JP3963546B2 - 新規な(チオ)エポキシ樹脂 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、高い透明性等が要求される光学材料等の分野に好適に使用される。
【0002】
【従来の技術】
代表的な光学材料であるプラスチックレンズに、従来より要求され続けている性能は、さらに薄く、軽く、よく見えて、耐久性に優れることである。
【0003】
これらの要求に応える為には、プラスチックレンズ用樹脂自身のさらなる高性能化を行わなければならない。即ち、高屈折率化、低比重化、高アッベ数化、高耐熱性化を行わなければならない。
【0004】
低比重化、高耐熱性化については、現在の高屈折率プラスチックレンズでも高いレベルで実現されてきている。
【0005】
ところが屈折率とアッベ数については、屈折率が上昇するとアッベ数は低くなる相反する物性である為、両方同時に性能を向上させる事はかなり困難で、改良し難い性能であった。そこで、アッベ数の低下を抑えながら出来るだけ屈折率を高くする検討が盛んに行われている。
【0006】
これらの検討の中で最も代表的な提案は、特開平9−110979号公報、特開平9−71580号公報、及び特開平9−255781号公報で、特定構造のチオエポキシ樹脂を使用する方法である。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
この方法によれば、比較的高いアッベ数を有しながら極めて高い屈折率が実現できる。ところがこれらの樹脂を重合させた場合、得られた樹脂成型物中に光学的不均一部分が生成し易く、高度の光学的均一性が要求されるプラスチックレンズ用としては不充分で、更なる改良の余地があった。
【0008】
さらにこの樹脂成型物は、かなり脆く割れやすい性質を有しているため、これから得られるプラスチックレンズは、安全性の点で優れているとは言い難かった。
【0009】
【課題を解決するための手段】
このような状況に鑑み、本発明者らは鋭意検討を行った結果、理由は不明だが、驚くべきことに、(チオ)エポキシ樹脂の構造を変えれば、光学的不均一の問題も脆さの問題もかなり改良できることを見出した。
【0010】
即ち、下記式(1)
【0011】
【化2】
【0012】
(式中AはOまたはS原子を表し、同一でもそれぞれ異なってもよい。)
で表される特定構造の(チオ)エポキシ樹脂またはその(チオ)エポキシ樹脂を含む組成物を少なくとも有する重合性組成物を重合すれば、上記の問題点は解決され、高屈折率、高アッベ数で、実用上特に問題とならない程度の衝撃性を有しながら、光学的に均一なプラスチックレンズが得られることを見出し、本発明に到達した。
【0013】
即ち本発明は、上記の式(1)で表される(チオ)エポキシ樹脂、その(チオ)エポキシ樹脂を含む組成物、それらを含む重合性組成物、さらにはその重合性組成物を重合して得られる透明樹脂並びにプラスチックレンズ、プラスチックレンズの注型重合法である。
【0014】
尚、上記の(チオ)エポキシ樹脂、それらを重合して得られるポリエーテルまたはポリスルフィド系透明樹脂、並びにプラスチックレンズは、現在まで知られていない。
【0015】
本発明に係わる(チオ)エポキシ樹脂並びに(チオ)エポキシ樹脂組成物は、通常以下の方法で合成される。
【0016】
特開平9−286772号公報の方法等によって合成される下記式(2)
【0017】
【化3】
のポリチオールを出発原料にして、塩基の存在下、エピハロヒドリンを反応させて式(1)で表されるエポキシ樹脂またはそれを含むエポキシ樹脂組成物を合成する。
【0018】
次いで、そのエポキシ樹脂またはエポキシ樹脂組成物にチオ尿素またはチオシアン酸塩を反応させて式(1)で表されるチオエポキシ樹脂、エポキシ基を有するチオエポキシ樹脂、チオエポキシ基を有するエポキシ樹脂、またはそれらを含むチオエポキシ樹脂組成物を合成する。
【0019】
以下に代表的な合成法の一例を挙げて、それについての詳細な説明を行う。
【0020】
【化4】
【0021】
先ず、式(2)で表されるポリチオールに、エピクロロヒドリン、エピブロモヒドリン等のエピハロヒドリン類を反応させて式(3)で表されるハロゲン化アルコール類を合成する。
【0022】
エピハロヒドリン類のなかではエピクロロヒドリンが比較的好ましい。これらエピハロヒドリン類の使用量は、式(2)で表されるポリチオールのメルカプト基に対して、0.5〜2当量が好ましく、0.9〜1.2であれば更に好ましい。
【0023】
この際、反応触媒として、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ジメチルシクロヘキシルアミン、ジエチルアニリン、ピリジン、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、ナトリウムメチラート、t−ブトキシカリウム、燐酸一水素二ナトリウム、酢酸ナトリウム等の有機・無機塩基類を加えた方が好ましい結果を与える場合が多い。これら塩基の中では、無機塩基類の方が比較的好ましく、無機塩基類のなかでは水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム、水酸化カルシウムが好ましい。
【0024】
これら塩基の添加量は、式(2)のポリチオールに対して0.1〜10wt%が好ましく、0.3〜5wt%であればさらに好ましい。
【0025】
反応温度は−20〜50℃が好ましく、0〜15℃であれば更に好ましい。
【0026】
反応溶媒は、使用してもしなくてもよいが、使用する場合はトルエン、キシレン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、ニトロベンゼン等の芳香族系溶媒類、ジクロロメタン、クロロホルム、ジクロロエタン等の脂肪族系溶媒類、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、メトキシエタノール、エチレングリコール、グリセリン等のアルコール類、水等が好ましく用いられる。
【0027】
これらは単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。
【0028】
水と芳香族系溶媒類、または水と脂肪族系溶媒類等の二層分離型混合溶媒系を用いる場合は、相間移動触媒として、アルコール類、4級アルキルアンモニウム塩、アルキルまたはアリールカルボン酸金属塩、アルキルまたはアリールスルホン酸金属塩、酸性アルキルまたはアリール燐酸エステルとその金属塩等の界面活性剤類を加えた場合、好ましい結果を与える場合が多い。
【0029】
これらの界面活性剤類の添加量は、反応マス総重量に対して0.001〜20wt%が好ましく、0.1から10wt%であればさらに好ましい。
【0030】
引き続き、この反応マスにトリエチルアミン、トリブチルアミン、ジメチルシクロヘキシルアミン、ジエチルアニリン、ピリジン、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、ナトリウムメチラート、t−ブトキシカリウム、燐酸一水素二ナトリウム、酢酸ナトリウム等の有機・無機塩基類を加えて、本発明に係わる式(4)のエポキシ樹脂またはそれを含む組成物を得る。
【0031】
これら塩基は、単独でも2種以上を併用してもよいが、用いる塩基の種類は有機塩基類よりも無機塩基類の方が比較的好ましく、無機塩基類のなかでは水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが好ましい。
【0032】
これらの塩基の使用量は、先に使用したエピハロヒドリン類に対して、1〜10当量が好ましく、2〜5当量であれば更に好ましい。
また、反応温度は−10〜60℃が好ましく、5〜30℃であれば更に好ましい。
【0033】
通常は、このような2段法によって本発明に係わる式(4)で表されるエポキシ樹脂またはそれを含む組成物が合成されるが、式(2)で表されるポリチオールに、後で加えられるエピハロヒドリン類に対して当量以上の有機・無機塩基類を加え、次いでエピハロヒドリン類を加える1段法でも合成可能である。
【0034】
しかしながら、2段法よりも更に厳密な条件の探索が必要となったり、純度が低くなる傾向にあるため、あまり好ましくは用いられない。
【0035】
本発明に係わる式(5)で表されるチオエポキシ樹脂またはそれを含む組成物は、式(4)で表されるエポキシ樹脂またはそれを含む組成物にチオ尿素、又はチオシアン酸ナトリウム、チオシアン酸カリウム、チオシアン酸アンモニウム、チオシアン酸カルシウム、チオシアン酸鉛等のチオシアン酸塩を反応させる事によって得られる。チオシアン酸塩を使用する場合は、チオシアン酸ナトリウム、チオシアン酸カリウム、チオシアン酸アンモニウムが比較的に好ましく、チオシアン酸ナトリウムであれば更に好ましい。
【0036】
これらのチオ尿素、又はチオシアン酸塩の使用量は、例えば、式(4)のエポキシ基に対して当量以上で用いられるが、好ましくは1〜5当量、更に好ましくは1〜3当量の範囲である。1当量未満では純度が低下し、5当量以上では経済的に不利になる場合がある。
【0037】
反応温度はチオ尿素、又はチオシアン酸塩の種類によって大きく異なる為特に限定はできないが、チオ尿素を使用する場合は凡そ10〜30℃が好ましく、チオシアン酸塩を使用する場合は凡そ30〜60℃が好ましい。
【0038】
本発明に係わる式(5)で表されるチオエポキシ樹脂またはそれを含む組成物を合成する場合、通常、式(4)で表されるエポキシ樹脂またはそれを含む組成物の合成時とほぼ同様の反応溶媒が使用される。
【0039】
例えば、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、ニトロベンゼン等の芳香族系溶媒類、ジクロロメタン、クロロホルム、ジクロロエタン等の脂肪族系溶媒類、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、メトキシエタノール、エチレングリコール、グリセリン等のアルコール類等が好ましく用いられる。
【0040】
これらは単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。
【0041】
エポキシ化の場合と異なり、チオエポキシ化の場合は、水は反応速度を遅くさせる傾向にある為、あまり好ましくは用いられない。
【0042】
これらの反応溶媒は、例えば、式(3)、(4)、(5)の化合物、樹脂またはそれらを含む樹脂組成物の合成毎に最適の溶媒を各々使用してもよいが、回収の面からは出来るだけ少ない方が好ましく、同一または単一溶媒であればなお好ましい。
【0043】
チオ尿素を使用して本発明に係わる式(5)で表されるチオエポキシ樹脂またはそれを含む樹脂組成物を合成する場合は、触媒及び重合抑制剤として、反応系内に無機酸類及び有機酸類を加えた場合、好ましい結果を与える事が多い。
【0044】
例えば、硝酸、塩酸、硫酸、発煙硫酸、硼酸、炭酸、リン酸、リン酸二水素ナトリウム、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、酒石酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、乳酸、安息香酸、五酸化燐、無水酢酸、無水クエン酸、無水マレイン酸、無水安息香酸、無水フタル酸、シリカゲル、酸性アルミナ等があげられ、なかでも蟻酸、酢酸、プロピオン酸が好ましく用いられる。これらは単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
【0045】
これらの無機酸類及び有機酸類の使用量は、通常は反応液総重量に対して、0.001〜10wt%程度であるが、例えば、これら重合抑制剤をそのまま反応溶媒として使用できる場合もある。
【0046】
また、これらの無機酸類及び有機酸類は、本発明に係わる式(5)で表されるチオエポキシ樹脂またはそれを含む樹脂組成物を取り出す際の安定性を向上させる目的で、洗浄剤としても用いる事ができ、更には、製品自身の安定性を向上させる目的で、製品の安定剤として用いる事もできる。
【0047】
洗浄剤として用いる場合、pH6以下で洗浄を行えば効果が得られ、更にpH3以下で行えばより効果が得られる場合が多い。
【0048】
安定剤として用いる場合、製品総重量に対して、通常0.001〜10wt%の範囲で加えられ、好ましくは0.01〜1wt%の範囲で加えられる。0.001wt%未満では効果が小さく、10wt%を超えてもよいが効果はそれ以上にあまり大きくならない。
【0049】
本発明に係わる(チオ)エポキシ樹脂とは、式(1)で表されるエポキシ樹脂、チオエポキシ樹脂、チオエポキシ基を有するエポキシ樹脂、エポキシ基を有するチオエポキシ樹脂、またはそれらの混合物である。
【0050】
本発明に係わる組成物とは、式(2)で表されるポリチオールに、塩基の存在下、エピハロヒドリンを反応させて得られる式(4)のエポキシ樹脂を含むエポキシ樹脂組成物、並びに式(4)のエポキシ樹脂またはそれを含む組成物に、さらにチオ尿素またはチオシアン酸塩を反応させて得られる式(5)のチオエポキシ樹脂、チオエポキシ基を有するエポキシ樹脂、エポキシ基を有するチオエポキシ樹脂を含むチオエポキシ樹脂組成物である。
【0051】
即ち、これらの(チオ)エポキシ樹脂組成物とは、原料である式(2)のポリチオールから合成される式(1)で表されるエポキシ樹脂、チオエポキシ樹脂、チオエポキシ基を有するエポキシ樹脂、またはエポキシ基を有するチオエポキシ樹脂の何れか1種または2種以上を少なくとも含む事を必須とする組成物である。
【0052】
その他にそれら樹脂の2量体、3量体、4量体等のポリエーテルオリゴマー類またはポリスルフィドオリゴマー類、エピハロヒドリンが不足した場合に生成するメルカプト基を有する(チオ)エポキシ樹脂類、エピハロヒドリンの重縮合ポリエーテル体類、重合抑制剤等として使用した無機酸類及び有機酸類、溶媒、未反応原料、及びその他の副生物並びに不純物等の有機化合物、無機化合物等も問題にならない範囲で含まれてもよい。
【0053】
本発明に係わるこれらの(チオ)エポキシ樹脂並びに(チオ)エポキシ樹脂組成物は、主に得られる樹脂の物性を改良する目的で、樹脂改質剤を問題にならない範囲で必要な物性が得られるまで加えられることができる。
【0054】
樹脂改質剤としては、例えば、本発明に係わる(チオ)エポキシ樹脂並びに(チオ)エポキシ樹脂組成物に含まれる以外のチオエポキシ樹脂類またはエポキシ樹脂類、メルカプト化合物、メルカプトカルボン酸類、前記の重合抑制剤としても使用できるカルボン酸及びカルボン酸無水物類、アミノ酸類及びメルカプトアミン類、アミン類、オレフィン類及び(メタ)アクリレート類等が挙げらる。
【0055】
具体的には、例えば、ビス(2,3−エピチオプロピル)スルフィド、1,2−ビス(3,4−エピチオ−1−チアブチル)エタン、1,2−ビス(6,7−エピチオ−1,4−ジチアヘプチル)−3−(3,4−エピチオ−1−チアブチル)プロパン、2,5−ビス(4,5−エピチオ−2−チアペンチル)−1,4−ジチアン等の本発明に係わる樹脂並びに組成物に含まれないチオエポキシ樹脂類、ビニルシクロヘキセンジエポキシド、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、1,2−ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステル等の本発明に係わる樹脂並びに組成物に含まれないエポキシ樹脂類、エタンジチオール、ビス(2−メルカプトエチル)スルフィド、2,3−ジメルカプト−1−プロパノール、1,2,3−トリメルカプトプロパン、1,4−ジチアン−2,5−ジメルカプトメチル、2,3−ビス(3−メルカプトエチルチオ)−1−プロパンチオール、ペンタエリスリトールテトラキス(2−メルカプトチオグリコレート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)、4,8−ビス(メルカプトメチル)−3,6,9−トリチア−1,11−ウンデカンジチオール等のメルカプト化合物、チオグリコール酸、3−メルカプトプロピオン酸、チオ乳酸、チオリンゴ酸、チオサリチル酸等のメルカプトカルボン酸類、チオジグリコール酸、チオジプロピオン酸、ジチオジプロピオン酸、フタル酸、無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、無水マレイン酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸等のカルボン酸及びカルボン酸無水物、アスパラギン酸、アラニン、β−アラニン、グリシン、タウリン、システイン、システアミン、アミノ安息香酸等のアミノ酸類及びメルカプトアミン類、ヘキサメチレンジアミン、イソホロンジアミン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(アミノメチル)ノルボルナン、キシリレンジアミン、メタフェニレンジアミン等のアミン類、メタクリル酸メチル、スチレン、エチレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ビス(メタクリロイルメチル)ノルボルネン、ビス(アクリロイルエトキシエチル)ビスフェノールF、ビス(メタクリロイルエトキシエチル)ビスフェノールF、ビス(アクリロイルエトキシエチル)ビスフェノールA、ビス(メタクリロイルエトキシエチル)ビスフェノールA、グリセリンジメタクリレート、トリメチロールプロパントリス(アクリレート)、トリメチロールプロパントリス(メタクリレート)、ペンタエリスリトールトリス(アクリレート)、ペンタエリスリトールテトラキス(アクリレート)、ジメタクリル酸−1,4−ジチアン−2,5−ビス(メルカプトメチル)等のオレフィン類及び(メタ)アクリレート類等が挙げられるが、これら列記化合物のみに樹脂改質剤が限定されるものではない。
【0056】
尚、これらの樹脂改質剤は、問題が無ければ、あらかじめに反応系内又は取り出し工程内で加えておいてもよい。
【0057】
また、重合作業時の配合等に代表されるように、本発明に係わる(チオ)エポキシ樹脂または(チオ)エポキシ樹脂組成物を製品として取りだした後、あらためて加えてもよい。
【0058】
又、これらの樹脂改質剤は、単独でも、2種以上を用いてもよい。
【0059】
本発明に係わるプラスチックレンズは、通常、本発明に係わる(チオ)エポキシ樹脂または(チオ)エポキシ樹脂組成物を含む重合性組成物を、必要に応じ減圧攪拌等の適当方法で脱泡を行った後、金属又はガラスと樹脂またはテープ等からなる成型モールド内に脱泡液を注入し、次いで加熱重合を行う事によって得られる。
【0060】
一般的なエポキシ樹脂の成型に用いられている反応射出成型法によってもできなくもないが、得られた成型物に光学的な歪みが入りやすい傾向にある為、厳密な光学的均一性が要求されるプラスチックレンズの製造方法としては、あまり用いられない。
【0061】
注型重合を行う際、重合時間の短縮及び重合温度の低下等を目的として、硬化触媒が好ましく用いられる。
【0062】
硬化触媒としては、アミン類、ホスフィン類、ルイス酸類、ラジカル重合触媒類、カチオン重合触媒類等が通常用いられる。
【0063】
例えば、エチルアミン、2−アミノエタノール、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、ジブチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、トリエチレンジアミン、N,N−ジエチルアミノエタノール、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン、N−メチルモルホリン、ピペリジン、ピリジン、β−ピコリン、2−メチルイミダゾール、ジシアンジアミド、コハク酸ヒドラジド、ジアミノマレオニトリル、ジアリルメラニン、アニリン・フェニルホスホン酸塩、エチレンジアミン・フェニルリン酸塩、四フッ化ホウ素・モノエチルアミン塩、三フッ化ホウ素・モノエチルアミン錯体、五フッ化燐・イソプロピルアミン錯体、五フッ化砒素・ラウリルアミン錯体、五フッ化アンチモン・ベンジルアミン錯体等のアミン類、トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリプロピルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、トリベンジルホスフィン、トリフェニルホスフィン、1,2−ビス(ジメチルホスフィノ)エタン、1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン等のホスフィン類、ジメチル錫ジクロライド、ジブチル錫ジクロライド、テトラクロロ錫、ジブチル錫ジラウレート、ステアリン酸錫、ジブチル錫ジオキサイド、塩化亜鉛、アセチルアセトン亜鉛、フッ化アルミ、塩化アルミ、トリフェニルアルミ、テトライソプロポキシチタン、テトラブトキシチタン、テトラクロロチタン、酢酸カルシウム等のルイス酸、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−シクロプロピルプロピオニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、n−ブチル−4,4’−ビス(t−ブチルパーオキシ)バレレート、t−ブチルパーオキシベンゾエート等のラジカル重合触媒、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロ燐酸、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロ砒酸、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモン、トリフェニルスルホニウムテトラフルオロ硼酸、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロ燐酸、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロ砒酸等のカチオン重合触媒等が挙げられるが、これら列記化合物のみに限定されるものではない。
【0064】
これらは、単独でも、2種以上を併用してもよい。
【0065】
硬化触媒を加える場合の添加量は、通常、本発明に係わる(チオ)エポキシ樹脂または(チオ)エポキシ樹脂組成物を含む重合性組成物の総重量に対して0.001〜10wt%の範囲で用いられ、好ましくは0.01〜5wt%の範囲で用いられる。
【0066】
0.001%未満では効果が小さく、10wt%を超えてもできるが、例えば、ポットライフが短くなったり、透明性、光学物性、又は耐候性等が低下してくるといった不都合を生じてくる場合がある。
【0067】
硬化触媒の他に、目的に応じて問題の無い範囲で、内部離型剤、光安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、油溶染料、充填剤等の公知の各種添加剤等を加えてもよい。
【0068】
成型モールドに注入された本発明に係わる(チオ)エポキシ樹脂または(チオ)エポキシ樹脂組成物を含む重合性組成物の加熱重合条件は、樹脂組成物、樹脂改質剤、及び硬化触媒の種類、モールドの形状等によって大きく条件が異なるため限定できないが、凡そ、−50〜200℃の温度で1〜100時間かけて行われる。
【0069】
場合によっては、10℃から150℃の温度範囲で徐々に昇温し、4〜80時間で重合させれば、好ましい結果を与える事がある。
【0070】
得られたプラスチックレンズは、必要に応じアニール処理を行ってもよい。
【0071】
同様に、必要に応じ反射防止、高硬度付与、耐薬品性向上、防曇性付与、或いはファッション性付与を行う為に、表面研磨、帯電防止、ハードコート処理、無反射コート処理、染色処理、調光処理等の物理的あるいは化学的処理を施す事ができる。
【0072】
【実施例】
以下、本発明を実施例及び比較例により具体的に説明する。
レンズ性能試験は以下の方法によって評価した。
屈折率、アッベ数;プルフリッヒ屈折計を用い、20℃で測定した。
比 重;アルキメデス法により測定した。
衝撃性;FDAの鉄球落下試験方法に準拠して実施した。高さ127cmの位置から2g,4g,8g,16g,36g,72gの鉄球を順番に落とし、プラスチックレンズの破壊試験を行った。
記載は、その場合に落とされたプラスチックレンズが、ひびが入らず、また割れなかったり穴が空いたりしなかった鉄球の最大重量を記載した。
光学歪み;高圧水銀灯で投影して、目視にて判定した。
光学歪みが見られなかった物を(○)、見られた物を(×)とした。
【0073】
実施例1
(エポキシ樹脂の合成)
反応フラスコに、8−(メルカプトメチル)−3,6,9,12−テトラチアテトラデカン−1,14−ジチオール190部(0.50モル)、49%苛性ソーダ2部、メタノール150mlを仕込み、滴下ロートからエピクロルヒドリン140部(1.52モル)を内温を5〜10℃に保ち良く攪拌しながら3時間で滴下し、10℃で2時間熟成した。
【0074】
次いで、同様に内温を5〜10℃に保ちながら、49wt%苛性ソーダ
400部(4.90モル)を3時間で滴下し、トルエンを250ml加えて5〜15℃で20時間熟成した。
【0075】
反応終後、さらにトルエンを500ml追加して水洗を行い、次いで1%硫酸で酸洗浄を行った後、水洗を3回繰り返した。
【0076】
得られた有機層を硫酸マグネシウムで脱水し、濾過して得られた濾液を脱溶媒した。
【0077】
残った残渣を濾過して、純度98wt%の8−(4,5−エポキシ−2−チアペンチル)−1,14−ビス(3,4−エポキシ−1−チアブチル)−3,6,9,12−テトラチアテトラデカン(以下EPTDと略す。)を269部(純換収率=96%)得た。
【0078】
このEPTDの同定分析結果は以下の通りである。
【0079】
【表1】
【0080】
(MS) m/z=548(M+)
(IR)エポキシ;835〜845cm-1、920〜925cm-1、1255〜1265cm-1
【0081】
実施例2
(チオエポキシ樹脂の合成)
反応フラスコに、実施例1で得られた純度98wt%のEPTD168部(0.30モル)、チオ尿素80部(1.05モル)、酢酸2部、トルエン350ml、メタノール350mlを仕込んで、20〜25℃で50時間反応させた。
【0082】
反応終了後、トルエン350mlと食塩を加えて水洗し、次に1%硫酸水で洗浄後、更に水洗を繰り返した。得られた有機層を硫酸マグネシウムで乾燥後、濾過して得られた濾液を、シリカゲル70部を充填したシリカゲル充填塔を通過させた後、充填塔をトルエンで洗浄した。
【0083】
最後に、この通過液と洗浄液を合わせて脱溶媒し、残った残渣を濾過して8−(4,5−エピチオ−2−チアペンチル)−1,14−ビス(3,4−エピチオ−1−チアブチル)−3,6,9,12−テトラチアテトラデカン(以下ETTDと略す。)を88wt%含むチオエポキシ樹脂組成物を120部(純換収率=59%)得た。
【0084】
この組成物の元素分析結果は以下の通りである。
【0085】
【表2】
【0086】
得られたチオエポキシ樹脂組成物60部を、中性アルミナカラムクロマトグラフィーにて精製し、純度95wt%のETTDを30部得た。
【0087】
精製したETTDの同定分析結果を以下に示す。
【0088】
【表3】
【0089】
(MS);m/z=596(M+)
(IR)チオエポキシ;610〜620cm-1、660〜665cm-1、1040〜1045cm-1
【0090】
実施例3
上型曲率600mm、下型曲率120mmのガラスモールドとテープを組み合わせて作られた内空間が、中心厚1.1mm、外径75mmになるように成型モールドを組んだ。
【0091】
実施例1で得られた純度98%のEPTD38部に、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸12部、ジブチル錫ジラウレート0.5部(1wt%)、トリエチレンジアミン0.5部(1wt%)、ジオクチル燐酸1部(2wt%)を加えて溶解し、減圧下で0.3時間混合脱泡した。
【0092】
この脱泡液を上記の成型モールドに注入し、室温から120℃まで徐々に昇温し48時間で重合を終了した。
【0093】
冷却後、離型して得られたプラスチックレンズは無色透明であった。
結果を表−1に掲載する。
【0094】
実施例4
実施例2で得られた純度88%のチオエポキシ樹脂組成物50部に、トリエチルアミン0.05部(1000ppm)を加えて、減圧下で0.5時間混合脱泡した。この脱泡液を実施例3と同様の成型モールドに注入し、室温から80℃まで徐々に昇温し72時間で重合を終了した。
【0095】
冷却後、離型して得られたプラスチックレンズは無色透明であった。
結果を表−1に掲載する。
【0096】
実施例5
実施例2で精製した純度95%のETTD25部を実施例4と同様に試験した。結果を表−1に掲載する。
【0097】
比較例1
純度91wt%のビス(2,3−エピチオプロピル)スルフィド(以下、BESと略す。)50部を実施例4と同様に試験した。結果を表−1に示す。
【0098】
【表4】
【0099】
【発明の効果】
本発明によれば、高屈折率、高アッベ数で、実用上ほぼ問題にならない程度の衝撃性を有した光学的に均一なプラスチックレンズが得られる。
Claims (5)
- 請求項1記載の(チオ)エポキシ樹脂を含む(チオ)エポキシ樹脂組成物。
- 請求項1記載の(チオ)エポキシ樹脂または請求項2記載の(チオ)エポキシ樹脂組成物を含有する重合性組成物を、重合して得られるポリエーテルまたはポリスルフィド系透明樹脂。
- 請求項1記載の(チオ)エポキシ樹脂または請求項2記載の(チオ)エポキシ樹脂組成物を含有する重合性組成物を、重合して得られるプラスチックレンズ。
- 請求項1記載の(チオ)エポキシ樹脂または請求項2記載の(チオ)エポキシ樹脂組成物を含有する重合性組成物を、鋳型内に注入し、次いで重合を行うプラスチックレンズの注型重合法。
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