JP3894028B2 - 車両用空調装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、室内ユニット部の車両前後方向の体格の小型化を図る車両用空調装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、車両用空調装置の室内ユニット部として、冷房用熱交換器および暖房用熱交換器の他に、送風機部も単一のケース内に一体構成するタイプのものが特開2001−150923号公報等にて知られている。
【0003】
この従来技術では、送風機部の下側に冷房用熱交換器を配置し、この冷房用熱交換器の車両後方側に暖房用熱交換器を配置し、この暖房用熱交換器の上方側にエアミックスドアを配置している。更に、送風機部の車両後方側で、且つ、エアミックスドアの上方側にフェイス開口部およびデフロスタ開口部に空気を導くフェイス通路を配置している。また、暖房用熱交換器後方に位置する温風通路の更に車両後方側に、フット通路部を独立に配置している。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
従って、従来技術によると、室内ユニット部の車両前後方向に、冷房用熱交換器と暖房用熱交換器を直列に配置することに加えて、暖房用熱交換器後方の温風通路の更に車両後方側にフット通路部を独立に配置することになる。その結果、室内ユニット部の車両前後方向の体格が大きくなってしまう。
【0005】
室内ユニット部が搭載される車両計器盤内側の空間では、車両前後方向のスペース的制約が強いので、室内ユニット部の体格が車両前後方向に対して大型化することにより室内ユニット部の車両搭載性を著しく悪化させる。
【0006】
本発明は上記点に鑑みて、室内ユニット部の車両前後方向の体格を小型化することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、車室内へ向かって空気が流れる空気通路を形成するケース(11)と、
ケース(11)内に配置され、空気を加熱する暖房用熱交換器(14)と、
ケース(11)の上方部に配置されるフェイス開口部(22)と、
ケース(11)内にて暖房用熱交換器(14)の上方側に形成され、暖房用熱交換器(14)を通過して温度調整された空気をフェイス開口部(22)に向かって導くフェイス通路(24)と、
ケース(11)内において暖房用熱交換器(14)の上方側に、ケース(11)の後方側の面(11a)からフェイス通路(24)側へ突き出すように形成され、車両幅方向に延びるフット通路(27)と、
フット通路(27)のうち、フェイス通路(24)側の部位に配置されるフット開口部(27a)と、
フェイス通路(24)内に回転可能に配置され、フット開口部(27a)を開閉するフットドア(28)とを備え、
フットドア(28)によりフット開口部(27a)を開放すると、暖房用熱交換器(14)を通過して温度調整された空気がフット開口部(27a)からフット通路(27)に流入して、フット通路(27)の車両幅方向の左右両側部から乗員足元側へ吹き出すようになっており、
フットドア(28)を、回転軸(28a)と、回転軸(28a)の径方向の両側部に一体に結合された第1板ドア部(28b)および第2板ドア部(28c)とを有するバタフライ式ドアにより構成し、
ケース(11)内の上下方向において、暖房用熱交換器(14)とバタフライ式フットドア(28)との間にエアミックスドア(16)を配置し、
暖房用熱交換器(14)を通過する温風と暖房用熱交換器(14)をバイパスする冷風との風量割合をエアミックスドア(16)により調整して車室内吹出空気の温度を調整するようになっており、
バタフライ式フットドア(28)を中間開度位置に操作したときに、第1板ドア部(28b)により温風側領域の空気と冷風側領域の空気とを分流し、温風側領域の空気をフット通路(27)側に導くとともに冷風側領域の空気をフェイス通路(24)側に導くようにし、
更に、フット通路(27)側に導いた温風側領域の空気の一部をフェイス通路(24)側に分岐する補助通路(30)を第2板ドア部(28c)の先端側に形成することを特徴とする。
【0008】
これによると、フットドア(28)をフェイス通路(24)内に配置し、また、フット通路(27)を暖房用熱交換器(14)の上方側にてフェイス通路(24)側へ突き出すように形成しているから、暖房用熱交換器通過後の空気をフット開口部(27a)、フット通路(27)を経て、フット通路(27)の左右の両側面部から直接乗員足元側へ吹き出すことができる。
【0009】
そのため、フット通路(27)をケース(11)の後方側の面(11a)から更に車両後方側へ配置する必要がなく、室内ユニット部の車両前後方向の体格を従来技術よりも小型化することができる。
また、請求項1に記載の発明では、バタフライ式フットドア(28)の第1板ドア部(28b)および第2板ドア部(28c)に加わる風圧による力が回転軸(28a)を中心とする逆方向の回転力として作用し、第1、第2板ドア部(28b、28c)の風圧による力が互いに相殺する方向に作用する。その結果、フットドア(28)の操作力を低減できる。
また、請求項1に記載の発明では、バイレベルモード時のように、フェイス開口部(22)から乗員の顔部側(上方側)へ空調風を吹き出すと同時に、フット通路(27)の左右両側面部から乗員足元側(下方側)へ空調風を吹き出す吹出モードである場合に、フェイス吹出温度がフット吹出温度に比較して過剰に低い温度となって、上下吹出温度差が過剰に拡大することを防止できる。
すなわち、補助通路(30)によって温風側領域の空気の一部を確実にフェイス通路(24)側に分岐(後述の図2の矢印d2参照)することができ、これにより、フェイス吹出温度を上昇させて上下吹出温度差を快適な温度差範囲に設定でき、バイレベルモード時等の空調感を向上できる。
請求項2に記載の発明では、請求項1において、暖房用熱交換器(14)を通過した後の温風を冷風側へ向けてガイドする温風ガイド壁(19)をケース(11)の後方側の面(11a)から暖房用熱交換器(14)の上方側へ突き出すように形成し、温風ガイド壁(19)の上方側にフット通路(27)を形成することを特徴とする。
これにより、温風ガイド壁(19)の上方側のスペースを有効活用してフット通路(27)を形成できる。
【0010】
請求項3に記載の発明では、請求項1または2において、ケース(11)内において、フェイス通路(24)の車両前方側に、空気を送風する送風機部(12)を配置したことを特徴とする。
【0011】
これにより、送風機部(12)をケース(11)内に一体配置する室内ユニット部において車両前後方向の体格を小型化する効果を発揮できる。
【0012】
請求項4に記載の発明では、請求項3において、送風機部(12)をケース(11)内において、フェイス通路(24)の車両前方側で、且つ、上方側に配置し、
ケース(11)内において、送風機部(12)の下方側に、送風機部(12)からの送風空気を冷却する冷房用熱交換器(13)を配置し、冷房用熱交換器(13)の車両後方側に暖房用熱交換器(14)を配置したことを特徴とする。
【0013】
これにより、送風機部(12)、冷房用熱交換器(13)および暖房用熱交換器(14)をすべてケース(11)内に一体配置する室内ユニット部において、車両前後方向の体格を小型化する効果を発揮できる。
【0021】
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下本発明の一実施形態を図に基づいて説明する。図1は本実施形態による車両用空調装置の室内ユニット部10の全体構成の概略断面図であり、図2はその要部の拡大断面図である。室内ユニット部10は車室内前部の計器盤(図示せず)内側において車両幅(左右)方向の略中央部に配置される。その際、室内ユニット部10は車両の上下前後方向に対して図1の矢印のように搭載される。従って、車両幅方向は図1の紙面垂直方向となる。
【0023】
本実施形態による室内ユニット部10は車室内へ向かって空気が流れる空気通路を形成するケース11を有している。この単一のケース11内に、送風機部12と、冷房用熱交換器をなす蒸発器13と、暖房用熱交換器をなすヒータコア14とを一体に配置した構成になっている。
【0024】
より具体的に述べると、ケース11は室内ユニット部10の車両幅方向の中央部に位置する分割面で分割された左右の分割ケース体を一体に締結して縦長のケース形状を構成している。この左右の分割ケース体はポリプロピレンのようなある程度の弾性を有し、機械的強度の高い樹脂材料にて成形されている。
【0025】
ケース11内の車両前方側領域のうち上方側に送風機部12が配置され、そして、送風機部12の下方側に蒸発器13が配置されている。送風機部12は電動モータにより回転駆動される遠心式送風ファン12aをスクロールケーシング12b内に収容している。
【0026】
送風機部12の回転軸12cは車両幅方向に向いているので、遠心式送風ファン12aの吸入口(図示せず)は室内ユニット部10の車両幅方向の片側の側面部に位置する。そして、この吸入口部に図示しない内外気切替箱が接続され、この内外気切替箱を通して吸入される内気(車室内空気)または外気(車室外空気)を送風ファン12aにより送風する。
【0027】
そして、スクロールケーシング12bの渦巻き形状の巻き始め部となるノーズ部12dを下方側に位置させ、スクロールケーシング12bの空気出口部12eを下方に向けているので、送風ファン12aの送風空気が矢印aのように車両前方側領域の上方から下方へ流れて蒸発器13の前面部に送風される。
【0028】
蒸発器13はケース11と略同一の車両幅方向寸法を有する略長方形の薄型形状であり、略垂直方向に配置されている。この蒸発器13には、図示しない空調用冷凍サイクルの減圧手段にて減圧された低圧冷媒が導入され、この低圧冷媒が送風空気から吸熱して蒸発することにより、空気を冷却する。
【0029】
ケース11のうち、蒸発器13の下方に位置する底面部は凝縮水受け部を構成し、その最底部に凝縮水排出パイプ15が形成されている。蒸発器13は、周知のように上下のタンク部13a、13bの間に偏平チューブとコルゲート状の伝熱フィンとの積層構造からなる熱交換部13cを配置した構成である。この熱交換部13cを送風機部12の送風空気が矢印bのように車両前方側から後方側へと流れる。
【0030】
そして、ケース11内において、蒸発器13の空気流れ下流側、すなわち、蒸発器13の車両後方側にヒータコア14が配置されている。このヒータコア14は、車両エンジン(図示せず)からの温水(冷却水)を熱源として空気を加熱する。このヒータコア14は、所定間隔を隔てて対向配置した下側の温水入口タンク部14aと上側の温水出口タンク部14bとの間に偏平チューブとコルゲート状の伝熱フィンとの積層構造からなる熱交換部14cを配置した構成である。
【0031】
このヒータコア14は、下側の温水入口タンク部14aよりも上側の温水出口タンク部14bを車両後方側へ傾斜して配置されている。これにより、板状のエアミックスドア16の回転軸16aをヒータコア14の上方端部付近に配置して、エアミックスドア16の回転作動空間をヒータコア14と蒸発器13との間に確保している。
【0032】
なお、エアミックスドア16は、回転軸16aの径方向の両側部に一体に結合された第1板ドア部16bおよび第2板ドア部16cを有するバタフライ式ドアにより構成されている。エアミックスドア16の回転軸16aは図1の紙面垂直方向(車両幅方向)に延びるように配置され、回転軸16aの両端部はケース11の側面壁部の軸受孔(図示せず)により回転可能に保持される。
【0033】
ケース11内において、ヒータコア14の上方側(蒸発器13の車両後方側)に、ヒータコア14をバイパスして冷風を矢印cのように流す冷風バイパス通路17が形成されている。一方、ケース11内において、ヒータコア14の車両後方側から上方側に至る部位に、ヒータコア14で加熱された温風が矢印dのように流れる温風通路18が形成されている。ケース11の後方側の面11aからヒータコア14の上方側へ突き出す温風ガイド壁19がケース11に形成されている。この温風ガイド壁19は温風通路18の上方側を区画するものであって、温風通路18の温風流れを矢印dのよう冷風バイパス通路17側へガイドする。
【0034】
また、ケース11内において冷風バイパス通路17に隣接するケース壁面に、冷風ガイド壁20が温風ガイド壁19の先端部に対向するように形成されている。この冷風ガイド壁20は冷風バイパス通路17の冷風を温風通路18の温風側へガイドする。これにより、ヒータコア14の上方側であって、両ガイド壁19、20の先端部周辺に、温風と冷風を良好に混合できる空気混合部21を形成している。
【0035】
図1において、エアミックスドア16の実線位置は中間開度位置であり、そして、2点鎖線位置Aはヒータコア14の通風路を全閉して、冷風バイパス通路17を全開する最大冷房位置である。また、2点鎖線位置Bは、冷風バイパス通路17を全閉して、ヒータコア14の通風路を全開する最大暖房位置である。
【0036】
エアミックスドア16は周知のごとくヒータコア14の熱交換部14cを通過する温風(矢印d)とヒータコア14をバイパスして冷風バイパス通路17を通過する冷風(矢印c)との風量割合を調整して車室内への吹出空気温度を調整する温度調整手段である。そして、空気混合部21において上記温風(矢印d)と上記冷風(矢印c)が混合されて所望温度の空気が得られる。
【0037】
一方、ケース11の上方部において車両後方側にはフェイス開口部22が開口しており、このフェイス開口部22の車両前方側にデフロスタ開口部23が開口している。ケース11内には、空気混合部21からフェイス開口部22に向かって真上方向に延びるフェイス通路24が形成されている。
【0038】
ケース11の上方部にはフェイス開口部22とデフロスタ開口部23を切替開閉するフェイスドア25が配置されている。このフェイスドア25は回転軸25aによりケース11に回転可能に保持された板ドアから構成されている。フェイス開口部22は図示しないフェイスダクトを介して乗員の顔部側に向けて空気を吹出すものである。デフロスタ開口部23にはデフロスタダクト26が接続され、このデフロスタダクト26の先端部のデフロスタ吹出口26aから車両前面窓ガラスの内面に向けて空気を吹出すようになっている。
【0039】
一方、ケース11内において温風ガイド壁19の上方側にフット通路27が形成される。このフット通路27は、ケース後方側の面11aと温風ガイド壁19と後述のフットドア28とにより囲まれる空間により形成されるものであって、ケース後方側の面11aからフェイス通路24側(車両前方側)へ突き出すように形成される。
【0040】
フット通路27のうち、フェイス通路24側の部位は全面的にフェイス通路24に開口してフット開口部27aを形成する。このフット開口部27aをフットドア28により開閉する。
【0041】
フット通路27はケース内部にてケース車両幅方向の全長にわたって延びるように形成され、フット通路27の車両幅方向の左右両端部、すなわち、ケース11の左右の両側面部に側面開口部27bが開口している。この左右両側の側面開口部27bにはそれぞれ下方へ垂下するフットダクト(図示せず)が接続され、このフットダクトの下端部のフット吹出口から乗員の足元部に空気を吹出すようになっている。
【0042】
また、フット通路27はケース11の上下方向の略中間部位に位置し、フット通路27の車両前方側にフェイス通路24(空気混合部21)が位置し、フェイス通路24(空気混合部21)の車両前方側に蒸発器13の上端部(スクロールケーシング12bの最下部)が位置している。
【0043】
フットドア28は回転軸28aの径方向の両側部に一体に結合された第1板ドア部28bおよび第2板ドア部28cを有するタフライ式ドアにより構成されている。本例では、第1板ドア部28bと第2板ドア部28cが「くの字状」に屈折した形状にて回転軸28aと一体に結合されている。このフットドア28の回転軸28aはフット通路27の上方側にて図1の紙面垂直方向(車両幅方向)に延びるように配置され、回転軸28aの両端部はケース11の側面壁部の軸受孔(図示せず)により回転可能に保持される。
【0044】
フットドア28はフット通路27のフット開口部27aとフェイス通路24を切替開閉するものであり、フットドア28の図1、2の実線位置はフット通路27のフット開口部27aとフェイス通路24の両者を同時に同程度開口するバイレベルモード時またはフットデフロスタモード時の位置を示す。これに対し、フットドア28の図1、2の2点鎖線位置Dは、フット通路27のフット開口部27aを全閉し、フェイス通路24を全開するフェイスモード位置を示す。また、フットドア28の図1、2の2点鎖線位置Eは、フェイス通路24を全閉し、フット通路27のフット開口部27aを全開するフットモード位置を示す。
【0045】
なお、フェイスドア25およびフットドア28は吹出モード切替ドアを構成するものであって、この両ドア25、28の回転軸25a、28aは、ケース11の外部にて図示しないリンク機構を介して吹出モード操作機構に連結されて、この吹出モード操作機構により両ドア25、28を連動して所定位置に回転操作するようになっている。
【0046】
同様に、エアミックスドア16の回転軸16aもケース11の外部にてリンク機構を介して温度調整操作機構に連結されて、この温度調整操作機構によりエアミックスドア16の回転位置(開度)が調整される。これらの吹出モード操作機構および温度調整操作機構は、サーボモータを用いたオート操作機構、あるいは乗員の手動操作力によるマニュアル操作機構のいずれで構成してもよい。
【0047】
次に、上記構成に基づいて本実施形態の作動を説明する。送風機部12の電動モータに通電して遠心式送風ファン12aを矢印f方向に回転駆動すると、図示しない内外気切替箱から内気または外気が吸入され、この吸入空気は、送風ファン12aによりスクロールケーシング12b内を送風され、ケース11内の車両前方側領域を矢印aのごとく上方から下方へ流れて蒸発器13の前面部に送風される。
【0048】
そして、送風空気は蒸発器13を矢印bのごとく車両前方側から車両後方側方へ通過して冷却され、冷風となる。この冷風は、次に、エアミックスドア16の開度により冷風バイパス通路17を通過する冷風cとヒータコア14を通過する温風dとに振り分けられ、この冷風cと温風dが空気混合部21付近で混合する。従って、エアミックスドア16により冷風cと温風dの風量割合を調整することにより空気混合部21において所望温度の空気が得られる。
【0049】
次に、吹出モードの切替作動について説明する。いま、フェイスモードが設定されると、吹出モード操作機構(図示せず)によりフェイスドア25がフェイス開口部22を全開し、デフロスタ開口部23を全閉する実線位置に操作される。また、同時に、フットドア28は吹出モード操作機構により破線位置Dに操作され、フット通路27のフット開口部27aを全閉し、フェイス通路24を全開する。
【0050】
従って、エアミックスドア16により所望温度に調整された空調風(フェイスモードは主に冷風)が空気混合部21からフェイス通路24を通過してフェイス開口部22に流入して、このフェイス開口部22から乗員の顔部側へ吹き出して、車室内を冷房する。
【0051】
ここで、フェイスモード時にはエアミックスドア16が最大冷房位置A又はその近傍位置に操作されるから、蒸発器13を通過した冷風が蒸発器13の下流部(車両後方側部位)から空気混合部21およびフェイス通路24を通過してフェイス開口部22に至るほぼ直線状の空気通路を流れる。従って、このほぼ直線状の空気通路では曲がり圧損がほとんど発生せず、フェイス吹出風量を増大できる。
【0052】
次に、バイレベルモードが設定されると、吹出モード操作機構(図示せず)によりフェイスドア25およびフットドア28が図1の実線位置となり、フットドア28は中間開度位置に操作されるので、フット通路27のフット開口部27aとフェイス通路24の両者が同時に同程度開口する。
【0053】
従って、エアミックスドア16により温度調整された空調風の一部が空気混合部21からフェイス通路24を通過してフェイス開口部22から乗員の顔部側へ吹き出すと同時に、残余の空調風が空気混合部21からフット開口部27a、フット通路27に流入し、このフット通路27から更にケース11の左右両側面部に位置する側面開口部27bへと流れ、この側面開口部27bから空調風が乗員の足元側へ吹き出す。
【0054】
このように、バイレベルモードでは車室内の上下両方へ空調風を同時に吹き出すから、フェイス開口部22からの上方吹出温度がフット通路27からの下方吹出温度よりも適当な温度例えば、10〜20℃程度低い頭寒足熱型の上下吹出温度差が快適な空調感を確保するために要望される。
【0055】
ここで、もし、フットドア28を図3の比較例のように片持ち軸タイプの通常の板ドアで構成し、フットドア28の回転軸28aをケース11の後方側の面11aに隣接配置した場合には、フットドア28を実線で示す中間開度位置に操作すると、空気混合部21のうち、冷風側の空気cと温風側の空気dがフットドア28の板面により分流し、冷風側の空気c1がフェイス通路24のみに流れ、温風側の空気d1がフット開口部27aからフット通路27のみに流れる。
【0056】
この結果、図3の比較例の場合には、本発明者の実験検討によると、上下吹出温度差が30℃程度まで過剰に拡大し、バイレベルモード時の空調感を悪化させることが分かった。
【0057】
これに対し、本実施形態の場合、フットドア28をバタフライ式ドアにより構成して、フットドア28を図1、2の実線で示す中間開度位置に操作した場合には、フットドア28の第2板ドア部28cの先端部とケース11の後方側の面11aとの間に空隙を形成し、この空隙により補助通路30を形成している。
【0058】
そのため、図2に拡大図示するように、空気混合部21からフット通路27に流入した温風側の空気d1のうち、一部の空気を矢印d2のように補助通路30に分岐し、この温風側の一部の空気d2をフェイス通路24の冷風側の空気c1に混合できる。この結果、フェイス開口部22からのフェイス吹出温度を上昇させて、バイレベルモード時の上下吹出温度差を10〜15℃程度まで減少でき、頭寒足熱型の適度の範囲に設定できるので、バイレベルモード時の空調感を向上できる。
【0059】
次に、フットモードが設定されると、フットドア28が図1、2の2点鎖線位置Eとなり、フットドア28がフット通路27のフット開口部27aを全開し、フェイス通路24を全閉する。このため、空気混合部21で温度調整された空気をフット開口部27a、フット通路27、側面開口部27bを通して乗員の足元部のみに吹き出す。
【0060】
なお、フットドア28の第1板ドア部28bの一部に切り欠き開口部を設け、フットドア28が図1、2の2点鎖線位置Eに操作されたときに、この切り欠き開口部によりフェイス通路24を部分的に開口するとともに、フェイスドア25によりデフロスタ開口部23を開口すれば、フットモード時に空気混合部21から一部の空気をフェイス通路24、デフロスタ開口部23を通して車両窓ガラス側へ吹き出すことができる。
【0061】
この場合、フェイスモード時には、フットドア28の第1板ドア部28bの切り欠き開口部を閉塞するように、フット開口部27aの開口形状を変更する必要がある。
【0062】
次に、フットデフロスタモードが設定されると、フェイスドア25が図1の破線位置となり、フェイス開口部22を全閉し、デフロスタ開口部23を全開する。また、フットドア28が図1、2の実線位置となり、フット通路27のフット開口部27aとフェイス通路24の両者を同時に同程度開口する。これにより、空気混合部21で温度調整された空気をフェイス通路24、デフロスタ開口部23を通して車両窓ガラス側へ吹き出して車両窓ガラスの曇り止めを行う。これと同時に、空気混合部21で温度調整された空気をフット開口部27a、フット通路27、側面開口部27bを通して乗員の足元部に吹き出して、乗員足元部を暖房する。
【0063】
フットデフロスタモードにおいても、バイレベルモード時と同様に、フット通路27に流入した温風側の空気d1の一部を矢印d2のように補助通路30に分岐し、この温風側の一部の空気d2をフェイス通路24の冷風側の空気c1に混合できる。この結果、フットデフロスタモードにおいても、上下吹出温度差を頭寒足熱型の適度の範囲に設定でき、空調感を向上できる。
【0064】
次に、デフロスタモードが設定されると、フェイスドア25が図1の破線位置となり、フェイス開口部22を全閉し、デフロスタ開口部23を全開する。また、フットドア28が図1の破線位置Dとなり、フット通路27のフット開口部27aを全閉し、フェイス通路24を全開する。これにより、空気混合部21で温度調整された空気の全量をフェイス通路24、デフロスタ開口部23を通して車両窓ガラス側へ吹き出すことができ、車両窓ガラスの曇り止め能力を向上できる。
【0065】
ところで、図3の比較例は前述の特開2001−150923号公報記載の従来技術と同様の考え方でフットドア28およびフット通路27を構成しているので、フット通路27がケース11の後方側の面11aから更に車両後方側へ突き出す配置となり、室内ユニット部10の車両前後方向の体格が増大するが、本実施形態によると、フット通路27の車両後方側への突き出しを解消でき、室内ユニット部10の車両前後方向の体格を図3の比較例や従来技術よりも小型化することができる。
【0066】
また、本実施形態ではフットドア28を、回転軸28aの径方向の両側部に第1、第2板ドア部28b、28cを一体に結合したバタフライ式ドアにより構成しているから、フットドア28が図1、2のE位置に操作され、第1、第2板ドア部28b、28cに送風空気の風圧が加わった際に、第1、第2板ドア部28b、28cの風圧による力F1、F2(図2)が回転軸28aを中心とする逆方向の回転力として作用する。そのため、第1、第2板ドア部28b、28cに加わる風圧による力F1、F2が互いに相殺する方向となる。これにより、フットドア28をE位置からD位置側へ回転操作する場合に、フットドア28の操作力を低減できる。なお、エアミックスドア16も同様にバタフライ式ドアにより構成しているから、その操作力を低減できる。
【0067】
(他の実施形態)
なお、上記の一実施形態では、エアミックスドア16により車室内吹出空気温度を調整するエアミックス式の室内ユニット部について説明したが、ヒータコア14を循環する温水流量もしくは温水の温度を調整することにより車室内吹出空気温度を調整する温水制御式の室内ユニット部に本発明を適用できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態による室内ユニット部の断面図である。
【図2】図1の要部拡大断面図である。
【図3】本発明の比較例の室内ユニット部の断面図である。
【符号の説明】
11…ケース、11a…後方側の面、12…送風機部、
13…蒸発器(冷房用熱交換器)、14…ヒータコア(暖房用熱交換器)、
22…フェイス開口部、24…フェイス通路、27…フット通路、
27a…フット開口部、27b…側面開口部、28…フットドア。
Claims (4)
- 車室内へ向かって空気が流れる空気通路を形成するケース(11)と、
前記ケース(11)内に配置され、前記空気を加熱する暖房用熱交換器(14)と、
前記ケース(11)の上方部に配置されるフェイス開口部(22)と、
前記ケース(11)内にて前記暖房用熱交換器(14)の上方側に形成され、前記暖房用熱交換器(14)を通過して温度調整された空気を前記フェイス開口部(22)に向かって導くフェイス通路(24)と、
前記ケース(11)内において前記暖房用熱交換器(14)の上方側に、前記ケース(11)の後方側の面(11a)から前記フェイス通路(24)側へ突き出すように形成され、車両幅方向に延びるフット通路(27)と、
前記フット通路(27)のうち、前記フェイス通路(24)側の部位に配置されるフット開口部(27a)と、
前記フェイス通路(24)内に回転可能に配置され、前記フット開口部(27a)を開閉するフットドア(28)とを備え、
前記フットドア(28)により前記フット開口部(27a)を開放すると、前記暖房用熱交換器(14)を通過して温度調整された空気が前記フット開口部(27a)から前記フット通路(27)に流入して、前記フット通路(27)の車両幅方向の左右両側部から乗員足元側へ吹き出すようになっており、
前記フットドア(28)を、回転軸(28a)と、前記回転軸(28a)の径方向の両側部に一体に結合された第1板ドア部(28b)および第2板ドア部(28c)とを有するバタフライ式ドアにより構成し、
前記ケース(11)内の上下方向において、前記暖房用熱交換器(14)と前記バタフライ式フットドア(28)との間にエアミックスドア(16)を配置し、
前記暖房用熱交換器(14)を通過する温風と前記暖房用熱交換器(14)をバイパスする冷風との風量割合を前記エアミックスドア(16)により調整して車室内吹出空気の温度を調整するようになっており、
前記バタフライ式フットドア(28)を中間開度位置に操作したときに、前記第1板ドア部(28b)により前記温風側領域の空気と前記冷風側領域の空気とを分流し、前記温風側領域の空気を前記フット通路(27)側に導くとともに前記冷風側領域の空気を前記フェイス通路(24)側に導くようにし、
更に、前記フット通路(27)側に導いた前記温風側領域の空気の一部を前記フェイス通路(24)側に分岐する補助通路(30)を前記第2板ドア部(28c)の先端側に形成することを特徴とする車両用空調装置。 - 前記暖房用熱交換器(14)を通過した後の温風を前記冷風側へ向けてガイドする温風ガイド壁(19)を前記ケース(11)の後方側の面(11a)から前記暖房用熱交換器(14)の上方側へ突き出すように形成し、
前記温風ガイド壁(19)の上方側に前記フット通路(27)を形成することを特徴とする請求項1に記載の車両用空調装置。 - 前記ケース(11)内において、前記フェイス通路(24)の車両前方側に、前記空気を送風する送風機部(12)を配置したことを特徴とする請求項1または2に記載の車両用空調装置。
- 前記送風機部(12)は前記ケース(11)内において、前記フェイス通路(24)の車両前方側で、且つ、上方側に配置され、
前記ケース(11)内において、前記送風機部(12)の下方側に、前記送風機部(12)からの送風空気を冷却する冷房用熱交換器(13)を配置し、
前記冷房用熱交換器(13)の車両後方側に前記暖房用熱交換器(14)を配置したことを特徴とする請求項3に記載の車両用空調装置。
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