以下、本発明の実施の形態を図に基づいて説明する。
(第1の実施形態)
図1は本発明を適用した第1の実施形態における車両用空調装置の空調ユニット10の上面図、図2は図1のA−A線断面図、図3は図1のB−B線断面図、図4は図2のC−C線要部断面図である。
本実施形態の車両用空調装置の通風系は、大別して、空調ユニット10と、この空調ユニット10に空気を送風する送風機ユニット(図示せず)との2つの部分に分かれている。
送風機ユニットは車室内の計器盤下方部のうち、中央部から助手席側へオフセットして配置されており、これに対し、空調ユニット10は車室内の計器盤下方部のうち、車両左右方向の略中央部に配置されている。
送風機ユニットは周知のごとく外気(車室外空気)と内気(車室内空気)を切替導入する内外気切替箱とこの内外気切替箱を通して空気を吸入して送風する送風機とから構成されている。
図1に示すように、空調ユニット10は、図示しない分割面により分割形成された本体部11aと、本体部11aの左右両側に配置されたサイドダクト部11bとにより構成された樹脂製の空調ケース11を備えている。
空調ユニット10は、共通の空調ケース11内に蒸発器(冷房用熱交換器)12とヒータコア(暖房用熱交換器)13を両方とも一体的に内蔵するタイプのものである。空調ユニット10は、車室内の計器盤下方部の略中央部に、車両の前後、左右方向および上下方向に対して、図1〜3の矢印で示す搭載方向で配置されている。
図2に示すように、空調ケース11本体部11aの、最も車両前方側の部位の側面には空気入口14が形成されている。この空気入口14には、前述の送風機ユニットの送風機ケース出口からの送風空気が流入する。本例の車両用空調装置は左ハンドル車への適用例を示しているので、空気入口14には車両右側から送風空気が流入する。
本体部11a内において空気入口14直後の部位に蒸発器12が配置されている。この蒸発器12は車両前後方向には薄型の形態で本体部11a内通路を横断するように略垂直に配置されている。従って、蒸発器12の車両上下方向に延びる前面に空気入口14からの送風空気が流入する。この蒸発器12は周知のごとく冷凍サイクルの冷媒の蒸発潜熱を空調空気から吸熱して、空調空気を冷却するものである。
そして、蒸発器12の空気流れ下流側(車両後方側)に、所定の間隔を開けてヒータコア13が配置されている。このヒータコア13は本体部11a内の下方側において、車両前方側に若干量傾斜して配置されている。
ヒータコア13は、蒸発器12を通過した冷風を再加熱するものであって、その内部に高温の温水(エンジン冷却水)が流れ、この温水を熱源として空気を加熱するものである。ヒータコア13は周知のごとく温水が通過する偏平チューブとこれに接合されたコルゲートフィンとからなる熱交換用コア部13aを有している。
ヒータコア13の空気流れ下流側(車両後方側)には、補助ヒータ13Aが隣接配置されている。補助ヒータ13Aは、ヒータコア13を流通する冷却水が低温でありヒータコア13を通過する空気を充分に加熱できないときに通電され、不足分の熱量を空気に与える電気ヒータである。ヒータコア13と補助ヒータ13Aとで本実施形態における暖房用熱交換器を構成している。
なお、蒸発器12、ヒータコア13および補助ヒータ13Aの左右方向の幅寸法は、空調ケース11本体部11aの幅寸法と略同等に設計されている。そして、ヒータコア13の熱交換用コア部13aおよび補助ヒータ13Aの空気流路は仕切り部材15により上側の前席用流路16と下側の後席用流路17とに仕切られている。
ここで、仕切り部材15はヒータコア13の空気流れ上流側に配置され、かつ、空調ケース11本体部11a内部空間の車両左右方向の全長にわたって延びるように形成されている。なお、仕切り部材15は、本体部11aと別体であっても、本体部11aと一体成形であってもよい。
本体部11aの空気通路において、ヒータコア13の上方部位には、このヒータコア13をバイパスして空気(冷風)が流れる前席用冷風バイパス通路19が形成されている。前席用冷風バイパス通路19は本実施形態におけるバイパス通路である。
また、ヒータコア13と蒸発器12との間の部位には、フィルム状の前席用エアミックスドア20が配置されている。この前席用エアミックスドア20は、ヒータコア13および補助ヒータ13Aの前席用流路16で加熱される温風と、前席用冷風バイパス通路19を通ってヒータコア13および補助ヒータ13Aをバイパスする冷風との風量割合を調整する本実施形態における風量割合調節手段である。
前席用冷風バイパス通路19の上端部と前席用流路16の下端部のいずれか一方、(例えば、前席用冷風バイパス通路19側)に駆動軸21aを回転可能に配置するとともに、他方(例えば、前席用流路16側)に従動軸21bを回転可能に配置し、所定の開口パターンを有するフィルムドア(前席用エアミックスドア20)の上下の両端部を駆動軸21aと従動軸21bとに連結している。
そして、駆動軸21aにはサーボモータ等からなる電気駆動装置(図示せず)を連結して、この電気駆動装置により駆動軸21aを正逆両方向に回転させるようになっている。また、駆動軸21aと従動軸21bとの間をワイヤ、ベルト等の連動機構により連結しており、駆動軸21aが回転すると従動軸21bが連動して回転するようになっている。この前席用エアミックスドア20は上記風量割合の調整により車室内前席への吹出空気温度を調整する前席側温度調整手段をなす。
空調ケース11本体部11aにおいて、ヒータコア13、補助ヒータ13Aの空気下流側(車両後方側)の部位には、補助ヒータ13Aとの間に所定間隔を開けて上下方向に延びる壁面22が本体部11aに一体成形されている。この壁面22によりヒータコア13および補助ヒータ13Aの前席用流路16直後から上方に向かう前席用温風通路23が形成されている。
前席用温風通路23の下流側(上方側)はヒータコア13および補助ヒータ13Aの上方部において前席用冷風バイパス通路19の下流側と合流し、冷風と温風の混合を行なう前席用空気混合部24を形成している。前席用空気混合部24は、本実施形態における冷温風混合領域である。
空調ケース11本体部11aの車両後方面部において、前席用空気混合部24より車両後方側(乗員寄り)の部位に前席用センタフェイス開口部25が設けられており、この前席用センタフェイス開口部25は図示しない前席用センタフェイスダクトを介して、計器盤上方側略中央に配置されている前席用センタフェイス吹出口に接続され、この前席用センタフェイス吹出口から車室内前席の乗員頭部に向けて風を吹き出す。
前席用センタフェイス開口部25は平板状の前席用センタフェイスドア26により開閉される。この前席用センタフェイスドア26は、本体部11aの後面部近傍にて水平方向に配置された回転軸26aを中心として回動するようになっている。
空調ケース11本体部11aの上面部において、前席用空気混合部24より上方側の部位にインダイレクト開口部27が設けられており、このインダイレクト開口部27は図示しないインダイレクトダクトを介して、計器盤上面略中央に配置されているインダイレクト吹出口に接続され、このインダイレクト吹出口から車室内に向けて風を吹き出す。
このインダイレクト開口部にはドアは配設しておらず、図示しないインダイレクト吹出口に設けられた開閉ドア手段が乗員に開操作されることにより、前席用空気混合部24の空気が直接車室内に吹き出されるようになっている。
空調ケース11本体部11aの左右方向両側面部の外側には、前述したように、サイドダクト部11bが設けられている。サイドダクト部11bは断面が略コの字形状をなし、図3に示すように、上下方向に延設されている。サイドダクト部11b内は、本体部11a両側面部において前席用空気混合部24の側方側の部位に設けられた連通口28により、前席用空気混合部24と連通している。
サイドダクト部11bの上面部において、車両前方側の部位にはデフロスタ開口部29が開口している。このデフロスタ開口部29は前席用空気混合部24から連通口28を介して空調空気が流入するものであって、図示しないデフロスタダクトを介してデフロスタ吹出口に接続され、このデフロスタ吹出口から、車両前面窓ガラスの内面に向けて風を吹き出す。
デフロスタ開口部29は平板状のデフロスタドア30により開閉される。このデフロスタドア30は、空調ケース11サイドダクト部11bの上面部近傍にて水平方向に配置された回転軸30aを中心として回動するようになっている。
サイドダクト部11bの上面部において、デフロスタ開口部29よりも車両後方側の部位には前席用サイドフェイス開口部31が開口している。この前席用サイドフェイス開口部31も前席用空気混合部24から連通口28を介して空調空気が流入するものであって、図示しない前席用サイドフェイスダクトを介して、計器盤左右両端部の上方側に配置されている前席用サイドフェイス吹出口に接続され、この吹出口から、車室内前席の乗員頭部側または車両側面窓ガラスの内面に向けて風を吹き出す。
前席用サイドフェイス開口部31は平板状の前席用サイドフェイスドア32により開閉される。この前席用サイドフェイスドア32は、空調ケース11サイドダクト部11bの上面部近傍にて水平方向に配置された回転軸32aを中心として回動するようになっている。
空調ケース11サイドダクト部11bの側面部において、最下方部位には前席用フット開口部33が設けられている。この前席用フット開口部33も前席用空気混合部24から連通口28を介して空調空気が流入するものであって、図示しない前席用フットダクトを介して、前席用フット吹出口に接続され、この吹出口から、車室内前席の乗員足元に向けて風を吹き出す。
前席用フット開口部33は平板状の前席用フットドア34により開閉される。この前席用フットドア34は、空調ケース11サイドダクト部11bの略中央部にて水平方向に配置された回転軸34aを中心として回動するようになっている。
ここで、前席用センタフェイスドア26、デフロスタドア30、前席用サイドフェイスドア32および前席用フットドア34は、前席用吹出モード切替手段であって、各ドア26、30、32、34は、図示しないリンク機構を介して、サーボモータ等からなる共通のアクチュエータ機構に連結されて、このアクチュエータ機構により連動操作されるようになっている。
図2に示すように、空調ケース11本体部11aの内部においてヒータコア13および補助ヒータ13Aの下方側部位に、蒸発器12出口からの冷風を、ヒータコア13、補助ヒータ13Aをバイパスして通過させる後席用冷風バイパス通路69が形成されている。
また、補助ヒータ13Aの空気下流側部位には、ヒータコア13上流側の仕切り部材15に対応する位置に、回転軸68を中心として回動する仕切りドア67が配置されている。この仕切りドア67が回動上端にあるときには、仕切りドア67が前席用温風通路23と後席用温風通路73とを隔離するようになっている。この後席用温風通路73は、ヒータコア13、補助ヒータ13Aの後席用流路17の下流側を下方側に位置する後席用空気混合部74へ導く通路である。
一方、ヒータコア13の上流側のうち、後席用流路17側の部位に、平板状の後席用エアミックスドア70が回転軸71により回動可能に配置されている。この後席用エアミックスドア70はヒータコア13および補助ヒータ13Aの後席用流路17を通過する温風と後席用冷風バイパス通路69を通過する冷風との風量割合を調整して車室内後席側への吹出空気温度を調整する後席側温度調整手段を構成する。後席用温風通路73からの温風と後席用冷風バイパス通路69からの冷風は後席用空気混合部74において混合して所望温度の空気となる。
後席用エアミックスドア70の回転軸71は水平方向(車両左右方向)に配置され、その一端部は空調ケース11本体部11aの外部に突出して、図示しないリンク機構を介して、サーボモータ等を用いたアクチュエータ機構に連結され、このアクチュエータ機構により後席用エアミックスドア70の回動位置を調整するようになっている。
後席用空気混合部74の車両後方側の部位には後席用センタフェイス開口部75が配置されている。この後席用センタフェイス開口部75は図示しない後席用センタフェイスダクトを介して、後席用センタフェイス吹出口に接続され、この後席用センタフェイス吹出口から車室内後席の乗員頭部に向けて風を吹き出す。
後席用センタフェイス開口部75は平板状の後席用センタフェイスドア76により開閉される。この後席用センタフェイスドア76は、本体部11aの後面部近傍にて水平方向に配置された回転軸76aを中心として回動するようになっている。
空調ケース11本体部11aの下面部において、後席用空気混合部74より下方側の部位に後席用フット開口部83が設けられている。この後席用フット開口部83も後席用空気混合部74から空調空気が流入するものであって、図示しない後席用フットダクトを介して、後席用フット吹出口に接続され、この吹出口から、車室内後席の乗員足元に向けて風を吹き出す。
後席用フット開口部83は平板状の後席用フットドア84により開閉される。この後席用フットドア84は、空調ケース11本体部11aの下面部近傍にて水平方向に配置された回転軸84aを中心として回動するようになっている。
本体部11aの後方側側面部には、後席用サイドフェイス開口部81が開口している。この後席用サイドフェイス開口部81も後席用空気混合部74から空調空気が壁部22の下端を回り込んで流入するものであって、図3に示す連通路81aおよび図示しない後席用サイドフェイスダクトを介して、Bピラー(センターピラー)に配置されている後席用サイドフェイス吹出口に接続され、この吹出口から、車室内後席の乗員頭部側に向けて風を吹き出すようになっている。
ここで、後席用センタフェイスドア76および後席用フットドア84は、後席用吹出モード切替手段であって、各ドア76、84は、図示しないリンク機構を介して、サーボモータ等からなる共通のアクチュエータ機構に連結されて、このアクチュエータ機構により連動操作されるようになっている。
次に、本実施形態の要部である前述した前席用冷風バイパス通路19の出口部分の構成について説明する。この要部構成は左右対称構造をなしているので、図4では、図2のC−C線断面のうち、車両左方側の部位のみを図示している。
図2に示すように、前席用冷風バイパス通路19の出口19aには、本実施形態における案内壁部である温風ガイド壁100が本体部11aに対し一体もしくは別体(本例では一体)で設けられている。図4に示すように、温風ガイド壁100は、前席用冷風バイパス通路19の出口19aのうち、本体部11aの側面部に設けられた連通口28に隣接する部位に、略上下左右方向に延設されている。
そして、温風ガイド壁100は、補助ヒータ13A側かつ連通口28側の角部に矩形状の切欠部101を有する逆L字形状をなしている。すなわち、温風ガイド壁100は、切欠部101が形成されていることにより、ヒータコア13、補助ヒータ13Aと前席用冷風バイパス通路19との並び方向における前席用冷風バイパス通路19側の幅W1が、上記並び方向におけるヒータコア13、補助ヒータ13A側の幅W2より大きく形成されている。
次に、上記構成に基づき本実施形態の車両用空調装置の作動について説明する。
前席側および後席側の吹出モードとしてフェイスモードが選ばれると、デフロスタドア30によりデフロスタ開口部29が閉塞され、前席用フットドア34が前席用フット開口部33を閉塞する。また、前席用センタフェイスドア26が前席用センタフェイス開口部25を開口し、前席用サイドフェイスドア32が前席用サイドフェイス開口部31を開口する。さらに、後席用センタフェイスドア76が後席用センタフェイス開口部75を開口し、後席用フットドア84が後席用フット開口部83を閉塞する。
このとき、前席用エアミックスドア20が操作され、ヒータコア13の前席用流路16を全閉し、前席用冷風バイパス通路19を全開すると最大冷房状態が設定される。この状態において、図示しない送風機ユニットおよび冷凍サイクルが運転されると、送風機ユニットからの送風空気が空気入口14より流入した後、蒸発器12で冷却されて冷風となる。
最大冷房状態では、この冷風がそのまま前席用冷風バイパス通路19を通過して前席用空気混合部24を経て前席用センタフェイス開口部25へ向かい、前席用センタフェイス吹出口から前席乗員の頭部に向けて冷風が吹き出す。また、前席用冷風バイパス通路19を通過した冷風は、連通口28を介してサイドダクト部11b内に流入して前席用サイドフェイス開口部31へ向かい、前席用サイドフェイス吹出口から前席乗員の頭部に向けて冷風が吹き出す。
車室内吹出空気温度の制御のために、前席用エアミックスドア20を最大冷房位置から中間開度位置に操作すると、前席用エアミックスドア20の開度状態に従って冷風の大部分が前席用冷風バイパス通路19を通過し、残余の一部の冷風はヒータコア13および補助ヒータ13Aの前席用流路16に流入して加熱され、温風となり、前席用温風通路23を上昇する。そして、前席用冷風バイパス通路19からの冷風と前席用温風通路23からの温風とが前席用空気混合部24にて混合され、所望温度に調整される。
一方、後席用エアミックスドア70を図2の二点鎖線位置に操作すると、ヒータコア13、補助ヒータ13Aの後席用流路17への空気流れが遮断され、後席用冷風バイパス通路69が全開されるので、後席側の最大冷房状態が設定される。この最大冷房状態では、蒸発器12出口からの冷風がそのまま、後席用冷風バイパス通路69を通過して後席用空気混合部74を経て後席用センタフェイス開口部75および後席用サイドフェイス開口部81へ向かい、後席用センタフェイス吹出口および後席用サイドフェイス吹出口から後席乗員の頭部に向けて冷風が吹き出す。
後席用エアミックスドア70を図2の二点鎖線位置(最大冷房位置)から中間開度位置に操作すると、後席用エアミックスドア70の開度位置に従って後席用冷風バイパス通路69からの冷風と、後席用温風通路73からの温風との風量割合を調整でき、後席用空気混合部74にて冷風と温風が混合され、所望温度に調整できる。
したがって、前席用エアミックスドア20と後席用エアミックスドア70の操作位置をそれぞれ独立に制御することにより、前席と後席とのフェイス吹出空気温度を独立に制御できる。
次に、前席側および後席側の吹出モードとしてバイレベルモードが選ばれると、デフロスタドア30によりデフロスタ開口部29が閉塞され、前席用フットドア34が前席用フット開口部33を開口する。また、前席用センタフェイスドア26が前席用センタフェイス開口部25を開口し、前席用サイドフェイスドア32が前席用サイドフェイス開口部31を開口する。さらに、後席用センタフェイスドア76および後席用フットドア84が、後席用センタフェイス開口部75および後席用フット開口部83をともに開口する。
バイレベルモードは、一般的に春秋等の中間シーズンに多用され、前席用エアミックスドア20が中間開度位置に操作されて、所望温度に調整された風が、前席用センタフェイス開口部25、前席用サイドフェイス開口部31および前席用フット開口部33から車室内前席側の上下に同時に吹き出す。
また、後席用エアミックスドア70を中間開度位置に操作することにより、後席側でも所望温度に調整された風を、後席用センタフェイス開口部75、後席用サイドフェイス開口部81および後席用フット開口部83から車室内後席側の上下に同時に吹き出すことができる。
次に、前席側および後席側の吹出モードとしてフットモードが選ばれると、デフロスタドア30によりデフロスタ開口部29が少量開放され、前席用フットドア34が前席用フット開口部33を全開する。また、前席用センタフェイスドア26が前席用センタフェイス開口部25を閉塞し、前席用サイドフェイスドア32が前席用サイドフェイス開口部31を少量開口する。さらに、後席用センタフェイスドア76が後席用センタフェイス開口部75を閉塞し、後席用フットドア84が後席用フット開口部83を全開する。
フットモードでは主に温風が必要とされることが多い。そして最大暖房状態が設定されると、前席用エアミックスドア20が操作され、前席用冷風バイパス通路19を全閉し、ヒータコア13、補助ヒータ13Aの前席用流路16を全開する。この状態では、送風機ユニットからの送風空気が空気入口14より流入した後、蒸発器12を通過してヒータコア13の前席用流路16に流入して加熱され、温風となる。この温風は前席用温風通路23を上昇して前席用空気混合部24に至り、ここから連通口28を経て前席用フット開口部33へ向かい、前席乗員の足元部に向けて温風が吹き出される。
また、連通口28から流入した温風の一部は、デフロスタ開口部29および前席用サイドフェイス開口部31へ向かい、車両前面および側面の窓ガラスに向けて吹き出される。
また、このとき、後席用エアミックスドア70を図2の実線位置に操作して、後席用冷風バイパス通路69を全閉し、ヒータコア13および補助ヒータ13Aの後席用流路17を全開すると、後席側の最大暖房状態が設定される。この状態では、仕切り部材15の下方の後席側送風空気の全量がヒータコア13および補助ヒータ13Aの後席用流路17で加熱されて温風となり、この温風は後席用温風通路73、後席用空気混合部74を通過して後席用フット開口部83に向かう。さらに、この後席用フット開口部83から後席用のフット吹出口を経て後席乗員の足元部に向けて温風が吹き出す。
前席用エアミックスドア20および後席用エアミックスドア70をそれぞれ独立に最大暖房位置から任意の中間開度位置に操作すると、前席側および後席側の双方において冷風と温風との混合割合をそれぞれ独立に調整することができ、これにより、前席側と後席側のフット吹出空気温度を独立に制御できる。
なお、フットモードでは、前席側において、デフロスタ開口部29および前席用サイドフェイス開口部31からの吹出風量と、前席用フット開口部33からの吹出風量との割合は、通常、3対7から4対6程度の割合であるが、デフロスタドア30を、デフロスタ開口部29の開口度合いを増加する位置に操作して、デフロスタ開口部29からの吹出風量を前席用フット開口部33からの吹出風量と同程度とすれば、フットモードよりも窓ガラスの曇り止め効果の高いフットデフロスタモードを設定できる。
吹出モードとしてデフロスタモードが選択されると、デフロスタドア30によりデフロスタ開口部29が全開され、前席用サイドフェイスドア32が前席用サイドフェイス開口部31を少量開口する。また、前席用センタフェイス開口部25および前席用フット開口部33は各ドア26、34により閉塞される。さらに、このデフロスタモード時のみ、仕切りドア67が二点鎖線で示す下端に回動される。
そして、前席用エアミックスドア20、後席用エアミックスドア70をともに最大暖房位置に操作すれば、ヒータコア13、補助ヒータ13Aの全域(前席用流路16および後席用流路17)で加熱された温風が前席用温風通路23、連通口28と流れ、大部分がデフロスタ開口部29を通して、デフロスタ吹出口から車両前面窓ガラスに向けて吹き出し、残部が前席用サイドフェイス開口部31を通して、前席用サイドフェイス吹出口から車両側面窓ガラスに向けて吹き出し、車両窓ガラスの曇り止めを速やかに行なう。
ここで、デフロスタ開口部29および前席用フット開口部33に同時に空調風が流れるフット吹出モード時およびフットデフロスタ吹出モード時に、前席用エアミックスドア20を中間開度位置に操作した場合の、前席用冷風バイパス通路19出口19a近傍部分(すなわち、前席用空気混合部24)における空気の流れについて説明する。
前席用エアミックスドア20の開度状態に応じて、冷風の一部は前席用冷風バイパス通路19を通過して出口19aから前席用空気混合部24に流入する。一方、残部の冷風はヒータコア13および補助ヒータ13Aの前席用流路16にて加熱されて温風となり、前席用温風通路23を上昇して前席用空気混合部24に流入する。そして、冷風と温風とは前席用空気混合部24にて衝突混合されつつ、前席用空気混合部24側方の連通口28からデフロスタ開口部29および前席用フット開口部33に流れる。
このとき、連通口28の上端部側(ヒータコア13、補助ヒータ13Aと前席用冷風バイパス通路19との並び方向における前席用冷風バイパス通路19側)に流入した空気が主にデフロスタ開口部29に流れ、連通口28の下端部側(ヒータコア13、補助ヒータ13Aと前席用冷風バイパス通路19との並び方向におけるヒータコア13、補助ヒータ側13A側)に流入して空気が主に前席用フット開口部33に流れる。
したがって、前席用空気混合部24において冷風と温風とが充分混合する前に連通口28への流入が行なわれると、デフロスタ開口部29に比較的冷風割合の多い混合風が流れ、前席用フット開口部33に比較的温風割合の多い混合風が流れることになり、前席用フット吹出口からの吹出空気温度に対しデフロスタ吹出口からの吹出空気温度が低い、所謂クールデフ現象が発生する。
ところが、本実施形態の車両用空調装置では、図4に示すように、前席用冷風バイパス通路19の出口19aに温風ガイド壁100が設けられている。この温風ガイド壁100により前席用冷風バイパス通路19の出口19aから流出する冷風を遮り、温風ガイド壁100の図中紙面手前側に沿って、連通口28の上端部側に実線矢印で示すように温風が導かれる。
一方、温風ガイド壁100により前席用冷風バイパス通路19の出口19aで遮られた冷風の一部は、切欠部101を介して、連通口28の下端部側に点線矢印で示すように導かれる。
上述の構成および作動によれば、上端部側に流入した空気が主にデフロスタ開口部29に流れ連通口28の下端部側に流入して空気が主に前席用フット開口部33に流れる連通口28において、上端部側の幅W1が下端部側の幅W2より広い温風ガイド壁100を形成することで、前席用冷風バイパス通路19に近い連通口28上端部側に温風の一部を導入し、補助ヒータ13Aに近い連通口28下端部側に冷風の一部を導入することができる。
すなわち、連通口28に流入する温風の一部と冷風の一部とを入れ換え、温風ガイド壁100を形成していない場合より、デフロスタ開口部29に流れる空気の温度を上昇させるとともに、前席用フット開口部33に流れる空気の温度を下降させることができる。
したがって、デフロスタ開口部29に流れる空気と前席用フット開口部33に流れる空気との温度差を安定して抑制することができる。
温度差を抑制する方法として、連通口28の開口面積を縮小する方法もあるが、通風抵抗の上昇を招き、風量低下や騒音発生という不具合を起こしやすい。本実施形態によれば、開口面積を充分に確保しつつ、温度差を抑制することが可能である。
なお、本実施形態では、デフロスタ開口部29が実質的な第1吹出口に相当し、前席用フット開口部33が実質的な第2吹出口に相当する。
また、切欠部101は温風ガイド壁100の連通口28側に形成されているので、冷風の一部を、連通口28の下端部側に導き易い。すなわち、連通口28に流入する温風の一部と冷風の一部とを入れ換え易い。
また、温風ガイド壁100は平面状に形成されるとともに、切欠部101は矩形状に形成されている。したがって、切欠部101を備える温風ガイド壁100の設計および成形が比較的容易である。
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態について図5に基づいて説明する。
本第2の実施形態は、前述の第1の実施形態と比較して、温風ガイド壁の形状が異なる。なお、第1の実施形態と同様の部分については、同一の符号をつけ、その説明を省略する。
図5に示すように、本実施形態では、温風ガイド壁200は、補助ヒータ13A側かつ連通口28側の角部に三角形状の切欠部201を有する台形状をなしている。この温風ガイド壁200においても、切欠部201が形成されていることにより、ヒータコア13、補助ヒータ13Aと前席用冷風バイパス通路19との並び方向における前席用冷風バイパス通路19側の幅W1が、上記並び方向におけるヒータコア13、補助ヒータ13A側の幅W2より大きく形成されている。
したがって、フット吹出モード時およびフットデフロスタ吹出モード時に、前席用エアミックスドア20を中間開度位置に操作した場合には、温風ガイド壁200により、前席用冷風バイパス通路19の出口19aから流出する冷風を遮り、温風ガイド壁200の図中紙面手前側に沿って、連通口28の上端部側に実線矢印で示すように温風が導かれる。
一方、温風ガイド壁200により前席用冷風バイパス通路19の出口19aで遮られた冷風の一部は、切欠部201を介して、連通口28の下端部側に点線矢印で示すように導かれる。
このようにして、連通口28に流入する温風の一部と冷風の一部とを入れ換え、温風ガイド壁200を形成していない場合より、デフロスタ開口部29に流れる空気の温度を上昇させるとともに、前席用フット開口部33に流れる空気の温度を下降させることができ、デフロスタ開口部29に流れる空気と前席用フット開口部33に流れる空気との温度差を安定して抑制することができる。
また、切欠部201は三角形状に形成されているので、切欠部201を備える温風ガイド壁200の設計および形成が比較的容易である。
また、温風ガイド壁200は、下端側から上端側に向かって幅が漸増しているので、温風の一部を連通口28の上端部側に導き易い。
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態について図6に基づいて説明する。
本第3の実施形態は、前述の第1の実施形態と比較して、温風ガイド壁の形状が異なる。なお、第1の実施形態と同様の部分については、同一の符号をつけ、その説明を省略する。
図6に示すように、本実施形態では、温風ガイド壁300は、補助ヒータ13A側かつ連通口28側の角部に上下方向に長い略扇形状の切欠部301を有している。この温風ガイド壁300においても、切欠部301が形成されていることにより、ヒータコア13、補助ヒータ13Aと前席用冷風バイパス通路19との並び方向における前席用冷風バイパス通路19側の幅W1が、上記並び方向におけるヒータコア13、補助ヒータ13A側の幅W2より大きく形成されている。
したがって、フット吹出モード時およびフットデフロスタ吹出モード時に、前席用エアミックスドア20を中間開度位置に操作した場合には、温風ガイド壁300により、前席用冷風バイパス通路19の出口19aから流出する冷風を遮り、温風ガイド壁300の図中紙面手前側に沿って、連通口28の上端部側に実線矢印で示すように温風が導かれる。
一方、温風ガイド壁300により前席用冷風バイパス通路19の出口19aで遮られた冷風の一部は、切欠部301を介して、連通口28の下端部側に点線矢印で示すように導かれる。
このようにして、連通口28に流入する温風の一部と冷風の一部とを入れ換え、温風ガイド壁300を形成していない場合より、デフロスタ開口部29に流れる空気の温度を上昇させるとともに、前席用フット開口部33に流れる空気の温度を下降させることができ、デフロスタ開口部29に流れる空気と前席用フット開口部33に流れる空気との温度差を安定して抑制することができる。
また、切欠部301は略扇形状に形成されているので、切欠部301の切欠面積を確保し易いとともに、略扇形状の円弧に沿って温風の一部を連通口28の上端部側に導き易い。
(第4の実施形態)
次に、第4の実施形態について図7に基づいて説明する。
本第4の実施形態は、前述の第1の実施形態と比較して、温風ガイド壁の形状が異なる。なお、第1の実施形態と同様の部分については、同一の符号をつけ、その説明を省略する。
図7に示すように、本実施形態では、温風ガイド壁400は台形状をなし、切欠部401は、連通口28側の上下方向全域に形成された矩形状の切欠部401aと、補助ヒータ13A側かつ連通口28反対側の角部に形成された三角形状の切欠部401bとにより構成されている。
この温風ガイド壁400においても、切欠部401が形成されていることにより、ヒータコア13、補助ヒータ13Aと前席用冷風バイパス通路19との並び方向における前席用冷風バイパス通路19側の幅W1が、上記並び方向におけるヒータコア13、補助ヒータ13A側の幅W2より大きく形成されている。
したがって、フット吹出モード時およびフットデフロスタ吹出モード時に、前席用エアミックスドア20を中間開度位置に操作した場合には、温風ガイド壁400により、前席用冷風バイパス通路19の出口19aから流出する冷風を遮り、温風ガイド壁400の図中紙面手前側に沿って、連通口28の上端部側に実線矢印で示すように温風が導かれる。
一方、温風ガイド壁400により前席用冷風バイパス通路19の出口19aで遮られた冷風の一部は、切欠部401(切欠部401a、401b)を介して、連通口28の下端部側に点線矢印で示すように導かれる。
このようにして、連通口28に流入する温風の一部と冷風の一部とを入れ換え、温風ガイド壁400を形成していない場合より、デフロスタ開口部29に流れる空気の温度を上昇させるとともに、前席用フット開口部33に流れる空気の温度を下降させることができ、デフロスタ開口部29に流れる空気と前席用フット開口部33に流れる空気との温度差を安定して抑制することができる。
(第5の実施形態)
次に、第5の実施形態について図8に基づいて説明する。
本第5の実施形態は、前述の第1の実施形態と比較して、温風ガイド壁の形状が異なる。なお、第1の実施形態と同様の部分については、同一の符号をつけ、その説明を省略する。
図8に示すように、本実施形態における温風ガイド壁500の切欠部501は、補助ヒータ13A側かつ連通口28側の角部に形成された略扇形状の切欠部501aと、補助ヒータ13A側かつ連通口28反対側の角部に形成された三角形状の切欠部501bとにより構成されている。
この温風ガイド壁500においても、切欠部501が形成されていることにより、ヒータコア13、補助ヒータ13Aと前席用冷風バイパス通路19との並び方向における前席用冷風バイパス通路19側の幅W1が、上記並び方向におけるヒータコア13、補助ヒータ13A側の幅W2より大きく形成されている。
したがって、フット吹出モード時およびフットデフロスタ吹出モード時に、前席用エアミックスドア20を中間開度位置に操作した場合には、温風ガイド壁500により、前席用冷風バイパス通路19の出口19aから流出する冷風を遮り、温風ガイド壁500の図中紙面手前側に沿って、連通口28の上端部側に実線矢印で示すように温風が導かれる。
一方、温風ガイド壁500により前席用冷風バイパス通路19の出口19aで遮られた冷風の一部は、切欠部501(切欠部501a、501b)を介して、連通口28の下端部側に点線矢印で示すように導かれる。
このようにして、連通口28に流入する温風の一部と冷風の一部とを入れ換え、温風ガイド壁500を形成していない場合より、デフロスタ開口部29に流れる空気の温度を上昇させるとともに、前席用フット開口部33に流れる空気の温度を下降させることができ、デフロスタ開口部29に流れる空気と前席用フット開口部33に流れる空気との温度差を安定して抑制することができる。
また、連通口28側の切欠部501aは略扇形状に形成されているので、切欠部501aの切欠面積を確保し易いとともに、略扇形状の円弧に沿って温風の一部を連通口28の上端部側に導き易い。
(第6の実施形態)
次に、第6の実施形態について図9に基づいて説明する。
本第6の実施形態は、前述の第1の実施形態と比較して、温風ガイド壁の形状が異なる。なお、第1の実施形態と同様の部分については、同一の符号をつけ、その説明を省略する。図9(a)は第1の実施形態における図4に相当する図であり、図9(b)は図9(a)のD−D線断面図である。
図9(a)に示すように、本実施形態では、温風ガイド壁600は、補助ヒータ13A側かつ連通口28側の角部に矩形状の切欠部601を有する逆L字形状をなしている。また、図9(b)に示すように、温風ガイド壁600は、連通口28に近い部位ほど、前席用冷風バイパス通路19の空気流れ上流側に位置するように傾斜した平面状に形成されている。
この温風ガイド壁600においても、切欠部601が形成されていることにより、ヒータコア13、補助ヒータ13Aと前席用冷風バイパス通路19との並び方向における前席用冷風バイパス通路19側の幅W1が、上記並び方向におけるヒータコア13、補助ヒータ13A側の幅W2より大きく形成されている。
したがって、フット吹出モード時およびフットデフロスタ吹出モード時に、前席用エアミックスドア20を中間開度位置に操作した場合には、温風ガイド壁600により、前席用冷風バイパス通路19の出口19aから流出する冷風を遮り、温風ガイド壁600の図9(a)中紙面手前側、図9(b)中下方側に沿って、連通口28の上端部側に実線矢印で示すように温風が導かれる。
一方、温風ガイド壁600により前席用冷風バイパス通路19の出口19aで遮られた冷風の一部は、切欠部601を介して、連通口28の下端部側に点線矢印で示すように導かれる。
このようにして、連通口28に流入する温風の一部と冷風の一部とを入れ換え、温風ガイド壁600を形成していない場合より、デフロスタ開口部29に流れる空気の温度を上昇させるとともに、前席用フット開口部33に流れる空気の温度を下降させることができ、デフロスタ開口部29に流れる空気と前席用フット開口部33に流れる空気との温度差を安定して抑制することができる。
また、温風ガイド壁600は、連通口28に近い部位ほど前席用冷風バイパス通路19の空気流れ上流側に位置するように傾斜しているので、連通口28を比較的大きく形成できるとともに、傾斜した温風ガイド壁600に沿って温風の一部を連通口28に流入させ易く、若干連通口28側を向いて開口した切欠部601を介して、冷風の一部を連通口28に流入させ易い。
また、温風ガイド壁600は平面状に形成されるとともに、切欠部601は矩形状に形成されている。したがって、切欠部601を備える温風ガイド壁600の設計および成形が比較的容易である。
(第7の実施形態)
次に、第7の実施形態について図10に基づいて説明する。
本第7の実施形態は、前述の第1、第6の実施形態と比較して、温風ガイド壁の形状が異なる。なお、第1、第6の実施形態と同様の部分については、同一の符号をつけ、その説明を省略する。図10(a)は第1の実施形態における図4に相当する図であり、図10(b)は図10(a)のE−E線断面図である。
図10(a)に示すように、本実施形態では、温風ガイド壁700は、車両後方側から見た場合に、補助ヒータ13A側かつ連通口28側の角部に矩形状の切欠部701を有する逆L字形状をなしている。ただし、図10(b)に示すように、温風ガイド壁700は、連通口28に近い部位ほど、前席用冷風バイパス通路19の空気流れ上流側に位置するように傾斜するとともに、連通口28側に突出した曲面状に形成されている。
この温風ガイド壁700においても、切欠部701が形成されていることにより、ヒータコア13、補助ヒータ13Aと前席用冷風バイパス通路19との並び方向における前席用冷風バイパス通路19側の幅W1が、上記並び方向におけるヒータコア13、補助ヒータ13A側の幅W2より大きく形成されている。
したがって、フット吹出モード時およびフットデフロスタ吹出モード時に、前席用エアミックスドア20を中間開度位置に操作した場合には、温風ガイド壁700により、前席用冷風バイパス通路19の出口19aから流出する冷風を遮り、温風ガイド壁700の図9(a)中紙面手前側、図9(b)中下方側に沿って、連通口28の上端部側に実線矢印で示すように温風が導かれる。
一方、温風ガイド壁700により前席用冷風バイパス通路19の出口19aで遮られた冷風の一部は、切欠部701を介して、連通口28の下端部側に点線矢印で示すように導かれる。
このようにして、連通口28に流入する温風の一部と冷風の一部とを入れ換え、温風ガイド壁700を形成していない場合より、デフロスタ開口部29に流れる空気の温度を上昇させるとともに、前席用フット開口部33に流れる空気の温度を下降させることができ、デフロスタ開口部29に流れる空気と前席用フット開口部33に流れる空気との温度差を安定して抑制することができる。
また、温風ガイド壁700は、連通口28に近い部位ほど前席用冷風バイパス通路19の空気流れ上流側に位置するように曲面状に傾斜しているので、連通口28を比較的大きく形成できるとともに、傾斜した温風ガイド壁700に沿って温風の一部を連通口28に流入させ易く、連通口28側を向いて開口した切欠部701を介して、冷風の一部を連通口28に流入させ易い。
(他の実施形態)
上記各実施形態では、温風ガイド壁の切欠部を少なくとも連通口28側に形成していたが、これに限定されるものではなく、ヒータコア13、補助ヒータ13Aと前席用冷風バイパス通路19との並び方向における前席用冷風バイパス通路19側の幅W1が、上記並び方向におけるヒータコア13、補助ヒータ13A側の幅W2より大きくなっていればよい。
例えば、図11に示すように、温風ガイド壁800の補助ヒータ13A側かつ連通口28反対側の角部に切欠部801を形成し、前席用冷風バイパス通路19側の幅W1をヒータコア13、補助ヒータ13A側の幅W2より大きくしたものであってもよい。上記各実施形態より若干効果は低減するものの、実線矢印で示すように温風の一部を案内するとともに破線矢印で示すように冷風一部を案内して、デフロスタ開口部29に流れる空気と前席用フット開口部33に流れる空気との温度差を安定して抑制することができる。
また、切欠部の形状も適宜1つもしくは複数を組み合わせて採用してかまわない。
また、上記各実施形態では、第1吹出口はデフロスタ開口部29であり、第2吹出口は前席用フット開口部33であったが、複数の吹出口が冷温風混合領域に開口した共通の連通口に連設されているものであれば、本発明を適用することができる。
例えば、共通の連通口にフェイス開口部とフット開口部が連設されている場合には、本発明を適用してバイレベル吹出モード時において過度に上下吹出温度差が発生することを抑制することが可能である。
また、上記各実施形態では、暖房用熱交換器の上方側に冷風バイパス通路が並設された車両用空調装置について説明したが、暖房用熱交換器と冷風バイパス通路との位置関係はこれに限定されるものではない。
例えば、暖房用熱交換器が水平方向に延設され、その側方に冷風バイパス通路が配置されて、冷風バイパス通路を上昇した冷風と、暖房用熱交換器を通過した後冷風バイパス通路上方側に向けて指向された温風とを混合する領域に、複数の吹出口が連設された連通口を配設するものであってもよい。
また、上記各実施形態では、連通口28は冷温風を混合する領域の側方側に形成していたが、側方側に限定されるものではない。例えば、混合領域の車両後方側に形成したものであってもよい。ただし、連通口を混合領域の側方側に形成する場合の方が、連通口に連設された複数の吹出口の温度差制御が比較的困難であるので、本発明を適用したときの効果は大きい。
また、上記各実施形態では、前席側への吹出温度と後席側への吹出温度とを独立してコントロール可能な車両用空調装置について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、運転席側への吹出温度と助手席側への吹出温度とを独立してコントロール可能な車両用空調装置であってもよいし、車室内を複数領域に分割せずにコントロールする車両用空調装置にも本発明は適用可能である。