以下,本発明にかかる画像読取装置を具体化した実施の形態について,添付図面を参照しつつ詳細に説明する。本形態は,画像読取機能を備えたスキャナに本発明を適用したものである。
まず,第1の形態のスキャナ100の電気的構成について,図1のブロック図を利用して説明する。本形態のスキャナ100は,図1に示すように,CPU31と,ROM32と,RAM33と,NVRAM(不揮発性RAM)34と,ASIC35とを含むコントローラ30を備えている。また,スキャナ100は,読取ヘッド21と,ADF(自動原稿搬送装置)22と,原稿検出部221と,位置検出部222と,ネットワークインターフェース37と,USBインターフェース38と,操作パネル40とを備え,これらがコントローラ30に電気的に接続されている。
ROM32には,スキャナ100を制御するための各種制御プログラムや各種設定,初期値等が記憶されている。RAM33は,各種制御プログラムが読み出される作業領域として,あるいは,データを一時的に記憶する記憶領域として利用される。CPU31は,ROM32から読み出した制御プログラムに従って,その処理結果をRAM33またはNVRAM34に記憶させながら,スキャナ100の各構成要素を制御する。
CPU31は,制御部の一例である。なお,コントローラ30が制御部であってもよいし,ASIC35が制御部であってもよい。なお,図1中のコントローラ30は,CPU31等,スキャナ100の制御に利用されるハードウェアを纏めた総称であって,実際にスキャナ100に存在する単一のハードウェアを表すとは限らない。
ネットワークインターフェース37は,LANケーブル等を用いてネットワークを介して接続された装置と通信を行うためのハードウェアである。USBインターフェース38は,USBケーブル等を介して接続された装置と通信を行うためのハードウェアである。操作パネル40は,液晶ディスプレイおよび各種のボタン群などを備え,ユーザ向けの各種の表示を行うとともに,ユーザによる指示の入力を受け付けるためのハードウェアである。
続いて,本形態のスキャナ100における各部の構成について,図2の断面図を参照して説明する。本形態のスキャナ100は,図2に示すように,読取ヘッド21と,ADF22と,原稿トレイ28と,原稿排出トレイ29とを有している。読取ヘッド21は,イメージセンサ211と,キャリッジ212とを有し,図2中の矢印A方向に移動可能に設けられている。イメージセンサ211は,複数の受光素子を有し,原稿からの反射光量に応じた信号を出力する。なお,本形態のスキャナ100は,カラー読み取りが可能であっても,モノクロ読み取りのみであってもよい。
ADF22は,原稿トレイ28にセットされた原稿を搬送する装置である。スキャナ100の内部には,図2に示すように,搬送路26が設けられている。ADF22は,原稿トレイ28にセットされた原稿の1枚を,搬送路26に沿って搬送し,原稿排出トレイ29に排出する。搬送路26は,読取ヘッド21に対向する位置を経由する。スキャナ100は,ADF22にて原稿を搬送することにより,原稿を読取ヘッド21に対して相対的に移動させ,読取ヘッド21にて原稿の画像を読み取る。読取ヘッド21は,読取部の一例である。
読取ヘッド21は,キャリッジ212によって,原稿の搬送方向に沿って移動可能である。具体的には,図2中に二点鎖線で示す第1位置と,同図中に実線で示す第2位置との間で移動可能となっている。第2位置は,原稿の搬送方向について,第1位置よりも下流側である。そして,スキャナ100は,読取ヘッド21を移動させることにより,ADF22にて搬送される原稿を,第1位置にて読み取ることも,第2位置にて読み取ることもできる。つまり,スキャナ100は,読取ヘッド21を第1位置に配置した場合には,第1位置に対応する位置の画像を読み取り,読取ヘッド21を第2位置に配置した場合には,第2位置に対応する位置の画像を読み取る。スキャナ100は,いずれの位置でも,原稿を適切に読み取ることができる。第1位置は第1の読取位置の一例であり,第2位置は第2の読取位置の一例である。
さらに,スキャナ100は,図2に示すように,原稿検出部221と,位置検出部222とを備えている。原稿検出部221は,原稿トレイ28にセットされている原稿の有無に応じた信号を出力する。位置検出部222は,原稿の搬送方向について,原稿検出部221より下流に位置し,読取ヘッド21の第1位置より上流側の位置における原稿の有無に応じた信号を出力する。スキャナ100は,原稿検出部221と位置検出部222との出力信号に基づいて,それぞれの位置での原稿の有無を検知する。位置検出部222は,センサの一例である。
続いて,本形態のスキャナ100における読取動作について説明する。スキャナ100は,原稿トレイ28に原稿がセットされた状態で読み取り開始の指示を受け付けると,原稿のうちの最上の1枚をADF22にて搬送開始する。また,読取ヘッド21を上流側の第1位置に位置させる。
そして,スキャナ100は,搬送開始から原稿が第1位置に到達するまでの搬送量を取得する。原稿が第1位置に到達したか否かについては,第1位置に配置されている読取ヘッド21の出力信号に基づいて判断する。また,搬送量は,例えば,搬送開始からの経過時間,ADF22に含まれる各種の搬送ローラの回転角度またはローラ表面の進行量,搬送ローラを回転させるためのモータを稼動させた稼動時間,ステッピングモータであればその稼働ステップ数に基づいて取得できる。
さらに,スキャナ100は,取得した搬送量と予め記憶している基準の搬送量とを比較し,原稿の搬送に成功したか否かを判断する。ここで,原稿の搬送に成功したとは,原稿がスリップすることなく,正常に搬送されたことを意味する。つまり,取得した搬送量と,基準の搬送量との差が許容範囲内であれば,原稿の搬送に成功したと判断する。一方,取得した搬送量が,基準の搬送量より許容範囲を超えて大きい場合には,スリップが発生していると推測され,搬送に成功していないと判断する。また,所定の時間が経過しても原稿が第1位置に到達しない場合も,搬送に成功していないと判断する。
スキャナ100は,搬送に成功していないと判断した場合には,その原稿の搬送速度を遅い速度に設定する。遅い速度で搬送することにより,スリップの発生を低減できる可能性が高まる。例えば,取得した搬送量と基準の搬送量との差分に基づいて,以後の搬送速度を決定する。つまり,取得した搬送量と基準の搬送量との差分が大きい場合には,差分が小さい場合に比較して,搬送速度をより遅い速度とする。
搬送速度が決定したら,読取ヘッド21を第2位置へ移動させる。そして,決定した搬送速度で原稿を搬送して,第2位置の読取ヘッド21に対向する位置を通過させることにより,その原稿の画像を読取ヘッド21にて読み取らせる。すなわち,原稿の搬送中にスリップが発生していると想定される場合には,搬送速度を遅くして,スリップの発生し難い速度で読み取る。
続いて,本形態のスキャナ100にて前述した読取動作を実現する第1読取処理の手順について,図3のフローチャートを参照して説明する。この第1読取処理は,スキャナ100にて読取指示を受け付けたことを契機に,CPU31にて実行される。
第1読取処理では,まず,ADF22の原稿搬送速度をデフォルト値とする(S101)。搬送速度のデフォルト値は,例えば,読取指示の設定内容等に応じて予め決定されている。そして,デフォルト値の搬送速度にて原稿の搬送を開始するとともに,搬送開始からの搬送量のカウントを開始する(S102)。
また,読取ヘッド21を第1位置に移動させる(S103)。読取ヘッド21が既に第1位置にあれば,移動の必要はない。また,S102とS103とは,逆順でもよいし,同時に実行してもよい。
そして,第1位置の読取ヘッド21にて原稿が検知されたか否かを判断する(S105)。つまり,読取ヘッド21にて画像を読み取らせ,読み取った画像に基づいて,原稿の先端部が第1位置に到達したか否かを判断する。例えば,正常に搬送されている場合に,読取ヘッド21の読取位置に原稿が到達すると予測されるタイミングの少し前から,読取ヘッド21での読取動作を開始する。そして,原稿が読取ヘッド21の読取位置に到達することで受光光量が変化し,読取ヘッド21の出力信号のレベルが変化したら,原稿が到達したと判断する。
このステップにて読み取った画像は第1画像の一例である。そして,S105の処理は,検知処理の一例である。なお,第1位置における読み取りは,原稿が検知できればよく,読取指示の設定に従わなくてよい。例えば,読取ヘッド21の一部分のみを用いての読み取りでもよいし,読取指示よりも低解像度での読み取りでもよい。
読取ヘッド21にて原稿が検知されていないと判断した場合には(S105:NO),検知されるまで搬送を継続する。そして,読取ヘッド21にて原稿が検知されたと判断した場合には(S105:YES),原稿の搬送を一旦停止させて,ここまでの搬送量を取得する(S106)。つまり,S102にてカウント開始した搬送量に基づいて,S102の時点からS106の時点までの搬送量を取得する。S106にて原稿の搬送を停止させる処理は,停止処理の一例である。
次に,読取ヘッド21を第2位置へ移動させる(S108)。この第2位置は,第1位置の読取ヘッド21にて検知されて停止している原稿の先端位置よりも下流側である。S108の処理は,移動処理の一例である。
そして,S106にて取得した搬送量を,予め記憶している基準量と比較し,基準量より大きいか否かを判断する(S109)。基準量は,搬送開始から第1位置まで原稿を搬送するための搬送量の基準の値である。搬送量として,モータのステップ数等の搬送速度に関わらない量を用いる場合は,基準量は予め決めた所定の値である。一方,搬送時間等の搬送速度に応じる量を用いる場合は,基準量は読取指示の設定内容によって異なる値であり,予め記憶している複数の基準量から読み取り設定に応じて選択する。
そして,搬送量が基準量より大きいと判断したことに応じて(S109:YES),搬送量に基づいて搬送速度を決定する(S110)。つまり,搬送量が基準量より大きい場合は,スリップが発生している可能性が高いので,搬送速度を低下させる。特に,搬送量と基準量との差分の大小に基づいて,搬送速度を低下させる幅を決定する。例えば,差分が所定の範囲内であれば,搬送速度を1段階低下させた速度とし,所定の範囲を超えて大きい場合には,搬送速度を2段階低下させた速度とする。
一方,搬送量が基準量より大きくないと判断した場合には(S109:NO),搬送速度を変更しない。つまり,S109にてNOの場合は,搬送に成功していると判断されるので,搬送速度をデフォルト値のままとする。S109の処理は,判断処理の一例であり,S110の処理は,低減処理の一例である。また,搬送量は特定稼動量の一例であり,基準量は基準の稼動量の一例であり,差分は差分稼動量の一例である。なお,S109とS110との組と,S108との実行の順序は,逆順でもよい。
そして,決定した搬送速度で,搬送を再開する(S112)。S112の処理は,再開処理の一例である。
さらに,原稿が第2位置の読取ヘッド21に対向する位置に到達したら,読取ヘッド21にて原稿の画像の読み取りを開始する(S113)。具体的には,搬送の再開タイミングから,読取ヘッド21の読取位置に原稿が到達すると予測されるタイミングの少し前に読取ヘッド21にて読み取りを開始する。そして,原稿の先端部を検出したと判断した後の出力信号に基づいて,画像データを生成する。
S113では,受け付けた画像読取指示の内容に基づいて,読み取った画像データを出力する。例えば,画像ファイルを生成して,外部装置に送信する。S113にて読取ヘッド21に読み取らせた画像は第2画像の一例であり,S113にて画像データを出力する処理は出力処理の一例である。
そして,原稿トレイ28に次の原稿があるか否かを判断する(S115)。スキャナ100は,原稿検出部221の出力信号に基づいて,S115の判断を行う。S115の処理は,後続判断処理の一例である。
そして,原稿トレイ28に原稿があると判断した場合には(S115:YES),S112にて搬送した搬送速度にて,次の原稿の搬送を開始する。原稿トレイ28にまとめてセットされる原稿は,同種の用紙であることが多いので,同じ搬送速度とすることで良好に搬送できる可能性が高まる。一方,原稿トレイ28に原稿がないと判断した場合には(S115:NO),第1読取処理を終了する。
なお,第1読取処理では,S102にて,原稿搬送開始からの搬送量をカウントしているが,位置検出部222にて原稿が検知されたタイミングから搬送量のカウントを開始するとしてもよい。その場合,S106では,位置検出部222の出力信号に基づいて,原稿の先端部が位置検出部222の検出位置を通過したと判断したタイミングから,第1位置にて原稿が検知されるまでの搬送量が取得される。そこで,S109では,取得された搬送量を,この間の搬送に想定される基準の搬送量と比較すればよい。
位置検出部222の出力信号に基づいて搬送量をカウントすれば,搬送開始から位置検出部222までの搬送状況の影響を受け難い。つまり,読取ヘッド21に近い区間での搬送状況に基づいて搬送速度が決定されるので,読取ヘッド21での読み取り時のスリップを抑制できる可能性が高い。一方,原稿搬送開始からの搬送量を用いる場合には,位置検出部222は無くてもよい。位置検出部222の無い装置とすれば,よりシンプルな構成のスキャナ100とできる。
また,前述のように,位置検出部222を搬送量のカウント開始タイミングとする場合には,原稿搬送開始から位置検出部222までの間の搬送量をも別に取得して,さらに利用してもよい。つまり,原稿の搬送を開始してから位置検出部222にて検知されるまでの搬送量に基づいて,搬送の成否を判断する前判断処理を加えてもよい。そして,前判断処理にて,搬送に成功していないと判断された場合には,搬送速度を低下させるとしてもよい。例えば,原稿の搬送開始から所定の時間が経過しても位置検出部222にて検知されない場合には,搬送速度を低下させるとしてもよい。
以上,詳細に説明したように,本形態のスキャナ100は,読取ヘッド21を用いて第1位置にて原稿を検知させ,第1位置までの搬送量を取得する。そして,取得した搬送量に基づいて,原稿の搬送の成否を判断する。第2位置の直前までの搬送量に基づいて,原稿搬送の成否を判断するため,高精度に原稿の搬送の成否を判断できる可能性が高い。そして,原稿の搬送に成功していないと判断した場合には,搬送速度を遅くすることによりスリップを低減させる。そして,読取ヘッド21を第2位置に移動させて,遅くした搬送速度で搬送される原稿を第2位置にて読み取らせる。これにより,第2位置での読み取り時における原稿搬送中のスリップの発生を抑制し,読取画像の乱れの低減が期待できる。
また,本形態では,位置検出部222を有しないスキャナ100であっても,読取ヘッド21の検出結果に基づいてスリップの発生の有無を判断できる。さらに,読取ヘッド21の検出結果を用いることで,原稿の斜行に影響され難い。例えば,原稿の位置をセンサにて検出する場合には,搬送方向に直交する方向の1点のみを検出することが多く,原稿が斜行していると正確な検出が困難となる。それに対して,本形態のスキャナ100では,読取ヘッド21を使用していることから,搬送方向に直交する方向の全体を検出することができ,原稿の位置を正確に把握できる。従って,原稿の搬送の成否をより確実に判断でき,適切な搬送速度の変更が期待できる。
続いて,第2の形態について説明する。本形態のスキャナ101は,第1の形態のスキャナ100と比較して,2個の読取ヘッドを備えている点で異なっている。第1の形態のスキャナ100と同様の構成については,同じ符号を付して説明を省略する。
本形態のスキャナ101は,図4に示すように,原稿トレイ28から原稿排出トレイ29までの搬送路26中に,2つの読取ヘッド25と21とを備えている。読取ヘッド25は,読取ヘッド21よりも原稿の搬送方向について上流側に配置されている。また,読取ヘッド25は,搬送路26上の原稿の表裏面について,読取ヘッド21とは逆の面に対向するように配置されている。
本形態のスキャナ101は,2つの読取ヘッド21,25を備えているので,それぞれの位置にて原稿を読み取ることができる。そして,読取ヘッド21と25との出力信号に基づいて,それぞれの読取位置に,原稿の先端部が到達したか否かを判断できる。
そこで,本形態のスキャナ101は,第1の形態のスキャナ100における第1位置の読取ヘッド21にて原稿を読み取る処理に代えて,読取ヘッド25にて原稿を読み取る処理を実行する。例えば,図3の第1読取処理のうち,S103とS108との移動の処理を削除し,S105では読取ヘッド25を使用して読み取り,S113では読取ヘッド21を使用して読み取る。つまり,上流側の読取ヘッド25にて検知処理を実行し,下流側の読取ヘッド21にて出力処理を実行する。このようにすることで,第1の形態のスキャナ100と同様の効果を得ることができる。
本形態のスキャナ101では,上流側の読取ヘッド25は第1読取部の一例であり,読取ヘッド25による読取位置は第1の読取位置の一例である。また,下流側の読取ヘッド21は第2読取部の一例であり,読取ヘッド21による読取位置は第2の読取位置の一例である。なお,本形態の読取ヘッド21と25とは,第1の形態のスキャナ100とは異なり,いずれも移動可能でなくてよい。つまり,本形態の読取ヘッド21,25は,イメージセンサを有し,キャリッジを有さないものとしてよい。
さらに,本形態のスキャナ101は,第1の形態のスキャナ100と同様に,原稿検出部221と,位置検出部222とを備えている。本形態のスキャナ101は,これらに加え,上流検出部223を有している。上流検出部223は,原稿の搬送方向について,原稿検出部221より下流の位置であって,読取ヘッド25より上流側の位置における原稿の有無に応じた信号を出力する。
そして,本形態のスキャナ101は,2つの読取ヘッド21と25とを,原稿の搬送方向について,ある程度の間隔を空けて配置している。そのため,例えば,はがきサイズなどの小サイズの原稿であれば,下流側の読取ヘッド21に原稿の先端部が到達する前に,その原稿の後端部が上流検出部223の検出位置を通過する。つまり,本形態のスキャナ101では,上流検出部223の検出位置と,下流側の読取ヘッド21の読取位置との間の搬送路26の距離は,少なくともはがきの短辺の長さより大きい。
このようになっていることにより,本形態のスキャナ101は,読取ヘッド21にて原稿の読み取りを開始する前に,上流検出部223を用いて,原稿の搬送方向のサイズがはがきサイズ等の特定サイズであるか否かを判断できる。さらに,読取ヘッド21にて原稿の読み取りを開始する前に,上流側の読取ヘッド25にて読み取ることで,原稿の搬送方向に直交する方向のサイズを取得することができる。
そこで,本形態のスキャナ101は,原稿のサイズがはがきサイズ等の特定サイズであると判断した場合には,読み取り動作の各設定を特定サイズ用の設定とする。例えば,原稿の搬送速度を,普通紙の搬送速度より遅い速度とする。また,読み取りの色設定を厚紙用の設定とする。厚紙の原稿では,普通紙の原稿に比較して,読取ヘッド21から離れて通過しがちである。スキャナ101は,厚紙用の色設定を予め記憶しており,原稿のサイズが特定サイズである場合には,厚紙用の色設定を読み出して使用する。
続いて,本形態のスキャナ101における読取動作を実現する第2読取処理の手順について,図5のフローチャートを参照して説明する。この第2読取処理は,スキャナ101にて読取指示を受け付けたことを契機に,CPU31にて実行される。第1読取処理と同じ処理については,同じ符号を付して説明を省略する。
第1読取処理では,まず,ADF22の原稿搬送速度をデフォルト値とする(S101)。そして,第1調整処理(S201),第2調整処理(S202),第3調整処理(S203)を順に実行する。第1調整処理は,搬送開始から上流検出部223までの搬送状況に基づいて搬送速度を調整する処理である。第2調整処理は,上流検出部223から上流側の読取ヘッド25までの搬送状況に基づいて搬送速度を調整する処理である。第3調整処理は,原稿のサイズが特定サイズである場合に搬送速度を調整する処理である。各処理の詳細については後述する。
次に,図5のS201の第1調整処理の手順について,図6のフローチャートを参照して説明する。第1調整処理を開始すると,スキャナ101は,原稿の搬送を開始し,第1搬送量のカウントを開始する(S301)。第1搬送量は,例えば,搬送開始からの原稿の搬送量である。
そして,上流検出部223の検出位置に原稿があるか否かを判断する(S303)。つまり,上流検出部223の出力信号に基づいて,原稿が検知されたか否かを判断する。そして,原稿がないと判断した場合には(S303:NO),原稿が検知されるまで搬送を続ける。
上流検出部223の検出位置に原稿があると判断したら(S303:YES),第2搬送量のカウントを開始する(S305)。第2搬送量は,上流検出部223での原稿検知タイミングからの原稿の搬送量である。
一方,第1搬送量のカウントは,上流検出部223にて原稿が検知された時点で停止する。つまり,第1搬送量は,原稿の搬送開始から上流検出部223までの搬送量である。そして,第1搬送量が予め記憶している第1基準量より大きいか否かを判断する(S306)。つまり,第1搬送量に基づき,原稿の搬送開始から上流検出部223での原稿検知までの搬送状況を判断する。第1基準量は,原稿の搬送開始から上流検出部223にて原稿が検知されるまでの基準の搬送量である。搬送量として搬送速度によって異なる量を用いる場合は,第1基準量は,読取設定によって異なる。
そして,第1搬送量が第1基準量より大きくないと判断した場合には(S306:NO),第1調整処理を終了する。この場合,スキャナ101は,搬送速度を図5のS101にて設定したデフォルト値のままとして,継続して原稿を搬送している。
一方,第1搬送量が第1基準量より大きいと判断した場合には(S306:YES),原稿の搬送を停止する(S308)。そして,第1搬送量に基づいて,搬送速度を決定する(S309)。つまり,S306の第1搬送量と第1基準量との差分の大小に基づいて,搬送速度を低下させる。さらに,決定した搬送速度で,原稿の搬送を再開し(S310),第1調整処理を終了する。なお,S306にてYESの場合,S305にて開始する第2搬送量のカウントは,S310にて搬送を再開した時点からの搬送量となる。
すなわち,本形態のスキャナ101は,この第1調整処理にて,第1搬送量に基づいて,原稿の搬送開始タイミングから上流検出部223までの搬送の成否を判断する。そして,搬送開始から上流検出部223までの搬送の成否に応じて,以後の搬送速度を調整する。例えば,搬送に成功していないと判断した場合には,搬送速度を低下させる。第1調整処理のS306の処理は,前判断処理の一例である。
次に,図5のS202の第2調整処理の手順について,図7のフローチャートを参照して説明する。この第2調整処理を開始する時点では,原稿の先端部は,少なくとも上流検出部223による検出位置を通過している。第2調整処理では,まず,上流側の読取ヘッド25にて,原稿を検知したか否かを判断する(S401)。
例えば,上流検出部223による検出タイミングに基づいて,正常に搬送されている場合に読取ヘッド25の読取位置に原稿が到達すると予測されるタイミングの少し前から,読取ヘッド25での読取動作を開始する。そして,読取ヘッド25の出力信号のレベルが変化したら,原稿を検知したと判断する。そして,検知していない場合には(S401:NO),検知するまで搬送を継続する。
上流側の読取ヘッド25にて原稿を検知したことに応じて(S401:YES),読取ヘッド25による原稿の読み取り結果に基づいて,原稿幅を取得する(S402)。原稿幅は,原稿の搬送方向に直交する方向の原稿のサイズである。例えば,原稿の幅方向の端部に現れる影の位置に基づいて,原稿のエッジの位置を取得する。
そして,第1調整処理のS305にてカウント開始した第2搬送量を,予め記憶している第2基準量と比較し,第2搬送量が第2基準量より大きいか否かを判断する(S404)。この時点での第2搬送量は,上流検出部223から読取ヘッド25までの原稿の搬送量である。なお,第2搬送量は,後の処理にてさらに使用するため,この時点ではカウントを停止しない。
そして,第2搬送量が第2基準量より大きいと判断した場合には(S404:YES),原稿の搬送を停止する(S308)。そして,第2搬送量に基づいて,搬送速度を決定する(S406)。つまり,S404の第2搬送量と第2基準量との差分の大小に基づいて,搬送速度を低下させる。さらに,決定した搬送速度で,原稿の搬送を再開する(S310)。
そして,S310の後,または,第2搬送量が第2基準量より大きくないと判断した場合には(S404:NO),第2搬送量のカウントと原稿の搬送を継続する。そして,上流検出部223にて原稿が検知されているか否かを判断する(S408)。検知されていると判断した場合には(S408:YES),位置検出部222にて原稿が検知されているか否かを判断する(S409)。
位置検出部222にて原稿が検知されていないと判断した場合には(S409:NO),さらに継続して搬送する。そして,上流検出部223にて原稿が検知されていないと判断した場合には(S408:NO),原稿の後端部が上流検出部223の位置を通過したことがわかる。そこで,この時点での第2搬送量に基づいて,原稿長を取得し(S410),第2調整処理を終了する。なお,原稿長は,原稿の搬送方向の原稿のサイズである。
一方,原稿が,上流検出部223の位置を通過するより前に,位置検出部222にて原稿が検知されたと判断した場合には(S409:YES),原稿長が特定サイズより大きいサイズであることがわかる。この場合には,原稿のサイズのうち原稿長は不明のままとして,第2調整処理を終了する。なお,S402にて取得された原稿幅に基づいて,原稿長を推測してもよい。
すなわち,本形態のスキャナ101は,この第2調整処理にて,第2搬送量に基づいて,原稿が上流検出部223にて検知されてから上流側の読取ヘッド25にて検知されるまでの搬送の成否を判断する。第2搬送量は,上流検出部223にて原稿が検知された所定のタイミングから,上流側の読取ヘッド25にて原稿を検知するまでの特定稼動量の一例である。また,スキャナ101は,第2調整処理のS402とS410にて原稿のサイズを取得する。このS402とS410との処理は,取得処理の一例である。
次に,図5のS203の第3調整処理の手順について,図8のフローチャートを参照して説明する。この第3調整処理を開始する時点では,原稿が特定サイズであれば,原稿の後端は上流検出部223による検出位置を通過している。原稿が特定サイズより大きい原稿であれば,原稿の先端部は位置検出部222に到達している。第3調整処理では,まず,第2調整処理にて取得した原稿のサイズが,特定サイズであるか否かを判断する(S501)。
特定サイズは,例えば,はがきサイズ,写真L版サイズである。このような小さいサイズで厚紙の原稿では,搬送時にスリップしやすく,また読取ヘッド21からやや浮いた位置を通過しやすいことがわかっている。そこで,原稿のサイズが特定サイズであると判断した場合には(S501:YES),原稿の搬送を停止し(S308),特定サイズ用の各種の設定を適用する。
具体的に,搬送パラメータの設定を,特定サイズ用の設定とする(S503)。例えば,搬送速度を,予め決めた特定サイズ用の速度とする。特定サイズ用の速度は,普通紙の搬送速度より遅い。また,読み取りの色設定を,特定サイズ用の設定とする(S505)。例えば,ガンマ補正値,明暗設定値,コントラスト設定値を,予め決めた特定サイズ用の設定値とする。このようにすることで,原稿が読取ヘッド21から浮いた位置を通過した場合でも,適切に読み取ることができる。なお,S503とS505との処理は,逆順でもよいし,並行して実行してもよい。
そして,設定した搬送パラメータを使用して,原稿の搬送を再開し(S310),第3調整処理を終了する。また,原稿のサイズが不明であるか,または,特定サイズではないサイズであると判断した場合には(S501:NO),設定を変更することなく,原稿の搬送を継続し,第3調整処理を終了する。
すなわち,本形態のスキャナ101は,この第3調整処理にて,原稿のサイズが特定サイズであるか否かに基づいて,搬送パラメータと色設定とを決定する。第3調整処理のS501は,サイズ判断処理の一例である。また,S503の処理は第2低減処理の一例であり,S505の処理は色変更処理の一例である。
図5に戻り,第1調整処理(S201)と第2調整処理(S202)と第3調整処理(S203)とが終了したので,下流側の読取ヘッド21にて原稿の画像の読み取りを開始する(S205)。さらに,受け付けた画像読取指示の内容に基づいて,読み取った画像データを出力する。S205にて読取ヘッド21に読み取らせた画像は第2画像の一例であり,S205にて画像データを出力する処理は出力処理の一例である。
そして,原稿トレイ28に次の原稿があるか否かを判断する(S115)。原稿トレイ28に原稿があると判断した場合には(S115:YES),第1調整処理を再開し,決定している搬送速度にて,次の原稿の搬送を開始する。一方,原稿トレイ28に原稿がないと判断した場合には(S115:NO),第2読取処理を終了する。
以上,詳細に説明したように,本形態のスキャナ101は,2つの読取ヘッド21と25とを有し,上流側の読取ヘッド25にて読み取らせた画像に基づいて搬送の成否を判断する。そして,原稿の搬送に成功していないと判断した場合には,搬送速度を遅くすることによりスリップを低減させる。さらに,遅くした搬送速度で搬送される原稿を下流側の読取ヘッド21にて読み取らせる。従って,第1の形態のスキャナ100と同様に,読取ヘッド21での読み取り時における原稿搬送中のスリップの発生を抑制し,読取画像の乱れの低減が期待できる。また,本形態では,第1調整処理と第2調整処理とにおいて,それぞれ異なる区間で,搬送状況を2回判断するので,第1の形態に比較してより高精度な搬送制御が期待できる。さらに,本形態では,上流側の読取ヘッド25にて原稿を検出したときに原稿幅を取得しているので,原稿の通過を待たずに原稿サイズの推定が可能である。従って,上流側の読取ヘッド25と下流側の読取ヘッド21との間の距離が短くても,原稿が特定サイズであるか否かを推定できる。
なお,本実施の形態は単なる例示にすぎず,本発明を何ら限定するものではない。したがって本発明は当然に,その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良,変形が可能である。例えば,スキャナに限らず,複写機,複合機,FAX装置等,画像読取機能を備えるものであれば適用可能である。
また,例えば,出力処理としては,ファイル出力に限らず,プリンタ等のデバイスへの出力であってもよい。また,例えば,スリップを低減する低減制御としては,搬送速度の低下に限らず,搬送トルクの上昇でもよい。また,搬送速度の低下量は,搬送量と基準量との差分の大小に応じて決定するものに限らず,一律に低下させるとしてもよい。
また,例えば,第1の形態のスキャナ100における位置検出部222,および,第2の形態のスキャナ101における位置検出部222や上流検出部223は,いずれも無くてもよい。これらが無くても,搬送開始からの搬送量に基づいて,原稿の搬送の成否を判断できる。
また,例えば,図3のS105,図6のS303,図7のS401の各判断にタイムアウトを設けてもよい。つまり,所定の時間が経過しても,各位置で原稿を検知しない場合には,その上流側でスリップが発生していると判断できる。従って,所定の時間が経過したら原稿の検知を待つのをやめて,低減処理を実行するとしてもよい。
また,例えば,S106では,第1の形態のスキャナ100にて,読取ヘッド21を移動させる間に,原稿の搬送を停止するとしたが,必ずしも停止しなくてもよい。例えば,原稿が到達するより前に読取ヘッド21の移動が完了するのであれば,原稿の搬送と並行して読取ヘッド21を移動させてもよい。また,S308では,第2の形態のスキャナ101にて,搬送速度を変更させる場合に,搬送を停止するとしているが,停止させなくても搬送速度の変更が可能であれば,停止させなくてもよい。
また,例えば,原稿の先端部が読取ヘッドの読取位置に到達したか否かの判断は,読取ヘッドにて原稿のエッジによる影を検出したか否かに基づいて行ってもよい。
また,例えば,低減制御として,搬送速度を低下させるとしたが,トルクを上昇させてもよい。例えば,DCモータをPWM制御にて稼動させることにより搬送する装置であれば,PWM制御のゲインを大きくすることでトルクが上昇する。このようにしても,スリップの発生を低減させることができる。
また,例えば,第1の形態のスキャナ100において,連続して複数枚の原稿を読み取る場合には,1枚目の原稿を読み取る際に原稿のサイズを取得してもよい。そして,原稿のサイズが特定サイズであれば,2枚目の原稿からは,特定サイズ用の設定を適用するとしてもよい。
また,実施の形態に開示されている処理は,単一のCPU,複数のCPU,ASICなどのハードウェア,またはそれらの組み合わせで実行されてもよい。また,実施の形態に開示されている処理は,その処理を実行するためのプログラムを記録した記録媒体,または方法等の種々の態様で実現することができる。