〔実施形態1〕
本発明の一実施形態について説明する。まず、図2を参照して本実施形態の定着装置が備えられている画像形成装置1について説明する。図2は、画像形成装置1の内部構造を示した模式図である。この画像形成装置1は、乾式電子写真方式のカラー画像形成装置であり、ネットワークを介して接続される各端末装置から送信される画像データまたはスキャナによって読み取られた画像データに基づいて、用紙(記録材)Pに対してカラー画像またはモノクロ画像を形成するプリンタである。
画像形成装置1は、乾式電子写真方式かつ4連タンデム方式のカラープリンタであって、可視像転写部50、用紙搬送部30、定着装置40、供給トレイ20を備えている。
可視像転写部50は、黄色画像転写部50Y、マゼンタ画像転写部50M、シアン画像転写部50C、黒画像転写部50Bから構成される。具体的な配置としては、供給トレイ20と定着装置40との間において、供給トレイ20側から、黄色画像転写部50Y、マゼンタ画像転写部50M、シアン画像転写部50C、黒画像転写部50Bがこの順に併設されている。
これら転写部50Y、50M、50C、50Bは、各々、実質的に同一の構成を有しており、画像データに基づいて、用紙Pに対してそれぞれ黄色画像、マゼンタ画像、シアン画像、黒画像を転写するものである。
各転写部50Y、50M、50C、50Bは、感光体ドラム51を備えており、さらに、帯電ローラ52、LSU53、現像ユニット54、転写ローラ55およびクリーニング装置56を、感光体ドラム51の周囲に、感光体ドラム51の回転方向(図2のF方向)に沿って配置している。
各転写部50Y、50M、50C、50Bの感光体ドラム51は、感光性材料を表面に有するドラム形状の転写ローラであり、矢印F方向に回転駆動する。帯電ローラ52は、感光体ドラム51の表面を一様(均一)に帯電するためのものである。
転写部50Y、50M、50C、50BのLSU(レーザビームスキャナユニット)53には、それぞれ画像データにおける黄色成分、マゼンタ成分、シアン成分および黒色成分に対応する画素信号が入力されるようになっている。そして、各LSU53は、これらの画像信号に基づいて、帯電された感光体ドラム51を露光し、静電潜像を生成するようになっている。
転写部50Y、50M、50C、50Bの現像ユニット54は、それぞれ黄色、マゼンタ、シアン、黒色のトナー(現像剤)を有している。そして、これらのトナーによって、感光体ドラム51上に生成された静電潜像を現像し、トナー像(顕像)を生成する機能を有している。なお、上記の現像剤としては、例えば、非磁性一成分現像剤(非磁性トナー)、非磁性二成分現像剤(非磁性トナーおよびキャリア)、磁性現像剤(磁性トナー)等の現像剤を用いることができる。
転写部50Y、50M、50C、50Bの転写ローラ55は、トナーとは逆極性のバイアス電圧が印加されており、このバイアス電圧を用紙Pに与えることによって感光体ドラム51上のトナー像を用紙Pに転写するためのものである。転写部50Y、50M、50C、50Bのクリーニング装置56は、用紙Pへの画像転写後に感光体ドラム51上に残留しているトナーを除去するものである。以上のような、用紙Pに対するトナー像の転写は、4色について4回繰り返される。
用紙搬送部30は、駆動ローラ31、アイドリングローラ32、搬送ベルト33からなり、各転写部50Y、50M、50C、50Bによって順に用紙Pにトナー像が形成されるように、用紙Pを搬送するものである。
駆動ローラ31およびアイドリングローラ32は、搬送ベルト33を張架するものであり、駆動ローラ31が所定の周速度(本実施形態ではモノクロ画像形成時(モノクロモード)355mm/s、カラー画像形成時(カラーモード)175mm/s)に制御されて回転することで搬送ベルト33が回転するようになっている。
搬送ベルト33は、各転写部50Y、50M、50C、50Bの感光体ドラム51に接触するように、駆動ローラ31とアイドリングローラ32との間にかけられたベルトであり、ローラ31・32によって矢印Z方向に摩擦駆動されるようになっている。そして、搬送ベルト33は、供給トレイ20から送り込まれた用紙Pを静電吸着させ、各転写部50Y、50M、50C、50Bに順に用紙Pを搬送する。
さらに、各転写部50Y、50M、50C、50Bによってトナー像が転写された用紙Pは、駆動ローラ31の曲率によって搬送ベルト33から剥離され、定着装置40に搬送される(図2の一点鎖線は搬送経路を示す)。なお、各転写部50Y、50M、50C、50Bによって用紙Pに転写された後のトナー像は、用紙Pに対して未定着の状態である。
定着装置40は、用紙Pに転写された未定着のトナー像を当該用紙Pに熱圧着させるものである。具体的に、定着装置40には、定着ローラ60と加圧ローラ70とが備えられている。そして、可視像転写部50から所定の定着速度(プロセス速度;モノクロモード355mm/s、カラーモード175mm/s)および複写速度(1分あたりのコピー枚数;例えばA4横送りでモノクロモード70枚/分、カラーモード40枚/分)で搬送されてきた用紙Pは、定着ローラ60と加圧ローラ70との間に形成されている定着ニップ部Nに送り込まれる。さらに、定着ローラ60と加圧ローラ70とが用紙Pを挟持しながら搬送する。このとき、用紙P上のトナー像(未定着画像)は定着ローラ60の周面の熱によって溶融し、定着ローラ60と加圧ローラ70とによって加圧されて、用紙Pに固定された堅牢な画像として定着する。
そして、定着装置40によってトナー像の定着処理が行われた後の用紙Pは、画像形成装置1の外部の排紙トレイ(不図示)に排出される。これにより、画像形成処理が終了する。なお、定着装置40の具体的構成については後で詳細に説明する。
また、画像形成装置1は、用紙Pに対して各転写部50Y、50M、50C、50Bが画像転写を行ってカラー画像(多色画像)を形成するカラーモード(多色モード)と、用紙Pに対して黒画像転写部50Bのみが画像転写を行ってモノクロ画像(単色画像)を形成するモノクロモード(単色モード)とを実行できる。具体的に説明すると、画像形成装置1に備えられている制御部(制御用集積回路基板またはコンピュータ,不図示)は、利用者からの入力指示に応じて、カラーモードまたはモノクロモードのうちのいずれかのモードを選択し、選択したモードに応じた画像形成を実行するように各転写部50Y、50M、50C、50Bを制御するようになっている。
さらに、上記制御部は、カラーモード時においては搬送速度355mm/S(プロセス速度ともいう)で用紙Pを搬送し、モノクロモード時においては搬送速度175mm/Sで用紙Pを搬送するように画像形成装置1の用紙搬送手段(用紙搬送部30,定着ローラ60,加圧ローラ70等)を制御する。
次に、定着装置40について具体的に説明する。図3は、定着装置40の概略構成を示す模式図である。定着装置40は、上述した定着ローラ(定着部材)60および加圧ローラ(定着部材)70の他、外部加熱装置80、制御装置90、回転駆動装置91、ベルト移動装置110を含む構成である。なお、必要に応じて、定着ローラ60の表面をクリーニングするためのウェブクリーニング装置等をさらに設けてもよい。
回転駆動装置91は、定着ローラ60を回転駆動するものであり、例えばモータ等から構成される。なお、回転駆動装置91の動作は、制御装置90によって制御される。
定着ローラ60は、図3に示されるG方向に回転するローラであり、金属製の中空円筒形状の芯金61、この芯金61の外周面を覆う弾性層62、弾性層62を覆って形成される離型層63から構成される。
芯金61は、外径46mmのアルミニウムからなるものであり、筒状の形状をしている。ただし、芯金61の素材は、アルミニウムに限定されるものではなく、例えば、鉄やステンレス等からなるものであってもよい。弾性層62は、厚さ3mmであって、耐熱性を有するシリコンゴム(JIS−A硬度20度)からなる。離型層63は、厚み約30μmのPFA(テトラフルオロエチレンとパーフルオロアルキルビニルエーテルとの共重合体)チューブからなる。なお、離型層63の材料としては、耐熱性、耐久性に優れ、トナーとの離型性が優れているものであればよく、PFAの他、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)等のフッ素系材料を使用してもよい。こうして構成された定着ローラ60の外径は50mmであって、定着ローラ60の表面硬度は68度(アスカーC硬度)である。なお、定着ローラ60表面の回転軸方向の幅は320mmである。
定着ローラ60の周面には当該周面の温度を検出するサーミスタ65が接触しており、芯金61の内部には、電力が供給されることによって熱輻射を行うハロゲンランプ(ヒータランプ)64が設置されている。ハロゲンランプ64は定着ローラ60の熱源であり、ハロゲンランプ64に電力供給が行われるとハロゲンランプ64によって定着ローラ60内部が所定の温度(本実施形態では180℃)に加熱され、定着ニップ部Nを通過する未定着トナー画像が形成された記録紙を加熱するようになっている。
なお、本実施形態では、ハロゲンランプを1本内蔵しているが、これに限らず、例えば、紙サイズに応じて最適な温度分布を形成できるように、軸方向に発熱分布を分割した複数のハロゲンランプを用いてもよい。また、本実施形態では、定着ローラ60の長手方向中央部にサーミスタ65が接触するように配置しているが、これに限らず、定着ローラ60の長手方向端部(非通紙領域)に設置してもよい。また、ハロゲンランプを2本設置するなどして中央部と端部で発熱量が異なる場合等には、中央部と端部の両方に設置してもよい。
加圧ローラ70は、図3に示すH方向に回転するローラであり、金属製の中空円筒形状の芯金71、この芯金71の外周面を覆う弾性層72、弾性層72を覆って形成される離型層73、から構成される。
芯金71は、外径46mmであって、アルミニウムからなるものである。ただし、芯金71の素材は、アルミニウムに限定されるものではなく、鉄やステンレスからなるものであってもよい。弾性層72は、厚さ2mmであって、耐熱性を有するシリコンゴムからなる。離型層73は、厚み約30μmのPFAチューブからなる。なお、離型層73の材料としては、耐熱性、耐久性に優れ、トナーとの離型性が優れるものであればよく、PFAの他、PTFE等のフッ素系材料を使用してもよい。こうして構成された加圧ローラ70の外径は50mmであって、加圧ローラ70の表面硬度は75度(アスカーC硬度)である。
そして、加圧ローラ70は、図示していない弾性部材(バネ)によって、定着ローラ60に所定の荷重(ここでは600N)で圧接される。これにより、定着ローラ60周面と加圧ローラ70周面との間に定着ニップ部N(定着ローラ60と加圧ローラ70とが当接する部分、ここでは記録紙搬送方向の幅9mm)が形成される。また、加圧ローラ70は、定着ローラ60の回転に従動して定着ローラ60とは逆方向(定着ニップ部における両ローラ表面の移動方向は同じ)に回転する。なお、本実施形態では、加圧ローラ70は定着ローラ60に従動回転する構成としているが、これに限らず、定着ローラ60とは異なる回転駆動手段によって回転駆動される構成であってもよい。
また、加圧ローラ70の周面には当該周面の温度を検出するサーミスタ75が接触しており、芯金71の内部には、電力供給によって熱輻射を行うハロゲンランプ(ヒータランプ)74が設置されている。ハロゲンランプ74は加圧ローラ70の熱源であり、ハロゲンランプ74に電力供給が行われると加圧ローラ70内部が所定の温度(本実施形態では150℃)に加熱されるようになっている。
なお、本実施形態では、定着ローラ60のゴム硬度(68度)より加圧ローラ70のゴム硬度(75度)を高くしているが、これは、加圧ローラ70と定着ローラ60との間に形成される定着ニップ部Nを逆ニップ形状(加圧ローラ70の形状は殆ど変わらず定着ローラ60が若干凹む形態)にするためである。このようにして得られた定着ニップ部Nのニップ幅は8.5mmであった。
ここで、加圧ローラ70と定着ローラ60との間の定着ニップ部Nを逆ニップ形状にしている理由を説明する。定着ニップ部Nが逆ニップ形状である場合、定着ニップ部Nを通過した用紙Pは、加圧ローラ70周面に沿った方向に排出されるため、用紙Pが定着ニップ部Nから排出される際に自己剥離(剥離爪などの強制剥離補助手段を必要とせず紙のこしで剥離)し易くなるからである。
なお、定着ローラ60の表面硬度より加圧ローラ70の表面硬度が低いと、定着ローラ60と加圧ローラ70との間の定着ニップ部Nは、定着ローラ60の形状が殆ど変わらず加圧ローラ70が若干凹む形態になり、定着ニップ部Nを通過した用紙Pは定着ローラ60周面に沿った方向に排出されるため、自己剥離が生じにくい。
外部加熱装置80は、第1支持ローラ(第1加熱ローラ)81、第2支持ローラ(第2加熱ローラ)82、無端ベルト(外部加熱ベルト)83、ベルト移動装置110(図3には図示せず)、ベルト規制部材121・122(図3には図示せず)から構成されている。無端ベルト83は、裏面(内周面)側が各支持ローラ81・82の周面に当接するように各支持ローラ81・82に張架されている。無端ベルト83は、定着ローラ60に対して定着ニップ部の上流側に設けられており、支持ローラ81・82が後述する第1位置にあるとき、所定の押圧力(本実施形態では40N)で定着ローラ60に圧接される。これにより、定着ローラ60との間に加熱ニップ部(無端ベルト83と定着ローラ60との当接部;定着ローラ60の円周方向の幅20mm)が形成されている。
また、無端ベルト83は、回転する定着ローラ60の周面に当接することにより、定着ローラ60に従動回転するようになっている。これにより、各支持ローラ81・82は、定着ローラ60の回転方向と逆方向(図3のK方向)に回転する。つまり、制御装置90が定着ローラ60の回転駆動装置91を制御して定着ローラ60を回転駆動させると、無端ベルト83と定着ローラ60とが接している部分での摩擦力によって無端ベルト83が定着ローラ60に従動して移動し、支持ローラ81・82および無端ベルト83が回転するようになっている。
無端ベルト83は、厚み90μmのポリイミド(宇部興産製、商品名:ユーピレックスS)からなる基材の表面に、離型層としてPTFEとPFAがブレンドされたフッ素樹脂が20μm厚でコーティングされたベルト部材である。ただし、無端ベルト83の構成は、これに限定されるものではなく、ニッケル、ステンレス、鉄などの金属製のベルト部材を用いてもよい。また、無端ベルト83の内径も30mmに限定されるものではない。なお、無端ベルト83の離型層の材料としては、耐熱性、耐久性に優れ、トナーとの離型性に優れていればよく、例えば、PTFEあるいはPFAを単独で使用してもよい。なお、室温(20℃)における無端ベルト83の内径は30mm(内周長94mm)である。
また、無端ベルト83の幅(支持ローラ81・82の軸方向の幅)は、室温で320mmである。ただし、ポリイミドの熱膨張率は5.6×10−5/degなので、200degの温度上昇で、無端ベルト83は軸方向に約3.6mm(320mm×5.6×10−5/deg×200deg≒3.6)熱膨張する。したがって、無端ベルト83の定着動作時の設定温度である220℃におけるベルト幅は323.6mmとなる。
各支持ローラ81・82は、外径15mm、肉厚2mmのアルミニウム製の芯金の表面に、離型層としてPTFEとPFAがブレンドされたフッ素樹脂が20μm厚でコーティングされたローラである。なお、この離型層の材料としては、耐熱性、耐久性に優れ、トナーとの離型性に優れていればよく、例えば、PFAやPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)等のフッ素系材料を使用することができる。また、各支持ローラ81・82(各支持ローラ81・82の定着ローラ60との当接面)の軸方向の幅は室温で320mmであり、支持ローラ81・82間の軸間距離は23.0mmである。
なお、アルミニウムの熱膨張率は2.4×10−5/degなので、支持ローラ81・82を220℃まで加熱した場合(温度上昇が200degの場合)、支持ローラ81・82の幅は1.5mm熱膨張する。
また、各支持ローラ81・82は、後述するベルト移動装置110によって、無端ベルト83を介して定着ローラ60の周面に所定の荷重で押圧される。これにより、無端ベルト83表面は定着ローラ60周面に接触し、無端ベルト83表面と定着ローラ60周面との間にニップ部が形成される。なお、無端ベルト83表面と定着ローラ60周面との間のニップ幅は20mm(定着ローラ60周方向に沿った幅)である。
無端ベルト83における第1支持ローラ81との接触部の外面には、この無端ベルト83の表面温度を検出するサーミスタ85aが接触している。また、第1支持ローラ81内部には、電力供給によって発熱するハロゲンランプ(ヒータランプ)86aが設けられている。また、無端ベルト83における第2支持ローラ82との接触部の外面には、この無端ベルト83の表面温度を検出するサーミスタ85bが接触しており、第2支持ローラ82の内部には、電力供給によって発熱するハロゲンランプ(ヒータランプ)86bが設けられている。ハロゲンランプ86a・86bは無端ベルト83の熱源であり、ハロゲンランプ86a・86bに電力供給が行われると、ハロゲンランプ86a・86bから熱が輻射され、支持ローラ81・82を介して無端ベルト83が所定の温度(本実施形態では220℃)に加熱される。そして、無端ベルト83は、定着ローラ60の外部から定着ローラ60周面に接触しているため、この接触箇所を介して定着ローラ60周面を加熱することができる。本実施形態では、上記のような2本の薄肉小径の支持ローラ81・82と薄膜の無端ベルト83とを用いているため、無端ベルト83の温度を早く昇温させることができる。
次に、定着装置40に備えられるベルト移動装置110およびベルト規制部材121・122について説明する。図1(a)はベルト移動装置110によって支持ローラ81・82をこの支持ローラ81・82が無端ベルト83を介して定着ローラ60に当接する位置(第1位置)に配置されている状態を示す断面図であり、図1(b)はベルト移動装置110によって支持ローラ81・82が定着ローラ60から離間した位置(第2位置)に配置されている状態を示す断面図である。また、図4(a)は、ベルト移動装置110の構成を示す上面図であり、図4(b)は支持ローラ82、無端ベルト83、ベルト規制部材122の構成を示す断面図である。
図1(a)および図1(b)に示すように、ベルト移動装置110は、サイドフレーム111、アーム112、偏心カム113、支点(支点部材)114、支点(支点部材)115、コイルバネ116を備えている。
サイドフレーム111は、支持ローラ81・82の両端側にそれぞれ設けられており、図4(a)に示すように、軸受117・118を介して支持ローラ81・82を回転可能に支持するものである。なお、軸受117・118は、サイドフレーム111に対して、所定の軸間距離で固定されており、これによって支持ローラ81と支持ローラ82との平行度が確保されている(本実施形態では支持ローラ81と支持ローラ82との平行度公差は100μm以下となっている)。また、支持ローラ81の両端に設けられた軸受117・117間の間隔、および支持ローラ82の両端に設けられた軸受118・118間の間隔は、それぞれ331mmである。
また、このサイドフレーム111は、アーム112に対して支点114で支持ローラ81・82の軸方向に略垂直な方向に対して回転可能に軸支されている。
アーム112は、図示しない定着装置40のフレームに固定された支点115で回転可能に支持されており、支点115を軸としてコイルバネ116によって定着ローラ60に接する方向に付勢されている。
偏心カム113は、アーム112の端部近傍に当接するように備えられている。この偏心カム113は、制御装置90が図示しないモータ等の駆動手段を制御することによって回転駆動される。
これにより、制御装置90(移動制御部90c)が上記駆動手段を制御して偏心カム113を回転させ、図1(a)に示すように支持ローラ81・82を第1位置に移動させたり、偏心カム113をそこから180度回転させ、図1(b)に示すように支持ローラ81・82を第2位置に移動させたりできるようになっている。
なお、第1位置における支点114と定着ローラ60の周面との間隔は28mmであり、第2位置における支点114と定着ローラ60の周面との間隔は29.5mmである。すなわち、第1位置から第2位置へ移動させる場合の、支点114の移動量(離間長さ)は1.5mmである。また、支点114と支点115との間隔は15mm、アーム112と偏心カム113との当接部と支点115との間隔は15mmである(したがって、レバー比1:1)。したがって、アーム112の偏心カム113との当接部の移動量も1.5mmである。
また、第2位置において定着ローラ60の回転を停止させている時の無端ベルト83と定着ローラ60との回転方向の接触幅(加熱ニップ幅)は約10mm程度となる。ただし、この接触幅は無端ベルト83の曲がり癖や温度によって変化しうる値である。一般に、ベルトが加熱されていると、ベルトの周長が伸びるので、接触幅は増加する。なお、本実施形態では上記の離間長さを1.5mmとしているが、この離間長さを4mmに設定した場合、第2位置に移動させることで、無端ベルト83と定着ローラ60とは接触せずに完全に離間した状態となる。
なお、図4(a)および図4(b)に示すように、支持ローラ81・82と軸受117・118との間には、ベルト規制部材(寄り規制部材)121・122が設けられている。このベルト規制部材121・122は、無端ベルト83が蛇行してきた際に、ベルト端部と当接して回転することで無端ベルト83の支持ローラ81・82の軸方向への寄りを規制すると同時に、無端ベルト83の端部が軸受117・118と摺動することによって磨耗や割れが生じることを防止するためのものである。
ベルト規制部材121・122は、支持ローラ81・82に対して回転可能(支持ローラ81・82の回転軸を中心として支持ローラ81・82の回転とは個別に回転できる)であり、かつ、支持ローラ81・82の軸方向にも支持ローラ81・82とは独立して移動可能なように設置されている。また、図4(b)に示すように、ベルト規制部材121・122は、支持ローラ81・82の軸方向から見た断面形状が、支持ローラ81・82の断面がなす円と同心円状になっており、支持ローラ81・82の周面(ベルト懸架面)からの高さH(mm)が2.5mmとなるように設けられている。
また、各ベルト規制部材121・122における支持ローラ81・82の軸方向の厚さは3mmである。したがって、上記したように定着ローラ60の軸方向の幅は320mm、無端ベルト83の軸方向の幅は室温で320mm、220℃で323.6mm、軸受117・117間および118・118間の間隔は331mmなので、無端ベルト83における定着ローラ60の周面(定着面)に接触しない部分の幅は最大で5mmとなる。
制御装置90は、温度制御部90a、回転制御部90b、移動制御部90cを備え、無端ベルト83の表面温度、定着ローラ60の表面温度、加圧ローラ70の表面温度、定着ローラ60の回転駆動、ベルト移動装置110によるベルト位置の移動などを制御する制御用集積回路基板である。
温度制御部90aは、サーミスタ65・75・85a・85b、加熱電力供給部99に接続されている。加熱電力供給部99は、ハロゲンランプ64・74・86a・86bに接続され、これらのハロゲンランプに加熱のための電力を供給するものである。そして、温度制御部90aが、サーミスタ65・75・85a・85bの温度検出結果や画像形成モード等に基づいて、加熱電力供給部99から各ハロゲンランプへの供給電力を切り替えることで、各ハロゲンランプの発熱量を制御し、無端ベルト83、定着ローラ60、加圧ローラ70の温度を所定の温度となるよう制御するようになっている。
回転制御部90bは、定着ローラ60を回転駆動するための回転駆動装置91に接続されている。回転制御部90bは、回転駆動装置91の動作を制御することにより、定着ローラ60の回転速度を制御する。
移動制御部90cは、ベルト移動装置110に接続されており、このベルト移動装置110に備えられる偏心カム113の動作を制御することにより、外部加熱装置80に備えられる支持ローラ81・82と定着ローラ60との相対位置を制御し、無端ベルト83と定着ローラ60との接触幅(加熱ニップ幅)を変化させて、外部加熱装置80から定着ローラ60への熱供給量を制御するようになっている。
また、制御装置90は、転写媒体(記録紙)の種類や画像形成モード(モノクロ画像形成モードの場合とカラー画像形成モード、あるいは通紙用紙が1枚の場合と連続通紙の場合など)等に応じて、支持ローラ81・82の位置を第1位置と第2位置との間で制御し、無端ベルト83の接触面積(加熱ニップ幅)を制御させて外部加熱装置80から定着ローラ60への熱供給量を制御する。
複写速度を低下させる場合、移動制御部90cは、支持ローラ81・82を第1位置から第2位置に移動させる。例えば、モノクロモードにおける用紙搬送速度が355mm/sでカラーモードが175mm/sに設定され、モノクロモードでの定着ローラ設定温度とカラーモードでの定着ローラ設定温度が180℃で同じ場合であって、かつ無端ベルト83と定着ローラ60との加熱ニップ幅が20mmで同じ場合、無端ベルト83の設定温度を、モノクロモードの場合220℃、カラーモードの場合205℃にすれば、用紙に奪われる熱量と外部加熱装置80から定着ローラ60に供給する熱量がほぼ釣り合う。
このため、モノクロモードからカラーモードに変更する場合には、無端ベルト83の温度が設定温度より高すぎる。そして、無端ベルト83の温度が高すぎる状態でカラー画像の定着処理を行うと、定着ローラ60の温度が高くなりすぎてカラー画像の光沢が過剰になったり、光沢ムラが生じて画像品位が低下したりする。このような問題を回避するためには、モノクロモードからカラーモードへの移行時に無端ベルト83の温度が所定の温度に低下するまで待つことが考えられる。しかしながら、無端ベルト83の温度が220℃から205℃まで低下するには30秒以上の時間が必要であり、モノクロモードからカラーモードへの移行をスムーズに行うことができず、待ち時間が生じてしまう。
そこで、本実施形態では、移動制御部90cが、支持ローラ81・82の定着ローラ60に対する相対位置を制御することで(例えば第1位置から第2位置に機械的に移動させることで)、無端ベルト83と定着ローラ60との接触面積を小さくして外部加熱装置80から定着ローラ60への熱供給を抑制する。
また、移動制御部90cは、連続通紙時には、外部加熱装置80から定着ローラ60への熱供給量を増加させて用紙へ奪われる熱量を補うために、無端ベルト83と定着ローラ60との接触面積を大きくする。
また、画像形成動作の開始直後は定着ローラ60における周方向の温度分布を均一にするために、定着ローラ60は加熱・回転されるが、定着ニップを記録紙が通過しないので、定着ローラ60が記録紙によって熱を奪われることはない。この状態で支持ローラ81・82が第1位置にあると、無端ベルト83から定着ローラ60への熱供給が過剰になり、定着ローラ60の温度が設定温度よりも高くなってしまう。そこで、移動制御部90cは、定着ローラ60への熱の過供給を回避するために、外部加熱装置80から定着ローラ60への熱供給量を短時間で変更させるため、ベルト移動装置110を制御して無端ベルト83と定着ローラ60との接触面積を小さくする。
また、画像形成動作終了後の待機時(放置時)には、移動制御部90cは、定着ローラ60における周方向の温度ムラを防止するために、支持ローラ81・82を第2位置に移動させる。つまり、移動制御部90cは、画像形成動作後には支持ローラ81・82を第2位置に移動させ、画像形成動作開始後の記録紙が定着ニップへ到達するタイミングに応じて支持ローラ81・82を第1位置に移動させる。
なお、移動制御部90cが、各部材の温度状態、転写媒体(記録紙)の種類、画像形成モード等に応じて、支持ローラ81・82の定着ローラ60に対する相対位置を、第1位置と第2位置との間の任意の位置に制御するようにしてもよい。
以上のように、本実施形態にかかる定着装置40は、支持ローラ81・82の両端に備えられたベルト規制部材121・122における支持ローラ81・82の周面(定着ローラ60との当接面)からの高さHが、第2位置における支持ローラ81・82の周面と定着ローラ60との間隔よりも高くなっている。つまり、ベルト移動装置110における支点114の第1位置から第2位置への移動距離が1.5mmなので、第2位置における支持ローラ81・82と定着ローラ60との間隔は1.5mmよりも狭くなり、ベルト規制部材121・122の高さH=2.5mmよりも狭くなる。
これにより、支持ローラ81・82と定着ローラ60との間隔は、ベルト移動装置110による移動位置によらず常にベルト規制部材121・122の高さHよりも狭くなるので、ベルト規制部材121・122が支持ローラ81・82と定着ローラ60との当接領域に移動することを防止できる。
特に、支持ローラ81・82を定着ローラ60から離間させた状態で無端ベルト83の温度が低くなると、無端ベルト83および支持ローラ81・82が収縮し、この熱収縮により支持ローラ81・82に設けたベルト規制部材121・122の定着ローラ60に対する相対位置が変化する。このため、支持ローラ81・82を定着ローラ60から大きく離間する場合、ベルト規制部材121・122の高さが定着ローラ60と支持ローラ81・82の間隔よりも低いと、ベルト規制部材121・122が定着ローラ60の周面に当接する位置に移動してしまう場合がある。したがって、無端ベルト83が定着動作時の温度よりも低い状態において、第2位置での定着ローラ60と支持ローラ81・82の間隔が、ベルト規制部材121・122の高さHよりも狭いことが望ましい。
なお、本実施形態では、ベルト移動装置110によって支持ローラ81・82がともに定着ローラ60に対して相対的に移動するようになっているが、これに限らず、少なくとも1つの支持ローラが定着ローラ60に対して相対的に移動することで無端ベルト83と定着ローラ60との接触面積(加熱ニップ幅)をできる構成であればよい。また、本実施形態では支持ローラが2つの構成について説明したが、これに限らず、支持ローラを3つ以上備えていてもよい。
また、本実施形態では、支持ローラ81・82の各々にベルト規制部材を備えているが、これに限るものではない。ただし、第1位置におけるベルト規制部材を備えた支持ローラと定着ローラとの間隔がベルト規制部材の高さよりも低い場合には、第2位置においてもこの支持ローラと定着ローラとの間隔がベルト規制部材の高さよりも低くなるように、ベルト規制部材の高さおよび第1位置から第2位置への支持ローラの移動量を設定することが好ましい。
また、本実施形態では、無端ベルト83における定着ローラ60の周面(定着面)に接触しない部分の幅(無端ベルト83における定着ローラ60との対向部から軸方向へのはみ出し量)は最大で5mmとなる。つまり、無端ベルト83が定着時の設定温度まで加熱されて膨張している場合でも、この無端ベルト83の周面における定着ローラ60との非接触部の軸方向の幅は5mm以下になる。
外部加熱ベルトの周面における定着ローラに接触しない部分の面積が大きい場合、この部分では定着ローラへの伝熱が行われないので、この部分の温度は非常に高くなる。その結果、外部加熱ベルトの熱劣化が進行して耐久性が低下し、ベルト規制部材に当接することによって破損してしまう。これに対して、本実施形態にかかる定着装置40では、無端ベルト83における定着ローラ60の周面に接触しない部分の幅が5mm以下なので、この非接触部分の過昇温を抑制して無端ベルト83の耐久性を十分に確保することができる。つまり、無端ベルト83における定着ローラ60の周面に接触しない部分の幅が5mm以下であれば、無端ベルト83の過昇温を防止して耐久性を確保できる。
また、本実施形態では、ベルト規制部材121・122が、無端ベルト83の回転方向に回転可能になっている。
外部加熱ベルトの回転が拘束されている場合には、ベルトの端部がベルト規制部材における単一の箇所に継続して摺擦するため、ベルト規制部材にベルト端部の厚さに応じた溝が形成される。そして、この溝にベルトが嵌り込みながら回転するので、ベルトに過大なストレスが生じ、ベルトの耐久性が低下する。これに対して、本実施形態では、ベルト規制部材121・122がベルトの移動方向に対して回転可能になっているので、無端ベルト83がベルト規制部材121・122の単一箇所のみに継続して摺擦することを防止し、上記のような溝が形成されることを防止して、無端ベルト83の耐久性の低下を防止できる。
また、本実施形態では、ベルト規制部材121・122が、支持ローラ81・82の軸方向に支持ローラ81・82に対して相対的に移動可能になっている。具体的には、ベルト規制部材121・122の軸方向の位置は、支持ローラ81・82を支持する支持部材(軸受117・118、サイドフレーム112)によって規定されている。これらの支持部材は、無端ベルト83に比べて高温になることはなく、熱による変形量が小さいので、支持ローラ81・82の軸方向に対する寄りや熱膨張に依存せずに無端ベルト83の幅方向の位置を規定することができる。これにより、定着ローラ60と無端ベルト83との相対位置を精度良く位置決めすることができる。
また、本実施形態では、第2位置における支点114の離間距離を2mmに設定することで、支持ローラ81・82を第2位置に移動させたときの、支持ローラ81・82の外側共通接線(支持ローラ81・82の軸方向に垂直な断面における定着ローラ60から遠い側の共通接線)Lと支持ローラ81・82との接点Pにおける無端ベルト83の支持ローラ81・82表面からの浮き量(支持ローラ81・82の共通接線Lに垂直な方向の間隔)が、ベルト規制部材121・122の高さHよりも小さくなっている。これにより、第2位置、あるいは第1位置から第2位置への遷移状態で無端ベルト83が回転する場合に、無端ベルト83がベルト規制部材121・122に乗り上げることを防止できる。したがって、無端ベルト83を回転させた状態で支持ローラ81・82を移動させても回転不良が生じることがなく、無端ベルト83と定着ローラ60との接触幅(加熱ニップ幅)を変化させて定着ローラ60への熱供給量を制御する処理を、画像形成動作と同時に行うことができる。また、支持ローラ81・82を移動させる際に、定着ローラ60の回転を停止させる必要がないので、定着ローラ60の表面温度を均一に保つことができる。
ここで、接点位置Pにおける無端ベルト83の浮き量をベルト規制部材121・122の高さHよりも小さくすることにより、無端ベルト83のベルト規制部材121・122への乗り上げを防止できる理由について、以下により詳しく説明する。
図5(a)は、支持ローラ81・82を第1位置とした場合の無端ベルト83の回転状態、図5(b)は、支点114の離間距離(第1位置から第2位置に移動させる場合の移動距離)を1.5mmとして支持ローラ81・82を第2位置とした場合の無端ベルト83の回転状態、図5(c)は、支点114の離間距離を3.5mmとして支持ローラ81・82を第2位置とした場合の無端ベルト83の回転状態を示す説明図である。
図5(a)に示すように、支持ローラ81・82を第1位置にした場合、支持ローラ81・82が無端ベルト83を介して定着ローラ60に当接し、定着ローラ60が支持ローラ81・82間に入り込んだような状態になるため、無端ベルト83に張力が働いた状態になり、無端ベルト83は支持ローラ81・82の外側(定着ローラ60から遠い側)の共通接線Lにほぼ一致する位置になった。そして、無端ベルト83がベルト規制部材121・122に乗り上げる(乗り越える)ことはなく、正常に回転した。
図5(b)に示すように、支点114の離間距離を1.5mmとし、支持ローラ81・82を第2位置とした場合、定着ローラ60と支持ローラ81・82とが離間するため、無端ベルト83に緩みが生じ、無端ベルト83は共通接線Lから盛り上がった状態で回転した。なお、無端ベルト83は共通接線Lから盛り上がった状態になるものの、無端ベルト83がベルト規制部材121・122に乗り上げることはなく、無端ベルト83は継続的に回転した。
一方、図5(c)に示すように、支点114の離間距離を3.5mmとし、支持ローラ81・82を第2位置とした場合、図5(b)の場合よりも無端ベルト83と定着ローラ60との接触幅(加熱ニップ幅)が狭くなり、無端ベルト83の緩みがより大きくなるとともに無端ベルト83は定着ローラ60にほとんど従動回転しなくなった。ただし、完全に回転しないわけではなく、機械の振動などの弾みでゆっくり、あるいは間欠的に回転した。そして、図5(c)の状態では、無端ベルト83が回転したときにベルト規制部材121・122に乗り上げる事態が生じた。
このように無端ベルト83がベルト規制部材121・122に乗り上げてしまう現象が生じる条件について検討した結果、以下のことがわかった。
図6(a)は支持ローラ81・82を第2位置にしてもベルトの乗り上げが発生しない状態を示す説明図であり、図6(b)は第2位置にしたときにベルトの乗り上げが発生する状態を示す説明図である。
図6(a)に示すように、支持ローラ81・82を第2位置にしたときの、支持ローラ81・82における外側共通接線Lの接点位置Pにおける無端ベルト83の支持ローラ81・82表面からの浮き量(図中に示したP−R間の距離)がベルト規制部材121・122の高さH(図中に示したP−Q間の距離)よりも小さい場合(P−R<P−Qの場合)には、無端ベルト83がベルト規制部材121・122に乗り上げることはなかった。
一方、図6(b)に示すように、無端ベルト83の接点位置Pにおける支持ローラ81・82表面からの浮き量(図中に示したP−R間の距離)がベルト規制部材121・122の高さH(図中に示したP−Q間の距離)以上の場合(P−R≧P−Qの場合)には、無端ベルト83がベルト規制部材121・122に乗り上げる現象が発生した。つまり、無端ベルト83の回転時に、接点位置Pにおける無端ベルト83の位置がベルト規制部材121・122の外周(図中に示したQの位置)よりも外側である場合、無端ベルト83が支持ローラ81・82の軸方向に移動すると、ベルト規制部材121・122によって軸方向の位置を規制しきれずにベルト規制部材121・122の外周に巻き付いてしまう。
なお、この無端ベルト83の緩みによるベルト規制部材121・122への乗り上げは、支持ローラ81・82が第2位置にある時だけでなく、第1位置から第2位置への移動途中にも生じた。つまり、第2位置では無端ベルト83が定着ローラ60に従動回転しなくなる構成とする場合であっても、第1位置から第2位置への移動途中に、支持ローラ82表面における外側共通接線Lとの接点位置Pでの無端ベルト83の浮き量がベルト規制部材121・122の高さよりも大きくなる位置で無端ベルト83が回転する場合には無端ベルト83がベルト規制部材121・122を乗り越える場合がある。
したがって、接点位置Pにおける無端ベルト83の浮き量をベルト規制部材121・122の高さHよりも小さくすることにより、第2位置、あるいは第1位置から第2位置への遷移状態で無端ベルト83が回転する場合に、無端ベルト83がベルト規制部材121・122に乗り上げることを防止できる。なお、ベルト規制部材に対する無端ベルト83の乗り上げは、無端ベルト83が支持ローラに対して巻き付いていくときに起こりやすい。したがって、無端ベルロ83の回転方向に隣接する支持ローラのうち、少なくとも無端ベルト83の回転方向下流側に位置する支持ローラにおけるベルト規制部材の高さを、第2位置において、この支持ローラにおける上記隣接する支持ローラとの外側共通接線との接点Pにおける無端ベルト83の浮き量よりも高くすることが好ましい。
また、本実施形態では、定着ローラ60の回転停止時には、移動制御部90cが、支持ローラ81・82の位置を第2位置に設定する。これにより、定着ローラ60の表面において温度ムラが発生することを抑制あるいは防止でき、均一で高品位な画像を得ることができる。
つまり、無端ベルト83は定着ローラ60よりも設定温度が高いので、支持ローラ81・82も定着ローラ60より温度が高い。また、支持ローラ81・82は無端ベルト83よりも熱容量が大きい。このため、定着ローラ60の回転停止状態で支持ローラ81・82が第1位置に有る場合には、支持ローラ81・82が無端ベルト83を介して定着ローラ60に当接している部分(あるいはその近接部)の温度が高くなり、定着ローラ60表面の温度ムラが生じる。これにより、定着画像に光沢ムラが生じて画像品位を低下させてしまう。そこで、定着ローラ60の回転停止時には支持ローラ81・82を第2位置に設定して定着ローラ60から離間させ、定着ローラ60の表面に温度ムラが生じることを抑制あるいは防止することが好ましい。
なお、本実施形態では、第2位置において無端ベルト83が定着ローラ60に一部当接しているが、これに限らず、無端ベルト83が第2位置では定着ローラ60から離間するようにしてもよい。この場合には、回転停止時に定着ローラ60表面に温度ムラが生じることをより効果的に低減あるいは防止できる。
図7(a)〜図7(c)に無端ベルト83と定着ローラ60の離間長さによる接触状態の変化を示す。図7(a)は支持ローラ81・82が第1位置にある状態を示している。この場合には加熱ニップ幅が広く、無端ベルト83は定着ローラ60に従動回転する。
図7(b)は、支点114の第1位置から第2位置への移動量4mm未満に設定し、支持ローラ81・82を第2位置へ移動させたときの状態を示している。支点114の第1位置から第2位置への移動量4mm未満の場合、支持ローラ81・82を第2位置に移動させても無端ベルト83の一部が定着ローラ60に当接する。なお、定着ローラ60を180℃、支持ローラ81・82を220℃に温度調節し、定着ローラ60の回転速度(周速度)を355mm/secとしたとき、支点114の第1位置から第2位置への移動量が1.5mmの場合には無端ベルト83は定着ローラ60に従動回転した。一方、移動量を2mm以上4mm未満にした場合には、無端ベルト83は定着ローラ60に接触するものの、摺動して従動回転しなかった。
図7(b)の場合、支持ローラ81.82は無端ベルト83を介して定着ローラ60に接していないので、定着ローラ60が停止していると支持ローラ81・82の熱は定着ローラ60にほとんど伝わらない。ただし、支点114の第1位置から第2位置への移動量を1.5mm以下として定着ローラ60を回転させると、無端ベルト83は定着ローラ60に従動回転するので、支持ローラ81・82の熱が定着ローラ60に伝わる。しかしながら、第1位置の場合に比べ、無端ベルト83と定着ローラ60との接触幅(加熱ニップ幅)が狭いので、支持ローラ81・82の熱は第1位置の場合よりも定着ローラ60に伝わりにくくなり、定着ローラ60の温度低下を素早く行える。さらに、無端ベルト83が定着ローラ60に従動回転するので、無端ベルト83の支持ローラ81・82との接触部分が過熱(過昇温)することを防止できる。
図7(c)は支持ローラ81・82が第2位置にあるときに、無端ベルト83と定着ローラ60とが接触せずに離間している状態を示している。支点114の第1位置から第2位置への移動量4mm以上の場合には、このように無端ベルト83と定着ローラ60とが接触せずに離間する。したがって、外部加熱装置80から定着ローラ60への熱供給は行われない。
また、本実施形態では、例えば待機時や電源切断時など、無端ベルト83および支持ローラ81・82の温度が定着動作時よりも低温になる場合には、移動制御部90cが、支持ローラ81・82の位置を第2位置に設定する。例えば、サーミスタ86a・86bの検出温度が定着ローラ60を定着温度に加熱するための温度よりも低くなった場合、移動制御部90cが、支持ローラ81・82の位置を第2位置に設定する。あるいは、無端ベルト83を定着ローラ60から離間させた状態で定着ローラ60の回転を停止させた後、次の画像形成時まで無端ベルト83の温度によらず支持ローラ81・82を第2位置として無端ベルト83を定着ローラ60から離間した状態に保つようにしてもよい。
これにより、無端ベルト83が低温になることによって熱収縮し、無端ベルト83に支持ローラ81・82の形状に応じた曲がり癖がつくことを抑制し、この曲がり癖による回転不良を抑制できる。
つまり、無端ベルト83に大きな張力が作用した状態で長時間放置すると、無端ベルト83に支持ローラ81・82の形状に応じた曲がり癖がつく。そして、このような曲がり癖がつくと、次の回転開始時に定着ローラ60が回転しても無端ベルト83がスリップするなどしてスムーズに回転せず、定着ローラ60へ十分に熱を供給できないことがある。
そこで、無端ベルト83が低温になる場合には支持ローラ81・82の位置を第2位置に設定することで、支持ローラ81・82の軸間距離は固定されているため、支持ローラ81・82に懸架された無端ベルト83の張力が緩み、無端ベルト83に曲がり癖がつくことを抑制して回転不良を抑制できる。
特に、定着装置40の梱包搬送時、あるいは定着装置40を画像形成装置1本体から離脱させた状態では、無端ベルト83が同一の張架状態で長時間放置されることになる。したがって、無端ベルト83の張力が高い状態のままでは、無端ベルト83に支持ローラ81・82による曲がり癖が顕著に生じてしまう。このため、定着装置40の梱包搬送時、あるいは定着装置40を画像形成装置1本体から離脱させるときには、支持ローラ81・82を第2位置に設定することによって第1位置にある状態よりも無端ベルト83に作用する張力を小さくし、無端ベルト83に曲がり癖がつくことを抑制することが好ましい。これにより、画像形成装置1本体への装着動作時に無端ベルト83をスムーズに回転させ、定着ローラ60への熱供給を適切に行わせることができる。
また、本実施形態において、移動制御部90cが、無端ベルト83の温度が定着動作時の設定温度よりも低い状態(例えば長時間の待機後や電源投入後など)から画像形成動作を開始する際、無端ベルト83および支持ローラ81・82が定着動作時の設定温度まで昇温する前に、支持ローラ81・82を第2位置から第1位置に移動させる。
無端ベルト83を定着動作時の設定温度まで上昇させた後に定着ローラ60に接触させた場合には、定着ローラ60表面のごく一部が急激に加熱されることとなる。このため、定着ローラ60の構成材料が局所的な熱膨張により剥離、劣化するおそれがある。
そこで、無端ベルト83および支持ローラ81・82が定着動作時の設定温度(画像形成温度)あるいは昇温完了温度まで昇温する前に第1位置に移動させ、温度制御部90aが支持ローラ81・82のハロゲンランプ86a・86bを点灯させることにより、支持ローラ81・82の温度が設定温度よりも低い状態で無端ベルト83を介して定着ローラ60に当接するので、定着ローラ60の表面が局所的に急激に加熱されることを防止できる。また、支持ローラ81・82および無端ベルト83が昇温しながら定着ローラ60を加熱するので定着ローラ60の温度を短時間で上昇させることができ、画像形成(定着)に必要な熱量を遅滞なく定着ローラ60表面へ十分に供給することができる。なお、ハロゲンランプ86a・86bを点灯させてから第1位置に移動させてもよく、第1位置に移動後に点灯させてもよい。
なお、定着ローラ60の表面温度の低下効果、およびベルトが定着ローラ60に従動回転するかどうかは、無端ベルト83と定着ローラ60の接触幅(加熱ニップ幅)と両部材の圧接力、無端ベルト83の回転抵抗(回転のしやすさ)によって変化する。これらの各条件は、接触部分の表面材質、温度、周速度、ベルト周長と軸間距離の関係、支点114の位置、無端ベルト83の巻き癖(曲がり癖)などに依存する。このため、支点114の離間長さは、定着装置40の各部材を組み上げた状態で適宜調整して決めることが望ましい。
また、本実施形態にかかるベルト移動装置110では、支持ローラ81・82の軸間距離がサイドフレーム111によって固定されており、このサイドフレーム111が移動するので、支持ローラ81・82および無端ベルト83と定着ローラ60との相対距離を一体的に素早く変更することができる。
また、本実施形態では、支持ローラ81・82が第1位置にあるときに、支持ローラ81・82が無端ベルト83を介して定着ローラ60に所定の荷重で圧接するようになっている。これにより、無端ベルト83の定着ローラ60への当接状態が安定して、無端ベルト83の回転駆動を安定させることができる。また、無端ベルト83と定着ローラ60との圧接力が増加し、定着ローラ60への熱供給量が増加させることができる。
なお、本実施形態では、第1位置において支持ローラ81・82が無端ベルト83を介して定着ローラに圧接する構成としたが、これに限らず、第1位置において無端ベルト83における支持ローラ81・82への巻き掛け部の外周面と定着ローラ60との間に間隙ができる構成であってもよい。この場合にも、第2位置は第1位置と比べて支持ローラ81・82が定着ローラ60から相対的に離れた位置となる。この構成により、第2位置では第1位置に比べて定着ローラ60と無端ベルト83との接触面積が小さくなるので、定着ローラ60への熱伝導を抑制できる。また、紙ジャム発生時や、急な電源切断、停電等の場合に、支持ローラ81・82を即座に移動させることができず、支持ローラ81・82が高温状態のままで第1位置に維持される場合がある。このような場合にも、上記の構成では、第1位置で支持ローラ81・82が定着ローラ60に当接していないため、定着ローラ60の過昇温による表面離型層、弾性層が熱劣化することを防止できる。また、支持ローラ81・82のオーバーシュートが生じた場合にも同様に、定着ローラ60の過昇温による表面離型層、弾性層が熱劣化することを防止できる。
また、本実施形態では、支持ローラ81・82を第2位置に移動させたときにも、無端ベルト83が定着ローラ60に接触するように第2位置を設定している。
無端ベルト83を定着ローラ60から完全に離間させる構成とする場合、支持ローラ81.82の第1位置から第2位置への移動量を大きくする必要がなる。そして、第2位置においてベルト規制部材121・122が定着ローラ60の周面に当接する位置に移動することを防止するためには、ベルト規制部材121・122の外径を大きくしなければならない。しかし、ベルト規制部材の外径を大きくすると、懸架ローラ間のベルト規制部材が干渉してしまう。
これに対して、上記のように、支持ローラ81・82を定着ローラ60からベルト移動装置110によって最も遠くに離間させた位置である第2位置において無端ベルト83が定着ローラ60に接触する構成とすることにより、ベルト規制部材121・122の外径を小さくできるので、支持ローラ81・82間でのベルト規制部材121・122の干渉を防止できる。
また、第2位置において無端ベルト83の一部が定着ローラ60に接するようにすることで、支持ローラ81・82を第1位置と第2位置との間で移動させるときの支点114の移動量を小さくできるので、アーム112の移動スペース、偏心カム113の大きさおよび偏心カム113の駆動力を低減でき、定着装置40の小型化、省電力化を実現できる。また、第1位置と第2位置との間の移動を素早く行える。
なお、第2位置における支持ローラ81・82と定着ローラ60との間隔が1mm以上あれば、定着ローラ60の表面が支持ローラ81.82によって部分的に加熱されることを防ぐことができる。さらに、支持ローラ81・82を定着ローラ60から離間しないときに比べ、定着温度を下げることができる。また、第2位置における支持ローラ81・82と定着ローラ60との間隔が2mm以下であれば、定着ローラ60の回転に無端ベルト83が従動回転し、支持ローラ81・82による定着ローラ60の部分的な加熱を抑制できる。
また、本実施形態では、支持ローラ81・82が第2位置にあるにときでも、無端ベルト83が定着ローラ60に接触したときに従動回転する。これにより、定着ローラ60と無端ベルト83の摺擦を低減することができるので、無端ベルト83および定着ローラ60の表面の摩耗を防止でき、また摩擦帯電を抑制できる。つまり、無端ベルト83が回転を拘束された状態で定着ローラ60に接触することによって両部材が接触部で激しく摺擦し、両部材の表面の摩耗や摩擦帯電が激しくなって定着画像の品位が低下してしまうことを防止できる。
また、本実施形態では、記録紙のおもて面(記録紙におけるトナー像が形成された面)に接触する定着ローラ60が弾性層を有している。これにより、定着ニップ幅を適切に確保してトナー像を十分に定着させるとともに、均一で高品位な画像を得ることができる。また、トナー量が多くても定着ローラ60と記録紙を適切に剥離させることができる。さらに、連続出力時に定着ローラ60の温度低下が生じることを防止して、高いスループットを得ることができる。
また、本実施形態では、記録紙の裏面(記録紙におけるトナー像が形成されていない側の面)に接触する加圧ローラ70が弾性層を有している。これにより、定着ニップ幅を確保してトナー像を十分に定着させることができる。また、連続出力時に加圧ローラ70の温度低下が生じることを防止して、高いスループットを得ることができる。さらに、記録紙上のトナー像と接触する定着ローラ60に耐久性の高い部材を用いることができるので、定着装置40(定着ローラ60)の寿命を長くすることができる。なお、本実施形態では、定着ローラ60に弾性層を設けた構成について説明したが、これに限らず、例えば、弾性層を設けず、芯金上に離型層を形成したハードローラを用いてもよい。また、加圧ローラ70を、弾性層を備えないハードローラとしてもよい。
また、本実施形態では、移動制御部90cが支持ローラ81・82を第1位置と第2位置との間で移動させることにより、無端ベルト83と定着ローラ60との接触面積(加熱ニップ幅)を変化させることにより、外部加熱装置80から定着ローラ60への熱供給量を制御するようになっている。
支持ローラ81・82が第1位置にある時、加熱ニップ幅は広くなり、無端ベルト83から定着ローラ60への熱供給量を多くできる。したがって、例えば連続通紙時にも定着ローラ60の温度低下を防止することができる。
支持ローラ81・82が第2位置にある時、加熱ニップ幅は狭くなる(あるいは無端ベルト83が定着ローラ60から離間する)ので、無端ベルト83から定着ローラ60への熱供給量を抑制できる。これにより、例えば、定着ローラ60の温度設定を下降させる時、あるいは時間当たりの定着枚数(通紙枚数)を減少する時に、定着ローラ60への熱供給が過剰になって定着ローラ60が設定温度よりも高くなることを防止できる。したがって、定着ローラ60の温度が高いことによるホットオフセットや転写材(記録紙)の巻き付き、光沢異常による画像品位の低下などを防止することができる。
なお、本実施形態では、支持ローラ81・82の軸間距離を一定としているが、これに限らず、軸間距離を可変としてもよい。例えば、図8(a)および図8(b)に示すように、第1位置と第2位置とで支持ローラ81・82の軸間距離が変化する構成とし、第1位置において支持ローラ81・82を所定の押圧力(バネ力)で定着ローラ60の方向へ付勢することで、所定の加熱ニップ幅が形成されるようにしてもよい。
具体的には、例えば、図8(c)に示すように、サイドフレーム111に設けた長穴119によって軸受117・118を保持することにより、軸受117・118を無端ベルト83と定着ローラ60との接触状態(加熱ニップ幅)に応じて長穴119の範囲内で移動可能にすることで、支持ローラ81・82の軸間距離を可変にすればよい。
この場合、図8(a)に示すように、第1位置においては、支持ローラ81・82が無端ベルト83を介して定着ローラ60に当接しており、無端ベルト83に作用する張力との支持ローラ81・82と定着ローラ60との当接状態(無端ベルト83を介した当接状態)との釣り合いによって支持ローラ81・82の位置(軸間距離)が決まる。
一方、第2位置では、支持ローラ81・82が定着ローラ60から離間するので、軸受117・118は無端ベルト83の張力によって長穴119に沿って軸間距離が狭くなる方向に移動し、長穴119の端部に当接することで支持ローラ81・82の軸間距離がきまる。したがって、図8(b)に示すように、無端ベルト83が緩んだ状態で軸受117・118がサイドフレーム111の長穴119に当接して支持ローラ81.82の位置が決まる。
支持ローラ81・82の軸間距離が固定されている場合には、無端ベルト83を定着ローラ60に圧接させる押圧力と、無端ベルト83に作用する張力と、支持ローラ81・82の軸間距離と、定着ローラ60表面の曲率とがマッチした条件でなければ、支持ローラ81・82を、無端ベルト83を介して定着ローラ60に当接させることができない。そして、支持ローラ81・82が定着ローラ60に当接しない場合には、外部加熱装置80から定着ローラ60への熱伝達能力が低下してしまう。これに対して、上記のように軸間距離を可変にすることにより、第1位置において支持ローラ81・82と定着ローラ60とを無端ベルト83を介して確実に圧接させることができ、適切な熱伝達を行わせることができる。
さらに、図8(b)示すように、第2位置において無端ベルト83張力がほとんど作用せずに緩んだ状態にすることができ、例えば長時間放置した場合であっても無端ベルト83に曲がり癖(変形癖)が生じることを防止できる。
また、本実施形態では、2本の支持ローラ81・82を備えており、各支持ローラ81・82の外径が同じであって、各支持ローラ81・82の内部にハロゲンランプ(発熱体)86a・86bを設けた構成について説明したが、これに限らず、本発明は任意の形態の外部ベルト加熱方式の定着装置に適用できる。例えば、支持ローラを3本以上備えていてもよい。また、各支持ローラの外径が異なっていてもよい。さらに、発熱体を備えない支持ローラが含まれていてもよい。また、発熱体が各支持ローラの内部とは異なる位置に備えられていてもよい。また、定着動作時にいずれの支持ローラ(ベルト懸架ローラ)も定着ローラ60に圧接せず、無端ベルト83のみが定着ローラ60に当接する構成であってもよい。
〔実施形態2〕
本発明の他の実施形態について説明する。なお、説明の便宜上、実施形態1で説明した各部材と同様の機能を有する部材については実施形態1と同じ符号を用い、その説明を省略する。
本実施形態は、加圧ローラ70の周面を加熱する外部加熱装置を備える点が、実施形態1と異なっている。つまり、本実施形態にかかる定着装置40は、定着ニップ部において、記録紙の裏面(未定着画像が形成されていない面)に接触する加圧ローラ70の周面に当接してこの加圧ローラ70の周面を加熱する外部加熱装置を備えている。
図9(a)および図9(b)は、加圧ローラ70およびこの加圧ローラ70の周面を加熱する外部加熱装置130の構成を示す説明図である。なお、図9(a)は外部加熱装置130に備えられる支持ローラ132が後述する第1位置にある場合、図9(b)は支持ローラ132が後述する第2位置にある場合を示している。
これらの図に示すように、外部加熱装置130は、第1支持ローラ131、第2支持ローラ(加熱ローラ)132、無端ベルト133、ベルト移動装置140を備えている。
無端ベルト133は、裏面側が各支持ローラ131・132の周面に当接するように各支持ローラ131・132に張架されている。無端ベルト133は、定着ニップ部に対して加圧ローラ70の回転方向上流側に設けられており、支持ローラ132が後述する第1位置にあるとき、所定の押圧力(本実施形態では40N)で加圧ローラ70に圧接される。これにより、加圧ローラ70との間に加熱ニップ部(無端ベルト133と加圧ローラ70との当接部;加圧ローラ70の円周方向の幅20mm)が形成されている。
また、無端ベルト133は、回転する加圧ローラ70の周面に当接することにより、加圧ローラ70に従動回転するようになっている。これにより、各支持ローラ131・132は、加圧ローラ70の回転方向と逆方向(図3のK方向)に回転する。つまり、制御装置90が定着ローラ60の回転駆動装置91を制御して定着ローラ60を回転駆動させると、加圧ローラ70が定着ローラ60に従動回転し、無端ベルト133と加圧ローラ70とが接している部分での摩擦力によって無端ベルト133が加圧ローラ70に従動して移動し、支持ローラ131・132および無端ベルト133が回転するようになっている。
無端ベルト133、支持ローラ131・132は、実施形態1の外部加熱装置80に備えられる無端ベルト83、支持ローラ81・82と同様のものである。ただし、支持ローラ131の内部にはハロゲンランプが備えられておらず、支持ローラ132の内部にハロゲンランプが備えられている。なお、無端ベルト133の支持ローラ132との当接部における外周面には温度検出手段(図示せず)が備えられており、この温度検出手段の検出結果に基づいて制御装置90が支持ローラ132の内部に備えられるハロゲンランプへの電力供給量、ベルト移動装置140による支持ローラ131・132の移動位置、などを制御するようになっている。
各支持ローラ131・132は、ベルト移動装置140によって、無端ベルト133を介して加圧ローラ70の周面に所定の荷重で押圧される。これにより、無端ベルト133表面は加圧ローラ70周面に接触し、無端ベルト133表面と加圧ローラ70周面との間にニップ部(加熱ニップ部)が形成される。なお、無端ベルト133表面と加圧ローラ70周面との間の加熱ニップ幅は20mm(加圧ローラ70周方向に沿った幅)である。
ベルト移動装置140は、サイドフレーム141、アーム142、偏心カム143、コイルバネ144、支点(支点部材)145を備えている。
サイドフレーム141は、支持ローラ131・132の両端側にそれぞれ設けられており、支持ローラ131・132を図示しない軸受を介して回転可能に支持するものである。なお、この軸受は、実施形態1の外部加熱装置80に備えられる軸受117・118と同様、軸間距離を固定されていてもよく、軸間距離が可変であってもよい。
また、このサイドフレーム141は、アーム142に固定されている。さらに、アーム142は、定着装置40のフレーム(図示せず)に対して支点145で支持ローラ131・132の軸方向に略垂直な方向に対して回転可能に軸支されている。なお、この支点145は支持ローラ131の回転軸と一致する位置に設けられている。したがって、支点145を中心としてアーム142を回転させても、支持ローラ131の位置(支持ローラ131と加圧ローラ70の軸間距離)は変化しないようになっている。ここで、支持ローラ131と加圧ローラ70との軸間距離は、両ローラが無端ベルト133を介して所定の圧力で圧接するように設定されている。また、アーム142における支持ローラ132を挟んだ支点145の反対側の位置には、コイルバネ144が取り付けられており、このコイルバネ144によってアーム142に取り付けられたサイドフレーム141が加圧ローラ70の方向に付勢されている。
偏心カム143は、アーム142の端部近傍に当接するように備えられている。この偏心カム143は、制御装置90が図示しないモータ等の駆動手段を制御することによって回転駆動される。これにより、制御装置90が上記駆動手段を制御して偏心カム143を回転させ、図9(a)に示すように支持ローラ132を第1位置に移動させてこの支持ローラ131・132を加圧ローラ70に圧接させたり、偏心カム143をそこから180度回転させ、図9(b)に示すように支持ローラ132を第2位置に移動させて支持ローラ132を加圧ローラ70から離間させたりできるようになっている。なお、第2位置においても支持ローラ131は加圧ローラ70に圧接する。
なお、支持ローラ131・132と、この支持ローラ131・132の両端側に備えられた軸受との間には、実施形態1における外部加熱装置80に備えられるベルト規制部材121・122と同様にベルト規制部材(図示せず)が設けられている。つまり、支持ローラ131・132の軸方向の両端側には、第2位置における支持ローラ131・132と加圧ローラ70との間隔よりも、支持ローラ131・132の周面からの高さが高いベルト規制部材が備えられている。
以上のように、本実施形態では、2本の支持ローラ131・132のうち、支持ローラ132にのみハロゲンランプが備えられており、ベルト移動装置140によってハロゲンランプが設けられた支持ローラ132を、無端ベルト133を介して加圧ローラ70に当接させたり、離間させたりできるようになっている。
これにより、制御装置90に備えられた移動制御部90cが支持ローラ132の位置(加圧ローラ70に対する相対位置)を制御して、加圧ローラ70への熱供給量を制御できる。例えば、支持ローラ132の位置を第2位置にすることで、加圧ローラ70の表面温度を迅速に降下させることができ、また、加圧ローラ70表面の温度ムラを低減することができる。
なお、例えば、移動制御部90cは、1枚〜5枚程度の少数の記録紙に対して印字動作を連続して行う場合、支持ローラ132の位置を第2位置に設定するようにしてもよい。これにより、加圧ローラ70の過昇温を防止して、画質の低下等の不具合を防止できる。
つまり、少数の記録紙に対して印字動作を行う場合には、画像形成動作の開始時から排紙完了までの期間のうち、実際に定着ニップを記録紙が通過している時間の割合が短い。このため、高温の定着ローラ60に圧接して回転する加圧ローラ70の温度が上昇しやすい。このような状況で外部加熱装置130が加圧ローラ70に広い接触面積で接触していると(支持ローラ131が第1位置に設定されていると)、加圧ローラ70の温度が定着動作時の設定温度よりも上昇してしまう(例えば160℃程度まで上昇してしまう)。そして、このような過昇温が生じると、画像の光沢が高くなりすぎたり、微小なホットオフセットを生じたりして画像品位が低下してしまう。特に、記録紙の第1面にトナー像を形成した後にその裏面の第2面に第2画像を形成する両面印字の場合に、はじめに印字した第1面は、第2面の定着時に加圧ローラ70に接触する。このとき、加圧ローラ70の温度が高すぎると第1面の画像の光沢が高くなりすぎ、ぎらぎらした印象となり、画像品位が低下する。
そこで、移動制御部90cが、例えば6枚以上の連続通紙時には支持ローラ132を第1位置として無端ベルト83と加圧ローラ70との接触面積を広くし、5枚以下の画像形成時には支持ローラ132を第2位置へ移動させることで、加圧ローラ70の過昇温を防止し、画像品位の低下を防止できる。
また、移動制御部90cが、両面印字時には支持ローラ132を第2位置に移動させるようにしてもよい。両面印字時の第2面に対する定着時には、第1面に対する定着処理によって記録紙の温度が高くなっている。このため、第2面への定着処理時における加圧ローラ70から記録紙への熱の移動量は第1面への定着処理時よりも少ない。したがって、両面印字時には支持ローラ132を第2位置へ移動させることにより、無端ベルト133と加圧ローラ70との接触面積を小さくして加圧ローラ70の過昇温を防止することができる。
また、2本の支持ローラ131・132のうちの支持ローラ132のみを離間させるので、アーム142の移動距離を小さくすることができ、定着装置40の小型化、ベルト移動装置(離接機構)130の省電力化を図ることができる。
また、支持ローラ131が常に加圧ローラ70に所定の圧力で圧接されているので、アーム142の位置に関わらず、無端ベルト133を加圧ローラ70に確実に従動回転させることができる。
また、支持ローラ131はアーム142の位置に関わらず常に加圧ローラ70に圧接されているので、支持ローラ132を第2位置に移動させた場合でも、支持ローラ131の両端側に設けられたベルト規制部材が加圧ローラ70の周面に当接する位置に移動することを防止できる。
なお、ベルト規制部材は、必ずしも支持ローラ131および132の両方に対応して設けられている必要はない。ただし、支持ローラ132の両端側にベルト規制部材を設ける場合、このベルト規制部材の支持ローラ132表面からの高さを、第2位置における加圧ローラ70と支持ローラ132との間隔よりも高くすることが好ましい。これにより、ベルト規制部材が加圧ローラ70の周面と当接する位置に移動することを確実に防止できる。
また、上記各実施形態では、定着ローラ60(定着ニップ部において記録紙における未定着トナー像が形成された面に当接するローラ)または加圧ローラ70(定着ニップ部において記録紙における未定着トナー像が形成されていない面に当接するローラ)のいずれか一方に外部加熱装置を設ける構成について説明したが、定着ローラ60および加圧ローラ70のそれぞれに外部加熱装置を設けてもよい。定着ローラ60および加圧ローラ70のそれぞれに外部加熱装置を設ける場合、連続通紙時も待機時も、定着ローラ60および加圧ローラ70の両方の表面温度を精度良く制御できる。これにより、高品位な画像を安定して得ると同時に、高いスループットを継続して得ることができる。
また、実施形態1の外部加熱装置80を実施形態2の外部加熱装置130に代えて用いてもよく、実施形態2の外部加熱装置130を実施形態1の外部加熱装置80に代えて用いてもよい。
また、本実施形態では搬送ベルトを用いて紙を搬送する画像形成装置について説明したが、画像形成装置の構成はこれに限るものではない。本発明は、電子写真方式の画像形成装置であれば適用でき、例えば、中間転写ベルトを用いる構成であってもよく、感光体から記録紙に転写する構成であってもよい。また、単色画像を形成するものであっても、多色画像を形成するものであってもよい。
また、上記各実施形態では、制御装置90は制御用集積回路基板から構成されているものとしたが、これに限らず、CPU等のプロセッサを用いて制御装置90に備えられる各制御部の機能をソフトウェアによって実現するものであってもよい。この場合、例えば、制御装置90は、各機能を実現する制御プログラムの命令を実行するCPU(central processing unit)、上記プログラムを格納したROM(read only memory)、上記プログラムを展開するRAM(random access memory)、上記プログラムおよび各種データを格納するメモリ等の記憶装置(記録媒体)などから構成される。そして、本発明の目的は、上述した機能を実現するソフトウェアである制御装置90の制御プログラムのプログラムコード(実行形式プログラム、中間コードプログラム、ソースプログラム)をコンピュータで読み取り可能に記録した記録媒体を、上記制御装置90に供給し、そのコンピュータ(またはCPUやMPU)が記録媒体に記録されているプログラムコードを読み出し実行することによって達成される。
上記記録媒体としては、例えば、磁気テープやカセットテープ等のテープ系、フロッピー(登録商標)ディスク/ハードディスク等の磁気ディスクやCD−ROM/MO/MD/DVD/CD−R等の光ディスクを含むディスク系、ICカード(メモリカードを含む)/光カード等のカード系、あるいはマスクROM/EPROM/EEPROM/フラッシュROM等の半導体メモリ系などを用いることができる。
また、制御装置を通信ネットワークと接続可能に構成し、通信ネットワークを介して上記プログラムコードを供給してもよい。この通信ネットワークは、特に限定されるものではなく、例えば、インターネット、イントラネット、エキストラネット、LAN、ISDN、VAN、CATV通信網、仮想専用網(virtual private network)、電話回線網、移動体通信網、衛星通信網等が利用可能である。また、通信ネットワークを構成する伝送媒体は、特に限定されるものではなく、例えば、IEEE1394、USB、電力線搬送、ケーブルTV回線、電話線、ADSL回線等の有線でも、IrDAやリモコンのような赤外線、Bluetooth(登録商標)、802.11無線、HDR、携帯電話網、衛星回線、地上波デジタル網等の無線でも利用可能である。なお、本発明は、上記プログラムコードが電子的な伝送で具現化された、搬送波に埋め込まれたコンピュータデータ信号(データ信号列)の形態でも実現され得る。
また、上記各実施形態では、ローラ形状の定着部材(定着ローラ)および加圧部材(加圧ローラ)を用いているが、これに限るものではなく、例えばベルト状のものなどを用いてもよい。
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、上述した実施形態において開示された各技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。