JP4040394B2 - シート搬送装置及び画像読取装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、複写機、ファクシミリ等の画像形成装置における自動原稿搬送装置など、画像読取部、画像転写部あるいは露光部へのシートを搬送するシート搬送装置及び画像読取装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、複写機、プリンタ、ファクシミリ等の画像形成装置において、読取り原稿を搬送する原稿搬送装置や、画像処理装置に転写紙を供給する給紙装置には種々のタイプがあるが、セットされたシートをピックアップローラ等の呼び出し手段により呼び出し、これを搬送方向下流に配置された給紙ベルトとリバースローラとにより、1枚ずつに分離して搬送するようにした構成が一般的となっている。また、近年特に、原稿を露光位置(読取位置)へ搬送する自動原稿搬送装置(給紙装置、シート搬送装置に含まれる)においては、使用される原稿が多様化し、例えばカラーコピーとして出力されたコピー紙をさらに原稿として複写するというニーズが増えてきている。
【0003】
このような自動原稿搬送装置では、例えば、コピー面がユーザに見えるように原稿の表側を上向きにして原稿載置台にセットし、一枚ずつに分離された原稿が搬送される過程でその表裏が逆転され、読取位置に到達する時には上向きにセットした原稿の画像面が下側から読取られるようになっている。さらに、読取り終了後の原稿をそのまま排出させることにより、第1枚目の原稿の表面が下向きとなり、順次露光が終了した原稿を上乗せして行くことでページ順を揃えるようになっている。
【0004】
ここで、カラーコピー原稿はその表面にシリコンオイルが塗布されているものが多く、このシリコンオイルがピックアップローラ及び給紙ベルトに付着すると、原稿の搬送力が通紙枚数の増加にしたがって低下して行き、不給紙ジャムなどの不具合を生じることとなる。すなわち、対向して配置された給紙ベルトとリバースローラとは駆動がかかる毎に逆の方向に回転し、原稿を下流方向へ搬送する給紙ベルトと、多積載された2枚目以降の原稿の進入を阻止するリバースローラとの作用により、1枚ずつに分離して搬送を行うが、給紙ベルト及びピックアップローラのみにシリコンオイルが付着するために、リバースローラによる原稿戻し力と搬送力とのバランスが崩れ、原稿戻し力が搬送力よりも大きくなってスリップ率が上ってしまう。また、原稿表面へのオイル塗布も均一でないために、原稿の先端部にオイル塗布が多い場合は、ピックアップ動作時にスリップが発生し、その後はそれほどスリップしないことがある。また、その逆の場合もある。
【0005】
さらに、装置を小型化するために、ピックアップローラと給紙ベルトとを回転させる場合には駆動モータの正回転を使用し、プルアウトローラ(以下、突き当てローラともいう)を回転させるためには前記駆動モータの逆回転を使用する構成においては、前記駆動モータの正回転による分離搬送時、停止しているプルアウトローラに対し、搬送パス以上の搬送量を設定することにより、突き当て補正を行っている。この突き当て補正は、原稿先端の整合を計り、斜行を補正するために行われる。ここで、搬送パスとプルアウトローラへの突き当て搬送量とは、プルアウトローラ直前に設けられたセンサ(突当てセンサ)の検知情報により設定される。しかしながら、前述したシリコンオイルが塗布されたカラー原稿の通紙スリップについて配慮がなされていない場合には、プルアウトローラに原稿先端が突き当たらないことがあり、この場合に次動作としてのプルアウトローラからの給紙時に不給紙が発生するおそれがある。
【0006】
この種の給紙装置には、特開2000-219365号公報に記載されたものがある。これは、1個のシート検出手段と、モータパルス数を制御する制御手段とを設け、分離給紙後に、前記シート検出手段が先端を検出するまでのモータパルス数に応じて、前記制御手段により、突き当てローラに突き当てる駆動量を制御して斜行補正可能な適正なループを形成するものであった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような従来の給紙装置では、シート検出手段を1個しか設けていないために、シートが分離時に遅れたのか、分離後に遅れたのか、あるいは時間的に均等に遅れたのかは判別できず、突き当てローラ近傍での実際のシートの搬送速度が不明であって、適正な駆動量を取得することは難しいという問題があった。すなわち、分離後に一つのセンサで搬送時間を測定しただけでは、突き当て補正用の突き当てローラ近傍での原稿搬送速度を正確に認識できなかった。
【0008】
本発明は、このような問題を解決するためになされたもので、突き当て位置近傍で実測された搬送量によりシート搬送を制御することが可能なシート搬送装置及び画像読取装置を提供するものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
請求項1に係る本発明のシート搬送装置は、載置されたシートを呼び出し、1枚ずつ分離して供給する給紙手段と、前記給紙手段を駆動する駆動手段と、前記給紙手段のシート搬送方向下流における第1の検知位置で、搬送されてくる前記シートを検知する第1の検知手段と、第1の検知手段のシート搬送方向下流における第2の検知位置で、搬送されてくるシートを検知する第2の検知手段と、第2の検知手段のシート搬送方向下流における第3の検知位置で、搬送されてくるシートを検知する第3の検知手段と、第3の検知手段のシート搬送方向下流で、分離給紙後のシートを所定位置へ搬送するシート搬送手段と、前記駆動手段の駆動量を設定して搬送制御する制御手段とを設け、前記制御手段は、第1乃至第3の検知手段の検知情報により、第1の検知手段と第2の検知手段との間の第1の搬送速度、及び第2の検知手段と第3の検知手段との間の第2の搬送速度を求め、第1の搬送速度と第2の搬送速度とを比較し、当該比較結果に応じて、第3の検知手段から前記シート搬送手段までの駆動量を設定する構成を有している。
この構成により、シート搬送装置において、三つの検知手段(センサ)による実測値を用い、シート搬送手段近傍の搬送制御を行うので、実際の各区間におけるシートの搬送速度に応じて適正な駆動量を設定できることとなる。
【0013】
また、請求項に係る本発明のシート搬送装置は、請求項1において、前記第3の検知手段は、前記制御手段によって第3の検知手段から前記シート搬送手段までの間の搬送制御が行えるよう、前記シート搬送手段の近傍に設けられた構成を有している。
この構成により、シート搬送装置において、第2の検知手段からシート搬送手段までの間で減速などの搬送制御ができる程度の間隔を設けているので、スリップしたシートに対する突き当てを確実に行い、斜行を補正することができる。
【0014】
また、請求項に係る本発明のシート搬送装置は、請求項1または2において、前記第1の検知手段と第2の検知手段と第3の検知手段とは、シート搬送方向の同一線上に配置された構成を有している。
この構成により、シート搬送装置において、第1の検知手段と第2の検知手段と第3の検知手段とが搬送方向に並んでいるので、シートが斜行していても正確に駆動量を計測できることとなる。
【0016】
また、請求項に係る本発明のシート搬送装置は、請求項1乃至のいずれかにおいて、前記制御手段は、シート1枚ずつについて、前記給紙手段でシートが呼び出されてから、前記シートが第1の検知手段で検知されるまでの経過時間により、前記シートがスリップし易いシートか否かを判断する構成を有している。
この構成により、シート搬送装置において、予めオイルが塗布されたシートを判別し、オイルが塗布されたシートに対してオイル付着による搬送状態を判断するので、効率的に不給紙の発生比率を下げることができる。
【0017】
また、請求項に係る本発明の画像読取装置は、請求項1乃至のいずれかに記載のシート搬送装置を具備した構成を有している。
この構成により、画像読取装置において、三つの検知手段(センサ)による実測値を用い、シート搬送手段近傍の搬送制御を行うので、実際の各区間におけるシートの搬送速度に応じて適正な駆動量を設定できることとなる。
【0028】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。
[第1の実施の形態]
図1は、本発明の第1の実施形態に係る画像読取装置の要部構成を示す。図1において、自動原稿搬送装置300(本発明におけるシート搬送装置に含まれる)は、画像読取装置の本体200上部にヒンジなどの連結部材で開閉可能に連結されている。
【0029】
また、自動原稿搬送装置300において、原稿セット部Aは、被読取り原稿束(原稿1を含む)をセットするものである。この原稿セット部Aには、原稿束を表向きに載置するための原稿テーブル2と、a方向、b方向に移動可能な可動原稿テーブル3と、原稿セットにより上昇するセットフィラー4と、セットフィラー4の位置により原稿セットを検知するセットセンサ5と、可動原稿テーブル3が所定位置まで上昇したことを検知するテーブル上昇センサ8と、搬送方向の長さを検出する第1の原稿長さセンサ30及び第2の原稿長さセンサ31(反射型センサ、または原稿1枚にても検知可能なアクチェータ型のセンサが用いられる)とが含まれる。
【0030】
分離給送部Bは、原稿セット部Aにセットされた両面原稿束から一枚ずつ原稿を分離して給送するものである。この分離給送部Bには、c方向、d方向に移動し、原稿テーブル2に載置された最上位の原稿を呼出すピックアップローラ7と、給紙方向に回転する給紙ベルト9と、給紙ベルト9と接して原稿1を1枚ずつ給送し、重送を防止する分離ローラ10と、給送されてきた原稿先端を検知する突当てセンサ11と、分離後の原稿先端を検知する分離センサ400とが含まれる。レジスト部Cは、給送された原稿の表面を一次突当て整合する働きと、整合後の原稿を引き出し搬送する働きとをなすものである。このレジスト部Cには、突当て後の原稿1を引き出すプルアウトローラ12(プルアウト駆動ローラ12a、プルアウト従動ローラ12bからなる)と、奥行き方向に複数個並べて設けられ、原稿の搬送方向に直行する幅方向のサイズを検知する原稿幅センサ13とが含まれる。
【0031】
また、プルアウト駆動ローラ12a(シート搬送駆動ローラに含まれる)は、プルアウト従動ローラ12b(シート搬送従動ローラに含まれる)に圧接している(図2に示す)。ここでは、上ガイド板50上の軸受12cに設けられたスプリング12dにより、プルアウト駆動ローラ12aを上方から加圧することで、プルアウト駆動ローラ12aの駆動にプルアウト従動ローラ12bが従動するようになっている。また、上ガイド板50において、プルアウト従動ローラ12bの軸方向で、プルアウトローラ12のニップ位置近傍には突当てセンサ11が設けられ、この突当てセンサ11の搬送方向(通紙方向)上流には分離センサ400が設けられている。ここでは、突当てセンサ11の配設位置を確保するために、プルアウト従動ローラ12bの軸は、搬送方向の中心に対して片側(配設位置側)が短く設定されている。なお、分離後に斜行して搬送されてきた原稿をより正確に検知するためには、分離センサ400と突当てセンサ11とが搬送方向の同一線上に配置されていることが好ましい。また、分離センサ400と突当てセンサ11との間隔は、オイルの塗布ムラなどによる速度変動の影響を受けない程度に短い方が好ましい。
【0032】
ターン部Dは、搬送される原稿を反転(ターン)させて、原稿面を読取り側(下方)に向けて搬送するものである。このターン部Dには、原稿を反転して搬送するターンローラ14(ターン駆動ローラ、ターン従動ローラからなる)と、反転された原稿を検知する読取り入口センサ15と、反転された原稿をレジスト位置へ搬送する読取り入口ローラ16(読取り入口駆動ローラ、読取り入口従動ローラからなる)と、原稿がレジスト位置に達したことを検知するレジストセンサ17とが含まれる。読取り搬送部Eは、原稿を搬送しながら原稿の画像をスリットガラス202の下方より読取らせるものである。この読取り搬送部Eには、原稿1を読取り搬送する読取りローラ19と、原稿1がスリットガラス202から浮き上がるのを抑えると共に、白基準として用いられる反射板20と、読取り後の原稿を排紙方向に搬送する読取り出口ローラ21とが含まれる。スイッチバック部Fは、読取り後の原稿を退避させ、表裏を反転するものである。このスイッチバック部Fには、読取り後の原稿を検知する排紙センサ22と、i方向、j方向に搬送方向を切り替える両面切替爪52と、原稿1を退避方向及びスイッチバック方向へ搬送する上反転ローラ51(上反転駆動ローラ、上反転従動ローラからなる)と、退避してきた原稿1を検知する上反転センサ32とが含まれる。
【0033】
中間搬送部Gは、スイッチバック部Fにてスイッチバックされた原稿を再びレジスト部Cに戻すものである。この中間搬送部Gには、中継ローラ33(中継駆動ローラ、中継従動ローラからなる)が含まれる。スイッチバック部Hは、再びターン部Dから読取り搬送部Eにより原稿の裏面を読取り後、一時原稿を待機させるものである。このスイッチバック部Hには、裏面読取り後の原稿を退避させる下反転ローラ25(下反転駆動ローラ、下反転従動ローラからなる)と、g方向、h方向に搬送方向を切り替える下反転排紙切替爪24と、e方向、f方向に搬送方向を切り替える下反転切替爪23とが含まれる。反転排紙部Iは、スイッチバック部Hで待機している原稿を反転して機外に排出するものである。この反転排紙部Iには、下反転ローラ25によりスイッチバックされた原稿の搬送を補助し、原稿の内ガイド板への巻付きによる負荷を軽減する補助ローラ27が含まれる。スタック部Jは、読取り完了後の原稿を積載保持するものである。このスタック部Jには、排紙トレイ29が含まれる。
【0034】
また、画像読取装置の本体200において、読取部201は、図示しない露光ランプ、第1ミラーがプラテンガラス204の下方で図中、左右方向に移動して原稿を読取ることができ(圧板モード)、また、スリットガラス202を介して原稿を読取る際(自動搬送モード)には、前記露光ランプと第1ミラーをスリットガラス202の下方に停止させて読取位置(露光位置)で読取るように構成されている。公知のように、前記露光ランプが照射した光の原稿面からの反射光は、前記第1ミラーやレンズを介して電荷結合素子(CCD)などの読取り素子に入光されて結像することとなる。
【0035】
次に、図3〜図7を用い、本実施形態の画像読取装置の駆動系について説明する。ここで、図3は給紙モータ102による駆動系、図4は読取りモータ103による駆動系、図5は下反転モータ106による駆動系、図6は排紙モータ104による駆動系、図7は上反転モータ107による駆動系をそれぞれ示す。
【0036】
図3において、分離動作時のモータ駆動方向は実線矢印で示され、給紙動作時のモータ駆動方向は破線矢印で示されている。
分離動作時に、給紙モータ102が駆動回転すると、給紙モータ102駆動は、プーリ301→プーリ302→ギヤ305→ギヤ306に伝達される。さらに、ギヤ306からギヤ307へ伝達された駆動は、給紙ベルト9を回転させる。さらに、ギヤ308→ギヤ309→ギヤ・プーリ310→プーリ311と伝達された駆動は、ピックアップローラ7を回転させる。また、ギヤ306からギヤ314へ伝達された駆動は、リバースローラ10を回転させる。このとき、ギヤ305と同軸のギヤ・プーリ303と、ギヤ314と同軸のギヤ304とに対しては、ワンウェイクラッチの作用で駆動伝達がなされないように構成されている。
給紙動作時に、給紙モータ102が駆動回転すると、給紙モータ102の駆動は、プーリ301→プーリ302→ギヤ・プーリ303に伝達される。このギヤ・プーリ303からギヤ303に伝達された駆動は、リバースローラ10を回転させる。また、ギヤ・プーリ303→プーリ312→プーリ313へと伝達され、プーリ312→プーリ315→プーリ316へと伝達された駆動は、プルアウト駆動ローラ12a、ターンローラ14、中継ローラ33を回転させる。このとき、このとき、ギヤ・プーリ303と同軸のギヤ305と、ギヤ304と同軸のギヤ314とに対しては、ワンウェイクラッチの作用で駆動伝達がなされないように構成されている。
【0037】
図4において、読取りモータ103が駆動回転すると、読取りモータ103の駆動は、プーリ321からプーリ322へ伝達される。さらに、読取りモータ103の駆動は、プーリ322からプーリ324、プーリ326へそれぞれ伝達されて、読取り入口ローラ16、読取り出口ローラ21をそれぞれ回転させる。また、読取りモータ103の駆動は、プーリ324からプーリ325へ伝達され、読取りローラ19を回転させる。
【0038】
図5において、下反転モータ106が駆動回転すると、下反転モータ106の駆動は、プーリ344→プーリ345→プーリ346へ伝達され、下反転ローラ25、補助ローラ27を回転させる。
【0039】
図6において、排紙モータ104が駆動回転すると、排紙モータ104の駆動は、プーリ341からプーリ343へ伝達され、排紙ローラ28を回転させる。
【0040】
図7において、上反転モータ107が駆動回転すると、上反転モータ107の駆動は、プーリ347からプーリ348へ伝達され、上反転ローラ51を回転させる。
【0041】
ここで、図8を用い、前述した各部A〜Iの駆動を制御する制御系について説明する。
本体200には、画像読取装置の一連の動作を制御する本体制御部212を備え、この本体制御部212は、通信手段(ここでは、シリアル通信線)を介して自動原稿搬送装置300から送信された信号を受信する。また、本体制御部212は、こうして受信及び入力された信号が示す情報に基づいて、読取部201の駆動制御や操作部211における表示制御等を行うと共に、自動原稿搬送装置300に対し、動作モード信号や給紙開始信号を含む各種制御信号を送信し、コントローラ100に指示して自動原稿搬送装置300の搬送動作を制御する。
【0042】
また、操作部211には、図示していないスタートボ反転やテンキー等の各種ボ反転キー、及びLCD表示器等を有し、各動作モードの設定や動作の開始、停止の指示がユーザ操作で可能なように構成されている。また、操作部211から入力及び設定された内容は、本体制御部212の図示しないRAMに記憶され、設定内容が変更される度に記憶内容も更新される。
【0043】
また、自動原稿搬送装置300には、一連の搬送動作を制御するコントローラ100を備え、このコントローラ100は、センサ5、6、8、11、13、15、17、22、26、30、31、32、400などからの検知信号、搬送動作の駆動を行う駆動部のモータ101〜107、ソレノイド110〜112などからの状態信号、及び本体200から送信された制御信号(給紙開始信号等)など入力する。また、コントローラ100は、各センサからの検知情報を本体200側の本体制御部212に送信すると共に、本体制御部212から送信される制御信号に基づいて、モータ101〜107、ソレノイド110〜112などの駆動を制御する。
【0044】
なお、各モータはステッピングモータから構成されているので、例えばパルス数をカウントし、1パルス当たりの駆動量を乗じることによって駆動量が容易に得られ、その駆動量と各センサ情報に基づき、原稿長さの検出を行うとともに、先行原稿と次原稿の搬送間隔(紙間)制御、レジスト検知後の読取位置到達タイミング制御、読取動作終了タイミング制御などを行う。
【0045】
次に、分離給送部Bからレジスト部Cにわたって二つのセンサ11、400を設けた理由を説明する。
前述したように、プルアウト従動ローラ12bの軸方向で、プルアウトローラ12のニップ部近傍の搬送方向上流には突当てセンサ11が配置され、この突当てセンサ11の搬送方向上流には分離センサ400が配置されている。ここでは、図9に示すように、給紙ベルト9端部から分離センサ400までのスパンは10mm、分離センサ400から突当てセンサ11までのスパンは19mm、突当てセンサ11からプルアウトローラ12のニップ部までのスパンは5mmとなっている。
【0046】
この構成により、シリコンオイルが塗布された第1の原稿、及び、オイルが塗布されていない第2の原稿(普通紙)を使用し、第1及び第2の原稿をそれぞれ1枚ずつ給紙させて、給紙開始から、原稿先端が突当てセンサ11に到達するまでの時間を測定した結果は、図10に示すとおりである。ここで、第2の原稿を給紙した場合は、枚数が増加しても前記時間はほぼ一定である。一方、シリコンオイルが塗布された第1の原稿は枚数が増えるにつれ徐々に前記時間が増加し、平均的には290msec前後で飽和する傾向が見られ、原稿がスリップして、給紙に時間がかかっていることがわかる。
【0047】
また、前記構成により、シリコンオイルが塗布された第1の原稿サンプル30枚と、シリコンオイルが塗布されていない第2の原稿(普通紙)の平均サンプルでの給紙開始から分離センサ400到達までの時間(区間1)、及び分離センサ400から突当てセンサ11までの到達時間(区間2)をそれぞれ測定した結果は、図11に示すとおりである。ここで、第1の原稿サンプルを用いた場合は、第2の原稿を用いた場合に比べて2〜3倍程度の搬送時間を要することがわかる。特に、「区間1」ではスリップが大きく、搬送に時間がかかっても、「区間2」においてはそれほど遅れていないサンプル(図11のa)や、その逆に、「区間1」ではそれほど遅れていなくても、「区間2」で遅れているサンプル(図11のb)が見うけられる。これは、原稿表面のオイル塗布量が均一でなく、先端部の塗布量が多いものがピックアップ動作時や分離動作時に遅れ、先端部のオイル塗布量が少ないものは分離が終わった後の「区間2」で搬送遅れが発生するものと判断できる。
【0048】
このように、シリコンオイルなどが塗布された原稿の搬送遅れは均等でないために、一つのセンサで分離後の搬送時間を測定するだけでは、突き当てローラ(ここでは、プルアウトローラ12)の近傍における実際の原稿搬送速度は認識できない。そこで本実施形態では、分離後の搬送時間を測定する分離センサ400に加え、プルアウトローラ12の近傍に突当てセンサ11を追加して搬送動作を制御するものである。
【0049】
次に、図12を用い、本実施形態の分離給送時の搬送制御(駆動量の設定)をより具体的に説明する。ここでは、分離給送対象の原稿1枚ごとに、ピックアップローラ7による呼び出し動作開始から分離センサ400による検知までの経過時間(あるいは駆動パルス数)により、シリコンオイルなどが塗布されたオイル原稿(以下、原稿ともいう)であるか否かを判断している。
【0050】
本実施形態では、原稿の給紙を開始して、原稿先端を分離センサ400が検知してから、給紙モータ102のパルスのカウントをコントローラ100にて開始する。ここで、オイル原稿の先端が突当てセンサ11に到達するまでのカウント値をnパルスとした場合に、突当てセンサ11からプルアウトローラ12のニップ部まで搬送するのに必要なパルス数Nをコントローラ100が式(1)を用いて演算して、その後の駆動量(搬送量)を設定することになる。
【数1】
Figure 0004040394
例えば、原稿にスリップが発生しない時の、給紙モータ102の1パルスあたりの搬送量を0.1mmとすると、分離センサ400から突当てセンサ11までのスパンが19mmなので、スリップ無し時の搬送では、19/0.1=190パルスである。この190パルスと実測のnパルスとの比が、原稿の搬送遅れ率となる。また、突当てセンサ11からプルアウトローラ12までのスパンが5mmなので、5/0.1mm=50パルスに前記原稿の搬送遅れ率を掛けたものが、この間の搬送設定パルス数Nとなる。
【0051】
この搬送設定パルス数Nを算出するに当り、突当てセンサ11からプルアウトローラ12までのスパン5mmに、停止したプルアウトローラ12へ突き当てて原稿の斜行を補正する分の突き当て量(例えば、数mm)を加えて算出してもよい。なお、突き当て量とは、分離後の原稿がプルアウトローラ12に到達しても、さらに給紙モータ102により原稿搬送の駆動をかけ続ける量のことをいう。
【0052】
最後に、本実施形態の搬送動作について説明する。
読取りを行う原稿束1は、原稿テーブル2上に原稿面を上向きの状態でセットされる。ここで、原稿束1の巾方向は、図示しないサイドガイドによって位置決めされる。原稿のセットは、セットフィラー4、原稿セットセンサ5により検知され、前記シリアル通信線により本体制御部212に送信される。さらに、原稿テーブル2面に設けられた原稿長さセンサ30、31により、原稿の搬送方向長さの概略が判定される。
【0053】
次いで、可動原稿テーブル3は、底板上昇モータ105の正転により方向aへ上昇し、原稿束の最上面がピックアップローラ7と接触する。ここで、ピックアップローラ7は、ピックアップモータ101の駆動によりカム機構で方向cへ移動する。また、前述したように可動テーブル3が上昇するので、ピックアップローラ7は、可動テーブル3上の原稿上面により押されて上昇し、テーブル上昇検知センサ8により上限を検知される。ここで、底板上昇モータ105は停止され、ピックアップローラ7も停止することとなる。
【0054】
次いで、本体操作部211よりプリントキーが押下され、本体制御部212から前記シリアル通信線を介してコントローラ100に原稿給紙信号が送信されると、給紙モータ102の正転によりピックアップローラ7が回転駆動し、原稿テーブル2上の数枚(理想的には1枚)の原稿をピックアップする。回転方向は、最上位の原稿を給紙口に搬送する搬送方向である。また、前述した給紙モータ102の正転により、給紙ベルト9は給紙方向に回転駆動され、リバースローラ10は給紙と逆方向に回転駆動される。これらの回転駆動により、最上位の原稿とその下の原稿を分離して、最上位の原稿のみを給紙する。さらに詳しく説明すると、リバースローラ10は給紙ベルト9と所定圧で接し、給紙ベルト9との直接接している時、又は原稿1枚を介して接している状態では、給紙ベルト9の回転につられて反時計方向に連れ回りし、原稿が2枚以上給紙ベルト9とリバースローラ10の間に進入したときには、連れ回り力がトルクリミッタのトルクよりも低くなるように設定されている。この設定により、リバースローラ10は本来の駆動方向である時計方向に回転し、余分な原稿を押し戻す働きをし、重送が防止される。
【0055】
こうして給紙ベルト9とリバースローラ10との作用により、1枚ずつに分離された原稿は給紙ベルト9によってさらに搬送され、分離センサ400及び突当てセンサ11によって先端が検知される。ここで、前述したように、分離センサ400と突当てセンサ11との間の給紙モータ102のパルス数がカウントされ、カウント値により、突当てセンサ11からプルアウトローラ12のニップ部までの搬送量を設定する。この搬送量により、給紙モータ102は正転駆動され、原稿は停止しているプルアウトローラ12に突当たり、さらに前記搬送量に含まれている突き当て量に相当する距離送られる。結果的には、プルアウトローラ12に所定量撓みを持って押し当てられた状態で給紙モータ102は停止され、給紙ベルト9の駆動が停止する。すなわち、ピックアップモータ101が駆動してピックアップローラ7が原稿上面から退避し、原稿は給紙ベルト9の搬送力のみで搬送され、原稿先端は、プルアウトローラ12のニップに進入し、先端の整合(突き当てによる斜行補正)が行われる。
【0056】
次いで、給紙モータ102の逆転によりプルアウト駆動ローラ対12aが回転駆動して、分離後に斜行補正された原稿をターンローラ14まで搬送する。この給紙モータ102逆転時に、プルアウトローラ12とターンローラ14とは駆動されるが、ピックアップローラ7と給紙ベルト9とは駆動されていない。また、原稿幅センサ13は、プルアウトローラ12により挟持搬送されてきた原稿の幅方向のサイズを検知する。なお、原稿の搬送方向の長さは、原稿の先端後端を突当てセンサ11で読取ることによりモータパルスから検出する。
【0057】
次いで、原稿先端が読取入口センサ15により検出されると、読取入口ローラ16の上下ローラ対のニップに原稿先端が進入する前に、原稿搬送速度を読取り搬送速度と同速にするために減速を開始すると同時に、読取モータ103を正転駆動して読取入口ローラ16、読取ローラ19、読取出口ローラ21を駆動する。
【0058】
次いで、原稿の先端がレジストセンサ17により検知されると、読取モータ103のパルスカウントにより検出された、原稿先端が読取部201に到達するタイミングで、本体制御部212に対し、画像面の副走査方向有効画像領域を示すゲート信号が、読取り部201を原稿後端が抜けるまで送信される。
【0059】
ここで、片面読取りの場合には、下反転切替爪23、両面切替爪30は実線で示す位置にあり、読取り搬送部Eを通過した原稿は排紙部Jへ搬送される。この際、排紙センサ22により原稿の先端が検知されると、排紙モータ104を正転駆動して排紙ローラ28を反時計方向に回転させる。また、排紙センサ22による原稿の後端検知からの排紙モータ104のパルスカウントにより、原稿後端が排紙ローラ28の上下ローラ対のニップから抜ける直前に排紙モータ104駆動速度を減速させて、排紙トレイ29上に排出される原稿が、排紙トレイ29から飛び出さないように制御する。
【0060】
以上のように、本発明の第1の実施形態に係る画像読取装置は、載置されたシート原稿を呼び出し、1枚ずつ分離して供給する分離給送部B(給紙手段に含まれる)と、分離給送部Bにより1枚ずつ分離された原稿(シート、シート原稿に含まれる)を読取位置へ搬送するプルアウトローラ12(シート搬送手段に含まれる)と、分離給送部B及びプルアウトローラ12を駆動する給紙モータ102(駆動手段に含まれる)と、前記読取位置でシート原稿の画像を読取る読取部201(読取手段に含まれる)と、分離給送部Bとプルアウトローラ12との間に設けられ、搬送されてくるシート原稿を検知する分離センサ400(第1の検知手段に含まれる)と、分離給送部Bとプルアウトローラ12との間で、分離センサ400よりも原稿搬送方向下流に設けられ、搬送されてくる原稿を検知する突当てセンサ11(第2の検知手段に含まれる)と、給紙モータ102の駆動量を設定して原稿搬送を制御するコントローラ100(制御手段に含まれる)とを設け、コントローラ100は、分離センサ400の検知情報及び突当てセンサ11の検知情報により、分離センサ400と突当てセンサ11との間のnパルス(第1の駆動量に含まれる)を求め、前記nパルスにより、原稿がスリップして搬送されているか否かを判断し、突当てセンサ11とプルアウトローラ12との間のNパルス(第2の駆動量に含まれる)を設定しているので、実際の原稿の搬送速度に合わせた搬送量(ここでは、給紙モータ102の駆動量)設定が可能となる。
【0061】
また、本実施形態によれば、原稿の繰り出し量を検出するコントローラ100は、分離給送部Bを駆動するパルスモータ(給紙モータ102)のパルス数をカウントしているので、給紙の速度設定を変更しても同じ制御で対応可能である。
【0062】
なお、上述した実施形態では給紙モータ102の駆動パルス数をカウントした場合について説明したが、本発明はこのほかに、給紙ベルト9などの従動軸に設けたエンコーダを用いても同様の効果が得られるものである。
【0063】
[第2の実施の形態]
図13は、本発明の第2の実施形態に係る読取り搬送のタイミングチャートを示す。これは第1の実施形態とは、給紙モータ102の搬送時間をコントローラ100で計測して読取り搬送を制御する点が相違している。なお、本実施形態の画像読取装置は、第1の実施形態と概ね同様の構成であるために、図1〜図9を用いると共に同一構成には同一符号を付与して説明を省略する。
【0064】
本実施形態では、第1の実施形態に準じ、分離給送対象の原稿1枚ごとに、ピックアップローラ7による呼び出し動作開始から分離センサ400による検知までの経過時間(あるいは駆動パルス数)により、シリコンオイルなどが塗布されたオイル原稿(以下、原稿ともいう)であるか否かを判断している。
【0065】
原稿の分離動作時に、原稿先端を分離センサ400が検知してから、コントローラ100により、搬送時間の計測を開始する。ここで、オイル原稿の先端が突当てセンサ11に到達するまでの時間計測値をt秒とすると、コントローラ100は、時間計測値tにより突当てセンサ11からプルアウトローラ12まで搬送させるのに必要な時間Tを、式(2)を用いて演算し、その後の搬送時間を設定することになる。
【数2】
Figure 0004040394
例えば、給紙モータ102の原稿にスリップが発生していない時の搬送速度を590mm/sとすると、分離センサ400から突当てセンサ11までのスパンが19mmなので、スリップ無し時の搬送時間は、19/590=0.032秒である。この0.032秒と実測のt秒との比が、原稿の搬送遅れ率となる。また、突当てセンサ11からプルアウトローラ12までのスパンが5mmなので、5/590=0.0085秒にこの遅れ率を掛けたものが、この間の搬送設定時間Tとなる。
【0066】
以上のように、本実施形態では、原稿の繰り出し量を検出するコントローラ100は、タイマにより経過時間を計測しているので、ステップモータを使用しない自動原稿搬送装置においても、第1の実施形態と同様な効果が得られる。
【0067】
[第3の実施の形態]
図14は、本発明の第3の実施形態に係る読取り搬送のタイミングチャートを示す。これは第1の実施形態とは、スリップの発生が許容範囲内の通常原稿の突き当て量よりも、スリップ発生が多い原稿(例えば、シリコンオイルが塗布されたオイル原稿(以下、原稿ともいう)を含む)の突き当て量を増すように制御する点が相違している。なお、本実施形態の画像読取装置は、第1の実施形態と概ね同様の構成であるために、図1〜図9を用いると共に同一構成には同一符号を付与して説明を省略する。
【0068】
まず、通常原稿とスリップ発生の多い原稿とで突き当て量を変更する理由を述べる。原稿の斜行を補正するには、停止したプルアウトローラ12対のニップに原稿先端を突き当てて若干搬送の駆動をかけ続け、適当な撓みを原稿に持たせることが必要である。スリップが多い原稿を搬送するときに、所定の突き当て量が得られないと、原稿の撓みが少なくなり、甚だしい場合にはプルアウトローラ12対のニップに先端が到達しないことになる。このために、原稿の斜行補正が正常になされず、次動作としての、プルアウトローラ12対からの再給紙時に不給紙が発生することがある。なお、本発明者らの実験により、スリップが多い原稿を搬送する場合に、通常原稿よりも突き当て量を増すと、斜行補正効果が得られることが判明した。そこで、本実施形態では、通常原稿の突当て量を2mm、スリップの多い原稿の突き当て量を4mmに設定するものである。
【0069】
ここでは、第1の実施形態に準じてコントローラ100により、分離センサ400から突当てセンサ11までの原稿搬送にかかるパルス(nパルス)をカウントする。次いで、コントローラ100により、カウントされたnパルス数が所定パルス数より大か否かでスリップが発生しているか否かを判定する。このnパルス数と比較する所定パルス数は、スリップが発生しない時の理論上のパルス数(19mm/0.1mm)に、ばらつきを加味した値α(通常は数十パルス)を加算したものである。原稿にスリップが発生していない、または許容範囲内であると判断された時は、通常の搬送設定とし、プルアウトローラ12への突き当て量は2mmとなるように搬送停止される。一方、原稿にスリップが発生していると判断された時は、第1の実施形態に準じて、式(1)によりプルアウトローラ12までの搬送設定パルス(Nパルス)を求め、突き当て量の設定パルス(Mパルス)は、実際に突き当て量が4mmとなるように、スリップ率を加味した係数を乗じて設定される。具体的には、式(3)に示すように、原稿の遅れ率「n/(19mm/0.1mm)」に理論上の4mm搬送相当のパルス数「4mm/0.1mm」を乗じて突き当て量「Mパルス」を求め、搬送停止する。
【数3】
Figure 0004040394
【0070】
以上のように、本発明の第3の実施形態に係る給紙装置は、原稿がスリップして搬送されていると判断した場合に、突当てセンサ11とプルアウトローラ12との間でスリップが発生することを見込んでMパルスを設定しているので、スリップした原稿でも適正な突き当て量が設定できることになる。
【0071】
[第4の実施の形態]
図15は、本発明の第4の実施形態に係る読取り搬送のタイミングチャートを示す。これは第3の実施形態とは、給紙モータ102の搬送時間をコントローラ100で計測して読取り搬送を制御する点が相違している。なお、本実施形態の画像読取装置は、第1の実施形態と概ね同様の構成であるために、図1〜図9を用いると共に同一構成には同一符号を付与して説明を省略する。
【0072】
本実施形態では、第2の実施形態に準じてコントローラ100により、オイル原稿(以下、原稿ともいう)の遅れ率を算出し、式(2)を用いて搬送設定を行う。また、原稿がスリップしたか否かの判定基準は、理論上の搬送時間(19mm/590mm/s)にばらつきを加味した値α(通常は10msec程度)を加算したものとし、t秒の算出には式(4)を用いる。なお、突当て量の設定Mパルスは、第3の実施形態に準じて算出する。
【数4】
Figure 0004040394
【0073】
[第5の実施の形態]
図16、図17は、本発明の第5の実施形態に係る読取り搬送のタイミングチャートを示し、図16に、スリップが発生した場合の突き当て減速の様子を示し、図17に、スリップが発生しないか、許容範囲内にある場合の突き当て減速の様子を示す。これは第3、第4の実施形態とは、スリップ発生が多い原稿(例えば、シリコンオイルが塗布されたオイル原稿(以下、原稿ともいう)を含む)を突き当てて減速停止させるときの加速度を、通常原稿より小さく設定する点が相違している。なお、本実施形態の画像読取装置は、第1の実施形態と概ね同様の構成であるために、図1〜図9を用いると共に同一構成には同一符号を付与して説明を省略する。
【0074】
本実施形態において、スリップが発生したか否かの判定は、第3、第4の実施形態に準じてコントローラ100により、式(1)を用いて行われる。特に、図16に示すように、減速の傾向を示す減速カーブは、60msecを30パルスで直線的に減速停止するもので、第3、第4の実施形態に準じてコントローラ100により、式(3)を用いて算出された突き当て量の設定パルス「Mパルス」から減速分の30パルスを減算した分、定速で搬送した後、減速工程に入るものである。ここで、減速カーブは、直線的なものに限らず、(a)に点線で示すような曲線的なものでもよい。これに対し、図17に示すように、スリップが発生しないか、許容範囲内にある場合には20msecを20パルスで直線的に減速停止するものである。なお、突当てセンサ11とプルアウトローラ12との間隔は、前述したように給紙モータ102を減速して停止することが可能な程度に設定されている。
【数5】
Figure 0004040394
【0075】
以上のように、本発明の第5の実施形態に係る給紙装置は、スリップが多く発生している原稿をプルアウトローラ12に突き当てて減速停止させるときの加速度を、通常原稿よりも小さく設定しているので、前記減速カーブは緩くなり、スリップし易い原稿の追従性が向上して、より大きな斜行補正効果が期待できる。
【0076】
[第6の実施の形態]
図18は、本発明の第6の実施形態に係る読取り搬送のフローチャートを示す。これは第1の実施形態とは、スリップが発生した原稿と通常原稿とでジャム検知基準を変更する点が相違している。なお、本実施形態の画像読取装置は、第1の実施形態と概ね同様の構成であるために、図1〜図9を用いると共に同一構成には同一符号を付与して説明を省略する。
【0077】
まず、本実施形態において、スリップが発生した原稿と通常原稿とでジャム検知基準を変更する理由を述べる。これは、スリップし易い原稿と、通常原稿とを搬送可能とし、通常原稿を想定したジャム検知基準を設定した場合に、スリップが大きい原稿は常にジャム検知基準を満たすこととなり、実際にジャムが発生していないにも拘らず、装置が停止するという不都合が生じるためである。逆に、スリップが大きい原稿を想定したジャム検知基準を設定した場合には、通常原稿のジャムが検知できないこととなり、原稿に損傷を与えるおそれがあるためである。そこで、本実施形態では、スリップが発生した原稿と通常原稿とでジャム検知基準を変更するものである。
【0078】
次に、図18を用い、本実施形態の読取り搬送動作を説明する。
本実施形態では、コントローラ100により、給紙が開始された時点で(ステップS101、S102)、制御するタイマをスタートさせて(ステップS103)、分離センサ400からの原稿先端を検知した旨の情報(信号)を監視する(ステップS104、S105)。ここで、給紙開始から800msec経過しても検知情報が得られない場合には、分離センサ400未達ジャムとして装置の駆動を停止する(ステップS106)。
【0079】
次いで、分離センサ400が原稿先端を検知した時点で(ステップS104のYES)、給紙開始からのタイマの値が200msecを越えたか否かで、スリップ発生原稿か否かを判定する(ステップS107)。ここで、200msec以下で分離センサ400に到達した原稿はスリップが発生していない、あるいはスリップが少ないと判断して、再度タイマをスタートさせる(ステップS113)。この後、突当てセンサ11に原稿先端が到達するのを待ち(ステップS114)、タイマの値が60msec以内に到達しない場合(ステップS115のYES)は、突当てセンサ11未達ジャムとして装置の駆動を停止する(ステップS112)。また、タイマの値が60msec以内で、突当てセンサ11に原稿先端が到達した場合(ステップS114のYES)には、予め設定されたデフォルト搬送量(駆動量)を設定する(ステップS116)。
【0080】
また、スリップが発生したものと判断された原稿については(ステップS107のYES)、再度タイマをスタートさせる(ステップS108)。この後、突当てセンサ11に原稿先端が到達するのを待ち(ステップS109)、タイマの値が200msec以内に到達しない場合(ステップS111のYES)は、突当てセンサ11未達ジャムとして装置の駆動を停止する(ステップS112)。また、タイマの値が200msec以内で突当てセンサ11に原稿先端が到達した場合(ステップS109のYES)には、タイマ値に応じて駆動量を算出して設定する(ステップS110)。
【0081】
以上のように、本発明の第6の実施形態に係る画像読取装置は、コントローラ100(制御手段に含まれる)により、分離センサ400への到達時間から、スリップが発生した原稿と通常原稿とを識別して、タイマ値に応じてジャム検知の基準値を変更しているので、適正なジャム検知が可能となる。
【0082】
[第7の実施の形態]
図19は、本発明の第7の実施形態に係る読取り搬送のフローチャートを示す。これは第6の実施形態とは、ジャム検知をタイマの値でなく給紙モータ102のパルスカウントにより行う点が相違している。なお、本実施形態の画像読取装置は、第1の実施形態と概ね同様の構成であるために、図1〜図9を用いると共に同一構成には同一符号を付与して説明を省略する。
【0083】
本実施形態では、コントローラ100により、給紙が開始された時点で(ステップS201、S202)、給紙モータ102のパルスカウントをスタートさせて(ステップS203)、分離センサ400からの原稿先端を検知した旨の情報(信号)を監視する(ステップS204、S209)。ここで、給紙開始からのパルスカウント値が「4720」を超えても検知情報が得られない場合には、分離センサ400未達ジャムとして装置の駆動を停止する(ステップS210)。
【0084】
次いで、分離センサ400が原稿先端を検知した時点で(ステップS204のYES)、給紙開始からのパルスカウント値が「1180」を超えたか否かで、スリップ発生原稿か否かを判定する(ステップS205)。ここで、パルスカウント値が「1180」以下で分離センサ400に到達した原稿はスリップが発生していない、あるいはスリップが少ないと判断して、再度パルスカウントをスタートさせる(ステップS214)。この後、突当てセンサ11に原稿先端が到達するのを待ち(ステップS215)、パルスカウント値が「350」以内に到達しない場合(ステップS213のYES)は、突当てセンサ11未達ジャムとして装置の駆動を停止する(ステップS212)。また、パルスカウント値が「350」以内で、突当てセンサ11に原稿先端が到達した場合(ステップS215のYES)には、予め設定されたデフォルト搬送量(駆動量)を設定する(ステップS216)。
【0085】
また、スリップが発生したものと判断された原稿については(ステップS205のYES)、再度パルスカウントをスタートさせる(ステップS206)。この後、突当てセンサ11に原稿先端が到達するのを待ち(ステップS207)、パルスカウント値が「1180」以内に到達しない場合(ステップS211のYES)は、突当てセンサ11未達ジャムとして装置の駆動を停止する(ステップS212)。また、パルスカウント値が「1180」以内で突当てセンサ11に原稿先端が到達した場合(ステップS207のYES)には、パルスカウント値に応じて駆動量を算出して設定する(ステップS208)。
【0086】
以上のように、本発明の第7の実施形態に係る画像読取装置は、コントローラ100(制御手段に含まれる)により、分離センサ400へ到達するまでのパルスカウント値から、スリップが発生した原稿と通常原稿とを識別して、パルスカウント値に応じてジャム検知の基準値を変更しているので、給紙の速度を変更しても、ジャム検知の基準を変えずに制御できる。
【0087】
なお、上述した第1乃至第7の実施形態では、分離センサ400と突当てセンサ11の二つのセンサを用いた場合について説明したが、本発明はこの他に三つ以上のセンサを用いても同様の効果が得られるものである。さらに、センサの数を三つ以上に増やすことにより、複数の区間の搬送量や搬送速度の実測値が得られるので、各区間の搬送量や搬送速度を比較し、その比較結果に応じて、より緻密に搬送線速を計測することが可能になり、原稿の搬送速度に対応したより良い搬送制御が可能となる。
【0088】
このような給紙装置には、載置されたシートを呼び出し、1枚ずつ分離して供給する給紙手段(分離給送部Bを含む)と、前記給紙手段を駆動する駆動手段(給紙モータ102を含む)と、前記給紙手段のシート搬送方向下流で、連続する複数区間における駆動量を比較し、この比較結果に応じてシート搬送を制御する制御手段(コントローラ100)とを設けてもよい。
【0089】
例えば、分離給送部Bからプルアウトローラ12までの間に、第1乃至第3のセンサを順に設け、第1のセンサ(第1の検知手段に含まれる)と第2のセンサ(第2の検知手段に含まれる)との間を第1の区間とし、第2のセンサと第3のセンサ(第3の検知手段に含まれる)との間を第2の区間とした場合には、第1の区間と第2の区間との搬送速度の比較パターンは、四つのパターンで表される。すなわち、第1の区間と第2の区間ともにスリップしていない第1のパターンと、第1の区間でスリップし、第2の区間でスリップしていない第2のパターンと、第1の区間でスリップしておらず、第2の区間でスリップしている第3のパターンと、第1の区間と第2の区間ともにスリップしている第のパターンとに分けられる。ここで、第2のパターン、第3のパターン、第4のパターン転の順に原稿の搬送量を増加させるよう、給紙モータ102の駆動量を設定することにより、さらに精細な搬送制御が可能となる。より具体的には、第3のセンサより搬送方向下流でのスリップ増加を見込んだ係数を3種類用意し、前述したNパルスとMパルスとの和を算出するときに、いずれかの係数を乗じてもよい。なお、前述した第1乃至第3の区間は、オイルの塗布ムラなどによる速度変動の影響を受けない程度に短い方が好ましい。
【0090】
さらに、他の複数区間設定方法として、ピックアップローラ7から分離センサ400までを第1の区間とし、分離センサ400から突当てセンサ11までを第2の区間としてもよい。この場合には、ピックアップ動作の開始から分離センサ400検出までの経過時間やパルスカウントを用い、第1の区間の駆動量を算出することとなる。
【0091】
以上説明したように、本発明は給紙手段(分離給送部を含む)のシート搬送方向下流で、二つまたは三つのセンサを用いて駆動量を実測し、実測された駆動量に応じてシート搬送を制御することにより、実際のシート搬送速度に合わせた駆動量の設定ができるという優れた効果を有する給紙装置を提供することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る画像読取装置の要部断面図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る分離センサ及び突当てセンサの配置を示す斜視図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る駆動部(給紙モータを含む)の斜視図である。
【図4】本発明の第1の実施形態に係る駆動部(読取モータを含む)の斜視図である。
【図5】本発明の第1の実施形態に係る駆動部(下反転モータを含む)の斜視図である。
【図6】本発明の第1の実施形態に係る駆動部(排紙モータを含む)の斜視図である。
【図7】本発明の第1の実施形態に係る駆動部(上反転モータを含む)の斜視図である。
【図8】本発明の第1の実施形態に係る制御部を示すブロック図である。
【図9】本発明の第1の実施形態に係る分離給送部の部品間隔を説明する図である。
【図10】オイル塗布原稿と普通紙原稿との分離時間の相違を説明する図である。
【図11】本発明の第1の実施形態に係る区間1と区間2におけるオイル塗布原稿の給紙時間の相違を説明する図である。
【図12】本発明の第1の実施形態に係る分離給送時の信号を示すタイミングチャートである。
【図13】本発明の第2の実施形態に係る分離給送時の信号を示すタイミングチャートである。
【図14】本発明の第3の実施形態に係る分離給送時の信号を示すタイミングチャートである。
【図15】本発明の第4の実施形態に係る分離給送時の信号を示すタイミングチャートである。
【図16】本発明の第5の実施形態に係る分離給送時(スリップ搬送時)の信号を示すタイミングチャートである。
【図17】本発明の第5の実施形態に係る分離給送時(通常搬送時)の信号を示すタイミングチャートである。
【図18】本発明の第6の実施形態に係る分離給送方法を示すフローチャートである。
【図19】本発明の第7の実施形態に係る分離給送方法を示すフローチャートである。
【符号の説明】
1 原稿(原稿束)
2 原稿テーブル
3 可動原稿テーブル
7 ピックアップローラ
9 給紙ベルト
10 分離ローラ
11 突当てセンサ
12 プルアウトローラ
12a プルアウト駆動ローラ
12b プルアウト従動ローラ
400 分離センサ
A 原稿セット部
B 分離給送部
C レジスト部

Claims (5)

  1. 載置されたシートを呼び出し、1枚ずつ分離して供給する給紙手段と、
    前記給紙手段を駆動する駆動手段と、
    前記給紙手段のシート搬送方向下流における第1の検知位置で、搬送されてくる前記シートを検知する第1の検知手段と、
    第1の検知手段のシート搬送方向下流における第2の検知位置で、搬送されてくるシートを検知する第2の検知手段と、
    第2の検知手段のシート搬送方向下流における第3の検知位置で、搬送されてくるシートを検知する第3の検知手段と、
    第3の検知手段のシート搬送方向下流で、分離給紙後のシートを所定位置へ搬送するシート搬送手段と、
    前記駆動手段の駆動量を設定して搬送制御する制御手段とを設け、
    前記制御手段は、第1乃至第3の検知手段の検知情報により、第1の検知手段と第2の検知手段との間の第1の搬送速度、及び第2の検知手段と第3の検知手段との間の第2の搬送速度を求め、第1の搬送速度と第2の搬送速度とを比較し、当該比較結果に応じて、第3の検知手段から前記シート搬送手段までの駆動量を設定することを特徴とするシート搬送装置。
  2. 前記第3の検知手段は、前記制御手段によって第3の検知手段から前記シート搬送手段までの間の搬送制御が行えるよう、前記シート搬送手段の近傍に設けられたことを特徴とする請求項1に記載のシート搬送装置。
  3. 前記第1の検知手段と第2の検知手段と第3の検知手段とは、シート搬送方向の同一線上に配置されたことを特徴とする請求項1または2に記載のシート搬送装置。
  4. 前記制御手段は、シート1枚ずつについて、前記給紙手段でシートが呼び出されてから、前記シートが第1の検知手段で検知されるまでの経過時間により、前記シートがスリップし易いシートか否かを判断することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のシート搬送装置。
  5. 請求項1乃至4のいずれかに記載のシート搬送装置を具備したことを特徴とする画像読取装置。
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