以下,本発明を具体化した実施の形態について,添付図面を参照しつつ詳細に説明する。本形態は,図1に示すデジタル複合機である画像形成装置1に本発明を適用したものである。
図1の画像形成装置1では,装置中の上部に原稿読取装置2が配置されている。原稿読取装置2の下方にプリンター部3が配置されている。プリンター部3には,感光体ドラムその他の,トナーにより画像を形成するための公知の構成が内蔵されている。プリンター部3と原稿読取装置2との間には隙間があり,プリンター部3の上面が排紙トレイ4となっている。プリンター部3のさらに下方には給紙部5が配置されている。画像形成装置1は全体として,給紙部5から供給された用紙に対し,原稿読取装置2で原稿から取得した画像データに基づいて,プリンター部3で画像形成して排紙トレイ4上に排出できるように構成されている。
また,画像形成装置1は,図1に示す原稿読取装置2の手前側に,操作部310と表示部314とを有する。操作部310には複数の操作キーが設けられており,ユーザーはこの操作キーにより,各種の指示,文字や数字などのデータの入力を行う。また表示部314には,ユーザーが選択するメニューの表示や,原稿読取装置2により取得した画像データに関する情報の表示などがなされる。
画像形成装置1における原稿読取装置2の断面図を図2に示す。図2に示されるように原稿読取装置2は,IR(Image Reader)部200と,ADF250とにより構成されている。IR部200は,画像の読取りを行う装置である。ADF250は,複数枚載置された原稿群から,IR部200での画像の読取りのために原稿を1枚ずつ,読取位置257へ通過させる装置である。
IR部200は,IRモジュール201,駆動伝達部202,IRモーター203,ホームポジションセンサー208,読取ガラス209,原稿ガラス204,シェーディング板205を有している。IRモジュール201は,露光ランプ206とイメージセンサー207とを有している。露光ランプ206は,読取り対象の原稿に対して光を照射するものである。イメージセンサー207は,露光ランプ206より原稿に向かって照射された光の反射光を受光することにより,その原稿の画像情報を取得するものである。
駆動伝達部202は,例えばベルトやワイヤーなどであり,IRモジュール201とIRモーター203とを接続している。これにより,IRモジュール201は,IRモーター203の駆動力により,図2中左右方向に移動することができる。ホームポジションセンサー208は,IRモジュール201の移動の図2中左端付近に配置されており,IRモジュール201の移動の基準位置を規定するためのものである。すなわち,IRモジュール201の移動位置は,ホームポジションセンサー208から,IRモーター203の回転量や回転方向によって制御される。
読取ガラス209は,ADF250により原稿が搬送されてくる読取位置257の,図2中下部に配置されている。ADF250を用いた原稿読取りを行う際には,IRモジュール201のイメージセンサー207が読取ガラス209の真下に位置する。
原稿ガラス204は,ブック状原稿などADF250での読取りに不向きな原稿を載置するための大面積のガラス板である。この原稿ガラス204を用いて原稿の読取り(いわゆる置き撮り)を行う際には,IRモジュール201が原稿ガラス204に沿って走査する。
シェーディング板205は,IRモジュール201が基準白出力を取得するためのものである。つまり,IRモジュール201がシェーディング板205の真下に位置してその読取りを行うことにより,イメージセンサー207の画素のばらつきを補正する処理を行う。
ADF250は,複数の原稿Pを載置することのできる原稿載置台251を備えている。原稿載置台251は,原稿Pの搬送の前方側(図2中左側)が少し低くなるように傾斜して配置されている。原稿載置台251に載置された原稿Pは,原稿検出センサー263によって検出される。
原稿載置台251の図中左端部には,ストッパー252が設けられている。ストッパー252は,原稿載置台251に載置された原稿Pの先端位置を規制するための部材である。ストッパー252は可動であり,突出した状態と待避した状態との2通りの状態を取ることができる。図2中のストッパー252は突出した状態であり,原稿載置台251に載置された原稿Pの先端位置を規制する状態である。原稿載置台251から原稿Pが実際に搬送されるときには,ストッパー252は図2に破線で示す位置に回転し,突出は解除されることとなる。
ADF250には,原稿載置台251から取り出された原稿Pを読取位置257へと導くための給紙搬送路270と,読取位置257を通過した原稿Pを原稿排出台290へと排出するための排紙搬送路271とが設けられている。原稿排出台290は,読取りが完了して排出された原稿Pを載置するためものである。
ピックアップローラー262および給紙ローラー253は,原稿載置台251に載置された原稿Pを,その最上部のものより1枚ずつ,給紙搬送路270に給紙するためのローラーである。図2におけるピックアップローラー262の位置は,原稿載置台251の原稿Pを給紙していないときの位置である。ピックアップローラー262は,原稿Pの給紙時には,図2に破線で示す位置へと移動することによって最上部の原稿Pに接触しつつ回転する。
また,給紙搬送路270の途中には,給紙センサー254,デスキューセンサー265,搬送ローラー255,読取前センサー256がこの順で配置されている。搬送ローラー255は,搬送されてきた原稿Pの傾きを補正するためのローラーである。給紙センサー254,デスキューセンサー265,読取前センサー256は,給紙搬送路270の当該位置における原稿Pの有無を検知するセンサーである。具体的には,給紙搬送路270を搬送される原稿Pの先端が当該位置に到達,あるいは,原稿Pの後端が当該位置を通過したことを検出するものである。
給紙センサー254は,例えば,原稿Pの先端の検出によって給紙が開始されたことを制御系に認識させる役割などを有する。デスキューセンサー265は,原稿Pの先端の検出によって搬送ローラー255に原稿Pの傾き補正を実施させる役割などを有する。読取前センサー256は,搬送ローラー255を通過して傾きの補正された原稿Pの先端の当該位置への到達を制御系に認識させることにより,原稿Pの先端の読取位置257への突入タイミングの基準となる検知を行う役割などを有する。また,上記いずれかのセンサーには,原稿Pの後端の検出によって次の原稿の取り出しを開始させる役割や,原稿Pの先端や後端の検出によってその原稿Pのサイズを制御系に認識させる役割などを持たせてもよい。
排紙搬送路271の途中には,排紙ローラー258,排出ローラー260が設けられている。ADF250にはまた,両面読取りのための原稿返送路280が設けられている。原稿返送路280は,図2に示すように,排紙搬送路271における排紙ローラー258と排出ローラー260との間の位置と,給紙搬送路270における搬送ローラー255とを結んでいる。
また,ADF250は,ADFモーター261を有している。ADFモーター261は,ピックアップローラー262,給紙ローラー253,搬送ローラー255,排紙ローラー258,排出ローラー260と接続されており,これらのローラーの駆動源である。すなわち,本形態のADF250における原稿Pの搬送はすべて,このADFモーター261の駆動力によって行われる。通常搬送時の各ローラーはそれぞれ,ADFモーター261により,図2に矢印で示す方向に回転駆動される。
また,ピックアップローラー262および給紙ローラー253のADFモーター261との接続の間には,給紙クラッチ267が設けられている。搬送ローラー255のADFモーター261との接続の間には,搬送クラッチ266が設けられている。給紙クラッチ267および搬送クラッチ266は,ADFモーター261と各ローラーとを接続状態あるいは切断状態とするためのものである。すなわち,搬送クラッチ266が連結している場合には,ADFモーター261と搬送ローラー255とが接続状態となる。そして,ADFモーター261の駆動力が搬送ローラー255へと伝達されることにより,搬送ローラー255が回転する。また,搬送クラッチ266が分離している場合には,ADFモーター261と搬送ローラー255とが切断状態となる。この場合,ADFモーター261の駆動力は搬送ローラー255へと伝達されないため,搬送ローラー255の回転は停止する。給紙クラッチ267についても同様である。
排紙ローラー258および排出ローラー260については常時,ADFモーター261と接続されている。このため,ADFモーター261が動作している間,排紙ローラー258と排出ローラー260とは回転駆動される。なお,両面読取りを行う場合には,排紙搬送路271を搬送される原稿Pの後端が反転位置259に到達したときに,ADFモーター261を通常搬送時と逆方向に回転させる。そして,排出ローラー260が図2の矢印とは反対方向に回転駆動されることにより,原稿Pは原稿返送路280へと導かれる。
続いて,画像形成装置1の全体の制御系について,図3のブロック図により簡単に説明する。図3のブロック図に見るように,この制御系は制御装置311を中心に構成されている。制御装置311はデータ書き込み部やCPUやRAMを有している。制御装置311には,不揮発メモリ312,操作部310,データ通信制御部309,データ入出力部308,表示部314,画像メモリ313が接続されている。このうちのデータ入出力部308を介して,ネットワーク315や,USBポート316,その他の外部メモリポート317,318へ繋がっている。
操作部310や表示部314は,図1において前述したように,原稿読取装置2の手前側の斜め上向きの面上に位置している。また,不揮発メモリ312には,ADF250の各ローラーやセンサー間の距離,ADFモーター261の動作時における各ローラーによる原稿Pの搬送速度,ホームポジションセンサー208から読取位置257までの距離など,設計上既知の値が記憶されている。
図3中の制御装置311は,原稿読取装置2やプリンター部3,給紙部5の制御をも行うものである。制御装置311はまた,ファクシミリ部302や通信制御部303を介して外部の電話回線との交信も可能となっている。
ここで,原稿読取装置2による,ADF250を用いた原稿の読取り動作の一例について簡単に説明する。ADF250を用いた原稿の読取り時には,IRモジュール201のイメージセンサー207を,読取位置257の真下に位置させる。そのため,IRモジュール201を,基準位置であるホームポジションセンサー208まで移動させた後,イメージセンサー207が読取位置257の真下となるように移動させる。
次に,給紙クラッチ267を連結するとともに,ADFモーター261の駆動を開始する。これにより,原稿載置台251に載置されている原稿Pは,最上部のものから1枚ずつ,ピックアップローラー262によって給紙搬送路270へと引き出される。引き出された原稿Pは,給紙ローラー253の搬送によって給紙センサー254,デスキューセンサー265をこの順で通過し,搬送ローラー255へと到達する。
原稿Pの搬送方向の先端が搬送ローラー255へ到達するときには,搬送クラッチ266は分離されている。このため,原稿Pの先端は,搬送ローラー255へ到達するとともに停止する。ただし,給紙クラッチ267は連結されているため,原稿Pの後端側については給紙ローラー253によって搬送される。よって,原稿Pは,先端が停止したまま後端側が搬送されることにより,給紙ローラー253と搬送ローラー255との間でループを形成する。これにより,原稿Pの先端の傾きが補正される。原稿Pに所定量のループが形成されたとき,搬送クラッチ266は連結される。この原稿Pの傾きの補正を行うことを,デスキュー制御という。
デスキュー制御において形成されるループ量は,原稿Pの先端のデスキューセンサー265への到達タイミングから,デスキューセンサー265の位置から搬送ローラー255の位置までの距離,給紙ローラー253による原稿Pの搬送速度などにより制御することができる。
デスキュー制御後,搬送クラッチ266が連結されることにより,搬送ローラー255による原稿Pの搬送が開始される。これにより,原稿Pは,読取前センサー256を通過して読取位置257に到達する。原稿Pの先端が読取位置257に到達したとき,IRモジュール201は画像の読取りを開始する。また,原稿Pの後端が読取位置257を通過したとき,IRモジュール201による画像の読取りは終了する。
IRモジュール201による画像の読取りの開始タイミングは,原稿Pの先端の読取前センサー256への到達タイミングから,搬送ローラー255による原稿Pの搬送速度により制御される。また画像の読取の終了タイミングは,原稿Pの後端の読取前センサー256の通過タイミングから,搬送ローラー255による原稿Pの搬送速度により制御される。さらに,読取位置257を通過した原稿Pは,排紙ローラー258,排出ローラー260によって排紙搬送路271を通過し,原稿排出台290へと排出される。
そして,例えば,IRモジュール201が読取った原稿Pの画像データは,これをプリンター部3により画像形成を行う場合には,所定の形式に変換後,プリンター部3に出力されるまでの間,画像メモリ313に一時的に格納される。また例えば,画像データは,ファクシミリ部302によって外部機器などへ送信される。
上記のような画像データの処理に要する時間は,画像データのデータサイズや,通信I/F仕様などに依存する。そして,ADF250を用いて原稿の読取り動作を連続して行う場合,前原稿に係る画像データの処理中には,次の原稿を読取位置257に通過させることができない。次の原稿の画像の,IRモジュール201による読取りが開始できないからである。IRモジュール201が画像の読取りを開始できない状態で次の原稿を読取位置257に通過させた場合,次の原稿の読取位置257への到達タイミングで読取りが開始できないことにより,画像データの欠損などの読取不良が生じてしまう。
よって,本形態のADF250は,次の原稿の先端が読取位置257に到達する前に,前原稿から読取った画像データの処理を完了させることができる場合には,次の原稿を停止させることなく読取位置257を通過させる。一方,前原稿から読取った画像データの処理が完了する前に,搬送を続行させたときの次の原稿の先端が読取位置257に到達してしまう場合,次の原稿を給紙搬送路270で停止させる。すなわち,次の原稿を読取位置257よりも上流側で停止させる。原稿は,搬送クラッチ266や給紙クラッチ267を分離させることにより,給紙搬送路270で停止させることができる。また,ADFモーター261を停止させることによっても,原稿を給紙搬送路270で停止させることができる。
なお,原稿を停止さておく時間が比較的短い場合には,搬送クラッチ266および給紙クラッチ267により原稿を停止させることが好ましい。つまり,短時間だけ原稿を停止させておく場合には,ADFモーター261を動作させたまま,搬送クラッチ266および給紙クラッチ267を分離させて原稿の搬送を停止させることが好ましい。一方,原稿を停止させておく時間が比較的長い場合には,ADFモーター261により原稿を停止させることが好ましい。つまり長時間,原稿を停止させておく場合には,搬送クラッチ266および給紙クラッチ267を連結したまま,ADFモーター261の動作を停止させて原稿の搬送を停止させることが好ましい。
動作しているモーターを停止せるためには減速時間が必要である。さらに,一旦停止したモーターを再び動作させるためには,モーターを加速させるための加速時間も必要となる。また,停止中のモーターの励磁を解除する場合にはさらに,励磁をかけた後のホールド制御を行うためのホールド時間も必要となる。つまり,ADFモーター261は停止後,再び動作を開始して原稿の搬送を再開させるまでに長い時間がかかってしまう。これに対し,クラッチは,分離した状態から連結することにより,直ちにADFモーター261の駆動力を搬送ローラー255などに伝達し,原稿の搬送を再開させることができる。つまり,搬送クラッチ266や給紙クラッチ267により原稿を停止させた方が,原稿の搬送を再開できるまでの時間が短く,画像読取りの生産性を高めることができる。
しかし,搬送クラッチ266や給紙クラッチ267により原稿を停止させる場合,ADFモーター261は動作させたままである。つまり,原稿を搬送していない間にも電力を消費することとなる。また,原稿が停止しているにもかかわらずモーターの動作音が継続している状態が長時間続いた場合,ユーザーはこれを不快に感じ,さらには装置の故障であると認識してしまうおそれがある。よって,原稿を停止さておく時間が比較的短い場合には搬送クラッチ266および給紙クラッチ267により,原稿を停止させておく時間が比較的長い場合にはADFモーター261により,原稿の停止および再開を制御することが好ましいのである。
そして以下,本形態の画像形成装置1に係る,ADF250を用いた原稿の連続読取り動作を行う際の原稿の搬送制御について,図4から図6のフローチャートにより説明する。図4に示すように,画像形成装置1では,ADF250を用いた原稿の読取りの指示を受けると,まず,原稿載置台251に原稿Pが載置されていることを原稿検出センサー263によって検出する(S101)。原稿載置台251に原稿Pがない場合には(S101:NO),これをユーザーに知らせるとともに,ADF250による原稿の読取り動作を終了する。
原稿載置台251に原稿Pがある場合には,(S101:YES)原稿Pの給紙を行う(S102)。原稿載置台251より給紙された原稿Pの先端が給紙センサー254に到達したとき(S103:YES),その原稿Pが連続読取り動作に係る2枚目以降のものであるか否かを判断する(S104)。2枚目以降でない場合(S104:No),すなわち1枚目である場合には,上記のステップS101へと戻って2枚目の給紙に備える。また,1枚目の原稿Pについては,読取位置257へと搬送してその画像のIRモジュール201による読取りを行う。なお,2枚目以降の原稿Pの給紙開始(S102)のタイミングは,原稿Pの前の給紙に係る前原稿P−1の後端が,例えば給紙センサー254を通過したときなどに予め定められている。
一方,原稿Pが2枚目以降のものである場合(S104:YES),前原稿P−1と,給紙した原稿Pとの紙間時間Tintを算出する(S105)。紙間時間Tintは,給紙搬送路270上などにおける任意の位置を,前原稿P−1の後端が通過してから次の原稿Pの先端が到達するまでの時間のことである。本形態では,前原稿P−1の後端の通過と,次の原稿Pの先端の到達とを,給紙センサー254によって検出することにより紙間時間Tintを算出する。なお,紙間時間Tintは,デスキューセンサー265を用いることによっても算出することができる。
次に,前原稿P−1の後端が読取前センサー256を通過したとき(S106:YES),前原稿P−1の後端が読取位置257を通過したときの,前原稿P−1の画像データの残り処理時間Tlftを算出する。すなわち,残り処理時間Tlftは,前原稿P−1のIRモジュール201による読取りがすべて完了したときにおける,その画像データの処理が完了するまでに要する残りの時間のことである。
なお,本形態におけるIRモジュール201による画像データの読取りは,原稿をその搬送方向について複数分割したラインごとに読取ることによって行う。よって,残り処理時間の算出は,前原稿P−1の後端が読取前センサー256を通過したときを基準として,以下の式(1)により算出される。
Tlft=Tpr×(LNttl−LNwt)/LNwt−T1 (1)
ここで,
Tpr :前原稿P−1の先端が読取位置257に到達してからの経過時間
LNttl:前原稿P−1のすべての読取りライン数
LNwt :読取ったライン数のうち,画像データの処理が完了しているライン数
T1 :前原稿P−1の後端が読取位置257を通過するまでの時間
また,上記式(1)中のLNttlは,以下の式(2)により算出される。
LNttl=LNrd+LNlf (2)
ここで,
LNrd:前原稿P−1の読取りの完了しているライン数
LNlf:前原稿P−1の残りの読取りライン数
なお,制御装置311は,上記式(1),(2)のLNwt,LNrdについて,IRモジュール201が読取った画像データを受信してこれを処理することにより把握している。Tpr,T1,LNlfについても,読取前センサー256による原稿の検出やADFモーター261のパルス数などから,制御装置311によって把握されている。
次に,算出した残り処理時間Tlftと,紙間時間Tintとの比較を行う(S108)。この比較において,紙間時間Tintが残り処理時間Tlftよりも長い場合には(S108:NO),給紙搬送路270を搬送中の次の原稿Pを停止させることなく,読取位置257へと通過させることができる。次の原稿Pの先端が読取位置257へ到達するときには,前原稿P−1の画像データの処理が完了しているからである。よって,次の原稿Pを停止させることなく読取位置257へと通過させつつ,その画像のIRモジュール201による読取りを行う。また,ステップS101に戻り,次の給紙に備える。
一方,残り処理時間Tlftが紙間時間Tint以上である場合には(S108:YES),次の原稿Pを給紙搬送路270で停止させなければならない。次の原稿Pを停止させなかった場合,その先端が読取位置257に到達したときにはまだ,前原稿P−1の画像データの処理が完了しておらず,次の原稿Pの画像のIRモジュール201による読取りを開始することができないからである。よって,この場合には,次の原稿Pを停止させなければならない原稿停止時間Tselを算出し(S109),その原稿停止時間Tselとモーター再開時間Tmtrとの比較を行う(S110)。
原稿停止時間Tselは,ステップS107で算出した残り処理時間Tlftより,ステップS105で算出した紙間時間Tintを減ずることにより算出する。また,モーター再開時間Tmtrは,前述した減速時間や加速時間,ホールド時間を考慮して予め定められている閾値時間である。つまり,モーター再開時間Tmtrは,動作しているADFモーター261が停止するための減速を開始してから,一旦停止したADFモーター261が再び動作を開始するまでに要する時間である。なお,ステップS110において原稿停止時間Tselと比較する閾値時間としてはモーター再開時間Tmtrに限られず,例えば,モーター再開時間Tmtrよりも長い時間としてもよい。
そして,本形態においては,原稿停止時間Tselがモーター再開時間Tmtr以下である場合には(S110:YES),搬送クラッチ266などを分離させることにより次の原稿Pを停止させるクラッチ停止制御を行う(S200)。次の原稿Pを停止させておく時間が比較的短いからである。また,次の原稿Pを停止させておく時間より,ADFモーター261が停止して再び動作するまでに要する時間の方が長いからである。つまり,ADFモーター261を停止させることによって,画像読取りの生産性を低下させてしまうからである。
一方,原稿停止時間Tselがモーター再開時間Tmtrよりも長い場合には(S110:NO),次の原稿Pを停止させておく時間が比較的長いと判断し,ADFモーター261を停止させるモーター停止制御を行う(S300)。
ここで,ステップS200におけるクラッチ停止制御について説明する。クラッチ停止制御においては,原稿Pの先端が読取前センサー256の直前の位置で停止するようなタイミングで,搬送クラッチ266および給紙クラッチ267を分離させる。クラッチの分離や連結には,ソフトウェアでは管理できない応答時間が生じる。つまり,クラッチの分離の指示後,実際にクラッチが分離されるまでには多少の遅れが生じる。連結においても同様である。また,搬送クラッチ266および給紙クラッチ267が連結されている間の原稿Pの位置は,各センサーやADFモーター261のパルス数によって把握されている。しかし,クラッチの分離後,搬送されていた原稿Pはその惰性によりわずかに進んでしまう。これら応答遅れや惰性により進んだ原稿Pの位置は,ADFモーター261のパルス数などにより把握することができない。このため,搬送の再開後の原稿Pの正確な位置を読取前センサー256によって検出させるため,読取前センサー256よりも上流側で停止させる。
また,画像読取りの生産性を向上させるためには,原稿Pの先端を,できるだけ読取位置257に近い位置で停止させることが好ましい。よって,読取位置257の上流側で最も読取位置257に近い読取前センサー256の直前で停止させることが好ましいのである。なお,本形態では,原稿Pの先端が読取前センサー256よりも上流側に予め定められたクラッチ分離位置に到達したときに,搬送クラッチ266と給紙クラッチ267とを分離させる。クラッチ分離位置は,上記のクラッチの分離に係る応答遅れや,クラッチの分離後に惰性によって原稿Pが進む距離を考慮して定められている。このため,原稿Pは,クラッチの分離指示の後わずかに進み,その先端が読取前センサー256に到達しない直前の位置で停止する。なお,クラッチ停止制御中においてもADFモーター261の動作は継続しているため,排紙搬送路271における前原稿P−1の原稿排出台290への排出は続行される。
そして,クラッチ停止制御においては,まず,図5のフローチャートに示すように,次の原稿Pの先端がクラッチ分離位置に到達したか否かの判断を行う(S201)。原稿Pの先端がクラッチ分離位置に到達したとき(S201:YES),搬送クラッチ266と給紙クラッチ267とを分離させる(S202)。また,クラッチの分離指示とともにクラッチ分離積算時間Tcntの計測を開始し(S203),クラッチ分離積算時間Tcntと原稿停止時間Tselとの比較を開始する(S204)。クラッチ分離積算時間Tcntが原稿停止時間Tsel以上となったとき(S204:YES),搬送クラッチ266および給紙クラッチ267を連結させる(S205)。これにより,停止していた原稿Pの搬送が再開され,原稿Pは,読取前センサー256と読取位置257とをこの順で通過する。搬送の再開された原稿Pの先端は読取前センサー256で正確に検出されるため,その読取位置257への突入タイミングとIRモジュール201による画像の読取り開始のタイミングとを正確に合わせることができる。
次に,図4のステップS300におけるモーター停止制御について説明する。モーター停止制御においては,原稿Pの先端が読取位置257の直前で停止するように,ADFモーター261を停止させる。モーター停止制御においては,搬送クラッチ266などが連結されたままであるため,ADFモーター261のパルス数によって原稿Pの位置を把握することが可能である。このため,搬送の再開された原稿Pの位置を,読取前センサー256によって検出する必要がない。よって,画像読取りの生産性を高めるため,原稿Pの先端が読取前センサー256よりも下流側の読取位置257の直前の位置で停止するようにADFモーター261を停止させる。このADFモーター261の停止により停止する原稿Pの先端の位置を,モーター停止位置とする。
そして,モーター停止制御においては,まず,図6のフローチャートに示すように,次の原稿Pの先端が読取前センサー256に到達したか否かの判断を行う(S301)。原稿Pの先端が読取前センサー256に到達したとき(S301:YES),モーター停止時間Tstpを算出する(S302)。モーター停止時間Tstpは,原稿停止時間Tselからモーター再開時間Tmtrを減ずることにより算出する。また,原稿Pの先端がモーター停止位置で停止するようにADFモーター261を減速,停止させる(S303)。
さらに,モーターが停止するとともにモーター停止積算時間Tcntの計測を開始し(S304),モーター停止積算時間Tcntとモーター停止時間Tstpとの比較を開始する(S305)。モーター停止積算時間Tcntがモーター停止時間Tstp以上となったとき(S305:YES),ADFモーター261の動作を再開させる(S306)。これにより,停止していた原稿Pの搬送を再開させる。搬送の再開された原稿Pの先端はADFモーター261のパルス数より正確に把握されているため,その読取位置257への突入タイミングとIRモジュール201による画像の読取り開始のタイミングとを正確に合わせることができる。
また,図4のフローチャートに示すように,クラッチ停止制御(S200)あるいはモーター停止制御(S300)の後,ステップS101に戻って次の給紙に備える。なお,上記の原稿の搬送制御と並行して,原稿の先端が搬送ローラー255に到達したときのデスキュー制御なども行われる。
以上詳細に説明したように,本形態の原稿読取装置2は,1つのADFモーター261のみによって原稿の搬送を行う安価な原稿読取装置である。また,ADF250による連続読取中に原稿を停止させなければならないとき,その停止時間が比較的短い場合には,搬送クラッチ266と給紙クラッチ267とを分離させるクラッチ停止制御により原稿を停止させる。一方,原稿を停止させておく時間が比較的長い場合には,ADFモーター261を停止させるモーター停止制御により原稿を停止させる。これにより,電力消費が低減されているとともに,安価で画像読取りの生産性の高い原稿読取装置およびその原稿読取装置を備える画像形成装置が実現されている。
なお,本実施の形態は単なる例示にすぎず,本発明を何ら限定するものではない。従って本発明は当然に,その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良,変形が可能である。例えば,本発明はデジタル複合機に限らず,ファックス機やスキャナー機などにも適用可能である。また,プリンター部は,トナーの代わりにインクを用いるものであってもよい。