JP4609116B2 - 定着装置および画像形成装置 - Google Patents

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Description

本発明は、例えば電子写真方式を利用した画像形成装置に用いられる定着装置等に関する。
近年、複写機、プリンタ等の画像形成装置では、電子写真方式や静電記録方式等を利用したものが主流となっている。このような画像形成装置では、例えば電子写真方式を用いた場合には、次のような画像形成プロセスが用いられている。まず、例えばドラム状に形成された感光体(感光体ドラム)を一様に帯電し、この感光体ドラムを画像情報に基づいて制御された光で走査露光して感光体ドラム上に静電潜像を形成する。さらに、この静電潜像をトナーによって可視像(トナー像)とし、このトナー像を感光体ドラム上から記録紙に直接転写するか、或いは、このトナー像を一旦中間転写体に一次転写し、中間転写体から記録紙に二次転写することで、記録紙上にトナー像を形成する。そして、記録紙上に形成されたトナー像を定着装置によって定着する。
かかる画像形成装置に用いられる定着装置は、例えば、円筒状の芯金の内部に加熱源が配設され、その芯金に耐熱性弾性層と離型層とが積層されて形成された定着ロールと、この定着ロールに対して圧接配置され、芯金に耐熱性弾性層と耐熱性樹脂被膜あるいは耐熱性ゴム被膜による離型層とが積層されて形成された加圧ロールとで構成されている。そして、定着ロールと加圧ロールとの間に、未定着トナー像を担持した記録紙を通過させ、未定着トナー像に対して加熱と加圧とを行うことによって、記録紙にトナー像を定着している。このような定着装置は、ロールニップ方式と呼ばれて、一般に広く利用されている。
ところで、ロールニップ方式の定着装置において高速化を図ろうとする場合には、トナーと記録紙に充分な熱量を供給するために、ニップ幅を定着速度に比例して広くすることが必要となる。ここで、ニップ幅を広くする方法としては、定着ロールと加圧ロールとの間の荷重を大きくする方法や、弾性体の厚さを厚くする方法、さらにはロール径を大きくする方法がある。
しかし、荷重を大きくする方法や、弾性体の厚さを厚くする方法では、ロールの撓みに起因するニップ幅の形状がロール軸に沿って不均一になることから、定着むらや紙しわが発生する等といった画像品質上の問題が生じる。また、ロール径を大きくする方法では、装置の大型化を招くとともに、ロールを室温から定着可能温度に上昇させるまでの時間(ウォームアップタイム)が長くなるという問題がある。
そこで、これらの問題を解消して、画像形成装置の高速化に対応した定着装置を実現するべく、本出願人は、表面に弾性体が被覆された定着ロールと、複数の支持ロールによって張架されたエンドレスベルトとを設け、エンドレスベルトと定着ロールとの間にニップ領域を形成するようにエンドレスベルトを定着ロールの周りに所定角度領域だけ巻き付けるように構成するとともに、ニップ領域の出口部(最下流部)においてニップ領域の他の部分よりも大きな圧力を局部的に加える加圧ロールを配設した定着装置に関する技術を提案している(例えば、特許文献1参照)。
かかる特許文献1に記載された定着装置では、複数個のロールで張架されたエンドレスベルトを定着ロールに接触させることで、ニップ部(これを「ベルトニップ部」ともいう。)を形成している。このような構成(これを「ベルトニップ方式」ともいう。)を採用することにより、定着ロール(定着部材)とエンドレスベルト(加圧ベルト部材)とによって形成されるベルトニップ部の幅が従来の定着ロールと加圧ロールとのロールニップ部の幅よりも容易に大きくすることができるので、高速化対応が可能となり、しかも装置の小型化を図ることも容易である。
特に、ベルトニップ方式の定着装置では、定着ロールに圧接させるエンドレスベルトの熱容量が小さいために、定着ロールから伝達される熱も発散され難い。そのため、定着ロールの回転が開始されても、定着ロールからエンドレスベルト側に奪われる熱量は比較的少なく、熱をトナーの溶融に利用する効率が高まることから、トナーの定着性の向上を図ることができるという利点も有している。
また、ニップ領域の最下流部において大きな圧力を局部的に加える加圧ロールは、トナー像の表面を平滑化する作用を有するので、トナー画像に適度な光沢を付与することもできる。さらに、かかる加圧ロールは定着ロールの表面に局所的に凹部を形成する。それによって、この凹部を通過する記録紙にはダウンカールが形成されるので、記録紙を定着ロールから容易に剥離することも可能である。
特許第3084692号公報(第5-8頁)
ところで、上記した特許文献1に記載されたようなベルトニップ方式の定着装置では、画像形成動作が開始される前には、予め定着ロールのような定着部材を定着可能温度まで高めておく(ウォームアップする)必要がある。それと同時に、定着部材から加圧ベルト部材への熱の移動を極力抑えるために、加圧ベルト部材についてもベルト全体を均一に加熱しておくことが有効である。ところが、その場合に、定着部材および加圧ベルト部材のそれぞれに設定される温度は異なっている。また、定着部材と加圧ベルト部材とでは所定の温度まで上昇させるために必要な時間が異なっている。そのために、定着部材および加圧ベルト部材の各々が極力短時間で所定の温度まで上昇するように、画像形成動作が開始される前に定着部材と加圧ベルト部材とを一旦離間(リトラクト)させておき、それぞれを別個に回転駆動しながら定着部材と加圧ベルト部材とを加熱している。そして、定着部材と加圧ベルト部材とが所定の温度に到達した時点で、両者を再び圧接することで定着処理が可能な構成に設定している。
この場合に、リトラクトされた定着部材と加圧ベルト部材とを再び圧接した状態に設定するに際しては、定着部材は加圧ベルト部材を加圧ベルト部材の内側に向けて押圧するように圧接することとなる。そのために、加圧ベルト部材のテンションは、リトラクトされて緩められた状態のテンションから、定着動作時における圧接された状態のテンションまで上昇する。その際には、圧接前後における加圧ベルト部材のテンションの上昇分は、加圧ベルト部材の全体に亘って平均的に分配される必要がある。
しかしながら、加圧ベルト部材と定着部材との間を押圧する部材(圧接部材)が設けられた構成では、かかる圧接部材と定着部材との摩擦力によって、圧接部材と定着部材とにより挟み込まれた領域での加圧ベルト部材の移動が制限される。そのために、加圧ベルト部材にテンションの不均一が生じ易く、加圧ベルト部材に局所的に高いせん断力が作用して加圧ベルト部材に破損が生じる場合がある。またその逆に、加圧ベルト部材にテンションが弱くなった領域が生じて加圧ベルト部材に弛みが生じ、加圧ベルト部材に座屈が発生する場合もある。その結果、加圧ベルト部材が所定の動作を行うことができなくなり、定着装置が機能不能に陥る可能性があった。
そこで本発明は、以上のような技術的課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、ベルト部材を用いる定着装置において、ベルト部材を被当接部材に圧接させる際に、ベルト部材にテンションの不均一が生じることを抑制することにある。
かかる目的のもと、本発明の定着装置は、記録材に担持されたトナー像を定着する定着装置であって、回動部材と、回動部材に対して当接状態と離隔状態とが切替可能に設定されたベルト部材と、ベルト部材を張架する複数のロール部材とを備え、ベルト部材は、回動部材に段階的に当接することを特徴としている。
ここで、ベルト部材は、ロール部材をラップしていない領域が最初に回動部材に当接されることを特徴とすることができる。また、ベルト部材は、回動部材に当接するに際し、回動しながら回動部材に当接されることを特徴とすることもできる。
さらに、ロール部材の少なくとも1つは回動部材を押圧可能な加圧ロールで構成され、加圧ロールは、ベルト部材が回動部材に当接される際に、ベルト部材のロール部材をラップしていない領域が回動部材に当接した後に、回動部材に押圧されることを特徴とすることができる。また、ベルト部材を内側から回動部材に押圧可能な押圧部材をさらに備え、押圧部材は、ベルト部材が回動部材に当接される際に、ベルト部材のロール部材をラップしていない領域が回動部材に当接した後に、回動部材に押圧されることを特徴とすることができる。
加えて、回動部材は、内部に加熱源が配設された定着ロールと、定着ロールに張架される定着ベルトと、定着ベルトを張架する張架ロールとを有することを特徴とすることができる。また、回動部材は、弾性体層が被覆されたロール状部材であることを特徴とすることもできる。
また、本発明の定着装置は、回動可能なベルト部材と、ベルト部材を張架する複数のロール部材と、ベルト部材に当接可能であり、ベルト部材と当接して配置された際に、ベルト部材との間に記録材が通過するニップ部を形成する回動部材と、ベルト部材と回動部材とを接離させる接離手段とを備え、接離手段は、ベルト部材と回動部材とを離隔状態から当接状態に設定する際に、ベルト部材のテンションを周方向に亘って略均等に維持しながら当接させることを特徴としている。
ここで、接離手段は、ベルト部材と回動部材とを離隔状態から当接状態に設定する際に、ベルト部材のロール部材をラップしていない領域と回動部材とを最初に当接させることを特徴とすることができる。また、ベルト部材は、回動部材から離隔された状態にて回動可能に構成することもできる。さらに、ロール部材は、加熱源が配設された少なくとも1のロール部材を含むことを特徴とすることもできる。加えて、ベルト部材は、回動部材から離隔された状態にて所定の温度に加熱されることを特徴とすることもできる。また、回動部材は、加熱源を有し、ベルト部材から離隔された状態にて所定の温度に加熱されることを特徴とすることもできる。
また、本発明を画像形成装置として捉え、本発明の画像形成装置は、トナー像を形成するトナー像形成手段と、トナー像形成手段によって形成されたトナー像を記録材上に転写する転写手段と、記録材上に転写されたトナー像を記録材に定着する定着手段とを含み、定着手段は、回動部材と、回動部材に対して当接状態と離隔状態とが切替可能に設定されたベルト部材と、ベルト部材を張架する複数のロール部材とを備え、ベルト部材は、回動部材に段階的に当接することを特徴としている。
ここで、定着手段のベルト部材は、ロール部材をラップしていない領域が最初に回動部材に当接されることを特徴とすることができる。また、定着手段は、ベルト部材と回動部材とを当接させる際に、ベルト部材のロール部材をラップしていない領域が回動部材に当接した後に、ロール部材の1を回動部材に当接させることを特徴とすることもできる。さらには、定着手段は、ベルト部材と回動部材とを当接させる際に、ベルト部材のテンションを周方向に亘って略均等に維持することを特徴とすることもできる。
本発明によれば、ベルト部材を用いる定着装置において、ベルト部材にテンションの不均一が生じることを抑制することができる。それにより、ベルト部材に破損や座屈等が発生して定着処理が不能となる事態の発生を抑えて、長期に亘り安定した定着性を確保することが可能となった。
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
[実施の形態1]
図1は本実施の形態が適用される画像形成装置を示した概略構成図である。図1に示す画像形成装置は、一般にタンデム型と呼ばれる中間転写方式の画像形成装置であって、電子写真方式により各色成分のトナー像が形成される複数の画像形成ユニット1Y,1M,1C,1K、各画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kにより形成された各色成分トナー像を中間転写ベルト15に順次転写(一次転写)させる一次転写部10、中間転写ベルト15上に転写された重畳トナー画像を記録材(記録紙)である用紙Pに一括転写(二次転写)させる二次転写部20、二次転写された画像を用紙P上に定着させる定着装置60を備えている。また、各装置(各部)の動作を制御する制御部40を有している。
本実施の形態において、各画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kは、矢印A方向に回転する感光体ドラム11の周囲に、これらの感光体ドラム11を帯電する帯電器12、感光体ドラム11上に静電潜像を書込むレーザ露光器13(図中露光ビームを符号Bmで示す)、各色成分トナーが収容されて感光体ドラム11上の静電潜像をトナーにより可視像化する現像器14、感光体ドラム11上に形成された各色成分トナー像を一次転写部10にて中間転写ベルト15に転写する一次転写ロール16、感光体ドラム11上の残留トナーが除去されるドラムクリーナ17、などの電子写真用デバイスが順次配設されている。これらの画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kは、中間転写ベルト15の上流側から、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、黒(K)の順に、略直線状に配置されている。
中間転写体である中間転写ベルト15は、ポリイミドあるいはポリアミド等の樹脂にカーボンブラック等の帯電防止剤を適当量含有させたフィルム状の無端ベルトで構成されている。そして、その体積抵抗率は106〜1014Ωcmとなるように形成されており、その厚みは例えば0.1mm程度に構成されている。中間転写ベルト15は、各種ロールによって図1に示すB方向に所定の速度で循環駆動(回動)されている。この各種ロールとして、定速性に優れたモータ(図示せず)により駆動されて中間転写ベルト15を回動させる駆動ロール31、各感光体ドラム11の配列方向に沿って略直線状に延びる中間転写ベルト15を支持する支持ロール32、中間転写ベルト15に対して一定の張力を与えると共に中間転写ベルト15の蛇行を防止する補正ロールとして機能するテンションロール33、二次転写部20に設けられるバックアップロール25、中間転写ベルト15上の残留トナーを掻き取るクリーニング部に設けられるクリーニングバックアップロール34を有している。
一次転写部10は、中間転写ベルト15を挟んで感光体ドラム11に対向して配置される一次転写ロール16で構成されている。一次転写ロール16は、シャフトと、シャフトの周囲に固着された弾性層としてのスポンジ層とで構成されている。シャフトは鉄、SUS等の金属で構成された円柱棒である。スポンジ層はカーボンブラック等の導電剤を配合したNBRとSBRとEPDMとのブレンドゴムで形成され、体積抵抗率が10〜10Ωcmのスポンジ状の円筒ロールである。そして、一次転写ロール16は中間転写ベルト15を挟んで感光体ドラム11に圧接配置され、さらに一次転写ロール16にはトナーの帯電極性(マイナス極性とする。以下同様。)と逆極性の電圧(一次転写バイアス)が印加されるようになっている。これにより、各々の感光体ドラム11上のトナー像が中間転写ベルト15に順次、静電吸引され、中間転写ベルト15上において重畳されたトナー像が形成されるようになっている。
二次転写部20は、中間転写ベルト15のトナー像担持面側に配置される二次転写ロール22と、バックアップロール25とによって構成される。バックアップロール25は、表面がカーボンを分散したEPDMとNBRとのブレンドゴムのチューブ、内部がEPDMゴムで構成されている。そして、その表面抵抗率が10〜1010Ω/□となるように形成され、硬度は例えば70°(アスカーC)に設定される。このバックアップロール25は、中間転写ベルト15の裏面側に配置されて二次転写ロール22の対向電極をなし、二次転写バイアスが安定的に印加される金属製の給電ロール26が当接配置されている。
一方、二次転写ロール22は、シャフトと、シャフトの周囲に固着された弾性層としてのスポンジ層とで構成されている。シャフトは鉄、SUS等の金属で構成された円柱棒である。スポンジ層はカーボンブラック等の導電剤を配合したNBRとSBRとEPDMとのブレンドゴムで形成され、体積抵抗率が10〜10Ωcmのスポンジ状の円筒ロールである。そして、二次転写ロール22は中間転写ベルト15を挟んでバックアップロール25に圧接配置され、さらに二次転写ロール22は接地されてバックアップロール25との間に二次転写バイアスが形成され、二次転写部20に搬送される用紙P上にトナー像を二次転写する。
また、中間転写ベルト15の二次転写部20の下流側には、二次転写後の中間転写ベルト15上の残留トナーや紙粉を除去し、中間転写ベルト15の表面をクリーニングする中間転写ベルトクリーナ35が接離自在に設けられている。一方、イエローの画像形成ユニット1Yの上流側には、各画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kにおける画像形成タイミングをとるための基準となる基準信号を発生する基準センサ(ホームポジションセンサ)42が配設されている。また、黒の画像形成ユニット1Kの下流側には、画質調整を行うための画像濃度センサ43が配設されている。この基準センサ42は、中間転写ベルト15の裏側に設けられた所定のマークを認識して基準信号を発生しており、この基準信号の認識に基づく制御部40からの指示により、各画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kは画像形成を開始するように構成されている。
さらに、本実施の形態の画像形成装置では、用紙搬送系として、用紙Pを収容する用紙トレイ50、この用紙トレイ50に集積された用紙Pを所定のタイミングで取り出して搬送するピックアップロール51、ピックアップロール51により繰り出された用紙Pを搬送する搬送ロール52、搬送ロール52により搬送された用紙Pを二次転写部20へと送り込む搬送シュート53、二次転写ロール22により二次転写された後に搬送される用紙Pを定着装置60へと搬送する搬送ベルト55、用紙Pを定着装置60に導く定着入口ガイド56を備えている。
次に、本実施の形態に係る画像形成装置の基本的な作像プロセスについて説明する。図1に示すような画像形成装置では、図示しない画像読取装置(IIT)や図示しないパーソナルコンピュータ(PC)等から出力される画像データは、図示しない画像処理装置(IPS)により所定の画像処理が施された後、画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kによって作像作業が実行される。IPSでは、入力された反射率データに対して、シェーディング補正、位置ズレ補正、明度/色空間変換、ガンマ補正、枠消しや色編集、移動編集等の各種画像編集等の所定の画像処理が施される。画像処理が施された画像データは、Y、M、C、Kの4色の色材階調データに変換され、レーザ露光器13に出力される。
レーザ露光器13では、入力された色材階調データに応じて、例えば半導体レーザから出射された露光ビームBmを画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kの各々の感光体ドラム11に照射している。画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kの各感光体ドラム11では、帯電器12によって表面が帯電された後、このレーザ露光器13によって表面が走査露光され、静電潜像が形成される。形成された静電潜像は、各々の画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kによって、Y、M、C、Kの各色のトナー像として現像される。
画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kの感光体ドラム11上に形成されたトナー像は、各感光体ドラム11と中間転写ベルト15とが当接する一次転写部10において、中間転写ベルト15上に転写される。より具体的には、一次転写部10において、一次転写ロール16により中間転写ベルト15の基材に対しトナーの帯電極性(マイナス極性)と逆極性の電圧(一次転写バイアス)が付加され、トナー像を中間転写ベルト15の表面に順次重ね合わせて一次転写が行われる。
トナー像が中間転写ベルト15の表面に順次一次転写された後、中間転写ベルト15は移動してトナー像が二次転写部20に搬送される。トナー像が二次転写部20に搬送されると、用紙搬送系では、トナー像が二次転写部20に搬送されるタイミングに合わせてピックアップロール51が回転し、用紙トレイ50から所定サイズの用紙Pが供給される。ピックアップロール51により供給された用紙Pは、搬送ロール52により搬送され、搬送シュート53を経て二次転写部20に到達する。この二次転写部20に到達する前に、用紙Pは一旦停止され、トナー像が担持された中間転写ベルト15の移動タイミングに合わせてレジストロール(図示せず)が回転することで、用紙Pの位置とトナー像の位置との位置合わせがなされる。
二次転写部20では、中間転写ベルト15を介して、二次転写ロール22がバックアップロール25に押圧される。このとき、タイミングを合わせて搬送された用紙Pは、中間転写ベルト15と二次転写ロール22との間に挟み込まれる。その際に、給電ロール26からトナーの帯電極性(マイナス極性)と同極性の電圧(二次転写バイアス)が印加されると、二次転写ロール22とバックアップロール25との間に転写電界が形成される。そして、中間転写ベルト15上に担持された未定着トナー像は、二次転写ロール22とバックアップロール25とによって押圧される二次転写部20において、用紙P上に一括して静電転写される。
その後、トナー像が静電転写された用紙Pは、二次転写ロール22によって中間転写ベルト15から剥離された状態でそのまま搬送され、二次転写ロール22の用紙搬送方向下流側に設けられた搬送ベルト55へと搬送される。搬送ベルト55では、定着装置60における最適な搬送速度に合わせて、用紙Pを定着装置60まで搬送する。定着装置60に搬送された用紙P上の未定着トナー像は、定着装置60によって熱および圧力で定着処理を受けることで用紙P上に定着される。そして定着画像が形成された用紙Pは、画像形成装置の排出部に設けられた排紙載置部に搬送される。
一方、用紙Pへの転写が終了した後、中間転写ベルト15上に残った残留トナーは、中間転写ベルト15の回動に伴ってクリーニング部まで搬送され、クリーニングバックアップロール34および中間転写ベルトクリーナ35によって中間転写ベルト15上から除去される。
次に、本実施の形態の画像形成装置に用いられる定着装置60について説明する。
図2は本実施の形態の定着装置60の構成を示す側断面図である。この定着装置60は、加熱手段の一例としての定着ベルトモジュール(回動部材)61と、定着ベルトモジュール61に対して接離可能に構成された加圧手段の一例としての加圧ベルトモジュール62とで主要部が構成されている。
定着ベルトモジュール61は、矢印A方向に回転する定着ロール610、内部に加熱部材としてのハロゲンヒータ616aが配設された張架ロール615、同様に内部に加熱部材としてのハロゲンヒータ616bが配設された張架ロール618、定着ロール610と張架ロール615との間で定着ベルト614の姿勢を矯正する姿勢矯正ロール619、ニップ部Nの最下流部に配置された剥離ロール66、定着ロール610と張架ロール615と張架ロール618、さらには姿勢矯正ロール619と剥離ロール66とに張架されて矢印D方向に移動する定着ベルト614によって主要部が構成されている。
定着ロール610は、厚さ5mmのアルミニウムで形成された芯金611の表面に、厚さ1.5mmの弾性層612が被覆されて形成された、外径100mm、長さ420mmのソフトロールである。弾性層612には、ゴム硬度が25〜45°(JIS−A)のLSR(Liquid Silicone Rubber)が用いられている。そして、定着ロール610は、400mm/sの表面速度で矢印A方向に回転する。
また、定着ロール610の内部には加熱源として定格1000Wのハロゲンヒータ613が配設され、定着ロール610の表面に接触するように配置された温度センサ617aの計測値に基づき、画像形成装置の制御部40(図1参照)が定着ロール610の表面温度を160℃に制御している。
なお、弾性層612の材質としては、シリコーンゴムに限定されず、例えばフッ素ゴムのような従来公知の各種材質を用いることができ、また、シリコーンゴムとフッ素ゴムからなる複数層が積層された弾性層612を用いてもよい。さらに、定着ロール610としては、弾性層612のない、所謂ハードロールを用いることができ、この場合には、定着ロール610から定着ベルト614への熱供給がさらに効率化される。
定着ベルト614は、定着ロール610、張架ロール615および張架ロール618、さらには姿勢矯正ロール619、剥離ロール66により張力(テンション)10kgfで張架されている。定着ベルト614は周長450mm、幅400mmのフレキシブルなエンドレスベルトで形成されている。
定着ベルト614は、厚さ80μmのポリイミド樹脂で形成されたベース層と、ベース層の表面側(外周面側)に積層された厚さ50μmのシリコーンゴムからなる弾性層と、さらに弾性層の上に、厚さ10μmのテトラフルオロエチレン−ペルフルオロアルキルビニルエーテル共重合体樹脂(PFA)で形成された表面離型層とからなる多層構造で構成されている。ここでは、弾性層は、特にカラー画像に対する画質向上のために設けられたものであり、本実施の形態ではゴム硬度が20°(JIS−A)のシリコーンゴムを使用している。なお、定着ベルト614の構成は、使用目的や使用条件等の装置設計条件に応じて、材質・厚さ・硬度等を適宜選択することができる。
張架ロール615は、外径40mm、肉厚2mm、長さ420mmのアルミニウムパイプロールで形成されている。張架ロール615の内部には加熱源として定格800Wのハロゲンヒータ616aが配設されており、温度センサ617bと制御部40(図1参照)とによって、張架ロール615の表面温度は200℃に制御されている。したがって、張架ロール615は、定着ベルト614を張架する機能とともに、定着ベルト614を加熱する機能をも併せ持っている。
また、張架ロール615は、定着ベルト614の軸方向の変位をできる限り小さくするため、および、定着ベルト614に作用する張力を幅方向に亘って均一にするため、外径が端部よりも中央部のほうを100μmだけ大きくした所謂クラウン形状で形成している。
さらに、張架ロール615の近傍には、定着ベルト614のエッジ位置を検知するベルトエッジ位置検知機構(不図示)が配置されている。そして、張架ロール615は、ベルトエッジ位置検知機構の検知結果に応じて定着ベルト614の軸方向における当接位置を変位させる軸変位機構が配設され、定着ベルト614の蛇行(ベルトウォーク)を制御するように構成されている。また、張架ロール615は、ベルトテンショナ75により定着ベルト614全体が張力(テンション)10kgfとなるように荷重を印加する荷重ロールとしての機能をも有している。
張架ロール618は、外径30mm、肉厚2mm、長さ420mmのアルミニウムパイプロールを基体として、その表面に厚さ20μmのPFAが被覆されて離型層が形成されている。この離型層は、定着ベルト614の外周面からの僅かなオフセットトナーや紙粉が張架ロール618に堆積するのを防止するために形成されるものである。また、張架ロール618は、定着ベルト614の軸方向の変位をできる限り小さくするため、および、定着ベルト614の張架を均一にするため、外径が端部よりも中央部の方を100μmだけ大きくした所謂クラウン形状で形成している。なお、張架ロール615と張架ロール618の双方をクラウン形状で形成する場合のみならず、張架ロール615または張架ロール618のいずれか一方のみをクラウン形状で形成してもよい。
張架ロール618の内部には、加熱源としての定格800Wのハロゲンヒータ616bが配設されており、温度センサ617cと制御部40(図1参照)とによって表面温度が200℃に制御されている。したがって、張架ロール618は、定着ベルト614を張架する機能とともに、定着ベルト614を外表面から加熱する機能をも併せ持っている。したがって、本実施の形態では、張架ロール615と張架ロール618との双方によって定着ベルト614を補助加熱する構成となっている。
さらに、張架ロール618には、張架ロール618の表面に当接して、定着ベルト614の外周面から張架ロール618の表面に付着したオフセットトナーや紙粉を拭き取るためのクリーニングウェブ機構70が配設されている。
また、剥離ロール66は、外径10mmφ、長さ420mmで形成された小径のステンレスロールである。そして、剥離ロール66は、定着ロール610と後段で述べる加圧ベルトモジュール62に配置された加圧ロール622との当接部の下流側近傍において、定着ベルト614および後段で述べる加圧ベルト620を介して定着ベルト614の内側から加圧ロール622を圧接するように配置されている。
さらに、姿勢矯正ロール619は、定着ロール610と張架ロール615との間に配設されている。そして、ニップ部Nに進入する前の定着ベルト614の姿勢を矯正して、定着ベルト614とニップ部Nに搬送される用紙Pとの位置関係を安定化させている。
続いて、加圧ベルトモジュール62について述べる。加圧ベルトモジュール62は、インレットロール621、加圧ロール622および張架ロール623の3本のロール(ロール部材)により張架された加圧ベルト(ベルト部材)620、加圧ベルト620の内側において、加圧ベルト620を介して定着ロール610に付勢される状態で配置される押圧ロール(押圧部材)63により主要部が構成されている。そして、加圧ベルトモジュール62は定着ベルトモジュール61に押圧されるように設置された際に、加圧ベルト620は、定着ベルトモジュール61の定着ロール610が矢印A方向へ回転するのに伴い、定着ロール610に従動して矢印B方向に回動する。その進行速度は、定着ロール610の表面速度と同じ400mm/sである。
加圧ベルトモジュール62と定着ベルトモジュール61との接触部(ニップ部N)には、定着ベルト614が定着ロール610に巻き付けられた(ラッピングされた)領域(以下、このような領域を「ラップ領域」という。)内において、加圧ベルト620が定着ベルト614の外周面に圧接するように形成された第1ニップ部N1が設定されている。この第1ニップ部N1には、加圧ベルト620の内側に押圧ロール63が加圧ベルト620を介して定着ロール610側に向けて付勢された状態で配置され、加圧ベルト620を定着ロール610のラップ領域に押圧している。また、第1ニップ部N1の最下流部では、加圧ロール622が、加圧手段としての圧縮コイルスプリング(不図示)によって、加圧ベルト620および定着ベルト614を介して定着ロール610の中心軸に向けて(図中矢印F)付勢されており、定着ロール610および定着ベルト614の当接部に局所的な高圧を生じさせている。
さらに、第1ニップ部N1の下流側には、加圧ロール622に加圧ベルト620が巻き付けられたラップ領域内であって、加圧ロール622が定着ロール610を圧接する領域から、剥離ロール66が加圧ロール622を圧接している領域までの範囲において、第1ニップ部N1に連続するように、定着ベルト614が加圧ロール622のラップ領域に圧接するように形成された第2ニップ部N2が設定されている。
そして、トナー像を担持した用紙Pは、このニップ部N(第1ニップ部N1および第2ニップ部N2)を通過する際に、主として第1ニップ部N1において加熱および加圧され、トナー像が用紙Pに定着される。また、第2ニップ部N2では、用紙Pを定着ベルト614から確実に剥離するための準備工程が行なわれる。
ここで、加圧ベルト620は、例えばポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド等のような耐熱強度の高い樹脂で形成されたベース層で構成されている。ベース層の厚さとしては、例えば40〜100μm程度、より好ましくは50〜80μmに形成される。
また、加圧ベルト620は、ベース層の定着ロール610側の表面または両面に表面離型層が被覆された構成を採ることもできる。その場合の表面離型層としては、フッ素樹脂、例えばPFA等が5〜20μmの厚さでコーティングされたものが好ましい。さらには、必要に応じてベース層と離型層との間に弾性層が形成された積層構造を採ることもできる。その場合、弾性層としては、厚さが100〜200μmのシリコーンゴム等を使用することができる。
本実施の形態の定着装置60においては、加圧ベルト620として、厚さ50μm、幅340mm、周長280mmのポリイミドフィルムのベース層に、厚さ10μmのPFAからなる表面離型層を積層して形成した2層構造で構成されている。
加圧ベルト620を張架する3個のロールは、ステンレス製のインレットロール621と、ステンレス製のスチールコアに弾性層としてシリコーンゴムが被覆された加圧ロール622と、ステンレス製の張架ロール623とで構成され、10kgfの張力(テンション)で加圧ベルト620を張架している。それぞれのロールの外径は、22mmφ、50mmφおよび20mmφであり、長さは420mmである。また、インレットロール621の内部には、加熱源としてハロゲンヒータ625が配設されている。そして、図示しない温度センサおよび制御部40(図1参照)によりその表面温度は120℃に制御され、加圧ベルト620に予熱を与えることが可能であるように構成されている。
また、張架ロール623の近傍には、加圧ベルト620のエッジ位置を検知するベルトエッジ位置検知機構(不図示)が配設されている。そして、張架ロール623は、ベルトエッジ位置検知機構の検知結果に応じて加圧ベルト620の軸方向における当接位置を変位させる軸変位機構が配設され、加圧ベルト620の蛇行(ベルトウォーク)を制御するように構成されている。また、張架ロール623は、ベルトテンショナ76により加圧ベルト620全体が張力(テンション)10kgfとなるように荷重を印加する荷重ロールとしての機能をも有している。
また、加圧ロール622は、外径40mmの例えばステンレスからなる金属製のロールを基体として、基体の表面に例えば硬度20°(JIS−A)程度のシリコーンゴムからなる厚さ5mmの耐熱性弾性層が形成されている。そして、上述した圧縮コイルスプリング等の加圧機構(不図示)により例えば2.5×10Pa程度の所定の加圧力で矢印Fの方向に向けて定着ロール610を押圧することが可能であるように構成されている。そして、そのニップ幅は20mm程度に設定されている。
さらに、押圧部材の一例としての押圧ロール63は、例えば外径20mmのステンレスコアの外表面に、例えばシリコーンスポンジ(シリコーンゴムの発泡体)からなる厚さ15mm程度の弾性層が被覆されて構成されている。そして加圧機構(不図示)により例えば1.0×10Pa程度の所定の加圧力で矢印Eの方向に向けて定着ロール610を押圧することが可能であるように構成されている。そして、加圧ロール622と押圧ロール63とによるニップ幅は20mm程度に設定されている。
なお、押圧部材としては、本実施の形態のようなロール状の押圧ロール63のほか、パッド状に成型されたシリコーンゴム、フッ素ゴム等の耐熱性の高い弾性体や、板バネ等を用いることができる。その場合には、押圧部材上には低摩擦層を形成し、加圧ベルト620内周面と押圧部材との摺動抵抗を小さくすることが望ましい。具体的には、低摩擦層として、テフロン(登録商標)を含浸させたガラス繊維シート、フッ素樹脂シート、フッ素樹脂塗膜等を用いることができる。
次に、本実施の形態の定着装置60における定着動作について説明する。
画像形成装置の二次転写部20(図1参照)において未定着トナー像が静電転写された用紙Pは、搬送ベルト55および定着入口ガイド56により、定着装置60の第1ニップ部N1に向けて(矢印C方向)搬送されてくる。第1ニップ部N1を通過する用紙P表面の未定着トナー像は、第1ニップ部N1に作用する圧力と熱とにより用紙Pに定着される。本実施の形態の定着装置60では、上述したように、押圧ロール63と加圧ロール622とを押圧させながら、定着ベルト614がラッピングされた定着ロール610と加圧ベルト620とを当接させた構成により、第1ニップ部N1を広く設定することができるため、安定した定着性能を確保することができる。
このとき、第1ニップ部N1に作用する熱は、主として定着ベルト614によって供給される。定着ベルト614は、定着ロール610の内部に配置されたハロゲンヒータ613から定着ロール610を通じて供給される熱と、張架ロール615の内部に配置されたハロゲンヒータ616aから張架ロール615を通じて供給される熱と、張架ロール618の内部に配置されたハロゲンヒータ616bから張架ロール618を通じて供給される熱とによって加熱されるように構成されている。そのため、定着ロール610のみでは熱エネルギーが不充分である場合においても、張架ロール615から適切かつ速やかに熱エネルギーを補給することができるので、ニップ部Nにおいては、プロセススピードが400mm/sという高速であっても充分な熱量を確保することができる。
すなわち、本実施の形態の定着装置60では、直接的な加熱部材として機能する定着ベルト614は、極めて熱容量を小さく形成することができる。加えて、定着ベルト614は、熱供給部材である定着ロール610と、張架ロール615および張架ロール618とに広いラップ面積(大きなラップ角度)で接触するように構成している。そのため、定着ベルト614が1回転する短かい期間に、定着ロール610や張架ロール615および張架ロール618から充分な熱量が供給されるので、定着ベルト614を必要な定着温度に短時間で復帰させることが可能となる。したがって、ニップ部Nにおいては、定着装置60が高速化されても、所定の定着温度を常に維持することができる。
その結果、本実施の形態の定着装置60においては、高速定着動作の開始時に定着温度が低下する温度ドループ現象の発生を抑制することが可能となる。特に、熱容量の大きな厚紙等に対する定着においても、温度ドループの発生を抑制することができる。さらには、紙種に対応させて定着温度を途中で切り替える(定着温度のアップおよびダウンの双方を含む。)必要がある場合にも、定着ベルト614は熱容量が小さいので、ハロゲンヒータ613、さらにはハロゲンヒータ616a、ハロゲンヒータ616bの出力調整により、所望の温度への切り替えを容易、かつ速やかに行うことも可能となる。
また、本実施の形態の定着装置60は、第1ニップ部N1では、加圧ベルトモジュール62の加圧ベルト620が、定着ロール610表面に対し定着ベルト614が巻き付けられた領域(ラップ領域)内でのみ、定着ベルト614の外周面に当接するように構成されている。すなわち、第1ニップ部N1においては、定着ベルト614の内周面側には定着ロール610が全域に亘って位置している。したがって、定着ベルト614と加圧ベルト620との当接は、定着ロール610表面によって安定的に支持された状態が形成されるので、第1ニップ部N1の全域において両者を均一に密着させることができる。かかる定着ベルト614と加圧ベルト620との良好な密着性により、定着ベルト614から用紙Pへの熱の伝導を効率的に行うことができるので、温度ドループの発生をより効果的に抑制することができる。
さらに、本実施の形態の定着装置60では、第1ニップ部N1において作用する圧力と熱とによりトナー像が高いレベルで定着されるが、その際に、第1ニップ部N1の最下流部において、定着ロール610の中心軸に向けて付勢されて配置された加圧ロール622が、局所的な高圧によって溶融したトナー像に効率的に圧力を加えることで、高い定着性を確保している。また、加圧ロール622による局所的な高圧によりトナー像表面を平滑にしてカラー画像に良好な画像光沢を付与している。
続いて、第1ニップ部N1を通過した後には、用紙Pは第2ニップ部N2に搬送される。第2ニップ部N2は、加圧ロール622に加圧ベルト620が巻き付けられたラップ領域内であって、加圧ロール622が定着ロール610を圧接する領域から、剥離ロール66が加圧ロール622を圧接している領域に至る範囲に設定されている。そして、第2ニップ部N2では、定着ベルト614が加圧ロール622のラップ領域に圧接するように設定されている。
したがって、図3に詳細に示したように、第1ニップ部N1は定着ロール610の曲率によって下に凸である湾曲した形状を有するのに対し、第2ニップ部N2は加圧ロール622の曲率によって上に凸である湾曲した形状を有している。そのため、第1ニップ部N1において定着ロール610の曲率のもとで加熱加圧された用紙Pは、第2ニップ部N2において加圧ロール622による相反する方向に向いた曲率に進行方向が変化させられる。その際に、用紙P上のトナー像と定着ベルト614表面との間で微小なマイクロスリップが生じる。そのため、用紙Pが第2ニップ部N2を通過する際にトナー像と定着ベルト614との付着力が弱められることとなる。それにより、用紙Pを定着ベルト614から剥離することが容易となる。このように、第2ニップ部N2は、最終の剥離工程で確実に剥離が行なわれるための準備工程が行なわれる領域として位置付けられる。
そして、第2ニップ部N2の出口では、定着ベルト614は小径の剥離ロール66に巻き付くように搬送されるので、定着ベルト614の搬送方向はそこで急激に変化する。すなわち、剥離ロール66は定着ベルト614に対して加圧ロール622とは反対となる下に凸の湾曲した形状を形成するとともに、小径であるため曲率半径が小さいので、剥離ロール66での定着ベルト614の屈曲は大きなものとなる。そのため、第2ニップ部N2内において定着ベルト614との付着力が予め弱められた用紙Pは、用紙P自身が有している紙のコシによって定着ベルト614から確実にセルフストリップすることが可能となる。
特に、第2ニップ部N2は加圧ロール622の曲率によって上に凸である湾曲した形状を有しているため、用紙Pにはダウンカールを形成することができるので、定着ベルト614からのセルフストリップを促進させることができる。
このように、本実施の形態の定着装置60では、広く設定された第1ニップ部N1に作用する圧力と熱とにより、用紙P上のトナー像に対して安定した定着性能を確保することができる。またその際には、定着ベルト614には、定着ロール610や張架ロール615および張架ロール618から充分な熱量が供給されるので、定着ベルト614を必要な定着温度に短時間で復帰させることが可能となり、所定の定着温度を常に維持することができる。その結果、速定着動作の開始時に定着温度が低下する温度ドループ現象の発生を抑制することが可能となる。
また、第1ニップ部N1の最下流部においては、定着ロール610の中心軸に向けて付勢されて配置された加圧ロール622が、局所的な高圧によって溶融したトナー像に効率的に圧力を加えている。それにより、高い定着性を保持するとともに、トナー像表面を平滑にしてカラー画像に良好な画像光沢を付与することができる。
さらには、第1ニップ部N1の下流側には、第1ニップ部N1の曲率とは向きの異なる曲率で形状された第2ニップ部N2を配設している。そして、第2ニップ部N2を用紙が通過することにより、トナー像と定着ベルト614との付着力が弱められる。そのため、剥離ロール66による定着ベルト614の大きな屈曲によって、用紙Pは定着ベルト614から確実に剥離することが可能となる。
ところで、上記したように構成された本実施の形態の定着装置60においては、定着ベルトモジュール61と加圧ベルトモジュール62とは接離可能に構成されている。すなわち、画像形成動作時においては、図2に示したように、定着ベルトモジュール61と加圧ベルトモジュール62とはニップ部N(第1ニップ部N1および第2ニップ部N2)において互いに圧接されて配置されている。ところが、画像形成装置が画像形成動作の指示信号を受けて、画像形成動作を開始する際には、定着装置60は直ちに定着処理が可能となるように、定着ベルト614は所定の温度まで高められた状態に設定されている必要がある。また同様に、加圧ベルト620においても、定着動作中に定着ベルト614から不要に熱を奪って定着ベルト614の温度を低下させないように、所定の温度に加熱された状態に設定されている必要もある。そのため、画像形成動作の指示信号を受けた場合には、定着ベルトモジュール61と加圧ベルトモジュール62とは一旦離間した状態(リトラクト状態)に設定される。そして、定着ベルトモジュール61と加圧ベルトモジュール62とは各々別個に回動動作を行いながら、それぞれ定着ベルト614と加圧ベルト620とを加熱する動作が実行される。
具体的には、画像形成動作を開始する前に、加圧ベルトモジュール62は後段で説明するリトラクト機構により定着ベルトモジュール61から離間状態に設定される。そして、加圧ベルトモジュール62においては、インレットロール621と加圧ロール622と張架ロール623とに張架されて加圧ベルト620が所定の移動速度で回動し、加圧ベルト620はインレットロール621内に配設されたハロゲンヒータ625によって、ベルト周方向に亘って所定の温度に均一に加熱される。一方、定着ベルトモジュール61においても、同様に定着ベルト614がベルト周方向に亘って所定の定着可能温度に均一に加熱される。そして、定着ベルトモジュール61と加圧ベルトモジュール62とが所定の設定条件を満たした段階で、加圧ベルトモジュール62はリトラクト機構によって再び定着ベルトモジュール61に圧接した状態に設定される。その後、定着動作が開始されることとなる。
ここで、加圧ベルトモジュール62を定着ベルトモジュール61に対して接離させるリトラクト機構について説明する。
図4は、加圧ベルトモジュール62を定着ベルトモジュール61に対して接離させるリトラクト機構について説明する図である。まず、加圧ベルトモジュール62側の構成について述べる。加圧ベルトモジュール62には、その両側部に支持フレーム100が配設されている。そして、加圧ベルト620を張架する3つのロール、すなわちインレットロール621、加圧ロール622および張架ロール623は、支持フレーム100に回転自在に支持されている。具体的には、図4に示すように、支持フレーム100には、インレットロール621の回転軸621aを回転自在に支持する第1の支持孔101、加圧ロール622の回転軸622aを回転自在に支持する第2の支持孔102、張架ロール623の回転軸623aを回転自在に支持する第3の支持孔103が設けられ、それぞれインレットロール621、加圧ロール622および張架ロール623を互いの相対位置関係が変動しないように支持している。
また、加圧ロール622を支持する第2の支持孔102の外側には、伝達ギヤ622bが加圧ロール622の回転軸622aに同軸に接続されている。そして、加圧ベルトモジュール62が定着ベルトモジュール61から離間した状態において、伝達ギヤ622bは定着装置60の本体フレーム(不図示)に設けられた駆動ギヤ134に連結されるように構成されている。それにより、伝達ギヤ622bは駆動ギヤ134に結合されている駆動モータ(不図示)からの駆動を受けて加圧ロール622を回転し、加圧ベルト620を通常の定着動作時よりも低速に設定された所定の移動速度で回動させる。
その場合に、支持フレーム100は、加圧ベルト620が回動状態にある場合でも、インレットロール621、加圧ロール622および張架ロール623の相対位置関係が互いに変動しないように、高い剛性を持った材料が用いられ、また撓み等の変形が生じないような構造で形成されている。
さらに、支持フレーム100には、押圧ロール63を回転自在に支持するとともに、押圧ロール63の回転軸63aを定着ベルトモジュール61方向にスライド移動可能に支持する第4の支持孔106が設けられている。さらに、第4の支持孔106に支持された押圧ロール63の回転軸63aに対して、定着ベルトモジュール61側から離間させる方向の押圧力を付与する第3のバネ部材116も配設されている。
加えて、支持フレーム100には、加圧ベルトモジュール62を定着ベルトモジュール61に接離させる方向に移動させる際の作用点となる2つの円筒状凸部、すなわち第1の円筒状凸部121と第2の円筒状凸部122とが設けられている。第1の円筒状凸部121は、支持フレーム100の中心位置よりも用紙Pの移動方向上流側(インレットロール621側)に配設されている。また、第2の円筒状凸部122は、支持フレーム100の中心位置よりも用紙Pの移動方向下流側(加圧ロール622側)に配設されている。
そして、加圧ベルトモジュール62全体は、例えば、支持フレーム100に配設された第1の円筒状凸部121および第2の円筒状凸部122が定着装置60の本体フレーム(不図示)によって移動可能に支持されている。それにより、定着装置60内において、加圧ベルトモジュール62は定着ベルトモジュール61に対して接離する方向に移動可能に構成されている。
次に、リトラクト機構における定着装置60の本体フレーム側に配設された構成要素について述べる。図4に示すように、定着装置60の本体フレーム(不図示)には、加圧ベルトモジュール62の支持フレーム100に配設された第1の円筒状凸部121に対して、定着ベルトモジュール61側から離間させる方向の押圧力を付与する第1のバネ部材114が配設されている。さらに、第1の円筒状凸部121を定着ベルトモジュール61側の方向に移動させる第1の偏心カム131が設けられている。また、第2の円筒状凸部122に対して、定着ベルトモジュール61側から離間させる方向の押圧力を付与する第2のバネ部材115が配設されている。さらに、第2の円筒状凸部122を定着ベルトモジュール61側の方向に移動させる第2の偏心カム132が設けられている。さらには、押圧ロール63を定着ベルトモジュール61側の方向に移動させる第3の偏心カム133が設けられている。これらの第1の偏心カム131、第2の偏心カム132および第3の偏心カム133は、それぞれ偏心して配設された回転軸131a、132a、133aを回転中心として回転する。そして、各々が180°回転することで、第1の円筒状凸部121、第2の円筒状凸部122および押圧ロール63の回転軸63aとの当接部分が短径方向と長径方向とに切り替えられることで、第1の円筒状凸部121、第2の円筒状凸部122、押圧ロール63を定着ベルトモジュール61側に向けて離間/圧接の双方に移動させるように作用する。
加えて、定着装置60の本体フレームには、駆動モータ(不図示)からの駆動を加圧ベルトモジュール62側に伝達する駆動ギヤ134が設けられている。
続いて、加圧ベルトモジュール62と定着ベルトモジュール61とが接離する際のリトラクト機構の動作について説明する。
まず、加圧ベルトモジュール62が定着ベルトモジュール61から離隔(リトラクト)される場合について述べる。加圧ベルトモジュール62が定着ベルトモジュール61からリトラクトされる際には、第1の偏心カム131、第2の偏心カム132、および第3の偏心カム133は、短径方向がそれぞれ第1の円筒状凸部121、第2の円筒状凸部122および押圧ロール63の回転軸63aを向くように回転する。すると、第1の円筒状凸部121、第2の円筒状凸部122および押圧ロール63の回転軸63aは、それぞれに作用する第1のバネ部材114、第2のバネ部材115および第3のバネ部材116によって、定着ベルトモジュール61から離隔する方向に移動する。そのため、加圧ベルトモジュール62全体が定着ベルトモジュール61からリトラクトされる。
なお、この場合、第1の偏心カム131、第2の偏心カム132、および第3の偏心カム133を同時に動作させることもできるが、順次動作させることも可能である。順次動作させる際には、例えば、まず第3の偏心カム133を動作させて加圧ベルト620を定着ロール610側に押圧している押圧ロール63を離隔させ、次に第2の偏心カム132を動作させて加圧ベルト620を定着ロール610側に押圧している加圧ロール622側の第2の円筒状凸部122を移動させる。そして最後に、第1の偏心カム131を動作させてインレットロール621側の第1の円筒状凸部121を移動させる。このように、第1の偏心カム131、第2の偏心カム132、および第3の偏心カム133を順次動作させることで、加圧ベルト620にテンションの急激な変化を与えることが抑えられるので、加圧ベルト620に伸びや亀裂等が発生することを抑制することができる。
このように加圧ベルトモジュール62が定着ベルトモジュール61からリトラクトされると、加圧ロール622の回転軸622aに同軸に接続されている伝達ギヤ622bが、定着装置60の本体フレーム(不図示)に設けられた駆動ギヤ134と連結される。そして、駆動ギヤ134に結合されている駆動モータ(不図示)が回転を開始する。それにより、伝達ギヤ622bは駆動ギヤ134から駆動モータの駆動力を受けて加圧ロール622を回転し、加圧ベルト620を所定の移動速度で回動させる。それと同時に、インレットロール621の内部に設けられたハロゲンヒータ625(図2参照)が点灯し、インレットロール621の表面温度が120℃程度に制御させる。それによって、加圧ベルト620には周方向に亘って均等に予熱が与えられる。したがって、加圧ベルトモジュール62が再び定着ベルトモジュール61に圧接されて定着動作が開始された場合においても、加圧ベルトモジュール62が定着ベルトモジュール61から不要に熱を奪うことが抑えられ、定着ベルト614の温度が低下することが抑制される。
なお、この場合には、定着ベルトモジュール61においても同様に、定着ベルト614を所定の定着可能温度まで均一に上昇させる動作が行われる。
そして、加圧ベルトモジュール62において加圧ベルト620の予熱が完了し、それとともに、定着ベルトモジュール61においても定着ベルト614が所定の定着可能温度まで上昇した時点で、加圧ベルトモジュール62は再び定着ベルトモジュール61に圧接される。ここでは、加圧ベルトモジュール62が定着ベルトモジュール61に圧接される際のリトラクト機構の動作について説明する。
本実施の形態の定着装置60では、加圧ベルトモジュール62が定着ベルトモジュール61に圧接される際に、まず、図5に示したように、加圧ベルト620におけるインレットロール621と加圧ロール622とに張架された間の領域G、すなわち定着ベルトモジュール61側に面し、インレットロール621および加圧ロール622をラップしていない加圧ベルト620の領域Gが、定着ベルトモジュール61との間で第1ニップ部N1(図2参照)を形成する領域周辺に当接するように、加圧ベルトモジュール62を移動させる(第1の圧接動作)。具体的には、第1の偏心カム131を180°回転させ、第1の円筒状凸部121を定着ベルトモジュール61側に移動させる(図中矢印)ことで、加圧ベルト620の領域Gを定着ロール610のラップ領域内で第1ニップ部N1が形成される領域周辺に当接させる。
次に、図6に示したように、加圧ロール622が定着ベルトモジュール61の定着ロール610と剥離ロール66とを圧接する所定の位置に移動するように、加圧ベルトモジュール62を移動させる(第2の圧接動作)。具体的には、第2の偏心カム132を180°回転させ、第2の円筒状凸部122を定着ベルトモジュール61側に移動させる(図中矢印)ことで、加圧ロール622を定着ロール610と剥離ロール66とを圧接する所定の位置に移動させる。その際には、第2の偏心カム132からの押圧力により、第1の円筒状凸部121側が若干押し下げられ(図中矢印)、図5に示した状態(用紙P搬送方向上流側が相対的に持ち上げられた状態)から、定着ベルトモジュール61と加圧ベルトモジュール62とが圧接された通常の定着動作が行われる状態に設定される。
ここで、第2の圧接動作が完了するまでは、駆動ギヤ134は加圧ベルトモジュール62の移動に追従して移動する。そして、伝達ギヤ622bと駆動ギヤ134との結合状態を維持し、駆動モータからの駆動力を加圧ロール622に伝達し続けて回転させ、加圧ベルト620の回動状態を維持する。その後、第2の圧接動作が完了した時点で駆動ギヤ134は伝達ギヤ622bから離間し、加圧ロール622への駆動力の伝達を停止する。第2の圧接動作が完了して、伝達ギヤ622bからの駆動力の伝達が停止した後は、加圧ベルト620は、定着ベルトモジュール61の定着ベルト614からの駆動力を受けて、定着ベルト614に従動回転することとなる。
次に、定着ベルトモジュール61と加圧ベルトモジュール62とが圧接された通常の定着動作が行われる状態に設定された後、図7に示したように、押圧ロール63を定着ベルトモジュール61の定着ロール610側に圧接するように移動させる(第3の圧接動作)。具体的には、第3の偏心カム133を180°回転させ、押圧ロール63を定着ベルトモジュール61側に移動させる(図中矢印)ことで、定着ロール610を圧接して第1ニップ部N1を形成する所定の位置に押圧ロール63を移動させる。
このように、本実施の形態の定着装置60では、上記したリトラクト機構により第1の圧接動作から第3の圧接動作に至る一連の動作を行うことで、加圧ベルトモジュール62を定着ベルトモジュール61に圧接させている。
上記したように、本実施の形態の定着装置60では、加圧ベルトモジュール62を定着ベルトモジュール61に圧接させる際に、まず第1の圧接動作として、加圧ベルト620におけるインレットロール621と加圧ロール622とに張架された間の領域であって、インレットロール621および加圧ロール622をラップしていない加圧ベルト620の領域Gを定着ベルトモジュール61に圧接させる。そして、その後順次、第2の圧接動作より加圧ロール622を圧接させ、さらに第3の圧接動作により押圧ロール63を圧接している。このように、最初に加圧ベルト620の領域Gを圧接させることにより、以下の効果を得ることが可能となる。
すなわち、第1の圧接動作により加圧ベルト620の領域Gを圧接させると、定着ベルトモジュール61側の定着ロール610が加圧ベルト620の内側に進入するように加圧ベルト620を押圧するため、加圧ベルト620のテンションはリトラクトされて緩められた状態よりも上昇する。ところが、この状態では、加圧ベルト620の領域Gのみが定着ベルトモジュール61に圧接され、まだ加圧ロール622および押圧ロール63は定着ベルトモジュール61に当接していないので、加圧ベルト620は回動しながら、定着ベルトモジュール61が圧接することにより上昇しただけのテンションを加圧ベルト620全体に分散させることが可能となる。
ここで、例えば加圧ベルト620の領域Gを圧接させる際に加圧ロール622が定着ロール610に圧接されていたと仮定する。この場合には、加圧ロール622と定着ロール610との間に生じる圧接力が加圧ベルト620に対して摩擦力として作用するため、加圧ベルト620のテンションの分散が加圧ロール622と定着ロール610との当接部で妨げられることとなる。そのため、例えば加圧ベルト620の領域Gと定着ロール610との圧接部と、加圧ロール622と定着ロール610との圧接部との間の領域で、テンションの上昇分が閉じ込まれることとなり、この領域でテンションが局所的に上昇する。それによって、加圧ベルト620には高いせん断力が作用して加圧ベルト620に破損が発生する可能性が生じる。一方、それ以外の領域、例えば加圧ベルト620の領域Gと定着ロール610との圧接部と、インレットロール621との間の領域では、加圧ベルト620のテンションが低くなり、それにより加圧ベルト620に弛みが生じて、加圧ベルト620に座屈が発生する可能性もある。
これに対して、まず、加圧ベルト620におけるインレットロール621と加圧ロール622とに張架された間の領域であって、インレットロール621および加圧ロール622をラップしていない加圧ベルト620の領域Gだけを定着ベルトモジュール61に圧接させた状態を最初に設定することにより、加圧ロール622と定着ロール610との圧接部や、押圧ロール63と定着ロール610との圧接部が未だ形成されていない状態を設定しておくことで、テンションの分散が妨げられることがない。すなわち、加圧ベルト620は、加圧ロール622と定着ロール610との圧接部による摩擦力や、押圧ロール63と定着ロール610との圧接部による摩擦力を受けることがないため、加圧ロール622に生じるテンションの上昇分の平均化をスムーズに行うことが可能となる。そのため、定着ベルトモジュール61側の定着ロール610が加圧ベルト620の内側に進入するように加圧ベルト620を押圧することで、加圧ベルト620のテンションは上昇しても、その上昇分は加圧ベルト620の全体に亘って均等に分散することが可能となる。
そして、加圧ベルト620の全体に亘ってテンションが均等に設定された後に、第2の圧接動作より加圧ロール622を圧接させ、さらに第3の圧接動作により押圧ロール63を圧接させれば、テンションが局所的に高い領域や、低い領域が生じることなく、加圧ベルトモジュール62を定着ベルトモジュール61に圧接することが可能となる。それにより、加圧ベルト620に高いせん断力が作用する領域が生じて、加圧ベルト620に破損が発生したり、その逆に、加圧ベルト620にテンションが低い領域が生じて、加圧ベルト620が弛み、加圧ベルト620に座屈が発生することを抑制することが可能となる。そのため、加圧ベルト620のようなベルト部材を用いるとともに、定着ベルトモジュール61と加圧ベルトモジュール62とを接離するリクラクト動作を行う定着装置60において、例えば加圧ベルトモジュール62の加圧ベルト620に破損や座屈等が発生するといった定着処理に支障をきたす事態の発生を抑え、長期に亘って安定した定着性を確保することが可能となる。
特に、加圧ベルトモジュール62を定着ベルトモジュール61に圧接させる際には、加圧ベルトモジュール62および定着ベルトモジュール61とにおいて、加圧ベルト620と定着ベルト614とを略等速で回転させることが好ましい。加圧ベルトモジュール62を回転させておくことで、加圧ロール622のテンションの平均化をよりスムーズに行うことが可能となるからである。また、加圧ベルト620と定着ベルト614とが略等速で回転することにより、加圧ベルト620と定着ベルト614との間で摺擦が生じて加圧ベルト620および定着ベルト614の表面に摺擦傷が生じることが抑制されるからである。
なお、本実施の形態の定着装置60では、上記した第1の圧接動作から第3の圧接動作に至る一連の動作によって、加圧ベルトモジュール62を定着ベルトモジュール61に圧接させている。しかし、本発明はかかる圧接動作に限らず、最初に、加圧ベルト620におけるインレットロール621と加圧ロール622とに張架された間の領域であって、インレットロール621および加圧ロール622をラップしていない加圧ベルト620の領域Gだけを定着ベルトモジュール61に圧接させる状態を設定することができれば、加圧ベルトモジュール62に対して如何なる圧接動作を用いることも可能である。例えば、加圧ベルトモジュール62に平行移動手段と回転移動手段とを組み合わせて作用させることで、本発明の圧接動作を行うことも可能である。また、定着ベルトモジュール61に対して傾斜した方向から加圧ベルトモジュール62を平行移動させる斜行移動手段を作用させることで、本発明の圧接動作を行うことも可能である。
以上説明したように、本実施の形態の定着装置60では、加圧ベルトモジュール62を定着ベルトモジュール61に離間した状態から圧接した状態に設定するに際して、まず最初に、加圧ベルト620におけるインレットロール621と加圧ロール622とに張架された間の領域であって、インレットロール621および加圧ロール622をラップしていない加圧ベルト620の領域Gだけを定着ベルトモジュール61に圧接させた状態を設定する。そして、その後に、加圧ロール622を圧接させ、さらには押圧ロール63を圧接させている。このように圧接動作を行うことで、定着ベルトモジュール61側の定着ロール610が加圧ベルト620の内側に進入するように加圧ベルト620を押圧することで、加圧ベルト620のテンションが上昇しても、その上昇分は加圧ベルト620の全体に亘って均等に分散することが可能となる。そのため、加圧ベルト620のようなベルト部材を用いるとともに、定着ベルトモジュール61と加圧ベルトモジュール62とを接離するリクラクト動作を行う定着装置60において、例えば加圧ベルトモジュール62の加圧ベルト620に破損や座屈等が発生するといった定着処理に支障をきたす事態の発生を抑え、長期に亘って安定した定着性を確保することが可能となる。
また、本実施の形態の定着装置60では、定着ロール610と並行して内部にハロゲンヒータ616aが配設された張架ロール615と、内部にハロゲンヒータ616bが配設された張架ロール618を配置し、張架ロール615と張架ロール618と定着ロール610とを無端状の定着ベルト614で張架する構成を採用している。そして、用紙Pを加熱する主要な加熱部材として定着ベルト614を機能させ、定着ロール610と張架ロール615と張架ロール618とは定着ベルト614に対し熱を供給する熱供給部材として機能させている。そのため、ニップ部Nにおいては、定着装置60が高速化されても、所定の定着温度を常に維持することができるので、温度ドループの発生を抑制することが可能である。
[実施の形態2]
実施の形態1では、定着装置60が搭載された画像形成装置であって、定着装置60に用いる加熱手段として、補助加熱部材としての張架ロール615および張架ロール618と、定着ロール610とを含む複数のロールによって無端状の定着ベルト614が張架された定着ベルトモジュール61と、加圧手段としてインレットロール621、加圧ロール622および張架ロール623により加圧ベルト620が張架された加圧ベルトモジュール62とを用いた構成について説明した。実施の形態2では、図1に示した画像形成装置に搭載する定着装置90であって、定着装置90に用いる加熱手段として定着ロール610を用い、加圧手段として実施の形態1と同様な加圧ベルトモジュール62を用いた定着装置90について説明する。なお、実施の形態1と同様な構成については同様な符号を用い、ここではその詳細な説明を省略する。
図8は、本実施の形態に係る定着装置90の構成を示す側断面図である。本実施の形態の定着装置90では、実施の形態1の定着ベルトモジュール61に代えて、回動部材としての定着ロール610のみを配設した点が異なることを除いては、実施の形態1の定着装置60と同様である。ただし、本実施の形態の定着装置90では、加熱手段として定着ロール610を用いている構成であることから、ニップ部Nは、定着ロール610と、加圧ベルトモジュール62の押圧ロール63および加圧ロール622に押圧された加圧ベルト(ベルト部材)620とで形成される領域となる。
また、本実施の形態の定着装置90においても、実施の形態1と同様のリトラクト機構を用いて、加圧ベルトモジュール62と定着ロール610とを離間した状態と圧接した状態とに設定することが可能であるように構成されている。そして、加圧ベルトモジュール62を定着ロール610に離間した状態から圧接した状態に設定する際には、まず最初に、加圧ベルト620におけるインレットロール621と加圧ロール622とに張架された間の領域であって、インレットロール621および加圧ロール622をラップしていない加圧ベルト620の領域Gだけを定着ベルトモジュール61に圧接させた状態を設定する。そして、その後に、加圧ロール622を圧接させ、さらには押圧ロール63を圧接させている。
このような圧接動作を行うことで、定着ロール610が加圧ベルト620の内側に進入するように加圧ベルト620を押圧することで、加圧ベルト620のテンションが上昇しても、その上昇分は加圧ベルト620の全体に亘って均等に分散することが可能となる。そのため、定着ロール610と加圧ベルトモジュール62とを接離するリクラクト動作を行う定着装置90において、加圧ベルトモジュール62の加圧ベルト620に破損や座屈等が発生するといった定着処理に支障をきたす事態の発生を抑え、長期に亘って安定した定着性を確保することが可能となる。
[実施の形態3]
実施の形態1では、定着装置60が搭載された画像形成装置であって、定着装置60に用いる加熱手段として、補助加熱部材としての張架ロール615および張架ロール618と、定着ロール610とを含む複数のロールによって無端状の定着ベルト614が張架された定着ベルトモジュール61と、加圧手段としてインレットロール621、加圧ロール622および張架ロール623により加圧ベルト620が張架された加圧ベルトモジュール62とを用いた構成について説明した。実施の形態3では、図1に示した画像形成装置に搭載する定着装置91であって、定着装置91に用いる加熱手段として実施の形態1と同様な定着ベルトモジュール61を用い、加圧手段として加圧ロール65を用いた定着装置91について説明する。なお、実施の形態1と同様な構成については同様な符号を用い、ここではその詳細な説明を省略する。
図9は、本実施の形態に係る定着装置91の構成を示す側断面図である。本実施の形態の定着装置91では、実施の形態1の加圧ベルトモジュール62に代えて、回動部材としての加圧ロール65を配設した点が異なることを除いては、実施の形態1の定着装置60と略同様である。ただし、本実施の形態の定着装置91では、定着ベルトモジュール61には剥離ロール66を配設していない。また、加圧手段として加圧ロール(回動部材)65を用いている構成であることから、ニップ部Nは、定着ベルト(ベルト部材)614がラップされた定着ロール610と、加圧ロール65とで形成される領域となる。
ここで、加圧ロール65は、芯材としての金属製の円筒状部材と、円筒状部材の表面にシリコーンゴム、発泡シリコーンゴム、フッ素ゴム、フッ素樹脂等の耐熱性を有する弾性層と、最外表面の表面離型層とで構成されている。そして、加圧ロール65は、定着ベルトモジュール61の定着ベルト610に従動して回転する。
また、本実施の形態の定着装置91においては、加圧ロール65は定着ベルトモジュール61に対して離間した状態と圧接した状態とに設定することが可能であるように構成されている。そして、加圧ロール65を定着ベルトモジュール61に離間した状態から圧接した状態に設定する際には、図10に示したように、まず最初に、定着ベルト614における姿勢矯正ロール619と定着ロール610とに張架された間の領域であって、姿勢矯正ロール619および定着ロール610をラップしていない定着ベルト614の領域Hに加圧ロール65を圧接させるべく、加圧ロール65を図中矢印Jの方向に移動させる。そして、その後、加圧ロール65を図中矢印Kの方向に回転させながら移動させ、ニップ部Nを形成する所定の位置に設定する。
このように、本実施の形態の定着装置91においても、まず最初に、定着ベルト614における姿勢矯正ロール619と定着ロール610とに張架された間の領域であって、姿勢矯正ロール619および定着ロール610をラップしていない定着ベルト614の領域Hに加圧ロール65を圧接させる圧接動作を行う。それにより、加圧ロール65が定着ベルト614の内側に進入するように定着ベルト614を押圧することで、定着ベルト614のテンションが上昇しても、その上昇分は定着ベルト614の全体に亘って均等に分散することが可能となる。そのため、加圧ロール65と定着ベルトモジュール61とを接離するリクラクト動作を行う定着装置91において、定着ベルトモジュール61の定着ベルト614に破損や座屈等が発生するといった定着処理に支障をきたす事態の発生を抑え、長期に亘って安定した定着性を確保することが可能となる。
本発明の活用例として、電子写真方式を用いた複写機、プリンタ等の画像形成装置への適用、例えば記録紙(用紙)上に担持された未定着トナー像を定着する定着装置への適用がある。また、インクジェット方式を用いた複写機、プリンタ等の画像形成装置への適用、例えば記録紙(用紙)上に担持された未乾燥インク像を乾燥する定着装置への適用がある。
本発明の画像形成装置を示した概略構成図である。 実施の形態1に係る定着装置の構成を示す側断面図である。 ニップ部の構成を説明する図である。 加圧ベルトモジュールを定着ベルトモジュールに対して接離させるリトラクト機構について説明する図である。 第1の圧接動作を説明する図である。 第2の圧接動作を説明する図である。 第3の圧接動作を説明する図である。 実施の形態2に係る定着装置の構成を示す側断面図である。 実施の形態3に係る定着装置の構成を示す側断面図である。 加圧ロールの圧接動作を説明する図である。
符号の説明
1Y,1M,1C,1K…画像形成ユニット、11…感光体ドラム、12…帯電器、13…レーザ露光器、14…現像器、15…中間転写ベルト、16…一次転写ロール、17…ドラムクリーナ、20…二次転写部、60,90,91…定着装置、61…定着ベルトモジュール、62…加圧ベルトモジュール、63…押圧ロール、63a,131a,132a,133a,621a,622a,623a…回転軸、65,622…加圧ロール、66…剥離ロール、70…クリーニングウェブ機構、75,76…ベルトテンショナ、100…支持フレーム、101…第1の支持孔、102…第2の支持孔、103…第3の支持孔、106…第4の支持孔、114…第1のバネ部材、115…第2のバネ部材、116…第3のバネ部材、121…第1の円筒状凸部、122…第2の円筒状凸部、131…第1の偏心カム、132…第2の偏心カム、133…第3の偏心カム、134…駆動ギヤ、610…定着ロール、613,616a,616b,625…ハロゲンヒータ、614…定着ベルト、615,618,623…張架ロール、620…加圧ベルト、621…インレットロール、622b…伝達ギヤ

Claims (17)

  1. 記録材に担持されたトナー像を定着する定着装置であって、
    回動部材と、
    前記回動部材に対して当接状態と離隔状態とが切替可能に設定された無端状のベルト部材と、
    前記ベルト部材を張架するとともに、前記回動部材を押圧可能な加圧ロールと、
    前記加圧ロールとともに前記ベルト部材を張架するロール部材と、
    前記加圧ロールと前記ロール部材との間に設けられ、前記ベルト部材の内側から当該ベルト部材を介して前記回動部材を押圧可能な押圧部材とを備え、
    前記ベルト部材が前記離隔状態から前記当接状態に切り替えられる際に、当該ベルト部材のうち前記加圧ロールおよび前記ロール部材をラップしていない領域が前記回動部材に当接した後に、前記加圧ロールが当該回動部材を押圧して、その後に、前記押圧部材が当該ベルト部材を介して当該回動部材を押圧することを特徴とする定着装置。
  2. 前記ベルト部材は、前記離隔状態から前記当接状態に切り替えられる際に、回動しながら前記回動部材に当接されることを特徴とする請求項1記載の定着装置。
  3. 前記ベルト部材は、当該ベルト部材の前記加圧ロールおよび前記ロール部材をラップしていない領域が前記回動部材に当接し、当該加圧ロールが当該回動部材を押圧する際に、駆動されて回動することを特徴とする請求項1記載の定着装置。
  4. 前記ベルト部材が前記当接状態から前記離隔状態に切り替えられる際に、前記押圧部材が前記回動部材への押圧を解除した後に、前記加圧ロールが当該回動部材への押圧を解除し、その後、当該ベルト部材のうち当該加圧ロールおよび前記ロール部材をラップしていない領域が当該回動部材から離隔することを特徴とする請求項1記載の定着装置。
  5. 前記回動部材は、内部に加熱源が配設された定着ロールと、当該定着ロールに張架される定着ベルトと、当該定着ベルトを張架する張架ロールとを有することを特徴とする請求項1記載の定着装置。
  6. 前記回動部材は、弾性体層が被覆されたロール状部材であることを特徴とする請求項1記載の定着装置。
  7. 前記回動部材は、加熱源を有し、前記ベルト部材から離隔された状態にて所定の温度に加熱されることを特徴とする請求項1記載の定着装置。
  8. 前記ロール部材は、前記加圧ロールよりも前記記録材搬送方向上流側に配置されるとともに、加熱源が配設されることを特徴とする請求項1記載の定着装置。
  9. 前記加圧ロールおよび前記ロール部材とともに前記ベルト部材を張架し、当該ベルト部材に係る張力が一定となるように荷重を印加する他のロール部材をさらに含むことを特徴とする請求項1記載の定着装置。
  10. トナー像を形成するトナー像形成手段と、
    前記トナー像形成手段によって形成されたトナー像を記録材上に転写する転写手段と、
    前記記録材上に転写されたトナー像を当該記録材に定着する定着手段とを含み、
    前記定着手段は、
    回動部材と、
    前記回動部材に対して当接状態と離隔状態とが切替可能に設定された無端状のベルト部材と、
    前記ベルト部材を張架するとともに、前記回動部材を押圧可能な加圧ロールと、
    前記加圧ロールとともに前記ベルト部材を張架するロール部材と、
    前記加圧ロールと前記ロール部材との間に設けられ、前記ベルト部材の内側から当該ベルト部材を介して前記回動部材を押圧可能な押圧部材とを備え、
    前記ベルト部材が前記離隔状態から前記当接状態に切り替えられる際に、当該ベルト部材のうち前記加圧ロールおよび前記ロール部材をラップしていない領域が前記回動部材に当接した後に、当該加圧ロールが当該回動部材を押圧して、その後に、前記押圧部材が当該ベルト部材を介して当該回動部材を押圧することを特徴とする画像形成装置。
  11. 前記定着手段は、前記ベルト部材と前記回動部材とを当接させる際に、当該ベルト部材のテンションを周方向に亘って略均等に維持することを特徴とする請求項10記載の画像形成装置。
  12. 前記ベルト部材は、当該ベルト部材の前記加圧ロールおよび前記ロール部材をラップしていない領域が前記回動部材に当接し、当該加圧ロールが当該回動部材を押圧する際に、駆動されて回動することを特徴とする請求項10記載の画像形成装置。
  13. 前記ベルト部材が前記当接状態から前記離隔状態に切り替えられる際に、前記押圧部材が前記回動部材への押圧を解除した後に、前記加圧ロールが当該回動部材への押圧を解除し、その後、当該ベルト部材のうち当該加圧ロールおよび前記ロール部材をラップしていない領域が当該回動部材から離隔することを特徴とする請求項10記載の画像形成装置。
  14. 前記回動部材は、内部に加熱源が配設された定着ロールと、当該定着ロールに張架される定着ベルトと、当該定着ベルトを張架する張架ロールとを有することを特徴とする請求項10記載の画像形成装置
  15. 前記回動部材は、弾性体層が被覆されたロール状部材であることを特徴とする請求項10記載の画像形成装置。
  16. 前記ロール部材は、前記加圧ロールよりも前記記録材搬送方向上流側に配置されるとともに、加熱源が配設されることを特徴とする請求項10記載の画像形成装置。
  17. 前記加圧ロールおよび前記ロール部材とともに前記ベルト部材を張架し、当該ベルト部材に係る張力が一定となるように荷重を印加する他のロール部材をさらに含むことを特徴とする請求項10記載の画像形成装置。
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