JP2005163008A - 含硫黄光学材料用樹脂の製造方法、含硫黄光学材料用樹脂及び含硫黄プラスチックレンズ - Google Patents

含硫黄光学材料用樹脂の製造方法、含硫黄光学材料用樹脂及び含硫黄プラスチックレンズ Download PDF

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Akinori Yamamoto
明典 山本
Takeaki Iryo
毅明 井領
Toru Saito
徹 齋藤
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Abstract

【課題】本発明は、含硫黄プラスチックレンズモノマーを重合硬化して得られるプラスチ
ックレンズの切削研磨加工時に発生する異臭、悪臭を減少または消失させる。
【解決手段】含硫黄光学材料用樹脂へシトロネラール、シネオール、アントラニル酸メチ
ル、アントラニル酸エチル、アントラニル酸ジメチル、リモネン、α−テルピネオール、
エナント酸エチル、エナント酸メチル、エナント酸イソプロピル、エナント酸ビニル、カ
プリル酸メチル、カプリル酸エチル、ノナン酸メチル、ノナン酸エチルから選ばれる一種
または二種以上の化合物を添加する。
【選択図】なし


Description

本発明は、プラスチックレンズ、プリズム、レンチキュラーシート、フィルター等に使
用される含硫黄光学材料用樹脂の製造方法と、その製造方法によって製造された含硫黄光
学材料用樹脂に関する。また、本発明は、その中でも、眼鏡レンズ等のプラスチックレン
ズとして好適に使用され、含硫黄プラスチックレンズの切削研磨加工時に発生する異臭、
悪臭を減少または消失させるプラスチックレンズおよびその製造方法に関する。
プラスチック材料は、軽量かつ強度に優れることから、光学材料用樹脂として従来の無
機ガラス材料等に替わり、プラスチックレンズやプリズムなどの各種用途に広く使用され
ている。中でも、プラスチックレンズは、従来のガラスレンズに比べ軽量で割れにくく、
また染色が容易であることから、近年視力矯正用レンズおよびサングラスをはじめ、カメ
ラレンズや光学素子等に広く普及している。光学材料、特に眼鏡レンズに要求される性能
は、低比重に加えるに、光学性能としては高屈折率と高アッベ数であり、物理的性質とし
ては高耐熱性と高強度である。高屈折率はレンズの薄肉化を可能とし、高アッベ数はレン
ズの色収差を低減し、高耐熱性及び高強度は二次加工を容易にするとともに安全性等の観
点から重要である。これらの要求を満たすべく近年様々なプラスチックレンズ用素材が開
発されるようになってきており、高屈折率の新規な透明プラスチックレンズを開発する試
みが多数なされている。
樹脂の屈折率を高めるために、硫黄原子を導入する試みが行われ、例えば、以下に示す
特許文献1には、含硫黄ウレタン−ビニル化合物と含硫黄ジ(メタ)アクリレート化合物
を主成分とするプラスチックレンズが提案されている。また、特許文献2、3には、イソシアネート基またはイソチオシアネート基を持つ化合物と、ポリチオール化合物又はポリオール化合物とを混合し、重合硬化することによって製造されるポリ(チオ)ウレタン系プラスチックレンズが提案されている。また、特許文献4には、チオエポキシ基を持つ化合物と、ポリチオール化合物又はポリオール化合物とを混合し、重合硬化することによって製造されるチオエポキシ系プラスチックレンズが提案され、さらにハロゲン化芳香族多官能アクリレートおよび芳香環を有するビニル基を持つ化合物を混合し、重合硬化することによって製造されるビニル系プラスチックレンズが提案されている。これらのプラスチックレンズが商品化されて高屈折率樹脂レンズの主流となるに到っている。
しかしながら、これらの樹脂は、硫黄原子を含有しているために、レンズの切削、研磨
時に硫黄原子含有物質の異臭、悪臭が発生し、作業者に強い不快感を与えることがあり、
その改善が強く望まれていた。
含硫黄プラスチックレンズの切削、研磨時に発生する異臭、悪臭を減少または消失させ
る加工法は、例えば、以下に示す特許文献5〜7には、特定の香気性付与化合物を添加す
る技術が提案されている。
しかしながら、これら特定の香気性付与化合物の添加は、一応の効果を発揮するものの
、全ての作業者が不快感を感じなくなるまで臭気を改良することはできず、さらなる改良
が望まれていた。
特開2002−131702号公報 特公平4−58489号公報 特開平5−148340号公報 特開平11−322930号公報 特開平5−273401号公報 特開平5−297201号公報 特開平11−20036号公報
本発明の目的は、含硫黄光学材料用樹脂について、その切削、研磨等の加工時に発生す
る異臭、悪臭を減少または消失させる、特定の香料組成物を特定量含有してなる含硫黄光
学材料用樹脂の製造方法、含硫黄光学材料用樹脂及び含硫黄プラスチックレンズの製造方法を提供することにある。
前記目的を達成するべく、本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、含硫黄光学材料用樹脂
を製造する際に使用する、含硫黄光学材料用樹脂原料中に香料組成物として、シトロネラ
ール、シネオール、アントラニル酸メチル、アントラニル酸エチル、アントラニル酸ジメ
チル、リモネン、α−テルピネオール、エナント酸エチル、エナント酸メチル、エナント
酸イソプロピル、エナント酸ビニル、カプリル酸メチル、カプリル酸エチル、ノナン酸メ
チル、ノナン酸エチルから選ばれる一種または二種以上の化合物を添加し、その後硬化さ
せて含硫黄光学材料用樹脂を製造することにより、光学材料用樹脂の持つ諸特性を損なう
ことなく、樹脂の切削、研磨時に発生する異臭、悪臭を減少または消失させ、作業者に強
い不快感を与えることなく含硫黄光学材料用樹脂を製造しうることを見出し、本発明を完
成させるに至った。
本発明は、一般の光学材料用樹脂の製造の中でも、硫黄原子含有率の高い、高屈折率プ
ラスチックレンズの製造に関して特に効果が高く、中でもポリチオール化合物又はポリオ
ール化合物を含むプラスチックレンズ原料モノマーと、それと反応する官能基を備えた重
合単量体を混合し、重合硬化して得られる含硫黄プラスチックレンズに対して効果が大き
い。
従って、第1の発明は、含硫黄光学材料用樹脂原料中に香料組成物として、シトロネラール、シネオール、アントラニル酸メチル、アントラニル酸エチル、アントラニル酸ジメチル、リモネン、α−テルピネオール、エナント酸エチル、エナント酸メチル、エナント酸イソプロピル、エナント酸ビニル、カプリル酸メチル、カプリル酸エチル、ノナン酸メチル、ノナン酸エチルから選ばれる一種または二種以上の化合物を添加し、その後硬化させて含硫黄光学材料用樹脂を製造することを特徴とする、含硫黄光学材料用樹脂の製造方法を提供する。第1の発明によれば、含硫黄光学材料用樹脂の切削、研磨時に発生する異臭、悪臭を減少または消失することが可能となる。
第2の発明は、前記含硫黄光学材料用樹脂原料中に添加する香料組成物の添加量が、0
.001〜0.5重量部の範囲であることを特徴とする、第1の発明に記載の含硫黄光学
材料用樹脂の製造方法を提供する。含硫黄光学材料用樹脂原料中に添加する香料組成物の
添加量が、0.001〜0.5重量部の範囲とすることにより、含硫黄光学材料用樹脂の
切削、研磨時に発生する異臭、悪臭を減少または消失することが可能となる。0.001
重量部未満の添加量では、切削、研磨加工時に発生する異臭、悪臭を低減する効果は非常
に小さく、香料無添加のプラスチックレンズに対して、優位差が見られない。また、0.
5重量部を越えて添加すると、切削、研磨加工時に香料の臭気が強すぎてしまうため、作
業者に不快感を与えてしまう。
第3の発明は、含硫黄光学材料用樹脂が、イソシアネート基またはイソチオシアネート
基を1分子中に少なくとも2個以上有する化合物と、ポリチオール化合物又はポリオール
化合物とを混合して製造されるポリ(チオ)ウレタン系含硫黄光学材料用樹脂であること
を特徴とする、第1の発明又は第2の発明に記載の含硫黄光学材料用樹脂の製造方法を提供する。ポリ(チオ)ウレタン系含硫黄光学材料用樹脂を切削、研磨加工を行った時に発生する異臭、悪臭を、第1の発明に記載の香料組成物を添加することにより減少または消失することが可能となる。
第4の発明は、前記ポリ(チオ)ウレタン系含硫黄光学材料用樹脂中に添加する香料組成物の添加量が0.01〜0.4重量部の範囲であることを特徴とする、第3の発明に記載の含硫黄光学材料用樹脂の製造方法を提供する。ポリ(チオ)ウレタン系含硫黄光学材料用樹脂中に添加する香料組成物の添加量が0.01〜0.4重量部の範囲とすることにより、ポリ(チオ)ウレタン系含硫黄光学材料用樹脂を切削、研磨加工を行った時に発生する異臭、悪臭を、減少または消失することが可能となる。0.01重量部未満の添加量では、切削、研磨加工時に発生する異臭、悪臭を低減する効果は非常に小さく、香料無添加のポリ(チオ)ウレタン系含硫黄光学材料用樹脂に対して、優位差が見られない。また、0.4重量部を越えて添加すると、切削、研磨加工時に香料の臭気が強すぎてしまうため、作業者に不快感を与えてしまう。
ポリ(チオ)ウレタン系プラスチックレンズの主成分となるポリイソシアネートとして
は、特に限定される物ではなく公知のイソシアネート基またはイソチオシアネート基を持
つ化合物が何ら制限なく使用できる。イソシアネート基を持つ化合物の具体例としては、
ヘキサメチレンジイソシアナート、2,2,4−トリメチルヘキサンジイソシアナート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアナート、キシリレンジイソシアナート、α,α,α',α'−テトラメチルキシリレンジイソシアナート等の脂肪族ポリイソシアナート、イソホロンジイソシアナート、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、ジシクロヘキシルメタンジイソシアナート、シクロヘキサンジイソシアナート、ジシクロヘキシルジメチルメタンジイソシアナート、2,5−ビス(イソシアナトメチル)ビシクロ〔2,2,1〕ヘプタン、2,6−ビス(イソシアナトメチル)ビシクロ〔2,2,1〕ヘプタン等の脂環族ポリイソシアナート、トリレンジイソシアナート、4,4'−ジフェニルメタンジイソシアナート等の芳香族ポリイソシアナート、チオジエチルジイソシアナート、ビス(イソシアナトメチルチオ)メタン、ビス(4−イソシアナトメチルベンゼン)スルフィド、ジフェニルジスルフィド−4,4,−ジイソシアナート、ジフェニルスルホン−4,4'−ジイソシアナート、1,4−ジチアン−2,5−ジイソシアナート、チオフェン−2,5−ジイソシアナート等の含硫イソシアナート等が挙げられ、m−キシレンジイソシアネートがポリ(チオ)ウレタン系プラスチックレンズを製造する際に、耐熱性、耐衝撃性、屈折率等の諸物性の点から特に好ましい。
また、重合性モノマーを構成する2個以上の活性水素を有する化合物としては、例えば
2個以上の水酸基を有するポリオール、2個以上のチオール基を有するポリチオール、ま
たは1分子中に水酸基とチオール基を各々1個以上有する化合物を挙げることができる。
ポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレ
ングリコール、ジプロピレングリコール、ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール
、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ブタントリオール、1
,2−メチルグルコサイド、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペン
タエリスリトール、ソルビトール、エリスリトール、スレイトール、リビトール、アラビ
ニトール、キシリトール、アリトール、マニトール、ドルシトール、イディトール、グリ
コール、イノシトール、ヘキサントリオール、トリグリセロール、ジグリペロール、トリ
エチレングリコール、ポリエチレングリコール、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシ
アヌレート、シクロブタンジオール、シクロペンタンジオール、シクロヘキサンジオール
、シクロヘプタンジオール、シクロオクタンジオール、シクロヘキサンジメタノール、ヒ
ドロキシプロピルシクロヘキサノール、トリシクロ〔5,2,1,0,2,6〕デカン−
ジメタノール、ビシクロ〔4,3,0〕−ノナンジオール、ジシクロヘキサンジオール、
トリシクロ〔5,3,1,1〕ドデカンジオール、ビシクロ〔4,3,0〕ノナンジメタ
ノール、トリシクロ〔5,3,1,1〕ドデカン−ジエタノール、ヒドロキシプロピルト
リシクロ〔5,3,1,1〕ドデカノール、スピロ〔3,4〕オクタンジオール、ブチル
シクロヘキサンジオール、1,1'−ビシクロヘキシリデンジオール、シクロヘキサント
リオール、マルチトール、ラクチトール等の脂肪族ポリオール、ジヒドロキシナフタレン
、トリヒドロキシナフタレン、テトラヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシベンゼン、ベ
ンゼントリオール、ビフェニルテトラオール、ピロガロール、(ヒドロキシナフチル)ピ
ロガロール、トリヒドロキシフェナントレン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、キ
シリレングリコール、テトラブロムビスフェノールA等の芳香族ポリオール、ジ−(2−
ヒドロキシエチル)スルフィド、1,2−ビス−(2−ヒドロキシエチルメルカプト)エ
タン、ビス(2−ヒドロキシエチル)ジスルフィド、1,4−ジチアン−2,5−ジオー
ル、ビス(2,3−ジヒドロキシプロピル)スルフィド、テトラキス(4−ヒドロキシ−
2−チアブチル)メタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン(商品名ビスフェノ
ールS)、テトラブロモビスフェノールS、テトラメチルビスフェノールS、4,4'−
チオビス(6−tert−ブチル−3−メチルフェノール)、1,3−ビス(2−ヒドロ
キシエチルチオエチル)−シクロヘキサンなどの硫黄原子を含有したポリオール等が挙げ
られる。
また、ポリチオールとしては、特に制限されないが、例えば、ビス(2−メルカプトエ
チル)スルフィド、ジ(2−メルカプトエチル)エーテル、1,2−エタンジチオール、
1,4−ブタンジチオール、エチレングリコールジチオグリコレート、トリメチロールプ
ロパントリス(チオグリコレート)、ペンタエリスリトールテトラキス(2−メルカプト
アセテート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3−メルカプトプロピオナート)、
ジペンタエリスリトールヘキサキス(2−メルカプトアセテート)、1,2−ジメルカプ
トベンゼン、4−メチル−1,2−ジメルカプトベンゼン、3,6−ジクロロ−1,2−
ジメルカプトベンゼン、3,4,5,6−テトラクロロ−1,2−ジメルカプトベンゼン
、O−キシリレンジチオール、m−キシリレンジチオール、p−キシリレンジチオール、
及び1,3,5−トリス(3−メルカプトプロピル)イソシアヌレートなどが挙げられる
また、1分子中に水酸基とチオール基を各々1個以上有する化合物としては、例えば、
2−メルカプトエタノール、3−メルカプト−1,2−プロパンジオール、グルセリンジ
(メルカプトアセテート)、1−ヒドロキシ−4−メルカプトシクロヘキサン、2,4−
ジメルカプトフェノール、2−メルカプトハイドロキノン、4−メルカプトフェノール、
1,3−ジメルカプト−2−プロパノール、2,3−ジメルカプト−1−プロパノール、
1,2−ジメルカプト−1,3−ブタンジオール、ペンタエリスリトールトリス(3−メ
ルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールモノ(3−メルカプトプロピオネート
)、ペンタエリスリトールビス(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトー
ルトリス(チオグリコレート)、ペンタエリスリトールペンタキス(3−メルカプトプロ
ピオネート)、ヒドロキシメチル−トリス(メルカプトエチルチオメチル)メタン、1−
ヒドロキシエチルチオ−3−メルカプトエチルチオベンゼン、4−ヒドロキシ−4'−メ
ルカプトジフェニルスルホン、2−(2−メルカプトエチルチオ)エタノール、ジヒドロ
キシエチルスルフィドモノ(3−メルカプトプロピオネート)、ジメルカプトエタンモノ
(サルチレート)、ヒドロキシエチルチオメチルートリス(メルカプトエチルチオ)メタ
ン等が挙げられ、4−メルカプトメチル−3,6−ジチオ−1,8−オクタンジチオール
、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオナート)がポリ(チオ)ウ
レタン系プラスチックレンズを製造する際に、耐熱性、耐衝撃性、屈折率等の諸物性の点
から特に好ましい。
第5の発明は、前記ポリチオール化合物は、一般式(1)
R−(SCH2SH)n (1)
(式中Rは、芳香環を除く有機残基を示す。nは、1以上の整数を示す。)で表され、分子内に2個以上のメルカプト基を有する化合物から選ばれる1種以上のポリチオール化合物を主成分とするポリチオール組成物を主成分とすることを特徴とする、第3の発明又は第4の発明に記載の含硫黄光学材料用樹脂の製造方法を提供する。
上記一般式(1)中、Rで示す有機残基としては、直鎖状若しくは分岐状の脂肪族、脂環族、複素環、又は鎖中に硫黄原子を有する直鎖状若しくは分岐状の脂肪族、脂環族若しくは複素環から選ばれる一種以上を挙げることができる。また、式中nは1以上の整数であり、メルカプトメチルチオ基は一分子内に1個以上、好ましくは2個以上有することが必要である。また、メルカプトメチルチオ基以外のメルカプト基を有していてもよい。
一般式(1)で表されるポリチオール化合物の具体例としては、1,2,5−トリメル
カプト−4−チアペンタン、3,3−ジメルカプトメチル−1,5−ジメルカプト−2,
4−ジチアペンタン、3−メルカプトメチル−1,5−ジメルカプト−2,4−ジチアペ
ンタン、3−メルカプトメチルチオ−1,7−ジメルカプト−2,6−ジチアヘプタン、
3,6−ジメルカプトメチル−1,9−ジメルカプト−2,5,8−トリチアノナン、3
,7−ジメルカプトメチル−1,9−ジメルカプト−2,5,8−トリチアノナン、4,
6−ジメルカプトメチル−1,9−ジメルカプト−2,5,8−トリチアノナン、3−メ
ルカプトメチル−1,6−ジメルカプト−2,5−ジチアヘキサン、3−メルカプトメチ
ルチオ−1,5−ジメルカプト−2−チアペンタン、1,1,2,2−テトラキス(メル
カプトメチルチオ)エタン、1,1,3,3−テトラキス(メルカプトメチルチオ)プロ
パン、1,4,8,11−テトラメルカプト−2,6,10−トリチアウンデカン、1,
4,9,12−テトラメルカプト−2,6,7,11−テトラチアドデカン、2,3−ジ
チア−1,4−ブタンジチオール、2,3,5,6−テトラチア−1,7−ヘプタンジチ
オール、2,3,5,6,8,9−ヘキサチア−1,10−デカンジチオール、4,5−
ビス(メルカプトメチルチオ)−1,3−ジチオラン、4,6−ビス(メルカプトメチル
チオ)−1,3−ジチアン、2−ビス(メルカプトメチルチオ)メチル−1,3−ジチエ
タン、2−(2,2−ビス(メルカプトメチルチオ)エチル)−1,3−ジチエタン等の
ポリチオール化合物が挙げられ、それぞれの1種を単独で用いてもよく、また2種以上を
併用して用いてもよい。これらの中でも、1,1,2,2−テトラキス(メルカプトメチ
ルチオ)エタン、1,1,3,3−テトラキス(メルカプトメチルチオ)プロパンを好ま
しく用いることができる。1,1,3,3−テトラキス(メルカプトメチルチオ)プロパ
ンの粘度は1000mPa・s/25℃であり、非常に高粘度である。
また、1分子中に水酸基とチオール基を各々1個以上有する化合物としては、例えば、
2−メルカプトエタノール、3−メルカプト−1,2−プロパンジオール、グルセリンジ
(メルカプトアセテート)、1−ヒドロキシ−4−メルカプトシクロヘキサン、2,4−
ジメルカプトフェノール、2−メルカプトハイドロキノン、4−メルカプトフェノール、
1,3−ジメルカプト−2−プロパノール、2,3−ジメルカプト−1−プロパノール、
1,2−ジメルカプト−1,3−ブタンジオール、ペンタエリスリトールトリス(3−メ
ルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールモノ(3−メルカプトプロピオネート
)、ペンタエリスリトールビス(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトー
ルトリス(チオグリコレート)、ペンタエリスリトールペンタキス(3−メルカプトプロ
ピオネート)、ヒドロキシメチル−トリス(メルカプトエチルチオメチル)メタン、1−
ヒドロキシエチルチオ−3−メルカプトエチルチオベンゼン、4−ヒドロキシ−4'−メ
ルカプトジフェニルスルホン、2−(2−メルカプトエチルチオ)エタノール、ジヒドロ
キシエチルスルフィドモノ(3−メルカプトプロピオネート)、ジメルカプトエタンモノ
(サルチレート)、ヒドロキシエチルチオメチルートリス(メルカプトエチルチオ)メタ
ン等が挙げられる。
第6の発明は、前記含硫黄光学材料用樹脂が、チオエポキシ基を持つ化合物を主成分とする重合性組成物によって製造されるチオエポキシ系含硫黄光学材料用樹脂であることを特徴とする、第1の発明又は第2の発明に記載の含硫黄光学材料用樹脂の製造方法を提供する。チオエポキシ系含硫黄光学材料用樹脂を切削、研磨加工を行った時に発生する異臭、悪臭を、第1の発明に記載の香料組成物を添加することにより減少または消失することが可能となる。
第7の発明は、前記チオエポキシ系含硫黄光学材料用樹脂中に添加する香料組成物の添加量が0.01〜0.4重量部の範囲であることを特徴とする、第6の発明に記載の含硫黄光学材料用樹脂の製造方法を提供する。チオエポキシ系含硫黄光学材料用樹脂中に添加する香料組成物の添加量が0.01〜0.4重量部の範囲とすることにより、チオエポキシ系含硫黄光学材料用樹脂を切削、研磨加工を行った時に発生する異臭、悪臭を、減少または消失することが可能となる。0.01重量部未満の添加量では、切削、研磨加工時に発生する異臭、悪臭を低減する効果は非常に小さく、香料無添加のチオエポキシ系含硫黄光学材料用樹脂に対して、優位差が見られない。また、0.4重量部を越えて添加すると、切削、研磨加工時に香料の臭気が強すぎてしまうため、作業者に不快感を与えてしまう。
チオエポキシ系プラスチックレンズの原料モノマーとして用いられる、チオエポキシ基
を持つ化合物としては、公知のチオエポキシ基を持つ化合物が何ら制限なく使用できる。
チオエポキシ基を持つ化合物の具体例としては、既存のエポキシ化合物のエポキシ基の
一部あるいは全部の酸素を硫黄で置き換えることによって得られるチオエポキシ化合物等
が挙げられる。また、プラスチックレンズの高屈折率化のためには、チオエポキシ基以外
にも硫黄原子を含有する化合物がより好ましい。具体例としては、1,2−ビス(β−エ
ピチオプロピルチオ)エタン、ビス(β−エピチオプロピル)スルフィド、1,4−ビス
(β−エピチオプロピルチオメチル)ベンゼン、2,5−ビス(β−エピチオプロピルチ
オメチル)−1,4−ジチアン、ビス(2,3−エピチオプロピル)ジスルフィド等が挙
げられる。
第8の発明は、前記含硫黄光学材料用樹脂が、含硫黄ビニル化合物を主成分とする重合性組成物によって製造されるビニル系含硫黄光学材料用樹脂であることを特徴とする、第1の発明又は第2の発明に記載の含硫黄光学材料用樹脂の製造方法を提供する。ビニル系含硫黄光学材料用樹脂を切削、研磨加工を行った時に発生する異臭、悪臭を、第1の発明に記載の香料組成物を添加することにより減少または消失することが可能となる。
第9の発明は、前記ビニル系含硫黄光学材料用樹脂中に添加する香料組成物の添加量が0.001〜0.1重量部の範囲であることを特徴とする、第8の発明に記載の含硫黄光学材料用樹脂の製造方法を提供する。ビニル系含硫黄光学材料用樹脂中に添加する香料組成物の添加量が0.001〜0.1重量部の範囲とすることにより、ビニル系含硫黄光学材料用樹脂を切削、研磨加工を行った時に発生する異臭、悪臭を、減少または消失することが可能となる。0.001重量部未満の添加量では、切削、研磨加工時に発生する異臭、悪臭を低減する効果は非常に小さく、香料無添加のビニル系含硫黄光学材料用樹脂に対して、優位差が見られない。また、0.1重量部を越えて添加すると、切削、研磨加工時に香料の臭気が強すぎてしまうため、作業者に不快感を与えてしまう。
ビニル系プラスチックレンズの原料モノマーとして用いられる、分子内に一つ以上の重
合性二重結合を有する含硫黄ビニル化合物としては、例えば、2−(4−ビニルベンジル
チオ)エタノールとm−キシリレンジイソシアネートをウレタン化させて得られる含硫黄
ビニル化合物、2−(3−ビニルベンジルチオ)エタノールとm−キシリレンジイソシア
ネートをウレタン化させて得られる含硫黄ビニル化合物、p−ビス(β−メタクリロイル
オキシエチルチオ)キシリレン等が挙げられる。
第10の発明は、第1の発明乃至第9の発明のいずれかに記載の製造方法によって製造された含硫黄光学材料用樹脂を提供する。第10の発明によれば、切削、研磨時に発生する異臭、悪臭が減少した含硫黄光学材料用樹脂を提供することができる。
第11の発明は、第10の発明に記載の製造方法によって製造された含硫黄光学用樹脂を用いた含硫黄プラスチックレンズを提供する。第11の発明によれば、プラスチックレンズの切削、研磨時に発生する異臭、悪臭を減少または消失した含硫黄プラスチックレンズを提供することができる。
本発明は、上述のように、含硫黄光学材料用樹脂の製造方法、特に含硫黄プラスチック
レンズの製造方法に関する発明であり、プラスチックレンズ樹脂材料に香料を添加するこ
とによって、プラスチックレンズの切削、研磨時に発生する異臭、悪臭を減少または消失
させる必要がある含硫黄プラスチックレンズの製造方法であればその種類は問わないが、
例えば、イソシアネート基またはイソチオシアネート基を持つ化合物と、ポリチオール化
合物又はポリオール化合物とを混合し、重合硬化することによって製造されるポリ(チオ
)ウレタン系プラスチックレンズ、チオエポキシ基を持つ化合物を主成分とする重合性組
成物を重合硬化することによって製造されるチオエポキシ系プラスチックレンズ、含硫黄
ビニル化合物を主成分とする重合性組成物によって製造されるビニル系含硫黄プラスチッ
クレンズなどのプラスチックレンズの製造に対して特に好ましい。
本発明において光学材料用樹脂原料中に添加することのできる香料としては特に限定さ
れず、公知の物を用いることが出来る。中でも、硫黄原子含有プラスチックレンズの切削
、研磨加工時に発生する異臭、悪臭を減少または消失させるような香料が好ましい。例え
ば、請求項1で記載したように、シトロネラール、シネオール、アントラニル酸メチル、
アントラニル酸エチル、アントラニル酸ジメチル、リモネン、α−テルピネオール、エナ
ント酸エチル、エナント酸メチル、エナント酸イソプロピル、エナント酸ビニル、カプリ
ル酸メチル、カプリル酸エチル、ノナン酸メチル、ノナン酸エチル等が挙げられる。
本発明における重合方法としては、特に限定される物ではなく、一般にプラスチックレ
ンズの製造に用いられている重合方法が、何ら制限なく使用される。例えば、イソシアネ
ート基またはイソチオシアネート基を持つ化合物と、ポリチオール化合物又はポリオール
化合物を反応させることによって製造されるポリ(チオ)ウレタン系プラスチックレンズ
の場合には、イソシアネート基または、イソチオシアネート基を持つ化合物と、ポリチオ
ール化合物又はポリオール化合物を混合した後、ウレタン樹脂用の硬化触媒を添加、混合
した後、加熱硬化することによって製造できる。硬化触媒の具体例としては、エチルアミ
ン、エチレンジアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン等のアミン化合物、ジブチ
ル錫ジクロライド、ジメチル錫ジクロライド等が挙げられる。
また、チオエポキシ基を持つ化合物を含むプラスチックレンズ原料モノマーを重合させ
ることによって得られる、チオエポキシ系のプラスチックレンズの場合には、チオエポキ
シ基を持つ化合物とポリチオール化合物又はポリオール化合物とを混合した後、更に必要
に応じてチオエポキシ基と共重合可能な他のモノマーと混合した後、エポキシ樹脂用の硬
化触媒を添加、混合し、加熱により重合硬化を行うことによって製造できる。エポキシ樹
脂用の硬化触媒は特に制限はないが、具体例としては、ジメチルベンジルアミン、ジメチ
ルシクロヘキシルアミン、ジエチルエタノールアミン、ジブチルエタノールアミン、トリ
ジメチルアミノメチルフェノール等の3級アミン、エチルメチルイミダゾール等のイミダ
ゾール類、などが挙げられる。また、チオエポキシ基を持つ化合物と共重合可能な他のモ
ノマーとしては、水酸基を持つ化合物、メルカプト基を持つ化合物、1級または2級アミ
ン、カルボキシル基を持つ化合物などが挙げられる。水酸基を持つ化合物の具体例として
は、イソプロピルアルコール、n−ヘキシルアルコール等のアルコール類、エチレングリ
コール、1,6−ヘキサンジオール、ペンタエリスリトールジメタクリレート、ペンタエ
リスリトールジアクリレート等の多価アルコール類が挙げられる。メルカプト基を持つ化
合物の具体例としては、チオフェノール、エチルチオグリコレート、ビス(2−メルカプ
トエチル)スルフィド、2,5−ジメルカプトメチル−1,4−ジチアン等が挙げられる
また、本発明では重合硬化前のプラスチックレンズ用モノマーに、必要に応じて紫外線
吸収剤、光安定剤、酸化防止剤等を混合した後に重合硬化を行い、プラスチックレンズを
製造することによって、プラスチックレンズの耐候性を向上させることが可能である。紫
外線吸収剤、光安定剤または酸化防止剤の具体例としては、ベンゾトリアゾール系紫外線
吸収剤、ヒンダートアミン系光安定剤、ヒンダートフェノール系酸化防止剤、ホスファイ
ト系酸化防止剤、チオエーテル系酸化防止剤等が挙げられる。
さらに、本発明では重合硬化前のプラスチックレンズ用モノマーに、必要に応じてブル
ーイングマスターバッチを混合した後に重合硬化を行い、プラスチックレンズを製造する
ことによって、プラスチックレンズの色調を調整することが可能である。
本発明で用いられるブルーイングマスターバッチ中の染料としては、特に制限はないが
、油溶染料、中でもアントラキノンバイオレット系油溶染料、またはアントラキノンブル
ー系油溶染料が好ましい。これらの油溶染料の具体例としては、C.I.ソルベント・バ
イオレット・13、C.I.ソルベントバイオレット・14、C.I.ソルベント・ブルー・11、C.I.ソルベントブルー12等が挙げられる。
本発明によるプラスチックレンズを、矯正用レンズやファッションレンズとして用いる
場合には、光線透過率を高め、表面反射によるちらつきを防止するために、反射防止膜を
施す事が好ましく、さらに、レンズ基材と反射防止膜の密着性を高めるためや、表面の傷
防止のためにハードコート層を設けることが特に好ましい。
ハードコート層の好ましい例としては、下記(イ)および(ロ)を主成分とするコーテ
ィング組成物を塗布し硬化させた物が挙げられる。
(イ)少なくとも一種以上の反応基を有するシラン化合物の一種以上。
(ロ)酸化ケイ素、酸化アンチモン、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化スズ、酸化タ
ンタル、酸化タングステン、酸化アルミニウム等の無機酸化物微粒子、酸化チタン、酸化
セリウム、酸化ジルコニア、酸化ケイ素、酸化鉄、酸化スズ、酸化タングステンのうちの
2つ以上を用いた複合無機酸化物微粒子。
(ロ)の成分は、ハードコートの屈折率を調整し、かつ、硬度を高めるのに有効な成分
であり、単独または混合して用いることができる。しかし、(ロ)の成分だけでは成膜性
が悪く、(イ)の成分を併用する事によって透明で強靭な膜が得られる。(イ)の成分は
、そのまま使用することも可能であるが加水分解して使用する方が膜の耐水性や硬度を向
上させることができることから好ましい。
ハードコート層の厚さは、通常0.2μm〜10μm程度が好ましく、より好ましくは
、1μm〜3μm程度である。また、本発明では、レンズ生地とハードコート層の間にプ
ライマー層を設ける様なハードコートも使用できる。このプライマー層は、レンズ生地と
ハードコート層の密着性をより向上させたり、ハードコート処理後のレンズの耐衝撃性を
向上させる効果がある。
矯正用レンズとしての使用では、前述のごとくハードコート層表面に反射防止膜を施す
ことによって、光学性能がさらにアップする。反射防止膜としては、屈折率の異なる薄膜
を積層して得られる多層膜であり、反射率の低減されるものであれば、無機物でも有機物
でも可能である。しかし、表面の硬度や干渉縞の防止を重視するためには、無機物からな
る単層または多層の反射防止膜を設けることが最も好ましい。使用できる無機物としては
、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化チタニウム、酸化セリウム、
酸化ハフニウム、フッ化マグネシウム等の酸化物あるいはフッ化物が挙げられ、イオンプ
レーティング、真空蒸着、スパッタリング等のいわゆるPVD法によって施す事ができる
本発明における含硫黄光学材料用樹脂の製造方法を用いると、含硫黄光学材料用樹脂の
切削、研磨等の加工時に発生する異臭、悪臭を減少または消失させることができる。した
がって、作業者が不快感を感じることなく含硫黄光学材料用樹脂の加工を行うことが可能
となり、しかも、含硫黄光学材料用樹脂を眼鏡用プラスチックレンズなどに使用する際に
は、通常装着時に全く臭気がないので、従来品と全く同様に扱うことができる等の優れた
効果を奏する。
以下本発明の詳細について実施例に基づいて説明するが、本発明は、これらによって限
定されるものではない。
プラスチックレンズ原料として、m−キシレンジイソシアネートを50.6重量部、4
,8−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカン
或いは4,7−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウ
ンデカン或いは5,7−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−ト
リチアウンデカンのいずれか一種の中から選ばれる化合物を49.4重量部、紫外線吸収
剤として商標名「SEESORB701」(シプロ化成工業製)を1.2重量部、内部離
型剤として商標名「ゼレックUN」(Stepan社製)を0.1重量部添加し、混合し
た後、十分に撹拌して、完全に分散又は溶解させたプラスチックレンズ原料中に、香料組
成物としてエナント酸エチルを0.2重量部の濃度で添加し、その後、触媒としてジブチ
ル錫ジクロライドを100ppm添加し、室温で十分に撹拌して均一液とした。ついでこ
の組成物を667Pa(5mmHg)に減圧して攪拌しながら30min脱気を行った。この原料を、2枚のガラス型を用いて、粘着テープで保持した鋳型中に注入し、大気重合炉中で30℃から120℃まで24時間かけて昇温を行い、重合硬化させた。その後、型よりレンズを取り外し、120℃で1時間加熱してアニール処理を行った。
このようにして製造したプラスチックレンズを鼻に近づけても何ら臭気は感じられなか
った。また、このプラスチックレンズを切削、研磨加工したところエナント酸エチルを添
加しないプラスチックレンズと比較して異臭、悪臭がほとんど発生せず、作業者が不快感
を感じることはなかった。
実施例1において、エナント酸エチルの代わりに、アントラニル酸エチル0.2重量部
を用いて、実施例1と同様にプラスチックレンズを作製し、そのプラスチックレンズを鼻
に近づけても何ら臭気は感じられなかった。また、このプラスチックレンズを切削、研磨
加工したところアントラニル酸エチルを添加しないプラスチックレンズと比較して異臭、
悪臭がほとんど発生せず、作業者が不快感を感じることはなかった。
実施例1において、エナント酸エチルの代わりに、リモネン0.2重量部を用いて、実
施例1と同様にプラスチックレンズを作製し、そのプラスチックレンズを鼻に近づけても
何ら臭気は感じられなかった。また、このプラスチックレンズを切削、研磨加工したとこ
ろリモネンを添加しないプラスチックレンズと比較して異臭、悪臭がほとんど発生せず、
作業者が不快感を感じることはなかった。
実施例1において、エナント酸エチルの代わりに、α−テルピネオール0.2重量部を
用いて、実施例1と同様にプラスチックレンズを作製し、そのプラスチックレンズを鼻に
近づけても何ら臭気は感じられなかった。また、このプラスチックレンズを切削、研磨加
工したところ本来発生していた異臭、悪臭がほとんど発生せず、作業者が不快感を感じる
ことはなかった。
実施例1において、エナント酸エチルの代わりに、シトロネラール0.2重量部を用い
て、実施例1と同様にプラスチックレンズを作製し、そのプラスチックレンズを鼻に近づ
けても何ら臭気は感じられなかった。また、このプラスチックレンズを切削、研磨加工し
たところシトロネラールを添加しないプラスチックレンズと比較して異臭、悪臭がほとん
ど発生せず、作業者が不快感を感じることはなかった。
実施例1において、エナント酸エチルの代わりに、カプリル酸エチル0.2重量部を用
いて、実施例1と同様にプラスチックレンズを作製し、そのプラスチックレンズを鼻に近
づけても何ら臭気は感じられなかった。また、このプラスチックレンズを切削、研磨加工
したところカプリル酸エチルを添加しないプラスチックレンズと比較して異臭、悪臭がほ
とんど発生せず、作業者が不快感を感じることはなかった。
実施例1において、エナント酸エチルの代わりに、ノナン酸エチル0.2重量部を用い
て、実施例1と同様にプラスチックレンズを作製し、そのプラスチックレンズを鼻に近づ
けても何ら臭気は感じられなかった。また、このプラスチックレンズを切削、研磨加工し
たところノナン酸エチルを添加しないプラスチックレンズと比較して異臭、悪臭がほとん
ど発生せず、作業者が不快感を感じることはなかった。
プラスチックレンズ原料として、m−キシレンジイソシアネートを44.4重量部、4官能ポリチオール化合物とそのオリゴマーから成るポリチオール化合物の一例として、1,1,3,3−テトラキス(メルカプトメチルチオ)プロパン(下式[化1])を主成分とするポリチオール化合物を55.6重量部、紫外線吸収剤として商標名「SEESORB701」(シプロ化成工業製)を1.2重量部、内部離型剤として商標名「ゼレックUN」(Stepan社製)を0.1重量部添加し、混合した後、十分に撹拌して、完全に分散又は溶解させたプラスチックレンズ原料中に、香料組成物としてエナント酸エチルを0.2重量部の濃度で添加し、その後、触媒としてジブチル錫ジクロライドを150ppm添加し、室温で十分に撹拌して均一液とした。ついでこの組成物を667Pa(5mmHg)に減圧して攪拌しながら30min脱気を行った。この原料を、2枚のガラス型を用いて、粘着テープで保持した鋳型中に注入し、大気重合炉中で30℃から120℃まで24時間かけて昇温を行い、重合硬化させた。その後、型よりレンズを取り外し、120℃で2時間加熱してアニール処理を行った。
Figure 2005163008
このようにして製造したプラスチックレンズを鼻に近づけても何ら臭気は感じられなか
った。また、このプラスチックレンズを切削、研磨加工したところエナント酸エチルを添
加しないプラスチックレンズと比較して異臭、悪臭がほとんど発生せず、作業者が不快感
を感じることはなかった。
プラスチックレンズ原料として、ビス(2,3−エピチオプロピル)ジスルフィドを9
0重量部、4,8−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチ
アウンデカン或いは4,7−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9
−トリチアウンデカン或いは5,7−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3
,6,9−トリチアウンデカンのいずれか一種の中から選ばれる化合物を10重量部、紫
外線吸収剤として商標名「SEESORB701」(シプロ化成工業製)を1.0重量部
添加し、混合した後、十分に撹拌して、完全に分散又は溶解させたプラスチックレンズ原
料中に、香料組成物としてエナント酸エチルを0.2重量部の濃度で添加し、その後触媒
としてN,N−ジメチルシクロヘキシルアミンを0.1重量部添加し、室温で十分に撹拌
して均一液とした。ついでこの組成物を667Pa(5mmHg)に減圧して攪拌しながら30min脱気を行った。この原料を、2枚のガラス型を用いて、粘着テープで保持した鋳型中に注入し、大気重合炉中で30℃から120℃まで24時間かけて昇温を行い、重合硬化させた。その後、型よりレンズを取り外し、130℃で2時間加熱してアニール処理を行った。
このようにして製造したプラスチックレンズを鼻に近づけても何ら臭気は感じられなか
った。また、このプラスチックレンズを切削、研磨加工したところエナント酸エチルを添
加しないプラスチックレンズと比較して異臭、悪臭がほとんど発生せず、作業者が不快感
を感じることはなかった。
攪拌機と冷却管付きの1リットル4つ口丸底フラスコに、2−(4−ビニルベンジルチ
オ)エタノールおよび2−(3−ビニルベンジルチオ)エタノールの混合体398g(2
.05モル)、ジラウリン酸ジ−n−ブチル錫0.30g、およびハイドロキノンモノメ
チルエーテル0.06gを入れ、内温を60℃に保ちながら、m−キシリレンジイソシア
ネート(武田薬品工業(株)製、商品名:タケネート500)188g(1モル)を3時
間かけて滴下した。その後、内温を80℃に昇温し、80℃で5時間反応して含硫黄ウレ
タン−ビニル化合物(以下、UV1と示す)を合成した。得られたUV1は、無色透明の
粘稠な液体であった。UV1を40g、p−ビス(β−メタクリロイルオキシエチルチオ
)キシリレンを35g、2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシジエトキシフェニル)
プロパンを15g、ベンジルメタクリレートを10g、紫外線吸収剤として2−ヒドロキ
シ−4−メトキシベンゾフェノンを0.03g、酸化防止剤としてトリエチルホスファイ
トを0.01g、活性エネルギー線感応性ラジカル重合開始剤として2,4,6−トリメ
チルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイドを0.05g、熱感応性ラジカル重合
開始剤としてt−ブチルパ−オキシイソブチレートを0.1g、香料組成物としてエナン
ト酸エチルを0.01gの濃度で添加し、室温でよく攪拌した後、6667Pa(50mmHg)に減圧して10分間脱気した。この組成物を2枚のガラス型を用いて、粘着テープで保持した鋳型中に注入した。次いで、母型の両面から2kwの高圧水銀灯により30J/cm2の紫外線を照射し、該組成物の硬化を完了した。その後、この硬化物を脱型し、130℃で1時間加熱してプラスチックレンズ基材を得た。
このようにして製造したプラスチックレンズを鼻に近づけても何ら臭気は感じられなか
った。また、このプラスチックレンズを切削、研磨加工したところエナント酸エチルを添
加しないプラスチックレンズと比較して異臭、悪臭がほとんど発生せず、作業者が不快感
を感じることはなかった。
〔比較例1〕
実施例1において、エナント酸エチルを用いずに、実施例1と同様にプラスチックレン
ズを作製し、そのプラスチックレンズを切削、研磨加工したところ異臭、悪臭が発生し、
作業者が強い不快感を感じた。
〔比較例2〕
実施例8において、エナント酸エチルを用いずに、実施例8と同様にプラスチックレン
ズを作製し、そのプラスチックレンズを切削、研磨加工したところ異臭、悪臭が発生し、
作業者が強い不快感を感じた。
〔比較例3〕
実施例8において、エナント酸エチルの添加量を0.0005重量部として実施例8と
同様にプラスチックレンズを作製し、そのプラスチックレンズを切削、研磨加工したとこ
ろ、香料組成物の添加量が不十分なため、異臭、悪臭の発生を抑制することができず、作
業者が強い不快感を感じた。
〔比較例4〕
実施例8において、エナント酸エチルの添加量を1.0重量部として実施例8と同様に
プラスチックレンズを作製し、そのプラスチックレンズを切削、研磨加工したところ、香
料組成物の添加量が過剰なため香料組成物の臭気が強く、作業者が強い不快感を感じた。
〔比較例5〕
実施例9において、エナント酸エチルを用いずに、実施例9と同様にプラスチックレン
ズを作製し、そのプラスチックレンズを切削、研磨加工したところ異臭、悪臭が発生し、
作業者が強い不快感を感じた。
本発明は前述の実施の形態に限定されるものではなく、プリズム、レンチキュラーシー
ト、フィルター等に使用される光学材料用樹脂の製造用途にも適応できる。

Claims (11)

  1. 含硫黄光学材料用樹脂原料中に香料組成物として、シトロネラール、シネオール、アントラニル酸メチル、アントラニル酸エチル、アントラニル酸ジメチル、リモネン、α−テルピネオール、エナント酸エチル、エナント酸メチル、エナント酸イソプロピル、エナント酸ビニル、カプリル酸メチル、カプリル酸エチル、ノナン酸メチル、ノナン酸エチルから選ばれる一種または二種以上の化合物を添加し、その後硬化させて含硫黄光学材料用樹脂を製造することを特徴とする、含硫黄光学材料用樹脂の製造方法。
  2. 前記含硫黄光学材料用樹脂原料中に添加する香料組成物の添加量が、0.001〜0.
    5重量部の範囲であることを特徴とする、請求項1記載の含硫黄光学材料用樹脂の製造方
    法。
  3. 前記含硫黄光学材料用樹脂が、イソシアネート基またはイソチオシアネート基を1分子
    中に少なくとも2個以上有する化合物と、ポリチオール化合物又はポリオール化合物とを
    混合して製造されるポリ(チオ)ウレタン系含硫黄光学材料用樹脂であることを特徴とす
    る、請求項1又は請求項2に記載の含硫黄光学材料用樹脂の製造方法。
  4. 前記ポリ(チオ)ウレタン系含硫黄光学材料用樹脂中に添加する香料組成物の添加量が0.01〜0.4重量部の範囲であることを特徴とする、請求項3記載の含硫黄光学材料用樹脂の製造方法。
  5. 前記ポリチオール化合物は、一般式(1)
    R−(SCH2SH)n (1)
    (式中Rは、芳香環を除く有機残基を示す。nは、1以上の整数を示す。)で表され、分子内に2個以上のメルカプト基を有する化合物から選ばれる1種以上のポリチオール化合物を主成分とするポリチオール組成物を主成分とすることを特徴とする、請求項3又は請求項4に記載の含硫黄光学材料用樹脂の製造方法。
  6. 前記含硫黄光学材料用樹脂が、チオエポキシ基を持つ化合物を主成分とする重合性組成
    物によって製造されるチオエポキシ系含硫黄光学材料用樹脂であることを特徴とする、請
    求項1又は請求項2に記載の含硫黄光学材料用樹脂の製造方法。
  7. 前記チオエポキシ系含硫黄光学材料用樹脂中に添加する香料組成物の添加量が0.01〜0.4重量部の範囲であることを特徴とする、請求項6記載の含硫黄光学材料用樹脂の製造方法。
  8. 前記含硫黄光学材料用樹脂が、含硫黄ビニル化合物を主成分とする重合性組成物によっ
    て製造されるビニル系含硫黄光学材料用樹脂であることを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の含硫黄光学材料用樹脂の製造方法。
  9. 前記ビニル系含硫黄光学材料用樹脂中に添加する香料組成物の添加量が0.001〜0.1重量部の範囲であることを特徴とする、請求項8記載の含硫黄光学材料用樹脂の製造方法。
  10. 請求項1乃至請求項9のいずれか一項に記載の製造方法によって製造された含硫黄光学材料用樹脂。
  11. 請求項10に記載の製造方法によって製造された含硫黄光学用樹脂を用いた含硫黄プラスチックレンズ。
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