しかしながら、同公報に開示されている技術は、記録材裏面の逆極性トナーによる汚れを防止する上で良好な機能を有するものではなく、逆極性トナーによる汚れの問題は依然として存在し、画像形成装置の長期の性能維持には問題があった。
したがって、本発明は、逆極性トナーによる画像不良を抑制し、正常な画像形成動作を維持し、長期的な使用においても良好な画質と各手段の寿命を確保できる定着方法、定着装置および画像形成装置の提供を目的としている。
上記の課題を解決するために、本発明の定着装置は、記録材上の顕像剤からなる未定着画像に接する定着部材とこの定着部材に圧接する加圧部材とを有し、前記定着部材と前記加圧部材とにより記録材を狭持搬送して記録材上の未定着画像を記録材に定着させる定着装置において、記録材上の画像を形成する顕像剤とは逆極性の逆極性顕像剤を記録材に留める向きの保留電界を生じる保留電界発生手段を備えていることを特徴としている。
上記の定着装置において、前記保留電界発生手段は、前記保留電界を生じさせるバイアス電圧を前記定着部材と前記加圧部材との少なくとも一方に印加するバイアス電圧印加手段を備えている構成としてもよい。
上記の定着装置において、前記バイアス電圧印加手段は、前記バイアス電圧として、逆極性顕像剤の帯電極性とは逆極性の電圧を前記定着部材に印加する構成としてもよい。
上記の定着装置において、前記バイアス電圧印加手段は、前記バイアス電圧として、逆極性顕像剤の帯電極性と同極性の電圧を前記加圧部材に印加する構成としてもよい。
上記の定着装置において、前記バイアス電圧が印加された部材の表面における前記バイアス電圧による電位の減衰する時間が0.2秒以上である構成としてもよい。
上記の定着装置において、前記バイアス電圧を印加した場合に前記バイアス電圧が印加された部材を流れる電流の絶対値が0.05μA以上、かつ150μA以下である構成としてもよい。
上記の定着装置において、前記定着部材は導電性芯金上に中間層を有し、この中間層の上に表面絶縁層を有している構成としてもよい。
上記の定着装置において、前記定着部材は表面に抵抗層を有し、この表面抵抗層の表面抵抗率が1014Ω以上であり、前記バイアス電圧印加手段は前記バイアス電圧を前記定着部材に印加する構成としてもよい。
上記の定着装置において、前記定着部材は表面に抵抗層を有し、この表面抵抗層の体積抵抗率が1013Ω・cmより大きく、前記バイアス電圧印加手段は前記バイアス電圧を前記定着部材に印加する構成としてもよい。
上記の定着装置において、前記加圧部材は導電性芯金上に絶縁性弾性層を有し、この絶縁性弾性層の上に中間層を有し、この中間層の上に表面抵抗層を有しており、前記加圧部材の表面には電位付与部材が設けられ、この電位付与部材に前記バイアス電圧印加手段から前記バイアス電圧が印加され、このバイアス電圧が前記電位付与部材を介して前記加圧部材の表面あるいは表面近傍に印加される構成としてもよい。
上記の定着装置の表面抵抗層の表面抵抗率が107Ω以上であり、前記バイアス電圧印加手段は前記バイアス電圧を前記加圧部材に印加する構成としてもよい。
上記の定着装置の表面抵抗層の体積抵抗率が105Ω・cm以上であり、前記バイアス電圧印加手段は前記バイアス電圧を前記加圧部材に印加する構成としてもよい。
上記の定着装置において、前記定着部材は、定着部材の表面を加熱する第1の加熱手段を備え、前記電位付与部材は、加圧部材の表面を加熱する第2の加熱手段を兼ねている構成としてもよい。
上記の定着装置において、前記電位付与部材は、加圧部材の表面に残留する顕像剤を除去する清掃部材である構成としてもよい。
上記の定着装置において、前記電位付与部材は、導電性あるいは半導電性の電極部材である構成としてもよい。
上記の定着装置において、前記定着部材には第1のバイアス電圧印加手段から前記バイアス電圧が印加され、前記電位付与部材には第2のバイアス電圧印加手段から前記バイアス電圧が印加される構成としてもよい。
上記の定着装置は、前記定着部材、前記加圧部材および前記加熱部材のそれぞれの表面温度を検出する温度検出素子を少なくとも1つ有し、この温度検出素子は、受熱面側に絶縁被覆層と耐熱離型層を備え、その反対面側に保護層を有している構成としてもよい。
上記の定着装置において、前記温度検出素子の絶縁被覆層、耐熱離型層および保護層は、温度検出素子の弾性部材(例えば温度検出素子としてのサーミスタチップがボンディングされている弾性部材としてのステンレス板)を覆うように前記温度検出素子のハウジングまで延長する構成としてもよい。
本発明の定着方法は、記録材上の顕像剤からなる未定着画像に接する定着部材とこの定着部材に圧接する加圧部材とにより記録材を狭持搬送し、記録材上の未定着画像を記録材に定着させる定着方法において、記録材上の画像を形成する顕像剤とは逆極性の逆極性顕像剤を記録材に留める向きの保留電界を付与することを特徴としている。
上記の定着方法において、前記保留電界は、バイアス電圧を前記定着部材と前記加圧部材との少なくとも一方に印加することにより付与する構成としてもよい。
本発明の画像形成装置は、上記いずれかの定着装置を備えていることを特徴としている。
上記の画像形成装置は、前記定着装置に対する記録材の流れにおける上流側に、顕像剤画像担持体から顕像剤画像を記録材に転写する転写装置を備え、この転写装置が顕像剤画像担持体に接触する接触転写方式のものである構成としてもよい。
なお、上記の表面抵抗率の1014Ω以上、体積抵抗率の1013Ω・cmより大きい値、表面抵抗率の107Ω以上、および体積抵抗率の105Ω・cm以上の上限値は、絶縁性を示す値であればよい。具体的には、超高抵抗計で測定できる程度の最大1024Ωオーダの値、あるいは製造する上での現実的な値である1020Ωオーダの値とすることができる。
本発明の定着装置は、記録材上の画像を形成する顕像剤とは逆極性の顕像剤を記録材に留める向きの保留電界を生じる保留電界発生手段を備えた構成であり、また本発明の定着方法は、記録材上の画像を形成する顕像剤とは逆極性の顕像剤を記録材に留める向きの保留電界を付与する構成であるので、以下の効果を奏する。
例えば電子写真方式の画像形成装置では、現像プロセスにて画像形成担持体に形成された未定着の顕像剤像、例えば未定着のトナー画像が、転写プロセスにて記録材上に転写される。その後、記録材上の未定着トナー画像は、定着装置による定着プロセスにて記録材に定着される。
ここで、上記転写プロセスを終えた記録材上には、トナー画像を形成する正規帯電トナー(以下、正規トナーと称する)、および正規トナーとは極性の異なる逆極性に帯電した顕像剤(以下、逆極性トナーと称する)が存在する。
正規トナーは、画像形成担持体上に潜像に応じた顕像を形成し、転写プロセスにおいて、未定着画像として記録材における定着部材と接する面に転写される。一方、逆極性トナーは、転写プロセスが接触方式であり、転写部材として転写ローラや転写ベルトが使用される場合、搬送される記録材と記録材との間において、画像形成担持体から転写部材へ転写バイアスによる静電気力にて移動し、転写部材の表面に吸着される。
転写部材に移動した逆極性トナーは、通常、ブレードや静電気力を使用するクリーニングプロセスにて除去されるものの、完全には除去されずに一部が転写部材上に残っている。例えば、マイナス帯電の正規トナーでは、残留するプラスの逆極性トナーは、次の記録材に対して転写プロセスが行われているときに、静電気力、ファン・デル・ワールス力、架橋力あるいは他の力によって転写部材から記録材の裏面に付着し、定着プロセスを行う定着装置に運ばれてくる。
記録材裏面のプラスの逆極性トナーは、定着部材と加圧部材の回転接触により摩擦帯電が生じる定着プロセスにおいて、定着部材や加圧部材の表面が負に帯電していると、容易に記録材裏面から剥離し、加圧部材上のプラス電荷に引き寄せられて加圧部材表面に移動する。
この場合、逆極性トナーは、定着プロセスでの加熱により溶融し、加圧部材表面に付着した状態で残留する。したがって、そのまま放置すれば、加圧部材表面が逆極性トナーで汚れ、更には、これら逆極性トナーが多くなると正規トナーを引き寄せて、汚れを加速させることもある。またそれ以降に搬送されてくる記録材の裏面に付着して画像不良を引き起こす。
また、定着部材と加圧部材との圧接回転において両者間に記録材が存在しない状態では、逆極性トナーは、加圧部材表面の離型性能によって、加圧部材表面から定着部材表面に移動する。この場合、逆極性トナーは、定着部材の表面から、後に定着プロセスが施される記録材の表面(画像形成面)に移動することになり、その記録材において画像不良を引き起こす。
そこで、本発明では、定着プロセスにおいて、逆極性トナー(記録材上の画像を形成する顕像剤とは逆極性の顕像剤)を記録材に留める向きの保留電界を付与し、記録材の裏面に付着している逆極性トナーが加圧部材に移動せず、記録材の裏面に留まるようにしている。これにより、定着プロセスにおいて、記録材の裏面に付着している逆極性トナーはそのまま記録材の裏面に定着された状態で排紙される。なお、1枚あたりの記録材の裏面に付着する逆極性トナーの量は少量であるので、記録材の裏面に定着させた場合であっても画像欠陥には至らない。
これにより、本発明の構成では、逆極性トナーによる画像不良を抑制して正常な画像形成動作を維持することができる。また、加圧部材の汚れが抑制されるので、オイル塗布機構など加圧部材の清掃および離型に必要な機構を簡略化することが可能となる。さらに、逆極性トナーが他の機能的手段に付着することを防止できるので、長期的な使用においても良好な画質と各手段の寿命の確保が可能となる。
上記の定着装置において、前記保留電界発生手段は、前記保留電界を生じさせるバイアス電圧を前記定着部材と前記加圧部材との少なくとも一方に印加するバイアス電圧印加手段を備えた構成であり、上記の定着方法において、前記保留電界は、バイアス電圧を前記定着部材と前記加圧部材との少なくとも一方に印加する構成である。したがって、逆極性顕像剤(例えば逆極性トナー)を記録材に留める向きの上記保留電界を生じさせるには、この保留電界を生じさせるバイアス電圧を定着部材と加圧部材との少なくとも一方に印加することにより可能となる。
上記の定着装置において、前記バイアス電圧印加手段は、前記バイアス電圧として、逆極性トナーの帯電極性とは逆極性の電圧を前記定着部材に印加する構成である場合、定着部材からの静電気力が逆極性トナーを記録材の裏面に留めるように作用し、加圧部材への逆極性顕像剤の付着を抑制することが可能になる。
すなわち、逆極性トナーは、加圧部材方向への静電気力(静電引力)によって、記録材裏面から加圧部材表面に、その他の付着力に打ち勝って移動しようとする。そこで、定着部材に逆極性トナーと逆極性のバイアス電圧を印加して、定着部材から逆極性トナーに作用する静電気力(静電引力)を、逆極性トナーに作用させ加圧部材方向への静電気力よりも大きくする。これにより、加圧部材への逆極性トナーの移動を規制し、逆極性トナーを記録材裏面に留めるようにする。この結果、加圧部材表面に付着する逆極性トナーが大幅に減少し、加圧部材表面に逆極性トナーが蓄積されて加圧部材の表面が汚れることによる不具合を抑制することが可能となる。また、各手段の寿命を従来に比べ格段に伸ばすことができる。
上記の定着装置において、前記バイアス電圧印加手段は、前記バイアス電圧として、逆極性トナーの帯電極性と同極性の電圧を前記加圧部材に印加する構成である場合、前述の構成と同様に、加圧部材からの静電気力が逆極性トナーを記録材の裏面に留めるように作用し、加圧部材への逆極性トナーの付着を抑制することが可能になる。
すなわち、加圧部材に印加したバイアス電圧によって、加圧部材から逆極性トナーには、逆極性トナーを記録材裏面に留まらせる方向の静電気力(静電斥力)が働く。これにより、逆極性トナーは記録材に保持された状態で定着装置から排出される。この結果、加圧部材表面に付着する逆極性トナーが大幅に減少し、加圧部材表面に逆極性トナーが蓄積されて加圧部材の表面が汚れることによる不具合を抑制することが可能となる。また、各手段の寿命を従来に比べ格段に伸ばすことができる。
上記の定着装置において、前記バイアス電圧が印加された部材の表面における前記バイアス電圧による電位の減衰する時間が0.2秒以上である場合には、以下の効果を奏する。
定着部材や加圧部材にバイアス電圧を印加することにより逆極性トナーを記録材に留める機能は、上記バイアス電圧を印加した結果、定着部材や加圧部材の表面に保持される電位がもたらす静電気力の作用により得られる。したがって、定着部材や加圧部材の回転途中に定着部材または加圧部材の表面電位が減衰して逆極性トナーへ作用する静電気力が弱まると、記録材へ逆極性トナーを効果的に留めておくことができなくなる。
そこで、定着部材や加圧部材の回転速度を考慮した結果、前記バイアス電圧が印加された定着部材または加圧部材の表面電位の減衰する時間を0.2秒以上としておくことで、定着部材または加圧部材の表面電位の保持時間を確保でき、逆極性トナーを記録材へ保留させる作用を十分に付与できる。これにより、逆極性トナーが加圧部材表面へ移動して蓄積されることによる不具合、すなわちその逆極性トナーが記録材の裏面に付着して画像不良を生じる事態、あるいは加圧部材の表面から定着部材へ再付着することにより、記録材の表面に画像不良を発生させる事態等を抑制することができる。
なお、表面電位の減衰する時間(0.2秒以上)とは、例えば表面電位が所定電位以下に減衰するまでの時間である。すなわち、他の力に打ち勝って、逆極性トナーを記録材に引き留めるのに必要な静電気力を発生可能な電位(所定電位)が維持されている時間である。
上記の定着装置において、前記バイアス電圧を印加した場合に前記バイアス電圧が印加された部材を流れる電流の絶対値が0.05μA以上かつ150μA以下となるようにしている場合には、以下の効果を奏する。
すなわち、バイアス電圧が印加された場合に定着部材や加圧部材の表面に保持される電位によって、逆極性トナーを記録材へ留める作用を付与できる。この場合、定着部材や加圧部材の表面に必要以上に電荷を与えると、あるいはそれら表面の電位を高くしすぎると、不要な部分へのリーク電流が増加し、そのリーク電流によるノイズ等によって、制御系や画像処理系に不具合を与えることになる。
したがって、このような不具合を防止するためには、定着部材や加圧部材にバイアス電圧を印加する際に、供給する電流量に注意する必要がある。すなわち、ノイズ等による支障が出ない程度の上限値として150μA以下の電流量に抑えることが好ましい。また、下限値としては、逆極性トナーの帯電量にもよるが、逆極性トナーを保留するに必要な必要最小限の電流として0.05μA以上であることが好ましい。なお、さらに好ましくは1μA〜40μAである。特に、定電圧制御では、必要な電荷や電位を確保する上で、周囲環境等を含めて高電圧になるのを防ぎ余分な電流を流さないようにするのが好ましい。また、その電流が流れる経路についても、十分考慮しておくことが好ましい。
上記の定着装置において、前記定着部材は表面に表面絶縁層の表面抵抗率が1014Ω以上であり、前記バイアス電圧印加手段は前記バイアス電圧を前記定着部材に印加する構成とした場合、以下の効果を奏する。
定着部材にバイアス電圧を印加し、静電気力により逆極性トナーを記録材に留めるようにするには、前述したように、定着部材の表面電位を維持すること(表面電荷を保持すること)が必要である。このためには、定着部材の表面絶縁層の表面抵抗率が所定値であることが好ましい。
すなわち、定着部材の表面絶縁層の表面抵抗率を1014Ω以上に高くしておけば、電荷を保持する時間を長くして、逆極性トナーを記録材に留める上で所望の効果が得られる。なお、上記の表面抵抗率は、ローラの種々の構成とそれらに用いる材料やトナー材料の組合せ、プロセス速度や画像形成装置の仕様などによって、適宜1015Ω以上、1017Ω以上といったように選択できる。
上記の定着装置において、前記定着部材は表面に抵抗層を有し、この表面抵抗層の体積抵抗率が1013Ω・cmより大きく、前記バイアス電圧印加手段は前記バイアス電圧を前記定着部材に印加する構成とした場合、以下の効果を奏する。
定着部材にバイアス電圧を印加し、静電気力により逆極性トナーを記録材に留めるようにするには、前述したように、定着部材の表面電位を維持すること(表面電荷を保持すること)が必要である。このためには、定着部材の表面絶縁層の体積抵抗率が所定値であることが好ましい。
すなわち、定着部材の表面抵抗層の体積抵抗率を1013Ω・cmより大きくしておけば、電荷を保持する時間を長くして、逆極性顕像剤を記録材に留める上で所望の効果が得られる。なお、体積抵抗率は、ローラの種々の構成とそれらに用いる材料やトナー材料の組合せ、プロセス速度や画像形成装置の仕様などによって、適宜1014Ω・cm以上、1015Ω・cm以上、1018Ω・cm以上といったように選択できる。
上記の定着装置において、前記加圧部材は導電性芯金上に絶縁性弾性層を有し、この絶縁性弾性層の上に中間層を有し、この中間層の上に表面抵抗層を有しており、前記加圧部材の表面には電位付与部材が設けられ、この電位付与部材に前記バイアス電圧印加手段から前記バイアス電圧が印加され、このバイアス電圧が前記電位付与部材を介して前記加圧部材の表面あるいは表面近傍に印加される構成とした場合、以下の効果を奏する。
すなわち、加圧部材へのバイアス電圧の印加は、加圧部材が絶縁弾性層を有するものであるから、加圧部材の表面抵抗層への印加とするのが好ましい。この場合、加圧部材の表面抵抗層に対して、逆極性トナーを記録材に留めるための電位(電荷)を確実に付与するには、電位付与部材にバイアス電圧を印加し、電位付与部材からの電荷移動によって加圧部材への電位(電荷)付与を行う。電荷付与部材は加圧部材の表面に接触あるいは近接して設けられる。
このような電荷付与部材による加圧部材への電位(電荷)付与では、従来のコロナチャージャでの電位(電荷)付与に比べて、安定した電位(電荷)付与が可能となり、環境汚染の度合いも良好である。なお、電位付与部材の形態としては、板状(ナイフエッジ、鋸歯)、ブラシ状、円筒あるいは円柱状等とすることができる。
上記の定着装置において、前記加圧部材の表面抵抗層の表面抵抗率が107Ω以上であり、前記バイアス電圧印加手段は前記バイアス電圧を前記加圧部材に印加する構成とした場合、以下の効果を奏する。
加圧部材にバイアス電圧を印加し、静電気力により逆極性トナーを記録材に留めるようにするには、前述の場合と同様、加圧部材の表面電位を維持すること(表面電荷を保持すること)が必要である。このためには、加圧部材の表面抵抗層の表面抵抗率が所定値であることが好ましい。
すなわち、加圧部材の表面抵抗層の表面抵抗率を107Ω以上としておけば、電荷を保持する時間を長くして、逆極性トナーを記録材に留める上で所望の効果が得られる。なお、表面抵抗率は、ローラの種々の構成とそれらに用いる材料やトナー材料の組合せ、プロセス速度や画像形成装置の仕様などによって、適宜1010Ω以上、1015以上といったように選択できる。
上記の定着装置において、前記加圧部材の表面抵抗層の体積抵抗率が105Ω・cm以上であり、前記バイアス電圧印加手段は前記バイアス電圧を前記加圧部材に印加する構成とした場合、以下の効果を奏する。
加圧部材にバイアス電圧を印加し、静電気力により逆極性トナーを記録材に留めるようにするには、前述の場合と同様、加圧部材の表面電位を維持すること(表面電荷を保持すること)が必要である。このためには、加圧部材の表面抵抗層の体積抵抗率が所定値であることが好ましい。
すなわち、加圧部材の表面抵抗層の体積抵抗率を105Ω・cm以上としておけば、電荷を保持する時間を長くして、逆極性トナーを記録材に留める上で所望の効果が得られる。なお、体積抵抗率は、ローラの種々の構成とそれらに用いる材料やトナー材料の組合せ、プロセス速度や画像形成装置の仕様などによって、適宜107Ω・cm以上、1010Ω・cm以上、1015Ω・cm以上といったように選択できる。
上記の定着装置において、前記定着部材は、定着部材の表面を加熱する第1の加熱部材を備え、前記電位付与部材は、加圧部材の表面を加熱する第2の加熱部材を兼ねている構成とした場合、以下の効果を奏する。
すなわち、この定着装置では、加圧部材の表面温度を第2の加熱部材で加熱する構成を前提としており、この構成において、電位付与部材が第2の加熱部材を兼ねることにより、加圧部材周囲の構成を簡略化でき、定着装置を簡単な構成とすることができる。また、電位付与部材において、加熱とバイアス電圧の印加とを同時に行うことにより、定着部材および電位付与部材への逆極性トナーの付着を低減し、かつ定着部材の加熱を行うことができる。
上記の定着装置において、前記電位付与部材は、加圧部材の表面に残留するトナーを除去する清掃部材である構成とした場合には、電位付与部材が加圧部材の清掃部材を兼用することができる。これにより、加圧部材周囲の構成を簡素化でき、定着装置を簡単な構成とすることができる。
上記の定着装置において、前記電位付与部材は、ナイフエッジ、鋸歯、ブラシなどの導電性あるいは半導電性の電極部材である場合、電位付与部材機能(相手物体に電位を付与する機能のみ)に特化した簡単な構成のものとすることができる。
上記の定着装置において、前記定着部材には第1のバイアス電圧印加手段から前記バイアス電圧が印加され、前記電位付与部材には第2のバイアス電圧印加手段から前記バイアス電圧が加される構成とした場合、記録材の逆極性トナーには、定着部材と加圧部材とから、逆極性トナーを記録材に留まらせるための静電気力(各々静電引力と静電斥力)が作用する。したがって、逆極性トナーを記録材に留まらせる機能をさらに高めることができる。
上記の定着装置において、前記定着部材、前記加圧部材および前記加熱部材のそれぞれの表面温度を検出する温度検出素子を設ける。例えばそれぞれの部材に1個づつ設けたり、定着部材と加熱部材に1個づつ設けたりする。そして、前記温度検出素子の受熱面側には絶縁被覆層と耐熱離型層を備え、その反対面側には保護層を設ける。これによって、受熱面では、電気的絶縁を備えつつ、ローラ表面に付着している少量のトナーが、温度検出素子に付着しないようにして、温度制御性能を高めている。
即ち、絶縁被覆層にて、バイアス電圧や摩擦帯電によるリークから保護し、耐熱離型層によって、溶融したトナーが、受熱面に付着することを防いでいる。
上記の定着装置において、前記温度検出素子の絶縁被覆層、耐熱離型層および保護層は、温度検出素子の弾性部材を覆うようにハウジングまで延長して、弾性部材がバイアス電圧や摩擦帯電したローラからのリークに対して、剥き出しにならないようにする。これにより、弾性部材が電気導電性の良好なものである場合でも、最適な絶縁距離を確保することができるようになり、高電圧による不具合を回避することができる。
上記の画像形成装置は、前記定着装置に対する記録材の流れにおける上流側に、顕像剤画像担持体から顕像剤画像を記録材に転写する転写装置を備え、この転写装置が顕像剤画像担持体に接触する接触転写方式である場合、以下の効果を奏する。
定着装置の上流に配置される転写装置が接触転写方式である場合、非接触転写方式に比べて記録材裏面にベルトやローラ状の転写部材から剥離する時の影響などにより、逆極性トナーが多く付着する傾向にある。したがって、転写方式がローラ状やベルト状の転写装置を使用した接触転写方式において、本発明の定着装置を備えた構成は非常に有効である。
また、接触転写方式の転写装置の表面をクリーニングする能力が低下して、定着装置に逆極性トナーが運ばれて来たような場合においても、加圧部材への逆極性トナーの付着・蓄積が抑制され、画像不良や画像欠陥を適切に低減することができる。
〔実施の形態1〕
本発明の実施の一形態を図面に基づいて以下に説明する。
図2は本実施の形態における電子写真方式の画像形成装置の内部構造を示す正面図である。この画像形成装置41は、画像読取装置42(図3参照)にて読み込まれた画像や、画像形成装置41に外部から接続された機器(例えばパーソナルコンピュータなどの画像処理装置)からのデータを画像として記録出力するものである。
画像形成装置41には、感光体ドラム1を中心に、画像形成プロセスの各機能を担う各プロセスユニットが配置され、これらにより画像形成部が構成されている。感光体ドラム1の周囲には、感光体ドラム1の回転方向に、帯電装置2、光走査装置3、現像装置4、転写装置5、クリーニング装置6および除電装置7等が順次配置されている。
帯電装置2は、感光体ドラム1の表面を均一に帯電させるものである。光走査装置3は、均一に帯電された感光体ドラム1上に光像を走査して静電潜像を書き込むものである。現像装置4は、光走査装置3により書き込まれた静電潜像を現像剤補給容器8から供給される現像剤により顕像化するものである。転写装置5は、感光体ドラム1上に顕像化された画像を記録材上に転写するものである。クリーニング装置6は、感光体ドラム1上に残留した現像剤を除去して感光体ドラム1上に新たな画像を形成することを可能にするものである。除電装置7は、感光体ドラム1表面の電荷を除去するものである。
画像形成装置41の下部には供給トレイ9が内装されている。この供給トレイ9は、記録材を収容する記録材収容トレイである。供給トレイ9に収容された記録材は、ピックアップローラ10等により1枚ずつ分離され、レジストローラ11まで搬送され、レジストローラ11により感光体ドラム1に形成された画像とのタイミングが計られ、転写装置5と感光体ドラム1との間に順次供給される。そして感光体ドラム1上に記録再現された画像は記録材上に転写される。なお、供給トレイ9への記録材の補給は、画像形成装置41の正面側(操作側)に供給トレイ9を引き出して行なう。
画像形成装置41の下面には記録材受入口12,13が形成されている。これら記録材受入口12,13は、図3に示すように、周辺装置として準備されている多段の記録材供給トレイを有する記録材供給装置46、および大量の記録材を収容可能とした記録材供給装置47等から送られてくる記録材を受け入れ、画像形成部に向かって記録材を順次供給するためのものである。
画像形成装置41内の上部には、定着装置14が配置されている。この定着装置14は、画像が転写された記録材を順次受け入れて、定着部材としての定着ローラ31と加圧部材としての加圧ローラ32等により、記録材上に転写された現像画像を熱と圧力により定着するものである。これにより、記録材上に画像が記録される。
画像が記録された記録材は、搬送ローラ15によりさらに上方搬送され、切換えゲート16を通過する。そして、記録材の排出トレイが画像形成装置41に外装された積載トレイ17に設定されている場合、記録材は反転ローラ18により積載トレイ17上に排出される。一方、両面画像形成や後処理が指定されている場合、記録材は、一旦反転ローラ18により積載トレイ17に向けて排出される。なお、この場合には、記録材を完全に排出せず、記録材を狭持させたまま反転ローラ18を逆転させる。そして、記録材を逆方向、つまり両面画像形成や後処理のために選択的に装着されている記録材再供給搬送装置43(図3参照)や後処理装置45(図3参照)の装着されている方向に反転搬送する。このとき、切換えゲート16は、図2の実線の状態から破線の状態に切換えられる。
両面画像形成を行なう場合、反転搬送された記録材は、記録材再供給搬送装置43を通り、再び画像形成装置41に供給される。後処理が成される場合、反転搬送された記録材は、記録材再搬送装置43から別の切換えゲートにて、中継搬送装置44を介して後処理装置45に搬送され、後処理が施される。
光走査装置3の上空間部には、画像形成プロセスを制御する回路基板および外部機器からの画像データを受け入れるインターフェイス基板等を収容する制御装置19が配置され、光走査装置3の下空間部には、各種の上記インターフェイス基板、ならびに各上記画像形成プロセスUNに対して電力を供給する電源装置20が配置されている。
図2に示した画像形成装置41は、図3に示す画像形成システムに備えられている。この画像形成システムは、画像形成装置41の他、画像読取装置42、記録材再供給搬送装置43、中継搬送装置44、後処理装置45、記録材供給装置46および記録材供給装置47を備えている。
画像読取装置42は、セットされた原稿の画像を露光走査して光電変換素子であるCCD上に結像し、原稿画像を電気的信号に変換した上で画像データとして出力する。読み取られた画像データは、画像形成装置41の画像処理装置にて、画像補正やラスタライズ等の加工処理後に、光走査装置3にて感光体ドラム1へ書き込まれる。
この画像読取装置42は、原稿の片面だけでなく両面をほぼ同時に読み取ることができるようになっており、また自動(自動原稿搬送装置48)/手動にて原稿を搬送することができる。
記録材再供給搬送装置43は、画像形成装置41の左側側面に取り付けられた記録材搬送経路ユニットである。この記録材再供給搬送装置43は、定着装置14から排出された画像が記録された記録材を画像形成装置41上部の排紙部の反転ローラ18を用いて反転搬送して、記録材の表裏を反転した上で、再度、画像形成装置41における画像形成部の感光体ドラム1と転写装置5との間(転写部)に向かって供給する。
中継搬送装置44は、記録材を後処理装置45に搬送するものであり、記録材再供給搬送装置43と後処理装置45との間に装着されている。
後処理装置45は、画像形成システムの左側位置に配置されており、第1の記録材排出部45aと第2の記録材排出部45bとを備えている。
第1の記録材排出部45aは、画像形成装置41から排出された画像の形成された記録材を、後処理装置45の側面上部に設けられた受け取り搬送部45cによって受け取り、記録材がそのままの状態で排出される排出部である。第2の記録材排出部45bは、ステープル,パンチ等選択的に装着される後処理装置45により後処理が成された記録材が排出される排出部である。これら第1と第2の記録材排出部45a,45bは、使用者によって適宜選択される。
後処理装置45は、図示しないが、所定枚数の記録材に対してステープル処理を施す機能、B4もしくはA3などの記録材の紙折りする機能、ファイリング用の穴を形成する機能、あるいはソートや仕分けを行うために数ビン〜数10ビンの多数の記録材排出部を有する機能のうち幾つかを組合せて搭載している。
図1に上記定着装置14の構造をさらに詳細に示す。図1は定着装置14を示す概略の縦断面図である。同図の定着装置14において、ローラ形状をなす定着ローラ31および加圧ローラ32は、それぞれ内部に導電性の芯金61および71を有している。
定着ローラ31には、アルミウムや鉄、およびそれらの合金が多用されている。本実施の形態において、定着ローラ31は、鉄系の冷間圧延炭素鋼鋼管を引き抜き等で所望の外径、肉厚に加工し、その後研磨加工を行ない外径40mm、肉厚1.3mmに製作されている。定着ローラ31の両端部は、外径を30mm、肉厚1.5mmに絞り加工を行なって、定着ローラ31に加わる荷重を軸支部材であるボールベアリング(ころがり軸受の一種)で支える。定着ローラ31の芯金61は、防錆の目的で材料表面に対してパーカライジング処理(リン酸塩あるいはリン酸亜鉛被膜処理)を施し、錆の発生を抑制している。
定着ローラ31における、絞り加工を施していない中央のスリーブ部分には、加熱溶融したトナーとの接触でも離型性能を維持できるフッ素系樹脂が一般的に用いられる。前記フッ素樹脂としては、PFA(テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)やPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、あるいはそれらの混合体であり、導電性の芯金61上に、中間層62を介して表面絶縁層63としてコーティングされている。
表面絶縁層63としては、耐熱性および離型性の観点から、その他、例えば、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、エチレン/テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、エチレン/クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)等のフッ素樹脂、あるいはフッ素ゴムラテックスを含む材料を各々単独で、もしくは2種類以上を組み合わせて使用することもできる。これらは、塗布・焼成によって形成すること、あるいはチューブ被覆で形成すること等ができる。
中間層62は、表面絶縁層63としてのフッ素樹脂とパーカライジング処理した炭素鋼鋼管表面との接着性を高めるものである。本実施の形態では、ゴム系あるいはレジン系接着材等の絶縁性プライマを用いている。
また、定着ローラ31の内面には耐熱吸熱層が形成されている。この耐熱吸熱層は、定着ローラ31が内包した加熱体であるハロゲンランプ64が定着ローラの内周面に赤外光等の放射エネルギーを放出した場合に、これを効率良く吸収して熱に変換するものである。耐熱吸熱層は、例えば、変性シリコーン樹脂、無機耐熱黒顔料、炭化水素(溶剤)などを混合したものを塗布し乾燥させたものであり、膜厚20〜30μmに形成する。一般的に、オキツモ(商品名)、テツゾール(商品名)、セルモブラック(商品名)等の耐熱塗料が用いられている。本実施の形態では、オキツモを用いている。
なお、定着ローラ31において、66は、定着ローラ31の表面温度を検出する温度検出素子であるサーミスタであり、65は過昇温防止手段としてのサーモスタットである。また、67は上剥離爪であり、定着ローラ31に貼り付いた記録材91を機械的に剥ぎ取るものであり、78は下剥離爪であり、加圧ローラ32に貼り付いた記録材91を機械的に剥ぎ取るものである。
加圧ローラ32は、鉄やステンレス等の導電性の芯金71上に、シリコ−ンゴム等の耐熱性を有する絶縁性弾性層72を形成し、その外周に中間層73を形成する。この中間層73の外周には、表面の離型性能を向上させる表面抵抗層74を形成する。中間層73は、絶縁性弾性層72と表面抵抗層74との接着性を高めるものである。本実施の形態において、中間層73には、絶縁性弾性層72との接着であるので、絶縁性プライマを用いている。
加圧ローラ32の表面抵抗層74は、表面抵抗率として1010Ωを用いている。105Ωでも使用できるレベルであるが、より好ましくは、107Ω〜1018Ω以上の表面抵抗率が良い。また、体積抵抗率は、107Ω・cm以上、より好ましくは、1010Ω・cm以上である。
絶縁性弾性層72としては、前述のシリコーンゴム系であれば、高温加硫型シリコーンゴム(HTV)、付加反応硬化型シリコーンゴム(LTV)、縮合反応硬化型シリコーンゴム(RTV)、その他にフッ素ゴム、またはこれらの混合物等が挙げられる。具体的には、例えば、ジメチルシリコーンゴム、フロロシリコーンゴム、メチルフェニルシリコーンゴム、ビニルシリコーンゴム等のシリコーンゴム系、フッ化ビニリデンゴム、テトラフルオロエチレン−プロピレンゴム、テトラフルオロエチレン−パーフルオロメチルビニルエーテルゴム、ホスファゼン系フッ素ゴム、フルオロポリエーテル等のフッ素ゴム等を使用することができる。これらのゴムは、各々単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができ、注型・加硫、研磨等で成形する。
図4は定着ローラ31の支持構造を示す正面図、図5は同分解斜視図である。定着ローラ31は、図4および図5に示すように、定着装置14のフレーム82に取り付けられたボールベアリング81により支持されている。フレーム82は鉄系の冷間圧延鋼をプレス成形したものである。ボールベアリング81は、外輪部81a、転動体(図示せず)および内輪部81bを有し、定着ローラ31の両端部における絞り部分のジャーナル部31aに嵌合されている。
一方、加圧ローラ32は、ステンレス等の軸部に対して、ボールベアリングを嵌合し、このボールベアリングを、フレームにカシメた支点軸から延びる荷重レバーにより受けて、定着ローラ31の中心軸方向へ、荷重バネ等によって荷重する。この荷重による圧接力は、本実施の形態において、764N(両端荷重合計)であるが、記録材91の種類、定着ローラ31や加圧ローラ32の剛性、温調温度等の条件や性能によって、任意に設定可能である。
定着ローラ31と加圧ローラ32は、所定の荷重で圧接されており、記録材91を狭持搬送しながら、トナーからなる未定着画像を加熱溶融し記録材91上に定着する。
なお、本実施の形態で用いた材料や寸法、形状等は、それらに限定されるものではなく、所望の性能を逸脱しない範囲で、適宜変更可能であり、種々のものを用いることができる。
さらに、本実施の形態の定着装置14では、加圧ローラ32の周囲に、清掃部材である第1クリーニングローラ75および第2クリーニングローラ76と、第2加熱部材である加熱ローラ77が当接している。なお、79は、加熱ローラ77の表面温度を検出する温度検出素子であるサーミスタである。
なお、本実施例で用いるサーミスタは、図13(a)(b)に示すように、ハウジング129に固定支持された弾性部材であるステンレス板125上にサーミスタチップ124を直接ボンディングして、熱応答性を早くしたものである。このサーミスタは、バイアス電圧を印加すること、摩擦帯電によって高電位になっている定着ローラ31、加圧ローラ32および加熱ローラ77に当接することから、高電圧に対して、温度制御装置や画像形成装置などの電気系統を保護する必要がある。特に、ステンレス板と前述した各々のローラとが近接しており、温度制御装置の2次回路との絶縁耐圧を十分確保しておかなければならない。
そこで、本実施の形態におけるサーミスタは、サーミスタチップ124をボンディングしているステンレス板125の受熱面側に対して絶縁被覆層126を被せ、その上に耐熱離型層127を被せる。また、その反対側の面には保護層128を被せる。また、ステンレス板125とハウジング129との間において、当接するローラ表面との絶縁距離を確保するために、絶縁被覆層126、耐熱離型層127および保護層128にて、ステンレス板125をハウジング129の境界付近まで覆っている。こうすることで、サーミスタチップ124やステンレス板125に対して、各々のローラからリーク電流が流れることがなく、高電圧による破損や劣化といった不具合が解消される。この結果、安定したバイアス電圧を印加することができるとともに、正確な温度情報を取得することができ、良好な温度制御を実施することができる。
本実施の形態において、絶縁被覆層126は接着剤を含んだ厚み50μmのポリイミド(商品名:カプトン)であり、耐熱離型層127は接着剤を含んだ厚み130μmのガラス繊維に耐熱離型樹脂を含浸させたものである。また、保護層128は接着剤を含んだ厚み80μmのテフロン(登録商標)である。なお、これら材料は、上記のものに限定されず、諸性能において代替できるものであれば、他の材料でもよい。
第1および第2クリーニングローラ75,76は、アルミニウムや鉄、あるいはそれらの合金(ステンレス鋼も含む)材料からなり、中空ローラあるいは中実ローラを加工して、両端部にすべり軸受やころがり軸受を嵌合し、荷重バネ等により、加圧ローラ32に対して所定範囲のニップを保持しながら圧接している。本実施の形態では、炭素鋼やステンレス鋼製の外径15mm(第2クリーニングローラ76)と8mm(第1クリーニングローラ75)のクリーニングローラである。これら第1および第2クリーニングローラ75,76の表面は、加圧ローラ32表面に少量残留するトナーを清掃するために、所定の表面粗さを付与している。
一方、加熱ローラ77は、アルミニウムや鉄、あるいはそれらの合金(ステンレス鋼も含む)材料を用いた中空ローラであり、最外周面に設けた表面離型層77aによって離型性能を維持したまま、加圧ローラ32と圧接した際のニップでの熱伝導によって表面を加熱する。本実施の形態では、アルミニウム合金製の外径15mm、肉厚0.85mmのストレートパイプ77bの外周面に、中間層77cと表面離型層77aとを順次形成し、ストレートパイプ77bの内周面には、定着ローラ31と同様に耐熱吸熱層を設け、内部には、ハロゲンランプ77dを内包している。
加熱ローラ77において、中間層77cや表面離型層(表面絶縁層)77aは、定着ローラ31と異なる構成を用いることが可能であるが、本実施の形態では同じ構成を用いている。また、加熱ローラ77についても、両端部にすべり軸受やころがり軸受を嵌合し、荷重バネ等により、加圧ローラ32に対して所定範囲のニップを保持しながら圧接している。
前述した定着ローラ31に嵌合したボールベアリング81は、図4および図5に示すように、フレーム82との間にPPS樹脂(ポリフェニレンサルファイド)やPPO樹脂(ポリフェニレンオキシド)等の耐熱・絶縁材料よりなるベアリングホルダ83を介して電気絶縁性を持たて荷重を支えている。このベアリングホルダ83によって、定着ローラ31は、画像形成装置41のフレームや定着装置14のフレーム82と電気的に絶縁されている。
定着ローラ31には、図1に示すように、記録材91の裏面に付着してくる逆極性トナー92を記録材91に留める向きに電位差を付与する目的で、バイアス装置94からバイアス電圧を印加する。本実施の形態において、転写装置5は、接触方式で転写を行うものであり、図2ではローラ状のものを示しているものの、ベルト状であってもよい。なお、図1において、記録材91における定着ローラ31側の面に付着しているトナー93は、画像を形成するトナーである。
ここで、転写装置5は、定着装置14に対して記録材91の流れにおける上流に位置しており、感光体ドラム1上に形成されたトナーによる静電顕像であるトナー画像を記録材91に写し取る転写プロセスを行う。このときに、上記の逆極性トナー92が転写装置5の表面に付着し、さらに転写装置5の表面から記録材91の裏面に付着する。
転写装置5では、通常、逆極性トナーや紙紛等を除去するような機構を有するものの、完全には除去できないことが多く、この残留した逆極性トナーや紙紛は、転写装置5の表面に蓄積されてくる。そして、電気的あるいは機械的付着力等の力のバランスによって、一部あるいは全部が記録材91に付着して、下流側の定着装置14に運ばれてくる。
通常であれば、上記逆極性トナー92や紙紛等は、そのまま記録材91に付着し、記録材91と共に画像形成装置41から排出される。しかしながら、従来の定着装置14では、多数枚の定着処理を行った場合、定着装置14の条件、特に定着ローラ31や加圧ローラ32の摩擦帯電によって生じた静電気力の大きさや極性等によって、逆極性トナー92が記録材91から引き剥がされて加圧ローラ32、さらには定着ローラ31にまで付着し、その結果、記録材91の裏面や表面に画像不良や欠陥を発生させてしまうこととなっていた。
そこで、本実施の形態の定着装置14では、定着ローラ31における導電性の芯金61に、逆極性トナー92(例えば、正極性)の帯電極性とは逆極性(例えば、負極性)の定着バイアス電圧を印加している。
このような構成では、バイアス装置94から定着ローラ31の芯金61に印加される定着バイアス電圧にて、記録材91の裏面の逆極性トナー92を記録材91の裏面に留める方向の静電気力が作用する。これにより、記録材91の裏面の逆極性トナー92は、加圧ローラ32の方へ引き剥がされることなく記録材91上に留まる。その結果、記録材91の裏面に定着されて記録材91と共に画像形成装置41から排紙される。なお、記録材91上の逆極性トナー92は、記録材91の1枚あたりの量が少量であるので、定着された画像に対してはほとんど影響のないものである。
次に、バイアス装置94からの定着バイアスについてさらに説明する。
図6は、定着装置14において定着ローラ31と加圧ローラ32との間に記録材91が挟持された状態を示す要部の縦断面図である。
本実施の形態では、定着バイアス電圧として、定着ローラ31の導電性の芯金61に対して−1kVを印加している。この定着バイアス電圧の極性は、逆極性トナー92の帯電極性が正極性であるのでマイナスである。これにより、逆極性トナー92と定着ローラ31の芯金61との間には静電引力が作用し、この逆極性トナー92を記録材91の裏面に留めることができる。
定着バイアス電圧の大きさには適度な範囲が存在する。すなわち、定着バイアス電圧が小さすぎると、逆極性トナー92を記録材91の裏面に留めるための静電引力が不足し、逆極性トナー92が加圧ローラ32の方へ移動してしまう。一方、定着バイアス電圧が大きすぎると、上記静電引力が大きくなって逆極性トナー92を記録材91に留める力は大きくなるものの、定着ローラ31の表面絶縁層63が薄いために耐電圧が低くなり、絶縁破壊を引き起こしてしまう。したがって、定着バイアス電圧の範囲は、定着ローラ31における表面絶縁層63や中間層62の材質、電気的特性、膜厚、材料欠陥(ピンホールや傷等)の有無あるいは層構造等にも依存するが、概ね−100V〜2kVの範囲(逆極性トナー92の帯電極性が負極性であれば、+200V〜2kVの範囲)とするのが好ましい。ただし、ローラの構成やトナーの帯電条件、各ローラの帯電条件などによっては、ゼロ電位(接地)やフロートすることでも同様の効果を得ることが可能である。
図7には、本実施の形態の定着装置14において、定着バイアス電圧と記録材91上における画像不良の程度との関係について調べた結果を示す。同図の結果より、定着バイアス電圧が大きい場合、あるいは定着ローラ31の表面絶縁層63の表面抵抗率が大きい場合の方が、画像不良の発生を抑制する機能が高いことがわかる。特に、記録材91の搬送速度が速く、プロセス速度が速い高速機(例えば、プロセス速度:395mm/s、複写速度:70枚/分)では、表面抵抗率を大きくして、例えば1014Ω以上、より好ましくは1015以上を付与する。これにより、定着ローラ31表面に電荷を保持する時間を例えば0.2秒以上(好ましくは0.3秒以上)に保ち、電荷の漏洩減衰する時間を長く保つことで、効果的に逆極性トナー92を記録材91に留めることができるようになる。
上記の内容は、バイアス電圧94から供給される定着バイアス電圧による電流が多すぎても不具合があることも示しており、定着ローラ31は、安定した電流の供給を維持する表面抵抗率を有するものであることが望ましい。特に、流れる電流が多すぎると、不要な個所へのリーク電流が増加し、画像処理系や画像形成プロセスなどの処理系や制御系へのノイズ等による別の不具合を発生させることになる。定着ローラ31を流れる電流を安定化するための定着ローラ31の表面抵抗率は、表面絶縁層63の体積抵抗率を規定し、表面状態(表面粗さ、付着している水分量、環境条件等)を最適にすることにより得ることができる。このために、表面絶縁層63の体積抵抗率は、1013Ω・cmより大きい範囲とすることが好ましく、より好ましくは1014Ω・以上にすることが望ましい。あまり、多くの電流を流してしまうと、急激な電流の変化により、制御装置などの機器の動作に支障が出たり、加圧ローラ32の表面抵抗層74が劣化したり、穴があいてしまうといった悪影響が生じる。
また、バイアス装置94から定着ローラ31に定着バイアス電圧を印加することにより画像不良の発生を抑制する機能は、定着ローラ31や加圧ローラ32に用いられる導電性の芯金61,71,中間層62,73、または表面絶縁層63や表面抵抗層74の種類を変えた場合であっても、若干の変動はあるものの、同様に得ることができる。さらには、記録材91の種類や厚み、大きさを変えても、同様に得ることができる。
なお、本実施の形態では、加熱体としてハロゲンランプ64を用いた場合について説明したが、定着ローラ31の加熱方式としては、その他、ジュール熱により定着ローラ31を加熱する誘導加熱方式、芯金61の表面や内面に形成した抵抗発熱層による抵抗発熱方式、あるいはキセノン等の高エネルギーの照射による閃光発熱方式、圧力定着方式等を使用可能である。これら、種々の加熱方式を適用した場合にも、定着ローラ31に定着バイアス電圧を印加することによる上記の機能は、若干の差は生じるものの、同様に得ることができ、定着装置14は特定の加熱方式に限定されるものではない。
さらに、本実施の形態において、定着ローラ31にはハロゲンランプ64を2本内包しており、一方が中央部、他方が両端部を主として加熱する。ハロゲンランプ64が加熱する領域は、これに限定されず全幅加熱と部分加熱に分けたものでもよく、かつハロゲンランプ64の数も2本に限定されず、3本以上あるいは1本でもよい。
また、定着ローラ31は、上述した材料以外に、ステンレス鋼、ニッケルおよびその合金など耐熱性、機械的強度などで、条件を満足するものであれば使用することができる。そして、両端部において絞り加工を施してあってもよい。
以上のように、本実施の形態の構成は、ベルト状あるいはローラ状の接触によって転写する接触転写方式の定着装置において、特に効果が大きい。
なお、図4および図5に示したベアリングホルダ83の材料としては、熱可塑性を有する材料、例えば、PPS(ポリフェニレンサルファイド)をベースとした材料やポリアセタール、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニル系、ポリテトラフルオロエチレン等を単独、あるいは複数を併用混合してプラスチックアロイとしたもの、ガラス繊維や非金属充填材等を混合して複合材料としたものを用いてもよい。上記熱可塑性を有する材料としては、固体状の鎖状ポリマーからなり、所定の温度以上に加熱することにより変形が迅速に進むものであり、電気絶縁性を有し、かつ過昇温時230〜270℃以上に加熱することで変形するものであればどのようなものでもよい。
ベアリングホルダ83を使用してボールベアリング81(定着ローラ31)とフレーム82とを絶縁し、定着バイアス電圧を印加した状態において、ハロゲンランプ64が何らかの異常により連続点灯をしてしまった場合には、通常であればサーミスタ66が定着ローラ31の表面温度が温度制御範囲から逸脱したことを検出し、制御装置がトライアック等のスイッチング素子をOFFにする。しかしながら、このスイッチング素子がショートしたことによる連続点灯であれば、制御装置は通電を遮断することができない。また、制御装置のハードウェア上の故障やソフトウェアの暴走等が生じた場合も、同様に正常にOFFすることができない場合がある。
このような状態は適切な温度制御ができない状態であり、定着装置14、さらには画像形成装置41の異常過熱やそれによる故障を招来する。特に、近年における省エネルギーの要望の高まりに応じて、ウォームアップ時間を短縮する目的などで、定着ローラ31を薄肉構造として熱容量を小さくしている場合には、加熱速度が早く、異常過熱および故障に至るまでの時間も短いことが多い。
また、ハロゲンランプ64の配熱特性(例えば、局部加熱等により加熱領域をかなり厳密に区分けしている状態)や大電力ハロゲンランプを使用しているために加熱速度の大きいところと小さいところに大きな差を有し、サーモスタット65の配置に制約がある場合などでは、サーモスタット65の作動に極端な差が生じることがある。このような場合には、サーモスタット65が適切に作動しない、あるいは作動してもかなり時間を要するといった事態となる。
そこで、本実施の形態定着装置14では、ベアリングホルダ83を熱可塑性材料にて形成し、サーモスタット65を例えばフレーム82に設けている。これにより、異常過熱が起こった場合に、ベアリングホルダ83が、その熱を受けること、および例えば定着ローラ31と加圧ローラ32の圧接荷重を受けることによって、変形、溶融し、予め与えていたサーモスタット65と定着ローラ31との空隙が狭くなる。この結果、サーモスタット65は定着ローラ31の過昇温に反応し易くなり、迅速に動作する。
そして、制御装置では、サーモスタット65による通電の遮断をのみを検出すること、あるいはこれに加えて定着バイアス電圧の異常を検出することにより、定着装置14の過昇温と判断することができる。
上記の構成では、従来の構成に比べて、迅速かつ確実に異常過熱に対応した動作を行い、定着装置14、さらには画像形成装置41の異常過熱による大きな故障を防止して、装置の信頼性を高めることができる。
〔実施の形態2〕
本発明の実施の他の形態を図面に基づいて以下に説明する。なお、説明の便宜上、前記の実施の形態に示した部材と同一の機能を有する部材には同一の符号を付記し、その説明を省略する。
本実施の形態の定着装置101は図8に示す構成となっている。定着ローラ31は、例えば、外径40mmのストレート形状をなす導電性の芯金61に、中間層62および表面絶縁層63が形成されている。加圧ローラ32は、外径が35mmである点以外は、実施の形態1の構成と同様である。
この定着装置101は例えばハロゲンランプ64による加熱方式を用いて定着を行なうものであり、ハロゲンランプ64は、定着ローラ31に2本(1本は定着ローラ31の中央部加熱用、他の1本は定着ローラ31の両端部加熱用)が内包され、加熱ローラ77に1本(全幅加熱用)が内包されている。
加圧ローラ32の表面には、加熱ローラ77以外にクリーニングローラ102が当接している。このクリーニングローラ102は、加圧ローラ32の回転方向における加熱ローラの上流側に位置している。
この定着装置101を備えた画像形成装置41のプロセス速度は例えば335mm/sであり、複写速度あるいはプリント速度は55〜65枚/分である。この画像形成装置41における転写装置5は例えばベルト状である。
クリーニングローラ102は前記クリーニングローラ75,76と同様の構成であり、導電性を有する。このクリーニングローラ102にはバイアス装置105から定着バイアス電圧が印加されている。この定着バイアス電圧は、定着装置101において、記録材91の裏面に付着する例えば正極性の逆極性トナー92を記録材91の裏面に留める方向の静電気力を付与するためのものである。定着バイアス電圧は、逆極性トナー92と同極性の電圧であり、本実施の形態において+1kVとしている。
上記定着バイアス電圧はクリーニングローラ102を介して加圧ローラ32の表面に印加され、加圧ローラ32の表面が正電位を帯びる。これにより、記録材91の裏面(加圧ローラ32側の面)の逆極性トナー92は加圧ローラ32側に寄せ付けられず、記録材91裏面に留まる。この結果、記録材91の裏面に極少量付着している逆極性トナー92は、記録材91に定着され、記録材91と共に画像形成装置41から排出される。
図9には、本実施の形態の定着装置101において、定着バイアス電圧と記録材91上における画像不良の程度との関係について調べた結果を示す。同図の結果より、加圧ローラ32における表面抵抗層74の表面抵抗率が大きいほど、また定着バイアス電圧が大きいほど、画像不良の発生を抑制する機能が高いことがわかる。この場合、加圧ローラ32の表面抵抗層74に応じた定着バイアス電圧を印加すると効果が高い。
一方、定着バイアス電圧や表面抵抗層74の表面抵抗率が低すぎると、加圧ローラ32表面に保持される電荷を加圧ローラ32の表面電位として作用するために必要な時間だけ維持できなくなり、逆極性トナー92を記録材91へ留める効果が早期に減少する。すなわち、表面抵抗層74の表面抵抗率が小さく、減衰時間が短いような状態(例えば、0.2秒よりも短い状態)では、逆極性トナー92に対する十分な引き留め作用が発揮されない。
これは、クリーニングローラ102からの定着バイアス電圧が作用した、クリーニングローラ102に対する加圧ローラ32のニップ部が、定着ローラ31に対するニップ部に到達するまでに、そのニップ部の電位が低下し、その電位による静電気力により逆極性トナー92を記録材91に十分に留めることができないためである。その結果、逆極性トナー92は加圧ローラ32表面に移動し、その一部はクリーニングローラ102に回収される。しかしながら、残りのものは、加熱ローラ77表面や加圧ローラ32表面に残留し、最終的には、別の記録材91の裏面や定着ローラ31の表面に再付着する。定着ローラ31の表面に付着したものは別の記録材91の表面に付着して画像欠陥を生じさせる。
本実施の形態の定着装置101では、加圧ローラ32における表面抵抗層74の表面抵抗率を大きくして、例えば107Ω以上、より好ましくは108Ω以上の抵抗値を付与する。これにより、加圧ローラ32表面に電荷を保持する時間を例えば0.2秒以上(好ましくは0.3秒以上)に保ち、電荷の漏洩減衰する時間を長く保つことで、効果的に逆極性トナー92を記録材91に留めることができるようになる。
また、表面抵抗層74の体積抵抗率についても同様であり、105Ω・cm以上とすることが好ましく、より好ましくは1010Ω・cm以上とすることにより、同様の効果を得ることができる。
また、バイアス装置105から定着バイアス電圧を印加することにより画像不良の発生を抑制する機能は、定着ローラ31や加圧ローラ32に用いられる導電性の芯金61,71,中間層62,73、または表面絶縁層63や表面抵抗層74の種類を変えた場合であっても、若干の変動はあるものの、同様に得ることができる。さらには、記録材91の種類や厚み、大きさを変えても、同様に得ることができる。
上記の定着装置101では、逆極性トナー92を記録材91に留めるように、加圧ローラ32に対してバイアス装置105から定着バイアス電圧を印加する構成であるが、この構成の発展形態として、図10に示す構成も可能である。図10に示す定着装置111では、バイアス装置105からクリーニングローラ102を介して加圧ローラ32の表面に定着バイアス電圧を印加するとともに、バイアス装置94から定着ローラ31の導電性の芯金61に対して定着バイアス電圧を印加する構成である。
すなわち、定着ローラ31の芯金61には、第1定着バイアス電圧として記録材91上の逆極性トナー92と逆極性の電圧を印加する一方、加圧ローラ32の表面に当接する、第1クリーニングローラとしてのクリーニングローラ102には、第2着バイアス電圧として記録材91上の逆極性トナー92と同極性の電圧を印加している。本実施の形態おいて、第1定着バイアス電圧は、例えば−1kVとし、第2定着バイアス電圧は例えば+800Vとしている。
なお、定着装置111では、第2クリーニングローラ76は、加圧ローラ32の回転方向における加熱ローラ77に対する上流側位置に設けられ、第1クリーニングローラとしてのクリーニングローラ102は、下流側位置に設けられている。
また、第2定着バイアス電圧は、クリーニングローラ102に代えて加熱ローラ77に印加してもよく、この場合には例えば+1kVとする。
定着装置111では、定着装置101における、加圧ローラ32に第2定着バイアス電圧を印加することによる記録材91への逆極性トナー92の保留機能、および定着装置14における、定着ローラ31に第1定着バイアス電圧を印加することによる記録材91への逆極性トナー92の保留機能の両方の保留機能が作用し、逆極性トナー92を記録材91から加圧ローラ32の表面へ移動させることなく、確実に記録材91に保留させることができる。
すなわち、定着装置111では、記録材91の逆極性トナー92に対して、定着ローラ31と加圧ローラ32との双方から逆極性トナー92を記録材91に留めておく方向の静電気力が作用し、より大きな力による記録材91への逆極性トナー92の保留機能が働くことになる。
ここで、第1定着バイアス電圧により定着ローラ31へ流れ込む電流は通常10μA以下程度であり、また記録材91が定着装置111を通過する時には、記録材91を通って電流が流れる場合でも、通常20〜40μA程度である。しかしながら、定着ローラ31や加圧ローラ32などの表面抵抗率や体積抵抗率、ローラの構成などの条件によっては、150μAより多く流れてしまう場合がある。このような場合、定着ローラ31→加圧ローラ32→画像形成装置41のフレーム、定着ローラ31→記録材91→画像形成装置41のフレーム、あるいはクリーニングローラ102→加圧ローラ32→記録材91→画像形成装置41のフレームなどの経路で電流が流れ過ぎると、流れた電流によって、画像形成装置41の制御装置や画像処理装置にノイズ等が混入し、誤動作を引き起こす。したがって、定着バイアス電圧として流す電流は、所定の少ない範囲に抑える必要がある。また、流れた電流によって、加圧ローラ32の表面抵抗層74が劣化したり、穴があいたりして、支障が出てしまうことがある。
以上のように、本実施の形態の構成は、ベルト状あるいはローラ状の接触によって転写する接触転写方式の定着装置において、特に効果が大きい。
〔実施の形態3〕
本発明の実施のさらに他の形態を図面に基づいて以下に説明する。なお、説明の便宜上、前記の実施の形態に示した部材と同一の機能を有する部材には同一の符号を付記し、その説明を省略する。
本実施の形態の定着装置121は、図11に示す構成となっている。定着ローラ31の導電性の芯金61には、バイアス装置94から逆極性トナー92とは逆極性の定着バイアス電圧が印加されている。加圧ローラ32には、加圧ローラ32の外周部における排紙側位置に、導電性の例えばSUS(ステンレス鋼)からなるスクレパー(scraper)122が設けられ、入紙側位置に電位付与ブラシ123が設けられている。スクレパー122にはバイアス装置105aから逆極性トナー92と同極性の定着バイアス電圧が印加され、同様に電位付与ブラシ123にはバイアス装置105bから逆極性トナー92と同極性の定着バイアス電圧が印加される。本実施の形態において、バイアス装置94からの定着バイアス電圧は−1kVであり、バイアス装置105aからの定着バイアス電圧は+600Vであり、定着バイアス電圧15bからの定着バイアス電圧は、+1000Vである。
上記スクレパー122の材料としては、導電性のSUSの他、例えばPI(ポリイミド)、PFA(テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)、あるいはPC(ポリカーボネート)などの耐熱性を有する樹脂の表面に、導電コートや表面改質にて導電性を付与したもの、またはカーボンや金属等の導電性を有する粉末や繊維などの導電材を上記の樹脂に充填して樹脂に導電性を持たせたものであってもよい。
上記のスクレパー122は、加圧ローラ32の清掃部材、すなわち加圧ローラ32の表面からの機械的なトナーの掻き落とし部材としての主な機能に加えて、加圧ローラ32に対する電位付与部材としての機能を有する。スクレパー122は、導電性あるいは半導電性を有し、接地されること、あるいは定着バイアス電圧が印加されることにより、加圧ローラ32の表面に保持される電荷を制御し、逆極性トナー92を記録材91上に留めておく方向の静電気力を生じさせる。これにより、逆極性トナー92が付着することによる加圧ローラ32の汚れを防止し、汚れに左右される加圧ローラ32の寿命を飛躍的に伸ばすことができる。また、スクレパー122を設けた構成では、加圧ローラ32周囲の構成を簡素化することができる。
また、電位付与ブラシ123は、例えばカーボン繊維、ステンレス繊維あるいはアモルファス繊維などの金属繊維や、アクリル繊維に銅結合した繊維、PVA繊維に銅を結合させ、特殊金属処理をした繊維、アクリルにカーボン短繊維混練繊維、ポリエステルに銀処理をした繊維などの有機導電性繊維などにより形成されている。この電位付与ブラシ123は、スクレパー122と同様の、加圧ローラ32に対する電位付与部材として機能し、これによる加圧ローラ32表面の逆極性トナー92による汚れ防止機能を同様に有する。
なお、定着バイアス電圧121では、加圧ローラ32に対し電位付与部材としてスクレパー122および電位付与ブラシ123の両方を設けた構成としているが、図12に示すように、電位付与ブラシ123のみを設けた構成としてもよい。あるいは、スクレパー122のみを設けた構成としてもよい。なお、本実施例では、電位付与ブラシ123を加圧ローラ32に対して接触させているが、加圧ローラ32の表面に近接させて、非接触で配置してもよく、付与する電位として、ゼロ電位を付与するように接地してもよい。
また、以上の実施の形態において、バイアス電圧の印加タイミングは次のように設定してもよい。すなわち、ローラの静電容量や印加するバイアス電圧の大きさ、ローラの表面抵抗率や体積抵抗率などの物性値にもよるが、バイアス電圧を印加して、所定の電位に維持されるまでの電位付与能力と回転による摩擦帯電による帯電能力及び記録材がローラ対のニップ部に入るタイミングによって種々の状態がある。しかしながら、概ね2つのローラが回転を始めると同時か、それよりも前に印加すると効果が高い。ただし、回転後でも電位付与能力が高い場合では、記録材がニップに入る直前でも所望の電位に維持できれば、回転後でも良い。