JP4083191B2 - 反射型スクリーン - Google Patents

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Description

本発明は、反射型スクリーン、より詳細には、投射装置(プロジェクタ)等によって映像を投射するために使用する反射型スクリーンであって、特に明室において明るく、コントラストの高い投射画像を得ることができる反射型スクリーンに関する。
従来の反射型スクリーンとしては、例えば、ガラス繊維や合成繊維等の織布シート、あるいはこれらの織布シートに塩化ビニル等の樹脂を含浸させた含浸シート、あるいは塩化ビニル等の合成樹脂シートやアルミニウムの金属シートなどをスクリーン基材として使用し、これらの素材によるスクリーン基材表面に反射層を形成したものが知られている。
上記の反射層は、例えば、表面に二酸化チタンを被覆した粉末もしくはマイカ鱗粉薄片を光透過性樹脂であるバインダに分散したパール塗料やパールインキ、またはアルミニウム等の金属粉を用いた銀色塗料やインキなどを、上記のスクリーン基材表面に塗布することによって形成されている。またこの他、多数の微小透明ビーズを配列して回帰性を付与した反射層が知られている。
さらに、光の吸収性が少ない光拡散剤として作用する方解石の結晶微粒子をバインダ内に分散させた拡散層を、上記の反射層上に積層したスクリーンも知られている。
反射型スクリーンにおいては、スクリーンの拡散度合いを上げすぎると、明室において外乱光と投射光(投影光)との区別がなくなってコントラストの低下をまねく。このため、結像面の拡散度合いは、ある程度低く抑えなければならない。
また、現在主流になりつつあるアスペクト比が16:9等の大型画面においては、観察者が観察する画面の周辺部と中央部では、投射光のスクリーンへの入射角度において水平方向で大きな角度差が生じてしまうため、この角度差をカバーする十分な視野角を得ることができるように水平方向の拡散が必要となる。また、スクリーンの拡散度合いを減少させることにより、スクリーン正面方向へのゲインを大きくすることができるが、このときに、視野角や画面CCR(中心/周辺輝度比)などの特性の劣化が生じる。
以上を鑑みると、反射型スクリーンにおいては、明室コントラストを向上させるために拡散度合いをある程度以下に押さえる必要があり、水平方向の視野角を拡大する光の拡散を生じる反射特性が必要となる。
従来の反射型スクリーンとして、例えば、特許文献1(特開平11−38509号公報)には、図60に示すような構成の反射型スクリーンが開示されている。この反射型スクリーン110は、プリズムシート112の基材116の表面116Aに、投射画像を拡散する光拡散層118が形成され、基材116の裏面116Bには、光学的に透明な樹脂で構成されたストライプ状の複数のプリズム120がスクリーンの垂直方向に伸びて配列されている。このプリズム120はその断面が二等辺三角形状であって、一定の頂角と一定の辺長を有している。そしてプリズムシート112の裏面側のプリズム群に対向して、その対向面が実質的に透過光を吸収する黒色である光吸収シート114が、プリズムシート112と平行に配置されている。
上記特許文献1の反射型スクリーンでは、スクリーン面に対して大きい入射角をもって入射することが多い外乱光Rは、プリズムを透過させて光吸収シート114によって吸収させる。
特開平11−38509号公報
図61〜図63は、上記特許文献1の反射型スクリーンにおけるプリズムの作用について説明するための図で、該反射型スクリーンを構成するプリズム120と基材116のみを概略的に示すものである。特許文献1の反射型スクリーンにおいて、プリズム120の屈折率の異なる境界面での反射を考える際に、反射型スクリーン110への投射光の入射角度は、水平方向にて0°〜15°前後の幅を持つため、反射型スクリーン110に面直に入射した光は、図61に示すように回帰反射となるが、ある程度入射角を有する光については、図62に示す1回目のプリズム境界面、もしくは図63に示す2回目のプリズム境界面にて反射することなく透過し、光吸収シート114で吸収されてしまう。このような作用によって、点光源から反射型スクリーン110の画面中心軸方向に投射された投射光に対し、反射型スクリーン110の画面中央部と画面周辺部とにおいて大きな輝度差が生じ、周辺視野角及びCCR(画面/周辺輝度比)が劣化するという問題が生じる。このようなCCRの劣化は、画面がワイドスクリーンであればより顕著に発現することになる。
また、上述のように、特許文献1の反射型スクリーン110は、垂直方向に伸びて配列されたプリズム120の作用によって視野角拡大が図られ、また反射型スクリーン110に大きい入射角を有する光を吸収することから、明るいところにおける投射のコントラストの改善を実現しようとしている。しかしながら、明るいとは太陽光が室内に入ってくる場合のように、スクリーンに対して水平方向に入射する光を考慮しているにすぎない。コントラストは、上記のように水平方向に入射する外乱光を光吸収シート114で吸収することで改善される。しかしながら、外乱光が主に電灯のように、上方から反射型スクリーン110に入射する場合については、全く考慮されていない。すなわち、垂直方向に伸びるプリズム120では、上方から入射する外乱光を光吸収シートで吸収させる効果を期待できない。
すなわち、上記特許文献1のスクリーンを主に電灯の光のもとで屋内で用いた場合、主に上方からスクリーン周辺部に入射する投射光は、図62,図63に示すようにプリズム120の働きで透過する光が多くなり、それが吸収されてしまうので、投射光でありながら観客側に戻らず暗くなってしまい、特にワイドスクリーンでは、入射角の関係で暗さが顕著になる。
上記のことから、反射型スクリーンにおいては、明室における良好なコントラストを有し、さらには、水平方向の視野角と、画面CCRとを良好にする特性が求められる。
本発明は、上述のごとき実情に鑑みてなされたもので、明室においても明るくコントラストが高い反射型スクリーン、さらには上記特性に加えて水平方向視野角が良好であって、かつ画面CCRが良好な反射型スクリーンを提供することを目的とするものである。
本発明の反射型スクリーンの第1の技術手段は、投射光の入射側より、拡散光の強度比が円形よりも縦長になる弱拡散特性を備えた拡散層と、水平方向の視野角を拡大する水平方向視野角拡大層と、該水平方向視野角拡大層を透過した透過光を反射する反射層とを有し、前記水平方向視野角拡大層は、複数の凸条が連続的に配列され、前記凸条の頂部が、前記反射層側に配置するように構成され、前記複数の凸条は、各前記凸条の長手方向が前記反射型スクリーンの垂直方向に一致するように連続して配設され、前記拡散層は、全光線透過率が80%以上、HAZE値が75±10%の特性を備え、前記反射層は、前記水平方向視野角拡大層の背面側に非接着で配設されてなり、前記反射層と前記水平方向視野角拡大層との距離が調節可能であって、該距離を調節するための調節機構は、前記反射型スクリーンに備えられたマイクロメータの動作に応じて前記反射層と前記水平方向視野角拡大層との距離が可変する機構であることを特徴としている。
また本発明の反射型スクリーンの第の技術手段は、上記第1の技術手段において、前記水平方向視野角拡大層が、前記凸条がシリンドリカル形状であることを特徴としている。
また本発明の反射型スクリーンの第の技術手段は、上記第の技術手段において、前記水平方向視野角拡大層の前記凸条がシリンドリカル形状であって、前記反射層が、該シリンドリカル形状によって形成されるシリンドリカルレンズの焦点位置から前記凸条の頂部までの間に配設されることを特徴としている。
また本発明の反射型スクリーンの第の技術手段は、上記第の技術手段において、前記反射層と前記水平方向視野角拡大層の凸条頂部との距離が、前記シリンドリカルレンズの焦点位置と前記水平方向視野角拡大層の凸条頂部までの距離の1/7以下の範囲にあることを特徴としている。
また本発明の反射型スクリーンの第の技術手段は、上記第1または第2の技術手段において、前記凸条の配列方向のピッチは、200μm以下であることを特徴としている。
また本発明の反射型スクリーンの第の技術手段は、上記第1または第2の技術手段において、前記反射層が、前記水平方向視野角拡大層の凸条列の表面に、蒸着または塗布によって層形成されていることを特徴としている。
また本発明の反射型スクリーンの第の技術手段は、上記第1または第2の技術手段において、前記反射層が、前記凸条列表面に積層した反射シートによって形成されていることを特徴としている。
また本発明の反射型スクリーンの第の技術手段は、上記第1または第2の技術手段において、前記拡散層が、ビーズ及び/または顔料による拡散材が分散した透明樹脂バインダによって形成されていることを特徴としている。
また本発明の反射型スクリーンの第の技術手段は、上記第の技術手段において、前記拡散層が、拡散材の粒径,材質,含有量,粒度のいずれかまたは複数が異なる複数の層によって構成され、前記拡散層の表面粗さと該拡散層の内部ヘイズとが個別に制御されていることを特徴としている。
また本発明の反射型スクリーンの第10の技術手段は、上記第1または第2の技術手段において、前記水平方向視野角拡大層が、シート状の基材と、該基材の表面に前記凸条の配列を形成してなることを特徴としている。
また本発明の反射型スクリーンの第11の技術手段は、上記第1の技術手段において、前記水平方向視野角拡大層の前記凸条がプリズム形状であることを特徴としている。
また本発明の反射型スクリーンの第12の技術手段は、上記第1の技術手段において、前記水平方向視野角拡大層の前記凸条がウェーブ形状であることを特徴としている。
以下に本発明の反射型スクリーンの具体的な実施例を添付された図面を参照して説明する。なお、実施例を説明するための全図において、同様の機能を有する部分には同じ符号を付け、その繰り返しの説明は省略する。本発明の反射型スクリーンは、明室においてもコントラストが高く、良好な水平方向視野角とCCRとを得ることができるようにしたものである。明室におけるスクリーンのコントラストの低下は、投射装置からの投射光だけでなく、室内の照明灯等の外乱要因となる外乱光が観察者側に反射することにより発生する。従って、投射装置からの投射光と照明灯等による外乱光とのスクリーンに対する入射角の違いによって、これらの光の反射方向を分離させ、観察者側に対しては、できるだけ投射装置による投射光の反射光だけが向かうようにすることにより、明室コントラストを改善することができるようになる。
上記のごとくの機能を実現するために、本発明では、正反射によってスクリーン正面の投射装置からの投射光をスクリーン正面に反射させ、スクリーン斜め上方から入射する照明灯からの外乱光を斜め下方に反射させることにより、明室コントラストを改善する。
このときに、入射光を正反射させるだけで、結像面における拡散がなければ、画像がみえなくなってしまうので、結像面にて投射光を拡散させなければならない。
図1A及び図1Bは、本発明の反射型スクリーンの一実施例を説明するための図で、反射結像面の拡散特性が弱拡散であるスクリーンにおける、照明光と投射装置からの投射光との挙動について説明するための図を図1Aに、光の拡散度合いを押さえた弱拡散層と反射層を有した反射型スクリーンの構成例を図1Bに示すものである。本発明の反射型スクリーンの第1の実施例は、図1Bに示すように、拡散度合いを絞る拡散層40と、反射型スクリーンに入射して拡散層40を透過した透過光を反射する反射層30とを有している。拡散層40は、後述する弱拡散特性を備え、反射型スクリーン1の上方から入射する外乱光に対する垂直方向の拡散を絞るようにする。これによって、外乱光が観察者Iの方向に反射することによるコントラストの低下を抑制することができる。
図1Aにおいて、光源Bからの照明光Cが反射型スクリーン1にてH方向へ反射されるとき、この反射光の拡散をGとする。この拡散光の観察者I方向への成分はJにて表される。また、同様に投射装置Pからの投射光Fが反射型スクリーン1にてE方向に反射されるとき、この反射光の拡散をDとするとこの拡散光の観察者I方向への成分はKにて表される。このときのJとKとの長さの比が外光の影響具合を表すものとなる。
上記の弱拡散層を持つスクリーンに対して、拡散度の強いマットスクリーンを拡散層に用いた例を図2を用いて説明する。光源Bからの照明光CがスクリーンAにてH方向へ反射されるとき、この反射光の拡散をOとすると、この拡散光の観察者I方向への成分はLにて表される。また、同様に、投射装置Pから投射光FがスクリーンAにてE方向に反射されるとき、この反射光の拡散をNとすると、この拡散光の観察者I方向への成分はMにて表される。このときのLとMとの長さの比が外光の影響具合を表すものとなる。
スクリーンにおいて投射光が完全拡散するときの反射強度比は、入射角度に依存せず円形となり、入射照度により反射強度比を示す円の半径が異なる。またマットスクリーンにおける反射強度比は、上記図2に示すように上記の完全拡散の円形に比して少々縦長に変化する。さらに弱拡散のスクリ−ンにおいては、上記図1Aに示すように拡散光の強度比はかなり細長いものとなる。このように拡散光の強度比が円形に比して縦長になる拡散を弱拡散といい、拡散を絞るという。
スクリーンの結像面に光の拡散層を設けて、画像を見えるようにすることは一般的に行われている。しかしながら、本発明の特徴の1つは光の拡散層における拡散度合いによって反射強度比の形状が円から縦長の楕円(図1AのD,G、図2のO,N)になる現象を、スクリーンよりも上方に電灯等の光源がある明室における投射画像のコントラスト改善に積極的に利用した点にある。
前述したように、結像面における投射光の拡散度合いを上げすぎると、明室において外乱光と投射光との区別がなくなり、コントラストの低下をまねく。このため、結像面の拡散度合いは、ある程度低く抑えた弱拡散層とする必要がある。
本発明の反射型スクリーンの第1の実施例は、図1Bに示すように光の拡散度合いを抑えた弱拡散特性を有する拡散層40と、その拡散層40を透過した光を反射する反射層30を基本的な構成要素として備えるものとする。拡散層40は、投射画像を結像し拡散度合いに応じた視野角特性を有し、反射層30は投射装置からの投射光の反射効率を上げる機能を有している。また、拡散層40では、スクリーン表面反射による投射レンズの写りこみ、拡散不足によるホットスポットまたはホットバンドの改善を行う。
上記のように、本実施例では、拡散度合いによる反射強度比を利用することによって、投射光とスクリーン上方からの外乱光とのコントラストを改善することができる。特に、適宜値の弱拡散層とすることにより外乱光の強さに応じた好ましいコントラスト比にすることができる。
また、反射層30は反射率を上げることは勿論、電灯から拡散層40を透過した外乱光を下方へ反射させ、観察者の目には入らないようにすることにより、コントラスト比の改善に寄与する。
拡散層40と反射層30とよりなる本実施例の反射型スクリーンにおいて、拡散層40は弱拡散特性を有するが、最も好ましい弱拡散特性は、全光線透過率80%以上、かつHAZE(ヘイズ;曇り度)値が75±10%である。又、反射層30は例えばアルミ層による鏡面が用いられる。このような特性の弱拡散層を用いることによって、スクリーン上方からの外乱光によるコントラスト低下や、拡散不足によるコントラスト低下を改善し、良好なコントラストの投射画像を得ることができる。例えば、投射距離とスクリーンの大きさとの関係で、スクリーンに対する光の入射角が中心部と周辺部とであまり変らない場合、正面から見た際にはコントラストの良好な投射画像を得ることができる。また、弱拡散特性をもつ拡散層40及び反射層30の具体的な構成は、後述する各実施例における拡散層40及び反射層30を適用することができる。
次に水平方向への視野角拡大機能を付与した本発明の他の実施例について説明する。現在主流になりつつある16:9等の大型画面においては、観察者が観察する画面の周辺部と中央部では、投射光のスクリーンへの入射角度において水平方向で大きな角度差が生じてしまうため、この角度差をカバーする十分な視野角を得ることができるように水平方向の拡散が必要となる。
そこで本発明の次の特徴は、水平方向の視野角を積極的に拡大するため、拡散層40を透過した投射光を積極的に水平方向に拡散するように反射する水平方向の視野角拡大反射部(以下の実施例では水平方向視野角拡大層と反射層に該当)を設けることである。これにより、更に水平方向の視野角拡大とCCRの劣化を防止することができる。
特許文献1のように吸収層を設けていると、既に述べたように、大型スクリーンに対して投射装置から入射する投射光が、その入射角度に依存してプリズムを透過した場合、その光は吸収されて反射光にならないのに対して、上記本発明の構成によればスクリーンに入射した光はほぼ反射光になるので、CCRの劣化を防ぐことができる。
以下に説明する本発明の反射型スクリーンの他の実施例においては、上述したごとくの投射画像を結像する拡散層、及び投射装置からの投射光の反射効率を上げるための反射層に加えて、水平方向の視野角を拡大する水平方向視野角拡大層を基本的に備える。
拡散層は、投射画像光を結像させるとともに、最適な拡散特性を付与することによってコントラスト比を改善する。また、拡散層では、スクリーン表面反射による投射レンズの写りこみ、拡散不足によるホットスポットまたはホットバンドの改善を行う。上述のように、結像面における投射光の拡散度合いを上げすぎると、明室における外乱光と投射光との区別がなくなり、コントラストの低下をまねくことから、拡散層は、光の拡散度合いを絞った、例えば弱拡散層であることが必要である。以下に説明する水平方向視野角拡大層を有する本発明の実施例においては、上記第1の実施例における拡散特性(全光線透過率80%以上、かつHAZE値が75±10%)の拡散層を好適に適用できるが、これに限定されることなく、スクリーンや投射装置の仕様あるいはスクリーンの使用方法に応じて最適なコントラストを得ることができる拡散特性を適宜選択することができる。
なお、本願請求の範囲第24項に記載の光拡散部は、以下の実施例における拡散層が該当し、本願請求の範囲第24項に記載の視野角拡大反射部は、以下の実施例における水平方向視野角拡大層及び反射層が該当し、本願請求の範囲第28項に記載の視野角拡大層は、以下の実施例における水平方向視野角拡大層が該当する。
図3は、水平方向の視野角を拡大する水平方向視野角拡大層を備えた本発明の反射型スクリーンにおける水平方向と垂直方向の視野角特性の一例を示す図で、横軸に視野角(度)、縦軸に輝度(Gain)をとったときの水平方向と垂直方向の特性の差を表したものである。本発明の反射型スクリーンは、図示するように、視野角の異方性を有しており、水平方向/垂直方向にて大きな特性の違いを示している。このような特性により、水平方向には広い視野角特性を有し、かつ照明光等の上方からの外乱光の観察者への反射を抑えて高コントラストを実現した反射型スクリーンを得ることができる。
図4ないし図6は、本発明の反射型スクリーンの他の実施例をそれぞれ説明するための図で、スクリーンの水平断面の構成を概略的に示すものである。また、光路i,oは、本願発明の機能を説明することを目的とした概略的な光路を示すものである。以下の実施例についても同様とする。図4ないし図6において、1は反射型スクリーン、10は透明樹脂シート、20は水平方向視野角拡大層、30は反射層、40は拡散層、41はアクリルビーズ、42は透明樹脂バインダである。
反射型スクリーン1は、基材となる透明樹脂シート10の片面に拡散層40が形成され、その透明樹脂シート10の他方の面には、水平方向視野角拡大層20が形成されている。そして水平方向視野角拡大層20のさらに外側表面には、反射層30が配されている。投射装置からの投射光は、拡散層40側に入射する。すなわち、本実施例の反射型スクリーンは、投射光の入射側から、拡散層40,透明樹脂シート10,水平方向視野角拡大層20,反射層30の順に配設されている。
拡散層40には、弱拡散を実現するものとして、アクリルビーズ41を拡散剤として分散させた透明樹脂バインダ42を用いた拡散シートを好適に使用することができる。透明樹脂バインダ42は、光学特性の良好な無色・高透過率の材料であって、アクリルビーズバインダを用いることにより、投射光の入射面である拡散層40表面がマット状態となり、入射光に乱反射を生じさせ、入射部にての表面反射を減じ、良好な画像を得ることができる。
上記の拡散シートとしては、例えば、厚さおよそ100μm,全光線透過率80%以上、HAZE値75±10%のものを好適に用いることができる。
また、拡散層40に分散する拡散剤としては、上記のごとくのアクリル系ビーズの他に、ウレタンビーズやスチレンビーズを用いてもよい。またこの他、顔料系の拡散剤などを使用してもよいが、顔料系は光を吸収し、これによって効率が落ち、透過率も悪くなるので、上記のビーズを用いるほうが好適である。また顔料系拡散剤の方が拡散度合いを大きくすることができるが、本発明では強拡散を必要としないため、ビーズによる拡散剤にて必要な拡散度合いを付与することができる。また、拡散層40の透過率が高いほど、拡散層40を透過した入射光が水平方向視野角拡大層20に多く到達することになり、観察者に戻る光はより水平方向視野角拡大層20の影響を受ける。
拡散層40は、基材となる透明樹脂シート10の投射光の入射側に貼り合わせによって積層される。貼り合わせには、光学特性を阻害しない接着剤や粘着剤を使用することができる。また、上記のごとくの拡散シートを用いることなく、透明樹脂シート10の表面に、拡散剤を添加したバインダ材料を塗布し、硬化させて層形成してもよい。このときに、光硬化性や熱硬化性のバインダ材料を用いることができ、あるいは溶剤に膨潤または溶解させたバインダ材料を透明樹脂シート10に塗布し、その後溶剤を蒸散させて層形成してもよい。
この他、拡散層40を形成する手法として、光拡散材を混合した透明樹脂バインダ42のパウダーまたはビーズを押し出し機によってTダイスから押し出して、溶融状態または半溶融状態で透明樹脂シート10の表面に層形成し、その後冷却する手法を採ってもよい。
水平方向視野角拡大層20は、水平方向の視野角を拡大する機能を有するもので、片面に凸条が連続して配列してなるシートによって形成される。この水平方向視野角拡大層20は、投射光の入射側と反対側に各凸条の頂部が位置するように構成される。上記のような凸条が連続して配列したシートとしては、シリンドリカル形状が連続して配列したレンチキュラーレンズシート、各凸条がプリズム形状のプリズムシート、あるいは各凸条がウェーブ形状のウェーブシートを適用することができる。凸条が連続して配列した構成とは、換言すれば、反射型スクリーンの水平方向に凹凸が形成され、かつこの凹凸形状が反射型スクリーンの垂直方向に伸びている構成である。
図4は、上述のごとくのレンチキュラーレンズシートによる水平方向視野角拡大層20の構成例を示し、図5は、プリズムシートによる水平方向視野角拡大層20の構成例を示し、図6は、ウェーブシートによる水平方向視野角拡大層20の構成例を示している。このようなレンチキュラー,プリズム,ウェーブ等の形状を有するシートの厚みは、200μm以下とすることが好適である。また、これらの凸条の配列方向のピッチは、200μm以下(画素サイズの1/10以下)で、より好ましくは155μm以下とすることが好適である。また、プリズム形状の場合は、その頂角は100°±10°にすることが好適である。プリズムの頂角が90°の場合には、プリズムに入射した光はプリズム面で回帰反射するが、頂角を100°±10°と大きくすることにより、投射装置後方の観察者に集光することができる。またウェーブ形状は、上記のプリズムの頂角部及び配列するプリズム間の谷部を曲線にして、全体をウェーブ状にしたものとして理解できる。
図4の光路i,oに示すように、水平方向視野角拡大層20は、水平方向の拡散特性にのみ寄与するものであって、レンチキュラー等の凸条列の配列方向に直交する延設方向(各凸条の長手方向)が、スクリーン設置時の垂直方向に一致するように構成することによって、水平方向の拡散度を大きくし、水平方向の視野角を拡大する。このような水平方向視野角拡大層20の機能によって、スクリーンの垂直方向と水平方向の反射特性(すなわち拡散特性)に異方性が生じ、垂直方向においては弱拡散の拡散層40によって絞られた拡散特性を阻害することなく、垂直方向からの外乱光によるコントラスト低下を防ぐとともに、水平方向には視野角が拡大するように反射光を拡散させることにより、投射光の水平方向の視野角特性を向上させることができる。すなわち、水平方向視野角拡大層20により、スクリーンの水平方向の視野角分布は変化するが、垂直方向の視野角分布は変化しない。垂直方向の視野角分布は、厳密にはピーク値の大きさは変わるが、分布状況は変化しない。なお、投射装置の投射レンズは焦点深度を持つため、その焦点深度における結像範囲をもつ。従って本反射型スクリーンでは、反射層30による反射によって2回結像となる。
また、水平方向視野角拡大層20の凸条の形状、曲率などについて最適化を行う際は、視野角にも影響を及ぼす拡散分布や、拡散層40にての集光度(全反射による迷光)なども考慮に入れる必要があり、また、一回目の結像から二回目の結像までの光路長は小さくし、拡散層40内での反射光の分布にも注意を要する。
水平方向視野角拡大層20に入射した光は、凸条面で屈折を受けながら透過し、反射層30で反射されて再度凸条面に入射して再び凸条面の作用を受けて出射する。また、入射角によっては入射光が凸条面で反射して、その反射光が凸条面のさらに他の部分に入射し、ここでさらに屈折、反射等の作用を受ける。そして凸条の形状によっては、凸条面における反射光は反射層30に抜けることなくスクリーン前面に反射する。
シリンドリカル形状の凸条では、シリンドリカルの円筒形状面に反って屈折が起こるため、凸条及び反射層30によって反射した光は、連続的に広がりをもつ。また、このためにCCRの変動も少ない。更にシリンドリカル形状によれば、水平方向の視野角をプリズム形状よりも広げることができる。また、プリズム形状の凸条では、回帰性が高くなるが、プリズムの頂角の最適化や反射層30によるフレネル反射等により、視野角拡大効果を得ることができる。さらにウェーブ形状の凸条では、プリズムの頂角にR形状を備えたものに近いため、シリンドリカル形状と同様の効果を奏し、正反射に比較して連続的に広がりをもった反射特性が得られる。
反射層30は、投射装置からの投射光の利用効率を上げるために設置されるもので、反射率の高い反射面をもった平板の反射板を水平方向視野角拡大層20の凸条形成側の表面に配置することによって構成される。このときに、本実施例においては、反射層30と水平方向視野角拡大層20とは近接して配置されればよく、必ずしも接着層によって積層する必要はない。例えば、ある程度の剛性をもった反射板を上記反射層30として用い、反射型スクリーン1の枠の部分で透明樹脂シート10に形成された反射板を固定するようにしてもよい。反射層30の反射面は、例えば、銀やアルミニウムを基材に蒸着または塗布することによって構成することができる。
上記のごとくの反射板を用いて反射型スクリーンを作製するときに、予め反射板の中央部を水平方向視野角拡大層20側に押し込んで、反射板を湾曲させておくことによって反射板の経時変化による特性劣化に対処することができる。すなわち、反射層30と水平方向視野角拡大層20とのギャップが経時で変化して広がってしまうと、反射層30と水平方向視野角拡大層20とにおける乱反射が強くなって、拡散特性が変化してしまう。これを防ぐために、反射板の中央が水平方向視野角拡大層20側に突出する方向に反射板を湾曲させておき、この状態で反射板が水平方向視野角拡大層20に密着するように反射板の周囲の枠部分を固定する。こうして、反射板が水平方向視野角拡大層20に密着しようとする内部応力を反射板に保持せしめたまま固定することによって、反射板と水平方向視野角拡大層20のギャップが広がろうとする変化を抑制することができる。
上記の手法は、反射板のみならず、水平方向視野角拡大層20側の部材に対しても適用することができる。この場合、水平方向視野角拡大層20の中央部が反射板側に突出する方向に湾曲させた上で、これらを積層固定すればよい。さらには、反射板と水平方向視野角拡大層20側の部材の両方を、上記の手法で湾曲させた上で積層固定してもよい。
図7は、本発明による反射型スクリーンの更に他の実施例を説明するための図で、スクリーンの水平断面の構成を概略的に示すものである。本実施例の反射型スクリーンは、図4の構成に加えて、外乱光の成分を吸収してさらにコントラストを向上させるようにしたTINT層50を、拡散層40の入射側表面に形成した構成を有するものである。
TINT層50における透過率を低くしすぎると画面輝度が低下するため、透過率を70%前後とすることが好適である。また、分光特性については、可視光域にて癖のないフラットな透過分光分布特性を有するもの、または、投射装置から出射する投射光の分光分布やスクリーンの他部材の分光反射分布を補うよう、長波長側のみもしくは、長波長側と短波長側の透過率が他に比べて高いものを選定する。
TINT層50については、シートを直接染色する方法、表面に顔料を塗布する方法などが考えられるが、本実施例では、調色及び透過率の制御が容易であるため水溶染料による染色を適用する。すなわち、本実施例では、拡散層40の表面に水溶染料を塗布して染色することによってTINT層50を形成する。このときのTINT層50の厚さは、25μmとした。また、TINTを添加した樹脂シートもしくは表面にTINT層を予め形成した樹脂シートを上記TINT層50として用い、拡散層40に貼り合わせて積層するようにしてもよい。
TINT層50は、図8に示すように透明樹脂シート10と拡散層40との間に積層してもよく、また図9に示すように、透明樹脂シート10と水平方向視野角拡大層20との間に積層してもよい。図7の構成によって拡散層40の表面にTINT層50を塗布形成すると、拡散層表面の凹凸がTINT層の材料によって充填され、拡散層表面の凹凸によって生じるべきHAZEが低下して、本来拡散層表面の凹凸と拡散層内部の拡散剤とによって発現する拡散層全体のHAZEが低下する。従って、その特性変化を見込んで拡散層40の拡散特性を設計する必要がある。図8の構成は、TINT層50の配設位置が最も好適といえ、この場合、画像の黒が最も沈み、画像が締まってみえる。
さらには、TINT層50を備えた各構成例は、図5及び図6にそれぞれ示したごとくのプリズム形状の水平方向視野角拡大層20及びウェーブ形状の水平方向視野角拡大層20を用いた構成にも適用できる。拡散層40の入射側にTINT層50を有し、水平方向視野角拡大層20としてプリズムシート及びウェーブシートを用いた構成例をそれぞれ図10及び図11に示す。
図12は、本発明の反射型スクリーンの更に他の実施例を説明するための図で、スクリーンの水平断面の構成を概略的に示すものである。図12において、40a,40bは拡散層、41a,41bは拡散材として使用するアクリルビーズ、42a,42bは透明樹脂バインダである。
上記各実施例の構成では、拡散層40は単層構成であったが、本実施例では拡散層40を多層構成としている。ここでは、2層の拡散層40a,40bを積層して構成している。本構成では、各拡散層40a,40bにそれぞれ分散させるアクリルビーズ41a,41bの粒径,材質,含有量,粒度分布を変えて層構成することにより、入射面の表面の表面粗さと拡散層40のHAZE(表面粗さに依存しない内部HAZE)とを別々に制御することができる。ここでは、複数の粒度のビーズを混合してその混合比によって上記の粒度分布を制御するようにしてもよい。
入射面側の拡散層40aの表面粗さを適度に大きくして最適化することにより、拡散層40aの表面における反射光を拡散させ、例えば、観察者から見た投射装置の瞳像や、室内の蛍光灯の像などを目立ちにくくすることができる。
また、反射層側の拡散層40bのHAZEを大きくすることにより、投射装置の投射レンズによるホットスポットまたはホットバンドを低減させることができる。
なお、図12に示すごとくの2層構成の拡散層40は、上述した各実施例の全ての拡散層40に適用することができる。拡散層40を2層構成とし、水平方向視野角拡大層20としてプリズムシート及びウェーブシートを用いた構成例をそれぞれ図13及び図14に示す。また、上記図12ないし図14の構成に対して、さらに拡散層の入射光側表面に上述のごとくのTINT層50を配した構成例をそれぞれ図15ないし図17に示す。さらに、2層構成の拡散層40を有する図12の構成に対して、各拡散層40a,40bの間にTINT層50を配した構成を図18に示す。
また、上記各実施例の構成において、拡散層40を構成する透明樹脂バインダにTINTを添加することによって、TINT層と拡散層とを兼ね備えるように構成してもよい。図4の構成の拡散層40に、TINTを添加した例を図19に示し、図12の構成の拡散層40の反射層側の拡散層40bにTINTを添加した例を図20に示す。
図21ないし図25は、それぞれ本発明の反射型スクリーンの更に他の実施例を説明するための図で、スクリーンの水平断面の構成を概略的に示すものである。本実施例では、スクリーンの発光に寄与しない部分、すなわち光路とならない部分に黒色塗料によるブラックマトリクス層60を形成する。ブラックマトリクス層60を形成することによって、照明灯等の外乱光を吸収することができ、これにより、投射画像の黒色を引き締めて視覚効果を向上させることができる。ブラックマトリクスは、水平方向視野角拡大層20のデザインに合わせて、輝度を減じることなく視覚効果を最も効率よく向上できるようにデザインされる。例えば、ブラックマトリクス層60として、ブラックストライプを用いることができる。各ストライプは、例えば、水平方向視野角拡大層20の各凸条(レンチキュラー,プリズム,ウェーブ等)の配設ピッチに合わせて、ストライプがスクリーンの垂直方向に合致するように配置される。
上記のようなブラックマトリクス層60は、水平方向視野角拡大層20の入射側の最適位置に積層することができる。図21は、ブラックマトリクス層60を拡散層40と透明樹脂シート10との間に積層した構成を示し、図22は、ブラックマトリクス層60を拡散層40の入射側表面に積層した構成を示し、図23は、ブラックマトリクス層60を透明樹脂シート10と水平方向視野角拡大層20との間に積層した構成を示し、図24は2層構成の拡散層40a,40bを備えた拡散層40と透明樹脂シート10との間に、ブラックマトリクス層60を積層した構成を示し、図25は2層の拡散層40aと40bとの間にブラックマトリクス層60を積層した構成を示すものである。なお、これらの構成は、上述したごとくのプリズム形状の水平方向視野角拡大層及びウェーブ形状の水平方向視野角拡大層に適用できる。
なお、上述のようにTINT層50及びブラックマトリクス層60は、投射画像の黒を引き締めて視覚効果を高めることができる。このときに、TINT層50及びブラックマトリクス層60は、投射光の一部を吸収するが、この吸収は、投射画像の黒の引き締め効果を発揮するための小量の吸収であって、例えば上記特許文献1の光吸収シートのような吸収を目的とするものとは光吸収のレベルが大きく異なるものである。
図26は、本発明の反射型スクリーンの更に他の実施例を説明するための図で、スクリーン水平方向断面の構成を概略的に示すものである。前述の実施例では、反射層30は、水平方向視野角拡大層20に対して非接着で配設されていたが、本実施例においては、反射層30と水平方向視野角拡大層20とを接着層70を設けて接着する。水平方向視野角拡大層20の凸条形状の効果を減殺しないようにするために、接着層70に使用する接着剤もしくは粘着剤の屈折率は、水平方向視野角拡大層20の構成素材の屈折率とは異なるようにすることが好ましい。
本実施例においては、反射層30の表面に接着層70を形成し、この接着層70を水平方向視野角拡大層20の凸条の表面に押圧することによって、水平方向視野角拡大層20に対して接着層70を介して反射層30を接着することができる。このときに、反射層30と水平方向視野角拡大層20とは、凸条の頂部近傍において接着層70を介して部分的に接着され、凸条間の非接着部分においては、水平方向視野角拡大層20と接着層70との間に、空隙部71が形成される。このときに、空隙部71となる部分に、水平方向視野角拡大層20とは屈折率の異なる他の媒質、例えば、グリス等を封入してもよい。
例えば、接着層70の層厚を20μmとし、高さ(積層方向の厚さ)が50μmの凸条を有する水平方向視野角拡大層20に接着層70を介して反射層30を接着すると、水平方向視野角拡大層20と反射層30との間が全て接着層70で充填されることなく、各凸条間に空隙部71が形成される。
なお、接着層70を用いた構成においては、上記のように空隙部71を形成してもよく、また、水平方向視野角拡大層20とは屈折率の異なる流動性の高い接着剤または粘着剤を用いて、水平方向視野角拡大層20と反射層30との間が接着層70で完全に充填されるようにしてもよい。
さらに上記のごとくの水平方向視野角拡大層20に対して反射層30を接着する構成は、上述した各実施例の反射層30に適用することができる。 図27は、本発明の反射型スクリーンの更に他の実施例を説明するための図で、スクリーンの水平断面の構成を概略的に示すものである。本実施例の構成は、水平方向視野角拡大層20の表面に反射層30となる材料を蒸着または塗布することによって、反射層30を形成している。反射層30は、例えば、銀やアルミニウムを水平方向視野角拡大層20の凸条配列面に蒸着し、もしくはこれらの含有材料を塗布することによって形成することができる。また、反射層30をスパッタリングによって層形成してもよい。
すなわち、反射層30は、銀またはアルミニウムを蒸着またはスパッタリングまたは塗布等によって形成したミラー層であるため、反射効率を高くすることができ、スクリーン1の正面方向へのゲインを向上させ、またスクリーン1に対して大きな入射角で入射する外乱光を観察者側に反射しないようにすることができる。本発明の反射型スクリーンは、これらの機能によりコントラストの高い投射画像を提供することができる。
上記のごとくの水平方向視野角拡大層20に直接形成する反射層30の構成は、上述した各実施例の反射層30に適用することができる。図27は、図4の構成に本実施例の蒸着または塗布等による反射層30を適用した構成例を示すものであるが、この他の例として、図7の構成に対して上記反射層30を適用した構成を図28に示し、図8の構成に対して上記反射層30を適用した構成を図29に示す。さらに図12の構成に対して上記反射層30を適用した構成を図30に示し、図21の構成に対して上記反射層30を適用した構成を図31に示す。
図32は、本発明の反射型スクリーンの更に他の実施例を説明するための図で、スクリーンの水平断面の構成を概略的に示すものである。上述した各実施例において、透明樹脂シート10を使用することなく積層構成してもよい。例えば、図32に示す構成は、図4に示すスクリーン1において、透明樹脂シート10を用いることなく、水平方向視野角拡大層20を構成するレンチキュラーレンズシートに直接アクリルビーズバインダを層形成して拡散層40を構成したものである。同様に上述の全ての実施例において、透明樹脂シート10を用いずに水平方向視野角拡大層20を基材シートとして積層構成を実現することができる。
図33及び図34は、図32の構成において、水平方向視野角拡大層20としてプリズムシート及びウェーブシートを用いた構成をそれぞれ示すものである。また、図35ないし図37は、図12ないし図14の構成において、透明樹脂シート10を用いずに構成した例をそれぞれ示すものである。さらに、図38ないし図40は、図35ないし図37の構成において、拡散層40の入射側にさらに上述のごとくのTINT層50を積層した構成を示すものである。さらに図40は、ブラックマトリクス層60を備えた図21の構成において、透明樹脂シート10を用いずに構成した例を示すものである。
図42ないし図44は、透明樹脂シート10に直接形成したシリンドリカル形状による凸条列によって水平方向視野角拡大層を構成し、反射層30を凸条列に蒸着または塗布によって層形成した構成例を示すものである。
図42において、水平方向視野角拡大層は、基材となる透明樹脂シート10の片面に、シリンドリカル形状が連続して配列したシリンドリカル形状部21を一体形成してなる。シリンドリカル形状部21は、各シリンドリカル形状の長手方向(円筒軸方向)がスクリーン1の設置時に垂直方向となるように構成されている。また、シリンドリカル形状の頂部が、反射層30側に位置するように構成されている。シリンドリカル形状部21は、反射層30の形状を規定するもので、上記のように構成することにより、スクリーン1の水平方向の反射成分の拡散範囲を広げることができ、スクリーン1の視野角特性を向上させることができる。シリンドリカル形状部21のシリンドリカル形状の配列ピッチは、上述の実施例と同様に、200μm以下(画素ピッチの1/10以下)、好ましくは155μm以下とすることが好適である。
シリンドリカル形状部21の表面には、反射層30が形成されている。また、透明樹脂シート10のシリンドリカル形状部21の形成側と逆の面には、拡散層40が積層される。この拡散層40の表面を投射光の入射面として使用する。すなわち、本実施例のスクリーン1は、投射光の入射側から順に、拡散層40,基材となる透明樹脂シート10,シリンドリカル形状部21,及び反射層30が一体的に配設された構成を有している。
シリンドリカル形状部21は、透明樹脂シート10の片側に光硬化性樹脂層を塗布し、目的のシリンドリカル形状を有する型もしくはロールによってエンボスすることによって、シリンドリカル形状を形成した後、これを光硬化させることによって作成する。あるいは、透明樹脂シート10の成形時に、もしくは後工程で、エンボスロールによって片面にシリンドリカル形状を直接形成するようにしてもよい。また、レーザ加工やフォトリソグラフィ等の光加工によってファインなシリンドリカル形状を形成するようにしてもよい。
図43は、本発明の反射型スクリーンの更に他の実施例を説明するための図で、スクリーンの水平断面の構成を概略的に示すものである。図43において、30は反射層、31は基材、32は反射層及び基材よりなる反射シートである。
図43の構成例において、反射層30は、反射機能を有する反射シート32をシリンドリカル形状部21に対して貼り付けることによって形成している。すなわち、基材31の表面に反射層30が形成された反射シート32を用意し、この反射シート32をシリンドリカル形状部21に貼り合わせることによって、図42の実施例と同様の機能を得ることができる。基材31は樹脂シートを使用することができ、この樹脂製の基材31に蒸着やスパッタリングまたは塗布等によって銀またはアルミニウム層を反射層30として形成した反射シート32を用いることができる。また、基材31に貼り合わせる反射層30として、アルミニウムや銀の金属箔を用いてもよく、また、樹脂製の基材31を用いずに、上記のような金属箔の単体を反射シートとして用いてもよい。金属箔を用いた場合は、図42と同様な構成になる。
図44は、本発明の反射型スクリーンの更に他の実施例を説明するための図で、スクリーンの水平断面の構成を概略的に示すものである。図44において、40a,40bは拡散層、41a,41bは拡散材として使用するビーズ、42a,42bは透明樹脂バインダである。
図44の構成では、2層の拡散層40a,40bによって拡散層40を構成している。本構成では、各拡散層40a,40bにそれぞれ分散させるビーズ41a,41bの粒径,材質,含有量,粒度分布を変えて層構成することにより、入射面の表面の表面粗さと拡散層40のHAZE(表面粗さに依存しない内部HAZE)とを別々に制御することができる。ここでは、複数の粒度のビーズを混合してその混合比によって上記の粒度分布を制御するようにしてもよい。
入射面側の拡散層40aの表面粗さを適度に大きくして最適化することにより、拡散層40aの表面における反射光を拡散させ、例えば、観察者から見た投射装置の瞳像や、室内の照明灯の像などを目立ちにくくすることができる。また、反射層側の拡散層40bのHAZEを大きくすることにより、ホットスポットまたはホットバンドを低減させることができる。
上記のごとく図42ないし図44の構成によって、本発明に係わる反射型スクリーンは、シリンドリカル形状部21のような凸条列を有するにもかかわらず、多層構成の一枚のシートとして構成することができ、これにより、生産性が高く、かつ利用者の取り扱いを容易にすることができる。
図45ないし図47は、透明樹脂シート10に直接形成したプリズム形状による凸条列によって水平方向視野角拡大層を構成し、反射層を凸条列に蒸着または塗布によって層形成した構成例を示すもので、各図において、22はプリズム形状部である。
また、図48ないし図50は、透明樹脂シート10に直接形成したウェーブ形状による凸条列によって水平方向視野角拡大層を構成し、反射層を凸条列に蒸着または塗布によって層形成した構成例を示すもので、各図において、23はウェーブ形状部である。
上記プリズム形状部22を使用した構成例、及びウェーブ形状部23を用いた構成例は、上述した図42ないし図44に示した構成例におけるシリンドリカル形状部21による凸条列を、それぞれプリズム形状部22またはウェーブ形状部23に置き換えた構成を示すものであり、その作用は前述した凸条の形状に起因する作用の違いを除いて図42ないし図44の実施例と同様であるため、繰り返しの説明は省略する。
また、図42ないし図50に示すごとくの、透明樹脂シート10に直接シリンドリカル形状部21,プリズム形状部22,またはウェーブ形状部23を形成し、これを水平方向視野角拡大層とする構成は、前述の図4ないし図41の水平方向視野角拡大層20に適用することができる。
上述のように、水平方向視野角拡大層20に対する蒸着、スパッタリング、塗布あるいは反射シートの貼り付けによって、水平方向視野角拡大層20の凸条の形状に沿って反射層30を構成する場合、図4ないし図41に示すような平板の反射層を用いた構成と異なり、凸条と反射層30との間に空隙が生じることがないため、凸条形状が反射特性を決定することになる。
ここでシリンドリカル形状面で反射が行われる場合、反射面が円筒の一部であるため、入射光に対して水平方向に連続的に広がりをもつ反射となる。このときに、凸条と反射層30との間に空隙を有する平板反射板を用いた構成よりもさらに大きな反射光の広がりが得られ、これによって画面水平方向に広い視野角を有し、CCRの変動も少ない特性が得られる。
また、プリズム形状面で反射が行われる場合、プリズムの頂角が90°近傍となるときに投射装置から出射した入射光は、ほぼ回帰反射(入射光と同一方向に反射する)となって、投射装置近傍に向かって反射する。これにより、投射装置近傍で観察した場合に、良好な輝度を得ることができる。本発明では、さらにプリズムの頂角を大きくし、100°±10°とすることによって、反射光の広がりを与えることができる。
また、ウェーブ形状面は、上記プリズムの頂角部にR形状を有するものに近いため、ウェーブ形状面で反射が行われる場合、プリズムの回帰特性とシリンドリカルの連続的な広がりとを併せ持つ反射特性となり、これにより、視野角/輝度/CCRにおいてバランスのとれた特性が実現される。
なお、上記の各実施例において、透明樹脂シート10、水平方向視野角拡大層20、反射層30、拡散層40のいずれかまたは複数を貼り合わせによって相手部材と貼り合わせる構成を採る場合、貼り合わせを行うために、接着剤または粘着剤を使用することができる。または溶融樹脂を接着層として用いてもよい。また貼り合わせの強度を向上させるために、貼り合わせを行う2つの部材の一方または両方に、コロナ放電等の表面活性化処理を行ったり、アンカー剤を塗布しておくようにしてもよい。これら接着剤や粘着剤、あるいは接着用樹脂材やアンカー剤は、スクリーンの光学特性を阻害しないもの、あるいは使用場所に応じて屈折率等の物性を最適にしたものが選択される。
また上記の粘着剤または接着剤として、光硬化型または熱硬化型の粘着剤もしくは接着剤を用い、当該粘着剤または接着剤を塗布した後に光硬化または熱硬化させるようにしてもよい。また、同様に、電子線照射によって架橋する粘着剤または接着剤を用いてもよい。光硬化や熱硬化もしくは電子線架橋によって、粘着剤及び接着剤はその弾性率が上昇するとともに、粘着特性または接着特性が変化する。また、粘着付与剤等の配合剤によっては、粘着特性や接着特性を安定化させる効果が期待できる。これら光硬化型、熱硬化型もしくは電子線架橋型の粘着剤または接着剤を使用することにより、最適な貼り合わせ性能が得られる場合には、適宜これら粘着剤または接着剤を採用することができる。
また、スクリーンの表面の汚れ防止もしくは傷防止のための表面保護として、スクリーン表面に対して保護膜を付与してもよい。保護膜は、PETやPPの透明性及び表面硬度の高い材料で形成したシートを、粘着剤で貼り合わせて構成することができる。また、フッ素系の樹脂シートや塗料をスクリーン表面に積層してもよい。これにより、保護皮膜としての機能に加えて汚れが付着しにくい(非汚染性)特性を付与することができる。保護シートとしては、フィッシュアイの少ない光学用途の樹脂グレードを用いたシートが好適である。
また、スクリーン表面の静電気によるごみや塵埃等の付着を防ぐために、スクリーン表面に帯電防止剤を塗布または噴霧してもよい。また上記のPETやPP等による保護シートに対して帯電防止剤を練り込んでおくようにしてもよい。さらには、拡散層40の透明樹脂バインダ42に帯電防止剤を練り込むようにしてもよい。
さらには、TINT層50の紫外線による劣化を抑制するために、紫外線吸収剤を用いることができる。紫外線吸収剤は、TINT層50と該TINT層50の入射側に積層される要素(例えば拡散層40)との貼り合わせに用いる粘着剤または接着剤に練り込んでおくことが好適である。またTINT層50の入射側に配設される拡散層40自体に練り込んでもよく、あるいはTINT層50の入射側に紫外線吸収剤を練り込んだ透明シートを積層してもよい。紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール系の紫外線吸収剤を使用することができる。
また、上記の各実施例において、透明樹脂シート10の素材としては、例えば、ポリエステル、ポリメタクリル酸メチル、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリプロピレン、ナイロン等の樹脂シートを使用することができる。
拡散層40の透明樹脂バインダ42としては、酢酸ビニル系樹脂、変性酢酸ビニル/アクリル共重合樹脂、エチレン/酢酸ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル共重合樹脂、アクリルシリコン系樹脂、セルロース樹脂、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合樹脂、スチレン系樹脂、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、変性ポリビニルアルコール系樹脂、アクリロニトリルゴム等、を使用することができるが、本発明では、これらの樹脂に限らず適宜最適な樹脂を選択することができる。
次に、本発明の反射型スクリーンのコントラストの測定例を説明する。ここでは、図23に示す構成のスクリーンを用いて、画面を9分割し、その中心点のスクリーン輝度(Gain)を測定して各位置のコントラストを測定した。
図51は、輝度測定方法を説明するための図である。スクリーン1は、623×1107mmの大きさの50inch・Wideスクリーンとして構成し、このスクリーンの中心における法線n上のスクリーン1の表面から2500mmの位置に輝度測定器102を設置した。また、スクリーン1の表面から1680mm離間し、かつ上記法線nから上方に1000mm変位した位置に外光光源100を設置した。さらに、スクリーン1の表面から1660mm離間し、かつ上記法線nから下方に165mm変位した位置に投影機(投射装置)101を設置した。ここでは、スクリーンと観察者(観客)との距離が1.5m以上であることを想定した。
図52は、スクリーン1の輝度測定位置を説明するための図である。図52に示すように、スクリーン1の画面を等面積で9分割し、各分割領域の中心におけるスクリーン輝度(Gain)を測定した。輝度測定は、輝度計を首振りさせることによって実施した。
図53は、上記各測定位置における輝度測定結果と画面コントラストの計算結果を示す表である。図52における各測定位置1〜9において、投影光(投射光)Gainと外乱光Gainとを測定し、各位置における画像コントラストを計算した。
コントラストは、(投影光Gain×投影光照度/π)+(外乱光Gain×外乱光照度/π)/(投影光Gain×投影光照度/π/Contrast)+(外乱光Gain×外乱光照度/π)によって計算できる。
上記の投影光照度としては、全光束700lm(ルーメン)を投影面積0.689mにて割った1015.7lx(ルクス)を用いた。また外乱光照度は、250lxであって、投影機自体のコントラストは1200:1である。
コントラストは、測定位置1〜9において、順に、(6.9:1),(7.2:1),(6.4:1),(25.3:1),(48.7:1),(24.9:1),(51.1:1),(102.6:1),(49.2:1)であった。比較例として、スクリーンで完全拡散が生じるとすると、投影光,外乱光を問わずGainは1となり、画面コントラストは5.0:1となるが、本発明に関わるスクリーンにおいては、明室にていずれの測定値においても良好なコントラストが実現される。またこのとき、視野角(半値)は、17.5°となり、15°以上の視野角(半値)が得られた。
次に水平方向視野角拡大層20と反射層30との距離とスクリーンの結像画面の特性との関係について説明する。
上記図1ないし図27のごとくの反射板を反射層30として用いた構成では、反射層30と水平方向視野角拡大層20との距離を可変に設定することができる。例えば、反射層30と水平方向視野角拡大層20とを離間させて配置してもよい。
ここで、上述のように、結像層となる拡散層40においては、投射装置からの投射光が拡散層40に入射するときとその投射光が反射層30で反射して再度拡散層40を透過するときの2回の結像が生じる。このため、反射層30と拡散層40との距離が離れれば離れる程デフォーカスが大きくなり、結像画像の品質が劣化する。従って、基本的には拡散層40と反射層30との距離(光路長)Xは短い方が好ましい。すなわち、構成上は水平方向視野角拡大層20と反射層30とを近接させて配置させることが好ましい。
しかしながら、例えば、投射画像の特性の最適化、あるいは製造工程合理化のために、必要に応じて水平方向視野角拡大層20と反射層30との距離を離間させるようにしてもよい。このときに、水平方向視野角拡大層20と反射層30との間の光路長には実用レベルにおける許容値が存在する。
以下に反射層30と水平方向視野角拡大層20との距離を離間させていき、拡散層40と反射層30との間の光路長を長くしたときの特性と、スクリーンとして許容される上記離間距離について考察する。
図54A〜図58Bは、水平方向視野角拡大層20としてレンチキュラーレンズシートを用い、平板の反射層30と上記水平方向視野角拡大層20との距離と変化させたときの光路と、スクリーンの水平方向の視野角特性とのシミュレーション結果を示す図である。ここでは、水平方向視野角拡大層20と反射層30との距離X(詳細には、水平方向視野角拡大層20の頂部と反射層30の反射面との距離)を、順に0(接触),20μm,30μm,140μm,200μmとし、これらの距離における光路と視野角特性とを図54A〜図58Bに示している。
具体的には、図54Aは上記距離が0のときの光路図、図54Bは図54Aに対応する視野角特性、図55Aは上記距離が20μmのときの光路図、図55Bは図55Aに対応する視野角特性、図56Aは上記距離が30μmのときの光路図、図56Bは図56Aに対応する視野角特性、図57Aは上記距離が140μmのときの光路図、図57Bは図57Aに対応する視野角特性、図58Aは上記距離が200μmのときの光路図、図58Bは図58Aに対応する視野角特性を示している。
上記の各光路図においては、レンチキュラーレンズの1つのシリンドリカル形状部に対してスクリーン面に垂直に20本の光を入射させ、その各光の挙動をシミュレーションした結果を示している。また光路図に対応する視野角特性図において、光路図における反射光の広がり方に対応した輝度分布が生じる。ここで、レンチキュラーレンズシートの各シリンドリカル形状部の水平方向の配設ピッチは155μmであり、各シリンドリカル形状部によって形成されるシリンドリカルレンズの焦点距離は、シリンドリカル形状部の頂部から約140μm離れた位置にある。
なお、本シミュレーションの視野角特性においては、拡散層40における拡散を考慮していない。しかしながら、本発明では、拡散層40として上述のような弱拡散特性を有する拡散層を使用するため、シミュレーションでは、ほぼ実際のスクリーンに近い結果が得られているものと考えられる。
本発明を適用する反射型スクリーンの観察者の観察位置を考えるとき、室内で観察する観察者の観察位置は、一般にスクリーンから2〜3m離れた位置になる。このときに、スクリーン面の法線に対する観察者の観察角度θは、人一人が占有する横幅を1mとするとき、tanθ=(人数×1m)/(スクリーン面と観察者との距離)となる。ここでスクリーン面と観察者との距離を2.5mとすれば、スクリーンを最も斜めから観察する観察者の観察角度θは、観察者が2人の場合には22°、観察者が4人の場合には39°となる。なお、観察距離や観察者等の一般的な条件を鑑みても、スクリーンは少なくとも15°以上の視野角を有することが好ましいといえる。
上記の観点から、室内で4人程度まで並んで観察可能な理想的な水平方向の視野角を約40°とすると、図3に示すごとくの視野角特性が理想的な形態となる。すなわち、図3に示す水平方向の視野角特性は、輝度の半値(中央(0°)の輝度に対して半分の輝度が得られる角度)が約40°であり、かつ中央(0°)に対して角度の絶対値が大きくなるに従って、輝度がなだらかに変化する特性が得られている。視野角に応じて輝度が急激に変化するのは好ましくなく、図3に示すような視野角特性により、最適な視野角特性と高品位の投射画像を得ることができる。
上記を鑑みて、図54A〜図58Bのシミュレーションを考察すると、水平方向視野角拡大層20と反射層30の反射面との距離(詳細には、水平方向視野角拡大層20の凸条の頂部と反射層30の反射面との距離)Xが、0のとき(図54A,図54B)、及び距離Xが20μmのとき(図55A,図55B)には、半値が約40°であって、輝度分布もなだらかに変化しているが、上記距離Xが30μmでは(図56A,図56B)、半値が約33°程度まで狭くなり、それ以上に角度の絶対値が大きくなると輝度分布も急激に変化するようになる。
さらに、距離Xがシリンドリカル形状部の焦点位置にほぼ一致する140μmのとき(図57A,図57B)は、中央(0°)位置へ戻ってくる光が大部分となり、十分な視野角が得られなくなる。さらに距離Xが焦点位置を超えて200μmにまでなると(図58A,図58B)、中央(0°)への集光特性を維持しながら、大きい視野角の反射光成分が相対的に増加してくるものの、半値が5°程度であって、視野角を改善するまでには至らない。しかも前述のように距離Xが長くなればなる程、デフォーカスが大きくなり、結像画像の品質が劣化するだけである。
以上より、図3の理想的な視野角特性に近い特性を得ることができる反射層30と水平方向視野角拡大層20との距離Xは、0〜20μmの範囲にあるといえる。
上記図3の理想的な視野角特性は、上述のように4人が並列して観察する場合でも一定以上の輝度を得ることができるものであるが、例えば、2人の観測者が並列して観察する場合には、上述の条件から観察角度θが22°となり、このときの上記距離Xは60μm程度まで許容されるものと考えられる。距離Xが60μmであるときの視野角特性図を図59に示す。
さらに観察者が一人で観察するとき、その観察者は通常ほぼ中央位置で観察するため、中央(0°)への集光が大きくなっても、CCRが劣化しない限り大きな問題は生じない。
しかしながら、上述のように距離Xが長くなればなる程デフォーカスが大きくなり、結像画像の品質が劣化する。ここで焦点位置に向かって距離Xを長くしていくときに、中央(0°)への集光が高まり、焦点位置を超えると再び周囲への拡散光成分が若干増えていく。従って、一人で観察するという限定的な条件下を考えた場合であっても、焦点距離以上に距離Xを大きくすることはデフォーカスが大きくなるだけであって全く意味がない。
以上のことから、水平方向視野角拡大層20と反射層30との距離Xは、レンチキュラーシートを用いた場合に少なくともそのシリンドリカル形状によるシリンドリカルレンズの焦点までの距離以下であって、好ましくは60μm以内、さらに好ましくは20μm以内とすべきである。
換言すれば、水平方向視野角拡大層20のシリンドリカル形状部の頂部とシリンドリカル形状部によって形成されるシリンドリカルレンズの焦点位置までの距離(以下距離Yとする)と距離Xとの関係は、0≦X≦3Y/7が好ましく、さらに好ましくは、0≦X≦Y/7の場合である。なお、距離Xとシリンドリカルレンズの焦点距離(Zとする)との関係については、上記シリンドリカルレンズの焦点距離Zが180μmであることから、0≦X≦Z/3が好ましく、さらに好ましくは、0≦X≦Z/9となる。
上記実施例は、水平方向視野角拡大層20と反射層30との距離Xを基本的には固定した場合である。しかしながら、上述したように、観察者の人数により距離Xは、必ずしも一定でなくてもよい。つまり観察者の人数により距離Xを可変にして、効果的な反射を行うスクリーンとすることが可能である。例えば、観察者の人数に応じて、距離Xを0,20μm,30μm,60μm,140μmと変えることができるようにしておけば、使用時の状況に応じて最も効果的な反射型スクリーンとすることができる。
距離Xの調整はμmオーダーであるため、マイクロメータのように微調整機構をスクリーンの4隅など適切な位置に設けて上記の調整を行うことができる。スクリーンが更に大型になれば、モータ等の動力により微調整機構を駆動してその距離を制御することになる。
更に、上記の例によれば、スクリーンの全面において、距離Xは同一であるが、中心部と周辺部でその距離Xを変えてもよい。すなわち、投射装置Pからの投射光がスクリーン面と成す入射角度はスクリーン中央と周辺部とでは異なる。従って、反射効率を考えた場合、中心部の距離Xと周辺部の距離Xとを異ならせることは効果的であり、一般的に言えば、中心部の距離Xを周辺部の距離Xよりも近づける構成とすれば、スクリーン全体のコントラストは改善される。なお、距離Xを上記のように調節する代わりに、スクリーン全体の形状を、周辺部が投射装置P側にわずかに湾曲する形状にしても効果的である。
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、以上の説明から明らかなように、本発明により、明室においてもコントラストが高く、水平方向視野角が良好であって、かつ画面CCRが良好な反射型スクリーンを提供することができる。特に、水平方向視野角拡大層によってスクリーン水平方向と垂直方向で異なった反射特性(拡散度)を持たせることにより、垂直方向では拡散を絞って明室コントラストを改善し、水平方向では相対的に拡散を大きくすることによって高視野角を実現して、明室におけるコントラストを改善し、かつ大画面にも適用可能で、CCRの劣化も生じさせない反射型スクリーンを提供することができる。
また、TINT層構成ないしブラックマトリクス層によって外乱光を吸収せしめ、投射画像の黒色を引き締めることができる。また、水平方向視野角拡大層の後方に反射層を構成することにより、反射効率とスクリーン正面方向のゲインを向上させることができる。また、拡散層を多層構成とし、入射面の表面の表面粗さと拡散層の内部HAZEとを別々に制御することにより、拡散層の表面における反射光の拡散と、ホットスポットまたはホットバンドの低減とを実現することができる。
本発明の反射型スクリーンの一実施例を説明するための図で、照明光と投射装置からの投射光との挙動について説明する図である。 本発明の反射型スクリーンの一実施例を説明するための図で、弱拡散層と反射層を有した反射型スクリーンの構成例を示す図である。 マットスクリーンにおける照明光と投射装置からの投射光との挙動について説明するための図である。 本発明の反射型スクリーンにおける水平方向と垂直方向の視野角特性の一例を示す図である。 本発明の反射型スクリーンの他の実施例を説明するための図である。 本発明の反射型スクリーンの更に他の実施例を説明するための図である。 本発明の反射型スクリーンの更に他の実施例を説明するための図である。 本発明の反射型スクリーンの更に他の実施例を説明するための図である。 本発明の反射型スクリーンの更に他の実施例を説明するための図である。 本発明の反射型スクリーンの更に他の実施例を説明するための図である。 本発明の反射型スクリーンの更に他の実施例を説明するための図である。 本発明の反射型スクリーンの更に他の実施例を説明するための図である。 本発明の反射型スクリーンの更に他の実施例を説明するための図である。 本発明の反射型スクリーンの更に他の実施例を説明するための図である。 本発明の反射型スクリーンの更に他の実施例を説明するための図である。 本発明の反射型スクリーンの更に他の実施例を説明するための図である。 本発明の反射型スクリーンの更に他の実施例を説明するための図である。 本発明の反射型スクリーンの更に他の実施例を説明するための図である。 本発明の反射型スクリーンの更に他の実施例を説明するための図である。 本発明の反射型スクリーンの更に他の実施例を説明するための図である。 本発明の反射型スクリーンの更に他の実施例を説明するための図である。 本発明の反射型スクリーンの更に他の実施例を説明するための図である。 本発明の反射型スクリーンの更に他の実施例を説明するための図である。 本発明の反射型スクリーンの更に他の実施例を説明するための図である。 本発明の反射型スクリーンの更に他の実施例を説明するための図である。 本発明の反射型スクリーンの更に他の実施例を説明するための図である。 本発明の反射型スクリーンの更に他の実施例を説明するための図である。 本発明の反射型スクリーンの更に他の実施例を説明するための図である。 本発明の反射型スクリーンの更に他の実施例を説明するための図である。 本発明の反射型スクリーンの更に他の実施例を説明するための図である。 本発明の反射型スクリーンの更に他の実施例を説明するための図である。 本発明の反射型スクリーンの更に他の実施例を説明するための図である。 本発明の反射型スクリーンの更に他の実施例を説明するための図である。 本発明の反射型スクリーンの更に他の実施例を説明するための図である。 本発明の反射型スクリーンの更に他の実施例を説明するための図である。 本発明の反射型スクリーンの更に他の実施例を説明するための図である。 本発明の反射型スクリーンの更に他の実施例を説明するための図である。 本発明の反射型スクリーンの更に他の実施例を説明するための図である。 本発明の反射型スクリーンの更に他の実施例を説明するための図である。 本発明の反射型スクリーンの更に他の実施例を説明するための図である。 本発明の反射型スクリーンの更に他の実施例を説明するための図である。 本発明の反射型スクリーンの更に他の実施例を説明するための図である。 本発明の反射型スクリーンの更に他の実施例を説明するための図である。 本発明の反射型スクリーンの更に他の実施例を説明するための図である。 本発明の反射型スクリーンの更に他の実施例を説明するための図である。 本発明の反射型スクリーンの更に他の実施例を説明するための図である。 本発明の反射型スクリーンの更に他の実施例を説明するための図である。 本発明の反射型スクリーンの更に他の実施例を説明するための図である。 本発明の反射型スクリーンの更に他の実施例を説明するための図である。 本発明の反射型スクリーンの更に他の実施例を説明するための図である。 本発明の反射型スクリーンの更に他の実施例を説明するための図である。 本発明に関わる反射型スクリーンにおける輝度測定方法を説明するための図である。 反射型スクリーンの輝度測定位置を説明するための図である。 反射型スクリーンの各輝度測定位置における輝度測定結果と画面コントラストの計算結果を示す表である。 水平方向視野角拡大層と反射層との距離が0のときの光路をシミュレーションした図である。 図54Aに対応する視野角特性をシミュレーションした図である。 水平方向視野角拡大層と反射層との距離が20μmのときの光路をシミュレーションした図である。 図55Aに対応する視野角特性をシミュレーションした図である。 水平方向視野角拡大層と反射層との距離が30μmのときの光路をシミュレーションした図である。 図56Aに対応する視野角特性をシミュレーションした図である。 水平方向視野角拡大層と反射層との距離が140μmのときの光路をシミュレーションした図である。 図57Aに対応する視野角特性をシミュレーションした図である。 水平方向視野角拡大層と反射層との距離が200μmのときの光路をシミュレーションした図である。 図58Aに対応する視野角特性をシミュレーションした図である。 水平方向視野角拡大層と反射層との距離が60μmのときの視野角特性をシミュレーションした図である。 特開平11−38509号公報に記載された反射型スクリーンの構成を示す図である。 特開平11−38509号公報に記載された反射型スクリーンの作用について説明するための図である。 特開平11−38509号公報に記載された反射型スクリーンの作用について説明するための他の図である。 特開平11−38509号公報に記載された反射型スクリーンの作用について説明するための更に他の図である。

Claims (12)

  1. 投射光の入射側より、拡散光の強度比が円形よりも縦長になる弱拡散特性を備えた拡散層と、水平方向の視野角を拡大する水平方向視野角拡大層と、該水平方向視野角拡大層を透過した透過光を反射する反射層とを有し、
    前記水平方向視野角拡大層は、複数の凸条が連続的に配列され、前記凸条の頂部が、前記反射層側に配置するように構成され、
    前記複数の凸条は、各前記凸条の長手方向が前記反射型スクリーンの垂直方向に一致するように連続して配設され、
    前記拡散層は、全光線透過率が80%以上、HAZE値が75±10%の特性を備え
    前記反射層は、前記水平方向視野角拡大層の背面側に非接着で配設されてなり、
    前記反射層と前記水平方向視野角拡大層との距離が調節可能であって、該距離を調節するための調節機構は、前記反射型スクリーンに備えられたマイクロメータの動作に応じて前記反射層と前記水平方向視野角拡大層との距離が可変する機構であることを特徴とする反射型スクリーン。
  2. 請求項1に記載の反射型スクリーンにおいて、前記水平方向視野角拡大層は、前記凸条がシリンドリカル形状であることを特徴とする反射型スクリーン。
  3. 請求項1に記載の反射型スクリーンにおいて、前記水平方向視野角拡大層の前記凸条がシリンドリカル形状であって、前記反射層は、該シリンドリカル形状によって形成されるシリンドリカルレンズの焦点位置から前記凸条の頂部までの間に配設されることを特徴とする反射型スクリーン。
  4. 請求項3に記載の反射型スクリーンにおいて、前記反射層と前記水平方向視野角拡大層の凸条頂部との距離は、前記シリンドリカルレンズの焦点位置と前記水平方向視野角拡大層の凸条頂部までの距離の1/7以下の範囲にあることを特徴とする反射型スクリーン。
  5. 請求項1または2に記載の反射型スクリーンにおいて、前記凸条の配列方向のピッチは、200μm以下であることを特徴とする反射型スクリーン。
  6. 請求項1または2に記載の反射型スクリーンにおいて、前記反射層は、前記水平方向視野角拡大層の凸条列の表面に、蒸着または塗布によって層形成されていることを特徴とする反射型スクリーン。
  7. 請求項1または2に記載の反射型スクリーンにおいて、前記反射層は、前記凸条列表面に積層した反射シートによって形成されていることを特徴とする反射型スクリーン。
  8. 請求項1または2に記載の反射型スクリーンにおいて、前記拡散層は、ビーズ及び/または顔料による拡散材が分散した透明樹脂バインダによって形成されていることを特徴とする反射型スクリーン。
  9. 請求項に記載の反射型スクリーンにおいて、前記拡散層は、拡散材の粒径,材質,含有量,粒度のいずれかまたは複数が異なる複数の層によって構成され、前記拡散層の表面粗さと該拡散層の内部ヘイズとが個別に制御されていることを特徴とする反射型スクリーン。
  10. 請求項1または2に記載の反射型スクリーンにおいて、前記水平方向視野角拡大層は、シート状の基材と、該基材の表面に前記凸条の配列を形成してなることを特徴とする反射型スクリーン。
  11. 請求項に記載の反射型スクリーンにおいて、前記水平方向視野角拡大層は、前記凸条がプリズム形状であることを特徴とする反射型スクリーン。
  12. 請求項1に記載の反射型スクリーンにおいて、前記水平方向視野角拡大層は、前記凸条がウェーブ形状であることを特徴とする反射型スクリーン。
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