JP3931488B2 - 車両用空調装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両用空調装置に関し、特に、前席側のみに空調空気を吹き出す空調装置と、前席側および後席側の両方に空調空気を吹き出す空調装置の、部品共用化に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
車両用空調装置は、前席側のみに空調空気を吹き出すものや、前席側および後席側の両方に空調空気を吹き出すもの等、種々の形式があり、特開平5−58144号公報では、このような形式の異なる空調装置のいずれにも共通使用可能な部品を増やして、コストの低減を図ったものが提案されている。図5、6は上記公報で提案された空調装置を示すもので、図5は前席の左右の吹出空気温度をそれぞれ独立に制御する(前席左右独立制御)空調装置であり、図6は図5の機能の装置に、さらに後席吹出空気温度を独立に制御して後席にも空気を吹き出す機能(後席独立制御)を付加したものである。この際、ヒータコア13、エアミックスドア20、38、さらには吹出モード切替ドア26、41等を収納する部分のケースを3つに分割し、中央のケース11c、11dを交換することによりいずれの形式の空調装置にも対応可能にして、3つに分割したケースのうち両側のケース11a、11bは共通使用可能にしている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記の従来技術においては、中央のケース11c、11dに設けた仕切壁34にて、前席用空気流路と後席用空気流路を、エアミックスドア20、38の回動軸21の軸方向に分割している。そのため、図5と図6の装置では、前席用空気流路の幅が異なり、従って前席用空気流路に配置される前席用エアミックスドア20や前席用吹出モード切替ドア26を共通化することはできない。
【0004】
本発明は上記点に鑑みてなされたもので、後席独立制御機能を備える空調装置と後席独立制御機能を備えない空調装置の、前席用エアミックスドアや前席用吹出モード切替ドアを共通使用可能にして、コストの低減を図ることを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明では、冷房用熱交換器(12)と、冷房用熱交換器(12)より下流側に略縦置き配置した暖房用熱交換器(13)と、温風と冷風との風量割合を調整する前席用エアミックスドア(20)と、温風と冷風とを混合した空気が流出する複数の前席用吹出開口部(25、29、30)と、この前席用吹出開口部(25、29、30)を開閉する前席用吹出モード切替ドア(26、31)と、冷房用熱交換器(12)で冷却された冷風が暖房用熱交換器(13)をバイパスして流れる後席用冷風バイパス通路(32)と、暖房用熱交換器(13)を通過する温風と後席用冷風バイパス通路(32)を通過する冷風との風量割合を調整する後席用エアミックスドア(38)と、暖房用熱交換器(13)からの温風と後席用冷風バイパス通路(32)からの冷風とを混合した空気が流出する後席用吹出開口部(43、44)と、暖房用熱交換器(13)の上方側、前席用エアミックスドア(20)、および前席用吹出モード切替ドア(26、31)を収納する本体ケース(11a、11b)と、本体ケース(11a、11b)の下面側に着脱可能に組み付けられ、暖房用熱交換器(13)の下方側を収納する下部ケース(11c)とを備え、
後席用冷風バイパス通路(32)および後席用吹出開口部(43、44)を下部ケース(11c)内に形成し、後席用エアミックスドア(38)を下部ケース(11c)内に収納したことを特徴としている。
【0006】
これによると、暖房用熱交換器(13)の下方側および後席用エアミックスドア(38)を下部ケース(11c)内に収納し、かつ、後席用冷風バイパス通路(32)および後席用吹出開口部(43、44)を下部ケース(11c)内に形成し、この下部ケース(11c)を、本体ケース(11a、11b)に組み付けることにより、後席独立制御機能を備える空調装置とすることができる。
また、上記下部ケース(11c)を、後席用空気流路を持たない単なるカバーとしての下部ケース(11d)に置き換え、この下部ケース(11d)を本体ケース(11a、11b)に組み付けることにより、後席独立制御機能を備えない空調装置とすることができる。
【0007】
このように、下部ケース(11c、11d)の選択使用によって後席独立制御機能が有り無しの空調装置を構成できるため、本体ケース(11a、11b)に収納された前席用エアミックスドア(20)および前席用吹出モード切替ドア(26、31)を共通化することができ、一層のコスト低減を図ることができる。
【0008】
請求項2記載の発明のように、請求項1に記載の車両用空調装置において、後席用吹出開口部(43、44)を開閉する後席用吹出モード切替ドア(41)を下部ケース(11c)内に収納するようにしてもよい。
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図に基づいて説明する。
【0010】
図1〜4は一実施形態を示すもので、このうち図1、2の空調装置は前席左右独立制御機能に後席独立制御機能を付加した形式の空調装置であり、図3、4は図1、2の空調装置から後席独立制御機能を省いた形式の空調装置である。
【0011】
(前席左右独立制御機能+後席独立制御機能)
図1、2は、車両用空調装置の通風系のうち空調ユニットを示すもので、通風系は、大別して、送風機ユニット(図示せず)と、空調ユニット10との2つの部分に分かれている。送風機ユニットは車室内の計器盤下方部のうち、中央部から助手席側へオフセットして配置されており、これに対し、空調ユニット10は車室内の計器盤下方部のうち、車両左右方向の略中央部に配置されている。
【0012】
送風機ユニットは周知のごとく内外気切替箱とこの内外気切替箱を通して空気を吸入して送風する送風機とから構成されている。内外気切替箱には外気(車室外空気)を導入する外気導入口と、内気(車室内空気)を導入する内気導入口が形成され、この両導入口は内外気切替ドアにより開閉される。
【0013】
空調ユニット10部は、具体的には図1、2に示す構成となっており、1つの共通の空調ケース11内に蒸発器(冷房用熱交換器)12とヒータコア(暖房用熱交換器)13を両方とも一体的に内蔵するタイプのものである。空調ケース11はポリプロピレンのような、ある程度の弾性を有し、強度的にも優れた樹脂の成形品からなる。空調ケース11は具体的には複数の分割ケースからなり(詳細後述)、この複数の分割ケースは、上記熱交換器12、13、後述のドア等の機器を収納した後に、金属バネクリップ、ネジ等の締結手段により一体に結合されて空調ユニット10を構成する。
【0014】
空調ユニット10部は、車室内の計器盤下方部の略中央部に、車両の前後方向および上下方向に対して、図1に示す形態で配置されている。空調ケース11の、最も車両前方側の部位の側面には空気入口14が形成されている。この空気入口14には、前述の送風機ユニットからの送風空気が流入する。
【0015】
空調ケース11内において空気入口14直後の部位に蒸発器12が配置されている。この蒸発器12は車両前後方向には薄型の形態で空調ケース11内通路を横断するように上下方向に縦置き配置されている。従って、蒸発器12の車両上下方向に延びる前面に空気入口14からの送風空気が流入する。この蒸発器12は周知のごとく冷凍サイクルの冷媒の蒸発潜熱を空調空気から吸熱して、空調空気を冷却するものである。
【0016】
そして、蒸発器12の空気流れ下流側(車両後方側)に、所定の間隔を開けてヒータコア13が配置されている。このヒータコア13は空調ケース11内の下方側において、車両後方側にわずかに傾斜して縦置き配置されている。なお、蒸発器12およびヒータコア13の車両左右方向の幅寸法は、空調ケース11の幅寸法と略同等に設計されている。
【0017】
ヒータコア13は、蒸発器12を通過した冷風を再加熱するものであって、その内部に高温の温水(エンジン冷却水)が流れ、この温水を熱源として空気を加熱するものである。空調ケース11内の空気通路において、ヒータコア13の上方部位には、このヒータコア13をバイパスして空気(冷風)が流れる前席用冷風バイパス通路15が形成されている。
【0018】
ここで、ヒータコア13は周知のごとく温水が通過する偏平チューブとこれに接合されたコルゲートフィンとからなる熱交換用コア部13aを有しており、この熱交換用コア部13aの空気流路は仕切壁16、17により、前席用流路18と後席用流路19とに仕切られている。ここで、仕切壁16、17は空調ケース11内部で、車両左右方向の全長にわたって延びるように形成されている。
【0019】
また、ヒータコア13と蒸発器12との間の部位には平板状の前席用エアミックスドア20が配置されている。この前席用エアミックスドア20は、ヒータコア13の熱交換用コア部13aの前席用流路18で加熱される温風と、前席用冷風バイパス通路15を通ってヒータコア13をバイパスする冷風との風量割合を調整する。
【0020】
前席用エアミックスドア20は水平方向(車両幅方向)に配置された回転軸21と一体に結合されており、この回転軸21を中心として車両上下方向に回動可能になっている。この前席用エアミックスドア20は上記風量割合の調整により車室内前席側への吹出空気温度を調整する前席側温度調整手段をなす。回転軸21は、空調ケース11に回転自在に支持され、かつ回転軸21の一端部は空調ケース11の外部に突出して、図示しないリンク機構を介して、サーボモータ等を用いたアクチュエータ機構に連結され、このアクチュエータ機構によりエアミックスドア20の回動位置を調整するようになっている。
【0021】
一方、空調ケース11において、前席用流路18およびヒータコア13の空気下流側(車両後方側)の部位には、ヒータコア13との間に所定間隔を開けて上下方向に延びる壁面22が空調ケース11に一体成形されている。この壁面22によりヒータコア13の直後から上方に向かう前席用温風通路23が形成されている。この前席用温風通路23の下流側(上方側)はヒータコア13の上方部において冷風バイパス通路15の下流側と合流し、冷風と温風の混合を行う前席用空気混合部24を形成している。
【0022】
そして、空調ケース11の上面部において、前席用空気混合部24に隣接する部位にデフロスタ開口部25が開口している。このデフロスタ開口部25は空気混合部24から温度制御された空調空気が流入するものであって、図示しないデフロスタダクトを介してデフロスタ吹出口に接続され、このデフロスタ吹出口から、車両前面窓ガラスの内面に向けて風を吹き出す。
【0023】
デフロスタ開口部25は平板状のデフロスタドア26により開閉される。このデフロスタドア26は、空調ケース11の上面部近傍にて水平方向に配置された回転軸27により回動するようになっている。デフロスタドア26はデフロスタ開口部25と連通口28を切替開閉する。この連通口28は空気混合部24からの空調空気を後述の前席用フェイス開口部29と前席用フット開口部30側へ流すための通路となる。
【0024】
空調ケース11の上面部において、デフロスタ開口部25よりも車両後方側(乗員寄り)の部位にフェイス開口部29が設けられており、このフェイス開口部29は図示しないフェイスダクトを介して、計器盤上方側に配置されているフェイス吹出口に接続され、このフェイス吹出口から車室内の乗員頭部に向けて風を吹き出す。
【0025】
次に、空調ケース11において、フェイス開口部29の下方側にフット開口部30が設けられている。このフット開口部30は、空調ケース11の左右両側の側面に開口しており、図示しない左右両側の前席用フット吹出口を経て前席の運転席側および助手席側の乗員足元に空気を吹き出す。
【0026】
上記の両開口部29、30の間に平板状のフットフェイス切替用ドア31が回転軸31aにより回動可能に配置され、この切替用ドア31によりフェイス開口部29とフット開口部30の入口部30aが切替開閉される。ここで、デフロスタドア26とフットフェイス切替用ドア31は、前席用吹出モード切替ドアを構成するものであって、図示しないリンク機構を介して、サーボモータ等からなるアクチュエータ機構に連結されて、このアクチュエータ機構により連動操作されるようになっている。
【0027】
次に、空調ケース11の内部においてヒータコア13の下方側部位に、蒸発器12出口からの冷風をヒータコア13をバイパスして通過させる後席用冷風バイパス通路32が形成されている。空調ケース11において、ヒータコア13における後席用流路19の空気下流側(車両後方側)の部位には、ヒータコア13との間に所定間隔を開けて上下方向に延びる壁面33が空調ケース11に一体成形され、この壁面33によりヒータコア13の直後から下方に向かう後席用温風通路37が形成されている。
【0028】
そして、後席用温風通路37と後席用冷風バイパス通路32との合流部位に平板状の後席用エアミックスドア38が回転軸39により回動可能に配置されている。この後席用エアミックスドア38は後席用温風通路37からの温風と後席用冷風バイパス通路32からの冷風との風量割合を調整して車室内後席側への吹出空気温度を調整する後席側温度調整手段を構成する。後席用温風通路37からの温風と後席用冷風バイパス通路32からの冷風は後席用空気混合部40において混合して所望温度の空気となる。
【0029】
回転軸39は水平方向(車両幅方向)に配置され、その一端部は空調ケース11の外部に突出して、図示しないリンク機構を介して、サーボモータ等を用いた独立のアクチュエータ機構に連結され、このアクチュエータ機構により後席用エアミックスドア38の回動位置を調整するようになっている。
【0030】
後席用空気混合部40の下流側(車両後方側)には平板状の後席用吹出モード切替ドア41が回転軸42により回動可能に配置され、後席用空気混合部40で混合した所望温度の空気は、後席用吹出モード切替ドア41により選択された後席用のフェイス開口部43または後席用のフット開口部44に向かって車両後方側へ流れ、さらに、ここから図示しない接続ダクトを経て後席用のフェイス吹出口または後席用のフット吹出口から後席乗員の頭部側または足元側へ吹出す。
【0031】
後席用吹出モード切替ドア41の回転軸42は、空調ケース11に回転自在に支持され、かつ回転軸42の一端部は空調ケース11の外部に突出して、図示しないリンク機構を介して、サーボモータ等を用いた独立のアクチュエータ機構に連結され、このアクチュエータ機構により後席用吹出モード切替ドア41の操作位置を独立に設定する。
【0032】
ところで、空調ケース11は、空気入口14の有無を除き対称形状の第1、第2ケース(本体ケース)11a、11bと、この両ケース11a、11bの下方に脱着可能に組み付けられた下部ケース11cとに分割されている。図1中の破線aは第1、第2ケース11a、11bと下部ケース11cの分割ラインを示しており、具体的には、下部ケース11cに組み付けられた仕切壁16、17の図1上端面と、後席用冷風バイパス通路32の入口部32aで分割されている。
【0033】
下部ケース11c内にはヒータコア13の下方側が収納されて、ヒータコア13の後席用流路19が下部ケース11c内に位置するようになっている。また、下部ケース11c内には、後席用空気流路を構成する後席用冷風バイパス通路32や後席用温風通路37が形成され、さらに後席用エアミックスドア38や後席用吹出モード切替ドア41が配置されている。
【0034】
一方、第1、第2ケース11a、11bにはヒータコア13の上方側が収納されて、ヒータコア13の前席用流路18が第1、第2ケース11a、11b内に位置するようになっている。また、前席用空気流路を構成する、前席用冷風バイパス通路15、前席用温風通路23、および前席用空気混合部24が、第1、第2ケース11a、11b内に形成されている。さらに、蒸発器12、前後席用エアミックスドア20、デフロスタドア26、フットフェイス切替用ドア31が、第1、第2ケース11a、11b内に配置されている。
【0035】
また、前席用空気流路は、第1ケース11aと第2ケース11bの間に挟持された仕切壁34によって2つに分割されている。すなわち、仕切壁34は、蒸発器12の直後の部位から空気流れ下流側(車両後方側)に向かって第1ケース11aと第2ケース11bの車両後方側端部まで延びるとともに、仕切壁16、17の部位から第1ケース11aと第2ケース11bの車両上方側端部まで延びている。これにより、蒸発器12の直後の部位から前席用の各開口部25、29、30に至るまでの前席用空気流路は、車両右側の運転席側空気流路100と、車両左側の助手席側空気流路101に分割されている。
【0036】
そして、前席用エアミックスドア20は、運転席側空気流路100および助手席側空気流路101にそれぞれ1つずつ配置され、運転席用エアミックスドア20と助手席用エアミックスドア20の回動位置を別々のアクチュエータ機構により独立に制御することにより、運転席側の吹出空気温度と助手席側の吹出空気温度を独立に調整するようになっている。
【0037】
なお、送風機ユニットや各アクチュエータ機構は、空調装置の電子制御装置(図示せず)により回転速度や回転量が自動制御されるようになっている。
【0038】
次に、図1、2に示す空調装置の作動を説明すると、この空調装置は前席用吹出モード切替ドアをなすデフロスタドア26とフットフェイス切替用ドア31の操作位置を選択することにより、以下の吹出モードを設定できる。
【0039】
(1)フェイス吹出モード
フェイス吹出モードが選択されると、デフロスタドア26を図1の実線位置に操作して、デフロスタ開口部25を閉じるとともに連通口28を全開する。また、フットフェイス切替用ドア31を図1の実線位置に操作してフット開口部30の入口部30aを閉じる。また、後席用吹出モード切替ドア41は、図1の実線位置に操作されて、後席用のフェイス開口部43を開口し、後席用のフット開口部44を閉塞する。
【0040】
このとき、前席用エアミックスドア20を図1の実線位置に操作すると、ヒータコア13の前席用流路18を全閉し、冷風バイパス通路15を全開する最大冷房状態が設定される。この状態において、送風機ユニットおよび冷凍サイクルが運転されると、送風機ユニットからの送風空気が空気入口14より流入した後、蒸発器12で冷却されて冷風となる。
【0041】
最大冷房状態ではこの冷風がそのまま、前席用冷風バイパス通路15を通過して前席用空気混合部24、および連通口28を経て前席用フェイス開口部29へ向かい、前席用フェイス吹出口から前席乗員の頭部に向けて冷風が吹き出す。一方、後席用エアミックスドア38を図1の実線位置に操作すると、ヒータコア13の後席用流路19での空気流れが遮断されるので、蒸発器12出口からの冷風がそのまま、後席用冷風バイパス通路32を通過して後席用空気混合部40を経て後席用フェイス開口部43へ向かい、後席用フェイス吹出口から後席乗員の頭部に向けて冷風が吹き出す。
【0042】
車室内吹出空気温度の制御のために、前席用エアミックスドア20を図1の実線位置(最大冷房位置)から中間開度位置に操作すると、前席用エアミックスドア20の開度位置に従って冷風の大部分が前席用冷風バイパス通路15を通過し、残余の一部の冷風はヒータコア13の前席用流路18に流入して加熱され、温風となり、前席用温風通路23を上昇する。そして、前席用冷風バイパス通路15の冷風と前席用温風通路23からの温風とが前席用空気混合部24にて混合され、所望温度に調整される。
【0043】
ここで、運転席側空気流路100および助手席側空気流路101に1つずつ配置された前席用エアミックスドア20の開度位置は独立に制御され、それにより運転席側の吹出空気温度と助手席側の吹出空気温度が独立に調整される。従って、前席左右独立制御機能を得ることができる。
【0044】
同様に、後席側においても、後席用エアミックスドア38を図1の実線位置(最大冷房位置)から中間開度位置に操作すると、後席用エアミックスドア38の開度位置に従って後席用冷風バイパス通路32からの冷風と、後席用温風通路37からの温風との風量割合を調整でき、後席用空気混合部40にて冷風と温風が混合され、所望温度に調整できる。
【0045】
従って、本実施形態の車両用空調装置は、2つの前席用エアミックスドア20と後席用エアミックスドア38の操作位置(回動位置)をそれぞれ独立に制御することにより、前席左右側と後席側の合計3カ所のフェイス吹出空気温度を独立に制御できる。
【0046】
(2)バイレベル吹出モード
デフロスタドア26を図1の実線位置に操作するとともに、フットフェイス切替用ドア31を図1の実線位置と一点鎖線位置との中間位置に操作して前席用フェイス開口部29と前席用フット開口部30の入口部30aをともに開放する。また、後席用吹出モード切替ドア41は、図1の実線位置から中間位置に操作されて、後席用のフェイス開口部43および後席用のフット開口部44をともに開口する。
【0047】
バイレベル吹出モードは、通常、春秋の中間シーズンで用いられるので、前席用エアミックスドア20が中間開度位置に操作され、所望温度に調整された風が、前席用フェイス開口部29と前席用フット開口部30の両方から車室内の上下に同時に吹き出す。また、後席用エアミックスドア38を中間開度位置に操作することにより、後席側でも所望温度に調整された風をフェイス開口部43とフット開口部44の両方から車室内の上下に同時に風を吹き出すことができる。
【0048】
(3)フット吹出モード
デフロスタドア26を図1の実線位置からデフロスタ開口部25を少量開放するとともに連通口28を開放(ほぼ全開)する位置に操作する。また、フットフェイス切替用ドア31は図1の一点鎖線位置に操作して前席用フェイス開口部29を閉塞し、前席用フット開口部30の入口部30aを全開する。また、後席用吹出モード切替ドア41は、図1の一点鎖線位置に操作されて、後席用のフェイス開口部43を閉塞し、後席用のフット開口部44を開口する。
【0049】
このとき、前席用エアミックスドア20を図1の一点鎖線位置20aに操作すると、冷風バイパス通路15を全閉し、ヒータコア13の前席用流路18を全開する最大暖房状態が設定される。この状態では、送風機ユニット1からの送風空気が空気入口14より流入した後、蒸発器12を通過してヒータコア13の前席用流路18に流入して加熱され、温風となる。この温風は温風通路23を上昇して前席用空気混合部24に至り、ここから連通口28を経て前席用フット開口部30へ向かい、ここから前席乗員の足元部に向けて温風が吹き出す。
【0050】
また、このとき、後席用エアミックスドア38を図1の一点鎖線位置に操作して、後席用冷風バイパス通路32を全閉し、後席用温風通路37を全開すると、ヒータコア13の後席用流路19で加熱された温風が温風通路37、後席用空気混合部40を通過して後席用フット開口部44に向かう。さらに、この後席用フット開口部44から後席用のフット吹出口を経て後席乗員の足元部に向けて温風が吹き出す。
【0051】
2つの前席用エアミックスドア20および後席用エアミックスドア38をそれぞれ独立に図1の一点鎖線位置(最大暖房位置)から任意の中間開度位置に操作すると、前席左右側およひ後席側において冷風と温風との混合割合をそれぞれ独立に調整することができ、これにより、前席左右側と後席側のフット吹出空気温度を独立に制御できる。
【0052】
なお、フット吹出モードでは、前席側において、デフロスタ開口部25からの吹出風量と前席用フット開口部30からの吹出風量との割合は通常、2対8程度の割合であるが、デフロスタドア26を、フット吹出モードの場合よりデフロスタ開口部25の開口度合いが増加し、連通口28の開口度合いが減少する位置に操作すれば、デフロスタ開口部25からの吹出風量と前席用フット開口部30からの吹出風量との割合を5対5程度の割合にすることができる。これにより、フット吹出モードよりも窓ガラスの曇り止め効果の高いフットデフロスタ吹出モードを設定できる。
【0053】
(4)デフロスタ吹出モード
デフロスタ吹出モードが選択されると、デフロスタドア26を図1の一点鎖線位置に操作して、デフロスタ開口部25を全開し、連通口28を閉塞する。このとき、前席用エアミックスドア20を図1の一点鎖線位置(最大暖房位置)20aに操作すれば、ヒータコア13の前席用流路18で加熱された温風が前席用温風通路23、デフロスタ開口部25を通して、デフロスタ吹出口から車両前面窓ガラスに向けて吹き出し、前面窓ガラスの曇り止めを行う。
【0054】
また、後席用吹出モード切替ドア41は、図1の一点鎖線位置に操作されて、後席用のフェイス開口部43を閉塞し、後席用のフット開口部44を開口する。このとき、後席用エアミックスドア38を図1の一点鎖線位置に操作して、後席用冷風バイパス通路32を全閉し、後席用温風通路37を全開すると、ヒータコア13の後席用流路19で加熱された温風が温風通路37、後席用空気混合部40を通過して後席用フット開口部44に向かう。さらに、この後席用フット開口部44から後席用のフット吹出口を経て後席乗員の足元部に向けて温風が吹き出す。
【0055】
(前席左右独立制御機能)
次に、図3、4に示す後席独立制御機能を備えない形式の空調装置について説明する。この装置に組み付けられた下部ケース11dは、後席用空気流路を備えておらず、第1、第2ケース11a、11bの下方の開口部を塞ぐ単なるカバーとして機能する。従って、下部ケース11dは、仕切壁16、17(図1参照)、後席用エアミックスドア38(図1参照)、および後席用吹出モード切替ドア41(図1参照)が省かれている。そして、仕切壁16、17がないため、ヒータコア13を通る空気は前席用温風通路23を介してすべて前席の吹出口から吹き出される。
【0056】
一方、この下部ケース11dは、後席用冷風バイパス通路32(図1参照)の入口部を塞ぐ壁面11d1と、ヒータコア13の底部側を覆う底部壁面11d2および側壁面11d3と、下部ケース11d内の空気流路を車両右側の運転席側空気流路200と車両左側の助手席側空気流路201に分割する仕切壁11d4を有する。この仕切壁11d4は側壁面11d3と略同一形状で、仕切壁11d4の上端が、第1、第2ケース11a、11b間の仕切壁34の下端と接している。従って、第1、第2ケース11a、11b内の運転席側空気流路100と下部ケース11d内の運転席側空気流路200が連通し、第1、第2ケース11a、11b内の助手席側空気流路101と下部ケース11d内の助手席側空気流路201が連通する。
【0057】
なお、図3、4に示す空調装置の作動は、後席独立制御機能がない点と、送風空気がすべて前席の吹出口から吹き出される点を除き、図1、2に示す空調装置と同じであるので、説明を省略する。
【0058】
ところで、本実施形態によれば、図1、2に示す空調装置のように、後席用空気流路や後席用の各ドア38、41を設けた下部ケース11cを組み付けることにより、後席独立制御機能を備える空調装置とすることができ、一方、図3、4に示す空調装置のように、後席用空気流路を持たない単なるカバーとしての下部ケース11dを組み付けることにより、後席独立制御機能を備えない空調装置とすることができる。従って、第1、第2ケース11a、11bはもちろんのこと、これらのケース11a、11bに収納されるすべての構成部品も、後席独立制御機能が有り無しの空調装置に共通してそのまま使用することが可能となり、コスト低減を図ることができる。
【0059】
(他の実施形態)
上記実施形態では、前席左右独立制御の空調装置を基本として、後席独立制御機能が有り無しの場合の部品共通化の例を示したが、前席が左右独立制御でない(前席左右共吹出空気温度が同じ)空調装置を基本として、後席独立制御機能が有り無しの2種類の空調装置を製作する場合にも、本発明は適用可能である。この場合、空気流路を運転席側と助手席に仕切る仕切壁34、11d4が不要であり、それに伴い、前席用エアミックスドア20およびこのドア20を駆動するアクチュエータ機構は1つになる。
【0060】
また、上記実施形態では、下部ケース11c内に後席用吹出モード切替ドア41を配置したが、この後席用吹出モード切替ドア41は、後席用の吹出口近傍に配置してもよい。また、後席用エアミックスドア38を、ヒータコア13の後席用流路19と後席用冷風バイパス通路32との分岐部に配置して、この後席用エアミックスドア38により、後席用流路19を通る空気と後席用冷風バイパス通路32を通る空気との風量割合を調整して車室内後席側への吹出空気温度を調整するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態において後席独立制御機能を備える車両用空調装置の空調ユニット部の縦断面図である。
【図2】図1におけるA視図である。
【図3】本発明の一実施形態において後席独立制御機能を備えない車両用空調装置の空調ユニット部の縦断面図である。
【図4】図3におけるB視図である。
【図5】後席独立制御機能を備える従来の空調ユニット部の縦断面図である。
【図6】後席独立制御機能を備えない従来の空調ユニット部の縦断面図である。
【符号の説明】
11a、11b…本体ケース、11c、11d…下部ケース、
12…蒸発器(冷房用熱交換器)、13…ヒータコア(暖房用熱交換器)、
15…前席用冷風バイパス通路、20…前席用エアミックスドア、
25…デフロスタ開口部、26…前席用デフロスタドア、
29…前席用フェイス開口部、30…前席用フット開口部、
31…フットフェイス切替用ドア。
Claims (2)
- 空気を冷却する冷房用熱交換器(12)と、
前記冷房用熱交換器(12)より下流側に略縦置き配置され、前記冷房用熱交換器(12)を通過した空気を加熱する暖房用熱交換器(13)と、
前記冷房用熱交換器(12)で冷却された冷風が前記暖房用熱交換器(13)をバイパスして流れる前席用冷風バイパス通路(15)と、
前記暖房用熱交換器(13)を通過する温風と前記前席用冷風バイパス通路(15)を通過する冷風との風量割合を調整する前席用エアミックスドア(20)と、
前記暖房用熱交換器(13)からの温風と前記前席用冷風バイパス通路(15)からの冷風とを混合した空気が流出する複数の前席用吹出開口部(25、29、30)と、
前記前席用吹出開口部(25、29、30)を開閉する前席用吹出モード切替ドア(26、31)と、
前記冷房用熱交換器(12)で冷却された冷風が前記暖房用熱交換器(13)をバイパスして流れる後席用冷風バイパス通路(32)と、
前記暖房用熱交換器(13)を通過する温風と前記後席用冷風バイパス通路(32)を通過する冷風との風量割合を調整する後席用エアミックスドア(38)と、
前記暖房用熱交換器(13)からの温風と前記後席用冷風バイパス通路(32)からの冷風とを混合した空気が流出する後席用吹出開口部(43、44)と、
前記暖房用熱交換器(13)の上方側、前記前席用エアミックスドア(20)、および前記前席用吹出モード切替ドア(26、31)を収納する本体ケース(11a、11b)と、
前記本体ケース(11a、11b)の下面側に着脱可能に組み付けられ、前記暖房用熱交換器(13)の下方側を収納する下部ケース(11c)とを備え、
前記後席用冷風バイパス通路(32)および前記後席用吹出開口部(43、44)を前記下部ケース(11c)内に形成し、前記後席用エアミックスドア(38)を前記下部ケース(11c)内に収納したことを特徴とする車両用空調装置。 - 前記後席用吹出開口部(43、44)を開閉する後席用吹出モード切替ドア(41)を前記下部ケース(11c)内に収納したことを特徴とする請求項1に記載の車両用空調装置。
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