JP3862383B2 - 新規な脂肪族含セレン化合物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、プラスチックレンズに代表される透明光学材料などに好適に用いられる新規な脂肪族含セレン化合物並びに該脂肪族含セレン化合物を含む組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
透明光学材料並びにプラスチックレンズは、その用途から明らかなように高度な透明性と光学的均質性が要求される成形物である。これらの用途に従来より広く用いられている材料としては、ジエチレングリコールビス(アリルカーボネート)(以下DACと略す。)を、ラジカル重合させたプラスチック材料が挙げられる。
【0003】
ところが、このDACプラスチック材料も、屈折率(Nd)が1.50と低くプラスチックレンズにした場合、コバ厚が厚くなりファッション性に欠けるといった問題点を有していた。
【0004】
上記問題点を改良する為に屈折率を向上させる様々な検討が行なわれている。
例えば、テトラブロモビスフェノール−Aとイソシアナート化合物を反応させる方法(特開昭58−164615号公報)、キシリレンジチオールジメタクリレートを重合させる方法(特開昭64−31759号公報)、2,5−ジメルカプトメチル−1,4−ジチアンを用いる方法(特公平6−5323号公報)等が挙げられる。
【0005】
本発明者らも、先に、メルカプト基以外の硫黄原子を分子内に持つポリチオールを用いる方法(特開平2−270859号公報、特開平7−252207号公報)等を提案している。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
これらの方法は、何れも化合物の分子構造内にベンゼン環、臭素等のハロゲン原子、又は硫黄原子を導入する事によってレンズの屈折率を向上する方法であるが、例えば屈折率を更に向上させたい場合などは、これらの方法だけでは不充分な場合が多かった。即ち、本発明の目的は、さらにレンズの屈折率を上げコバ厚を薄くしたいという強い要求に充分応えられる材料及び方法を提供する事である。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上述の強い要求に応えるべく鋭意検討を行なった結果、分子構造内にセレン原子を有する脂肪族含セレン化合物用いれば、更に屈折率が向上できる事を見出し、本発明に到達した。
即ち本発明は、式(1)
【化3】
(Z)−(F)n (1)
(式中、ZはSe原子、またはSe原子を少なくとも1個以上含むアルキレン基を示し、Fは、アクリロイル基、メタクリロイル基、チオエポキシ基から選ばれた官能基、またはそれらの官能基を有するアルキル残基を示す。nは2〜6の整数を示す。)
で表される2官能以上の脂肪族含セレン化合物。
前記式(1)記載の化合物が式(2)
【化4】
を示し、Yは硫黄原子、酸素原子又はSe原子を示し、Rは水素原子又はメチル基を示す。)で表される脂肪族含セレン化合物、並びに該脂肪族含セレン化合物を含む組成物である。
脂肪族鎖状構造内にセレン原子を有する2官能以上の(メタ)アクリロイル化合物またはチオエポキシ化合物は、現在まで全く知られていない。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
上記式(1)で表される本発明に係る脂肪族含セレン化合物は、脂肪族鎖状化合物を形成する炭素原子が、セレン原子で1個以上置換された含セレン鎖状構造体を中心骨格とする。
この含セレン鎖状構造体は、単結合のみからなる脂肪族鎖状構造で、セレン原子のみであっても、セレン原子と炭素原子等からなる直鎖状アルキレンであっても、分岐状アルキレンであっても、鎖状構造であれば何れであっても一向に差し支えない。
また含セレンアルキレン骨格を構成する炭素原子の一部を、セレン原子以外の硫黄原子または酸素原子等の他原子で置換してもよい。
【0009】
これら中心骨格に2個以上任意に結合される官能基は、アクリロイル基、メタクリロイル基、チオエポキシ基から選ばれた1種または2種以上である。
【0010】
結合された官能基は、全てが同一種類であっても、各々別々の種類であっても、一向に差し支えない。
また、結合の形態は、別々の原子に1個ずつでも、同じ原子に2個以上結合した形でもよい。
【0011】
本発明に係る式(1)の脂肪族含セレン化合物は、例えば、The chemistry of selenium and tellurium compounds(Saul Pafi and Zvi Ropport編 1986 John Wiley & Sons出版)、及び、Selenium reagents and intermediates in organicsynthesis(J E Baldwin編、1986 Pergamon Press出版)等の文献に記載されるようにハロゲン化セレン、アルカリ金属セレニド、アルカリ金属セレノール、アルキル(ジ)セレニド、アルキルセレノール、セレン化水素等のセレン化合物を用いて、含セレン鎖状構造を中心骨格に持つ化合物を合成し、次いで文献 Synthetic organic chemistry(Romeo B. Wagner and Harry D. Zook編、1953 John Wiley & Sons出版)等に記載されるような公知の有機反応等によって、アクリロイル基、メタクリロイル基、チオエポキシ基の官能基を導入して得られる。
【0012】
以下に具体的な一例を挙げ、工程毎の製造方法を記述する。
【化5】
【0013】
式(3)のハロヒドリンに、ナトリウムセレニド、カリウムセレニド等のアルカリ金属セレニドを反応させて式(4)のジオール体を合成する。
ここで使用されるアルカリ金属セレニドは、文献Handbook of preparative inorganic chemistry(volume1,second edition,1963年,Georg Brauer編,Academic Press 出版)に記載される方法等によって合成できる。
【0014】
式(5)のジチオール体は、式(4)のジオール体から得られる。まず、式(4)のジオール体に塩酸または臭化水素酸等の鉱酸とチオ尿素、必要に応じ水又はアルコール等の公知の溶媒を加えて40〜150℃、好ましくは60〜120℃の範囲で、凡そ1〜24時間、好ましくは1〜8時間加熱攪拌し、チウロニウム塩を生成させる。使用される鉱酸の量は式(4)のジオール体のヒドロキシ基に対して通常1〜10当量、好ましくは1.1〜3当量である。同様にチオ尿素の量は式(4)のジオール体のヒドロキシ基に対して通常1〜5当量、好ましくは1〜2当量である。次いで、苛性ソーダ、アンモニア水等の塩基を加えて、20〜100℃、好ましくは40〜60℃の範囲で、1〜10時間で加水分解を行い、目的とする式(5)のジチオール体を得る。加水分解で使用する塩基の種類としては、アンモニア水が比較的に好ましく、塩基の量としては、先に使用した鉱酸に対して、通常1〜3当量、好ましくは1.1〜2当量の範囲で使用される。
【0015】
上記以外に含セレンチオール体を得る方法としては、例えば、相当する含セレン電子吸引基体類を用いて、この電子吸引基をメルカプト基に置換することによって得られる。
含セレン電子吸引基体類とは、相当するクロル体、ブロム体、メタンスルホナート体、ベンゼンスルホナート体、トルエンスルホナート体等の電子吸引基を有する化合物である。
【0016】
この含セレン電子吸引基体類を合成する方法としては、例えば、相当するヒドロキシ化合物と塩酸、臭化水素酸、塩化チオニル、三臭化燐、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸等の電子吸引基剤を反応させる方法、エチレン、プロピレン等のオレフィンにジクロロジセレニド、ジブロモジセレニド、テロラクロロセレン、テトラブロモセレン等のハロゲン化セレニドを反応させる方法、ケトン、アルデヒド、アセタール等の求電子官能基を有する化合物類とハロゲン化アルキルセレノール等とを反応させる方法等が挙げられる。
含セレン電子吸引基剤の使用量は、ヒドロキシ基に対して、1〜3当量、好ましくは1〜2当量の範囲で用いる。
反応温度は、含セレン電子吸引基剤及びヒドロキシ体類の構造等によって大きく変化するため特に限定できないが、凡そ0〜200℃、さらに限定するならば10〜120℃である。
【0017】
含セレン電子吸引基体類の電子吸引基をメルカプト基に置換して含セレンチオール体を得る方法として、例えば、チオ尿素を用いる方法、水硫化ソーダを用いる方法、ナトリウムポリスルフィドを用いる方法、キサントゲン酸カリウムを用いる方法、ブンテ塩を用いる方法、ナトリウムトリチオカーボネート、カリウムトリチオカーボネート等のアルカリ金属トリチオカーボネート類を用いる方法等の公知の反応を種々用いることができる。
これらのメルカプト基置換剤の使用量は、電子吸引基に対して通常1〜10当量、好ましくは1〜3当量の範囲である。反応温度はメルカプト基置換剤の種類、電子吸引基の種類、及び含セレン電子吸引基体類の構造によって変化するため、限定できないが、凡そ−10〜200℃、好ましくは0〜120℃の範囲である。
必要に応じて溶媒を用いる場合は、水、アルコール類、アミド類等の極性溶媒を用いた方が好ましい結果を与える場合が多い。
【0018】
ここで、式(6)、(7)、(9)のアルキレン基を変える場合、以下の方法等がある。
炭素原子と水素原子のみによるアルキレン基の延長の場合は例えば、式(3)のハロゲン化エタノールの代わりに、ハロゲン化プロパノール、ハロゲン化ブタノール、ハロゲン化ヘキサノール等の長鎖ハロゲン化アルコールを使用すれば良い。異種原子を含んでのアルキレン基の延長の場合は例えば、式(5)のジチオール体にもう一度上記のハロゲン化アルキルアルコールを反応させる方法、あるいは前記含セレン電子吸引基体類にヒドロキシアルキルセレノール、ハロゲン化アルキルセレノール、ヒドロキシアルキルチオール、ハロゲン化アルキルチオール等を反応させる方法等が挙げられる。アルキレン基の短縮の場合は、例えばアルカリ金属セレノール又はアルカリ金属セレニド等にエピハロヒドリン等の官能基原料を直接反応させるといった方法等が挙げられる。
【0019】
本発明に係る(メタ)アクリロイル化合物に属する式(6)及び(7)のビス〔(メタ)アクリロイルチオエチル〕セレニドは、前記式(5)のジチオール体から得られる。
例えば、式(5)のジチオール体にクロロプロピオン酸クロライド、3−クロロ−2−メチルプロピオン酸クロライド等のハロゲン化酸ハライド類を反応させてハロゲン化エステルを合成し、次いでトリエチルアミン、ピリジン、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムメチラート等の塩基で脱ハロゲン化水素反応を行う2段法、(メタ)アクリル酸クロライド等の酸クロライド類を反応させる方法等が挙げられる。純度、収率の面からは、前者の2段法の方が優れる場合が多い。
2段法において、ハロゲン化エステル類を合成する場合の、ハロゲン化酸ハライド類の使用量は、式(5)のジチオール体のメルカプト基に対して1〜2当量が好ましく、1〜1.2当量であれば更に好ましい。
反応温度は20〜100℃が好ましく、30〜70℃であれば更に好ましい。
反応溶媒は使用してもしなくてもよいが、使用しない方が反応速度が早い。
ハロゲン化水素キャッチ剤として、トリエチルアミン、ピリジン、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムメチラート等の塩基を用いてもよいし、用いなくてもよい。
ハロゲン化水素の除去を目的として、反応系内を窒素等の不活性ガスでバブリングすると、好ましい結果を与える事が多い。
次に、上記と同様の塩基で脱ハロゲン化水素反応を行い、式(6)及び(7)の(メタ)アクリロイル化合物を得る場合の塩基の使用量は、上記で合成したハロゲン化エステルのハロゲン原子に対して1〜10当量が好ましく、1〜3当量であればさらに好ましい。
反応温度は−10〜100℃が好ましく、0〜50℃であれば更に好ましい。
反応溶媒は使用してもしなくてもよいが、使用する場合は、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、ヘキサン、シクロヘキサン等の水と分離する溶媒を用いた方が、抽出による生成物の取り出しを行う場合は効率的である。
ポリメタクリル化合物を合成する場合は、3−ハロゲノ−2−メチルプロピオン酸ハライド、またはメタクリル酸ハライドを用いればよい。
【0020】
その他の本発明に係る(メタ)アクリロイル化合物として、例えば、式(4)のジオール体に、上記のハロゲン化酸ハライド類または(メタ)アクリル酸ハライド類を反応させた(メタ)アクリロイルオキシ化合物類、さらに前記の含セレンハロゲン体類とナトリウムセレノール、ナトリウムセレニド等のアルカリ金属セレノール及びアルカリ金属セレニドを反応させて、一旦セレノール化合物類を合成し、次いで、同様に、ハロゲン化酸ハライド類または(メタ)アクリル酸ハライド類を反応させた(メタ)アクリロイルセレノ化合物類も合成できる。
【0021】
本発明に係る(メタ)アクリロイル化合物は、分子内にセレン原子を1個以上有して、なおかつアクリロイル基とメタアクリロイル基の何れか一方または両方を2個以上有することを必須とする。従って、(メタ)アクリロイル基の結合形態及び結合原子に一切左右されるものではない。
【0022】
本発明に係るチオエポキシ化合物に属する式(9)のビス(5,6−エピチオ−3−チアヘキシル)セレニドは、式(8)のエポキシ化合物類または相当するアリル化合物類等から合成できる。
【0023】
式(8)のエポキシ化合物類を用いる方法とは、該エポキシ化合物に、チオ尿素、またはチオシアン酸ソーダ、チオシアン酸カリウム等のチオシアン酸金属塩等に代表されるチア化剤を反応させる方法である。
これらチア化剤の使用量は式(8)のエポキシ基に対して、1〜10当量が好ましく、1〜4当量であれば更に好ましい。
反応温度は、0〜120℃が好ましく、10〜70℃であれば更に好ましい。
チア化剤として、チオ尿素を用いる場合は、無水酢酸等の酸の添加が安定剤として有効で、好ましい結果を与える場合が多い。
反応溶媒は、使用してもしなくてもよいが、使用する場合は、メタノール、エタノール、イソプロパノール、グリセリン等のアルコール類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、クロロホルム、ジクロロレタン、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類、水等が好ましく用いられる。それらの溶媒は単一でも、2種以上を併用した混合溶媒でも差し支えない。
混合溶媒の場合、相関移動触媒として、アルコール類、4級アルキルアンモニウム塩、アルキルまたはアリールカルボン酸金属塩、アルキルまたはアリールスルホン酸金属塩、酸性アルキルまたはアリール燐酸エステルとその金属塩等の界面活性剤類を加えると反応成績も良好で取り出しも効率的になる場合が多い。
これら界面活性剤類の添加量は、反応マス総重量に対して0.001〜20wt%が好ましく、0.01〜10wt%であればさらに好ましい。
【0024】
エポキシ化合物類である式(8)のビス(グリシジルチオエチル)セレニドは、式(5)のジチオール体または相当するアリル化合物類等から合成できる。
チオール類を用いる方法としては、例えば、式(5)のジチオール体にエピクロロヒドリン、エピブロモヒドリン等のハロヒドリン類を反応させてハロゲン化アルコールを合成し、次いでトリエチルアミン、ピリジン、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムメチラート等の塩基で脱ハロゲン化水素反応を行う2段法、上記ハロヒドリン類を上記塩基を用いて1段で反応させる方法等が挙げられる。純度、収率の面からは、前者の2段法の方が優れる場合が多い。
【0025】
式(8)及び式(9)化合物の合成に使用されるアリル化合物類とは、ビス(アリルチオエチル)セレニドで、通常、式(5)のジチオール体に、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムメチラート、トリエチルアミン等の塩基存在下で、アリルクロライド、アリルブロマイド等のアリルハライド類を反応させる事によって得られる。
【0026】
アリル化合物類からエポキシ化合物類を合成する方法としては、例えば、プロピレンオキサイドの合成に用いられている方法と同じように、水と塩素または臭素等のハロゲンをアリル基と反応させてハロゲン化アルコールを合成し、次いで脱ハロゲン化水素反応を行う方法、パーオキシベンゾイックアシッド等の過酸化物をアリル基と反応させて直接酸化合成する方法等が挙げられる。
過酸化物による直接酸化法は、爆発等の危険性を伴う為、あまり好ましい方法ではない。
【0027】
アリル化合物からチオエポキシ化合物類を合成する方法としては、例えば、アリル基に、塩化硫黄、臭化硫黄等のハロゲン化硫黄を反応させた後、硫化ナトリウム等を用いて還元脱ハロゲン化水素反応を行う方法等である。
硫化ナトリウム等の還元脱ハロゲン化水素剤を用いなくても、ハロゲン化硫黄を反応させるだけで、目的とするチオエポキシ化合物が得られる場合もある。
【0028】
その他の本発明のチオエポキシ化合物として、例えば、式(5)のジチオール体類の代わりに式(4)のジオール体を用いたビス(5,6−エピチオ−3−オキサヘキシル)セレニド、さらに式(5)のジチオール体類の代わりに前記の含セレンハロゲン体類とナトリウムセレノール、ナトリウムセレニド等のアルカリ金属セレノール及びアルカリ金属セレニドを反応させて得られる3−セレナヘプタン−1,5−ジセレノールを用いたビス(5,6−エピチオ−3−セレナヘキシル)セレニド等も合成できる。
【0029】
本発明に係るチオエポキシ化合物は、分子内にセレン原子を1個以上有して、なおかつエピチオ基を2個以上有することを必須とする。
従って、エピチオ基の結合形態及び結合原子に一切左右されるものではない。
【0030】
こうして得られる式(9)を含む本発明に係るチオエポキシ化合物の合成時並びに保存時の安定性を向上させる目的で、硫酸、燐酸、塩酸、無水酢酸、無水フタル酸等の酸類を加えた場合、好ましい結果を与える事が多い。
【0031】
式(6)、(7)、(9)の化合物等が含まれる本発明に係る式(1)の化合物を合成する場合の反応溶媒は、使用してもしなくてもよい。
溶媒を使用する場合は、例えば、溶剤ハンドブック(浅原昭三ほか編、講談社出版)に記載される一般的な溶媒のなかから、反応、取り出し、及び製品等に影響を与えない溶媒であれば、何れも使用できる。
各々反応及び条件が大きく異なるため、好ましい溶媒は特に限定できないが、敢えて限定するならば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、エチレングリコール、エチルセルソルブ等のアルコール類、ベンゼン、トルエン、キシレン、ヘキサン、シクロンヘキサン等の炭化水素類、ジクロロメタン、クロロホルム、ジクロロエタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類、アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルイミダゾリジノン、アセトン、メチルイソブチルケトン等の極性溶媒類、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミル等のエステル類、水等が挙げられる。
【0032】
以上に合成方法を例示した式(6)、(7)、(9)以外の本発明の化合物としては、例えば、ビス(1,2−エピチオエチル)セレニド、ビス(2,3−エピチオプロピル)セレニド、ビス(2,3−エピチオプロピル)ジセレニド、ビス(3,4−エピチオ−1−セレナブチル)メタン、ビス〔(メタ)アクリロイルセレノ〕エタン、1,2−ビス(3,4−エピチオ−1−セレナブチル)エタン、ビス〔(メタ)アクリロイルオキシエチル〕セレニド、ビス(5,6−エピチオ−3−オキサヘキシル)セレニド、2,3−ビス〔(メタ)アクリロイルチオエチルセレノ)−1−〔(メタ)アクリロイルチオ)プロパン、2,3−ビス(6,7−チオエポキシ−1−セレナ−4−チアヘプチル)−1−(3,4−チオエポキシ−1−チアブチル)プロパン、1,1,3,3−テトラキス〔(メタ)アクリロイルチオメチル〕−2−セレナプロパン、1,1,3,3−テトラキス(4,5−チオエポキシ−2−チアペンチル)−2−セレナプロパン、ビス(4,5−チオエポキシ−2−チアペンチル)−3,6,9−トリセレナウンデカン−1,11−ビス(3,4−チオエポキシ−1−チアブチル)、1,4−ビス(3,4−チオエポキシ−1−チアブチル)−2,3−ビス(6,7−チオエポキシ−1−セレナ−4−チアヘプチル)ブタン、トリス(4,5−チオエポキシ−2−チアペンチル)−3−セレナ−6−チアオクタン−1,8−ビス(3,4−チオエポキシ−1−チアブチル)等が挙げられる。本発明がこれら例示化合物のみに限定されるものではない。
【0033】
本発明に係る組成物は、少なくとも式(1)で表される2官能以上の化合物を含むことを必須とする。
本発明に係る式(1)で表される2官能以上の化合物の他には、それらの2量体、3量体、4量体等のオリゴマー及びプレポリマー、重合抑制剤、樹脂改質剤、添加剤、合成等に使用した溶媒、原料、及び副生物不純物等のその他の有機化合物、無機化合物も問題にならない程度に含んでいてもよい。
【0034】
上記の樹脂改質剤は、重合して得られる樹脂の物性改良を目的とし、例えば、式(1)以外の(メタ)アクリレート化合物類、式(1)以外のチオエポキシ化合物類、メルカプト化合物類、イソ(チオ)シアナート化合物類、アリル(ビニル、イソプロペニル)化合物類、エポキシ化合物類、カルボン酸及びカルボン酸無水物類、メルカプトカルボン酸類、ヒドロキシ類、アミノ酸及びメルカプトアミン類、アミン類等が挙げられ、問題の無い範囲で必要な物性が得られるまで加えることができる。
【0035】
具体的には、例えば、エタンジチオール、ビス(2−メルカプトエチル)スルフィド、2,3−ジメルカプト−1−プロパノール、1,2,3−トリメルカプトプロパン、ペンタエリスリトールテトラキス(2−メルカプトチオグリコレート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパントリス(2−メルカプトチオグリコレート)、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート)、2,5−ビス(メルカプトメチル)チオフェン、2,5−ジメルカプトメチル−1,4−ジチアン、2,3−ビス(2−メルカプトエチルチオ)−1−プロパンチオール、ビス(メルカプトメチル)−3,6,9−トリチア−1,11−ウンデカンジチオール等のメルカプト化合物類、シクロヘキシルイソシアナート、シクロヘキシルイソチオシアナート、キシリレンジイソシアナート、α,α’,α’’,α’’’−テトラメチルキシリレンジイソシアナート、3−イソプロペニル−α,α’−ジメチルベンジルイソシアナート、ヘキサメチレンジイソシアナート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアナート、イソホロンジイソシアナート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアナート、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、ビス(イソシアナトメチル)ノルボルナン等のイソ(チオ)シアナート類、メタクリル酸メチル、エチレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ビス(メタクリロイルメチル)ノルボルネン、ビス(アクリロイルエトキシエチル)ビスフェノールF、ビス(メタクリロイルエトキシエチル)ビスフェノールF、ビス(アクリロイルエトキシエチル)ビスフェノールA、ビス(メタクリロイルエトキシエチル)ビスフェノールA、グリセリンジメタクリレート、トリメチロールプロパントリス(アクリレート)、トリメチロールプロパントリス(メタクリレート)、ペンタエリスリトールトリス(アクリレート)、ペンタエリスリトールテトラキス(アクリレート)、2,5−ビス(メタクリロイルチオメチル)−1,4−ジチアン等の(メタ)アクリレート類、アクリロニトリル、ブタジエン、スチレン、ジビニルベンゼン、ジイソプロペニルベンゼン、ジエチレングリコールビス(アリルカーボネート)等のアリル(ビニル、イソプロペニル)化合物類、ビス(3−エピチオプロピル)スルフィド、1,2−ビス(3−エピチオプロピルチオ)エタン、1,2−ビス(3−エピチオプロピルチオエチルチオ)−3−(3−エピチオプロピルチオ)プロパン、ビニルシクロヘキサンジエポキシド、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、1,2−ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステル等の(チオ)エポキシ化合物類、フタル酸、無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、無水マレイン酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸等のカルボン酸及びカルボン酸無水物、チオグリコール酸、3−メルカプトプロピオン酸、チオ乳酸、チオリンゴ酸、チオサリチル酸等のメルカプトカルボン酸類、チオジグリコール酸、チオジプロピオン酸、ジチオジプロピオン酸等のカルボン酸類、グリセリン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブタンジオール、乳酸、ポリ乳酸等のヒドロキシ化合物、アスパラギン酸、アラニン、β−アラニン、グリシン、タウリン、システイン、システアミン、アミノ安息香酸等のアミノ酸類及びメルカプトアミン類、ヘキサメチレンジアミン、イソホロンジアミン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、ビス(アミノメチル)ノルボルナン、m−キシリレンジアミン、メタフェニレンジアミン等のアミン類等が挙げられるが、これら例示化合物のみに樹脂改質剤が限定されるものではない。
【0036】
尚、これらの樹脂改質剤は、問題が無ければ、あらかじめに反応系内又は取り出し工程内で加えておいてもよい。
また、重合作業時の配合等に代表されるように、本発明に係る2官能以上の脂肪族含セレン化合物並びに該化合物を含む組成物を、製品として取りだした後、あらためて加えてもよい。又、これらの樹脂改質剤は、単独でも、2種以上を用いてもよい。
【0037】
本発明に係る2官能以上の脂肪族含セレン化合物及びまたは該化合物からなる組成物を重合して得られる樹脂及びプラスチックレンズは、通常、式(1)で表される2官能以上の脂肪族含セレン化合物並びにその組成物を、必要に応じ減圧攪拌等の適当方法で脱泡を行った後、金属又はガラスと樹脂等からなる成型モールド内に脱泡液を注入し、次いで熱及び/又は光等の放射線で重合を行う注型重合法によって得られる。
一般的なエポキシ樹脂並びに大型のウレタン樹脂の成型等に用いられている反応射出成型法による成型も可能であるが、得られた成型物に光学的な歪みが入りやすい傾向にある為、厳密な光学的均一性が要求されるプラスチックレンズの製造方法としては、あまり用いられない。
【0038】
注型重合を行う際、重合時間の短縮等を目的として、硬化触媒が好ましく用いられる。
硬化触媒の種類としては、重合させる反応基の種類によって大きく異なるため限定できないが、例えば、アミン類、ホスフィン類、ルイス酸類、ラジカル重合触媒類、カチオン重合触媒類等が挙げられる。
【0039】
以下に具体的な触媒を例示する。エチルアミン、2−アミノエタノール、4,4´−ジアミノジフェニルメタン、ジブチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、トリエチレンジアミン、N,N−ジエチルアミノエタノール、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン、N−メチルモルホリン、ピペリジン、ピリジン、β−ピコリン、2−メチルイミダゾール、ジシアンジアミド、コハク酸ヒドラジド、ジアミノマレオニトリル、ジアリルメラニン、アニリン・フェニルホスホン酸塩、エチレンジアミン・フェニルリン酸塩、四フッ化ホウ素・モノエチルアミン塩、三フッ化ホウ素・モノエチルアミン錯体、五フッ化燐・イソプロピルアミン錯体、五フッ化砒素・ラウリルアミン錯体、五フッ化アンチモン・ベンジルアミン錯体等のアミン類、トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリプロピルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、トリベンジルホスフィン、トリフェニルホスフィン、1,2−ビス(ジメチルホスフィノ)エタン、1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン等のホスフィン類、ジメチル錫ジクロライド、ジメチル錫オキサイド、テトラクロロ錫、モノブチル錫トリクロライド、ジブチル錫ジクロライド、トリブチル錫モノクロライド、テトラブチル錫、ジブチル錫オキサイド、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫オクタノエート、ステアリン酸錫、塩化亜鉛、アセチルアセトン亜鉛、フッ化アルミニウム、塩化アルミニウム、トリフェニルアルミニウム、テトライソプロポキシチタン、テトラブトキシチタン、テトラクロロチタン、酢酸カルシウム等のルイス酸、ベンジルメチルケタール、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−sec−ブチルパーオキシジカーボネート、アセチルアセトンパーオキサイド、キュメンハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、イソブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、1,1−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキサン、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、2,2´−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2´−アゾビス(2−シクロプロピルプロピオニトリル)、2,2´−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、n−ブチル−4,4´−ビス(t−ブチルパーオキシ)バレレート、t−ブチルパーオキシベンゾエート等のラジカル重合触媒、ジフェニルヨードニウムヘキサフロロ燐酸、ジフェニルヨードニウムヘキサフロロ砒酸、ジフェニルヨードニウムヘキサフロロアンチモン、トリフェニルスルホニウムテトラフロロ硼酸、トリフェニルスルホニウムヘキサフロロ燐酸、トリフェニルスルホニウムヘキサフロロ砒酸等のカチオン重合触媒等が挙げられるが、これら例示化合物のみに限定されるものではない。これらは、単独でも、2種以上を併用してもよい。
【0040】
硬化触媒を加える場合の添加量は、通常、本発明の2官能以上の脂肪族含セレン化合物またはそれを含む組成物の総重量に対して0.001〜10wt%の範囲で用いられ、好ましくは0.01〜5wt%の範囲で用いられる。0.01%未満では効果が小さく、10wt%を超えても可能であるが、例えば、ポットライフが短くなったり、透明性、光学物性、又は耐候性等が低下してくるといった不都合を生じてくる場合がある。
【0041】
硬化触媒の他に、目的に応じて問題の無い範囲で、内部離型剤、光安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、油溶染料、充填剤等の公知の各種添加剤等を加えてもよい。
【0042】
熱重合の場合の重合条件としては、本発明の2官能以上の脂肪族含セレン化合物及びその組成物、樹脂改質剤、硬化触媒の種類、モールドの形状等によって大きく条件が異なるため限定できないが、凡そ、−50〜200℃の温度で1〜100時間かけて行われる。
場合によっては、10℃から150℃の温度範囲で徐々に昇温し、4〜70時間で重合させれば、好ましい結果を与える事がある。
【0043】
放射線重合の場合の重合条件としては、次の通りである。
放射線の種類は、紫外線または可視光が好ましく用いられ、中でも、カンファーキノン等に代表される着色性の高い増感剤を使用しなくても済む場合が多い400nm以下の紫外線が好ましく用いられる。
紫外線の量は、熱重合の場合と同様に、本発明の2官能以上の脂肪族含セレン化合物及びその組成物、樹脂改質剤、硬化触媒の種類、モールドの形状等によって大きく条件が異なるため限定できないが、凡そ1〜1000mJ/secの強度で1〜7200sec照射される場合が多く、時には除熱を目的として数回に分けて照射されたり、冷却して照射されたりする。
【0044】
これらの重合は、熱重合と放射線重合を組み合わせても一向に差し支えない。尚、本発明がこれらの重合形態及び重合条件に限定されるものではない。
また、重合した成型物及びプラスチックレンズは必要に応じてアニール処理を行ってもよい。
【0045】
得られた成型物及びプラスチックレンズは、必要に応じ反射防止、高硬度付与、耐薬品性向上、防曇性付与、或いはファッション性付与を行う為に、表面研磨、帯電防止、ハードコート処理、無反射コート処理、染色処理、調光処理等の物理的あるいは化学的処理を施す事ができる。
【0046】
【実施例】
以下、本発明を実施例及び比較例により具体的に説明する。なお、化合物の合成は特にことわりがない限り窒素下で行い、得られたレンズの性能試験は以下の方法によって評価した。
屈折率、アッベ数;プルリッヒ屈折計を用い、20℃で測定した。
【0047】
実施例1
(ポリチオールの合成)
金属セレン24.7部(0.313モル)、ロンガリット(HOCH2SO2 Na・2H2O)90部(0.584モル)水酸化ナトリウム70部(1.75モル)を水400mlの溶解し、これにブロモエタノール77部(0.616モル)を室温でゆっくり滴下し、50℃で6時間熟成した。
反応終了後、減圧下で水を留去した後、イソプロパノール500mlを加えて混合し、不溶物を濾別した。得られた濾液を脱溶媒してビス(2−ヒドロキシエチル)セレニドを含む残渣を得た。
この残渣にチオ尿素60部(0.788モル)、36%塩酸100部(0.988モル)を加えて、加熱還流下(108〜110℃)で1時間反応させた。
冷却後、トルエン300mlを加えた混合液に、25%アンモニア水90部(1.32モル)を徐々に加えた後、50〜60℃で3時間加水分解を行い、静置後、下層の水層を廃棄した。
得られた有機層を室温まで冷却後、36%塩酸洗浄、水洗浄を数回行った後、溶媒を留去した。最後に得られた残渣を減圧蒸留して、純度98%(GC測定の結果)のビス(2−メルカプトエチル)セレニド47部(純換収率73%)を得た。
【0048】
(アクリレートの合成)
50℃に加熱攪拌された純度98%のビス(2−メルカプトエチル)セレニド40部(0.20モル)に、窒素バブリングしながら3−クロロプロピオン酸クロライド70部(0.55モル)を滴下し、同温度で5時間熟成した。
次に、減圧下で過剰の3−クロロプロピオン酸クロライドをできるだけ留去し、トルエン400mlを加えて水洗を繰り返した。
得られた有機層に2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール0.1部を加えて、内温を10〜15℃に保ちながらトリエチルアミン42部(0.42モル)を滴下し、同温度で2時間熟成した。
熟成後、3%塩酸200mlで2回洗浄し、水洗を数回繰り返した後、40℃以下で脱溶媒、濾過してビス(アクリロイルチオエチル)セレニドを含む残渣を得た。この残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製を行い、純度98%(HPLC測定の結果)の下記式(10)のビス(アクリロイルチオエチル)セレニド50部(純換収率79%)を得た。同定分析結果は以下に示す。
【0049】
【化6】
【0050】
実施例2
(エポキシ化合物の合成)
金属度セレン19.7部(0.25モル)を無水メタノール350mlに懸濁させ、これに水素化ホウ素ナトリウム11.5部(0.30モル)と無水メタノール150mlからなる溶液を水浴下で滴下し、1時間熟成した。
内温10〜15℃に保ちながら、エピクロルヒドリン200部(1.16モル)にこの反応液を滴下し、1時間熟成した。
次に28%NaOH水143部(1.0モル)を、内温10〜15℃に保ちながら滴下し1時間熟成した。
得られた反応液にジクロロエタン加えて抽出し、数回水洗を行った後、溶媒と過剰のエピクロルヒドリンを留去した。最後に、残った残渣を減圧蒸留して、純度97%(GC測定の結果)のジグリシジルセレニド21部(純換収率42%)を得た。
【0051】
(チオエポキシ化合物の合成)
純度97%(by GC)のジグリシジルセレニド20部(0.10モル)に、チオ尿素39部(0.51モル)、無水酢酸1部、トルエン100ml、メタノール100mlを加えて、30℃で3時間反応させた。
反応終了後、トルエン200mlと水200mlを加えて、不溶物を濾別し、得られた濾液の下層(水層)を廃棄した。
上層の有機層を、1%硫酸で洗浄し、さらに水洗を数回繰り返した後、溶媒を留去し、残渣15部(粗収率67%)を得た。
この残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製を行い、純度93%(HPLC測定の結果)の下記式(10)のビス(2,3−エピチオ−1−プロピル)セレニドを11部得た(純換収率45%)。同定分析結果は以下に示す。
【0052】
【化7】
【0053】
実施例3
(プラスチックレンズの製造)
ビス(アクリロイルチオエチル)セレニド40部とベンジルメチルケタール0.012部(300ppm)を混合して均一溶液とした後、遮光下で減圧脱泡を行った。
0.5時間後、ガラスモールとガスケットからなって中心厚1.5mmとなるレンズモールドに注入し、このモールドに紫外線を照射した。冷却後、モールドからレンズを取り出した。更に120℃で再加熱を行い無色透明のプラスチックレンズを得た。結果を表1に示す。
【0054】
実施例4
ビス(2,3−エピチオ−1−プロピル)セレニドを10部とトリエチルアミン0.02部(2000ppm)を混合して均一溶液とした後、減圧下で脱泡を行った。
0.5時間後、ガラスモールとガスケットからなって中心厚1.5mmとなるレンズモールドに注入し、このモールドを室温から80℃まで徐々に昇温し20時間で硬化させた。
冷却後、モールドから無色透明のプラスチックレンズを取り出した。結果を表1に示す。
【0055】
比較例1
ビス(2,3−エピチオ−1−プロピル)セレニドの代わりにビス(2,3−エピチオ−1−プロピル)スルフィドを用いて、実施例4と同様の方法でプラスチックレンズを得た。結果を表1に示す。
【0056】
【表1】
【0057】
【発明の効果】
透明光学材料及びプラスチックレンズの屈折率をさらに向上できる。
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