判定部のために実行される横力検出異常判定プログラムを概念的に表すフローチャートである。
【図53】本発明の第8実施形態に従うタイヤ作用力検出装置の電気的な構成を示すブロック図である。
【図54】図53における判定部のために実行される上下力検出異常判定プログラムを概念的に表すフローチャートである。
【図55】本発明の第9実施形態に従うタイヤ作用力検出装置の電気的な構成を示すブロック図である。
【図56】図55における判定部のために実行される総合的異常判定プログラムを概念的に表すフローチャートである。
【図57】本発明の第10実施形態に従う制動トルク検出装置異常検出装置を含むブレーキ制御装置を含む液圧ブレーキ装置を示す系統図である。
【図58】図57の液圧ブレーキ装置における液圧制御弁を概念的に示す正面断面図である。
【図59】図57の液圧ブレーキ装置におけるブレーキを示す正面断面図である。
【図60】図57の液圧ブレーキ装置における制動トルク検出装置を説明するための正面断面図および液圧回路図である。
【図61】上記ブレーキ制御装置の電気的構成およびそれに接続された各種要素を示すブロック図である。
【図62】図61におけるROMに格納されたブレーキ液圧制御プログラムの内容を概念的に表すフローチャートである。
【図63】図61におけるROMに格納された異常検出プログラムの内容を概念的に表すフローチャートである。
【図64】本発明の第11実施形態に従う制動トルク検出装置異常検出装置を含むブレーキ制御装置におけるROMに格納された異常検出プログラムの内容を概念的に表すフローチャートである。
【図65】本発明の第12実施形態に従う制動トルク検出装置異常検出装置を含むブレーキ制御装置におけるROMに格納された異常検出プログラムの内容を概念的に表すフローチャートである。
【図66】摩擦係合部材のディスクロータへの押付力とそのディスクロータに対応する車輪に発生する制動トルクとの関係を説明するためのグラフである。
【図67】本発明の第13実施形態に従う制動トルク検出装置異常検出装置を含むブレーキ制御装置におけるROMに格納された異常検出プログラムの内容を概念的に表すフローチャートである。
【図68】本発明の第14実施形態に従う制動トルク検出装置異常検出装置を含むブレーキ制御装置におけるROMに格納された異常検出プログラムの内容を概念的に表すフローチャートである。
【図69】本発明の第15実施形態に従う制動トルク検出装置異常検出装置を含むブレーキ制御装置におけるROMに格納された異常検出プログラムの内容を概念的に表すフローチャートである。
【図70】本発明の第16実施形態に従う制動トルク検出装置異常検出装置を含むブレーキ制御装置におけるROMに格納された異常検出プログラムの内容を概念的に表すフローチャートである。
【図71】本発明の第17実施形態に従う制動トルク検出装置異常検出装置によって異常が検出される制動トルク検出装置を説明するための正面断面図および液圧回路図である。
【図72】本発明の第18実施形態に従う制動トルク検出装置異常検出装置によって異常が検出される制動トルク検出装置を説明するための正面断面図である。
【図73】摩擦係合部材のディスクロータへの押付力とそのディスクロータに対応する車輪に発生する制動トルクとの関係を説明するためのグラフである。
【図74】本発明の第19実施形態に従うタイヤ作用力検出装置の電気的な構成を示すブロック図である。
【図75】図74における判定部のために実行される横力検出異常判定プログラムを概念的に表すフローチャートである。
【図76】本発明の第20実施形態に従うタイヤ作用力検出装置の電気的な構成を示すブロック図である。
【図77】図76における判定部のために実行される上下力検出異常判定プログラムを概念的に表すフローチャートである。
【符号の説明】
10 検出器
12 演算部
14,240,250,254,360,380,400,420,440 判定部
16,300 ゼロ点補正部
20 車輪
90 検出部
130 前後力検出部
150 横力検出部
170 上下力検出部
320 センサゼロ点補正部
330 車両状態量センサ
1023,1024 ブレーキ
1034 液圧制御弁
1036 保持弁
1040 減圧弁
1096 加圧装置
1151 液圧発生装置
1150 トルク用液圧センサ
1230 ブレーキ制御装置
1242 踏力センサ
1247 減速度センサ
1249 駆動トルク検出装置

Claims (44)

  1. 複数の車輪を有するとともに、ホイールの外周にタイヤが装着されることによって各車輪が構成された車両に搭載され、前記タイヤに作用するタイヤ作用力を検出するタイヤ作用力検出装置であって、
    前記複数の車輪のうちの全部または一部である複数の車輪に関してそれぞれ設けられるとともに、前記タイヤに上下方向に作用する上下力を前記タイヤ作用力として検出する機能を有する検出器と、
    前記車両の運動に依拠してその車両に荷重移動が発生している荷重移動発生状態において、前記複数の検出器により検出された複数の上下力の合計値が時間と共に変化する場合に、それら複数の検出器の少なくとも1つによる上下力の検出が異常であると判定する手段を含む判定部と
    を含むタイヤ作用力検出装置。
  2. 前記判定部が、前記検出値が前記タイヤ作用力の検出が正常である場合にその検出値が取り得る限界値から外れており、かつ、前記荷重移動発生状態において、その発生している荷重移動に前記検出値の時間的変化傾向が整合する場合には、前記検出器のゼロ点が異常であると判定する一方、前記検出値が前記限界値から外れており、かつ、前記荷重移動発生状態において、前記発生している荷重移動に前記時間的変化傾向が整合しない場合には、前記検出器の入出力特性を表すグラフの勾配が異常であると判定することにより、前記タイヤ作用力の検出が異常であるモードを特定する異常モード特定手段を含む請求項に記載のタイヤ作用力検出装置。
  3. 複数の車輪を有するとともに、ホイールの外周にタイヤが装着されることによって各車輪が構成された車両に搭載され、前記タイヤに作用するタイヤ作用力を検出するタイヤ作用力検出装置であって、
    前記複数の車輪のうちの全部または一部である複数の車輪に関してそれぞれ設けられ、前記タイヤ作用力を検出する検出器と、
    その検出器による検出値を利用することにより、その検出器によるタイヤ作用力の検出の異常に関する判定を行う判定部とを含み、
    前記各検出器が、前記タイヤに上下方向に作用する上下力を前記タイヤ作用力として検出する機能を有し、かつ、それら複数の検出器が、前記車両の運動に依拠してその車両に荷重移動が発生している荷重移動発生状態において、各検出器により検出されるべき前記タイヤ作用力が、その荷重移動の影響を、それら複数の検出器間において互いに逆向きに受けるものであり、
    前記判定部が、それら複数の検出器により検出された複数の上下力の合計値が前記タイヤ作用力の検出が正常である場合にその合計値が取り得る限界値から外れており、かつ、前記荷重移動発生状態において、そのときに発生している荷重移動に前記合計値の時間的変化傾向が整合しない場合に、その荷重移動の向きとその時間的変化傾向の向きとの関係に基づき、前記複数の検出器のうちそれによる上下力の検出が異常であるものを特定する異常検出器特定手段を含む、タイヤ作用力検出装置。
  4. 記判定部が、数の前記検出器による複数の検出値間の関係に基づいて前記荷重移動発生状態を判定する手段を含む請求項1ないし3のいずれかに記載のタイヤ作用力検出装置。
  5. 前記検出器が、前記タイヤに水平方向に作用する水平力を前記タイヤ作用力として検出する機能を有しており、
    前記判定部が、その検出器により検出された水平力を前記タイヤに上下方向に作用する上下力で割り算した値を用いることにより、前記水平力の検出が異常であるか否かを判定する第3異常判定手段を含む請求項1ないし4のいずれかに記載のタイヤ作用力検出装置。
  6. 記第3異常判定手段が、前記各車輪に関する前記各検出器により検出された水平力をその各車輪に関する個別的な前記上下力で割り算した値である、各車輪に関する個別的な前記路面μ相当値と、前記複数の検出器により検出された複数の水平力の合計値を前記車両全体に関する総合的な前記上下力で割り算した値である、前記車両全体に関する総合的な前記路面μ相当値とに基づき、少なくとも1つの車輪に関する前記検出器による水平力の検出が異常であるか否かを判定する手段を含む請求項に記載のタイヤ作用力検出装置。
  7. 前記手段が、各車輪に関する個別的な路面μ相当値と、車両全体に関する総合的な路面μ相当値との対応関係を表すグラフの勾配が、少なくとも1つの車輪に関して、正規の勾配から外れる場合に、その少なくとも1つの車輪に関する前記検出器による水平力の検出が異常であると判定する手段を含む請求項に記載のタイヤ作用力検出装置。
  8. 前記車両が、その車両に前記水平力と同じ方向に作用する加速度を検出する加速度センサを含み、
    記第3異常判定手段が、複数の検出器により検出された複数の水平力の合計値を前記車両全体に関する総合的な前記上下力で割り算した値である、前記車両全体に関する総合的な前記路面μ相当値と、前記加速度センサにより検出された加速度とが互いに整合しない場合に、前記水平力の検出が異常であると判定する手段を含む請求項5ないし7のいずれかに記載のタイヤ作用力検出装置。
  9. 前記判定部が、さらに、前記総合的な路面μ相当値と、前記加速度センサにより検出された加速度とが互いに整合せず、かつ、前記各車輪に関する前記検出器により検出された水平力をその各車輪に関する個別的な前記上下力で割り算した値である、各車輪に関する個別的な前記路面μ相当値と、前記加速度センサにより検出された加速度との対応関係を表すグラフの勾配が、すべての車輪に関して、正規の勾配から同じ方向に外れる場合に、前記加速度センサによる検出が異常であると判定する加速度センサ異常判定手段を含む請求項に記載のタイヤ作用力検出装置。
  10. 前記判定部が、さらに、前記総合的な路面μ相当値と、前記加速度センサにより検出された加速度とが互いに整合する場合に、前記各車輪に関する前記検出器により検出された水平力を、同じ車輪に関する個別的な前記上下力で割り算した値である、各車輪に関する個別的な前記路面μ相当値を用いるとともに、前記複数の車輪のうちの一部であって、それに関する個別的な路面μ相当値と前記総合的な路面μ相当値との対応関係を表すグラフの勾配が正規の勾配から外れるものに対応する前記タイヤが異常であると判定するタイヤ異常判定手段を含む請求項8または9に記載のタイヤ作用力検出装置。
  11. 前記車両が、当該タイヤ作用力検出装置の他に、その車両の状態量を検出する車両状態量センサを含み、
    前記判定部が、その車両状態量センサによる検出値と前記検出器による検出値とに基づいて、その検出器による検出が異常であるか否かを判定する第4異常判定手段を含む請求項1ないし10のいずれかに記載のタイヤ作用力検出装置。
  12. 前記第4異常判定手段が、前記車両状態量センサによる検出値と前記検出器による検出値との関係に基づいて、その検出器による検出が異常であるか否かを判定する手段を含む請求項11に記載のタイヤ作用力検出装置。
  13. 前記第4異常判定手段が、前記車両状態量センサによる検出値と前記検出器による検出値とが互いに整合しない場合に、その検出器による検出が異常であると判定する手段を含む請求項11または12に記載のタイヤ作用力検出装置。
  14. 前記車両状態量センサが、前記車両の状態を変化させるために行われる運転者による操作の状態量を検出する操作状態量センサを含み、
    前記第4異常判定手段が、その操作状態量センサによる検出値と前記検出器による検出値とに基づいて、その検出器による検出が異常であるか否かを判定する手段を含む請求項11ないし13のいずれかに記載のタイヤ作用力検出装置。
  15. 前記車両が、前記複数の車輪の少なくとも1つの回転を抑制するために作動させられるブレーキを含み、
    前記車両状態量センサが、そのブレーキの作用に関連する量を取得するブレーキ作用関連量取得装置を含み、
    前記検出器が、対応するブレーキの作用によって、対応する車輪に生じる制動トルクを前記タイヤ作用力に関連する物理量として検出する制動トルク検出装置を含み、
    前記第4異常判定手段が、前記ブレーキ作用関連量取得装置によって取得されたブレーキ作用関連量と前記制動トルク検出装置によって検出された制動トルクとに基づき、その制動トルク検出装置による検出が異常であるか否かを判定する制動トルク検出装置異常判定手段を含む請求項11ないし14のいずれかに記載のタイヤ作用力検出装置。
  16. 前記制動トルク検出装置異常判定手段が、前記ブレーキ作用関連量取得装置によって取得されたブレーキ作用関連量と前記制動トルク検出装置によって検出された制動トルクとの関係に基づき、その制動トルク検出装置による検出が異常であるか否かを判定する手段を含む請求項15に記載のタイヤ作用力検出装置。
  17. 前記ブレーキが、対応する車輪と共に回転するブレーキ回転体に摩擦係合部材を押し付けることによって、対応する車輪の回転を抑制する摩擦ブレーキを含み、
    前記ブレーキ作用関連量取得装置が、前記摩擦係合部材の前記ブレーキ回転体への押付力に関連する押付力関連量を取得する押付力関連量取得装置を含み、
    前記制動トルク検出装置異常判定手段が、前記押付力関連量取得装置によって取得された押付力関連量を前記ブレーキ作用関連量として用いることにより、前記制動トルク検出装置による検出が異常であるか否かを判定する手段を含む請求項15または16に記載のタイヤ作用力検出装置。
  18. 前記ブレーキが、運転者によるブレーキ操作部材の操作に基づいて作動させられることにより、前記摩擦係合部材を前記ブレーキ回転体に押し付ける押付装置を含み、
    前記ブレーキ作用関連量取得装置が、運転者による前記ブレーキ操作部材の操作状態を表す操作状態量を検出する操作状態量検出装置を含み、
    前記制動トルク検出装置異常判定手段が、前記操作状態量検出装置によって検出された操作状態量を前記ブレーキ作用関連量として用いることにより、前記制動トルク検出装置による検出が異常であるか否かを判定する手段を含む請求項17に記載のタイヤ作用力検出装置。
  19. 前記車両が、前記摩擦係合部材の前記ブレーキ回転体への押付力を制御する押付力制御装置を含み、
    前記ブレーキが、運転者による前記ブレーキ操作部材の操作とは関係なく前記押付力制御装置の制御によって作動させられることにより、前記摩擦係合部材を前記ブレーキ回転体に押し付ける押付装置を含み、
    前記制動トルク検出装置異常判定手段が、前記押付力制御装置による制御に関連する制御関連量を前記ブレーキ作用関連量として用いることにより、前記制動トルク検出装置による検出が異常であるか否かを判定する手段を含む請求項17または18に記載のタイヤ作用力検出装置。
  20. 前記ブレーキ作用関連量取得装置が、前記車両の加速状態を検出する加速状態検出装置を含み、
    前記制動トルク検出装置異常判定手段が、その加速状態検出装置によって検出された加速状態を表す加速状態量を前記ブレーキ作用関連量として用いることにより、前記制動トルク検出装置による検出が異常であるか否かを判定する手段を含む請求項15ないし19のいずれかに記載のタイヤ作用力検出装置。
  21. 前記車両が、前記複数の車輪の少なくとも1つに加えられる駆動トルクに関連する駆動トルク関連量を取得する駆動トルク関連量取得装置を含み、
    前記制動トルク検出装置異常判定手段が、その駆動トルク関連量取得装置によって取得された駆動トルク関連量を考慮することにより、前記制動トルク検出装置による検出が異常であるか否かを判定する手段を含む請求項15ないし20のいずれかに記載のタイヤ作用力検出装置。
  22. 前記車両が、前記複数の車輪のうち制動されるものがおかれた環境を表す制動環境量を検出する制動環境量検出装置を含み、
    前記制動トルク検出装置異常判定手段が、前記ブレーキ作用関連量の取得値と前記制動トルクの検出値との関係と、前記制動環境量検出装置によって検出された制動環境量とに基づいて、前記制動トルク検出装置による検出が異常であるか否かを判定する手段を含む請求項15ないし21のいずれかに記載のタイヤ作用力検出装置。
  23. 前記制動トルク検出装置異常判定手段が、前記車両の直進走行中に前記ブレーキが作用させられる状態であることを条件に、前記制動トルク検出装置による検出が異常であるか否かを判定する手段を含む請求項15ないし22のいずれかに記載のタイヤ作用力検出装置。
  24. 記判定部が、複数の検出器間における前記タイヤ作用力の検出値の関係に基づき、それら複数の検出器の少なくとも1つによる検出が異常であるか否かを判定する手段を含む請求項1ないし23に記載のタイヤ作用力検出装置。
  25. 前記判定部が、前記車両の状態を変化させるために成立するように設定された設定条件が成立することを条件に、前記検出器による検出が異常であるか否かを判定する手段を含む請求項1ないし24のいずれかに記載のタイヤ作用力検出装置。
  26. 前記設定条件が、アクセル操作部材と、ブレーキ操作部材と、ステアリング操作部材と、前記車両の駆動力伝達装置の変速段を切り換えるために運転者により操作される変速操作部材と、前記車両の進行方向を前進方向と後退方向とに切り換えるために運転者により操作される方向切換操作部材とのうちの少なくとも1つの、運転者による操作状態が変化した場合に成立するように設定された条件である請求項25に記載のタイヤ作用力検出装置。
  27. 前記検出器が、対応する車輪またはそれの近傍であって検出すべきタイヤ作用力が力学的に伝達される位置に設けられた請求項1ないし26のいずれかに記載のタイヤ作用力検出装置。
  28. 前記タイヤ作用力が、前記タイヤが路面に接するタイヤ接地点においてそのタイヤに作用するタイヤ接地力を含む請求項1ないし27のいずれかに記載のタイヤ作用力検出装置。
  29. 前記検出器が、対応するタイヤに作用する複数種類の力をそれぞれ前記タイヤ作用力として検出する機能を有し、
    前記判定部が、その検出器により検出された複数種類の力相互の関係に基づき、前記検出器によるタイヤ作用力の検出が異常であるか否かを判定する手段を含む請求項1ないし28のいずれかに記載のタイヤ作用力検出装置。
  30. 前記判定部が、車両運動中と車両停止中との少なくとも一方において作動させられる請求項1ないし29のいずれかに記載のタイヤ作用力検出装置。
  31. 前記判定部が、前記検出器による検出値に基づき、車両運動中と車両停止中との双方において互いに異なる規則に従って、前記検出器によるタイヤ作用力の検出が異常であるか否かを判定する手段を含む請求項30に記載のタイヤ作用力検出装置。
  32. 前記判定部が、少なくとも車両運動中に、前記車両の走行状態に関して予め設定された異常判定許可条件が成立することを条件に、前記検出器によるタイヤ作用力の検出が異常であるか否かを判定する手段を含む請求項30または31に記載のタイヤ作用力検出装置。
  33. 前記検出器が、前記タイヤに前後方向に作用する前後力と、横方向に作用する横力と、上下方向に作用する上下力とのうちの少なくとも1つと、それら前後力と横力と上下力とのうちのいずれか2つを組み合わせてなる少なくとも1つの組み合せの各々に属する2つの力の合力との少なくとも一方を前記タイヤ作用力として検出する機能を有する請求項1ないし32のいずれかに記載のタイヤ作用力検出装置。
  34. 前記検出器が、前記前後力と横力と上下力とをそれぞれ前記タイヤ作用力として検出する機能を有する請求項33に記載のタイヤ作用力検出装置。
  35. 前記判定部が、前記検出器により実質的に互い同じ時期に検出された前後力と横力と上下力との間における力学的関係に基づき、前記検出器による検出が異常であるか否かを判定する手段を含む請求項34に記載のタイヤ作用力検出装置。
  36. 前記手段が、前記検出器に対応するタイヤについて前記前後力と横力との合力である水平力と前記上下力とが同じ摩擦円を共有する場合に成立するように予め設定された設定関係と前記力学的関係とが互いに実質的に一致しない場合に、前記検出器による検出が異常であると判定する手段を含む請求項35に記載のタイヤ作用力検出装置。
  37. 前記車両が、当該タイヤ作用力検出装置の他に、その車両の状態量を検出する車両状態量センサを含み、
    前記判定部が、その車両状態量センサを用いることにより、前記検出器により検出される物理量と同じ物理量を比較物理量として取得するとともに、その取得された比較物理量と前記検出器による検出値とが互いに整合しない場合に、その検出器による検出が異常であると判定する第5異常判定手段を含む請求項1ないし36のいずれかに記載のタイヤ作用力検出装置。
  38. 前記検出器による検出値を利用することにより、その検出器のゼロ点を補正するゼロ点補正部をさらに備え
    前記ゼロ点補正部が、前記タイヤ作用力の実際値が0であると予想される基準車両状態において、前記検出器のゼロ点を前記タイヤ作用力が0であることを表す位置に設定するゼロ点設定を行う設定手段を含む請求項1ないし37のいずれかに記載のタイヤ作用力検出装置。
  39. 前記検出器が、前記タイヤに水平方向に作用する水平力を前記タイヤ作用力として検出する機能を有しており、
    前記設定手段が、前記車両が水平な姿勢で停止状態にある場合に、その車両が前記基準車両状態にあると判定する基準車両状態判定手段を含む請求項38に記載のタイヤ作用力検出装置。
  40. 前記複数の車輪が、前輪と後輪とを含み、
    前記検出器が、それら前輪と後輪とに関してそれぞれ設けられ、
    前記基準車両状態判定手段が、前記前輪と後輪とに関してそれぞれ検出された上下力相互の関係に基づき、前記車両の姿勢がそれの前後方向に関して水平である基準車両状態にあるか否かを判定する手段を含む請求項39に記載のタイヤ作用力検出装置。
  41. 前記複数の車輪が、左輪と右輪とを含み、
    前記検出器が、それら左輪と右輪とに関してそれぞれ設けら
    前記基準車両状態判定手段が、前記左輪と右輪とに関してそれぞれ検出された上下力相互の関係に基づき、前記車両の姿勢がそれの横方向に関して水平である基準車両状態にあるか否かを判定する手段を含む請求項39または40に記載のタイヤ作用力検出装置。
  42. 前記車両が、前記複数の車輪にそれぞれ設けられ、各車輪の回転を抑制するために互いに独立に作動可能である複数のブレーキを備えており、
    前記検出器が、前記複数の車輪にそれぞれ関して設けられるとともに、各検出器が、前記タイヤに作用する制動力を前記タイヤ作用力として検出する機能を有しており、
    前記設定手段が、前記車両の停止状態において、前記複数の検出器のうちの一部について順に前記ゼロ点設定を行うとともに、各回のゼロ点設定においては、そのゼロ点設定が行われるべき検出器である対象検出器が設けられている車輪については前記ブレーキを作動させない一方、その対象検出器が設けられている車輪を除く車輪の少なくとも1つについてはブレーキを作動させることにより、その対象検出器が設けられている車輪に制動力が作用しない状態を前記基準車両状態として生起する手段を含む請求項38ないし41のいずれかに記載のタイヤ作用力検出装置。
  43. 前記検出器が、前記タイヤに横方向に作用する横力を前記タイヤ作用力として検出する機能を有しており、
    前記設定手段が、前記車両の直進走行状態において前記ゼロ点設定を行う手段を含む請求項38ないし42のいずれかに記載のタイヤ作用力検出装置。
  44. 前記検出器が、前記タイヤに作用する駆動力と制動力とをそれぞれ前記タイヤ作用力として検出するために、駆動力は検出するが制動力は検出しない第1部分と、制動力は検出するが駆動力は検出しない第2部分とを互いに独立して有しており、
    前記設定手段が、前記車両の走行状態において、前記検出器が設けられている車輪に制動力が発生しているときに、前記第1部分について前記ゼロ点設定を行う手段を含む請求項38ないし43のいずれかに記載のタイヤ作用力検出装置。
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