JP2015090469A - 画像加熱装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】無端ベルトの降伏電圧を認識し、無端ベルトへのバイアス電圧の印加による電流のリークを防ぎつつ、尾引きを改善することができる画像加熱装置を提供する。
【解決手段】無端ベルトを備えた加熱回転体と、前記無端ベルトと接触して、トナーを用いたトナー像が形成された記録材を挟持搬送しつつ加熱するニップ部を形成する加圧体と、前記無端ベルトに前記トナーと同極性で絶対値が異なる複数のバイアス電圧を印加する印加手段と、前記複数のバイアス電圧を印加したときの前記無端ベルトの電気的情報を夫々検知する検知手段と、前記検知手段より得られる前記無端ベルトの降伏電圧に対し、絶対値が前記降伏電圧の絶対値を超えない範囲で最大となるバイアス電圧を決定する決定手段と、を有する。
【選択図】図1
【解決手段】無端ベルトを備えた加熱回転体と、前記無端ベルトと接触して、トナーを用いたトナー像が形成された記録材を挟持搬送しつつ加熱するニップ部を形成する加圧体と、前記無端ベルトに前記トナーと同極性で絶対値が異なる複数のバイアス電圧を印加する印加手段と、前記複数のバイアス電圧を印加したときの前記無端ベルトの電気的情報を夫々検知する検知手段と、前記検知手段より得られる前記無端ベルトの降伏電圧に対し、絶対値が前記降伏電圧の絶対値を超えない範囲で最大となるバイアス電圧を決定する決定手段と、を有する。
【選択図】図1
Description
本発明は、画像加熱装置に関し、電子写真複写機や電子写真プリンタ等の画像形成装置に好適なものである。画像加熱装置としては、記録材上に形成した未定着トナー画像を固着画像として加熱定着する定着装置や、記録材に定着された画像を加熱することにより画像の光沢度を増大させる光沢度増大装置等を挙げることができる。
画像形成装置に搭載される画像加熱装置としての定着装置として、フィルム加熱方式が知られる。このようなフィルム加熱方式の定着装置は、高耐熱性の筒状の無端ベルトとしてのフィルムを有する。更に、フィルムの内面と接触するセラミックヒータ(以下、ヒータと記す)と、フィルムを介してヒータと共にニップ部を形成する加圧ローラを有する。そして、ニップ部でトナー像を担持した記録材を搬送しながら加熱しトナー像を記録材に定着する。フィルム加熱方式の定着装置で用いるヒータ及びフィルムは低熱容量なので、省電力化及びウェイトタイム短縮化(クイックスタート)が可能になるという長所がある。
ここで、上記の定着装置においては、「尾引き」と呼ばれる画像不良が発生することがあった。尾引きとは、吸湿量の多い記録材を加熱定着した場合において、記録材中より噴出した水蒸気によって、記録材の搬送方向と反対方向にトナー像を飛散させる現象である。このような尾引き対策として、特許文献1にはフィルムにトナーと同極性のバイアスを印加(以下、フィルムバイアスと記す)して、トナーが紙に吸着される方向の電界を形成する手法が開示されている。この電界によりトナーが紙に抑えつけられ、その結果、水蒸気によるトナー像の飛び散りが低減する。
また、上記の定着装置においては、「剥離オフセット」と呼ばれる問題もある。剥離オフセットとは、記録材の後端がニップ部を抜ける際の剥離帯電によって、フィルム表面が局所的にトナーと逆極性で強く帯電し、それによってその帯電領域が記録材に対向した時にフィルムにトナーが引きつけられる電界が形成されて発生するものである。この剥離オフセットに対しては、剥離オフセットを改善できる定着フィルムが知られている。
この定着フィルムの特徴は、フィルムに印加する電位が一定の値を超えると厚み方向の抵抗値Rが急激に下がるという特性を有している(なお、この厚み方向の抵抗値Rが急激に下がる電位となる印加電圧を降伏電圧という)。この定着フィルムを用いた場合、もし、定着フィルムに剥離帯電領域が形成された場合でも、剥離帯電電荷を素早く減衰させることができるため、剥離オフセットを改善することができる。
このような無端ベルトとしての定着フィルムを使用する場合、フィルムバイアスの設定値には注意が必要である。上述した尾引きを改善するためには、大きな電界の力が必要になる。フィルムバイアスが小さい場合、上述の電界の力が弱まり、尾引きを十分に改善できない。従って、印加するフィルムバイアス値は、なるべく大きい方が望ましい。しかし一方で、もし降伏電圧を超えた電圧値を、フィルムバイアスとして印加してしまった場合、定着フィルムを介して電流がリークしてしまい、いくつかの画像不良が発生する。
即ち、降伏電圧を超えた電圧値をフィルムバイアスとして印加した場合の電流リークによる1つ目の画像不良は、定着工程における静電気的な要因によるオフセットである。上記の定着装置においては、加圧ローラの表面に紙粉やトナーが付着するのを抑制するために、加圧ローラの表層として高抵抗のフッ素樹脂層を用いることが多い。このとき、上記フィルムバイアスによる電荷が定着フィルムを介してリークすると、加圧ローラをトナーと同極性に帯電させる(以下、チャージアップと記す)場合がある。
その結果、ニップ部で記録材が担持していた未定着トナーが静電的な力で引き剥がされフィルムに付着し、次の周回で画像として現れるオフセット(以下、全面オフセットと記す)が発生する。また、降伏電圧を超えた電圧値をフィルムバイアスとして印加した場合の電流リークによる2つ目の画像不良は、転写工程における画像の乱れである。リークした電流が記録材を介して転写部材に流入し、転写電圧が低下し転写不良を引き起こす。
ここで、印加する電圧値として超えることが好ましくない上記降伏電圧は、いくつかの要因によって影響を受け、さまざまな電圧値にシフトする。先ず第一には、降伏電圧は定着フィルムを構成する材料の様々なバラツキにより影響を受ける。例えば、定着フィルムを構成する弾性層の厚さが挙げられる。弾性層の厚さが薄いほど降伏電圧は低く、また弾性層の厚さが厚いほど降伏電圧は高くなる傾向がある。またその他にも、弾性層に添加する熱伝導フィラーの入れ目量や、表層に添加する導電剤の入れ目量のバラツキによっても、降伏電圧は上下する。
降伏電圧のシフトに関して、第二には、降伏電圧は周囲の温度や湿度の影響を受け、温度、湿度が高いほど降伏電圧は低い側にシフトする。更に降伏電圧のシフトに関して、第三には、降伏電圧は定着フィルムの耐久度合いによる影響を受ける。耐久が進むにつれて、降伏電圧は高い側にシフトする。その理由は、表層に添加した導電剤が削り取られてしまうためである。
このようにフィルムバイアスは定着フィルムの降伏電圧値以下で、なるべく大きな電圧値に設定することが望ましいが、従来の手法ではフィルムのバラツキや環境、耐久度合いで変化する定着フィルムの降伏電圧を検知することができなかった。その結果、最適なフィルムバイアス電圧値を設定することができず、フィルムの降伏電圧がシフトした場合に、尾引きとフィルムバイアス印加による電流リークの画像問題(全面オフセット、転写不良)を両立することができなかった。
本発明の目的は、無端ベルトの降伏電圧を認識し、無端ベルトへのバイアス電圧の印加による電流のリークを防ぎつつ、尾引きを改善することができる画像加熱装置を提供することにある。
上記目的を達成するために本発明の画像加熱装置は、無端ベルトを備えた加熱回転体と、前記無端ベルトと接触して、トナーを用いたトナー像が形成された記録材を挟持搬送しつつ加熱するニップ部を形成する加圧体と、前記無端ベルトに前記トナーと同極性で絶対値が異なる複数のバイアス電圧を印加する印加手段と、前記複数のバイアス電圧を印加したときの前記無端ベルトの電気的情報を夫々検知する検知手段と、前記検知手段より得られる前記無端ベルトの降伏電圧に対し、絶対値が前記降伏電圧の絶対値を超えない範囲で最大となるバイアス電圧を決定する決定手段と、を有することを特徴とする。
本発明によれば、無端ベルトの降伏電圧を認識し、無端ベルトへのバイアス電圧の印加による電流のリークを防ぎつつ、尾引きを改善することができる。
《第1の実施形態》
以下に図面を用いて、本発明を実施するための好ましい形態を例示的に詳しく説明する。
以下に図面を用いて、本発明を実施するための好ましい形態を例示的に詳しく説明する。
(画像形成装置)
本発明の実施形態に係る画像加熱装置を搭載した画像形成装置について、図2を用いて説明する。この画像形成装置は、記録材P上にトナー画像を形成する画像形成部Aと、画像形成部Aに記録材を送り出す記録材送り部Bと、記録材上のトナー画像を記録材Pに加熱定着する画像加熱装置としての定着部Cを有している。
本発明の実施形態に係る画像加熱装置を搭載した画像形成装置について、図2を用いて説明する。この画像形成装置は、記録材P上にトナー画像を形成する画像形成部Aと、画像形成部Aに記録材を送り出す記録材送り部Bと、記録材上のトナー画像を記録材Pに加熱定着する画像加熱装置としての定着部Cを有している。
画像形成部Aは、像担持体としてドラム型の電子写真感光体(以下、感光ドラムと記す)1を有している。この感光ドラム1は、画像形成装置の筺体を構成する画像形成装置本体(以下、装置本体と記す)Mに回転自在に支持されている。感光ドラム1の外周面の周囲には、その回転方向に沿って順に、帯電ローラ2と、レーザースキャナ3と、現像装置4と、転写ローラ5と、クリーニング装置6が配設されている。
記録材送り部Bは、送り出しローラ11を有しており、送り出しローラ11は不図示の搬送駆動モータによって反時計方向に所定のタイミングで回転される。そして、カセット7に積載収納されている記録材Pの搬送経路に沿って順に、トップセンサ9と、搬送ガイド10と、定着部(定着装置と記す)C、搬送ローラ12と、排出ローラ13と、排出トレイ14が配設されている。
本実施形態に係る画像加熱装置を搭載した画像形成装置は、画像形成部Aと記録材送り部Bと定着装置C等を制御する制御部(制御手段31)を有している。制御部31はCPUとROMやRAM等のメモリから成り、メモリには画像形成に必要な各種プログラムが記憶されている。この制御部31は、ホストコンピュータ等の外部装置からプリント信号を取り込み、そのプリント信号に基づいて所定の画像形成制御シーケンスを実行する。
これにより、ドラムモータが回転駆動され、感光ドラム1は所定の周速度(プロセススピード)で矢印方向に回転する。回転された感光ドラム1の表面は、帯電ローラ2によって、トナーと同極性(ここではマイナス極性)の所定の電位に一様に帯電される。この感光ドラム1の表面である帯電面に対し、レーザースキャナ3が画像情報に基づいてレーザー光Lを走査し、感光ドラム1の表面を露光する。
そして、この露光によって露光部分の電荷が除去され、感光ドラム1の表面に静電潜像が形成される。現像装置4は、現像ローラ41と、トナーを収納するトナー容器42等を有している。トナーはブレード等の部材により摩擦され、所定の極性に帯電される。本実施形態では、マイナス極性に帯電されたトナーを用いている。この現像装置4は、現像ローラ41に現像バイアス電源(不図示)によりマイナスバイアスが印加されることによって、感光ドラム1表面の静電潜像に、電位差を利用してトナーを付着させ、静電潜像をトナー画像Tとして現像する。
感光ドラム1の表面に形成されたトナー画像Tは、トナーと逆極性であるプラスバイアスを転写ローラ5に印加することによって、転写バイアスによる電位差を利用して記録材Pに転写される。また、記録送り部材Bに設けられている搬送駆動モータが回転駆動され、送り出しローラ11はカセット7から記録材Pを搬送ローラ8に送り出す。この記録材Pは搬送ローラ8によって搬送され、トップセンサ9を通過して感光ドラム1の表面と転写ローラ5の外周面との間の転写ニップ部に搬送される。
そして、記録材Pはトップセンサ9によって先端が検知される。感光ドラム1の表面に形成されたトナー画像Tが転写された記録材Pは、搬送ガイド10に沿って定着装置Cに搬送される。この定着装置Cでは、記録材P上のトナー画像Tが加熱および加圧されて記録材P上に加熱定着される。そして、トナー画像Tが加熱定着された記録材Pは、搬送ローラ12、排出ローラ13の順に搬送されて、装置本体M上面の排出トレイ14に排出される。
トナー画像を記録材Pに転写した後の感光ドラム1表面に残留している転写残トナーは、クリーニング装置6のクリーニングブレード61によって除去され、クリーニング装置6内に蓄積される。以上の動作を繰り返すことで、順次プリントを行うようになっている。本実施形態に係る画像加熱装置を搭載した画像形成装置は、A4サイズの場合、60枚/分のプリント速度でプリントを行うことができる。
(画像加熱装置)
図1(a)は、本実施形態に係る画像加熱装置としての定着装置Cの横断側面図である。定着装置Cは、加熱体としてのセラミックヒータ20と、加熱回転体としての無端ベルト(エンドレスベルト)である定着フィルム(以下、フィルム)25と、加圧回転体としての加圧ローラ26を基本構成として備える。そして、本実施形態に係る画像加熱装置の特徴的な構成として、フィルム25にバイアスを印加するバイアス印加手段50を有している。
図1(a)は、本実施形態に係る画像加熱装置としての定着装置Cの横断側面図である。定着装置Cは、加熱体としてのセラミックヒータ20と、加熱回転体としての無端ベルト(エンドレスベルト)である定着フィルム(以下、フィルム)25と、加圧回転体としての加圧ローラ26を基本構成として備える。そして、本実施形態に係る画像加熱装置の特徴的な構成として、フィルム25にバイアスを印加するバイアス印加手段50を有している。
a)ヒータ
図1(a)で、セラミックスヒータ20は、窒化アルミニウム、アルミナ等からなる細長い耐熱性のヒータ基板21を有している。そして、このヒータ基板21の表面に、通電により発熱する通電発熱抵抗層としての抵抗体パターン22を、例えば印刷によってヒータ基板21の長手方向に沿って形成している。更に、その抵抗体パターン22の表面を保護層としてのガラス層23で被覆している。また、ヒータ基板21の裏面(定着ニップ部Nと反対側の面)には、ヒータ20の温度を検知する温度検知部材としてのサーミスタ24が配設されている。
図1(a)で、セラミックスヒータ20は、窒化アルミニウム、アルミナ等からなる細長い耐熱性のヒータ基板21を有している。そして、このヒータ基板21の表面に、通電により発熱する通電発熱抵抗層としての抵抗体パターン22を、例えば印刷によってヒータ基板21の長手方向に沿って形成している。更に、その抵抗体パターン22の表面を保護層としてのガラス層23で被覆している。また、ヒータ基板21の裏面(定着ニップ部Nと反対側の面)には、ヒータ20の温度を検知する温度検知部材としてのサーミスタ24が配設されている。
ヒータホルダ29は、ヒータ20を支持する支持部材として作用するとともに、定着スリーブ25の回転をガイドするガイド部材としても作用する。ヒータホルダ29の材料としては、液晶ポリマー、フェノール樹脂、PPS、PEEK等の耐熱性樹脂が用いられる。
b)加圧ローラ
加圧体としての加圧ローラ26は、芯軸部261の外周に弾性層262を有し、弾性層262の外周に表層263を有している。加圧ローラ26の外径は、約30mmである。芯軸部261には、アルミニウム、鉄などの金属材料が中実もしくは中空で用いられる。本実施形態では、中実のアルミニウムを芯金材料として用いている。弾性層262は、断熱性のシリコーンゴムから成り、カーボン等の電気伝導材を添加することで導電性としている。弾性層262は、カーボンを適量添加し、体積抵抗率を1×105(Ω・cm)程度に調整したシリコーンゴムから成り、その厚みを3mmとしている。
加圧体としての加圧ローラ26は、芯軸部261の外周に弾性層262を有し、弾性層262の外周に表層263を有している。加圧ローラ26の外径は、約30mmである。芯軸部261には、アルミニウム、鉄などの金属材料が中実もしくは中空で用いられる。本実施形態では、中実のアルミニウムを芯金材料として用いている。弾性層262は、断熱性のシリコーンゴムから成り、カーボン等の電気伝導材を添加することで導電性としている。弾性層262は、カーボンを適量添加し、体積抵抗率を1×105(Ω・cm)程度に調整したシリコーンゴムから成り、その厚みを3mmとしている。
表層263は、PFA、PTFE、FEP等のフッ素樹脂からなる厚さ10〜80umの離型性チューブである。ここで、PFAはテトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、PTFEはポリテトラフルオロエチレン(4フッ化)、FEPはテトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(4,6フッ化)の略称である。
本実施形態では、加圧ローラ26の表層263の材料を絶縁のフッ素樹脂(厚さ30μmのピュアのPFAチューブ)としている。従って、加圧ローラ26の体積抵抗率は1×1014(Ω・cm)以上と高抵抗である。ピュアのフッ素樹脂を用いた理由は、表層263に抵抗を下げるカーボン等を添加すると、表面の平滑性が低下しトナーや紙粉で汚れる現象(コンタミネーション)が発生する場合があるためである。
c)定着フィルム
加熱回転体である無端ベルト(エンドレスベルト)としての耐熱性のフィルム25は、直径30mmの円筒形状である。フィルム25は可撓性を有し、半円弧状のフィルムガイド部材としてのヒータホルダ29に対してルーズに外嵌されている。フィルム25の層構造は、図3の円内に示すように、内側から基層251、弾性層252、表層253が設けられた複層からなる。基層251の材料としては、熱伝導性と耐久性を高めるためにSUS、Ni等の薄肉金属を用いている。なお、その他の材料として、ポリイミド、ポリアミドイミド、PEEK、PES等の低熱容量の耐熱性樹脂材料を用いることもできる。
加熱回転体である無端ベルト(エンドレスベルト)としての耐熱性のフィルム25は、直径30mmの円筒形状である。フィルム25は可撓性を有し、半円弧状のフィルムガイド部材としてのヒータホルダ29に対してルーズに外嵌されている。フィルム25の層構造は、図3の円内に示すように、内側から基層251、弾性層252、表層253が設けられた複層からなる。基層251の材料としては、熱伝導性と耐久性を高めるためにSUS、Ni等の薄肉金属を用いている。なお、その他の材料として、ポリイミド、ポリアミドイミド、PEEK、PES等の低熱容量の耐熱性樹脂材料を用いることもできる。
図3で、基層251は熱容量を小さくしてクイックスタート性を満足させると同時に、機械的強度も満足させる必要があるため、厚みは15μm以上50μm以下とすることが望ましい。本実施形態の基層251は、厚み35μmの円筒形のステンレス(SUS)素管とした。また、弾性層252はシリコーンゴムを材料として形成した。
この弾性層252を設けることで、トナー画像Tを包み込み、均一に熱を与えることができるようになるため、光沢度が高くてムラのない良質な画像を得ることが可能になる。また、弾性層252はシリコーンゴム単体では熱伝導性が低いため、熱伝導性フィラーを添加する。弾性層252の熱伝導率としては1.2W/mk程度を確保すると良い。熱伝導フィラーの候補として、アルミナ、金属ケイ素、炭化ケイ素、酸化亜鉛等が挙げられる。
しかし、このうち、後述するような剥離オフセットと全面オフセット(静電オフセット)という問題の解決を両立できるような定着スリーブ25の特性を実現するためには、金属ケイ素、炭化ケイ素、酸化亜鉛のうち少なくとも一つを含む層とする必要がある。本実施形態においては、弾性層252にゴム材であるジメチルポリシロキサン100重量部に対して、熱伝導性フィラーである金属ケイ素を400重量部含有し、その熱伝導率を1.2W/mkとしている。また、弾性層252の厚さを240μmとしている。
図3で、表層253は、離型層として高い耐摩耗性およびトナーに対する高い離型性が要求される。材料としては、上述のPFA、PTFE、FEP等のフッ素樹脂が用いられる。そして、そのフッ素樹脂に有機リン化合物、リチウム塩等のイオン導電剤や五酸化アンチモン、酸化チタン、カーボンブラック、カーボンナノファイバー等の導電性添加剤(電子導電材)を添加して抵抗値を調整する。また、厚さは10μmから50μm程度であることが好ましく、チューブを被覆させたものであっても、表面を塗料でコートしたものであっても良い。
本実施形態の表層253は、フッ素樹脂としてPFAを用いている。そのPFAに、(C2H5)4P・BRで表される有機リン化合物であるヒシコーリンPX−2B(日本化学工業(株)製)を7、重量部混合した
。なお、厚さは15μmでコーティング層とした。
。なお、厚さは15μmでコーティング層とした。
ここで、プライマ層254は表層253と弾性層252を接着させるための接着層であり、低融点のフッ素樹脂やフッ素化シリコーンなどのフッ素樹脂プライマからなる。このプライマ層254には、接着性能を上げるためにシランカップリング剤等の接着成分を含有することもできる。また、カーボンブラック等の電子導電剤やイオン導電剤、帯電防止剤を添加することもできる。
(フィルム特性)
本実施形態のフィルム25は、フィルム25の単位面積当たりの厚み方向の抵抗値R(Ω・cm2)が、図4に示すようにフィルムに印加する電位が550〜650Vの降伏電圧の範囲で急激に下がる特性を有する。なお、図4はフィルム25が定着可能な温度(160℃)である場合の特性である。ここで、単位面積当たりの厚み方向の抵抗値Rは、フィルムの体積抵抗率ρ(Ω・cm)とフィルム厚さt(cm)の積として定義する。従って、単位はR(Ω・cm2)と表される。
本実施形態のフィルム25は、フィルム25の単位面積当たりの厚み方向の抵抗値R(Ω・cm2)が、図4に示すようにフィルムに印加する電位が550〜650Vの降伏電圧の範囲で急激に下がる特性を有する。なお、図4はフィルム25が定着可能な温度(160℃)である場合の特性である。ここで、単位面積当たりの厚み方向の抵抗値Rは、フィルムの体積抵抗率ρ(Ω・cm)とフィルム厚さt(cm)の積として定義する。従って、単位はR(Ω・cm2)と表される。
1)剥離オフセットの改善
このような降伏電圧を持つフィルム25を用いることで、剥離オフセットを改善することができる。以下に、その理由を詳述する。図5は、剥離オフセットが発生した場合の剥離帯電の様子を模式的に表したイメージ図である。記録材Pがニップ部Nを通過し、記録材Pの後端がフィルム25の表層253から剥離する際の、記録材Pとフィルム25の間の電位差がパッシェン曲線により与えられた放電閾値を超えると放電する。その放電によって、フィルム25の表面に剥離帯電領域Rが形成される。その剥離帯電領域Rは、フィルムの長手方向に帯状に形成され、その幅は約0.1〜2mmである。
このような降伏電圧を持つフィルム25を用いることで、剥離オフセットを改善することができる。以下に、その理由を詳述する。図5は、剥離オフセットが発生した場合の剥離帯電の様子を模式的に表したイメージ図である。記録材Pがニップ部Nを通過し、記録材Pの後端がフィルム25の表層253から剥離する際の、記録材Pとフィルム25の間の電位差がパッシェン曲線により与えられた放電閾値を超えると放電する。その放電によって、フィルム25の表面に剥離帯電領域Rが形成される。その剥離帯電領域Rは、フィルムの長手方向に帯状に形成され、その幅は約0.1〜2mmである。
剥離帯電領域Rは、未定着トナー像Tを記録材Pに引きつけておくために記録材Pに与えた電荷と同じ極性になるため、必ずトナーと逆極性になる。ここで、放電が起こる電位差は、周辺環境の空気中に含まれる水蒸気量や、記録材後端の電荷、記録材の抵抗値によって変わるため、様々な電圧で放電が発生する可能性がある。しかし、実際に実用上問題があるレベルの剥離オフセットは、フィルム25に形成される剥離帯電領域Rの電位の絶対値が1000V以上となった場合に発生し易い。
剥離オフセットのレベルは、剥離帯電電荷の減衰率によって変わる。そして、この減衰率は、剥離帯電領域Rの電位におけるフィルム25の厚み方向の抵抗値Rが小さいほど大きくなり好ましい。ここで、本実施形態のフィルム25は、図4に示すように、実用上問題があるレベルの剥離オフセットを引き起こすような電位(1000V以上)を印加した場合、その抵抗値Rが1×108(Ω・cm2)と低くなっている。
その結果、剥離帯電電荷を十分に減衰させることができるようになるため、剥離オフセットの発生を抑制することができる。また、効果的に剥離オフセットを改善できるフィルム25とは、降伏電圧が、実用上問題があるレベルの剥離オフセットを引き起こすような電位(1000V以上)よりも低いという特徴を有している。
2)全面オフセット(静電オフセット)および尾引きの改善
本実施形態でフィルム25は、定着バイアスの絶対値が500V以下になるように電圧を印加した場合、単位面積当たりの厚み方向の抵抗値Rが5×1011(Ω・cm2)以上である。これにより、電流のリークが抑えられ、全面オフセット(静電オフセット)の改善が図られる。また、印加電圧の絶対値をなるべく大きくすることで尾引きの改善が図られる。これらについては、以下に詳述する。
本実施形態でフィルム25は、定着バイアスの絶対値が500V以下になるように電圧を印加した場合、単位面積当たりの厚み方向の抵抗値Rが5×1011(Ω・cm2)以上である。これにより、電流のリークが抑えられ、全面オフセット(静電オフセット)の改善が図られる。また、印加電圧の絶対値をなるべく大きくすることで尾引きの改善が図られる。これらについては、以下に詳述する。
(バイアス印加手段)
本実施形態では、フィルム25の表面をトナーと同極性の電位(マイナス)にするため、バイアス印加手段50によりフィルム25にマイナス極性のバイアスを印加する。フィルム25に印加するバイアスは、バイアス電源53から導電ブラシなどの給電手段51を介して、フィルム25表面に一部露出させているフィルム25のうち、上述した導電の基層部251(図3)に印加する。
本実施形態では、フィルム25の表面をトナーと同極性の電位(マイナス)にするため、バイアス印加手段50によりフィルム25にマイナス極性のバイアスを印加する。フィルム25に印加するバイアスは、バイアス電源53から導電ブラシなどの給電手段51を介して、フィルム25表面に一部露出させているフィルム25のうち、上述した導電の基層部251(図3)に印加する。
このバイアスを印加することにより、以下に定義される尾引きを改善できる。ここで、尾引きとは、記録材Pが定着ニップを通過する際、記録材Pより噴出した水蒸気によって、未定着トナーTが記録材Pの搬送方向と逆方向に飛散させられることで画像が乱れるという現象である。バイアスを印加することで尾引きを改善できる理由は、フィルム25にマイナスバイアスを印加することで、マイナス極性の未定着トナーTをプラス極性の記録材Pに抑えつける電界の力が働くようになるためである。
(フィルムの降伏電圧とフィルムへのバイアス電圧)
しかしながら、定着バイアスとして印加する電圧の絶対値におけるフィルム25の厚み方向の抵抗値Rが小さい場合、定着バイアスを印加することによって、全面オフセット(静電オフセット)という問題が発生する。ここで、全面オフセットとは、ニップ部Nで記録材Pが担持していた未定着トナーTが静電的な力で引き剥がされフィルムに付着し、次の周回で画像として現れるオフセットのことである。
しかしながら、定着バイアスとして印加する電圧の絶対値におけるフィルム25の厚み方向の抵抗値Rが小さい場合、定着バイアスを印加することによって、全面オフセット(静電オフセット)という問題が発生する。ここで、全面オフセットとは、ニップ部Nで記録材Pが担持していた未定着トナーTが静電的な力で引き剥がされフィルムに付着し、次の周回で画像として現れるオフセットのことである。
上記の条件で全面オフセットが発生してしまう理由は、フィルム25の厚み方向の抵抗値Rが低い場合、バイアスを印加した時にフィルム25を介して電流がリークするためである。このリークした電流で、通紙中もしくは紙間において、記録材Pを介してまたは直接に電荷が加圧ローラ26に注入され、加圧ローラ26がチャージアップしてしまう。その結果、ニップ部Nにおいて、未定着トナーTを記録材Pに抑えつける電界の力が弱まる、または、未定着トナーTを記録材Pから引き剥がす方向の電界の力が発生し、全面オフセットが発生する。更に、上記理由から尾引きも増長することになる。
従って、バイアスを印加する電圧の絶対値におけるフィルム25の抵抗値Rは高い必要がある。図4に示すような電圧−抵抗特性を持つフィルム25(フィルムA)は、定着バイアスの絶対値が500V以下になるように電圧を印加した場合、単位面積当たりの厚み方向の抵抗値Rが5×1011(Ω・cm2)以上である。このため、全面オフセットは発生しない。
ここで、フィルム25の単位面積当たりの厚み方向の抵抗値Rが5×1011(Ω・cm2)であれば全面オフセットが発生しない理由を説明する。フィルム25の単位面積当たりの厚み方向の抵抗値Rが上記抵抗値以上の場合、定着バイアスを500V印加した時のリーク電流は、1×10-9(Ω・cm2)以下になる。加圧ローラ26の単位面積当たりの静電容量はおよそ1×10-10(C)であるため、単位時間当たりの加圧ローラ26のチャージアップ電位ΔVRは0.1V以下となる。
従って、300枚といった大量通紙を行っても、加圧ローラ26のチャージアップは50V程度に抑えられ、その結果、ニップ部Nにおいて電界の力によって未定着トナーTを記録材Pに抑えつけることができるため全面オフセットは発生しない。
しかし、一方で定着バイアスの印加電圧の絶対値はなるべく大きい方が望ましい。なぜなら、フィルム25の表面電位がなるべくマイナスに大きい方が、ニップ部Nにおける未定着トナーTを記録材Pに抑えつける電界の力が大きくなるためである。その結果、前述した尾引きに対する抑制効果が大きくなる。従って、定着バイアスの印加電圧の絶対値は、降伏電圧を超えない電圧のうち、もっとも大きな値とすることが望ましい。
例えば、図4に示すような電圧−抵抗特性を持つフィルムA(弾性層厚さ240μm)においては、印加バイアス設定を−500Vとすることが望ましい。もし、このフィルムAに対して、定着バイアス値を−550V以下(例えば−600V)に設定した場合、電流のリークが発生し全面オフセットが劣化する。一方、−450V以上(例えば−400V)に設定した場合、未定着トナーを記録材に抑えつける電界の力が不十分になるため、尾引きが発生する。
しかし、フィルム25の降伏電圧は、様々な要因の影響を受けシフトする。例えば、フィルム25の弾性層252が製造上バラツキにより厚さがばらついた場合、その影響を受ける。弾性層252の厚さが厚いほど降伏電圧は高くなり、薄いほど低くなる傾向がある。また、表層に添加する導電剤の入れ目量の影響も受ける。導電剤の入れ目が多いほど、降伏電圧は低くなる傾向がある。また、弾性層に添加している熱伝導フィラーの種類や入れ目量の影響も受ける。熱伝導フィラーの入れ目量が多いほど降伏電圧は低くなる傾向がある。
さらに、降伏電圧は周囲の温度や湿度の影響を受ける。温度・湿度が高いほど降伏電圧は低い側にシフトする傾向がある。また、フィルム25の耐久度合いの影響を受ける。耐久が進むにつれて、表層に添加した導電剤が削り取られてしまうことによって、降伏電圧は高くなる傾向がある。
このように、フィルム25の降伏電圧が様々な要因の影響を受けシフトしてしまった場合には、降伏電圧値を正しく検知し、その結果に応じて最適な定着バイアス値に設定し直す必要がある。しかし、従来の手法では降伏電圧値に係らず、一定の定着バイアスとしていた。
ここで、従来の手法を用いた場合の問題点について説明する。具体的には、弾性層252の厚さが製造上のバラツキにより、弾性層252厚みの異なるフィルムが製造された場合において説明を行う。図4に示す電圧−抵抗特性を有するフィルム(以降フィルムAと称す)の弾性層厚さは240μmである。一般的に、弾性層252の製造上バラツキは40μm程度が見込まれているため、弾性層厚さは200〜280μmの幅を持つことになる。
図6は、弾性層厚さ200μmの定着フィルム(以降フィルムBと称す)の電圧−抵抗の特性を表したものである。この場合、降伏電圧は400〜550Vの間になる。フィルムBを用いた場合、バイアス値は−400V程度に設定することが望ましい。ここで、弾性層252の厚みバラツキを考慮せず、定着バイアスをフィルムAの最大値である−500Vに設定した場合、電流のリークが発生してしまう。
一方、尾引きや全面オフセットに対しては、−400Vの印加電圧で十分な効果を発揮する。なぜなら、弾性層252の厚みが小さく熱伝導特性に優れるため未定着トナーTを十分に溶融でき、その結果、トナーが記録材Pに付着する力が強くなるためである。
図7は、弾性層厚さ280μmの定着フィルム(以降フィルムCと称す)の電圧−抵抗の特性を表したものである。この場合、降伏電圧は600V〜750Vの間になる。フィルムCを用いた場合、バイアス値は−600V程度に設定することが望ましい。ここで、定着バイアスをフィルムAの最大値である−500Vに設定した場合、電流のリークこそ発生しないが、尾引きに対する効果は不十分である。
なぜなら、フィルムCではフィルムAに比べ弾性層252の厚みが大きいため、熱伝導特性に劣る。その結果、バイアスによる電界の力の扶助が小さいと、未定着トナーTを記録材Pに抑えつける力が十分でなく、尾引きを抑制することができないためである。
実際に、フィルムCでは、定着バイアス値が−550V以上−450V以下(例えば−500V)の場合、軽微な尾引きが発生し、−450V以上(例えば−400V)の場合、実用上問題があるレベルの尾引きが発生してしまう。
以上のように、異なる降伏電圧をもつフィルム25においても定着バイアスを固定の値とする従来の技術では、尾引きと電流リークによる全面オフセット(静電オフセット)の問題解決を両立させることができなかった。
(本実施形態の定着バイアス制御)
一方、フィルム25の降伏電圧を検知し、絶対値が降伏電圧の絶対値を超えないように最適な定着バイアス値を設定するという本実施形態の手法を用いれば、尾引きと電流リークによる全面オフセット(静電オフセット)の問題解決を両立させることができる。図8は、本実施形態における定着バイアス決定のためのシーケンスである。本実施形態では、このシーケンスをすべてのプリントジョブに対して行う。
一方、フィルム25の降伏電圧を検知し、絶対値が降伏電圧の絶対値を超えないように最適な定着バイアス値を設定するという本実施形態の手法を用いれば、尾引きと電流リークによる全面オフセット(静電オフセット)の問題解決を両立させることができる。図8は、本実施形態における定着バイアス決定のためのシーケンスである。本実施形態では、このシーケンスをすべてのプリントジョブに対して行う。
本実施形態の定着バイアス決定のシーケンスによれば、1枚目のプリントが開始された後、記録材Pが定着ニップに突入する際に−500Vの定着バイアスを印加する(S102)。その後、記録材先端が排紙ニップに突入したタイミングで、後述の抵抗検知手段により定着フィルム25の抵抗値Rの検知を行う(S103)。検知したフィルム抵抗値Rが5×1011(Ω・cm2)以上であるか判断する(S105)。
ここで、フィルム抵抗値Rの判断の閾値を5×1011(Ω・cm2)とした理由は、上述したように、フィルム抵抗値Rが上記抵抗値より高ければ、電流リークを防ぐことができるためである。そして、S105において、検知したフィルム25の抵抗値Rが5×1011(Ω・cm2)以上である場合、印加する定着バイアスの絶対値を30Vアップして補正する(S110)。そして、もう一度フィルム抵抗値Rを検知する(S111)。この動作を、フィルム抵抗値Rが5×1011(Ω・cm2)以下になるまで繰り返す。
本実施形態のシーケンスでフィルムの抵抗値を検知できる時間は、A4サイズで約600mSecであり、1度の検知とフィードバック(S110〜S112)で約100mSecかかるため、補正回数は6回が限度である。そして、初めてフィルム抵抗値Rが5×1011(Ω・cm2)以下になった時に、印加している定着バイアスの絶対値を30Vダウンし(S113)、後続の記録材を印字する際のバイアス値に設定する(S114)。
ここで、電圧の補正値を30Vとした理由は、補正回数6回の中でスリーブの降伏電圧のバラツキ(およそ±150V)に対応することができるようにするためである。
ここで、電圧の補正値を30Vとした理由は、補正回数6回の中でスリーブの降伏電圧のバラツキ(およそ±150V)に対応することができるようにするためである。
一方、S105において、検知したフィルム25の抵抗値Rが5×1011(Ω・cm2)以下であった場合、印加する定着バイアスの絶対値を30Vダウンして補正する(S120)。そして、もう一度フィルム抵抗値Rを検知する(S121)。この動作を、フィルム抵抗値Rが5×1011(Ω・cm2)以上になるまで繰り返す。そして、初めてフィルム抵抗値Rが5×1011(Ω・cm2)以上になった時に、印加している定着バイアスを後続の記録材を印字する際のバイアス値に設定する(S123)。
以上のようにして、定着バイアスとして印加する電圧の絶対値を、降伏電圧を下回りかつ十分に高いという、最適な電圧値に設定することができる。ここで、本実施形態のシーケンスでは、2枚目以降のプリントに対しては補正した電圧値を定着バイアス設定値とするのに対し、1枚目の定着バイアスは−500Vとしている。設定値として−500Vを選んだ理由は、定着フィルム25の弾性層252厚みの中心品(フィルムA)における最適な定着バイアス値だからである。
一方、1枚目のみ従来と同様の固定バイアス設定としても、尾引きおよび全面オフセットの問題は発生しない。尾引きについては、1枚目のプリントでは加圧ローラ26が十分に温まっていないため、記録材Pから発生する水蒸気量が少なく、もともとレベルが良いためである。また、全面オフセットに対しては、フィルム25のリーク電流によるチャージアップは主にフィルムと加圧ローラが接触する紙間において顕著な現象であり、1枚目の記録材Pが介在している短時間の電流のリークでは画像に影響が出るレベルにならないためである。
(フィルムの電気的情報検知手段)
次に、本実施形態で採用した無端ベルトとしてのフィルム25の電気的情報として抵抗を検知する電気的情報検知手段を説明する。本実施形態では、図1(b)に示すように、定着バイアスをフィルム25に印加した際に、フィルム25を厚み方向に通過し、約10mm幅の記録材Pを伝って、接地した導電性の排紙ローラに流れる電流経路がある。
次に、本実施形態で採用した無端ベルトとしてのフィルム25の電気的情報として抵抗を検知する電気的情報検知手段を説明する。本実施形態では、図1(b)に示すように、定着バイアスをフィルム25に印加した際に、フィルム25を厚み方向に通過し、約10mm幅の記録材Pを伝って、接地した導電性の排紙ローラに流れる電流経路がある。
ここで、複数のバイアス電圧を印加したときの無端ベルトの電気的情報としての抵抗値(具体的には厚み方向の抵抗値)を検知手段200で検知するために、先ず電流検知手段100で上記電流経路を流れる電流I1を検知する。具体的には、定着バイアス印加部に回路と直列に抵抗値(抵抗値r1)を設置し、その抵抗r1による電圧降下分ΔV(=I1×r1)を電流検知手段100により検知する。そして、検知手段200により、各バイアス電圧Vを各電流I1で除算し無端ベルトの各抵抗値R(複数のバイアス電圧Vに対応した無端ベルトの抵抗値R)を検知する。
ここで、バイアス電圧Vに対応した無端ベルトの抵抗値Rの情報に基づき、無端ベルトの降伏電圧が検知されることになる(無端ベルトの抵抗値Rが傾斜して低下する電圧値に対応)。そして、決定手段300は、検知手段200の出力より得られる無端ベルトの降伏電圧を基に、降伏電圧を超えない(絶対値が降伏電圧の絶対値を超えない)バイアス電圧の中で最大値を画像加熱処理時のバイアス電圧として決定する。
なお、上記手段によって得られる抵抗値Rは、フィルム25の抵抗値Rに記録材Pの表面抵抗値Rを足したものである。しかし、このうち記録材Pの表面抵抗値は1×1011(Ω・cm2)以下と小さく、フィルム25の抵抗値Rが5×1011(Ω・cm2)以上であるかどうかを検知する際には、影響を与えない。従って、上記手段で得られた抵抗値をフィルムの抵抗値Rと代用することができる。
(従来装置との比較結果)
本実施形態の画像加熱装置の作用効果を説明するために、比較例として従来装置との比較実験を行った結果を示す。本実施形態の画像加熱装置は、定着バイアスの印加電圧値を、図8に示すシーケンスにより決定される電圧値としている。比較例1〜3の従来装置と本実施形態の装置との違いは、比較例1〜3では定着バイアスの印加電圧値をそれぞれ−400V、−500V、−600Vで固定している点のみである。その他の構成は、本実施形態と同一であるので説明を省略する。
本実施形態の画像加熱装置の作用効果を説明するために、比較例として従来装置との比較実験を行った結果を示す。本実施形態の画像加熱装置は、定着バイアスの印加電圧値を、図8に示すシーケンスにより決定される電圧値としている。比較例1〜3の従来装置と本実施形態の装置との違いは、比較例1〜3では定着バイアスの印加電圧値をそれぞれ−400V、−500V、−600Vで固定している点のみである。その他の構成は、本実施形態と同一であるので説明を省略する。
これら、本実施形態および比較例1〜3の画像加熱装置に、弾性層厚さが240μm、200μm、280μmである定着フィルムA、B、Cを組み込んで、それぞれのフィルムにおける画像レベルを比較(検証)した。上述したように、フィルムAは図4に示す抵抗−電圧特性を有し、フィルムB、Cはそれぞれ図6、7に示す抵抗−電圧特性を有する。
本検証を行った条件を詳述する。本検証で用いた画像加熱装置を搭載した画像形成装置の印刷速度は、60枚/分(A4サイズ)で、記録材の搬送速度は350mm/Secである。本検証で用いた画像加熱装置としての定着装置は、定着フィルムを加圧ローラに186.2N(19kgf)で加圧しており、そのニップ幅は9mmである。試験を行った環境は気温23℃、湿度50%であり、評価紙はCS−680(A4サイズ、68g/cm2)を用いた。この条件で、画像加熱装置を搭載した各画像形成装置において、連続片面通紙モードで10枚通紙し、全面オフセットおよび尾引きのレベルを評価した。
表1に、本実施形態と比較例1〜3における、全面オフセットと尾引きのレベルを示す。各画像形成装置に、上述のフィルムA〜Cを組み込み、各フィルムでサンプル取りを行った。表1における全面オフセット、および尾引きのレベルを表す記号について説明する。表中の○は全面オフセット、尾引きが発生せず良好であることを表している。また、表中の△は軽微な全面オフセット、尾引きが発生するものの、実用上問題が無いことを示している。また、表中の×は全面オフセット、尾引きが劣化したレベルで発生しており実用上問題があることを示している。
表1の結果によれば、本実施形態では、フィルムA、フィルムB、フィルムCのいずれのフィルムを用いた場合においても、全面オフセットおよび尾引きが発生せず良好な画像が得られた。その理由は、図8に示すようなシーケンスを経ることで、フィルムA〜Cにそれぞれ最適な定着バイアス値を設定できるためである。
具体的には、フィルムAの場合には、図8のシーケンスにより−500Vが設定され、フィルムBは−380V、フィルムCは−590Vが設定される。その結果、各フィルムに対して定着バイアスの絶対値が、降伏電圧を超えずまた十分に高い、という最適なバイアス値となるため、全面オフセットと尾引きの問題解決を両立できる。
一方、比較例1〜3では、フィルムA〜Cのいずれかで、全面オフセットもしくは尾引きが発生してしまい、実用上問題があるレベルとなった。比較例1ではフィルムBでは問題が無かったが、フィルムAでは軽微な尾引きが発生し、フィルムCでは実用上問題があるレベルの尾引きが発生した。その理由は、上述したように、フィルムA、CではフィルムBに対して熱伝導特性が劣るため、定着バイアス印加電圧が−450V以上では、未定着トナーTを記録材Pに抑えつける力が不十分となるためである。
比較例2では、フィルムAでは問題が無かったが、フィルムBで実用上問題があるレベルの全面オフセットが発生し、またフィルムCでは軽微な尾引きが発生した。比較例3ではフィルムCでは問題が無かったが、フィルムA,Bで実用上問題があるレベルの全面オフセットが発生した。このように、比較例2、3で全面オフセットが劣化した理由は、定着バイアスとして印加した電圧の絶対値が、フィルムの降伏電圧を超えてしまったためである。以上のように、本実施形態によれば、比較例1〜3には無い作用効果を得られることが分かる。
本実施形態では、定着フィルム25の降伏電圧が、弾性層の厚さの製造上バラツキの影響を受けた場合について説明を行ったが、これに限られない。例えば、弾性層の熱伝導フィラー入れ目量や、表層の厚さ、表層の導電剤の種類や入れ目量などの影響を受けた場合についても同様の効果を得ることができる。
また、本実施形態で、定着フィルム25から定着後の記録材Pを通過して導電排紙ローラに流れる電流値を検知する手段(電流検知手段100)を用いたが、もちろん定着フィルム25のみに流れる電流値を検知する手段とすることもできる。この場合、定着フィルム25の表面に接地した導電部材を押し当てる手段が有効である。例えば、加圧ローラ26の長手端部の非通紙部に、接地した導電のゴム輪を配するという手段を取ることもできる。また、導電部材は図8のシーケンスを行う際のみ、押し当てるような構成とすることも可能である。
《第2の実施形態》
次に本発明の第2の実施形態の構成について説明する。本実施形態と第1の実施形態との基本的な違いは、低抵抗の加圧ローラ26の構成および定着バイアス印加電圧値を決定するためのシーケンスであり、第1の実施形態と同一の構成については説明を省略する。本実施形態は、プリント動作中において、加圧ローラ26の温度が上がりやすく、コンタミネーションに対して有利な中低速の画像形成装置に好適な構成である。
次に本発明の第2の実施形態の構成について説明する。本実施形態と第1の実施形態との基本的な違いは、低抵抗の加圧ローラ26の構成および定着バイアス印加電圧値を決定するためのシーケンスであり、第1の実施形態と同一の構成については説明を省略する。本実施形態は、プリント動作中において、加圧ローラ26の温度が上がりやすく、コンタミネーションに対して有利な中低速の画像形成装置に好適な構成である。
本実施形態の加圧ローラ26で第1の実施形態と異なる点は、表層263を構成する材料を導電PFAとしている点である。本実施形態の加圧ローラ26の表層263は、PFAに導電材としてカーボンを適量添加し、その体積抵抗率が1×109(Ω・cm2)となるように調整しており、その厚みは30μmである。また、弾性層262は第1の実施形態と同じ導電性とし、その体積抵抗率は1×105(Ω・cm2)程度に調整している。また、芯軸部261は実施形態1同様に中実のアルミニウムから成り、端部で接地されている。
以上のように、本実施形態では加圧ローラ26の表層263、弾性層262、芯軸部261が導電性の材料で構成されている。その結果、加圧ローラ表面から芯軸部261に向かう方向の単位面積当たりの抵抗値Rは1×109(Ω・cm2)以下となる。
ここで、本実施形態では加圧ローラ表層263に導電材を添加している。第1の実施形態で説明したような高速機では、加圧ローラ表層263にカーボン等を添加すると、表面の平滑性が低下しトナーや紙粉でコンタミネーションが発生してしまう。しかし、本実施形態のような中速機(300mm/Sec、30枚/分)やそれ以下の速度の画像形成装置では、コンタミネーション自体が発生しにくい。なぜなら、記録材Pにより奪われる熱量が小さく、加圧ローラ26を十分に温めることができ、その結果、加圧ローラ26に対するトナーの付着力が下がるためである。
このような低抵抗の加圧ローラ26を使用するメリットとしては、前述した加圧ローラ26のチャージアップが発生しない点が挙げられる。その結果、定着バイアス印加による定着フィルムからのリーク電流が発生しても、加圧ローラ26表面のチャージアップに伴う全面オフセットは発生しない。しかし、その一方で定着フィルムからリークした電流は記録材Pを伝って転写に流れ込み、所定の転写バイアスがかからず画像を乱してしまう(定着フィルム電流リークによる転写不良)という問題が発生する。
次に、本実施形態における、定着バイアス決定のためのシーケンスを図9に示す。本実施形態では、このシーケンスをすべてのプリントジョブに対して行う。本実施形態の定着バイアス決定のシーケンスと第1の実施形態との違いは、フィルム25の抵抗値Rを検知するタイミングが、記録材Pが定着ニップに突入する前の前回転時であるという点である(S203)。また、その後の定着バイアス印加値の補正も前回転中に行っている(S210〜S214,S220〜223)。
本実施形態で前回転時にフィルム25の抵抗値Rを検知することができる理由は、本実施形態の加圧ローラ26の抵抗値Rが第1の実施形態に比べ小さいためである。本実施形態では、定着バイアス印加時に、フィルム基層251から弾性層252、表層253を通過し、その後、加圧ローラ26の表層263から弾性層262を通過し、接地した芯軸部261に流れる電流を測定している。そして、定着バイアスとして印加した電圧の絶対値を、検知した電流値で割ることでフィルムの抵抗値Rを判断している。
なお、上記手段によって得られる抵抗値は、フィルム25の抵抗値Rに加圧ローラ26の抵抗値を足したものである。しかし、このうち加圧ローラ26の抵抗値は1×109(Ω・cm2)以下と小さく、フィルム25の抵抗値Rが5×1011(Ω・cm2)以上であるかどうかを検知する際には、影響を与えない。
また、本実施形態のシーケンスと第1の実施形態とのもう一つの違いは、定着バイアスの印加電圧補正値が10Vであり、第1の実施形態に比べ小さくしている点である(S210、S213、S220)。その理由は、本実施形態では前回転中に定着フィルム25の抵抗値Rの検知、および定着バイアス印加値の補正を行っており、約3秒の十分な時間があるためである。第1の実施形態と同様に、1度の検知とフィードバックで約100mSecであるため、補正回数を30回程度確保することができる。補正値を10Vと小さくすることで、より適した定着バイアス印加電圧に設定することができるようになる。
(従来装置との比較結果)
本実施形態の画像加熱装置の作用効果を説明するために、比較例として従来装置との比較実験を行った結果を示す。本実施形態の画像加熱装置は、定着バイアスの印加電圧値を、図9に示すシーケンスにより決定される電圧値としている。本実施形態および比較例1〜3の画像加熱装置に、弾性層厚さが240μm、200μm、280μmである定着フィルムA、B、Cを組み込んで、それぞれのフィルムにおける画像レベルを比較(検証)した。
本実施形態の画像加熱装置の作用効果を説明するために、比較例として従来装置との比較実験を行った結果を示す。本実施形態の画像加熱装置は、定着バイアスの印加電圧値を、図9に示すシーケンスにより決定される電圧値としている。本実施形態および比較例1〜3の画像加熱装置に、弾性層厚さが240μm、200μm、280μmである定着フィルムA、B、Cを組み込んで、それぞれのフィルムにおける画像レベルを比較(検証)した。
本検証を行った条件を詳述する。本検証で用いた画像加熱装置を搭載した画像形成装置の印刷速度は、30枚/分(A4サイズ)で、記録材の搬送速度は200mm/Secである。本検証で用いた画像加熱装置としての定着装置は、定着フィルムを加圧ローラに166.6N(17kgf)で加圧しており、そのニップ幅は9mmである。試験を行った環境は気温23℃、湿度50%であり、評価紙はCS−680(A4サイズ、68g/cm2)を用いた。この条件で、本検証で用いた画像加熱装置を搭載した各画像形成装置において、連続片面通紙モードで10枚通紙し、定着フィルム電流リークによる転写不良および尾引きのレベルを評価した。
表2に本実施形態と比較例1〜3における、定着フィルム電流リークによる転写不良と尾引きのレベルを示す。本検証で用いた画像加熱装置を搭載した各画像形成装置に、上述のフィルムA〜Cを組み込み、各フィルムでサンプル取りを行った。表2における定着フィルム電流リークによる転写不良、および尾引きのレベルを表す記号について説明する。表中の○は転写不良、尾引きが発生せず良好であることを表している。また、表中の△は軽微な転写不良、尾引きが発生するものの、実用上問題が無いことを示している。また、表中の×は転写不良、尾引きが増長したレベルで発生しており実用上問題があることを示している。
表2の結果によれば、本実施形態では、フィルムA〜Cのすべてに対して、転写不良および尾引きが発生せず良好な画像が得られた。その理由は、図9のシーケンスを経ることで、フィルムA〜Cに対して最適な定着バイアス値を設定できるためである。具体的には、フィルムAには−400V、フィルムBには−500V、フィルムCには−600Vが印加電圧値として設定される。一方、比較例1〜3では、第1の実施形態の検証結果と同様に、フィルムA〜Cの少なくとも1つのフィルムに対して転写不良もしくは尾引きが発生し、実用上問題のあるレベルであった。
以上のように、本実施形態の画像加熱装置を用いれば、比較例1〜3には無い作用効果が得られることが分かる。本実施形態では、前回転中に定着フィルム25に流れる電流を検知するシーケンスとしたが、記録材Pが定着ニップ通紙中以外の任意のタイミングで検知を行うことが可能である。例えば、プリント動作終了後の後回転や、記録材Pが通過する間(紙間)などでも可能である。また、プリント動作を伴わない空回転中や停止時にこのシーケンスを行うことも可能である。
《第3の実施形態》
次に本発明の第3の実施形態の構成について説明する。本実施形態では、画像形成装置の構成および定着バイアス決定のシーケンスは第1の実施形態と同一であるため、再度の説明を省略する。本実施形態と第1の実施形態の装置との違いは、定着バイアス決定のシーケンスを行うタイミングおよび、定着バイアス設定値を記憶する記憶手段を有するという点である。第1、第2の実施形態では、画像形成装置のすべてのプリントジョブごとに、図8または図9のシーケンスを行う設定としていた。
次に本発明の第3の実施形態の構成について説明する。本実施形態では、画像形成装置の構成および定着バイアス決定のシーケンスは第1の実施形態と同一であるため、再度の説明を省略する。本実施形態と第1の実施形態の装置との違いは、定着バイアス決定のシーケンスを行うタイミングおよび、定着バイアス設定値を記憶する記憶手段を有するという点である。第1、第2の実施形態では、画像形成装置のすべてのプリントジョブごとに、図8または図9のシーケンスを行う設定としていた。
それに対して、本実施形態では画像形成装置の記録材Pのプリント枚数(即ち、画像加熱処理のためにニップ部に搬送される記録材の枚数)が所定値(例えば5000枚)に達する毎に上記シーケンスを行う設定とする。また、画像形成装置で温湿度を検知し、その結果に応じて上記シーケンスを新たに行うかどうか決定する。具体的には、検知温度が28℃を超える、もしくは15℃を下回った場合に上記シーケンスを新たに行うことする。そして、決定した定着バイアス印加電圧を上記の記憶手段により記憶し、次回のプリント時に定着バイアス印加電圧としてプリント動作を行う。
上述したように、定着フィルム25の降伏電圧は、フィルム25の耐久度合いおよび周囲の温度や湿度の影響を受ける。そこで、本実施形態のように、プリント枚数ごと、および温湿度情報に応じて上記シーケンスを行う設定とすることによって、定着フィルム25の降伏電圧が、耐久度合いや温湿度の影響でシフトした場合でも、再設定することができる。その結果、耐久を通じて、また周囲の温湿度によらず良好な画像を得ることができるという作用効果を得ることができる。
本実施形態では、第1の実施形態の装置において、プリント枚数ごと、および温湿度情報に応じて上記シーケンスを行う設定としたが、第2の実施形態の装置において同様の設定としても、同じ作用効果を得ることができる。
《第4の実施形態》
次に本発明の第4の実施形態の構成について説明する。本実施形態と第1の実施形態との違いは、定着バイアス印加電圧値を決定するためのシーケンスのみであり、その他の構成については説明を省略する。本実施形態は、上記シーケンスを行う時間を十分に取れない高速機に対して好適な構成である。
次に本発明の第4の実施形態の構成について説明する。本実施形態と第1の実施形態との違いは、定着バイアス印加電圧値を決定するためのシーケンスのみであり、その他の構成については説明を省略する。本実施形態は、上記シーケンスを行う時間を十分に取れない高速機に対して好適な構成である。
本実施形態は高速機であるため、第1の実施形態のS110〜S112,S120〜S122に示すところの、フィルム抵抗値Rの検知とフィードバックによる補正動作を3回しか取ることができない。従って、3回の補正回数の中でなるべく効率良く印加電圧の補正を行う必要がある。
そこで、本実施形態では図10に示す定着バイアス決定シーケンスとした。図10に示すシーケンスの特徴は、フィルム抵抗値Rの検知回数を3回に限っていることである(図中ではS404、“S412もしくはS432”、“S415もしくはS425もしくはS435もしくはS445”)。また、効率良く印加電圧の補正を行うために、電圧値の補正電圧を切り替えている。具体的には、1回目の補正(例えば、S404からS410)では印加電圧を100V変化させて粗調しているのに対し、2回目の補正(例えばS412からS413)では印加電圧を50V変化させて微調している。
即ち、前述した実施形態では、無端ベルトの抵抗値を検知する検知手段300による前回の検知から今回の検知へバイアス電圧を第1の変化分で変化させるとき、今回の検知から次回の検知へバイアス電圧を第1の変化分と同じ値の第2の変化分で変化させた。これに対し、本実施形態では、前回の検知から今回の検知へバイアス電圧を第1の変化分で変化させるとき、今回の検知から次回の検知へバイアス電圧を第1の変化分より小さい値の第2の変化分で変化させる。
本実施形態のシーケンスとすれば、効率良く印加電圧の補正を行うことができ、高速機においても良好な画像を得ることができるようになるという作用効果を得ることができる。
なお、本実施形態でも、第3の実施形態で説明した記憶手段と組み合わせる手法をとることも可能である。そして、前回記憶した定着バイアス設定値をもとにして(S402で採用する電圧として)補正を行うことも可能である。
(変形例)
以上、本発明の好ましい実施形態を説明したが、本発明はこれに限らず、各実施形態で述べた技術事項を適宜組合わせる他、種々の変形が可能である。上述した実施形態で、複数のバイアス電圧を印加したときの無端ベルトの電気的情報を検知する検知手段200より得られる無端ベルトの降伏電圧に対し、絶対値が降伏電圧の絶対値を超えない範囲で最大となるバイアス電圧を決定手段300で自動的に決定した。即ち、検知手段200の夫々の出力に基づき選択もしくは算出により最大となるバイアス電圧を自動的に決定したが、手動的に入力することで決定するようにしても良い。
以上、本発明の好ましい実施形態を説明したが、本発明はこれに限らず、各実施形態で述べた技術事項を適宜組合わせる他、種々の変形が可能である。上述した実施形態で、複数のバイアス電圧を印加したときの無端ベルトの電気的情報を検知する検知手段200より得られる無端ベルトの降伏電圧に対し、絶対値が降伏電圧の絶対値を超えない範囲で最大となるバイアス電圧を決定手段300で自動的に決定した。即ち、検知手段200の夫々の出力に基づき選択もしくは算出により最大となるバイアス電圧を自動的に決定したが、手動的に入力することで決定するようにしても良い。
また、検知手段200で検知される無端ベルトの電気的情報は厚み方向の抵抗値であったが、これ以外の電気的情報としての電流値等であっても良い。
また、無端ベルトと接触して、トナーを用いたトナー像が形成された記録材を挟持搬送しつつ加熱するニップ部を形成する加圧体として回転する加圧ローラを用いたが、固定の加圧パッドを用いても良い。
25・・フィルム(加熱回転体としての無端ベルト)、26・・加圧ローラ(加圧体)、50・・バイアス印加手段、100・・電流検知手段、200・・検知手段(無端ベルトの抵抗値R)、300・・決定手段(画像加熱処理時のバイアス電圧値)
Claims (13)
- 無端ベルトを備えた加熱回転体と、
前記無端ベルトと接触して、トナーを用いたトナー像が形成された記録材を挟持搬送しつつ加熱するニップ部を形成する加圧体と、
前記無端ベルトに前記トナーと同極性で絶対値が異なる複数のバイアス電圧を印加する印加手段と、
前記複数のバイアス電圧を印加したときの前記無端ベルトの電気的情報を夫々検知する検知手段と、
前記検知手段より得られる前記無端ベルトの降伏電圧に対し、絶対値が前記降伏電圧の絶対値を超えない範囲で最大となるバイアス電圧を決定する決定手段と、
を有することを特徴とする画像加熱装置。 - 前記決定手段は、前記複数のバイアス電圧を印加したときの前記検知手段の夫々の出力に基づき選択もしくは算出により前記最大となるバイアス電圧を自動的に決定または手動的に入力することで決定することを特徴とする請求項1に記載の画像加熱装置。
- 前記無端ベルトの電気的情報は、前記無端ベルトの厚み方向の抵抗値であることを特徴とする請求項1に記載の画像加熱装置。
- 前記無端ベルトの厚み方向の抵抗値は、印加される前記バイアス電圧が500V以下の範囲では5×1011(Ω・cm2)以上であり、1000V以上の範囲では5×109(Ω・cm2)以下であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の画像加熱装置。
- 前記無端ベルトは、内側から順に、金属で形成される基層と、金属ケイ素、炭化ケイ素、及び、酸化亜鉛のうち少なくとも一つを含有したゴムで形成される弾性層と、フッ素樹脂で形成される離型層と、を有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の画像加熱装置。
- 前記フッ素樹脂は導電性添加剤を含有することを特徴とする請求項5に記載の画像加熱装置。
- 前記フッ素樹脂は接着成分を含有し、前記接着成分により前記弾性層と前記離型層を接着する接着層が形成され、前記接着層と前記離型層の少なくとも一方は導電性添加剤を含有することを特徴とする請求項5に記載の画像加熱装置。
- 前記検知手段による検知を前回転中に行うことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の画像加熱装置。
- 前記加圧体は導電PFAで形成されることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の画像加熱装置。
- 前記検知手段による検知を前記ニップ部に搬送される前記トナー像が形成された記録材の枚数が所定値に達する毎に行うことを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載の画像加熱装置。
- 前記検知手段による前回の検知から今回の検知へバイアス電圧を第1の変化分で変化させるとき、今回の検知から次回の検知へバイアス電圧を前記第1の変化分と同じ値の第2の変化分で変化させることを特徴とする請求項1乃至10のいずれか1項に記載の画像加熱装置。
- 前記検知手段による前回の検知から今回の検知へバイアス電圧を第1の変化分で変化させるとき、今回の検知から次回の検知へバイアス電圧を前記第1の変化分より小さい値の第2の変化分で変化させることを特徴とする請求項1乃至10のいずれか1項に記載の画像加熱装置。
- 前記加圧体は、加圧ローラまたは加圧パッドであることを特徴とする請求項1乃至12のいずれか1項に記載の画像加熱装置。
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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-
2013
- 2013-11-07 JP JP2013230975A patent/JP2015090469A/ja active Pending
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