(第1実施形態)
本実施形態による車両用空調装置の室内ユニット部は、大別して、図1に示す空調ユニット10と、この空調ユニット10に空気を送風する送風機ユニット(図示せず)との2つの部分に分かれている。図1は空調ユニット10の概略断面図で、図1の前後、上下の各矢印は車両搭載状態での方向を示す。
空調ユニット10は車室内前部の計器盤(図示せず)内側のうち、車両左右(幅)方向の略中央部に配置される。その際、空調ユニット10部は、計器盤内側の略中央部において車両の前後、上下の各方向に対して図示の矢印方向で配置される。
これに対し、図示しない送風機ユニットは車室内前部の計器盤内側のうち、中央部から助手席側へオフセットして配置されている。送風機ユニットは周知のごとく外気(車室外空気)と内気(車室内空気)を切替導入する内外気切替箱と、この内外気切替箱を通して吸入した空気を送風する遠心式の電動送風機とを有している。
空調ユニット10は車室内へ向かって送風される空気の通路を構成する樹脂製の空調ケース11を有している。この空調ケース11は具体的には、車両左右方向の左側に位置する左側ケースと車両左右方向の右側に位置する右側ケースとに分割され、この左右のケースを図示しない金属ばねクリック、ねじ等の締結手段を用いて一体に締結することにより空調ケース11が構成されている。
空調ケース11内の、最も車両前方側の部位には空気入口空間12が形成されている。この空気入口空間12には送風機ユニットの遠心式送風機の送風空気が流入する。空調ケース11内において空気入口空間12直後の部位に蒸発器13が略垂直に配置されている。この蒸発器13は周知のごとく冷凍サイクルの低圧冷媒の蒸発潜熱を送風空気から吸熱して送風空気を冷却する冷房用熱交換器である。
蒸発器13は冷媒が通過する多数の偏平チューブとこれに接合されたコルゲートフィンとからなる熱交換用コア部13aを有し、この熱交換用コア部13aの偏平チューブ相互間の空隙を空気が通過するようになっている。
そして、蒸発器13の空気流れ下流側(車両後方側)に、所定の間隔を開けてヒータコア14が配置されている。ここで、ヒータコア14は空気流れ上流側(車両前方側)に向かって傾斜する前傾状態で空調ケース11内に傾斜配置されている。すなわち、ヒータコア14の上端部が下端部よりも空気流れ上流側に位置するようにしてヒータコア14が傾斜配置されている。
このヒータコア14の前傾状態での傾斜配置は、後述する前席側吹出開口部へのスムースな空気流れの確保と空調ケース11内での上下方向の配置スペース低減のためである。このヒータコア14は、蒸発器13を通過した冷風を再加熱する暖房用熱交換器であって、その内部に、図示しない車両エンジンから高温の温水(エンジン冷却水)が流れ、この温水を熱源として空気を加熱する。
ヒータコア14は周知のごとく温水が通過する多数の偏平チューブとこれに接合されたコルゲートフィンとからなる熱交換用コア部14aを有している。空調ケース11内の送風空気は、この熱交換用コア部14aの偏平チューブ相互間の空隙を通過するようになっている。
熱交換用コア部14aの多数の偏平チューブは上下方向に延びるように並列配置される。そして、熱交換用コア部14aの上下両側には多数の偏平チューブに対する温水の分配、あるいは多数の偏平チューブからの温水を集合するタンク部14b、14cが一体に接合されている。なお、上下のタンク部14b、14cのうち、下部タンク部14cが温水入口タンク部を構成し、上部タンク部14bが温水出口タンク部を構成する。
ヒータコア14の直後の部位には電気ヒータにより構成された補助加熱器15が配置されている。この補助加熱器15は、ヒータコア14に流入する温水の温度が低いときに通電され発熱することによりヒータコア14通過空気を加熱するものであって、この補助加熱器15もヒータコア14と同一の傾斜角度にて空気流れ上流側(車両前方側)に向かって傾斜する前傾状態で空調ケース11内に傾斜配置されている。
本実施形態では、ヒータコア14と補助加熱器15は、空調ケース11内部の上下方向において中間高さの部位に配置され、ヒータコア14と補助加熱器15の上方側に前席用の冷風バイパス通路16が形成され、そして、ヒータコア14と補助加熱器15の下方側に後席用の冷風バイパス通路17が形成されている。この両冷風バイパス通路16、17は蒸発器13通過後の冷風がヒータコア14と補助加熱器15をバイパスして流れるものである。
次に、補助加熱器15についてより具体的に説明すると、補助加熱器15を構成する電気ヒータとしては、所定温度(キュリー点)にて電気抵抗値が急増する正の抵抗温度特性を有する電気抵抗体(PTCヒータ)が好ましい。補助加熱器15への通電は、図示しない空調制御装置により温水(エンジン冷却水)温度に応じて断続される。
補助加熱器15は、ヒータコア14の熱交換用コア部14aに対応する発熱部(放熱部)15aを有し、この発熱部15aは多数の板状の電気抵抗体(図示せず)と、この多数の板状の電気抵抗体相互間に圧接配置されるコルゲートフィンとから構成される。そして、この多数の板状の電気抵抗体相互間をヒータコア14直後の空気が通過するようになっている。
また、補助加熱器15において発熱部15aの上下両側には、ヒータコア14のタンク部14b、14cに対応して発熱部15aの保持部材15b、15cを配置している。この上下両側の保持部材15b、15cは鉄系の金属板により構成されたコの字形状の枠状部品である。
ここで、上部保持部材15bのコの字形状は、発熱部15aの上側面に沿って車両左右方向(図1の紙面垂直方向)に延びる主平坦面と、この主平坦面の左右両端部から上方へ直角状に折り曲げた左右曲げ片とから構成され、このコの字形状の主平坦面の部分にて板状の電気抵抗体およびコルゲートフィンの上側端部を保持固定するようになっている。下部保持部材15cのコの字形状では左右曲げ片が下方へ直角状に折り曲げれている点を除き、上部保持部材15bと同じである。
空調ケース11の内壁面(具体的には、空調ケース11の左右の分割ケースの内壁面)には、車両左右方向(図1の紙面垂直方向)に突き出す上部嵌合壁18および下部嵌合壁19が一体に成形されている。上部嵌合壁18の内側には、ヒータコア14の上部タンク部14bおよび補助加熱器15の上部保持部材15bが嵌合し、また、下部嵌合壁19の内側には、ヒータコア14の下部タンク部14cおよび補助加熱器15の下部保持部材15cが嵌合することにより、ヒータコア14と補助加熱器15が空調ケース11内部の所定位置に位置決めして保持されるようになっている。
次に、図2は図1のヒータコア14および補助加熱器15の上端部付近の拡大図であり、
ヒータコア14の上部タンク部14bの空気流れ下流側の下端位置をAとし、補助加熱器15の上部保持部材15bの空気流れ上流側の上端位置をBとし、補助加熱器15の上部保持部材15bの空気流れ上流側の下端位置をCとしたとき、ヒータコア14と補助加熱器15は、次の関係を満足するように互いに配置されている。
すなわち、ヒータコア14の上部タンク部14bの空気流れ下流側の下端位置Aよりも補助加熱器15の上部保持部材15bの空気流れ上流側の上端位置Bの方が高い位置(A<B)となり、かつ、ヒータコア14の上部タンク部14bの空気流れ下流側の下端位置Aよりも補助加熱器15の上部保持部材15bの空気流れ上流側の下端位置Cの方が低い位置(A>C)となるように、ヒータコア14と補助加熱器15が配置されている。
このような配置関係を設定することによって、ヒータコア14と補助加熱器15が前傾状態で傾斜配置されていても、補助加熱器15の上部保持部材15bの最上端部がヒータコア14の上部タンク部14bの最上端部と略同一高さとなる。そのため、空調ケース11の上部嵌合壁18に、上部タンク部14bの最上端部と上部保持部材15bの最上端部とを結ぶ水平壁面18aを形成できる。
なお、上部タンク部14bの空気流れ下流側の下端位置Aよりも補助加熱器15の上部保持部材15bの空気流れ上流側の上端位置Bの方を低くすると(A>B)、補助加熱器15の上部保持部材15bがヒータコア14の熱交換用コア部(通風部)14a内にせり出してくる割合が大きくなって、ヒータコア14の放熱性能への悪影響が大きくなるので、好ましくない。
また、上部タンク部14bの空気流れ下流側の下端位置Aよりも補助加熱器15の上部保持部材15bの空気流れ上流側の下端位置Cの方を高くすると(A<C)、補助加熱器15の上部保持部材15bがヒータコア14の上部タンク部14bよりも上方へ突出するので、本発明本来の目的(冷風バイパス通路16の圧損低減)に反することになる。
また、本実施形態では、上記の配置関係を設定するため、図1に示すようにヒータコア14の高さ寸法(ヒータコア14自体の上端部と下端部間の寸法)に比較して補助加熱器15の高さ寸法(補助加熱器15自体の上端部と下端部間の寸法)を所定量低くしている。これにより、補助加熱器15の発熱部15aの下端面をヒータコア14の熱交換用コア部14aの下端面の延長方向に配置できるので、熱交換用コア部14aの下端面と発熱部15aの下端面とを略同一面上に揃えることができる。
そして、ヒータコア14および補助加熱器15の下流側(車両後方側)には温風が流れる温風通路20が形成される。一方、蒸発器13とヒータコア14との間には前席用エアミックスドア21が配置されている。この前席用のエアミックスドア21は、本実施形態では可撓性を有するフィルムドアにより構成されている。
また、ヒータコア14の上流側(車両前方側)において上下方向の中間部位には仕切り部材22が配置されている。この仕切り部材22は空調ケース11内部空間の車両左右方向(図1の紙面垂直方向)の全長にわたって延びるように配置されている。それにより、仕切り部材22はヒータコア14の熱交換用コア部14aの空気通路を上側の前席用通路23と下側の後席用通路24とに仕切っている。なお、仕切り部材22は空調ケース11の左右の分割ケースに一体成形することができる。
前述したフィルムドアにより構成される前席用のエアミックスドア21は、前席用冷風バイパス通路16の開度とヒータコア14の前席用通路23との開度を調整して、冷風と温風の風量割合を調整するものである。
ここで、前席用エアミックスドア21についてより具体的に説明すると、このエアミックスドア21を構成するフィルムドアは、ポリエチレン樹脂のごとく可撓性、強度に優れた樹脂製膜状部材にて長尺状の長方形に構成される。そして、このフィルムドアの長手方向を上下方向(ドア移動方向)に向けて、フィルムドアの長手方向の一端部(上端部)を第1巻き取り軸25に固定し、左右のフィルムドアの長手方向の他端部(下端部)を第2巻き取り軸26に固定する。
また、フィルムドアの長手方向(ドア移動方向)の途中部位には空気を通過させるための開口部21aが形成されている。なお、図1では開口部21aの形成部位を破線にて図示している。
上部の第1巻き取り軸25は冷風バイパス通路16の上方部にて車両左右方向に延びるように回転可能に配置され、下部の第2巻き取り軸26はヒータコア14上流側の仕切り部材22近傍位置にて車両左右方向に延びるように回転可能に配置される。ここで、前席用エアミックスドア21の操作機構を具体的に説明すると、第1、第2巻き取り軸25、26のうちいずれか一方、例えば、第1巻き取り軸25にサーボモータ(ステップモータ等)により構成されるアクチュエータ(図示せず)の出力軸を連結し、このアクチュエータにより第1巻き取り軸25を正逆両方向に回転駆動する。
第1巻き取り軸25の回転は図示しない回転伝達機構を介して第2巻き取り軸26にも伝達されるので、第1巻き取り軸25に連動して第2巻き取り軸26が正逆両方向に回転するようになっている。これにより、第1、第2巻き取り軸25、26に対するフィルムドアの巻き取り、巻き戻し動作を実行できる。なお、第1、第2巻き取り軸25、26間の回転伝達機構は周知の機構であるので、その説明は省略する。
フィルムドア両端部を第1巻き取り軸25または左右の第2巻き取り軸26に巻き取ったり、第1巻き取り軸25または第2巻き取り軸26から巻き戻す(送り出す)ことにより、フィルムドアが上下方向に移動する。これにより、フィルムドアの開口部21aが上下方向に移動して、前席用冷風バイパス通路16とヒータコア14の前席用通路23の開度を調整できるようにしている。
そして、開口部21aが前席用冷風バイパス通路16またはヒータコア14の前席用通路23上に全面的に重合する位置に移動すると、前席用冷風バイパス通路16またはヒータコア14の前席用通路23を全開するようになっている。
前席用冷風バイパス通路16とヒータコア14の前席用通路23の開度を調整することにより、ヒータコア14の熱交換用コア部14aのうち上部の前席用通路23で加熱される温風と、前席用冷風バイパス通路16を通過する冷風との風量割合を任意に調整できる。
一方、前席用のエアミックスドア21の下方部に後席用エアミックスドア27を配置している。この後席用エアミックスドア27は回転可能な板ドアにより構成され、ヒータコア14の後席用通路24の開度と後席用冷風バイパス通路17の開度を調整する。後席用エアミックスドア27は、前席用エアミックスドア21の操作機構とは別の操作機構、具体的には、サーボモータを用いたアクチュエータにより独立に回転操作されるようになっている。
上記した温風通路20の上方部は前席用の冷風バイパス通路16の下流側に合流し、下方部は後席用冷風バイパス通路17の下流側に合流する。この温風通路20には温風通路切替ドア28が配置される。
この温風通路切替ドア28も回転可能な板ドアにより構成され、温風通路切替ドア28が図1の実線位置に操作されると、温風通路20を上側の前席用通路部と下側の後席用通路部とに仕切る。これに対し、温風通路切替ドア28を図1の破線位置に操作すると、温風通路20の後席用温風出口29が閉塞状態となり、後席側への温風吹出が停止される。このため、温風通路20の全体が前席用温風通路として作用する。
次に、車室内前席側への吹出開口部の配置について説明すると、図1に示すように、空調ケース11の上面部において前方寄りの部位、換言すると、前席用冷風バイパス通路16の上方部にデフロスタ開口部30が開口している。このデフロスタ開口部30は、回転可能な板ドアにより構成されたデフロスタドア31により開閉される。
空調ケース11の上面部において、デフロスタ開口部30よりも車両後方側部位に左右の前席側サイドフェイス開口部32が開口している。この左右の前席側サイドフェイス開口部32も回転可能な板ドアにより構成された前席側サイドフェイスドア33により開閉される。
空調ケース11のうち、前席側サイドフェイス開口部32より更に車両後方側の下方部位に前席側センタフェイス開口部34が開口している。この前席側センタフェイス開口部34も回転可能な板ドアにより構成された前席側センタフェイスドア35により開閉される。なお、前席側サイドフェイスドア33と前席側センタフェイスドア35は板ドアの中央部に回転軸を配置したバタフライドアにより構成されている。
次に、空調ケース11の左右の側面壁部において、ヒータコア14の上方部に左右の前席側フット開口部36が開口している。この左右の前席側フット開口部36は図示しない左右の前席側フットドアにより開閉される。この左右の前席側フットドアは、空調ケース11の左右の側面壁部の内面に沿って回転作動する板ドアにより構成される。
上記した前席側吹出開口部30、32、34、36はいずれもヒータコア14および補助加熱器15よりも上方側に位置している。
そして、デフロスタ開口部30には図示しないデフロスタダクトが接続され、このデフロスタダクトの先端部のデフロスタ吹出口から車両前面窓ガラスの内面に向けて空調風を吹き出すようになっている。
また、左右の前席側サイドフェイス開口部32には図示しない左右の前席側サイドフェイスダクトが接続され、この左右の前席側サイドフェイスダクトの先端部は車両計器盤の左右両端部付近に配置される前席側サイドフェイス吹出口に接続され、ここから前席乗員の上半身側又は車両側面の前部窓ガラスの内面に向けて空調風を吹き出すようになっている。
また、左右の前席側センタフェイス開口部34には図示しない左右の前席側センタフェイスダクトが接続され、この左右の前席側センタフェイスダクトの先端部は車両計器盤の左右方向中央部付近に配置される前席側センタフェイス吹出口に接続され、ここから前席乗員の上半身側に向けて空調風を吹き出すようになっている。
また、左右の前席側フット開口部36には図示しない左右の前席側フットダクトが接続され、この前席側フットダクトの先端部(下端部)の前席側フット吹出口から前席乗員の足元部に向けて空調風を吹き出すようになっている。
なお、デフロスタドア31、前席側サイドフェイスドア33、前席側センタフェイスドア35および前席側フットドア(図示せず)は、前席用吹出モードドア手段であって、図示しない共通の前席用吹出モード操作機構により連動操作されるようになっている。
次に、車室内後席側への吹出開口部の配置について説明すると、空調ケース11の車両後方側の壁面の最下部付近に左右の後席側センタフェイス開口部37が開口している。この左右の後席側センタフェイス開口部37は回転可能な板ドアにより構成された左右の後席側センタフェイスドア38により開閉される。
空調ケース11の底面部において温風通路20の後席用温風出口29の下方部位に左右の後席側フット開口部39が開口している。この左右の後席側フット開口部39は回転可能な板ドアにより構成された左右の後席側フットドア40により開閉される。なお、左右の後席側フット開口部39および左右の後席側フットドア40は、空調ケース11の底面部の左右方向の全域ではなく、ケース底面部において左右両側部位に偏って配置されている。
また、空調ケース11の左右の側面壁部において最も車両後方側の底面付近に左右の後席側サイドフェイス開口部41が開口している。この左右の後席側サイドフェイス開口部41については開閉ドアを設置せず、常開構造にしている。
左右の後席側フット開口部39には図示しない左右の後席側フットダクトが接続され、この後席側フットダクトの先端部の後席側フット吹出口から後席乗員の足元部に向けて空調風を吹き出すようになっている。
また、左右の後席側センタフェイス開口部37には図示しない左右の後席側センタフェイスダクトが接続され、この後席側センタフェイスダクトの先端部の後席側センタフェイス吹出口から後席乗員の上半身側に向けて空調風を吹き出すようになっている。
また、左右の後席側サイドフェイス開口部41には図示しない左右の後席側サイドフェイスダクトが接続され、この後席側サイドフェイスダクトの先端部の後席側サイドフェイス吹出口から後席乗員の上半身側又は車両側面の後部窓ガラスの内面に向けて空調風を吹き出すようになっている。
なお、後席側センタフェイスドア38と後席側フットドア40は、後席用吹出モードドア手段であって、図示しない共通の後席用吹出モード操作機構により連動操作されるようになっている。
次に、上記構成において本実施形態の作動を説明する。本実施形態では、前席側の吹出モードドア31、33、35の開閉により車室内前席側の吹出モードとして、フェイスモード、フットモード、フットデフロスタモード、およびデフロスタモードを設定するようになっている。
先ず、車室内前席側の吹出モードとしてフットモードが設定された場合について説明すると、フットモード時には図示しない前席側フットドアにより前席側フット開口部36が全開され、前席側センタフェイスドア35により前席側センタフェイス開口部34が全閉される。また、前席側サイドフェイス開口部32とデフロスタ開口部30は、前席側サイドフェイスドア33とデフロスタドア31によりそれぞれ所定の小開度にて開口する。
一方、温風通路切替ドア28は、前席側の吹出モードがデフロスタモード以外の通常時は実線位置に操作されて温風通路20を上側の前席用通路部と下側の後席用通路部とに仕切っている。従って、フットモード時は温風通路切替ドア28が実線で示す仕切り位置に操作されている。
このとき、後席側においても吹出モードとしてフットモードが設定されると、後席側フットドア40が図1の実線位置に回転操作されて後席側フット開口部39を全開し、また、後席側センタフェイスドア38が図1の実線位置に回転操作されて後席側センタフェイス開口部37を全閉する。
そして、前席側および後席側の温度制御がともに最大暖房状態になっている場合は、前席用エアミックスドア21を構成するフィルムドアの開口部21aが図1のようにヒータコア14の前席用通路23と全面的に重合して前席用通路23を全開する。このとき、前席用冷風バイパス通路16はフィルムドアの膜部と全面的に重合して全閉される。
また、後席用エアミックスドア27は図1の実線位置に示すように後席用冷風バイパス通路17を全閉し、ヒータコア14の後席用通路24を全開する位置に回転操作される。
この状態において、図示しない送風機ユニットの送風機が運転されると、送風機ユニットからの送風空気がケース11の最前部の空気入口空間12に流入した後、蒸発器13を通過する。この蒸発器13通過後の空気の全量が、ヒータコア14の上側の前席用通路23および下側の後席用通路24に流入する。
そして、前席用通路23側の空気は、ヒータコア14の熱交換コア部14aの上側領域および補助加熱器15の発熱部15aの上側領域を通過し、後席用通路24側の空気は、ヒータコア14の熱交換コア部14aの下側領域および補助加熱器15の発熱部15aの下側領域を通過する。
ここで、ヒータコア14に供給される温水(エンジン冷却水)の温度が、車室内の暖房にとって必要な所定温度まで上昇していない時は、空調制御装置(図示せず)によって補助加熱器15に通電して発熱部15aを発熱させる。これにより、前席用通路23に流入した送風空気はヒータコア14の熱交換コア部14aの上側領域にて温水を熱源として加熱された後に、補助加熱器15の発熱部15aの上側領域にて再度加熱されて温風となる。
この温風の主流は、温風通路20および前席側フット開口部36を通過して図示しない前席側フットダクト先端部(下端部)の前席側フット吹出口から前席乗員の足元側に吹き出して、前席乗員の足元部を暖房する。
また、温風通路20から温風の一部はデフロスタ開口部30から図示しないデフロスタダクトを通過して車両前面窓ガラス側へ吹き出して車両前面窓ガラスの防曇作用を発揮する。更に、温風通路20から温風の一部は前席側サイドフェイス開口部32を通過してサイドフェイスダクト先端部のサイドフェイス吹出口から車両側面の前部窓ガラス側または前席乗員の上半身側へ吹き出して、車両側面の前部窓ガラスの防曇作用または前席乗員の上半身側の暖房作用を発揮する。
これと同時に、後席用通路24に流入した送風空気はヒータコア14の熱交換コア部14aの下側領域にて温水を熱源として加熱された後に、補助加熱器15の発熱部15aの下側領域にて再度加熱されて温風となる。この温風の主流は、温風通路20の後席用温風出口29から後席側フット開口部39および図示しない後席側フットダクトを通過して後席乗員の足元側に吹き出して後席乗員の足元部を暖房する。
また、温風通路20の後席用温風出口29から温風の一部が常開の後席側サイドフェイス開口部41および図示しない後席側サイドフェイスダクトを通過して、車両側面の後部窓ガラス側または後席乗員の上半身側へ吹き出して、車両側面の後部窓ガラスの防曇作用または後席乗員の上半身側の暖房作用を発揮する。
そして、ヒータコア14に供給される温水(エンジン冷却水)の温度が、車室内の暖房にとって必要な所定温度まで上昇すると、空調制御装置により補助加熱器15への通電を自動的に遮断して発熱部15aの発熱を停止する。従って、これ以後はヒータコア14の加熱作用のみで送風空気を加熱して車室内の暖房作用および窓ガラスの防曇作用を発揮する。
車室内の暖房が進行して車室内温度を制御するときは、前席用エアミックスドア21および後席用エアミックスドア27の位置調整により車室内前席側への吹出空気温度および車室内後席側への吹出空気温度を調整すればよい。すなわち、前席用エアミックスドア21を構成するフィルムドアを上側に移動すると、フィルムドアの開口部21aが図1の位置から上側に移動し、前席用冷風バイパス通路16を開口する。
これにより、前席用冷風バイパス通路16を通過して冷風が流れるので、前席用冷風バイパス通路16を通過する冷風と、ヒータコア14の前席用通路23側を通過する温風との風量割合を前席用エアミックスドア(フィルムドア)21の位置調整により調整することにより、車室内前席側への吹出空気温度を自由に調整できる。
同様に、後席用エアミックスドア(板ドア)27を図1の位置から時計方向に回転操作して後席用冷風バイパス通路17を開口すれば、この後席用冷風バイパス通路17を通過して冷風が流れる。従って、後席用冷風バイパス通路17を通過する冷風と、ヒータコア14の後席用通路24側を通過する温風との風量割合を後席用エアミックスドア27の位置調整により調整することにより、車室内後席側への吹出空気温度を自由に調整できる。
次に、前席側のフットデフロスタモードが設定された場合を説明すると、フットデフロスタモード時には図示しない前席側フットドアにより前席側フット開口部36が全開または所定開度にて開口する。また、デフロスタドア31によりデフロスタ開口部30が上記フットモード時よりも大きい開度にて開口する。ここで、デフロスタ開口部30をデフロスタドア31により全開状態にしてもよい。
また、前席側サイドフェイス開口部32は、前席側サイドフェイスドア33により所定開度にて開口する。一方、前席側センタフェイスドア35により前席側センタフェイス開口部34が全閉される。
従って、前席側のフットデフロスタモード時では、ヒータコア14と補助加熱器15を通過して温風通路20に流入した温風の一部は、前席側フット開口部36を通過して前席乗員の足元側に吹き出して前席乗員の足元部を暖房する。
また、温風通路20から温風の一部はデフロスタ開口部30を通過して車両前面窓ガラス側へ吹き出して車両前面窓ガラスの防曇作用を発揮する。更に、温風通路20から温風の一部は前席側サイドフェイス開口部32を通過して図示しないサイドフェイス吹出口から車両側面の前部窓ガラス側または前席乗員の上半身側へ吹き出して、車両側面の前部窓ガラスの防曇作用または前席乗員の上半身側の暖房作用を発揮する。
そして、前席側のフットデフロスタモード時ではデフロスタ開口部30の開度をフットモード時よりも大きくすることによりデフロスタ吹出風量をフットモード時よりも増加して車両前面窓ガラスの防曇性能を向上できる。
次に、前席側および後席側でフェイスモードが設定された場合を説明すると、前席側吹出開口部では、センタフェイス開口部34およびサイドフェイス開口部32が全開状態となり、フット開口部36およびデフロスタ開口部30が全閉状態となる。従って、蒸発器13により冷却された冷風を前席用エアミックスドア(フィルムドア)21により温度調整した後、前席側のセンタフェイス開口部34およびサイドフェイス開口部32を通過して前席乗員の上半身側へ冷風を吹き出して車室内前席側を冷房する。
後席側吹出開口部では、センタフェイス開口部37が全開状態となり、フット開口部39が全閉状態となる。従って、蒸発器13により冷却された冷風を後席用エアミックスドア(板ドア)27により温度調整した後、後席側センタフェイス開口部37および常開のサイドフェイス開口部41を通過して後席乗員の上半身側へ冷風を吹き出して車室内後席側を冷房する。
次に、前席側のデフロスタモード時について説明すると、デフロスタモード時にはデフロスタドア31によりデフロスタ開口部30を全開し、図示しない前席側フットドアにより前席側フット開口部36を全閉するとともに、前席側センタフェイスドア35により前席側センタフェイス開口部34を全閉する。一方、前席側サイドフェイス開口部32は、前席側サイドフェイスドア33により所定開度にて開口する。
以上により、デフロスタ開口部30を通して車両前面窓ガラス側へ空調風(温風)を吹き出すとともに、前席側サイドフェイス開口部32を通して車両側面窓ガラス側へ空調風(温風)を吹き出して、車両窓ガラスの防曇性能を発揮する。
なお、車室内前席側の吹出モードとして、デフロスタモードが設定された場合は、図示しない空調制御装置によって温風通路切替ドア28を自動的に図1の破線位置に操作して後席用温風出口29を閉塞する。これに連動して、後席用エアミックスドア27を自動的に図1の実線で示す最大暖房位置に操作する。
これにより、ヒータコア14の前席用通路部23を通過した温風のみならず後席用通路部24を通過した温風もデフロスタ開口部30側へ送り込むことができる。よって、デフロスタ吹出風量を増加して車両窓ガラスの防曇性能を最大限発揮できる。
次に、本実施形態による作用効果を説明する。
a.ヒータコア14と補助加熱器15とを空気流れ上流側(車両前方側)に向かって傾斜する前傾状態で空調ケース11内に配置しているから、ヒータコア14と補助加熱器15を通過した温風が斜め上方に向かって流れる。そのため、ヒータコア14と補助加熱器15よりも上方側に位置する前席側吹出開口部30、32、34、36へ向かって温風をスムースに導くことができ、前席側の温風流れの圧損を低減できる。
b.補助加熱器15の高さ寸法をヒータコア14の高さ寸法より低くして、補助加熱器15の上端位置とヒータコア14の上端位置とを略水平にしているから、ヒータコア14と補助加熱器15とを前傾配置しても、補助加熱器15の上端部がヒータコア14の上端部よりも前席用冷風バイパス通路16側へ突出することがない。
すなわち、補助加熱器15の前傾配置によって前席用冷風バイパス通路16の通路面積を狭めて圧損を上昇させることがないので、前席用冷風バイパス通路16を通過する冷風風量の減少を防止できる。従って、前席用冷風バイパス通路16を前席用エアミックスドア21により全開するとき(最大冷房時)の冷房能力を良好に確保できる。
より具体的に述べると、本実施形態では、図2に拡大図示するように、ヒータコア14の上部タンク部14bの空気流れ下流側の下端位置Aよりも補助加熱器15の上部保持部材15bの空気流れ上流側の上端位置Bの方が高くなり(A<B)、かつ、ヒータコア14の上部タンク部14bの空気流れ下流側の下端位置Aよりも補助加熱器15の上部保持部材15bの空気流れ上流側の下端位置Cの方が低くなる(A>C)ように、ヒータコア14と補助加熱器15を配置している。
このような配置関係を設定することによって、補助加熱器15の上部保持部材15bの最上端部をヒータコア14の上部タンク部14bの最上端部と略同一高さにすることができる。そのため、空調ケース11の上部嵌合壁18に、上部タンク部14bの最上端部と上部保持部材15bの最上端部とを結ぶ水平壁面18aを形成できる。これにより、前席用冷風バイパス通路16を通過する冷風をこの水平壁面18aに沿ってより一層スムースに流すことができる。
なお、上記A>Cの配置関係から、補助加熱器15の上部保持部材15bがヒータコア14の熱交換コア部(通風部)14aの範囲内に位置することになるが、次の理由からヒータコア14の放熱性能への悪影響がほとんど生じない。
すなわち、ヒータコア14が前傾配置されているため、前席用エアミックスドア21の開口部21aがヒータコア14の熱交換コア部14aの前席用通路23を全開する最大暖房時に、蒸発器13の熱交換コア部13aの上側領域を通過した空気が図1、2の矢印Dのように直角状に大きく曲がってヒータコア14の熱交換コア部14aの上部に流入する。このため、ヒータコア14の熱交換コア部14aの上部付近に空気流れの淀む死水域(図2の斜線部)Eが必然的に形成される。
この死水域Eは、元々、空気流れへの放熱を有効に行うことができない部分である。そこで、本実施形態では、この死水域Eの存在に着目して、死水域Eの形成領域に補助加熱器15の上部保持部材15bを配置している。これにより、補助加熱器15の上部保持部材15bが熱交換コア部14a内に位置しても、ヒータコア14の放熱性能への悪影響がほとんど生じないという利点がある。
c.補助加熱器15の高さ寸法をヒータコア14の高さ寸法より所定量低くすることにより、上記(A<B)および(A>C)の配置関係を設定しているため、補助加熱器15の発熱部15aの下端面をヒータコア14の熱交換用コア部14aの下端面の延長方向に配置できる。
そのため、熱交換用コア部14aの下端面と発熱部15aの下端面とを略同一面上に揃えることができる。これにより、ヒータコア14の熱交換用コア部14aの下端面付近を通過した空気(矢印F参照)がそのままスムースに補助加熱器15の発熱部15aの下端面付近を通過できるので、補助加熱器15による空気加熱作用を良好に発揮できる。
また、熱交換用コア部14aの下端面と発熱部15aの下端面とを略同一面上に揃えることができるため、補助加熱器15の下部保持部材15cの下端面も図1のように ヒータコア14の下部タンク部14cの下端面の延長方向に配置できる。従って、補助加熱器15の下部保持部材15cの下端面がヒータコア14の下部タンク部14cの下端面よりも後席用冷風バイパス通路17側へ突出することがない。そのため、後席用冷風バイパス通路17における空気もスムースに流すことができる。
d.上記(A<B)および(A>C)の配置関係を設定して、ヒータコア14を通過した空気の全量が補助加熱器15を通過するようにしているから、特許文献1に比較して補助加熱器15の通電時であると非通電時であるとにかかわらず、ヒータコア14の熱交換用コア部14aと補助加熱器15の発熱部15aの全域に一様に空気を流すことができる。従って、補助加熱器15の下流側、すなわち、温風通路20における温風の温度分布を均一化できる。
しかも、上述のように補助加熱器15の上端位置とヒータコア14の上端位置とを略水平にして、補助加熱器15の上端部がヒータコア14の上端部よりも前席用冷風バイパス通路16側へ突出しないから、冷温風の混合性を向上できる。
すなわち、図7の比較例では、補助加熱器15の上端部がヒータコア14の上端部よりも上方へ突出することにより、前席用冷風バイパス通路16を流れる冷風を上方側、つまり、温風通路20の温風から離れる側へガイドしてしまい、冷温風の混合性を悪化させるが、本実施形態によると、前席用冷風バイパス通路16の冷風を略水平に流すことができるので、冷温風の混合性を向上できる。
以上のごとく、温風通路20における温風の温度分布均一化と、冷温風の混合性向上とによって、車室内吹出空気温度のバラツキを低減して空調フィーリングを向上できる。
また、図7の比較例では、前席側のフットデフロスタモード時に、冷温風の混合性悪化によって、デフロスタ吹出空気温度がフット吹出空気温度に比較して大幅に低下する、いわゆる「クールデフ」現象が発生し、窓ガラス防曇性能の低下、空調フィーリングの悪化を引き起こす。
これに対し、本実施形態では上記のように冷温風の混合性を向上できるため、フットデフロスタモード時におけるクールデフ現象の発生を防止できる。
図3(a)(b)は、本発明者らによるフットデフロスタモード時における吹出空気温度差を示す実験結果であり、図3(a)は図7の比較例の実験結果であり、図3(b)は本実施形態の実験結果である。図3(a)(b)の横軸は前席用エアミックスドア開度であって、ヒータコア14の前席用通路23を全閉し、前席用冷風バイパス通路16を全開する最大冷房時のドア開度を0%とし、ヒータコア14の前席用通路23を全開し、前席用冷風バイパス通路16を全閉する最大暖房時のドア開度を100%として表している。また、図3(a)(b)の縦軸は空調ユニット10の吹出空気温度であり、空調ユニット10の各開口部30、32、36での吹出空気温度の測定値である。
図3(a)(b)において、Gはデフロスタ吹出空気温度、Hは前席側フット吹出空気温度、Iは前席側サイドフェイス吹出空気温度をそれぞれ示す。図7の比較例によると、前席用エアミックスドア開度=75%にて、デフロスタ吹出空気温度と前席側フット吹出空気温度との温度差が矢印aで示すように50℃程度にも拡大し、クールデフ現象を発生している。
これに対し、本実施形態によると、前席用エアミックスドア開度=75%にて、デフロスタ吹出空気温度と前席側フット吹出空気温度との温度差を矢印bで示すように20℃程度まで縮小でき、クールデフ現象を抑制できることを確認できた。
なお、第1実施形態において、ヒータコア14の熱交換用コア部14aと補助加熱器15の発熱部15aがそれぞれ本発明の熱交換部に相当し、ヒータコア14のタンク部14b、14cと補助加熱器15の保持部材15b、15cがそれぞれ本発明の非熱交換部に相当する。
(第2実施形態)
第1実施形態では、前席用エアミックスドア21を膜状部材からなるフィルムドアにより構成しているが、第2実施形態では図4に示すように、前席用冷風バイパス通路16側に配置した複数の回転可能な冷風ドア210と、ヒータコア14の前席用通路23側に配置した複数の回転可能な温風ドア211とにより前席用エアミックスドアを構成している。
ここで、冷風ドア210および温風ドア211はともに板ドアの中央部に回転軸を配置したバタフライドアにより構成されている。このバタフライドアの採用によりドア回転作動空間を、ドア端部に回転軸を有する片持ち板ドアよりも小さくできる。
また、複数の冷風ドア210を予め1つの枠体(図示せず)内に回転可能に組みつけてモジュール化しておく。同様に、複数の温風ドア211も予め1つの枠体(図示せず)内に回転可能に組みつけてモジュール化しておく。これにより、複数の冷風ドア210および複数の温風ドア211をそれぞれ1つの組付体として空調ケース11に対して容易に組み付けることができる。
(第3実施形態)
第1、第2実施形態では、前席側吹出空気温度および後席側吹出空気温度を独立に調整できる空調ユニット10について説明しているが、第3実施形態は図5に示すように車室内の単一の領域、具体的には、車室内前席側領域への吹出空気温度のみを調整する空調ユニット10に適用されるものである。
第3実施形態では、第1、第2実施形態におけるヒータコア14上流側の仕切り部材22、下流側の温風通路切替ドア28、後席用エアミックスドア27、後席側吹出開口部37、39、41、およびこれら吹出開口部の開閉用ドア38、40等を廃止している。そして、前席用エアミックスド21は、ヒータコア14の熱交換用コア部14aの全体通路を開閉できるように構成されている。
ヒータコア14と補助加熱器15との配置関係は第1、第2実施形態と同じであるので、第3実施形態でも第1、第2実施形態と同様の効果を発揮できる。
なお、第3実施形態では空調ユニット10を車室内前席側領域の空調用として構成しているが、第3実施形態による空調ユニット10を車室内後席側領域の空調用として構成してもよい。
(第4実施形態)
第1〜第3実施形態では、いずれも、補助加熱器15の上部保持部材15bの最上端部をヒータコア14の上部タンク部14bの最上端部と略同一高さとし、そして、空調ケース11の上部嵌合壁18に、上部タンク部14bの最上端部と上部保持部材15bの最上端部とを結ぶ水平壁面18aを形成しているが、第4実施形態では、図6に示すように空調ケース11の上部嵌合壁18に水平壁面18aを形成せずに、ヒータコア14の上部タンク部14bと補助加熱器15の上部保持部材15bの上端面形状に沿った2つの山部18b、18cを有する凹凸形状(断面形状)に上部嵌合壁18を形成している。
第4実施形態においても、前述の(A<B)および(A>C)の配置関係を設定して、上部嵌合壁18の2つの山部18b、18cの頂部を略同一の水平面上に配置することにより、第1実施形態と同様の作用効果を発揮できる。
(他の実施形態)
なお、上述の実施形態では、補助加熱器15を電気ヒータにより構成しているが、補助加熱器15を冷凍サイクルの高圧側放熱器で構成してもよい。特に、冷媒として二酸化炭素(CO2)を用いる冷凍サイクル(CO2サイクル)では、二酸化炭素冷媒の物性から高圧側冷媒温度がフロン系の冷媒を用いる冷凍サイクルに比較して高くなるので、高圧側放熱器を補助加熱器15として好適に用いることができる。