JP5173457B2 - 定着装置、及びその定着装置で用いられるフィルム - Google Patents

定着装置、及びその定着装置で用いられるフィルム Download PDF

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Description

本発明は、電子写真複写機、電子写真プリンタなどの画像形成装置に搭載する定着装置(定着器)、及びその定着装置で用いられるフィルムに関する。
電子写真方式の複写機やプリンタ等の画像形成装置に搭載する加熱定着装置(定着器)として、フィルム加熱方式のものがある。特許文献1、特許文献2、特許文献3にはこのフィルム加熱方式の定着器が記載されている。フィルム加熱方式の定着器は、セラミックス製の基板上に通電発熱体を有するヒータと、このヒータに接触しつつ回転する定着フィルムと、定着フィルムを介してヒータとニップ部を形成する加圧ローラと、を有する。未定着トナー像を担持する記録材は定着器のニップ部で挟持搬送されつつ加熱され、これにより記録材の担持する未定着トナー像は記録材上に加熱定着される。この定着器は、ヒータへの通電を開始し定着可能温度まで昇温するのに要する時間(ウォームアップタイム)が短いというメリットを有する。従って、この定着器を搭載する画像形成装置は、プリント指令の入力後、1枚目の画像を出力するまでの時間(FPOT:First PrintOut Time)を短くできる。またこのタイプの定着器は、プリント指令を待つ待機中の消費電力が少ないというメリットもある。
特開平10−10893号公報 特開平11−15303号公報 特開2002−341686号公報
上記定着器の有する定着フィルムは、基層と、その基層の外周面上に設けられている弾性層と、その弾性層の外周面上に設けられている離型層と、を有する。この定着フィルムにおいて記録材が担持する未定着トナー像と接触する離型層には、PTFE、PFAなどのフッ素樹脂からなるチューブ、またはPTFE,PFAなどのフッ素樹脂の単体、若しくはブレンドでコーティングしたものを用いている。これらのフッ素樹脂からなる離型層は、電気的に絶縁であり、離型層表面が帯電した場合、なかなか減衰しない。低湿環境下で高速の画像形成装置を用いる場合、記録材後端がニップ部通過時に定着フィルムの離型層と剥離する瞬間に剥離放電が起きる。離型層が絶縁の場合、剥離放電による帯電跡が離型層表面で減衰せずに残ってしまう。この帯電跡が残ってしまうと、定着フィルムが一回転した後のニップ部中で帯電跡が記録材上の未定着トナーを静電的に剥ぎ取り、さらに定着フィルムが一回転した後の記録材上に吐き出す画像不良(剥離オフセット)を起こしてしまうことがある。
剥離オフセットを防止するために、定着フィルムの離型層に特開2002−341686号公報のように導電材料を添加する方法が考えられる。しかしフッ素樹脂に離型性の劣る不純物を混ぜてしまうと、定着フィルム表面の離型性即ち離型層の離型性が低下してしまう。紙を不透明にし、白色度を向上させる目的で紙に添加される添料として、近年多く使用されている炭酸カルシウムを含む記録材で長期の耐久を行った場合、離型層に紙から遊離した炭酸カルシウムが付着し、そこを基点にトナーなども付着してしまう。すると定着フィルム表面の離型性が悪化し、定着フィルムに汚れが蓄積し、オフセットなどの画像不良を発生させてしまうといった問題があった。またフッ素樹脂に不純物を混ぜてしまうため、耐磨耗性が低下し耐久性も低下してしまう可能性も考えられる。
本発明の目的は、フィルムの表層は剥離オフセット抑制と離型性を両立することができるようにした定着装置、及びその定着装置で用いられるフィルムを提供することにある。
上記目的を達成するための本発明に係る定着装置の構成は、
基層と、前記基層の外側に形成されたゴム層と、前記ゴム層の外側に形成された表層と、を有するフィルムと、
前記フィルムに接触する加圧部材と、
を備え、前記フィルムと前記加圧部材とが接触するニップ部でトナー像を担持した記録材を搬送しながら加熱しトナー像を記録材に定着する定着装置において、
前記表層は総面積が前記表層の表面積の1%以上40%以下を占める多数の穴を有し、前記表層上の電荷が前記穴から前記弾性層及び前記基層を介して電気的接地に至る導電経路が形成されていることを特徴とする。
記目的を達成するための本発明に係るフィルムの構成は、
基層と、前記基層の外側に形成されたゴム層と、前記ゴム層の外側に形成された表層と、を有するフィルムであって、ニップ部でトナー像を担持した記録材を搬送しながら加熱しトナー像を記録材に定着する定着装置で用いられるフィルムにおいて、
前記表層は総面積が前記表層の表面積の1%以上40%以下を占める多数の穴を有し、前記弾性層及び前記基層は、前記表層上の電荷が前記穴を介して電気的接地に至る導電経路の一部を形成していることを特徴とする。
本発明によれば、フィルムの表層は剥離オフセット抑制と離型性を両立することができるようにした定着装置、及びその定着装置で用いられるフィルの提供を実現できる。
本発明を図面に基づいて詳しく説明する。
[実施例]
(1)画像形成装置例
図11は本発明に係る加熱用回転体を具備する像加熱装置を加熱定着装置として搭載できる画像形成装置の一例の構成模型図である。この画像形成装置は電子写真方式のレーザープリンタであって、ホストコンピュータ等の外部装置(不図示)より入力する画像情報に応じた画像を記録材に形成する。
本実施例に示す画像形成装置は、外部装置からプリント指令を入力すると、像担持体としてのドラム形状の電子写真感光体(以下、感光ドラムと記す)51を矢印方向に所定の速度(プロセススピード)で回転駆動する。その感光ドラム51は感光ドラム51の外周面(表面)が帯電器52により所定の極性・電位に一様に帯電される。その感光ドラム51表面の帯電面に対して露光手段としてのレーザースキャナ53により画像情報の書き込みがなされる。レーザースキャナ53は、外部機器からプリンタに入力される画像情報の時系列電気デジタル画素信号に応じて変調されたレーザー光Lを出力する。そしてレーザースキャナ53はそのレーザー光Lにより感光ドラム51の帯電面を走査露光する。これにより、感光ドラム51表面に画像情報に応じた静電潜像が形成される。その静電潜像は現像器54によりトナー(現像剤)を用いてトナー画像(現像像)として現像される。感光ドラム51表面のトナー画像(以下、トナー像と記す)は感光ドラム51の回転によって感光ドラム51表面とこの感光ドラム51表面に対向して配置されている転写ローラ57の外周面(表面)との間の転写ニップ部に送られていく。
以上が画像形成部の構成である。
一方、給送カセット58のシート積載台58a上に積載されている記録材(転写用紙、OHPシート)Pは、所定の制御タイミングで駆動される給送ローラ59により一枚ずつピックアップされ、搬送ローラ60と搬送コロ60aとによりレジスト部へと送られる。レジスト部では、記録材Pの先端をレジストローラ61とレジストコロ61a間のニップ部で一旦受け止めて記録材Pの斜行矯正を行い、所定の搬送タイミングでその記録材Pを転写ニップ部へと給送する。即ち、レジスト部では、感光ドラム51表面のトナー像の先端部位が転写ニップ部に到達したとき、記録材Pの先端部位も転写ニップ部に到達するように記録材Pの搬送タイミングが制御される。
転写ニップ部に給送された記録材Pは感光ドラム51と転写ローラ57とにより挟持搬送される。そしてその記録材Pの搬送過程において転写ローラ57に印加される転写バイアスにより感光ドラム51表面のトナー像が記録材Pに転写され、記録材Pはそのトナー像を後述の加熱定着装置(定着器)62の定着フィルム10側の面上に担持する。転写ニップ部で未定着トナー像を担持した記録材Pは感光ドラム51表面から分離されて加熱定着装置62へと搬送される。
加熱定着装置62は、未定着トナー像を担持した記録材Pに後述のニップ部(定着ニップ部)Fで熱と圧力を付与することによって未定着トナー像を記録材Pに加熱定着し、その記録材Pをニップ部Fから排出する。
加熱定着装置62のニップ部Fから排出された記録材Pは中間排出ローラ63により排出ローラ64に搬送される。そして排出ローラ64がその記録材Pを排出トレイ65上に排出する。
記録材P分離後の感光ドラム51表面は、クリーナー55により転写残トナーが除去され、繰り返して作像に供される。
本実施例の画像形成装置は、感光ドラム51と帯電器52と現像器54とクリーナー55を一体化してプロセスカートリッジ56としている。そしてそのカートリッジ56はプリンタの筐体を構成する画像形成装置本体66に対して取り外し可能に装着されている。
画像形成装置本体66には冷却ファン67が設けられている。この冷却ファン67は、適宜回転され、外気をプリンタ本体66内に取り込んで画像形成部、電装基板等の昇温箇所を冷却する。冷却ファン67の近傍には、サーミスタ等の温度検知手段68が設けられ、冷却ファン16によって機外の空気を取り込んだ際に、画像形成装置が設置されている環境の温度を検知する。そして、その検知結果を加熱定着装置62の温度制御シーケンスにフィードバックしている。
給送カセット58のシート積載台58aにはサイズの異なる各種記録材を積載するための移動可能な規制ガイド(不図示)が設けられている。その規制ガイドを記録材Pのサイズに応じて変位させその記録材Pをシート積載台58a上に積載することによって、サイズの異なる各種記録材を給送カセット58から給送ローラ59により一枚ずつピックアップすることができる。
(2)加熱定着装置
以下の説明において、加熱定着装置及び加熱定着装置を構成する部材に関し、長手方向とは記録材の面において記録材搬送方向と直交する方向である。また長手方向とは後述する加熱用回転体の回転方向に直交する方向でもある。短手方向とは、記録材の面において記録材搬送方向と平行な方向である。幅とは短手方向の寸法である。また、記録材に関し、幅方向とは記録材の面において記録材搬送方向と直交する方向である。
図1は加熱定着装置62の一例の横断側面模型図である。図2は図1の加熱定着装置62を記録材Pの導入側から見た図である。図3は定着フィルム10の横断側面模型図である。図4は定着フィルム10の離型性層13の穴13hの説明図である。図5は定着フィルム10の離型性層13の穴13hとトナーの関係の説明図である。この加熱定着装置62は、加圧ローラ20を回転駆動し定着フィルム10を加圧ローラ20の搬送力により回転させる加圧ローラ駆動方式・フィルム加熱方式の所謂テンションレスタイプの装置である。
本実施例に示す加熱定着装置62は、加熱体としてのヒータ30と、加熱用回転体(可撓性部材)としての円筒状の定着フィルム10と、加熱体保持部材としてのヒータホルダー41と、剛性加圧部材としての加圧ステー42と、を有する。また、加熱定着装置62は、バックアップ部材としての加圧ローラ(加圧部材)20を有する。ヒータ30、定着フィルム10、ヒータホルダー41、加圧ステー42及び加圧ローラ20は、何れも長手方向に細長い部材である。
2−1)
定着フィルム10は、耐熱性と可撓性を有する材料によりエンドレスに形成されている基層11と、その基層11の外周面上に設けられているシリコーンゴムなどの弾性層12と、その弾性層12の外周面上に設けられている離型性層(表層)13と、を有する。
基層11として、ポリイミド、ポリアミドイミド、PEEK等の耐熱性樹脂により薄肉の可撓性を有するエンドレスベルトに形成したものを用いている。基層11の材料は耐熱性樹脂に限られずより熱伝導率の高いSUS、Ni等の薄肉金属を用いるほうがより好ましい。
弾性層12は、記録材Pの担持する未定着トナー像Tを包み込むことによって均一に熱を与えることができるため、記録材Pとトナー像Tとで形成される凹凸に追従し、ハーフトーン画像などでのガサツキを抑え、均一で十分な定着性を得るために必要である。また、弾性層12は、弾性層12の厚みが厚いほど記録材Pの担持するトナー像Tを包み込んで均一に記録材P面上に加熱定着させることができる。つまり、弾性層12の厚みが厚いほど未定着トナー像Tの包み込み効果を向上させることができる。しかし、弾性層12の厚みが厚すぎると熱容量が大きくなりすぎて定着フィルム10の立ち上がりが遅くなってしまい、フィルム加熱方式特有のオンデマンド性が低下してしまう。そのため弾性層12の厚みとしては50μm以上500μm以下としている。また、弾性層12の熱伝導度としては高いほど好ましく、0.5W/m・K以上であることが好ましく、かかる熱伝導度を達成するようにZnO、Al、SiC等の熱伝導性フィラーをシリコーンゴムに混入し、調整している。
上記弾性層12の外周面上には、離型性層(以下、離型層と記す)13として、フッ素樹脂であるパーフルオロアルコキシ樹脂(PFA)をコーティングしている。PFAは耐熱性、耐磨耗性に優れたフッ素樹脂であり、このPFAからなる離型層13の厚みは、耐久性の観点から5μm以上であることが必要である。また離型層13が厚すぎると、熱伝導度が下がってしまい定着性に悪影響を与えてしまうことから、30μm以下にする必要がある。以上に述べたように、耐久性と定着性を両立させるためには、離型層13の厚みとしては5μm以上30μm以下としている。
図4に示すように、離型層13の外周面(表面)全域には平均直径数μm程度の穴13hが無数にあいている。この穴13hは離型層13を厚み方向に貫通し弾性層12に通じている。離型層13に穴13hを形成するには、離型層13の厚み、PFAコーティングの焼成条件や、PFA塗料の粘度、PFA塗料の添加物の配合などを適正に調整することで、離型層13に均一な径、均一な分布の穴13hを得ることができる。また、この穴13hの平均径(=平均開口径)は、トナー像Tのトナーtが穴13hに入り込んで詰らないようにトナーtの平均粒径よりも小さいことが必要がある(図5の(a))。穴13hの平均径がトナーtの平均粒径よりも大きい場合には、図5の(b)に示すように穴13hにトナーtが詰まり、そこを基点にトナーtの蓄積が拡がり、定着フィルム汚れにいたる可能性がある。また、離型層13の全表面積における穴13hの総面積の割合を開口率と定義すると、開口率が小さ過ぎると剥離オフセットなどの画像不良になる場合がある。また開口率が大き過ぎると離型層13が削れやすくなり定着フィルム10の耐久性が悪化し、定着フィルム汚れに至りやすくなる。開口率についての詳細は後述する。
定着フィルム10において、定着フィルム10の外径は熱容量が抑えられるため小さい方が好ましい。しかしながら、外径を小さくしすぎるとニップ部Fの幅が細くなってしまうために極度に小さくすることはできない。弾性層12の厚みに関しても、上述したように薄すぎれば包み込み効果が低下し、厚すぎると熱容量が増え、立ち上がりが遅くなってしまうので適度な厚みが必要である。
従って、本実施例の定着フィルム10は、画像形成装置の速度(プロセススピード)等の条件を考慮し、基層11の材料にはSUSを用い、基層11の肉厚は35μm、基層11の内径は30mmとしている。弾性層12の膜厚は210μmとし、熱伝導率は1.3W/m・Kとしている。離型層13としては、PFAのコーティングを用い、離型層13の厚みは14μmである。
2−2)ヒータホルダー
ヒータホルダー41は、液晶ポリマー、フェノール樹脂、PPS、PEEK等の耐熱性樹脂により横断面半円形状樋型に形成されている。このヒータホルダー41は、熱伝導率が低いほどヒータ30により定着フィルム10内面を加熱するときの熱効率が高くなる。よってヒータホルダー41を形成する耐熱性樹脂中に中空のフィラー、例えばガラスバルーン、シリカバルーン等を内包してあっても良い。ヒータホルダー41の下面(加圧ローラ20側の面)には、ヒータホルダー41の長手方向に沿って凹溝41aが設けられている。そしてこの凹溝41aからヒータ30の後述する保護摺動層34が露出するように凹溝41aによりヒータ30の基板31を保持している。そしてそのヒータホルダー41の外周には定着フィルム10がルーズに外嵌されている。定着フィルム10が外嵌されたヒータホルダー41は、ヒータホルダー41の長手方向両端部が装置フレーム(不図示)に保持されている。
2−3)加圧ローラ
加圧ローラ20は、芯軸部23と、その芯軸部23の外周面上に設けられている弾性層22と、を有する。
芯軸部23は、アルミ、或いは鉄などの材料により丸軸状に形成されている。芯軸部23の材料はアルミ、或いは鉄などに限られず高強度、低熱容量で断熱効果の高いセラミック多孔質体を用いても良い。
弾性層22は、シリコーンゴム(ソリッドゴム層)、或いは断熱効果をもたせるためにシリコーンゴムを発泡して形成されたスポンジ層などからなる。弾性層22は、シリコーンゴム、或いはスポンジ層に限られずより断熱効果を持たせるためにシリコーンゴム層内に中空フィラーや、あるいは吸水性ポリマーおよび水を添加することで形成された多孔質を有する気泡ゴム層などでもよい。
この加圧ローラ20は、定着フィルム10の下方においてヒータホルダー41に保持されているヒータ30と並列に配置されている。そしてこの加圧ローラ20は、芯軸部23の長手方向両端部が上記装置フレームに回転自在に保持されている。
ところで、加圧ローラ20の熱容量が定着フィルム10よりも大きく、また加圧ローラ20の熱伝導率が少しでも大きいと、定着フィルム10表面から熱を吸収しやすくなり、定着フィルム10表面温度が上昇しにくくなる。従って加圧ローラ20においては、できるだけ低熱容量で熱伝導率が低く、断熱効果の高い材質(材料)を用いる方が、定着フィルム10表面温度の立ち上がり時間に有利である。しかし、高速の画像形成装置で記録材Pとして厚紙などをニップ部Fに通紙(導入)する場合には、加圧ローラ20の熱容量が小さ過ぎると、加圧ローラ20への蓄熱の効果が期待できず、加圧ローラ20の表面温度が低下してしまう。そのため、トナー像Tの厚紙への定着性が悪化してしまう。よって加圧ローラ20の熱容量は、画像形成装置のプロセススピードなどを考慮して決める必要がある。
比較的高速の画像形成装置に搭載される加熱定着装置62では、ニップ部Fにおいて適正なニップ幅が形成でき、かつ熱容量をある程度確保する必要があることから、肉厚が3.5mmのソリッドゴムを用いて弾性層22を形成した加圧ローラ20を使用した。そしてその加圧ローラ20の外径をφ30mmとしている。
2−4)ヒータ
図6はヒータ30の一例の構成模型図である。
ヒータ30は、定着フィルム10の内周面(基層11の内周面)と接触しながら定着フィルム10を急速加熱する板状発熱体である。このヒータ30は長手方向に細長い基板31を有する。基板31は、アルミナや窒化アルミ等の絶縁性のセラミックス基板、或いはポリイミド、PPS、液晶ポリマー等の耐熱性樹脂基板である。その基板31の表面(加圧ローラ20側の面)には、基板31の長手方向に沿って例えばAg/Pd(銀パラジウム)、RuO、TaN等の通電発熱抵抗層32がスクリーン印刷等により線状もしくは細帯状に塗工して形成してある。通電発熱抵抗層32は、厚み10μm程度、幅1〜5mm程度である。また、基板31の表面には、通電発熱抵抗層32に給電するための給電電極33,33が基板31の長手方向両端部の内側に設けられている。また、基板31の表面には、通電発熱抵抗層32の熱効率を損なわない範囲で通電発熱抵抗層32を保護する保護摺動層34を設けてあってもよい。ただし、保護摺動層34の厚みは十分薄く、通電発熱抵抗層32の表面性を良好にする程度が好ましい。保護摺動層34の例として、フッ素樹脂層を単独ないしは混合して通電発熱抵抗層32に被覆することが考えられる。フッ素樹脂としては、パーフルオロアルコキシ樹脂(PFA)、ポリテトラフルオロエチレン樹脂(PTFE)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン樹脂(FEP)、エチレンテトラフルオロエチレン樹脂(ETFE)等が用いられる。また、フッ素樹脂としては、ポリクロロトリフルオロエチレン樹脂(CTEF)、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)等が用いられる。また、保護摺動層34としては、グラファイト、ダイアモンド・ライク・カーボン(DLC)、二硫化モリブデン等からなる乾性被膜潤滑剤、ガラスコート等の保護摺動層が考えられる。
上記ヒータ30において、基板31として熱伝導性の良好な窒化アルミ等を使用する場合には、通電発熱抵抗層32は基板31の裏面(加圧ローラ20と反対側の面)に形成してあっても良い。
2−5)加圧ステー
加圧ステー42は剛性を有する金属等の材料により横断面下向きU字形状に形成してある。この加圧ステー42は、定着フィルム10の内側においてヒータホルダー41の上面(加圧ローラ20と反対側の面)の短手方向中央に配置されている。そして加圧ステー42は、加圧ステ42の長手方向両端部を加圧ばね等の加圧手段により加圧ローラ20の軸線に向けて付勢することによってヒータ30の基板31の表面を定着フィルム10を介して加圧ローラ20表面に加圧している。これにより加圧ローラ20の弾性層22が基板31に沿って弾性変形する。これによって加圧ローラ20表面と定着フィルム10表面との間にトナー像Tの加熱定着に必要な所定幅のニップ部(定着ニップ部)Fが形成される。

(3)加熱定着装置の加熱定着動作
制御手段としての回転駆動・温調制御部43は、プリント指令に応じて所定の回転駆動制御シーケンスを実行し、駆動源であるモータMを駆動して加圧ローラ20の芯軸部23の長手方向端部に設けられている駆動ギアGを回転させる。これにより加圧ローラ20は所定の周速度(プロセススピード)で矢印方向へ回転する。その際、ニップ部Fにおける加圧ローラ20表面と定着フィルム10表面との摩擦力によって定着フィルム10に加圧ローラ20の回転方向とは逆向きに回転する回転力が作用する。これにより、定着フィルム10は、定着フィルム10内面がヒータ30の保護摺動層34に接触しながらヒータホルダー41の外周を加圧ローラ20と略同じ周速度で矢印方向へ従動回転する。
また、回転駆動・温調制御部43は、プリント指令に応じて所定の温度制御シーケンスを実行し、電源37からヒータ30の給電電極33,33を通じて通電発熱抵抗層32に通電する。その通電により通電発熱抵抗層32が発熱しヒータ30は急速昇温して定着フィルム10を加熱する。ヒータ30の温度は基板31の裏面に設けられている温度検知手段としてのサーミスタ等の温度検知素子35により検知され、その温度検知素子35はヒータ30の温度検知信号を制御部43に出力する。この温度検知素子35は、ヒータ30の長手方向におけるニップ部Fの記録材搬送領域においてプリンタに使用可能な各種サイズの記録材Pが必ず通過する領域に配置されている。回転駆動・温調制御部43は、温度検知素子35から温度検知信号を取り込み、その温度検知信号に基づいてヒータ30が所定の温調温度(目標温度)を維持するように通電発熱抵抗層32への通電を制御する。つまり、回転駆動・温調制御部43は、温度検知素子35からの温度検知信号に基づきヒータ30が所定の温調温度を維持するように通電発熱抵抗層32に印加される電圧のデューティー比や波数などを適切に制御している。
加圧ローラ20及び定着フィルム10の回転が安定し、かつヒータ30の温度が所定の温調温度に維持された状態で、未定着トナー像Tを担持する記録材Pがニップ部Fの記録材搬送領域内に導入される。その記録材Pはニップ部Fで定着フィルム10表面と加圧ローラ20表面とにより挟持搬送される。その搬送過程において記録材Pにはヒータ30により加熱されている定着フィルム10の熱とニップ部Fの圧力が加えられ、その熱と圧力によってトナー像Tは記録材Pの面上に加熱定着される。
ここで、上記温度検知素子35は基板31の裏面に限られずSUSなどの板バネ(不図示)等の支持部材によって定着フィルム10内面に弾性的に接触させるようにしてもよい。
また、ヒータ30の基板31の裏面には、サーモスイッチ、温度ヒューズ等のサーモプロテクタ36が配置されている。サーモプロテクタ36の入力端子(不図示)は電源37と直列接続され、出力端子(不図示)はヒータ30の通電発熱抵抗層32に直列接続されている。これにより、ヒータ30が温度検知素子35の故障等により暴走状態になったときにヒータ30の異常昇温をサーモプロテクタ36が検出し、通電発熱抵抗層32への通電をシャットダウンする構成となっている。
(4)定着フィルムの離型層表面の開口率の説明
本実施例では、上述したように定着フィルム10の弾性層12の外周面上に、PFAの離型層13をコーティングさせている。そしてその離型層13表面の全域には離型層13の厚み方向に無数の穴13hが開いているが、この無数の穴13hの平均径(=平均開口径)が定着フィルム10表面の離型性に影響を与えている。図5の(b)に示すように、穴13hの開口径がトナーtの粒径よりも大き過ぎると、穴13hにトナーtや紙紛が詰まりやすくなり、これを基点にトナーtや紙紛などの付着が拡大し、定着フィルム10表面が汚れる原因になりやすい。穴13hの開口径がトナーtの粒径よりも小さければ、穴13hにトナーtが詰まることも無いため、定着フィルム10表面の汚れの基点になることもない。そのため離型層13表面の無数の穴13hの平均開口径はトナーtの粒径よりも小さいことが必要である。以下、離型層13表面の無数の穴13hの平均開口径を「離型層13表面の平均開口径」と記す。
本実施例で使用する画像形成装置のトナーtの平均粒径は6.0μmである。また、粒径の小さなトナー(=微粉)が多いと、現像時、感光ドラム51表面の非露光部にこの微紛が付着しやすくなってしまい、ハーフトーンのような画像が記録材P上に転写される画像不良(=カブリ)が悪化してしまう。このカブリを軽減させるために、4.0μm以下のトナーを微紛と定義し、この微紛が個数%で20%以下になるように分級処理をしている。
ここで、離型層13表面の平均開口径と定着フィルム汚れの関係を調べるために、離型層13表面の平均開口径が異なる定着フィルム10を組み込んだ複数の定着器を用意した。それぞれの定着器における定着フィルム10の離型層13表面の平均開口径は、それぞれ1μm、3μm、5μm、7μm、9μmである。また、各平均開口径1μm、3μm、5μm、7μm、9μmの定着フィルム10において、離型層13表面の開口径の分布を調べると正規分布をしている。また、各平均開口径1μm、3μm、5μm、7μm、9μmの定着フィルム10において、離型層13表面の開口径の標準偏差は約0.8であった。
この定着器を画像形成装置に搭載し、5万枚の耐久を行い、耐久後の画像を確認した。通紙耐久は、プロセススピード266mm/sec、1分間当り43枚の印字枚数(以下、43ppmと記す)の画像形成装置を用い、記録材は普通紙としてExtra80g(A4サイズ、坪量80g/m2)を用いた。
その結果を表1に示す。ここで表中の○、×について説明する。○は定着フィルム10の離型層13にほとんど汚れが無い、良好なレベルを示している。△は離型層13の汚れは軽微に発生しているが、画像には問題が無くOKレベルを示している。×は離型層13に汚れが付着し、画像不良が発生するNGレベルを示している。
離型層13表面の平均開口径がトナー粒径より十分小さい2μm、3μmでは、耐久後の離型層13表面に汚れはほとんどなく、画像不良もない良好な結果であった。これは、トナー粒径4μm以下の微紛の個数%が20%以下になるような分級処理をしているためである。そのため離型層13表面の平均開口径が3μm程度であれば、トナーtの大多数は離型層13表面の穴13hの開口径よりも大きいため、離型層13表面の穴13hに詰まるようなことは少ない。
離型層13表面の平均開口径がトナー平均粒径よりわずかに小さい4μmでは、離型層13表面の穴13hの開口径がトナー粒径よりも大きいものがある程度存在する。そのため、離型層13表面の穴13hに詰まったトナーを基点に定着フィルム10がわずかに汚れてしまった。しかし画像上に不良は見られず問題ないレベルであった。
離型層13表面の平均開口径がトナー平均粒径に近い値である5μm、6μmでは、離型層13表面の穴13hの開口径の分布とトナーtの分布を考慮すると、多くのトナーtが離型層13表面の穴13hの開口径よりも小さい。そのため、離型層13表面の穴13hにはトナーtが詰まりやすい。そのため耐久により、離型層13表面の穴13hに詰まったトナーtを基点に付着物の汚れは拡大し、定着フィルム汚れによる画像不良が発生してしまった。
次に離型層13表面の穴13hの開口径の分布が異なる定着フィルム10を準備し、上記と同様の実験を試みた。定着フィルム汚れの結果を表2に示す。
表2の結果より、離型層13表面の平均開口径が小さいほど離型層13表面の開口径の標準偏差がばらついても定着フィルム汚れには至らなかった。逆に離型層13表面の平均開口径が大きくなると離型層13表面の開口径の標準偏差が小さくても定着フィルム汚れは発生してしまうことが確認できる。
トナー粒径で個数%が20%以下に分級される粒径の閾値(本実施例では4μm)をr(<20%)とし、離型層13表面の平均開口径と離型層13表面の開口径の標準偏差をそれぞれμとσとする。すると、表1と表2より、定着フィルム汚れが良い結果(ランク:○)を得られたものは、下記の関係式を満足している。
μ+σ≦r(<20%)
この式は、離型層13表面の平均開口径μに離型層13表面の開口径の標準偏差σを足した値が、トナー分級の粒径閾値r(<20%)よりも小さい、又は等しいことを表している。本実施例の離型層13表面の開口径は、正規分布であるため、離型層13表面の平均開口径μより±σの領域内には、開口径の67%が存在する。つまりμ+σよりも大きい開口径は、(100−67)/2=16.5%存在する。またトナー分級の粒径閾値r(<20%)よりも小さいトナーは20%存在する。
図7はトナー粒径と離型層13表面の開口径の確率分布の説明図である。
図7において、(b)はμ+σ=r(<20%)の時の確率分布図である。この場合にはトナー粒径と離型層13表面の開口径の確率分布が重なり合う領域が36.5%(20%+16.5%)になっている。トナー粒径と離型層13表面の開口径の確率分布で重なりあう領域がこの程度ならば、定着フィルム汚れの結果は良好であることを示す。(a)はμ+σ<r(<20%)の時の確率分布図である。この場合はトナー粒径と離型層13表面の開口径の確率分布が(b)の重なり合う領域36.5%よりも小さい。つまり、離型層13表面の開口径がトナー粒径よりも大きい確率は(a)の場合よりもより小さく、定着フィルムが汚れにくいことを示している。(c)はμ+σ>r(<20%)の時の確率分布図である。この場合はトナー粒径と離型層13表面の開口径の確率分布が(b)の重なり合う領域36.5%よりも広くなっている。つまり、離型層13表面の開口径がトナー粒径よりも大きい確率は(a)の場合よりもより大きく、定着フィルムが汚れやすいことを示している。
次に、離型層13について前述のように定義した開口率の大小によっても定着フィルム10の性能が変わってくる。
図8は離型層13の開口率と定着フィルム10の性能との関係の説明図である。
図8の(a)に示すように離型層13の開口率が小さいと、トナーtや紙紛が詰まるような穴13hが少ないため、PFA特有の高い離型性を発揮することが可能である。そのため、耐久を通じて定着フィルム10は汚れにくい性能を有することができる。また離型層13は弾性層12を覆う膜としての強度も十分であるため、長期の耐久においても削れにくく弾性層12が露出するようなことは少ない。その一方で、何らかの理由で離型層13表面が帯電した場合、電荷eが離型層11から弾性層12に流れる経路が少ない。よって離型層13表面が帯電すると電位が減衰しにくい傾向を有する。一般的に、低温低湿環境下などで高速の画像形成装置で記録材Pをニップ部Fに通紙する場合、記録材P後端がニップ部F通過時に定着フィルム10と剥離する瞬間に剥離放電が起きる。ここで離型層13の開口率が低い場合、剥離オフセットが発生してしまうことがある。
次に図8の(b)に示すように離型層13の開口率が大きい場合を考える。離型層13の開口率が大きいと、離型層13表面上に帯電した電荷eが弾性層12に流れる経路が多いため、離型層13表面が帯電しても減衰しやすい傾向を有する。そのため剥離オフセットは発生しにくい。その一方で、離型層13の開口率が大きいと、離型層13の穴13h同士が近いため、穴13hに詰まった紙紛やトナーtなどが別の付着物によって繋がりやすく、耐久によって離型層13にトナーtなどの汚れが蓄積してしまう可能性がある。離型層13にトナーtなどの汚れが蓄積すると、その汚れが記録材に転移してしまい、画像不良になってしまう。
また離型層13の開口率が大きくなってくると、離型層13の膜としての強度が低下し、離型層13が削れやすくなってくる。そのため長期の通紙耐久を実施すると、離型層13が削れてしまい、弾性層13が露出することがある。こうなると弾性層13が露出した部分にトナーtなどが蓄積し、画像不良に至ることもある。
以上のように、離型層13の開口率が小さいと離型層13表面が帯電しやすくなり、離型層13の開口率が大きいと定着フィルム汚れや耐久性悪化を招きやすい傾向となる。
ここで、離型層13について前述のように定義した開口率を算出する場合の穴13hについて説明する。
図9は離型層13の開口率を算出する場合に穴13hとして做す窪みの一例を表わす説明図である。
離型層13の開口率を算出するときには、図9の(a)に示すような穴13hだけでなく、(b)に示すように離型層13が窪んでいる箇所13d1の面積も穴13hの面積に含ませて計算する必要がある。離型層13が窪んでいる箇所13d1は、見た目には穴が塞がっているが、その窪んでいる箇所13d1の離型層13の膜の下には穴13d2があいていて弾性層12に通じていることがあるからである。このような場合にも帯電電位の減衰に効果がある。また離型層13の窪んでいる箇所には、(c)に示すように弾性層12まで貫通していない窪んでいる個所13d3もある。その窪んでいる個所13d3は離型層13の窪んでいない箇所よりも離型層13の膜厚が薄い。離型層13の膜厚と離型層13の表面側の電位の関係は比例関係にあり、膜厚が薄いほうが、同じ電荷eを帯電した場合に、離型層13の表面側の電位は厚みに比例して低くなる。
ここで、離型層13の膜厚をd、離型層13の誘電率をεとする。離型層13の単位面積Sの表面側に帯電した電荷量をQ[C]、弾性層12側に帯電した電荷量を−Q[C]とすると、離型層13の表面側と弾性層12側に形成される平行電界E[V/m]は、ガウスの法則により次式で表される。
E=Q /εS
これより、離型層13の弾性層12側がGNDとすると離型層13の表面側の電位Vは次式となる。
V=Ed=dQ /εS
上記の式より表面電位Vは離型層13の膜厚dに比例するため、離型層13のうち窪んでいる個所は、ある電荷量を帯電しても、窪んでいない個所よりも電位は低く抑えられている。
このように、離型層13において、穴13hだけでなく窪み13d1,13d3も帯電電位の低下に効果があるため、開口率として数える必要がある。
離型層13の開口率と定着フィルム10の性能の関係を確認するために、異なる開口率を持つ離型層13を具備する定着フィルム10を組み込んだ複数の定着器を用意し、画像、離型性、耐久性を評価した。異なる開口率として0.5%、1%、3%、10%、30%、40%、50%を持つ離型層13を具備する定着フィルム10を用意した。この各定着フィルム10において、離型層13表面の平均開口径は約2μm、離型層13表面の開口径の標準偏差は約0.8である。上記の各定着フィルム10と比較する比較例1の定着フィルムとしては、離型層表面が開口率0%つまり穴の一切開いてない定着フィルムを用いている。また比較例2の定着フィルムとしては、離型層にイオン導電性の材料である有機リン塩を添加し、表面抵抗が1×10Ω/□程度に調整された定着フィルムを使用する。
上記各定着フィルム10の離型層13の開口率の測定方法として、下記の方法を用いた。即ち、KEYENCE社製電子顕微鏡VE−9800により定着フィルム表面を2400倍、加速電圧10kVで撮影し、離型層13表面の穴及び窪みの面積の割合から算出する方法を用いた。
上記の異なる各開口率を持つ離型層13を具備する定着フィルム10と、比較例1、比較例2の定着フィルムを使用した場合に、低温低湿環境で画像確認を行い、剥離オフセットが発生するか確認した。またその後、炭酸カルシウムを含む記録材で20万枚の通紙耐久を実施し、耐久後の定着フィルム汚れと、離型層の削れ具合を確認した。結果を表3に示す。
表中、剥離オフセットのランク○は発生せずに良好なレベルであることを示す。△はわずかに発生しているが、発生頻度も低く、問題にならないレベルであることを示す。×はレベルの悪いものが発生しNGであることを示す。
定着フィルム汚れのランクでは、○は良好な離型性を示している。△はわずかに離型層13に付着物あるが画像には出ずOKなレベルを示している。×は離型層13が汚れ画像不良にいたることを示している。
離型層の削れ具合(離型層の摩耗具合)によって確認できる耐久性のランクは、○は良好で問題ないレベルを示す。△は紙コバなど一部削れるが、搬送性や画像に影響ないレベルを示す。×は画像不良や搬送不良に至る削れが発生したことを示す。
低湿低温環境下での剥離オフセット評価の結果は、開口率が1%以上で問題ないレベルとなることがわかったが、より良好な画像を得るためには開口率3%以上である必要がある。比較例1のように、PFAのコーティングからなる離型層に穴が一切開いていない場合では、開口率0.5%以上に悪いレベルの剥離オフセットが発生してしまった。一方、比較例2では、離型層が適度な抵抗に調整されているために、剥離帯電による電荷eがすぐに減衰してしまうために、画像は良好であった。
次に20万枚の通紙耐久の結果から、定着フィルム汚れを確認したところ、開口率40%以上で問題ないレベルであったが、開口率30%以上では特に良好な離型性を維持していた。比較例1では、開口率が0%であるために良好な離型性を保てていた。しかし比較例2では、開口率こそ0%であるものの、離型層のPFAに不純物(有機リン塩)が添加されているため、離型層が純粋なPFAからなるものよりも離型性が劣る。そして炭酸カルシウムが含まれている記録材で耐久を行ったため、炭酸カルシウムが離型層の不純物に付着し、そこからトナーが連鎖的に付着し画像不良に至ってしまった。
次に耐久後の離型層13の磨耗具合を確認した。開口率30%程度でOKであったが、開口率30%以下のものでは特に良好な耐久性であった。開口率50%のものは、紙コバ周辺から拡がった離型層13の削れが、画像領域まで至ってしまっていた。この削れた領域にトナーが蓄積してしまい、画像不良を起こしてしまった。比較例1では、開口率が低いものと同様に良好な耐久性を示した。また比較例2においては、離型層に不純物(有機リン塩)が添加されているため、特に紙コバ付近の離型層が磨耗しており、離型性が低下してしまった。そのため紙コバ付近にトナーなどによる汚れが付着してしまい、画像不良に至ってしまった。
以上の結果から、開口率1%以上40%以下の定着フィルム10であれば、比較例1、比較例2では同時に達成は困難であった低温低湿環境下での剥離オフセット、長期耐久による定着フィルム汚れの防止や耐久性維持を同時に達成することが出来た。より好ましくは開口率3%以上30%以下の定着フィルム10であれば、比較例1、比較例2では同時に達成は困難であった低温低湿環境下での剥離オフセット、長期耐久による定着フィルム汚れの防止や耐久性維持を同時により確実に達成することが出来た。
[実施例2]
加熱定着装置の他の例を説明する。
本実施例に示す加熱定着装置は、実施例1の加熱定着装置62の定着フィルム10と異なる構成の定着フィルムを有する点を除いて、実施例1の加熱定着装置62と同じ構成としてある。本実施例では、説明の簡略化のため、実施例1の加熱定着装置62と同じ部材・部分には同じ符号を付して再度の説明を省略する。
図10は本実施例の加熱定着装置62における定着フィルム10表面の離型層13の中央領域Aと端部領域Bを表わす図である。
本実施例の加熱定着装置62の定着フィルム10は、定着フィルム10の長手方向において離型層13表面の中央領域Aと端部領域Bで開口率が異なることを特徴する。離型層13表面の中央領域Aとは記録材Pが担持するトナー像Tの最大印字領域と対応する領域であり、端部領域Bとはその記録材Pが担持するトナー像Tの最大印字領域よりも外側の領域である。
本実施例の加熱定着装置62は、実施例1の画像形成装置よりも更に高速の画像形成装置に搭載される。より高速な画像形成装置として、例えばプロセススピード311mm/sec、52ppmの画像形成装置に本実施例の加熱定着装置62を搭載する。そしてその画像形成装置で小サイズの記録材(転写紙)を大サイズの記録材(転写紙)と同じプリント間隔で連続プリントすると、ヒータ30の記録材が通過しない領域(非通紙領域)が過度に昇温(所謂、非通紙部昇温)してしまう。定着フィルム10はその非通紙部昇温により紙コバ付近における離型層13の磨耗は悪化する。紙コバ付近とは図10に示される記録材Pの幅方向において記録材Pが担持するトナー像Tの最大印字領域よりも外側の非印字領域と対応する領域である。より高速の画像形成装置に搭載される加熱定着装置62において定着フィルム10の離型層13の摩耗を低減し耐久性を維持するためには、離型層13の開口率を低めの10%以下に設定する必要がある。
その一方で、プロセススピードが高速化することにより、記録材Pが定着フィルム10と剥離する瞬間の剥離放電は強くなり、剥離オフセットが発生しやすい条件になる。剥離オフセットを抑制するためには、剥離放電による帯電跡の電位がより急速に減衰させることが必要である。そのため印字領域における定着フィルム10の離型層13の開口率の値は、比較的高めの5%以上に設定しなければならない。
離型層13の開口率と定着フィルム10の性能の関係を確認するために、異なる開口率を持つ離型層13を具備する定着フィルム10を組み込んだ複数の定着器を用意し、画像、離型性、耐久性を評価した。異なる開口率として3%、5%、10%、20%、30%、40%、50%を持つ離型層13を具備する定着フィルム10を用意した。ただし、離型層13表面の開口径の標準偏差は約0.8である。
上記各定着フィルム10表面の離型層13の開口率の測定方法は、実施例1と同じ方法を用いた。結果を表4に示す。
表中、剥離オフセットにおけるランク○、△、×のレベルはそれぞれ実施例1の表3と同じである。また定着フィルム汚れのランク○、△、×のレベルもそれぞれ実施例1の表3と同じである。また耐久性のランク○、×のレベルもそれぞれ実施例1の表3と同じである。
表4に示すように、定着フィルム10の離型層13について耐久性の維持と剥離オフセットの防止という離型層13の開口率に求める要求が相反し、離型層13の開口率の設定可能な範囲が5〜10%と狭い場合がある。このような場合、定着フィルム10の量産時のバラツキなどを考慮すると、離型層13の開口率を安定して5〜10%の要求範囲内で定着フィルム10を生産することが困難である。
そこで本実施例では、定着フィルム10の離型層13表面の中央領域Aと端部領域Bで意図的に離型層13の開口率を変えている。より具体的には、図10に示すように、定着フィルム10において離型層13の磨耗が激しい端部領域Bでは開口率の10%以下とし、また剥離放電の帯電跡を急速に減衰させたい中央領域Aでは開口率を5〜30%の範囲に設定している。中央領域Aで開口率の数字を30%以上にしてしまうと定着フィルム10表面がトナーtなどで汚れてしまうのは実施例1と同様である。
定着フィルム10の中央領域Aと端部領域Bで離型層13の開口率を変える方法としては、離型層13の厚みや、PFAコーティングの焼成条件や、PFA塗料の添加物の配合などを、中央領域Aと端部領域Bで変えることで実現できる。例えば離型層13の厚みで調整する方法では、離型層13の厚みが厚いほど開口率が小さくなる。そのため端部領域Bの離型層13の厚みを中央領域Aよりも厚くすることにより、中央領域Aと端部領域Bで離型層13の開口率を異なったものにすることが可能となる。
このように定着フィルム10の中央領域Aと端部領域Bで離型層13の開口率を変える事により、定着フィルム10の量産時のバラツキを考慮しても、中央領域Aと端部領域Bでそれぞれにゆとりのある範囲で所望の開口率に設定することが可能となる。従って、本実施例の定着フィルム10を用いれば、実施例1の定着フィルム10と同様、低温低湿環境下での剥離オフセット、長期耐久による定着フィルム汚れの防止や耐久性維持を同時に達成することが出来る。
実施例1、2の加熱定着装置62において、加熱定着装置62を構成する部材について記載した寸法はその記載の寸法に限られず実際の製品に応じて適宜変更されるものである。
[他の実施例]
実施例1、2のフィルム加熱方式の加熱定着装置62は、エンドレスベルト状のフィルムをテンションを与えて懸回張設し、これを回転駆動させる装置構成にすることもできる。また、ロール巻にした長尺の有端フィルムを用い、これを張り出し軸側から加熱体を経由させて巻き取り軸側へ所定の速度で走行させるように装置構成することもできる。
また、実施例1、2のフィルム加熱方式の加熱定着装置62は、未定着トナー像Tを記録材Pに加熱定着させる装置としての使用に限られるものではない。例えば、記録材に定着されている画像を加熱することにより画像の光沢を増大させる像加熱装置としても使用することができる。或いは記録材に定着されている画像を加熱することにより画像を記録材に仮定着処理する像加熱装置としても使用することができる。
実施例1に係る加熱定着装置の一例の横断側面模型図 実施例1に係る加熱定着装置を記録材の導入側から見た図 定着フィルムの横断側面模型図 定着フィルムの離型性層の穴の説明図 定着フィルムの離型性層の穴とトナーの関係の説明図 ヒータの一例の構成模型図 トナー粒径と離型層表面の開口径の確率分布の説明図 離型層の開口率と定着フィルムの性能との関係の説明図 離型層の開口率を算出する場合に穴として做す窪みの一例を表わす説明図 実施例2に係る加熱定着装置における定着フィルムの中央領域と端部領域を表わす図 画像形成装置の一例の構成模型図
符号の説明
10‥‥定着フィルム、11・・・・基層、12・・・・弾性層、13・・・・離型層、20‥‥加圧ローラ、30・・・・ヒータ、T・・・・未定着トナー画像、t・・・・トナー

Claims (7)

  1. 基層と、前記基層の外側に形成されたゴム層と、前記ゴム層の外側に形成された表層と、を有するフィルムと、
    前記フィルムに接触する加圧部材と、
    を備え、前記フィルムと前記加圧部材とが接触するニップ部でトナー像を担持した記録材を搬送しながら加熱しトナー像を記録材に定着する定着装置において、
    前記表層は総面積が前記表層の表面積の1%以上40%以下を占める多数の穴を有し、前記表層上の電荷が前記穴から前記弾性層及び前記基層を介して電気的接地に至る導電経路が形成されていることを特徴とする定着装置。
  2. 前記表層は、導電材料を含有しないフッ素樹脂で形成されていることを特徴とする請求項1に記載の定着装置。
  3. 前記基層は金属で形成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の定着装置。
  4. 前記フィルムの内面に接触するヒータを有し、前記ヒータは前記フィルムを介して前記加圧部材と共に前記ニップ部を形成することを特徴とする請求項1乃至請求項の何れか1項に記載の定着装置。
  5. 基層と、前記基層の外側に形成されたゴム層と、前記ゴム層の外側に形成された表層と、を有するフィルムであって、ニップ部でトナー像を担持した記録材を搬送しながら加熱しトナー像を記録材に定着する定着装置で用いられるフィルムにおいて、
    前記表層は総面積が前記表層の表面積の1%以上40%以下を占める多数の穴を有し、前記弾性層及び前記基層は、前記表層上の電荷が前記穴を介して電気的接地に至る導電経路の一部を形成していることを特徴とするフィルム。
  6. 前記表層は、導電材料を含有しないフッ素樹脂で形成されていることを特徴とする請求項に記載のフィルム。
  7. 前記基層は金属で形成されていることを特徴とする請求項又は請求項に記載のフィルム。
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