〔実施の形態1〕
本発明の実施の一形態を図面に基づいて以下に説明する。
図3は本実施の形態における電子写真方式の画像形成装置の内部構造を示す正面図である。この画像形成装置41は、画像読取装置42(図4参照)にて読み込まれた画像や、画像形成装置41に外部から接続された機器(例えばパーソナルコンピュータなどの画像処理装置)からのデータを画像として記録出力するものである。
画像形成装置41には、感光体ドラム1を中心に、画像形成プロセスの各機能を担う各プロセスユニットが配置され、これらにより画像形成部が構成されている。感光体ドラム1の周囲には、感光体ドラム1の回転方向に、帯電装置2、光走査装置3、現像装置4、転写装置5、クリーニング装置6および除電装置7等が順次配置されている。
帯電装置2は、感光体ドラム1の表面を均一に帯電させるものである。光走査装置3は、均一に帯電された感光体ドラム1上に光像を走査して静電潜像を書き込むものである。現像装置4は、光走査装置3により書き込まれた静電潜像を現像剤補給容器8から供給される現像剤により顕像化するものである。転写装置5は、感光体ドラム1上に顕像化された画像を記録材上に転写するものである。クリーニング装置6は、感光体ドラム1上に残留した現像剤を除去して感光体ドラム1上に新たな画像を形成することを可能にするものである。除電装置7は、感光体ドラム1表面の電荷を除去するものである。
画像形成装置41の下部には供給トレイ9が内装されている。この供給トレイ9は、記録材を収容する記録材収容トレイである。供給トレイ9に収容された記録材は、ピックアップローラ10等により1枚ずつ分離され、レジストローラ11まで搬送され、レジストローラ11により感光体ドラム1に形成された画像とのタイミングが計られ、転写装置5と感光体ドラム1との間に順次供給される。そして感光体ドラム1上に記録再現された画像は記録材上に転写される。なお、供給トレイ9への記録材の補給は、画像形成装置41の正面側(操作側)に供給トレイ9を引き出して行なう。
画像形成装置41の下面には記録材受入口12,13が形成されている。これら記録材受入口12,13は、図4に示すように、周辺装置として準備されている多段の記録材供給トレイを有する記録材供給装置46、および大量の記録材を収容可能とした記録材供給装置47等から送られてくる記録材を受け入れ、画像形成部に向かって記録材を順次供給するためのものである。
画像形成装置41内の上部には、定着装置14が配置されている。この定着装置14は、画像が転写された記録材を順次受け入れて、定着部材としての定着ローラ31と加圧部材としての加圧ローラ32等により、記録材上に転写された現像画像を熱と圧力により定着するものである。これにより、記録材上に画像が記録される。
画像が記録された記録材は、搬送ローラ15によりさらに上方搬送され、切換えゲート16を通過する。そして、記録材の排出トレイが画像形成装置41に外装された積載トレイ17に設定されている場合、記録材は反転ローラ18により積載トレイ17上に排出される。一方、両面画像形成や後処理が指定されている場合、記録材は、一旦反転ローラ18により積載トレイ17に向けて排出される。なお、この場合には、記録材を完全に排出せず、記録材を狭持させたまま反転ローラ18を逆転させる。そして、記録材を逆方向、つまり両面画像形成や後処理のために選択的に装着されている記録材再供給搬送装置43(図4参照)や後処理装置45(図4参照)の装着されている方向に反転搬送する。このとき、切換えゲート16は、図3の実線の状態から破線の状態に切換えられる。
両面画像形成を行なう場合、反転搬送された記録材は、記録材再供給搬送装置43を通り、再び画像形成装置41に供給される。後処理が成される場合、反転搬送された記録材は、記録材再搬送装置43から別の切換えゲートにて、中継搬送装置44を介して後処理装置45に搬送され、後処理が施される。
光走査装置3の上空間部には、画像形成プロセスを制御する回路基板および外部機器からの画像データを受け入れるインターフェイス基板等を収容する制御装置19が配置され、光走査装置3の下空間部には、各種の上記インターフェイス基板、ならびに各上記画像形成プロセスUNに対して電力を供給する電源装置20が配置されている。
図3に示した画像形成装置41は、図4に示す画像形成システムに備えられている。この画像形成システムは、画像形成装置41の他、画像読取装置42、記録材再供給搬送装置43、中継搬送装置44、後処理装置45、記録材供給装置46および記録材供給装置47を備えている。
画像読取装置42は、セットされた原稿の画像を露光走査して光電変換素子であるCCD上に結像し、原稿画像を電気的信号に変換した上で画像データとして出力する。読み取られた画像データは、画像形成装置41の画像処理装置にて、画像補正やラスタライズ等の加工処理後に、光走査装置3にて感光体ドラム1へ書き込まれる。
この画像読取装置42は、原稿の片面だけでなく両面をほぼ同時に読み取ることができるようになっており、また自動(自動原稿搬送装置48)/手動にて原稿を搬送することができる。
記録材再供給搬送装置43は、画像形成装置41の左側側面に取り付けられた記録材搬送経路ユニットである。この記録材再供給搬送装置43は、定着装置14から排出された画像が記録された記録材を画像形成装置41上部の排紙部の反転ローラ18を用いて反転搬送して、記録材の表裏を反転した上で、再度、画像形成装置41における画像形成部の感光体ドラム1と転写装置5との間(転写部)に向かって供給する。
中継搬送装置44は、記録材を後処理装置45に搬送するものであり、記録材再供給搬送装置43と後処理装置45との間に装着されている。
後処理装置45は、画像形成システムの左側位置に配置されており、第1の記録材排出部45aと第2の記録材排出部45bとを備えている。
第1の記録材排出部45aは、画像形成装置41から排出された画像の形成された記録材を、後処理装置45の側面上部に設けられた受け取り搬送部45cによって受け取り、記録材がそのままの状態で排出される排出部である。第2の記録材排出部45bは、ステープル,パンチ等選択的に装着される後処理装置45により後処理が成された記録材が排出される排出部である。これら第1と第2の記録材排出部45a,45bは、使用者によって適宜選択される。
後処理装置45は、図示しないが、所定枚数の記録材に対してステープル処理を施す機能、B4もしくはA3などの記録材の紙折りする機能、ファイリング用の穴を形成する機能、あるいはソートや仕分けを行うために数ビン〜数10ビンの多数の記録材排出部を有する機能のうち幾つかを組み合わせて搭載している。
図5に上記定着装置14の構造をさらに詳細に示す。図5は定着装置14を示す概略の縦断面図である。同図の定着装置14において、ローラ形状をなす定着ローラ31および加圧ローラ32は、それぞれ内部に導電性の芯金61および71を有している。
定着ローラ31には、アルミウムや鉄、およびそれらの合金が多用されている。本実施の形態において、定着ローラ31は、鉄系の冷間圧延炭素鋼鋼管を引き抜き等で所望の外径、肉厚に加工し、その後研磨加工を行ない外径40mm、肉厚1.3mmに製作されている。定着ローラ31の両端部は、外径を30mm、肉厚1.5mmに絞り加工を行なって、定着ローラ31に加わる荷重を軸支部材であるボールベアリング(ころがり軸受の一種)で支える。定着ローラ31の芯金61は、防錆の目的で材料表面に対してパーカライジング処理(リン酸塩被膜処理)を施し、錆の発生を抑制している。
定着ローラ31における、絞り加工を施していない中央のスリーブ部分には、加熱溶融したトナーとの接触でも離型性能を維持できるフッ素系樹脂が一般的に用いられる。前記フッ素樹脂としては、PFA(テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)やPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、あるいはそれらの混合体であり、導電性の芯金61上に、中間層62を介して表面絶縁層63としてコーティングされている。
表面絶縁層63としては、耐熱性および離型性の観点から、その他、例えば、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、エチレン/テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、エチレン/クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)等のフッ素樹脂、あるいはフッ素ゴムラテックスを含む材料を各々単独で、もしくは2種類以上を組み合わせて使用することもできる。これらは、塗布・焼成によって形成すること、あるいはチューブ被覆で形成すること等ができる。
中間層62は、表面絶縁層63としてのフッ素樹脂とパーカライジング処理した炭素鋼鋼管表面との接着性を高めるものである。本実施の形態では、ゴム系あるいはレジン系接着材等の絶縁性プライマを用いている。なお、中間層62としては、前述の絶縁性プライマ以外に、導電性プライマを用いることができる。
また、定着ローラ31の内面には耐熱吸熱層が形成されている。この耐熱吸熱層は、定着ローラ31が内包した加熱体であるハロゲンランプ64が定着ローラの内周面に赤外光等の放射エネルギーを放出した場合に、これを効率良く吸収して熱に変換するものである。耐熱吸熱層は、例えば、変性シリコーン樹脂、無機耐熱黒顔料、炭化水素(溶剤)などを混合したものを塗布し乾燥させたものであり、膜厚20〜30μmに形成する。一般的に、オキツモ(商品名)、テツゾール(商品名)、セルモブラック(商品名)等の耐熱塗料が用いられている。本実施の形態では、オキツモを用いている。
なお、定着ローラ31において、66は、定着ローラ31の表面温度を検出する温度検出素子であるサーミスタであり、65は過昇温防止手段としてのサーモスタットである。また、67は上剥離爪であり、定着ローラ31に貼り付いた記録材91を機械的に剥ぎ取るものであり、78は下剥離爪であり、加圧ローラ32に貼り付いた記録材91を機械的に剥ぎ取るものである。
なお、本実施例で用いるサーミスタは、図14(a)(b)に示すように、ハウジング129に固定支持された弾性部材であるステンレス板125上にサーミスタチップ124を直接ボンディングして、熱応答性を早くしたものである。このサーミスタは、バイアス電圧を印加すること、摩擦帯電によって高電位になっている定着ローラ31、加圧ローラ32および加熱ローラ77に当接することから、高電圧に対して、温度制御装置や画像形成装置などの電気系統を保護する必要がある。特に、ステンレス板と前述した各々のローラとが近接しており、温度制御装置の2次回路との絶縁耐圧を十分確保しておかなければならない。
そこで、本実施の形態におけるサーミスタは、サーミスタチップ124をボンディングしているステンレス板125の受熱面側に対して絶縁被覆層126を被せ、その上に耐熱離型層127を被せる。また、その反対側の面には保護層128を被せる。また、ステンレス板125とハウジング129との間において、当接するローラ表面との絶縁距離を確保するために、絶縁被覆層126、耐熱離型層127および保護層128にて、ステンレス板125をハウジング129の境界付近まで覆っている。こうすることで、サーミスタチップ124やステンレス板125に対して、各々のローラからリーク電流が流れることがなく、高電圧による破損や劣化といった不具合が解消される。この結果、安定したバイアス電圧を印加することができるとともに、正確な温度情報を取得することができ、良好な温度制御を実施することができる。
本実施の形態において、絶縁被覆層126は接着剤を含んだ厚み50μmのポリイミド(商品名:カプトン)であり、耐熱離型層127は接着剤を含んだ厚み130μmのガラス繊維に耐熱離型樹脂を含浸させたものである。また、保護層128は接着剤を含んだ厚み80μmのテフロン(登録商標)である。なお、これら材料は、上記のものに限定されず、諸性能において代替できるものであれば、他の材料でもよい。
加圧ローラ32は、鉄やステンレス等の導電性の芯金71上に、シリコ−ンゴム等の耐熱性を有する絶縁性弾性層72を形成し、その外周に中間層73を形成する。この中間層73の外周には、表面の離型性能を向上させる表面抵抗層74を形成する。中間層73は、絶縁性弾性層72と表面抵抗層74との接着性を高めるものである。本実施の形態において、中間層73には、絶縁性弾性層72との接着であるので、絶縁性プライマを用いている。
加圧ローラ32の表面抵抗層74は、表面抵抗率として1010Ωを用いている。105Ωでも使用できるレベルでるが、より好ましくは、107Ω〜1018Ω以上の表面抵抗率が良い。また、体積抵抗率は、107Ω・cm以上、より好ましくは、1010Ω・cm以上である。
絶縁性弾性層72としては、前述のシリコーンゴム系であれば、高温加硫型シリコーンゴム(HTV)、付加反応硬化型シリコーンゴム(LTV)、縮合反応硬化型シリコーンゴム(RTV)、その他にフッ素ゴム、またはこれらの混合物等が挙げられる。具体的には、例えば、ジメチルシリコーンゴム、フロロシリコーンゴム、メチルフェニルシリコーンゴム、ビニルシリコーンゴム等のシリコーンゴム系、フッ化ビニリデンゴム、テトラフルオロエチレン−プロピレンゴム、テトラフルオロエチレン−パーフルオロメチルビニルエーテルゴム、ホスファゼン系フッ素ゴム、フルオロポリエーテル等のフッ素ゴム等を使用することができる。これらのゴムは、各々単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができ、注型・加硫、研磨等で成形する。
図1は定着ローラ31の支持構造を示す正面図、図2は同分解斜視図である。定着ローラ31は、図1および図2に示すように、定着装置14のフレーム82に取り付けられたボールベアリング81により支持されている。フレーム82は鉄系の冷間圧延鋼をプレス成形したものである。このフレーム82は例えば画像形成装置41のフレームに取り付けられている。ボールベアリング81は、外輪部81a、転動体(図示せず)および内輪部81bを有し、定着ローラ31の両端部における絞り部分のジャーナル部31aに嵌合されている。
加圧ローラ32は、ステンレス等の軸部に対して、ボールベアリング(図示せず)を嵌合し、このボールベアリングを、フレームにカシメた支点軸から延びる荷重レバーにより受けて、定着ローラ31の中心軸方向へ、荷重バネ等によって荷重する。この荷重による圧接力は、本実施の形態において、764N(両端合計)であるが、記録材91の種類、定着ローラ31や加圧ローラ32の剛性、温調温度等の条件や性能によって、任意に設定可能である。
定着ローラ31においてボールベアリング81と嵌合する部分は、表面絶縁層63の非コーティング部である。前述のパーカライジング処理部とボールベアリングの内輪部81bとは、嵌め合いにより接触しており、これにより、ボールベアリング81の外輪部81aに対してバイアス装置94から定着バイアス電圧を印加すると、ボールベアリング81の外輪部81a→転動体→内輪部81b→定着ローラ両端部→導電性の芯金61という経路で定着バイアス電圧が印加される。
ボールベアリング81の外輪部81aとフレーム82とは金属材料にて形成されている。したがって、これら両者を直接嵌合した状態でボールベアリング81の外輪部81aに定着バイアス電圧を印加すると、定着バイアス電圧は、外輪部81aからそのままフレーム82に印加され、フレーム82を介して接地されることになる。このような場合、定着ローラ31の芯金61に適切な定着バイアス電圧が印加されず、記録材91の裏面に付着する逆極性トナー92を記録材91に留めることができなくなる。
そこで、図1および図2に示すように、フレーム82とボールベアリング81の外輪部81aとの間に、電気絶縁性の材料からなる絶縁性部材であるベアリングホルダ83を設け、このベアリングホルダ83により両者を電気的に絶縁する。ベアリングホルダ83の材料としては、PPS樹脂(ポリフェニレンサルファイド)やPPO樹脂(ポリフェニレンオキシド)等の耐熱・絶縁材料を使用することができる。上記の状態では、定着ローラ31はフレーム82と絶縁された状態であるので、ボールベアリング81の外輪部81aに対して定着バイアス電圧を印加した場合には、定着ローラ31に対して適切に定着バイアス電圧を印加することができる。なお、図1において、84は、定着ローラ31の表面温度を検出するサーミスタである。
従来は、定着ローラ31の導電性の芯金61にバイアス電圧を印加する場合、リン青銅板や接点材料などの導通部材を芯金61に摺接させて導通させ、定着バイアス電圧を印加するようにしていた。この場合、芯金61と導通部材との接触する部分、特に芯金の表面は、摺接による摩擦により磨耗や摩滅を生じ、導通不良の原因となる。
しかしながら、本実施の形態の構成によれば、ボールベアリング81の外輪部81aにバイアス装置94を接続しているので、バイアス装置94接続用の導通部材と定着ローラ31との摺接による定着ローラ31の磨耗がない。すなわち、定着ローラ31への定着バイアス電圧の印加経路における回転部分の導通は、ボールベアリング81の外輪部81aと転動体、転動体と内輪部81bとの間の接触によって実現でき、これによって定着ローラ31の磨耗を生じることなく定着ローラ31に定着バイアス電圧を印加することができる。
また、ボールベアリング81の外輪部81aと内輪部81bとの間にある転動体は、通常、ベアリング材料同志の金属接触を極力少なくして、回転摩擦が少ない状態を維持し、回転に必要な駆動力を極力少なくして、荷重を支えるようにしているが、単に金属同志の接触だけでは、回転による摩擦の影響により焼き付きを起こしてしまう。そこで、シリコーン系やフッ素系オイルをベースとした潤滑剤(グリス)を外輪部81aと内輪部81bとの間に注入し、金属同志の接触でも焼き付きを起こさないようにしている。
上記のように、ボールベアリング81はグリス(例えばフッ素系グリス)により潤滑を行っているものの、この状態でも転動体と外輪部81aや内輪部81bとの金属接触が存在し、外輪部81aに供給した定着バイアス電圧は、内輪部81bに伝わり、芯金61に伝わる。なお、グリス等の潤滑剤そのものは電気的には絶縁体であるので、さらに良好な通電を行うために、ベースとなる潤滑剤に対してカーボンや非カーボン系等の導電性付与剤を配合し、潤滑剤自体に導電性を持たせてもよい。
上記のように、定着装置14では、ボールベアリング81を介して定着ローラ31に定着バイアス電圧が印加され、定着ローラ31と加圧ローラ32とは所定の荷重で相互に圧接され、記録材91を狭持搬送しながらトナーからなる未定着画像を加熱溶融し記録材91上に定着する。
なお、本実施の形態で用いた材料や寸法、形状等は、それらに限定されるものではなく、所望の性能を逸脱しない範囲で、適宜変更可能であり、種々のものを用いることができる。
さらに、本実施の形態の定着装置14では、加圧ローラ32の周囲に、清掃部材である第1クリーニングローラ75および第2クリーニングローラ76と、第2加熱部材である加熱ローラ77が当接している。なお、79は、66と同様に、加熱ローラ77の表面温度を検出する温度検出素子であるサーミスタである。
第1および第2クリーニングローラ75,76は、アルミニウムや鉄、あるいはそれらの合金(ステンレス鋼も含む)材料からなり、中空ローラあるいは中実ローラを加工して、両端部にすべり軸受やころがり軸受を嵌合し、荷重バネ等により、加圧ローラ32に対して所定範囲のニップを保持しながら圧接している。本実施の形態では、炭素鋼やステンレス鋼製の外径15mm(第2クリーニングローラ76)と8mm(第1クリーニングローラ75)のクリーニングローラである。これら第1および第2クリーニングローラ75,76の表面は、加圧ローラ32表面に少量残留するトナーを清掃するために、所定の表面粗さを付与している。
一方、加熱ローラ77は、アルミニウムや鉄、あるいはそれらの合金(ステンレス鋼も含む)材料を用いた中空ローラであり、最外周面に設けた表面離型層77aによって離型性能を維持したまま、加圧ローラ32と圧接した際のニップでの熱伝導によって表面を加熱する。本実施の形態では、アルミニウム合金製の外径15mm、肉厚0.85mmのストレートパイプ77bの外周面に、中間層77cと表面離型層77aとを順次形成し、ストレートパイプ77bの内周面には、定着ローラ31と同様に耐熱吸熱層を設け、内部には、ハロゲンランプ77dを内包している。
加熱ローラ77において、中間層77cや表面離型層(表面絶縁層)77aは、定着ローラ31と異なる構成を用いることが可能であるが、本実施の形態では同じ構成を用いている。また、加熱ローラ77についても、両端部にすべり軸受やころがり軸受を嵌合し、荷重バネ等により、加圧ローラ32に対して所定範囲のニップを保持しながら圧接している。
定着ローラ31には、図5に示すように、記録材91の裏面に付着してくる逆極性トナー92を記録材91に留める向きに電位差を付与する目的で、バイアス装置94からバイアス電圧を印加する。本実施の形態において、転写装置5は、接触方式で転写を行うものであり、図3ではローラ状のものを示しているものの、ベルト状であってもよい。なお、図5において、記録材91における定着ローラ31側の面に付着しているトナー93は、画像を形成するトナーである。
ここで、転写装置5は、定着装置14に対して記録材91の流れにおける上流に位置しており、感光体ドラム1上に形成されたトナーによる静電顕像であるトナー画像を記録材91に写し取る転写プロセスを行う。このときに、上記の逆極性トナー92が転写装置5の表面に付着し、さらに転写装置5の表面から記録材91の裏面に付着する。
転写装置5では、通常、逆極性トナーや紙紛等を除去するような機構を有するものの、完全には除去できないことが多く、この残留した逆極性トナーや紙紛は、転写装置5の表面に蓄積されてくる。そして、電気的あるいは機械的付着力等の力のバランスによって、一部あるいは全部が記録材91に付着して、下流側の定着装置14に運ばれてくる。
通常であれば、上記逆極性トナー92や紙紛等は、そのまま記録材91に付着し、記録材91と共に画像形成装置41から排出される。しかしながら、従来の定着装置14では、多数枚の定着処理を行った場合、定着装置14の条件、特に定着ローラ31や加圧ローラ32の摩擦帯電によって生じた静電気力の大きさや極性等によって、逆極性トナー92が記録材91から引き剥がされて加圧ローラ32、さらには定着ローラ31にまで付着し、その結果、記録材91の裏面や表面に画像不良や欠陥を発生させてしまうこととなっていた。
そこで、本実施の形態の定着装置14では、定着ローラ31における導電性の芯金61に、逆極性トナー92(例えば、正極性)の帯電極性とは逆極性(例えば、負極性)の定着バイアス電圧を印加している。
このような構成では、バイアス装置94から定着ローラ31の芯金61に印加される定着バイアス電圧にて、記録材91の裏面の逆極性トナー92を記録材91の裏面に留める方向の静電気力が作用する。これにより、記録材91の裏面の逆極性トナー92は、加圧ローラ32の方へ引き剥がされることなく記録材91上に留まる。その結果、記録材91の裏面に定着されて記録材91と共に画像形成装置41から排紙される。なお、記録材91上の逆極性トナー92は、記録材91の1枚あたりの量が少量であるので、定着された画像に対してはほとんど影響のないものである。
次に、バイアス装置94からの定着バイアスについてさらに説明する。
図6は、定着装置14において定着ローラ31と加圧ローラ32との間に記録材91が挟持された状態を示す要部の縦断面図である。
本実施の形態では、定着バイアス電圧として、定着ローラ31の導電性の芯金61に対して−1kVを印加している。この定着バイアス電圧の極性は、逆極性トナー92の帯電極性が正極性であるのでマイナスである。これにより、逆極性トナー92と定着ローラ31の芯金61との間には静電引力が作用し、この逆極性トナー92を記録材91の裏面に留めることができる。
定着バイアス電圧の大きさには適度な範囲が存在する。すなわち、定着バイアス電圧が小さすぎると、逆極性トナー92を記録材91の裏面に留めるための静電引力が不足し、逆極性トナー92が加圧ローラ32の方へ移動してしまう。一方、定着バイアス電圧が大きすぎると、上記静電引力が大きくなって逆極性トナー92を記録材91に留める力は大きくなるものの、定着ローラ31の表面絶縁層63が薄いために耐電圧が低くなり、絶縁破壊を引き起こしてしまう。したがって、定着バイアス電圧の範囲は、定着ローラ31における表面絶縁層63や中間層62の材質、電気的特性、膜厚、材料欠陥(ピンホールや傷等)の有無あるいは層構造等にも依存するが、概ね−100V〜2kVの範囲(逆極性トナー92の帯電極性が負極性であれば、+200V〜2kVの範囲)とするのが好ましい。ただし、ローラの構成やトナーの帯電条件、各ローラの帯電条件などによっては、ゼロ電位(接地)とすることやフロートとすることでも同様の効果を得ることが可能である。
図7には、本実施の形態の定着装置14において、定着バイアス電圧と記録材91上における画像不良の程度との関係について調べた結果を示す。同図の結果より、定着バイアス電圧が大きい場合、あるいは定着ローラ31の表面絶縁層63の表面抵抗率が大きい場合の方が、画像不良の発生を抑制する機能が高いことがわかる。特に、記録材91の搬送速度が速く、プロセス速度が速い高速機(例えば、プロセス速度:395mm/s、複写速度:70枚/分)では、表面抵抗率を大きくして、例えば1014Ω以上、より好ましくは1015Ω以上を付与する。これにより、定着ローラ31表面に電荷を保持する時間を例えば0.2秒以上(好ましくは0.3秒以上)に保ち、電荷の漏洩減衰する時間を長く保つことで、効果的に逆極性トナー92を記録材91に留めることができるようになる。
上記の内容は、バイアス電圧94から供給される定着バイアス電圧による電流が多すぎても不具合があることも示しており、定着ローラ31は、安定した電流の供給を維持する表面抵抗率を有するものであることが望ましい。特に、流れる電流が多すぎると、不要な個所へのリーク電流が増加し、画像処理系や画像形成プロセスなどの処理系や制御系へのノイズ等による別の不具合を発生させることになる。定着ローラ31を流れる電流を安定化するための定着ローラ31の表面抵抗率は、表面絶縁層63の体積抵抗率を規定し、表面状態(表面粗さ、付着している水分量、環境条件等)を最適にすることにより得ることができる。このために、表面絶縁層63の体積抵抗率は、1013Ω・cmより大きい範囲とすることが好ましく、より好ましくは1014Ω・cm以上にすることが望ましい。あまり、多くの電流を流してしまうと、急激な電流の変化により、制御装置などの機器の動作に支障が出たり、加圧ローラ32の表面抵抗層74が劣化したり、穴があいてしまうといった悪影響が生じる。
また、バイアス装置94から定着ローラ31に定着バイアス電圧を印加することにより画像不良の発生を抑制する機能は、定着ローラ31や加圧ローラ32に用いられる導電性の芯金61,71,中間層62,73、または表面絶縁層63や表面抵抗層74の種類を変えた場合であっても、若干の変動はあるものの、同様に得ることができる。さらには、記録材91の種類や厚み、大きさを変えても、同様に得ることができる。
なお、本実施の形態では、加熱体としてハロゲンランプ64を用いた場合について説明したが、定着ローラ31の加熱方式としては、その他、ジュール熱により定着ローラ31を加熱する誘導加熱方式、芯金61の表面や内面に形成した抵抗発熱層による抵抗発熱方式、あるいはキセノン等の高エネルギーの照射による閃光発熱方式、圧力定着方式等を使用可能である。これら、種々の加熱方式を適用した場合にも、定着ローラ31に定着バイアス電圧を印加することによる上記の機能は、若干の差は生じるものの、同様に得ることができ、定着装置14は特定の加熱方式に限定されるものではない。
さらに、本実施の形態において、定着ローラ31にはハロゲンランプ64を2本内包しており、一方が中央部、他方が両端部を主として加熱する。ハロゲンランプ64が加熱する領域は、これに限定されず全幅加熱と部分加熱に分けたものでもよく、かつハロゲンランプ64の数も2本に限定されず、3本以上あるいは1本でもよい。
また、定着ローラ31は、上述した材料以外に、ステンレス鋼、ニッケルおよびその合金など耐熱性、機械的強度などで、条件を満足するものであれば使用することができる。そして、両端部において絞り加工を施してあってもよい。
以上のように、本実施の形態の構成は、ベルト状あるいはローラ状の接触によって転写する接触転写方式の定着装置において、特に効果が大きい。
〔実施の形態2〕
本発明の実施の他の形態を図面に基づいて以下に説明する。なお、説明の便宜上、前記の実施の形態に示した部材と同一の機能を有する部材には同一の符号を付記し、その説明を省略する。
本実施の形態の定着装置101は図8に示す構成となっている。定着ローラ31は、例えば、外径40mmのストレート形状をなす導電性の芯金61に、中間層62および表面絶縁層63が形成されている。本実施の形態においても、定着ローラ31は、ボールベアリング81を介してフレーム82に支持され、かつボールベアリング81はベアリングホルダ83によりフレーム82と電気的に絶縁されている。加圧ローラ32は、外径が35mmである点以外は、実施の形態1の構成と同様である。
この定着装置101は例えばハロゲンランプ64による加熱方式を用いて定着を行なうものであり、ハロゲンランプ64は、定着ローラ31に2本(1本は定着ローラ31の中央部加熱用、他の1本は定着ローラ31の両端部加熱用)が内方され、加熱ローラ77に1本(全幅加熱用)が内包されている。
加圧ローラ32の表面には、加熱ローラ77以外にクリーニングローラ102が当接している。このクリーニングローラ102は、加圧ローラ32の回転方向における加熱ローラの上流側に位置している。
この定着装置101を備えた画像形成装置41のプロセス速度は例えば335mm/sであり、複写速度あるいはプリント速度は55〜65枚/分である。この画像形成装置41における転写装置5は例えばベルト状である。
クリーニングローラ102は前記クリーニングローラ75,76と同様の構成であり、導電性を有する。このクリーニングローラ102にはバイアス装置105から定着バイアス電圧が印加されている。この定着バイアス電圧は、定着装置101において、記録材91の裏面に付着する例えば正極性の逆極性トナー92を記録材91の裏面に留める方向の静電気力を付与するためのものである。定着バイアス電圧は、逆極性トナー92と同極性の電圧であり、本実施の形態において+1kVとしている。
上記定着バイアス電圧はクリーニングローラ102を介して加圧ローラ32の表面に印加され、加圧ローラ32の表面が正電位を帯びる。これにより、記録材91の裏面(加圧ローラ32側の面)の逆極性トナー92は加圧ローラ32側に寄せ付けられず、記録材91裏面に留まる。この結果、記録材91の裏面に極少量付着している逆極性トナー92は、記録材91に定着され、記録材91と共に画像形成装置41から排出される。
図9には、本実施の形態の定着装置101において、定着バイアス電圧と記録材91上における画像不良の程度との関係について調べた結果を示す。同図の結果より、加圧ローラ32における表面抵抗層74の表面抵抗率が大きいほど、また定着バイアス電圧が大きいほど、画像不良の発生を抑制する機能が高いことがわかる。この場合、加圧ローラ32の表面抵抗層74に応じた定着バイアス電圧を印加すると効果が高い。
一方、定着バイアス電圧や表面抵抗層74の表面抵抗率が低すぎると、加圧ローラ32表面に保持される電荷を加圧ローラ32の表面電位として作用するために必要な時間だけ維持できなくなり、逆極性トナー92を記録材91へ留める効果が早期に減少する。すなわち、表面抵抗層74の表面抵抗率が小さく、減衰時間が短いような状態(例えば、0.2秒よりも短い状態)では、逆極性トナー92に対する十分な引き留め作用が発揮されない。
これは、クリーニングローラ102からの定着バイアス電圧が作用した、クリーニングローラ102に対する加圧ローラ32のニップ部が、定着ローラ31に対するニップ部に到達するまでに、そのニップ部の電位が低下し、その電位による静電気力により逆極性トナー92を記録材91に十分に留めることができないためである。その結果、逆極性トナー92は加圧ローラ32表面に移動し、その一部はクリーニングローラ102に回収される。しかしながら、残りのものは、加熱ローラ77表面や加圧ローラ32表面に残留し、最終的には、別の記録材91の裏面や定着ローラ31の表面に再付着する。定着ローラ31の表面に付着したものは別の記録材91の表面に付着して画像欠陥を生じさせる。
本実施の形態の定着装置101では、加圧ローラ32における表面抵抗層74の表面抵抗率を大きくして、例えば107Ω以上、より好ましくは108Ω以上の表面抵抗率を付与する。これにより、加圧ローラ32表面に電荷を保持する時間を例えば0.2秒以上(好ましくは0.3秒以上)に保ち、電荷の漏洩減衰する時間を長く保つことで、効果的に逆極性トナー92を記録材91に留めることができるようになる。
また、表面抵抗層74の体積抵抗率についても同様であり、105Ω・cm以上とすることが好ましく、より好ましくは1010Ω・cm以上とすることにより、同様の効果を得ることができる。
また、バイアス装置105から定着バイアス電圧を印加することにより画像不良の発生を抑制する機能は、定着ローラ31や加圧ローラ32に用いられる導電性の芯金61,71,中間層62,73、または表面絶縁層63や表面抵抗層74の種類を変えた場合であっても、若干の変動はあるものの、同様に得ることができる。さらには、記録材91の種類や厚み、大きさを変えても、同様に得ることができる。
上記の定着装置101では、逆極性トナー92を記録材91に留めるように、加圧ローラ32に対してバイアス装置105から定着バイアス電圧を印加する構成であるが、この構成の発展形態として、図10に示す構成も可能である。図10に示す定着装置111では、バイアス装置105からクリーニングローラ102を介して加圧ローラ32の表面に定着バイアス電圧を印加するとともに、バイアス装置94から定着ローラ31の導電性の芯金61に対して定着バイアス電圧を印加する構成である。
すなわち、定着ローラ31の芯金61には、第1定着バイアス電圧として記録材91上の逆極性トナー92と逆極性の電圧を印加する一方、加圧ローラ32の表面に当接する、第1クリーニングローラとしてのクリーニングローラ102には、第2着バイアス電圧として記録材91上の逆極性トナー92と同極性の電圧を印加している。本実施の形態おいて、第1定着バイアス電圧は、例えば−1kVとし、第2定着バイアス電圧は例えば+800Vとしている。
なお、定着装置111では、第2クリーニングローラ76は、加圧ローラ32の回転方向における加熱ローラ77に対する上流側位置に設けられ、第1クリーニングローラとしてのクリーニングローラ102は、下流側位置に設けられている。
また、第2定着バイアス電圧は、クリーニングローラ102に代えて加熱ローラ77に印加してもよく、この場合には例えば+1kVとする。
定着装置111では、定着装置101における、加圧ローラ32に第2定着バイアス電圧を印加することによる記録材91への逆極性トナー92の保留機能、および定着装置14における、定着ローラ31に第1定着バイアス電圧を印加することによる記録材91への逆極性トナー92の保留機能の両方の保留機能が作用し、逆極性トナー92を記録材91から加圧ローラ32の表面へ移動させることなく、確実に記録材91に保留させることができる。
すなわち、定着装置111では、記録材91の逆極性トナー92に対して、定着ローラ31と加圧ローラ32との双方から逆極性トナー92を記録材91に留めておく方向の静電気力が作用し、より大きな力による記録材91への逆極性トナー92の保留機能が働くことになる。
ここで、第1定着バイアス電圧により定着ローラ31へ流れ込む電流は通常10μA以下程度であり、また記録材91が定着装置111を通過する時には、記録材91を通って電流が流れる場合でも、通常20〜40μA程度である。しかしながら、定着ローラ31や加圧ローラ32などの表面抵抗率や体積抵抗率、ローラの構成などの条件によっては、150μAより多く流れてしまう場合がある。このような場合、定着ローラ31→加圧ローラ32→画像形成装置41のフレーム、定着ローラ31→記録材91→画像形成装置41のフレーム、あるいはクリーニングローラ102→加圧ローラ32→記録材91→画像形成装置41のフレームなどの経路で電流が流れ過ぎると、流れた電流によって、画像形成装置41の制御装置や画像処理装置にノイズ等が混入し、誤動作を引き起こす。したがって、定着バイアス電圧として流す電流は、所定の少ない範囲に抑える必要がある。また、流れた電流によって、加圧ローラ32の表面抵抗層74が劣化したり、穴があいたりして、支障が出てしまうことがある。
以上のように、本実施の形態の構成は、ベルト状あるいはローラ状の接触によって転写する接触転写方式の定着装置において、特に効果が大きい。
〔実施の形態3〕
本発明の実施のさらに他の形態を図面に基づいて以下に説明する。なお、説明の便宜上、前記の実施の形態に示した部材と同一の機能を有する部材には同一の符号を付記し、その説明を省略する。
本実施の形態において、画像形成装置41は説明の便宜上例えば図5に示す定着装置14を備えているものとする。定着ローラ31のボールベアリング81による支持構造や定着ローラ31にボールベアリング81を介して定着バイアス電圧を印加する構成については実施の形態1において前述したとおりである。
定着装置14において、ボールベアリング81を介してのバイアス装置94と定着ローラ31との電気的接続および定着バイアス電圧の供給は、その電気的経路に存在する各部材の接触部での接触抵抗と各部材の体積抵抗率や表面抵抗率などが影響する。また、ボールベアリング81では、転動体が外輪部81aと内輪部81bの案内面を転がりながら移動して、摩擦抵抗を少なくした状態で荷重を支える。したがって、上記案内面において電気的な接続がより良好となり、ボールベアリング81が焼き付きなく動作するには、ころがり軸受等のボールベアリング81において、外輪部81aと転動体、内輪部81bと転動体の各接触面の表面粗さが、中心線平均粗さRaで、0.05a以上かつ3.2a以下、最大高さRmaxで、0.2S以上かつ12.5S以下、十点平均粗さRzで、0.2Z以上かつ12.5Z以下の何れかであることが望ましい。上記各面の表面粗さは、あまり粗いと接触抵抗が増加するばかりではなく、回転時の振動が大きくなるため、適度な粗さであることが好ましい。
また、ボールベアリング81の内輪部81bと定着ローラ31との嵌合面、あるいは内輪部81bと加圧ローラ32との嵌合面のそれぞれの表面粗さについても、加熱時に良好な接触抵抗を得るためには、中心線平均粗さRaで、0.4a以上かつ12.5a以下、最大高さRmaxで、1.6S以上かつ50S以下、十点平均粗さRzで、1.6Z以上かつ50Z以下の何れかであることが好ましい。
ボールベアリング81が嵌合する定着ローラ31の表面には、前述のように、防錆の目的でパーカライジング処理が施されている。このパーカライジング処理施工面は、リン酸塩被膜である。この被膜は、その膜厚や被膜処理工程にもよるものの、完全な絶縁層ではなく抵抗層として働くことになる。したがって、数百Vの電圧を印加した場合でも抵抗値に応じた電圧降下が生じるものの、その電圧は定着バイアス電圧として機能することが可能であり、記録材91に逆極性トナー92を引き留めるように作用する。
なお、定着ローラ31におけるボールベアリング81の嵌合面において、上記のようなパーカライジング処理面、アルマイト処理面、不導体処理面、焼き付け塗装面、酸化被膜処理面あるいはアルカリ処理面などのような表面処理層130が存在する場合であっても、そこでの電圧降下が許容できる範囲のものであれば、そのような面はボールベアリング81の嵌合面として使用可能である。また、定着ローラ31とボールベアリング81の内輪部81bとの間、およびその近傍に潤滑剤が塗布されている場合であっても、ボールベアリング81の外輪部81aから定着ローラ31の芯金61など、定着バイアス電圧の作用部までの抵抗値が107Ω以下であれば、同様に、記録材91への逆極性トナー92の保留機能を得ることができる。
また、抵抗層として働く上記の表面処理層130に導電性を付与する処理を施した場合、あるいは表面処理層130に代えて導電性を付与する処理を施した場合には、抵抗層による電圧降下を低く押さえ、印加する定着バイアス電圧を有効に作用させることができるようになる。例えば、本実施例の定着ローラ31は、導電性の芯金61上に表面処理層130として、パーカライジング処理を施し、その上に中間層62を形成し、更のその上に表面絶縁層63を形成する。ここで、中間層62は、導電性プライマであり、図15に示すように、ボールベアリング81との嵌合面まで広い範囲にわたって塗布し、表面絶縁層63は、定着ローラ31の正規トナーと接する部分より僅かに広い範囲に塗布する。こうすることで、定着バイアス電圧は、内輪部81bから、中間層62を介して、表面絶縁層63に印加することが可能で、途中経路の抵抗成分などによる電圧降下を低く抑えることができる。
また、このような処理以外にも、図11に示すように、導電性部材85(定着ローラ31のストップリングとは別の部材、あるいはストップリングと兼用した部材)で、ボールベアリング81の内輪部81bと定着ローラ31の芯金61とを接触させて電気的に接続することでも、定着バイアス電圧を効果的に印加することができる。なお、ストップリングは、定着ローラ31の芯金61に形成した溝部や長穴部にはめ込まれ、スラスト方向へ定着ローラ31の移動を規制するものであり、通常、ばね鋼などにて形成され弾性を有する。例えば、導電性部材85を定着ローラ31の芯金61と内輪部81bとが導電性部材85に同時に接触するような形状とすることで、ボールベアリング81と定着ローラ31との確実な導通、およびスラスト方向への定着ローラ31の移動規制を両立させることができる。
また、定着ローラ31とボールベアリング81との嵌合面は、通常上記のように接触抵抗を伴っているものの、表面粗さをより小さくすることで接触抵抗を少なくして、両者の良好な導通を得ることができる。さらに、定着装置14を組み立てる際には、作業の効率上、常温では、定着部材21とボールベアリング81とは緩く嵌合し、定着ローラ31の温度が上昇して、定着バイアス電圧が印加される際には、表面粗さとはめあいの条件から電気的導通がより増加し、接触抵抗が低くなる。
組み立て時は、容易に取外しができ、加熱によって中間嵌めや締り嵌めのように、はめいは、中間嵌めよりも締めしろが大きくする。実際に使用する温度条件あるいはそれに近い条件では、嵌合部分の接触抵抗が低くなり、効果的に定着バイアス電圧を作用させることができる。
例えば、ボールベアリング81に嵌合する定着ローラ31の嵌合部分の寸法公差としては、ボールベアリング81や定着ローラ31及び加圧ローラ32の嵌合部分の材質、形状、熱膨張率等を考慮すると、−50μm〜+10μm、好ましくは、−40μm〜+8μm、より好ましくは、−35μm〜+5μmにすることで、常温での組み立てでは、緩く嵌合しているので、ボールベアリング81に定着ローラ31あるいは加圧ローラ32の嵌合部分が、容易に挿入でき、作業効率を損なうことはない。
一方、ウォームアップや通紙中など定着バイアス電圧を印加する時には、各々の温度が上昇するので前記はめあいは、中間嵌めや締り嵌めの状態になるので、嵌合部分の接触面積が増大して、接触抵抗が低くなり、この接触抵抗による電圧降下などの不具合がなくなり、定着バイアス電圧の効果がより高くなる。
また、定着ローラ31とボールベアリング81の材質を考慮した構成することも可能である。
また、導電性プライマ、ストップリングによる嵌合部に導電性を付与する手法の他の例として、定着ローラ31の芯金61を製作する場合に、ボールベアリング81との嵌合部に対してマスキング等によりパーカライジング処理が加わらないようにし、導電性の芯金61の表面を露出させるようにしてもよい。こうすることで、定着ローラ31の嵌合部(パーカライジング処理がされていない部分)の表面抵抗が減少し、ボールベアリング81の内輪部81bと定着ローラ31の嵌合部との接触抵抗が低くなり、ボールベアリング81の外輪部81aから定着ローラ31の芯金61までの導通が良好となる。すなわち、外輪部81aから芯金61までの電気的経路は、抵抗が小さくなる一方、急激な電流が流れた場合の緩衝機能となる程度の抵抗が存在する状態となる。これにより、逆極性トナー92を記録材91に保留させるための定着バイアス電圧を有向に作用させることができる。
本発明の定着装置は、前記軸受部材としてころがり軸受を使用し、このころがり軸受は外輪部と内輪部の間に転動体を保持し、その隙間に潤滑剤を充填した構成である。軸受部材は、荷重を支持できるだけでなく、電気的に接続されている必要があり、かつ駆動力を無駄なく伝達する構成が不可欠である。また、潤滑剤が間にあることでも、電気的な接続を保つことができ、安定してバイアス電圧を供給することができる。
なお、ここで説明したボールベアリング81は、深溝玉軸受(転動体が球形のもの)を用いているが、電気的接続が可能で、定着ローラの回転に支障がなく、熱的に使用可能なものであれば、これに限定されるものではない。例えばころ状や針状のものを用いても良く、その内部構造や材質等も本実施の形態で述べたものに限定されるものではない。
また、構造上荷重が比較的大きくない場合では、すべり軸受を用いることも可能である。この場合、すべり軸受をカーボン等を含有した耐熱樹脂材料で構成こと、あるいはすべり軸受に使用できる耐磨耗性の高い金属材料(鋳鉄、青銅、ホワイトメタルなど)を用いることも可能である。
〔実施の形態4〕
本発明の実施のさらに他の形態を図面に基づいて以下に説明する。なお、説明の便宜上、前記の実施の形態に示した部材と同一の機能を有する部材には同一の符号を付記し、その説明を省略する。
本実施の形態において、定着装置は図12に示す構成となっている。図12は定着装置121を示す概略の縦断面図である。同図の定着装置121において、定着ローラ31のボールベアリング81による支持構造、定着ローラ31にボールベアリング81を介して定着バイアス電圧を印加する構成、およびベアリングホルダ83による絶縁構造については実施の形態1において前述したとおりである。
定着ローラ31は前記定着装置101の場合のようにストレート形状であり、外径が35mmである。この定着ローラ31の表面絶縁層63は、前記定着装置14の場合と同様、非常に抵抗率の高い材料からなる。本実施の形態の形態において、表面絶縁層63はPFAとPTFEとを混合したものを塗布・焼成して形成されている。
定着ローラ31の表面には、温度検出素子であるサーミスタ66が、定着ローラ31の軸方向における中央部から45mmの位置および145mmの位置にそれぞれ配置されている。また、定着ローラ31の表面には、定着ローラ31の過昇温を検出した場合に、ハロゲンランプ64への1次ラインを直接遮断して通電停止する過熱遮断手段が1つ以上、近接もしくは略接触して配置されている。本実施の形態においては、過熱遮断手段であるサーモスタット65が定着ローラ31の表面に対して所定の空隙(約0.8mm)を保持して配置されている。サーモスタット65およびサーミスタ66は例えばフレーム82に設けられている。
加圧ローラ32は、表面抵抗層74の表面抵抗率が1010〜1011Ωであり、絶縁性弾性層72がシリコンゴムをベースとした耐熱弾性層となっている。
本実施の形態の定着装置121においても、定着ローラ31を支持するボールベアリング81と定着装置121のフレーム82とが電気絶縁性を有するベアリングホルダ83にて絶縁されている。定着装置121においてベアリングホルダ83を設けることの主目的は、他の定着装置の場合と同様、ボールベアリング81(定着ローラ31)と定着装置121のフレーム82電気的絶縁である。
ベアリングホルダ83の材料としては、熱可塑性を有する材料、例えば、PPS(ポリフェニレンサルファイド)をベースとした材料やポリアセタール、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニル系、ポリテトラフルオロエチレン等を単独、あるいは複数を併用混合してプラスチックアロイとしたもの、ガラス繊維や非金属充填材等を混合して複合材料としたものを用いてもよい。上記熱可塑性を有する材料としては、固体状の鎖状ポリマーからなり、所定の温度以上に加熱することにより変形が迅速に進むものであり、電気絶縁性を有し、かつ過昇温時230〜270℃以上に加熱することで変形するものであればどのようなものでもよい。
ベアリングホルダ83を使用してボールベアリング81(定着ローラ31)とフレーム82とを絶縁し、定着バイアス電圧を印加した状態において、ハロゲンランプ64が何らかの異常により連続点灯をしてしまった場合には、通常であればサーミスタ66が定着ローラ31の表面温度が温度制御範囲から逸脱したことを検出し、制御装置がトライアック等のスイッチング素子をOFFにする。しかしながら、このスイッチング素子がショートしたことによる連続点灯であれば、制御装置は通電を遮断することができない。また、制御装置のハードウェア上の故障やソフトウェアの暴走等が生じた場合も、同様に正常にOFFすることができない場合がある。
このような状態は適切な温度制御ができない状態であり、定着装置121、さらには画像形成装置41の異常過熱やそれによる故障を招来する。特に、近年における省エネルギーの要望の高まりに応じて、ウォームアップ時間を短縮する目的などで、定着ローラ31を薄肉構造として熱容量を小さくしている場合には、加熱速度が早く、異常過熱および故障に至るまでの時間も短いことが多い。
また、ハロゲンランプ64の配熱特性(例えば、局部加熱等により加熱領域をかなり厳密に区分けしている状態)や大電力ハロゲンランプを使用しているために加熱速度の大きいところと小さいところに大きな差を有し、サーモスタット65の配置に制約がある場合などでは、サーモスタット65の作動に極端な差が生じることがある。このような場合には、サーモスタット65が適切に作動しない、あるいは作動してもかなり時間を要するといった事態となる。
そこで、本実施の形態定着装置121では、ベアリングホルダ83を熱可塑性材料にて形成し、サーモスタット65を例えばフレーム82に設けている。これにより、異常過熱が起こった場合に、ベアリングホルダ83が、その熱を受け、かつ定着ローラ31と加圧ローラ32の圧接荷重の反力を受けることによって、変形、溶融し、予め与えていたサーモスタット65と定着ローラ31との空隙(本実施例では約0.8mm)が狭くなる。この結果、サーモスタット65は定着ローラ31の過昇温に反応し易くなり、迅速に動作する。
即ち、図13に示すように、定着ローラ31とボールベアリング81との位置関係はほぼ変化せず、ボールベアリング81(定着ローラ31)とフレーム82(フレーム82に設けられたサーモスタット65)との距離が、A1あるいはA2だけ縮んだ状態となり、サーモスタット65が定着ローラ31の異常過熱に対して、距離が縮んだ分、反応がし易くなり、通電を遮断するまでの時間が短くできる。なお、通常の構成では、サーモスタット65と定着ローラ31の空隙は一定に保たれており、サーモスタット65への熱伝導と放射によって、サーモスタット65内部のバイメタルが作動温度を越える時は、通電を遮断する。
そして、制御装置では、サーモスタット65による通電の遮断をのみを検出すること、あるいはこれに加えて定着バイアス電圧の異常を検出することにより、定着装置121の過昇温と判断することができる。
上記の構成では、従来の構成に比べて、迅速かつ確実に異常過熱に対応した動作を行い、定着装置121、さらには画像形成装置41の異常過熱による大きな故障を防止して、装置の信頼性を高めることができる。
以上のように、本発明の定着装置は、前記軸受部材と前記定着部材あるいは前記加圧部材と電気的に接続されて、前記軸受部材を介してバイアス電圧を印加する場合、前記定着部材あるいは前記加圧部材の前記軸受部材と嵌合する部分に導電性を付与して電気的に接続した構成である。
また、本発明の定着装置は、前記軸受部材と前記定着部材あるいは前記加圧部材と電気的に接続されて、前記軸受部材を介してバイアス電圧を印加する場合、前記定着部材あるいは前記加圧部材と前記軸受部材とを導電性を有する導通部材で電気的に接続した構成である。
定着部材や加圧部材の軸受部材と勘合する部分と軸受部材におけるそれらとの嵌合部分に導電性を付与することで、軸受部材から定着部材や加圧部材への抵抗値を低くすることができ、バイアス電圧の低下による実質的な供給バイアス電圧の低下を防止できる。すなわち、上記経路の抵抗となる、軸受部材と各部材との接触抵抗を小さくすれば、定着部材や加圧部材に対してロスなくバイアス電圧を供給し、より効果的に逆極性トナーを記録材へ留めることができる。
本発明の定着装置は、前記軸受部材と定着部材あるいは加圧部材との嵌め合いを、加熱時の接触抵抗を低くするために、中間嵌め或いは締り嵌めとした構成である。これにより、嵌合面での接触面積が増加して、接触抵抗が減少し、バイアス電圧を効果的に印加することができ、かつ上記接続部での発熱を低減することができる。