JP3953134B2 - 含セレン新規プラスチックレンズ及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、眼鏡用レンズ等に用いられる新規な透明光学材料及びその材料を用いたプラスチックレンズ、及びそれらの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
透明光学材料並びにプラスチックレンズは、その用途から明らかなように高度な透明性と光学的均質性が要求される成形物である。これら用途に従来より広く用いられている材料としては、ジエチレングリコールビス(アリルカーボネート)(以下DACと略す。)をラジカル重合させたプラスチック材料が挙げられる。
【0003】
ところが、このDACプラスチック材料も、屈折率(Nd)が1.50と低くプラスチックレンズにした場合、コバ厚が厚くなりファッション性欠けるといった問題点を有していた。
【0004】
この問題点を改良する為に屈折率を向上させる様々な検討が行なわれている。例えば、テトラブロモビスフェノール−Aとイソシアナート化合物を反応させる方法(特開昭58−164615号公報)、キシリレンジチオールジメタクリレートを重合させる方法(特開昭64−31759号公報)、1.4−ジチアン−2,5−ジメルカプトメチルを用いる方法(特公平6−5323号公報)等が挙げられる。
【0005】
本発明者らも、先に、メルカプト基以外の分子内に硫黄原子を持つポリチオールを用いる方法(特開平2−270859号公報、特開平7−252207号公報)等を提案している。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
これらの方法は、何れもベンゼン環、臭素等のハロゲン原子、又は硫黄原子によって屈折率を向上する方法であるが、例えば屈折率を更に向上させてNdを
1.70程度に高くしたい場合などは、これらの方法だけでは不充分な場合が多かった。即ち、さらにレンズのコバ厚を薄くしたいという強い要求に充分応えられる方法であるとは言えなかった。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上述の強い要求に応えるべく鋭意検討を行なった結果、セレン原子を光学材料分子内に導入すれば、更に屈折率が向上できる事を見出し、本発明に到達した。
即ち本発明は、分子内に少なくとも1個以上のセレン原子を含む透明光学材料及びプラスチックレンズ並びに、分子内に少なくとも1個以上のセレン原子を有する反応性モノマーまたはオリゴマーを少なくとも1種以上含む組成物を注型重合する透明光学材料及びプラスチックレンズの製造方法である。
この光学材料分子内にセレン原子を導入する技術は、現在まで全く知られていない。また、セレン原子の原子屈折率も知られていなかった。
【0008】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の透明光学材料及びプラスチックレンズは、分子内に少なくとも1個以上のセレン原子を有する反応性モノマーまたはオリゴマーを少なくとも1種以上含む組成物を注型重合して得られる。
【0009】
分子内に少なくとも1個以上のセレン原子を有する反応性モノマー又はオリゴマーとは、1種または2種以上を混合して反応を起こさせた場合、重合反応の形態をとる分子内に少なくとも1個以上のセレン原子を有するモノマー又はオリゴマーである。
例えば、分子内にヒドロキシ基、メルカプト基、セレノ基又はアミノ基の何れかの官能基を少なくとも1個以上もつセレン原子含有活性水素化合物類、分子内に(メタ)アクリル基、アリルカーボネート基、アリルチオカーボネート基、アリルセレノカーボネート基、アリル基、ビニル基、イソプロペニル基、エポキシ基、チオエポキシ基、セレノエポキシ基の何れかの官能基を少なくとも1個以上もつセレン原子含有自己重合性化合物類、又はイソシアナート基、イソチオシアナート基、イソセレノシアナート基の何れかの官能基を少なくとも1個以上もつセレン原子含有イソシアナート類などが挙げられ、更にそれらのオリゴマーなども挙げられる。
【0010】
ここでセレン原子含有活性水素化合物類とは、ヒドロキシ基、メルカプト基、セレノ基、テレノ基、又はアミノ基の何れかの官能基を少なくとも1個以上持つセレン原子を含む化合物である。
例えば、2−セレノエタノール、ビス(2−メルカプトエチル)セレニド、2,3−ビス(2−メルカプトエチルセレノ)−1−プロパンチオール、ビス(メルカプトメチル)−3,9−ジチア−6−セレナ−1,11−ウンデカンジチオール、キシリレンジセレノール、ビス(4−ヒドロキシ−2−セレナブチル)ベンゼン、1,4−ジチアン−2,5−ジセレノール、1,4−ジチアン−2,5−ビス(セレノメチル)、ビス(4−メルカプト−2−セレナブチル)−1,4−ジチアン、ビス(4−メルカプト−2−セレナブチル)ベンゼン、4−チア−1−セレナン−2,6−ジチオール、4−チア−1−セレナン−3,5−ジチオール、4−チア−1−セレナン−2,6−ジメルカプトメチル、4−チア−1−セレナン−3,5−ジメルカプトメチル、1,4−ジセレナン−2,6−ジチオール、1,4−ジセレナン−2,6−ジメルカプトメチル、3,4−ジアミノセレノファン、3,4−ジヒドロキシセレノファン、3,4−ジメルカプトセレノファン、2,5−ジメルカプトメチルセレノファン、2,5−ジセレノメチルセレノファン、1,3−ジセレノシクロペンタン−4,5−ジチオール、1,3−ジセレノシクロペンタン−4,5−ジメルカプトメチル、トリシクロセレナオクタン−3,6−ジチオール、トリシクロセレナオクタン−3,6−ジメルカプトメチル、トリシクロセレナオクタン−3,6−ジセレノール等が挙げられる。
さらに、これら化合物の塩素置換体、臭素置換体等のハロゲン置換体、アルキル置換体、アルコキシ置換体、ニトロ置換体等もまた使用できる。これらは、それぞれ単独で用いることも、また2種類以上を混合して用いてもよい。
【0011】
ここでセレン原子含有自己重合性化合物類とは、分子内に(メタ)アクリル基、アリルカーボネート基、アリルチオカーボネート基、アリルセレノカーボネート基、アリル基、ビニル基、イソプロペニル基、エポキシ基、チオエポキシ基、セレノエポキシ基等の自己重合基の何れか少なくとも1個以上を持つセレン原子を含む化合物である。 例えば、エチレングリコールジセレノグリシジルエーテル、キシリレンジチオールジセレノグリシジルエーテル、1,4−ジチアン−2,5−ジメルカプトメチルジセレノグリシジルチオエーテルなどの他に、上記活性水素化合物を原料にして合成された自己重合性化合物類なども挙げられる。
さらに、これら化合物の塩素置換体、臭素置換体等のハロゲン置換体、アルキル置換体、アルコキシ置換体、ニトロ置換体等もまた使用できる。これらは、それぞれ単独で用いることも、また2種類以上を混合して用いてもよい。
【0012】
ここでセレン原子含有イソシアナート類とは、分子内にイソシアナート基、イソチオシアナート基、イソセレノシアナート基の何れかを少なくとも1個以上持つセレン原子を含む化合物である。
例えば、2,4−ジセレナペンタン−1,5−ジイソ(チオ,セレノ)シアナート、セレノファン−2,5−ジイソ(チオ,セレノ)シアナート、セレノファン−2,5−ジイソ(チオ,セレノ)シアナートメチル、1−チア−4−セレナン−2,6−ジイソ(チオ,セレノ)シアナート、1−チア−4−セレナン−2,6−ジイソ(チオ,セレノ)シアナートメチル、1,4−ジセレナン−2,6−ジイソ(チオ,セレノ)シアナート、1,4−ジセレナン−2,6−ジイソ(チオ,セレノ)シアナートメチル、1,3−ジセレノシクロペンタン−4,5−ジイソ(チオ,セレノ)シアナート、1,3−ジセレノシクロペンタン−4,5−ジイソ(チオ,セレノ)シアナートメチル、トリシクロセレナオクタン−3,6−ジイソ(チオ,セレノ)シアナート、トリシクロセレナオクタン−3,6−ジイソ(チオ,セレノ)シアナートメチル等が挙げられる。
さらに、これら化合物の塩素置換体、臭素置換体等のハロゲン置換体、アルキル置換体、アルコキシ置換体、ニトロ置換体、活性水素化合物とのプレポリマー型変性体、カルボジイミド変性体、ウレア変性体、ビュレット変性体、ダイマー化あるいはトリマー化反応生成物等もまた使用できる。これらは、それぞれ単独で用いることも、また2種類以上を混合して用いてもよい。
【0013】
本発明の透明光学材料及びプラスチックレンズは、通常、注型重合により得られる。
具体的には、上述した少なくとも1個以上のセレン原子を有する反応性モノマーまたはオリゴマーを少なくとも1種以上含む組成物を、必要に応じ減圧等の適当な方法で脱泡を行なう。
セレン原子を有する反応性モノマーまたはオリゴマー以外の成分は、主に組成物を重合する際の操作性の向上、重合性の改良、又は得られる透明光学材料及びプラスチックレンズの改質等を目的にして同様の反応性モノマー等が好ましく用いられるが、その他の有機化合物、無機化合物も種類を問わず問題の無い範囲で自由に加えることができる。例えば、目的に応じて公知の成形法におけると同様に、内部離型剤、触媒、鎖延長剤、架橋剤、光安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、油溶染料、充填剤などの種々の物質等もその他の化合物に含まれる。
【0014】
次に、この組成物を注型重合する。即ち、金属又はガラスと樹脂などからなる成型モールド中に組成物を注入して、そのモールド内で熱及び/又は光等の放射線で重合させる。
熱重合の場合の反応形態としては、例えば、自己重合性化合物類のみの重合、自己重合性化合物類と活性水素化合物類の重合、活性水素化合物類とイソシアナート類の重合、及びそれらを組み合わせた重合等が挙げられる。
熱重合の場合の重合条件としては、例えば、凡そ−50℃〜200℃の温度で1〜100時間かけて重合を行う。その条件のなかでも、10℃〜150℃の温度範囲で低温から高温まで徐々に昇温し、約4〜70時間で重合させれば、好ましい結果を与える事が多い。放射線重合の場合の反応形態としては、例えば、自己重合性化合物類のみの重合、自己重合性化合物類と活性水素化合物類の重合等が挙げらる。
放射線重合の場合の放射線の種類としては、紫外線または可視光線が好ましく用いられる。その中でも、カンファーキノン等に代表される着色性の高い増感剤を使用しなくて済む場合が多い400nm以下の紫外線が特に好ましく用いられる。
紫外線の量は、モノマー及びオリゴマーの種類によって大きく異なるため限定は出来ないが、凡そ1〜1000mJ/secの強度で1〜7200sec照射される場合が多く、時には除熱を目的として数回に分けて照射されたり、冷却して照射されたりする。
これらの重合は熱重合と放射線重合を組み合わせも一向に差し支えない。
尚、本発明がこれらの重合形態及び重合条件のみに限定されるものでは無い。
また、重合した成形物は必要に応じてアニール処理を行っても良い。
【0015】
得られた本発明の透明光学材料及びプラスチックレンズは、必要に応じ反射防止、高硬度付与、耐摩耗性向上、耐薬品性向上、防曇性付与、あるいはファッション性付与等の改良を行うため、表面研磨、帯電防止処理、ハードコート処理、無反射コート処理、染色処理、調光処理等の物理的あるいは化学的処理を施すことができる。
【0016】
【実施例】
以下、本発明を実施例及び比較例により具体的に説明する。なお、得られたレンズの性能試験、屈折率、アッベ数は以下の試験方法により評価した。
【0017】
屈折率、アッベ数;プルフリッヒ屈折計を用い、20℃で測定した。
【0018】
実施例1
4−チア−1−セレナン−2,6−ジメルカプトメチル25.9部(0.10モル)、m−キシリレンジイソシアナート(以下XDIと略す。)18.8部(0.10モル)、ジブチル錫ジクロライド(以下DBCと略す。)0.01重量%、とジオクチル燐酸0.1重量%を混合して均一溶液とした後、20℃で減圧脱泡を行った。
1時間後、ガラスモールドとガスケットからなる中心厚1.5mmの凹レンズモールドに注入を行い、このモールドを、室温〜120℃まで徐々に加熱して、硬化させた。冷却後、モールドからレンズを取り出し、さらに120℃で再加熱を行い、無色透明のプラスチックレンズを得た。
結果を第1表に示す。
【0019】
実施例2
2,5−ジアクリロイルチオメチルセレノファン50部、とベンジルメチルケタール300ppmを混合して均一溶液とした後、20℃で減圧脱泡を行った。10分後、ガラスモールドとガスケットからなる中心厚1.5mmの凹レンズモールドに注入を行い、このモールドに、紫外線を照射した。冷却後、モールドからレンズを取り出し、さらに140℃で再加熱を行い、無色透明のプラスチックレンズを得た。結果を表1に示す。
【0020】
実施例3〜32、比較例1〜3
実施例1又は実施例2と同様の方法でプラスチックレンズを得た。結果を表1及び表2に示す。
【0021】
【表1】
【0022】
【表2】
【0023】
【表3】
【0024】
【表4】
【0025】
【表5】
【0026】
実施例33
3,4−ジグリシジルチオセレノファン50部、ヘキサヒドロ無水フタル酸10部、3,5−ジメルカプトメチルセレノファン5部、ジオクチル燐酸1部、ジブチル錫ジラウレート1000ppm、とトリエチレンジアミン1000ppmの混合液を減圧下で混合脱泡を行い、直ちにガラスモールドとガスケットからなる中心厚1.5mmの凹レンズモールドに注入を行った。
次に、このモールドを50℃から130℃まで徐々に加熱昇温して、硬化させた。冷却後モールドからレンズを取り出した後、さらに140℃で再加熱を行い、無色透明のプラスチックレンズを得た。結果を表3に示す。
【0027】
実施例34
3,4−セレノファンジチオールビス(アリルチオカーボネート)50部、
t−ブチルペロキシ(2−エチルヘキサノエート)1.5部、とベンジルメチルケタール1.5部又はジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート
0.5部を混合して均一溶液とした後、室温で減圧脱泡を行った。
1時間後、ガラスモールドとガスケットからなる中心厚1.5mmの凹レンズモールドに注入を行い、70℃から120℃まで徐々に加熱昇温して、硬化させた。更にこのモールドに紫外線を照射して、モールドからレンズを取り出した。最後に140℃で再加熱を行い、無色透明のプラスチックレンズを得た。結果を表3に示す。
【0028】
実施例35〜38
実施例33又は実施例34と同様の方法でプラスチックレンズを得た。結果を表3に示す。
【0029】
【表6】
【0030】
実施例39
4−チア−1−セレナン−2,6−ジメルカプトメチル40部(0.15モル)、 ノルボルナンジイソシアナートメチル10部(0.05モル)、ジメチル錫ジクロリド0.1部(1000ppm)、とジフェニルヨードニウムヘキサフルオロ砒酸0.05部(500ppm)を温浴で攪拌してウレタン化反応を行なった。4時間後反応液を室温迄冷却した。
次に、高粘調化したこの液体(付加重合性オリゴマー)に、エチレングリコールジメタクリレート50部(0.25モル)を加え均一溶液とした後、室温で攪拌減圧脱泡を行なった。0.5時間後、ガラスモールドとガスケットからなる中心厚1.5mmの凹レンズモールドに注入を行い、紫外線を照射して硬化させ、冷却後、モールドからレンズを取り出した。
最後に130℃で再加熱を行い、無色透明のプラスチックレンズを得た。結果を表4に示す。
【0031】
【表7】
【0032】
【発明の効果】
透明光学材料及びプラスチックレンズの屈折率をさらに向上できる。
Claims (2)
- アリルカーボネート基、アリルチオカーボネート基、アリルセレノカーボネート基、アリル基、イソプロペニル基、エポキシ基から選ばれる二つの官能基とセレン原子を有するセレン原子含有自己重合性化合物類を50重量%以上含有する組成物を重合して得られる透明光学材料。
- 請求項1に記載の透明光学材料からなるプラスチックレンズ。
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