JP4022975B2 - 車両用空調装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、冷風と温風の風量割合の調整により吹出空気温度を制御する、いわゆるエアミックスタイプの車両用空調装置において、特に、通風系の低圧損化を図った改良構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、車両用空調装置においては、車室内前部の計器盤近辺に空調ユニットを配置するに際して、冷却用蒸発器、加熱用ヒータコア、吹出モード切替機構等を内蔵する空調ユニットを、計器盤のうち車両左右方向の略中央部に配置するとともに、この空調ユニットに空調風を送風する送風機ユニットを空調ユニット側方の助手席側にオフセット配置するレイアウトのものが実用化されている。
【0003】
そして、加熱用ヒータコアを通過して加熱された温風と、加熱用ヒータコアのバイパス路を通過する冷風とをエアミックスチャンバー部において混合するとともに、この温風と冷風との風量割合をエアミックスドアにて調整する。エアミックスチャンバー部で混合され、温度調整された空調風を車両窓ガラス内面に吹き出すためのデフロスタ吹出開口部は空調ユニットの上方部に配置され、乗員の足元部に空調風を吹き出すためのフット吹出開口部は空調ユニットの下方部に配置されている。また、乗員の頭部側に空調風を吹き出すためのフェイス吹出開口部は空調ユニットの上方部に配置されている。
【0004】
ところで、車両車用空調装置においては、一般に、夏期の乗車直後の急速冷房を実現するための冷房能力を確保するために、加熱用ヒータコアのバイパス路とエアミックスチャンバー部とフェイス吹出開口部との間をなるべく曲がりの少ない直線的な流路にて連通して、フェイス吹出開口部を開口するフェイスモード時の通風系圧損を低減させている。これにより、フェイスモード時の風量アップを図って、冷房能力を増大させている。従って、エアミックスチャンバー部は必然的に、空調ユニットの上方側(フェイス吹出開口部の入口部)に配置することになる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記従来装置では、どの吹出開口部が開口する場合でも常に1つの共通のエアミックスチャンバー部で冷温風を混合して温度調整し、このエアミックスチャンバー部からの空調風を上記の各吹出開口部に分配しているので、フットモード時には通風系の圧損が大きくなるという不具合がある。
【0006】
すなわち、フット吹出開口部を開口するフットモード時には、空調ユニット内の下方側に位置している加熱用ヒータコアを通過した温風を一旦、空調ユニット内の上方側のエアミックスチャンバー部に送り込み、ここで冷温風を混合して温度調整する。しかるのち、空調風を再び空調ユニット内の下方側に送り込み、下方側に位置しているフット吹出開口部に流入させている。そのため、加熱用ヒータコアからエアミックスチャンバー部を経由してフット吹出開口部に至るまでの空調風(温風)通路の曲がりが大きくなって、フットモード時の圧損が大きくなるという不具合がある。
【0007】
また、1つの共通のエアミックスチャンバー部に対して、フェイス吹出開口部の流路およびフット吹出開口部の流路を隣接して配置するので、この両吹出開口部の開口面積が互いにスペース的制約を受けて小さくなってしまう。このことも、通風系の圧損を増大する原因となっている。
以上の結果、通風系の圧損増大により、送風機の大型化を招くとともに、送風騒音が大きくなるという不具合を生じる。
【0008】
これに対し、特開昭62−160910号公報では、エアミックスチャンバー部をフェイス吹出開口部とフット吹出開口部の入口側にそれぞれ設置して、フェイス吹出開口部とフット吹出開口部からの吹出空気温度を独立に制御する上下独立温度制御機能を発揮するものが提案されているが、通風系の圧損低減については特に考慮されていない。すなわち、冷却用熱交換器の下流に加熱用熱交換器を直交的に配置して、冷却用熱交換器を通過した空気が加熱用熱交換器付近で大きく屈曲して流れる構成であり、通風系の圧損増大を招く原因となっている。
【0009】
また、上記公報のものでは、後席側への吹出空気の温度制御、後席側への通風路の圧損低減等については一切開示されていない。
本発明は上記点に鑑みてなされたもので、エアミックスタイプの車両用空調装置の通風系の低圧損化を図ることを目的とする。
また、本発明は、エアミックスタイプの車両用空調装置の小型化を図ることを他の目的とする。
【0010】
また、本発明は、後席側への吹出空気の温度制御、後席側への通風路の圧損低減が可能な車両用空調装置を提供することを他の目的とする。
【0017】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明では、通風路を形成する空調ケース(14)と、
空調ケース(14)内に設置され、空気を冷却する冷却用熱交換器(15)と、
空調ケース(14)内の冷却用熱交換器(15)の下流側に設置され、空気を加熱する加熱用熱交換器(16)と、
空調ケース(14)内において加熱用熱交換器(16)の一方の側方に形成され、冷風をバイパスして流す第1バイパス路(17)と、
空調ケース(14)内において加熱用熱交換器(16)の他方の側方に形成され、冷風をバイパスして流す第2バイパス路(18)と、
空調ケース(14)内に形成され、第1バイパス路(17)からの冷風と加熱用熱交換器(16)からの温風とを混合する第1エアミックスチャンバー部(31)と、
空調ケース(14)内で、加熱用熱交換器(16)の上流側に配置され、第1バイパス路(17)を通過する冷風と加熱用熱交換器(16)を通過する温風との風量割合を調整する第1エアミックス手段(26)と、
空調ケース(14)内において加熱用熱交換器(16)の直後の部位に形成され、第2バイパス路(18)からの冷風と加熱用熱交換器(16)からの温風とを混合する第2エアミックスチャンバー部(36a、36b)と、
空調ケース(14)内で、加熱用熱交換器(16)の直後の部位に配置され、第2バイパス路(18)からの冷風と加熱用熱交換器(16)からの温風との風量割合を調整する第2エアミックス手段(37a、37b)と、
第1エアミックスチャンバー部(31)で混合された空調風を車室内乗員の上半身側に向かって吹き出す前席用フェイス吹出開口部(20、21)と、
第2エアミックスチャンバー部(36a、36b)で混合された空調風を車室内乗員の足元部に向かって吹き出す前席用フット吹出開口部(22)とを備えている。
【0018】
さらに、空調ケース(14)内の冷風を導入する後席用冷風通路(39)と、加熱用熱交換器(16)からの温風を導入する後席用温風通路(33、35)と、後席用冷風通路(39)からの冷風と後席用温風通路(33、35)からの温風とを混合する後席用エアミックスチャンバー部(40)と、後席用冷風通路(39)からの冷風と後席用温風通路(33、35)からの温風との風量割合を調整する後席用エアミックス手段(41)と、この後席用エアミックスチャンバー部(40)で混合された空調風を後席側に向かって吹き出す後席用吹出開口部(23)とを備えており、
後席用エアミックスチャンバー部(40)を加熱用熱交換器(16)を通過する温風流れ方向の延長方向に配置することを特徴としている。
【0019】
これによると、第1エアミックスチャンバー部(31)からの空調風を前席用フェイス吹出開口部(20、21)に、一方、第2エアミックスチャンバー部(36a、36b)からの空調風を前席用フット吹出開口部(22)に、それぞれ別の流路で流すことができる。
そのため、前席用フェイス吹出開口部(20、21)と前席用フット吹出開口部(22)とをそれぞれ専用のエアミックスチャンバー部に隣接して設置することにより、この両吹出開口部を互いに引き離して設置できるので、この両吹出開口部の開口面積を拡大できる。
しかも、加熱用熱交換器(16)直後の温風がほぼ直線的に前席用フット吹出開口部側の第2エアミックスチャンバー部(36a、36b)に流入するので、前席用フット吹出開口部(22)に至るまでの空調風(温風)の通路曲がりをほとんどなくすことができ、通路長さを大幅に短縮できる。
【0020】
これに加えて、後席用エアミックス手段(41)により車室内の後席側の空間に対する空調風の温度調整を行って、後席側の空調を良好に行うことができる。しかも、後席用冷風通路(39)からの冷風と後席用温風通路(33、35)からの温風とを混合する後席用エアミックスチャンバー部(40)を加熱用熱交換器(16)を通過する温風流れ方向の延長方向に配置しているから、加熱用熱交換器(16)直後の温風をほぼ直線的(図8参照)に後席用エアミックスチャンバー部(40)に流入させることができる。従って、加熱用熱交換器(16)から後席用エアミックスチャンバー部(40)に至る温風通路長さを短縮して圧損を低減でき、後席側への風量を増加できる。
【0021】
請求項2記載の発明では、加熱用熱交換器(16)直後の領域の一部の部位に、加熱用熱交換器(16)からの温風を第2エアミックスチャンバー部(36a、36b)に導くフット用温風通路(32a、32b)を配置するとともに、加熱用熱交換器(16)直後の領域の他の部位に、後席用温風通路(33、35)をフット用温風通路(32a、32b)からオフセットして配置したことを特徴としている。
【0022】
これによると、後席用温風通路(33、35)とフット用温風通路(32a、32b)とを、相互に加熱用熱交換器(16)直後の領域の範囲内でオフセット配置することにより、これらの両温風通路(32a、32b)(33、35)を含む全体の通路設置スペースを加熱用熱交換器(16)の大きさの範囲内に納めることができ、空調ユニットの小型化のために有利である。
【0023】
また、請求項3記載の発明のように、後席用冷風通路(39)を第2バイパス路(18)に連通させれば、第2バイパス路(18)を前席フット側の冷風取り出し通路として用いるだけでなく、後席側の冷風取り出し通路としても兼用できる。
また、請求項4記載の発明では、第1バイパス路(17)および第1エアミックスチャンバー部(31)を加熱用熱交換器(16)の上方側に配置し、第2バイパス路(18)を加熱用熱交換器(16)の下方側に配置することを特徴としている。
【0024】
これによると、第1バイパス路(17)と第1エアミックスチャンバー部(31)をともに加熱用熱交換器(16)の上方側に位置させてフェイス吹出開口部(20、21)への通風路を直線的に構成できるとともに、第2バイパス路(18)も加熱用熱交換器(16)の直後の第2エアミックスチャンバー部(36a、36b)と近接することになり、第1バイパス路(17)側、第2バイパス路(18)側の双方において冷風の流れがスムースとなり、一層の低圧損化を実現できる。
【0025】
また、請求項5記載の発明では、第2エアミックス手段および後席用エアミックス手段の少なくとも一方を板状のエアミックスドア(37a、37b)(41)から構成することを特徴としている。
ここで、第2エアミックス手段および後席用エアミックス手段は、それぞれ前席用フット吹出開口部(22)、後席用吹出開口部(23)から吹き出す空調風の温度調整用のものであって、いずれも吹出風量が前席フェイス側に比してはるかに小さいので、第2エアミックス手段、後席用エアミックス手段を板状のエアミックスドア(37a、37b)(41)で構成しても、ドア設置スペースを小さくでき、しかも、板状ドアであるから、ドア操作機構を簡単にできる。
【0026】
また、請求項6記載の発明では、第1エアミックス手段(26)と第2エアミックス手段(37a、37b)をそれぞれ独立に操作可能に構成している。これによると、前席用フェイス吹出開口部(20、21)側の吹出空気温度と、前席用フット吹出開口部(22)側の吹出空気温度とを独立に制御できる。
また、請求項7記載の発明では、後席用エアミックス手段(41)を第1エアミックス手段(26)および第2エアミックス手段(37a、37b)に対して独立に操作可能に構成したことを特徴としている。
【0027】
これによると、後席用エアミックス手段(41)により車室内の後席側の空間に対する空調風の温度調整を、前席側とは独立に行うことができる。
また、請求項8記載の発明では、前席用フェイス吹出開口部(20、21)から空調風を吹き出す前席側のフェイスモードで、空調風を最大限冷却する最大冷房時において、後席用エアミックス手段(41)を、後席用冷風通路(39)からの冷風中に後席用温風通路(33、35)からの温風を混合する温度制御域の位置に操作する場合には、第1エアミックス手段(26)を、所定量の温風が加熱用熱交換器(16)を通過する位置に操作することを特徴としている。
【0028】
これによると、前席側のフェイスモードの最大冷房時においても、後席側ではエアミックス手段(41)の開度調整により冷風温度の調整が可能となり、後席側の空調フィーリングを向上できる。
また、請求項9記載の発明では、第1エアミックス手段(26)により、上記の所定量の温風が通過する部位を加熱用熱交換器(16)のうち、前席用フェイス吹出開口部(20、21)から遠ざかる側の部位に設定することを特徴としている。これにより、前席側のフェイス吹出冷風温度の上昇を良好に回避できる。
【0029】
また、請求項10記載の発明では、加熱用熱交換器(16)に流入する温水の流れを断続する温水弁(16b)を有し、前席側のフェイスモードで、空調風を最大限冷却する最大冷房時において、後席用エアミックス手段(41)を温度制御域の位置に操作する場合には、後席用エアミックス手段(41)の操作後に、温水弁(16b)の開弁操作および第1エアミックス手段(26)の操作を行うことを特徴としている。
【0030】
これによると、温水弁(16b)の開弁操作前に、後席用エアミックス手段(41)の操作により加熱用熱交換器(16)の周辺を後席用吹出開口部(23)に連通させることができるので、温水弁(16b)の開弁による温水循環によって、加熱用熱交換器(16)周辺の空気温度が上昇すると、直ちに、この温度上昇分を後席側の吹出冷風の温度制御のために有効利用できる利点がある。
【0031】
また、請求項11記載の発明では、前席側のフェイスモードの最大冷房時において、加熱用熱交換器(16)の正面熱交換面積に対する、第1エアミックス手段(26)による温風通過開口面積を前記後席用温風通路(33、35)の開口面積と同等以下としたことを特徴としている。
本発明者の実験によると、上記開口面積設定により、後席用エアミックス手段(41)を温度制御域に操作する場合に、前席側のフェイス吹出冷風温度の上昇を良好に抑制できることを確認できた。
【0032】
また、請求項12記載の発明のように、第1エアミックス手段をフィルム状の膜状部材(26)から構成すれば、第1エアミックス手段の設置スペースを縮小できる。
【0035】
なお、上記括弧内の符号は、後述する実施形態記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【0036】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図に基づいて説明する。
(第1実施形態)
図1は本発明の第1実施形態に基づく車両用空調装置の全体構成を示している。図1の車両用空調装置は、大別して送風機ユニット1と、空調ユニット2との2つの部分から構成されており、図1では図作成上の便宜から、車両前後方向において、空調ユニット2の前方側に送風機ユニット1を配置する状態を示しているが、実際は、空調ユニット2の側方(車両左右方向)に送風機ユニット1をオフセット配置している。
【0037】
すなわち、空調ユニット2は車室内前部の計器盤下方のうち、車両左右方向の中央部に配置するセンター置きレイアウトであり、一方、送風機ユニット1は空調ユニット2の側方である助手席前方の位置にオフセット配置される。
但し、送風機ユニット1を車室内でなく、エンジンルーム内に設置するレイアウトを採用する場合は、図1に示す通り、空調ユニット2の前方側に送風機ユニット1を配置することが可能となる。
【0038】
送風機ユニット1はその上部に内外気切替箱3を有し、この内外気切替箱3には外気導入口4と、内気導入口5、6と、2つの連動操作される内外気切替ドア7、8が備えられている。そして、内外気切替箱3の底部には、上記導入口4〜6から導入された空気の塵埃、悪臭等を除去して清浄化するフィルタ9が配設されている。
【0039】
送風機ユニット1の下部に、送風機10が配置され、この送風機10には遠心多翼ファンからなる送風ファン11と、この送風ファン11を回転駆動するモータ12と、送風ファン11を収容している渦巻き状のスクロールケース13とを有する周知の構成である。スクロールケース13の上部にはフィルタ9を通過した空気を吸入する吸入口13aが開口している。また、スクロールケース13の空気出口部は空調ユニット2の最前部に連通され、空調ユニット2の最前部に空気を送り込むようになっている。
【0040】
次に、空調ユニット2について説明すると、樹脂製の空調ケース14を有し、この空調ケース14は例えば、車両前後方向の面で複数に分割成形された分割体を適宜のクランプ等の締結手段にて一体に連結したものである。この空調ケース14の最前部の開口部に上記スクロールケース13の空気出口部が接続される。従って、送風機ユニット1内の送風ファン11を作動することによって空調ケース14内に空気が流入する。
【0041】
空調ケース14内には、その空気上流側から順に蒸発器15、ヒータコア16が直列に配列されている。この蒸発器15は、図示しない圧縮機、凝縮器、減圧手段とともに周知の冷凍サイクルを構成するもので、空調ケース14内の空気を冷却する冷却用熱交換器である。また、ヒータコア16は、内部を流れるエンジン冷却水(温水)を熱源として空調ケース14内の空気を加熱する加熱用熱交換器であって、周知のごとく温水が流れる偏平チューブとこの偏平チューブに接合されたコルゲートフィンとから構成される熱交換用コア部を有している。
【0042】
ヒータコア16にエンジン冷却水(温水)を循環させる温水回路16aには温水弁16bが設置され、この温水弁16bは前席側の最大冷房時には全閉状態となり、ヒータコア16へのエンジン冷却水の流れを遮断する。
空調ユニット2内において車両前方側の部位に、蒸発器15は空気が車両後方へ向かって流れるように配置されている。ここで、蒸発器15は空調ケース14内の通風路の全領域を横切るように車両前後方向寸法の小さい形態で配置されている。これに対し、ヒータコア16は蒸発器15の車両後方側の部位において空気が車両後方へ向かって流れるように車両前後方向寸法の小さい形態で配置されている。
【0043】
ここで、ヒータコア16は空調ケース14内の通風路の下方部のみを横切るように配置され、ヒータコア16の上部および下部にはそれぞれヒータコア16をバイパスして冷風を流す第1バイパス路17および第2バイパス路18が形成されている。
空調ケース14の空気下流端には複数の吹出開口部19〜23が形成されており、この各吹出開口部19〜23の下流側に、さらに、空調風を車室内の所定場所に向けて吹き出させるための吹出ダクト(図示せず)が接続される。
【0044】
このうち、デフロスタ吹出開口部19は空調ケース14の上面部に設けられ、デフロスタダクト(図示せず)を介して空調風を車室内フロントガラス内面に向けて吹き出すためのデフロスタ吹出口(図示せず)に連通する。また、フェイス吹出開口部20とサイドフェイス吹出開口部21は、空調ケース14の後面部の上方側に設置されるもので、フェイス吹出開口部20は図1の紙面垂直方向(車両左右方向)において中央部に配置され、サイドフェイス吹出開口部21はこのフェイス吹出開口部20の左右両側にオフセット配置される。
【0045】
フェイス吹出開口部20は、フェイスダクト(図示せず)を介して、空調風を前席中央の乗員上半身に向けて吹き出すセンターフェイス吹出口に連通する。また、サイドフェイス吹出開口部21は、サイドフェイスダクト(図示せず)を介して、空調風を前席サイドガラスまたは前席乗員の左右両サイドの上半身に向けて吹き出すサイドフェイス吹出口に連通する。
【0046】
また、フット吹出開口部22は、空調ケース14の後面部の下側寄りの左右両側に設置されるもので、フットダクト(図示せず)を介して、空調風を運転席側乗員の足元部に向けて吹き出す運転席側フット吹出口(図示せず)、および空調風を助手席側乗員の足元部に向けて吹き出すため助手席側フット吹出口(図示せず)に連通する。
【0047】
また、後席用吹出開口部23は、後席用ダクト(図示せず)を介して、空調風を後席乗員足元に向けて吹き出すための後席フット吹出口(図示せず)および空調風を後席乗員の上半身に向けて吹き出すための後席フェイス吹出口(図示せず)に連通する。
一方、空調ケース14内には、第1駆動軸24と第1従動軸25が空調ケース14に対して回転自在に支持されている。この第1駆動軸24および第1従動軸25にはフィルム状のエアミックス用膜状部材(第1エアミックス手段)26の両端が固定および巻回されている。このエアミックス用膜状部材26は、可撓性部材、具体的には、ポリエチレン樹脂のごとく可撓性、強度に優れた樹脂製フィルム部材にて構成されている。
【0048】
そして、このエアミックス用膜状部材26は、第1駆動軸24とヒータコア16の側面と中間ガイド軸27と第1従動軸25とによって、ヒータコア16を通る温風通路28と、ヒータコア16をバイパスする第1バイパス路17とをそれぞれ横切るようにして、一定の張力が付与された状態で空調ケース14内の上下方向に摺動可能に配置されている。
【0049】
上記第1駆動軸24はステップモータ等の駆動手段によって駆動され、この第1駆動軸24の回転は図示しない回転伝達機構を介して第1従動軸25にも伝達される。なお、この回転伝達機構は、周知の機構であるので、その説明は省略する。
また、エアミックス用膜状部材26には空気を通過させるための複数の開口部(図示せず)が形成されており、上記駆動手段により第1駆動軸24を正逆両方向に回転させて上記開口部を任意の位置で停止させることによって、上記各通路17、28を通る空気量が調節される。
【0050】
また、空調ケース14には、ヒータコア16の空気下流側に下方から斜め上方に立ち上がる壁面29が形成されており、この壁面29によりヒータコア16の空気下流側から上方へ向かう温風通路30が形成されている。そして、空調ケース14内部で、ヒータコア16の上方部位に、第1バイパス路17を通過した冷風と温風通路28、30を通過した温風とを混合する第1エアミックスチャンバー部31が形成されている。この第1エアミックスチャンバー部31で冷温風が混合されて、所定温度の空調風となり、この空調風はデフロスタ吹出開口部19またはフェイス吹出開口部20、21に向かう。
【0051】
ところで、ヒータコア16の空気下流側に形成された壁面29のうち、ヒータコア16の直後に位置する部位(ヒータコア16の熱交換用コア部の領域内の直後の部位)には、フット用温風開口部32a、32bと後席用温風開口部33が開口している。このフット用温風開口部32a、32bと後席用温風開口部33は図1の紙面垂直方向にオフセット配置されるもので、具体的には図2(a)(図1のA矢視図)に示すように、空調ケース14の車両左右方向の中心側に後席用温風開口部33を配置し、この開口部33の左右両側にフット用温風開口部32a、32bを配置している。従って、フット用温風開口部32a、32bと後席用温風開口部33は空調ケース14の車両左右方向の中心線Bに対して左右対称の配置となっている。なお、図2(a)の2点鎖線160は、ヒータコア16の熱交換用コア部の左右方向(車両幅方向)の端部を示している。
【0052】
図2(b)は図1のC矢視図で、車両左右方向において上記した2つのフット用温風開口部32a、32bと同一位置に2つのフット用冷風開口部34a、34bが設けてある。この2つのフット用冷風開口部34a、34bはともに第2バイパス路18に連通し、この第2バイパス路18からの冷風を後述の第2エアミックスチャンバー部36a、36bに導入するものである。
【0053】
2つのフット用冷風開口部34a、34bの中間部位の上方には後席用温風開口部33からの温風が流れる後席用温風通路35が区画形成されている。この後席用温風通路35の左側には、左側フット用温風開口部32aからの温風と左側フット用冷風開口部34aからの冷風とを混合する左側の第2エアミックスチャンバー部36aが形成され、後席用温風通路35の右側には、右側フット用温風開口部32bからの温風と右側フット用冷風開口部34bからの冷風とを混合する右側の第2エアミックスチャンバー部36bが形成されている。
【0054】
そして、フット用温風開口部32a、32bとフット用冷風開口部34a、34bとの間には、それぞれフット用エアミックスドア(第2エアミックス手段)37a、37bが配置されている。この2枚のフット用エアミックスドア37a、37bは平板状のドアであって、回転軸38を中心として一体に回動して、フット用第2エアミックスチャンバー部36a、36bに流入する冷風と温風の風量割合を調整するものである。
【0055】
左右の第2エアミックスチャンバー部36a、36bにおいて冷温風が混合されて所定温度の空調風となり、この空調風が空調ケース14の左右両側に配置された左右2つのフット吹出開口部22に流れる。
フット用エアミックスドア37a、37bとエアミックス用膜状部材26はともに吹出空気温度の制御手段をなすものであるが、本例では、バイレベルモード時に、フェイス吹出開口部20、およびサイドフェイス吹出開口部21からの吹出空気温度(すなわち車室内上方側吹出空気温度)と、フット吹出開口部22からの吹出空気温度(すなわち車室内下方側吹出空気温度)とを独立に制御可能とするために、フット用エアミックスドア37a、37bをエアミックス用膜状部材26と独立に操作可能にしてある。
【0056】
そのため、フット用エアミックスドア37a、37bの回転軸38は適宜のリンク機構等を介して独立の駆動手段(ステップモータ等)に連結され、この駆動手段(ステップモータ等)によって駆動される。
また、第2バイパス路18の最も下流側(車両後方側)の部位には後席用冷風通路39が連通しており、この後席用冷風通路39と前記した後席用温風通路35の下流側(車両後方側)の合流部に後席用エアミックスチャンバー部40が形成されている。ここで、後席用エアミックスチャンバー部40は、後席用温風通路35を介してヒータコア16を通過する温風流れ方向の延長方向に位置している。
【0057】
そして、上記両通路35、39の合流部には後席用エアミックスチャンバー部40に流入する冷風と温風の風量割合を調整する1枚の後席用エアミックスドア41が配置されている。この後席用エアミックスドア41も平板状のドアであって、回転軸42を中心として回動するものである。
この後席用エアミックスドア41はフット用エアミックスドア37a、37b、エアミックス用膜状部材26とは別の駆動手段(ステップモータ等)によって独立に回動操作される。後席用エアミックスチャンバー部40において冷温風が混合されて所定温度の空調風となり、この空調風が後席用吹出開口部23に流れる。
【0058】
さらに、空調ケース14内には、第2駆動軸43と第2従動軸44が、空調ケース14に対して回転自在に支持されている。この第2駆動軸43および第2従動軸44には、吹出モード切替用膜状部材45の両端が固定および巻回されている。ここで、吹出モード切替用膜状部材45もエアミックス用膜状部材26と同様に可撓性に富んだ樹脂フィルム部材からなる。
【0059】
第2駆動軸43および第2従動軸44との間の中間部位には中間ガイド軸46、47が配置されており、この中間ガイド軸46、47は、空調ケース14の内壁面に沿って吹出モード切替用膜状部材45を屈曲させて、吹出モード切替用膜状部材45の移動をガイドする。この中間ガイド軸46、47および前述の中間ガイド軸27は、膜状部材45、26の移動を円滑にするために回転自在な構成としてもよいが、中間ガイド軸46、47、27を樹脂製の空調ケース14と一体成形して(すなわち、回転不能な構成として)もよい。
【0060】
そして、吹出モード切替用膜状部材45は、第2駆動軸43と中間ガイド軸46、47と第2従動軸44とによって、前記各吹出開口部19、20、21、フット用温風開口部32a、32bおよび後席用温風開口部33の空気上流側壁面と対向するようにして一定の張力が付与された状態で配置され、この壁面に沿って移動するようになっている。
【0061】
上記第2駆動軸43はステップモータ等の独立の駆動手段によって駆動され、この第2駆動軸43の回転は図示しない回転伝達機構を介して第2従動軸44にも伝達される。
また、吹出モード切替用膜状部材45には、空気を通過させるための開口部(図示せず)が複数形成されており、上記駆動手段により第2駆動軸43を正逆両方向に回転させて複数の開口部を任意の位置で停止させることによって、この開口部と前記各吹出開口部19、20、21、フット用温風開口部32a、32bおよび後席用温風開口部33との連通、遮断を切り替えることにより、吹出モードが切り換えられる。
【0062】
なお、第2バイパス路18はヒータコア16の下方部に形成されるものであるため、蒸発器15で発生するドレーン水(凝縮水)を排出する排水路を兼ねている。すなわち、空調ケース14の底面の最も低い部位に排水パイプ48を形成し、この排水パイプ48に向かって徐々に下がる傾斜面49を蒸発器15の空気出口側の底部と排水パイプ48との間に形成し、この傾斜面49上をドレーン水が流れるようにするとともに、この傾斜面49、排水パイプ48上方の空間を第2バイパス路18として形成している。
【0063】
次に、上記構成において第1実施形態の作動を説明する。図3〜図6は前席側の吹出モード別の空気流れを示すもので、図中、白抜き矢印は冷風を示し、細点付きの矢印は温風を示す。
「フェイス(FACE)モード」
図3はフェイスモードを示し、吹出モード切替用膜状部材45の開口部によってフェイス吹出開口部20とサイドフェイス吹出開口部21が開口されるが、デフロスタ吹出開口部19およびフット用温風開口部32a、32bはともに吹出モード切替用膜状部材45の膜部によって閉塞される。
【0064】
また、フェイスモードでは吹出空気温度の設定が低温側になっているので、フット用エアミックスドア37a、37bがフット用冷風開口部34a、34bを全閉する位置に操作されている。従って、フット吹出開口部22は空調ケース14内の通風路に対して遮断した状態となり、閉塞状態にある。
従って、送風機ユニット1の送風ファン11を作動させると、内外気切替箱3を通して吸入された空気(内気または外気)がまず蒸発器15において冷却除湿されて、冷風となり、この冷風は次にエアミックス用膜状部材26の開口部位置に応じて、ヒータコア16をバイパスする第1バイパス路17とヒータコア16を通る温風通路28とに分岐される。
【0065】
但し、最大冷房時にはエアミックス用膜状部材26が第1バイパス路17を全開して、温風通路28を全閉するので、冷風の全量が第1バイパス路17および第1エアミックスチャンバー部31を通過してフェイス吹出開口部20およびサイドフェイス吹出開口部21を経て、さらにフェイス吹出口およびサイドフェイス吹出口から車室内の乗員上半身に向かって吹き出す。また、最大冷房時には温水弁16bが全閉状態となり、ヒータコア16への温水流入を阻止する。
【0066】
このとき、図3の白抜き矢印に示すように、蒸発器15の下流側から第1バイパス路17、第1エアミックスチャンバー部31を経てフェイス吹出開口部20およびサイドフェイス吹出開口部21に向かって冷風がほぼ直線的に最短距離を流れるので、曲がりによる圧損がほとんどなく、空調ケース14内での圧損が小さくなる。また、フェイス吹出開口部20、21をフット吹出開口部22から離れて形成できるので、フェイス吹出開口部20、21の開口面積をフット吹出開口部22によって妨げられることなく大きく設計できる。これにより、フェイスモード時の圧損を低減して冷風の風量を増大でき、冷房能力を向上できる。
【0067】
車室内への冷風吹出温度を調整する温度制御時には、エアミックス用膜状部材26が第1バイパス路17を開くと同時に、温風通路28も一部開放する位置に操作される。そのため、図3に示すように、温風通路28を通過した温風が温風通路30を上昇して第1エアミックスチャンバー部31に至る。ここで、温風が第1バイパス路17を通過した冷風と混合して所定温度の冷風となり、この温度調整された冷風がフェイス吹出開口部20およびサイドフェイス吹出開口部21を経て車室内の乗員上半身に向かって吹き出す。
【0068】
「バイレベル(B/L)モード」
図4はバイレベルモードを示しており、吹出モード切替用膜状部材45の開口部によってフェイス吹出開口部20とサイドフェイス吹出開口部21が開口されると同時に、フット用温風開口部32a、32bが開口される。しかし、デフロスタ吹出開口部19は吹出モード切替用膜状部材45の膜部によって閉塞される。
【0069】
従って、フェイス吹出開口部20とサイドフェイス吹出開口部21から車室内の車室内の乗員上半身に向かって空調風を吹き出すと同時にフット吹出開口部22から前席側の乗員足元に向かって空調風を吹き出すことができる。
つまり、第1エアミックスチャンバー部31にて温風と冷風とを混合して所定温度の空調風とし、この空調風をフェイス吹出開口部20とサイドフェイス吹出開口部21から吹き出させることができる。
【0070】
また、フット吹出開口部22側においては、フット用冷風開口部34a、34bから第2エアミックスチャンバー部36a、36bに流入する冷風と、フット用温風開口部32a、32bから第2エアミックスチャンバー部36a、36bに流入する温風との風量割合を、2枚のフット用エアミックスドア37a、37bの開度により調整することにより、左右の第2エアミックスチャンバー部36a、36bにおいて冷温風が混合されて所定温度の空調風となり、この空調風がフット吹出開口部22から前席側の乗員足元に向かって吹き出す。
【0071】
ここで、フェイス側の温度調整手段であるエアミックス用膜状部材26の開口部位置と、フット用エアミックスドア37a、37bの開度とをそれぞれ専用の駆動手段にて独立に調整することにより、バイレベルモード時の上下の吹出温度を乗員の好みに応じた温度に独立に設定できる。
「フット(FOOT)モード」
図5はフットモードを示しており、吹出モード切替用膜状部材45の開口部によってデフロスタ吹出開口部19とサイドフェイス吹出開口部21が小開度だけ開口されると同時に、フット用温風開口部32a、32bが大開度で開口される。しかし、フェイス吹出開口部20は吹出モード切替用膜状部材45の膜部によって閉塞される。
【0072】
ここで、第1エアミックスチャンバー部31にて温風と冷風とを混合して所定温度となった空調風がデフロスタ吹出開口部19とサイドフェイス吹出開口部21から吹き出す。また、フット用エアミックスドア37a、37bの開度により第2エアミックスチャンバー部36a、36bにおいて冷温風が混合されて所定温度となった空調風がフット吹出開口部22から前席側の乗員足元に向かって吹き出す。
【0073】
フットモード時に最大暖房状態を設定するときは、エアミックス用膜状部材26によって第1バイパス路17が全閉され、温風通路28が全開となる。これと同時に、フット用エアミックスドア37a、37bがフット用冷風開口部34a、34bを全閉するので、フット吹出開口部22には温風通路28からの温風のみがフット用温風開口部32a、32b、および第2エアミックスチャンバー部36a、36bを通過して流入する。
【0074】
このとき、ヒータコア16直後からフット用温風開口部32a、32b、および第2エアミックスチャンバー部36a、36bを通過して温風がほぼ直線的に最短距離を流れるので、曲がりによる圧損がほとんどなく、空調ケース14内での圧損が小さくなる。また、フット吹出開口部22の開口面積もフェイス吹出開口部20、21によって妨げられることなく大きく設計できる。これにより、フットモード時の圧損を低減して温風の風量を増大でき、暖房能力を向上できる。
【0075】
なお、フットモードでは、デフロスタ吹出開口部19とサイドフェイス吹出開口部21から吹き出す空調風の風量は約20%程度であり、一方、フット吹出開口部22から吹き出す空調風の風量は約80%程度である。
ここで、デフロスタ吹出開口部19とサイドフェイス吹出開口部21から吹き出す空調風の風量を約50%程度まで増大し、一方、フット吹出開口部22から吹き出す空調風の風量は約50%程度まで減少させるフット・デフロスタモード(F/D)モードをフットモードとは別に設定してもよい。
【0076】
「デフロスタ(DEF)モード」
図6はデフロスタモードを示しており、吹出モード切替用膜状部材45の開口部によってデフロスタ吹出開口部19とサイドフェイス吹出開口部21が開口されるが、フット用温風開口部32a、32bおよびフェイス吹出開口部20はともに吹出モード切替用膜状部材45の膜部によって閉塞される。また、フット用エアミックスドア37a、37bがフット用冷風開口部34a、34bを全閉するので、フット吹出開口部22は空調ケース14内の通風路に対して遮断した状態となり、閉塞状態にある。
【0077】
従って、第1エアミックスチャンバー部31にて温風と冷風とを混合して所定温度となった空調風がデフロスタ吹出開口部19とサイドフェイス吹出開口部21のみから吹き出す。
次に、図7〜図9は後席用吹出開口部23への空調風の温度調整作用を説明するものであって、前席側の吹出モードが上述の図3〜図6のいずれのモードにあっても、吹出モード切替用膜状部材45はその開口部によって後席用温風開口部33を常に全開している。従って、この後席用温風開口部33を通じて後席用温風通路35は常にヒータコア16直後の部位に連通している。
【0078】
一方、後席用冷風通路39は第2バイパス路18に直接連通しているので、後席用温風通路35からの温風量と、後席用冷風通路39からの冷風量との割合を後席用エアミックスドア41の開度により調整することにより、後席用エアミックスチャンバー部40において所定温度の空調風を得ることができる。
図7は最大冷房(MAX COOL)モードであり、後席用エアミックスドア41が後席用温風通路35を全閉し、後席用冷風通路39を全開している状態である。従って、後席用吹出開口部23には後席用冷風通路39からの冷風のみが流れ、最大冷房能力を発揮できる。
【0079】
図8は冷風と温風を混合するエアミックス(A/M)モード、すなわち中間温度制御状態であり、後席用エアミックスドア41が後席用温風通路35および後席用冷風通路39の両方をともに開口する中間開度の位置に操作されて、中間温度の空調風を得る状態にある。
図9は最大暖房(MAX HOT)モードであり、後席用エアミックスドア41が後席用温風通路35を全開し、後席用冷風通路39を全閉している状態である。従って、後席用吹出開口部23には後席用温風通路35からの温風のみが流れ、最大暖房能力を発揮できる。
【0080】
後席用吹出開口部23に流れる空調風の温度を制御する後席用エアミックスドア41は、前席側のフェイス、デフロスタ用のエアミックス用膜状部材26およびフット用エアミックスドア37a、37bと独立に開度を調整するようになっているので、車室内の前後に吹き出す空調風の温度を独立に制御できる。
(第2実施形態)
第2実施形態は、前席側のフェイスモードにおいて、最大冷房時に、前席側の最大冷房能力を保証しつつ、後席側では冷風の吹出温度を制御できる機能を付加したものである。
【0081】
すなわち、第1実施形態によると、前席側のフェイスモードにおいて最大冷房状態が設定されると、前述のごとく、エアミックス用膜状部材26が第1バイパス路17を全開して、温風通路28を全閉するので、ヒータコア16には空気が流れない。図10は第1実施形態による前席側の最大冷房時の空気流れであり、後席用エアミックスドア41をたとえ中間位置に操作しても、後席側には冷風a、bが流れるのみである。
【0082】
従って、後席側乗員が冷風の温度制御(冷風吹出温度の上昇)の必要性を感じても、温風通路28の全閉によって後席用温風開口部33には冷風aしか流入しないので、後席用エアミックスドア41の開度調整により後席側の冷風温度を制御できない。
なお、第1実施形態における前席側のエアミックス用膜状部材26には、図11に示すように、第1バイパス路17と、ヒータコア16を通過する温風通路28との風量割合を調整する開口部26aが設けられているだけである。
【0083】
第2実施形態では、前席側のフェイスモードにおいて、最大冷房状態が設定さている状態でも、後席側では温度制御機能を発揮できるようにするために、図12に示すように、前席側のエアミックス用膜状部材26に、第1バイパス路17と、ヒータコア16を通過する温風通路28との風量割合を調整する主開口部26aの他に、もう1つ、補助開口部26bを設けている。
【0084】
この補助開口部26bは主開口部26aよりも第1駆動軸24側の所定部位に位置して、主開口部26aより十分小さい開口面積に設定してある。
次に、第2実施形態による作動を第1実施形態との相違部分のみについて説明すると、前席側のフェイスモードにおいて前席側乗員の設定温度により最大冷房状態が設定され、また、後席側の乗員の設定温度により後席側も最大冷房状態が設定されたときは、前席側のエアミックス用膜状部材26が次の位置に操作される。
【0085】
すなわち、主開口部26aが第1バイパス路17を全開するとともに、補助開口部26bがヒータコア16の熱交換コア部よりも第1駆動軸24側の部位に位置して、補助開口部26bとヒータコア16の熱交換コア部とが連通しない位置にエアミックス用膜状部材26が操作される。従って、ヒータコア16の熱交換コア部を通過する温風通路28はエアミックス用膜状部材26の膜部により全閉される。その結果、前席側のフェイス吹出開口部20、21から冷風のみが吹き出すとともに、後席用吹出開口部23からも冷風のみが吹き出すことになる。また、このとき、温水弁16bは閉弁して、ヒータコア16への温水流れを遮断している。
【0086】
次に、前席側のフェイスモードにおいて前席側乗員の設定温度により最大冷房状態が設定され、一方、後席側の乗員の設定温度が高くなって、後席側においては最大冷房状態から温度制御域に移行したときは、この後席側の設定温度の上昇に応答して、後席用エアミックスドア41をまず図13に示す中間位置に操作する。その後に、温水弁16bを開弁して、ヒータコア16への温水循環を開始する。
【0087】
次いで、この温水弁16bの開弁と同時、または開弁後に、エアミックス用膜状部材26を上記した操作位置から補助開口部26bがヒータコア16の熱交換コア部のうち、最も下方側の部位(フェイス吹出開口部20、21から最も遠ざかる側の部位)に連通する位置にエアミックス用膜状部材26が操作される。これにより、温風通路28のうち、下端部側の部位だけが補助開口部26bにより開口状態となる。
【0088】
この結果、補助開口部26bを通過する空気がヒータコア16の熱交換コア部に流入して加熱され、温風cとなり、この温風cは後席用温風開口部33、後席用温風通路35を経て後席用エアミックスチャンバー部40に流入し、後席用冷風通路39からの冷風bと混合して所定温度となる。
このように、前席側が最大冷房状態であっても、後席側は後席用エアミックスドア41の開度調整により冷風吹出温度を制御できる。
【0089】
なお、このとき、補助開口部26bの開口による温風cの流れの発生により、前席側のフェイス吹出開口部20、21からの冷風吹出温度の上昇が懸念されるが、本発明者の実験検討によると、補助開口部26bの開口面積を後席用の温風開口部33の開口面積と同等以下(ヒータコア16の正面熱交換面積の9%程度以内)の小面積に抑えることにより、補助開口部26bを通過する温風cが温風通路30を通過してフェイス吹出開口部20、21側へ流れることを抑制して、フェイス吹出開口部20、21からの冷風吹出温度の上昇を良好に抑制できることを確認している。
【0090】
図14は本発明者の実験結果を示しており、横軸は、ヒータコア16の正面熱交換面積A1 と補助開口部26bの開口面積(ヒータコア16のコア部への開口面積)A2 との比率A2 /A1 (%)である。縦軸は、前席側、後席側がともに最大冷房状態であるときを基準とする、前席側フェイス吹出開口部20、21からの冷風吹出温度の上昇値を示している。
【0091】
図14の実験結果から理解されるように、上記の比率A2 /A1 を9%以下に抑えることにより、前席側フェイス吹出温度の上昇値を5°C以内という僅少値に抑えることができる。ここで、後席用の温風開口部33の開口面積は、ヒータコア16の正面熱交換面積の9%程度であるので、補助開口部26bの開口面積をヒータコア16の正面熱交換面積の9%程度より増大すると、補助開口部26bを通過してヒータコア16で加熱された温風cのうち、温風通路30を通過してフェイス吹出開口部20、21側へ流れる温風が発生して、前席側フェイス吹出温度の上昇割合が増大していく。
【0092】
これに対し、補助開口部26bの開口面積をヒータコア16の正面熱交換面積の9%程度以下として、後席用の温風開口部33の開口面積(通路断面積)と同等以下とすることにより、補助開口部26bを通過してヒータコア16で加熱された温風cをほとんど後席用の温風開口部33に流入させて、前席側フェイス吹出温度の上昇を良好に抑制できるのである。
【0093】
ここで、上記の第2実施形態では、前席側のフェイスモードの最大冷房時に後席側が最大冷房状態から温度制御域に移行したとき、後席側の設定温度の上昇に応答して、後席用エアミックスドア41を図13に示すように中間位置に操作する場合について説明したが、後席用エアミックスドア41を図15に示すように最大暖房近傍位置に操作するようにすれば、後席用冷風通路39からの冷風bの流れを遮断して、その代わりに、第1バイパス路17からの冷風aを後席用温風開口部33、後席用温風通路35を経て後席用エアミックスチャンバー部40に流入させることができる。
【0094】
従って、この冷風aの後席用エアミックスチャンバー部40への流入によって、温風cがフェイス吹出開口部20、21側へ流れるのをより一層確実に阻止することができる。
また、上記の第2実施形態において、補助開口部26bの開口位置(操作位置)は、上記冷風吹出温度の上昇回避のために、前席側のフェイス吹出開口部20、21から遠ざかる位置、すなわち、温風通路28(ヒータコア16)の下端部側とすることが好ましいが、本発明者らの実験によると、補助開口部26bの開口位置(操作位置)を温風通路28(ヒータコア16)の上下方向の中間部あるいは上端部側に移行しても、上記冷風吹出温度の上昇は実用上、ほとんど問題とならないレベルであった。
【0095】
また、エアミックス用膜状部材26を補助開口部26bが温風通路28の下端部側と連通する位置に操作することにより、主開口部26aが第1バイパス路17の全開位置から開口面積を若干量絞る位置に移行して、フェイス吹出開口部20、21からの冷風吹出風量を若干量低下させるが、これも、実用上、ほとんど問題とならないレベルであることを実験的に確認している。
【0096】
また、本実施形態では、上述のごとく後席用エアミックスドア41をまず図13に示す中間位置あるいは図15に示す最大暖房位置近傍に操作し、その後に、温水弁16bを開弁して、ヒータコア16への温水循環を開始している。これにより、次のような利点が得られる。すなわち、温水弁16bの開弁操作前に、後席用エアミックスドア41の中間位置あるいは最大暖房位置近傍への操作によりヒータコア16の周辺を後席用吹出開口部23に連通させることができるので、温水弁16bの開弁による温水循環によって、ヒータコア16周辺の空気温度が上昇すると、直ちに、この温度上昇分を図10の矢印aの流れの温度上昇に利用して、後席側の吹出冷風の温度制御のために有効利用できる。
【0097】
ところで、上記した第1、第2実施形態による作動は、具体的には、図16に示す空調用電子制御装置(ECU)50により各種空調機器を自動制御することにより行う。図16の電気制御ブロック図において、ECU50はマイクロコンピュータ等から構成されるもので、送風機ユニット1および空調ユニット2に装備される各種空調機器を予め設定されたプログラムに従って制御するものである。なお、ECU50は、自動車のエンジンのイグニッションスイッチ(図示せず)がオンされたときに、車載バッテリー(図示せず)から電源が供給される。
【0098】
ECU50には周知のセンサ群51からのセンサ信号、車室内前方の計器盤部に設置される空調用の前席側操作パネル52、および車室内後席側に設置される空調用の後席側操作パネル53からの操作信号が入力される。センサ群51としては、周知のごとく車室外温度(外気温)を検出する外気温センサ54、車室内温度(内気温)を検出する内気温センサ55、車室内への日射量を検出する日射センサ56、蒸発器15吹出空気温度を検出する蒸発器後温度センサ57、ヒータコア16への温水温度を検出する水温センサ58等が設けられる。
【0099】
前席側操作パネル52には、前席側温度設定器59、前席側風量設定器60、前席側吹出モード設定器61、内外気モード設定器62等が設けられ、同様に、後席側操作パネル53にも後席側温度設定器63、後席側風量設定器64、後席側吹出モード設定器65等が設けられる。
次に、ECU50により制御される各種空調機器の駆動手段として、内外気切替ドア7、8の駆動用モータ66、送風ファン11の駆動用モータ12、エアミックス用膜状部材26を移動させる第1駆動軸24の駆動用モータ68、フット用エアミックスドア37a、37bの駆動用モータ69、後席用エアミックスドア41の駆動用モータ70、吹出モード切替用膜状部材45を移動させる第2駆動軸43の駆動用モータ71、温水弁16bの駆動用モータ72等が設けられている。
【0100】
次に、上記したECU50による、ドア位置の自動補正制御の好ましい具体例について説明する。
▲1▼バイレベル(B/L)、フット(FOOT)、フット・デフロスタモード(F/D)モードの上下吹出温度差の成立
フット(FOOT)およびフット・デフロスタモード(F/D)モードに比して、バイレベル(B/L)モードでは、フット用エアミックスドア37a、37bの操作位置を最大暖房側に補正するか、あるいは、フェイス、デフロスタ用のエアミックス用膜状部材26の操作位置を最大冷房側に補正する。これにより、フット吹出空気への温風量の増加またはフェイス吹出空気への冷風量の増加が起こり、バイレベル(B/L)モード時での上下吹出温度差をフット(FOOT)およびフット・デフロスタモード(F/D)モードに比して拡大でき、バイレベル(B/L)モード時の空調フィーリングを向上できる。
【0101】
▲2▼バイレベル(B/L)モードにおける上下の風量割合変更時における上下吹出温度差の成立
バイレベル(B/L)モード時に、吹出モード切替用膜状部材45の操作位置を段階的あるいは連続的に変更して、フェイス吹出開口部20、21の開口面積とフット吹出開口部22への温風開口部32a、32bの開口面積とを段階的あるいは連続的に変更することより、上下の吹出風量の割合を変更することができる。
【0102】
ここで、フェイス吹出開口部20、21の開口面積を大にしてフェイス吹出空気の風量を増大した場合は、フット吹出開口部22への温風開口部32a、32bの開口面積が絞られ、フット吹出空気への温度調整用温風量が減少して、上下吹出温度差が縮小する。
しかし、フェイス吹出空気の風量大の場合は、フェイス吹出空気の風量小の場合に比して、フット用エアミックスドア37a、37bの操作位置を最大暖房側へ補正することにより、フット吹出空気温度を必要温度まで上昇させて、所定の上下吹出温度差を確保することができる。逆に、フェイス吹出空気の風量小の場合は、フェイス吹出空気の風量大の場合に比して、フェイス、デフロスタ用のエアミックス用膜状部材26の操作位置を最大冷房側に補正すればよい。
【0103】
▲3▼冬期日射時における上下独立温度制御の補正
冬期に、バイレベルモード、フットモード、あるいはフット・デフロスタモードモードにより上下独立温度制御を行っている場合に、車室内の乗員の上半身に日射が当たるときは、フェイス、デフロスタ用のエアミックス用膜状部材26の操作位置を最大冷房側に変更するとともに、フット用エアミックスドア37a、37bの操作位置を最大暖房側に補正する。
【0104】
前述した第1、第2実施形態のユニットレイアウトでは、エアミックス用膜状部材26の操作位置を最大冷房側に変更すると、フット吹出開口部22への温風開口部32a、32bの開口面積が絞られ、フット吹出空気への温度調整用温風量が減少するが、フット用エアミックスドア37a、37bの操作位置を最大暖房側に補正することにより、フット吹出空気温度の低下を防止できる。
【0105】
従って、冬期日射時に上部側の吹出温度のみを低下させて乗員頭部側の火照り感を解消しつつ、足元の暖房感を確保でき、空調フィーリングを向上できる。
▲4▼前後独立温度制御において、後席側吹出温度固定のまま、前席側上部吹出温度を変更するときの補正
フェイス、デフロスタ用のエアミックス用膜状部材26の操作位置を最大冷房側に変更して、第1エアミックスチャンバー部31への冷風量を増加させるときは、後席用エアミックスドア41の操作位置を最大暖房側に補正し、逆に、フェイス、デフロスタ用のエアミックス用膜状部材26の操作位置を最大暖房側に変更して、第1バイパス路17の冷風量を減少させるときは、後席用エアミックスドア41の操作位置を最大冷房側に補正する。
【0106】
これによれば、エアミックス用膜状部材26の操作位置の変更に起因する後席側への温風量変動の影響を後席用エアミックスドア41の操作位置の補正により相殺できる。
▲5▼前後独立温度制御において、後席側吹出温度固定のまま、前席側下部吹出温度を変更するときの補正
前席側のフット用エアミックスドア37a、37bの操作位置を最大冷房側に変更して、第2エアミックスチャンバー部36a、36bへの冷風量を増加させるときは、フット用エアミックスドア37a、37bによってフット用温風開口部32a、32bの開口面積が絞られるので、この影響を受けて後席用温風開口部33への温風量が増加しようとする。
【0107】
そこで、この場合は後席用エアミックスドア41の操作位置を最大冷房側に補正することにより、後席側の吹出空気温度の上昇を防止する。
逆に、前席側のフット用エアミックスドア37a、37bの操作位置を最大暖房側に変更して、第2エアミックスチャンバー部36a、36bへの温風量を増加させるときは、後席用エアミックスドア41の操作位置を最大暖房側に補正することにより、後席側の吹出空気温度の低下を防止する。
【0108】
なお、上記の▲4▼および▲5▼の場合において、前席側のフェイス、デフロスタ用のエアミックス用膜状部材26とフット用エアミックスドア37a、37bが同時に作動するときは、次のようにドア位置の補正を行う。すなわち、前席側のエアミックス用膜状部材26およびエアミックスドア37a、37bの操作位置が最大冷房側の領域(0/10〜4/10の操作範囲)にあるときは、エアミックス用膜状部材26の影響が大きいので、エアミックス用膜状部材26が最大冷房側へ移行したときは、後席用エアミックスドア41の操作位置を最大暖房側に補正する。
【0109】
また、前席側のエアミックス用膜状部材26およびエアミックスドア37a、37bの操作位置が最大暖房側の領域(6/10〜10/10の操作範囲)にあるときは、フット用エアミックスドア37a、37bの影響が大きいので、フット用エアミックスドア37a、37bが最大冷房側へ移行したときは、後席用エアミックスドア41の操作位置を最大暖房側に補正する。
【0110】
▲6▼前後独立温度制御において、前席側吹出温度固定のまま、後席側吹出温度を変更するときの補正…その1
前席側の吹出温度固定時において、後席用エアミックスドア41を最大冷房側へ移行させるときは、第2バイパス路18を通って後席用エアミックスチャンバー部40への冷風量が増加し、この影響を受けて第1エアミックスチャンバー部31への冷風量が減少しようとする。そこで、前席側のフェイス、デフロスタ用のエアミックス用膜状部材26の操作位置を最大冷房側へ補正することにより、上記第1エアミックスチャンバー部31への冷風量減少を防止する。
【0111】
また、後席用エアミックスドア41を最大暖房側へ移行させるときは、前席側のフェイス、デフロスタ用のエアミックス用膜状部材26の操作位置を逆に最大暖房側へ補正することにより、上記第1エアミックスチャンバー部31への冷風量増加を防止する。
▲7▼前後独立温度制御において、前席側吹出温度固定のまま、後席側吹出温度を変更するときの補正…その2
前席側の吹出温度固定時において、後席用エアミックスドア41を最大冷房側へ移行させるときは、後席用温風開口部33への温風量減少の影響を受けて第2エアミックスチャンバー部36a、36bへの温風量が増加しようとする。そこで、前席側のフット用エアミックスドア37a、37bの操作位置を最大冷房側へ補正することにより、第2エアミックスチャンバー部36a、36bへの温風量増加を防止する。
【0112】
また、後席用エアミックスドア41を最大暖房側へ移行させるときは、前席側のフット用エアミックスドア37a、37bの操作位置を最大暖房側へ補正することにより、第2エアミックスチャンバー部36a、36bへの温風量減少を防止する。
(他の実施形態)
なお、上記の第1、第2実施形態では、前席側のフェイス、デフロスタ用の第1エアミックス手段として、フィルム状のエアミックス用膜状部材26を用い、また、前席側の吹出モード切替手段として、フィルム状の吹出モード切替用膜状部材45を用いているが、これらの膜状部材26、45の代わりに、板状のドア手段を使用することができる。
【0113】
また、逆に、板状のフット用エアミックスドア37a、37bおよび後席用エアミックスドア41をフィルム状の膜状部材に置換することも可能である。
また、上記の第1、第2実施形態では、前席側のフェイス、デフロスタ用のエアミックス用膜状部材26とフット用エアミックスドア37a、37bとを独立に操作可能として、バイレベル時の上下吹出温度を独立に制御可能としているが、前席側のフェイス、デフロスタ用のエアミックス用膜状部材26とフット用エアミックスドア37a、37bとを連動させて、上下吹出温度を連動して制御するようにしてもよい。
【0114】
また、上記の第1、第2実施形態では、前席側のエアミックス用膜状部材26およびフット用エアミックスドア37a、37bに対して、後席用エアミックスドア41の開度を独立に調整できるようにして、空調風の温度を車室前後で独立に制御できるようにしているが、前席側のエアミックス用膜状部材26およびフット用エアミックスドア37a、37bに対して、後席用エアミックスドア41を連動させて、車室前後の吹出温度を連動して制御するタイプの空調装置にも本発明は適用できる。
【0115】
また、上記の第1、第2実施形態では、ヒータコア16への温水の循環を断続する温水弁16bを設ける場合について説明したが、温水弁16bを廃止して、車両エンジンの運転時にはヒータコア16に常時、温水が循環するタイプの空調装置にも本発明は適用できる。
また、上記の第2実施形態において、前席側のフェイスモードで最大冷房状態が設定され、一方、後席側では最大冷房状態から温度制御域に移行したとき、後席用エアミックスドア41の開度に応じて、前席側のエアミックス用膜状部材26の操作位置を移動させるようにしてもよい。すなわち、後席用エアミックスドア41の開度(後席用温風通路35の開度)が増加するにつれて、補助開口部26bによるヒータコア開口面積を増加させるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態における全体構成を示す概要断面図である。
【図2】(a)は図1のA矢視図、(b)は図1のC矢視図である。
【図3】図1の空調ユニットのフェイスモードの説明図である。
【図4】図1の空調ユニットのバイレベルモードの説明図である。
【図5】図1の空調ユニットのフットモードの説明図である。
【図6】図1の空調ユニットのデフロスタモードの説明図である。
【図7】図1の空調ユニットの後席側最大冷房モードの説明図である。
【図8】図1の空調ユニットの後席側エアミックスモードの説明図である。
【図9】図1の空調ユニットの後席側最大暖房モードの説明図である。
【図10】図1の空調ユニットのフェイスモードにおいて、前席側が最大冷房状態で、後席側が温度制御域である状態を示す説明図である。
【図11】図1の空調ユニットの前席側エアミックス用膜状部材の一部破断平面図である。
【図12】第2実施形態による前席側エアミックス用膜状部材の一部破断平面図である。
【図13】第2実施形態の空調ユニットのフェイスモードにおいて、前席側が最大冷房状態で、後席側が温度制御域である状態を示す説明図である。
【図14】第2実施形態による前席側エアミックス用膜状部材の補助開口部の開口面積に関する特性を示すグラフである。
【図15】第2実施形態における後席用エアミックスドアの作動説明図である。
【図16】第1、第2実施形態における電気制御部のブロック図である。
【符号の説明】
14…空調ケース、16…ヒータコア(加熱用熱交換器)、
17…第1バイパス路、18…第2バイパス路、19…デフロスタ吹出開口部、
20、21…フェイス吹出開口部、22…フット吹出開口部、
26…デフ、フェイス用のエアミックス膜状部材(第1エアミックス手段)、
31…第1エアミックスチャンバー部、32a、32b…フット用温風開口部、
36a、36b…第2エアミックスチャンバー部、
37a、37b…フット用エアミックスドア(第2エアミックス手段)、
45…吹出モード切替用膜状部材。
Claims (12)
- 通風路を形成する空調ケース(14)と、
前記空調ケース(14)内に設置され、空気を冷却する冷却用熱交換器(15)と、
前記空調ケース(14)内の前記冷却用熱交換器(15)の下流側に設置され、空気を加熱する加熱用熱交換器(16)と、
前記空調ケース(14)内において前記加熱用熱交換器(16)の一方の側方に形成され、冷風をバイパスして流す第1バイパス路(17)と、
前記空調ケース(14)内において前記加熱用熱交換器(16)の他方の側方に形成され、冷風をバイパスして流す第2バイパス路(18)と、
前記空調ケース(14)内に形成され、前記第1バイパス路(17)からの冷風と前記加熱用熱交換器(16)からの温風とを混合する第1エアミックスチャンバー部(31)と、
前記空調ケース(14)内で、前記加熱用熱交換器(16)の上流側に配置され、前記第1バイパス路(17)を通過する冷風と前記加熱用熱交換器(16)を通過する温風との風量割合を調整する第1エアミックス手段(26)と、
前記空調ケース(14)内において前記加熱用熱交換器(16)の直後の部位に形成され、前記第2バイパス路(18)からの冷風と前記加熱用熱交換器(16)からの温風とを混合する第2エアミックスチャンバー部(36a、36b)と、
前記空調ケース(14)内で、前記加熱用熱交換器(16)の直後の部位に配置され、前記第2バイパス路(18)からの冷風と前記加熱用熱交換器(16)からの温風との風量割合を調整する第2エアミックス手段(37a、37b)と、
前記第1エアミックスチャンバー部(31)で混合された空調風を車室内乗員の上半身側に向かって吹き出す前席用フェイス吹出開口部(20、21)と、
前記第2エアミックスチャンバー部(36a、36b)で混合された空調風を車室内乗員の足元部に向かって吹き出す前席用フット吹出開口部(22)と、
前記空調ケース(14)内の冷風を導入する後席用冷風通路(39)と、
前記加熱用熱交換器(16)からの温風を導入する後席用温風通路(33、35)と、
前記加熱用熱交換器(16)を通過する温風流れ方向の延長方向に配置され、前記後席用冷風通路(39)からの冷風と前記後席用温風通路(33、35)からの温風とを混合する後席用エアミックスチャンバー部(40)と、
前記後席用冷風通路(39)からの冷風と前記後席用温風通路(33、35)からの温風との風量割合を調整する後席用エアミックス手段(41)と、
前記後席用エアミックスチャンバー部(40)で混合された空調風を後席側に向かって吹き出す後席用吹出開口部(23)とを備えていることを特徴とする車両用空調装置。 - 前記加熱用熱交換器(16)直後の領域の一部の部位に、前記加熱用熱交換器(16)からの温風を前記第2エアミックスチャンバー部(36a、36b)に導くフット用温風通路(32a、32b)を配置するとともに、
前記加熱用熱交換器(16)直後の領域の他の部位に、前記後席用温風通路(33、35)を前記フット用温風通路(32a、32b)からオフセットして配置したことを特徴とする請求項1に記載の車両用空調装置。 - 前記後席用冷風通路(39)を前記第2バイパス路(18)に連通させたことを特徴とする請求項1または2に記載の車両用空調装置。
- 前記第1バイパス路(17)および前記第1エアミックスチャンバー部(31)は前記加熱用熱交換器(16)の上方側に配置され、前記第2バイパス路(18)は前記加熱用熱交換器(16)の下方側に配置されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載の車両用空調装置。
- 前記第2エアミックス手段および前記後席用エアミックス手段の少なくとも一方は板状のエアミックスドア(37a、37b)(41)から構成されていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1つに記載の車両用空調装置。
- 前記第1エアミックス手段(26)と前記第2エアミックス手段(37a、37b)をそれぞれ独立に操作可能に構成したことを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1つに記載の車両用空調装置。
- 前記後席用エアミックス手段(41)を前記第1エアミックス手段(26)および前記第2エアミックス手段(37a、37b)に対して独立に操作可能に構成したことを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1つに記載の車両用空調装置。
- 前記前席用フェイス吹出開口部(20、21)から空調風を吹き出す前席側のフェイスモードで、空調風を最大限冷却する最大冷房時において、前記後席用エアミックス手段(41)を、前記後席用冷風通路(39)からの冷風中に前記後席用温風通路(33、35)からの温風を混合する温度制御域の位置に操作する場合には、前記第1エアミックス手段(26)を、所定量の温風が前記加熱用熱交換器(16)を通過する位置に操作することを特徴とする請求項7に記載の車両用空調装置。
- 前記第1エアミックス手段(26)は、前記所定量の温風が通過する部位を前記加熱用熱交換器(16)のうち、前記前席用フェイス吹出開口部(20、21)から遠ざかる側の部位に設定することを特徴とする請求項8に記載の車両用空調装置。
- 前記加熱用熱交換器(16)に流入する温水の流れを断続する温水弁(16b)を有し、
前記前席側のフェイスモードで、空調風を最大限冷却する最大冷房時において、前記後席用エアミックス手段(41)を前記温度制御域の位置に操作する場合には、前記後席用エアミックス手段(41)の操作後に、前記温水弁(16b)の開弁操作および前記第1エアミックス手段(26)の操作を行うことを特徴とする請求項8または9に記載の車両用空調装置。 - 前記前席側のフェイスモードの最大冷房時において、前記加熱用熱交換器(16)の正面熱交換面積に対する、前記第1エアミックス手段(26)による温風通過開口面積を前記後席用温風通路(33、35)の開口面積と同等以下としたことを特徴とする請求項8ないし10のいずれか1つに記載の車両用空調装置。
- 前記第1エアミックス手段はフィルム状の膜状部材(26)から構成されていることを特徴とする請求項1ないし11のいずれか1つに記載の車両用空調装置。
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