JP4014021B2 - プロペラシャフト支持構造 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車のプロペラシャフトをセンタベアリングにより軸支する構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
通常プロペラシャフトは、内環と外環を弾性部材を介して接続した環状支持部材によりセンタベアリングを介して軸支される。センタベアリングはアウタレースを環状支持部材の内環で支持されるが、内環の前後開口が開放されていると、泥水や塩水,異物等が浸入してセンタベアリングに至り、軸受としての機能を損ね、焼付きや異音の発生の原因となることがある。
【0003】
そこでプロペラシャフトに圧入してセンタベアリングを軸方向所定位置に位置決め固定するストッパピースにフランジが一体に形成され、同フランジにより内環の開口を覆うようにした例がある。
【0004】
同例を図4に示す。図4において内環011 と外環012 を弾性部材013 を介して接続した環状支持部材010 によりセンタベアリング05を介してプロペラシャフト01が軸支されている。センタベアリング05は内環011 の内側所定位置にあってプロペラシャフト01に嵌合し、インナレースの一端がプロペラシャフト01の段部に当接し、他端がプロペラシャフト01に圧入された鋼材であるストッパピ−ス06により押圧されて軸方向の位置決めがなされセンタベアリング05が固定される。
【0005】
このようにセンタベアリング05を内部に支持する環状支持部材010 の内環011 は前後に開口を有するが、後側開口はプロペラシャフト01の拡径した大径部により覆われ、前側開口はストッパピース06に一体に成形されたフランジ06aにより覆われ、泥水等の内部への浸入を可及的に防止している。内環011 の内部においてセンタベアリング05の前後はシール部材07,08によりシールされているが、上記のように内環011 の前後開口を覆うことによりできるだけ泥水が浸入しないようにしてシール効果を高くしている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
内環011 の特に前側の開口を覆うストッパピース06のフランジ06aには、泥水や塩水がかかり易いためフランジ06aの腐食が激しく、最悪の場合はフランジ06が腐食により欠損するおそれがある。フランジ06が欠損すると内環011 内に直接水等が浸入し、シール部材07では十分シールができずセンタベアリング05にまで水が浸入してセンタベアリング05を侵し軸受機能を損ねたり、焼付きや異音を発生するおそれがある。
【0007】
またストッパピースはフランジを有し外径が変化する形状であるので、削り加工が単純ではなく、錆防止のためにも塗装を必要とするなどコスト高となる。
さらにストッパピースはフランジを有し肉厚が軸方向に変化しているので、プロペラシャフトへの圧入荷重の設定が難しく高い精度が要求される。
【0008】
本発明は、かかる点に鑑みなされたもので、その目的とする処は、内側にセンタベアリングを支持する環状支持部材の内環の開口を覆うフランジをゴムで構成することで、フランジの塩水等による腐食がなくシール効果を高く維持できるとともに、ストッパピースの製造が容易で低コストであるプロペラシャフト支持構造を供する点にある。
【0009】
【課題を解決するための手段および作用効果】
上記目的を達成するために、本発明は、内環と外環を弾性部材を介して接続した環状支持部材が、前記内環内側でセンタベアリングを介してプロペラシャフトを軸支するプロペラシャフト支持構造において、フランジのない単純筒形状に形成された金属製のストッパピースが、前記プロペラシャフトに圧入され前記センタベアリングのインナレースに当接して該センタベアリングを軸方向所定位置に位置決め固定し、環状のゴム製フランジの内周部に断面略L字状の薄肉環状金属板が固着され、同環状金属板が前記ストッパピースの端部外周および側端面に嵌着されることで前記フランジにより前記内環の開口を覆うとともに、前記環状金属板が前記ストッパピースの端面を覆うプロペラシャフト支持構造とした。
【0010】
ストッパピースの端部に環状金属板を介して嵌着されたフランジがゴム製であるので、内側にセンタベアリングを支持する環状支持部材の内環の開口を腐食しない該ゴム製のフランジで覆い、長年月シール効果を高く維持することができる。
【0011】
またストッパピースはフランジを有せず単純筒形状を形成するので、削り加工が簡単で、表面積を小さくでき、錆防止の塗装を廃止することができ、製造コストを低く抑えることができる。
さらにストッパピースは単純筒形状をなし肉厚が軸方向にあまり変化しないので、プロペラシャフトへの圧入荷重の設定が容易で高い精度が要求されず、この点でも製造コスト低く抑えることができる。
【0012】
請求項2記載の発明は、請求項1記載のプロペラシャフト支持構造において、内周に前記環状金属板を固着した前記フランジを前記ストッパピースの端部外周に一体に嵌着された小組状態で、前記ストッパピースが前記プロペラシャフトに圧入され前記センタベアリングを位置決め固定することを特徴とする。
【0013】
先にストッパピースの端部外周に薄肉環状金属板によりフランジを一体に嵌着して小組状態としておき、小組状態でストッパピースをプロペラシャフトに圧入することで、効率良く組付けを行うことができ、生産性を向上させることができる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下本発明に係る一実施の形態について図1ないし図3に図示し説明する。
図1は、本実施の形態のプロペラシャフト支持構造を示す一部断面とした側面図であり、図2は組付完成直前の状態を示す側面図である。
【0015】
プロペラシャフト1は大径部1aから前端(図1において左端)の継手部1dにかけて径を段階的に変化させて概ね中径部1bと小径部1cを形成しており、該中径部1bと小径部1cにおいてセンタベアリング5を介して環状支持部材10に回転自在に軸支されている。
【0016】
センタベアリング5は、ラジアルボールベアリングであり、プロペラシャフト1の小径部1cに嵌合し、インナレース5aが中径部1bの側面に当接して位置決めされる。
【0017】
環状支持部材10は、内環11と外環12をゴム弾性部材13を介して接続したもので、内環11は大径部11a,中径部11b,小径部11cに順次径を段階的に変えた円筒状を形成しており、中径部11bの内側にセンタベアリング5のアウタレース5bが嵌合され、大径部11aはプロペラシャフト1の中径部1bの外周を覆うようにして後方へ延出し、小径部11cはプロペラシャフト1の小径部1cの外周を覆うようにして前方へ延出している。
【0018】
こうして環状支持部材10の内環11に支持されたセンタベアリング5を介してプロペラシャフト1が回転自在に軸支され、センタベアリング5の前後両側にはシール部材15,16が挿入される。この状態でストッパピース20をプロペラシャフト1に圧入することになり、その直前の状態を図2は示している。
このストッパピース20にはフランジ25が一体に嵌着されており、この分解図を図3に示す。
【0019】
ストッパピース20は、鋼製で略単純な円筒形状をなし、内径がプロペラシャフト1の小径部1cの外径に略等しい。
【0020】
一方フランジ25は、ゴム製で円環状をなし、内周部に薄肉の環状金属板26が固着されている。環状金属板26は周壁26aと環状側壁26bで断面がL字状に形成されており、ゴム製フランジ25はこの環状金属板26を全面に亘って覆うようにして焼き付けられている。
【0021】
ゴム製フランジ25は、周壁26aの外周において中央に薄肉に焼き付けられた溝条部25cを挟んで前側に大径環部25a,後側に小径環部25bが形成される。大径環部25aの外径は環状支持部材10の内環11の小径部11cより大きいが、小径環部25bの外径は小径部11cより小さい。なお環状側壁26bの内周縁からテーパして前方へ環状突片25dが突出している。
【0022】
環状金属板26の周壁26aの内面にもゴムが薄肉に形成しており、その内径は、ストッパピース20の外径よりも小さく、図3に示す姿勢で両者を嵌着する。ストッパピース20の前端部の外周面にフランジ25が圧入され、図2に示すように嵌着し一体化される。
【0023】
このようにストッパピース20にフランジ25が環状金属板26を介して嵌着された小組状態で、プロペラシャフト1の小径部1cにストッパピース20を圧入する。ストッパピース20の後端はシール部材15の内側を貫通してセンタベアリング5のインナレース5aの前端面に当接してセンタベアリング5を位置決め固定する。
【0024】
このときフランジ25は、図1に示すように小径環部25bが環状支持部材10の内環11の小径部11c内に入り込み、大径環部25aが内環11の前端開口に近接して開口を覆う。
【0025】
かかるプロペラシャフト1の軸受構造部に泥水や塩水が特に前方からかかった場合、環状支持部材10の内環11の前端開口がフランジ25の大径環部25aにより覆われてセンタベアリング5を内在する内環11内に水が直接浸入するのを防止することができ、大径環部25aと内環11との隙間から水が浸入することがあってもフランジ25の大径環部25aと小径環部25bとの間の溝条25cに案内されて下方へ落下し、内環11の内部に水が浸入することは阻止される。
【0026】
なお内環11の後端開口は、プロペラシャフト1の大径部1aで覆われるとともに、大径部1aに接する中径部1bに溝条が形成され、上記と同様に水の浸入を防止している。
【0027】
内環11内のセンタベアリング5は、前後をシール部材15,16によりシールされているが、さらに上記のように内環11の前後開口部で水の浸入が防止されるので、泥水や塩水等からセンタベアリング5が確実に保護される。
【0028】
そしてストッパピース20の端部に嵌着されたフランジ25がゴム製であるので、塩水等によっても腐食することがなく、長年月に亘って内環11の開口を覆いシール効果を高く維持することができる。
【0029】
またストッパピース20自体は、フランジを有せず単純円筒形状を形成するので、削り加工が簡単で、錆防止の塗装を廃止することができ、製造コストを低く抑えることができる。
【0030】
なおストッパピース20の端面は環状金属板26の環状側壁26bで覆われて外部に露出しておらず、さらにゴム製フランジ25のテーパした環状突片25dがプロペラシャフト1に圧接されてストッパピース20を外部から遮断しているので、腐食のおそれがない。環状金属板26もゴム製フランジ25のゴムに全面を被覆されているので、腐食のおそれがない。
【0031】
ストッパピース20は単純円筒形状をなし肉厚が軸方向にあまり変化しないので、プロペラシャフト1への圧入荷重の設定が容易で高い精度が要求されず、製造コストを低く抑えることができる。
【0032】
ストッパピース20にフランジ25が嵌着された小組状態で、プロペラシャフト1の小径部1cにストッパピース20を圧入するので、効率良く組付けを行うことができ、生産性を損なうことはない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態にかかるプロペラシャフト支持構造を示す一部断面とした側面図である。
【図2】ストッパピースの組付直前の状態を示す同側面図である。
【図3】ストッパピースとフランジの一部断面とした分解側面図である。
【図4】従来のプロペラシャフト支持構造を示す一部断面とした側面図である。
【符号の説明】
1…プロペラシャフト、5…センタベアリング、10…環状支持部材、11…内環、12…外環、13…ゴム弾性部材、15,16…シール部材、20…ストッパピース、25…フランジ、26…環状金属板。
Claims (2)
- 内環と外環を弾性部材を介して接続した環状支持部材が、前記内環内側でセンタベアリングを介してプロペラシャフトを軸支するプロペラシャフト支持構造において、
フランジのない単純筒形状に形成された金属製のストッパピースが、前記プロペラシャフトに圧入され前記センタベアリングのインナレースに当接して該センタベアリングを軸方向所定位置に位置決め固定し、
環状のゴム製フランジの内周部に断面略L字状の薄肉環状金属板が固着され、同環状金属板が前記ストッパピースの端部外周および側端面に嵌着されることで前記フランジにより前記内環の開口を覆うとともに、前記環状金属板が前記ストッパピースの端面を覆うことを特徴とするプロペラシャフト支持構造。 - 内周に前記環状金属板を固着した前記フランジを前記ストッパピースの端部外周に一体に嵌着された小組状態で、前記ストッパピースが前記プロペラシャフトに圧入され前記センタベアリングを位置決め固定することを特徴とする請求項1記載のプロペラシャフト支持構造。
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