しかしながら、特許文献1に示すようなクリーニングローラを用いた定着装置では、例えば、A3サイズ等の用紙幅の大きい記録用紙に対して連続印刷を行うために、対応可能な最大用紙幅が大きい画像形成装置を用いる場合や、高速機を用いて連続的に印刷する(例えば多量に印刷する)場合には、クリーニングローラの両端部からの現像剤の排出が追いつかなくなる。
従って、電源投入直後の印刷であってもクリーニングローラ上の現像剤が、クリーニングローラから加圧ローラに戻り印刷物の表裏面を汚してしまうという現象が起こる。この現象は、特に印字率が大きい画像データによる両面印刷において顕著となることが判明した。
また、特許文献2ないし5に示すようなスクレーパーを用いた定着装置では、十分な掻き取り性能を得るために、図27に示すように、スクレーパー(ブレード)503の先端エッジ部Eを確実に加熱ローラ501や加圧ローラ502等の定着部材表面に当接させる必要がある。しかしながら、部品の寸法ばらつきや熱変形等により、ロットばらつきが生じるため、スクレーパー503の先端エッジ部Eを定着部材に対して常時安定して当接させることは困難であった。
特に、スクレーパー503とこれを保持するホルダー材料505の熱膨張率が異なる場合、スクレーパー503が熱膨張により波打ち、幅方向についても、スクレーパー503を均一に、定着部材に当接させることが困難であった。
また、スクレーパー503の先端エッジ部Eが定着部材に食い込んで、定着部材表面を傷つけたり、スクレーパー503の加工上の制約から、スクレーパー503の板厚を薄くすることにも限界がある。その結果、スクレーパー503の高い当接圧により、加圧ローラ502表面が磨耗しやすい等の問題があった。
更に、このようなスクレーパー方式のクリーニング装置では、掻き取られたトナーや紙粉がスクレーパー503の先端に残留し、トナー溜りDM1が形成される(図27)。そして、このトナー溜りDM1が成長していくと、逆にこのトナー溜りDM1から定着部材表面にトナーや紙粉が移行(流出)し、記録紙Pを汚してしまうという問題があった。
このトナー溜りDM1の流出による汚れを防止するため、特許文献5では、停止状態において圧接領域(定着ニップ部Y)に生じる定着部材の変形部分に対し、回転状態においてクリーニングブレードを追従させて当接させる変形追従手段を設けることで、ブレード先端に形成されたトナー溜りDM1の流出を防止する技術が開示されている。
しかしながら、加熱ローラや加圧ローラ等の定着部材に付着したトナーは、定着部材の熱により溶融された状態となっているため、図27に示すように、スクレーパー503の先端エッジEを定着部材に当接させても、定着部材の表面に溶融固着したトナーDを完全に掻き取るのは難しく、トナーの一部は先端エッジEからすり抜け、先端エッジEから下流側近傍のスクレーパー面S2に付着堆積していき、第2のトナー溜りDM2が形成される。同様に、紙粉についても、この溶融したトナーDと混じり合うことで、ブレードをすり抜け、この第2のトナー溜りDM2に取り込まれていく。
その結果、この第2のトナー溜りDM2から定着部材の表面にトナーや紙粉が流出し、記録紙汚れが発生してしまうといった問題があった。
特に、定着部材幅に比べて、サイズの小さい記録紙を連続で通紙した場合、定着部材の非通紙部領域における異常昇温により、トナー溜りDM2が溶融、流出し、その後サイズの大きな記録紙を通紙すると、記録紙汚れが顕著に発生してしまう。
また、特許文献4のクリーニング装置では、定着部材に比べて離型性の低いクリーニングブレードを定着部材に対して面で接触させることで、クリーニングブレードをエッジで当接させることなく、トナーのクリーニングを可能とし、且つ加熱ローラと加圧ローラとを離接可能に配設し、その離接に伴う加圧ローラの変位によってクリーニングブレードの撓み量を変化させ、クリーニングブレードに付着したトナー溜りDM2を剥離落下させるクリーニング装置が提案されている。
しかしながら、クリーニングブレードを面で当接した場合、エッジ部で当接した場合に比べて、クリーニング性能としては大きく劣り、また加熱ローラに対し、加圧ローラを離接可能に構成する必要があるため、装置が複雑となるといった問題があった。
本発明の目的は、例えば、用紙幅の大きい用紙に対して連続的に印刷を行った場合や、高速機により連続的に印刷を行った場合においても、加熱ローラおよび加圧ローラから不要な現像剤を適切に回収して、記録用紙の表面汚れ、裏面汚れを確実に防止することのできる定着装置のクリーニング装置、および、定着部材に均一に且つ安定的に当接が可能であり、定着部材に対するダメージが小さく、トナー溜りの流出による記録紙汚れのない、構成の簡単な定着装置のクリーニング装置を提供することにある。
本発明の定着装置のクリーニング装置は、加熱手段により加熱される加熱ローラと、加熱ローラに所定接触圧力をもって圧接する加圧ローラとを備え、これら両ローラ間に記録シートを挟み込み、記録シート上の現像剤を記録シートに定着させる定着装置のクリーニング装置において、前記加圧ローラに圧接して、この加圧ローラの表面の現像剤を除去するクリーニングローラを備え、このクリーニングローラの表面には複数の凹部が形成されていることを特徴としている。
上記の構成によれば、転写時に記録シートから加熱ローラに付着した現像剤(たとえばトナー)は、加熱ローラから加圧ローラに移り、クリーニングローラ(例えば金属製)により回収される。ここで、定着装置のクリーニング装置とは、定着装置内に配置されたクリーニング装置をいう。
加熱ローラと加圧ローラの表面の材質を適当に選択することにより、加熱ローラに付着した現像剤はほとんど全て加圧ローラに移すことができる。たとえば、加熱ローラの表面にテフロン(登録商標)(PTFE:ポリテトラフルオロエチレン)コーティングを施し、加圧ローラの少なくとも外周部をシリコーンゴム製にすることにより、加熱ローラに付着した現像剤をほとんど全て加圧ローラに移すことができる。
また、クリーニングローラが加圧ローラに接触していることにより、加圧ローラの表面の不要な現像剤はクリーニングローラに回収され、加圧ローラ上に現像剤は残らない。したがって、記録用紙の表面汚れ、裏面汚れを防止することができる。
なお、加圧ローラの温度は、加熱ローラの温度より低く、クリーニングローラの温度は、加圧ローラの温度より低い。したがって、加圧ローラの温度を現像剤の融点より低くすることができる。したがって、加圧ローラ上の現像剤は非溶融状態でクリーニングローラに回収されて、加圧ローラとクリーニングローラとの接触圧力により、クリーニングローラ表面に形成された複数の凹部に移動し、そこに回収される。
このように、現像剤はクリーニングローラ表面に形成された複数の凹部に回収されるので、従来のように例えば、単にクリーニングローラの軸方向両端部から現像剤を排出する構成と比較して、不要現像剤の迅速な回収が可能である。したがって、例えば、用紙幅の大きい用紙に対して連続的に印刷を行った場合や、高速機により連続的に印刷を行った場合においても、加熱ローラおよび加圧ローラから不要な現像剤を適切に回収して、記録用紙の表面汚れ、裏面汚れを確実に防止することができる。
上記の定着装置のクリーニング装置は、前記複数の凹部が、前記クリーニングローラ表面の全域に渡って配置されている構成としてもよい。
上記の構成によれば、加熱ローラおよび加圧ローラからの不要な現像剤の回収機能をさらに高めることができる。
上記の定着装置のクリーニング装置において、前記複数の凹部が形成されている領域におけるクリーニングローラ軸方向の幅は、定着装置において処理可能な最大シート幅以上に設定されている構成としてもよい。
上記の構成によれば、加圧ローラにおける、定着装置において処理可能な最大シート幅に対応する部分には不要な現像剤が残ることがない。したがって、最大シート幅の記録シートに対して定着を行う場合でも、記録シートの表面汚れ、裏面汚れを生じることがない。なお、クリーニングローラ軸方向の幅とは、クリーニングローラの軸方向の幅をいう。
上記の定着装置のクリーニング装置は、前記複数の凹部が千鳥状に配置されている構成としてもよい。この場合、クリーニングローラ表面における凹部は個々に独立した形状であり、例えば、円、楕円、多角形、もしくはその他の異形の開口形状である。
上記の構成によれば、定着ローラとクリーニングローラとの間において、現像剤がクリーニングローラの軸方向に移動して凹部に回収される場合、クリーニングローラの表面をその軸方向から見た場合の全ての領域に凹部を形成することができるので、現像剤の回収を効率良く行うことができる。また、定着ローラの表面において、定着ローラの1回転目にクリーニングローラの凹部が接触する領域と2回転目にクリーニングローラの凹部が接触する領域とがずれるような場合、定着ローラにおける凹部との接触領域を高密度に設定することができ、現像剤の回収効率をさらに高めることができる。例えば、上記のいずれが1/2ピッチである場合には、隣接する凹部の中間点に凹部が位置し、定着ローラにおける凹部との接触領域が高密度となる。
上記の定着装置のクリーニング装置は、前記複数の凹部がクリーニングローラ表面を軸方向に延びる溝形状である構成としてもよい。
上記の構成によれば、凹部の形成が容易となり、かつ隣接する凹部同士の間隔を等しくでき、定着ローラ表面の現像剤を効率良く行うことができる。
上記の定着装置のクリーニング装置は、前記複数の凹部がクリーニングローラ表面を周回する溝形状である構成としてもよい。
上記の構成によれば、凹部の形成が容易となり、かつ隣接する凹部同士の間隔を等しくでき、定着ローラ表面の現像剤を効率良く行うことができる。また、凹部をらせん状に形成した場合には、凹部に回収した現像剤のクリーニングローラ軸方向への移動が起こり、ローラ端部からの現像剤の排出が促進され、クリーニング機能を長期に渡って維持可能となる。
上記の定着装置のクリーニング装置は、前記凹部のクリーニングローラ円周方向への配置ピッチをXp(mm)、前記加圧ローラにおけるクリーニングローラの接触深さが最大となる点から加圧ローラ回転中心軸までの距離をRp(mm)としたとき、
π・Rp/Xp ≠ n (ただし、nは正の整数)
と設定されている構成としてもよい。
上記の構成によれば、加圧ローラの表面において、加圧ローラの回転の1周目に凹部が接触した位置に対して、加圧ローラの回転の2周目に凹部が重なって接触することがない。したがって、加圧ローラの表面における凹部の接触領域が高密度となり、加圧ローラ表面からの現像剤の回収を効率よく行うことができる。
上記の定着装置のクリーニング装置は、前記凹部のクリーニングローラ円周方向への配置ピッチをXp(mm)、前記加圧ローラにおけるクリーニングローラの接触深さが最大となる点から加圧ローラ回転中心軸までの距離をRp(mm)としたとき、
n+1/4≦π・Rp/Xp ≦ n+3/4 (ただし、nは正の整数)
と設定されている構成としてもよい。
上記の構成によれば、加圧ローラの表面において、加圧ローラの回転の1周目に凹部が接触した2つの位置の中間点に、加圧ローラの回転の3周目以内に凹部を接触させることができる。これにより、加圧ローラの表面における凹部の接触領域が高密度となり、加圧ローラ表面からの現像剤の回収を効率よく行うことができる。
上記の定着装置のクリーニング装置は、前記凹部のクリーニングローラ円周方向への配置ピッチをXp(mm)、前記加圧ローラにおけるクリーニングローラの接触深さが最大となる点から加圧ローラ回転中心軸までの距離をRp(mm)としたとき、
π・Rp/Xp ≒ n+1/2 (ただし、nは正の整数)
と設定されている構成としてもよい。
上記の構成によれば、加圧ローラの表面において、加圧ローラの回転の1周目に凹部が接触した2つの位置の中間点に、加圧ローラの回転の2周目に凹部を接触させることができる。これにより、加圧ローラの表面における凹部の接触領域が高密度となり、加圧ローラ表面からの現像剤の回収を効率よく行うことができる。
上記の定着装置のクリーニング装置は、前記凹部の内部の幅がクリーニングローラ回転軸に近づくほど小さくなっている構成としてもよい。
上記の構成によれば、凹部での毛管現象において、クリーニングローラ表面側での臨界圧力に対してローラ軸芯側の臨界圧力が大きくなり、現像剤が半溶融状態にて凹部に回収された場合の、ローラ軸心側への溶融現像剤の移動が促進され、凹部によるクリーニング機能を向上することができる。
上記の定着装置のクリーニング装置において、前記凹部は、クリーニングローラ半径方向の位置において、最小幅部分として幅が1.5mm以下の部分を有している構成としてもよい。
上記の構成によれば、凹部における毛管現象に基づく臨界圧力を大幅に増加でき、現像剤が半溶融状態にて凹部に回収される場合に、凹部への溶融現像剤の回収を表面張力により促進することができる。
上記の定着装置のクリーニング装置において、前記クリーニングローラは内部に中空部を有し、前記凹部が前記中空部に連通している構成としてもよい。
上記の構成によれば、加圧ローラによる接触圧力により、クリーニングローラの表面に付着したトナーを連通部を介して凹部から中空部に移動させることができる。これにより、凹部によるクリーニング機能をさらに長期間に渡って安定に維持することができる。
上記の定着装置のクリーニング装置は、前記凹部のクリーニングローラ表面における最小幅部分の幅が0.3〜2mmの範囲に設定されている構成としてもよい。
上記の構成によれば、凹部のクリーニングローラ表面における最小幅部分の幅が0.3〜2mmの範囲に設定されており、この範囲は、定着装置に滞留する紙分のサイズが含まれる範囲であるので、加圧ローラに付着している不要現像剤に加えて、上記紙粉も回収することができる。したがって、紙粉が例えばクリーニングローラの表面に滞留して、紙粉を核としたトナー粒隗が成長し、大きくなった後にクリーニングローラ表面から剥離することによる記録シート裏面の汚れを防止することができる。
また、本発明の他の構成に係る定着装置のクリーニング装置は、加熱手段により加熱される加熱部材と、加熱部材に所定接触圧力をもって圧接する加圧部材とを備え、これら両部材の圧接部に間に記録シートを挟み込み、記録シート上の現像剤を記録シートに定着させる定着装置のクリーニング装置において、前記加熱部材若しくは加圧部材に圧接して、その表面の現像剤を除去するスクレーパー状のクリーニング部材を備え、前記クリーニング部材には、前記加熱部材若しくは加圧部材の被クリーニング面との当接部近傍に開口部が形成されていることを特徴としている。
上記の構成によれば、クリーニング部材により掻き取られた異物は、開口部を通じてクリーニング部材の表面(被クリーニング面との接触面とは反対側の面)に移動するため、異物がクリーニング部材と被クリーニング面との間に堆積することがなく、堆積した異物が被クリーニング面に再付着するのを防止することができる。
また、開口部により、通常、弾性部材からなるクリーニング部材のばね性が低減されるため、従来に比べてより低圧力でクリーニング部材を当接できるようになり、被クリーニング面に対する負荷を低減することができる。
更に、クリーニング部材が熱膨張しても、開口部により熱膨張が吸収されるため、クリーニング部材が熱により波打つのが防止され、クリーニング部材を全幅に渡って、安定的に被クリーニング面に当接させることができる。
尚、本発明は、定着部材や加圧部材がローラ形状ではなくベルトで構成される形態に対しても適用可能である。
上記の定着装置のクリーニング装置において、前記開口部が形成されている領域におけるクリーニング部材の幅は、定着装置において処理可能な最大シート幅以上に設定されている構成としてもよい。
上記の定着装置のクリーニング装置において、前記開口部は、前記被クリーニング面の走行方向に対し、斜め方向のエッジ部を有する形状であり、かつ、複数設けられている構成としてもよい。
上記の構成によれば、開口部がひとつの場合に比べ、クリーニング部材の強度が向上する。また、開口部を斜めに設けることにより、クリーニング部材の幅方向に関して、確実に開口部を設けることができる。
上記の定着装置のクリーニング装置において、前記被クリーニング面の走行方向に対する前記複数の開口部の角度をθ、前記複数の開口部の幅方向におけるピッチをp、前記被クリーニング面の走行方向における前記クリーニング部材と前記被クリーニング面との当接幅をWnとした時、
p/tanθ≦Wn
と設定されている構成でもよい。
上記の構成によれば、斜め方向に設けられたエッジ部が、少なくとも2箇所以上被クリーニング面に当接するため、クリーニング部材によるクリーニング性能を向上することができる。
上記の定着装置のクリーニング装置において、前記開口部は、前記被クリーニング面の走行方向に対し、千鳥状に複数設けられている構成としてもよい。この構成によっても、開口部を千鳥状に複数設けることにより、クリーニング部材の幅方向に関して、確実に開口部を設けることができる。
上記の定着装置のクリーニング装置において、前記開口部が、前記被クリーニング面と当接している構成としてもよい。
上記の構成によれば、クリーニング部材と被クリーニング面との位置関係がばらついても、確実にクリーニング部材のエッジを被クリーニング面に当接することができる。
上記の定着装置のクリーニング装置において、前記クリーニング部材の先端部が、前記被クリーニング面から遠ざかる方向に曲がっている構成としてもよい。
上記の構成によれば、クリーニング部材先端部と被クリーニング面との距離が広がるため、クリーニング部材先端部にトナー溜りが生成されるのを確実に防止することができる。
上記の定着装置のクリーニング装置において、前記クリーニング部材の先端部が、櫛歯上に分離されている構成としてもよい。
上記の構成によれば、クリーニング部材の先端を前記被クリーニング面の走行方向に対して順方向に向けて設置した場合、先端が櫛歯状に分離されていれば、トナー溜りが形成される場所がなくなり、トナー溜りを確実に防止することができる。
上記の定着装置のクリーニング装置において、前記クリーニング部材が、前記開口部を囲む領域の外縁の一部に切欠き部を有する構成としてもよい。
上記の構成によれば、開口部を囲む領域の外縁(フレーム部)が熱膨張しても、その熱膨張による伸びを切欠部で吸収するため、フレーム部の熱膨張に起因するクリーニング部材の浮き、波打ち等を未然に防止することができる。
本発明の定着装置は、上記の何れかのクリーニング装置を備え、前記クリーニング部材における前記被クリーニング面との当接面が、鉛直もしくは上向きに配置されていることを特徴としている。
上記の構成によれば、クリーニング部材により除去された異物に対し、当接面から被当接面の方向に重力が作用するため、開口部を通じて、異物がより移動しやすくなる。
本発明の他の構成に係る定着装置は、上記の何れかのクリーニング装置を備え、前記クリーニング部材の先端部が、前記被クリーニング面の走行方向に対し、順方向に向いて設置されていることを特徴としている。
上記の構成によれば、クリーニング部材を逆方向に設置した場合、クリーニング部材の被クリーニング面との当接部より下流側部分で、クリーニング部材を支持することになり、下流側部分の設計の自由度が少なく、この部分でトナー溜りが生じやすいが、クリーニング部材を順方向に設置した場合、上記のような制約がないため、トナー溜りの生成を防止することができる。
本発明の他の構成に係る定着装置は、上記の何れかのクリーニング装置を複数備えていることを特徴としている。
上記の構成によれば、小サイズ紙の連続通紙により、上流側のクリーニング部材からトナー溜りが溶融流出しても下流側のクリーニング部材で再度回収されることから、記録紙汚れを確実に防止することができる。
本発明の他の構成に係る定着装置は、前記クリーニング装置が設置された加熱部材若しくは加圧部材表面にオフセット防止剤を塗布するためのオフセット防止剤塗布手段が配置されている構成としてもよい。
上記の構成によれば、クリーニング部材にオフセット防止剤が付着するため、クリーニング部材への異物の付着力が弱まり、開口部を通じて、異物がより移動しやすくなる。
特に、小サイズ紙を連続通紙した場合でも、非通紙領域に塗布されたオフセット防止剤は記録紙には移行しないため、クリーニング部材の非通紙領域におけるオフセット防止剤の付着量は通紙領域に比べて増加し、開口部でのトナー溜りの移動をよりスムーズにさせる。その結果、小サイズ紙を連続通紙した場合でもトナー溜りの溶融流出による記録紙汚れを確実に防止することができる。
上記の定着装置において、前記オフセット防止剤塗布手段の下流側に、前記クリーニング装置のうちの少なくとも1つが配置されている構成としてもよい。
上記の構成によれば、オフセット防止剤が記録紙に移行する前にクリーニング部材に付着するため、オフセット防止剤による開口部での異物の摺り抜け効果をより向上できる。更に、経時的にオフセット防止剤塗布手段がトナーや紙粉で汚れ、これら異物が定着部材に流出したとしても、下流側に設けたクリーニング部材により回収されるため、記録紙汚れを防止することができる。
上記の定着装置において、前記クリーニング装置が設置された加熱部材若しくは加圧部材表面を外側から加熱する外部加熱手段を有し、前記クリーニング装置と前記外部加熱手段とが近接して配置されている構成としてもよい。
上記の構成によれば、外部加熱手段からの熱により、副次的にクリーニング部材も加熱されることから、クリーニング部材の温度が従来よりも高温状態に維持され、開口部が固着したトナーで目詰まりするのを防止することができる。
本発明の画像形成装置は、上記の何れかのクリーニング装置を有する定着装置を備えていることを特徴としている。
上記の画像形成装置は、顔料の濃度が7%以上の現像剤を使用して画像形成を行う構成としてもよい。
本発明の画像形成装置では、顔料の濃度が7%以上の現像剤を使用して現像剤の消費量を低減した場合であっても、不要な現像剤をクリーニング装置により回収することができ、ランニングコストを低減することができる。即ち、一般的な現像剤(例えばトナー)は、顔料濃度が3〜4%である。これに対して顔料濃度を7%以上とすれば現像剤の消費量を低減することができる。
一方、このように顔料濃度を高めると、現像剤の溶融時の粘度が上昇し、一般にクリーニングローラによる現像剤の移動・回収の効率が低下する。しかしながら、本発明の構成では、クリーニングローラに凹部を形成し、その凹部によって効率良く現像剤を回収するので、粘土が上昇した現像剤であっても適切に回収可能である。あるいは、スクレーパー状のクリーニング部材に開口部を設け、クリーニング部材により掻き取られた異物は、開口部を通じて、クリーニング部材の表面(被クリーニング面との接触面とは反対側の面)に移動するため、異物がクリーニング部材と被クリーニング面との間に堆積することがなく、粘土が上昇した現像剤であっても適切に回収可能である。
以上のように、本発明の定着装置のクリーニング装置は、加圧ローラに圧接して、この加圧ローラの表面の現像剤を除去するクリーニングローラを備え、このクリーニングローラの表面には複数の凹部が形成されている構成である。
これにより、加圧ローラ表面の不要現像剤は、クリーニングローラ表面に形成された複数の凹部に回収されるので、従来のように例えば、単にクリーニングローラの軸方向両端部から現像剤を排出する構成と比較して、不要現像剤の迅速な回収が可能である。したがって、例えば、用紙幅の大きい用紙に対して連続的に印刷を行った場合や、高速機により連続的に印刷を行った場合においても、加熱ローラおよび加圧ローラから不要な現像剤を適切に回収して、記録用紙の表面汚れ、裏面汚れを確実に防止することができる。
また、本発明の他の定着装置のクリーニング装置は、加熱部材若しくは加圧部材に圧接して、その表面の現像剤を除去するスクレーパー状のクリーニング部材を備え、前記クリーニング部材には、前記加熱部材若しくは加圧部材の被クリーニング面との当接部近傍に開口部が形成されている構成である。
これにより、クリーニング部材により掻き取られた異物は、開口部を通じて、クリーニング部材の表面(被クリーニング面との接触面とは反対側の面)に移動するため、異物がクリーニング部材と被クリーニング面との間に堆積することがなく、堆積した異物が被クリーニング面に再付着するのを防止することができる。また、開口部により、通常、弾性部材からなるクリーニング部材のばね性が低減されるため、従来に比べてより低圧力でクリーニング部材を当接できるようになり、被クリーニング面に対する負荷を低減することができる。更に、クリーニング部材が熱膨張しても、開口部により熱膨張が吸収されるため、クリーニング部材が熱により波打つのが防止され、クリーニング部材を全幅に渡って、安定的に被クリーニング面に当接させることができる。
〔実施の形態1〕
本発明の実施の一形態を図面に基づいて以下に説明する。ここで、定着装置とは、記録シート(たとえば、紙など)上に転写された現像剤(例えばトナー)の画像を熱と圧力により定着させるものである。これにより、記録材上に画像が記録される。また、定着装置は、内部に加圧ローラと、加熱ローラと、クリーニングローラとを有している。
図1に上記定着装置14の構造をさらに詳細に示す。図1は定着装置14を示す概略の縦断面図である。同図の定着装置14において、ローラ形状をなす定着ローラ31および加圧ローラ32は、それぞれ内部に導電性の芯金61および71を有している。
定着ローラ31には、アルミウムや鉄、およびそれらの合金が多用されている。本実施の形態において、定着ローラ31は、鉄系の冷間圧延炭素鋼鋼管を引き抜き等で所望の外径、肉厚に加工し、その後研磨加工を行ない外径40mm、肉厚1.3mmに製作されている。定着ローラ31の両端部は、外径を30mm、肉厚1.5mmに絞り加工を行なって、定着ローラ31に加わる荷重を軸支部材であるボールベアリング(ころがり軸受の一種)で支える。定着ローラ31の芯金61は、防錆の目的で材料表面に対してパーカライジング処理(リン酸塩被膜処理)を施し、錆の発生を抑制している。
定着ローラ31における、絞り加工を施していない中央のスリーブ部分には、加熱溶融したトナーとの接触でも離型性能を維持できるフッ素系樹脂が一般的に用いられる。前記フッ素樹脂としては、PFA(テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)やPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、あるいはそれらの混合体であり、導電性の芯金61上に、中間層62を介して表面絶縁層63としてコーティングされている。
表面絶縁層63としては、耐熱性および離型性の観点から、その他、例えば、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、エチレン/テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、エチレン/クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)等のフッ素樹脂、あるいはフッ素ゴムラテックスを含む材料を各々単独で、もしくは2種類以上を組み合わせて使用することもできる。これらは、塗布・焼成によって形成すること、あるいはチューブ被覆で形成すること等ができる。
中間層62は、表面絶縁層63としてのフッ素樹脂とパーカライジング処理した炭素鋼鋼管表面との接着性を高めるものである。本実施の形態では、ゴム系あるいはレジン系接着材等の絶縁性プライマを用いている。なお、中間層62としては、前述の絶縁性プライマ以外に、導電性プライマを用いることができる。
また、定着ローラ31の内面には耐熱吸熱層が形成されている。この耐熱吸熱層は、定着ローラ31が内包した加熱体であるハロゲンランプ64が定着ローラの内周面に赤外光等の放射エネルギーを放出した場合に、これを効率良く吸収して熱に変換するものである。耐熱吸熱層は、例えば、変性シリコーン樹脂、無機耐熱黒顔料、炭化水素(溶剤)などを混合したものを塗布し乾燥させたものであり、膜厚20〜30μmに形成する。一般的に、オキツモ(商品名)、テツゾール(商品名)、セルモブラック(商品名)等の耐熱塗料が用いられている。本実施の形態では、オキツモを用いている。
なお、定着ローラ31において、66は、定着ローラ31の表面温度を検出する温度検出素子であるサーミスタであり、65は過昇温防止手段としてのサーモスタットである。また、67は上剥離爪であり、定着ローラ31に貼り付いた記録材91を機械的に剥ぎ取るものであり、78は下剥離爪であり、加圧ローラ32に貼り付いた記録材91を機械的に剥ぎ取るものである。
なお、本実施例で用いるサーミスタは、図2(a)(b)に示すように、ハウジング129に固定支持された弾性部材であるステンレス板125上にサーミスタチップ124を直接ボンディングして、熱応答性を早くしたものである。このサーミスタは、バイアス電圧を印加すること、摩擦帯電によって高電位になっている定着ローラ31、加圧ローラ32および加熱ローラ77に当接することから、高電圧に対して、温度制御装置や画像形成装置などの電気系統を保護する必要がある。特に、ステンレス板と前述した各々のローラとが近接しており、温度制御装置の2次回路との絶縁耐圧を十分確保しておかなければならない。
そこで、本実施の形態におけるサーミスタは、サーミスタチップ124をボンディングしているステンレス板125の受熱面側に対して絶縁被覆層126を被せ、その上に耐熱離型層127を被せる。また、その反対側の面には保護層128を被せる。また、ステンレス板125とハウジング129との間において、当接するローラ表面との絶縁距離を確保するために、絶縁被覆層126、耐熱離型層127および保護層128にて、ステンレス板125をハウジング129の境界付近まで覆っている。こうすることで、サーミスタチップ124やステンレス板125に対して、各々のローラからリーク電流が流れることがなく、高電圧による破損や劣化といった不具合が解消される。この結果、安定したバイアス電圧を印加することができるとともに、正確な温度情報を取得することができ、良好な温度制御を実施することができる。
本実施の形態において、絶縁被覆層126は接着剤を含んだ厚み50μmのポリイミド(商品名:カプトン)であり、耐熱離型層127は接着剤を含んだ厚み130μmのガラス繊維に耐熱離型樹脂を含浸させたものである。また、保護層128は接着剤を含んだ厚み80μmのテフロン(登録商標)である。なお、これら材料は、上記のものに限定されず、諸性能において代替できるものであれば、他の材料でもよい。
加圧ローラ32は、鉄やステンレス等の導電性の芯金71上に、シリコーンゴム等の耐熱性を有する絶縁性弾性層72を形成し、その外周に中間層73を形成する。この中間層73の外周には、表面の離型性能を向上させる表面抵抗層74を形成する。中間層73は、絶縁性弾性層72と表面抵抗層74との接着性を高めるものである。本実施の形態において、中間層73には、絶縁性弾性層72との接着であるので、絶縁性プライマを用いている。
加圧ローラ32の表面抵抗層74は、表面抵抗率として1010Ωを用いている。105Ωでも使用できるが、より好ましくは、107Ω〜1018Ω以上の表面抵抗率が良い。また、体積抵抗率は、107Ω・cm以上、より好ましくは、1010Ω・cm以上である。
絶縁性弾性層72としては、前述のシリコーンゴム系であれば、高温加硫型シリコーンゴム(HTV)、付加反応硬化型シリコーンゴム(LTV)、縮合反応硬化型シリコーンゴム(RTV)、その他にフッ素ゴム、またはこれらの混合物等が挙げられる。具体的には、例えば、ジメチルシリコーンゴム、フロロシリコーンゴム、メチルフェニルシリコーンゴム、ビニルシリコーンゴム等のシリコーンゴム系、フッ化ビニリデンゴム、テトラフルオロエチレン−プロピレンゴム、テトラフルオロエチレン−パーフルオロメチルビニルエーテルゴム、ホスファゼン系フッ素ゴム、フルオロポリエーテル等のフッ素ゴム等を使用することができる。これらのゴムは、各々単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができ、注型・加硫、研磨等で成形する。
図3は定着ローラ31の支持構造を示す正面図、図4は同分解斜視図である。定着ローラ31は、図3および図4に示すように、定着装置14のフレーム82に取り付けられたボールベアリング81により支持されている。フレーム82は鉄系の冷間圧延鋼をプレス成形したものである。このフレーム82は例えば画像形成装置41のフレームに取り付けられている。ボールベアリング81は、外輪部81a、転動体(図示せず)および内輪部81bを有し、定着ローラ31の両端部における絞り部分のジャーナル部31aに嵌合されている。
加圧ローラ32は、ステンレス等の軸部に対して、ボールベアリング(図示せず)を嵌合し、このボールベアリングを、フレームにカシメた支点軸から延びる荷重レバーにより受けて、定着ローラ31の中心軸方向へ、荷重バネ等によって荷重する。この荷重による圧接力は、本実施の形態において、764N(両端合計)であるが、記録材91の種類、定着ローラ31や加圧ローラ32の剛性、温調温度等の条件や性能によって、任意に設定可能である。
また、ボールベアリング81の外輪部81aと内輪部81bとの間にある転動体は、通常、ベアリング材料同志の金属接触を極力少なくして、回転摩擦が少ない状態を維持し、回転に必要な駆動力を極力小さくして、荷重を支えるようにしているが、単に金属同志の接触だけでは、回転による摩擦の影響により焼き付きを起こしてしまう。そこで、シリコーン系やフッ素系オイルをベースとした潤滑剤(グリス)を外輪部81aと内輪部81bとの間に注入し、金属同志の接触でも焼き付きを起こさないようにしている。
上記のように、定着装置14では、ボールベアリング81を介して定着ローラ31に定着バイアス電圧が印加され、定着ローラ31と加圧ローラ32とは所定の荷重で相互に圧接され、記録材91を狭持搬送しながらトナーからなる未定着画像を加熱溶融し記録材91上に定着する。
なお、本実施の形態で用いた材料や寸法、形状等は、それらに限定されるものではなく、所望の性能を逸脱しない範囲で、適宜変更可能であり、種々のものを用いることができる。
さらに、本実施の形態の定着装置14では、図1に示すように、加圧ローラ32の周囲に、清掃部材であるクリーニングローラ75と、第2加熱部材である加熱ローラ77が当接している。なお、79は、66と同様に、加熱ローラ77の表面温度を検出する温度検出素子であるサーミスタである。
クリーニングローラ75は、アルミニウムや鉄、あるいはそれらの合金(ステンレス鋼も含む)材料からなり、中空ローラあるいは中実ローラを加工して、両端部にすべり軸受やころがり軸受を嵌合し、荷重バネ等により、加圧ローラ32に対して所定範囲のニップを保持しながら圧接している。本実施の形態では、炭素鋼やステンレス鋼製の外径15mmのクリーニングローラである。このクリーニングローラ75の表面は、加圧ローラ32表面に少量残留するトナーを清掃するために、所定の表面粗さを付与している。
一方、加熱ローラ77は、アルミニウムや鉄、あるいはそれらの合金(ステンレス鋼も含む)材料を用いた中空ローラであり、最外周面に設けた表面離型層77aによって離型性能を維持したまま、加圧ローラ32と圧接した際のニップでの熱伝導によって表面を加熱する。本実施の形態では、アルミニウム合金製の外径15mm、肉厚0.85mmのストレートパイプ77bの外周面に、中間層77cと表面離型層77aとを順次形成し、ストレートパイプ77bの内周面には、定着ローラ31と同様に耐熱吸熱層を設け、内部には、ハロゲンランプ77dを内包している。
加熱ローラ77において、中間層77cや表面離型層(表面絶縁層)77aは、定着ローラ31と異なる構成を用いることが可能であるが、本実施の形態では同じ構成を用いている。また、加熱ローラ77についても、両端部にすべり軸受やころがり軸受を嵌合し、荷重バネ等により、加圧ローラ32に対して所定範囲のニップを保持しながら圧接している。
定着ローラ31には、図1に示すように、記録材91の裏面に付着してくる逆極性トナー92を記録材91に留める向きに電位差を付与する目的で、バイアス装置94からバイアス電圧を印加する。本実施の形態において、転写装置5は、接触方式で転写を行うものであり、図14ではローラ状のものを示しているものの、ベルト状であってもよい。なお、図1において、記録材91における定着ローラ31側の面に付着しているトナー93は、画像を形成するトナーである。
ここで、転写装置5は、定着装置14に対して記録材91の流れにおける上流に位置しており、感光体ドラム1上に形成されたトナーによる静電顕像であるトナー画像を記録材91に写し取る転写プロセスを行う。このときに、上記の逆極性トナー92が転写装置5の表面に付着し、さらに転写装置5の表面から記録材91の裏面に付着する。
転写装置5では、通常、逆極性トナーや紙紛等を除去するような機構を有するものの、完全には除去できないことが多く、この残留した逆極性トナーや紙紛は、転写装置5の表面に蓄積されてくる。そして、電気的あるいは機械的付着力等の力のバランスによって、一部あるいは全部が記録材91に付着して、下流側の定着装置14に運ばれてくる。
通常であれば、上記逆極性トナー92や紙紛等は、そのまま記録材91に付着し、記録材91とともに画像形成装置41(図14参照)から排出される。しかしながら、従来の定着装置14では、多数枚の定着処理を行った場合、定着装置14の条件、特に定着ローラ31や加圧ローラ32の摩擦帯電によって生じた静電気力の大きさや極性等によって、逆極性トナー92が記録材91から引き剥がされて加圧ローラ32、さらには定着ローラ31にまで付着し、その結果、記録材91の裏面や表面に画像不良や欠陥を発生させてしまうこととなっていた。
そこで、本実施の形態の定着装置14では、定着ローラ31における導電性の芯金61に、逆極性トナー92(例えば、正極性)の帯電極性とは逆極性(例えば、負極性)の定着バイアス電圧を印加している。
このような構成では、バイアス装置94から定着ローラ31の芯金61に印加される定着バイアス電圧にて、記録材91の裏面の逆極性トナー92を記録材91の裏面に留める方向の静電気力が作用する。これにより、記録材91の裏面の逆極性トナー92は、加圧ローラ32の方へ引き剥がされることなく記録材91上に留まる。その結果、記録材91の裏面に定着されて記録材91とともに画像形成装置41から排紙される。なお、記録材91上の逆極性トナー92は、記録材91の1枚あたりの量が少量であるので、定着された画像に対しては、ほとんど影響のないものである。
しかしながら、例えば、プロセス速度が335mm/s、印刷速度55〜65枚/分で加熱ローラ32の温度設定180℃として多数枚数を連続印刷すると加圧ローラの表面温度は上昇して100℃前後になってしまう。これは、トナーの融点120℃より低いが軟化点70℃前後を超えた状態となっており、加圧ローラ32にバイアスを印加しているにもかかわらずトナーが加圧ローラ表面に付着する現象が起きてくる。
この加圧ローラ32に付着したトナーが堆積した後に、記録材91の裏面に再転移し定着されると画質が劣化してしまう。加圧ローラ32の表面へのトナーの堆積を防ぐため、定着ニップ下流側にクリーニングローラ75が配置されており、加圧ローラ32表面のトナーはクリーニングローラ75の表面に粘着転移し、加圧ローラ32の表面は清掃され、良好な画質を維持するものである。
しかしながら、このようにクリーニングローラ75を有していても、次のように、装置寿命全期間に渡って良好な画質を維持することが困難であることが判明した。
即ち、高速機など印刷ボリュームの大きな装置においては、クリーニングローラ75に堆積するトナーが多量となると、トナー粒隗が形成され、加圧ローラ32とクリーニングローラ75との接触が不均一になる。さらに、記録紙がない状態での空転運転、あるいは小サイズ紙に対して連続印刷したときの通紙領域から外れた領域では、加圧ローラ32の表面がトナーの融点を超えた140−160℃に上昇する。このようなことから、クリーニングローラ75の表面に堆積したトナー粒隗がクリーニングローラ75から剥離して加圧ローラ32上に付着し、記録材91の裏面に定着されることにより画質劣化となってしまう。
そこで、本実施の形態の定着装置14では、クリーニングローラ75の表面においてトナーが堆積成長するのを防止するために、図5(a)(b)に示すように、クリーニングローラ75の表面に凹部76を形成している。なお、図5(a)はクリーニングローラ75における要部の正面図、図5(b)は図5(a)におけるA−A線矢視断面図である。
図6(a)(b)には、クリーニングローラ75上における上記凹部76の配置例を示す。同図では凹部76が形成されたクリーニングローラ75の表面を周方向に展開した状態を示している。なお、同図において、凹部76の形状は円形としているが、これに限らず、楕円形あるいは多角形等であってもよく、形状については特に問わない。
図6(a)において、凹部76は直交する方向に直線上に並んでいる。具体的には、クリーニングローラ75の軸方向およびこの方向に直交する方向に直線状に並んでいる。図6(b)において、凹部76は千鳥に並んでいる。言い換えると、任意の隣り合う列同士および行同士において、凹部76は互いにずれた位置に形成されている。ここで、凹部76の配置としては、上記の両例のうちでは、千鳥に並んでいる方が好ましい。その理由を図7(a)(b)を用いて説明する。
図7(a)は、図6(a)の互いに隣接する3つの凹部76の中心を直線で結んだものであり、図7(b)は、同様に、図6(b)の互いに隣接する3つの凹部76の中心を直線で結んだものである。
図7(a)において、3つの隣り合う凹部の中心点を100、101、102とし、中心点100と中心点101の距離、中心点101と中心点102の距離、中心点100と中心点102の距離をL1、L2、L3とする。また、図7(b)において、同様に、3つの隣り合う凹部の中心点を103、104、105とし、中心点103と中心点104の距離をL4、中心点104と中心点105の距離をL5、中心点105と中心点103の距離をL6とする。図7(a)の場合、距離L1L2は等しいが、L3は異なる。
これに対して、図7(b)では、2つの中心点同士の各距離L4、L5、L6がそれぞれ等しくなる。したがって、図7(b)の場合には、図7(a)の場合よりも、クリーニングローラ75に付着した現像剤を効率良く凹部に移動させ、回収することができる。これにより、凹部76は千鳥状に配置されているほうが好ましい。
次に、図8(a)、(b)により、凹部76を千鳥状に配置した場合における、凹部76の好ましいピッチについて説明する。ここでは、クリーニングローラ75の周方向における凹部76のピッチを対ピッチXpとする。また、同図において、破線および実線にて示した円形は、加圧ローラ32上でのクリーニングローラ75の凹部76が通過した位置を示している。このうち、破線の円形は、加圧ローラ32上をクリーニングローラ75の凹部76が1周目に通過した位置を示しており、実線の円形は、加圧ローラ32上をクリーニングローラ75の凹部76が2周目に通過した位置を示している。なお、実線が1週面の通過位置で、破線が2週面の通過位置でもよい。
図8(a)、(b)から明らかなように、クリーニングローラ75の凹部76の対ピッチXpを適切に設定することにより、クリーニングローラ75の凹部76に現像剤を移動させ、回収することができる。即ち、図8(a)場合には、1周目の破線の円形と2周目の実線の円形とがほぼ同じ位置に配置されており、両円形のピッチがXpとなっている。この場合には、現像剤の凹部76への移動、回収が相対的に効率良く行われ難いことが判る。これに対し、図8(b)は、理想的な場合であり、隣接する破線の円形と実線の円形との対ピッチの距離がXp/2になっている。したがって、1周目の隣り合う2個の破線の円形の間に2周目の実線の円形が位置している。これにより、現像剤の凹部への移動、回収が効率良く行われる。
上記のように現像剤の移動、回収を効率良く行うためのクリーニングローラ75の凹部76と加圧ローラ32との関係を図9に示す。図9は、加圧ローラ32の実効半径Rpを示す図である。
同図において、凹部76のクリーニングローラ75円周方向への配置ピッチ、もしくはクリーニングローラ75円周方向への配置対ピッチをXp(mm)、加圧ローラ32においてクリーニングローラ75の接触深さが最大となる点から回転中心軸までの距離(実効半径)をRp(mm)とする。このときには、まず、π・Rp/Xp ≠ n(nは正の整数)を満たしている必要がある。これは次の理由による。
まず、クリーニングローラ75は、加圧ローラ32をクリーニングする際に、実効半径Rpの周りを回転する。すなわち、クリーニングローラ75が加圧ローラ32上を一周する場合、その移動距離は2π・Rpである。また、対ピッチはXpである。したがって、2π・Rp/Xp=n(nは正の整数)を満たした場合、クリーニングローラ75の凹部76は、クリーニングローラ75が加圧ローラ32の周りを何周回転しても加圧ローラ32上の同じ位置を通過することになる。この場合に現像剤を効率良く回収することができないのは、前記の通りである。すなわち、凹部76は上記同じ位置以外の現像剤を回収できない。
したがって、
2π・Rp/Xp≠n(nは正の整数)
を満たす必要がある。なお、
2π・Rp/Xp≠n(nは正の整数)
と
π・Rp/Xp ≠ n(nは正の整数)
は必要かつ十分な条件である。この式を満たす場合には、クリーニングローラ75が加圧ローラ32の表面を何回転かすることにより、加圧ローラ32の表面からクリーニングローラ75に現像剤を移動させ、回収することができる。
次に、凹部76の対ピッチXpと加圧ローラ32の実効半径Rpとの関係においてさらに望ましい場合について説明する。対ピッチXpと加圧ローラ32の実効半径Rpとが、
n+1/4≦π・Rp/Xp ≦ n+3/4(nは正の整数)
を満たす場合、現像剤のクリーニングローラの凹部への移動、回収をさらに良好に行うことができる。その理由について以下に説明する。
上式を満たす場合、加圧ローラ32の周りのクリーニングローラ75の回転において、クリーニングローラ75の凹部76は、1周目に隣り合う凹部76が接触した位置の中間点に3周以内に位置する。すなわち、クリーニングローラ75が加圧ローラ32の周りを少なくとも3周すれば、加圧ローラ32上の現像剤をクリーニングローラ75の凹部に移動させ、回収することができる。
次に、凹部76の対ピッチXpと加圧ローラ32の実効半径Rpとの関係においてさらに望ましい場合について説明する。対ピッチXpと加圧ローラ32の実効半径Rpとが、
π・Rp/Xp ≒ n+1/2(nは正の整数)
を満たす場合には、1周目に接触した凹部76の中心点を、2周目に接触した凹部76が通過することになり、2周目で加圧ローラ32上の現像剤をクリーニングローラ75の凹部76に移動させ、回収することができる。なお、
π・Rp/Xp = n+1/2(nは正の整数)
を満たす場合は、よりいっそう現像材を移動、回収することができる。
次に、凹部76の形状について、図10(a)ないし図10(d)を用いて説明する。図10(a)に示すクリーニングローラ75は凹部76の形状が円形である。クリーニングローラ75は加圧ローラ32に対して例えばその下側から圧接している。図の黒い部分は凹部76を表している。なお、図10(a)においては、白い部分が凹部76であってもよい。
加圧ローラ32の軸方向の長さは、クリーニングローラ75の軸方向の長さより長い。したがって、加圧ローラ32の軸方向の長さは、クリーニングローラ75の凹部領域(凹部76が形成されている領域)の幅よりも長い。また、クリーニングローラ75の凹部領域幅の長さは、最大用紙幅よりも長い。したがって、クリーニングローラ75の軸方向の長さは、最大用紙幅よりも長い。ここで、最大用紙幅とは、本願発明にかかる定着装置で使用することができる用紙の中で最大幅のものをいう。また、クリーニングローラ75の軸方向の長さとクリーニングローラ75の凹部領域とは一致している必要はない。
以下、図10(b)〜図10(d)とあるが、加圧ローラ32、クリーニングローラ75、クリーニングローラ75の凹部領域、および最大用紙幅の関係は、前記図10(a)の場合と同じである。
図10(a)のクリーニングローラ75と以下に説明する図10(b)ないし図10(d)のクリーニングローラ75との違いは、前者は、凹部76が円形をなしかつ分散して配置されているのに対し、後者は、凹部76が溝状をなし、かつ、つながって配置されている点である。
即ち、クリーニングローラ75の凹部76は、図10(b)では螺旋(スパイラル)状に配置され、図10(c)では環状(リング)状に配置され、図10(d)ではスプライン状に配置されている。これら溝状の凹部76は、図10(a)の円形の凹部76と同様の役割を果たし、溝の中に現像剤を回収していく。
なお、凹部76は、上記のように溝状である場合、形成が容易となり、また隣接する凹部76同士の間隔を等しくすることにより、効率良く現像剤を回収することができる。
また、凹部76が図10(b)のように螺旋状(スパイラル)の形状である場合、凹部76に回収した現像剤が軸方向へ移動するように螺旋の傾きを設定することにより、クリーニングローラ75の両端部からの回収済現像剤の排出が促進され、クリーニング効果がさらに促進される。
また、凹部76が図10(d)のようにスプライン形状である場合、アルミ材の押出成形によりクリーニングローラ75成形することができ、生産性に優れたものとなる。
ここで、直径40mmの加圧ローラ32、および凹部76を有するアルミ製の直径15mmのクリーニングローラ75を備えた定着装置をプロセス速度335mm/sの画像形成装置に組み込んで実験を行った結果、以下の表1に示すように、現像剤の回収において改善効果が確認できた。
表1より、凹部76がスプライン形状の場合が相対的には最も効果があることが判った。さらに、スプライン形状で、開口幅1.3mm、開口深さ0.76、ピッチ2.0とした場合に、より一層効果があることが判った。
次に、クリーニングローラ75の凹部76の断面形状について説明する。図11(a)、(b)は、凹部の縦断面形状(深さ方向の断面形状)を表している。図11(a)は、凹部76の形状が一定の幅である。これに対して、図11(b)は、回転軸に近づくにつれて、凹部76の幅が小さくなっている。凹部の縦断面形状としては、図11(a)に示すように、一定の幅にするのではなくて、図11(b)に示すように、回転軸に近づくにつれて、小さくなることが望ましい。
なぜならば、トナー(現像剤)が溶融したときにトナーの表面張力による毛管圧力は表面の距離に反比例する。したがって、図11(b)のような形状とすることにより、クリーニングローラ75表面側での凹部76における毛管現象に基づく臨界圧力に対してローラ軸芯側の臨界圧力が大きくなり、溶融トナーの軸心側への移動が促進され、クリーニング効果が向上できるからである。
ここで、開口幅もしくは溝幅が1mmのときの毛管現象による臨界圧力Px1を基準として任意の開口幅もしくは溝幅における臨界圧力PxをPx1で除した正規化臨界圧力はPx/Px1である。この正規化臨界圧力Px/Px1は、図12に示すように、溶融したトナーの表面張力に影響されることなく一つの曲線に収束し、開口幅を1.5mm以下にすることにより臨界圧力を大幅に増加でき、表面張力により凹部76への溶融トナーの回収を加速することができる。
図13は、クリーニングローラ75が加圧ローラ32の現像剤を回収している様子を示す断面図である。なお、図13は、便宜上、クリーニングローラ75を平坦な状態に展開した状態を示している。この場合、加圧ローラ32方向とは反対方向に軸芯が存在する。図13の構成では、クリーニングローラ75が中空形状である。したがって、凹部76の全部、もしくは凹部76の一部が内部の中空部に連通している。
上記の構成では、加圧ローラ32とクリーニングローラ75とが圧接することにより、凹部76に回収された現像剤が凹部76を通じて中空部に移動する。
また、クリーニングローラ75を中空形状として、凹部76、もしくは凹部76の一部を中空部に連通させると、図13に示すように、クリーニングローラ75の表面に付着したトナーを加圧ローラ32による接触圧力により凹部76を介して中空部に移動させることができる。これにより、回収されたトナーが凹部76に滞留することがなく、クリーニング効果をさらに長期間に渡って安定化させることができる。
また、クリーニングローラ表面における凹部76の最小開口幅もしくは最小溝幅を少なくとも加圧ローラ32上に存在する紙粉繊維の直径よりも大きく設定することが望ましい。こうすることにより、紙粉が凹部76の表面に滞留し、その紙粉を核としたトナー粒隗が成長して大きくなった後、クリーニングローラ75から剥離することによる用紙裏面の汚れを防止することができる。
さらに望ましくは、凹部76の最小開口幅もしくは最小溝幅を紙粉の長辺の最大値の5倍以上にすることにより、紙粉がブリッジ状(アーチ状)に係留することを確実に防止できる。
また、一般的なトナーの顔料濃度は3〜4%であるが、トナー消費量を低減させるためには顔料濃度を高めると良いことが知られている。ところが、顔料濃度を高めるとトナーが溶融した際の粘度が増加してしまい、クリーニングローラ75上のトナーの移動・回収の効率が悪くなる。この増粘現象は溶媒に粒子が分散しているときの分散質の体積比と粘度との関係を理論的に解明したアインシュタインの粘度式でも明らかである。
トナー消費量低減の効果を得るための顔料濃度としては、少なくとも7%以上、望ましくは10%以上が望ましい。このとき粘度上昇は2〜4%以上、望ましい顔料濃度で5〜8%以上となる。
このように、一般に除去し難いトナーを用いた画像形成装置定着部に本発明による凹部を有するクリーニングローラを採用することで、高顔料化により増粘したトナーであっても適切に回収し、有効に用紙裏面汚れを防止することができる。
図14は本実施の形態における電子写真式画像形成装置の内部構造を示す正面図である。なお、この図は、電子写真式画像形成装置に関係する部分のみを説明したものであり、実際の本装置の全機能を示した図ではない。
この画像形成装置41は、画像読取装置42(図15参照)にて読み込まれた画像や、画像形成装置41に外部から接続された機器(例えばパーソナルコンピュータなどの画像処理装置)からのデータを画像として記録出力するものである。
画像形成装置41には、感光体ドラム1を中心に、画像形成プロセスの各機能を担う各プロセスユニットが配置され、これらにより画像形成部が構成されている。感光体ドラム1の周囲には、感光体ドラム1の回転方向に、帯電装置2、光走査装置3、現像装置4、転写装置5、クリーニング装置6および除電装置7等が順次配置されている。
帯電装置2は、感光体ドラム1の表面を均一に帯電させるものである。光走査装置3は、均一に帯電された感光体ドラム1上に光像を走査して静電潜像を書き込むものである。現像装置4は、光走査装置3により書き込まれた静電潜像を現像剤補給容器8から供給される現像剤(たとえば、トナー)により顕像化するものである。転写装置5は、感光体ドラム1上に顕像化された画像を記録材上に転写するものである。クリーニング装置6は、感光体ドラム1上に残留した現像剤を除去して感光体ドラム1上に新たな画像を形成することを可能にするものである。除電装置7は、感光体ドラム1表面の電荷を除去するものである。
画像形成装置41の下部には供給トレイ9が内装されている。この供給トレイ9は、記録材を収容する記録材収容トレイである。供給トレイ9に収容された記録材は、ピックアップローラ10等により1枚ずつ分離され、レジストローラ11まで搬送され、レジストローラ11により感光体ドラム1に形成された画像とのタイミングが計られ、転写装置5と感光体ドラム1との間に順次供給される。そして感光体ドラム1上に記録再現された画像は記録材上に転写される。なお、供給トレイ9への記録材の補給は、画像形成装置41の正面側(操作側)に供給トレイ9を引き出して行う。
画像形成装置41の下面には記録材受入口12,13が形成されている。これら記録材受入口12,13は、図15に示すように、周辺装置として準備されている多段の記録材供給トレイを有する記録材供給装置46、および大量の記録材を収容可能とした記録材供給装置47等から送られてくる記録材を受け入れ、画像形成部に向かって記録材を順次供給するためのものである。
画像形成装置41内の上部には、定着装置14が配置されている。この定着装置14は、画像が転写された記録材を順次受け入れて、定着部材としての定着ローラ31と加圧部材としての加圧ローラ32等により、記録材上に転写された現像画像を熱と圧力により定着するものである。これにより、記録材上に画像が記録される。
画像が記録された記録材は、搬送ローラ15によりさらに上方へ搬送され、切換えゲート16を通過する。そして、記録材の排出トレイが画像形成装置41に外装された積載トレイ17に設定されている場合、記録材は反転ローラ18により積載トレイ17上に排出される。一方、両面画像形成や後処理が指定されている場合、記録材は、一旦反転ローラ18により積載トレイ17に向けて排出される。なお、この場合には、記録材を完全に排出せず、記録材を狭持させたまま反転ローラ18を逆転させる。そして、記録材を逆方向、つまり両面画像形成や後処理のために選択的に装着されている記録材再供給搬送装置43(図15参照)や後処理装置45(図15参照)の装着されている方向に反転搬送する。このとき、切換えゲート16は、図14の実線の状態から破線の状態に切換えられる。
両面画像形成を行う場合、反転搬送された記録材(記録紙)は、記録材再供給搬送装置43を通り、再び画像形成装置41に供給される。後処理が成される場合、反転搬送された記録材は、記録材再搬送装置43から別の切換えゲートにて、中継搬送装置44を介して後処理装置45に搬送され、後処理が施される。
光走査装置3の上空間部には、画像形成プロセスを制御する回路基板および外部機器からの画像データを受け入れるインターフェイス基板等を収容する制御装置19が配置され、光走査装置3の下空間部には、各種の上記インターフェイス基板、ならびに各上記画像形成プロセスUNに対して電力を供給する電源装置20が配置されている。
図14に示した画像形成装置41は、図15に示す画像形成システムに備えられている。この画像形成システムは、画像形成装置41の他、画像読取装置42、記録材再供給搬送装置43、中継搬送装置44、後処理装置45、記録材供給装置46および記録材供給装置47を備えている。
画像読取装置42は、セットされた原稿の画像を露光走査して光電変換素子であるCCD上に結像し、原稿画像を電気的信号に変換した上で画像データとして出力する。読み取られた画像データは、画像形成装置41の画像処理装置にて、画像補正やラスタライズ等の加工処理後に、光走査装置3にて感光体ドラム1へ書き込まれる。
この画像読取装置42は、原稿の片面だけでなく両面をほぼ同時に読み取ることができるようになっており、また自動(自動原稿搬送装置48)/手動にて原稿を搬送することができる。
記録材再供給搬送装置43は、画像形成装置41の左側側面に取り付けられた記録材搬送経路ユニットである。この記録材再供給搬送装置43は、定着装置14から排出された画像が記録された記録材を画像形成装置41上部の排紙部の反転ローラ18を用いて反転搬送して、記録材の表裏を反転した上で、再度、画像形成装置41における画像形成部の感光体ドラム1と転写装置5との間(転写部)に向かって供給する。
中継搬送装置44は、記録材を後処理装置45に搬送するものであり、記録材再供給搬送装置43と後処理装置45との間に装着されている。
後処理装置45は、画像形成システムの左側位置に配置されており、第1の記録材排出部45aと第2の記録材排出部45bとを備えている。
第1の記録材排出部45aは、画像形成装置41から排出された画像の形成された記録材を、後処理装置45の側面上部に設けられた受け取り搬送部45cによって受け取り、記録材がそのままの状態で排出される排出部である。
第2の記録材排出部45bは、ステープル,パンチ等選択的に装着される後処理装置45により後処理が成された記録材が排出される排出部である。これら第1と第2の記録材排出部45a,45bは、使用者によって適宜選択される。
後処理装置45は、図示しないが、所定枚数の記録材に対してステープル処理を施す機能、B4もしくはA3などの記録材の紙折りする機能、ファイリング用の穴を形成する機能、あるいはソートや仕分けを行うために数ビン〜数10ビンの多数の記録材排出部を有する機能のうち幾つかを組み合わせて搭載している。
〔実施の形態2〕
本発明の他の実施の一形態を図面に基づいて以下に説明する。尚、本実施の形態における電子写真式画像形成装置の基本的な内部構造は、定着装置を除いて、実施の形態1において図14および図15を用いて説明した構造と同様のものとすることができる。このため、ここでは電子写真式画像形成装置の詳細な説明を省略する。
本実施の形態2においては、クリーニング部材としてスクレーパー形状の部材を用いたクリーニング装置を備えた定着装置において本発明を適用した場合を説明する。先ずは、上記定着装置の構成を図16を参照して詳細に説明する。
図16に示される定着装置30は、上加熱部材としての定着ローラ(加熱ローラ)301、下加熱部材としての加圧ローラ302、外部加熱手段としての外部加熱ローラ303、定着ローラ及び外部加熱ローラ用熱源であるヒータランプ304〜306、定着ローラ301および外部加熱ローラ303の各々の温度を検出する温度検出手段を構成する温度センサ307〜309、クリーニング装置320、温度制御手段である制御回路(図示せず)を備えている。
ヒータランプ304〜306はハロゲンヒータからなり、定着ローラ301及び外部加熱ローラ303の内部に配置される。制御回路からヒータランプ304〜306に通電することにより、所定の発熱分布でヒータランプ304〜306が発光し、赤外線が放射され、定着ローラ301及び外部加熱ローラ303の内周面が加熱される。
定着ローラ301は、ヒータランプ304,305により所定の温度(ここでは200℃)に加熱されて、定着装置の定着ニップ部を通過する未定着トナー画像Tが形成された記録紙Pを加熱する。定着ローラ301は、その本体である芯金301aと、記録紙P上のトナーTがオフセットするのを防止するために芯金301aの外周表面に形成された離型層301bとを備えている。
芯金301aには、たとえば、鉄、ステンレス鋼、アルミニウム、銅等の金属あるいはそれらの合金等が用いられる。尚、本実施の形態の芯金301aとしては、直径40mmで、低熱容量化を図るため、肉厚1.3mmの鉄(STKM)製芯金を使用している。
離型層301bには、PFA(テトラフルオロエチレンとペルフルオロアルキルビニルエーテルとの共重合体)やPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)等のフッ素樹脂、シリコーンゴム、フッ素ゴム等が適している。尚、本実施の形態の離型層301bとしては、PFAとPTFEのブレンドしたものを厚さ25μmに塗布焼成して形成した。
加圧ローラ302は、鉄鋼、ステンレス鋼、アルミニウム等の芯金302aの外周表面にシリコーンゴム等の耐熱弾性材層302bを有するように構成されている。加圧ローラ302の耐熱弾性材層302bの表面には、定着ローラ301の場合と同様のフッ素樹脂による離型層302cが形成されてもよい。尚、本実施の形態における加圧ローラ302では、直径40mmでステンレス製芯金302a上に厚さ6mmのシリコーンゴム(ゴム硬度JIS−A 50°)からなる耐熱弾性体層302bと、更にその表面に厚さ50μmのPFAチューブからなる離型層302cが設けられており、図示しないばね等の加圧部材により定着ローラ301に対して76kgf(745N)の力で圧接されている。これにより、定着ローラ301と加圧ローラ302との間に幅が約6mmの定着ニップ部Yが形成されている。
尚、加圧ローラ302の離型層302cに用いるPFAチューブとしては、カーボン等の導電化剤を含有した導電性のPFAチューブを用いる方がより好ましい。この理由としては、導電化剤等の不純物を添加することで、PFAチューブ自体のトナーに対する離型性を定着ローラ301の離型層301bに対して若干落すことができ、その結果、定着ローラ301に付着したトナーや紙粉を加圧ローラ302側に転移させる作用が働くことから、定着ローラ301に対するクリーニング効果を及ぼすことができるためである。
また、離型層302cに絶縁性のPFAチューブを用いた場合、記録紙や定着ローラ301との摩擦帯電により、加圧ローラ302はおおよそ−5kVに帯電し、その結果、定着ニップ部において、同じマイナス極性のトナーを定着ローラ301側に反発させる電界が作用し、定着ローラ301に対する静電オフセット(静電気的にトナーが定着ローラに付着する現象のこと)の原因となる。そこで、本実施の形態では、離型層302cに導電性PFAチューブを使用することで、加圧ローラ302の帯電を防止し、静電オフセットの発生を抑制している。尚、この帯電防止効果を得るために、本実施の形態では体積抵抗105ΩcmのPFAチューブを用いている。
外部加熱ローラ303は直径15mmで、内部に加熱源としてのヒータランプ306を有し、加圧ローラ302に対し、定着ニップ部の上流側に設けられて、所定の押圧力をもって圧接するようになっている。そして、加圧ローラ302との間に加熱ニップ部Zが形成されている。外部加熱ローラ303の構成としては、アルミニウムや鉄系材料等からなる中空円筒状の金属製芯材303aの上に、耐熱離型層303bが形成されている。耐熱離型層303bとしては、耐熱性と離型性に優れた合成樹脂材料、例えばシリコーンゴムやフッ素ゴム等のエラストマー、またはPFA、PTFE等のフッ素樹脂が用いられる。尚、本実施の形態では、耐熱離型層303bを構成する耐熱離型材として、PFAとPTFEをブレンドしたものを25μmの厚さに塗布焼成したものを用いる。
定着ローラ301および外部加熱ローラ303の各々の周面には、温度検知手段としてのサーミスタ307,308、および309が配設されており、各ローラの表面温度を検出するようになっている。そして、各サーミスタにより検出された温度データに基づいて、温度制御手段(図示せず)は各ローラ温度が所定の温度となるようヒータランプ304〜306への通電を制御する。
そして、定着ニップ部に所定の定着速度及び複写速度で未定着トナー像が形成された記録紙が搬送され、熱と圧力により定着が行われる。
次に、本実施の形態に係るクリーニング装置320について図16ないし図18を参照して詳細に説明する。
クリーニング装置320は、加圧ローラ302に付着したトナー、紙粉等の異物Dを除去し、加圧ローラ302の汚れを清掃するためのものであり、ホルダー320bに平板状のスクレーパー(ブレード)からなるクリーニング部材320aを取り付けた構成となっている。また、クリーニング装置320は、外部加熱ローラ303の上流側近傍に配置されている。
クリーニング部材320aとしては、ポリイミド等の耐熱性樹脂シートや、ステンレス、りん青銅等からなる金属製の薄板、更にこれらにフッ素コートを施したもの等が適宜使用可能であり、本実施の形態では厚さ0.1mmのステンレス材を用いている。
上記クリーニング部材320aは、図17に示すように、エッチング加工等によって、記録紙Pの最大通紙幅Wpよりも若干広い領域で、複数の平行四辺形の開口部321が設けられている。上記開口部321は、その長辺が加圧ローラ302の回転方向(周方向)に対して傾きを有するように形成されている。また、図17において、Nはスクレーパー503と加圧ローラ502との当接位置を示す。更に、クリーニング部材320aの先端部Lは、図18に示すように、加圧ローラ302と接する側の面S2とは反対側の面S1の方向に曲げ加工が施されている。
クリーニング部材320aは、その先端部Lが加圧ローラ302の回転方向(矢印Rp)に対しカウンター方向となり、且つ加圧ローラ302との当接部Nが開口部H内に存在するようにホルダー320bにて保持されている。また、当接部Nにおける撓み量Xは、1.1mmに設定されている。更に、クリーニング部材320aにおける加圧ローラ302との当接面S2が上側、非当接面S1が下側となるよう、クリーニング部材320aはホルダー320bに保持されている。
本実施の形態に係る定着装置30では、クリーニング装置320を上記のように構成することで、スクレーパーの先端エッジ部分でトナーを掻き取る従来方式(図25および図27参照)に比べ、下記のような作用・効果が得られる。
第1に、クリーニング部材320aに形成された平行四辺形の開口部321が加圧ローラ302と接することにより、クリーニング部材320aの突き出し量がばらついても、開口部321を形成する斜めラインのエッジ部の何れかの箇所において加圧ローラ302表面に確実に接することになる。その結果、クリーニング部材320aでは、ロットばらつきやクリーニング部材の熱変形(熱膨張)等に関係なく、開口部321を形成する斜めラインのエッジ部を、加圧ローラ302表面に対して安定して当接させることが可能となる。
第2に、クリーニング部材320aが開口部321を有するため、従来のように開口部を有さないクリーニング部材に比べ、クリーニング部材のばね性が低減される。その結果、従来に比べてより低圧力でクリーニング部材320aを加圧ローラ302に当接できるようになり、加圧ローラ302に対する負荷が低減され、加圧ローラ302の寿命を延長することができる。
第3に、クリーニング部材320a自体は、先端エッジ部ではなく、面内で加圧ローラ302に接するため、従来のように、スクレーパーの先端エッジが加圧ローラに深く食い込んで傷つけてしまうといった問題がない。
第4に、クリーニング部材320aが熱膨張しても、開口部321において熱膨張による変位が吸収されるため、従来のようにクリーニング部材が熱により波打つことがなく、クリーニング部材320aを全幅に渡って、安定的に加圧ローラ302表面に当接させることができる。
特に、図28に示すクリーニング部材320aのように、複数の開口部321全体を囲むブレード部の外縁(フレーム部)の一部に切欠部Cを設けた場合、該フレーム部が熱膨張しても、その熱膨張による伸びを切欠部Cで吸収することができりため、フレーム部の熱膨張に起因するクリーニング部材の浮き、波打ち等についても未然に防止することができる。
第5に、クリーニング部材320aにより掻き取られた異物Dは、開口部321を通じて、クリーニング部材320aの表面側S1面に移動し、そこにトナー溜りDMが形成されていく。その結果、従来のように、異物Dがクリーニング部材の裏面側S2と加圧ローラ表面との間に堆積することがなく、堆積した異物が加圧ローラに再付着(流出)するのを防止することができる。
特に、本実施の形態のように、開口部321として平行四辺形形状のものを多数設けた場合、クリーニング部材320aの強度を確保しつつ、通紙領域Wp(通紙幅方向)に関して、確実に開口部321の斜めエッジ部が存在するようにクリーニング部材320aを構成することができる。
この場合、図29に示すように、被クリーニング面である加圧ローラ表面の進行方向Rpに対する開口部321の傾き角度をθ、開口部321のピッチをpとすると、加圧ローラ表面の進行方向Rpに対して同一線上に存在する開口部のエッジE1、E2の間の距離Deは、
De=p/tanθ
となる。従って、開口部のエッジE1、E2の間の距離Deがクリーニング部材と加圧ローラとの当接幅Wnより小さくなるように、すなわち、
p/tanθ≦Wn
を満たすように、開口部の角度やピッチを設定すると、加圧ローラ表面の進行方向に関して、少なくとも2箇所以上のエッジを加圧ローラ表面に接触させることができる。その結果、クリーニング部材320aによる異物の掻き取り効果(クリーニング効果)を更に向上させることができる。
更に、本実施の形態のように、クリーニング部材320aの加圧ローラ302との当接面S2が上側、非当接面S1が下側となるように、クリーニング部材320aを保持した場合、クリーニング部材320の開口部エッジにより掻き取られた異物Dに対して、当接面S2から非当接面S1の方向に重力Gが作用するため、開口部321を通じて、異物Dが非当接面S1側により移動しやすくなる。
第6に、クリーニング部材320aは、その面内で加圧ローラ302と接しており、且つ、その先端部Lは、加圧ローラ302表面から遠ざかる方向に曲げられていることから、従来のように、クリーニング部材の先端にトナー溜りが形成されることもなく、これの流出による記録紙汚れの問題がない。
第7に、クリーニング装置320と外部加熱ローラ303が近接している(本実施の形態では、外部加熱ローラとクリーニングホルダーとの距離は約6mm)ため、外部加熱ローラ303からの熱(輻射や対流による熱伝達)により、副次的にクリーニング部材320aも加熱される。この場合、外部加熱ローラ303等の外部加熱手段を有さない構成の定着装置に比べ、クリーニング部材320aの温度が高温状態に維持される。その結果、固着したトナーによって開口部321が目詰まりすることを防止でき、経時的に安定してクリーニング効果を発揮させることができる。
ここで、本実施の形態の定着装置を用いたランニング試験により、クリーニング効果並びに加圧ローラの耐久性について検討した結果(実験例1)について、表2を用いて説明する。
実験方法としては、印字率4%の文字原稿からなるトナー画像Tを形成した記録紙(レターサイズのハンマーミル紙)を100枚毎連続に定着を行い、トータル300,000枚のランニング試験を行った。そして、100枚のうちの最初の1枚をサンプリングし、トナー汚れがないかどうかをチェックした。
更に、加圧ローラ302の表面離型層302cであるPFAチューブに裂け、破れ等が発生していないかについても定期的にチェックした。
尚、比較例として図25〜27に示すクリーニング装置を備えた定着装置についても、同様の試験を行った。
表2に示すように、比較例では、初期からトナー汚れがやや発生し、150、000枚以降、汚れがひどくなる。また、加圧ローラについても、150、000枚時点で、PFAチューブの折り目(製作工程上で生じる折り目)と紙エッジの交差したポイントでPFAチューブに亀裂が発生し、200,000枚時点では亀裂が拡大し、PFAチューブが剥がれてしまった。これは、PFAチューブの折り目部分がクリーニング部材のエッジによるダメージを最も受けやすいためである。
一方、本実施の形態の定着装置を用いた場合(実験例1)では、300、000枚通紙しても、トナー汚れ、加圧ローラの裂け等の問題は発生しなかった。
次に、本実施の形態に係るクリーニング装置並びにこのクリーニング装置を備えた定着装置の構成について、図16とは異なる変形例(4例)を図19ないし図21、図30ないし32を用いて詳細に説明する。尚、図19、図30ないし32に示す定着装置35〜38は、クリーニング装置を除いて、図16に示す定着装置30と全く同じ構成であることから、定着装置については説明を省略する。
図19に示すクリーニング装置350は、ホルダー350bに平板状のスクレーパー(ブレード)からなるクリーニング部材350aを取り付けた構成であり、外部加熱ローラ303の上流側近傍において配置されている。クリーニング部材350aとしては、ポリイミド等の耐熱性樹脂シートや、ステンレス、りん青銅等からなる金属製の薄板、更にこれらにフッ素コートを施したもの等が適宜使用可能であり、本実施の形態では厚さ0.1mmのステンレス材を用いている。
そして、クリーニング部材350aの先端部は、図20に示すように、エッチング加工等により、記録紙Pの最大通紙幅Wpよりも若干広い領域で、複数の櫛歯が設けられており、各櫛歯の間が平行四辺形の開口部351となっている。
クリーニング部材350aは、図21に示すように、その先端部が加圧ローラ302の回転方向(矢印Rp)に対し順方向に向き、且つ加圧ローラ302との当接部Nが開口部351内に存在するようにホルダー350bに保持されている。また当接部Nにおける撓み量Xは1.1mmに設定されている。更に、クリーニング部材350aの加圧ローラ302との当接面S2が上側、被当接面S1が下側となるよう、クリーニング部材350aはホルダー350bに保持されている。
クリーニング装置350を図19のように構成することで、図16の構成に比べ、さらに下記のような作用・効果が得られる。
第1に、クリーニング部材の先端を加圧ローラの回転方向と逆方向に向けて設置する図16の構成の場合、図22に示すように、クリーニング部材320aと加圧ローラ302との当接部より下流側の部分で、クリーニング部材320aをホルダー320bによって支持することになり、クリーニング部材320a下流側部分の設計の自由度が少なくなる。
その結果、例えば設計の都合上、図22に示すように、当接部より下流側の部分Bを加圧ローラ302に近接せざるを得ない場合、この部分Bでトナー溜りDM´が生じやすい。一方、図19に示す構成のように、クリーニング部材350aの先端を加圧ローラ302の回転方向と順方向に向けて設置する場合、上記のような制約がないため、トナー溜りの生成を確実に防止することができる。
第2に、図19に示す構成のように、クリーニング部材350aの先端が櫛歯状に分離されていれば、加圧ローラ302との当接部Nより下流側においてトナー溜りが形成されるような場所がなくなり、トナー溜りの生成を更に確実に防止することができる。
図30に示す定着装置36は、外部加熱ローラ303を挟んで、上流側、下流側各々に2つのクリーニング装置360,361を配置した構成となっている。
クリーニング装置360は、ホルダー360bに平板状のスクレーパー(ブレード)からなるクリーニング部材360aを取り付けた構成であり、同じくクリーニング装置361は、ホルダー361bに平板状のスクレーパー(ブレード)からなるクリーニング部材361aを取り付けた構成である。クリーニング部材360a,361aとしては、ポリイミド等の耐熱性樹脂シートや、ステンレス、りん青銅等からなる金属製の薄板、更にこれらにフッ素コートを施したもの等が適宜使用可能であり、本実施の形態では厚さ0.1mmのステンレス材を用いている。
クリーニング装置360,361を図30のように定着装置36に複数配置することで、図16の構成に比べ、さらに下記のような作用・効果が得られる。
第1に、加圧ローラ302に付着した異物のクリーニングポイントを複数設けることができ、万が一、上流側のクリーニング装置で部分的にクリーニング不良による異物の摺り抜けが発生したとしても、摺り抜けた異物は下流側のクリーニング装置によってクリーニングされることから、安定したクリーニング性能が得られる。もちろん、開口部を持たない従来のスクレーパー方式のクリーニング装置でも、複数設置することでクリーニング効果は向上するものの、従来のスクレーパーでは加圧ローラに対する当接圧が高く、複数設置すると加圧ローラのダメージがより大きくなる課題がある。一方、本発明の開口部を有するスクレーパーでは、従来に比べ当接圧が低いため、複数設置したとしても加圧ローラに対するダメージは少なくて済む。
第2に、本発明のクリーニング装置においても、例えば、高印字率の原稿を連続で出力した場合や、環境条件等の変動により画像形成装置で形成される画像の非画像領域にもトナーが多量に付着してしまった場合(通常、この現象をかぶりと呼ぶ)、記録紙から定着ローラや加圧ローラに移行(オフセット)するトナー量が増大し、クリーニング部材360aの開口部を通じて処理できるトナー量の限界を超えてしまい、クリーニング部材360aにトナー溜りDMが形成される場合がある。
そして、定着装置がスタンバイモード等の停止状態から、再度回転動作に移ったような場合、停止中に加圧ローラ表面の定着ニップ部Yに位置していた部分が局所的に定着ローラによって加熱され高温状態となっていることから、この局所加熱部によって、クリーニング部材360aとの当接部を通過する際に、クリーニング部材360aに形成されたトナー溜りDMは溶融され、加圧ローラ232に再付着してしまうことから、記録紙汚れ発生の原因となる。しかしながら、本実施例では、この再付着したトナーは下流側のクリーニング装置361にて回収されることから記録紙汚れを発生することはない。
また、加圧ローラへのトナーオフセット量が多い場合でも、大部分が上流側のクリーニング装置360でクリーニングされることから、下流側のクリーニング装置361ではトナー溜りは形成されにくく、下流側のクリーニング装置361によって記録紙汚れが発生することはない。
さらに、万一、下流側のクリーニング装置でトナー溜りが形成されたとしても、上記加圧ローラ表面の局所加熱部は上流側のクリーニング装置360を通過する際に熱を奪われ温度が低下するため、下流側のクリーニング装置のトナー溜りを溶融、流出させることはない。
図31に示す定着装置37では、クリーニング装置370は、ホルダー370bに平板状の2枚のスクレーパー(ブレード)からなるクリーニング部材370a,370cを取り付けた構成であり、クリーニング部材370aは加圧ローラの回転方向Rpに対して逆方向、クリーニング部材370bは順方向に当接するよう支持されている。
従来のスクレーパー方式のクリーニング装置では、クリーニング部材を逆方向にしか設置できなかったが、本発明のクリーニング装置では順逆いずれの方向においても設置することが可能であることから、図31に示す構成のように複数取り付ける際の自由度が大きく、その分クリーニング装置370を小型化、簡略化することが可能である。
尚、定着装置37の構成例における作用・効果としては、図30の定着装置36で説明した作用・効果と全く同じである。
図32に示す定着装置38は、外部加熱ローラ303を挟んで、上流側にオイル塗布装置381、下流側にクリーニング装置380を配置した構成となっている。
オイル塗布装置381はローラ形状であり、金属性のシャフト381a上にオフセット防止剤としてのオイルを保持させたオイル保持層381bと、更にその上にオイル保持層381bからのオイル染み出し量を規制するためのオイル規制層381cからなる構成である。
オイル保持層381bとしては、ウレタンスポンジゴムにシリコンオイルを注入したものやシリコンソリッドゴムにシリコンオイルを練りこんだもの等適宜使用可能であり、シリコンオイルの粘度としては例えば100CSから3000CS等、画像形成装置の使用条件(ライフ、印字速度等)によって適宜設定可能である。
オイル規制層381cとしては、多孔質性フッ素樹脂(PTFE)膜や、フェルト、紙等、オイルの染み出し量を制御可能な材料であれば適宜使用可能である。
尚、本実施の形態では、粘度1000CSのジメチルシリコンオイル30gをソリッドゴムからなるオイル保持層381bに練りこみ、その表面にオイル規制層381cとして多孔質性フッ素樹脂(PTFE)膜を設けた構成のオイル塗布ローラを使用した。
クリーニング装置380は、ホルダー380bに平板状のスクレーパー(ブレード)からなるクリーニング部材380aを取り付けた構成である。クリーニング部材380aとしては、ポリイミド等の耐熱性樹脂シートや、ステンレス、りん青銅等からなる金属製の薄板、更にこれらにフッ素コートを施したもの等が適宜使用可能であり、本実施の形態では厚さ0.1mmのステンレス材を用いている。
オイル塗布装置381及びクリーニング装置380を図32のように定着装置38に配置することで、図16の構成に比べ、さらに下記のような作用・効果が得られる。
第1にオイル塗布装置381により塗布されたシリコンオイルにより、記録紙から定着ローラや加圧ローラに移行(オフセット)するトナー量が低減されるため、クリーニング部材で処理されるトナー量がクリーニング部材のクリーニング能力を超えることなく、その結果トナー溜りの形成が抑制され、長期間に渡って安定したクリーニング性能が得られる。
第2に、オイル塗布装置381により供給されたシリコンオイルはクリーニング部材380aにも付着するため、クリーニング部材380aへのトナー、紙粉等の異物の付着力を弱める作用が働く。その結果、クリーニング部材380aの開口部を通じて、異物がより移動しやすくなることから、開口部が異物で目詰まりするのを未然に防止し、長期間、安定したクリーニング性能を維持することができる。
特に、小サイズ紙を連続通紙した場合でも、非通紙領域に塗布されたシリコンオイルは記録紙には移行せず、加圧ローラ表面に蓄積されるため、クリーニング部材380aの非通紙領域におけるシリコンオイルの付着量は通紙領域に比べて多くなり、開口部での異物の移動をよりスムーズにさせることから、トナー溜りの形成が更に抑制される。その結果、小サイズ紙を連続通紙した場合でも記録紙汚れを確実に防止することができる。
第3に、オイル塗布装置381の下流側に、クリーニング装置380が配置されているため、シリコンオイルが記録紙に移行する前にクリーニング部材380aに付着することになる。その結果、上記したシリコンオイルの付着による開口部での異物の摺り抜け効果をより向上させることができる。更に、経時的にオイル塗布装置381がトナーや紙粉で汚れ、これらオイル塗布装置381に付着した異物が加圧ローラに再度移行(流出)したとしても、下流側に設けたクリーニング部材380により回収されるため、記録紙汚れが発生することはない。
尚、上記実施の形態1および2においては、定着装置として外部加熱手段を有する定着装置(外部加熱ローラ方式)を説明した。しかしながら、本発明のクリーニング装置が適用できる定着装置において、外部加熱手段としては、外部加熱ローラ方式に限定されるわけではなく、従来の定着ローラと加圧ローラの2ローラのみからなる定着装置や、ベルトを用いた定着装置等、クリーニング装置を必要とするいずれの定着装置においても、適宜、適用可能であることは言うまでもない。
また、上記実施の形態2の構成においては、定着装置のみならず、スクレーパー(ブレード)状のクリーニング装置を用いている各種装置にも適宜、適用可能である。
更に、上記実施の形態2の構成においては、クリーニング部材の開口部の形状としては、上述した平行四辺形形状に限定されるわけではなく、本発明で述べた作用を有する形状であれば、例えば、円形状の開口部が多数設けられたもの(図23参照)や開口部が長方形で1つのもの(図24参照)等であってもよい。尚、図24の構成では、従来のようにクリーニング部材の先端エッジ部を加圧ローラに当接してもよい。
また、一般的なトナーの顔料濃度は3〜4%であるが、トナー消費量を低減させるためには顔料濃度を高めると良いことが知られている。ところが、顔料濃度を高めるとトナーが溶融した際の粘度が増加してしまい、クリーニング部材上のトナーの移動・回収の効率が悪くなる。この増粘現象は溶媒に粒子が分散しているときの分散質の体積比と粘度との関係を理論的に解明したアインシュタインの粘度式でも明らかである。
トナー消費量低減の効果を得るための顔料濃度としては、少なくとも7%以上、望ましくは10%以上が望ましい。このとき粘度上昇は2〜4%以上、望ましい顔料濃度で5〜
8%以上となる。
このように、一般に除去し難いトナーを用いた画像形成装置定着部において、上記実施の形態2に係る開口部を有するスクレーパー(ブレード)状のクリーニング部材を採用することで、高顔料化により増粘したトナーであっても適切に回収し、有効に用紙裏面汚れを防止することができる。