以下、本発明の車両用空調装置を、具体化した実施形態を図面に従って説明する。図1は、本実施形態による後席用空調ユニットの左側断面図である。図2は、本実施形態による後席用空調ユニットの右側断面図である。図3は、図1のX−Xからみた模式的断面図である。図4は、図1のIV−IVからみた模式的断面図である。図5は、図2のY−Yからみた模式的断面図である。図6は、図2のVI−VIからみた模式的断面図である。
まず、図1、図2、図3、および図5により全体構成を説明すると、空調ユニット10はワンボックス型のRV車における後席側(2番目、3番目の座席)の領域を空調する後席用空調ユニットとして構成されているもので、ワンボックス型のRV車における左右の車体側壁部のいずれか一方に搭載される。より具体的に述べると、この空調ユニット10は左右の車体側壁部において、車両の後輪のタイヤハウス11の上部から後方にかけて配置される。その場合、この空調ユニット10は車両の前後方向、左右方向(幅方向)および上下方向に対して、図1、図2、図3、および図5の矢印方向に配置して、図示しない車体側壁部の内板と外板との間の空間に搭載される。なお、ここで、図1は後述の空調ケース12の左側ケース(図3および図5におけるa面側の空調ケース部)、図2は空調ケース12の右側ケース(図3および図5のb面側の空調ケース部)が示されている。
次に、本実施形態による後席側空調ユニット10の具体的構成について詳しく説明すると、後席側空調ユニット10は、樹脂材料(例えばポリプロピレン)で成形された空調ケース12を有している。この空調ケース12は複数の分割ケースをネジ、金属バネクリップ等の締結手段により一体に締結して構成されるものであって、その内部に空調空気の通路を形成している。
この空調ケース12において、車両前方側で、かつ、上下方向の中間部位に送風機13が配置されている(図1参照)。この送風機13は、図1に示すように、遠心式多翼送風ファン(シロッコファン)14、ファン駆動用モータ15、およびスクロールケーシング16から構成されている。ここで、送風ファン14は、その軸方向の両方向から車室内空気(内気)を吸込可能に構成されている。図1に示す左側ケースおよび図2に示す右側ケースのスクロールケーシング16には、それぞれ軸方向の外周側に吸入口(図示せず)が設けられている。
そして、図1および図2に示すように、スクロールケーシング16の出口側から車両後方へ向かって斜め下方に傾斜する空気通路17が空調ケース12内の底面部に形成されている。そして、空調ケース12内において、車両後方側で、かつ、下方部位に蒸発器18が配置されている。ここで、図1に示すように、蒸発器18は空調ケース12の底面部より所定高さだけ上方部位につまり車両後方へ向かって斜め下方に傾斜して配置されている。なお、蒸発器18は空調ケース12の底面部より所定高さだけ上方部位に離して略水平方向に配置されていてもよい。いずれの蒸発器18の配置状態であっても、蒸発器18の下側まで空気通路17が延びるように形成されている。
この蒸発器18は、前席側空調ユニット(図示せず)の冷凍サイクルから分岐された冷媒を送風空気から吸熱して蒸発させることにより、空気を冷却する冷房用熱交換器であって、略長方形の薄型形状である。なお、蒸発器18は、水平より所定角度θ1(例えば、10〜45°程度)だけ、空気下流側(車両後方側)が下方へ傾斜するように配置している。従って、空気通路17は、蒸発器18の下側へ向かって下方へ傾斜している。これは、蒸発器18に発生する凝縮水を空気流れに沿って空気下流側の傾斜下端部に集め、この傾斜下端部より凝縮水を下方へスムースに排出するためである。空調ケース12のうち、蒸発器18の下方に位置する底面部は凝縮水受け部を構成し、その最底部に凝縮水排出口(図示せず)が開口している。蒸発器18は、略上下方向に所定間隔を隔てて対向配置される一対のタンク部18a、18bの間に熱交換部18cを配置した構成であり、この熱交換部18cは、偏平チューブ(図示せず)と、複数のコルゲート状の伝熱フィン(図示せず)とを交互に並列的に多数積層して接合している。これにより、空気通路17から蒸発器18の下側空間に流入した送風空気は矢印Aのように熱交換部18cを下方から上方へ通過するようになっている。
そして、空調ケース12内において、蒸発器18の空気流れ下流側である上方側に、ヒータコア20が略水平方向(車両前後方向)に配置されている。ここで、ヒータコア20は、車両エンジン(図示せず)からの温水により空気を加熱する暖房用熱交換器である。このヒータコア20は、略水平方向に所定間隔を隔てて対向配置した温水入口タンク部20aと温水出口タンク部20bとの間に熱交換部20cを配置した構成であり、この熱交換部20cは、複数の偏平チューブ(図示せず)と、複数のコルゲート状の伝熱フィン(図示せず)とを交互に並列的に積層し接合した構成である。このヒータコア20は、いわゆる全パスタイプ(一方向流れタイプ)のヒータコアであり、温水入口タンク部20aから温水を複数の偏平チューブの全てを通して、温水出口タンク部20bに向かって車両前方から後方への一方向に流す構成となっている。上述したように、傾斜配置された蒸発器18に対して、ヒータコア20を所定角度θ2で、略水平方向に配置しているのであるが、その際に、蒸発器18の上方の一端部(本例では、車両前方側に位置するタンク部18b側)に、ヒータコア20の右方の一端部(本例では温水入口タンク部20a側)を近接配置している。
上述するように、ヒータコア20の略水平方向の車両前方側の一端部を蒸発器18の上方の一端部に近接配置して、ヒータコア20を蒸発器18の上方側へ所定角度θ2で配置しているため、ヒータコア20よりも車両後方側の部位に、ヒータコア20の熱交換部20cの面に対して所定角度(90°−θ2)で車両後方側に延びる空間22を形成できる。そして、この空間22の上方部側に、ヒータコア20をバイパスして冷風を矢印Bのように流す冷風バイパス通路23が形成されている。図1示されるCは冷風バイパス通路23の開口範囲を示す。
ヒータコア20の上方端部(本例では温水出口タンク部20b)付近で、図1に示すように、冷風バイパス通路23側(車両後方側)の部位にはエアミックスドア24の回転軸25が配置されている。この回転軸25の軸方向は車両左右(幅)方向(図1および図2の紙面垂直方向)に延びるように配置され、回転軸25の両端部は空調ケース12の壁面の軸受孔(図示せず)に回動可能に保持される。回転軸25には板状のエアミックスドア24の上端部が一体に連結され、エアミックスドア24は回転軸25を中心として図1に示す実線位置Dと2点鎖線位置Eとの間で回動可能になっている。
ここで、エアミックスドア24の実線位置Dはヒータコア20の熱交換部20cの通風路を全閉する最大冷房位置であって、2点鎖線位置Eは冷風バイパス通路23を全閉する最大暖房位置である。エアミックスドア24がヒータコア20の熱交換部20cの通風路を開けると、空間22の空気は矢印Fのように熱交換部20cを下方側から上方側へと通過する。
エアミックスドア24は周知のごとくヒータコア20の熱交換部20cを通過する温風(矢印F)とヒータコア20をバイパスして冷風バイパス通路23を通過する冷風(矢印B)との風量割合を調整して車室内への吹出空気温度を調整する温度調整手段である。ヒータコア20の空気下流側(車両前方側)には、ヒータコア20通過後の温風を矢印Fのように上方へ流す温風通路26が形成され、冷風バイパス通路23はヒータコア20の上方部で若干、車両前方側へ向かうように湾曲しており、ヒータコア20の上方部に温風通路26からの温風と冷風バイパス通路23からの冷風とを混合する空気混合部27が形成される。
空調ケース12の上面部で車両後方側の部位にフェイス開口部28を配置して、このフェイス開口部28を、冷風バイパス通路23の上方側において略直線的な延長方向に配置している。このフェイス開口部28は、図示しないフェイスダクトおよびフェイス吹出口を介して、後席側乗員の頭部に向けて空気を吹出すものである。
また、空調ケース12の上面部で、フェイス開口部28よりも車両前方側の部位にフット開口部29が開口している。このフット開口部29は送風機13の上方側において温風通路26に近接する部位に配置されている。このフット開口部29は図示しないフットダクトおよびフット吹出口を介して後席側乗員の足元部に向けて空気を吹出すものである。
空調ケース12の上面部で、フェイス開口部28の車両前方側端部に吹出モードドア30の回転軸31が配置されている。この回転軸31の軸方向は車両左右(幅)方向(図1および図2の紙面垂直方向)に延びるように回転軸25と平行に配置され、回転軸31の両端部は空調ケース12の壁面の軸受孔(図示せず)に回動可能に保持される。この回転軸31には板状の吹出モードドア30の上端部が一体に連結され、吹出モードドア30は回転軸31を中心として図1に示す2点鎖線位置Gと2点鎖線位置Hとの間で回動可能になっており、図1に示す実線位置はバイレベルモード時の中間位置(中間操作位置)を示している。
なお、吹出モードドア30の回転軸31は、図示しないリンク機構を介して吹出モード操作機構に連結されて、この吹出モード操作機構によりドア30を開閉する。同様に、エアミックスドア24の回転軸25もリンク機構を介して温度調整操作機構に連結されて、この温度調整操作機構によりエアミックスドア24の開度が調整される。これらの吹出モード操作機構および温度調整操作機構は、サーボモータを用いたオート機構で構成しても、乗員の手動操作力によるマニュアル機構のいずれでもよい。
次に、本発明の特徴とする、バイレベルモード時の上下吹出温度差を最適化するための、副温風ガイド通路と副冷風ガイド通路と、および主冷風ガイド手段と主温風ガイド手段について詳述する。バイレベルモード時では、吹出モードドア30が図1の実線で示される中間位置に操作される。この際、吹出モードドア30の回転軸31とエアミックスドア24の回転軸25がともに車両幅方向に平行に配置され、吹出モードドア30の板面が冷風バイパス通路23からの冷風流れBと温風通路26からの温風流れFの境界面と略平行な方向に延びるようになっている。この吹出モードドア操作位置では、特別な対策を施さない場合には、冷風流れBの多くは吹出モードドア30の板面に沿ってフェイス開口部28側へ流入し、温風流れFの多くはフット開口部29側へ流入することになる。
そこで、まず、本実施形態では、冷風流れBの一部を積極的にフット開口部29側へ流入させる副冷風ガイド通路32と、温風流れFの一部を積極的にフェイス開口部28側へ流入させる副温風ガイド通路33とを以下のように構成している。
図3、図5は副冷風ガイド通路32および副温風ガイド通路33を示す要部の断面図で、図3は図1のX−X断面図、図5は図2のY−Y断面図であり、吹出モードドア30はバイレベルモード時の操作位置を示している。副冷風ガイド通路32は、図5に示すように、空調ケース12のb面側(車両右側)の壁面を外方側へ部分的に膨出させることにより形成される。より具体的には、空調ケース12のb面側(車両右側)の壁面のうち、吹出モードドア30のバイレベルモード操作位置において、吹出モードドア30のb面側(車両右側)の側面に対向する壁面34(図3および図5参照)を外方側へ膨出させ、これにより、この膨出壁面34と吹出モードドア30のb面側(車両右側)の側面との間に副冷風ガイド通路32を形成している。
さらに、冷風バイパス通路23からの冷風流れBの一部の冷風(以下、副冷風と呼ぶ)B2を副冷風ガイド通路32側へすなわちb面側(車両右側)へ向けるための副冷風ガイド壁面(副冷風ガイド手段)35を、空調ケース12のa面側(車両左側)の壁面に一体成形している(図3および図5参照)。この副冷風ガイド壁面35は、より具体的には、図5に示すように、空調ケース12のa面側(車両左側)の壁面うち、冷風バイパス通路23の形成部位の側面(車両後方寄りの部位)に配置されている。そして、副冷風ガイド壁面35は、図5に示すように、冷風流れBの下流側(上方側)へ行くに従って冷風流れBをb面側(車両右側)へ向けるように傾斜している。
これにより、バイレベルモード時には、この副冷風ガイド壁面35により冷風流れBがb面側へ向けられて、副冷風B2が副冷風ガイド通路32に流入し易く形成される。さらに、この副冷風ガイド通路32により副冷風B2は吹出モードドア30のb面側の側面をバイパスして、吹出モードドア30の下流側で、かつ、フット開口部29側の部位に案内されるようになっている。
また、図3において、副冷風ガイド通路32の副冷風B2は紙面上方へ流れてフット開口部29側へ流入する。同様に、温風通路26からの温風の主流(以下、主温風と呼ぶ)F1も吹出モードドア30の板面に沿って紙面上方へ流れてフット開口部29側へ流入する。
一方、副温風ガイド通路33は、図3に示すように、空調ケース12のa面側(車両左側)の壁面を外方側へ部分的に膨出させることにより形成される。より具体的には、空調ケース12のa面側(車両左側)の壁面のうち、吹出モードドア30のバイレベルモード操作位置において、吹出モードドア30のa面側(車両左側)の側面に対向する壁面36(図3および図5参照)を外方側へ部分的に膨出させ、これにより、この膨出壁面36と吹出モードドア30のa面側(車両左側)の側面との間に副温風ガイド通路33を形成している。
さらに、温風通路26からの温風流れFの一部の温風(以下、副温風と呼ぶ)F2(図2参照)を副温風ガイド通路33側へすなわちa面側(車両左側)へ向けるための副温風ガイド壁面(副温風ガイド手段)37を、空調ケース12のb面側(車両右側)の壁面に一体成形している(図3および図5参照)。この副温風ガイド壁面37は、より具体的には、図2、図3および図5に示すように、空調ケース12のb面側(車両右側)の壁面うち、副冷風ガイド通路32の下側で、かつ、送風機13の車両後方側の部位に配置され、そして、図3に示すように、温風通路26からの温風流れFを下流側(上方側)へ行くに従ってa面側(車両左側)へ向けるように傾斜している。
バイレベルモード時には、この副温風ガイド壁面37により温風流れFがa面側へ向けられて、副温風F2が略90°方向転換(旋回)して副温風ガイド通路33に流入し易く形成される。さらに、この副温風ガイド通路33により温風F2は吹出モードドア30のa面側の側面をバイパスして、吹出モードドア30の下流側で、かつ、フェイス開口部28側の部位に案内されるようになっている。
なお、図5において、副温風ガイド通路33の温風F2は紙面上方へ流れてフェイス開口部28側へ流入する。同様に、冷風バイパス通路23からの冷風の主流(以下、主冷風と呼ぶ)B1も吹出モードドア30の板面に沿って紙面上方へ流れてフェイス開口部28側へ流入する。また、図3において、副冷風ガイド通路32の副冷風B2は紙面上方へ流れてフット開口部29側へ流入する。同様に、温風通路26からの温風の主温風F1も吹出モードドア30の板面に沿って紙面上方へ流れてフット開口部29側へ流入する。
ここで、空調ユニット10の小型化等で空調ケース12の図1の上下方向を短くする場合には、ヒータコア20下流の温風通路26に直ぐ隣接してフット開口部29を配置し、ヒータコア20をバイパスした冷風が流通する冷風バイパス通路23に直ぐ隣接してフェイス開口部28を配置することになるため、空気混合部27は、ヒータコア20の上方部に温風通路26からの温風Fと冷風バイパス通路23からの冷風Bとを混合するための混合空間としてその空間容積が従来構成に比べて小さくなる。そのため、従来構成に比べて主温風F1および主冷風B1はそれぞれフット開口部29、フェイス開口部28に流入し易くなり、主温風F1と副冷風B2の風量割合の調整による温度コントルール性、主冷風B1と副温風F2の風量割合の調整による温度コントルール性が低下する。
そこで、本実施形態では、さらに、主温風F1の風量を調整する主温風ガイド手段51と、主冷風B1の風量を調整する主冷風ガイド手段52とを以下のように構成している。なお、図4、図6はそれぞれ主温風ガイド手段51、主冷風ガイド手段を示す模式的断面で、図4は図1のIV−IV断面図、図6は図2のVI−VI断面図である。また、主温風ガイド手段51を副温風ガイド手段37と区別するための便宜上、図3中に図1のIV−IVの断面線相当を付し、主温風ガイド手段51、副温風ガイド手段37の傾斜方向を示すようにしている。同様に、図6中に図2の断面線相当を付し、主冷風ガイド手段52、副冷風ガイド手段35の傾斜方向を示すようにしている。
主温風ガイド手段51は、図1および図3に示すように、温風通路26の下流側に配設され、空調ケース12のa面側(車両左側)の壁面に一体形成されている。この主温風ガイド手段51は、より具体的には、図3および図4に示すように、空調ケース12のa面側(車両左側)の壁面うち、温風通路26の下流側で、かつ吹出モードドア30の上流側に配置され、そして、図4に示すように、温風通路26からの温風流れFを、フット開口部29に向かう下流側(略上方側)へ行くに従ってb面側(車両右側)へ向けるように傾斜している。そしてこの傾斜面の頂部は、図4に示すように、段差HFが形成されている。この段差HFの高さの寸法を変えることで、温風通路26からの温風流れFを縮流させ、フット開口部29に向かう主温風F1の風量が調節される。なお、主温風ガイド手段51は、段差HFを有する壁板状等の段差部51aであってもよい。
なお、バイレベルモード時には、副温風ガイド手段37によって副温風ガイド通路33に流れ易くするため温風流れFのうち副温風F2を略90°方向転換させているので、図3に示すように、主温風ガイド手段51と副温風ガイド手段37は、略併行に傾斜するのでなく、互いの傾斜方向が交差するように形成されるのが好ましい。
さらになお、主温風ガイド手段51と副温風ガイド手段37は、それぞれ空調ケース12のa面側(車両左側)の壁面、b面側(車両右側)の壁面に形成されている。
主冷風ガイド手段52は、図2および図5に示すように、冷風バイパス通路23の下流側に配設され、空調ケース12のb面側(車両右側)の壁面に一体形成されている。この主冷風ガイド手段52は、より具体的には、図5および図6に示すように、空調ケース12のb面側(車両右側)の壁面うち、冷風バイパス通路23の下流側で、かつ吹出モードドア30の上流側に配置され、そして、図6に示すように、冷風バイパス通路23からの冷風流れBを、フェイス開口部28に向かう下流側(略上方側)へ行くに従ってa面側(車両左側)へ向けるように傾斜している。そしてこの傾斜面の頂部は、図6に示すように、段差HBが形成されている。この段差HBの高さの寸法を変えることで、冷風バイパス通路23からの冷風流れBを縮流させ、フェイス開口部28に向かう主冷風B1の風量が調節される。なお、主冷風ガイド手段52は、段差HBを有する壁板状等の段差部52aであってもよい。
なお、バイレベルモード時には、副冷風ガイド手段35によって副冷風ガイド通路32に流れ易くするため冷風流れBのうち副冷風B2を略90°方向転換させているので、図5に示すように、主冷風ガイド手段52と副温風ガイド手段35は、略併行に傾斜するのでなく、互いの傾斜方向が交差するように形成されるのが好ましい。
さらになお、主温風ガイド手段52と副温風ガイド手段37は、それぞれ空調ケース12のb面側(車両右側)の壁面、a面側(車両左側)の壁面に形成されている。
次に、上述の構成に基づいて本実施形態の作動を説明する。後席用空調ユニット10の風量切替スイッチ(図示せず)が投入されて、送風ファン14が作動すると、内気が吸入口から送風ファン14の中心側に吸入される。この吸入空気は、送風ファン14によりスクロールケーシング16内を送風され、さらに空気通路17を通過して蒸発器18の下側(車両後方側)へ向かって送風される。この送風空気は最初に蒸発器18を矢印Aのごとく下方から上方へ通過して冷却され、冷風となる。
この冷風は、次に、エアミックスドア24の開度により冷風バイパス通路23を通過する冷風Bとヒータコア20を通過する温風Fとに振り分けられるので、この冷風Bと温風Fが空気混合部27付近で混合して所定温度の空気が得られる。従って、エアミックスドア24により冷風Bと温風Fの風量割合を調整することにより、乗員の欲する所望の吹出空気温度を得ることができる。そして、吹出モードドア30を操作して、フェイス開口部28とフット開口部29を開閉することにより、以下の3つの吹出モードを設定できる。
(1)吹出モードとして、フェイスモードに設定されると、吹出モードドア30を図1に示す2点鎖線位置Gに操作して、吹出モードドア30によりフット開口部29を閉塞してフェイス開口部28を開放する。これにより、空気混合部27付近で混合された所望温度の空気をフェイス開口部28から図示しないフェイスダクトを通してフェイス吹出口のみから後席乗員の頭部側へ吹き出す。
フェイスモードの最大冷房時には、エアミックスドア24が実線位置Dに操作され、ヒータコア20の通風路を全閉し、冷風バイパス通路23を全開する。この最大冷房時では、空調ユニット10の上下家方向を短くして小型化したにも係わらず、冷風の通風抵抗を以下のごとく減少することができ、冷風量を効果的に増加している。蒸発器18および空調ケース12の底面部を、タイヤハウス11の外周形状に沿うように、車両後方に向かって斜め下方に傾斜した配置にすることで、蒸発器18に対するヒータコア20の所定角度θ2(本実施例の図1では、約60°)を拡大した。この所定角度θ2により、エアミックスドア24をヒータコア20の車両前後方向つまり長手方向寸法と同等の大きさまで拡大してもエアミックスドア24と蒸発器18との干渉が発生しない。冷風バイパス通路23の開口面積を図1のCに示すように空調ケース12の車両後方側の壁面からヒータコア20の上方端部(温水出口タンク部20b)付近に至るまでの、十分な大きさに設定できる。
(2)吹出モードとして、フットモードに設定されると、吹出モードドア30を図1に示す2点鎖線位置Hに操作して、吹出モードドア30によりフット開口部29を開放し、フェイス開口部28を閉塞する。これにより、空気混合部27で混合された所望温度の空気をフット開口部29から図示しないフットダクトを通ってフット吹出口のみから後席乗員の足元部へ吹き出す。フットモードの最大暖房時には、エアミックスドア24が2点鎖線位置Eに操作され、冷風バイパス通路23を全閉し、ヒータコア20の通風路を全開する。
このフットモードの最大暖房時においても、通風抵抗を以下のごとく減少することができ、温風量を増加できる。すなわち、エアミックスドア24の2点鎖線位置Eへの操作により、蒸発器18の上側の空間22に流入した空気はエアミックスドア24によりヒータコア20側(車両前方側)へ方向転換して、略水平方向に配置されたヒータコア20の熱交換部20cの入口に向かい、熱交換部20cの入口では熱交換部20cの面に向かって略直角状に空気が流れる。
そのため、ヒータコア20の熱交換部20cを構成するフィン面と平行的に空気を流すことができ、熱交換部20cの全体に対して空気が流れ易くなる。しかも、空調ユニット10の上下方向の小型化によりヒータコア20下流の温風通路26に直ぐ隣接してフット開口部29を配置しているから、温風通路26からの温風がフット開口部29にも従来構成に比べて流れ易くなる。その結果、最大暖房時においても、通風抵抗を減少して温風量を増加でき、最大暖房能力を確保できる。
(3)吹出モードとして、バイレベルモードに設定されると、吹出モードドア30を図1の実線で示す中間位置に操作して、フェイス開口部28およびフット開口部29をともに開口する。バイレベルモードでは、空気混合部27で混合された所望温度の空気を吹出モードドア30によりフェイス開口部28側とフット開口部29側とに振り分けて、後席乗員の頭部側および足元側の両方へ空調風を吹き出す。
このとき、冷風バイパス通路23からの冷風Bの主冷風B1がフェイス開口部28側へ流れ、また、温風通路26からの温風Fの主流F1がフット開口部29側へ流れる。
これと同時に、副温風ガイド壁面37により温風流れFがa面側へ向けられて、副温風F2が略90°方向転換(旋回)して副温風ガイド通路33に流入し、そして、この副温風ガイド通路33により温風F2を、吹出モードドア30のa面側の側面をバイパスして、吹出モードドア30の下流側で、かつ、フェイス開口部28側に導入できる。
また、これと同時に、副冷風ガイド壁面35により冷風流れBがb面側へ向けられて、副冷風B2が副冷風ガイド通路32に流入し、そして、この副冷風ガイド通路32により副冷風B2を吹出モードドア30のb面側の側面をバイパスして、吹出モードドア30の下流側で、かつ、フット開口部29側に導入できる。つまり、フェイス開口部28に副温風ガイド通路33を通して温風F2を積極的に導入するとともに、フット開口部29に副冷風ガイド通路32を通して副冷風B2を積極的に導入できるので、バイレベルモード時に、上下吹出温度差が過度に拡大することを抑制することが可能である。
さらに、本実施形態では、主温風ガイド手段51の段差HFに応じて主温風F1の風量を調整することができる。例えば段差HFを大きくすることで温風流れFの縮流度合を強めて、フット開口部29に向かう主温風F1の風量を減じることができる。そして、フット開口部29から吹き出す主温風F1の風量を減じることができる。
なお、この段差HFは、温風通路26の下流側(上方側)に向かって傾斜するように形成されたものであるから、主温風ガイド手段51は、通風路内に突出するものに比べて、通風抵抗を抑えながら、主温風F1の風量を調整することができる。
なお、主温風ガイド手段51と副冷風ガイド通路32は副温風ガイド手段37はそれぞれ空調ケース12のa面側(車両左側)の壁面、b面側(車両右側)の壁面に形成されており、温風通路26および空気混合部27を形成する空調ケース12の互いに左右つまり反対面に配置されているので、副冷風B2の流れに悪影響を及ぼすことなく、主温風F1の風量を調整することができる。
またさらに、本実施形態では、主冷風ガイド手段52の段差HBに応じて主冷風B1の風量を調整することができる。例えば段差HBを大きくすることで冷風流れBの縮流度合を強めて、フェイス開口部28に向かう主冷風B1の風量を減じることができる。そして、フェイス開口部28から吹き出す主冷風B1の風量を減じることができる。
なお、この段差HBは、冷風バイパス通路23の下流側(略上方側)に向かって傾斜するように形成されたものであるから、主冷風ガイド手段52は、通風路内に突出するものに比べて、通風抵抗を抑えながら、主冷風B1の風量を調整することができる。
なお、主冷風ガイド手段52と副温風ガイド通路33はそれぞれ空調ケース12のb面側(車両右側)の壁面、a面側(車両左側)の壁面に形成されており、冷風バイパス通路23および空気混合部27を形成する空調ケース12の互いに左右つまり反対面に配置されているので、副温風F2の流れに悪影響を及ぼすことなく、主冷風B1の風量を調整することができる。
なお、主温風ガイド手段51と副温風ガイド手段37はそれぞれ空調ケース12のa面側(車両左側)の壁面、b面側(車両右側)の壁面に形成されており、温風通路26の温風F(詳しくは、温風Fの主流F1)の風量を調整しながら、スムースに副温風F2を副温風ガイド通路33に案内することができる。また、主冷風ガイド手段52と副冷風ガイド手段35はそれぞれ空調ケース12のb面側(車両右側)の壁面、a面側(車両左側)の壁面に形成されており、冷風バイパス通路23の冷風B(詳しくは、冷風Bの主流B1)の風量を調整しながら、スムースに副冷風B2を副冷風ガイド通路32に案内することができる。
次に、本実施形態の作用効果を説明すると、(1)副温風ガイド通路33を通して副温風F2を積極的にフェイス開口部28へ流入させることができる。しかも、フェイス開口部28に直ぐ隣接して配置された冷風バイパス通路23からの冷風Bを縮流させる主冷風ガイド手段52を設けるので、フェイス開口部28に向かう主冷風B1の風量を縮流度合に応じて調整することが可能である。したがって、フェイス開口部28に向かう主冷風B1および副温風F2の風量割合を調整できるため、フェイス開口部28を経て乗員の頭部側へ吹き出す吹出温度の適正化を図れ、温度コントロール性の向上が可能である。
(2)副冷風ガイド通路32を通して副冷風B2を積極的にフット開口部29へ流入させることができる。しかも、フット開口部29に直ぐ隣接して配置された温風通路26からの温風Fを縮流させる主温風ガイド手段51を設けるので、フット開口部29に向かう主温風F1の風量を縮流度合に応じて調整することが可能である。したがって、フット開口部29に向かう主温風F1および副冷風B2の風量割合を調整できるため、フット開口部29を経て乗員の足元側へ吹き出す吹出温度の適正化を図れ、温度コントロール性の向上が可能である。
(3)上記(1)および(2)の作用効果によれば、フェイス開口部28に向かう主冷風B1および副温風F2の風量割合、およびフット開口部29に向かう主温風F1および副冷風B2の風量割合を調整できるため、フェイス開口部28、フット開口部29を経て乗員のそれぞれ頭部側、足元側に向かう上下吹出温度のコントロール性の向上が図れる。
(4)空調ユニット10の上下方向の小型化等により空気混合部27の空間容積が比較的小さくなった場合であっても、主温風ガイド手段51、主冷風ガイド手段52を適用することで、空調ユニット10の小型化と、上下吹出温度のコントロール性向上が両立可能である。
(他の実施形態)
上記の一実施形態では、スクロールケーシング16から構成されている。ここで、送風ファン14の軸方向の両側に吸入口14aを配置する場合について説明したが、送風ファン14の軸方向の片側のみに吸入口14aを配置する片側吸込の構成にしてもよいことはいうまでもない。
上記の一実施形態では、ワンボックス型のRV車用の後席用空調ユニット10に本発明を適用した場合について説明したが、前席側空調ユニット等にも本発明は同様に広く適用できることはもちろんである。
上記の一実施形態では、主温風ガイド手段51および主冷風ガイド手段52を有するものとして説明したが、主温風ガイド手段51および主冷風ガイド手段52のうち少なくともいずれか一方を有するものであればよい。主温風ガイド手段51のみを有するものでは、例えば主温風ガイド手段51の段差HFを大きくすることで、フット開口部29に向かう主温風F1の風量を減じることができる。そして、主温風ガイド手段51による主温風F1の風量を減じて、フット開口部29から吹き出す吹出温度を低下させて、快適な所定範囲となるように上下吹出温度差を縮めることができ、上下吹出温度のコントロール性向上が可能である。
また、主温風ガイド手段51のみを有するものでも、同様に、主冷風ガイド手段52による主冷風B1の風量を減じて、フェイス開口部28から吹き出す吹出温度を上昇させて、快適な所定範囲となるように上下吹出温度差を縮めることができ、上下吹出温度のコントロール性向上が可能である。