特許文献2に開示の定着装置は、小サイズの記録媒体を連続で通紙する場合、定着ベルトにおいて記録媒体が接触しない部分(以下「非通紙部」という)の昇温を抑制するために、面状発熱体を長手方向で分割し、分割した面状発熱体にそれぞれ通電することによって、定着ベルトにおいて記録媒体のサイズに対応した領域のみ発熱するよう構成される。その結果、温度センサおよび安全センサ、たとえばサーモスタットが複数必要となるので、定着装置の構成が複雑となり、定着装置が高価になる問題がある。
また、面状発熱体の熱容量が小さいので面状発熱体が待機状態において保持できる熱エネルギーが少なく、待機状態から連続で定着動作を開始する場合に、定着ベルトへの熱供給が追いつかずにアンダーシュートが発生し、ファーストコピー時間(First Copy Time
;FCOT)が長く必要となる問題がある。アンダーシュートとは、定着ベルトの温度が、定着温度を維持できず、定着温度を下回る現象であり、具体的には、たとえば、定着温度を180℃としたとき、定着温度まで定着ベルトの温度を追従できずに、180℃を永久に、あるいは一時的に下回ってしまう現象である。
本発明の目的は、大きさの異なる記録媒体に対して定着する場合に定着ベルトの温度均一化が可能であり、消費電力の低減が可能であり、またウォームアップ時間およびFCOTが短く、高速化を実現可能な定着装置、およびこの定着装置を備えた画像形成装置を提供することである。
本発明は、回転可能に設けられる定着ローラと、
無端状に形成され、定着ローラに巻き掛けられて、定着ローラの回転に伴って回転する定着ベルトと、
定着ベルトを介して定着ローラに圧接可能に設けられる加圧部材と、
定着ベルトを加熱する加熱手段とを備え、
加熱手段は、
定着ベルトに当接可能にして、定着ベルトの周方向に並んで設けられる複数の発熱部であって、少なくとも1つの発熱部は、定着ベルトに離接可能に設けられる複数の発熱部を有する加熱部材と、
定着ベルトの予め定める定着領域の幅方向全体にわたって離接可能に設けられ、定着領域の幅方向全体にわたって定着ベルトの熱分布を均一化する熱均一化部材とを含むことを特徴とする定着装置である。
また本発明は、加熱部材は、定着ベルトの内周面部に当接可能にして、予め定める角変位軸線まわりに角変位可能に設けられ、断面が円弧状に形成される円弧状基材を含み、
円弧状基材には、複数の発熱部のうち、少なくとも1つの発熱部と、熱均一化部材とが設けられ、
熱均一化部材は、円弧状基材の角変位移動に伴って、定着ベルトに対して離接するように形成されることを特徴とする。
また本発明は、熱均一化部材は、円弧状基材の周方向における一端部に設けられ、
円弧状基材の周方向における他端部には、もう1つの発熱部が設けられ、
もう1つの発熱部は、円弧状基材の角変位移動に伴って、定着ベルトに対して離接するように形成されることを特徴とする。
また本発明は、熱均一化部材は、定着ベルトの幅方向に延びるヒートパイプを内蔵することを特徴とする。
また本発明は、発熱部を定着ベルトに対して離接させる発熱部離接手段と、
熱均一化部材を定着ベルトに対して離接させる熱均一化部材離接手段と、
定着ローラと加圧部材との間に供給される記録媒体の寸法に応じて、発熱部および熱均一化部材のうち、少なくともいずれか一方の定着ベルトに対する離接状態を変更するように、発熱部離接手段および熱均一化部材離接手段を制御する制御手段とを含むことを特徴とする。
また本発明は、発熱部を定着ベルトに対して離接させる発熱部離接手段と、
熱均一化部材を定着ベルトに対して離接させる熱均一化部材離接手段と、
動作特性を表す情報に基づいて、発熱部および熱均一化部材のうち、少なくともいずれか一方の定着ベルトに対する離接状態を変更するように、発熱部離接手段および熱均一化部材離接手段を制御する制御手段とを含むことを特徴とする。
また本発明は、回転可能に設けられる定着ローラと、
無端状に形成され、定着ローラに巻き掛けられて、定着ローラの回転に伴って回転する定着ベルトと、
定着ベルトを介して定着ローラに圧接可能に設けられる加圧部材と、
定着ベルトを加熱する加熱手段とを備え、
加熱手段は、
定着ベルトに離接可能に設けられる複数の発熱部であって、定着ベルトの幅方向における寸法が異なる複数の発熱部を有する加熱部材を含むことを特徴とする定着装置である。
また本発明は、加熱部材は、円筒状に形成され、定着ベルトの内周面部に当接可能にして、軸線まわりに回動可能に設けられる円筒状基材を含み、
複数の発熱部は、円筒状基材の周方向に並んで円筒状基材に支持され、円筒状基材の回動に伴って、定着ベルトに対して離接するように形成されることを特徴とする。
また本発明は、各発熱部を定着ベルトに対して離接させる離接手段と、
定着ローラと加圧部材との間に供給される記録媒体の寸法に応じて、各発熱部の定着ベルトに対する離接状態を変更するように、離接手段を制御する制御手段とを含むことを特徴とする。
また本発明は、各発熱部を定着ベルトに対して離接させる離接手段と、
動作特性を表す情報に基づいて、各発熱部の定着ベルトに対する離接状態を変更するように、離接手段を制御する制御手段とを含むことを特徴とする。
また本発明は、記録媒体にトナー像を形成するトナー像形成手段と、
トナー像形成手段によって形成されたトナー像を記録媒体に定着する前記本発明の定着装置とを備えることを特徴とする画像形成装置である。
本発明によれば、無端状に形成される定着ベルトが定着ローラに巻き掛けられて、定着ローラの回転に伴って回転する。定着ベルトを介して定着ローラと加圧部材とが圧接する部分に、トナー像が形成された記録媒体が供給されるとき、加熱手段によって加熱される定着ベルトによってトナーが加熱され、定着ローラと加圧部材との圧力によって、トナー像が記録媒体に定着される。加熱手段は、複数の発熱部を有する加熱部材と、熱均一化部材とを含む。複数の発熱部は、定着ベルトの周方向に並んで設けられ、少なくとも1つの発熱部は、定着ベルトに離接可能に設けられるので、定着ベルトにおける加熱範囲を変更することができる。これによって、発熱部を定着ベルトに当接させたときに、発熱部を定着ベルトに当接させないときよりも定着ベルトの熱供給量を増加させることができる。したがって、ウォームアップ時に定着ベルトの温度をすばやく上昇させることができ、また普通サイズ紙を通紙するときに温度追従性を確保することができるので、高速化を実現可能な定着装置を実現することができる。
また熱均一化部材は、定着ベルトの定着領域の幅方向全体にわたって離接可能に設けられ、定着領域の幅方向全体にわたって定着ベルトの熱分布を均一化するので、熱均一化部材を定着ベルトに当接させたときに、定着ベルトにおいて温度の高い部分の熱を温度の低い部分に移動させ温度を均一にすることができる。したがって、小サイズ紙を連続で通紙する場合、記録媒体が接触しない定着ベルトの部分(以下「非通紙部」という)の熱が、記録媒体が接触する定着ベルトの部分(以下「通紙部」という)に移動するので、自動的に非通紙部の昇温を抑制し、通紙部の温度の低下を抑制することができ、消費電力を抑えた定着装置とすることができる。熱均一化部材を定着ベルトに当接することによって、大きさの異なる記録媒体に対して定着する場合に定着ベルトの温度均一化が可能であり、消費電力の低減が可能である。
また本発明によれば、加熱部材は、定着ベルトの内周面部に当接可能にして、角変位軸線まわりに角変位可能な円弧状基材を含み、この円弧状基材に少なくとも1つの発熱部と熱均一化部材とが設けられる。熱均一化部材は、円弧状基材の角変位移動に伴って、定着ベルトに対して離接するように形成されるので、熱均一化部材を定着ベルトに対して離接させるための手段を、発熱部を定着ベルトに対して離接させるための手段と別個に設ける必要がない。したがって定着装置の構成を簡単化することができる。
また本発明によれば、円弧状基材の周方向における一端部に熱均一化部材が設けられ、他端部にもう1つの発熱部が設けられ、この発熱部は、円弧状基材の角変位移動に伴って、定着ベルトに対して離接するように形成される。これによって、もう1つの発熱部の離接と熱均一化部材の離接とを同時に行うことができ、定着装置の構成をより簡単化することができる。
また本発明によれば、熱均一化部材は、定着ベルトの幅方向に延びるヒートパイプを内蔵するので、非通紙部の熱を効率的に通紙部に移動させることができる。したがって、熱均一化部材の熱均一化効果を向上させることができ、自動的に非通紙部の昇温を一層抑制し、通紙部の温度の低下を一層抑制することができるので、消費電力を一層抑えた定着装置とすることができる。
また本発明によれば、発熱部離接手段によって発熱部が定着ベルトに対して離接され、熱均一化部材離接手段によって熱均一化部材が定着ベルトに対して離接される。この発熱部離接手段および熱均一化部材離接手段は、制御手段によって、定着ローラと加圧部材との間に供給される記録媒体の寸法に応じて、発熱部および熱均一化部材のうち、少なくともいずれか一方の定着ベルトに対する離接状態を変更するように制御される。これによって、たとえば普通サイズ紙を通紙する際には、発熱部を定着ベルトに当接させることができる。したがって、普通サイズ紙を通紙する際には、定着ベルトへの熱供給量が増加するので、連続通紙時の温度追従性を確保することができる。したがって、消費電力を抑えた高速の定着装置とすることができる。
また本発明によれば、発熱部離接手段によって発熱部が定着ベルトに対して離接され、熱均一化部材離接手段によって熱均一化部材が定着ベルトに対して離接される。この発熱部離接手段および熱均一化部材離接手段は、制御手段によって、動作特性を表す情報に基づいて、発熱部および熱均一化部材のうち、少なくともいずれか一方の定着ベルトに対する離接状態を変更するように制御される。これによって、たとえばウォームアップ時には、発熱部を定着ベルトに当接させ、待機中には、熱均一化部材を定着ベルトに当接させることができる。したがって、ウォームアップ時には、定着ベルトへの熱供給量が増加するので、定着ベルトの温度を定着温度まですばやく立ち上げることができ、待機中は、熱容量の大きな熱均一化部材に熱が溜め込まれるので、待機直後に連続通紙した場合でもアンダーシュートが発生せず、FCOT(ファーストコピー時間)を短縮することができる。したがって、より高速の定着装置とすることができる。
また本発明によれば、無端状に形成される定着ベルトが定着ローラに巻き掛けられて、定着ローラの回転に伴って回転する。定着ベルトを介して定着ローラと加圧部材とが圧接する部分に、トナー像が形成された記録媒体が供給されるとき、加熱手段によって加熱される定着ベルトによってトナーが加熱され、定着ローラと加圧部材との圧力によって、トナー像が記録媒体に定着される。加熱手段は、複数の発熱部を有する加熱部材を含む。複数の発熱部は、定着ベルトの幅方向における寸法(以下「幅」という)が異なり、定着ベルトに離接可能に設けられる。これによって、定着ベルトにおける加熱範囲を変更することができるので、記録媒体の大きさに応じて定着ベルトの発熱領域を変更することができるので、自動的に非通紙部昇温を抑制することができる。また、定着ベルトの温度を検知する温度センサおよび安全センサを設ける場合、それぞれ1つで済むので、温度センサおよび安全センサを複数用いる場合よりも定着装置の構成を簡単にすることができ、コストを削減することができる。
また本発明によれば、加熱部材は、定着ベルトの内周面部に当接可能にして、軸線まわりに回動可能に設けられる円筒状基材を含み、この円筒状基材の周方向に並んで複数の発熱部が円筒状基材に支持され、円筒状基材の回動に伴って、定着ベルトに対して離接するように形成される。これによって複数の発熱部を簡単に定着ベルトに対して離接することができるので、定着装置の構成を簡単化することができる。
また本発明によれば、離接手段によって各発熱部が定着ベルトに対して離接され、この離接手段は、制御手段によって、定着ローラと加圧部材との間に供給される記録媒体の寸法に応じて、各発熱部の定着ベルトに対する離接状態を変更するように制御される。これによって、たとえば普通サイズ紙を通紙する際には、幅の広い発熱部を定着ベルトに当接させることができる。したがって、普通サイズ紙を通紙する際には、定着ベルトへの熱供給量が増加するので、連続通紙時の温度追従性を確保することができる。したがって、消費電力を抑えた高速の定着装置とすることができる。
また本発明によれば、離接手段によって各発熱部が定着ベルトに対して離接され、この離接手段は、制御手段によって、動作特性を表す情報に基づいて、各発熱部の定着ベルトに対する離接状態を変更するように制御される。これによって、たとえばウォームアップ時には、幅の広い発熱部を定着ベルトに当接させることができる。したがって、ウォームアップ時には、定着ベルトへの熱供給量が増加するので、定着ベルトの温度を定着温度まですばやく立ち上げることができる。したがって、より高速の定着装置とすることができる。
また本発明によれば、前述のような優れた本発明の定着装置と、トナー像形成手段とを備えて画像形成装置が構成される。本発明の定着装置は装置構成が単純化されており、コストが削減可能であるので、本発明の定着装置を備えて画像形成装置が構成されることによって、画像形成装置自体の装置構成の単純化およびコスト削減が可能になる。また、本発明の定着装置はウォームアップ時に定着ベルトの温度をすばやく上昇させることができ、また普通サイズ紙を通紙するときに温度追従性を確保することができるので、高速化が実現可能であり、本発明の定着装置を備えて画像形成装置が構成されることによって、高速の画像形成装置とすることができる。
本発明の第1の実施形態である定着装置は、未定着のトナー像が形成された記録媒体に対し熱および圧力を加えることによって、未定着のトナー像を記録媒体に定着させるものである。未定着のトナー像は、非磁性トナーからなる非磁性1成分現像剤、非磁性トナーおよびキャリアからなる非磁性2成分現像剤、または磁性トナーからなる磁性現像剤などの現像剤(以下では、単に「現像剤」と呼ぶ場合がある。)に含まれるトナーで形成される。
図1は、本発明の第1の実施形態の定着装置15の構成を示す概略断面図である。図2は、図1に示す加熱部材156を切断面線S148―S148からみた概略断面図である。図1および図2に示すように、定着装置15は、定着ローラ15aと、加圧ローラ15bと、定着ベルト113と、加熱手段117と、第1サーミスタ118と、第2サーミスタ119とを含む。
一対の定着部材である定着ローラ15aおよび加圧ローラ15bは、定着ベルト113を介して所定の荷重、たとえば216Nで互いに圧接する。加圧ローラ15aは、加圧部材に相当する。定着ローラ15aおよび加圧ローラ15bが互いに圧接することによって、それらの間に、定着ローラ15aおよび加圧ローラ15bが定着ベルト113を介して互いに圧接する部分(以下「定着ニップ部」という)138が形成される。
定着ローラ15aは、回転可能に設けられ、図示しない駆動手段である駆動モータによって矢符121の方向に回転駆動される。定着ローラ15aは、定着ローラ15a表面と定着ベルト113表面との摩擦力で定着ベルト113を矢符136の方向に回転させ、さらに定着ベルト113表面と加圧ローラ15b表面との摩擦力で加圧ローラ15bを矢符137の方向に回転させる。このように定着ベルト113および加圧ローラ15bは、定着ローラ15aの回転に従動して回転する。したがって、定着ローラ15aと加圧ローラ15bとは互いに逆方向に回転する。これによって、記録媒体が定着ローラ15aと加圧ローラ15bとに狭持されて搬送され、定着ニップ部138を通過し、記録媒体に未定着のトナー像が定着される。記録媒体が定着ニップ部138を通過するとき、定着ローラ15aは、記録媒体のトナー像が形成されている面に定着ベルト113を介して当接し、加圧ローラ15bは記録媒体のトナー像が形成されている面とは反対の面に当接する。
定着ローラ15aは、その内側から順に円柱状の芯金153、弾性層154が形成される2層構造のロール状部材である。芯金153の材料としては、たとえば、鉄、ステンレス鋼、アルミニウム、銅などの金属およびそれらの合金が挙げられる。弾性層154の材料としては、たとえば、シリコーンゴム、フッ素ゴムなどの耐熱性を有するゴム材料が挙げられる。本実施形態において、定着ローラ15aは、芯金として直径15mmのステンレス鋼から成る芯金を用い、弾性層として厚さ7.5mmのシリコンスポンジゴム層を用いて構成される。定着ローラ15aの直径は30mmである。
加圧ローラ15bの内部には、加圧ローラ15bを加熱するヒータランプ120が設けられる。本発明の他の実施形態においては、加圧ローラ15b内部にヒータランプ120などの熱源を含まなくてよいが、加圧ローラ15b内部に熱源を設け、加圧ローラ15bからの熱を定着に用いることによって、定着を補助することができる。加圧ローラ15bは、図示しない制御回路が図示しない電源回路で電力をヒータランプ120に供給することによって、ヒータランプ120が発光し、ヒータランプ120から赤外線が放射される。加圧ローラ15bは、その内周面がヒータランプ120からの赤外線を吸収して加熱され、その熱が伝わることによって加圧ローラ15b全体が加熱される。本実施形態では、加圧ローラ15b内部のヒータランプ200として定格電力400Wのヒータランプを用いる。
加圧ローラ15bは、その内側から順に円筒状の芯金151、弾性層152、離型層155が形成される3層構造のロール状部材である。芯金151の半径方向内方側にヒータランプ120が設けられる。芯金151の材料としては、たとえば、鉄、ステンレス鋼、アルミニウム、銅などの金属およびそれらの合金が挙げられる。弾性層152の材料としては、たとえば、シリコーンゴム、フッ素ゴムなどの耐熱性を有するゴム材料が挙げられる。離型層155の材料としては、PFA(テトラフルオロエチレンとパーフルオロアルキルビニルエーテルとの共重合体)、ポリテトラフルオロエチレン(
polytetrafluoroethylene;PTFE)などのフッ素樹脂が挙げられる。本実施形態において、加圧ローラ15bは、芯金151として内径24mm、肉厚2mmの鉄(STKM)からなる芯金を用い、弾性層として厚さ3mmのシリコンソリッドゴム層を用い、離型層として厚さ30μmのPFAチューブを用いて構成される。加圧ローラ15bの外径は30mmである。
本実施形態では、定着ベルト113を介して定着ローラ15aと加圧ローラ15bとによって形成される定着ニップ部138の記録媒体搬送方向における幅(以下「ニップ幅」という)は7mmである。
定着ベルト113は、加熱部材156によって加熱され、定着ニップ部138を通過する未定着トナー画像が形成された記録媒体を加熱する。定着ベルト113は、加熱部材115と定着ローラ15aとによって懸架され、定着ローラ15aに所定の角度(以下「巻きかけ角度」という)θで巻きかけられる。
巻きかけ角度θは、定着ローラ15a表面と定着ベルト113との2つの接点と、定着ローラ15aの軸心とをそれぞれ結ぶ2つの線分の成す角度である。本実施形態において、巻きかけ角度θは185°である。
定着ベルト113は、ポリイミドなどの耐熱樹脂、またはステンレスおよびニッケルなどの金属材料からなる中空円筒状の基材の表面に、弾性層、離型層が形成される3層構成の無端のベルト状部材である。弾性層の材料としては、耐熱性および弾性に優れたエラストマー材料、たとえばシリコーンゴムが挙げられ、弾性層表面の離型層の材料としては、耐熱性および離型性に優れた合成樹脂材料、たとえばPFAやPTFEなどのフッ素樹脂が挙げられる。基材としてポリイミドを用いる場合、ポリイミドにフッ素樹脂を内添すると、定着ベルトと加熱部材との摺動負荷を更に低減することができる。本実施形態では、定着ベルト113は、基材として厚さ70μmのポリイミドからなる基材を用い、弾性層として厚さ150μmのシリコーンゴム層を用い、離型層として厚さ30μmのPFAチューブを用いて構成される。定着ベルト113の直径は、45mmである。
加熱手段117は、定着ベルト113と接して、定着ベルト113を定着温度に加熱するロール状部材である加熱部材156と熱均一化部材124とを含む。図2に示すように、加熱部材156は、胴部126と、胴部126の両側の2つのジャーナル部127とからなる中空のロール形状の部材である加熱部材本体157と、胴部126に設けられる面状発熱体122および支持体123とを含む。胴部126は下半分がカットされた切り欠き部を有する半円弧状の断面形状である。半円弧状の胴部126の下部にはスカート部139が取り付けられている。
図1に示すように、スカート部139は、支持体123と、熱均一化部材124と、面状発熱体122の延長部122aとを含む。支持体123は、断面が長方形状の中空の四角柱状に形成されるアルミニウム製の部材であり、支持体123内部の片側に熱均一化部材124が設けられ、支持体123内部の熱均一化部材124と反対側に面状発熱体122の延長部122aが設けられる。面状発熱体122は、発熱部166を含み、発熱部166は、面状発熱体122の延長部122aに形成される延長部発熱部166aと、面状発熱体122に形成される発熱部166のうち延長部発熱部166aを除いた残りの部分である円弧状発熱部166cとを含む。
熱均一化部材124は、たとえばアルミニウム製または銅製などの熱伝導の高い金属製のブロックからなる。熱均一化部材124は、本実施形態では長手方向が加熱部材156の回転軸線に平行な直方体状である。熱均一化部材124内部には、長手方向に延びるように円筒形状のヒートパイプ125を2本内蔵させる。ヒートパイプ125の本数は、2本に限定されるのではなく、たとえばヒートパイプ125を1本または3本内蔵させてもよい。本発明の他の実施形態では、ヒートパイプ125を内蔵させなくてもよい。
図2に示すように、加熱部材156は、ジャーナル部127が定着装置本体150のサイドフレーム140に対して軸受け141を介して挿入される。ジャーナル部127は蛇行防止用カラー142に挿入される。蛇行防止用カラー142はボールベアリングによって実現され、外輪部143が定着ベルト113の幅方向における端部と接するような位置関係になる。一方のジャーナル部127aには、ギアチェーン144が設けられ、パルスモータ145の回転によって、回転駆動される。このギアチェーン144の回転駆動が一方のジャーナル部127aに伝わり、加熱部材156が周方向に角変位する。ギアチェーン144およびパルスモータ145は、発熱部離接手段および熱均一化部材離接手段に相当する。
本実施形態において、胴部126の直径は、28mmであり、ジャーナル部127の直径は、20mmである。加熱部材本体157は、肉厚1mmのアルミニウム製パイプから作製される。加熱部材本体157であるアルミニウム製ホルダー157は、端部がローラ形状となっており、ボールベアリング製の蛇行防止用カラー142が半径方向外方側からはめ込まれた構成である。蛇行防止用カラー142は内径20mm、外径32mm、幅7mmのボールベアリングからなる。
円弧状基材である加熱部材本体157は、たとえばアルミニウム製ホルダーによって実現される。本実施形態では、加熱部材本体157であるアルミニウム製ホルダー157の外周面にはカーボンが添加されたフッ素樹脂がコーティングされており、定着ベルト113の基材であるポリイミドにはフッ素樹脂が内添されているので、加熱部材156と定着ベルト113との間の摩擦係数が抑制され、スムーズに摺動することができる。
アルミニウム製ホルダー157は、端部はローラ形状となっており、ボールベアリング製の蛇行防止用カラー142がはめ込まれた構成であるので、定着ベルト113の蛇行を抑制することができる。アルミ製ホルダー自身は回転しないものの、蛇行防止用カラー142はボールベアリング製であり、独立で回転可能であることから、定着ベルト113端部が蛇行防止用カラー142に当接しても外輪部143は摺動せず、定着ベルト113と同期して回転するので、定着ベルト113端部に負荷がかからず、定着ベルト113端部割れを防止することができる。
図3は、図1に示す加熱部材156のセクションS146ーS146における拡大断面図である。図3に示すように、面状発熱体122は、抵抗発熱層128と絶縁層129とを含む。支持体123は、基材130とコート層131とを含む。本実施形態において、抵抗発熱層128は厚さ15μmのステンレス箔であり、絶縁層129は厚さ30μmのポリイミド層であり、基材130は厚さ1mmのアルミニウム製ホルダーであり、コート層131は厚さ20μmのPTFEコート層である。前述の図1に示す加熱部材本体157の胴部126は、支持体123と同様に構成され、具体的には、基材とコート層とを含む。
面状発熱体122の絶縁層129および抵抗発熱層128は、この順に支持体123の基材130および加熱部材本体157の表面部に形成される。支持体123の基材130および加熱部材本体157がアルミニウムで形成されることによって、面状発熱体122で発生した熱が基材130であるアルミニウム製ホルダーを介して定着ベルト113に伝わる。熱がアルミニウム製ホルダーを介して伝わることによって、抵抗発熱層128の発熱パターン147の形状に起因する過熱むらを抑制することができる。また、アルミニウム製ホルダーによって長手方向の熱移動(熱伝導性)が向上するので、小サイズ紙を連続通紙した場合の非通紙部の昇温を抑制することができる。
図4は、面状発熱体122の抵抗発熱層128の構成を示す平面図である。図4は、面状発熱体122を抵抗発熱層128側から見た平面図に相当する。面状発熱体122は、加熱部材本体157の軸線方向における両端部に設けられる給電部132と加熱部材本体157の軸線方向における両端部間の中間部に設けられる発熱部166とを含む。発熱部166は、面状発熱体122の延長部122aに形成される延長部発熱部166aと、面状発熱体122に形成される発熱部166のうち延長部発熱部166aを除いた残りの部分である円弧状発熱部166cとを含む。発熱部166の抵抗発熱層128は発熱部166の両側に形成された給電部132から加熱部材本体157の軸線方向に一定幅で延びて折り返すことを繰り返す発熱パターン147を有する。本実施形態において、発熱パターン147の線幅は2.4mmであり、隣り合う発熱パターン147の間隔は2.4mmであり、隣り合う発熱パターン147の折り返し長さは320mmであり、平行な発熱パターン147の数は6本である。また給電部132間の抵抗は10Ωである。給電部132はAC電源が接続され、発熱部166にAC100Vが印加されることで、発熱部166では約1000Wの熱エネルギーが発生する。
図1に戻って、本実施形態では、加熱部材156の外径、すなわち加熱部材本体157の胴部126の外径は、定着ローラ15aの外径より小さい。本発明の他の実施形態においては加熱部材156の外径は、定着ローラ15aの外径と等しい、または大きくてもよいが、加熱部材156の外径は、定着ローラ15aの外径より小さいほうが好ましい。こうすることによって、定着ローラ15aに対する定着ベルト113の巻きかけ角θを大きくすることができ、定着ローラ15aと定着ベルト113との接触面積を大きくすることができるので、定着ローラ15aによる定着ベルト113の回転力を大きくすることができる。また、定着ベルト113と加熱部材156との接触面積を小さくすることができるので、定着ベルト113と、加熱部材156とが擦れることによる摺動負荷を低減することができる。本実施形態において、定着ベルト113と加熱部材156との接触部分の定着ベルト113の周方向における幅(以下「加熱ニップ幅」という)は44mmである。
第1サーミスタ118は定着ベルト113の外周面温度を検知し、第2サーミスタ119は加圧ローラ15bの外周面温度を検知する。第1および第2サーミスタ118,119によってそれぞれ検出された温度データに基づき、温度制御手段としての制御部158が、定着ベルト113および加圧ローラ15bの表面温度を所定の温度にするように、面状発熱体122、面状発熱体122の延長部122aおよびヒータランプ120への供給電力(通電)を制御する。本実施形態において、第1サーミスタ118は非接触式サーミスタであり、第2サーミスタ119は接触式サーミスタである。
次に本実施形態の定着装置15の動作と本発明の効果について記載する。
定着装置15の動作としては、定着ニップ部に所定の定着速度および複写速度で未定着トナー像が形成された記録媒体が搬送され、熱と圧力とによって定着が行われる。なお、定着速度とは所謂プロセス速度のことである。また、複写速度とは1分あたりのコピー枚数のことである。これらの速度は特に限定されるものではないが、本実施形態では、定着速度220mm/secとしている。
本実施形態において、無端状に形成される定着ベルト113が定着ローラ15aに巻き掛けられて、定着ローラ15aの回転に伴って回転する。定着ベルト113を介して定着ローラ15aと加圧ローラ15bとが圧接する部分に、トナー像が形成された記録媒体が供給されるとき、加熱手段117によって加熱される定着ベルト113によってトナーが加熱され、定着ローラ15aと加圧ローラ15bとの圧力によって、トナー像が記録媒体に定着される。加熱手段117は、複数の発熱部166c,166aを有する加熱部材156と、熱均一化部材124とを含む。複数の発熱部166c,166aは、定着ベルト113の周方向に並んで設けられ、少なくとも1つの延長部発熱部166aは、定着ベルト113に離接可能に設けられるので、定着ベルト113における加熱範囲を変更することができる。これによって、延長部発熱部166aを定着ベルト113に当接させたときに、延長部発熱部166aを定着ベルト113に当接させないときよりも定着ベルト113の熱供給量を増加させることができる。したがって、ウォームアップ時に、加熱部材156を図1に示す矢符Aの方向に所定の角度だけ回転移動させ、延長部発熱部166aを定着ベルト113に当接させることによって、定着ベルト113の温度をすばやく上昇させることができ、また普通サイズ紙を通紙するときに、加熱部材156を図1に示す矢符Aの方向に所定の角度だけ回転移動させ、延長部発熱部166aを定着ベルト113に当接させることによって、温度追従性を確保することができるので、高速化を実現可能な定着装置15を実現することができる。
本実施形態において、熱均一化部材124は、定着ベルト113の定着領域の幅方向全体にわたって離接可能に設けられ、定着領域の幅方向全体にわたって定着ベルト113の熱分布を均一化するので、熱均一化部材124を定着ベルト113に当接させたときに、定着ベルト113において温度の高い部分の熱を温度の低い部分に移動させ温度を均一にすることができる。したがって、小サイズ紙を連続で通紙する場合、加熱部材156を図1に示す矢符Bの方向に回転移動させ、熱均一化部材124を定着ベルト113に当接させることによって、記録媒体が接触しない定着ベルト113の部分(以下「非通紙部」という)の熱が、記録媒体が接触する定着ベルト113の部分(以下「通紙部」という)に移動するので、自動的に非通紙部の昇温を抑制し、通紙部の温度の低下を抑制することができ、消費電力を抑えた定着装置15とすることができる。熱均一化部材124を定着ベルト113に当接することによって、大きさの異なる記録媒体に対して定着する場合に定着ベルト113の温度均一化が可能であり、消費電力の低減が可能である。
本実施形態において、加熱部材156は、定着ベルト113の内周面部に当接可能にして、角変位軸線まわりに角変位可能な円弧状基材を含み、この円弧状基材に少なくとも1つの発熱部166aと熱均一化部材124とが設けられる。熱均一化部材124は、円弧状基材の角変位移動に伴って、定着ベルト113に対して離接するように形成されるので、熱均一化部材124を定着ベルト113に対して離接させるための手段を、延長部発熱部166aを定着ベルト113に対して離接させるための手段と別個に設ける必要がない。したがって定着装置15の構成を簡単化することができる。
本実施形態において、円弧状基材の周方向における一端部に熱均一化部材124が設けられ、他端部にもう1つの発熱部166aが設けられ、この延長部発熱部166aは、円弧状基材の角変位移動に伴って、定着ベルト113に対して離接するように形成される。これによって、もう1つの発熱部166aの離接と熱均一化部材124の離接とを同時に行うことができ、定着装置15の構成をより簡単化することができる。
本実施形態において、熱均一化部材124は、定着ベルト113の幅方向に延びるヒートパイプを内蔵するので、非通紙部の熱を効率的に通紙部に移動させることができる。したがって、熱均一化部材124の熱均一化効果を向上させることができ、自動的に非通紙部の昇温を一層抑制し、通紙部の温度の低下を一層抑制することができるので、消費電力を一層抑えた定着装置15とすることができる。
本実施形態において、ギアチェーン144およびパルスモータ145によって延長部発熱部166aが定着ベルト113に対して離接され、ギアチェーン144およびパルスモータ145によって熱均一化部材124が定着ベルト113に対して離接される。このギアチェーン144およびパルスモータ145は、制御手段によって、定着ローラ15aと加圧ローラ15bとの間に供給される記録媒体の寸法に応じて、延長部発熱部166aおよび熱均一化部材124のうち、少なくともいずれか一方の定着ベルト113に対する離接状態を変更するように制御される。たとえば普通サイズ紙を通紙する際には、ギアチェーン144およびパルスモータ145によって、加熱部材156を図1に示す矢符Aの方向に所定の角度だけ回転移動させ、延長部発熱部166aを定着ベルトに当接させることができる。したがって、普通サイズ紙を通紙する際には、定着ベルト113への熱供給量が増加するので、連続通紙時の温度追従性を確保することができる。したがって、消費電力を抑えた高速の定着装置15とすることができる。
本実施形態において、ギアチェーン144およびパルスモータ145によって延長部発熱部166aが定着ベルト113に対して離接され、ギアチェーン144およびパルスモータ145によって熱均一化部材124が定着ベルト113に対して離接される。このギアチェーン144およびパルスモータ145およびギアチェーン144およびパルスモータ145は、制御手段によって、動作特性を表す情報に基づいて、延長部発熱部166aおよび熱均一化部材124のうち、少なくともいずれか一方の定着ベルト113に対する離接状態を変更するように制御される。これによって、たとえばウォームアップ時には、ギアチェーン144およびパルスモータ145によって、加熱部材156を図1に示す矢符Aの方向に所定の角度だけ回転移動させ、延長部発熱部166aを定着ベルト113に当接させ、待機中には、ギアチェーン144およびパルスモータ145によって、加熱部材156を図1の矢符Bの方向に所定の角度だけ回転移動させ、熱均一化部材124を定着ベルト113に当接させることができる。したがって、ウォームアップ時には、定着ベルト113への熱供給量が増加するので、定着ベルト113の温度を定着温度まですばやく立ち上げることができ、待機中は、熱容量の大きな熱均一化部材124に熱が溜め込まれるので、待機直後に連続通紙した場合でもアンダーシュートが発生せず、FCOT(ファーストコピー時間)を短縮することができる。したがって、より高速の定着装置15とすることができる。
以下、本発明の第2の実施形態における定着装置135について説明する。本実施形態における定着装置135は、本発明の第1実施形態の定着装置15と加熱手段以外の構成については全く同じであるので、加熱手段以外の構成については説明を省略する。
図5は、本発明の第2の実施形態である定着装置135の構成を示す概略断面図である。図6は、図5に示す加熱部材134を切断面線S149ーS149からみた概略断面図である。図5および図6に示すように、本実施形態の加熱部材134は、断面が半円弧状の第1面状発熱体122と断面が半円弧状の第2面状発熱体122bとが組み合わさった円筒状の形状となっている。第1面状発熱体122は、第1の実施形態において用いられる面状発熱体122が、面状発熱体122の延長部122aを含んで断面が半円弧状に形成されたものである。第1面状発熱体122は、第1の実施形態において用いられる面状発熱体122の延長部122aを含んで断面が半円弧状に形成される以外は、面状発熱体122と同様の構成である。第2面状発熱体122bは、抵抗発熱層128の形状以外は、第1面状発熱体122と同じ構成である。円筒状基材である加熱部材本体157bは、形状が円筒状であること以外は、第1の実施形態において円弧状基材である加熱部材本体157と同様の構成である。
図7は、第2面状発熱体122bの抵抗発熱層128bを示す平面図である。抵抗発熱層128bは、発熱パターン147が基材130の長手方向に関して両端部間の中央部に密集して、すなわち中央部で折り返されて形成される。この発熱パターン147が折り返して形成される部分が発熱部166bである。第2面状発熱体122bは、定着ベルト133の幅方向における発熱部166bの寸法(以下「幅」という)が第1面状発熱体122の発熱部166の幅よりも小さく形成される。本実施形態において、発熱パターン147の線幅は4mmであり、隣り合う発熱パターン147の間隔は3mmであり、発熱部166bの幅は220mmであり、平行な発熱パターン147の数は5本である。2つの給電部132間の抵抗は14.7Ωである。加熱部材135と定着ベルト113との加熱ニップ幅は44mmである。
2つの給電部132間には図示しないAC電源が接続されている。本実施形態では、発熱部166bにAC100Vが印加されることで、発熱部166bでは約680Wの熱エネルギーが発生する。
本実施形態において、無端状に形成される定着ベルト113が定着ローラ15aに巻き掛けられて、定着ローラ15aの回転に伴って回転する。定着ベルト113を介して定着ローラ15aと加圧ローラ15bとが圧接する部分に、トナー像が形成された記録媒体が供給されるとき、加熱手段117bによって加熱される定着ベルト113によってトナーが加熱され、定着ローラ15aと加圧ローラ15bとの圧力によって、トナー像が記録媒体に定着される。加熱手段117bは、複数の発熱部166,166bを有する加熱部材134を含む。複数の発熱部166,166bは、定着ベルト113の幅方向における寸法(以下「幅」という)が異なり、定着ベルト113に離接可能に設けられる。これによって、定着ベルト113における加熱範囲を変更することができるので、記録媒体の大きさに応じて定着ベルト113の発熱領域を変更することができるので、自動的に非通紙部昇温を抑制することができる。また、定着ベルト113の温度を検知する温度センサおよび安全センサを設ける場合、それぞれ1つで済むので、温度センサおよび安全センサを複数用いる場合よりも定着装置135の構成を簡単にすることができ、コストを削減することができる。
本実施形態において、加熱部材134は、定着ベルト113の内周面部に当接可能にして、軸線まわりに回動可能に設けられる円筒状基材を含み、この円筒状基材の周方向に並んで複数の発熱部166,166bが円筒状基材に支持され、円筒状基材の回動に伴って、定着ベルト113に対して離接するように形成される。これによって複数の発熱部166,166bを簡単に定着ベルト113に対して離接することができるので、定着装置135の構成を簡単化することができる。
本実施形態において、離接手段によって各発熱部166,166bが定着ベルト113に対して離接され、この離接手段は、制御手段によって、定着ローラ15aと加圧ローラ15bとの間に供給される記録媒体の寸法に応じて、各発熱部166,166bの定着ベルト113に対する離接状態を変更するように制御される。これによって、たとえば普通サイズ紙を通紙する際には、幅の広い発熱部166を定着ベルトに当接させることができる。したがって、普通サイズ紙を通紙する際には、定着ベルト113への熱供給量が増加するので、連続通紙時の温度追従性を確保することができる。したがって、消費電力を抑えた高速の定着装置135とすることができる。
本実施形態において、離接手段によって各発熱部166,166bが定着ベルト113に対して離接され、この離接手段は、制御手段によって、動作特性を表す情報に基づいて、各発熱部166,166bの定着ベルト113に対する離接状態を変更するように制御される。これによって、たとえばウォームアップ時には、面状発熱体122が定着ベルト113に当接するよう、ギアチェーン144およびパルスモータ145を用いて加熱部材134を図5に示す矢符Aの方向に所定の角度だけ回転移動し、幅の広い発熱部166を定着ベルト113に当接させることができる。したがって、ウォームアップ時には、定着ベルト113への熱供給量が増加するので、定着ベルト113の温度を定着温度まですばやく立ち上げることができる。したがって、より高速の定着装置135とすることができる。
一方、小サイズ紙を通紙する場合は、加熱部材134を図5に示す矢符Bの方向に180度回転移動させ、幅のせまい発熱部166bを定着ベルトに当接させる。これにより、非通紙部における定着ベルトの加熱が抑制されるため、自動的に非通紙部昇温を抑制することが可能となる。
図8は、本発明の実施の一形態である定着装置15を備える画像形成装置100の構成を模式的に示す概略断面図である。本実施形態では、画像形成装置100は、カラー複合機である。画像形成装置100は、たとえばネットワーク上の各端末装置から送信される画像データなどに基づいて、記録媒体に画像を形成する。画像形成装置100は、4つの可視像形成ユニットpa,pb,pc,pdと、中間転写ベルト11と、光学系ユニットEと、二次転写ユニット14と、定着ユニット15と、内部給紙ユニット16と、給紙ユニット17とを含む。
4つの可視像形成ユニットpa,pb,pc,pdは、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)およびブラック(B)の4色にそれぞれ対応した画像を形成する。第1可視像形成ユニットpaは、イエロー(Y)のトナーを用いて画像形成を行い、第2可視像形成ユニットpbは、マゼンダ(M)のトナーを用いて画像形成を行い、第3可視像形成ユニットpcは、シアン(C)のトナーを用いて画像形成を行い、第4可視像形成ユニットpdは、ブラック(B)のトナーを用いて画像形成を行う。以下、4つの可視像形成ユニットpa,pb,pc,pdの共通の構成について説明する場合、各構成の末尾の参照符号a,b,cおよびdを省略する場合がある。
4つの可視像形成ユニットpa,pb,pc,pdは、それぞれ実質的に同一の構成を有し、それぞれに、感光体ドラム101と、帯電ユニット103と、現像ユニット102と、一次転写ユニット13と、クリーニングユニット104とを含む。一次転写ユニット13は、中間転写ベルト11を介して配置される。各可視像形成ユニットpa,pb,pc,pdは、中間転写ベルト11に各色トナーを多重転写する。
感光体ドラム101は、像担持体であり形成される画像を担持する。感光体ドラム101は、まず帯電ユニット103によって、感光体ドラム101の表面を所定の電位に均一に帯電される。本実施形態では、帯電ユニット103は、感光体ドラム101表面を一様帯電させ、またオゾンを極力発生させることなく帯電させるために、帯電ローラ方式を用いる。均一に帯電された感光体ドラム101は、光学系ユニットEによって各色の画像情報に応じてレーザ露光され、感光体ドラム101表面に静電潜像が形成される。光学系ユニットEは、光源4からのデータが感光体ドラム101表面に届くように配置される。
感光体ドラム101の表面に形成された静電潜像は、現像ユニット102によって各色のトナーで顕像化される。現像ユニット102には、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックのトナーがそれぞれ収容される。顕像化されたトナー像は、一次転写ユニット13によって中間転写ベルトにトナーとは逆極性のバイアス電圧を印加され、中間転写ベルト11に転写させる。
中間転写ベルト11は、テンションローラ11aおよびテンションローラ11bによってたわむことなく配置される。テンションローラ11b側には廃トナーボックス12、テンションローラ11a側には二次転写ユニット14が当接して配置される。二次転写ユニット14で転写されずに残った中間転写ベルトのトナーは、廃トナーボックス12に収容される。クリーニングユニット104は、感光体ドラム101に形成されたトナー像の転写後に、感光体ドラム101の表面に残留したトナーを、除去および回収する。以上のような、記録媒体に対するトナー像の転写は、4色について4回繰り返される。
中間転写ベルト11に転写されたトナー像は、二次転写ユニット14まで搬送され、内部給紙ユニット16の給紙ローラ16aまたは手差し給紙ユニット17の給紙ローラ17aによって供給された記録媒体に、トナーと逆極性のバイアス電圧を印加することによって記録媒体に転写する。記録媒体に転写されたトナー像は、定着装置15に搬送される。定着装置15は、記録媒体に適度な熱と圧力とを与えて、トナーを溶解してトナー像を記録媒体に定着させる。画像が形成された記録媒体は、画像形成装置100の外部へ排出される。
本実施形態において、前述のような優れた本発明の定着装置15と、トナー像形成手段とを備えて画像形成装置100が構成される。本発明の定着装置15は装置構成が単純化されており、コストが削減可能であるので、本発明の定着装置15を備えて画像形成装置100が構成されることによって、画像形成装置100自体の装置構成の単純化およびコスト削減が可能になる。また、本発明の定着装置15はウォームアップ時に定着ベルト113の温度をすばやく上昇させることができ、また普通サイズ紙を通紙するときに温度追従性を確保することができるので、高速化が実現可能であり、本発明の定着装置15を備えて画像形成装置100が構成されることによって、高速の画像形成装置100とすることができる。