JP4457590B2 - 車両用ブレーキシステム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両用のブレーキシステムに関するものであり、特に、制動時における車輪の過大なスリップを防止することにより、車両を可及的に大きな減速度で減速し得るブレーキシステムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
この種のブレーキシステムとして、アンチロック制御部を備えたものが特許文献1および2により知られている。特許文献1には、アンチロック制御部を備えたブレーキシステムにおいて、アンチロック制御における目標スリップ率に微小な交番変動を付加し、その微小な変動とそれに伴って生じる路面摩擦係数の微小な変動との幅および位相の関係から、路面の摩擦係数のスリップ率に対する増加率を算出し、その増加率の大きさに基づいてブレーキ作動力を増加,保持,減少させ、かつ、その増加または減少の速度を加減することによって、最短の制動距離を実現することが記載されている。また、特許文献2には、アンチロック制御部を備えたブレーキシステムにおいて、実際のヨーレイトの目標ヨーレイトからの偏差に応じてアンチロック制御における目標スリップ率を小さく制限し、コーナリングフォースを確保することが記載されている。
また、特許文献3には、車輪のタイヤに作用する力を検出する技術が記載されている。
【0003】
【特許文献1】
特開平5−39021号公報
【特許文献2】
特開平5−85327号公報
【特許文献3】
特開2003−14563号公報
【特許文献4】
特開2001−88576号公報
【特許文献5】
特開平10−297450号公報
【0004】
アンチロック制御部を備えたブレーキシステムによれば、アンチロック制御部を備えないものによる場合に比較して、車両を短い距離で停止させ得る場合が多い。車輪の回転を抑制するブレーキの作動力が、路面の摩擦係数(厳密にはタイヤと路面との間に期待し得る最大摩擦係数)との関係において過大である場合には、車輪のスリップが過大となり、車輪と路面との間の実際の摩擦力が低下して、車両を停止させるに必要な距離が長くなってしまうのであるが、ブレーキシステムがアンチロック制御部を備えていれば、その不都合を回避し得るのである。アンチロック制御部が、例えば、スリップ率が設定スリップ率以上になればブレーキ作動力を減少させ、その結果、所定のスリップの回復傾向が生じればブレーキ作動力を増加させるというように、スリップ状態の変化に応じてブレーキ作動力を増減させることにより、スリップが過大となることを防止するからである。
【0005】
【発明が解決しようとする課題,課題解決手段および効果】
しかしながら、従来のアンチロック制御部は、上記のように、ブレーキ作動力を増減させるものであるため、ブレーキ作動力がやや不適切な大きさである時期があることを避け得ず、その分、車両を停止させるに必要な距離が長くなるうらみがあった。本発明は、以上の事情を背景とし、アンチロック制御部によるよりさらに有効に路面の摩擦係数、すなわちタイヤと路面との間に期待できる最大摩擦係数を利用でき、車両を停止させるに必要な距離をさらに短縮できるブレーキシステムを得ることを課題としてなされたものであり、本発明によって、(1)車輪の回転を抑制するブレーキと、(2)運転者ができる限り大きな減速度で車両を減速させることを要求する最大減速度要求を検出する最大減速度要求検出部と、(3)少なくとも、最大減速度要求検出部により最大減速度要求が検出された場合に、ブレーキの作動力を最大減速度が得られる大きさに保持する最大減速度制御を行う最大減速度制御部とを含み、最大減速度制御部が、(a)最大減速度要求が検出された時点に走行中の路面と車輪との間に期待できる最大摩擦係数に対応するブレーキの作動力である保持ブレーキ作動力が取得できるまで前記ブレーキの作動力を増大させて保持ブレーキ作動力を取得する初期段階と、(b)その初期段階に続いてブレーキの作動力を一旦保持ブレーキ作動力より小さいブレーキ作動力まで減少させる中間段階と、(c)その中間段階に続いてブレーキの作動力を保持ブレーキ作動力まで増大させた後、最大減速制御の解除条件が成立するまでブレーキの作動力を増減させることなく保持ブレーキ作動力に保持する保持段階とを実行することを特徴とするブレーキシステムが得られる。
このように、保持段階においてはブレーキの作動力を増減させることなく、初期段階に取得した、最大減速度が得られる保持ブレーキ作動力に保持すれば、従来のアンチロック制御におけるように、制動中にブレーキ作動力がやや不適切な大きさである時期が存在することが無くなり、タイヤと路面との間に期待し得る最大摩擦係数を継続して利用することができ、車両を停止させるに必要な距離をさらに短縮できる効果が得られる。
【0006】
本発明によれば、さらに、下記各態様のブレーキシステムが得られる。各態様は請求項と同様に、項に区分し、各項に番号を付し、必要に応じて他の項の番号を引用する形式で記載する。これは、あくまでも本発明の理解を容易にするためであり、本明細書に記載の技術的特徴およびそれらの組合わせが以下の各項に記載のものに限定されると解釈されるべきではない。また、一つの項に複数の事項が記載されている場合、それら複数の事項を常に一緒に採用しなければならないわけではない。一部の事項のみを選択して採用することも可能なのである。
【0007】
(1)車輪の回転を抑制するブレーキと、
運転者ができる限り大きな減速度で車両を減速させることを要求する最大減速度要求を検出する最大減速度要求検出部と、
少なくとも、前記最大減速度要求検出部により前記最大減速度要求が検出された場合に、前記ブレーキの作動力を最大減速度が得られる大きさに保持する最大減速度制御を行う最大減速度制御部と
を含むことを特徴とするブレーキシステム。
最大減速度制御部は、少なくとも、最大減速度要求検出部により運転者の最大減速度要求が検出された場合に、ブレーキの作動力を最大減速度が得られる大きさに保持する。従来のアンチロック制御部におけるように、車輪のスリップ率の変動に応じてブレーキ作動力を増減させるわけではなく、適正値に保持するのであるため、安定的に最大減速度が得られる。ある走行速度から所望の走行速度(0を含む)まで減少させるに必要な距離を最短にし得るのである。
(2)前記最大減速度要求検出部が、少なくとも運転者による制動操作部材の操作力が設定制動操力より大きい場合に、前記最大減速度要求を検出するものである (1)項に記載のブレーキシステム。
制動操作部材の操作力は、ブレーキを作用させる向きの操作力を正とする。操作力が大きい場合には、運転者が最大減速度で車両を減速させることを要求していると考えることは妥当なことである。
(3)前記最大減速度要求検出部が、少なくとも運転者による制動操作部材の操作速度が正の設定制動操作速度より大きい場合に、前記最大減速度要求を検出するものである (1)項または (2)項に記載のブレーキシステム。
制動操作部材の操作速度はブレーキを作用させる向きの操作速度を正とする。操作速度が大きい場合には運転者が最大減速度で車両を減速させることを要求していることが多いため、操作速度に基づいて最大減速度要求を検出することは妥当なことである。ブレーキ部材の操作速度は操作力が大きくなるに従って低下するのが普通であるため、設定制動操作速度は一定値とすることも可能であるが、制動操作部材の操作速度は、操作力が大きい領域では小さい領域に比較して小さくなるのが普通であるため、操作力が大きい場合には小さい場合に比較して小さい値に設定されることが望ましい。この場合、設定制動操作速度は連続的に変えられても、段階的に変えられてもよい。
(4)運転操作状態検出部,車両走行状態検出部および路面状態検出部の少なくとも1つを含み、その少なくとも1つが最大減速度制御許容状態を検出している場合に最大減速度制御を許可する最大減速度制御許可部を含み、その最大減速度制御許可部により前記最大減速度制御が許可されている場合に、前記最大減速度制御部が前記最大減速度制御を行う (1)項ないし (3)項に記載のブレーキシステム。
ブレーキシステムが、後述するように、最大減速度制御部と共にアンチロック制御部を含み、最大減速度制御部による制御では車輪のスリップが過大になる場合には、最大減速度制御部の作動を停止させ、アンチロック制御部を作動させることができる構成のものである場合には、最大減速度制御部を、例えば、ブレーキ作動力を乾燥アスファルト路に適した大きさに保持するものとしておくことによって、乾燥アスファルト路上において最大減速度を得ることができるブレーキシステムが得られ、最大減速度制御許可部は不可欠ではない。しかし、最大減速度制御許可部を設ければ、最大減速度制御部が適切な時期にのみの作動するブレーキシステムが得られる。運転操作状態検出部,車両走行状態検出部、路面状態検出部等が最大減速度制御許容状態を検出するための条件として、少なくとも、運転操作状態,車両走行状態,路面状態等が定常状態にあることが含まれることが望ましい。最大減速度制御は、原則として定常状態において実行されることが望ましいのである。
(5)少なくとも前記運転操作状態検出部が、少なくとも運転者による操舵速度の絶対値が正の設定操舵速度より小さい場合に、前記最大減速度制御許容状態を検出するものである (4)項に記載のブレーキシステム。
操舵速度の絶対値が正の設定操舵速度より小さい場合には、運転者による操舵操作が定常状態にあるとみなすことができる。操舵角および操舵速度はステアリングホイール等の操舵部材が右に操作される場合と左に操作される場合とで、符号が正負逆にされるのが普通であり、絶対値で論ずれば、いずれの向きに操舵される場合でも同様に扱うことができる。
(6)少なくとも前記運転操作状態検出部が、少なくとも運転者により保舵が行われている場合に、前記最大減速度制御許容状態を検出するものである (5)項に記載のブレーキシステム。
(7)少なくとも前記運転操作状態検出部が、操舵角の絶対値が最大操舵角の80%以上であることを検出している状態では、前記最大減速度制御許容状態を検出しないものである (4)項ないし (6)項に記載のブレーキシステム。
操舵角の絶対値が最大操舵角の80%以上であることを検出している場合には、たとえ操舵速度の絶対値が小さい場合でも最大減速度制御は行われないようにすることが望ましく、50%以上であることを検出している場合に行われないようにすることがさらに望ましい。
(8)少なくとも前記運転操作状態検出部が、少なくとも運転者による制動操作部材の操作速度の絶対値が正の設定制動操作速度より小さい場合に、前記最大減速度制御許容状態を検出するものである (4)項ないし (7)項のいずれかに記載のブレーキシステム。
制動操作部材の操作速度の絶対値が小さい場合には、運転者による制動操作が定常状態にあるとみなすことができる。本項の特徴は、後に実施形態の項において説明するように、最大減速度制御を解除すべきか否かの判定に利用して特に有効なものである。
(9)少なくとも前記車両走行状態検出部が、少なくとも車体の横加速度の絶対値が正の設定横加速度より小さいことを検出している場合に、前記最大減速度制御許容状態を検出するものである (4)項ないし (8)項のいずれかに記載のブレーキシステム。
横加速度は車両の旋回方向によって符号が正負逆になる。いずれにしても、車体の横加速度の絶対値が正の設定横加速度より小さい場合には、たとえ車両が旋回していても最大減速度で減速させ得ることが多いため、車両走行状態検出部が最大減速度制御許容状態を検出するようにすることは妥当なことである。
(10)少なくとも前記車両走行状態検出部が、少なくとも車体の横加速度の変化速度の絶対値が正の設定変化速度より小さい場合に、前記最大減速度制御許容状態を検出するものである (4)項ないし (9)項のいずれかに記載のブレーキシステム。
横加速度の変化が小さい場合には、たとえ旋回中であっても車両の走行状態が定常状態にあるとみなし得るため、車両走行状態検出部が最大減速度制御許容状態を検出するようにするのである。
(11)少なくとも前記車両走行状態検出部が、少なくとも車体のヨーレイトの絶対値が正の設定ヨーレイトより小さい場合に、前記最大減速度制御許容状態を検出するものである (4)項ないし(10)項のいずれかに記載のブレーキシステム。
(9)項の説明が本項にも当てはまる。
(12)少なくとも前記車両走行状態検出部が、少なくとも車体のヨーレイトの変化速度の絶対値が正の設定変化速度より小さい場合に、前記最大減速度制御許容状態を検出するものである (4)項ないし(11)項のいずれかに記載のブレーキシステム。
(10)項の説明が本項にも当てはまる。
(13)少なくとも前記車両走行状態検出部が、少なくとも前記車輪の回転加速度の絶対値が正の設定加速度より小さい場合に、最大減速度制御許容状態を検出するものである (2)項ないし(11)項のいずれかに記載のブレーキシステム。
車輪の回転加速度が正の設定加速度より大きくなった場合には、制動部材の操作力が減少させられたか、あるいは駆動源の駆動力が増された可能性が高いため、最大減速度制御が解除されるようにすることが望ましい。路面の最大摩擦係数が大きくなった場合にも車輪の回転加速度が正の設定加速度より大きくなる。この場合には車両走行状態検出部ではなく路面状態検出部であることになるが、いずれにしても最大減速度制御が解除されるようにすることが望ましいことには変わりがないため、実用上の不都合はない。
(14)少なくとも前記路面状態検出部が、少なくとも左車輪が接触している路面の摩擦係数と右車輪が接触している路面の摩擦係数との差である摩擦係数左右差を検出する摩擦係数左右差検出部を備え、その摩擦係数左右差検出部により前記摩擦係数左右差の絶対値が正の設定係数差より小さい場合に、前記最大減速度制御許容状態を検出するものである (4)項ないし(12)項のいずれかに記載のブレーキシステム。
左右の車輪が接触している路面の摩擦係数(最大摩擦係数)の差が大きい場合(またぎ路と称する)には、最大減速度制御が実行されることは好ましくない。
(15)前記摩擦係数左右差検出部が、少なくとも、左右車輪のブレーキ作動力差を検出する作動力差検出部を備え、その作動力差検出部により検出されたブレーキ作動力差の絶対値が正の設定作動力差より小さい場合に、前記摩擦係数左右差の絶対値が正の設定係数差より小さいことを検出する手段を含む(14)項に記載のブレーキシステム。
(16)前記摩擦係数左右差検出部が、少なくとも、左右車輪の回転速度差を検出する回転速度差検出部を備え、その回転速度差検出部により検出された回転速度差の絶対値が正の設定速度差より小さい場合に、前記摩擦係数左右差の絶対値が正の設定係数差より小さいことを検出する手段を含む(14)項または(15)項に記載のブレーキシステム。
(17)前記摩擦係数左右差検出部が、少なくとも、左車輪のブレーキ作動力関連量と車輪スリップ関連量との比と右車輪のブレーキ作動力関連量と車輪スリップ関連量との比との差を検出する比差検出部を備え、その比差検出部により検出された比差の絶対値が正の設定比差より小さい場合に、前記摩擦係数左右差の絶対値が正の設定係数差より小さいことを検出する手段を含む(14)項ないし(16)項のいずれかに記載のブレーキシステム。
ブレーキ作動力関連量には、例えば、ブレーキ作動力自体,マスタ圧,車輪に対する接線方向力(車輪の回転軸線と直交しかつその車輪に接する方向の力)等、ブレーキ作動力の増減と共に増減する量が該当し、車輪スリップ関連量には、例えば、車輪のスリップ量,スリップ率,回転減速度等、スリップの増減と共に増減する量が該当する。ブレーキ作動力関連量と車輪スリップ関連量との一方のみに基づいてまたぎ路を検出することも可能であるが、左車輪のブレーキ作動力関連量と車輪スリップ関連量との比と右車輪のブレーキ作動力関連量と車輪スリップ関連量との比との差に基づいて検出する方が検出の信頼性が高い。
(18)前記最大減速度制御許可部が、前記最大減速度制御が行われていない状態において、前記最大減速度要求検出部により前記最大減速度要求が検出され、かつ、前記運転操作状態検出部,車両走行状態検出部および路面状態検出部の少なくとも1つにより最大減速度制御許容状態が検出された場合に、最大減速度制御の開始を許可する最大減速度制御開始許可部を含む (4)項ないし(17)項のいずれかに記載のブレーキシステム。
(19)前記最大減速度制御許可部が、前記最大減速度制御が行われている状態において、前記最大減速度要求検出部により前記最大減速度要求が検出されなくなることと、前記運転操作状態検出部,車両走行状態検出部および路面状態検出部の少なくとも1つにより最大減速度制御許容状態が検出されなくなることとの少なくとも一方が生じた場合に、最大減速度制御の終了を指令する最大減速度制御終了指令部を含む (4)項ないし(18)項のいずれかに記載のブレーキシステム。
(20)前記ブレーキの作動力を制御することにより、前記車輪の制動時におけるスリップが過大になることを回避するアンチロック制御部と、
そのアンチロック制御部と前記最大減速度制御部とを選択する選択部と
を含む (1)項ないし(19)項のいずれかに記載のブレーキシステム。
アンチロック制御も車輪のスリップが過大となることを抑制する制御ではあるが、スリップ状態を監視しつつブレーキ作動力を増減させるものであるため、ブレーキ作動力を最適な大きさに保持する最大減速度制御に比較すれば、車両の減速度が小さくなることを避け得ない。従って、最大減速度制御が、車輪のスリップ状態を第一スリップ状態に保持すべく制御する第一スリップ制御部であり、アンチロック部が、第一スリップ状態より車輪のスリップが小さい第二スリップ状態に近づけるべく制御する第二スリップ制御部であると考えることもできる。その場合、ブレーキシステムを、運転操作状態検出部,車両走行状態検出部および路面状態検出部の少なくとも1つを備えて、その少なくとも1つが最大減速度制御制御許容状態を検出している場合に第一スリップ制御部を選択し、最大減速度制御制御許容状態を検出していない場合に第二スリップ制御部を選択する選択部を含むものとすることが望ましい。
(21)前記一定に保持されるべきブレーキ作動力である保持ブレーキ作動力を決定する保持ブレーキ作動力決定部を含む (1)項ないし(20)項のいずれかに記載のブレーキシステム。
(22)前記車輪に作用する上下方向の力である上下力を検出する上下力検出装置と、
前記車輪に作用する水平方向の力である水平力を検出する水平力検出装置と
を含み、前記保持ブレーキ作動力決定部が、それら上下力検出装置および水平力検出装置により検出された上下力および水平力に基づいて前記保持ブレーキ作動力を決定する(21)項に記載のブレーキシステム。
摩擦係数
(23)前記水平力検出装置が、前記車輪の回転軸線と直交しかつその車輪に接する方向の力である接線方向力を前記水平力として検出する接線方向力検出装置を含む(22)項に記載のブレーキシステム。
(24)前記車輪のスリップ率を検出するスリップ率検出装置を含み、そのスリップ率検出装置により検出されたスリップ率と、前記上下力検出装置および水平力検出装置により検出された前記上下力および水平力とに基づいて、前記保持ブレーキ作動力決定部が前記保持ブレーキ作動力を決定するスリップ率・水平力依拠作動力決定部を含む(21)項ないし(23)項に記載のブレーキシステム。
(25)車輪の回転を抑制するブレーキと、
そのブレーキの作動力を制御することにより、前記車輪の制動時におけるスリップが過大になることを回避するアンチロック制御部と、
運転操作状態検出部,車両走行状態検出部および路面状態検出部の少なくとも1つを含み、その少なくとも1つが定常状態を検出している場合に車両が定常走行状態にあることを検出する定常走行検出部と、
その定常走行検出部により前記定常走行状態が検出されている状態では、前記アンチロック制御部を、前記車輪のスリップ状態を第一スリップ状態に保持すべく制御し、定常走行状態が検出されない状態では前記第一スリップ状態より前記車輪のスリップが小さい第二スリップ状態に近づけるべく制御する制御モード変更部と
を含むことを特徴とするブレーキシステム。
アンチロック制御部は制御モード変更部により制御モードを変更され、車輪のスリップ状態を第一スリップ状態に保持すべく制御する第一制御モードと、第一スリップ状態より車輪のスリップが小さい第二スリップ状態に近づけるべく制御する第二制御モードとで作動する。第一制御モードで作動するアンチロック制御部は、 (1)項ないし(24)項に記載のブレーキシステムにおける最大減速度制御部を包含する。
(26)運転者が最大減速度で車両を減速させることを要求する最大減速度要求を検出する最大減速度要求検出部を含み、その最大減速度要求検出部が最大減速度要求を検出しており、かつ、前記定常走行検出部が前記定常走行状態を検出している間、前記制御モード変更部が前記アンチロック制御部を前記第一スリップ状態に保持すべく制御する(25)項に記載のブレーキシステム。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施形態であるブレーキシステムを図面に基づいて詳細に説明する。
本ブレーキシステムは、図1に示すように、制動操作部材としてのブレーキペダル10と、動力式液圧源としてのポンプ装置12と、マスタシリンダ14と、左右前輪16,17に設けられたブレーキシリンダ18,19を含むブレーキ20,21と、左右後輪24,25に設けられたブレーキシリンダ26,27を含むブレーキ28,29とを含む。なお、本実施形態においては、前輪16,17が駆動輪であり、前輪駆動車なのである。
ブレーキ20,21,28,29は、摩擦ブレーキであり、液圧により非回転体に保持された摩擦係合部材が車輪と共に回転させられるブレーキ回転体に押し付けられることによって、車輪16,17,24,25の回転を抑制する液圧ブレーキである。
【0009】
ポンプ装置12は、ポンプ30と、そのポンプ30を駆動するポンプモータ32と、アキュムレータ34とを含む。ポンプ30は、リザーバ36の作動液を加圧して吐出するものであり、ポンプ30から吐出された高圧の作動液がアキュムレータ34に蓄えられる。アキュムレータ34の液圧はアキュムレータ圧センサ38によって検出されるが、ポンプモータ32は、アキュムレータ圧センサ38による検出液圧が予め定められた設定範囲内に保たれるように制御される。ポンプ30の吐出圧側には、ポンプ30への作動液の逆流を防止するための逆止弁39が設けられている。また、ポンプ装置12の高圧側と低圧側との間にはリリーフ弁40が設けられ、ポンプ30の吐出圧が過大になることが回避される。
なお、ポンプ30は、プランジャポンプであっても、ギヤポンプであってもよい。
【0010】
マスタシリンダ14は、2つの加圧室を含むタンデム式のものであり、ブレーキペダル10が踏み込まれると、2つの加圧室には同じ高さの液圧が発生させられる。一方の加圧室には液通路44により左後輪24のブレーキシリンダ26が接続され、他方の加圧室には、液通路46により左前輪16のブレーキシリンダ18が接続される。
【0011】
液通路44,46の途中には、それぞれマスタ遮断弁50,52が設けられている。また、左右前輪16,17のブレーキシリンダ18,19、左右後輪24,25のブレーキシリンダ26,27は、それぞれ、連通路54,56によって接続されており、連通路54,56には、それぞれ、連通弁58,60が設けられている。
マスタ遮断弁50,52は、コイル62に電流が供給されない場合に開状態にある常開弁であり、連通弁58,60もコイル64に電流が供給されない場合に開状態にある常開弁である。この状態においては、マスタシリンダ14の作動液が左右前後輪16,17,24,25のブレーキシリンダ18,19,26,27に供給され、ブレーキ20,21,28,29が作動させられる。
【0012】
液通路46のマスタ遮断弁52より上流側の部分にはシミュレーション装置66が設けられている。シミュレーション装置66は、ストロークシミュレータ67とシミュレータ用開閉弁68とを含むものであり、液通路46に、ストロークシミュレータ67がシミュレータ用開閉弁68を経て接続されている。シミュレータ用開閉弁68は、コイル69に電流が供給されない場合に閉状態にある常閉弁である。
【0013】
前記ポンプ装置12は、液通路72を経てすべてのブレーキシリンダ18,19,26,27に接続される。また、ブレーキシリンダ18,19,26,27の各々には、それぞれ、個別液圧制御弁装置としてのリニアバルブ装置80〜86が設けられている。リニアバルブ装置80〜86は、それぞれ、増圧用リニアバルブ90と減圧用リニアバルブ92とを含む。増圧用リニアバルブ90が上述の液通路72に設けられ、減圧用リニアバルブ92がブレーキシリンダ18,19,26,27とリザーバ36とを接続する液通路94に設けられる。リニアバルブ装置80〜86の制御により、ブレーキシリンダ18,19,26,27の液圧が、ポンプ装置12の作動液を利用して別個に制御される。
【0014】
増圧用リニアバルブ90,減圧用リニアバルブ92は、図2に示すように、いずれも常閉弁であり、コイル100を含むソレノイド102と、弁子104および弁座106とスプリング108とを含むシーティング弁110とを含む。
シーティング弁110においては、弁子104を弁座106に着座させる方向にスプリング108の付勢力が作用するとともに、弁子104を弁座106から離間させる方向に当該リニアバルブの前後の液圧差に応じた差圧作用力とコイル100への供給電流量に応じた電磁駆動力とが作用する。
コイル100に電流が供給されない状態において、差圧作用力がスプリング108の付勢力より小さい場合は、弁子104が弁座106に着座させられた閉状態に保たれるが、差圧作用力が付勢力より大きい場合は、弁子104が弁座106から離間させられる。
コイル100に電流が供給される状態においては、弁子104の弁座106に対する相対位置が、電磁駆動力,スプリング108の付勢力,差圧作用力の関係によって決まるのであり、相対位置が電磁駆動力の制御によって制御される。
【0015】
増圧用リニアバルブ90に加えられる差圧作用力は、ポンプ装置12の液圧(アキュムレータの液圧)とブレーキシリンダ液圧との差圧に応じた力であり、減圧用リニアバルブ92に加えられる差圧作用力は、ブレーキシリンダ液圧とリザーバ36の液圧との差圧に応じた力であり、リザーバ36の液圧はほぼ大気圧であるため、ブレーキシリンダの液圧に応じた力になる。いずれにしても、電磁駆動力を制御すれば、すなわちコイル100への供給電流を制御すれば、ブレーキシリンダの液圧を制御することができる。
【0016】
また、液通路72の増圧用リニアバルブ90とポンプ装置12との間には、液圧センサ120が設けられている。液圧センサ120によって増圧用リニアバルブ90の高圧側の作動液の液圧が検出される。増圧用リニアバルブ90の高圧側の液圧として液圧センサ120による検出値が採用されれば、ポンプ装置12と増圧用リニアバルブ90との間の圧力損失の影響を小さくすることができ、アキュムレータ圧センサ38による検出値を採用する場合に比較して、リニアバルブ装置80〜86の制御精度を向上させることができる。
【0017】
本液圧ブレーキ装置は、制御装置150によって制御される。図3に示すように、制御装置150は、CPU152,ROM154,RAM156,入出力部158等を有するコンピュータ159を主体とするものである。入出力部158には、上述のアキュムレータ圧センサ38,液圧センサ120に加えて、液通路44,46の液圧をそれぞれ検出するマスタ圧センサ160,162、ブレーキシリンダ18,19,26,27の液圧をそれぞれ検出するブレーキ圧センサ164〜167、各車輪16,17,24,25の車輪速度をそれぞれ検出する車輪速センサ169〜172、ブレーキペダル10に加えられる踏力を検出する踏力センサ174、ブレーキペダル10が操作状態にあるか否かを検出するブレーキスイッチ176、車両のヨーレイトを検出するヨーレイトセンサ178、車輪に加えられる前後力、上下力、横力をそれぞれ検出するタイヤ作用力検出装置180等が接続されている。また、ポンプモータ32、各リニアバルブ装置80〜86のコイル100、各電磁開閉弁50,52,58,60,68のコイルがそれぞれ駆動回路182を介して接続される。
なお、タイヤ作用力検出装置180は、前後力、横力、上下力をそれぞれ検出するものとする必要は必ずしもなく、少なくとも前後力を検出するものとすればよい。
【0018】
本液圧ブレーキ装置においては、踏力センサ174による出力信号に基づいて運転者の所望する要求制動力としての要求ブレーキ圧が求められる。また、要求ブレーキ圧は、マスタ圧センサ160,162による出力信号に基づいて求めることもできる。
タイヤ作用力検出装置180は、本実施形態においては、車輪16,17,24,25にそれぞれ設けられ、車輪に加えられる前後力、上下力、横力をそれぞれ検出する。タイヤ作用力検出装置180は、図示を省略するが、タイヤを保持するホイールとアクスルハブとの間の回転体側に設けられた検出部200と、非回転体側に設けられた演算部202とを含み、これら検出部200と演算部202との間で通信が行われる。
検出部200は、前後力用歪みゲージ210,上下力用歪みゲージ212,横力用歪みゲージ213,信号処理部214,送信器216,電源としての電池(バッテリ)218等を含み、演算部202は、受信器220,信号処理部222等を含む。この作用力検出装置180については、特開2003−14563として公開された本出願人の出願明細書に詳細に説明されているため、ここでの詳細な説明は省略する。
【0019】
前後力用歪みセンサゲージ210,上下力用歪みゲージ212,横力用歪みゲージ213は、ホイールとアクスルハブとの間に設けられた検出体の、ホイールとアクスルハブとの相対移動に伴って変形させられる部分にそれぞれ設けられる。前後力用歪みゲージ210は、前後力に基づく相対移動に伴って変形させられる部分に取り付けられ、上下力用歪みゲージ212は、上下力に基づく相対移動に伴って変形させられる部分に取り付けられ、横力用歪みゲージ213は、横力に基づく相対移動に伴って変形させられる部分に取り付けられる。信号処理部214は、歪みゲージ210,212,213の電気信号を通信に適した信号(情報)に変換するものであり、送信器216はアンテナ等を含むものである。信号処理部214において処理された歪みを表す通信用情報は送信器216を経て非回転体側の演算部202に送信される。
【0020】
演算部202は、非回転体側の部材の、車輪に比較的近い位置に設けられる。演算部202においては、受信器220において検出部200から送信された情報が受信され、信号処理部222において、歪みに基づいて、前後力、上下力、横力が求められ、それを表す情報が制御装置150に供給される。回転体側に設けられた送信器216および非回転体側に設けられた受信器220等によって通信部224が構成される。
なお、歪みゲージは、ホイールに取り付けたり、アクスルハブに取り付けたりすることができる。また、車輪を保持する非回転部材であるサスペンションアームに取り付けることも可能であり、非回転部材に取り付ければ、情報を送信、受信するための通信部が不要となる。
【0021】
通常制動時には、マスタ遮断弁50,52が閉状態にされることによってブレーキシリンダ18,19,26,27がマスタシリンダ14から遮断される。また、連通弁58,60が閉状態にされ、シミュレータ用開閉弁68が開状態にされる。この状態において、ブレーキシリンダ18,19,26,27の液圧が、ポンプ装置12の作動液を利用して、リニアバルブ装置80〜86のコイル100への供給電流の制御によりそれぞれ制御される。ブレーキ圧が運転者の所望する要求ブレーキ圧に等しくなるように、リニアバルブ装置80〜86への供給電流が決定される。なお、マスタシリンダ14にはストロークシミュレータ67が連通させられるため、ブレーキペダル10のストロークが殆ど0になることを回避することができる。
【0022】
ポンプ装置12や電気系統に異常が生じた場合には、各電磁制御弁は図1に示す原位置に戻される。マスタ遮断弁50,52が開状態に、連通弁58,60が開状態にされるため、ブレーキシリンダ18,19,26,27がマスタシリンダ14に連通させられる。また、シミュレータ用開閉弁68が閉状態にされるため、ストロークシミュレータ66がマスタシリンダ42から遮断され、作動液が無駄に消費されることが回避される。さらに、リニアバルブ装置80〜86の各コイル100には電流が供給されなくなるため、増圧リニアバルブ90,減圧リニアバルブ92はいずれも閉状態にされる。ブレーキシリンダ18,19,26,27がポンプ装置12から遮断される。
【0023】
また、運転者が可能な限り大きな減速度で車両を減速することを要求している最大減速度要求が検出され、かつ、最大減速度制御が許可されていれば最大減速度制御が行われ、あるいは、車輪のスリップが過大となる傾向がある場合にはアンチロック制御が行われる。最大減速度制御中において、最大減速度制御を解除すべき状態となれば減速度制御が解除され、その時点でアンチロック制御が必要であれば、アンチロック制御が行われる。アンチロック制御は、車両が停止した場合、ブレーキペダル10の踏み込みが解除された場合等の予め定められた終了条件が満たされた場合に終了させられる。最大減速度制御においては、車両の減速度が可能な限り大きくなるように、ブレーキシリンダ18,19,26,27の液圧であるブレーキ圧が適正値に保持され、また、アンチロック制御においては、制動スリップ状態が適正状態に近づくように、ブレーキ圧が増圧されたり減圧されたりする。いずれにしても、ブレーキ圧はポンプ装置12の作動液を利用して、リニアバルブ装置80〜86のコイル100への供給電流の制御により制御される。
【0024】
最大減速度制御は、最大減速度要求が検出された時点に走行中の路面と車輪との間に期待できる最大摩擦係数μmax(これが、通常、摩擦係数と称されているものであるが、本明細書においては、路面利用μ、すなわち制動のために実際に利用される摩擦係数との違いを明確にするために最大摩擦係数と称する)に応じて決まる最大減速度Gmaxで車両を減速するようにブレーキ圧を制御するものであり、Gmax制御と略称することとする。Gmax制御は、原則として、図4に示すように初期段階,中間段階および保持段階の3つの段階で実行される。初期段階は、上記最大摩擦係数μmaxを取得するまでの段階であり、中間段階は一旦ブレーキ圧を低下させる段階であり、保持段階は、ブレーキ圧を、初期段階において取得された最大摩擦係数μmaxに基づいて決まる保持ブレーキ圧まで増大させ、そのブレーキ圧を保持する段階である。Gmax制御の後に終了段階が実行されるのが普通であるが、場合によっては、図5に示すように途中からアンチロック制御に移行することや、図6に示すようにGmax制御は全く行われず、当初からアンチロック制御が実行されることもある。Gmax制御は、アンチロック制御の一種とも言い得るため、新アンチロック制御あるいは保持型アンチロック制御と称し、それとの比較において、車輪のスリップ状態を監視しつつブレーキ圧を増圧したり減圧したりして実際のスリップ状態を目標スリップ状態に近づけるアンチロック制御を従来型アンチロック制御と称することもできる。
【0025】
上記制御を行うために、制御装置150のROM154には図7ないし図10のフローチャートで表される制御プログラムが格納されている。イグニッションスイッチ等の車両メインスイッチがオン状態にされるのに応じて図示しない初期設定が実行された後、車両メインスイッチがオン状態にされている間、本制御プログラムが微小時間毎に繰り返し実行される。図7のステップ1(以下、S1と略記し、他のステップについても同様とする)において、ブレーキペダル10の踏込みが開始されてブレーキスイッチ176がオンとなることが待たれる。オンになれば、S2,S2aを経、S3においてGmax制御要求がなされているか否かが判定される。この判定は、例えば、制動操作部材の操作速度が設定操作速度より大きくかつ制動操作部材の操作力が設定操作力より大きいか否かにより行われる。本実施形態においては、図8に示すように、ブレーキペダル10の操作速度v(具体的には踏力センサ174の出力信号に基づいて取得される踏力fの変化速度であり、ここにおいては正の値として取得される)が正の設定操作速度V1より大きく(S21)かつ踏力f(常に正の値として取得される)が設定踏力F1より大きい(S22)場合にGmax制御要求がなされていると検出されるが、マスタ圧センサ160,162の出力信号に基づいて取得されるマスタ圧の変化勾配が正の設定変化勾配より大きくかつマスタ圧が正の設定マスタ圧より大きい場合にGmax制御要求がなされていると検出されるようにすることもできる。上記設定踏込速度(設定操作速度)V1は、例えば800N/sec以上の範囲あるいは400N/sec以上の範囲から選定され、設定踏力(設定操作力)F1は例えば80N以上の範囲あるいは160N以上の範囲から選定されるというように、それぞれ急ブレーキと称される範囲の下限値に設定される。なお、ブレーキペダル10の設定踏込速度と設定踏力とは、設定踏力が大きい場合には設定踏込速度が比較的小さくてもGmax制御要求領域にあるとされるように、互いに関連を以て設定されることが望ましく、その一例を図13に示す。100N,200N等が設定踏力、500N/secN/,1000N/sec等が設定踏込速度であり、斜線が施された領域がGmax制御要求領域である。図13においては、踏力が設定踏力100N以下である場合には、踏込速度のいかんを問わずGmax制御要求領域とはされないようになっているが、踏込速度が設定踏込速度1000N/secより大きい場合には、踏力のいかんを問わずGmax制御要求領域とされるようにすることも可能である。
【0026】
S3においてGmax制御の要求が検出されれば、S4においてGmax制御の開始が許容されているか否かが判定される。この判定は、例えば、運転者による運転操作の状態と、車両の走行状態と、路面の状態とに基づいて行われるようにすることができる。本実施形態においては、運転操作の一種としての操舵操作の状態と、車両の走行状態の一種としてのヨーレイトと、路面状態の一種としての路面摩擦係数μの左右差等に基づいて行われる。具体的には、図9に示すように、操舵角速度ωの絶対値が正の設定操舵角速度値Ω1より小さく(S31)、操舵角θの絶対値も正の設定操舵角値Θ1より小さい(S32)場合に、運転操作状態がGmax制御の開始を許容する状態にあると判定され、ヨーレイトγの絶対値が正の設定ヨーレイト値Γ1より小さくかつヨーレイトの変化速度γ´の絶対値が設定ヨーレイト変化速度値Γ1´より小さい場合に車両の走行状態がGmax制御の開始を許容する状態にあると判定され、路面摩擦係数μの左右差Δμの絶対値が設定左右差値ΔΜ1より小さい場合に路面状態がGmax制御を許容する状態にあると判定されるのである。上記設定操舵角速度値Ω1は、例えば、15°/sec以下あるいは30°/sec以下というように小さい操舵角速度値の範囲から選定された値に設定されることが望ましく、実質的に保舵中であると言い得るほど小さい値に設定されることがさらに望ましい反面、上記設定操舵角値Θ1は、例えば、最大操舵角の50%以上あるいは70%以上というように、比較的大きい操舵角値の範囲から選定された値に設定されても差し支えない。設定左右差値ΔΜ1は、路面摩擦係数μの大きい方の10%以下あるいは20%以下というように比較的小さい値の範囲から選定された値に設定されることが望ましい。
【0027】
S4でGmax制御の開始を許容する状態にあると判定されれば、S5でフラグFBが立てられる(1とされる)ため、次回にはS3およびS4の判定がスキップされる。S5に続いて、S6でGmax制御を解除すべき状態であるか否かが判定される。この判定は、本実施形態においては、運転操作状態,車両走行状態,路面状態がGmax制御の継続を許容する状態にあるか否か等に基づいて行われる。具体的には。図10に示すように、S41ないしS47の判定により行われるのであるが、S41,S42,S45,S46およびS47は図9におけるS31,S32,S33,S34およびS35とそれぞれ同様な判定である。ただし、判定の基準となる各設定値は図9におけるそれらと同じ値にしても、異なる値にしてもよい。S43およびS44はGmax制御を解除すべき状態であるか否かの判定に特有のものであり、S43においては踏力fが正の設定踏力F2より大きいか否かが判定される。設定踏力F2は前記図8における設定踏力F1より小さい値に設定され、ブレーキペダルが相当程度緩められたか否かが判定されることとなり、この判定は運転者がもはやGmax制御を要求しなくなったか否かの判定であると考えることもできる。S44はにおいてはブレーキペダル10の操作速度vの絶対値が設定操作速度値V2より小さいか否かが判定される。ブレーキペダル10が意図的に踏み増され、あるいは緩められたか否かが判定されるのである。この判定は運転操作状態の一種としての制動操作状態が定常状態にあるか否かの判定であると考えることもできる。
【0028】
S6の判定結果がYESであれば、S7でGmax制御の解除が行われるとともにフラグFBが倒され(0にされ)、NOであればS9でGmax制御が実行される。これらについては後に詳述する。
前記S3においてGmax制御が要求されていないと判定された場合、あるいはS4でGmax制御の開始を許容する状態にないと判定された場合には、S10でアンチロック制御を行うべきか否かが判定される。未だアンチロック制御が行われていない状態でS10が実行される場合には、アンチロック制御開始条件が満たされたか否かが、また、既にアンチロック制御が行われていれば、アンチロック制御終了条件が満たされたか否かが判定されるのであるが、従来公知のそれらと同様であるため詳細な説明は省略する。そして、アンチロック制御を行うべきである場合にはS11でフラグFAが立てられるとともに、S8においてアンチロック制御が行われる。それに対し、アンチロック制御を行う必要がない場合には、S12でフラグFAが倒されるとともに、S13において通常制御が行われる。通常制御は、ブレーキ圧をブレーキペダル10の踏力に対応する大きさに制御するものであり、ブレーキペダル10の踏込開始当初、すなわちS1の判定がYESとなって短時間の間は、S2,S3,S4およびS10の判定結果がNOとなるため、S13の通常制御が必ず行われる。また、S11でフラグFAが立てられれば、S2の判定結果がYESとなって、S2a以下のGmax制御に関するステップがスキップされ、S8のアンチロック制御が実行されるため、アンチロック制御が先に開始された場合にはもはやGmax制御は行われない。
【0029】
次に、S9のGmax制御の詳細を説明する。Gmax制御は、制御パラメータとしてのスリップ状態関連量としての前後力分担関連量に基づいて行われる。前後力分担関連量が最大路面利用μ対応前後力分担関連量に保たれるようにブレーキ圧が制御されるのである。また、本実施形態においては、すべての車輪において路面利用μが最大となるように制御される。そのため、車両全体の前後力をその時点に車両が走行している路面上において期待できるうちでは最大の前後力とすることができ、最大の減速度が得られる。停車時には最短の停止距離が得られるのであり、Gmax制御は、μmax制御、停止距離最短制御と称することもできる。この制御は前述のように、初期段階,中間段階および保持段階の3つの段階で実行される。初期段階は、最大摩擦係数μmaxを取得するまでの段階であり、最大摩擦係数μmaxの取得は以下の原理で行われる。
【0030】
前後力分担関連量は、前後力に基づいて求められた車体速度関連量と車輪速度関連量とに基づいて取得される。車輪速度関連量と車体速度関連量とに基づけば、その車輪の分担する車両における前後力の割合に関連する量を取得することができる。また、前後力分担関連量によれば、車輪のスリップ状態を推定することができる。この意味において、前後力分担関連量を推定スリップ状態関連量と称することもできる。
本実施形態においては、前後力分担関連量としての制動力分担関連量Sが、車体速度関連量としての車体加速度をGvとし、車輪速度関連量としての車輪加速度をGwとした場合に、式
S=1−Gw/Gv
で表される値とされる。
【0031】
図11に示すように、スリップ率が小さく、スリップ率の増加に伴って路面利用μが比例的に増加する線形領域においては、ブレーキ圧の増加に伴って路面摩擦力が増加する。路面利用μは、路面とタイヤとの間の最大摩擦係数μmaxまで増加するがそれ以上増加することはない。
路面利用μが最大である場合に摩擦力が最大になるが、車体減速度は車体加速度と符号が正負逆のものであって、車両全体の摩擦力(すべての車輪の摩擦力の合計)が最大の場合に最大になる。この時の制動力分担関連量が最大路面利用μ対応制動力分担関連量である。本実施形態においては、路面の最大摩擦係数μmaxが均一である限りすべての車輪の摩擦力が同時に最大になるようにブレーキ20,21,28,29が設計されており、すべての車輪について同じ勾配でブレーキ圧が増加させられる。
ブレーキ圧がさらに増加すると、摩擦力はそれ以上大きくなることはないが、車輪減速度が大きくなるため、スリップ率が過大になり、ロック傾向が強くなる。この領域はスリップ率の増加に伴って路面利用μが比例的に大きくなることがない非線形領域である。
【0032】
制動力分担関連量Sは、図12の実線で表され、負の値である。図に示すように、スリップ率と同じ大きさになるわけではないが、図11と比較すれば明らかなように、前後力分担関連量によれば、ロック傾向が強いか否か等を推定することができる。制動スリップの増加傾向においては、車輪減速度(車輪減速度は車輪加速度と符号が正負逆のものである)が車体減速度に対して大きくなるため負の値になるのである。
図11に示す線形領域において、車輪減速度が車体減速度の増加に伴って増加するため、図12に示すように、制動力分担関連量Sの絶対値は、車体減速度の増加に伴って僅かに増加するかほぼ一定に保たれる。ただし、制動当初の車体減速度が小さい領域においては、車輪減速度の増加勾配が車体減速度の増加勾配に対して大きいため、制動力分担関連量の絶対値が漸増する。制動初期には、車輪減速度Gwの方が車体減速度Gvより増加勾配が大きいが、その後、これらは比例的に増加するのである。
このように、この制動スリップが小さい線形領域においては、制動力分担関連量の絶対値が大きいほど、その車輪の分担割合が大きいと考えられる。また、制動力分担関連量の絶対値が小さく、変化勾配が小さい場合は制動スリップが小さい線形領域にあると考えることができる。
【0033】
また、車体減速度はすべての車輪についての路面と車輪との間の摩擦力の和に応じた大きさであり、各々の車輪の摩擦力は路面とその車輪との間の最大摩擦係数μmaxに対応する大きさより大きくなることはない。車体減速度は、複数の車輪の摩擦力の合計が最大になった場合に最大となる。
すなわち、すべての車輪についての路面の最大摩擦係数μmaxが同じ場合において、各々の車輪のブレーキ作動力を制御することにより、すべての車輪についての摩擦力が同時に最大となるようにされる場合には、制動力分担関連量は図12の実線(車両によって決まる予め定められ関係を保った状態)に従って変化し、摩擦力が最大になった時の値がaになる。制動力分担関連量がaになった場合には、複数の車輪の各々の分担割合は予め決まった値となる。
その後、ブレーキ作動力が増加しても摩擦力、すなわち、車体減速度が大きくなることがないのに対して、車輪減速度は大きくなる。制動スリップが急に大きくなり、ロック傾向が強くなる。一方、車体減速度は減少に転じ、制動力分担関連量Sの絶対値が急激に大きくなる(b〜c)。
【0034】
それに対して、複数の車輪のうちの1輪について路面の最大摩擦係数μmaxが小さい場合に、すべての車輪のブレーキ作動力が路面の最大摩擦係数μmaxが均一である場合と同様に増加させられれば、その車輪の制動力分担関連量Sの絶対値は2点鎖線に示すように増加する。他の車輪についての摩擦力が増加傾向にあるため、車体減速度は増加するが、その1輪については、車体減速度の増加に比較して車輪減速度の増加が大きくなるため、制動力分担関連量Sの絶対値が通常の場合(路面の最大摩擦係数μmaxが均一である場合)に比較して急速に増加するのである。
この場合には、車体減速度が最大になる以前であっても、制動力分担関連量Sの絶対値の増加勾配が他の車輪の増加勾配より大きくなれば、その車輪についての制動分担割合が小さくなり始めたことがわかる。また、その車輪のスリップ状態が他の車輪よりロック状態に近い状態にあることがわかるのである。
【0035】
このように、制動力分担関連量Sの絶対値が大きい場合は小さい場合よりその車輪のロック傾向が強いことがわかる。制動力分担関連量Sによれば、車輪のスリップの状態を推定することができるのであり、スリップ状態関連量の一態様であるとすることができる。
また、制動力分担関連量Sは、制動力が路面の最大摩擦係数μmaxとの関係において過大になる前と後とでは変化状態が大きく異なる量である。例えば、最大摩擦係数μmaxが均一である状態において、すべての車輪についての摩擦力が同時に最大となるように各車輪のブレーキ作動力が制御される場合には、車体減速度が最大になる前と後とにおいて変化状態が大きく異なるのである。最大になる以前においては、車体減速度の増加に伴って緩やかにその絶対値が増加し、最大になった後においては、車体減速度が減少に転じ、絶対値の増加勾配が大きくなるのである。また、一部の車輪に対応する路面の最大摩擦係数μmaxが他の車輪に対応する路面の最大摩擦係数μmaxに比較して明瞭に小さい場合に、すべての車輪についての摩擦力が同時に最大となるように各車輪のブレーキ作動力が制御される場合には、一部の車輪の制動力分担関連量Sの絶対値が、他の車輪のそれに比較して明らかに急速に増大する。そのため、制動力分担関連量によれば、車体減速度が最大になった時点や、制動力が最大摩擦係数μmaxとの関係において過大になった時点等を精度よく検出することができ、スリップ状態を精度よく推定することができるのであり、制動力分担関連量Sは前後力の制御に適しているといえる。
【0036】
車体加速度は、車両全体に加えられる前後力(総前後力)を車両全体に加えられる上下力(総上下力)で割ることによって取得することができる。総前後力Fsxは、各輪毎の前後力Fxiの和とすることができる。
Fsx=ΣFxi=FxfL+FxfR+FxrL+FxrR
車両全体に加えられる上下力(総上下力)Fszは、各輪に加えられる上下力Fziの和とすることができる。また、この総上下力は車両重量W(=M・g ただし、Mは車両質量)でもある。
Fsz=ΣFzi=FzfL+FzfR+FzrL+FzrR
したがって、車体加速度Gvは、重力加速度をgとした場合に、式
Gv=(Fsx/Fsz)・g
に従って求めることができる。
【0037】
このように、本実施形態においては、スリップ状態量としての前後力分担関連量Sが、前後力と上下力と車輪加速度とに基づいて求められるのであり、車輪速度に基づいて推定される車体速度に基づいて求められるわけではない。そのため、各車輪の前後力分担関連量を精度よく取得することができる。
なお、車両重量W(=M・g)は、車種で決まる車体重量、または、その車体重量と人間の標準体重に標準乗車人数を掛けた値とを加えた値とすることができる。車体重量に対して人間の重量は小さいからである。
また、車両重量Wは、前後Gセンサを設け、直進加速中等外乱が小さい状態における総前後力Fsxと前後Gセンサによって検出された車体加速度Gvとに基づいて取得することもできる。
W=(Fsx/Gv)・g
前後Gセンサは、普通、慣性を利用して車体加速度を検出するものであり、例えば、慣性に起因するマスの変位に基づいて検出するものである。そのため、外乱の影響を受けやすい。それに対して、直進制動中または直進駆動中であれば、外乱の影響を小さくすることができる。
【0038】
車体加速度は、さらに、荷重移動量に起因するモーメントに基づいて取得することもできる。前輪の上下力の変化量をΔFzfとし、ホイールベース、重心の高さをそれぞれL、Hとし、車両の重量(総上下力)Fszとした場合、前輪への荷重移動量に起因するモーメントと制動または駆動に応じたモーメントとが等しいとすることができるため、式
ΔFzf・L=Gv・Fsz・H
が成立する。ここで、左辺は、前輪の上下力の変化量と後輪の上下力の変化量とは符号が逆になるため、ホイールベースを掛ければよいのである。すなわち、左辺は、後輪の上下力の変化量ΔFzrにホイールベースを掛けた値とすることもできる。
また、車体加速度は、各車輪毎における前後力を上下力で割った値で近似することもできる。
Gv≒Fxi/Fzi
【0039】
Gmax制御の前記初期段階は、上記のように路面利用μが最大となる場合の前後力分担関連量である最大路面利用μ対応前後力分担関連量Sμmaxを求める段階である。前述のように、すべての車輪のブレーキ圧が一定の勾配で増加させられる場合において、前後力分担関連量の絶対値の増加勾配が急激に大きくなった時点の前後力分担関連量または増加勾配が急激に大きくなった時点からわずかに絶対値が増加した時点の値が最大路面利用μ対応前後力分担関連量Sμmaxとされるのである。そして、各車輪について最大路面利用μ対応前後力分担関連量Sμmaxが取得された時点のブレーキ圧が、ブレーキ圧センサ164,165,166,167の出力信号に基づいて取得され、各車輪と対応付けてRAM156に記憶される。この記憶されるブレーキ圧は、図11におけるスリップ率Saにほぼ対応する最大路面利用μ対応ブレーキ圧である。
以上の説明から明らかなように、上記最大路面利用μ対応前後力分担関連量Sμmaxは、路面の最大摩擦係数μmaxに対応するものであるので、最大路面利用μ対応前後力分担関連量Sμmaxの取得は実質的に路面の最大摩擦係数μmaxの取得に相当する。
【0040】
本Gmax制御は、各ブレーキシリンダ18,19,26,27のブレーキ圧を、以上のようにして取得し、記憶した最大路面利用μ対応ブレーキ圧に保持することにより、車両を最大減速度で減速させることを基本とするものであるが、各車輪に対応するブレーキシリンダのブレーキ圧が、最大路面利用μ対応ブレーキ圧が取得された時点から直ちに保持されるようにしたのでは、保持されるブレーキ圧が最大路面利用μ対応ブレーキ圧より大きくなり、車輪のスリップが過大となることを避け得ない。そこで、本実施形態においては、図4に示すように、ブレーキ圧を予め設定されたパターンに従って減圧および保持した後、最大路面利用μ対応ブレーキ圧まで増圧する中間段階が実行され、その後、ブレーキ圧を保持する保持段階が実行されるようにされている。
【0041】
本実施形態においては、前述のように、S10においてアンチロック制御を行うべきであると判定される前に、S3およびS4の判定結果がYESとなり、Gmax制御の開始が許容された場合にのみGmax制御が実行されるようになっている。そして、S3の判定は、踏力fが設定踏力F1より大きいか否かの判定を含む。したがって、最大摩擦係数μmaxが小さい路面上における制動時には、S10のYES判定がS3のYES判定より先になることがあり、その場合にGmax制御が実行されないこととなる。
【0042】
以上の説明から明らかなように、本実施形態においては、踏力センサ174と、コンピュータ159のS3を実行する部分とにより最大減速度要求検出部が構成され、コンピュータ159のS2〜S7およびS9を実行する部分により最大減速度制御部が構成されている。また、コンピュータ159のS31およびS32を実行する部分により運転操作状態検出部、S33およびS34を実行する部分により車両走行状態検出部、S35を実行する部分により路面状態検出部がそれぞれ構成されている。また、コンピュータ159のS4を実行する部分により最大減速度制御開始許可部が、S6を実行する部分により最大減速度制御解除指令部がそれぞれ構成され、それら最大減速度制御開始許可部および最大減速度制御解除指令部により最大減速度制御許可部が構成されている。さらに、別の見方をすれば、コンピュータ159のS8およびS9を実行する部分によりアンチロック制御部、S31,S34,S35,S41,S44,S46,S47等を実行する部分により定常走行検出部、S2,S4,S6,S7,S10,S11等を実行する部分により制御モード変更部がそれぞれ構成されている。
【0043】
なお、最大摩擦係数μmax(あるいは最大路面利用μ対応前後力分担関連量Sμmax)は、ブレーキ圧と路面利用μとの関係に基づいて取得することもできる。路面利用μは、各車輪において、前後力を上下力で割ることによって求めることができる。そして、ブレーキ圧の増加に伴って路面利用μが増加しなくなった時点における路面利用μ(あるいは前後力分担関連量)が最大摩擦係数μmax(あるいは最大路面利用μ対応前後力分担関連量Sμmax)であり、その時点のブレーキ圧が各車輪と対応付けてRAM156に記憶されるようにすれば、そのブレーキ圧を保持段階における保持ブレーキ圧として使用することができる。また、ブレーキ圧と路面利用μとの関係に基づく最大摩擦係数μmaxの取得には、車体減速度GVが不要であるため、すべての車輪の最大摩擦係数μmaxを互いに独立に取得することができる。例えば、複数の車輪においてGmax制御が開始された後であっても、残り車輪の最大摩擦係数μmaxの取得が可能なのであり、Gmax制御を従来型のアンチロック制御と同様に利用することができるのである。また、最大摩擦係数μmaxが小さい路面上においてもGmax制御が実行されるようにすることもできる。ただし、一旦Gmax制御が開始された後に、運転操作状態,車両走行状態,路面状態の少なくとも1つが定常状態ではなくなれば、Gmax制御が解除され、従来型のアンチロック制御に移行されるようにすることが望ましい。なお、Gmax制御が解除された場合に、従来型のアンチロック制御に移行されるようにすることは不可欠ではなく、通常制御が行われるようにすることも可能である。
【0044】
さらに、タイヤ作用力検出装置180を含むものとすることも不可欠ではない。要するに、最大摩擦係数μmaxあるいはそれに対応するブレーキ圧を取得することができればよいのである。例えば、ブレーキ圧等タイヤ前後力関連量(タイヤ前後力自体あるいはそれの演算を可能にする量)と、車体減速度,車体横加速度やサスペンションストローク等タイヤ上下力関連量(タイヤ上下力自体あるいはそれの演算を可能にする量)とに基づけば、最大摩擦係数μmaxを取得することができ、あるいは、スリップ率が設定値に達した際のブレーキ圧を取得し、それに設定係数を乗じて保持ブレーキ圧とすることも可能である。
【0045】
以上、本発明のいくつかの実施形態を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、本発明は、前記〔発明が解決しようとする課題,課題解決手段および効果〕の項に記載された態様を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した形態で実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態であるブレーキシステムの回路図である。
【図2】上記ブレーキシステムの構成要素である増圧用リニヤバルブおよび減圧用リニヤバルブを概念的に示す図である。
【図3】上記ブレーキシステムの制御装置を示すブロック図である。
【図4】上記ブレーキシステムの作動を説明するためのグラフである。
【図5】上記ブレーキシステムの別の作動を説明するためのグラフである。
【図6】上記ブレーキシステムのさらに別の作動を説明するためのグラフである。
【図7】上記ブレーキシステムの制御プログラムを表すフローチャートである。
【図8】上記フローチャートの一部の詳細を示すフローチャートである。
【図9】図7のフローチャートの別の一部の詳細を示すフローチャートである。
【図10】図7のフローチャートのさらに別の一部の詳細を示すフローチャートである。
【図11】前記ブレーキシステムにおける最大摩擦係数の取得を説明するためのグラフである。
【図12】前記ブレーキシステムにおける最大摩擦係数の取得を説明するための別のグラフである。
【図13】前記ブレーキシステムにおける最大減速度制御(Gmax制御)要求領域の設定の一例を示すグラフである。
【符号の説明】
10:ブレーキペダル 12:ポンプ装置 14:マスタシリンダ 16:左前輪 17:右前輪 18,19:ブレーキシリンダ 20,21:ブレーキ 24:左後輪 25:右後輪 26,27:ブレーキシリンダ28,29:ブレーキ 38:アキュムレータ圧センサ 50,52:マスタ遮断弁 54,56:連通路 58,60:連通弁 66:シミュレーション装置 80,82,84,86:リニヤバルブ装置 90:増圧用リニヤバルブ 92:減圧用リニヤバルブ 120:液圧センサ 150:制御装置 160,162:マスタ圧センサ 164,165,166,167:ブレーキ圧センサ 169,170,171,172:車輪速センサ 174:踏力センサ 176:ブレーキスイッチ 180:タイヤ作用力検出装置
Claims (8)
- 車輪の回転を抑制するブレーキと、
運転者ができる限り大きな減速度で車両を減速させることを要求する最大減速度要求を検出する最大減速度要求検出部と、
少なくとも、前記最大減速度要求検出部により前記最大減速度要求が検出された場合に、前記ブレーキの作動力を最大減速度が得られる大きさに保持する最大減速度制御を行う最大減速度制御部と
を含み、前記最大減速度制御部が、(a)最大減速度要求が検出された時点に走行中の路面と車輪との間に期待できる最大摩擦係数に対応する前記ブレーキの作動力である保持ブレーキ作動力が取得できるまで前記ブレーキの作動力を増大させて保持ブレーキ作動力を取得する初期段階と、(b)その初期段階に続いて前記ブレーキの作動力を一旦前記保持ブレーキ作動力より小さいブレーキ作動力まで減少させる中間段階と、(c)その中間段階に続いて前記ブレーキの作動力を前記保持ブレーキ作動力まで増大させた後、前記最大減速制御の解除条件が成立するまで前記ブレーキの作動力を増減させることなく前記保持ブレーキ作動力に保持する保持段階とを実行することを特徴とするブレーキシステム。 - 前記最大減速度制御部が、前記ブレーキの作動力を増大させ、その増大中に、車輪加速度をGw、車体加速度をGvとした場合にS=1−Gw/Gvで表される前後力分担関連量Sに基づいて前記保持ブレーキ作動力を決定する保持ブレーキ作動力決定部を含む請求項1に記載のブレーキシステム。
- 前記保持ブレーキ作動力決定部が、前記車輪を含む複数の車輪が設けられた車両全体の総前後力Fsxをその車両に設けられた全車輪の前後力の和として取得するとともに、前記全車輪に加えられる上下力の和として総上下力Fszを取得し、式Gv=(Fsx/Fsz)・gにより前記車体前後加速度Gvを取得する車体加速度取得部を含む請求項2に記載のブレーキシステム。
- 前記最大減速度制御部が、
前記車輪に作用する上下方向の力である上下力を検出する上下力検出装置と、
前記車輪に作用する水平方向の力である水平力を検出する水平力検出装置と、
それら上下力検出装置および水平力検出装置により検出された上下力および水平力に基づいて前記保持ブレーキ作動力を決定する保持ブレーキ作動力決定部と
を含む請求項1に記載のブレーキシステム。 - 運転操作状態検出部,車両走行状態検出部および路面状態検出部の少なくとも1つを含み、その少なくとも1つが最大減速度制御許容状態を検出している場合に最大減速度制御を許可する最大減速度制御許可部を含み、その最大減速度制御許可部により前記最大減速度制御が許可されている場合に、前記最大減速度制御部が前記最大減速度制御を行う請求項1ないし4のいずれかに記載のブレーキシステム。
- 前記最大減速度制御許可部が、前記最大減速度制御が行われていない状態において、前記最大減速度要求検出部により前記最大減速度要求が検出され、かつ、前記運転操作状態検出部,車両走行状態検出部および路面状態検出部の少なくとも1つにより最大減速度制御許容状態が検出された場合に、最大減速度制御の開始を許可する最大減速度制御開始許可部を含む請求項5に記載のブレーキシステム。
- 前記最大減速度制御許可部が、前記最大減速度制御が行われている状態において、前記最大減速度要求検出部により前記最大減速度要求が検出されなくなることと、前記運転操作状態検出部,車両走行状態検出部および路面状態検出部の少なくとも1つにより最大減速度制御許容状態が検出されなくなることとの少なくとも一方が生じた場合に、最大減速度制御の終了を指令する最大減速度制御終了指令部を含む請求項5または6に記載のブレーキシステム。
- 前記車輪のスリップ状態を監視しつつ前記ブレーキ作動力を増大させたり減少させたりして、前記車輪の制動時における実際のスリップ状態を目標スリップ状態に近づけるアンチロック制御により、前記車輪の制動時におけるスリップが過大になることを回避するアンチロック制御部と、
そのアンチロック制御部と前記最大減速度制御部とのいずれか一方を自動で選択する選択部と
を含む請求項1ないし7のいずれかに記載のブレーキシステム。
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