JP4729853B2 - 定着装置および画像形成装置 - Google Patents

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Description

本発明は、定着装置等に関し、より詳しくは例えば電子写真方式を利用した画像形成装置に用いられる定着装置等に関する。
電子写真方式を用いた複写機、プリンタ等の画像形成装置では、例えばドラム状に形成された感光体(感光体ドラム)を一様に帯電し、この感光体ドラムを画像情報に基づいて制御された光で露光して感光体ドラム上に静電潜像を形成する。そして、この静電潜像をトナーによって可視像(トナー像)とし、このトナー像を感光体ドラム上から記録紙に転写した後、定着装置によってこのトナー像を記録紙に定着する。このようなプロセスによって画像形成が行なわれる。
かかる画像形成装置に用いられる定着装置は、図9に示したように、円筒状の芯金111の内部に加熱源113を備え、その芯金111の外周面に離型層112が形成された定着ロール110と、この定着ロール110に対して圧接配置され、芯金121の外周面に耐熱性弾性体層122、および耐熱性樹脂被膜あるいは耐熱性ゴム被膜による離型層123が形成された加圧ロール120とで構成されている。そして、定着ロール110と加圧ロール120との間に、未定着トナー像を担持した記録紙を通過させて、未定着トナー像に対して加熱と加圧とを行うことによって、記録紙にトナー像を定着する。このような定着装置は、加熱ロール方式と呼ばれて、一般に広く利用されている。
ところで、加熱ロール方式の定着装置において高速化を図ろうとする場合には、トナーと記録紙に充分な熱量が供給できるように、ニップ幅を定着速度に比例して広くすることが必要となる。ニップ幅を広くする方法として、定着ロールと加圧ロールとの間の荷重を大きくする方法や、弾性体層の厚さを厚くする方法、さらにはロール径を大きくする方法がある。
しかし、荷重を大きくする方法や、弾性体層の厚さを厚くする方法では、ロールの撓みに起因するニップ幅の形状がロール軸に沿って不均一になることから、定着むらや紙しわが生じる等といった画像品質上の問題が発生する。また、ロール径を大きくする方法では、装置の大型化を招くとともに、ロールを室温から定着可能温度に上昇させるまでの時間(ウォームアップタイム)が長くなるという問題がある。
そこで、これらの問題を解消して、画像形成装置の高速化に対応した定着装置を実現するべく、本出願人は、表面が弾性変形する回転可能な定着ロールと、この定着ロールに接触したまま走行可能なエンドレスベルトと、このエンドレスベルトの内側に非回転状態で配置された圧力パッドとを具備し、圧力パッドによって、定着ロールとの接触面が形成されるようにエンドレスベルトを定着ロールに圧接させ、エンドレスベルトと定着ロールとの間にシートを通過させることができるようにベルトニップを設けるとともに、定着ロールの表面のうち、シートの出口側を局部的に弾性変形させるように構成した定着装置に関する技術を提案している(例えば、特許文献1参照)。
かかる特許文献1に記載した定着装置(「ベルトニップ方式」という。)では、従来の加熱ロール方式の定着装置における加圧ロールに代え、圧力パッドを用いてエンドレスベルトを定着ロールに圧接させている。このような構成を採用することにより、定着ロールとエンドレスベルトとによって形成されるベルトニップの幅が従来の定着ロールと加圧ロールとのロールニップの幅よりも容易に大きくすることができるとともに、ニップ部において均一で高いニップ圧を付与することができるので、高速化への対応が可能となり、しかも装置の小型化を図ることも容易である。
さらには、定着ロールに圧接させるエンドレスベルトの熱容量は小さく、加えて圧力パッドが非回転状態で配置されていることから、定着ロールから伝わる熱が外部に発散され難い構成を実現している。そのため、定着ロールの回転が開始されても、定着ロールからエンドレスベルト側に奪われる熱量は少なく、トナーの溶融に際しての熱効率を高めることができるとともに、ベルトニップでの温度低下量も小さいことから、トナーの定着性の向上を図ることができるという利点も有している。
特許第3298354号公報(第4-7頁)
ところで、上記した特許文献1に記載したようなベルトニップ方式の定着装置においては、ワイドニップを形成するとともに、ニップ部に均一で高いニップ圧を付与することができるが、圧力付与部材(圧力パッド)によりエンドレスベルトを定着ロールに圧接させる構成を採用していることから、圧力付与部材とエンドレスベルトとの間には摺動摩擦が発生する。そのため、エンドレスベルトの内周面に潤滑剤を塗布することで、圧力付与部材とエンドレスベルトとの摺擦面、または圧力付与部材上に低摩擦部材を配置しておき、この低摩擦部材とエンドレスベルトとの摺擦面に潤滑剤を介在させて、両者の滑り性の向上を図っている。
しかしながら、圧力パッドとエンドレスベルトとの摺擦面に潤滑剤を供給するに際しては、両者の摺動部の上流側に潤滑剤塗布部材を配置して、潤滑剤塗布部材からエンドレスベルトの内周面に潤滑剤を塗布し、エンドレスベルトの回動に伴って摺動部まで潤滑剤を搬送する方法を採っているが、潤滑剤塗布部材からエンドレスベルトに対して潤滑剤を長期に亘って一定量ずつ安定的に塗布することが難しかった。
そのために、エンドレスベルトへの潤滑剤の塗布量が減少した場合には、圧力パッドとエンドレスベルトとの摺動摩擦が増加して、定着ロールの回転に対応させてエンドレスベルトを円滑に回動させることが難しくなり、ニップ部での記録紙のスムーズな搬送が阻害されて、紙しわや画像ずれ等の画像不良を生じさせる可能性があった。
そこで本発明は、以上のような技術的課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、定着装置におけるエンドレスベルトへの潤滑剤の塗布量の安定を図ることにより、長期に亘り紙しわや画像ずれ等の発生を抑えて高品質な画像を形成することにある。
かかる目的のもと、本発明の定着装置は、記録材に担持されたトナー像を定着する定着装置であって、回動可能な回動部材と、回動部材に接触しながら移動可能なエンドレスベルトと、エンドレスベルトの内側に配置され、エンドレスベルトを回動部材に圧接させて回動部材とエンドレスベルトとの間に記録材が通過するニップ部を形成する圧力部材と、潤滑剤を保持するブレード状に形成された潤滑剤保持部を、エンドレスベルト内周面に対して潤滑剤保持部のブレード先端部が当接するように配置した潤滑剤塗布部材とを備えたことを特徴としている。
ここで、潤滑剤塗布部材は、潤滑剤保持部が厚さ1.0〜3.0mmに形成されたことを特徴とすることもできる。また、潤滑剤塗布部材は、潤滑剤保持部が繊維状に形成された構成とすることもできる。特に、この繊維状に形成された潤滑剤保持部をフッ素樹脂で構成することもできる。
また、潤滑剤塗布部材は、潤滑剤保持部が曲げ弾性率を400〜700MPaで構成したことを特徴とすることができる。
さらに、回動部材を加熱する加熱部材、またはエンドレスベルトを加熱する加熱部材をさらに備えたことを特徴とすることもできる。
また、本発明を画像形成装置として捉え、本発明の画像形成装置は、トナー像を形成するトナー像形成手段と、トナー像形成手段によって形成されたトナー像を記録材上に転写する転写手段と、記録材上に転写されたトナー像を記録材に定着する定着手段とを含み、定着手段は、回動可能な回動部材と、回動部材に接触しながら移動可能なエンドレスベルトと、エンドレスベルトの内側に配置され、エンドレスベルトを回動部材に圧接させて回動部材とエンドレスベルトとの間に記録材が通過するニップ部を形成する圧力部材と、潤滑剤を保持するブレード状に形成された潤滑剤保持部を、エンドレスベルト内周面に対して潤滑剤保持部のブレード先端部が当接するように配置した潤滑剤塗布部材とを備えたこと特徴としている。
本発明の効果として、定着装置におけるエンドレスベルトへの潤滑剤の塗布量の安定を図ることにより、長期に亘り紙しわや画像ずれ等の発生を抑えて高品質な画像を形成することができる画像形成装置を提供することが可能となった。
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
[実施の形態1]
図1は本実施の形態が適用される画像形成装置を示した概略構成図である。図1に示す画像形成装置は、一般にタンデム型と呼ばれる中間転写方式の画像形成装置であって、電子写真方式により各色成分のトナー像が形成される複数の画像形成ユニット1Y,1M,1C,1K、各画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kにより形成された各色成分トナー像を中間転写ベルト15に順次転写(一次転写)させる一次転写部10、中間転写ベルト15上に転写された重畳トナー画像を記録材(記録紙)である用紙Pに一括転写(二次転写)させる二次転写部20、二次転写された画像を用紙P上に定着させる定着装置60を備えている。また、各装置(各部)の動作を制御する制御部40を有している。
本実施の形態において、各画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kは、矢印A方向に回転する感光体ドラム11の周囲に、これらの感光体ドラム11を帯電する帯電器12、感光体ドラム11上に静電潜像を書込むレーザ露光器13(図中露光ビームを符号Bmで示す)、各色成分トナーが収容されて感光体ドラム11上の静電潜像をトナーにより可視像化する現像器14、感光体ドラム11上に形成された各色成分トナー像を一次転写部10にて中間転写ベルト15に転写する一次転写ロール16、感光体ドラム11上の残留トナーが除去されるドラムクリーナ17、などの電子写真用デバイスが順次配設されている。これらの画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kは、中間転写ベルト15の上流側から、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、黒(K)の順に、略直線状に配置されている。
中間転写体である中間転写ベルト15は、ポリイミドあるいはポリアミド等の樹脂にカーボンブラック等の帯電防止剤を適当量含有させたフィルム状の無端ベルトで構成されている。そして、その体積抵抗率は106〜1014Ωcmとなるように形成されており、その厚みは例えば0.1mm程度に構成されている。中間転写ベルト15は、各種ロールによって図1に示すB方向に所定の速度で循環駆動(回動)されている。この各種ロールとして、定速性に優れたモータ(図示せず)により駆動されて中間転写ベルト15を回動させる駆動ロール31、各感光体ドラム11の配列方向に沿って略直線状に延びる中間転写ベルト15を支持する支持ロール32、中間転写ベルト15に対して一定の張力を与えると共に中間転写ベルト15の蛇行を防止する補正ロールとして機能するテンションロール33、二次転写部20に設けられるバックアップロール25、中間転写ベルト15上の残留トナーを掻き取るクリーニング部に設けられるクリーニングバックアップロール34を有している。
一次転写部10は、中間転写ベルト15を挟んで感光体ドラム11に対向して配置される一次転写ロール16で構成されている。一次転写ロール16は、シャフトと、シャフトの周囲に固着された弾性層としてのスポンジ層とで構成されている。シャフトは鉄、SUS等の金属で構成された円柱棒である。スポンジ層はカーボンブラック等の導電剤を配合したNBRとSBRとEPDMとのブレンドゴムで形成され、体積抵抗率が10〜10Ωcmのスポンジ状の円筒ロールである。そして、一次転写ロール16は中間転写ベルト15を挟んで感光体ドラム11に圧接配置され、さらに一次転写ロール16にはトナーの帯電極性(マイナス極性とする。以下同様。)と逆極性の電圧(一次転写バイアス)が印加されるようになっている。これにより、各々の感光体ドラム11上のトナー像が中間転写ベルト15に順次、静電吸引され、中間転写ベルト15上において重畳されたトナー像が形成されるようになっている。
二次転写部20は、中間転写ベルト15のトナー像担持面側に配置される二次転写ロール22と、バックアップロール25とによって構成される。バックアップロール25は、表面がカーボンを分散したEPDMとNBRとのブレンドゴムのチューブ、内部がEPDMゴムで構成されている。そして、その表面抵抗率が10〜1010Ω/□となるように形成され、硬度は例えば70°(アスカーC:高分子計器社製、以下同様。)に設定されている。このバックアップロール25は、中間転写ベルト15の裏面側に配置されて二次転写ロール22の対向電極をなし、二次転写バイアスが安定的に印加される金属製の給電ロール26が当接配置されている。
一方、二次転写ロール22は、シャフトと、シャフトの周囲に固着された弾性層としてのスポンジ層とで構成されている。シャフトは鉄、SUS等の金属で構成された円柱棒である。スポンジ層はカーボンブラック等の導電剤を配合したNBRとSBRとEPDMとのブレンドゴムで形成され、体積抵抗率が10〜10Ωcmのスポンジ状の円筒ロールである。そして、二次転写ロール22は中間転写ベルト15を挟んでバックアップロール25に圧接配置され、さらに二次転写ロール22は接地されてバックアップロール25との間に二次転写バイアスが形成され、二次転写部20に搬送される用紙P上にトナー像を二次転写する。
また、中間転写ベルト15の二次転写部20の下流側には、二次転写後の中間転写ベルト15上の残留トナーや紙粉を除去し、中間転写ベルト15の表面をクリーニングする中間転写ベルトクリーナ35が接離自在に設けられている。一方、イエローの画像形成ユニット1Yの上流側には、各画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kにおける画像形成タイミングをとるための基準となる基準信号を発生する基準センサ(ホームポジションセンサ)42が配設されている。また、黒の画像形成ユニット1Kの下流側には、画質調整を行うための画像濃度センサ43が配設されている。この基準センサ42は、中間転写ベルト15の裏側に設けられた所定のマークを認識して基準信号を発生しており、この基準信号の認識に基づく制御部40からの指示により、各画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kは画像形成を開始するように構成されている。
さらに、本実施の形態の画像形成装置では、用紙搬送系として、用紙Pを収容する用紙トレイ50、この用紙トレイ50に集積された用紙Pを所定のタイミングで取り出して搬送するピックアップロール51、ピックアップロール51により繰り出された用紙Pを搬送する搬送ロール52、搬送ロール52により搬送された用紙Pを二次転写部20へと送り込む搬送シュート53、二次転写ロール22により二次転写された後に搬送される用紙Pを定着装置60へと搬送する搬送ベルト55、用紙Pを定着装置60に導く定着入口ガイド56を備えている。
次に、本実施の形態に係る画像形成装置の基本的な作像プロセスについて説明する。図1に示すような画像形成装置では、図示しない画像読取装置(IIT)や図示しないパーソナルコンピュータ(PC)等から出力される画像データは、図示しない画像処理装置(IPS)により所定の画像処理が施された後、画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kによって作像作業が実行される。IPSでは、入力された反射率データに対して、シェーディング補正、位置ズレ補正、明度/色空間変換、ガンマ補正、枠消しや色編集、移動編集等の各種画像編集等の所定の画像処理が施される。画像処理が施された画像データは、Y、M、C、Kの4色の色材階調データに変換され、レーザ露光器13に出力される。
レーザ露光器13では、入力された色材階調データに応じて、例えば半導体レーザから出射された露光ビームBmを画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kの各々の感光体ドラム11に照射している。画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kの各感光体ドラム11では、帯電器12によって表面が帯電された後、このレーザ露光器13によって表面が走査露光され、静電潜像が形成される。形成された静電潜像は、各々の画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kによって、Y、M、C、Kの各色のトナー像として現像される。
画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kの感光体ドラム11上に形成されたトナー像は、各感光体ドラム11と中間転写ベルト15とが当接する一次転写部10において、中間転写ベルト15上に転写される。より具体的には、一次転写部10において、一次転写ロール16により中間転写ベルト15の基材に対しトナーの帯電極性(マイナス極性)と逆極性の電圧(一次転写バイアス)が付加され、トナー像を中間転写ベルト15の表面に順次重ね合わせて一次転写が行われる。
トナー像が中間転写ベルト15の表面に順次一次転写された後、中間転写ベルト15は移動してトナー像が二次転写部20に搬送される。トナー像が二次転写部20に搬送されると、用紙搬送系では、トナー像が二次転写部20に搬送されるタイミングに合わせてピックアップロール51が回転し、用紙トレイ50から所定サイズの用紙Pが供給される。ピックアップロール51により供給された用紙Pは、搬送ロール52により搬送され、搬送シュート53を経て二次転写部20に到達する。この二次転写部20に到達する前に、用紙Pは一旦停止され、トナー像が担持された中間転写ベルト15の移動タイミングに合わせてレジストロール(図示せず)が回転することで、用紙Pの位置とトナー像の位置との位置合わせがなされる。
二次転写部20では、中間転写ベルト15を介して、二次転写ロール22がバックアップロール25に押圧される。このとき、タイミングを合わせて搬送された用紙Pは、中間転写ベルト15と二次転写ロール22との間に挟み込まれる。その際に、給電ロール26からトナーの帯電極性(マイナス極性)と同極性の電圧(二次転写バイアス)が印加されると、二次転写ロール22とバックアップロール25との間に転写電界が形成される。そして、中間転写ベルト15上に担持された未定着トナー像は、二次転写ロール22とバックアップロール25とによって押圧される二次転写部20において、用紙P上に一括して静電転写される。
その後、トナー像が静電転写された用紙Pは、二次転写ロール22によって中間転写ベルト15から剥離された状態でそのまま搬送され、二次転写ロール22の用紙搬送方向下流側に設けられた搬送ベルト55へと搬送される。搬送ベルト55では、定着装置60における最適な搬送速度に合わせて、用紙Pを定着装置60まで搬送する。定着装置60に搬送された用紙P上の未定着トナー像は、定着装置60によって熱および圧力で定着処理を受けることで用紙P上に定着される。そして定着画像が形成された用紙Pは、画像形成装置の排出部に設けられた排紙載置部に搬送される。
一方、用紙Pへの転写が終了した後、中間転写ベルト15上に残った残留トナーは、中間転写ベルト15の回動に伴ってクリーニング部まで搬送され、クリーニングバックアップロール34および中間転写ベルトクリーナ35によって中間転写ベルト15上から除去される。
次に、本実施の形態の画像形成装置に用いられる定着装置60について説明する。図2は本実施の形態の定着装置60の構成を示す側断面図である。定着装置60は、回動部材の一例としての定着ロール61、エンドレスベルト62、エンドレスベルト62を介して定着ロール61から押圧される圧力部材の一例としての圧力パッド64により主要部が構成されている。
定着ロール61は、金属製のコア(円筒状芯金)611の周囲に耐熱性弾性体層612、および離型層613を積層して構成されたものである。
定着ロール61の内部には、発熱源としてのハロゲンヒータ66が配設されている。一方、定着ロール61の表面には温度センサ69が接触して配置されている。画像形成装置の制御部40は、この温度センサ69による温度計測値に基づいてハロゲンヒータ66の点灯を制御し、定着ロール61の表面温度が所定の設定温度(例えば、150℃)を維持するように調整している。
エンドレスベルト62は、圧力パッド64と後段で述べるエッジガイド80とによって回動自在に支持されている。そして、ニップ部Nにおいて定着ロール61に対して圧接されて配置されている。
圧力パッド64は、エンドレスベルト62の内側において、エンドレスベルト62を介して定着ロール61に押圧される状態で配置され、定着ロール61との間でニップ部Nを形成している。ここで、ニップ部Nとは、エンドレスベルト62と定着ロール61とが接触する領域であって、エンドレスベルト62と定着ロール61の移動方向に所定の長さを持った長手方向に亘る領域をいう。
圧力パッド64は、幅(エンドレスベルト62と定着ロール61の移動方向における長さ)の広いニップ部Nを確保するためのプレニップ部材64aをニップ部Nの入口側に配置し、定着ロール61に歪みを与えるための剥離ニップ部材64bをニップ部Nの出口側に配置している。さらに、エンドレスベルト62の内周面と圧力パッド64との摺擦抵抗を小さくするために、プレニップ部材64aおよび剥離ニップ部材64bのエンドレスベルト62と接する面に、低摩擦シート68が設けられている。そして、圧力パッド64と低摩擦シート68とは、金属製のホルダ65に保持されている。
定着ロール61は、図示しない駆動モータにより矢印C方向に回転し、この回転によりエンドレスベルト62も従動して回動する。図1に示した画像形成装置の二次転写部20においてトナー像が静電転写された用紙Pは、定着入口ガイド56によって導かれて、ニップ部Nに搬送される。そして、用紙Pがニップ部Nを通過する際に、用紙P上のトナー像はニップ部Nに作用する圧力と、定着ロール61から供給される熱とによって定着される。本実施の形態の定着装置60では、ほぼ定着ロール61の外周面に倣う凹形状のプレニップ部材64aによりニップ部Nを広く構成することができるため、安定した定着性能を確保することができる。
加えて、本実施の形態の定着装置60では、定着ロール61の外周面に対し突出させて剥離ニップ部材64bを配置することにより、ニップ部Nの出口領域(剥離ニップ部)において定着ロール61表面の歪みが局所的に大きくなるように構成している。このように剥離ニップ部材64bを配置すれば、定着後の用紙Pは、剥離ニップ部を通過する際に、局所的に大きく形成された歪みを通過することになるので、定着ロール61に巻き付くことのない用紙Pの剥離を効果的に行うことができる。
特に、定着ロール61の歪みを局所的に大きくすることによって、小さい歪み量で高い剥離性能を得ることが可能となる。そのため、定着ロール61の離型層613として、薄膜の耐熱性樹脂を用いた場合においても、用紙Pにおける紙しわの発生を抑制できる。また、耐熱性弾性体層612と離型層613との間の剥がれ等も発生し難く、剥離性能の維持と併せて長期に亘る部品性能の信頼性を向上させることができる。
さらには、定着ロール61の歪み量を小さく形成できるので、定着ロール61の耐熱性弾性体層612を薄肉化することができる。そのため、定着ロール61の熱容量を小さく構成できるので、ウォームアップタイムを短くするとともに、消費電力の低減を図ることもできる。また、熱伝導率の低い耐熱性弾性体層612を薄肉化できるため、定着ロール61の内面と外面との間の熱抵抗が小さくなって熱応答性の向上を図れるため、画像形成装置の高速化にも適している。
なお、剥離の補助手段として、定着ロール61のニップ部Nの下流側に、剥離部材70を配設することも可能である。剥離部材70は、剥離バッフル71が定着ロール61の回転方向と対向する向き(カウンタ方向)に定着ロール61と近接する状態でホルダ72によって保持されている。
次に、定着装置60を構成する各部材について詳細に述べる。まず定着ロール61では、コア611は、鉄、アルミニウム、SUS等の熱伝導率の高い金属で形成された外径26mm、長さ350mmの円筒体で構成されている。コア611の外径および肉厚は、本実施の形態の定着装置60では、圧力パッド64の押圧力が小さいため、小径化、薄肉化を図ることができる。
耐熱性弾性体層612としては、耐熱性の高い弾性体であればどのような材料を用いることも可能である。特に、ゴム硬度が25〜40°(JIS−A)程度のゴム、エラストマ等の弾性体を用いるのが好ましく、具体的には、シリコーンゴム、フッ素ゴム等を挙げることができる。
離型層613は、耐熱性の樹脂であればどのような樹脂を用いてもよく、例えばシリコーン樹脂、フッ素樹脂等を用いることができるが、離型層613のトナーに対する離型性や耐摩耗性の観点から、フッ素樹脂が適している。フッ素樹脂としては、PFA(テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、FEP(テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体)等が使用できる。離型層613の厚みとしては、好ましくは5〜30μm、より好ましくは10〜20μmである。離型層613の厚みが5μm未満であると、定着ロール61の歪みに基づき用紙Pにしわが生じ易くなり、一方、30μmを超えると、離型層613が硬くなり、画像に光沢むら等の欠陥が生じる可能性が増え、ともに好ましくないからである。
エンドレスベルト62は、原形が直径30mmの円筒形状に形成された無端ベルトであり、ベース層と、このベース層の定着ロール61側の面または両面に被覆された離型層とから構成されている。ベース層は、ポリイミド、ポリアミド、ポリイミドアミド等のポリマーやSUS、ニッケル、銅等の金属により形成され、その厚みは、30〜200μm、好ましくは50〜125μm、より好ましくは75〜100μm程度である。ベース層の表面に被覆される離型層としては、フッ素樹脂、例えばPFA、PTFE、FEPで形成され、その厚みは5〜100μm、好ましくは10〜30μm程度である。
圧力パッド64は、上述したように、プレニップ部材64a、剥離ニップ部材64bで構成され、ホルダ65に支持されている。プレニップ部材64aには、シリコーンゴムやフッ素ゴム等の弾性体や板バネ等を用いることができ、定着ロール61側の面は、ほぼ定着ロール61の外周面に倣う凹形状で形成されている。
剥離ニップ部材64bは、PPS(ポリフェニレンサルファイド)、ポリイミド、ポリエステル、ポリアミド等の耐熱性を有する樹脂、または鉄、アルミニウム、SUS等の金属で形成されている。剥離ニップ部材64bの形状としては、ニップ部Nにおける外面形状が一定の曲率半径を有する凸曲面状に形成される。
低摩擦シート68は、エンドレスベルト62内周面と圧力パッド64との摺動摩擦(摺擦抵抗)を低減するために設けられ、摩擦係数が小さく、耐摩耗性・耐熱性に優れた材質で形成するのが適している。また、低摩擦シート68は、潤滑剤が染み込んで裏面から漏れ出ないように、潤滑剤に対する浸潤性のない(難通過性)ように構成している。具体的には、フッ素樹脂からなる多孔質樹脂繊維布をベース層として圧力パッド64側の面にPET樹脂シートをラッピングさせたもの、シンタード成形したPTFE樹脂シート、テフロン(登録商標)を含浸させたガラス繊維シート等を用いることができる。
なお、低摩擦シート68は、プレニップ部材64aや剥離ニップ部材64bと別体に構成しても、プレニップ部材64aや剥離ニップ部材64bと一体的に構成しても、いずれでもよい。
次に、本実施の形態の定着装置60におけるエンドレスベルト62を支持する構成について述べる。図3は、エンドレスベルト62が支持された状態を説明する定着装置60の端部の断面図であり、用紙Pの搬送方向上流側から見た図である。
図3に示すように、ホルダ65の両端部にはエッジガイド80が配設されている。エッジガイド80は、ニップ部Nとその近傍に対応する部分に切り欠きが形成された円筒状、すなわち断面がC形状のベルト走行ガイド部801、ベルト走行ガイド部801の外側に設けられ、エンドレスベルト62の内径よりも大きな外径で形成されたフランジ部802、さらにフランジ部802の外側に設けられ、エッジガイド80を定着装置60本体に位置決めして固定するための保持部803で構成されている。
ホルダ65は、両端部がフランジ部802の内側面に固定され支持されている。また、ベルト走行ガイド部801は、ホルダ65の端部領域をオーバーラップするように配置されている。
そして、エンドレスベルト62は、ニップ部Nとその近傍を除いて、両側部の内周面がベルト走行ガイド部801の外周面に支持され、ベルト走行ガイド部801の外周面に沿って回動する(図2も参照)。したがって、ベルト走行ガイド部801は、エンドレスベルト62がスムーズに回動することができるように静止摩擦係数の小さな材質で形成され、さらには、エンドレスベルト62から熱を奪い難いように熱伝導率の低い材質で形成されている。
また、フランジ部802は、ホルダ65の両端部に配置されたフランジ部802の内側面同士の間隔がエンドレスベルト62の幅と略一致するように配置され、エンドレスベルト62の幅方向への移動(ベルトウォーク)を規制している。このように、エンドレスベルト62は、エッジガイド80によって回動方向および幅方向の移動が規制されるように構成されている。
なお、エンドレスベルト62は、ニップ部Nを除いては、接触する部材が潤滑剤塗布部材67とこのエッジガイド80だけであるため、摺擦抵抗を極力小さく構成することができ、熱の損失も小さくすることができる。
続いて、本実施の形態の定着装置60における、エンドレスベルト62の内周面に対する潤滑剤の塗布方法について説明する。図2および図3に示したように、ホルダ65には、定着装置60の長手方向に亘って、潤滑剤塗布部材67が配設されている。潤滑剤塗布部材67は、厚さが1.0〜3.0mm、例えば1.5mmであり、長さが330mmのブレード状に構成され、例えば粘度300csのアミノ変性シリコーンオイル等の潤滑剤が2cc程度含浸されている。そして、潤滑剤塗布部材67はエンドレスベルト62内周面に対してブレード先端部のみが接触するように配置され、潤滑剤を常時適量ずつエンドレスベルト62内周面に供給している。これにより、エンドレスベルト62と低摩擦シート68との摺動部に潤滑剤を供給し、低摩擦シート68を介したエンドレスベルト62と圧力パッド64との摺擦抵抗をさらに低減して、エンドレスベルト62の円滑な回動を図っている。
図4は、潤滑剤塗布部材67の構成を説明する断面図である。潤滑剤塗布部材67は、潤滑剤を保持するとともに、潤滑剤をエンドレスベルト62内周面に塗布する潤滑剤保持部671と、潤滑剤保持部671を支持するとともに、潤滑剤塗布部材67をホルダ65に固定する支持部672とで構成されている。
潤滑剤保持部671は、繊維状に形成されたフッ素樹脂シートをU字状に折り込むようにして、例えば1.5mm厚のブレード状に構成されている。本実施の形態の潤滑剤保持部671では、フッ素樹脂シートとしてPTFEシートを用いている。具体的には、繊維状に形成されたダイキン工業(株)製のポリフロン(登録商標)PA−10Lを用いている。潤滑剤保持部671としては、ダイキン工業(株)製PA−10Lのように、繊維径が細かく均一であって平均孔径も0.2〜1.0μmと小さく構成することによって、潤滑剤に関する高い保持能力を実現するとともに、潤滑剤保持部671からの潤滑剤の滲み出し量を適度に抑制することが可能となる。
また、潤滑剤保持部671は、エンドレスベルト62内周面に対してブレード先端部のみが接触するように配置されることで、潤滑剤保持部671とエンドレスベルト62内周面との接触面積を小さく設定しているので、潤滑剤の塗布能力を適度に抑えることができ、潤滑剤の塗布量を適度に制御することができる。
さらに、フッ素樹脂シートを用いることで、潤滑剤保持部671の曲げ弾性率も400〜700MPaと高く構成することができ、腰折れすることなく、長期の使用に亘って潤滑剤保持部671のブレード先端部のみをエンドレスベルト62内周面に接触させるように構成することができる。
なお、潤滑剤保持部671の腰折れを抑制するために、潤滑剤塗布部材67のエンドレスベルト62の回動方向下流側に背板のような補強部材を設けることも有効である。
このような構成により、潤滑剤保持部671に潤滑剤が飽和状態(2cc程度)に含浸されたイニシャル状態でも、エンドレスベルト62内周面への潤滑剤塗布量が過度に多くなることがない。ニップ部Nにおいてはエンドレスベルト62と圧力パッド64との間に押圧力が働いているため、エンドレスベルト62内周面への潤滑剤塗布量が過度に多くなると、ニップ部Nのエンドレスベルト62と圧力パッド64との摺動部に入り込めない余剰な潤滑剤が生じる。そのような余剰潤滑剤が存在すると、ニップ部Nの両端部から定着装置60の内部に漏れ出てしまい、それが圧力パッド64のプレニップ部材64aを構成するシリコーンゴムやフッ素ゴム等の弾性体に浸潤することで、プレニップ部材64aの弾性が失われ、ニップ部Nにおけるニップ圧の低下を招いてしまう。その結果、定着画像に画像不良が生じることとなる。また、潤滑剤が失われることとなるので、長期の使用によって潤滑剤保持部671から潤滑剤が減少し、エンドレスベルト62内周面への潤滑剤の必要な塗布量を確保することができない状態が発生する恐れもある。
これに対し、本実施の形態の定着装置60では、潤滑剤保持部671に潤滑剤が飽和状態である場合でも、エンドレスベルト62内周面への潤滑剤塗布量を適量に設定することができるので、ニップ部Nからの潤滑剤の漏洩を抑制することができ、長期に亘りニップ圧を高く維持することが可能となって、良質な定着画像を形成することができる。また、潤滑剤保持部671から長期に亘って潤滑剤を供給し続けることが可能となる。
図5は、本実施の形態の潤滑剤塗布部材67として、平均孔径が0.45μmの繊維状のPTFEを1.5mm厚、長さ330mmのブレード状に形成し、2ccのアミノ変性シリコーンオイルを含浸させたものを用い、エンドレスベルト62内周面へ潤滑剤塗布部材67のブレード先端部のみを当接させた場合の潤滑剤塗布量を測定した結果を示したものである。ここでは、比較例として、同様に2ccのアミノ変性シリコーンオイルを含浸させた従来の断面5mm×5mm、長さ330mmの耐熱性フェルトを用いて、エンドレスベルト62内周面に対して面接触させた場合の潤滑剤塗布量も測定した。図5の測定では、本実施の形態の定着装置60を用いて、プロセススピード194mm/sに設定して非通紙状態で駆動(空回転)させ、一定時間毎におけるエンドレスベルト62内周面への潤滑剤塗布量をプロットしたものである。
図5に示したように、従来の耐熱性フェルトを用いた場合には、アミノ変性シリコーンオイルが満たされた状態の空回転イニシャルにおいて、エンドレスベルト62内周面に対する潤滑剤塗布量が0.07g程度と非常に多くなるのに対し、本実施の形態のPTFEを用いた場合には、アミノ変性シリコーンオイルが満たされた状態の空回転イニシャルにおいても、潤滑剤塗布量を0.02g程度に抑えることが可能である。
そのため、本実施の形態の定着装置60では、潤滑剤保持部671における潤滑剤が充分に満たされた状態である場合でも、エンドレスベルト62内周面への潤滑剤塗布量を適量に設定することができるので、ニップ部Nに過剰な潤滑剤を供給することが抑制され、ニップ部Nからの潤滑剤の漏洩を抑えることができる。それにより、エンドレスベルト62内周面に対して長期に亘って潤滑剤を供給し続けることも可能となる。
このように、本実施の形態の定着装置60では、潤滑剤が充分に満たされたイニシャル状態においても潤滑剤保持部671から潤滑剤が過剰にエンドレスベルト62内周面へ供給されることがなく、潤滑剤保持部671からエンドレスベルト62内周面への塗布量が潤滑剤の保持量の多少に大きく依存しない構成を実現している。そのため、潤滑剤保持部671からは、画像形成装置の稼動に伴って潤滑剤を徐々に供給するだけであるので、長期に亘ってエンドレスベルト62内周面への潤滑剤の塗布能力を過不足なく略一定に保つことができる。それによって、エンドレスベルト62と圧力パッド64との摺動部に対して、常時潤滑剤が適量供給された状態を維持することができる。
ここで、ニップ部Nにおける潤滑剤の作用について述べる。上述したように、トナー像が静電転写された用紙Pが定着装置60のニップ部Nを通過することにより、トナー像が用紙Pに定着されるが、用紙Pがニップ部Nを通過する際の搬送力は、駆動側の定着ロール61から受けている。すなわち、用紙Pは、定着ロール61の回転に伴い、定着ロール61から摩擦力を受けることによって搬送されている。
一方、ニップ部Nに用紙Pが搬送されていない状態では、従動側のエンドレスベルト62も定着ロール61の回転に伴って定着ロール61から摩擦力を受けることによって回動している。しかし、ニップ部Nに用紙Pが搬送され、用紙Pがニップ部Nに挟持されている状態では、エンドレスベルト62は用紙Pを介して定着ロール61から搬送力を受けている。したがって、用紙P側から捉えると、用紙Pがニップ部Nを通過する際には、用紙Pには定着ロール61からの搬送力を受けるとともに、エンドレスベルト62側から搬送方向とは逆方向の力(逆搬送力)が作用することとなる。
ところで、エンドレスベルト62は、ニップ部Nにおいて圧力パッド64が押圧されているために、圧力パッド64からは回動方向とは逆の方向の力が摺動抵抗として作用している。そのため、上述したように、エンドレスベルト62と圧力パッド64との間には低摩擦シート68を介在させるとともに、潤滑剤塗布部材67からエンドレスベルト62の内周面に潤滑剤を塗布して、エンドレスベルト62と圧力パッド64との摺動抵抗を極力低減するように構成している。
したがって、通常状態では、エンドレスベルト62が圧力パッド64から受ける摺動抵抗は極めて小さく、円滑に回動可能であることから、エンドレスベルト62は用紙Pと等速で回動することが可能である。この場合には、用紙Pが受ける逆搬送力は、エンドレスベルト62を介した圧力パッド64からの摺動抵抗であるから、無視できる程度に小さい。そのため、用紙Pは定着ロール61と等速に安定して搬送される。
ところが、エンドレスベルト62の内周面に塗布される潤滑剤量が減少し、エンドレスベルト62と低摩擦シート68との間の摺動部に潤滑剤が適量供給できない状態が生じると、エンドレスベルト62と圧力パッド64との間の摺動抵抗が高くなる。
エンドレスベルト62と圧力パッド64との間の摺動抵抗が増加すると、用紙Pがニップ部Nを搬送される際に、用紙Pがエンドレスベルト62を介して圧力パッド64から受ける逆搬送力が無視できなくなる。さらに、エンドレスベルト62と圧力パッド64との間の摺動抵抗が過大になると用紙Pに作用する逆搬送力が大きくなり、用紙Pの搬送が定着ロール61の回動に追随できなくなって、用紙Pと定着ロール61との間でスリップが発生する。そのため、用紙Pの円滑な搬送が妨げられ、画像ずれや用紙Pにおける紙しわの原因となる。
特に、ニップ部Nにおいては、定着ロール61の外径を中央部から両端部にかけて大きく形成した、所謂フレア形状に構成したり、剥離ニップ部材64bと定着ロール61との間の押圧力が中央部から両端部にかけて大きくなるように設定することによって、常に用紙Pには中央部から両端部に向かって幅方向に力が作用するようにして、用紙Pに紙しわが生じるのを抑制している。ところが、エンドレスベルト62と圧力パッド64との間の摺動抵抗が増加すると、用紙Pが定着ロール61の搬送に追随できなくなり、このような用紙Pの幅方向に作用する力のバランスが崩れてしまう。そのため、用紙Pに紙しわを生じさせたり、さらには画像ずれを生じさせることとなる。
これに対し、本実施の形態の定着装置60では、潤滑剤塗布部材67は、繊維状のフッ素樹脂シートをブレード状に形成するとともに、エンドレスベルト62内周面に対してブレード先端部のみが接触するように構成して、潤滑剤の塗布を行っている。そのため、エンドレスベルト62と圧力パッド64との摺動部に対して、潤滑剤が常時適量供給される状態を維持することができるので、エンドレスベルト62と圧力パッド64との間の摺動抵抗の増加を抑制することができる。その結果、用紙Pを定着ロール61と等速に安定して搬送することが可能となり、画像ずれや用紙Pへの紙しわの発生が抑えられる。
また、潤滑剤塗布部材67とエンドレスベルト62内周面との当接を摩擦係数の小さいフッ素樹脂で行なっているため、潤滑剤塗布部材67がエンドレスベルト62の回動に際して摺動抵抗が増加することも抑制される。
なお、本実施の形態の潤滑剤塗布部材67の構成に加えて、エンドレスベルト62の内周面に微細な凹凸を形成すれば、エンドレスベルト62の内周面における潤滑剤の保持能力を向上させることができる。エンドレスベルト62の内周面における潤滑剤の保持能力を高くすることによって、エンドレスベルト62と低摩擦シート68との摺動部において、適量の潤滑剤量をさらに安定して維持することが可能となるので、エンドレスベルト62と圧力パッド64との間の摺動抵抗の増加を抑制する効果がさらに向上され、画像ずれや用紙Pへの紙しわの発生が一層抑えられる。
この場合のエンドレスベルト62の内周面の凹凸は、潤滑剤塗布部材67から効率良く潤滑剤が受け渡されるように、潤滑剤保持部671の平均孔径よりも細かく形成するのが好ましい。
また、エンドレスベルト62内周面と圧力パッド64との間に配設される低摩擦シート68は、表面に孔部がなく潤滑剤に対して浸潤性のない材質で形成されることが望ましい。低摩擦シート68を表面に孔部がなく潤滑剤への浸潤性のない材質で形成することで、潤滑剤が低摩擦シート68に滲み込むことを抑制できるので、摺動部において潤滑剤が失われず、潤滑剤の安定的な維持を可能とする。
次に、本実施の形態の定着装置60において、エンドレスベルト62と圧力パッド64との間の摺動抵抗の経時変化に関する実験を行った。
この実験では、定着ロール61には、アルミニウム製のコア611に、0.6mm厚のシリコーンゴムの耐熱性弾性体層612と、0.03mm厚のPFA樹脂の離型層613を被覆した外径26mmのものを用い、定着ロール61の表面温度は150℃に設定した。また、エンドレスベルト62には、ベース層として外径30mm、厚さ0.075mmのポリイミド樹脂を用い、定着ロール61側に0.01mmのPFA樹脂からなる離型層613を被覆したものを用いた。さらに、圧力パッド64は、シリコーンゴムからなるプレニップ部材64aと、アルミニウムからなる剥離ニップ部材64bと、エンドレスベルト62側の摺擦面側をシンタード成型したPTFE樹脂で被覆した低摩擦シート68とで構成されたものを用いた。
そして、定着装置60をプロセススピード194mm/sに設定して非通紙状態で駆動(空回転)させ、その際の定着ロール61の駆動トルクの経時変化を測定することで、摺動抵抗の変化を評価した。
図6は、潤滑剤塗布部材67として、平均孔径が0.45μmの繊維状のポリフロン(登録商標)を1.5mm厚、長さ330mmのブレード状に形成し、2ccのアミノ変性シリコーンオイルを含浸させたものを用いて、エンドレスベルト62内周面へ潤滑剤塗布部材67のブレード先端部のみを当接させた場合について、定着ロール61の駆動トルクの経時変化を測定した結果を示した。ここでは、比較例として、同様に2ccのアミノ変性シリコーンオイルを含浸させた従来の断面5mm×5mm、長さ330mmの耐熱性フェルトを用いて、エンドレスベルト62内周面に対して面接触させた場合についても、同様に駆動トルクの経時変化を示した。
図6に示すように、比較例の潤滑剤塗布部材では、イニシャルから30時間の経過時点で紙しわ発生の限界駆動トルクである0.6N・mを超えるという結果となった。これに対し、本実施の形態の潤滑剤塗布部材67を用いた場合には、空回転時間が経過するに伴い駆動トルクは上昇するものの経時変化は緩やかであり、駆動トルクの上限も紙しわ発生の限界駆動トルク以下で飽和するという結果が得られた。
このように、本実施の形態の潤滑剤塗布部材67を用いることによって、従来の潤滑剤塗布部材と比較して、格段に駆動トルクの低減を図ることが確認できた。
ところで、本実施の形態の潤滑剤塗布部材67では、潤滑剤保持部671が繊維状に形成されたフッ素樹脂シートをU字状に折り込むようにしてブレード状に構成したが、図7に示したように、U字状に形成された繊維状のフッ素樹脂シートを2つ貼り合わせてブレード状に構成することもできる。このように構成することによって、エンドレスベルト62の回動方向上流側の潤滑剤保持部671aで塗布された潤滑剤を下流側の潤滑剤保持部671bが均す機能を生じさせることで、潤滑剤のさらなる均一な塗布が可能となる。この場合、下流側の潤滑剤保持部671bに保持させる潤滑剤量を上流側の潤滑剤保持部671aよりも少なく設定することも有効である。
また、潤滑剤塗布部材67はエンドレスベルト62の回動方向に対してカウンタ当接するように配置してもよい。このように配置することで、潤滑剤塗布部材67がエンドレスベルト62内周面に潤滑剤を塗布するのと同時に、エンドレスベルト62内周面をクリーニングする機能も生じ、エンドレスベルト62内周面に付着したゴミ等がニップ部Nに搬送されることを抑制することが可能となる。
以上説明したように、本実施の形態の定着装置60では、潤滑剤塗布部材67を、繊維状のフッ素樹脂シートをブレード状に形成するとともに、エンドレスベルト62内周面に対してブレード先端部のみが接触するように構成することによって、エンドレスベルト62と圧力パッド64との摺動部に対して、潤滑剤が常時適量供給される状態を維持することができる。そのため、エンドレスベルト62と圧力パッド64との間の摺動抵抗の変動を抑え、摺動抵抗を常に低いレベルに保つことができるので、エンドレスベルト62は円滑に回動でき、エンドレスベルト62と用紙Pとは長期に亘って等速で回動することが可能となる。その結果、用紙Pは定着ロール61と等速に安定して搬送することができ、紙しわの発生や画像ずれを抑制することができる。
特に、潤滑剤塗布部材67の曲げ弾性率を高く構成することで、腰折れすることなく、長期の使用に亘ってブレード先端部のみをエンドレスベルト62内周面に接触させるように構成することができるので、長期に亘ってエンドレスベルト62と圧力パッド64との摺動部に対して、潤滑剤が常時適量供給された状態を維持することが可能となる。
また、潤滑剤塗布部材67に潤滑剤が飽和状態に含浸された状態でも、エンドレスベルト62内周面への潤滑剤塗布量が過度に多くなることがないので、潤滑剤がニップ部Nの両端部から定着装置60の内部に漏れ出てしまい、それが圧力パッド64のプレニップ部材64aを構成するシリコーンゴムやフッ素ゴム等の弾性体に浸潤することに起因するニップ圧の低下を抑制することができ、高画質な定着画像を維持することが可能である。さらには、潤滑剤塗布部材67から長期に亘って潤滑剤を供給し続けることも可能となる。
[実施の形態2]
実施の形態1では、加熱手段として発熱源を有する定着ロール61を用い、加圧手段として圧力パッド64が押圧されたエンドレスベルト62を用いた定着装置60が搭載された画像形成装置について説明した。実施の形態2では、図1に示した画像形成装置に搭載する定着装置であって、加熱手段として発熱源が押圧された定着ベルトを用い、加圧手段として加圧ロールを用いた定着装置について説明する。尚、実施の形態1と同様な構成については同様な符号を用い、ここではその詳細な説明を省略する。
図8は、本実施の形態における定着装置90の構成を示す側断面図である。図8に示すように、本実施の形態の定着装置90では、定着ベルト92が用紙Pのトナー像担持面側に配置されている。定着ベルト92の内側に発熱源としての抵抗発熱体であるセラミックヒータ82が配設され、セラミックヒータ82からニップ部Nに熱を供給するように構成している。
セラミックヒータ82は、加圧ロール91側の面がほぼフラットに形成されている。そして、定着ベルト92を介して加圧ロール91に押圧される状態で配置され、ニップ部Nを形成している。したがって、セラミックヒータ82は圧力部材としても機能している。ニップ部Nを通過した用紙Pは、ニップ部Nの出口領域(剥離ニップ部)において定着ベルト92の曲率の変化によって定着ベルト92から剥離される。
さらに、定着ベルト92内周面とセラミックヒータ82との間には、定着ベルト92の内周面とセラミックヒータ82との摺動抵抗を小さくするため、低摩擦シート68が配設されている。この低摩擦シート68は、セラミックヒータ82と別体に構成しても、セラミックヒータ82と一体的に構成しても、いずれでもよい。
一方、回動部材の一例としての加圧ロール91は定着ベルト92に対向するように配置され、図示しない駆動モータにより矢印D方向に回転し、この回転により定着ベルト92が従動回転するように構成されている。加圧ロール91は、コア (円柱状芯金)911と、コア911の外周面に被覆した耐熱性弾性体層912と、さらに耐熱性樹脂被覆または耐熱性ゴム被覆による離型層913とが積層されて構成されている。また、本実施の形態の定着装置90では、定着ベルト92は、原形が円筒形状に形成された無端ベルトであり、ベース層と、このベース層の加圧ロール91側の面または両面に被覆された離型層とから構成されている。
また、剥離の補助手段として、定着ベルト92のニップ部Nの下流側に、剥離部材70を配設することも可能である。剥離部材70は、剥離バッフル71が定着ベルト92の回転方向と対向する向き(カウンタ方向)に定着ベルト92と近接する状態でホルダ72によって保持されている。
そして、図1に示した画像形成装置の二次転写部20においてトナー像が静電転写された用紙Pは、定着入口ガイド56によって定着装置90のニップ部Nに導かれる。用紙Pがニップ部Nを通過する際には、用紙P上のトナー像は、ニップ部Nに作用する圧力と、定着ベルト92側のセラミックヒータ82から供給される熱とによって定着される。本実施の形態の定着装置90でも、加圧ロール91とセラミックヒータ82との間でニップ部Nを広く構成することができるため、安定した定着性能を確保することができる。
ここで、本実施の形態の定着装置90においては、潤滑剤塗布部材67を、繊維状のフッ素樹脂シートをブレード状に形成するとともに、定着ベルト92内周面に対してブレード先端部のみが接触するように構成している。このように構成することによって、定着ベルト92とセラミックヒータ82との摺動部に対して、潤滑剤が常時適量供給される状態を維持することができる。そのため、定着ベルト92とセラミックヒータ82との間の摺動抵抗の変動を抑え、摺動抵抗を常に低いレベルに保つことができるので、定着ベルト92は円滑に回動でき、定着ベルト92と用紙Pとは長期に亘って等速で回動することが可能となる。その結果、用紙Pは加圧ロール91と等速に安定して搬送することができ、紙しわの発生や画像ずれを抑制することができる。
特に、潤滑剤塗布部材67の曲げ弾性率を高く構成することで、腰折れすることなく、長期の使用に亘ってブレード先端部のみを定着ベルト92内周面に接触させるように構成することができるので、長期に亘って定着ベルト92とセラミックヒータ82との摺動部に対して、潤滑剤が常時適量供給された状態を維持することが可能となる。
本発明の活用例として、電子写真方式を用いた複写機、プリンタ等の画像形成装置への適用、例えば記録紙(用紙)上に担持された未定着トナー像を定着する定着装置への適用がある。また、インクジェト方式を用いた複写機、プリンタ等の画像形成装置への適用、例えば記録紙(用紙)上に担持された未乾燥インク像を乾燥する定着装置への適用がある。
本発明の画像形成装置を示した概略構成図である。 実施の形態1に係る定着装置の構成を示す側断面図である。 エンドレスベルトが支持された状態を説明する定着装置の端部の断面図である。 潤滑剤塗布部材の構成を説明する断面図である。 エンドレスベルト内周面への潤滑剤塗布量の測定結果を比較した図である。 定着ロールの駆動トルクの経時変化を示した図である。 他の潤滑剤塗布部材の構成を説明する断面図である。 実施の形態2に係る定着装置の構成を示す側断面図である。 従来の定着装置の構成を示す側断面図である。
符号の説明
1Y,1M,1C,1K…画像形成ユニット、11…感光体ドラム、12…帯電器、13…レーザ露光器、14…現像器、15…中間転写ベルト、16…一次転写ロール、17…ドラムクリーナ、20…二次転写部、60,90…定着装置、61…定着ロール、62…エンドレスベルト、63…ベルト走行ガイド、64…圧力パッド、64a…プレニップ部材、64b…剥離ニップ部材、65…ホルダ、66…ハロゲンヒータ、67…潤滑剤塗布部材、671…潤滑剤保持部、672…支持部、68…低摩擦シート、69…温度センサ、70…剥離部材、82…セラミックヒータ、91…加圧ロール、92…定着ベルト

Claims (7)

  1. 記録材に担持されたトナー像を定着する定着装置であって、
    回動可能な回動部材と、
    内周面に凹凸を有し、前記回動部材に接触しながら移動可能なエンドレスベルトと、
    前記エンドレスベルトの内側に配置され、当該エンドレスベルトを前記回動部材に圧接させて当該回動部材と当該エンドレスベルトとの間に記録材が通過するニップ部を形成する圧力部材と、
    繊維状に形成されたシートが折り込まれることでブレード状に構成されて潤滑剤を保持する潤滑剤保持部を、前記エンドレスベルトの内周面に対して当該潤滑剤保持部のブレード先端部が当接するように配置した潤滑剤塗布部材と
    を備え、前記エンドレスベルトの内周面の凹凸の周期的な間隔が前記潤滑剤保持部の平均孔径よりも細かいことを特徴とする定着装置。
  2. 前記潤滑剤塗布部材は、前記潤滑剤保持部が厚さ1.0〜3.0mmに形成されたことを特徴とする請求項1記載の定着装置。
  3. 前記潤滑剤塗布部材は、前記潤滑剤保持部が繊維状に形成されたことを特徴とする請求項1記載の定着装置。
  4. 前記潤滑剤塗布部材は、前記潤滑剤保持部がフッ素樹脂で構成されたことを特徴とする請求項3記載の定着装置。
  5. 前記潤滑剤塗布部材は、前記潤滑剤保持部が曲げ弾性率を400〜700MPaで構成したことを特徴とする請求項1記載の定着装置。
  6. 前記回動部材を加熱する加熱部材、または前記エンドレスベルトを加熱する加熱部材をさらに備えたことを特徴とする請求項1記載の定着装置。
  7. トナー像を形成するトナー像形成手段と、
    前記トナー像形成手段によって形成されたトナー像を記録材上に転写する転写手段と、
    前記記録材上に転写されたトナー像を当該記録材に定着する定着手段とを含み、
    前記定着手段は、
    回動可能な回動部材と、
    内周面に凹凸を有し、前記回動部材に接触しながら移動可能なエンドレスベルトと、
    前記エンドレスベルトの内側に配置され、当該エンドレスベルトを前記回動部材に圧接させて当該回動部材と当該エンドレスベルトとの間に記録材が通過するニップ部を形成する圧力部材と、
    繊維状に形成されたシートが折り込まれることでブレード状に構成されて潤滑剤を保持する潤滑剤保持部を、前記エンドレスベルトの内周面に対して当該潤滑剤保持部のブレード先端部が当接するように配置した潤滑剤塗布部材と
    を備え、前記エンドレスベルトの内周面の凹凸の周期的な間隔が前記潤滑剤保持部の平均孔径よりも細かいことを特徴とする画像形成装置。
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